平成二十一年東京都議会会議録第二号

       午後六時十七分開議
○副議長(石井義修君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百七番中嶋義雄君。
   〔百七番中嶋義雄君登壇〕

○百七番(中嶋義雄君) 都議会公明党を代表して質問をいたします。
 よもやこれほど閉塞感に満ちた年になるとは、だれも想像しなかったに相違ありません。それほどに現在の不況は深刻であります。知事の施政方針表明ではありませんが、人々は先行きを見通すことができず、まさに不安と危惧、いら立ちを募らせております。
 昨年末から年明けにかけて、私は、何人もの人から、日本あるいは東京の将来展望を示せと迫られたことがございます。景気対策や中小企業支援、環境、福祉など、当面する課題への対処はもちろん重要でありますが、それとともに不可欠なのは、閉塞感を打ち破るに足る先行きへの展望であります。
 一つには、東京の新たなまちづくりであります。
 下水道を例にとれば、長年かけて一〇〇%普及、概成に至った一方で、初期に整備した施設は既に更新工事が必要となったことに象徴されるように、折しも東京は、すべての都市インフラや施設の更新時期にこれから差しかかろうとしております。今後十年、二十年、三十年をかけて、都市の更新という新たなまちづくりが不可欠となりました。そうであれば、後藤新平氏の構想を矮小化してしまった過去の過ちを繰り返してはなりません。
 底の知れぬ深刻な不況の今こそ、改めて大都市東京の更新という前代未聞の大事業に対して、防災、環境、福祉という新たな観点を加味した、あり得べき東京の将来像を思い描いて都民に提示すべきであります。知事の所見を伺いたいと思います。
 そして、もう一点は、国や自治体あるいは社会総体の統治、運営のあり方についての展望が必要であります。地方分権との言葉に手あかがついてしまった現況は残念でなりません。市町村合併も、最近は、その負の側面がより多く指摘をされております。国の統治のあり方から根本的に見直すためには、もはや単なる分権論ではなく、いわゆる道州制の導入を前提とした議論を前に進めるべきであります。
 ある意味で、道州制の議論は、東京都や二十三区、そして多摩の市町村にとって一種のタブーでありました。しかし、時代を画するほどの経済変動に直面した今、それを超越するためにも、国と自治体のあり方を根源的に見直し、将来の東京のあり方の展望を示すべきであります。
 司馬遼太郎氏は、かつて繰り返し、日本は太政官政府から一歩も脱皮していないと指摘をしました。そうであるならば、自治体の雄としての東京から、太政官政府を超えた国と地方のあり方を発信すべきであります。知事の見解を求めたいと思います。
 次いで、財政問題について質問いたします。
 一橋大学の教授であった経済学者の野口悠紀雄氏は、日本の不況は単なるサブプライム問題の波及ではなく、戦後長く続いた日本経済の構造的なゆがみが原因であり、それを解決しない限り、経済の再生は不可能との見解を示しております。もしもそうであるならば、現在の不況は循環論でとらえてはいけないことになります。もちろん、一日も早く不況を脱却する努力を全力で展開すべきでありますが、都政を預かる観点からは、楽観的な見通しは排除してかかるべきであります。
 その意味で、一般会計は対前年度比三・八%減としたものの、政策的経費である一般歳出を二・九%増の四兆五千四百二十二億円とし、しかも、財源として使用可能な基金残高を一兆三千八百八十億円としたのは評価すべきであります。
 当面の福祉医療対策、雇用、中小企業支援、さらに、必要な都市インフラの整備にも予算を配分し、生活の安全・安心、都市機能の拡充を着実に進め、その一方で、来年度以降の財政にも目配りをきかせていると我々は判断いたします。これを可能としたのは、東京都並びに我々公明党を初め議会が推進してきた行財政改革であり、また基金の積み立て努力であります。
 しかし、問題は、繰り返しますが、新年度はもちろん、それ以降であります。二十一年度予算編成における基本的な方針並びに今後の都財政の見通しをベースとした都政運営のあり方について、まず知事の見解を伺います。
 振り返ってみれば、石原知事が就任された十年前、都財政は瀕死の状態にありました。そこで、我が党が提案した新たな公会計制度などを知事が積極的に取り入れ、あわせて堅実な財政運営を行うことにより、難局を乗り切ってまいりました。今後は、より以上に都民生活の向上に直結する施策の着実な実施と、それに必要な財源確保策を同時に達成させる努力が不可欠であります。
 公会計制度のより高度な活用を図るなどの工夫が必要となりますが、効果的な施策の実施と財源確保の両立について、都の見解を伺いたいと思います。
 次に、「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇九について質問いたします。
 冒頭、今こそ東京再構築の長期展望を示せと申し上げましたが、既に都は、「十年後の東京」計画を提示し、その実行プログラムも、二〇〇八年版から二〇〇九年版へと改定いたしました。
 私が必要と訴えた長期展望は、もう少し息の長い、二十年、三十年、五十年先の東京を視野に入れた将来像の提示を意味します。当然、それには時間がかかり、その間はこの「十年後の東京」計画が重要になります。
 そうした前提で、特に申し上げたいことは、現在の深刻な経済状況を踏まえて、前倒しが必要なものは大胆に取り組むべきであるということであります。
 これまでも、障害者雇用の一万三千人確保やインターネットカフェ等で生活する人を支援する相談窓口の創設など、成果を上げてまいりましたが、新型インフルエンザや医療、雇用、中小企業などの危機に対して果敢に挑戦していくべきであります。知事の決意を伺いたいと思います。
 さらに、都内の渋滞解消、また生活道路への大量の車の進入防止に大きな効果があり、同時に、景気、雇用対策、仕事確保にも効果が期待できる外環道の整備も重要であります。国も、いわゆる国幹会議開催の検討に入ったと報道がなされ、四十年おくれの事業にも、ようやく先行きのめどが立ちました。既に答弁が出ておりますが、上下の分離など、住民の理解を得ながら事業に着手していくことを強く求めておきたいと思います。
 次に、中小企業支援策について質問いたします。
 現在、地域経済を支える中小企業は、急激な景気悪化に見舞われ、受注の極端な減少、めどが立たない資金繰りなど、まさに存亡の瀬戸際に立たされております。特に、昨年秋から国が実施している緊急保証制度でも、対象から外れる中小企業が深刻な状態に追い込まれております。例えば、急激な売り上げ減少により、やむなく返済条件の緩和を行った企業や、また、信用保証協会の保証枠を使い切ってしまった企業などは新規の融資を受けることができません。
 こうした中で、都が平成二十一年度予算案に新規事業として盛り込んだ、地域の金融機関と連携した新たな金融支援策に対しては、大きな期待があります。制度の目的は、あくまでも、従来の融資制度では対象外となった中小企業などに資金を供給するものでなくてはなりません。都の見解を求めたいと思います。
 また、景況は、今後さらに悪化する可能性が高いといえます。したがって、この新たな融資制度の発足を急ぐべきであります。都の見解を求めます。
 第二に、中小企業設備リース事業について質問いたします。
 都は、さきの補正予算において中小企業設備リース事業を創設いたしました。現在、設備リースの対象企業を従業員百人以下の中小企業に限定しています。しかし、設備投資を拡大させるには、対象をさらに広げる必要があります。また、この事業によって中小企業の省エネ設備の導入が進めば、個々の中小企業のエネルギーコストの削減だけでなく、地球温暖化防止にも貢献することになります。
 こうした観点から、中小企業設備リース事業を活用していくべきでありますが、あわせて都の見解を求めます。
 次に、定額給付金について質問いたします。
 定額給付金の実施については、国の第二次補正予算の成立を受け、既に区市町村へとその舞台が移り、都民への給付金の総額は、試算すると約千八百八十億円に上ります。
 経済危機への対策として、企業への金融支援、雇用創出への取り組み、公共事業の前倒しなどが必要ですが、同時に家計部門への支援策が不可欠であり、その意味で定額給付金は重要であります。また、施策の進め方を工夫することで、商店街など地域における消費拡大にも大きな効果が期待されます。
 定額給付金の実施にあわせ、一定割合の金額を上乗せしたプレミアム商品券の発行を予定している自治体や商工団体がふえております。そこで、このプレミアム商品券を計画している全国の状況と都内の状況について明らかにしていただきたいと思います。
 商品券の発行には、さまざまな経費がかかります。こうした負担を少しでも軽減することで、発行にさらに弾みがつくはずであります。つまり、これに新・元気を出せ商店街事業の補助を適用すれば、商店街の負担を軽減させ、給付金を活用した地域の消費拡大につながっていくと考えます。都の見解を求めたいと思います。
 次に、雇用対策について伺います。
 東京の有効求人倍率は、平成二十年二月の一・四四倍から十カ月連続して減少し、十二月には一・〇四倍となり、一倍割れも懸念される状況になりました。また、失業率も上昇しており、弱い立場にある障害者や女性などの就職に悪影響が出ると危惧されております。
 都議会公明党は、昨年、第四回定例会の代表質問において、障害者や女性などに対する雇用対策の充実に取り組むよう主張をいたしました。したがって、今回の平成二十年度補正予算及び平成二十一年度当初予算には、その趣旨が生かされているはずであります。
 そこで、当該予算に盛り込まれた、新たな障害者並びに女性の雇用対策について、その内容を明らかにしていただきたいと思います。
 特に障害者雇用について、都は、十年後に障害者雇用三万人増という目標を掲げ、福祉、教育、雇用の連携により、一年間で一万三千人増という高い実績を上げました。
 今後は、景気状況が悪化する中で、障害者の雇用環境も極端に厳しくなるおそれがあります。障害者雇用対策の今後の取り組みについて見解を求めます。
 また、都は、さきに東京緊急対策Ⅱを策定し、雇用対策の加速化を図ってまいりました。特に、昨年十二月の補正予算においては、都が二十万人、区市町村が三十万人、合わせて五十万人分の雇用を確保すると明示いたしました。しかし、いまだその具体像がよく見えません。改めて、都の二十万人分の雇用確保について答弁を求めたいと思います。
 さらに、都は、公共事業を前倒し発注することも発表いたしました。発注工事の全体像を明らかにし、中小企業支援の効果についても見解を明らかにしていただきたいと思います。
 また、本年一月の厚生労働省の公表によると、昨年十月から今年三月末までの期間で、非正規労働者等を対象に実施済み、または実施予定のいわゆる雇用どめは、全国で十二万五千人、都内では二千七百人に上っております。県別では愛知県の二万人が突出して、東京都は全国で十八番目となっております。
 都は、既に職業訓練の経費や訓練受講中の生活費等を支援する取り組みを開始しています。しかし、都内には、近隣のアパート等の一部を借り上げて社宅としている小規模事業所が多く、今後、中小企業の経営不安が一層深刻化していけば、都内でも居住不安が広がっていくおそれは十分にあります。
 その点、都が二十一年度から実施する一千名の介護人材育成事業は、民間住宅の借り上げによる住宅支援を組み込んだものであり、高く評価できます。
 つまり、今後は、定住の保障がなければ就労支援事業も効果が出ない場合も想定できます。したがって、都は、居住という側面にも配慮した新たな就労支援策を検討していくべきであります。都の見解を求めます。
 就労促進に伴う住宅支援に関連して、都営住宅の適正な活用方法について質問いたします。
 建てかえ予定の都営団地の空き部屋を離職者住宅として活用するという意見がありましたが、しかし、建てかえを前提にその住居から退去した居住者や同じ団地に住む人たちにすれば、建てかえがおくれることに対する大きな不安が生じることになります。
 また、現在、空き家募集の倍率は全国で最も高く、繰り返し申し込みを行い、抽せんに当たることを待ちわびている人たちが数多く存在します。
 都民の共通の貴重な財産である都営住宅の活用のあり方については、多くの都民が納得できる明確なルールのもとに進めていくべきであると考えますが、都の見解を求めたいと思います。
 次に、安心して産み育てられる環境の整備について質問いたします。
 まず、分娩環境の整備についてであります。
 東京都の出生数は、この二十年、年間十万人前後とほぼ横ばいで推移しているのに対し、分娩を取り扱う都内の施設は、平成二年に三百九十四施設あったものが、平成十七年には半分以下の百九十二施設に減少しております。これではとても安心して出産できる状況とはいえません。
 こうした事態に対応するため、都は、地域の産科医院などの正常分娩施設とハイリスク分娩に対応する周産期母子医療センターの中間に、ミドルリスク分娩を担う地域医療機関として周産期連携病院を創設し、この三部門をネットワーク化するとしております。
 しかし、正常分娩施設が今後も減少し続けると、ミドルリスク分娩施設、ハイリスク分娩施設への負担が増大し、その結果として、周産期母子医療センターなどの機能が十分に発揮しなくなる可能性があります。
 そこで、こうした事態を未然に防止するために、周産期連携病院に対する必要な支援を行いながら、地域の医療連携システムの構築に取り組んでいくべきであります。
 また、あわせて、この周産期連携病院を医師確保のための医師奨学金制度の対象とすべきであります。都の見解を求めます。
 分娩取扱医療機関の負担を軽減するには、妊婦の状況を的確に判断してリスクを軽減していく、いわゆるリスク管理も重要であります。妊娠初期から母体、胎児の健康管理をきめ細かに行うことによって、リスクを伴う出産の確率を低減させることができます。また、そうした分野の知識や経験が豊富な助産師の活用を積極的に推進すべきであります。
 そこで、院内助産所や助産師外来を実施する医療機関を計画的にふやすために、都の支援策を強化すべきであります。見解を求めたいと思います。
 一方、安全・安心の出産と密接に関係する妊婦健診について、公明党は助成制度の実現に取り組んでまいりました。このたび、我々の強力な推進により、十四回の公費負担に向けて、国の妊婦健診臨時特例交付金制度や、都による妊婦健診支援基金が創設されることになりました。
 現在、都内でも十四回の公費負担に至っていない区市町村がありますが、新年度から一律に十四回の公費負担が実施されるよう、都としても積極的に働きかけるべきと考えます。見解を求めたいと思います。
 次に、待機児童の解消について質問いたします。
 都は、「十年後の東京」において待機児童五千人の解消を目標として掲げ、二十年度から二十二年度の三カ年で、従来の一・五倍のペースで保育定員の増大を図る取り組みを始めましたが、それでも待機児童の増加に追いついていない状況にあります。局面打開のためには、これまでにない思い切った施策が必要であります。
 具体的には、区市町村や事業者が待機児解消に取り組みやすくなるよう都の支援メニューを拡充することであり、また、都有地を活用して施設数の拡大を図るなど、ハード面の支援強化が必要であります。さらに、家庭福祉員増員や、一度退職した保育士の発掘、再雇用、また研修の充実など、保育人材の確保策にも全力を挙げるべきであります。都の見解を求めたいと思います。
 次に、感染症対策と乳幼児の予防接種について質問いたします。
 今、世界じゅうを震撼させている新型インフルエンザ対策について、都は、平成二十二年度までに、約八百万人分のタミフル、リレンザを備蓄する計画を明らかにしました。
 一方、従来の季節性インフルエンザの毎年の感染実態を見ると、抵抗力の弱い乳幼児から小中学生への感染率が顕著であり、新型インフルエンザにおいても、子どもたちへの治療薬の確保が急務であり、早急に対策を講じるべきであります。
 また、新型インフルエンザについては、子どもたちにも正しい知識と対策を学ばせ、感染拡大防止などを家庭でも話し合う機会を設けるなど、意識の啓発事業を積極的に推進すべきであります。あわせて見解を求めたいと思います。
 次に、感染症対策に関連して、インフルエンザ菌b型、Hib対策について質問いたします。
 小児細菌性髄膜炎を引き起こすHibは、せきやくしゃみなどの飛沫を介して血液や肺の中に入り込み、脳や脊髄を冒す恐ろしい細菌であります。症状が乳幼児の風邪に似ているため、見分けが難しく、早期の診断が難しいとされております。その上、治療がおくれると死に至ったり、重度の後遺症が残るなどの深刻な事態につながります。
 毎年、全国で約六百名の子どもが発症しております。現在、世界百カ国以上でこの病気に有効なHibワクチンの接種が行われ、Hib髄膜炎は百分の一に激減しております。
 ところが、日本ではこのHibワクチンの接種が行われておりません。我が国では昨年末、ようやくこのHibワクチンの販売が開始されました。これを機に、区市町村に対する補助制度にこのHibワクチン接種を組み入れ、あわせて、その有効性について意識の啓発を行い、普及促進に当たるべきであります。都の見解を求めたいと思います。
 また、細菌性髄膜炎のもう一つの原因菌とされる肺炎球菌や季節性インフルエンザなども含め、広範な感染症対策としての予防接種助成制度の拡充が望まれております。都は、予防接種事業を積極的に支援すべきであります。都の見解を求めたいと思います。
 次に、子育て世帯への住宅支援について質問いたします。
 我が党は、昨年九月の第三回定例会で、子育て支援策としての住宅政策の重要性を訴えました。都営住宅においては、今後、昭和四十年代に建設された住宅までを対象として建てかえ事業が進展していきます。
 そこで、今後の建てかえにあっては、土地の有効活用を図る高層化に取り組み、現居住者の円滑な転居を優先しながらも、建てかえ後の住宅の一部を子育て世帯向けの募集対象住宅として活用すべきであります。都の見解を求めます。
 都は、都営住宅の公募において、子育て世帯向けの期限つき入居の戸数を年々拡大し、平成二十年度は五百戸としております。しかし、急激な少子化に対応するには、この募集戸数を大幅に拡大することが急務であります。
 この期限つき入居申し込みにおいては、極めて高い都営住宅の入居申し込み倍率を考慮し、一般世帯向け公募戸数に影響を与えることがあってはならないと思います。あわせて都の見解を伺いたいと思います。
 次に、高齢者への支援策について質問いたします。
 急性期を脱した後の医療施設として、都は、療養病床を現在の二万一千三十三床から平成二十四年度末までに二万八千七十七床へ、七千床余り増床する目標を掲げ、一般病床から療養病床への転換に対する施設整備費補助を行っているところであり、評価するものであります。
 これに加え、急性期を脱した後の都民の選択肢を確保する上で、在宅医療体制の整備が喫緊の課題であります。平成十八年の保健医療に関する世論調査では、約半数の都民が在宅療養を希望していますが、その八割は、容体急変時の対応が困難との理由から実現は難しいとしています。そのため、容体急変時の対応の手段を地域で確保するとともに、容体安定後には速やかに在宅に戻れるようにする在宅医療基盤の整備が何よりも重要となります。
 そこで、地域において在宅医療を担う医師や訪問看護師による連携、そして緊急一時入院先である身近な病院と在宅医療スタッフ側との連携を進め、都民が安心して在宅療養生活を送れるようにするべきであります。都の見解を求めたいと思います。
 同様に、安心して高齢者の方が在宅生活を送るためには、地域の中での見守りや声かけが不可欠であり、そのための日常的なシステムを構築する必要があります。その意味では、世田谷区で厚生労働省が実施したモデル事業、二十四時間安心コール事業が有効であります。
 東京は、今後数年で、人口の四人に一人が高齢者となり、ひとり暮らし高齢者や高齢世帯も急増することが予想され、こうした方々が安心して暮らせる体制の整備が急がれております。これは、本来区市町村が行うべき事業でありますが、都としても積極的に支援すべきであります。都の見解を求めたいと思います。
 また、こうしたひとり暮らし高齢者などに対する支援は、地域住民やボランティアで対応できる部分が少なくありません。そこで、ひとり暮らし高齢者などの支援については、地域住民の支え合い機能を高めていくよう、地域のボランティアの積極的な活用を図っていくべきであります。都の見解を求めます。
 次に、公社住宅における高齢者支援策について質問いたします。
 高齢者が申し込む公社の一般賃貸住宅の空き家募集は、比較的に低い家賃の住宅が多いといわれています。ところが、低家賃の公社住宅のほとんどは、構造上、エレベーターを設置しにくい階段式住宅となっております。当然、こうした階段式住宅の空き家募集においては、一、二階の低層階に人気が集中します。
 高齢者、障害者、長期疾病患者、さらには妊婦や幼児を家族に抱える家庭は、より一層切実に低層階への入居を希望していますが、その希望は実はなかなかかなえられません。
 そこで今後、東京都は、階段の昇降が困難であることが明らかな世帯については、新規申し込み、あるいは既入居の別を問わず、公社の空き家募集において優先的に低層階への入居が可能となる制度を検討すべきでありますが、見解を伺いたいと思います。
 次に、障害者自立支援法の抜本改正の動きについて質問をいたします。
 自立支援法は、三障害の一元化、就労支援の強化や地域生活の促進、サービスの利用の手続や基準、負担の透明化、そして、国の財政責任の明確化などが目的の制度であります。
 しかし、一方で、負担の応能性やサービス提供事業者の経営安定への配慮、障害区分判定の適切性などの点で、いまだ改善の必要性が指摘されております。
 自立支援法の抜本改正は、早ければ今通常国会でも予定されています。都は、昨年に実施された負担軽減策の恒常化など改善点を取りまとめて、国に強く申し入れるべきであります。見解を求めます。
 また、障害者福祉の現場では、人材確保のためにも賃金水準の引き上げが課題であります。その点、二十一年度の国の予算案でサービス報酬が平均五・一%増額されたことは評価できます。
 しかし、これは、サービス内容の質的向上を導くインセンティブとして設定されたものであり、基本単価自体は余りふえておりません。このままでは、大都市の実情を反映した障害福祉サービス従事者の賃金の改善につながらないおそれが生じてまいります。
 したがって、都は、二十二年度予算以降も引き続き適切にサービス報酬の改定が実施されるよう、具体的な改善項目を取りまとめ、国に提示すべきであります。見解を求めます。
 障害区分判定のあり方は、障害種別特性への対応など解決すべき課題が多く、障害福祉の現場からは、拙速な改正は、柔軟な対応や工夫が阻害されるとの危惧が聞かれます。例えば、調査項目が何百項目にも膨れ上がり、審査過程の複雑化を招いてしまうことや、障害区分の細分化が進み、障害区分と利用可能なサービスが結びつかなくなることへの懸念等があります。
 同じ内容の障害でも、生活環境の相違によって、障害者が必要とする支援内容は大きく異なってまいります。その意味では、障害者が生活環境の中でどのような支援を必要としているのかを的確に把握し、それによって利用できるサービス内容を決定できる仕組みを目指していく必要があります。
 都は国に対し、利用者がその個別性に応じてサービスを選択できる仕組みへの転換を求めるべきであります。見解を求めたいと思います。
 次に、地球温暖化防止について質問いたします。
 都は、大規模CO2排出事業所に対して削減義務を課し、一方、家庭に対しては太陽エネルギー利用機器設置に補助金を出して普及に努める方針であります。
 こうした都民や事業者への働きかけを行う上で重要なことは、都庁みずからも率先して、省エネルギー、再生可能エネルギーの導入を図ることであります。
 都は、平成十九年五月に省エネ東京仕様二〇〇七を定め、今後、施設の建設、改築などの場合には、省エネ建築、設備を標準仕様として採用していくこととしましたが、これに加え、再生可能エネルギーに関しても、都は具体的なルールを定めるべきと考えます。見解を求めます。
 次に、中小規模事業所に対する地球温暖化対策報告書制度についてであります。
 事業者、特に中小企業の間では、都の制度に対応しようとしても、その方法がわからないといった声がよく聞かれます。特に中小規模事業所の報告書制度は、全く新たに開始される制度であり、制度の内容についての丁寧な説明が必要であります。
 中小規模事業所に対し、省エネ支援策の内容も含め新制度の周知を進めるべきであり、さらに、中小企業の問い合わせに対応するワンストップの相談窓口を検討すべきであります。見解を求めます。
 次に、自動車部門の温暖化対策について質問いたします。
 地球温暖化対策を進めていく上で、自動車から排出されるCO2の削減は極めて重要であります。都ではこれまで、低公害車の普及を図ってまいりましたが、今回提案されている条例改正案では、低公害性に低燃費性の観点を加えた車両の導入促進を図ることとしています。
 ことしの夏以降販売が予定されている電気自動車やプラグインハイブリッド車は、これまでの車に比べCO2の排出が格段に少なく、環境性能にすぐれております。しかし、その走行性能等について十分な周知がなされておらず、走行距離に不安があるなどの声も聞かれます。さらに、ユーザーが安心して使用するためには、充電設備などの環境整備が不可欠であります。
 こうした観点から、次世代車の普及に向けては、実用性の周知を図るとともに、急速充電設備を設置するための新たな支援策が必要と考えますが、都の見解はいかがでありましょうか。
 次に、エコポイントシステムについて質問いたします。
 次世代車の普及とともに、公共交通機関の利用を促進することは、環境負荷低減の取り組みとして有効であります。そこで、都営地下鉄やバスにエコポイントシステムの導入を図るべきであります。
 例えば、平成十九年三月の導入開始以来、既に多くの都民に普及しているICカード、PASMOを活用して、都営地下鉄やバスの利用時にポイントを付与し、たまったポイントを再び公共交通の利用に充てるか、あるいはまた、自然保護や環境保全に貢献できるような仕組みがあれば、都民の環境配慮行動への大きなインセンティブとなります。
 そこで、都営交通における新たなICカードを活用したポイントシステムの導入を求めたいと思いますが、都の見解を伺います。
 次に、築地市場の豊洲移転について質問いたします。
 技術者会議が報告をまとめる直前に、発がん性物質ベンゾ[a]ピレンが高濃度で検出されたことや、新たな地層データを公表していなかったと報道され、都民の不信感をあおってしまったことは極めて残念であります。
 まず、この問題について、事実経過と汚染土壌処理に与える影響について明確な答弁を求めたいと思います。
 我が党は、移転問題を原点に戻って検討するためにPTを設置し、これまで、築地市場を初め新市場予定地、他の移転候補地、重層構造の大阪中央卸売市場、二カ所の汚染土壌洗浄プラント事業所、また中温熱処理プラントなどを訪れ、実態を調査してきました。
 そこで明らかになったことは、まず、営業を続けながらの現在地再整備は、かつて一度断念した経緯があることに加え、アスベストの処理や、二十年にも及ぶ工期の長期化、また、工事に不可欠な種地の確保が困難などの問題があることが明らかになりました。
 また、財政的には、移転跡地の売却収入を見込むことができず、財源の市場会計内での処理が不可能であり、新たに六百億円から七百億円単位の税の投入が必要になってまいります。
 次に、四十ヘクタール以下の土地での新市場整備では、必然的に市場は重層構造となり、動線が複雑化して、短時間に集中する荷さばきが不効率となります。さらに、建設費とランニングコストの上昇が市場利用料にはね返り、結果的に、仲卸を初めとする業者の経営を圧迫することが明らかとなりました。
 こうした調査検討の結果からは、移転を前提とした新市場の整備が合理的であり、財源の手当ても、市場会計内ですべて処理が可能で、新たな税の投入も必要なく、納税者の納得も得られやすいと判断できました。
 したがって、検討すべき課題は、移転候補地である豊洲の汚染土壌の問題に集約されます。さらに要約すれば、技術者会議が選定した処理工法が適切であるのかどうか、処理コストは一体幾らかかるのかが焦点となります。公明党のPTの議論も、最後はそこに絞られました。
 しかし、考えてみれば、これはあくまでも専門的な学者、技術者の知見に依存すべき事柄であり、その意味で、専門家会議と技術者会議の検討と結論を尊重して議論すべき性質の問題であります。食の安全を確保する上でも、専門家の知見は不可欠であります。
 技術者会議の報告は、まずコストについては、当初の六百七十億円から八十億円以上縮減可能としています。処理方法については、既に施工例のある微生物処理、水処理、中温熱処理等で汚染除去を行い、地下水についてもすべて汚染処理をする方針を示しています。
 こうした技術者会議の報告を尊重したいと考えておりますが、我々はむしろ、移転か否かの入り口の議論に終始するのではなく、今後、少なくとも五十年以上は使用する市場については、一体どのような機能を付与すべきであるのか、あるいはまた、首都圏三千万人の食生活を支える新市場は、その立地、機能などを含めどうあるべきであるのか、さらに、世界最高水準の多様な食材を集める新市場から、どのような市場の文化、食の文化を発信するのかといった議論こそ、この都議会で展開すべきであると思います。
 さらにつけ加えるならば、供給の主体者である卸、仲卸などの業者の方々が、いかにスムーズに新たな市場での営業を継続できるのか、そのための方策は一体何かといった議論が必要であると考えております。そうした議論を積み重ねた上で、都は新市場の整備方針を固めていくべきであります。
 改めて、都の築地市場の現状に対する認識と新市場整備に関する基本的な考え方、さらには、新たな食の文化、市場文化の発信、にぎわい創出等について都の見解を求めたいと思います。
 次に、新銀行東京について質問いたします。
 今月十七日、新銀行東京は、開業後二年間の営業悪化に対する旧経営陣の法的責任及びその責任追及について、外部専門家の調査報告を発表しました。そこでは、仁司元代表執行役及び丹治元執行役に関し、危機的なデフォルトを発生させる経営上の原因を生じさせ、しかも、それに対する抜本的な対策を講じなかったとして、会社法における重大な善管注意義務違反に当たると認定いたしました。
 これを受けて新銀行東京は、この両氏に対して、民事上の損害賠償請求訴訟の提起を取締役会で決議いたしました。ようやく公表された調査報告書においては、訴訟の時期、賠償請求額には、残念ながら触れておりません。
 たび重なる我が党の質問に対して、昨年末までには調査結果をまとめるとしながら、おくれにおくれて出てきた報告がこれでは、まさに画竜点睛を欠くといわざるを得ません。再度、旧経営陣の責任追及に関して知事の見解を求めたいと思います。
 今回の調査結果では、詐欺的な要素が認められる融資が存在すると指摘し、その場合は、融資先及び元従業員等に対する個別の法的措置を検討すべきであるとしていますが、これについても、新銀行東京は、今後の対応を明確化して都民に提示すべきであります。都の見解を求めたいと思います。
 今回の経営責任の追及の範囲は、約一千億円の累積損失のうち、不良債権処理費用三百四十五億円分についてのみであります。しかし、損失の発生の原因はそれだけではありません。発足当初、新銀行東京はシステムの開発に莫大かつ過剰な経費を投入したと各方面から指摘されており、既に公表された決算書からも、そのことは十分に類推できます。
 こういった不良債権処理以外の累積損失についても分析を徹底して行い、必要に応じて法的措置をとるべきであります。都の見解を求めたいと思います。
 次に、新銀行東京の平成二十一年三月期の第三・四半期決算について質問いたします。
 新銀行東京は、厳しい経済環境の中、中小企業者支援の積極的な営業活動を展開した結果、中小企業に対する営業実績が、第二・四半期の三十八億円に対して、第三・四半期は百二十億円と、およそ三倍に伸ばしたと発表しました。したがって、再建計画より、純利益は二十八億円、純資産は五十億円上回りました。
 今後は、さらに経済環境は厳しくなると予想され、平成二十一年三月期決算は再建計画どおりの結果となるのかどうか、不安視する向きもあります。
 そこで、新銀行東京の経営の監視と支援を行っている東京都として、平成二十一年三月期決算の見通しを明らかにし、あわせて、そのための経営監視の体制を強化すべきであります。都の見解を求めたいと思います。
 都議会公明党は、新銀行東京の再建計画を着実に進め、黒字化した後に、譲渡もしくは業務提携等により、追加出資の四百億円を回収あるいは保全すべきであることを改めて確認しておきたいと思います。
 最後に、オリンピック・パラリンピック招致に関して質問いたします。
 招致実現に向けて、今まで以上に国内世論の盛り上げが不可欠であります。そのために、オリンピックの魅力を体感できるイベントなども必要であります。例えば、オリンピックやパラリンピックに出場した選手たちと都内の子どもたちが、たいまつリレー、聖火リレーを行うなどのイベント、ムーブメントも検討すべきであります。
 子どもたちが参加しての招致活動について、都の見解を求めたいと思います。
 さて、最近、とみにオリンピック招致に対する期待の声が高まっております。メディアは連日不況の深刻化を伝え、国の内外にわたる閉塞感、不安感が募っています。そこに一点の光明をともすものこそ、オリンピック招致の実現であるといえます。
 私は、都の教育委員を務めるマラソンの瀬古利彦氏が議会を訪れて、私はオリンピックにあこがれて、マラソンでオリンピックに出場することができた、同じ夢と希望を今の子どもたちにぜひ与えてくださいと強調されたことが忘れられません。
 社会総体のエネルギーを増進させる有効な方策の一つが、文化でありスポーツであります。その意味で、オリンピックはまさに象徴的な人類の財産であり、それを再び日本に呼ぶことができることは、最高の子どもたちへのプレゼントとなります。
 その難しい戦いの先頭に立つのが石原知事であります。ぜひ乾坤一てきの戦いにかけて、オリンピックを必ず招致するとの強い決意を表明していただきたいと思います。
 知事の決意を伺い、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 中嶋義雄議員の代表質問にお答えいたします。
 この現代における東京の将来像についてでありますけれども、ある意味で、東京ほど特異な都市は世界にないと思います。昼間人口の集中度だけではなくて、すべての面で集中、集積が進み過ぎたといわれるほど進んでおりまして、こういった集中、集積の進んだ都市は他にめったにないと思います。
 それは、さまざまな便宜性、メリットというものを都民に与えておりますけれども、例えば羽田空港のように、東京のダウンタウン、中心街に近い空港は世界に存在しませんですね、大都市に。それから、二十三区に限っていいましても、あれだけのかなり広大な面積に、地下鉄も含めまして、とにかく電車の駅がこれほど数の多い都市は世界にございません。
 あるいは、先般も、ミシュランという世界的な権威の機関が都市の食べ物の魅力について評価いたしましたが、聞くところ、この夏、再びミシュランは日本にやってきてレストランの評価をするようですけれども、これは何も絶対的なものといいませんが、恐らくまた数がふえて、ミシュランなる一応の権威が星を与えるレストランの数というのは、恐らく世界一になると思います。
 いずれにしろ、外国から日本にやってこられた方で何人かの表敬訪問を受けましたが、その人たちで東京というものを評価しない人はいないぐらい。これは、しかし、都知事である私に対する一種のお世辞もあるかもしれません。
 ただ、私自身は参議院のころから丸の内の外人記者クラブのアソシエートメンバーでおりますが、あそこに新規にやってきて何カ月かたった若い外国の新聞記者、通信員に意見を聞きましても、私の表敬にやってこられて東京を評価する方々と全く同じことをいわれるわけでありまして、これは相対的な意味でも信用のできる評価だと思います。
 現に、昨年ですか、フランスの有力紙が世界で最も住みやすい都市というものを抽出しまして、東京は三番目でありましたが、ほかの都市は、いってはなんですけど、比較的小さな国の小体な、しかし、まとまった都市でありますが、これだけの人口を持つ大都市の中でああいう評価を受けた東京というのは、やはり相対的に非常に意味合いの高い存在だと思います。
 その都市を、この新しい世紀を迎えた現代で、文明批判の視点からとらえて作成しました十年計画、十年後の計画というものを今遂行中でありますけれども、これは決して間違いでもございませんし、環境というものを主眼に置いた十年計画でありますが、もしこれが完成されれば、私は、八年後になりますけど、かなり住みやすい、もっと住みやすい、都民に満足していただける、世界に誇れる都市につくり直していくことができるんじゃないかと思います。
 加えて、東京を中心にした首都圏というものの意味合いはますます大きくなってきておりますが、いろんな整備がこれからも必要でありましょう。首都圏という、東京の物流というものを海上を通じて支えている東京港、川崎港、横浜港プラス幾つかの港が東京湾にございますけど、こういったものの合理化、統一というものもこれから必至のことでありますし、既にそれは発進しておりますが、いずれにしろ、そういったものを加えて、今後、水と緑の回廊に包まれた美しいまちというものを近未来の現実としてつくり上げていきたいと思っております。
 ご指摘のとおり、都市インフラの更新は重要な課題でありまして、東京にとっては、より美しく安全で安心できる都市として一層成熟するためのチャンスでもあります。地球環境の問題の解決を導く低炭素型都市への脱皮や、若者たちに将来の日本を担う礎ともなる心の財産を贈り得る東京オリンピック・パラリンピックの開催など、五十年、百年先の東京と日本のためにもなる政策を、今、私たちの責任で強く進めていかなきゃならないと思っております。
 都政を預かる者として、お互いに常に歴史や文明の大きな流れを見きわめつつ、都民、国民に将来の展望を指し示しながら重層的に取り組みを進めまして、子孫に胸を張って引き継ぐことのできる、世界の大都市の範となるような東京を造形していきたいと思っております。
 次いで、国と地方のあり方でございますが、おっしゃるとおり、太政官制度から綿々と続いてきた中央官僚の支配体制というものは、戦後の復興期から高度成長期における我が国の発展には一定の役割を果たしましたが、情報時代という文明の成熟期を迎えた今日の日本社会においては、もはや有効性を失っていると思います。
 交通機関や情報基盤が飛躍的に整備されまして、地域間のつながりが緊密化するとともに、行政課題も広域化しておりますが、明治以来の都道府県の枠組みは何ら変わっていないわけでありまして、そうした状況の中で道州制の議論が出てくることも当然だと思います。
 ただ、都はこれまでも、首都圏特有の広域行政というものをこなしてまいりました。そういったものを踏まえて、これからも国に提言するなど、首都圏住民全体のための政策を実現してきましたし、また、していきたいと思っております。
 友人でありました、道州制問題の調査の責任者でありました、亡くなりましたが、諸井君が最終的に東京にやってきまして、東京が呼びかけてやっております首都圏での広域行政というものを聞いて、非常に参考になったが、なっただけに、かえってまた新しい問題が出てきて、非常に自分は頭を痛めているという話をしておりましたけれども、途中で亡くなりました。
 いずれにしろ、私たちが今やっている首都圏における広域行政というものを、やっぱり一つのよきサンプルとして国にも教示し、これからの道州制も含めた日本の再整備のためのよすがにしていけたらと思っております。
 次いで、二十一年度予算と今後の財政運営についてでありますが、今回の予算編成では、深刻化する経済危機の荒波からいかにして都民の生活を守り、危機克服に向けた活路を切り開いていくかが課題でありました。
 このため、財政再建によって培いました力を駆使しまして、都政が今なすべき役割を確実に果たしていくことによって都民へ安心をもたらし、希望も指し示すことを基本として予算編成を行いました。
 その結果、二十一年度予算は、眼前の危機に果断に対処しつつ、東京に新たな活力を造成して、二十一世紀の都市モデルの実現に向けた歩みを着実に進めていくものとしまして、都民の期待に十分こたえるものになったと確信をしております。
 今後、都財政を取り巻く環境が一層激しさを増すことも予想されますが、新たな公会計制度も活用しまして、都財政体質の強化に不断に取り組みまして、いかなる状況においても都民の生活を守っていく決意に立って、積極果敢な都政の展開を実現し得る財政運営を行っていきたいと思っております。
 次いで、実行プログラム二〇〇九の効果的な展開についてでありますが、「十年後の東京」計画では、東京で生活するすべての人が年齢や障害の有無にかかわらず自立して安心して暮らせる、意欲のあるだれもがチャレンジできる社会を目指すべき都市像として描いております。
 この目標の実現に向けて、これまで、保育サービス一万五千人分の緊急整備や、働く意欲のある方々の再挑戦を支えるTOKYOチャレンジネットの創設などに取り組んでまいりました。
 今回改定した実行プログラムでは、医師不足が深刻化する多摩・島しょ地域において、公立病院などに都が採用した医師を派遣するとともに、雇用状況の急速な悪化に対して、実効性のある雇用対策として、非正規雇用者向けの職業訓練の対象年齢を拡大するなど、都民の生命や生活を守る分野の取り組みについてもさらに充実させてまいります。
 今後、実行プログラムに掲げました意欲的な取り組みを遂行することで、だれもが安心して暮らせる、住み心地のよい二十一世紀の都市モデルへと進化させる確かな歩みを進めていきたいと思っております。
 次いで、新銀行東京の旧経営陣の責任追及でありますが、新銀行東京は、今回の外部調査報告を受けまして、既に旧経営陣に対して訴訟を提起する方針を決定しております。
 訴訟に勝つためには、損害賠償請求額の算定を初め、周到な準備を行うことが必要でありまして、新銀行東京は、これが整い次第、速やかに対応するものとしておりまして、司法の場で責任の所在が明らかになることを刮目してまいります。
 次いで、オリンピック・パラリンピック招致についてでありますが、戦後六十年以上にわたり、一貫して平和を堅持してきた日本で再び東京大会を開催することは、世界平和の実現に大きく貢献し、民族、国家の協調をさらに培い、世界を一つに結んでいく大きなよすがになると思います。
 日本の誇る最先端技術を駆使しまして、世界初のカーボンマイナスオリンピックを実現し、スポーツを通じて、全世界が直面している課題の解決を目指したいと思っております。
 さらに、パラリンピックを通じて、人格と個性を尊重し合う共生社会を目指していきたいと思います。
 各都市が立候補ファイルを提出し、いよいよ招致レースは本格的な段階に入りました。今後は、世論の支持をさらに高めるとともに、国内外に東京の魅力を訴えまして、十月のIOC総会まで全力で招致活動に取り組んでいきたいと思っております。
 私自身も、総力戦となる招致レースの先頭に立ちまして、都民、国民と一体となった招致活動をさらに推し進めて、日本人に大きな大きな夢と感動をもたらすオリンピック・パラリンピック日本招致を必ずや成功させたいと思っております。
 都議会の皆様のさらなるご支援とご協力をお願いする次第であります。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔財務局長村山寛司君登壇〕

○財務局長(村山寛司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず財政運営についてでございますが、都財政の役割は、財政環境が厳しい状況下にあっても、都民の不安を取り除くための取り組み、未来を切り開くための取り組みなど、都政がなすべき役割を確実に果たしていけるよう、財政面からしっかりと支えていくことにございます。
 そのためには、基金や都債など財政の対応力を適切に活用するとともに、事務事業評価等により、施策をより効率的、効果的なものへと継続的に磨き上げていく取り組み、あるいはまた、新たな公会計制度をより一層活用した将来負担への影響の検証などを行うことにより、中長期的視点に立った財政運営を定着、充実させていくことが従来にも増して重要となってまいります。
 都財政を取り巻く環境が、今後厳しさの度を増すことが想定される中にあって、都政に求められる役割を将来にわたり確実に果たしていけますよう、活用可能な基金の維持、充実に努めますとともに、実効性の高い施策の構築に向けた取り組みを強化することにより、一層強靱な財政体質の確立に向け、全力を傾けてまいります。
 次に、公共工事の前倒し発注についてでございます。
 都は、昨年十月末に発表した東京緊急対策Ⅱにおいて、中小企業を活用して都市インフラの整備を推進することを対策の重要な柱の一つとして位置づけました。これは、景気が急速に悪化する中で懸命に努力している中小企業への支援を目指す施策でもございました。
 具体的には、一般会計では路面補修工事、橋梁の塗装工事、道路維持工事などを、上下水道では小規模工事や維持工事などを、都単独の中小企業向け公共工事として追加をいたしますとともに、道路維持工事等についても、新たに年度内契約を可能とする予算上の措置、いわゆるゼロ都債を活用して年度内発注量の増加を図りました。
 これらの措置による増加発注額の総額を申し上げますと、二十年度、二十一年度を合わせて二百六十八億円となっておりまして、このうち二十年度内の工事完了分は百八十億円でございます。二十年度、二十一年度合計額の内訳を申し上げますと、一般会計における工事が百九十二億円、上下水道における公共工事が五十億円、いわゆるゼロ都債の活用が二十五億円となっております。
 これにより、工事発注量自体を増加させると同時に、二十年度末から二十一年度初めにかけて公共工事発注が切れ目なく行われることになりまして、年度初めのいわゆる端境期を解消することが可能となりました。
 今後とも、中小企業の持つノウハウを活用して都市インフラの整備を着実に進めるとともに、苦しい経営環境の中にある、努力する中小企業をしっかりと支えてまいります。
   〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕

○都市整備局長(只腰憲久君) 五点のご質問にお答えをいたします。
 初めに、外環の早期事業着手についてでございますが、都は、都市計画変更の後も、国や地元区市とともに、事業化を前提とした住民との話し合いを重ねてまいりました。
 先月、住民から出された意見や要望に対しまして、環境面を含めました国や都の対策の素案を取りまとめ、公表いたしました。
 今後は、それらの対策を事業段階で確実に実施してまいります。
 こうした取り組みを進める一方で、都は、都議会の外環促進議員連盟と連携いたしまして、平成二十一年度の事業着手に向けて要請活動を積極的に行うとともに、工程促進策について、国と協議を重ねております。
 今後とも、一刻も早く国幹会議を開催し整備計画を策定するよう、国に強く求めてまいります。
 なお、上下分離とのご指摘のございました地上部の街路、外環ノ2についてでございますが、都といたしましては、早期整備が必要な外環本線とは切り離して話し合いなどを進めるべきものと考えてございます。
 次に、離職者に対する都営住宅の活用のあり方についてでございますが、お話にもございましたように、都営住宅では、応募倍率が非常に高く、恒常的な空き家はないことに加えまして、高齢者、障害者等の入居希望者も多数おられます。
 また、建てかえのため、居住者の退去後、入居を取りやめている住宅につきましては、大規模な修繕なしに活用できるものはほとんどございません。
 こうしたことから、離職者という理由だけで、居住の場の確保のために都営住宅を提供することは極めて困難でございます。
 都営住宅の活用に当たりましては、離職者の介護職などへの就労支援事業に応募し、対象となった方の一時住宅として、民間住宅にあわせ、本来の入居対象者の入居や建てかえ事業に支障を及ぼさないことなどを条件といたしまして、適切な対応を図ってまいります。
 次に、建てかえで供給する都営住宅の子育て世帯への活用についてでございますが、少子化が進展する中、都営住宅を子育て支援に活用していくことは重要な課題でございます。
 建てかえにつきましては、管理戸数の抑制を図りながら、昭和四十年代以前に建設した住宅を対象とし、財政状況を勘案しつつ、年間四千戸程度まで事業規模を段階的に拡大することとしております。
 今後は、子育て支援をさらに充実させるため、建てかえで供給する住宅につきましても、従前居住者の戻り入居の状況など、団地ごとの実情を踏まえて、新たに子育て世帯向けの募集を行ってまいります。
 次に、都営住宅における子育て世帯向けの期限つき入居の拡大についてでございますが、都は、子育て世帯に対する支援のため、ひとり親世帯等への優先入居や若年ファミリー世帯向けの期限つき募集など、多様な取り組みを行っております。
 今後は、入居者の世帯構成の変化による空き家募集の戸数増などを見込み、若年ファミリー向け等の期限つき入居を拡大することなどにより、他の応募者にも配慮しながら、今後十年間で約一万五千戸程度を目途に、子育て世帯に対しまして都営住宅を供給し、積極的に支援してまいります。
 最後に、公社住宅における高齢者支援についてでございますが、住宅供給公社は、エレベーターを設置していない公社住宅の上層階に居住する高齢者、障害者、妊婦や幼児のいる世帯に対し、既に低層階の住戸を優先的にあっせんする住宅階層変更の措置を講じてまいりました。
 こうした措置に加え、公社は一般賃貸住宅の募集時において、階段の昇降が困難な高齢者等のいる世帯が既存、新規を問わず優先的に低層階に入居できるよう、新たな措置の早期実現に向けて、都としても公社に働きかけてまいります。
   〔産業労働局長佐藤広君登壇〕

○産業労働局長(佐藤広君) 中小企業支援ほかの質問にお答え申し上げます。
 まず、地域の金融機関と連携した新たな金融支援策の対象となる中小企業についてであります。
 企業体力が弱い中小零細企業は、景気後退の影響を特に強く受けておりまして、ご指摘のとおり、緊急保証制度によっても資金調達が困難な企業が存在をしております。
 こうした中にありまして、高い技術力や経営力等により、この難局さえ乗り切れれば将来的に展望が開ける企業などを見出し、支援していくことが必要であると考えております。
 そのため、日ごろから企業の顔が見える関係にあります地域に密着した金融機関の目ききの力や融資のノウハウを活用する、地域の金融機関と連携した新たな金融支援策を創設することとしたところでございます。
 次に、本支援策の開始時期についてでありますが、中小零細企業を取り巻く現下の厳しい状況を考慮すれば、早期の開始が望まれるところでありますが、本支援策は新たな融資制度を構築するものであり、金融機関等との十分な調整が必要となります。
 現在、金融機関等との調整を進めておりまして、夏ごろには支援を開始する考えでおります。
 次に、中小企業設備リース事業についてであります。
 都は、厳しい経済状況のもとでも、設備投資によって生産性の向上を図ろうとする中小企業を支援するため、平成二十年第三回定例会の補正予算で、中小企業設備リース事業を創設したところでございます。
 本事業では、現在、従業員百人以下の中小企業を対象としておりますが、昨年秋以降、経済状況がさらに悪化したことから、平成二十一年度より、都内中小企業全体へと対象を拡大いたします。
 また、本事業を活用して中小企業のCO2排出削減の取り組みを支援することは、実効性のある地球温暖化防止対策として有効であるとともに、長期的に中小企業の経営にもメリットがあると認識をしております。このため、平成二十一年度より、一定の要件のもと、新たに省エネ設備を本事業の対象に加えることといたしました。
 次に、プレミアムつき商品券発行の計画状況についてであります。
 本年一月三十日に総務省から発表されました定額給付金に関する地域の取り組み状況によりますと、全国百二十九市区町村において、商工関係団体等によりまして商品券が発行される予定となっております。
 また、産業労働局が本年二月に行った調査によりますと、都内二十五の地域においても同様の商品券の発行が予定をされております。
 次に、プレミアムつき商品券の発行に伴う新・元気を出せ商店街事業の活用についてであります。
 定額給付金の給付にあわせてプレミアムつき商品券を発行することは、各地域の商店街の振興に寄与するものと考えております。このため、都内各地域の商店街等がプレミアムつき商品券を印刷する場合や、地元での利用を促すPRイベント等に取り組む場合に、新・元気を出せ商店街事業のイベント・活性化事業などを活用して支援をしてまいります。
 今後とも、新・元気を出せ商店街事業を積極的に推進し、商店街の振興を図ってまいります。
 次に、障害者や女性などの雇用確保策についてであります。
 雇用情勢が急速に悪化する中、障害者や子育て中の女性の方々などの就職は、ますます厳しくなっております。このため、都は、これまでの求職者の支援に加えまして、こうした就職が困難な方々を採用した企業への奨励金を創設いたします。
 具体的には、障害者や女性の場合、職業訓練を受講した方や、しごとセンターに登録後も長期間就職できない方を正社員として採用した企業に対しまして、一人当たり五十万円の奨励金を支給することとし、年度内にも事業を開始いたします。
 今後は、本奨励金を活用して、企業の採用意欲の向上を図りまして、障害者や女性など、いわゆる就職困難者の早期就職に努めてまいります。
 次に、障害者雇用の促進についてでありますが、都はこれまでも、職業訓練による障害者の職業能力の向上や働く場の拡大に向けた特例子会社の設置支援、ジョブコーチによる職場定着促進など、一連の支援を実施してまいりました。
 しかしながら、景気が急激に悪化し、障害者の就職が厳しくなるおそれがあることから、来年度、障害者の委託訓練の規模拡大やジョブコーチの倍増を図ってまいります。さらに、企業への奨励金を創設して採用意欲の向上を図り、障害者雇用を一層促進してまいります。
 次に、居住にも配慮した就労支援策についてであります。
 仕事と住居を失い、生活に困窮する方々への支援につきましては、国が、雇用保険制度のほか、住居や生活にかかる費用を貸し付ける就職安定資金融資を用意しており、また、ハローワークにおきまして、寮など住居つき就職のあっせんも行っております。
 これに加えまして、都では、住居を失い、インターネットカフェ等で生活する方や、人手不足が続く介護職場への就職を目指す離職者を対象として、住居確保等による生活支援と就労支援をあわせて行う取り組みを実施しております。
 雇用情勢の一層の悪化により、こうした施策で対応し切れないケースが生じる可能性も考えられますので、今後、検討課題としてまいります。
 次に、新銀行東京の融資についてであります。
 新銀行東京はこれまで、内容に疑義のある融資案件につきましては徹底した調査を継続しており、今回の外部調査報告におきましても、改めてその存在について指摘をされております。こうした案件につきましては、既に捜査機関に協力しており、不正行為が明らかとなれば、法的対応を含め、厳正に対処することとしております。
 都としても、新銀行東京の対応を注視してまいります。
 次に、不良債権処理以外の累積損失に係る分析等についてであります。
 今回、新銀行東京が行った外部調査では、経営悪化に係る法的責任を追及する観点から、開業から平成十九年六月までを中心に、その前後についても対象として、不良債権の問題のほか、システムの関連を含め、さまざまな調査、分析を十分に行っております。その結果、法的責任を問うことができるのは、危機的なデフォルトの発生状況に対して抜本的対策を講じなかった旧経営陣であることが明らかにされております。
 新銀行東京は、外部の弁護士の判断に従って、旧経営陣の責任追及を司法の場にゆだねることとしており、都としてはその推移を注視してまいります。
 最後に、新銀行東京の平成二十一年三月期決算の見通しについてであります。
 今回の第三・四半期決算では、営業成績は伸びているとともに、金融庁の検査結果への対応や現下の中小企業の経営環境の悪化を踏まえた十分な引き当ての積み増しを行った上でも、なお純資産は計画を上回っております。
 こうした中で、新銀行東京では、通期の純損失を再建計画の想定どおりと見込んでおり、現在の厳しい経済状況下においても、今年度末の決算で四百億円の追加出資が毀損されることはないとしております。
 都といたしましても、この目標が達成されるよう、引き続き新銀行東京の監視に努めてまいります。
   〔建設局長道家孝行君登壇〕

○建設局長(道家孝行君) 都が実施する雇用対策のうち、延べ二十万人分の雇用につながる道路などの維持工事等の公共事業の実施についてのご質問にお答えいたします。
 都市基盤施設を適切に維持管理して良好な状態に保ち、その機能を十全に発揮させていくことは、円滑な都市活動と都民生活を支える上で極めて重要であります。維持管理の工事を施工するに当たっては、地域の状況を熟知し、現場状況に的確に対応できる中小企業を活用していくことが肝要であると考えております。
 東京緊急対策Ⅱを受け、十二月補正予算及び二十一年度予算案において、追加して、中小企業の施工に適した道路維持修繕、橋梁維持補修、街路樹管理や沿道除草、公園内の樹木管理などの維持工事費百五億円を計上、実施することとし、三月までに契約を完了させてまいります。
 これにより、地域や都民のニーズに的確に対応することができ、中小企業の活用が図られるとともに、早期の雇用の確保にもつながるものと考えております。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 出産、子育て環境整備等についてお答えをいたします。
 まず、周産期連携病院に対する支援等についてでありますが、都は、新たに指定する周産期連携病院に対し、当直医師や病床など診療体制の確保を支援するとともに、施設設備の整備費の補助を行います。
 また、周産期連携病院が、ネットワークグループ内において二次医療機関の中心となって緊急診療に取り組むとともに、医療連携を推進できるよう、東京都周産期医療情報システムを設置し、空きベッド情報などを周産期母子医療センター等と相互に共有できる体制を整えます。
 さらに、来年度から実施する医師奨学金制度におきましては、医師免許取得後、就業した場合に奨学金の返還が免除される病院として周産期連携病院を指定し、産科医の確保についても支援を行う予定であります。
 次に、院内助産所や助産師外来についてでありますが、医療機関に設置される院内助産所や助産師外来は、助産師が医師と連携しながら、健康診査や保健指導などをきめ細かく行い、正常な経過の妊産婦の助産をするものであり、医師の勤務軽減にも資するものであります。
 都は、医師勤務環境改善事業におきまして、今年度から院内助産所や助産師外来の設置を促進するため、施設整備への補助を行っておりますが、来年度は周産期連携病院をこの対象に新たに加えることにより、院内助産所等の一層の開設促進を図ることとしております。
 さらに、開設のノウハウなどに関する研修についても拡充する予定であります。
 次に、妊婦健診の公費負担拡充についてでありますが、定期的な健康管理により安全な出産を迎えるため、都は、公費負担による十四回の妊婦健診が実施できるよう、財源措置を国に強く働きかけてまいりました。今般、国が妊婦健康診査臨時特例交付金制度を創設したことを受け、都としても、今年度中に妊婦健康診査支援基金を設置し、区市町村における公費負担の拡充を支援してまいります。
 都は今年度までに、区市町村や医療機関などと健診項目や実施体制について検討を重ね、公費負担の回数増に対応できる制度を構築しておりますので、平成二十一年度からの全区市町村での速やかな実施を目指してまいります。
 次に、保育所待機児童解消に向けた取り組みについてでありますが、都は今年度から保育サービス拡充緊急三か年事業を実施しておりますが、お話のように、この取り組みをさらに加速させる必要があります。このため、来年度、待機児童解消区市町村支援事業を創設し、開設準備経費補助の拡充などを図るほか、都有地活用による地域の福祉インフラ整備事業も活用するなど、事業者の積極的な参入を支援いたします。
 また、家庭福祉員の担い手をふやすため、都と区市町村が連携して養成研修を行うとともに、保育人材確保事業を開始し、保育士の再就職支援のための研修と就職相談会を一体的に実施するなど、保育サービスを支える人材の確保に向けた取り組みを進めてまいります。
 次に、子どもの新型インフルエンザ対策についてでありますが、都が備蓄しております抗インフルエンザウイルス薬は、小児用治療薬として使用できますけれども、年齢や体重に応じて量を調節するなど、投与方法に十分留意する必要がございます。このほかにドライシロップタイプの小児用タミフルも市販されておりますが、使用期限が二年と短く、備蓄にはなじみません。さらに、一歳未満の場合には、こうした治療薬がいずれも使用できないという問題がございます。
 そのため、都は、国に対し、薬の使用を含め、小児への治療の考え方を明らかにするよう求めてきており、今後とも、小児の特性を踏まえた対応方針を示すよう強く要請してまいります。
 次に、子どもや家庭への普及啓発でありますが、ご指摘のとおり、新型インフルエンザから子どもたちを守るためには、事前の準備や発生時の対応等について、家庭の中であらかじめ話し合っておくことが非常に重要であります。
 そのため、都は、現在、新型インフルエンザに関する正確な知識や家庭でできる予防方法などをわかりやすく紹介いたしましたリーフレットを作成しており、今年度中に、都内すべての小学校、中学校、高等学校に通う児童生徒に配布する予定であります。
 次に、Hibワクチンについてでありますが、Hibワクチンは、インフルエンザ菌b型による乳幼児の細菌性髄膜炎の予防に有効でありますことから、都は国に対し、小児に対する定期予防接種にHibワクチンを加える検討を行うよう提案要求してきたところであります。
 昨年十二月、我が国でもHibワクチンが発売されましたが、都としては、この機会に改めてHibワクチンの有効性について区市町村に情報提供を行うとともに、ワクチン接種費用の補助を行う区市町村に対しましては、本年四月から包括補助制度を活用して支援を行います。
 また、国に対しましては、Hibワクチンの定期接種化に向けた検討を行うよう、引き続き求めてまいります。
 次に、子どもに対する予防接種についてでありますが、子どもたちを感染症から守るためには、有効性、安全性が確立されたワクチンを接種することが極めて有効な手段であります。こうした観点から、都はこれまでも、国に対して、予防接種対策をより一層充実するよう提案要求するとともに、予防接種の実施主体である区市町村の取り組みを支援してまいりました。
 今後とも、新たに開発されるワクチンの有効性、安全性について積極的に情報収集し、適切に対応してまいります。
 次に、在宅医療の推進についてでありますが、都民が安心して在宅療養生活を送るためには、病状急変時の一時入院先の確保並びに病院スタッフと在宅医療スタッフとの密接な連携体制の構築が重要であります。
 そこで、都は、地域の身近な病院が在宅医療の連携拠点となることによって、緊急時においても機動的に対応できる体制を地域に整備するために、来年度四カ所でモデル事業を実施いたします。この事業では、拠点病院といたしまして、急性期型、療養型、また、その両者をあわせ持ちますいわゆるケアミックス型など、異なるタイプの病院を選定し、病院スタッフと在宅医療を担う医師や訪問看護師、ヘルパー等が顔の見える連携づくりに取り組んでいきます。
 その取り組みの成果を検証し、都内各地域の医療資源や特色を生かした在宅医療体制の整備を図ってまいります。
 次に、ひとり暮らし高齢者等の安心を確保するための体制整備についてでありますが、都では来年度から、高齢者あんしんコールセンター事業を実施いたします。本事業は、ひとり暮らし高齢者や高齢者のみ世帯などの夜間における緊急時への対応を行う区市町村を支援するものであり、具体的には、夜間対応を行います訪問介護事業所の電話オペレーター機能を活用し、事前に登録された高齢者からの通報に対し、適切なアドバイスやヘルパーの派遣、関係機関等への連絡などを行うものであります。
 夜間における高齢者の安全・安心の確保が図られるよう、本事業を推進してまいります。
 次に、このコールセンター事業への地域のボランティアの活用についてでありますが、ひとり暮らし高齢者等への支援には、簡易な手助けにより解決するものが多く、近隣住民をボランティアとして活用することは、よりきめ細かい支援を行うことが期待できます。 高齢者あんしんコールセンター事業の実施に当たりましては、ご提案のとおり、地域における支え合いの機能を高めるため、区市町村に対し、ボランティアを積極的に活用するよう働きかけてまいります。
 次に、障害者自立支援法の見直しについてでありますが、都はこれまで、利用者負担の軽減措置の継続や、身体障害者を自立支援法におけるグループホーム等の利用対象に位置づけることなど、障害者の生活実態に即した効果的な仕組みとするよう、国に働きかけてまいりました。
 国の見直し案では、利用者負担については現在の軽減措置が継続されるとともに、軽減措置を適用する際の資産要件の撤廃等が新たに実施をされます。
 今後、国が示す法改正等の具体的な内容や実施時期にも注視し、必要な改善点については、適宜、国に提案要求してまいります。
 次に、障害福祉サービス事業者の報酬についてでありますが、都はこれまで、障害者を支える人材確保、良質なサービス提供のため、サービス全般にわたる基本的な報酬の改善を行うよう、国に強く働きかけてまいりました。中でも、人件費、土地取得費、物件費等が高額である大都市の実情を報酬改定に適切に反映することが重要であります。国の見直し案では、事業者報酬について、本年四月から五・一%の増となり、一定の改善が図られることとなりました。
 今後、今回の改定によります効果などを見定め、必要な改善点については、引き続き国に求めてまいります。
 最後に、障害程度区分判定の仕組みについてでありますが、区市町村が実施をいたします障害程度区分の判定は、コンピューターによる一次判定に加え、学識経験者等による二次判定によって総合的に決定をしております。この二次判定では、定量化が困難な障害の内容について、合議の中で反映することとなっております。
 国は、障害程度区分の仕組みを見直し、平成二十三年度中に新区分を施行するとしており、引き続き都は、障害者が地域で自立した生活を営む上で必要なサービスを受けられるよう、改善を国に要望してまいります。
   〔環境局長有留武司君登壇〕

○環境局長(有留武司君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、都有施設における再生可能エネルギー設備の導入についてでございますが、CO2を徹底して削減し、東京を世界に誇れる低炭素型都市としていくためには、都有施設においても、施設の省エネ化だけでなく、再生可能エネルギーの活用が重要でございます。
 そのため、昨年第三回定例会でもご質問いただきました都有施設省エネ・再エネ等導入指針において、都有施設を新規建設または改築する場合には、再エネ設備の導入を原則とし、施設の立地条件や建物用途等に応じた導入を設計の際に必ず検討することを盛り込んでいきます。
 また、施設設計の担当者に向けて、太陽光発電や太陽熱利用といった再エネ設備ごとの導入マニュアルも整備し、都有施設における再エネ導入の促進に努めてまいります。
 次に、中小規模事業所への制度周知などについてでございますが、今回新たに創設した地球温暖化対策報告書制度は、中小規模事業所がみずからの事業所のエネルギー使用量やCO2排出量を簡単に把握できるものであり、また、取り組みやすい対策メニューを都が示すことにより、着実な省エネ対策の推進を図るものでございます。
 この制度を効果的に運営するには、省エネ診断事業や環境減税制度などの支援策との連携が重要と考えております。来年度のできるだけ早い時期に説明会を開催し、制度の詳細や各種支援策の内容などの周知を図るとともに、昨年設置した東京都地球温暖化防止活動推進センターが、中小規模事業所の省エネ対策の相談窓口として一層積極的な役割が果たせるよう、その活動の充実強化に努めてまいります。
 次に、電気自動車等の次世代自動車の普及についてでございますが、自動車部門の地球温暖化対策を推進するためには、自動車交通量の抑制に向けた取り組みなどを進めるとともに、低公害、低燃費車の導入を促進していくことが重要でございます。中でも電気自動車等の次世代車はCO2排出が少なく、より環境負荷が低いことから、その普及を図ることが効果的でございます。
 しかし、普及に当たっては、電気自動車の走行性能への不安の声があることや、ガソリン車に比べて一回の充電当たりの航続距離が短いなどの課題がございます。
 このため、民間事業者等と連携し、環境性能や駆動力、航続距離などの走行性能とともに、先行的利用の実例を、試乗会やホームページ等を活用し幅広く周知するなどにより、営業活動等での使用を促してまいります。
 また、電気自動車のユーザーが安心して走行できるよう、短時間で充電できる急速充電設備の設置のための補助を行ってまいります。
   〔交通局長金子正一郎君登壇〕

○交通局長(金子正一郎君) 環境負荷低減に向けた都営交通における新たなポイントシステムの導入についてお答えいたします。
 交通局はこれまで、地下鉄車両の省電力化や低公害ノンステップバスを初めとする最新の技術を積極的に取り入れるなど、環境に最大限配慮した事業運営に努めてまいりました。
 ご指摘のように、環境負荷がより少ない公共交通機関の利用を促進していくことは、大変重要であると認識しております。
 都民の方々が、都営交通を利用することにより、環境負荷低減に貢献していると実感できる仕組みを構築することは有意義であり、今後、ICカード、PASMOを活用したポイントシステムについて、関係機関と連携しながら具体的に検討してまいります。
   〔中央卸売市場長比留間英人君登壇〕

○中央卸売市場長(比留間英人君) 築地市場の移転に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ベンゾ[a]ピレン等の報道に関する事実経過と土壌汚染処理の影響についてでございます。
 報道されたベンゾ[a]ピレン及び不透水層のデータは、さらに追加の調査などが必要なことから、現在実施している環境確保条例第百十七条調査の結果とあわせて公表することを予定しておりました。しかしながら、リスクコミュニケーションの観点から、今後は、調査が終了し、報告を正式に受理したものについては速やかに公表してまいります。
 汚染土壌処理に与える影響は、ベンゾ[a]ピレンにつきましては、操業時の地盤面から下の土壌を二メートルすべて入れかえることに加え、それより深い部分で油膜が見られる汚染土壌は加熱処理などを行うことにより、健康影響のおそれがないよう対策を行うこととしてございます。
 不透水層が確認できなかった地点につきましては、今後、周辺の調査を行い、実態を把握した上で、対策時に当該地点の汚染状況を確認しながら、土壌や地下水中の汚染物質を確実に除去した後、人工的に不透水層を形成することとしております。こうした対策は、技術会議及び専門家会議において確認をされておりまして、安全性は十分に確保されます。
 次に、豊洲新市場整備についての基本的な考え方でございます。
 築地市場は、老朽化、狭隘化が限界に来ていることに加え、衛生面での課題もあり、近年の流通環境の変化に対応できず、取扱数量が大きく減少しており、このままでは基幹市場として都民の食生活を支える役割を果たすことができなくなるおそれがございます。
 このため、豊洲新市場では、基幹的な施設を温度管理のできる閉鎖型施設とすることに加え、物流効率化のための待機駐車場や車両誘導システム、新たな顧客ニーズに対応した加工、パッケージ施設、十分な荷さばきスペースなど、時代のニーズにこたえる新たな機能を整備し、集荷、販売力を強化してまいります。
 豊洲新市場予定地につきましては、技術会議の提言に基づき、生鮮食料品を扱う市場用地として、都民や市場関係者が安心できる万全な土壌汚染対策を講じてまいります。
 さらに、豊洲新市場では、築地市場で長年にわたり培われてきた歴史と伝統を継承し、市場が蓄積してきた食に関する知識や食文化などについての情報を広く発信していくとともに、市場の現場を体感できる見学施設や、食を中心とする東京の新たな観光拠点となる千客万来施設を整備することにより、にぎわいを創出してまいります。
   〔東京オリンピック・パラリンピック招致本部長荒川満君登壇〕

○東京オリンピック・パラリンピック招致本部長(荒川満君) 子どもたちの参加による招致活動についてでございます。
 二〇一六年の東京オリンピック・パラリンピックは、次代を担う子どもたちに大きな夢と希望を与え、かけがえのない財産となります。これまでも子どもたちが参加した活動を実施してきておりまして、例えば今年度から始めました区市町村とのオリンピックムーブメント共同推進事業におきましては、子どもたちを対象にスポーツ教室や駅伝大会など四十三の事業を実施し、また、オリンピアンを小中高等学校に派遣する、みんなのオリンピック事業を二十五カ所で開催しております。
 ご提案いただきました子どもによる聖火リレーは、オリンピズムの普及による子どもの健全育成、各家庭での招致への理解促進、さらには世論の盛り上げにも資するものと考えます。
 このため、関係団体の協力を得て、早急に具体化を進めてまいります。