〇議長(比留間敏夫君) 三十番山口拓君。
〔三十番山口拓君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○三十番(山口拓君) 初めに、新銀行東京についてお伺いいたします。
四百億円の追加出資を決め、設立当初からの中小企業支援のための銀行であるということを知事は改めて宣言されました。新銀行東京の行く末についても、都民も注目をしているところであります。
しかし、新銀行東京の動向を見ると、極端な縮小を初め、中小企業が厳しいときに、自身が苦しくて融資ができない、事実上の貸し渋りがふえている状態であったり、さらには、融資の両輪たる債権をバルクセールによってサービサーに売却をしたり、新たな事業展開といっても、当初救うといわれた中小企業支援とは乖離したファンドを用いたベンチャー支援を初め、これまでの取引中小企業とは縁のない事業展開ばかりで、当初の理念から、かけ離れたものばかりであります。
これでは、本当に中小企業のために継続をしていくのかどうかという疑問の声が上がってくるのは当然でありますし、これまで信頼して取引をしてきた中小企業や都民への最大の裏切りともとられかねないとは、知事はお思いになられませんか。
そこで、お伺いいたします。そもそも新銀行東京は、この先どうなっていくのでしょうか。そして、だれのための銀行なのでしょうか。また、今後はどのような理念を持っていくのでしょうか。この基本的なことを改めて知事に確認したいと思います。所見をお伺いいたします。
さらに、五月十六日からは新銀行東京に対して金融庁の検査が入っており、検査にはおおむね一カ月、検査の結果が通知されるのは三カ月以内ともいわれています。金融庁検査の結果次第では、さらなる引当金の積み増しなどを迫られる可能性も当然あるわけであります。
そこで、お伺いいたします。金融庁の結果を待たないまま、六月下旬の株主総会において、東京都が株主として新銀行の減資に賛意を示すのは、常識的に考えても、余りにも時期尚早であり、疑問を投げかけざるを得ません。都の見解を伺います。
続いて、少子化対策と子育て支援についてお伺いいたします。
自治体にとって、少子化対策にいかに取り組むかは、極めて難しい課題であります。しかしながら、我が国の未来を考える上で、今まさに対策を講じ、未来に安心と希望を伝え残していかなければならないことは、日本人だれもが思い望んでいることであります。
統計数値を見てみると、東京都の合計特殊出生率は、平成十七年の一・〇〇から平成十九年の一・〇五へ、都内の出生数を見ても、平成十七年の九万六千五百四十二人から平成十九年の十万三千八百三十七人へと伸びを見せていますが、このことをもって少子高齢化の流れに歯どめがかかったと楽観することはできません。
もちろん、単純にこうした数値のみで少子化対策の成果ととらえるべきでないことも承知をしております。もとより少子化問題は個人の価値観による部分が大きく、行政が産めやふやせやという強要まがいの施策を展開するべきでないことは、衆目の一致するところであります。
都が明確なビジョンを打ち出し、子どもを安心して産み、育てやすい環境を着実に整備する施策を地道に積み重ねることで、結果として少子化の進行の歯どめにつながるのが理想なのではないでしょうか。
そこで、お伺いいたします。都としては、個人の価値観による部分が大きい少子化問題をどのようにとらえ、ここまで進めてきた少子化対策について、今後はどのような姿勢で取り組んでいくべきと考えているのか、所見を伺います。
次に、具体的な施策の展開についてですが、十年の時限立法とされた次世代育成支援対策推進法は、早いもので、もうじき折り返しを迎えます。後期の次世代育成支援行動計画を具体的に詳細に作成する時期が近づいているわけですが、都においては、これに先立ち、昨年十二月に、子育て応援都市東京・重点戦略を定めました。
そこで、お伺いいたします。子育て応援都市東京・重点戦略において重点的に取り組む施策の内容と、それをどのような形で都民の協力を得ながら推進をしていくのか、ご所見を伺います。
少子化の要因は単純でなく、一つの問題を解決すれば改善が見込めるとか、現状を劇的に変えるような特効薬があるというものではありません。区市町村では、サービスの拡充をそれぞれが独自に提案し、現状打破に努めており、地域特性のあらわれともいえる保育などのサービスはいいとしても、国民がどこに住んでいても受けられるべきである、例えば妊婦健診や医療費の助成についても、自治体による違いが大きく目につき始めています。
都内における妊婦健診の実施状況を見てみると、自治体の公費負担回数は、国が最低基準として設けた五回と、望ましい数である十四回にほぼ二分されているという結果になっており、公費負担回数においては、自治体による格差が生じています。
また、子どもの医療費の助成についても同様で、都の義務教育就学児医療費助成制度に区市町村が独自に上乗せをして無料化できる自治体と自己負担がある自治体が出てくるなど、実施状況に差が生じています。
自治体が提供する行政サービスは、各自治体の努力や財政状況による性質があるため、妊婦健診や子どもへの医療費助成などについては、本来は、国が根本から画一的に取り組むべき事項と考えております。
そこで伺います。そうはいっても、現実に妊婦健診や義務教育就学児医療費助成制度などの子育て支援において、都内自治体間で実施状況に格差が生ずるこの状態を、東京都としてはどのように認識をしているのでしょうか、お伺いいたします。
続いて、小児救急医療について伺います。
小児傷病者の搬送状況については、本年三月の国の全国調査によると、都内でも受け入れ先病院がなかなか決まらないケースがあることがわかりました。平成十九年の一年間の都内の小児傷病者搬送人数は、転院搬送三千三十一人を含む四万九千八百九十九人でありました。その大部分は一回、二回の照会で受け入れ医療機関が決まっていますが、五回以上照会を要した場合が九百十九件ありました。
また、現場滞在時間については、三十分以上病院が決まらないケースも一千四百二十七件あり、六十分以上が六十二件、九十分以上十三件、百二十分以上も五件という実態でありました。
こういった実態を目の当たりにすると、いざというときへの不安感や、ひいては出産や子育てへの不安を増幅している可能性も否定をできません。そして、いかなる事情があろうとも例外が許されないのが、この救急医療の宿命だと思います。
そこで、お伺いいたします。このような小児救急患者の搬送の実態について、都としてどのように認識をされているのか、あわせて、今後どのように取り組んでいくのか、所見をお伺いいたします。
一方、救急医療の現場が置かれている厳しい状況もまた現実であり、救急医療機関を適切に利用することが、いざというときに円滑に救急医療が受けられることにもつながります。救急医療機関を夜間や休日に利用した小児救急患者のうち、入院に至ったのは五%程度というデータもあります。
しかし、実際にお子さんのぐあいが悪くなったときには、若いご両親などはあわててしまいますし、その病状が重いのか軽いのか、一般の都民には判断のしようがありません。このために、事前に子どもの病気やけがの対応について学習する機会や、ぐあいが悪くなったときに相談できる体制があることが重要になってきます。
都はこれまでも、医療機関案内「ひまわり」や母と子の健康相談室、東京都こども医療ガイドなどを実施してきました。さらに、昨年六月からは、東京消防庁で救急相談センターを開設し、お子さんの病気やけがなどの相談を多く受け、保護者に安心を与えていることと評価をしております。
そこで、お伺いいたします。都民が子どもの病気等について学習する機会を広げたり、このような相談事業を広く普及していくことが重要と考えますが、都の所見をお伺いいたします。
最後に、三軒茶屋駅周辺まちづくりについてお伺いいたします。
三軒茶屋の交差点は世田谷区の玄関口に当たり、近隣三軒茶屋、太子堂地域を初め重要な生活拠点であり、核となる交差点であります。国道二四六号線から都道、通称世田谷通りと区道茶沢通りが三方に伸びる交差点で、その上には首都高速三号線が高架で通り、地下には田園都市線三軒茶屋駅があるなど、高架、地下とも複雑な構造としても特徴的な交差点であります。
この交差点の横断歩道を歩行者や自転車が渡り切るためには、三つの通りと中州の部分、二四六号線二十五メートルと、中州の部分十一メートルを通り抜け、世田谷通り十四メートルと茶沢通り六メートルに分かれております。
中でも、世田谷通りから二四六号線の横断歩道約五十メートルを二十三秒で渡り切らなければならない状態でありました。この秒数では一度で渡り切れない構造であり、一度で渡り切るためには、危険な横断歩道のない交差点内をショートカットするか、駆け足で渡るしかありませんでした。さらにいえば、障害をお持ちの方や子連れの方などは、中州部分で一度あきらめ、二度か三度に分けて渡らなければならなかったのです。
私は、この状況を再三にわたり警視庁に説明をし、信号の問題改善、ひいては、この三軒茶屋の交差点改革を求めてまいりました。その結果、本年六月十日から、この横断歩道の青信号での通行時間がこれまでの二十三秒から三十二秒に延長され、地域や歩行者のだれもが安心して渡り切れる横断歩道として生まれ変わることになりました。
さらには、新たに、直接二四六号線を渡り切れる横断歩道、信号機の設置も、平成二十年度を目途に実施をしていただけることになりました。
これらは、長年にわたり、私も、また地域の皆様も要望した念願であり、評価したいと思います。しかし、この交差点が地域において安全かつ安心の交差点かといえば、まだまだ多く課題が残っています。
そこで、お伺いいたします。三軒茶屋の交差点は、地上のほか、三軒茶屋駅の地下通路により、南北の横断が可能となっています。しかし、バリアフリー化されているのは、交差点から少し離れたパティオという広場に設置をされているエレベーターだけであり、お年寄りや障害をお持ちの方々等の移動が容易ではありません。
三軒茶屋駅周辺のまちづくりを考える上で、こうしたエレベーターの設置等のバリアフリー化を進めることなどの改善は重要な課題の一つであると考えますが、都としてはどのように取り組んでいくおつもりか、所見を伺います。
これまでの三軒茶屋は、この巨大交差点により、まちも商店街も大きく三つに分断をされ、人や自転車の動線も確保されなかったことから、共存し、繁栄していくことがなかなか難しい状況でありました。
また、交差点にほど近い二四六号線沿いの昭和女子大学が広域避難場所に指定をされており、多くの住民が、緊急災害時に本当に二四六号線を横断して避難できるかどうか、今もなお常に不安な状態であります。
防災訓練などにより、横断訓練などが行われておりますが、さらに安全な横断の確保のためには、三軒茶屋の交差点の構造改革は喫緊の課題であります。実現をした信号と横断歩道の大きな二つの改善に加え、さらにバリアフリーの観点からも、この先の問題が解決をされれば、さらなるまちの発展と充実、さらに安全・安心が地域にもたらされることでしょう。
地元地域の悲願でもあるこの交差点改革に、関係各局ともにぜひご協力をいただき、実現をしていただくよう強く要望し、質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 山口拓議員の一般質問にお答えいたします。
新銀行東京の理念についてでありますが、これを論じる前に、世にいういわゆる中小企業のコンセプトに対して正確な認識を持っていただきたい。それは、中小企業と申しましても、ピンからキリまであるわけです。このピンの方の中企業は、例えば、東京が初めてやりましたローン担保証券、社債担保証券の対象になるような企業でありまして、これは一兆円ほどのマーケットになりました。しかも、その中から七十数社の会社が持ちこたえて、上場にまでこぎつけました。
しかし、東京が創設しました新銀行東京が対象としたものは、そうした企業じゃなくて、いわゆる小零細企業、なかんずく本当に二人、三人、五人という少人数でやっている、しかもそれが大事な大事な下請の正確な部品をつくっている、そういう企業であります。
よくいわれますが、この銀行についての批判の中で、金融事情が例の公金の投入によって好転した後、いわゆる大手の金融機関が中小企業にも中企業にも融資するようになった。それは確かにそうであります。しかし、あの金融事情が好転した後、いわゆる大手の金融機関の中で、二人、三人でやっている企業に融資した会社は一つもありません。一つもありません。
ゆえに、私たちはそれを対象にしてきたわけでありまして、例えば、私のかつての選挙区でありました大田区蒲田に、これは日本に知られた削りの名人、岩井さんという人がいます。この人は夫婦二人でやっていらっしゃる。奥さんは機械に手を挟まれて左手が不自由になった。その岩井さんが二人で何を削っているか。あるとき行きましたら、何とそれは、原子力発電所の、原子力の、要するに軸でありました。そういった企業が、実は本当の底辺の底辺の底辺で日本の産業を支えているわけであります。
ゆえにも、私たちはそれをサポートしなくちゃいかぬということで、つまり、高い事業意欲がありながら、技術がありながら資金繰りに窮する、中小企業じゃない、小零細企業を支援するためにこれを設立したものであります。
原油や原材料価格の高騰などによりまして日本の経済の減速感が強まる中、小零細企業を支援していくという新銀行の理念には、一向に変わりはございません。
ただ、それを今後も遂行して、これから金融事情がますます悪化していくであろう状況の中で、この銀行をもともとの理念にのっとって持続していくためには、やはり経営というものを基本的に考え直さなくちゃならないことを痛感しております。
まず、足元を固めるために再建計画を策定いたしました。経営の安定化に向けては、この再建計画だけでは必ずしも十分と考えていませんが、今はまず、多角的な施策を講じて早期に再建を果たすことが何よりも重要であり、都としても全力でこれを支援してまいります。
ちなみに、 従来の経営陣は、数千億という預金というものがありながら、そのアセットを活用する方法を全く考えつきませんで、それに考え及ぶことができませんでした。こういったものを反省しての、大きな動きが、要するに拠点でありまして、そういうものを踏まえて、私たちは、繰り返して申しますけれども、早期に再建を果たすことが何よりも重要だと思って、都としても全力でこれを支援してまいります。
他の質問については、関係局長から答弁いたします。
〔産業労働局長佐藤広君登壇〕
○産業労働局長(佐藤広君) 新銀行東京の減資に関するご質問にお答えをいたします。
新銀行東京では、決算によりまして解消すべき損失額が確定したこの時期に減資を実施する意向であります。
今回の減資は、過去の負の遺産である繰越損失を一掃し、財務体質の改善を図ることができることから、都としては、新銀行東京から提案があれば、前向きに受けとめてまいります。
なお、金融庁の検査は、資産内容など銀行業務全般について行われておりますが、その結果が出される時期は明らかにされておりません。
都といたしましては、再建に取り組む環境を一日も早く整えるために減資を実施しようとする新銀行の意向を尊重したいというふうに考えております。
〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕
○福祉保健局長(安藤立美君) 五点についてお答えをいたします。
まず、少子化問題等についてでありますが、少子化の背景には、子育てに関する経済的、心理的負担の増加や、仕事か育児かの二者択一を迫られているなど、さまざまな原因があると考えられております。
結婚や出産は、個人の価値観や人生観にかかわるものであり、行政の役割は、子どもを産み育てたいと望むすべての人たちが、安心して子育てすることのできる環境を整備していくことであると考えております。
次に、子育て応援都市東京・重点戦略についてであります。
都は昨年十二月、子育て応援都市東京・重点戦略を策定し、働きながら子育てできる環境の整備や保育所待機児童の解消、子育てに優しい環境づくりに重点的に取り組んでおります。
こうした取り組みを着実に進めていくためには、行政はもとより、多くの関係者がそれぞれの分野で力を合わせることが必要でございます。このため、企業、NPO、マスコミなど幅広い分野の団体で構成いたします子育て応援とうきょう会議を活用し、参加団体の自主的な活動を積極的に促しながら、社会全体で子育てを支援してまいります。
次に、妊婦健診などの実施状況に関する認識についてでございますが、お話のような個々の施策につきましては、基本的には、実施主体である区市町村が、地域の実情に応じまして独自の判断によって行っているものと考えております。都は必要に応じ、こうした区市町村の取り組みを支援しております。
次に、小児救急患者搬送の実態等についてであります。
都はこれまでも、休日・全夜間診療事業を実施するなど、小児救急医療の確保に努めてまいりました。こうした中、今回の国の調査では、大都市部の救急患者搬送を取り巻く厳しい状況が改めて示されたものと考えております。
都では、都内の救急医療の現況を踏まえまして、本年の二月から、救急医療対策協議会において、地域の医療機関が相互に協力、連携して、速やかに患者を受け入れる仕組みづくりなどの検討を進めております。
さらに、この六月から、多数の来院患者の中から緊急性の高い重症患者へ優先して医療を提供する小児救急トリアージ普及事業をモデル事業として実施しております。
こうした検討の成果を踏まえ、また、モデル事業の効果を検証することによりまして、迅速かつ適切な救急医療の確保に取り組んでまいります。
最後に、子どもの医療に関する相談事業等の普及についてでございます。
都としては、お話のありました事業のほかにも、冊子やインターネットで医療に関する情報をわかりやすく提供いたします「知って安心 暮らしの中の医療情報ナビ」、あるいは電話とファクシミリで乳幼児の事故防止や急病時の対応策等に関する情報提供を行いますTOKYO子育て情報サービスなど、さまざまな取り組みを行っているところでございます。
今後とも、これらのサービスがより多くの都民に広く利用されるよう、関係機関と協力して普及に努めてまいります。
〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕
○都市整備局長(只腰憲久君) 三軒茶屋駅周辺のバリアフリー化についてでございますが、世田谷区では平成十八年に、いわゆる交通バリアフリー法に基づきまして、三軒茶屋駅周辺地域の基本構想を作成しておりまして、その中で上下移動の円滑化が課題とされております。
お尋ねのエレベーター等の設置は、事業手法を初め、用地の確保、管理主体等さまざまな課題があるものと考えられます。
都といたしましては、区などの取り組み状況を見ながら、必要に応じ適切に対応してまいります。
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