○議長(比留間敏夫君) 九十七番初鹿明博君。
〔九十七番初鹿明博君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○九十七番(初鹿明博君) まず、子育て支援について伺います。
我が国において少子化は、解決すべき大きな課題の一つです。子どもを産まないのは、経済的な問題と同時に、育児に伴う肉体的、精神的負担が大きいことも要因の一つと考えられます。東京は核家族が多く、子育ての悩みを相談する相手がいないなど、育児を母親が一人で抱え込み、無意識のうちにストレスがたまっているにもかかわらず、余暇などで気分転換をすることもままならないという方が多くいます。子育て中でも余暇や趣味などに時間を使うことができれば、精神的な負担を軽減することができると考えます。しかし、子どもを預かってくれる祖父母などが近くにいない場合は、子ども抜きで外出することが難しいのが現実です。
子どもが生まれる前にはコンサートや展覧会に行くことが趣味だった方も、子どもが生まれてからは全く行かなくなったということをしばしば耳にします。子連れで行くこともできないことはないのでしょうが、子どもが途中で飽きてしまうのではないか、騒いでしまうのではないかなどの心配が先に立ってしまい、結局やめてしまうという方が大半だと思います。
私も、美術館に子どもを連れていったことがありますが、途中で飽きてしまい、もう帰ろう、早く帰ろうとだだをこね、周りの人の迷惑になっているのではと落ち着いて絵を見るどころではなくなったという経験があります。子どものときから本物の芸術に触れさせたいという親の心は、なかなか子どもには伝わらないようです。
このような心配をせずに芸術鑑賞ができるように、子どもを預かってくれる託児サービスがあれば、子ども連れで外出しても、子どもを預けて親だけでコンサートや美術館に立ち寄って落ち着いて芸術鑑賞ができ、育児のストレスも解消し、心身のリフレッシュにつながると思います。
東京都は、東京芸術劇場や東京文化会館というコンサートホールや東京都現代美術館や江戸東京博物館などの美術館、博物館を持っています。芸術劇場や文化会館で開催されるコンサートの中には、主催者が託児サービスを行っているものも一部ありますが、すべての公演というわけではありません。現代美術館や江戸東京博物館などでも託児サービスがあれば、子育て世代も気軽に芸術鑑賞ができ、大変喜ばれると同時に、利用者増にもつながると考えますが、所見を伺います。
東京は、世界に誇れる文化都市にふさわしく、都の施設以外にも、多くの美術館、博物館、コンサート会場があり、マスコミでも大きく取り上げられるような展覧会やコンサートも頻繁に開催されています。これら都の施設以外で行われるコンサートや展覧会でも同様のサービスが提供されるようになることが望ましいと考えます。
芸術鑑賞に限らず、行政も民間もともに、子育て中の方々が気軽に外出しやすい環境を整えていくことが求められているのです。子どものいない方も子どもが欲しいと思うようになり、わずかではあるかもしれませんが、少子化の解消につながるのだと思います。東京都は民間とも協力しながら、子育て中でも外出しやすい環境をどのようにつくっていくのか、所見を伺います。
次に、バリアフリーのまちづくりについて伺います。
ハートビル法や交通バリアフリー法の施行により、駅や公共施設、商業施設のバリアフリー化が進み、町中で障害を持つ方々を多く見かけるようになりました。東京都も平成七年に東京都福祉のまちづくり条例を制定し、バリアフリーのまちづくりを積極的に進めており、高齢者、障害者のみならずすべての方が暮らしやすい環境をつくっていこうとするユニバーサルデザインの考え方も徐々に浸透しています。
バリアフリー新法が制定され一年がたとうとしていますが、さらなるバリアフリーを進め、障害のある方もそうでない方も今以上に暮らしやすい東京をつくるという観点で何点か質問をいたします。
視覚障害者がまちを歩く上で、点字ブロックが重要な役割を果たしていることはいうまでもありません。現在、道路や駅、公共施設、商業施設への点字ブロックの設置が進み、視覚障害者も安心してまちを歩くことができるようになりました。私たちもまちを歩いていて、角々に点字ブロックが設置されている交差点を目にすることが多くなりました。この点字ブロックによって、視覚障害者は交差点に差しかかったことがわかり、危険がないか注意して交差点を横断することができるようになっています。
しかし、横断歩道内には点字ブロックがないために、横断歩道を斜めに横断してしまい、反対側の歩道にきちんとたどり着くことができないことがあると聞きます。特に、スクランブル交差点や、横断歩道が歩道に対して直角ではない道路などを横断することは、視覚障害者には非常に難しいのだろうと思います。
そこで、視覚障害者が安全に道路を横断できるようにするために、横断歩道上に点字ブロックを取りつける、いわゆるエスコートゾーンの設置を進めることが必要だと考えます。エスコートゾーンの設置に関して、交通管理者である警視庁の所見を伺います。
視覚障害者のうち、全盲の方は二割程度で、大半の方は光を感じることができるなど、わずかながらも視力が残っています。点字ブロックが黄色なのは、弱視の方もどこに点字ブロックがあるのかを識別できるようにと配慮されてのことです。しかし、黄色く彩られた点字ブロックも、夜暗くなると、どこに設置されているのか識別が難しくなってしまいます。最近では、夜暗くなったときにも設置場所がわかるようにと、光る点字ブロックというものもつくられるようになりました。光る点字ブロックの設置が進めば、視覚障害者が夜暗くなった後でも、今まで以上に安心してまちを歩くことができるようになると考えます。
先日、この光る点字ブロックが設置されている埼玉県の蕨駅に行き、実際にこの目で見てきました。思った以上に明るく、二秒間隔で点滅もしているため、視覚障害者だけでなく、だれもが点字ブロックの存在に気がつくという効果があると感じました。点字ブロックがあることに気がつくことで、点字ブロックの上に看板を置いたり、自転車を放置したり、点字ブロックにつまずいたりということも少なくなると期待できます。
東京都においても、この光る点字ブロックの都道への設置を検討すべきと考えますが、所見を伺います。
八月から障害者の駐車禁止除外制度が変わり、車両に対してではなく、障害者本人に駐車禁止除外標章が配布されることになりました。一部対象から外れてしまう方がいるという問題点はあるものの、対象者も拡大し、障害者にとって利用しやすい制度となったことにより、今まで以上に多くの障害者が車を利用してショッピングやレジャーなどに出かけることが予想されます。
今では、公共施設のみならず、ホテルやデパート、スーパーなど、人の集まる施設に障害者用の駐車スペースの整備が進み、出入り口近くに駐車することができるようになっています。しかし、駐車スペースの整備は進んできていますが、障害者がいざそこに駐車しようと思っても、健常者が車をとめていて、肝心の障害者がとめられないことが多くあると聞きます。海外では、障害者用駐車スペースを利用できる者を特定したり、健常者が駐車した場合に罰せられる国もありますが、我が国では、個々人のモラルに任されているだけです。
先日、関越道のサービスエリアにトイレ休憩で立ち寄った際、トイレの前に設置された障害者用駐車スペースに国産の高級車がとめられていました。とめた方も多少の後ろめたさがあったのか、小走りで車に戻ってこられ、さっと飛び込むように車に乗り込んでその場を立ち去っていきました。経済的に豊かそうな方が、心が豊かだとはいえないような行動をした場面に直面して、私は大変寂しい気分になりました。
このように、障害者用の駐車スペースに健常者がとめてしまうことなどをなくす試みとして、佐賀県では、利用証を交付することで障害者用駐車スペースを利用できる方を明らかにするパーキングパーミット制度を全国で初めて導入しました。この制度は、歩行が困難な方として、身体に障害のある方のみならず、けが人や妊産婦など一時的に歩行困難になった方に対しても、一年未満の有効期間を設けて利用証を発行することとしています。こうした制度を東京都においても取り組んでいくべきと思いますが、所見を伺います。
次に、物流と地球温暖化対策について伺います。
大井ふ頭は、東京港の外貿コンテナ取扱個数の六割を取り扱う日本を代表するコンテナふ頭であり、一大物流拠点です。日本を代表するコンテナふ頭であるがゆえに、当然ながら、多くのコンテナ車両が集中しています。
先日、ふ頭内で働く方々と一緒に、この大井ふ頭周辺を車で通過する機会がありました。ちょうどコンテナ船の荷おろしが始まったところに遭遇したのか、周囲の道路はコンテナ車両が長蛇の列をつくり、ひどい混雑を生み出していました。ほとんどがふ頭のゲートに入るために並んでいる車両でしたが、道路左側に寄せてエンジンをかけながらとまっている車両も多く見受けられました。中には、ドライバーが足をほうり出して熟睡をしている車両もありと、相当数の車両がアイドリングしたままとまり、混雑の原因となっていると同時に、地球温暖化の原因であるCO2をまき散らしていました。
コンテナ車に周りを囲まれてしまい、前方の状況を確認しようと窓をあけて顔を出したところ、都内の空気は排ガス規制の効果できれいになっているはずですが、ここの空気はというと、強烈な排気ガスのにおいが鼻をつくほどで、大変驚きました。コンテナ車両は、ゲートの状況に応じて少しずつ進まなければならないため、アイドリングを完全にとめることは難しいでしょうが、この状態は、地球温暖化防止の観点からすると非常に問題があると感じました。
また、この周辺道路は当然一般車両も通行しますし、路線バスも走っています。曜日や時間帯により混雑状態は異なりますが、ふ頭とは直接関係のない車両の通行にも大きな支障を来すことがあるのは望ましいものではありません。
このような状況を踏まえて、都はコンテナ専用レーンをつくり、一般車両の分離を図るなどの努力をしていることも承知をしておりますが、わずかずつでもこの混雑を改善していく必要があると考えます。
そこで、大井ふ頭周辺道路の交通渋滞の解消に向け、さらなる取り組みが必要であると考えますが、所見を伺います。
さて、この道路状況を見ていて、アイドリングと地球温暖化の関係について改めて考えさせられました。都では、駐停車する際のアイドリングストップを義務づけていますが、エンジンをとめたくてもとめられない状況もあるということも考慮しなくてはなりません。
高速道路のサービスエリアなどで、長距離トラックのドライバーが車内で仮眠をとっているところを目にすることがしばしばあります。長距離、長時間運転するドライバーが休息、とりわけ仮眠をとることは、健康管理や事故防止の観点からも必要なことだと思います。車をおりて室内で横になることができればベストでしょうが、施設の有無やコストの面から考えても、車内で仮眠をとることはやむを得ないのが現実です。車内での仮眠は、冷暖房を使用するためにアイドリングしっ放しになります。駐車中はエンジンをとめる方が望ましいとは思いますが、暑い夏や寒い冬にアイドリングストップし、冷暖房を我慢しろというのはちょっと酷だと思います。
先日、東京電力と日野自動車が共同開発し、運用が始まった外部電源式アイドリングストップ給電システムを視察してまいりました。このシステムは、駐車中のトラック等の空調のため、駐車場に設置された給電スタンドから車両に電力を供給するシステムで、エンジンをかけずに冷暖房を使うことができるので、CO2の削減だけでなく、燃料費のコストダウンにもつながり、運送事業者にとってもありがたいものです。しかし、このシステムを使用するには、外部電源を使用できる冷暖房装置を装着する必要があり、事業者の負担が大きいという課題があります。
このシステムの高速道路のパーキングエリアなどへの設置が進めば、長距離ドライバーが休息時にアイドリングをストップすることとなり、自動車から排出されるCO2が削減され、地球温暖化の防止につながると考えます。自動車からのCO2の削減を進めるためにも、都としても給電スタンドの設置補助や車両への外部電源式の冷暖房装置装着に対する補助制度を創設することを提案しますが、所見を伺います。
さて、東京都は「十年後の東京」で、二〇二〇年までに二〇〇〇年比でCO2を二五%削減することを打ち出しています。この目標を達成するためには、新たな技術開発が進むことが不可欠です。地球温暖化防止に向けた取り組みを進めるためにも、都として民間事業者の新たな取り組みを促進していく必要があると考えますが、知事の所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 初鹿明博議員の一般質問にお答えいたします。
地球温暖化防止に向けての取り組みについてでありますが、地球温暖化の危機はもう現実のものとなっておりまして、今後十年程度の間に思い切った対策を打たなければ、ポイント・オブ・ノーリターンを過ぎてしまって、地球に破局的な事態を起こしかねないというのが通説になってまいりました。例えば、NASAのハンセンという学者、教授は、このままでいくと十年後には北極の氷は全部溶けるだろうということをいっています。
こうした事態を回避するためには、行政はもとより、民間事業者など、すべての主体がその役割と責任に応じて、我が国の有するすぐれた環境技術を最大限に活用し、温暖化対策の強化に取り組むことが必要であると思います。
都は、大規模事業者への排出削減義務づけなど、実効性の高い施策を実施することによりまして、技術開発を促進し、最新の省エネ対策や再生可能エネルギーの活用を全面的に展開していきたいと思っております。
ご指摘の大型トラックのアイドリングシステムにしましても、こうした環境にかかわる技術、商品が環境にプラスするという、そういう製品、技術に関しては、結果としてそれが非常にもうかるという経済社会を構築していく必要があると思います。
他の質問については、警視総監及び関係局長から答弁します。
〔警視総監矢代隆義君登壇〕
○警視総監(矢代隆義君) いわゆるエスコートゾーンの設置についてお答えいたします。
エスコートゾーンは、視覚障害者の方々が、横断歩道上を方向を見失うことなく最短距離で歩行できるよう設置する点字ブロックであり、平成十八年十二月に施行されたバリアフリー新法により全国的に整備が進められようとしているものであります。
当庁におきましても、横断歩道における視覚障害者の安全性を向上させるため、その整備を推進することとしており、法に基づき区市町村が基本構想を策定した二十一区市、五十の重点整備地区について、基本構想の目標年次であります平成二十二年度に向け、三カ年計画で計三百九十五カ所の横断歩道に整備していくべく、予算要求しているところであります。
〔生活文化スポーツ局長渡辺日佐夫君登壇〕
○生活文化スポーツ局長(渡辺日佐夫君) 美術館、博物館の託児サービスについての質問にお答えいたします。
音楽会やコンサート会場の託児サービスは既に一部で行われておりますが、美術館では極めてまれでございます。そうした中で、今年度、現代美術館で開催された展覧会において、母の日、父の日に託児サービスを実施いたしました。利用者は、二日間で合わせて九人と少ない人数ではありましたが、久しぶりに気兼ねなく楽しむことができたと大変好評でございました。
今後の託児サービスの実施につきましては、託児スペースの設定、確保、安全対策、費用負担などの課題を考慮すると、簡単ではございませんが、展覧会の主催者とも協議しながら検討してまいります。
〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕
○福祉保健局長(安藤立美君) 二点についてお答えをいたします。
まず、子育て中でも外出しやすい環境づくりについてであります。
子ども連れでも気軽に外出できる環境づくりは、親の育児のストレスを軽減するとともに、子育て家庭の地域での孤立化を防ぐためにも重要であります。
都は、先般、社会全体で子育てを応援する機運を一層高めていくため、行政、企業、NPO、マスコミなどで構成する子育て応援とうきょう会議を設置いたしました。この会議を活用して、子ども連れでも利用しやすい施設等の情報を幅広く紹介することなどによりまして、子育てしやすい環境づくりに取り組んでまいります。
次に、障害者用駐車スペースについてであります。
都におきましては、高齢者や障害者を含めたすべての人が安心して快適に過ごすことのできるユニバーサルデザインの考え方に立った福祉のまちづくりを推進しております。
都としては、こうした考え方のもと、障害者用駐車スペースの整備促進を図るとともに、一般の車が駐車することがないよう、利用者マナーの向上など適正利用について一層の普及啓発に努めてまいります。
なお、お話のパーキングパーミット制度を巨大都市に導入するには、課題があるというふうに認識をしております。
〔建設局長道家孝行君登壇〕
○建設局長(道家孝行君) 都道への光る点字ブロックの設置についてでありますが、都は、福祉のまちづくりを推進するため、歩道の勾配や段差の改善、視覚障害者誘導ブロック、いわゆる点字ブロックの設置などのバリアフリー化に取り組んでおります。
点字ブロックにつきましては、東京都福祉のまちづくり条例の整備基準に基づき、弱視の方にも配慮した黄色のブロックを原則として設置しております。
ご提案の光る点字ブロックにつきましては、通常のものと比べコストや耐久性の面で課題があるため、その有効性も含め、今後研究してまいります。
〔港湾局長斉藤一美君登壇〕
○港湾局長(斉藤一美君) 大井ふ頭周辺の交通渋滞解消に向けました取り組みについてお答えいたします。
東京港における物流効率化と環境対策の観点から、渋滞の解消は喫緊の課題であると認識してございます。
このため、平成十七年度に既存道路を改良してコンテナ車両の専用レーンを新設し、ふ頭背後の道路とコンテナターミナル間のスムーズな動線づくりを行うとともに、一般車両との分離を図ったところでございます。
また、道路の主要な地点三カ所にウエブカメラを設置し、交通情報をリアルタイムに提供することによりまして、特定時間帯へのコンテナ車両の集中を避けるなどの対策を講じてまいりました。
今後も、こうした取り組みに加え、コンテナターミナルの外に空コンテナ置き場等を整備することによりまして、コンテナ車両の分散化を図るなど、大井ふ頭周辺の交通渋滞の解消に向けまして、関係事業者と連携し取り組んでまいります。
〔環境局長吉川和夫君登壇〕
○環境局長(吉川和夫君) トラックのアイドリングストップについてでございますが、お話のシステムは、トラックが駐車時にエンジンをかけずに外部の電力を使うことにより車内の冷暖房装置を動かすものであり、CO2の排出削減に効果がございます。
長距離トラック等は、駐車の際にエンジンを動かしながら休憩していることが多いことから、このシステムを開発した事業者は、全国四十カ所のトラックステーションや高速道路のサービスエリアなどを今後の導入候補地としております。
これを踏まえ、国におきましては、広域的観点から、今年度、主なトラックステーション等を対象に、このシステム事業への補助を開始しました。
都といたしましては、この事業の進捗を見守っていくとともに、引き続きアイドリングストップの普及及び指導に努めてまいります。
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