○副議長(石井義修君) 七番福士敬子さん。
〔七番福士敬子君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕
○七番(福士敬子君) 第五次利根川・荒川フルプランの策定のため、関係都県は昨年、水需給計画を国土交通省に提出しました。各県の水需要予測は、群馬、茨城、埼玉が二〇〇七年、栃木が二〇〇五年です。千葉は二〇〇二年のデータでしたが、新しい予測をことし三月に行っています。そして、これらはすべて下方修正しています。
東京都は、二〇〇三年の予測データを手直しすることなく出しています。理由を伺います。
また、実態に即した新しい水需要予測を作成すべきだと思いますが、見解を伺います。
利水計画策定に必要な一日最大配水量は、一日平均使用水量と、曜日や気象条件などによる変動幅をあらわす負荷率を使います。負荷率は、夏場と冬場で極端に使用水量が異なると小さくなります。
現在、都の利水計画策定で使われている負荷率は、節水対策が進んでいない十五年以上前に記録されたデータをもとに設定していますが、近年では、夏冬の使用水量の差は小さくなり、負荷率は上昇傾向にあります。都は、二〇〇〇年基準で、過去十五年の最低値を採用していますが、過去五年の最低値を使うところもあり、都はあえて過大に設定したように見えます。
利水計画を策定するに当たり、負荷率の設定方法等の手法を改めるべきだと思います。いかがでしょうか。
水需要予測を行うには、もう一つ、都民の一日使用水量の予測が必要です。都では、個人所得、平均世帯人数などの社会指標と給水人口で一日平均使用水量を予測していますが、公営企業委員会の私の質問で、実績値との間に四%の誤差があると答弁されました。四%の誤差は約十八万立方メートルで、新しい滝沢ダムの都水源量の倍以上になります。
これに対し、例えば横浜市では、家庭用水を用途別に分け、それぞれの減少と増加要因の動向を分析して将来値を求めています。この方式では、説明変数に節水機器の普及率が組み込まれており、従来に比べ精度の高い予測となっています。
この方式で都の一日平均使用水量を算出し、過去五年最低の負荷率で一日最大配水量を試算してみました。これがグラフです。(パネルを示す)
青の四角が実績値ですが、グラフにあるように、都の一日最大配水量は年々下降し、一昨年は五百万立方メートルを切りました。
緑の丸が新予測モデルです。見てのとおり、実績にぴったり一致しております。
これに対して、二〇〇三年の都の予測に基づいた値は赤の丸ですが、グラフのはるか上の方、六百万ラインを超えています。
世界に範を示す東京都こそ、一日平均使用水量の予測は、より精度の高い方式を採用すべきですが、いかがでしょうか。
利水計画は、ダムの建設、維持などの大規模事業を伴います。正確な需要予測を行わずにダム建設に参加することは、厳に慎むべきです。
国の道路事業を見ても、交通需要の下方修正や費用便益分析マニュアルの改定を進めるなど、評価見直しの動きが始まっています。
八ッ場ダムへの都の影響は大きく、精度の基準を高めれば、利水、治水の両面から事業の必要性を見直すことが可能と考えますが、知事の見解を伺います。
次に、非正規労働者、ワーキングプアが問題となり、社会的に解決が迫られています。特に非常勤の多くは女性であることから、このことは女性差別の問題でもあります。今や公民を問わず、非常勤職員が正規職員と同等の仕事を現場で行っており、差別、格差を解消していくことが課題です。
少なくとも雇用の安定と均等待遇実現、このことを東京都、二十三区が先駆けて実践していくべきです。
現に、人材確保のために、各区は非常勤職員の雇用に工夫を凝らしてきました。しかし、東京都は、この改善方向とは逆に、雇用継続を否定した通知を昨年十月に出し、二十三区の昇給制度実施に待ったをかけています。これは、総務省にお伺いを立てるまでもなく、法律と現実が乖離しているということです。
ワーキングプア解消のかなめとなるべき非常勤昇給制度の実施に向けて、地方自治体の権限尊重こそ、人材確保の生き残り作戦ではないでしょうか。助言、勧告を超えた押さえつけの通知は、自身の首を絞めることになると思われます。
むしろ現場に近い都は、法律を変えるよう、国へ申し入れをすべきだと思いますが、見解を伺います。
また、都としても、雇用の安定と均等待遇実現に向けて、東京都自身が非常勤の待遇改善に取り組むことによって、初めて民間事業者に説得力を持つことになると思います。人口減少に向かっている今後の人材確保に向け、どのように対策をとろうとされているのか、明らかにしてください。
パート労働法は公務員適用除外とされていますが、都では、専門的、臨時的非常勤職員が五千名を超え、週二十時間以上の専務的非常勤職員もいます。また、二十三区合計で約一万五千の非常勤職員が現実に働いています。
国会でもパートタイム労働法について質問され、舛添厚生労働大臣が答弁されたようですが、ご存じでしょうか。その内容と、その答弁に照らした対策についてはどのように考えておられるのか、伺います。
この八月二十六日に、人事院総裁から、国の非常勤の給与改善について通知が出されました。この通知の趣旨と、この趣旨に照らし、都はどのように対応されるか、伺います。
次に、ことし八月から、ぜんそくの医療費が無料になりました。東京大気汚染公害訴訟の和解勧告により、二〇〇七年十二月に条例を制定したものですが、助成制度では珍しく年齢制限もなく、一年以上の都内居住者には全員が医療費無料とされました。
これが都のポスターです。助成制度は大きくうたっていますが、医療費無料や年齢制限なしということはわかりません。この制度を知らないぜんそく患者もたくさんおられます。これに対して、東京公害患者と家族の会がつくったポスターやチラシには、医療費無料と大きく書かれ、目を引きます。
東京都こそ、医療費無料を強く打ち出したポスターをつくり、わかりやすい広報をすべきです。簡単なパンフレットとともに医療機関や区役所などに置き、申請の動機づけを促す努力をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
また、和解条項では五年後の見直しが定められておりますが、わずか五年で医療費無料助成が廃止にならないよう強く要望しておきます。せっかくの和解勧告における知事の英断を生かしていただきたいと思うものです。
また、大気汚染公害の原因の一つに、PM二・五といわれる微小粒子物質があるとされています。アメリカでは、既に一九九七年にPM二・五の環境基準値が示され、WHOもガイドラインを出しています。
知事は、二〇〇三年、ディーゼル車の規制をされ、真っ黒な排気は確実に減少しました。しかし、ぜんそくや肺がんなど人体への影響は、大粒なSPMよりPM二・五の方が大きなことは、アメリカの環境基準値設定時点でわかっていたはずです。
東京都環境白書二〇〇〇では既に、カリフォルニアの調査で、ディーゼル排気中の粒子の九四%がPM二・五であり、健康被害の原因となることも記載されています。したがって、その時点で疫学調査を始めてしかるべきでした。環境白書には、国立環境研究所のDEPに関する記載にこう書かれています。マウスの精子生産能力の低下を含む知見に対し、まだ確かなことではないという理由で対策を放置してきた過去の歴史をかみしめてみる必要がある、科学的に明らかになってきたときには、もはや取り返しがつかないと。
都は、「十年後の東京」への実行プログラムにおいて、三年後には目標値の設定と都独自の対策の確立をうたっています。しかし、それをまつまでもなく、まず、アメリカやWHO並みの目標値を定めるべきだと思いますが、見解を伺います。
一般環境大気測定局は四十七カ所ですが、PM二・五の測定箇所はわずか四カ所です。例えば大田区は、患者の事前申請受理状況で見た人口比が大きいのですが、SPMのみで、PM二・五ははかられていません。都は、調査箇所を広げ、国に先駆けた都独自の対策を一日も早く進めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。この質問のやさきに国の動向が報道されました。関連も含めてお答えください。
次に、二〇〇〇年五月に成立した児童虐待防止法は、二〇〇四年に一部改正され、通告義務は虐待の疑いまで含み、調査が行われるようになりました。
虐待から児童を守るためには早期の対応は必要ですが、これは家庭に介入することになり、不適切な対応は、時に家庭崩壊につながる大きな影響を与えるものになりかねません。
この法律では、虐待した保護者に対し、相談所が措置、指導するようになっています。しかし、職員が信頼されなければ、保護者は指導に従うどころか反発ばかり大きくなり、効果的な援助は期待できないと思います。
一例ですが、職員が保護者の留守に突然児童を連れ去り、一時保護というメモ書きの名刺は、インターホンの上に置いたため、風で飛び、保護者を狂乱するほど心配させたことがありました。余りの非常識な対応です。保護者は、児童相談所への拒否感と疑心だけを膨らませました。このように児童相談所の責任は重く、虐待の適切な対応を行うためには、児童福祉司等の専門性の確保が重要と考えます。
そこで、児童相談所職員の経験に基づく技術の継承や専門性の確保をどのように行っているか、伺います。
児童相談所は、児童の権利を守る最後のとりでともいわれ、児童虐待の増加、深刻化を背景に、児童相談所の一時保護に対する社会の期待感はますます大きくなっているように感じます。その有形無形の社会的な要請を受け、本来家庭での指導が可能な場合であっても、安全を期する余り、判断が一時保護に傾く傾向はないのかと危惧します。
私自身について考えても、育児の困難さを含め、子どもとともに暮らすことで、大人に、そして親にしてもらったという実感を持っています。
そこで、児童相談所が虐待の状況について十分に事態を把握した上で、親子が家庭でともに暮らせるような援助をもっと強化すべきと考えますが、所見を伺います。
先ほどの例は、拉致のような保護体制をとられ、心配と怒りから、保護者は訴訟、不服審査申し立てなど次々と闘われましたが、この間、行政側は、身体的異常なしという医師の証明と異なる虐待の写真を資料として出すなど偽装的なことまで行い、弁護士の抗告にもその真偽には触れないまま、施設入所が決定されました。その後、家庭復帰を提案されましたが、既に保護者は養育の自信を失いました。この間、次々と担当者はかわられました。児童相談所は、常に真摯な対応をするよう強く求めます。
この例に限らず、親子関係の修復は今後の重要な課題になると思います。児童のためには、分離より、ともに暮らすための保護者のカウンセリングやサポート体制もかなめであり、一日も早く対策が強化されるよう要望しておきます。(拍手)
〔水道局長東岡創示君登壇〕
○水道局長(東岡創示君) 福士敬子議員の一般質問にお答えいたします。
水資源開発基本計画改定に当たっての需要予測データの提出についてでありますが、都の水需要予測は、予測の基礎となる一日平均使用水量について、直近でも実績との間に大きな差は生じておらず、妥当なものと考えております。
このため、水資源開発基本計画の改定に当たっても、現行予測に基づく将来需要量を国に提出したものであります。
次に、負荷率の設定方法についてでありますが、負荷率は、曜日や気象条件、その他さまざまな複合的要因により変動し、また、年度によっての変動も大きいことから、傾向値をもって予測する性質のものではなく、しかも、直近の実績のみをもとに判断すべきものではないと考えております。
こうしたことから、計画負荷率は、昭和六十一年度から平成十二年度の十五年間における最小値を採用しております。
他都市におきましても、横浜市の過去五十年間、札幌市の過去三十年間のほか、主な政令指定都市では、おおむね過去十年から二十年間の最小値を採用しており、都の設定方法は例外的なものではありません。
最後に、一日平均使用水量の予測方式についてでありますが、先ほどお示しいただいたグラフにつきましては、前提となる条件や具体的な算出の方法等がよくわからないため、何とも申し上げられませんが、都の水需要予測は、都民の節水動向が反映された過去の使用水量実績をもとに、重回帰分析手法により将来の使用水量を予測していることから、予測値には、将来における節水の効果が織り込まれているものであります。
〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕
○都市整備局長(只腰憲久君) 八ッ場ダム建設事業についてでございます。
八ッ場ダムは、利水、治水、両面の役割を担う多目的ダムとして事業が進められております。都は、渇水時における利水の安全性の確保とともに、東京を水害から守るという治水の安全性の向上を総合的に検証した上で、八ッ場ダムにつきましては必要不可欠な施設と考えております。
八ッ場ダムの本体工事につきましては、既に河川を迂回させるための仮排水トンネルに着手しておりまして、都や関係自治体はもとより、地元の生活再建を促進するためにも、事業の推進、早期完成が求められております。
都として事業の見直しは考えておりません。
〔総務局長中田清己君登壇〕
○総務局長(中田清己君) 非常勤職員につきましての四点の質問にお答えいたします。
まず、国への法改正の申し入れについてでございますが、各自治体におけます非常勤職員の任用及び勤務条件は、地方公務員法など法令の規定の範囲内で、それぞれが適正に決定すべきものと考えております。
都としては、国に対し、法改正の申し入れを行う考えはございません。
次に、非常勤職員の待遇についてでございますが、都の非常勤職員は、常勤職員とは勤務時間や職責などに違いがあり、異なる制度として位置づけられております。非常勤職員の処遇につきましては、その職務内容などを踏まえ、適切に設定しているところでございます。
次に、平成二十年三月十九日の参議院予算委員会での舛添厚生労働大臣の答弁についてでございますが、この答弁は、すべてのパートタイム労働者を対象とした均等待遇の確保など改正パートタイム労働法の趣旨が生かされるように、公務員法制においても考えられてしかるべきという内容でございました。
しかしながら、現行制度におきましては、都の非常勤職員は、常勤職員とは異なる制度として位置づけられておりまして、その処遇につきましては適切に設定しております。
最後になりますが、お話の平成二十年八月二十六日の人事院通知についてでございますが、この通知は、国の非常勤職員の給与決定方法につきまして、府省間の不均衡を改善することを主たる目的としております。
加えまして、国と地方公共団体の非常勤職員は、法律上の身分が異なっておりまして、国は給与が支給されるのに対しまして、地方では報酬のみしか支給できないなど、制度的な位置づけが異なっております。
いずれにせよ、都としては、非常勤職員の報酬に関しまして、職務内容等を踏まえ、適切に設定し、また運用しているところでございます。
〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕
○福祉保健局長(安藤立美君) 三点についてお答えをいたします。
まず、大気汚染医療費助成制度の広報についてでありますけれども、この制度は、患者さんのすべての医療費が無料になるものではなく、気管支ぜんそく等、対象疾病の治療に要した医療費のうち、保険適用後の自己負担額を助成するものであり、こうした制度の趣旨も踏まえ、パンフレットなどを作成しております。
都はこれまで、制度の内容をわかりやすく都民に伝えるために、東京都や区市町村のホームページ、広報紙等を通じて周知を図ってきました。また、ポスター四万五千枚、パンフレット四十万部を作成し、多くの都民の方が訪れる医療機関、薬局、区市町村窓口等に掲示するなど、効果的な広報に努めております。
さらに、本制度のための専用電話相談窓口を設け、患者の方からの相談にもおこたえをしております。
児童虐待防止に関して、児童相談所職員の専門性の確保等についてでありますが、都の児童相談所では、東京都児童相談所研修計画を策定し、職層、職種に応じて専門的知識等を付与する研修を実施しております。
また、児童虐待などについて的確かつ迅速に対応するため、一つの地域を複数の児童福祉司で担当するチーム制を取り入れておりますが、チーム内での実務を通じて、ベテランから若手に対しノウハウの継承を行っております。
さらに、スーパーバイザーとして弁護士や医師などを配置し、専門的見地からの助言を受けて困難事例等に対応しております。
こうした取り組みを通じて、職員の専門性を確保しております。
最後に、家族への援助の強化についてでありますが、被虐待相談のうち、約八割は児童相談所等の援助を受けながら地域での生活を継続しており、家庭での安全が確保されない場合に限って一時保護を行っております。
一時保護や施設入所をした場合であっても、その家族の状況に適した家庭復帰が可能となるよう、指導や援助を行っております。
さらに、家庭復帰した後は、児童相談所並びに区市町村の子ども家庭支援センターが中心となって、保育所や学校、保健所など地域の関係機関と連携し、グループカウンセリングなどの援助や見守りを行っているところであります。
〔環境局長有留武司君登壇〕
○環境局長(有留武司君) 二点についてお答えいたします。
まず、微小粒子状物質PM二・五の目標値についてでございますが、都はこれまで、米国やWHOの基準に関する知見などを調査、分析してまいりました。PM二・五は、極めて多数の成分から成る汚染物質で、その成分の構成は国によって異なるため、一概に外国の基準を適用することはできないと考えております。
なお、これまで国において、環境目標値の設定を視野に入れたリスク評価が行われてきており、都は、このような動きも踏まえつつ、効果的なPM二・五対策の実施に向けた検討を進めております。
次に、PM二・五の対策についてでありますが、都は、平成十三年度から大気環境中のPM二・五の測定を実施するなど、先駆的に実態の把握に努めてまいりました。
PM二・五は、生成の仕組みや発生源の寄与割合など未解明の部分が多いため、現在、大気中や発生源における成分などについて詳細な検討を実施しております。
今後は、これらの調査結果等に基づきまして、東京の実態に即した対策を検討してまいります。
〔七番福士敬子君登壇〕
○七番(福士敬子君) 時間が余りありませんので、非常勤職員に関してだけ伺います。
法改正の申し入れですが、国ですら社会の動きに沿って変化させるように努力しているのが、舛添大臣の答弁であったり、あるいは人事院の勧告であったりするのではないでしょうか。
都としても、独自の対応、対策を進めるとともに、法改正で雇用体制を保障することは重要ではないかと思いますが、お考えをいま一度お聞かせください。
〔総務局長中田清己君登壇〕
○総務局長(中田清己君) 先ほどお答えしましたが、法改正についての、まず国への申し入れでございますが、各自治体におけます非常勤職員の任用及び勤務条件は、地方公務員法など法令の規定の範囲内で、それぞれが適正に決定すべきものと考えております。
都としましては、国に対し、法改正の申し入れを行う考えはございません。
○議長(比留間敏夫君) 以上をもって質問は終わりました。
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