平成二十一年東京都議会会議録第九号

○議長(比留間敏夫君) 百二十四番田中良君。
   〔百二十四番田中良君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○百二十四番(田中良君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 まず初めに、新銀行東京について伺います。
 五月二十九日に、新銀行東京が平成二十一年三月期決算を発表しました。赤字額は百五億円です。再建計画での赤字額百二十六億円は下回りましたが、劣後債の前倒し償還など、つじつま合わせの印象がぬぐえません。また、発表された決算からは、新銀行の本来の存在意義、すなわち中小企業支援がどの程度行われているのかさえ定かではなく、むしろ新銀行そのものを存続させることが自己目的化しているといっても過言ではありません。
 そこでまず、決算を踏まえて、新銀行がどの程度中小企業の役に立っているかについて確認したいと思います。
 新銀行では、設立当初から、他行にはない目玉のメニューとして無担保、無保証融資を掲げていましたが、その多くが大企業向けであると思われます。そこで、無担保、無保証融資のうち中小企業に対する融資はどの程度あるのか。無担保、無保証をスローガンに設立し、当初目指した銀行の姿と今日の実態がどの程度一致するのか、しないのかを知る上でも明らかにすべきと考えますが、いかがですか。
 また、決算では、再建計画で区分された事業意欲が高い既存顧客などへの継続的な支援として、一般融資等で三百六十七億円を新規に融資したことになっています。しかし、私は、そのうち七割以上を大企業向けが占め、中小企業向けは、金額では百三億円、率にすれば二八%にすぎないと聞いていますが、それは事実ですか。また、事実ならば、事業意欲が高い既存顧客とは一体どのような事業者のことをいっているのか。特に、一般融資等三百六十七億円のうち七割強を占める、中小企業以外の事業者の中身とはどのようなものなのか、お答えください。
 さらに、決算では貸出残高を千六百八十四億円としていますが、そのうち約四六%の七百六十九億円の貸出先がその他とされています。このその他に対する貸し出しは国等への貸し出しであると推察をされますが、新銀行の貸出金のうち、中小企業への貸し出しはどの程度で、国等へはどの程度貸し出しているのか。
 以上の三点について、まず確認したいと思います。
 私は、新銀行の失敗は、旧経営陣の失敗だけでなく、モデルカーをつくった石原知事の責任こそ免れないと繰り返し述べてまいりました。それは、新銀行の昨年末までの累積赤字一千十六億円に対して、外部調査報告書で指摘しているデフォルト金額が百十二億円でしかないことが端的にあらわしています。ATMやシステムなどの物件費など、赤字の大きな原因となった過大な経費は何ゆえ発生したのでしょうか。
 私は、新銀行設立前の平成十五年七月一日の代表質問で、東京都が出資したノンバンクという形態でも中小企業への資金供給が可能なのではないかと質問しましたが、これに対して石原知事は、預金業務と決済業務をあわせて行う銀行を創設することが必要だと答弁をいたしました。しかし、なぜ預金業務と決済業務をあわせて行う銀行を創設する必要があったのか。そこには、銀行への外形標準課税で事実上敗北するなど、銀行業界に何とか一矢報いたいとする石原知事の野望があったのではないでしょうか。この石原知事の野望が新銀行マスタープランという過大な目標として現場に押しつけられ、無理に無理を重ねた結果が新銀行の失敗だったのではないでしょうか。
 本年一月に公表された、弁護士事務所によりまとめられた外部調査報告書では、開業後一年の時点で、この状態を放置し続けるならば、これ以上融資をやらない方が収益的には望ましいという当時の執行役員の発言が記されています。資産、すなわち融資がふえればふえるだけ収益が上がるのが健全な銀行でありますが、新銀行東京は開業後一年で既に末期的症状に陥っていたことがわかります。つまり、開業二年目にこそ抜本的な対策が必要だったのではないですか。
 では、なぜその後二年間放置されて、都民の血税一千億円が毀損されてしまったのか、そのことを解明することなしにこの責任論は語れません。
 そこで振り返ってみなければならないのは、開業二年目に当たる平成十八年が都政にとってどういう年であったかということであります。それは、翌年四月に都知事選を控え、知事にとっては特に政治的に重要な年であったということであります。
 そのような中で、もし仮に抜本的対策を講じようとしたならば、この新銀行のでたらめな経営実態は公にならざるを得ず、無担保、無保証、スピード融資というビジネスモデルも根本から変更せざるを得ず、全く新しい銀行という知事の二期目の選挙公約は失策であったという評価が下されたことになります。
 そのことはすなわち、新銀行問題が翌年の都知事選挙の最大の争点に浮上するおそれがあったということなのであります。つまり、新銀行問題を争点としたくないという知事やその側近並びに与党勢力の意向が有形無形に働いた結果、問題が先送りされ、都民の血税一千億円が消えていったのではないかということなのであります。いうなれば、知事のメンツを守るために、都民の血税一千億円がみすみす失われていったのではないかということであります。
 そして問題先送りの結果、ついに昨年三月に事実上破綻状態に陥り、四百億円もの血税を投入するに至ったのであります。
 私は、石原知事の政治的、道義的責任は免れることのないものだと思います。都政史上最悪の失策ともいわれる新銀行の失敗に対して、知事のみずからの責任や総括についてどう考えているのか、改めて見解を伺います。
 また、この追加出資にしても、一体何のためかということであります。これまでの説明からは四百億円を投入するほどの存在意義をこの新銀行に見出すことはできず、新銀行をただ延命措置させるだけの場当たり的な措置であったといわざるを得ません。まさに、翌年都議選を控え、それを乗り切るために血税四百億円が投入され、存続こそが自己目的化した銀行としかいえないものであります。
 石原知事は、新銀行の再建を果たすことが私の責任と述べていますが、知事自身、再建計画に掲げる平成二十二年度の収支均衡、平成二十三年度の単年度黒字化を任期中に見届けることはできないのであります。であるならば、知事は、みずからの選挙公約に掲げ、トップダウンで設立したこの石原銀行の存続について、知事みずからの任期中に一定の結論を出すべきだと考えます。
 私たち都議会民主党は、かねてより新銀行東京から早期に撤退すべきと訴えていますが、もしそれを否定するのであれば、明確な将来ビジョンを語るべきであります。今後の新銀行東京のあり方について知事の見解を伺います。
 次に、景気・雇用対策について伺います。
 ことしの一月から三月のGDPは、年率換算でマイナス一五・二%と、戦後最大の減少率を記録しました。一方、日銀は、四月の経済・物価情勢の展望において、年度内に緩やかに持ち直していくとの見方を示すとともに、与謝野財務大臣も現状を、景気は少し上がってくる局面になったのではと述べています。しかし、現状は、景気が急降下する最悪期は脱したものの、国内の生産水準はいまだ低く、都内中小企業の景況も最悪の状態にあるなど、実体経済の回復にはまだ時間がかかると考えます。
 今後の日本経済には、減収減益の三月期企業決算に続き、夏季のボーナス減少による消費への影響やさらなる雇用悪化、秋以降の新型インフルエンザの動向など、懸念材料が多く存在します。このような中で、都が示してきた緊急対策が確実に実行されていくことが重要だと考えます。都議会民主党も求めてきた雇用やインフルエンザ対策、公共投資など、都の緊急生活者対策の着実な執行による都民生活への効果の浸透に向けて、知事に見解を伺います。
 五月二十九日、総務省が発表した四月の完全失業率は、五・〇%と、前月を〇・二ポイント上昇し、五年五カ月ぶりに五%台となりました。また、五月二十五日に東京都が発表した都内の一月から三月期の完全失業率も、全国水準を下回るものの、三・九%と、前年同期と比べ〇・三ポイント上昇し、完全失業者数も一万八千人増加し、二十七万六千人となっています。
 東京都は昨年十月、緊急対策Ⅱを発表し、公的雇用五十万人創出を打ち出しましたが、五十万人という数字は、一カ月に二十日働くとして、十二カ月で割り返せば、実質的には年間二千人強にしかなりません。また、ことし二月の国の二十年度最終補正を受け、東京都で基金を設けた緊急雇用創出事業やふるさと雇用再生特別事業も、それぞれ八千人あるいは二千人という規模で、しかもそれは三年間での数字なのであります。
 昨年の十月、五十万人の公的雇用を打ち出した時点での東京都の現状認識は、全国の失業率四・〇%、労務作業の有効求人倍率〇・七〇倍というものでしたが、それが現在では、失業率五・〇%、労務作業の有効求人倍率〇・二四倍とさらに悪化をしています。私は、東京都として、現在の厳しい雇用情勢にかんがみ、緊急雇用対策のさらなる積み増しを実施していくべきだと考えますが、見解を伺います。
 この間、私たちは、さきの代表質問や予算特別委員会などにおいても、中小企業制度融資の充実などを求めてきましたが、厳しい経済状況がさらに厳しくなる中で、中小企業の負担軽減に向けて、より踏み込んだ対策を実施すべきではないでしょうか。
 東京商工会議所も、五月十四日に取りまとめた東京都の中小企業対策に関する要望の中で、制度融資において、融資利率の引き下げや元本の据置期間、融資期間の延長、信用保証料補助の拡充などを第一の項目として盛り込んでいます。制度融資の充実は、例えば緊急融資で一%の利子補給を実施しても、その額は新銀行東京に追加出資した四百億円以下で済むものと試算されます。私は、百年に一度といわれる厳しい経済状況の中で、利子負担や保証料負担をさらに軽減するなど、緊急避難的に中小企業の負担を軽減していくべきと考えますが、見解を伺います。
 都は、昨年の九月補正予算から今回の六月補正予算案へと、数度にわたる緊急対策を行い、都民生活や都内中小企業を支えてきました。一方、我が国では人口減少社会が既に到来し、都内は人口増加が続きますが、世帯構成は単身者や高齢者が今後ますますふえ、国内消費市場も縮小していく傾向にあります。経済危機による景気後退も深刻、長期化する中、都内経済や都民の所得、雇用の安定などが課題となっています。
 都議会民主党は、安心・安全の東京に向けて、都民生活の安定を導く施策が一層都政に求められると考えています。そのため、都は、都民生活や中小企業支援、今後成長が期待される技術・サービス分野への支援や人材育成、国際化など、財政環境の厳しさも視野に入れながら、持続可能な社会を見据えた施策を行っていかなければなりません。社会が大きく変化する中で、都は東京の今後の社会状況の望ましい姿を新たに展望していくときに来ているのではないでしょうか。知事に見解を伺います。
 次に、新型インフルエンザ対策について伺います。
 豚インフルエンザから変異した今回の新型インフルエンザは、感染防御に関する情報が錯綜し、市中ではマスクが売り切れるなどの事態も起きています。一たん終息の見込みかともいわれていますが、過去のスペイン風邪は三回にわたって流行を繰り返し、日本では夏にも流行したということから、今後の新型インフルエンザ対策も、終息するまで長期戦となりそうであります。
 成田や羽田空港、東京港に到着した帰国者、渡航者の多くが都内を通過することや、都民の移動が広域にわたる東京では、大規模流行も視野に入れて、今後も新型インフルエンザ対策を進めていかなければなりません。今のところは早期に治療すれば命に別条はないようですが、感染が広がるにつれ、免疫力が低下している妊婦や、呼吸器系の疾患、腎臓病などの持病がある人といった新型インフルエンザに弱い人に対応していくことが必要です。また、高齢者の場合、合併症の細菌性の肺炎で重篤化するおそれが高く、感染者がふえると医療機器が不足することも懸念されており、肺炎球菌ワクチンの接種を行うべきとの指摘もなされております。
 患者数が増加する感染拡大期から蔓延期には、一般医療機関においても新型インフルエンザの診療を行う必要があります。こうした医療機関では、診察室はもちろん、院内で新型インフルエンザの患者と一般患者との動線を分け、感染拡大を防ぐための方策だけでなく、医師やスタッフが最低限とるべき防御措置や患者への説明方法を含めた診療マニュアルの整備、タミフルなどの医療資器材の不足など、不安材料は尽きないようです。こうした時期における新型インフルエンザの一般医療機関における医療体制整備について、都としてどのように取り組んでいくのか、伺います。
 多くの感染者が出た大阪府では、患者や濃厚接触者が活動した地域等として確認された地域に所在する短期入所サービス及び通所サービス事業所、地域密着型事業所などに対して臨時休業要請が行われ、混乱が生じました。高齢者や障害者の福祉サービスについても、業務継続がすなわち利用者の生活維持であり、途絶することが許されないケースも多くあります。患者発生の際に、都民生活に必要な福祉サービスの提供継続に万全を期すべきだと考えますが、都の取り組みを伺います。
 先進国でHIV感染者が増加を続けているのは日本だけです。また、結核に関しても、我が国は依然として中蔓延状態にあります。感染症の脅威は決して過去のものではなく、まだまだ強化が必要な分野です。とりわけ予防接種に関しては、麻疹ワクチンの接種率が低く、日本人が持ち込むために、我が国ははしか輸出国といわれているほか、Hibワクチンや肺炎球菌ワクチン接種が定期化されていないなど、世界と比較して対策が大きくおくれております。感染症対策を強化するため、国に対し予防接種の充実を働きかけるとともに、区市町村が行う予防接種を都としても推進すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、医療と福祉について伺います。
 まずは、安心して出産、子育てできる環境づくり、そして救急医療の強化についてであります。
 民主党は、出産費用も賄えない現在の出産育児金を十七万円ふやし、五十五万円にすることとしております。また、都独自のさらなる上乗せについても検討を進めております。これまでにも私たちは、医師への手当て、医療クラークの配置、妊婦のいわゆるたらい回しをなくし搬送時間を短縮するための救急搬送先調整の司令塔機能設置などを求めており、多くは実現しております。
 しかし、これらは、現有の医療資源を効率的に使い、少しでも現場の負担を軽減し、危機的状況をしのいでいくための対策であります。
 今後は、目標値を明確にしたNICUの整備計画、トリアージの実施などによる小児ERの展開、医師、看護師不足の原因といわれる過酷な勤務環境を改善し、都民に必要な医療を確保するための診療報酬の適切な改定、高度化した現代医療の水準に合わせた医師、看護師配置基準の見直し、女性医師の継続支援など、常時受け入れ可能な救急医療の構築と、ドクターカー配置やシャープ七一一九の活用による搬送時間の短縮など、大胆な取り組みを果敢に実行して解決すべき課題が数多くあります。
 これらを実現するには、国政において、医療、福祉、子育てを公共事業と考え、十分な予算を投下することが不可欠であり、社会保障費年間二千二百億円の削減は当然中止と考えております。加えて、東京都においても、医療分野、地域ごとの過不足をしっかりと検証して、どこにどのような医療機関が必要か、数値目標を示して、達成するための施策を構築しなければなりません。そのためにも、保健医療計画を抜本的に見直し、東京の医療体制を強化していく必要があると考えますが、見解を伺います。
 続いて、必要とするすべての子どもが利用できる保育・子育て支援サービスの提供について伺います。
 核家族化が進み、地域社会のありようも変化している現在、ほとんどすべての子育て家庭が何らかの保育ニーズを抱えています。民主党は、ゼロ歳から十五歳までの間、月額二万六千円、年間三十一万二千円の子ども手当を支給することとしています。そして、手当で利用できる諸サービスの提供体制構築が必要であります。
 東京都の待機児童は、平成二十年四月時点で約五千人、十月には九千人です。これは、保育所入所要件を満たし、申し込みしていながら入所できていない公式な人数であります。しかし、利用をあきらめていて潜在化している待機児童は約七万人ともいわれています。都は、平成二十二年度までに約一万五千人分の保育所整備、区市町村が行う一時預かりなどのサービス拡充を計画していますが、とても追いつく数ではありません。しかも、認可保育所以外の保育サービスは、都と区市町村が補助する認証保育所制度ですら料金が高額です。
 そのため民主党は、サービス供給を促し、かつ価格格差を解消するため、認証保育所保護者負担軽減補助を提案してきました。さらに、将来的に保育クーポンにより必要とするすべての子どもが利用できるような制度とすることも含め、保育サービスを抜本的に拡充し、安心して子育てできる環境整備をしていくことが必要と考えますが、見解を伺います。
 今後、私たちが迎える未曾有の高齢社会における生活の安心、安定、それを支える介護サービスの拡充は喫緊の課題です。高い高齢化率で推移する東京都では、高齢者人口当たりの介護保険施設は全国最下位です。これに千葉、埼玉など首都圏が続き、最下位グループをなしているわけであります。ホームヘルパーやケアマネジャーの継続年数も他産業より短く、介護施設も不足、そこで働く人手も不足という状況に陥っているわけです。
 今回の介護報酬改定では、東京の介護に必要な大都市加算が実現していないばかりか、地域福祉に重要なグループホームは減算となりました。
 都の職業訓練では、介護職のコースは人気で、人手が集まりつつあるようですが、つい先日まで人材流出の原因とされていた低報酬が改善されたわけではなく、経済状況が好転すれば、また流出に悩むのは目に見えています。人が集まってきた今こそ、経験を積んだプロフェッショナルとして続けていける仕事とすることに、都としても傾注すべき好機ではないでしょうか、見解を伺います。
 都はこれまで、特養、グループホームなどの整備に対し、特別助成を行っており、厳しい財政状況のときにも必要な分野に対し、投資してきたことは一定評価いたします。しかし、都が一昨年調べた特養の状況でも、赤字の都内施設が二百三十七中七十六施設と、建設後の運営が赤字で、今回の改定でも収支改善、供給促進に結びつくような効果はありませんでした。
 私は、地価などの物件費とともに人件費も高い東京都が全国最下位を脱するためには、イニシアルコスト補助もさることながら、建てた後の経営が立ち行かない現状を改善して、新規参入者をふやし、既存法人も都民ニーズにこたえて新たな事業を展開できるようにしなければならないと考えます。
 高齢化率の上昇、高齢者数の増加に対応して、必要な介護基盤の整備促進のため、高齢者施策の抜本強化が必要と考えますが、見解を伺います。
 次に、教育について伺います。
 現在、義務教育段階にある子どもたちは、有名私立学校や都立中高一貫校への受験対策を熱心に行う子どももいれば、義務教育内容が定着しないままに小学校を終え、中学卒業を迎えてしまう子どももおり、その背景も多種多様です。都の低所得者への塾代支援も重要な対策ですが、対象がかなり限られており、拡大が必要であります。
 国の学力調査における東京都の児童生徒の状況は、学校以外で学習を全くしない子どもの正答率は、中学校の数学では五〇%を切っています。つまずきを防止するきめ細かな指導、おくれてしまった子どもへのキャッチアップ指導など、基礎的学力をしっかりつけて義務教育を修了できる体制整備が必要であります。
 民主党は、少子化による児童生徒の減少を上回る教員定数の削減を中止し、教員一人当たり生徒数を現在の十九人からOECD諸国並みの十六人とする教員配置を実現し、少人数学級や複数教員による指導、少人数指導、教科担任制など、さまざまな方法できめ細かな教育を行えるような制度づくりに取り組んでいます。
 学級編制基準は都道府県が決めることとなっていますが、そもそも上限を定める考え方自体におのずと限界があります。むしろ、一クラス当たりの人数は、子どもの状況や教員の力量、学年の人数などに応じて柔軟に学級を編制できるようにし、少人数学級や少人数指導、複数教員による指導などができるようにしていく必要があると考えますが、見解を伺います。
 活気と活力ある学校に必要なのは、多様な取り組みによる学校づくりです。民主党は、民間人校長、社会人経験を持つ教員採用の拡大、コミュニティスクールや学校支援地域本部事業の推進など、さまざまな取り組みを求めてまいりました。
 中でも、多様な人材活用のために行った民間人校長はまだ四人など、制度として導入はしましたが、都内の教育を活性化させるほどの実績、広がりには至っていません。今後も民間人校長や社会人経験者採用などの取り組みを一層強力に推進すべきと考えますが、見解を伺います。
 民主党は、高校の実質無償化、すなわち国庫から公立高校十二万円、私立高校二十四万円の保護者負担軽減を行うことを目指しています。しかし、都内私立高校の平均授業料は約四十一万円となっていることから、さらに都独自の保護者負担軽減が必要と考えています。
 東京都においては、こうした私立高校の保護者負担軽減についてどのように考えるのか伺います。
 次に、交通政策について伺います。
 自動車交通は、東京の経済を支え、都民生活を豊かにしてきた一方で、その過度の集中により交通渋滞が慢性化し、経済効率は大きく損なわれ、環境や都民の健康にも影響を与えています。
 このような状況を改善するためには、車の利用者が利用頻度を減らし、公共交通や自転車を利用することに尽きるといえます。このことにより、道路混雑や環境問題などが緩和されるだけでなく、公共交通事業の運営状況も改善し、そのサービス水準が向上するなど、社会的利益が大幅に増加することが期待されます。
 しかし、そのためには、個々人が利己的な利得を追求するときに協力的行動が得られないという社会的ジレンマを払拭する必要があります。社会的ジレンマとは、例えば、本当は都心部においては車の利用を避けた方がよいにもかかわらず、自分はそうしたくないとだれもが考えるために、結果としてだれもが車を利用し続け、混雑は解消せず、そしてだれもが低い効用に甘んじることとなるといったような社会心理学的問題です。
 この社会的ジレンマは、交通需要マネジメント、いわゆるTDMの手法によるロードプライシングなどの経済的な価格政策や規制の導入によって解消することが理論的には可能であり、都も平成十二年二月に策定したTDM東京行動プランで総合的施策を示しています。しかし、これら施策の導入に当たっては二次的な社会的ジレンマが形成されることなどから、いまだに個別施策の社会実験レベルにとどまっており、結果として総合的な施策として十分な効果を上げられていないのが現状ではないでしょうか。
 都心部における公共交通利用、自転車利用への転換を図り、車への依存を最小化するためには、そのための都市東京の将来像を改めて示し、都民の合意形成を図っていくことも重要と考えます。
 脱自動車依存社会の構築に向けた都の基本認識について所見を伺います。
 次に、防災対策について伺います。
 都内における木造住宅密集地域は、二十三区と多摩地域の七市にかけての約二万三千ヘクタールですが、都の防災都市づくり計画では、この三割弱に当たる六千五百ヘクタールを震災時の甚大な被害が想定される整備地域として指定しています。
 この選定基準は、地域危険度のうち、建物倒壊危険度が五及び火災危険度が五に相当し、老朽木造建物棟数が一ヘクタール当たり三十棟以上の町丁目を含み、平均不燃領域率が六〇%未満である区域とその連担する区域となっています。
 地域危険度は、平成十四年に公表された第五回の地震に関する地域危険度測定調査報告書のデータが採用されています。このデータを見ますと、建物倒壊危険度五に該当する地域は八十三地域ありますが、このうち整備地域に含まれているのは五十一地域と、六割にとどまっています。さらに、建物倒壊度が五で、火災危険度も五となっている地域は二十四地域で、この四分の一に当たる六地域が整備地域に含まれていません。
 都は、整備地域内における木造住宅の耐震化に対して助成を行っていますが、私たちはこれまで都内全域で制度を適用するよう範囲の拡大を求めてきました。例えば、木造住宅密集地域はあるものの、整備地域の指定のない三鷹市や狛江市などからは、耐震化促進制度創設の要望があります。
 現段階で耐震化促進制度の都内全域での適用が困難であるならば、まず第一歩として、建物倒壊危険度五の地域はすべて、あるいは建物倒壊危険度と火災危険度がともに五であるような地域も制度の適用対象地域として取り扱うよう、対象地域を拡大すべきではないかと考えます。
 このような木造住宅の耐震診断、耐震改修助成制度の対象地域の拡大について、所見を伺います。
 ことし四月、国は室戸台風級の超大型台風が東京湾を直撃した場合の浸水被害想定を公表しました。それによれば、地球温暖化で海面上昇が進んだ最悪のケースでは、都内で海抜ゼロメートル地帯が広がる江東区から大田区にかけて約五千五百ヘクタールが浸水し、深さも最大五メートルに達すると予想されています。
 また、東京湾沿岸には、堤防の高さが不十分である地域のあることや堤防の耐震性の向上が必要な地域のあることが指摘されています。
 都として、東京港の高潮対策を改めて見直すべきと考えますが、所見を伺います。
 さて、本年は政治決戦の年といわれています。何年か後に、本年、平成二十一年、二〇〇九年、日本の戦後政治史に新たな一ページが加わったと記録されるかもしれません。そしてそのときは、この首都東京から始まった歴史だと語られるでありましょう。私たち都議会民主党は、すべての都民の皆様とこの歴史的感覚を共有できることを目指して全力を尽くすことをお誓い申し上げます。
 最後に、知事を初めとした理事者各位、各会派の議員の皆さん並びにスタッフの皆さん、この四年間、時には対立し、時には協力し合いながらも、ともに都民福祉の向上に努めてこられたことを光栄に思い、心から感謝を申し上げ、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 田中良議員の代表質問にお答えいたします。
 前にも何度も何度も同じ質問を受けましたが、また繰り返して申し上げますけれども、新銀行東京の経営悪化の責任についてでありますが、新銀行東京が昨年、経営危機に至った責任は、まずは直接経営に当たった経営陣にあると思います。次に、それを任命し、監督する取締役会、そして株主としての東京都など、つかさつかさに責任があると思います。それがまともな常識的な、要するに仕組みの本質だと思います。
 本年二月に、新銀行東京が外部の弁護士に委託して作成した外部調査報告書でも述べられておりますが、銀行には、その公的な性格にかんがみまして銀行法によって経営の独立性が求められていること、新銀行東京も株式会社としての所有と経営の分離が図られていたこと、さらには、銀行の株主には会計帳簿等の閲覧請求権が認められておらず──ということは、ミクロなマネジメントというものも株主は行うことができません。新銀行東京から東京都への情報提供も限定されておりました。いわば、株主である東京にとっても、銀行というものは一種のブラックボックスのような存在であったと思います。
 このように株主の関与が厳しく制限された中で、実際に経営のかじ取りを行い、巨額の損失を計上した旧経営陣の責任は重く、法的責任が問われたことは当然だと思います。
 先ほど、知事選を控えて新銀行の経営悪化問題が先送りされたという指摘がありましたが、経営悪化が明らかになった時点で速やかに新しい経営計画を策定させ、トップを初め、経営陣も一新させたことは周知のことでありまして、知事選のために事を先送りさせたという指摘は問題外というか、的外れの勘ぐりであります。
 中小零細企業のために設立した新銀行東京の経営が著しく悪化したことはまことに遺憾でありますが、新銀行東京の支援先である中小零細企業を今後とも支えていくために、私は追加出資をすることで、この銀行の再建を決意いたしました。それを果たすことが私の最大の責任であります。
 あの追資が、増資が問題になったときに民主党も主張しました、あの時点であの銀行をつぶしたとしたら一体どれだけの惨事が起こったということは、常識を持っている人は十分わかることであります。
 次いで、新銀行東京の今後のあり方についてでありますが、メガバンクが大幅な赤字となるなど、多くの銀行が計画よりも大幅に下回る決算となる中、新銀行東京は平成二十年度決算において再建計画を上回る業績を上げることができておりました。再建への足がかりをつかむことができたと思います。
 今後とも、セカンドステージとして経営改善を着実に進めて新銀行東京を再建し、その設立目的であります小零細企業への支援を十全に果たせるようにすることが大きな目標であります。
 ただ、今日のこの世界的なリセッションの中で、日本のセクターよりも東京の可能性を評価してくれておりました、協力を申し込んできていた外国の金融機関の方がショックを受けて、国家管理になって対応を変えました。そういった事態がちょっとこのセカンドステージの目算を狂わせましたけれども、いずれにしろ、そういったものの可能性も模索しながら、今後もあらゆる努力をしてまいるつもりであります。
 補正予算の執行についてでありますが、今回の補正予算案は、一連の国の経済対策に関連して、東京の都市づくりと都民生活の緊急課題などに迅速に対応するために編成したものであります。したがって、補正予算については、ご指摘をまつまでもなく、速やかに執行し、予算に盛り込んだ諸施策の効果を早急に実現してまいります。
 次いで、東京の今後の望ましい姿の展望についてでありますが、都政を預かる者として、現実性のある将来像を提示し、その実現に向けて施策を展開していくことは当然のことであります。
 そのために、少子高齢化の進行や次代を担う人材の育成などの課題にも対応し、東京をさらなる成熟を遂げた、魅力的な住み心地のよい都市へと生まれ変わらせるために「十年後の東京」計画を策定いたしました。この計画では、子どもからお年寄りまで生き生きと暮らせる社会、優秀な企業や人材の集積など東京のポテンシャルを生かした都市型産業が飛躍的に成長し、だれもが意欲と能力の発揮できる社会の姿などを描いております。
 既に、今日の東京についての評価がありまして、「モノクル」というかなりハイブラウな、イギリスから出ている、ヨーロッパ全体に普及している雑誌が、世界の都市の中で最も住みやすい都市というものにランキングをつけまして、東京はおかげで三位になりました。ただ、この間もその編集長に会いましたが、彼自身は、第一位のコペンハーゲン、第二位のミュンヘンは東京に比べてはるかに小さな都市だ、世界のいわゆるマンモス都市の中で、私は東京を一番評価しているという非常にうれしい評価がありました。
 いずれにしろ、申し上げました目標実現のために、昨年末に策定した実行プログラム二〇〇九では、さまざまな社会状況の変化を踏まえ、時代を切り開く新たな施策を盛り込んでおります。例えば、医療、介護サービスを付加した高齢者専用賃貸住宅の普及促進や、ベンチャー技術大賞受賞製品の販路開拓支援など、意欲的な取り組みを機動的、戦略的に進めております。
 このように、現下の危機を打開し、将来を見据えた東京ならではの施策を引き続き展開することによりまして、誇りを持って子孫に引き継ぐことのできる、だれもが安心して暮らせる首都東京の実現をしていきたいと思っております。
 他の質問については教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長大原正行君登壇〕

○教育長(大原正行君) 二点の質問についてお答え申し上げます。
 まず、少人数学級や少人数指導、複数教員による指導などについてでございます。
 都教育委員会といたしましては、生活集団としての教育効果を考えた場合に、児童生徒が集団の中で互いに切磋琢磨し、社会的適応能力をはぐくむため、学級には一定の規模が必要であると考えております。
 また一方、基礎学力の向上に配慮いたしまして、きめ細かな指導を行うために、教科等の特性に応じた多様な集団を編制できる少人数指導や複数教員による指導、いわゆるチームティーチングを導入しております。
 都教育委員会といたしましては、現行の基準により編制した学級を基本に、引き続き少人数指導を推進することによりまして、個々の児童生徒の実情に即した教育の充実に努めてまいります。
 次に、小中学校における多様な人材活用の推進についてでございます。
 民間人校長の登用につきましては、設置者である区市町村教育委員会が、まず配置の必要性や採用候補者等を判断、選定した上で都教育委員会に申請いたします。都教育委員会は、申請内容を総合的に判断いたしまして採用の可否を決定することとなりますが、これまで採用を不可にしたことはなく、平成十五年度から現在までの間に民間企業など外部から四人の校長を任用いたしました。
 これらの校長は地域の人材の活用などの先進的取り組みを進めて、それは他の学校の活性化にも結びつく影響を与えているものと考えております。
 また、教員採用選考に当たりましては、豊かな社会経験を有する人材を活用するために、平成十二年度から社会人選考を行っており、これまで小中学校において六百四十六人を採用してまいりました。さらに、今年度の社会人選考から年齢制限を撤廃して実施しているところでございます。
 今後とも、学校が抱える多様な課題に対応するため、さまざまな社会経験を持つ人材の確保に努め、学校教育の充実を図ってまいります。
   〔産業労働局長佐藤広君登壇〕

○産業労働局長(佐藤広君) 五点の質問にお答えを申し上げます。
 まず、新銀行東京の中小企業向け融資についてでございます。
 平成二十年度の無担保、無保証融資の実績は、全体で二百十四件、三百四十一億円となってございます。中小零細企業向け融資の全体の実績は、他行と同様に開示をしておりますが、お尋ねの個々の融資の内訳につきましては、新銀行東京は重要な営業上の情報であるため明らかにしておりませんが、平成二十年度決算における新銀行東京の中小零細企業向け融資全体の実績は約七百件、二百十億円であり、全体に占める割合は件数で約九割、金額で約四割となっております。
 次に、新銀行東京の事業意欲が高い既存顧客への支援についてでございます。
 平成二十年度決算における、新銀行東京のいわゆる一般融資等の実績は三百六十七億円となっております。そのうち中小零細企業向けは百三億円でございます。残りの二百六十四億円につきましては、中小零細企業以外のその他の事業者ということになります。
 なお、事業意欲の高い既存顧客とは、新銀行東京と取引実績があり、日ごろの接触の中で事業継続に努力していることが確認できる事業者等のことでございまして、新銀行東京は、一般融資により支援することとしております。
 次に、新銀行東京の貸出金残高についてであります。
 金融機関の貸出金は、事業者向けの融資と資金運用の二つの性格に分けることができます。新銀行東京の平成二十一年三月末現在の貸出金残高は一千六百八十四億円でありますが、そのうち事業者向け融資は九百二十四億円であり、うち中小零細企業向けは約六割の五百十六億円となっております。
 次に、新銀行東京は他の金融機関と同様に、安全で確実な資金運用の一環として国等への貸し出しを行っております。その額は七百六十億円となっております。
 なお、新銀行東京は再建の途上であって、現在では収益基盤の安定のために中小零細企業以外の融資についても取り組んでいるところでございます。着実に再建を進めることによりまして、中小零細企業への支援を行うという本来の役割を再び十分に果たしてまいります。
 次に、緊急の雇用対策についてでございます。
 都は、昨年度、東京緊急対策Ⅱを打ち出し、雇用創出につながる公共事業に速やかに取り組んでおり、本年度は都独自の区市町村補助事業を実施して、これまでに約二百五十の事業について交付を決定し、迅速な雇用創出を図っております。
 さらに、雇用情勢の急速な悪化を受け、国の交付金による基金を創設したところでございまして、この基金を活用して緊急雇用創出事業及びふるさと雇用再生特別基金事業を区市町村とも連携して実施することとしております。
 今後とも、雇用情勢の変化に対応して、基金の積極的、弾力的な活用により雇用創出に取り組んでまいります。
 最後に、中小企業の資金調達に係る負担の軽減についてでございます。
 都は、国の緊急保証制度に対応しまして、制度融資に、最優遇金利を適用した融資メニューでございます経営緊急を設置いたしますとともに、小規模企業者に対しては、過去最高水準となる保証料の二分の一を補助する、都独自の対応を行っております。
 制度融資の最優遇金利は、金融機関が最も信用のある企業に適用する貸出金利であります短期プライムレートとほぼ同水準でありまして、本年四月にはこの間の金利動向に合わせて、最優遇金利をさらに引き下げをしたところでございます。
 このように、都は他の道府県に比べましても、格段に手厚い措置を既に講じているところでありまして、この内容を今後とも維持していく考えでございます。
 こうした考えに基づき、今回の補正予算におきましては、中小企業の厳しい経営環境を踏まえ、経営緊急を含む経営支援融資の目標額を拡大することといたしまして、預託金や保証料補助に要する経費を計上したところでございます。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 七点についてお答えをいたします。
 まず、一般医療機関における新型インフルエンザ医療体制の整備についてでありますが、感染拡大期から蔓延期には、一般医療機関においても新型インフルエンザの診療を行うこととなるため、現在、都は医師会等と連携しながら、この時期に外来診療や入院医療を行う医療機関の確保を進めております。
 こうした医療機関に対しましては、都独自に創設する補助制度により、入院病床の整備や医療従事者のための個人防護具、医療資器材等の備蓄を支援してまいります。
 次に、患者発生時の福祉サービスの提供についてであります。
 福祉サービスは、高齢者や障害者の生活を支える重要なサービスであり、利用者や家族にとって、休業に伴う影響は大きいと認識をしております。
 このため、都としては、患者発生時には、ウイルスの感染力や毒性、感染の広がり、利用者への感染の危険性などを十分踏まえた上で、区市町村と連携しながら、福祉サービスの継続に最大限の配慮を行い、利用者の支援に努めてまいります。
 次に、予防接種についてであります。
 都は、感染症の拡大を防止するため、予防接種対策をより一層充実するよう、これまで国に対し提案要求をしてきており、引き続きHibワクチンの定期接種化など、施策の拡充を国に求めてまいります。
 また、都は、予防接種の実施主体である区市町村が、肺炎球菌ワクチンなど法定外の予防接種費用の補助を行う場合に包括補助制度を活用して支援を行っておりますが、本年四月には、その対象にHibワクチンを新たに加えました。
 今後とも、制度の活用について区市町村に情報提供を行い、予防接種の推進を図ってまいります。
 次いで、保健医療計画についてでありますが、東京都保健医療計画は、医療法に定める医療計画に加え、都民の受療行動や都内の保健医療資源の状況等を踏まえ、保健、医療、福祉の連携に関する取り組みを示した基本的かつ総合的な計画であります。
 都は、本計画において、救急医療、周産期医療、小児医療など、事業別に医療体制の取り組みの基本的方向を定めております。
 これに基づき、救急医療の東京ルールの推進やスーパー総合周産期センターの設置に加え、小児科医を初めとする医師確保支援など、現下の医療を取り巻く厳しい状況に対応しております。
 今後とも、都は、保健医療計画に基づき、関係機関と協力をして、東京の医療提供体制の強化に取り組んでまいります。
 次いで、保育サービスの拡充等についてでありますが、都は待機児童の解消に向けて、保育サービス拡充緊急三カ年事業に取り組み、保育所等の整備を着実に進めてきましたが、経済情勢の悪化等に伴い、保育ニーズの急増が見込まれております。
 このため、今回の補正予算で、事業者と区市町村の負担を大幅に軽減する独自の支援策を講じ、今年度の整備目標を当初計画の一・五倍に引き上げることといたしました。
 また、国に対しても、保育に欠けるという入所要件の見直しや直接契約の導入など、保育所制度の抜本的改革を求めてきており、国も、新たな制度設計に向けて検討を始めております。
 今後とも、すべての人が安心して子育てできるよう、こうした取り組みを着実に進めてまいります。
 次に、介護人材の確保についてでありますが、介護人材の安定的な確保定着のためには、介護事業者みずからが、職員一人一人の能力を最大限発揮できる働きやすい職場づくりに取り組むことが重要であります。
 このため都は、平成二十年度から、経営者やリーダー層を対象にマネジメント能力の向上を図る取り組みを実施しておりますが、さらに今年度から、職員の資格取得に取り組む事業者に対する支援を行っております。
 また、適切な給与水準の確保も課題であるため、介護報酬について、都は国に対し、介護福祉士の資格を有する者の配置を評価すべきことなどを提案し、本年四月の改定で実現をいたしました。
 引き続き、大都市の実態を反映した介護報酬となるよう、提案要求を行ってまいります。
 最後に、高齢者施策についてでありますが、都は、本年三月、平成二十一年度から二十三年度までを計画期間として、高齢者施策の総合的、基本的計画であります東京都高齢者保健福祉計画を策定いたしました。
 本計画では、保険者である区市町村が今後の要介護認定者数の見込み等に基づき推計した介護サービス量を踏まえて、都におけるサービス量を定めております。
 都は、特別養護老人ホーム等の整備に当たり、高齢者人口に比べ、整備状況が十分でない地域の補助単価を最高一・五倍に加算するなど、独自の支援を行っております。
 今後とも、高齢化の進展により増大する介護ニーズに対応するため、計画に基づき、介護基盤の着実な整備に努めてまいります。
   〔生活文化スポーツ局長秋山俊行君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(秋山俊行君) 私立高校の保護者負担軽減についてでございますけれども、都では、これまでも私立高校に対して、基幹的補助である経常費補助を通して、授業料の抑制を図るほか、家計状況の急変等により、学校が授業料を免除した場合に、免除額の一部を補助しているところでございます。
 また、財団法人東京都私学財団を通じて、平均的な所得以下の保護者を対象に、所得に応じて授業料の一部を助成するほか、経済的理由により修学が困難な私立高校生に対しまして育英資金を貸与しておりまして、今年度は、都内の私立高校の平均授業料を賄えるよう、その貸与額を年額四十二万円へと増額し、充実を図ったところでございます。
 今後とも、私学の自主性、独自性を尊重しつつ、これらの幅広い施策を総合的に活用してまいります。
   〔環境局長有留武司君登壇〕

○環境局長(有留武司君) 自動車交通対策についてお答えいたします。
 持続可能な環境交通を実現するためには、ライフスタイルやビジネススタイルとして、自動車に過度に依存しない交通行動の定着を推進していくことが重要でございます。
 都は、こうした考え方に立ちまして、これまでもパーク・アンド・ライドによる公共交通機関の利用促進や自転車道の整備による自転車活用対策などに取り組んでまいりました。
 今後とも、公共交通機関と連携したカーシェアリングの取り組みやバス専用レーンの設置等による移動の利便性の向上など、さまざまな施策を総合的に展開し、環境負荷が低く、だれもが安全で快適な移動環境を享受できる都市を目指してまいります。
   〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕

○都市整備局長(只腰憲久君) 木造住宅耐震化助成制度についてでございますが、この制度は防災都市づくり推進計画に定める整備地域を対象としておりまして、震災時に住宅が倒壊した場合に、道路閉塞や出火から避難、応急活動が妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながるおそれがあるため、公的助成を行っております。
 今後とも、こうした地域における重点的な取り組みが防災対策上重要であると考えておりまして、制度の周知徹底など、普及啓発に努め、耐震改修の促進を図ってまいります。
 なお、整備地域の指定につきましては、最新の地域危険度の調査結果などを踏まえまして、現在見直しを進めております。
   〔港湾局長斉藤一美君登壇〕

○港湾局長(斉藤一美君) 東京港の高潮対策につきましてお答え申し上げます。
 都はこれまで、日本最大の高潮被害をもたらしました伊勢湾台風を想定し、総延長約五十キロメートルに及びます防潮堤や水門等の整備をおおむね完了しておりまして、東京港の高潮に対する安全性は確保されてございます。
 現在は、首都直下地震の切迫性が指摘されていることから、平成十八年度を初年度とする緊急整備十カ年計画によりまして、喫緊の課題でございます耐震対策等を重点的に進めてございます。
 お話の国の被害想定は、地球温暖化による将来の海面上昇や台風の巨大化に加えまして、堤防の破壊等の悪条件が重なった場合を想定しております。国においても、長期的な視点で検討を進めるべき課題であるとしてございます。
 都といたしましては、地球温暖化の影響を考慮した東京港の高潮対策につきましては、今後の中央防災会議での検討状況等を注視しながら、国や地元区等と連携して検討してまいります。

○副議長(石井義修君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時四十一分休憩