○議長(比留間敏夫君) 百二番相川博君。
〔百二番相川博君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○百二番(相川博君) 私は、初当選以来、多摩格差の是正から多摩の独立へをスローガンに、多摩独立プロジェクトを提唱してきました。もちろん、現行法制度のもとで多摩地域が例えば多摩県として独立することは、現実にはない話であります。私のいう多摩独立プロジェクトとは、補助金頼みの多摩格差の是正ではなく、多摩の自立と真の地方分権を実現するためのプロジェクトであるとご理解いただきたいと思います。
さて、私は、一昨年の十二月に策定された「十年後の東京」を読んで、多摩の独立と、新しい多摩と都心の関係をつくり出す必要性を再認識いたしました。そこで、この質問の機会をとらえ、多摩独立プロジェクトの一環として、環境保全に向けた、いわゆる経済的手段に関連する一つの提言を行いたいと思います。
環境税や課徴金、あるいは排出権取引など、経済的インセンティブを与えて企業や個人を環境保全に誘導する経済的手段は、他の先進国、特にEU諸国と比較した場合、日本の取り組みが最もおくれている分野の一つであります。
EUでは、各国が炭素税を初めとする環境税の積極的導入と、その増税分を所得税や社会保障負担の軽減で相殺することによって、環境保全と経済活性化の双方を追求するタックスシフト政策のような大胆な政策を実施しています。また、二〇〇五年からは、EUの域内で排出権取引制度が開始され、国際的な炭素市場の中核として機能し始めています。
これに対して日本では、いまだに炭素税の導入が実現せず、排出権取引制度に関しても、導入に向けた動きがやっと始まったのが現状であります。
「十年後の東京」では、カーボンマイナス東京十年プロジェクトの中に、経済的手法を活用したCO2排出削減の仕組みづくりを進め、民間事業者が自主的、積極的に対策に取り組む土壌を整備していくとあり、実行プログラムにおける三カ年の事業展開に位置づけられています。
また、都の税制調査会では、炭素税導入などの検討がなされておりますが、いかんせん多摩という観点が弱いといわざるを得ません。
そこで、私は、多摩地域の特性を生かした独自の排出権取引制度を提案したいのでありますが、それを今回は、普通とは少し異なる観点から提起させていただきたいと思います。
今アメリカでは、気候中立を掲げてエコキャンパス化を進める大学の運動が広がっています。気候中立とは、温暖化防止のために、大学のキャンパスから排出されるCO2を実質ゼロにしようということですが、この気候中立を掲げた全米大学学長気候公約、この公約とは公の約束と書きますが、これに署名した大学の数が五百近くあり、その数が現在でもふえ続けています。
この公約では、大学は、温暖化ガスの排出をなくす方法を編み出し、気候中立化を達成するための知識を提供したり、見識ある卒業生を世に送り出すことにより、地域及び社会全体をリードしていかなければならないと述べられています。そして、各大学が独自の行動計画を作成して、カーボンニュートラルへ向けた取り組みを進めています。
アメリカといえば、京都議定書を離脱した、温暖化対策には消極的な国であると考えていましたが、大学レベルでは、このような高い志を掲げた運動が繰り広げられているのであります。
もちろん、日本の多くの大学も、エコキャンパス化を進めていますが、大学によってその取り組みに大きな差があることも現実であります。
ここで、桜美林大学の片山博文准教授のゼミが行った調査を紹介します。この調査は、都内にある主要大学のエコキャンパスへの取り組みを、太陽光、風力、雨水利用、両面コピー、節水、節電、空調設定、ごみの分別、グリーン購入、緑化運動、環境報告書の有無、環境専門部署の有無、ホームページの水準、ISO一四〇〇一など、十七の指標を点数化したものですが、ちなみに最高得点を上げ、エコキャンパス輝く第一位になった大学は、皆さん、どこだと思いますか。
早稲田大学ご出身の皆さん、おめでとうございます。早稲田大学は独自の環境マネジメントシステムを有し、全学の教職員と学生による多様な環境保全活動を推進しています。そして、情報公開が非常に充実しているということであります。
その他のユニークな取り組みとしては、東京大学における紙ごみのリサイクルによる東大ブランドのトイレットペーパーや、都内ではありませんが、千葉大学の学内レジ袋税導入などがよく知られています。
皆様ご承知のとおり、多摩地域は、全国でも屈指の大学集積地域であります。私の地元の八王子だけでも二十一、多摩地域全体では八十を超える大学、短大があります。それぞれの大学が単独でエコキャンパス化に取り組むだけでなく、地域として、アメリカにおける気候中立のような運動を進めていけば、それは社会を動かす大きな力になるはずであります。
もちろん、こうした取り組みは行政主導で上から行うべきものではありませんが、東京都として、カーボンマイナス東京十年プロジェクトにうたっているように、民間が自主的、積極的に対策に取り組む土壌を整備していく責任があることも事実であります。多摩地域を対象とする排出権取引の導入は、まさにそうした土壌整備になり得るものであると私は考えています。
現在、温室ガス削減のネックになっている、大学を含めたオフィスに排出権取引制度を導入すれば、その達成、未達成が大学ブランドに大きな影響を与えるわけですから、大学独自の取り組みを促進することにつながることを確信いたします。
こうした多摩排出権取引の導入について、ご意見をお聞かせください。
また、この制度に限らず、温暖化対策を重視する東京都として、首都大学東京がリーダーシップをとるべきであると考えますが、首都大学東京のエコキャンパス化への取り組みについて、現状とその評価をお聞かせいただきたいと思います。
さて、貴重な機会をいただきましたので、多摩地域に住む都民の一人として、「十年後の東京」に一言申し上げたいと思います。
「十年後の東京」は、オリンピックが開催される二〇一六年の東京の目指すべき姿と、それに向けた政策展開の方向を示す都市戦略として策定されたものでありますが、私はこの「十年後の東京」を読んで、正直、失望いたしました。なぜなら、この都市戦略には多摩地域の目指すべき姿について、新しいもの、見るべきものがほとんど描かれていなかったからであります。
例えば「十年後の東京」には、多摩地域のこれからの政策展開として、圏央道等の整備や横田基地の軍民共用化を契機に、多摩地域を首都圏の中核拠点としてさらに発展させるとありますが、これは既存の開発路線を単に新しいいい回しで粉飾したものにすぎませんし、都心との関係においては、多摩地域は相変わらず都心を中心とした交通ネットワークの外延としてしか位置づけられておりません。
恐らく、これではまずいんだろうということで首都圏の中核拠点という言葉を持ち出し、圏央道の整備により、多摩地域を首都圏における人と物の結節点として位置づけるとしているのでしょうが、そもそも横浜、川崎や、つくばなどの都市を包含した非常に広い首都圏の中で、多摩地域をどのようにして結節点としていくのか、その具体的な展望は語られておらず、本当に多摩地域を首都圏の中核拠点にしようとしているかどうかもはっきりしない内容であります。
また、広域多摩エリアを多摩シリコンバレーとして、首都圏にとどまらず、アジアを代表する産業拠点に発展させるということが述べられていますが、これもまた、非常に唐突な印象を与える内容であります。何ゆえにシリコンバレーなのか、多様な多摩地域の姿をシリコンバレーという言葉で一くくりにできるのかという点も疑問ですが、その前に、まず、開発のコンセプトとしてのシリコンバレーという発想そのものが、前時代的といわざるを得ません。
シリコンバレーという言葉で私が思い出すのは、第三次全国総合開発計画、いわゆる三全総のテクノポリス構想であります。この構想は、アメリカにも一つしかないシリコンバレーを、この日本に三十近くもつくろうという無謀なもので、そのほとんどは失敗に終わりました。多摩シリコンバレーというのは三十年前の発想であるという私の率直な感想を申し上げ、質問を終わります。(拍手)
〔環境局長吉川和夫君登壇〕
○環境局長(吉川和夫君) 相川博議員の一般質問にお答えいたします。
排出量取引制度の導入についてでございますが、お話のように、CO2削減のため、大学が競い合って環境への取り組みを進めることは、意義があると認識しております。
都は現在、現行の地球温暖化対策計画書制度を強化し、都内全域の大規模事業所を対象とするCO2排出削減義務と排出量取引制度の導入に向けて検討しておりますが、この新たな制度の対象は、現行制度と同じく、温暖化ガスの排出量が相当程度多い事業所を想定していることから、基準に該当すれば、大学施設も対象となります。
ちなみに、現行制度では、都内の六十一の大学施設が対象事業所となっております。
〔総務局長押元洋君登壇〕
○総務局長(押元洋君) 首都大学東京のエコキャンパス化の取り組みについてのご質問にお答え申し上げます。
多摩丘陵の豊かな自然の中に立地をしております南大沢キャンパスは、敷地内に十二万平方メートルを超える緑地を有し、自然と調和したキャンパス整備を図っております。
教育研究活動につきましても、実験、研究などで生じました廃水をキャンパス内の処理施設で浄化し、再利用するなど、省資源化に配慮をしてまいりました。
また、大規模事業所として、ごみの分別やグリーン購入などはもとより、環境局の指導助言を受け、地球温暖化対策計画書を策定し、照明器具や空調機の省エネ化など、温室効果ガスの削減にも着実に取り組んでおります。
今後とも、環境問題に関する学生や職員の意識啓発をさらに進め、エコキャンパス化の取り組みを充実してまいります。
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