平成二十年東京都議会会議録第十七号

   午後一時開議

○議長(比留間敏夫君) これより本日の会議を開きます。

○議長(比留間敏夫君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(比留間敏夫君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第二十九号、東京都立学校の授業料等徴収条例の一部を改正する条例外条例二件、知事より、東京都教育委員会委員の任命の同意についてがそれぞれ提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(比留間敏夫君) 昨日に引き続き質問を行います。
 九十四番立石晴康君。
 〔九十四番立石晴康君登壇〕

○九十四番(立石晴康君) 「白くまのすまいをうばう温暖化」、これは中央区子ども川柳コンテストの大賞を受けた作品です。
 十八世紀は産業革命で始まり、二十一世紀の今、環境革命の世紀であります。
 今定例会所信表明で、知事は、皇居周辺において新たに景観誘導の取り組みを開始するとの考えを明らかにされました。皇居周辺の景観をさらに向上させることは、オリンピック招致運動においても、東京の存在感を一層強くアピールします。
 これまでも、都では、浜離宮恩賜庭園を初めとした文化財庭園の周辺などについて景観形成に取り組んできましたが、皇居を中心とする地域については一般的な対応にとどまっていました。
 今回いよいよ、首都東京を象徴する皇居周辺に取り組もうということですが、私は、皇居周辺とは、史跡の外堀や神田川、日本橋川などの範囲まで考える必要があると思います。
 それは、これらの地域が、皇居から東京湾に至る都心河川の水系でもあり、海の森からの海風なども意識しながら、水と緑のネットワークとすることができると考えます。
 この地域は、千代田区だけでなく、中央、港、新宿、文京の各区も関係しています。また、この地区では大規模な民間プロジェクトも活発であり、国の官庁街の建てかえなどの検討も進められています。
 そこで、この地域での都の役割は極めて大きいものがあり、皇居周辺の風格ある景観について、知事のご所見をお伺いいたします。
 次に、都営住宅の建てかえとコミュニティについてお伺いいたします。
 都では、都営住宅の建てかえに当たり、港区の南青山一丁目地区や東村山市本町地区などで民間プロジェクトを推進し、地域のまちづくりと連携する取り組みを進めています。
 先日、私も現場を目の当たりにして、これは都有地を活用し、都民各層に広く開放するアイデアだと高く評価し、地域コミュニティの維持、継承にも大いに役立っています。
 私は、地域コミュニティとは、豊かな人生経験を持つ先輩世代の知恵をかり、その体験を生かし、かつ若い世代の感性と情熱あふれるパワーを、それぞれの年齢を超えて交わることの中にあると思います。
 中央区の勝どき一丁目地区においては、都営住宅跡地を活用し、コミュニティを重視したプロジェクトを進めています。ここでは、子育て世代が安心して過ごせるまちづくりをコンセプトとしており、地域のまちづくりの課題に対応するものと評価します。
 本プロジェクトの具体的内容と期待される効果並びに今後の予定について、まずお伺いをいたします。
 また、同じく、同地域の五丁目地区においては、近接した旧墨田工業高校分校跡地を種地として活用することで、今までの居住者の皆さんが他の地域に転出することなく、都営住宅の建てかえが可能になりました。つまり、一回の移転で済むのであります。
 また、その建てかえ後の跡地を活用することで、周辺地域のまちづくりも、耐震、耐火のまちを促進することになり、これからの建てかえ事業の一つのモデルともなります。
 地域のまちづくりと連携する建てかえ事業を今後一層推進すべきと考えます。所見を伺います。
 次に、都心と臨海地域、羽田をつなぐ新線構想について伺います。
 首都東京の再生、国際都市としての東京をさらに発展させるためには、公共交通ネットワークをより一層強化していくことが不可欠です。
 このような視点で臨海地域を俯瞰すると、現在の交通機関は、新交通「ゆりかもめ」とりんかい線があるだけです。
 「ゆりかもめ」は中量輸送が目的で、車体が余り大きくないために輸送力には限界があり、通常の鉄道と比べ速度が遅く、その上、路線も曲折しているために、所要時間がややかかり過ぎるところがあります。
 もう一つのりんかい線は、新宿方面へのアクセスは充実しているものの、東京駅などの都心方面に行くには乗りかえが必要であり、利便性は高い状況とはいえません。
 この状況を改善するため、私はこれまでも、都心と臨海地域を地下鉄で結ぶ構想を提案してきました。この案は、東京駅を起点とし、八丁堀、新川から大江戸線月島駅と接続した後、晴海一丁目、晴海国際ふ頭、豊洲、有明北に新駅を設置し、国際展示場までの約七キロを結ぶ、都心と臨海の間を縦貫する地下鉄であります。
 この路線の地域は、都心を省けば、ほとんどが都有地で占められており、都有地の有効活用にもつながるものと考えられます。
 さらに、国際化が進む羽田空港までこの線を延ばすことにより、都心と空港のアクセスを飛躍的に向上させることも可能であり、海外から多くの観光客を臨海地域に招き入れる交通インフラとしても期待できます。
 また、直下型地震が発生し、路面交通が麻痺した場合には、食糧、医療などに関連する救援物資を海上から臨海地域の防災拠点に運び、都内各地に輸送する必要がありますが、その際にもこの路線が有効に活用できます。
 オリンピック・パラリンピックのメーンスタジアムは晴海に建設予定であります。そのアクセスについては、バスや既存鉄道の活用により対応することとしていますが、距離と時間が少しかかり過ぎるのではないかと思われます。多くの観客が集中することを勘案すると、私は、大量輸送機関である地下鉄が効果的だと考えます。
 このように、この構想は、臨海の発展のみならず、首都東京が今後、魅力ある国際都市として、また、観光都市として発展を続ける上で極めて重要です。
 この路線は、平成十二年の運輸政策審議会の答申には位置づけられていませんが、今まで述べてきたように、利便性の向上、都有地の有効活用、防災、オリンピック・パラリンピックなど、さまざまな点から非常に効果が高いものと思われます。
 そこで、都心と臨海地域、羽田を結ぶ新線に対する都のお考えをお伺いいたします。
 次に、都営大江戸線の混雑対策についてお伺いいたします。
 本年三月、東京都交通局は、地下鉄大江戸線に転落防止用のホームさくを、百二十億円前後をかけ、平成二十五年度までに三十八全駅のホームに設置する方針を固めました。
 これは、平成十二年にホームさくを設置した三田線に続くものであり、都民の安全のため、一日も早く完成すべきだと考えます。三田線では、ホームさくの設置で、年間数件あった転落事故がなくなりました。大江戸線でも、ホームさくの完成が安全を確保するものと思われます。
 特に、私の地元中央区の勝どき駅の混雑は極めて深刻な状況にあり、乗りかえのない単独駅では一番の乗降客数です。矢田中央区長とともにラッシュ時の現場に立ちながら、想像以上の混雑ぶりでした。
 そこでまず、平成二十五年度のホームさくの全駅設置を待たずに、混雑の激しい駅から一日も早く稼働させるべきだと考えますが、効果的な運用について伺います。
 さらに、勝どき駅では、駅前再開発が予定されているほか、晴海、勝どき地区でも大規模な開発計画があります。
 今後の開発に伴う乗降客の増加により、勝どき駅の混雑に一層の拍車がかかると思われます。
 そこで、例えばホームの増設など、駅の抜本的な改良が必要だと考えますが、所見を伺って質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 立石晴康議員の一般質問にお答えいたします。
 皇居周辺の景観についてでありますが、豊かな水と緑を抱える皇居の周辺は、外国の首都と比べても遜色のない、すばらしい景観を誇っておりまして、かつての江戸城のたたずまいを残す堀や、首都東京の象徴ともいえる国会など、我が国の歴史と文化を醸し出す風格を備えております。
 この美しい景観を保存再生し、国民共通の財産として後世に伝えていくことが我々に課された責任だと思っております。
 オリンピック招致も見据えまして、皇居周辺を新たに景観誘導区域に指定し、大規模建築物の色彩や形態などの誘導にも取り組むことによりまして、二重橋周辺やお堀を見通す眺望など、緑や水辺と調和した風格のある景観を維持向上させていきたいと思っております。
 ただ、これは今の限り、昼間の話でありまして、夜になりますと皇居は真っ暗な森になって、初めて日本にやってきた外人などは、非常に夜歩くと不気味だというぐらい、せっかくの景観が夜は生かされておりませんので、天皇陛下のお住まいや宮殿には光が届いてはならぬと思いますが、せめて二重橋近辺とか、ああいったところをライトアップして、やっぱり首都の心の心に皇居がある、ああいう森があるということを見せることができたらなと思っております。
 年明けには景観計画の素案を公表し、都民の意見を聴取した上で、二十一年度早期の施行を目指していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕

○都市整備局長(只腰憲久君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、勝どき一丁目プロジェクトについてでございますが、本プロジェクトは、都営住宅の建てかえに伴う創出用地を活用いたしまして、子育て世帯が入居しやすい家賃の住宅を初めとする良質な民間賃貸住宅を供給するとともに、幼稚園と保育園一体型の認定こども園や、小児科を含む診療所など、地域に開放された子育て支援施設を整備するものでございます。本年二月に着工しておりまして、平成二十二年度内の完成を目指しております。
 本プロジェクトの完成によりまして、多様な世帯が住まう都心居住の推進と、子育て世帯が安心して快適に暮らせるまちづくりを促進できるものと考えております。
 次に、地域のまちづくりと連携した都営住宅建てかえ事業の推進についてでございますが、建てかえに当たりましては、居住者のコミュニティができる限り継承されるよう、建設計画や移転方法などを工夫しながら事業を進めております。
 また、地元区市と連携し、地域に必要な公園や保育園等の整備を推進するとともに、創出した用地を活用し、民間住宅を整備するなど、地域コミュニティを活性化する取り組みも行っております。
 今後も、地域のまちづくりの課題に対応した建てかえを積極的に推進することにより、住み、暮らす場としての東京の魅力を高めてまいります。
 最後に、都心と臨海地域、羽田を結ぶ新線構想についてでございますが、東京の活力と魅力を高めていくためには、都市活動を支える交通インフラの一層の充実が必要であると認識しておりまして、都はこれまで、お話にもございました、りんかい線の整備や、京急蒲田駅の改良による羽田空港へのアクセス向上などに積極的に取り組んでまいりました。
 お話にございました新線構想につきましては、運輸政策審議会答申第十八号に位置づけられておりませんで、事業主体や採算性などの課題があるものと考えられます。貴重なご提言として、研究課題とさせていただきたいと存じます。
   〔交通局長金子正一郎君登壇〕

○交通局長(金子正一郎君) 大江戸線に関する二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、ホームさくについてでございますが、ホームさくの設置は転落防止に有効な対策であり、交通局では、平成二十五年度までに大江戸線の全駅への設置を完了することを目指し、取り組みを進めております。
 今年度は、使用する装置の技術的な検証と詳細設計を行い、来年度からは、ホームの補強、電力設備の増強などの関連工事に着手し、設置に向けた準備を着実に実施してまいります。
 ホームさくを稼働させるためには、五十三編成ある車両をすべて改修する必要がありますが、この改修が終わる平成二十三年度から順次ホームさくを稼働させられるよう、設置工事を計画的に進めてまいります。
 なお、具体的な設置時期につきましては、今後、駅の混雑状況なども十分考慮しながら検討してまいります。
 次に、勝どき駅の抜本的な改良についてでございます。
 ご指摘の勝どき駅につきましては、駅周辺の開発に伴い、大江戸線各駅の中でも特に混雑が激しくなってきたため、開業後に出入り口を増設するとともに、朝のラッシュ時に誘導員を配置し、お客様の案内を行うなど、さまざまな対策を講じてまいりました。
 加えて、駅に隣接する地域の再開発に合わせ、平成二十二年度には、新たに出入り口を設置する予定でございます。
 しかし、現在も駅周辺の開発が進んでおり、今後さらに利用者の増加が見込まれることから、関係機関とも連携し、ホームの増設も含め、駅の抜本的な改良について検討してまいります。