平成二十一年東京都議会会議録第二号

 午後三時五十九分開議

○副議長(石井義修君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十四番田中良君。
   〔百二十四番田中良君登壇〕

○百二十四番(田中良君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 まず、都の財政運営と景気対策について伺います。
 金融危機、そして景気悪化が進むアメリカでは、新大統領に民主党のオバマ氏が就任しました。その演説にはさまざまな評価がありますが、集まった二百万人の熱気と期待は本物であり、危機を率直に語り、国民とともに乗り越えると訴えた大統領の姿に、政治がなお希望を与える存在であることを改めて認識しました。
 現在、日本国内では、世界同時不況が実体経済に波及し、昨年末の十から十二月のGDPは、年率換算でマイナス一二・七%となり、第一次石油ショック以来の大幅な落ち込みを記録いたしました。
 先月上中旬の輸出額も四六%減少、外需低迷の深刻さを反映し、都内経済の先行きも当面悪化が続くと予測されております。
 昨秋から、国は総額七十五兆円の経済対策を発表し、都も二度にわたり、合計九百億円超の補正予算を編成していますが、民間需要の回復への見通しはいまだ立っておりません。
 都は、みずからの財政機能で、都民が求める公共財、サービスを確実に提供するとともに、十年後は生活が悪化すると考え始めている都民の不安を払拭し、希望を与えていかねばなりません。それは、短期、そして中長期にわたり、経済の構造改革につながる財政支出であるべきであります。
 短期的には、都民生活に安心をもたらす生活者、中小企業支援を充実し、雇用と職業スキルアップの組み合わせで求職のミスマッチを解消するなど、安心、人材育成と就業促進を図っていかねばなりません。
 さらには、雇用維持、創出につながる学校や救急医療機関などの耐震化や、公共交通や都営住宅などのバリアフリー化推進、主要施設維持更新計画などの公共投資を、今後三年間かけて大胆に追加、前倒しをしていくことが重要です。
 また、中長期的には、東京の成長政策を展望し、自治体初の環境減税など企業へのインセンティブをつけるほか、ものづくりを目指す人材を育成するなど、環境や医療、バイオ、IT、ロボットなど、日本が力を発揮できる技術分野の研究開発への支援を行っていく必要があります。
 経済、そして都民生活を安定したものにするために、引き続き都の財政機能を生かしていくべきと考えます。知事の見解を伺います。
 平成二十一年度の地方財政計画では、平成二十年度比で、地方税が一〇・六%減と、過去最大の減収を見込んでおります。都の歳入に関しては、景気の大幅な落ち込みと法人事業税国税化によって、都税は過去最大一三・六%の減収となりました。これは、法人二税が三〇・三%も落ち込み、大都市部ほど影響が大きくなったことによります。
 グリーンスパン前アメリカFRB議長の、百年に一度の金融危機や、日銀総裁の、大変厳しいとの発言が示すように、日本経済の先行きは悪化するとの予測が強く、国も、経済財政の中長期方針と十年展望についてにおいて、先行きの不確実性が極めて高いことから、混乱を脱する、混乱が続くなどのシナリオに分け、経済、財政想定を比較、試算しています。
 都における過去の税収の落ち込みも、平成四年度からの三年連続、法人二税は平成二年度からの五年連続の記録がありますが、果たして景気回復に向けた次の底入れがいつになるのか、予測は困難であります。
 歳出に関しては、二度の補正予算に続く緊急対策を初め、「十年後の東京」計画など中長期的な取り組みなどが設定されているため、今後も支出増の要素が強いといえます。 このような現状で、今後の都の財政収支の見通しについて見解を伺います。
 都は、平成十九年度決算における全体財務諸表によると、基金など資産が八千六百五十七億円増加し、負債が六千五百九十九億円減少するなど、将来世代の財政負担を軽減する財政運営に努めてきました。
 しかし、この年の十一月が日本の景気後退局面入りとされ、現在も悪化が続く状況で、都の財政運営も新たな転換を模索する時期に来たと考えます。地方自治体にとっても、平成二十一年度から財政健全化に資する新指標を踏まえる必要があり、この景気後退の先を見据えていかねばなりません。
 平成十八年七月に公表した財政運営の指針では、財政再建に区切りをつけ、健全性を維持する質的転換を進めてきましたが、中長期的な視点での三年間の取り組みも踏まえ、今後、都はどのように持続可能な財政を確立していくのでしょうか。都の財政運営の方向性について見解を伺います。
 そして、来年度予算案は、都政史上最大の税収減となり、昨年度創設した法人事業税国税化対策基金の全額二千二百十五億円を取り崩します。
 一昨年、石原知事は、福田総理と国税化を合意した直後、分権に逆行し、税の原則に反すると強く反対した民主党に、みずから行った行為を棚上げにし、そもそも日本の税制は、国が勝手に決められるものでありまして、批判、質問されるなら、法律の勉強をなさってからされないと恥ずかしいことになりますと、いわずもがなの的外れな答弁をされました。
 それが、最近になって知事は、国税化の暫定措置は直ちに撤廃すべきでありますとしています。国が抜本改革に取り組むまでには最低三年から六年はかかり、知事が合意した暫定はほごにされ、この措置は今後も延長される公算が強まっています。地方にとっては、国が交付税を一兆円増額することで、法人事業税国税化の意義はなくなりました。再配分も、景気後退によって当初計画から三割程度下回りそうです。
 こうしたことからも、分権への流れを踏みにじり、いたずらに税制を混乱させた政府・与党と知事の責任は重大です。ここに至り、直ちに撤廃すべきとした法人事業税国税化を、知事はどうやって廃止していくのか、見解を伺います。
 次に、雇用問題について伺います。
 年末から年始にかけて日比谷公園内に設置された年越し派遣村は世間の耳目を集め、この問題に対する国の無策を露呈させたのではないでしょうか。
 石原知事は、一月九日の定例会見などで、とにかく現場感覚がないんだから、あの連中はと、厚生労働省の対応を批判しています。
 であるならば、現場感覚を持つ東京都が、新たなセーフティーネットの構築を初め、製造業、現場への派遣の見直しなど、国に対して積極的に働きかけるべきです。
 また、東京都は、昨年十二月、国と連携して、都内主要経済団体等に雇用維持や内定取り消しの回避などを要請していますが、悪質な企業名は公表するなどの強い姿勢を持ちながら、企業に対して、雇用の維持に最大限努めるよう働きかけを強めていくべきであります。
 私は、石原知事が先頭に立って、国や企業に対して積極的に働きかけていくべきと考えますが、見解を伺います。
 昨年十二月二日、民主党は、緊急雇用対策本部を設置し、私たち都議会民主党も、緊急一時保護施設や自立支援施設、あるいはハローワークを視察するなど、党と連携しながらこの問題に取り組んでまいりました。
 これから契約の更新が集中する年度末に向けて、さらに雇いどめが急増するともいわれています。また、来年度以降も引き続き厳しい状況が続くことが予想される中で、東京都として、公的雇用をふやすことで、失業率の緩和に少しでも役立てるように取り組んでいくべきであります。
 既に東京都は、緊急対策Ⅱなどにより、五十万人の公的雇用創出を打ち出していますが、さらなる積み増しが必要ではないでしょうか。
 また、国の第二次補正予算による緊急雇用創出事業や、ふるさと雇用再生特別基金事業による新たな雇用創出も期待できますが、これら国の事業は、事業費に占める人件費の制約などもあり、実施に向けてのハードルが高いようにも思われます。
 そこで、東京都として、今後の雇用情勢に的確かつ迅速に対応できるよう、緊急雇用対策のさらなる積み増しを実施していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、東京都の緊急雇用対策や国の雇用再生特別基金事業は、そもそも次の職場を探すまでのつなぎの仕事を前提としているため、正社員化を図ろうという仕組みが見られません。 国のふるさと雇用再生特別基金事業では、事業実施のために新たに雇い入れた労働者を正社員として受け入れ、かつ六カ月定着している場合に、その事業主に対して労働者一人当たり三十万円を支給する制度となっており、国のトライアル雇用でも、一人当たりおおむね三十万円を支給する制度があります。
 東京都の緊急雇用対策などを通じて新たに採用された場合においても、これを一種のトライアル雇用としてとらえるならば、同じように正社員化を促していく仕組みも必要なのではないでしょうか。
 緊急雇用対策を通じた正社員化の促進に向けて見解を伺います。
 次に、都営住宅を活用した居住の場の確保について伺います。
 この間、視察先の所長さんなどから、まずは住居の確保だという話を聞かされました。仕事探しが目的のハローワークでさえ、相談件数のうち二割が住宅相談だということです。
 元派遣労働者で、支援団体を組織された方からは、国の雇用促進住宅はどこも満員。やっと空きが見つかったと思ったら、場所が大宮。都内へ就職活動するだけでも交通費が千円以上かかるので、断念したという具体的な話も聞きました。
 このように職を探している人たちの話を聞くと、まず第一に住宅の確保だという声が最も多いようです。 一方、都営住宅や職員住宅などの中には、建てかえを間近に控えて、空き家のまま募集を停止しているところもあり、これら住宅の有効活用を図るべきではないでしょうか。
 そこで、私は、特に建てかえを控えた都営住宅については、職業訓練の期間あるいは採用が決まるまでの期間などの短期入居を認め、働く意欲のある低所得者の居住の場の確保に取り組んでいくべきだと考えますが、見解を伺います。
 年越し派遣村では、生活保護などの生活相談から、住宅、労働などの相談まで、役所の縦割りに関係なく、ワンストップでさまざまな相談に応じていました。
 一方で、東京都が低所得者対策として創設された生活安定化総合対策事業では、多くの区市町村から、雇用、就業に関する相談窓口の設置に苦慮する声が聞かれました。
 国においては、ハローワークが設置されていない市町村と連携して、役所などの中に職業相談や職業紹介等を行う地域職業相談室を置く制度もありますが、都内では十カ所にとどまっています。
 先日視察した国のキャリアアップハローワークは、場所が都庁と間近、しかも対象を非正規労働者としている施設にもかかわらず、東京都の受講奨励金の制度を紹介するパンフレットさえ置いていません。
 東京都が音頭を取って各機関の連携を促し、それぞれの窓口でワンストップサービスを提供できるよう取り組んでいくべきだと考えますが、見解を伺います。
 次に、生活安定化総合対策事業などの拡大、充実についてです。
 低所得者対策として創設された生活安定化総合対策事業では、都内に引き続き一年以上在住、住民登録していることが条件となっています。
 そもそもこれは、石原知事が知事選前に打ち上げた低所得者に対する都民税の軽減が、いわゆる公約の進化によって制度化されたゆえんでもありますが、しかし、低所得者のうち、都内に住所がなくても、東京都の事業所で働き、その後解雇された人などを制度の対象外にする理由はありません。
 また、就職チャレンジ支援事業も、同様に、都内への就業実績があれば、受講奨励金の給付対象にしていくとともに、同事業の制度化を国に対して働きかけていくなど、利用者が使い勝手のいい制度にしていくべきだと考えます。
 生活安定化総合対策事業などの拡大、充実について見解を伺います。
 次に、職業訓練の拡大、充実についてであります。
 公共職業訓練のことし一月の入校生の応募状況は、定員を昨年一月より多い四百四十人としたのに対し、応募が昨年の倍近い千百六十三人。応募倍率は、昨年の一・六一倍から二・六四倍にはね上がっています。
 今後、この傾向はますます強くなると思われますので、東京都として、国の委託訓練の拡大も視野に入れながら、定員のさらなる拡大に取り組んでいくべきです。
 また、どのような分野での企業ニーズが高いのかといった調査についても、引き続き実施するなどして、実効性の向上を図っていくべきだと考えます。
 職業訓練の拡大、充実に向けて見解を伺います。
 次に、非正規労働者の雇用環境の改善についてです。
 現在、東京都では、非正規労働者の処遇改善に取り組もうとする中小企業に対して、社会保険労務士や中小企業診断士などの専門家を無料で派遣するとともに、改善計画の認定を受けた企業への融資制度を設けています。
 しかし、目標企業数は三十社しかなく、企業へのインセンティブが、ほかの制度に比べても少ないように思われます。
 例えば、東京都は、次世代育成企業へのインセンティブとして、人事労務責任者を設置した場合四十万円、意識啓発で十万円、社内ルールづくりで五十万円、育児休業を取得した場合の代替要員一人につき百五十万円を助成しています。
 私は、対象企業数の拡大やインセンティブの充実などを進めることで、非正規労働者の雇用環境の改善に積極的に取り組んでいくべきだと考えますが、見解を伺います。
 次に、新銀行東京について伺います。
 石原知事は、施政方針の中で、旧経営陣時代における経営上のさまざまな問題と誤った判断による損失の拡大が、具体かつ詳細に明らかにされたと述べられました。
 しかし、そもそも二月十七日に発表された調査報告自体が、開業後二年間の不良債権の増加を主たる原因とする経営悪化に対する法的責任を調査しただけなのです。
 昨年度末の新銀行の累積赤字は一千十六億円であり、調査報告書で指摘しているデフォルト金額は百十二億円と、一部でしかありません。
 東京都は、昨年三月十三日の予算特別委員会で、累積損失見込みを、経常収益二百六十億円に対して、かかった費用千二百六十億円としながら、費用の内訳を、営業経費五百億円、資金調達費用百億円、不良債権処理額二百八十五億円、貸倒引当金の繰り入れ、戻し入れ二百億円、特別損失百五十億円などと答えています。
 知事は、つくったのはモデルカーで、それをどう運転するかというのは経営者の才覚だと例えています。
 しかし、モデルカー自体に大きな設計ミスがありながら、それを放置し続け、運転手にスピードアップを指示したのは、石原知事自身だったのではないでしょうか。
 私は、旧経営陣に損害賠償を求める以前に、一千十六億円の累積赤字を生じさせた費用の内訳と、その赤字を招いてしまった責任の所在をまず明らかにすべきと考えますが、見解を伺います。
 その上で、私は、新銀行の失敗の責任が厳しく問われるべきであると考えます。その責任とは、すなわち、発案当時のマスタープランが過大であったことや、スコアリングモデルを初めとしたビジネスモデルが破綻したことの責任、旧経営陣の任命責任や金融情勢全般の判断を見誤った責任、さらには、経営の悪化に対して迅速に対策を講じてこなかった責任についてであります。
 デフォルト金額百十二億円の責任を問う以前に、まず知事自身が、その政治責任と行政責任を自覚し、みずからの責任を果たすべきであると考えますが、知事の見解を伺います。
 特に私が指摘しておきたいのは、この間の株主としての責任です。都議会民主党が、売却などを含めた出口戦略などの早急な検討を主張したのは、営業開始一年後の平成十八年三月であります。その当時から、新銀行東京の経営状況が思わしくないことは、私たちだけでなく、専門家やマスコミなども指摘をしていたのであります。
 私たちの指摘後も、新銀行は拡大路線を継続し、東京都においては、平成十八年十二月一日の取締役会において、融資目標四千三百億円達成のためになお一層の努力が必要と要請をしています。
 報告書では、仁司氏らに対して、遅くとも十八年八月には抜本的な対策を講じるべきであったが、これを怠ったと断じていますが、その後も拡大路線をあおったのは、間違いなく大株主である石原知事自身だったのではないでしょうか。
 知事は、昨年の予算議会において、今日の経営実態を見ると、より早期に強力な指導を行うべきであったという感は否めない、その否を認めていますが、問題は、情報が上がってこなかったことにあるのではなく、情報をとろうとしていなかったその姿勢にあるのであります。
 知事は、この間、新銀行の拡大路線をあおってきたことに対して、どのような責任を感じているのか、見解を伺います。
 二月十七日の報告書では、特別背任罪の成立を肯定できる証拠を取得する調査を完遂させるまでには至らなかったとしており、仁司元代表執行役の責任追及については、民事上の損害賠償請求にとどまっています。
 また、提訴の時期も未定であり、年内にするのかどうかさえいえないというのであっては、もはや問題の先送りとしかいいようがありません。
 さらに、実際の損害賠償請求額も、今後、弁護士と検討するとする一方で、報告書には、仁司氏が法的責任を認めれば訴訟によらない解決も否定しないとも記されており、早くも和解で決着を図るのではないかとの憶測も流れています。知事にかわって旧経営陣が責任をかぶれば、賠償請求額を考えてもいいというような決着が図られるのであれば、株主である都民の理解は到底得られるものではありません。
 知事は、今回、刑事告発を見送ったことも含め、提訴の時期もはっきりとしないような状況についてどのように考えているのか、見解を伺います。
 また、取締役会の責任について、報告書では、明らかな善管注意義務違反を認めるのが相当としながら、仁司氏を除く七名に対して報酬の自主返還を求めていくとしています。しかし、この七名のうち三名がいまだ現職で、新銀行の取締役会の過半数を占めているのです。なおかつ、昨年末の金融庁の業務改善命令では、現在の取締役会についても、十分な指示を行っているとはいえないとして、現経営陣の問題にも言及しています。
 知事は、現在の取締役会と執行役についてどのように評価しているのか、見解を伺います。
 二月十七日の外部の専門家から成る報告書で旧経営陣に対する責任追及の方針が明らかになるとともに、その調査報告書の全文は公開されています。であるならば、昨年三月十日に概要のみ発表され、四百億円の追加出資を後押ししながら、いまだ非公開となっている新銀行東京調査委員会の調査報告書についても全文の公開を改めて求めるものでありますが、見解を伺います。
 二月十二日、新銀行東京は、第三・四半期決算を発表しました。赤字額は七十三億円と、中間決算の赤字から三億円の増にとどまりましたが、その内容はいささか疑問であります。中でも、劣後債を前倒し償還したことによる十四億円の特別利益を計上していますが、そもそも劣後債は、新銀行の資本不足を解消するために発行されたのではないでしょうか。
 新銀行マスタープランでは、新銀行の資本金一千五百億円のうち、東京都からの出資を一千億円、民間企業からの出資を五百億円とし、将来的には民間から一千億円を集めて全体で二千億円の資本にすると想定していました。しかし、民間から集まったのはわずか百八十七億円。そのため、新銀行が、平成十八年十一月、ユーロ市場で百五十七億円の期限つき劣後債を発行し、自己資本に組み入れたのであります。
 今回、この劣後債を前倒し償還したことで、第三・四半期決算での自己資本比率は三五・二五%と、中間決算の四八・五〇%から、わずか三カ月で一三%以上低下しています。これは、新銀行東京が、都民の税金で追加出資四百億円を受け取ったのをいいことに、決算での赤字を減らすため、資本の一部を切り崩したと思われても仕方がありません。
 東京都は、昨年の予算特別委員会において、急いで追加出資をする理由として、二十年度末に自己資本比率が四%を下回ることが想定されるためと答えていました。
 であるならば、今回、劣後債を前倒し処理し、資本の一部を切り崩したことは、追加出資なくしてできなかったものと考えますが、見解を伺います。
 先日、私たち都議会民主党では、新銀行東京PTを開き、第三・四半期決算をヒアリングしましたが、余剰資金の運用先が国債なのか社債なのか株式なのか、あるいはサブプライムローン関係などで幾ら損失が出ているのか、どのような企業に融資できているのかなどについて、まだまだ情報公開が不十分だといわなければなりません。
 また、中間決算で示していながら四半期決算では省略している財務諸表の内容や、私たちが毎回のように委員会で要求している資料なども、みずから積極的に公開をすべきであります。
 新銀行の情報公開のあり方について、見解を伺います。
 次に、中小企業対策について伺います。
 今議会には、東京都と地域の金融機関とが連携して実施する金融支援に関する条例が提案され、予算案にも三百億円が計上されています。しかしながら、この条例案では、東京都と連携する金融機関を、銀行、信金、信組のうち知事が定めるものと規定していることから、新銀行東京への隠れた追加出資になるのではないかとも指摘され、一部で新銀行支援条例ともいわれています。
 中小企業の置かれている現状を踏まえるのであれば、新たな支援策を講じていこうとする姿勢は評価できますが、その前段として、石原知事は金融行政において大失態を演じ、しかも、その総括さえされていないわけですから、その実効性を疑われても仕方がありません。
 そこでまず、政策決定過程について伺います。
 今回の三百億円は、通常の手続と違って、予算案に盛り込まれています。つまり、通常の施策であれば、昨年十一月の各局概算要求として公表され、それらの中から査定されたものが、年明け一月の東京都予算原案の中に盛り込まれるものですが、今回の三百億円は、十一月に所管局が要求したものでもなければ、その後、連携先の信金や信組などから要望があったものでもありません。
 そこでまず、この予算案及び条例案は、いつ、どのような認識、経過を踏まえて提案されるに至ったのか、見解を伺います。
 また、今回の制度では、東京都が債務不履行額の八〇から九〇%程度の損失補助を実施するとしていますが、公金を使って新たに損失補助をする制度をつくるのであれば、まずは、その損失額を全体としてどの程度と見込んでいるのかを明らかにするべきであります。つまり、都民にどのぐらいのリスクをお願いするつもりなのかということです。損失額の見込みについて、見解を伺います。
 さらに、今回、制度のスタートを夏ごろとして、二十一年度の融資規模を五百億円としていることから、平年度ベースでは、より大きな融資規模も想定をされます。
 しかし、市場の適正規模を見誤って失敗した新銀行の轍を踏まないためにも、支援すべき中小企業はどういうところであるのか、そのような中小企業はどのくらいあるのかなどを適切に把握していく必要があります。
 また、融資対象を、取扱金融機関と一定期間取引を継続している中小企業としていますが、一定期間とはどの程度で、その中小企業数はどの程度あると見込んでいるのでしょうか。
 そこで、今回支援対象としている中小企業はどのような中小企業なのか。一定期間とはどの程度で、市場規模をどの程度と見込んでいるのか、見解を伺います。
 条例案には、知事にゆだねる部分が幾つか規定されていますが、事、金融行政において、石原知事の裁量にゆだねる部分が多いことは極めて危険であります。
 特に条例第四条では、東京都が実施する措置として、貸付原資の預託、損失の補助と並んで、知事が特に必要と認めた措置と記されている内容は、具体的にどのようなことを想定しているのでしょうか。
 また、第三条に規定される中小企業向けの融資を実施する際に要件とされる、知事が別に定める要件とは、具体的にどういうことを想定しているのか。それぞれ答弁を求めます。
 一方で、今回の制度設計は、新規のお客さんにスコアリングモデルを使って五千万円までの融資を可能としてしまった新銀行を反面教師としていることもうかがえます。特に、制度融資と違って保証協会の審査さえ必要としないのであれば、まさに制度の根幹を金融機関の目きき力が担っているものと考えます。
 しかし、都民の血税一千億円を毀損させ、その後、金融庁の検査によって、与信審査体制も含めて業務改善命令まで出ている新銀行東京については、新たな損失補てんを前提とし、かつ、都民の税金を預託するに足る十分な社会的信用、評価は得られていないといわざるを得ません。
 仮に公金を入れるとすれば、当然都民からの相当の不安、批判が想定をされますが、東京都はどのように説明責任を果たすのか、見解を伺います。
 さて、中小企業への資金供給の大きな柱は、何といっても制度融資です。都は、二十一年度の予算の中で、中小企業制度融資として二千二百五十億円を計上し、融資目標額を今年度に引き続き一兆七千五百億円にしています。
 今回の予算編成過程において、産業労働局は、制度融資の金利引き下げのための預託金の積み増しを要求していましたが、市中金利が下がったこともあり、予算化は見送られました。
 しかし、中小企業にとっては、金利が低いことにこしたことはなく、一方で、預託金は金融機関に預けるお金であって、決して戻ってこないお金ではありません。
 こうしたことを踏まえれば、例えば、オリンピック基金にお金を積んだままにするのではなく、一時的にでも金融機関に預託することで、中小企業の円滑な資金供給に役立てるべきであります。
 私は、預託金の積み増しなどによる中小企業への資金供給のさらなる円滑化を求めるものでありますが、見解を伺います。
 また、東京都は、昨年九月の補正予算で、経営メニューの信用保証料を十分の一程度の補助から二分の一の補助に拡充するとともに、十月末の緊急対策Ⅱにおいて、小口資金の融資についても二分の一の補助を新設いたしました。
 各区市町村の中には保証料補助を大胆に実施しているところも多いようですが、東京都においても、中小企業の厳しい経営状況にかんがみ、期間を限定するなどして補助率をさらに引き上げていくべきと考えますが、見解を伺います。
 制度融資とは別に、私は昨年二月の代表質問において、不動産担保や個人保証に過度に依存しない資金調達方法の確保を求めました。これに対して東京都は、予算案の中で、新たに、中小企業が有する機械や設備を担保とした融資制度の創設を盛り込みました。この制度の保証機関がどこになるのかにもよりますが、産業労働局の地道な取り組みは評価したいと思います。
 私は、引き続き、都内の中小企業が持つ知的財産や技術力、経営ノウハウに着目するなどして、不動産担保などに依存しない資金調達方法の確保に向けてさらに取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、防災対策について伺います。
 まず、豪雨対策についてです。
 去る二月三日、東京都技術会議において、局地豪雨対策特別部会から、局地豪雨による災害等の防止について最終報告がなされ、豪雨被害の軽減に向けた五つの提言がなされました。その中の一つとして、治水対策のレベルアップを検討することが盛り込まれております。
 近年頻発している一時間五〇ミリの整備水準を超える豪雨に対処していくために、五〇ミリ整備に続く整備水準として、東京に過去最大の被害をもたらした狩野川台風級の七五ミリの降雨に対処できるよう、施設計画策定に向けた検討を開始すべきとの提言です。
 そこで、この提言を受け、都は中小河川の整備にどのように取り組んでいくのか、伺います。
 東京都技術会議における局地豪雨対策に関する最終報告からさかのぼること約一カ月前の一月六日、国土交通省は、同省の中小河川における局地的豪雨対策ワーキンググループが、国や自治体などのとるべき対策をまとめた報告書を公表しています。
 この報告書では、ゲリラ豪雨と呼ばれる局地的な集中豪雨では、中小河川の水位が急激に上昇するため、水位に基づいて避難勧告などを発令する現在の体制では避難が間に合わないおそれがあると指摘しています。
 そのため、雨量と川の水位上昇の関係を事前に解析しておき、雨量の観測データから直接、警戒や避難などができる体制にすべきであり、地域防災計画にも解析結果を反映すべきとの提言がなされています。
 都の技術会議の最終報告では、洪水予報河川の拡大や雨量水位予測情報の提供についても触れられていますが、都はどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 次に、震災対策についてです。
 このたび財務局は、都庁舎の設備更新等に関する方針を発表しましたが、この中で、都庁舎は災害拠点としての機能を果たすことが求められているとされています。しかし、そのためには、都庁舎そのものが地震によって大きな被害を受けないことが前提となります。
 近年では、都庁舎のような超高層建築物などが長周期地震動に共振し、被害が発生することが懸念をされています。これに対し、例えば、ここ西新宿にある新宿センタービルでは既に、テナント企業の事業継続計画、いわゆるBCPに配慮し、長周期地震動対策を盛り込んだ耐震バリューアップ改修工事が進められております。
 また、大阪府は、庁舎移転を検討している大阪ワールドトレードセンタービルディングに対する長周期地震動による影響を当初の設計者に依頼して調査した結果、構造体のはりや設備に損傷が生じる可能性があることが判明し、既に対策案を検討しています。
 一方、都庁舎の設備更新等に関する方針では、都庁舎に対する長周期地震動の影響を把握する必要性については認めているものの、具体的対策については、国や学会等による検討結果を踏まえた上で、その必要性を判断するという姿勢にとどまっています。これでは、いざというときに都庁舎が災害拠点として本当に機能するかどうかさえわからないのではないでしょうか。
 少なくとも、長周期地震動が都庁舎に与える影響については、一刻も早く把握すべきと考えますが、都庁舎の長周期地震動対策について、所見を伺います。
 次に、外かく環状道路について伺います。
 外かく環状道路はこれまで、大深度地下方式への都市計画変更、基本計画の決定を終えていますが、事業化には至っておりません。このため知事は、二月十三日、国土交通大臣に対し、一刻も早く国土開発幹線自動車道建設会議を開催して外環の整備計画を定め、平成二十一年度の事業着手を要請しました。これを受け、国土交通省は、建設に向けた整備計画路線への格上げをする方向で検討に入ったようであります。
 一方、昨年十一月、国は、今後の道路整備に当たっては、最新のデータに基づく交通需要推計結果をもとに見直した評価手法を用いて事業評価を厳格に実施すると発表しました。私は、必要な道路をしっかりと見分けるとともに、優先順位をつけながら、関係住民の声に十分耳を傾け、整備していくことが極めて重要と考えています。
 外環は、首都圏の高速道路ネットワークを形成する上で必要不可欠な道路であり、早期に整備する必要があることは十分理解しますが、さきの国の発表が外環の事業評価にどのような影響を及ぼすのか、都の所見を伺います。
 また、地下方式に都市計画変更された外環の地上部には、従前より地上部街路の外環ノ2が計画されており、本線の都市計画変更後もそのまま残されております。外環ノ2について、地元では、廃止を含め、さまざまな意見があるようですが、私は、早期整備が必要な外環本線と、この外環ノ2は切り離して進めていくべき、つまり、外環ノ2については、最新かつ詳細なデータをもとに、必要なのか、必要でないのかを再度検証し、計画を廃止することも含めて、地元との合意形成を図っていくべきと考えます。
 外環ノ2の都としての基本的な考え方について伺います。
 次に、救急医療、周産期医療について伺います。
 都の保健医療のさまざまな取り組みを定める保健医療計画では、一九八五年の制度化以来、人口等を勘案して医療圏ごとの病床数の上限も定めています。この病床規制のもと、既存病床が多かった東京都では、精神、結核のほかは一般病床の数を一くくりで算出、コントロールされてきた結果、計画上の数値として不足していないことになる医療圏でも、産科や新生児科、小児科など医療分野ごとに見てみると、惨たんたる状況となっています。
 そこで、私たちは、平成十九年第三回定例会でこの問題を取り上げ、不足している産科、小児科などは病床規制の例外として整備を進めるべきであると主張をいたしました。この点については、昨年三月に国が旧通知を廃止し、都も、産科、小児科の有床診療所を規制の例外とする規定を整備したとのことであります。
 医療計画制度は、地域にとって真に必要な医療を確保するために、必ずしも有効に機能してきたとはいえないと考えますが、都の見解を伺います。
 都議会民主党は、昨年十一月に東京都に対し申し入れを行い、NICUの一・五倍増を求めました。これは、国の基準がつくられた平成二年当時の東京都内新生児数に対する二千五百グラム未満出生児率と平成十七年を比較して約一・五倍となっていることから、少なくとも、国基準に沿った都の旧目標値二百床の一・五倍に当たる三百床が必要であると考えるものであります。
 都は、来年度、十二増とする予算を編成していますが、今後の整備目標について明らかにしておりません。ところが、都が整備目標としてきたNICUがほぼ達成されていても、満床による搬送受け入れ困難は日常化しており、さらなる整備が必要であります。
 医師、看護師の不足が続く中では、手厚い人員配置を必要とするNICUの整備が厳しいことは十分理解しております。しかし、人がいない中で何ができるかという発想は、急場をしのぐために不可欠ではありますが、人を集めるために何をすべきかについて発想することも重要であります。つまり、目標と、それを達成するために必要な施策を明らかにして、しっかりとした支援を行うことを示していかなければならないということであります。
 来年度十二床増とする努力は多としますが、私はあえて、保健医療計画において整備目標を明らかにし、取り組むことを求めるものであります。都の見解を伺います。
 周産期医療の立て直しが喫緊の課題となっており、都は、スーパー総合周産期センターを設置し、母体救命措置が必要な妊婦を必ず引き受ける体制を整備することとしました。生命の危機に直面しているケースについて、最後のとりでを確保できることになります。
 私たちが昨年第四回定例会でも申し上げてきたところでありますが、東京都全体の母体、新生児の救急受け入れ体制を一層強化し、整備していくためには、これに加えて、空床補償などベッド確保対策、二次医療機関への患者集中対策、地域の一次医療機関充実対策が必要です。都の取り組みを伺います。
 また、昨年、多摩地域で立て続けに起きたような、搬送先選定に長時間を要する困難事例について、昨年の予算特別委員会でも取り上げ、早急な対応を求めました。これについては、地域間の調整機能を持たせることとなりました。一方、周産期医療では、人手不足の医療現場が搬送先探しまでしています。
 民主党が当初から求めてきたとおり、現場の過重負担を取り除くため、また、患者を迅速に搬送するためには、各病院の搬送調整支援看護師等に加え、都域で総合調整を行うコーディネート、司令塔機能が必要不可欠であり、設置を急ぐべきだと考えますが、見解を伺います。
 都は、救急医や産科医への手当補助、事務補助者配置、トリアージナース配置補助など、民主党が求めてきたことを予算化し、来年度取り組むとしています。医師の負担軽減策、激務に報いる取り組みは歓迎します。しかし、手当がついたからといって、現場の過重負担を追認するようなことは絶対に避けなければなりません。
 これら事業は、救急、産科医療の現場に人をふやし、現場医師の負担が真に軽減されるものになるよう取り組みを求めるものでありますが、都の見解を伺います。
 こうした取り組みを実現させるきっかけとなった墨東病院の事案では、医師不足で休日の当直が組めない状況にありました。この背景には、いうまでもなく、ここ数年、医療内容が高度化し、医療安全のための手続も複雑化する一方で、診療報酬はマイナス改定、医師、看護師は過酷な労働環境に耐えかね、病院離れが進んだことがあります。さらに、福島の大野病院事件を初めとする医療訴訟や新臨床研修医制度、看護配置基準の見直しなどが追い打ちをかけたといわれます。
 こうした中で、都立病院においては病院改革が行われていました。墨東病院産科の深刻な人手不足は、こうした医療政策、都立病院改革の中でなおざりにされてきた陰の側面の縮図であり、都にも責任はあります。
 知事は、平成十三年から都立病院改革を進めてきましたが、一方で昨年までは、医療の変化に対応した医師、看護師不足対策、激務緩和など、必要な処置をとってきませんでした。東京発医療改革の美名のもと、結果として対応がおくれ、医師、看護師が働き続けられなくなり、不足に拍車をかけたことについて、知事自身は責任の認識、反省がないのか、伺います。
 次に、オリンピック招致について伺います。
 近代オリンピックにとって最も大切な理念は何でしょうか。それはオリンピズムであり、スポーツを通じて人々がフェアプレーの精神のもとに体と精神を鍛錬し、文化や国の違いなどさまざまな差異を超えてお互いに理解し合い、友好を深めて、世界の平和に貢献することであります。つまり、オリンピックは単なる世界最大のスポーツ大会ではなく、ビジネスチャンスでもないのであります。また、このオリンピズムを世界じゅうに広めていくために、開催都市を四年ごとに移動する意義も重要であります。
 ところが、近年のオリンピックを見ると、余りにも肥大化、利権化し過ぎた印象があり、開催可能な都市が世界的な大都市に限られてきています。オリンピックのあり方を考えるとき、私たちは、開催都市の招致レースが、世界にオリンピズムを推進する精神とかけ離れてしまっていないかとの問題意識を強く抱いています。
 そこで、過去三度の大会を開催した我が国日本、そして東京が考えるべき課題は、二十一世紀のオリンピックをより身近で世界に開かれたものとすることができるか、全世界に広めていくことができるかということであります。例えば、これまで開催できなかった都市をさまざまな面でサポートしていく平和・都市外交こそ、まさに日本として取り組むべきことであり、平和・道義国家としての真髄であると信じます。そして、そういった活動を積み重ねる中から、我が国に対する好意的な国際世論が醸成され、自然発生的に東京が開催都市として最もふさわしいと望まれることが理想であります。
 しかるに、今般の東京オリンピック招致は、懸念を抱かざるを得ない点が多々あります。
 まずは、知事が訴えるオリンピックは、理念は幾らでもうたえる、ところから始まり、都民に、オリンピックはもうかるからやろうよといい放ち、都民の全面的な共感を得ていないことです。
 そこでまず、東京は、オリンピズムを第一として、経済波及効果や都市基盤整備は、結果、もたらされるものと自覚することが重要であります。そして、国際社会からも共感を得られるよう、理念をより高め、その熱意を示していかなければなりません。
 都は、今まで大会理念を、国内招致都市を競っているときには、都市文明の英知と日本のわざをオリンピックで表現とし、IOCに申請ファイルを提出したときには、人を育て、緑を守り、都市を躍動させるオリンピックを提示してきました。
 一方、都議会民主党は、三年間かけて、世界平和の希求に重点を置く理念とし、広島、長崎と連携すべきと訴えてまいりました。これは、オリンピックの東京招致にとっても大きなストロングポイントになると考えたものです。
 今回、都は初めて、平和を前面に出した理念を掲げましたが、大切なのは、この理念に魂が入るかどうかであります。知事が考える、世界や日本に平和の貢献をもたらすオリンピックとは一体どのようなものなのか、見解を伺います。
 次に、晴海のメーンスタジアムについてです。
 都は、都議会決議を終えた直後に、これを国立施設として発表しましたが、国内招致都市を福岡市に競り勝った後で、改めて都立施設に変更をしました。本来なら、竣工から半世紀を超えた国立競技場の将来像がまず示され、東京招致が検討されるのがあるべき手順ではなかったのかと考えます。大会後の長期的展望や環境面などから、負の遺産を残さないなど、今後も施設整備について検討を続けていかねばなりません。知事の見解を伺います。
 そして、昨年、私は知事に、再び東京ですばらしいオリンピック・パラリンピックの開催を願うならば、知事みずからが衆参両院議長や各党党首などに、オリンピックの説明と国会決議の要請を行うことがいいとアドバイスいたしました。過去の事例では、全会一致の国会決議が採択されたときに、日本がオリンピック招致に成功しています。
 このことから、知事はあくまでも国会決議の全会一致を目指すべきであります。そして、みずから先頭に立って、真摯に各党から理解と賛同を得るため汗をかくのが、招致委員会の責任者のあるべき姿勢、とるべき態度と考えます。今もって決議がなされていない今回の事態が発生した最大の要因は、知事の姿勢の不十分さによる混乱が招いたものであります。
 しかし、知事は、事実と反する発言を繰り返し、私並びに我が党を批判しました。知事には、招致委員会の責任者として、みずから先頭に立って汗をかくことを改めて求めるものであります。
 都民が求める都政の進め方は、都政情報をわかりやすく提供することです。しかし、知事は都民に、オリンピックは三兆円もうかるから、うそでもいいからやろうよと呼びかけました。みずから、経済効果を強く押し出すのは余り好ましくないといいながらも、経済効果を前に押し出しています。
 また、四割を超える都民が、都政は都民の意見や要望をよく知ることを求めていますが、都政への要望にはオリンピック招致の項目はありません。平成十八年の予算特別委員会では、当時の山口知事本局長が、北京、ロンドンでは立候補都市の承認を受けた前後にアンケートを実施しました、都民の提案については幅広く求めてまいりたいと答えています。果たして都は、都民にオリンピックに関する幅広い提案を求め、計画の周知も図ってきたのでしょうか。都の見解を伺います。
 都は新たに、スポーツ振興基本計画の改定を行いました。都市づくりとスポーツの視点からスポーツ振興を図り、オリンピック・パラリンピック招致都市にふさわしいスポーツ都市東京の実現を目指しています。
 しかし、週一回以上、運動、スポーツをしている都民は三九・二%で、全く実施していない人は二二・二%に上り、都民のスポーツ離れが進んでおります。都内の小中学生の運動能力も全国平均を下回っています。
 このような現状で、都は、二〇一六年のオリンピック開催時に、週一回以上スポーツを実施する都民が六割という、国内最高レベルの目標を設定しました。東京のスポーツを取り巻く環境と課題を踏まえて、招致都市にふさわしいスポーツ都市東京をどうつくり上げていくのか、見解を伺います。
 次に、築地市場の移転問題について伺います。
 一月二十六日、一部の新聞が、豊洲新市場予定地において、発がん性物質であるベンゾ[a]ピレンが公表値の百十五倍の濃度で検出されていたにもかかわらず、これを報告していなかったなどと報じました。知事は、一月三十日の定例会見で、質問した記者に逆切れし、隠した事実はないと強調しましたが、それは全くの見当違いといわざるを得ません。
 そもそも東京都は、移転先の豊洲地区を安全だ、安全だといい続け、さきの知事選で土壌汚染の問題が大きくクローズアップされると、一転、調査に応じ、その結果、環境基準の四万三千倍ものベンゼンが検出をされたのであります。
 このような経緯があるゆえに、市場移転問題については、多くの都民が東京都の姿勢に疑念を抱いているのであります。そして、その根本的な原因は、まず移転ありきだとする石原知事の姿勢にあるのではないでしょうか。
 石原知事は、豊洲の土壌問題の解決に向けて取り組んだ情熱と熱意を持って、改めて築地での現在地再整備を検討すべきではないでしょうか。役所からの説明だけを聞いて、最先端の技術や方向を検証しないのは、石原知事らしくありません。
 私は、石原知事は、まず移転ありきという姿勢を改め、現在地再整備の手法についても具体的な提案を改めて検討し、それぞれの案についてメリット、デメリットを公平に示すべきであると考えます。
 現在地再整備の検討について、石原知事の見解を伺います。
 私は、ベンゾピレンの検査結果を公表しなかったこともさることながら、絞り込み調査をした四百四十一地点のうち、二地点において不透水層が確認できていないことは大問題だと考えます。少なくとも東京都は、昨年六月の時点で、不透水層等の調査データを収受し、十月には状況把握をしていながら、これらの内容を報告せず、故意に隠していたとしか思われない対応をしています。
 例えば、十一月二十日の経済・港湾委員会において、我が党の増子博樹議員の質問に対して、東京都は、不透水層は二メートルから二十メートルの間で連続していると答弁していますが、この答弁のときには既に、不透水層が検出されない地点が二地点もあったのではないですか。これは、情報隠ぺい以前の問題として、もはや虚偽答弁に当たるのではないでしょうか。
 東京都は、二地点で不透水層がなかったことをいつ知っていたのか。それを知っていて、委員会などで不透水層が連続していたと答えていたのか。不透水層が検出されなかったということは、不透水層が連続しているとはいえないのではないか。それぞれ答弁を求めます。
 また、ボーリング調査の結果、不透水層が検出されなかったということは、不透水層に穴があいているということであり、その穴を通じて汚染が拡大していることが懸念をされます。東京都はこの間、既に何度もボーリング調査などで不透水層に穴をあけておりますが、その穴はセメントミルクで固めているから、汚染は拡大していないと主張をしています。であるならば、私は、改めて、東京都と同じ手法をとりながら、不透水層の下についても汚染状況を調査すべきです。
 穴がありながら、不透水層の下に汚染が拡大していないといい切れるのか。仮に拡大していないというのであれば、その根拠を求めるものですが、それぞれ答弁を求めます。
 さらに、今回、東京ガスの調査と東京都の調査を突き合わせることで、不透水層内に汚染物質が浸透していることが明らかとなりました。
 東京都はこれまでも、専門家会議から、粘土層を形成している有楽町層は水を通しにくく、汚染されている可能性は低いとの意見をいただいていると再三答弁してきましたが、この答弁は誤りではないでしょうか。都は何ゆえ、不透水層内に汚染物質が浸透している事実がありながらも、可能性は低いなどと答弁していたのか。実際に不透水層内に汚染が拡大しているのかどうか、改めて調査を実施すべきと考えますが、あわせて答弁を求めます。
 二月六日、東京都は、汚染処理費を五百八十六億円に圧縮するとし、新市場の開場を二〇一四年十二月とする計画を発表しました。しかし、土壌汚染の調査結果に多くの疑義がある中で、既成事実を積み重ねる手法はもうやめるべきであります。
 しかも、技術会議は、議事録の全文や関連する資料などの情報公開が不十分であるばかりか、専門家会議では行われていたパブリックコメントさえ行われておりません。技術会議の情報を公開し、パブリックコメントを実施するとともに、ベンゾ[a]ピレンなどの関係で、専門家会議のメンバーにどのように報告し、専門家からどのような回答があったのかなどについても、全文を公開するなど、都民とのリスクコミュニケーションを図るべきだと考えますが、見解を伺います。
 次に、地方分権について伺います。
 地方分権改革の推進スケジュールは、第二次勧告に続き、五月には、税財政改革などを対象とした第三次勧告の発表や地方分権推進計画の閣議決定、平成二十一年度中の新分権一括法案の国会提出と進んでいきます。
 分権推進には、地方自治体みずからも、その判断と責任において質の高い行政運営を行い、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図っていくことが重要です。
 また、住民みずからも、分権社会に対する意識を高めるとともに、地域、利用者本位の行政サービスによって、みずからの地域社会を活性化していくことが求められています。
 平成二十一年度から個人都民税の寄附金税制が拡充され、都独自に団体を指定できるようになります。都民がみずから判断して応援したい団体を選び寄附を行う決定権が広がることから、地域活性化の促進に寄与することになります。
 第二次勧告における四千七十六項目の義務づけ、枠づけの廃止、縮小も、地域特性を生かす大きな改革です。
 分権推進と東京の自治向上に向けた都の取り組みについて見解を伺います。
 東京都区部における分権と自治のあり方を検討する都区のあり方検討委員会が節目を迎えています。委員会は、事務配分以外の区域や税財政に関する主張が異なる事項をほとんど議論しないまま、スケジュールが延長されることになりました。委員会は活動を開始してから二年になりますが、都区の当事者間の会議のため、関係者を除いた住民一般には決して注目度が高いとはいえません。
 一方、国の地方分権改革推進委員会は、第三者による推進体制をとり、国や都道府県、市町村から直接意見を聞くとともに、地方懇談会を開催し、シンポジウムでは一般の参加者との質疑応答も行っています。
 今後、区民などが主体となったまちづくりを協働で行い、真の自治を確立していくためにも、都区のあり方の検討に区民などの意見の反映が重要と考えます。都の見解を伺います。
 今後、都区間では、将来の都制度や東京の自治のあり方を明確にしていくため、学識経験者を交えた都と区市町村共同での調査研究を始めるとしています。
 先日、横浜、大阪、名古屋の政令指定都市で構成する大都市制度構想研究会が、日本の国際競争力を高めるとともに、国全体の発展に貢献していくため、府県から独立した新たな大都市制度、都市州を創設するとの提言をまとめました。
 東京都区部のあり方の議論を進める都も、地方分権改革や道州制の議論を見据え、東京にふさわしい自治のあり方を根本的に考えなければならない時期に来ています。東京自治制度懇談会や特別区制度調査会など、東京をめぐる自治制度の議論を踏まえ、分権時代の新たな東京自治ビジョンを策定すべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 平成二十一年度は、地方分権改革にとっても転機の年になります。国と地方の税源配分五対五などを目指す税財政改革や、義務づけ、枠づけの見直し、地方行政体制の基盤整備などが、第三次勧告の主な検討課題として挙げられています。特に、税財政改革による地方税源の充実は、分権型社会の構築に必要不可欠なものであります。
 昨年末に策定された国の中期プログラムにおいては、税制抜本改革の基本的方向性として、地方分権推進の観点を重視し、地方消費税の充実を検討するとともに、地方法人課税のあり方を見直すことで、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築を進めるとしています。全国知事会も同じ主張です。地方分権改革推進委員会においても、消費税の配分について考える必要があるとしています。
 都も、税源移譲や税財政に関する意思決定の改善、国庫補助金の廃止、地方交付税制度の改善など、分権時代にふさわしい税財政制度に関する提言を行っていくべきであります。都の見解を伺います。
 以上で、都議会民主党を代表しての質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 田中良議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、財政運営についてでありますが、現在、日本が直面する経済危機を根本的にどう打開していくかは、基本的に国の負うべき責任であります。
 一方、都は、都民生活を危機から守り、東京の将来に責任を持つという立場から、昨年は二度にわたる補正予算を編成し、時期を逸することなく必要な対策を講じてきました。
 さらに、二十一年度予算においては、眼前の危機に対応することはもとより、危機克服への新たな活力を生み出す先駆的な取り組みや、東京の将来をつくるための中長期的な取り組みなどにも重点的に財源を振り向けておりまして、都民の期待に十分こたえていると確信しております。
 今後とも、短期、中長期両面から、都が果たすべき役割を確実に果たすことによりまして、都民を覆う不安や閉塞感を払拭し、東京の未来を切り開いていくように、財政運営の努力を行ってまいります。
 次いで、法人事業税の暫定措置についてでありますが、一昨年申し上げたことがよく理解されていないようなので、繰り返して申し上げますけれども、そもそも日本の税制は、国が勝手に決められるものでありまして、法人事業税を国税化しようと思えば、知事に全く相談することなく決められる法体系になっております。
 そうした中にあっても、都は、法人事業税を東京など大都市から奪うやり方は、地方税の原則をゆがめ、地方分権に逆行するものであると厳しく指摘して、一貫して強く反対してまいりました。
 しかし、これは不可抗力の問題でありまして、だからこそ、一昨年の十二月に福田前総理はわざわざ、法律上は相談する必要がないはずでありますが、都知事である私に対して、地方の窮状への理解を求めてきました。
 私は、これをいわば逆手にとりまして、法人事業税の国税化をあくまで暫定措置にとどめさせるとともに、日本の発展につながる首都東京の重要施策への国の協力を取りつけました。これによりまして、首都東京と日本の可能性を一層広げる羽田空港のさらなる国際化や外環道の整備の推進などにおいて着実に成果を上げてきたと思っております。
 法律の制約のもとにあっても、こうして東京の発展、ひいては日本の発展のために具体的な成果を実現することこそが、東京の責任者として果たすべき役割だと思っております。
 そして、その後の地方財政をめぐる事態は、さきに答弁したとおり、国の主張がいかに誤っておりまして、無責任なものであるかを赤裸々に証明するものとなっております。
 かくなる上は、問題の本質的な解決につながらず、東京の活力をそぐ原因にしかならない法人事業税の暫定措置は、直ちに撤廃すべきであると。
 これはあくまでも主張の主張でありますけれども、しかし、これを実現するためには、具体的方法を模索しましたが、ございません。ございません。法律に訴えても、これは裁判を起こしても、負けるのは自明のことわりでありまして、ならば、違った形での実力行使、場合によっては、ある種のストライキをも考えなくちゃいけないかと思うぐらい、この問題が恒久化されることは、東京にとっては致命的なことになりますし、ひいては国に大きな損害を与えますから、これから皆さんのお知恵をかりて、どういう形に対抗していくかということを考えたいと思っております。
 いずれにしろ、法人事業税の暫定措置は直ちに撤廃すべきであると信じております。都議会の皆様のご協力を得て、ぜひともこれを実現していきたいと思っております。
 次いで、雇用問題に関する国や企業への働きかけについてでありますが、雇用情勢が急速に悪化しております。中でも、近年増加してきた、派遣など非正規労働者において失業者が急増しております。
 こうした非正規労働者には、雇用保険等のセーフティーネットが十分機能していない状況も見られ、速やかに制度を整備することが必要であります。
 国は、雇用保険の適用範囲の拡大、派遣の規制強化などを内容とする改正雇用保険法及び改正派遣法を国会に上程しているところでありまして、国会での審議の動向を注視していきたいと思っております。
 都は、雇用維持、確保のため、既に経済団体に要請を行うとともに、企業に対しても、直接訪問するなどして働きかけております。
 次いで、新銀行東京の経営悪化に対する責任についてでありますが、これは選挙に対するいろいろ思惑もございましょうけれども、都民のために、ぜひ冷静に常識を踏まえてお話をいただきたい。常識がすべてではございませんけれども、やっぱり幾分、その多くの部分は法律によっていると思います。
 新銀行東京が今日の事態に至った責任は、経営陣やそれを選んだ取締役会、ひいては株主としての東京都など、つかさ、つかさにあると思います。
 調査報告書でも述べられておりますけれども、銀行法や金融庁の指針、ガイドラインにも示されているように、銀行には、その公共的性格にかんがみて、経営の独立性が強く求められていること、新銀行東京も株式会社としての所有と経営の分離が図られていたこと、さらには、銀行の株主には会計帳簿等の閲覧請求権が認められておりません。新銀行東京から都への情報提供も限定されております。その点では、トヨタやソニーといった一般の企業と違いまして、東京都は株主としてもミニマムマネージは一切できません。禁止されております。
 このように株主の関与が厳しく制限された中で、実際に経営のかじ取りを行い、巨額の損失を計上した旧経営陣の責任は重く、法的責任が問われたことは当然であると思います。
 小零細企業のために設立した新銀行東京の経営が著しく悪化したことは、まことに遺憾でありますが、新銀行東京の支援先である小零細企業に対する責任を自覚するがゆえに、私はこの銀行の再建を決意しました。それを果たすことが、私の目下最大の責任であると思っております。
 次いで、旧経営陣に対する新銀行東京の訴訟提起についてでありますが、新銀行東京では、外部の弁護士による今回の調査結果をもとに、旧経営陣に対して訴訟を提起することを既に決定しております。このように新銀行東京の姿勢は明確であります。
 その上で、新銀行東京は、損害賠償請求訴訟の提起には、周到かつ慎重に準備を進める必要があるとしておりまして、都としては、訴訟当事者である銀行の判断を尊重します。
 なお、調査報告書によれば、仁司元代表執行役及び丹治元執行役についてはヒアリングを実施することができませんで、刑事告発を行うに足りる証拠を集めることができなかったとしております。
 新銀行東京の現経営陣への評価についてでありますが、現在の経営陣である取締役と執行役は、旧経営陣の負の遺産を引き継いだ中で、銀行の再建に向けて懸命にかじ取りに当たっておりますが、この傷は余りにも深い。現経営陣の努力の結果、最近の業績は、中小零細企業向けの融資が増加するなど、着実に上向いておりまして、これは高く評価すべきであると思います。
 新銀行東京の再建はまだ道半ばでありまして、今後も経営陣に対して、業務改善計画の確実な実行など、さらなる経営改善に向けた取り組みを求めてまいります。
 次いで、都立病院における医師、看護師の不足等に関する認識についてでありますが、近年の医師、看護師の全国的な不足は、国の医療政策の失敗によるものですが、都では国の対策を待つことなく、これまでも積極的に都立病院の人材確保対策を実施してまいりました。
 ここ数年の医師給与の大幅な改善を初め、増加する女性医師や看護師のための院内保育施設の充実や育児短時間勤務制度の導入、さらには業務量軽減のための医療クラークの配置などにより、医療スタッフの待遇、勤務環境は確実に向上していると思います。
 また、若手医師の育成システムであります東京医師アカデミーを開講するなど、都独自の人材育成制度も構築いたしました。
 これらの結果、深刻な不足が生じていた産科医が、この一年で二割以上増加する見込みとなるなど、着実に成果を上げつつあると思います。
 今後も、たがを緩めることなく、質の高い医療人材を十全に確保できるよう、引き続き努めてまいります。
 したがって、都立病院改革のもと、医療人材確保の対策がなおざりにされてきたとのご指摘は当たりません。
 次いで、東京オリンピック大会理念についてでありますが、オリンピズムの目的は、人間の尊厳保持に重きを置く平和な社会を推進することであります。東京大会は、まさにこの目的を実現するため、大会理念を、平和に貢献する世界を結ぶオリンピック・パラリンピックとしたものであります。
 日本は、戦後六十年以上にわたり、一貫して平和を堅持してまいりました。この日本でこそ、民族の融和、国家の協調を培う大きなえにしとなるオリンピックの開催をすることにより、世界の平和に大きな貢献ができるものと信じております。
 招致段階はもとより、大会期間中においても、広島、長崎を初め全国各地との連携事業や事前キャンプなどを実施し、スポーツを通じた国際交流により、平和に貢献するオリンピック・パラリンピックを必ずや実現したいと思っております。
 なお、今の質問の中にありましたが、オリンピックはもうかるから、うそでもやろうぜ、これはだれがいったんですか。私はそういうことをいった覚えはありませんし、これは、私だけではなしに、招致委員会に対する大きな侮辱であります。この発言の出どころをはっきりしていただきたい。場合によっては法的な措置をとります。
 次いで、晴海のメーンスタジアムについてでありますが、国立霞ヶ丘競技場は、IOCの求めるメーンスタジアムを設置することが物理的に不可能であります。また、立地条件のよい晴海において国立で整備するよう、国に対して強く要望しましたが、国は二つの大規模競技場は建設できないとの観点から、合意を得るに至りませんでした。
 そこで、都は、開催都市としての責任を果たすために、晴海に都立で整備することとし、IOCに計画を提出しました。
 施設の建設、運営に当たっては、最先端の環境技術を総動員して、環境負荷を極力低減するとともに、大会後の後利用についても、羽田空港に近いことなどの立地条件を生かし、世界的な競技大会や文化イベントを開催するなど、二〇一六年東京大会のレガシーとして後世に引き継いでいきたいと思っております。
 計画を進めるに当たっては、今後とも、国に対して最大限の協力を強く求めてまいります。
 次いで、築地市場の現在地再整備の検討についてでありますが、豊洲地区への移転については、長い年月をかけて、関係者間で再整備を含めてさまざまな案を検討し、議論を尽くして決定したものであります。
 現在地再整備は、種地がないことに加え、営業を続けながらの工事が難しく、これからの市場に求められる新たなニーズに対応できないなど、多くの困難な課題がございます。
 昨年、業界団体の大多数から出された要望書においても、過去に再整備工事に着手したものの、多くの問題を抱え、とんざした苦い経験があり、築地での再整備は不可能であると明確に述べられております。現在地再整備を求める声がいまだ一部にはありますが、実現性のある具体的な計画を策定することは不可能であります。
 都としては、今回出された技術会議の提言に基づきまして、都民や市場関係者が安心できる安全な土壌汚染対策を講じ、平成二十六年十二月の開場に向け、豊洲新市場の整備を進めてまいります。
 次いで、分権時代の新しい自治ビジョンを策定すべきという主張でありますが、自立した地方がみずからの責任と才覚で地域を主宰することこそ、地方自治の本来のありようであります。国の差配のもとで何もかも全国一律に事業を行うという時代ではもはやなくて、明治以来の中央集権体制は、文明の成熟期を迎えた今日の日本社会では有効性を失っております。
 国の地方分権改革推進委員会においては、地方を縛る国の関与の廃止など具体策を今まさに検討しておりまして、こうした改革を着実に推進することが、連綿と続いてきた中央集権体制を変革する端緒となると思います。
 しかし、自治の意義を全く理解しない霞が関は、権限を墨守する姿勢を一向に崩そうとしない。都は、こうした姿勢を打破すべく、地方分権の推進に向け、国に対して提言するとともに、災害対策などの首都圏特有の課題についても、近隣自治体と連携して実体的な取り組みを推進してまいりました。
 各界などさまざまな立場で道州制が論じられておりますが、区割りばかりに目をとらわれるのではなくて、地方の自立という本質を見失わない議論を重ねることが肝要だと思います。
 今後とも、首都東京にふさわしい自治のあるべき姿の実現に向け、国の動向や都区のあり方の検討状況などを見据えながら、実効性のある取り組みを積み重ねるとともに、その体験をもとにして、強く国に働きかけていくつもりです。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔財務局長村山寛司君登壇〕

○財務局長(村山寛司君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、財政収支の見通しについてでございますが、現在直面している危機がどこまで深く、また長いものとなるかは予断を許さないものでございまして、都財政を取り巻く環境は、今後、より一層厳しさを増す局面が生じることも覚悟しなければならないと、かように認識しております。
 次に、今後の財政運営についてでございますが、厳しい財政環境のもとにございまして、二十一年度予算を積極的な予算として編成できたのは、この間、都税の増収局面にあっても、堅実な財政運営に徹し、基金の蓄積や都債の発行抑制による都債残高の圧縮などにより都財政を再建し、健全性を向上させてきた結果でございます。
 今後、ただいま財政収支に関する答弁で申し上げたように、財政環境がより一層厳しさを増すことも想定される中にありましては、これら基金や都債発行余力を適切に活用し、財政の健全性を維持していくことが重要でございますが、同時に、既存の財源に依拠するのみではなく、効率性を一層向上させるなど、従来にも増して強靱で弾力的な財政体質の確立に向けた努力が重要でございます。
 このため、新たな公会計制度の活用や事務事業評価などにより事業のむだを省き、最少のコストで施策の目的を達成できるよう、施策の実効性を高めるための取り組みを定着、充実させるなど、中長期的な視点に立った堅実な財政運営を行ってまいります。
 次に、都庁舎の長周期地震動対策についてでございます。
 長周期地震動は、周期が数秒から十数秒と長い揺れのことで、周期が長いために人が感じにくい地震波のことでございます。平成十五年の十勝沖地震の際に発生した石油タンクの火災の原因となったとされたことから、初めて問題の重要性が認識されたものでございます。
 この事故以降、超高層建築物への長周期地震動の影響について、さまざまな研究や検討が進められてきておりまして、国においても、長周期地震動対策を定める手法についての調査分析などの検討が行われております。
 都におきましては、これと並行して、既に長周期地震動の影響を解析するためのモデルの作成に取りかかるなど、都庁舎における長周期地震動対策の必要性や内容の検討を進めている状況にございます。
 都といたしましては、この検討を踏まえ、国の検討状況も考慮しながら、必要な場合には、設備更新スケジュールとの整合を図りつつ、長周期地震動への適切な対応を行うことといたしております。
 最後に、分権時代にふさわしい税財政制度についてでございますが、真の地方自治は、地方自治体がみずからの権限と財源に基づき主体的に行財政運営を行うことで初めて実現するものでございまして、都は従来から、こうした観点に基づき、あるべき税財政制度について国に提案を行ってきております。
 具体的には、国から地方への税財源移譲の推進、国庫補助金の原則廃止、地方の実態を踏まえた地方交付税総額の確保などでございます。
 今後とも、真の地方の自立に資する地方税財政制度の確立、税財政の抜本改革の実現に向け、国に求めてまいります。
   〔産業労働局長佐藤広君登壇〕

○産業労働局長(佐藤広君) 十八のご質問にお答えいたします。
 緊急雇用対策の積み増しについてでありますが、都では、雇用機会の創出に向けまして、来年度、都独自に区市町村に対して補助を行うことといたしまして、延べ三十万人分の雇用創出に取り組んでまいります。
 これに加えまして、国からの交付金で基金を造成いたしまして、今後三年間にわたり、雇用創出効果の高い事業を都と区市町村が実施することによりまして、さらなる雇用機会の創出を図っていく考えでおります。
 なお、基金事業の実施要件につきましては、全国知事会や都の提案要求により緩和をされておりまして、今後、多くの事業が実施されるものと予想をしております。
 次に、緊急雇用対策を通じた正社員化の促進についてであります。
 派遣で働く方などの雇用の場が急速に失われていることから、緊急の雇用創出事業は、当面の対応として、都が区市町村と連携して雇用機会の創出に取り組むものであります。
 一方、正規雇用を希望する方には、しごとセンターにおきましてキャリアカウンセリングや職業紹介を行うほか、低所得者向けの就職チャレンジ支援事業や三十代の非正規労働者向けのネクストジョブ事業によりまして就業を支援しております。
 さらに、就職チャレンジ支援事業等で、正社員を採用いたしました企業に対しまして採用助成金を支給するなどによりまして、正社員化を促進してまいります。
 次に、国や区市町村との連携についてでありますが、都は昨年十二月、国と共同で緊急雇用対策本部を設置いたしまして、経済団体に雇用維持の要請を行ったほか、緊急相談会などを協力して実施するなど、雇用対策を実効性あるものとするため、連携を図っているところであります。
 また、就職チャレンジ支援事業におきましても、区市町村の担当者に訓練施設の見学会や研修会等を実施いたしまして、区市町村が、生活相談に加えて対象要件の確認や職業訓練の紹介を行うことができるようにするなど、一体となった事業を進めております。
 今後とも、こうした取り組みによりまして、国や区市町村と連携したサービスを提供してまいります。
 次に、職業訓練の拡大、充実についてであります。
 失業者が急増する中、再就職に必要なスキルを身につけるために、職業訓練が果たす役割はますます重要となっております。
 このため、都は来年度、国の委託訓練の拡大に合わせまして訓練規模の拡大を図るほか、非正規労働者向けに夜間訓練を新設するなど、求職者等のニーズにこたえてまいります。
 次に、非正規労働者の雇用環境整備についてであります。
 中小企業におきましては、パート社員等の処遇改善が進んでいない状況がありまして、雇用環境の整備を図る必要があると考えております。
 このため、都は、モデル的な事業といたしまして、雇用環境改善の意欲がある中小企業をトライ企業と位置づけまして、既に八十三社に対して専門家を無料で派遣をいたしまして、社内規定の整備等について助言を行ってきております。
 トライ企業に対するこうした直接的な支援は、ご利用になった企業から高い評価を受けておりまして、新たなインセンティブの付加は必要ないというふうに考えております。
 今後とも、この事業を通じて得られたさまざまな課題や成果を事例集やホームページ等で積極的に紹介をいたしまして普及させていくことにより、非正規労働者の雇用環境整備を推進してまいります。
 次に、新銀行東京の費用の内訳とその責任の所在についてであります。
 新銀行東京の開業から平成十九年度末までの間の経常収益は二百五十六億円であり、一方、経常費用は千百四億円、特別損失は百六十三億円などとなっております。これらを差し引きました額が、一千十六億円の累積損失であります。
 経常費用の主なものは、人件費百八億円、物件費三百四十億円、資金調達費用百七億円、デフォルト関連費用四百六十億円などでありまして、物件費の中にはシステム経費百五十億円などが含まれております。
 新銀行東京の経営悪化とその責任については、今回の外部弁護士によります報告書におきまして、新銀行東京の開業前から今日に至るまでの間について、さまざまな調査分析を十分に行っております。その中で、旧経営陣のずさんな経営実態について指摘をし、旧経営陣に法的責任のあることが明らかにされました。
 また、都の経営監視が十分に果たされたとはいえない結果となったとしておりますが、先ほど知事がお答えしましたように、銀行の公共的性格にかんがみた経営の独立性、株式会社としての所有と経営の分離、さらには会計帳簿等の閲覧請求権が認められておらず、都への情報提供も限定されていたことなどからすれば、実際に経営のかじ取りを行った旧経営陣の責任は免れないというふうにされております。
 また、マスタープランが過大であったことや、スコアリングモデルが破綻したことの責任についての言及がございましたが、今回の外部弁護士による調査結果報告書でも明らかにされておりますように、マスタープランやスコアリングモデルの策定は、仁司元代表執行役を初め、後に新銀行の執行役等に就任をする七名の方と監査法人など関係者との間での議論の結果を踏まえた成果であることということが明らかにされておりまして、都が一方的に押しつけたものではないというものでございます。
 次に、新銀行東京に対する都の対応についてですが、新銀行東京の平成十八年度中間決算では、純損失が計画と実績とで大きく乖離することとなりました。
 このため、同決算発表後の平成十八年十二月に、都は株主として、新銀行東京に対し申し入れを行いました。その内容は、経常損失の削減のための一層の改善努力や、ビジネスモデルの変更を含む抜本的な経営計画の見直しを行うことにより、経営の健全性を確保しつつ中小企業支援の一層の充実を図ることなどであり、必要な対応を求めております。このため、拡大路線をあおったというご指摘は当たりません。
 次に、昨年、新銀行東京が取りまとめた調査報告書全文の公開についてでありますが、これまでもお答えしたとおり、新銀行東京が昨年三月に取りまとめた調査報告書全文は、旧経営陣の責任を追及する場合に重要な資料であり、個人が特定される可能性がある情報が含まれるため、新銀行東京は公表をしておりません。都としても、銀行のこの判断を尊重いたします。
 次に、新銀行東京の劣後債についてであります。
 劣後債は、企業が発行する社債のうち、元本と利息の支払い順位の低い債券のことでありまして、銀行決算において自己資本比率を算定する際には、補完的に自己資本として算入することができる一方で、金利負担が重いという、そういう特徴があります。
 平成十八年に新銀行東京が発行いたしました劣後債は、発行後五年経過した後には、金利負担がさらに重くなる条件となっております。
 今回、新銀行東京が劣後債を期限前に償還したのは、現下の金融環境における債券価格の下落や将来の金利負担などを総合的に勘案した上で、銀行経営の上で有利だと判断したものでありまして、追加出資を保全するためにも必要なものであります。
 次に、新銀行東京の情報公開のあり方についてであります。
 新銀行東京は、今年度から、中間、期末決算に加えまして四半期決算を開示するなど、みずから情報開示を行っております。
 さらに、都はこれまでも、新銀行東京から報告を受けた経営情報につきまして、銀行の経営に影響を及ぼさない範囲で可能な限りの開示を行っており、今後とも、この考えに変わりはございません。
 一方、新銀行東京は、民間銀行として、厳しい金融経済環境の中での事業運営が求められておりまして、営業上のノウハウや営業戦略など、新銀行東京の競争上の地位を損なうような情報については、当然明らかにできません。
 次に、地域の金融機関と連携した新たな金融支援策に係る予算案及び条例案提案までの経過についてでありますが、都は、急速に悪化する中小零細企業の資金繰りを支援するため、昨年十月末に、国の緊急保証制度に対応した経営緊急を制度融資に設置いたしますとともに、補正予算を編成し、緊急保証制度の積極的な推進を図るなど、都独自の対応を行ってまいりました。
 しかしながら、それ以降も中小零細企業の経営環境の悪化に歯どめがかからないことや、緊急保証制度によりましても資金調達が困難な企業が存在しておりますことから、さらに一歩踏み込んだ支援が必要であると判断をしたところであります。
 そのため、昨年十二月に追加の予算要求を行うとともに、制度の大枠を規定する条例案の検討を開始したものであります。
 次に、本支援策に係る損失額の見込みについてであります。
 本支援策は、新たな融資制度を構築するものでありまして、現時点において損失額の見込みをお示しすることは困難でありますが、制度の安定的な運営を図る上では、当然のことながら、その損失額を抑える必要があると考えておりまして、今後、金融機関等と調整を図ってまいります。
 次に、本支援策の対象となる中小企業についてでありますが、景気後退の影響を受け、緊急保証制度によっても資金調達が困難な中小零細企業が存在をしておりまして、都としては、こうした中でも、高い技術力等により、この難局さえ乗り切れれば将来的に展望が開ける企業などを支援していきたいと考えております。
 また、一定期間取引実績のある企業を対象としておりますが、この期間設定につきましては、今後、融資条件の詳細を金融機関等と調整する中で決定をしていきたいというふうに考えております。
 なお、市場規模の見込みでありますが、現段階では確たる想定をできるものではございませんが、例えば、平成十九年度の東京信用保証協会の保証申し込み全体に対して、保証承諾されなかった金額は約三千億円、これを超えておりまして、こうした資金需要が本支援策の融資対象の一つとなり得るものというふうに認識をしております。
 次に、金融支援に関する条例第四条及び第三条についてでありますが、これらの規定は、本支援策を円滑かつ効果的に推進するため必要な条項でございます。
 第四条第三号の、知事が特に必要と認めた措置は、経済情勢が激しく変動する中で、融資を受ける企業にとりまして、真に必要となる支援の対応に備えるものであります。
 また、第三条の知事が別に定める要件とは、企業の所在地や、金融機関との取引年数といった融資対象の要件の詳細や、金利、融資期間等の融資条件などを想定しているところであります。
 次に、本支援策に参加する金融機関における適正な融資審査の確保についてであります。
 本支援策では、地域の金融機関と連携して、より多くの中小零細企業を支援していきたいと考えておりますが、制度の安定的な運営を図る上では、適正な審査を確保し、損失額を抑制していくことが必要であります。
 このため、地域の金融機関の目ききの力や融資のノウハウを活用いたしますとともに、融資条件等の制度の詳細について金融機関等との調整を進めているところでありまして、適正な審査を確保できる制度を構築してまいります。
 次に、制度融資の預託金の積み増しなどによる中小企業への資金供給の円滑化についてであります。
 来年度予算案におきまして、経営緊急を中心に、預託金を三百九十億円増額しております。あわせて、この間の短期プライムレートの引き下げに対応して、金融機関との協議を経て、経営緊急の最優遇金利を引き下げる考えでおります。
 次に、信用保証料補助率のさらなる引き上げについてでありますが、都内区市町で実施されている制度融資は、融資限度額を一千万円以下など、比較的少額に設定いたしますとともに、自治体の一部では保証料の補助などを実施しておりますが、その内容は自治体により異なっております。
 これに対しまして、都の制度融資は都内全域の中小企業を対象としており、例えば経営支援融資の場合、融資限度額を二億八千万円と設定いたしますとともに、小規模企業者に対する保証料の二分の一補助など、他の道府県と比較しても手厚い支援内容となっております。
 平成二十一年度も現行の保証料補助を継続し、中小企業の資金調達に係る負担の軽減を図ってまいります。
 最後に、不動産担保等に依存しない資金調達方法の確保についてであります。
 都は、平成十九年度から、売掛債権や棚卸資産を担保とした流動資産担保融資を実施しております。
 また、来年度予算案の中には、特に財政基盤が弱く、不動産資産に乏しい小規模企業者を対象にいたしまして、車両や工作機械などの動産を担保とする融資制度の創設を盛り込んだところであります。
 お尋ねの知的財産や技術力等に着目した融資につきましては、担保価値の適正な評価や管理、処分方法に課題が残されております。
 都といたしましては、ただいま申し上げました流動資産担保融資や機械設備担保融資を今後着実に実施いたしまして、不動産担保等に過度に依存しない中小企業の資金調達の円滑化に取り組んでまいります。
   〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕

○都市整備局長(只腰憲久君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、離職者に対する都営住宅の活用についてでございますが、都営住宅は、ご承知のとおり、応募倍率が非常に高く、恒常的な空き家はないことに加えまして、高齢者、障害者等で入居を希望する方も多数おられます。
 また、建てかえのため、居住者の退去後、入居を取りやめている住宅につきましては、大規模な修繕なしに活用できるものはほとんどございません。
 こうしたことから、離職者というだけの理由で、居住の場の確保のために都営住宅を提供することは極めて困難でございます。
 離職者に対しましては、介護職などへの就労支援事業が予定されておりますが、こうした事業に応募し、対象となった方の一時住宅として、民間住宅にあわせ、都営住宅などの公的住宅につきましても、本来の入居対象者の入居に支障を及ぼさないことなどを条件に、適切に対応してまいります。
 次に、外環の事業評価についてでございますが、国は昨年末までに、最新のデータに基づく全国ベースの交通需要予測値を発表いたしました。また、事業評価手法の見直しも行いました。
 外環の費用対便益、すなわち工事費などの費用に対する時間短縮効果などの便益の比率でございますが、これまで三・四四とされておりますが、昨年の手法の見直しを加味いたしましても、なお外環の数値は十分高いとされておりまして、まさに必要な道路でございます。
 引き続き、平成二十一年度事業着手に向けて、一刻も早く国幹会議を開催し整備計画を策定するよう、国に強く求めてまいります。
 最後に、外環の地上部街路についてでございます。
 地上部に計画されております外環ノ2につきましては、地元の方々にさまざまな意見があることは承知をしてございます。
 都はこれまで、計画の廃止などを含めて、この道路の必要性やあり方について、関係区市長からの要請を受けて、地元と話し合うことを約束しております。
 都といたしましては、地上部街路の取り組みを、早期整備が必要な外環本線とは切り離して進めるべきものと考えております。
 今後、早期に地元との話し合いが実現できるよう努めることといたしまして、十分な合意がないまま地上部街路の事業化を進めることはございません。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 六点についてお答えをいたします。
 まず、生活安定化総合対策事業の拡大についてでありますが、行政サービスの提供に当たりましては、受益と負担の観点から、都民を対象とすることが大原則であります。
 本事業について申し上げますと、低所得の状態から抜け出せない方々に対し、都の独自事業として、都税を財源に生活相談や職業訓練、貸し付けなどの支援を行うものであり、当然のことながら、都内の住所要件が求められるべきものと考えております。
 次に、医療計画制度についてでありますが、東京都保健医療計画は、医療法に定める医療計画に加え、保健、医療、福祉の連携に関する取り組みを示した基本的かつ総合的な計画であり、都や区市町村の施策展開の指針であります。
 都は、本計画において、救急医療、周産期医療、小児医療など、事業別に医療体制の取り組みの基本的方向を定めております。
 これに基づき、救急医療の東京ルールの推進やスーパー総合周産期センターの設置、地域医療支援ドクター事業の創設などにより、現下の医療を取り巻く厳しい状況に対応しております。
 今後とも、都は、保健医療計画に基づき、関係機関と協力して、地域にとって真に必要な医療の確保に取り組んでまいります。
 次に、NICUの整備目標についてでありますが、東京都保健医療計画では、従来目標としてきた二百床の確保の後も、引き続きNICUの整備を推進することとしており、来年度末までに二百十六床の整備を予定しております。
 なお、具体的な目標につきましては、近年の低出生体重児の増加等を踏まえ、国の懇談会において増床に向けた整備目標の見直しを検討しており、都においても、その動向を踏まえ、対応してまいります。
 次に、周産期の救急受け入れ体制の整備についてでありますが、都は、総合周産期母子医療センターと救命救急センターが密接な連携をとりながら、救命処置が必要な妊産婦を必ず受け入れる、いわゆるスーパー総合周産期センターを来月にはスタートさせます。
 また、ミドルリスクの妊産婦に対して緊急診療を行う周産期連携病院も、来月、指定をいたします。
 あわせて、地域において、周産期母子医療センターや周産期連携病院と一次医療機関との相互の連携と役割分担を進めるため、ネットワークグループの構築にも引き続き取り組んでまいります。
 これらの施策に加え、都医師会の協力を得て、周産期母子医療センターの休日診療体制を維持、確保していくなど、さまざまな取り組みを重層的に実施し、妊産婦や新生児の救急受け入れ体制の強化を図ってまいります。
 次に、搬送調整機能の強化についてでありますが、周産期母子医療センターにおいて、妊産婦や新生児の受け入れ、搬送調整業務を行う医師の負担軽減を図るため、看護師や事務補助者の増配置について取り組んでおります。
 さらに、今後、都全域を対象として搬送調整を行うコーディネーターを設置する予定であります。
 最後に、医師の負担軽減についてでありますが、都においては、来年度から、救急医に対する救急勤務手当や産科医への分娩手当について支援を行うことにより、処遇改善を図ってまいります。
 また、二次救急医療機関において院内トリアージ、すなわち患者の治療の優先順位を判断する看護師の配置を進め、医師をサポートする体制を強化いたします。
 あわせて、救急医療や周産期医療を担う病院勤務医の交代制勤務や短時間勤務の導入等の勤務環境改善にも取り組むなど、さまざまな施策を実施し、医師の負担軽減を図ってまいります。
 また、国に対し、医師の確保や勤務環境改善などについて、より実効性のある総合的な対策を講じるよう、提案要求しております。
   〔建設局長道家孝行君登壇〕

○建設局長(道家孝行君) 河川に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小河川整備の取り組みについてでありますが、都民の命と暮らしを守るためには、さまざまな工夫のもとに、河川整備を効果的に進めていくことが重要であります。
 このため、神田川や古川を初め、対策を促進すべき河川において河道拡幅や調節池の整備を進めるなど、五〇ミリ降雨対策の河川整備を推進しております。
 さらに、東京都豪雨対策基本方針や東京都技術会議の提言を踏まえ、既往最大の被害をもたらした狩野川台風級の降雨を視野に入れ、今後の河川整備のあり方について検討してまいります。
 今後とも、局地的集中豪雨の増加などにも対応できるよう、河川整備を着実に進めてまいります。
 次に、洪水予報などの取り組みについてでありますが、近年、各地で局地的集中豪雨が増加しており、都民に提供する防災情報の充実を図ることが重要であります。
 これまでも、水防災総合情報システムなどで、インターネットや携帯電話により、雨量や水位のリアルタイム情報を都民に提供しております。
 引き続き、東京都技術会議でも提言された洪水予報を実施するとともに、よりわかりやすい雨量や水位の情報提供に努めてまいります。
   〔東京オリンピック・パラリンピック招致本部長荒川満君登壇〕

○東京オリンピック・パラリンピック招致本部長(荒川満君) 都民への情報提供と都民からの提案についてでございます。
 オリンピック・パラリンピックの開催意義や計画内容につきましては、これまでも、東京都や招致委員会のホームページ、パンフレット、毎月の「広報東京都」定例号などを活用し、PRを実施してまいりました。立候補都市決定時の昨年六月及び開催都市決定一年前の昨年十月には、「広報東京都」の特集号を発行し、その内容をパンフレットにするなどしまして、幅広く都民への情報提供を行ってきたところでございます。
 また、イベントの関係では、都内においては、区市町村との連携によるオリンピックムーブメント共同推進事業の実施、知事と議論する会や各種シンポジウムの開催、全国におきましては、招致大使やオリンピアンによる講演会、スポーツ教室、ふるさと特使による学校訪問などをそれぞれ実施しまして、機運の盛り上げと計画の周知を図りますとともに、それぞれのイベントの場で多くの意見をいただきました。
 さらに、一昨年とことし実施いたしました世論調査の機会をとらえまして、オリンピック・パラリンピックの開催で都民、国民が重視していることや期待していることなどを調査いたしました。
 その結果、これは既に報道発表しておりますが、平和の尊さを訴える、環境を最優先する、子どもたちが健全に育つ環境の整備などに対する要望が非常に高く、これらを立候補ファイルの策定に活用いたしました。
 今後とも、都民、国民の皆様に対してわかりやすい広報に努めますとともに、さまざまな意見をいただき、招致機運の盛り上げと計画内容の充実を図ってまいります。
   〔生活文化スポーツ局長秋山俊行君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(秋山俊行君) スポーツ都市東京についてでございますが、その実現のためには、スポーツ実践層のすそ野を拡大することが必要であるというふうに考えております。
 このため、都は、昨年七月に策定いたしましたスポーツ振興基本計画に基づきまして、地域スポーツクラブへの支援など、身近でスポーツを始められる場の提供や、参加型スポーツイベントの開催によるスポーツを始めたくなるきっかけづくりなど、子どもから高齢者まですべての世代を対象にした取り組みを既に始めているところでございます。
 今後とも、関係各局及び区市町村、関係団体等と連携しながら、スポーツ実施率の向上に向けた取り組みを展開し、スポーツ都市東京の実現を目指してまいります。
   〔中央卸売市場長比留間英人君登壇〕

○中央卸売市場長(比留間英人君) 築地市場の移転に関する八点のご質問にお答えいたします。
 まず、不透水層の状況を確認した時期についてでございます。
 絞り込み調査の報告書については昨年九月末に受理しており、この報告書の内容を確認し、不透水層が確認されていない地点があることを把握したのは十月でございます。
 不透水層が確認されていない地点は、絞り込み調査を実施した四百四十一地点のうち二地点に限られておりまして、また、この二地点に隣接する調査地点はすべて不透水層が確認されていることから、極めて特異な地点であると考えられ、周囲の調査をしてみなければ実態を把握できない状況にございます。
 このため、現在実施している環境確保条例第百十七条に基づく調査の際に、周辺部の調査を行い、実態を把握することとしてございます。
 次に、不透水層は連続していると答えていたことについてでございますが、不透水層が確認されていない特異な二地点を除いて、豊洲新市場予定地の敷地全域で不透水層が連続して分布していることにつきましては、地層の成り立ちや、これまで行った地質調査の結果などから十分に根拠があると考えております。
 不透水層の連続性についてでありますが、豊洲新市場予定地は、埋め立てにより造成された土地で、埋立土の下には自然に形成された有楽町層と呼ばれる地層が存在いたします。有楽町層は、数千年の年月をかけて砂や泥が堆積してできたもので、その成り立ちから、連続性のある地層であり、上部は粘性土などで構成され、極めて水を通しにくい不透水層であるとの見解を専門家会議及び技術会議から得てございます。
 さらに、これまで実施した敷地全域にわたる七十地点の地質調査、四百四十一地点の絞り込み調査の結果では、二地点を除く全地点で不透水層の存在が確認されてございます。こうしたことから、不透水層は連続していると考えております。
 次に、不透水層下の調査についてでございますが、不透水層下のボーリング調査は、不透水層を貫通し、不透水層より上部にある汚染を不透水層下に拡散させる可能性が否定できないため、実施すべきでないと専門家会議は指摘しており、技術会議も同様の見解でございます。
 次に、不透水層下の汚染状況についてでございますが、不透水層が確認できなかった地点については、対策工事に際して、まず、当該地点の周囲を止水矢板で囲み、汚染の拡散を防止した上で、確認されている汚染土壌及び地下水をすべて除去いたします。
 次に、汚染土壌を除去した底面から一メートル単位で汚染物質の有無をボーリングにより確認し、汚染が検出されれば除去するという手順を、汚染物質が二メートル続けて検出されなくなるまで続けてまいります。
 こうした下部への汚染拡大を徹底して防止する底面管理といわれる手法で、不透水層下であっても、深さにかかわりなく、土壌、地下水中の汚染物質をすべて確認、除去した後、セメント固化材等で人工的に不透水層を形成いたします。
 次に、不透水層内の汚染についてでございますが、豊洲新市場予定地での不透水層は、これまで行った地質調査や土質試験の結果、土壌の特性から、極めて水を通しにくく、敷地全域として見た場合、汚染の可能性は低いと考えております。
 ただし、不透水層上端の位置が浅い五街区につきましては、東京ガス株式会社の調査結果及び絞り込み調査の結果から、不透水層内に汚染物質が存在することが想定されておりました。このため、対策実施時に、不透水層中も含めて、深さ方向に汚染物質が二メートル続けて検出されなくなるまで汚染土壌はすべて掘削除去することとしており、このことは、既に専門家会議の検討の中で明らかにされてございます。
 次に、不透水層内の調査についてでございますが、不透水層内の土壌ボーリング調査を行った場合、汚染された地下水を不透水層の深部に浸透させ、汚染を拡大する可能性があり、実施すべきではないと専門家会議及び技術会議から指摘されてございます。ただし、不透水層中の汚染が想定される箇所につきましては、先ほどの底面管理の方法により、汚染物質の確認、除去を行うこととしてございます。
 最後に、都民とのリスクコミュニケーションについてでございますが、豊洲新市場予定地の土壌汚染対策について、都民や市場関係者の理解と協力を得るためには、情報を公開し、共有することが重要でございます。
 技術会議は、各委員が外部からの干渉を受けず、公正な立場で評価、検証を行うことが求められ、また、提案事業者の知的財産に対する配慮も必要なことから、会議を非公開といたしました。
 このたび報告書が取りまとめられたことから、提案事業者の知的財産保護、将来の契約への影響などの観点から公表に適さない情報を除き、会議録、会議資料、ベンゾ[a]ピレン等の関係資料を順次公表しているところでございます。
 これらの報告書等に寄せられる意見につきましては、可能な限り回答していきますとともに、今後、土壌汚染対策を実施していく過程で生かしてまいります。
 今後も、あらゆる機会を通じて情報提供や説明を行い、都民や市場関係者の十分な理解が得られるよう努めてまいります。
   〔知事本局長吉川和夫君登壇〕

○知事本局長(吉川和夫君) 地方分権の推進と東京の自治向上に向けた取り組みについてでございますが、地方が主体的に担うべきさまざまな行政分野において、国の画一的な基準や過剰な関与が数多く存在しております。このことは、地方が地域の実情に合わせた施策をみずからの判断と責任で効果的、効率的に展開する妨げとなっております。
 これまで都は、大臣協議等の手続的な関与を廃止することや、条例で規定できる範囲を拡大することなどを国へ提案してまいりました。
 第二次勧告で示された法令による義務づけ、枠づけの見直しは、こうした都の主張の方向に沿ったものでございまして、その廃止、縮小は着実に実現していくべきものであると考えてございます。
 第三次勧告においては、義務づけ、枠づけの見直しの具体的な内容が示される予定であり、議論の動向等を踏まえながら、今後とも、真の自立に向けた地方分権の推進に取り組んでまいります。
   〔総務局長中田清己君登壇〕

○総務局長(中田清己君) 都区のあり方の検討における住民意見の反映についてでございますが、これまで都と区との間では、幹事会も含めてでございますが、二十数回にわたりまして、事務配分、区域のあり方などにつきまして真摯に検討を行ってきたところでございます。
 ご指摘の住民意見の反映につきましては、首都東京の自治を確立するためにも、住民自治の主体でございます都民、区民の理解を得て進めていくことが重要と認識しております。
 これまでも、検討委員会を公開するとともに、都区双方が提出資料や議論の内容をすべてホームページ上に公表してまいりました。
 今後とも、引き続き情報公開を積極的に行い、都民、区民の意見を検討委員会の議論に反映できるように努めてまいります。

○副議長(石井義修君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時五十六分休憩