○議長(比留間敏夫君) 二十七番原田恭子さん。
〔二十七番原田恭子君登壇〕
○二十七番(原田恭子君) 都議会生活者ネットワークを代表して質問します。
まず、今後の都政運営についてですが、年度途中、この時期に一般会計九百三十五億円の補正予算案が提出されたのは、実に十年ぶりです。このうち、五百四十億円が新銀行東京の減資対応です。補正予算で示された中小企業向け支援、雇用対策、新型インフルエンザや耐震対策などは、知事の所信表明で緊急を要するものとの説明に納得するものですが、五百四十億円については、減債基金の義務的積み立ての前倒し実施であるというだけで、説明が十分とはいえません。
都民の理解を得るためには、まず、新銀行東京の経営実態など十分な説明が必要です。新銀行東京に関する都民への説明責任について、知事の見解を伺います。
サブプライムローンに端を発したアメリカの金融危機が、EUをも巻き込んで、世界的な規模の景気後退が懸念されています。新銀行東京への影響をどのように分析しているのか、伺います。
次に、市場移転問題ですが、七月二十六日に、専門家会議は、豊洲新市場の予定地の土壌汚染問題の最終提言をまとめました。九回にわたる専門家会議では、毎回多くの傍聴者が、猛暑の中、傍聴券を求めて列をなしました。抽せんに外れた人々にも音声傍聴ができるように配慮し、傍聴者の質問や意見に対し、専門家が丁寧に答弁するなど、その姿勢は評価するものですが、多くの疑問は払拭されることはありませんでした。特に、専門家会議として必要な対策を都に示し、コストについて都に試算要求をすべきでした。
現在、技術、工法を民間から公募し、学識者による評価、検証して、十一月に土壌汚染対策計画をつくるということですが、残念ながら、この技術会議は傍聴できません。リスクコミュニケーションの視点からも公開すべきと考えますが、見解を伺います。
今後、技術会議からの提言を受け、最終的にはどのような基準で判断するのか、また、庁内でどのように検討していくのか、伺います。
食の安全については、表示の偽装、売れ残りの再利用など不正が相次ぎ、事業者のモラルが問われていますが、今回の事故米の不正流通は、事業者に加え、農水省の責任が重大です。ミニマムアクセスにより、加工用に大量に輸入したものの、カビの発生や農薬が検出された米を返品も廃棄もせず、食用米の販売店に売り、事もあろうに、保育園や病院などまで流れてしまったことを見過ごしたことは、まさに国の犯罪です。
一方、都においては、国に先駆け、八月末から、調理冷凍食品の原料原産地表示が始まりました。安全な食品を食べることは消費者の権利です。
食品安全条例を持つ自治体として、条例にも未然防止を掲げている東京都は、関係するすべての所管が連携して、改めて食の安全確保に取り組んでいくべきと思いますが、見解を伺います。
食品不安に加え、悪徳商法や多重債務など、消費者を取り巻く状況は非常に厳しくなっており、消費者行政の強化が求められます。
都は、最近も圧力式炊飯器や掃除機などの商品テストの結果を公表するなど、消費者の視点に立った取り組みを進めています。
複雑多様化する消費者被害に対しても、非常勤の消費生活相談員が、区の相談員よりも安い報酬のもとで、悪質事業者を相手に、詳細な法律知識や商品に関する精通した情報を駆使しながら、被害救済のため、日々奮闘していると聞いています。
消費者問題の入り口として、東京都消費生活総合センターへ寄せられる期待は大変大きくなっています。経験豊富な相談員が継続できるよう、消費生活総合センターの相談体制を、審議会の提言にもあるように、思い切って強化するよう強く要望します。
それと同時に、今日、都民が直面する多様な消費者問題を行政の力で解決を図るだけでは十分でなく、消費者問題に積極的な団体や都民とともに、消費者の考え方や感性を大事にしながら解決していくことも有意義なことと考えます。消費者や団体との協働について、都の見解を伺います。
次に、土砂災害について伺います。
八月二十九日未明に起きた八王子の川町の土砂災害は、建物崩壊一棟、死傷者はなかったものの、まだ裏山の土砂流出のおそれがあるため、九世帯二十四人は避難したままで、十五日に行政代執行による応急工事が行われました。
災害現場に行ってみると、被害に遭った住宅の裏山はなだらかで、土砂崩れが起きるような形状ではありませんが、住宅の裏側の木々は根こそぎ伐採されて、そこに行き場のない水が流れ、土砂が流出したと容易に想像できます。
都は一年前、斜面に亀裂が見つかったとき、裏山の所有者に対して雨水対策を求め、ブルーシートの処理で一年間しのいできましたが、地域の人は大変危機感を持って、市や都に訴えていました。この情報を受けて、早期の対応が必要だったのではと悔やまれます。
開発許可の審査は申請地域のみで、周囲の状況は審査の対象ではありませんが、今回の被害があった地区は宅地造成工事規制区域であり、丁寧な指導が必要と考えます。
今後、宅地造成工事規制区域内の開発許可においては、周囲の状況を把握し、的確な指導をしていくことも必要ではないかと考えますが、見解を伺います。
土砂災害防止法により、都は、土砂災害警戒区域を指定し、避難体制の整備を促すとして、平成十五年度から基礎調査を始め、現在、青梅市、あきる野市、奥多摩町など、六百八十三カ所の警戒区域を指定して公開しています。
都内には約八千カ所もの危険箇所があるといわれており、その七割が多摩に集中しているということです。多摩の豊かな自然を守りながら、民間の活力をどう導いていくか、気候変動による予想もしない暴風雨などの災害から市民を守る東京都の役割は大きいものがあります。
早期に避難体制を整備するために、市区町村と連携し、警戒区域の指定など、ソフト対策を推進すべきと考えますが、都としてどのように取り組んでいくか、伺います。
障害者地域生活支援については、障害者自立支援法施行以降、障害者の地域での居場所が極めて少ないという声が多く寄せられています。
例えば、障害者が地域で暮らすためのグループホームは、都の目標は達成する見通しですが、都内全体ではまだまだ不足しており、今後もグループホームの増設が必要と考えます。
また、精神障害者のグループホームは、主に通過型とされており、数を確保するとともに、一人一人に応じたきめ細かな対応が求められますが、自立までの課題は大きいものがあります。
そこで、改めて通過型の理由とその支援体制、運用について伺います。
また、緊急時に利用できるショートステイは、環境が変わることへの不安が、親にも当事者にもあることから、いつも通っている作業所やデイサービスなど、日ごろから接しているスタッフが身近に見えるところへの設置が有効と考えますが、都の対応について伺います。
障害者の就労、特に精神障害者の受け皿は喫緊の課題です。企業は、精神障害を持った従業員の対応で済ませていくという傾向で、新たな精神障害の雇用拡大にはつながりません。加えて、精神障害者への対応は、まだまだそのノウハウが企業まで伝わっておらず、支援が必要です。
多摩市の桜ケ丘の病院では、精神障害者の就労は回復のプロセスという考えで、障害者の思いに寄り添いながら、就職先を一緒に探す活動に時間をかけています。そのノウハウは大変参考になるものであり、精神障害者の就労に関して、医療機関と連携して、就労相談員の研修などに生かすべきと考えますが、見解を伺います。
地域医療について伺います。
私の地元の稲城市立病院では、数少ない産科の入院施設があり、多摩地区や川崎市などからの利用者も多いのですが、日野市立病院の産科閉鎖後はさらに増加しています。また、町田市民病院は、周産期医療センターの開設に向けて準備を進めていますが、どの病院も、医師や看護師の確保が課題となっています。
民間では果たし得ない不採算部門も、公立病院は地域の医療として重要であり、病院全体で経営を工夫すると同時に、東京都の支援が必要であると考えます。
兵庫県丹波市にある県立柏原病院では、多忙をきわめる小児科の現状を見て、地域のお母さんたちが小児科を守る会をつくり、地域での小児医療としての役割を果たせるよう、親自身が子どもの症状を見て判断できる小児救急の冊子を作成し、啓発活動を行っています。
医療従事者と住民によるネットワークづくりの取り組みは、大切な地域医療のかなめである公立病院を守る上でも大きな力になっていくと考えます。都は、これについてどう認識し、支援していくか、見解を伺います。
平成二十一年度末、府中に開設される小児総合医療センターは、周産期母子医療センターとして運営される予定です。
近年、ハイリスク出産はふえる傾向にあり、生まれたときに、一%は積極的な心肺蘇生が必要で、初期治療に当たる地域医療機関のレベルアップが求められています。
この夏、生活者ネットワークが視察した長野県立こども病院では、こども病院の医師が月一回は地域に出向き、新生児蘇生法などの講習を行う信州モデルを実施しています。このことにより、地域医療従事者との連携も深まり、いずれ子どもたちが地域に戻ったときに不可欠な地域医療機関の受け入れも容易になります。
都においても、新たに開設される小児総合医療センターにおいて、地域の医療機関などとの連携を積極的に行い、多摩地区における周産期医療の充実を図っていくべきと考えますが、見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 原田恭子議員の一般質問にお答えいたします。
新銀行東京に関する説明責任についてでありますが、新銀行東京の役割や現状については、これまでも、議会審議やさまざまな広報媒体を通じ、都民の皆様にご理解いただくよう説明に努めてまいりました。今定例会においても、そう努めております。
今後とも、最大限、説明責任を果たしながら、再建に向けて取り組んでいくつもりでございます。
他の質問については、関係局長から答弁します。
〔産業労働局長佐藤広君登壇〕
○産業労働局長(佐藤広君) 世界的な景気後退による新銀行東京への影響についてのご質問にお答えをいたします。
今回の米国証券会社の破綻に伴う新銀行東京の直接的な損失はないと聞いております。
なお、一般に、景気後退局面における金融機関への影響につきましては、企業投資の抑制に伴う資金需要の減少、不良債権の増加などが生じるというふうにされております。
現在、世界的な景気後退が懸念されており、東京都といたしましても、こうした経済金融環境の変化を十分に注意していく必要があるというふうに考えております。
〔中央卸売市場長比留間英人君登壇〕
○中央卸売市場長(比留間英人君) 二点のご質問にお答えいたします。
技術会議の公開についてでありますが、豊洲新市場予定地の土壌汚染対策について、都民や市場関係者の理解と協力を得ていくには、情報を公開し、共有することが重要でございます。
そのため、専門家会議については公開で行うとともに、会議録などをすべて公表してまいりました。
技術会議につきましては、各委員が外部からの干渉を受けず、公正中立の立場で評価、検証を行うことが求められ、また、提案事業者が開発した独自の技術資産に対する配慮も必要なことから、会議及び資料は非公開としておりますが、各回の会議終了後に、支障のない範囲で会議の概要を公表しております。
なお、技術会議としての審議が終了した段階では、委員名、会議録等について、すべて公表してまいります。
次に、技術会議の提言に対する都の判断についてでありますが、技術会議では、実効性や経済性等を評価の基準として、最適な技術、工法の選定を行うこととしております。
都は、技術会議の検討がまとまった後、その内容を最大限尊重し、工事の施工計画や経費、工期を算定した上で、土壌汚染対策計画を策定いたします。
策定に当たりましては、副知事を座長に関係各局で構成する、豊洲新市場整備事業の推進に関する調整会議で検討をしてまいります。
〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕
○福祉保健局長(安藤立美君) 五点についてお答えをいたします。
最初に、食の安全確保についてでありますが、都はこれまでも、流通の各段階で、抜き打ちで事業所に立ち入り、食品の取り扱い等について監視指導を実施するとともに、食品に含まれる残留農薬や食品添加物などの検査を実施し、健康被害の未然防止に努めてまいりました。
また、輸入食品の安全確保は、国における水際での検疫が基本であることから、毎年度、国に対して、検疫の強化など輸入食品の監視体制の充実を提案要求しております。
今後とも、国の責任を果たすよう求めていくとともに、監視指導や検査の体制を強化し、関係機関と連携しながら、食の安全確保に努めてまいります。
次に、障害者グループホームについてでありますが、障害者グループホーム、ケアホームは、平成二十三年度末までに五千五百十四人のサービス見込み量の達成を目標としており、現在、都は、独自の特別助成を実施し、整備を促進しております。
お話の精神障害者のグループホームについては、病状の回復等の状況に合わせて、単身で生活するなど自立した生活への移行を支援するため、通過型を設けております。このグループホームでは、精神保健福祉士等の資格のある世話人を配置し、各利用者の状況に応じたきめ細かな支援を行っております。
次に、障害者の短期入所事業についてでありますが、平成十六年三月末の国通知によりまして、短期入所事業は、作業所等の通所施設やグループホームに併設して事業が実施できるよう規制緩和されております。これにより、通所施設等の事業者による運営が可能となっており、こうした取り扱いを事業者に周知するとともに、その整備に努めております。
次に、精神障害者の就労支援についてでありますが、精神障害者は、通常、定期的に通院しており、就労を支援する事業者には、精神疾患に関する基本的医療知識や障害特性に応じた支援技術が必要となっております。また、企業にとっても、医療機関の支援や協力が得られますと、安心して精神障害者を雇用することができます。
こうしたことから、企業への就労を支援する事業者等を対象とした研修におきましては、医療機関から講師派遣を受けて、医療知識や支援技術等の普及を図るなど、医療機関と連携した精神障害者の就労支援に努めているところであります。
最後に、医療従事者と住民によるネットワークづくりについてでありますが、公立病院も含め、重要な社会資源である医療を守るためには、医療従事者が患者の立場を尊重し、住民が正しく医療を知って相互理解を深めることが必要でございます。
このため、都は、医療情報をわかりやすく提供する、暮らしの中の医療情報ナビや子ども医療ガイドを作成し、都民の適切な受療行動を促しているところであります。
また、都内の住民サークルが医師を交えて医療に関する勉強会を開き、医療情報ナビをテキストとして活用している例もあるところであります。
このような取り組みにより、引き続き、医療従事者と住民との相互理解の支援に努めてまいります。
〔生活文化スポーツ局長秋山俊行君登壇〕
○生活文化スポーツ局長(秋山俊行君) 都民や消費者団体との協働についてでございますが、消費者問題の解決のためには、意欲ある都民や消費者団体と行政が手を携え、それぞれの主体性を生かしながら取り組むことが大切でございます。
このため、今回の消費生活基本計画におきましても、施策の方向の一つとして、消費者との協働の推進を掲げているところでございます。
例えば、消費者問題に関する知識を持つ都民が、東京都消費者啓発員として学校や社会福祉施設などで普及活動に携わり、消費者問題に関する講義を行うほか、毎年、消費者団体等とともに、くらしフェスタ東京を開催するなど、消費者、事業者、行政が協働する取り組みを進めてまいります。
〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕
○都市整備局長(只腰憲久君) 宅地造成工事規制区域内での開発許可についてでございますが、規制区域内においては、起伏が多い丘陵地に開発許可をすることになりますので、より慎重な審査を行うことが必要でございます。
審査の際には、開発区域内だけではなく、周辺を含めた安全確認のため、現地調査などを行いまして、状況の把握に努めております。
今後とも、地元市との連絡を密にするなど、適切な開発許可の運用を図ってまいります。
〔建設局長道家孝行君登壇〕
○建設局長(道家孝行君) 土砂災害に対するソフト対策の取り組みについてのご質問にお答えいたします。
土砂災害から都民の命を守るためには、避難体制の基礎となる警戒区域の指定と、土砂災害警戒情報の提供が重要であります。
このため、警戒区域の指定を順次進めており、地元の理解と協力を得ながら、平成二十六年度までに都内全区域での指定を目指してまいります。
また、本年二月から、区市町村による住民への避難勧告や住民の自主避難の目安となる土砂災害警戒情報を、気象庁と共同で発表しております。
今後とも、地元自治体と連携して土砂災害対策を推進し、都民の安全確保に努めてまいります。
〔病院経営本部長中井敬三君登壇〕
○病院経営本部長(中井敬三君) 小児総合医療センターの周産期医療における地域の医療機関等との連携についてお答えいたします。
現在、府中の多摩メディカル・キャンパス内に整備を進めております総合周産期母子医療センターは、多摩総合医療センターの産科部門と小児総合医療センターの新生児部門を一体的に運営することで、多摩における周産期医療の拠点としての役割を担っていくものであります。
この総合周産期母子医療センターでは、ハイリスク分娩など高度な周産期医療を提供することはもとより、地域連携を確保するための会議の開催や、地域の実情や課題に即した研修を実施することなどを通じて、地域の医療機関との連携を図ってまいります。
これらにより、多摩地域における周産期医療の充実を実現してまいります。
○議長(比留間敏夫君) 以上をもって質問は終わりました。
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