平成二十一年東京都議会会議録第八号

平成二十一年六月一日(月曜日)
 出席議員 百二十五名
一番遠藤  守君
二番伊藤 興一君
三番米沢 正和君
四番鈴木 章浩君
六番後藤 雄一君
七番福士 敬子君
八番伊沢けい子君
九番そなえ邦彦君
十番西崎 光子君
十一番伊藤まさき君
十二番伊藤 ゆう君
十三番原田  大君
十四番河野百合恵君
十五番小竹ひろ子君
十六番松葉多美子君
十七番大松  成君
十八番中山 信行君
十九番高倉 良生君
二十番菅  東一君
二十一番きたしろ勝彦君
二十二番田中たけし君
二十三番鈴木 隆道君
二十四番神林  茂君
二十五番早坂 義弘君
二十六番高木 けい君
二十七番原田 恭子君
二十八番佐藤 広典君
二十九番尾崎 大介君
三十番山口  拓君
三十一番松下 玲子君
三十二番野上ゆきえ君
三十三番西岡真一郎君
三十四番たぞえ民夫君
三十五番村松みえ子君
三十六番橘  正剛君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番谷村 孝彦君
四十番石森たかゆき君
四十一番高橋 信博君
四十二番鈴木あきまさ君
四十三番矢島 千秋君
四十四番高橋かずみ君
四十五番吉原  修君
四十六番林田  武君
四十七番野島 善司君
四十八番服部ゆくお君
四十九番山口 文江君
五十番今村 るか君
五十一番吉田康一郎君
五十二番斉藤あつし君
五十三番泉谷つよし君
五十四番くまき美奈子君
五十五番大西さとる君
五十六番増子 博樹君
五十七番かち佳代子君
五十八番植木こうじ君
五十九番野上 純子君
六十番東村 邦浩君
六十一番長橋 桂一君
六十二番小磯 善彦君
六十三番田代ひろし君
六十四番川井しげお君
六十五番こいそ 明君
六十六番崎山 知尚君
六十七番宇田川聡史君
六十八番秋田 一郎君
六十九番村上 英子君
七十番倉林 辰雄君
七十一番遠藤  衛君
七十二番三原まさつぐ君
七十三番大西由紀子君
七十四番いのつめまさみ君
七十五番門脇ふみよし君
七十六番小沢 昌也君
七十七番石毛しげる君
七十八番岡崎 幸夫君
八十番清水ひで子君
八十一番古館 和憲君
八十二番松村 友昭君
八十三番東野 秀平君
八十四番ともとし春久君
八十五番鈴木貫太郎君
八十六番石川 芳昭君
八十七番田島 和明君
八十八番樺山たかし君
八十九番山加 朱美君
九十番山田 忠昭君
九十一番串田 克巳君
九十二番新藤 義彦君
九十三番古賀 俊昭君
九十四番立石 晴康君
九十五番桜井  武君
九十六番吉野 利明君
九十七番初鹿 明博君
九十八番花輪ともふみ君
九十九番大津 浩子君
百番大塚たかあき君
百一番相川  博君
百二番中村 明彦君
百三番馬場 裕子君
百四番曽根はじめ君
百五番大山とも子君
百六番藤井  一君
百七番中嶋 義雄君
百八番木内 良明君
百九番石井 義修君
百十番宮崎  章君
百十一番鈴木 一光君
百十二番三宅 茂樹君
百十三番高島なおき君
百十四番野村 有信君
百十五番比留間敏夫君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番山下 太郎君
百二十一番酒井 大史君
百二十二番大沢  昇君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番田中  良君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番渡辺 康信君

 欠席議員 なし
 欠員
    五番 七十九番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事谷川 健次君
副知事菅原 秀夫君
副知事山口 一久君
副知事猪瀬 直樹君
教育長大原 正行君
知事本局長吉川 和夫君
総務局長中田 清己君
財務局長村山 寛司君
主税局長熊野 順祥君
警視総監米村 敏朗君
生活文化スポーツ局長秋山 俊行君
都市整備局長只腰 憲久君
環境局長有留 武司君
福祉保健局長安藤 立美君
産業労働局長佐藤  広君
建設局長道家 孝行君
港湾局長斉藤 一美君
会計管理局長三枝 修一君
交通局長金子正一郎君
消防総監小林 輝幸君
水道局長代理水道局総務部長小山  隆君
下水道局長今里伸一郎君
青少年・治安対策本部長久我 英一君
東京オリンピック・パラリンピック招致本部長荒川  満君
病院経営本部長中井 敬三君
中央卸売市場長比留間英人君
選挙管理委員会事務局長矢口 貴行君
人事委員会事務局長中村 晶晴君
労働委員会事務局長関  敏樹君
監査事務局長白石弥生子君
収用委員会事務局長野口  孝君

六月一日議事日程第一号
第一 第百七号議案
  平成二十一年度東京都一般会計補正予算(第一号)
第二 第百八号議案
  特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三 第百九号議案
  市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四 第百十号議案
  都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例
第五 第百十一号議案
  東京都都税条例の一部を改正する条例
第六 第百十二号議案
  東京都都市整備局関係手数料条例の一部を改正する条例
第七 第百十三号議案
  東京都建築安全条例の一部を改正する条例
第八 第百十四号議案
  東京都福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例
第九 第百十五号議案
  東京都女性福祉資金貸付条例の一部を改正する条例
第十 第百十六号議案
  東京都産業労働局関係手数料条例の一部を改正する条例
第十一 第百十七号議案
  東京都営空港条例の一部を改正する条例
第十二 第百十八号議案
  警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第十三 第百十九号議案
  特別区の消防団員の定員、任免、給与、服務等に関する条例の一部を改正する条例
第十四 第百二十号議案
  都立多摩職業能力開発センター(二十一)新築工事請負契約
第十五 第百二十一号議案
  都立大田桜台高等学校(二十一)改築及び改修工事請負契約
第十六 第百二十二号議案
  都立品川地区養護学校(仮称)(二十一)改築工事請負契約
第十七 第百二十三号議案
  東京消防庁本部庁舎(二十一)空調設備改修工事請負契約
第十八 第百二十四号議案
  平成二十一年度若洲橋(Ⅱ期)鋼けた製作・架設工事請負契約
第十九 第百二十五号議案
  防護服セット外四点の買入れについて
第二十 第百二十六号議案
  ヘリコプターの買入れについて
第二十一 第百二十七号議案  都税還付加算金還付請求控訴事件に関する上告受理の申立てについて
第二十二 地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都都税条例等の一部を改正する条例の報告及び承認について
第二十三 地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター中期計画の認可の報告及び承認について

   午後一時開会・開議

○議長(比留間敏夫君) ただいまから平成二十一年第二回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(比留間敏夫君) まず、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   十五番 小竹ひろ子さん 及び
   七十番 倉林 辰雄君
を指名いたします。

○議長(比留間敏夫君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(鈴木省五君) 平成二十一年五月二十五日付東京都告示第八百十四号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、同日付で、本定例会に提出するため、議案二十一件の送付がありました。
 次に、地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都都税条例等の一部を改正する条例外一件の報告及び承認について、依頼がありました。
 次に、都議会説明員について、水道局長東岡創示は病気療養のため、本定例会は総務部長小山隆が代理出席するとの通知がありました。
 次に、平成二十年度東京都一般会計予算外四件の明許繰越について、平成二十年度東京都一般会計予算外二件の事故繰越について及び平成二十年度東京都中央卸売市場会計予算外七件の繰り越しについて、それぞれ報告がありました。
 次に、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づく専決処分について、報告が二件ありました。内容は、警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例の報告について並びに訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告についてであります。
 次に、監査委員より、例月出納検査の結果について報告がありました。
 また、監査結果に基づき知事等が講じた措置に関する報告がありました。
 次に、包括外部監査の結果に基づき知事が講じた措置の通知内容について、提出がありました。
(別冊参照)

○議長(比留間敏夫君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から六月五日までの五日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(比留間敏夫君) ご異議なしと認めます。よって、会期は五日間と決定いたしました。

○議長(比留間敏夫君) 次に、議員の表彰についてお諮りいたします。
 九十五番桜井武君、百十九番三田敏哉君、百二十七番渡辺康信君及び百十六番佐藤裕彦君には、東京都議会議員として、多年にわたり地方自治の確立と都政の進展のために貢献せられ、その功績はまことに顕著であります。
 本議会は、その功労を多とし、表彰することにいたしたいと存じますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(比留間敏夫君) ご異議なしと認めます。よって、本議会は、以上の諸君を表彰することに決定いたしました。
 お諮りいたします。
 表彰文は議長に一任せられたいと存じますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(比留間敏夫君) ご異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 これより、議長において起草いたしました表彰文により表彰いたします。
    表彰状
            桜井  武殿
 あなたは東京都議会議員として
 多年にわたり
 常に都政の発展に貢献され
 その功績はまことに顕著であります。
 ここに永年の功労を多とし表彰します。
   平成二十一年六月一日
               東京都議会
   〔拍手〕

    表彰状
            三田 敏哉殿
 あなたは東京都議会議員として
 多年にわたり
 常に都政の発展に貢献され
 その功績はまことに顕著であります。
 ここに永年の功労を多とし表彰します。
   平成二十一年六月一日
               東京都議会
   〔拍手〕

    表彰状
            渡辺 康信殿
 あなたは東京都議会議員として
 多年にわたり
 常に都政の発展に貢献され
 その功績はまことに顕著であります。
 ここに永年の功労を多とし表彰します。
   平成二十一年六月一日
               東京都議会
   〔拍手〕

    表彰状
            佐藤 裕彦殿
 あなたは東京都議会議員として
 多年にわたり
 常に都政の発展に貢献され
 その功績はまことに顕著であります。
 ここに永年の功労を多とし表彰します。
   平成二十一年六月一日
               東京都議会
   〔拍手〕
 なお、表彰状の贈呈につきましては、議長において取り計らいたいと存じます。ご了承願います。

○議長(比留間敏夫君) この際、知事より発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 平成二十一年第二回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に関する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。
 ただいま、多年にわたり都政に貢献された四名の議員の皆様が表彰をお受けになりました。都政の発展に尽くされた功績に対して深く敬意を表し、心からお喜びを申し上げます。
 さて、世界は文明の発展に伴い時間的、空間的に狭小となっており、メキシコで発生した新型インフルエンザも瞬く間に地球規模で流行し、日本でも多くの方々が罹患されました。
 人、物、情報の結節点である日本の首都東京において、新しい感染症に十全に対処することは、都民、国民の生命と健康を守るだけでなく、この国の頭脳部、心臓部を守ることでもあります。
 都では、発生後直ちに発熱相談センターを立ち上げ、都民からの相談に二十四時間体制で応じるとともに、都内の全保健所や感染症指定医療機関等に抗インフルエンザウイルス薬や防護服を配備いたしました。一般の患者との接触を防ぎながら感染者を診察する発熱外来も、都内六十七カ所に設置したほか、都内の医療機関や学校などにも都独自のウイルス監視の網をかけ、感染者発生の早期把握に努め、感染の拡大防止に取り組んでおります。
 これまでも東京は、発生が時間の問題とされている強毒型鳥インフルエンザを想定して、東京都新型インフルエンザ対策行動計画を設定しており、国に先駆けて抗インフルエンザウイルス薬を四百万人分備蓄するなど、重層的な手だてを積極的に講じてまいりました。こうした備えがあったからこそ、迅速で着実な対応ができたのであります。
 今回のウイルスの毒性は通常のインフルエンザ並みであり、備蓄済みの抗インフルエンザウイルス薬も有効であります。こうした特性を踏まえ、都民、国民の安全と都市機能の維持とのバランスに腐心しながら柔軟に対処しております。
 一方で、感染の過程でウイルスの毒性が強まることも懸念されることから、医療体制の充実強化を急がなければなりません。都は、新たに感染症緊急対応病床を東京都保健医療公社が運営する豊島病院と荏原病院に速やかに整備いたします。医療機関との連携もさらに強化しながら、都民、国民の生命と健康を守るため、東京の持てる力を結集して、対策に万全を期してまいります。
 都民の皆様には、正確なわかりやすい情報を迅速に提供いたします。引き続き冷静な行動をお願いいたします。
 地球温暖化もまた、人類が直面する危機であります。現代文明が繁栄を謳歌する一方で、地球環境の異変は深刻の度を増しております。世界各地で頻発する海面上昇や激しい干ばつは、人々から生きる場所もすべも奪い、そうした人々が置かれた劣悪な衛生状態や医療の不足は、新しい感染症の温床ともなりかねません。
 感染症が発生し世界に拡散すれば、人と物のグローバルな流れは寸断され、未曾有の経済危機からの脱却は、とんざいたします。地球温暖化を逆手にとって経済発展を目指す機運も急速にしぼむに違いありません。
 地球温暖化は、新しい感染症の流行や経済危機にマイナスの相乗効果をもたらしながら、致命的な事態へと人類を追い込むのであります。
 先般、韓国のソウルで開催されました世界大都市気候先導グループ、C40の総会に出席し、すべての国を国際的枠組みに参加させるべく、COP15に向けて大都市が各国政府に求めていくことを呼びかけてまいりました。また、排出量取引市場の国際的な連携を目指す国際炭素行動パートナーシップ、ICAPへ、このたび都市として東京は世界で初めて加盟いたしました。その活動を通じて、東京の先進的な施策を強く発信してまいります。
 CO2の劇的な削減には、火力発電所や大規模な工場だけではなく、資源エネルギーを多量に消費している都市のありようの変革が不可欠なのであります。都は、既にオフィスビルなどを含めた大都市ならではのCO2排出総量の削減義務化を導入し、太陽エネルギー利用機器や次世代自動車の普及にも率先して取り組んでおります。ここで得た経験やノウハウを、この秋に、実務者を集めて開催する都市型キャップアンドトレード東京ワークショップを通じて、惜しみなく世界に提供してまいります。C40とICAPの両方に唯一加盟する東京からCO2削減の新しいフォーマットを提起し、変革の輪を世界に広げてまいります。
 新型インフルエンザや地球温暖化にとどまらず、さまざまな危機に対して東京から警鐘を鳴らしてまいりました。そして、危機の本質を冷静にとらえ、大きな視点に立ちながら戦略的に、迅速に行動してまいりました。行動を通じて実現を目指しているもの、それは東京と日本の再生であり、二十一世紀の主役である都市のモデルを完成し、未来を切り開くことなのであります。
 そのためにも、現下の経済危機を打開し、都民、国民の不安を解消しながら、東京と日本の新しい発展やさらなる成熟へと導く布石を着実に打たなければなりません。将来を見据えた東京ならではの施策を、引き続き渾身の力で展開してまいります。
 また、先般、国が打ち出した経済危機対策は、多くの部分を地方にゆだねていることから、都は、対策の効果を最大にし、日本のダイナモとしての役割を十全に果たすべく、補正予算案を編成し本定例会に提案いたしました。都民、国民に未来への希望を取り戻し、二十一世紀の都市モデルの造形を揺るぎなく進めてまいります。
 これまでも、日本経済の力の源泉である小零細企業のために、さまざまな支援策を切れ目なく講じてまいりました。しかし、直近四半期のGDPが戦後最悪の落ち込みとなるなど、小零細企業の苦境は続いております。
 そこで、経営支援融資の枠を大幅に拡大するなど、資金繰りに万全を期してまいります。売り上げの減少に見舞われた小零細企業の販路開拓も支援するなど、多角的に対策を講じてまいります。
 雇用情勢も、有効求人倍率や失業率に急激な悪化が見られ、雇用調整は非正規雇用から正規雇用にまで及んでおります。早期の再就職のために、求人と求職のマッチングをよりきめ細かく実施いたしてまいります。
 職業訓練も、人材の需要が大きい介護やIT分野を中心に対象者数を七倍に拡大し、意欲のある方々の再挑戦を支えてまいります。
 経済危機は、都民、国民の不安を高めております。こうしたときこそ、安心と安全の確保に全力を尽くさなければなりません。
 子どもを安心して産み育てることのできる環境づくりは、この国の未来をも左右する焦眉の課題であります。産科、小児科医師の絶対数が不足する中でも、都は、医師会や医療機関と連携して現場に根差した工夫を凝らし、周産期連携病院を八カ所指定したほか、スーパー総合周産期センターを三カ所スタートさせております。庁内プロジェクトチームも、先ごろ国に対して、周産期医療が必然的に赤字となる実態を抜本的に解消するように要求いたしました。
 さらに、小児医療体制を拡充するため、新しく休日、夜間の診療を開始する医療機関に対して、都独自の助成をスタートいたします。小児科医師を医療機関に派遣する大学への支援も国に先行して実施し、医師のさらなる確保を図ってまいります。
 これまで、大都市の実情に即した認証保育所制度を創設して子育てに欠かせないサービスに育て上げるなど、都民の保育ニーズに積極的にこたえてまいりました。国も、都の施策を遅まきながら認めて、認証保育所の開設準備経費などに対する国の財政負担が実現したのであります。昨今の経済情勢の悪化もあって、保育ニーズはますます高まっております。そこで、今年度の保育所等の整備目標数を五千三百人分から八千人分に引き上げ、保育サービスを一層拡充させてまいります。
 三月、群馬県の未届け有料老人ホームで火災が発生し、都内から入居していた利用者も被害に遭われる極めて残念な事態となりました。
 現在、都内の類似施設を生活保護受給者約三百人がやむなく利用しております。これまでも、法に定められた届け出を求め、都が独自に定めた運営ガイドラインの遵守を指導してまいりました。今回の事態を受け、スプリンクラー等の整備を支援しながら届け出を強く促し、施設への指導も一層強化して利用者の安心と安全を確保してまいります。
 また、都外の類似施設も都内の生活保護受給者約五百人が利用していることから、区市が施設の所在する自治体と連携して、利用者の生活状況の把握や改善等に取り組むことを支援してまいります。
 現在、都が管理する橋の多くは高度経済成長期に建設され、早晩、一斉に耐用年数に達し、かけかえが一時的に集中しかねません。そこで、三十年先をも見通した橋梁の管理に関する中長期計画を策定いたしました。
 都は、橋梁の定期点検を通じて継続的に蓄積してきた膨大なデータを生かし、独自の新しい管理手法を編み出しております。これを用いて、すべての橋の安全を確保しながら長寿命化とかけかえ時期の平準化を図り、経費も大幅に圧縮してまいります。
 今後は、トンネルなどにも同様の手法を拡大してまいります。安心・安全を確保しながら既存のインフラを最大限活用した環境負荷の少ない都市づくりのモデルを示し、国と全国自治体をリードしてまいります。
 東京が、快適で利便性の高い都市へと変貌を遂げ、日本のダイナモであり続けるためには、戦略的に都市基盤を整備しなければなりません。とりわけ外環道は、東京から全国に延びる高速道路をつなぐハブの役割を担うものでありまして、整備後には関越道から東名高速までの所要時間が現在の五分の一の約十二分にまで短縮されるなど、大きな効果があります。
 これまで、国に強く働きかけ、実務者協議会の場でも精力的に交渉を重ねた結果、四月下旬にようやく国の国土開発幹線自動車道建設会議が開催され、整備計画が策定されました。これにより、ようやく着工にめどがつき、今回、初めて予算を計上するに至ったのであります。
 今後は、現場を熟知する強みを生かし、国の用地取得業務を都が積極的に引き受けるなど、国と連携して円滑に事業を進め、早期完成を目指してまいります。あわせて、予算計上した区部環状線や多摩南北道路の整備、京急線京急蒲田駅や京王線調布駅付近での連続立体交差事業などとともに、道路ネットワークの充実を加速し、都市機能を向上させてまいります。
 東京や首都圏の持つ豊かな潜在力を開花させ、日本の国際競争力の強化にも直結する羽田空港の再拡張、国際化も、国との交渉によりまして前進しております。羽田からの昼間の国際便の就航距離を限定する不合理な国の方針も、都の主張によって撤回されることとなりました。再拡張を待つことなく、本年十月に北京へ就航することが決まりました。また、国の経済危機対策にC滑走路の延伸も盛り込まれ、羽田と欧米を結ぶ大型機の就航に弾みがつきました。
 今後、昼間の国際線の増加や就航都市の拡充、滑走路の着実な整備を国に強く求め、羽田空港の再拡張、国際化を推進してまいります。
 今日の急速なIT化の進展により、良好な情報通信環境は欠かせない社会資本ともなっております。都内で唯一、情報通信手段が通信衛星に限られている小笠原諸島に海底光ファイバーを敷設し、高速インターネットや地上デジタル放送にも対応できるような環境を整備してまいります。
 こうした社会資本の整備とともに、「十年後の東京」計画で描いた都市像を具体化する取り組みも着々と進めております。七月を目途に東京の新しい都市づくりビジョンを改定いたします。低炭素型で水と緑のネットワークで形成された美しい景観を有する東京へと変革する多面的な都市づくりを、全庁を挙げて推進してまいります。
 東京と日本の未来を切り開いていくためには、次の世代の力を伸ばし、可能性を引き出していかなければなりません。現在の子どもは、親の世代と比べて体格は上回っているものの、体力が大きく低下しております。しかも、東京の子どもは全国体力調査の平均を著しく下回っておりまして、極めて憂慮すべき状態にあります。これは、日本の将来の担い手の活力や健康状態の低下をも意味しております。
 今後十年間で、子どもたちの体力が最も過去に高かった昭和五十年代の水準まで回復することを目標にして、取り組みを新たにスタートいたします。子供の体力向上推進本部を設置し、綿密な実態調査を行い、現場に根差した発想や専門家の英知を生かして次の世代を鍛えてまいります。
 子どもの体力向上とあわせて、障害のある若者たちのために、本年九月、東京二〇〇九アジアユースパラゲームズを日本で初めて開催いたします。三十の国と地域から約一千人が参加し、陸上や車いすテニスなどの六つのパラリンピック正式競技で力と技を競い合います。参加する一人一人の若者が大きな喜びと将来への糧を得るだけでなく、都民、国民にもいい尽くせぬ感動をもたらす舞台となるように準備し、大会を成功させてまいります。
 また、この大会を、障害者スポーツを日本とアジアでさらに普及させる起爆剤にして、二〇一三年の東京国体と一体として開催する全国障害者スポーツ大会や、二〇一六年のパラリンピックの成功にもつなげてまいります。
 先月、視覚と聴覚に重複した障害のある盲ろう者の交流や学びの拠点として、全国で初めての東京都盲ろう者支援センターを開設いたしました。
 光からも音からも閉ざされた方々が他者とのかかわりを取り戻すことができるよう、指点字やパソコンを学ぶ機会を提供するほか、専門指導員の養成にも取り組んでまいります。また、社会への参加も後押しし、家族の相談にも応じるなど総合的な支援を行って、この国の福祉政策の新しいモデルをつくり上げてまいります。
 次に、オリンピック・パラリンピックの招致について申し上げます。
 四月にIOC評価委員会を迎え、「日本だから、できる。あたらしいオリンピック・パラリンピック」の開催理念や計画について説明し、確かな手ごたえを感じました。今月十七日から十八日までは、ローザンヌでのIOC委員に対する開催計画説明会に出席いたします。東京大会が世界初のカーボンマイナスオリンピックを実現するほか、平和にも寄与し、スポーツを通じて友情と連帯をはぐくんでいくことをIOC委員に訴えてまいります。
 近代柔道の創設者である嘉納治五郎が、アジアから初めてIOC委員に就任してから百年を経た本年の五月、氏の名前を冠した嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センターが民間主導により設立されました。
 嘉納は、高等師範学校の校長などを務め、徳育、知育のほかに体育にも重点を置いた教育に心血を注いだ、日本のすぐれた先人であります。体育によって若者たちを健全に教育するという方法論を通じて近代オリンピックの創設者クーベルタン男爵と親交を持つに至り、一九一二年の第五回ストックホルム大会への日本初参加や、残念ながら幻に終わりましたが、一九四〇年の東京大会の招致などにつながったのであります。
 そして、百年後の今、スポーツを通じて若者たちの教育に没頭した先人の精神を受け継ぎ、二〇一六年の東京大会は、物質的な豊かさと引きかえに価値の基準が溶けた日本にあって、将来を担うべき子どもたちがたくましく生きていくための礎となる心の財産を贈ってまいりたいと思います。また、環境や平和など人類が直面する困難な問題についても、日本が誇る最先端の環境技術や平和を希求する国民の心を生かし、五輪の聖火とともに人類の新しい未来をともしていきたいと思います。
 招致実現をかち取り、二十一世紀の坂の上の雲をつかむために、都民、国民、都議会の皆様のご支援を賜りながら、最後の最後まで全力を尽くしてまいりたいと思います。
 本定例会は、都議会の皆様にとりまして現任期最後の定例会となります。皆様とは、真摯な議論を交わして数多くの先進的な施策を生み出し、成果を上げることができたと思っております。困難な時期にあって都政の発展に力を尽くされたことに、心より感謝を申し上げます。
 現任期を最後に勇退される方々には、これまでのご苦労に対し、都民を代表して改めて深く敬意と感謝の意を表します。また、改選を迎える皆様には、心よりのご健闘をお祈りいたします。
 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、予算案一件、条例案十二件など、合わせて二十三件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。
 以上をもちまして所信表明を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(比留間敏夫君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○六十七番(宇田川聡史君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会されることを望みます。

○議長(比留間敏夫君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(比留間敏夫君) ご異議なしと認め、さよう決定いたします。
 明日は、午後一時より会議を開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後一時二十八分散会

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