平成二十一年東京都議会会議録第三号

○議長(比留間敏夫君) 三十八番吉倉正美君。
   〔三十八番吉倉正美君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○三十八番(吉倉正美君) 最初に、東京の住宅政策、とりわけ都営住宅の今後のあり方について質問いたします。
 東京が都市として発展してきた歴史的経過の中で都営住宅が果たしてきた役割は、極めて大きなものがあります。ヨーロッパの都市が市街地に集合住宅を確保してきたように、東京の都市形成の過程の中で、人々が住み続ける都営住宅が都市の核をなしてきたことは事実であります。
 都市とは、そこに人が住んでいることが基本であり、住宅は都市を形づくる重要な要件であります。今や、都民が安心して住める住宅の提供、住環境の整備は重要な政策課題となっております。
 現在、東京には、都営住宅を初めとする公共住宅のストックが多く存在しております。人口減少や少子高齢化、環境問題への対応が求められる中、こうした公共住宅ストックも視野に入れ、今後の東京の住宅政策について、知事の所見を伺います。
 今日、多くの都営住宅では高齢化が進み、住民の過半数が六十五歳以上で、単身高齢者の方が多いため、緊急時の対応を初め、防犯や清掃活動などの自治会活動に携わる役員の方々が大変苦労されている実態があります。例えば新宿区の百人町アパートなど、建てかえにより建設された大規模な団地では、こうした状況が顕著であることから、限界集落などとやゆされておりますが、その対応には、広くまちづくりの視点に立った取り組みが不可欠であると考えております。
 入居者の高齢化が進む現状を踏まえ、大規模な住宅の建てかえにおいては、人々が安心して住み続けられる住環境の多面的、総合的な整備を進めるべきであります。見解を伺います。
 また、大規模な都営住宅の建てかえに当たっては、定期借地権の活用とともに、民間活力の導入を積極的に行うなど、都営住宅の敷地内に診療所や食品スーパー、あるいはコンビニ等を誘致できるような環境づくりを推進すべきであります。
 こうした取り組みにより、住民の交流を含めた地域コミュニティの再生が可能となり、生き生きとした都営住宅に生まれ変わることができると考えております。
 昨年完成した港区の港南四丁目地区では、都営住宅の建てかえとあわせた民活プロジェクトの実施により、分譲マンション約八百戸の建設と同時に、スーパー、診療クリニック等の施設を住宅敷地内に整備しており、大変喜ばれていると聞いております。
 この民活プロジェクトにより整備された施設は、高齢化が進む都営住宅の居住者や地域住民にとって、日常生活の利便性を大きく向上させるものであります。
 都は今年度から、建てかえ対象となる都営住宅の範囲を昭和四十年代建設の団地まで拡大したところですが、港南四丁目のような民活プロジェクトが可能な大規模団地は、新宿区の戸山ハイツを初め、都内各所にあり、今後、積極的に取り組みを進めていくべきであります。見解を伺います。
 都営住宅の居住者の高齢化の進展に対しては、建てかえ時の公共施設の整備や民間施設の誘致など、ハード面での対応だけではなく、ソフト面における血の通った施策を的確に実施していくことが重要であります。
 その対策の一つが、高齢者世帯と子ども世帯が近くに住めるようにすることです。高齢の親の近くに子ども世帯が住むことで、高齢者も元気になり、子どもの育児の応援もしてもらえる、家族のきずなも一層深めることができる。このように、都営住宅に、大きな意味で家族という概念を組み入れるべきだと考えます。
 都は、親子触れ合い住みかえ募集を年間四十戸実施しておりますが、募集する住宅の立地条件や規模などが希望と合致しない場合が多く、募集した住宅で入居まで至る件数は半分程度にとどまっている実態があります。今後、この制度がさらに要望に即して活用されるよう、きめ細やかな対応と工夫をすべきであります。見解を伺います。
 次に、障害者の雇用と就労について伺います。
 都の障害者雇用率は、五年前の一・三%台から、現在一・五%と改善の兆しを見せてはいるものの、依然として法定雇用率の一・八%には達しておりません。景気が急速に後退し、戦後最大の経済危機がいわれる中で、さらなる雇用情勢の悪化が懸念されています。こうした状況だからこそ、弱い立場の障害者の雇用の維持、拡充を積極的に推進していくことが強く望まれており、とりわけ都は、そのリーダーシップをとるべきであります。
 今、知的障害者と精神障害者の雇用を促進する都のチャレンジ雇用制度が期待されています。そこで、都のチャレンジ雇用の今年度の実績と来年度の目標、さらに、都の今後の障害者の雇用、就労に向けた取り組み方針を伺います。
 チャレンジ雇用により、障害者の方々が仕事に対する自信と挑戦する意欲を身につけることができますが、その経験とスキルを、さらに就職先企業といかに結びつけるかが大きな課題であります。
 現在、企業とのマッチングは、都独自の事業として区市町村に障害者就労支援センターを設置して支援の効果が期待されていると聞いておりますが、まだ都内すべての区市に設置されているわけではありません。今後、全区市に障害者就労支援センターの設置が促進されるよう、具体的な支援を実施すべきであります。
 また同時に、就職先企業に対してセンターの支援内容を丁寧に紹介するなど、広報面での取り組みも進めるべきであります。あわせて見解を伺います。
 平成十七年第四回定例会で、私は、知的障害者の方々の働く場を都が率先して提供すべきであるとして、都営地下鉄の駅構内に障害者団体の出店を提案いたしました。昨年の港区の大門駅に続き、あす二十六日には、新宿区の若松河田駅に、障害者の方々が働くパンとコーヒーの店がオープンする運びとなっています。これは障害者の方々の自立と雇用を支援する取り組みが一歩前へ進むものとして、高く評価するものであります。
 今後も、障害者の方々の働く場が一層拡大されることを強く要望するものでありますが、あわせて、平成二十一年度における駅構内の店舗の設置予定について明らかにされたいと思います。
 次に、中小河川の整備について伺います。
 都心の暴れ川といわれた神田川は、これまで五〇ミリ対策が着実に進められてきており、水害被害の減少と安全性の向上が図られております。しかし、平成十七年九月に発生した、時間雨量最大一一二ミリ、総雨量二六三ミリの記録的な集中豪雨では、濁流がうねりを上げて護岸を襲い、川が決壊するなど、周辺住民に大きな被害と恐怖を与えました。
 こうした状況に対して、現在、急ピッチで河川激甚災害対策特別緊急事業が進められております。そこで、神田川、妙正寺川のこれまでの整備状況と、妙正寺川の激特事業の進捗並びに今後の見通しについて伺います。
 ハード対策は着実に進められておりますが、近年、時間雨量五〇ミリを超える豪雨の回数は増加しており、決して安心できる状況ではありません。
 平成十七年の豪雨災害の教訓として、河川水位の上昇を予測し、洪水のおそれを知らせる洪水予報があれば、どれほど不安と被害が軽減できたかとの切実な声が今なお多く寄せられています。都は、神田川において洪水予報の準備を進めていると聞いておりますが、ぜひ早期に運用を開始すべきであります。
 また、こうした防災情報は、住民にいかに迅速かつ的確に伝えるかが重要であり、NHKを初め民放各社のテレビを活用して広く周知することも極めて効果的であります。早期の実現を図るべきと考えます。あわせて所見を伺います。
 最後に、淀橋市場について伺います。
 私の地元新宿区の淀橋市場は、昭和十四年から業務が行われている、長い歴史を持つ卸売市場であります。新宿副都心に隣接していることから、利便性が高く、青果物の市場としては、大田、築地市場に次ぐ都内第三位の取扱量を誇る市場であります。
 まず、淀橋市場のこれまで果たしてきた役割と都民生活における重要性について、都の認識を伺います。
 淀橋市場は住宅地にあり、敷地も狭く、施設の老朽化が進んでおります。卸売市場整備計画では、場内動線や仲卸業者、売り場等の配置を見直し、必要な施設整備を行うとしておりますが、市場機能の活性化のためにも、できる限り早期に、関係する業者の要望を踏まえながら建設に着手すべきであります。具体的な整備内容とスケジュールを明らかにされたいと思います。
 生鮮食料品の流通にあっては、その品質管理が最も重要であり、生産から消費に至る中間地点である卸売市場におけるコールドチェーン、すなわち低温を保つ物流方式の保持が不可欠であります。
 淀橋市場では、卸売業者が卸売り場の一部の低温化を進めておりますが、全体の取扱量に比べて、現状の設備規模は決して十分とはいえません。コールドチェーンに対応した施設整備が早期に可能となるよう、都は積極的に支援すべきであります。
 見解を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 吉倉正美議員の一般質問にお答えいたします。
 今後の東京の住宅政策についてでありますが、少子高齢化や環境問題などのさまざまな課題解決を図るためには、公共住宅を含む既存住宅のストックを有効に活用することが重要であります。
 都はこれまでも、都営住宅の適切な維持更新を図るとともに、その建てかえに際し創出した用地について、民間事業者の活力を生かしながら、良質な住宅供給や良好な住環境の形成に取り組んでまいりました。
 また、民間住宅が長期にわたり活用される市場環境の整備などにも努めてまいりました。
 今後とも、公共住宅ストックを活用したセーフティーネット機能の向上など、都民の住まいの安全・安心を確保するとともに、世代を超えて住み継がれる住宅まちづくりを推進するために、住宅政策を総合的に展開していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕

○都市整備局長(只腰憲久君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、大規模な都営住宅の建てかえ時の住環境の整備についてでございますが、大規模な都営住宅は地域のまちづくりの拠点となることから、建てかえに当たっては、老朽化した住宅を更新するとともに、高齢化の進展に対応した福祉サービスの充実など、地域の課題に配慮し、住環境の整備を図ることが重要でございます。
 このため、都はこれまでも、地元区市と連携し、地域のコミュニティ活動の拠点となる集会所等を整備するとともに、高齢者在宅サービスセンターなどの整備を支援してきました。
 今後とも、敷地の有効利用により生み出された用地を生かし、まちづくりと連携した事業の推進に取り組んでまいります。
 次に、大規模な都営住宅の建てかえにあわせた民間活用事業の推進についてでございますが、建てかえにより生み出した用地については、都民共有の貴重な財産であることから、民間事業者の創意工夫も引き出しながら、地域の特性を踏まえたまちづくりに活用していくことが重要でございます。
 これまで四地区において民間活用事業を実施しており、現在は中央区の勝どき一丁目地区で実施しておりまして、良質な賃貸住宅の供給とあわせ、地域に開放された子育て支援施設、診療所、商業施設などの整備を行い、にぎわいと活力にあふれたまちづくりに取り組んでおります。
 今後とも、団地の状況を勘案しながら、民間活用事業を積極的に行うことにより、地域のまちづくりを推進してまいります。
 最後に、親子触れ合い住みかえ募集の活用促進についてでございますが、この制度は、一定の条件のもとで都営住宅の居住者に住宅変更を認めることにより、親世帯と子世帯の近居を可能にするもので、平成十二年度から実施し、これまで募集の回数や戸数をふやし、制度の拡充に努めてまいりました。
 今後とも、この制度について一層の周知を図るとともに、立地条件や規模等について、利用希望者の実情をより細かく踏まえた募集を行うことなどにより、この制度の活用が一層進むよう努めてまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 二点につきましてお答えいたします。
 雇用にチャレンジ事業についてでありますが、今年度、福祉保健局と産業労働局の両局におきまして、知的障害者と精神障害者十二人を四カ月間雇用いたしました。来年度は、雇用人数を十六人に、雇用期間を六カ月に拡充してまいります。
 また、これまで、区市町村にも雇用にチャレンジ事業の実施を働きかけ、一部で実施されており、今後、民間企業等にも取り組みを促してまいります。
 さらに、昨年十一月に策定いたしました東京都障害者就労支援行動宣言に基づきまして、ハローワーク、就労支援機関、特別支援学校、企業などにより地域の就労支援ネットワークを構築し、障害者の就労を一層促進してまいります。
 次に、区市町村障害者就労支援センターについてでありますが、現在、四十三区市で運営されており、都は、設置区市に対しまして、運営費の補助を行うなどの支援を行っております。
 このセンターでは、就労面と生活面の支援を一体的に提供し、障害者の企業等への就労を促進するとともに、地域開拓促進コーディネーターを配置し、就労先企業の開拓などにも取り組んでおります。
 今後、平成二十三年度までに、すべての区市町村での設置を目指してまいります。
 また、来年度は、センターの支援内容などを紹介するDVDを作成し、企業等へ周知することにより、センターの活用を促進してまいります。
   〔交通局長金子正一郎君登壇〕

○交通局長(金子正一郎君) 障害者が働く駅構内店舗についてお答えをいたします。
 障害者の方々が自立した社会生活を営む上で、就労の場を確保することは重要なことであり、交通局では、経営計画において、都営地下鉄駅の構内に障害者が働く店舗を三年間に三店舗設置する目標を掲げ、地元区等と連携して取り組みを進めてまいりました。
 ただいまお話がありましたように、平成十九年度には、第一号店を大江戸線大門駅に設置いたしましたが、第二号店は、明日、大江戸線若松河田駅に開店する予定でございます。
 平成二十一年度は、三田線高島平駅と浅草線人形町駅への設置を目指し、現在、関係区と協議を進めておりまして、これにより、合計で四店舗設置できる見込みでございます。
   〔建設局長道家孝行君登壇〕

○建設局長(道家孝行君) 河川に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、神田川、妙正寺川の整備状況と、妙正寺川激特事業の進捗並びに今後の見通しについてでありますが、神田川などの中小河川におきましては、河道の拡幅に加え、分水路や調節池の設置により、五〇ミリ降雨に対する整備を進め、水害の早期軽減を図ってまいりました。この結果、平成十九年度末の治水安全度は、神田川が九二%、妙正寺川が四九%となっております。
 妙正寺川激特事業につきましては、環七から新宿区の落合調節池までの三・九キロメートルの区間で順調に工事を進めております。当該事業区間は二十一年度に完了し、十七年九月と同規模の豪雨に対応できることになります。このことで、妙正寺川全体における治水安全度は、五六%へと七ポイント向上いたします。
 次に、神田川における洪水予報の運用と効果的な周知についてでありますが、神田川では、これまで水害が発生しており、洪水時における都民の避難行動などに役立つ情報を迅速かつ的確に提供することが必要であります。
 このため、都は、急激に水位が上昇する神田川において、一時間後の河川水位を予測し、洪水のおそれがあるときに気象庁と共同で発表する効果的な洪水予報の準備を進めてきており、本年三月から運用を開始いたします。
 都民への周知につきましては、共同発表を受け、地元区市が防災行政無線や広報車で行うほか、放送各社により、テレビテロップ等で広く情報提供される予定であります。
 今後とも、河川整備を推進するとともに、洪水予報などのソフト対策を充実し、都民の安全確保に努めてまいります。
   〔中央卸売市場長比留間英人君登壇〕

○中央卸売市場長(比留間英人君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、淀橋市場のこれまで果たしてきた役割とその重要性についてでございます。
 淀橋市場は、新宿や中野、杉並など、城西地域を中心とする都内有数の消費エリアを背景として、昭和十四年の開設以来、都民に新鮮な青果物を供給し、伝統ある卸売市場として発展してまいりました。特に昭和三十年以降は、都の西部地域における人口増加や新宿副都心の業務需要に対応するなど、地域の中核市場としての役割を果たしてきております。
 淀橋市場は、現在、取扱数量が平成二十年の実績で二十七万トンと、都内中央卸売市場の一二%を占めており、また、売買参加者が約八百人と利用者も多く、重要な卸売市場でございます。
 次に、淀橋市場の整備内容とスケジュールについてでございます。
 淀橋市場では、市場の活性化に向けた物流改善及び環境対策を目的として、リニューアル整備事業を計画してございます。
 この整備事業では、老朽化した仲卸業者売り場棟を改築し、その跡地を駐車場として活用することにより、場内の物流改善を図ります。また、防音壁の改修や屋上緑化など、周辺環境にも十分配慮してまいります。
 スケジュールは、平成二十一年度から既存スロープの解体工事、埋蔵文化財調査などを行った上で、平成二十三年度から仲卸業者売り場棟の建設に着手することとしております。
 敷地狭隘の中での工事となるため、今後、関係業界の理解と協力を得ながら、円滑に整備ができるよう努めてまいります。
 次に、淀橋市場におけるコールドチェーンに対応した施設整備についてでございます。
 生鮮食料品を取り扱う卸売市場におきましては、食の安全・安心を確保するため、品質管理の高度化が重要であり、商品特性に応じた温度管理を可能とする施設整備の推進が今日求められております。
 淀橋市場では、平成十七年度に、都が電力増強の工事を行った上で、卸売業者が保冷設備の工事を行うなど、都と関係業界が協力して低温卸売り場の整備を進めており、卸売り場の約二〇%が低温化されております。
 市場取引にとって不可欠な卸売り場の低温化を早期に進めるため、現在、コールドチェーンに対応した施設整備のあり方を検討しており、その結果を踏まえ、淀橋市場を初め、各市場の卸売り場の低温化に取り組んでまいります。