○議長(比留間敏夫君) 百二番中村明彦君。
〔百二番中村明彦君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○百二番(中村明彦君) まず最初に、環境対策についてお尋ねをいたします。
地球の温暖化は、年ごとに上昇している傾向となっております。都知事は、以前、フィジー諸島の北にあるツバル国を訪問され、地球温暖化による海水面の上昇で、島が水没の危機にさらされている現状を視察してきたと伺っております。
私たち都議会民主党も、昨年十月に、私と酒井議員、石毛議員、原田議員の四名で、海水面が上昇する原因ともいえる、氷河が融解し始めているグリーンランドを訪問、視察してまいりました。氷河の現状を、現地のカンゲルルススアークの市の職員の方々、地元先住民族のイヌイットの方々から話を伺ってまいりました。
最近の気候の変化、気温の上昇により、以前は雪しか降らなかった土地に雨が降るようになった。このことにより、動物の生態系、生息地の変化が生じ、その土地に生息しているジャコウウシやホッキョクグマが絶滅の危機にさらされていると話をされました。
なぜこのような状況になったのかと問うと、CO2の増加により地球全体の気温が上昇しているからで、カンゲルルススアークの方は、今まで考えられなかった摂氏五度以上の気温が観測されるようになったと。このような現象の原因として予想されることは、無差別な森林伐採、温室効果ガスの増加などによる気温の上昇を危惧しており、先進国の人たちは、氷河の後退という現実を直視し、地球温暖化にもっと関心と危機感を持ってほしいと訴えておりました。
そこで、知事は、このような現状をどうとらえているのか、そして、今後どのように解決していくのか、ご所見をお伺いいたします。
私は、まず第一として、CO2の削減を早急に実施しなければならないと考えております。
京都議定書では、二〇一二年までに一九九〇年対比で六%の削減を義務づけました。洞爺湖サミットでは、二〇五〇年までに温室効果ガスの排出量を五〇%以上削減を呼びかけました。この指針では余りにも遅く、また、基準が甘いといわざるを得ません。
地球の平均気温は、過去百年間で〇・七四度上昇しています。しかし、最近五十年間では、約二倍のスピードで気温が上昇しているのであります。現在の環境のままですと、今世紀末では、平均気温が六・四度上昇するとIPCCの第四次評価報告書で述べられております。
都では、二〇二〇年までに温暖化ガス排出量を二五%削減を目指しておりますが、目標が十二年後では遅いのではないでしょうか。少なくとも五年以内に目標値の設定を修正するべきではないでしょうか。
また、家庭から出る温室効果ガスが、一九九〇年に比べ、三〇%以上も増加していると聞いております。「十年後の東京」実行プログラムの中にも、CO2削減の家庭での取り組みが書かれており、太陽光発電の普及、白熱灯の一掃作戦で蛍光灯への変更などが掲げられておりますが、現状では一般家庭での意識が高いとは考えられません。
そこで、家庭での温室効果ガス削減に対して、その取り組み、広報について、改めて決意とお考えをお尋ねいたします。
こうした地球の温暖化が進んでいく中で、自然環境の破壊から、数々の動物が絶滅の危機にさらされているのであります。国際自然保護連合、IUCNの調査によりますと、現在、地球上の動物のうち、霊長類では、六百三十四種の約半数近くの三百三種が絶滅の危機にあり、その中でも、六十九種については絶滅のおそれが極めて高いと報告されています。
また、地球上の生物を見てみると、IUCNが調査した約四万種の中で、二〇〇六年の段階で約一万六千種以上の生存が脅かされているのであります。ホッキョクグマやパンダ、スマトラトラなども、地球温暖化や開発の影響を受けているのであります。
こうした現状から、身近な動物園において絶滅のおそれのある動物を飼育、展示をし、生息地の現状などについて解説することで、希少動物の保護について、今、人々が何を考え、何をすべきなのかを考えてもらい、これから人類が自然との共生を目指していく上で、将来を担う子どもたちに地球を守る理念が芽生えるようにしていくことが重要なことであると考えます。
一方、絶滅のおそれがある動物の保護については、その動物が生息している国の取り組みだけでは限界があり、各国が連携して取り組むことが、絶滅危惧種動物を保全する上で重要なことと考えます。
その中で、パンダの保護については、中国国内の動物園や保護繁殖センターなどのほか、アメリカ、ドイツ、スペイン、オーストリア、タイ、日本の、既に貸与を受けている六カ国、十の動物園が中心となってパンダ保護国際会議が開催され、繁殖、生息地の保全、人的交流、人材育成などの国際的に協力する枠組みがつくられ、成果を上げているところであります。
パンダは、WWF、世界自然保護基金のシンボルマークとしても活用されており、我が国では年間入場者数が最も多い上野動物園が、希少動物の象徴であるパンダを飼育、展示することによって、上野動物園が動物園の役割である種の保存機能を果たし、希少動物の保護をアピールする効果が高く、大変意義深いところであります。
そこで、我が国を代表する動物園である上野動物園がパンダを受け入れる方向で検討すべきと考えるが、ご所見をお伺いいたします。
次に、地球温暖化防止の観点から、都市の環境対策についてお尋ねいたします。
東京都は、以前は、水と緑と風が豊かな都市でありました。故渋沢栄一初代東京商工会議所会頭が、東京を水の都ベニスと同じように、水の都東京としての都市づくりをするべきと提唱いたしました。東京の河川の代表である隅田川を大いに活用し、日本橋川や神田川などの中小河川を、都民が憩える水辺空間を創出するべきと考えます。
そうした中、「十年後の東京」実行プログラムでも、隅田川の親水テラスの整備計画もでき、一部では着工が進んでいるところではありますが、お年寄りから幼児まで、そして、障害を持たれた方も安心して憩える空間にしていかなければなりません。
そこで、親水テラスに行く方法として、階段を利用させるのではなく、すべてスロープにし、親水テラスには、トンボやチョウチョウを初めとする昆虫やカニなどの小生物が生息できるビオトープを各所に創出し、自然環境も親しめるようにテラス全域を構築すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
また、都市のヒートアイランドの解消として、都の計画しているグリーンロードネットワークの達成時期を、十年後ではなく、スピードアップをして、温暖化を防止する効果を出すべきであります。
私の地元台東区でも、地域の方々が、率先して桜の木を都道にふやしてほしいとの要望があり、都と協議の上、植樹が行われたのであります。このように地域の協力があれば、目標期間の短縮は可能であると思われます。ぜひとも積極的に実現に向けていただきたいのであります。
また、実行プログラムで取り組んでいる都有施設の緑化については、新規建築物のみならず、既存の建築物についても、より積極的に緑化をしていかなければなりません。台東区役所は、建築年数が四十年以上を経た建物ではありますが、壁面の一部を緑化したところ、区民には大好評で、緑化がヒートアイランド防止に役立つとの意識の啓発につながったのであります。
このような事例を踏まえ、都市緑化として、都の建築物の壁面緑化を全施設を対象として実施するべきであります。
ヒートアイランド対策では、「十年後の東京」の中で、海からの風を都市の内部に導く風の道をつくり出すことが提唱されております。
今後の都市づくりにおいて、緑化はもちろんのこと、建物の高さを抑制した中低層の街区計画や、建物間を十分にあけ、オープンスペースをつくる高層建築の指導など、まちづくりの早い段階から環境対策を位置づけ、風の道を確保することが重要と考えます。
そこで、今後の都市づくりにおける風の道の取り組みについてご所見をお伺いいたします。
次に、中小企業支援対策についてお尋ねいたします。
日本経済の先行きは、非常に不透明な状況にあります。都内の中小企業は、原油高に起因して原材料費の高騰に、あるいはアメリカのサブプライムローン問題に端を発しての金融機関の破綻の影響による国内金融機関の貸し渋りなど、厳しい経営状況に直面しているのであります。
東京都では、現在でもさまざまな中小企業支援策を行ってはおりますが、こうした厳しい経済状況の中で、都内の中小企業を守り、都民の暮らしを守っていくためには、今後、より一層こうした支援策を充実させる必要があるのではないでしょうか。
また、こうした中で、中小企業にとって、法人事業税、法人都民税の法人二税を初めとして固定資産税、都市計画税、事業所税など、地方税の税負担は大きな問題であり、東京商工会議所や都内の中小企業の団体などからは、税負担の軽減の要望が出されているのであります。
地方法人課税は、都の大事な財源であることは十分に承知しております。一定の配慮もされておりますが、現在の景気後退の時期には、中小企業支援策として、地方税の軽減も必要ではないかと考えるのであります。
特に事業所税につきましては、東京商工会議所から、都に対しても要望が出されており、地方税法の改正を含めて都が検討されることを強く要望するものであります。
最近、私のところに地元の事業主の方が来られました。その方は、外国と新規の取引の話が持ち上がった、しかし、保証金を積まなければ契約が結べない。その企業は過去の経営状態が悪く、銀行借り入れもしているので、地域の金融機関では融資を受けることができず、制度融資を利用したらといわれたとのことでした。
本来なら、新銀行東京がこうした企業に資金供給を行い、中小企業支援という設立当初の理念を果たすべきであったのですが、再建中の銀行であっては、なかなか難しいといわざるを得ません。新銀行東京の設立理念が果たせないのならば、この銀行の使命は終わったと判断するべきではないでしょうか。
都は、再建は必ずできるといっておりますが、提出された計画書を見ても、信頼に足るとは思われないのであります。もうこれ以上都民に負担をかけることなく、早く清算するべきと改めて主張するものであります。
一方、中小企業の厳しい状況は、まさに待ったなしであります。目前の中小企業を救う重要な役割は、都の重要な金融政策である東京都制度融資にかかっているのではないでしょうか。今こそ都内中小企業の資金繰りを支援するために、制度融資の枠の拡大や、保証審査のさらなる弾力化を図るべきと考えますが、ご所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 中村明彦議員の一般質問にお答えいたします。
地球温暖化対策についてでありますが、地球温暖化については、多くの専門家が警鐘を鳴らしているように、今思い切った対策を講じなければ、あと五、六年のうちにポイント・オブ・ノーリターンに達するといわれるほど、憂慮すべき事態になっております。
例えば、NASAのハンセン教授が指摘しているように、現に北極海の氷は解けつつありまして、このままだと、あと十八年で消滅するといった状況があちこちで起こっております。
温暖化がもたらす破局的な事態を回避するためには、CO2の徹底した削減を速やかに実行することが必要であります。
都は、都民や企業などあらゆる主体に、省エネ、節電の具体的行動を働きかけるため、既に導入を決めた削減義務化を着実に具体化していくとともに、今回新たに都独自の太陽エネルギー普及拡大策を講じるなど、低炭素型都市の実現に向けた施策を着実に展開してまいります。
他の質問については、関係局長から答弁いたします。
〔環境局長有留武司君登壇〕
○環境局長(有留武司君) 家庭でのCO2 削減に関するご質問にお答えいたします。
都は、昨年夏から、都内の小売業界と連携し、都民が電球形蛍光灯をより身近に購入できるよう、白熱球一掃作戦を展開してまいりました。その結果、チェーンストア業界での販売個数が二割から三割ふえるなどの成果も上がってきております。
また、今回、太陽エネルギーの飛躍的な利用拡大に向け、国に先駆けて、家庭用太陽光発電等への補助制度の導入を明らかにしました。
家庭のCO2削減を進めるため、今後、これら低CO2型のエネルギー機器の普及をさらに進めるとともに、ライフスタイルの転換を促す省エネキャンペーンの実施などにも取り組んでまいります。
〔建設局長道家孝行君登壇〕
○建設局長(道家孝行君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、恩賜上野動物園のパンダの受け入れについてでありますが、動物園の役割として、絶滅のおそれのある野生動物の繁殖に取り組むことや、展示を通して環境教育を行うことは、種の保存や来園者の自然保護への理解を深める上で重要であります。
このため、上野動物園では、希少動物の飼育に積極的に取り組み、成果を上げてまいりました。特にパンダについては、人工哺育のための専用ミルクを開発し、中国に提供するなど、その繁殖に貢献してまいりました。
パンダ保護の国際的な枠組みの中では、パンダ保護繁殖への支援が求められることになっておりますが、現在のところ、それを踏まえた共同研究などの内容は、中国から提示されておりません。その内容が明らかになった段階で、十分吟味し、適切に対応してまいります。
次に、隅田川のテラス整備についてでありますが、河川の整備においては、治水機能を確保しつつ、地域特性を踏まえ、自然環境に配慮した水辺空間を創出していくことが重要であります。
隅田川ではこれまでも、水辺の散策を楽しめるテラスや、緑豊かなスーパー堤防の整備を進めてきており、多くの都民に親しまれております。
これらの整備に当たっては、緑の空間を生み出すため、植栽を行っておりますが、一部では、アシが茂り、水生生物が生息できるビオトープを創出してまいりました。
また、テラスには、水辺に近づける階段を設置しておりますが、構造やスペースなどの状況に応じ、可能な箇所については、車いすの利用者などが使いやすいスロープを設置しております。
今後とも、構造的な制約、地域の特色、地元の要望などを勘案し、多くの人々が憩い、安らぎを感じる隅田川の整備に努めてまいります。
〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕
○都市整備局長(只腰憲久君) 都市づくりにおける風の道の取り組みについてでございますが、都はこれまでも、都心部での大規模な開発における積極的な緑化やオープンスペースの確保、保水性舗装の導入などにより、ヒートアイランド対策に取り組んでまいりました。
また、品川駅、田町駅周辺地域などでは、開発計画を適切に誘導し、建築物の配置の工夫などにより、運河沿いという地域の特性も生かして、風の道を確保することとしております。
今後も、「十年後の東京」に示されたとおり、広域的、骨格的な緑を形成し、風の道を生み出すなど、環境に配慮した都市づくりを進めてまいります。
〔産業労働局長佐藤広君登壇〕
○産業労働局長(佐藤広君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、中小企業支援策の充実についてでありますが、都はこれまでも、技術、経営、資金供給など、多面にわたり中小企業を支援してまいりましたが、世界的な金融市場の混乱や、原油、原材料価格の高騰などもあって、都内中小企業を取り巻く環境は極めて厳しい状況となっております。
こうした認識に基づきまして、都は、納品単価の切り下げ要求などに苦しむ中小企業を支援するため、下請取引の紛争を裁判外で解決する下請センター東京を設置いたしました。
また、現下の厳しい経営環境においても、中小企業が積極的に設備投資に踏み出せるよう、今定例会に中小企業設備リース事業に係る補正予算案を提出したところであります。
次に、中小企業の資金繰りに係る支援についてですが、都におきましては、都内中小企業の多様な資金調達を実現するため、新銀行東京の設立や制度融資、CLOなど、さまざまな金融支援策を講じてきております。
お尋ねの制度融資の拡充についてでありますが、原油、原材料価格の高騰などに苦しむ中小企業を中心に、セーフティーネット保証の利用が急増しております。
このため、経営支援融資の目標額を三百億円拡大するとともに、小規模企業者に対する信用保証料の補助率を大幅に引き上げ、資金調達の円滑化と負担軽減を実現すべく、今回の補正予算案に必要な経費を計上したところでございます。
また、信用保証協会や金融機関に対しまして、制度融資の積極的な利用を要請したところであり、今後とも中小企業の資金繰りの円滑化に努めてまいります。
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