午後五時四十一分開議
○議長(比留間敏夫君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
質問を続行いたします。
四十四番串田克巳君。
〔四十四番串田克巳君登壇〕
○四十四番(串田克巳君) 昨日の我が党の代表質問では、今後の人事執行体制のあり方について質問いたしましたが、人材の確保と育成について伺います。
昨今の報道では、新規採用確保のための求人では、多くの企業が採用予定数を伸ばすなど、就職氷河期は終わり、求人難の時代に入ったといわれています。民間企業の中には、就職内定者に来年の求人活動の応援を呼びかけ、少しでも早く優秀な人材を確保しようという活動がなされているとのことです。
都においても、団塊の世代の大量退職期を迎え、高度成長期を支えてきたベテラン職員が一気に職場を去る時期になりました。一方で、都はこの間、財政再建推進のため、組織のスリム化を目指し、職員採用を極力抑制する方策を進めてきました。国でも、官民一体となった構造改革によって公務員を減らし、小さな政府の実現が目標となっています。
しかし、行政に寄せられる住民ニーズは多様化、高度化し、また複雑化しています。またさらには、行政改革などによって行政事務の民間への移譲が進んでいますが、構造設計偽装事件やコムスン問題などが発生し、行政庁による監視の強化が必要とされています。つまり、公務員には行政事務の受け皿となる民間を指導育成する能力も求められているのであります。また、東京は我が国の首都であり、大都市でもあることから、他の自治体とは異なるさまざまな行政課題を抱えており、都職員はこうした課題にも取り組まなければなりません。
このように、公務員、とりわけ都の職員には、高い能力や職務に対する使命感といったものが求められる事例は幾つでもあると思いますが、さまざまな課題に果敢に挑む副知事を含めた都職員に求められる資質について、知事のお考えを伺います。
都の職員採用については、毎年、全国自治体の中でもトップクラスの応募倍率であったと聞いておりますが、先ほども申し上げましたように、民間でも求人難が懸念される中で、優秀な人材の確保について都としてどのような対策をお持ちか、伺います。
年金保険料の横領や官製談合事件など、公務員による不祥事も問題となっていますが、私は、都議会議員としての活動の中で、現場から本庁まで、まじめに骨身を惜しまず働く多くの職員の姿を見てきましたから、一部の不心得な人間の行動が許せない思いでいっぱいです。しかし、公金を扱う以上、一部であってもこのようなことが起こってはならないのも公務員であります。採用の段階で間違いのない人材を選ぶことも重要ですが、採用後の職員の資質の向上策も必要だと思います。
また、地球温暖化への対応や観光、技術交流など、外国諸都市との都市間交流がますます重要となる中、職員の国際感覚を養うことも急務であります。都の人材育成の方策について伺います。
次に、多摩地域の豪雨対策について伺います。
最近、都内では、ヒートアイランドによる影響が一因ともいわれている集中豪雨がたびたび発生しており、くぼ地などの水はけの悪い場所や改修が進んでいない河川の付近などを中心に床上浸水等被害が生じています。また、ことしは七月の集中豪雨や九月の台風九号などにより、多摩地域でも浸水被害が発生しました。
このような浸水被害は、区部、多摩地域を問わず、どこにでも同じように発生する危険性があり、多摩地域における対策についても区部同様重要であると考えます。
東京都では、ことし八月に東京都豪雨対策基本方針を発表し、河川や下水道の整備はもとより、浸透ますの設置などの流域対策や水害に強いまちづくり、家づくりなど、ハードとソフトの両面から施策を推進しています。
これらの施策を効果的、効率的に実現していくために、対策促進エリアが選定されていますが、この対策促進エリアの多くが区部にあることも事実です。河川流域としては野川流域などを含む七流域が選定されていますが、その選定理由について伺います。
次に、豪雨対策を効果的に進めるに当たっては、河川や下水道に入る前に雨水の流出を抑制する雨水浸透ますなどの流域対策を進めていくことが大切です。この点、東京都豪雨対策基本方針では、豪雨による浸水被害が頻発している流域を対象に、区市が行っている個人住宅への浸透ます設置に対し助成額の一部を補助していくとしています。
雨水浸透ますの設置については、以前に、我が党の遠藤議員が、野川流域の総合的な治水対策の雨水流出抑制施設の設置に関する今後の取り組みについての質問に対し、都庁内及び地元区市などと連携し、この取り組みを進めていくための連絡会を設置して検討を行うとの答弁がありました。
そこで、この連絡会や多摩地域の関係市との検討を踏まえ、浸水被害が多い野川流域など流域対策に今後どのように取り組もうと考えているのか、具体的な内容について伺います。
次に、豪雨対策においてその根幹となる河川整備ですが、平成十七年九月の集中豪雨では、中野区や杉並区など区部を中心に浸水被害が発生し、特に被害の多かった妙正寺川や善福寺川については、現在、河川激甚災害対策特別緊急事業が実施されています。多摩地域においても、近年、河川からの溢水による浸水被害が発生しており、区部同様、より一層の河川整備を進めていく必要があると考えます。
そこで、多摩地域の河川整備の状況と今後の方針について伺います。
多摩地域には四百十万の都民が居住しており、東京の産業や都市活動の重要な部分を担っています。豪雨等による浸水被害から都民の生命や財産を守り、これからも安心して住み続けられるよう、多摩地域においても今後とも豪雨対策を積極的に進めてもらいたいと考えます。
次に、圏央道について伺います。
圏央道については、本年六月に、あきる野インターチェンジから八王子ジャンクションまでの間が開通し、中央道と関越道がつながりました。このことにより、都内や近県からのアクセスが大幅に向上しました。この開通により、日の出町では企業進出により約二千人の雇用が増加するなど、地域や産業の活性化に大きな整備効果を上げています。
しかしながら、圏央道の料金は他の高速道路に比べて割高であり、利用しにくいという声が、地元からも物流業者からも上がっています。六月の開通直前には、八王子市長が高い料金に抗議し、開通プレイベントをボイコットする出来事もありました。
圏央道の利用促進に向け、八月から、国は料金割引の社会実験を実施しておりますが、この社会実験の成果が出ているか、また、都はそれに対してどのように評価しているのか伺います。
せっかく整備した圏央道が有効活用されなければ、意味がありません。今回の社会実験の成果を踏まえ、圏央道をもっと使ってもらえるような料金体系を考えるべきと思いますが、都の所見を伺います。
使いやすく、より機能的な首都の高速道路ネットワークをつくる上では、利用しやすい料金体系とすることはもちろんですが、東京方面へのハーフインターとなっている圏央道八王子西インターについて、埼玉県方面へもアクセスできるようフルインター化することが必要であります。
地元市でもアクセス道路の整備に着手するなど、物流拠点の整備を目指して着々と準備を進めています。また、八王子西インターにおける埼玉県方面の交通需要は、計画当初よりも高まっています。圏央道八王子西インターのフルインター化実現に向けて、早期に着手することを強く要望し、次の質問に移ります。
水道事業について伺います。
今月の初めの新聞各紙に学校フレッシュ水道のことが掲載されているのを目にしました。学校フレッシュ水道とは、我が党がかねてから実施を促してきた公立小学校の水飲栓を直結給水化するモデル事業のことであります。記事によりますと、モデル事業を実施した小学校では、教員の水道水に対する満足度が大幅に上昇するとともに、水道水を飲む児童も増加したとのことです。東京の水道水のおいしさが着実に広まっていることを大変うれしく思います。
そこで、モデル事業の現在までの実施状況と今後の見通しについて伺います。
次に、水を供給する段階での新たな取り組みについて伺います。
水道局はこれまで、高度浄水処理の導入を初めとしたおいしい水対策を推進してきました。平成二十五年度末までには利根川水系の全浄水場において、高度処理できるようになるとのことであり、都民も私も心待ちにしております。
一方、安全でおいしい水を安定的に供給するためには、水を送り出すためのポンプ運転などで膨大なエネルギーを必要としています。水道局では、これまでも環境計画などを策定し、環境負荷低減への取り組みを進めていますが、それでもなお、都内の電力使用量の約一%を使用しています。
水道施設をつぶさに見ますと、浄水場などにおいては、エネルギー使用量の抑制に向けたさまざまな対策が見られますが、給水所や約二万六千キロに及ぶ配水管に着目した取り組みには、まだ余地があるように感じます。こうした意味で、配水施設における残留塩素の低減化に取り組み始めたことは、大いに評価します。
そこで、おいしい水対策に、よりエネルギー負荷の少ない方策を加えた新たな水供給の仕組みを構築すべきと考えますが、見解を伺います。
次に、交通局が取り組んでいる観光客の誘致を促進するための新たな路線バスについて伺います。
都では、観光を有力な産業としてとらえ、各種施策を実施しているところですが、今後は、東京オリンピックの誘致の観点からも、国内外へ東京の魅力を発信し、これまで以上に旅行者誘致に取り組んでいくことが必要であると考えます。
東京は、いうまでもなく、江戸以来の独自の文化や豊かな食などの多様な魅力が集積されるなど、観光面でのポテンシャルが高いと思われます。このポテンシャルを生かす取り組みが求められているのではないでしょうか。
本年二月の予算特別委員会において、我が党の質問に対し、交通局長から、これまでの都営バスは主に通勤や通学など都民の身近な足として役割を果たしてきたが、今後は観光客の誘致や利用を促進する新たな路線バスを導入する必要があるとの答弁がありました。
新たな路線バスについては、観光客の誘致に貢献できるとともに、地元振興にも寄与する重要な取り組みであると考えます。
この新たな路線バスについての取り組み状況についてお伺いし、私の質問を終わります。
どうもありがとうございました。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 串田克巳議員の一般質問にお答えいたします。
都職員に求められる資質についてでありますが、東京は世界を代表する成熟を遂げた大都市であり、日本の頭脳部、心臓部でもあります。今後の東京の発展が日本の命運そのものを左右するといっても過言ではないと思います。
都職員は、このような首都東京の現場をじかに行政を通じて扱う、いわばプロ中のプロでなくてはならず、また、日本の未来を切り開くフロントランナーでなくてはなりません。その立場は、国にも他の自治体にもない首都公務員というべきものでありまして、それゆえに都職員は、日本全体を牽引していく自負や、既存の枠組みに縛られない大胆かつスピーディーな行動力、発想力、そして現場を持つ強みを生かして、独自の政策を企画、実行する能力などが強く求められると思います。
同時に、地方政府のリーダーとして、国に対してもはっきり物をいうことも必要であります。
都はこれまでも、国の硬直した、いわゆるキャリア制度とは異なる独自の能力業績主義制度によりまして優秀な職員を育成し、公会計制度の構築など、全国に先駆けた数々の取り組みを行ってきております。
今後も、オリンピックの招致など、直面する重要な課題に職員一人一人が積極的に取り組み、ラインをまたいで積極的に取り組み、首都公務員としての資質にさらなる磨きをかけるとともに、夕張市への職員派遣を初めとしまして、他の地方自治体への人的協力などにも一層力を入れていきたいと思っております。
他の質問については、関係局長から答弁いたします。
〔総務局長押元洋君登壇〕
○総務局長(押元洋君) 人材確保に関する二点のご質問にお答えを申し上げます。
まず、人材確保についての対策でございますが、ご指摘のように人材獲得競争が激しさを増す中で、意欲と能力のある人材を確保するには、より幅広く希望者を募り、有為な人材を選抜していくことが不可欠でございます。
このため、都では、今年度の採用試験から、大学院卒など公務に有用な経験を有する者を対象とした新たな試験区分の設定や、高い専門性を有する人材を確保するための試験を実施するなど、さまざまな取り組みを進めてまいりました。
さらに今後は、都への就職希望者そのものをふやすことにも力を入れていく必要がございます。このため、ホームページや車内広告等のさまざまな媒体による情報の発信やインターンシップ制度の充実、大学への働きかけの強化など、都職員の魅力を伝えるための取り組みをこれまで以上に積極的に展開してまいります。
次に、都の人材育成の方策についてでございますが、都は現在、昨年策定した東京都職員人材育成基本方針に基づきまして、人材育成を基軸に据えた人事管理を積極的に推進しているところでございます。
具体的には、職員一人一人の意欲を引き出し、強みをはぐくむ配置管理を推し進めるとともに、OJTの徹底や自己啓発支援の強化、さらには研修の一層の充実などに取り組んでおります。
また、オリンピック招致活動に代表されるように、高度な国際関係業務が増加をしておりますことから、今年度から、職務遂行力が高い職員を選抜し、語学力強化の研修を開始いたしました。
さらに、今後は、首都公務員として必要な高度な語学力と国際感覚を養うため、海外に職員を派遣することなども検討してまいります。
〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕
○都市整備局長(只腰憲久君) 四点のご質問にお答えをいたします。
まず、豪雨対策促進エリアの選定理由についてでございますが、本年八月に策定した東京都豪雨対策基本方針では、効果的、効率的な豪雨対策を実現するため、都内全域を対象にしまして、浸水被害や降雨特性を踏まえ、河川流域や地下街などの地域単位で対策促進エリアを選定してございます。
河川流域といたしましては、流域の特性や土地利用の状況などを踏まえまして、集中豪雨による被害が多い七流域を選定しておりまして、このうち多摩地域では、野川流域や石神井川流域などが含まれております。
次に、流域対策の今後の取り組みについてでございますが、豪雨対策基本方針では、野川流域などの七流域におきまして流域対策を重点的に行うことによりまして、時間五ミリ相当の降雨に対する流出抑制効果を発揮させることとしております。
これまでも都は、一定の条件を満たす開発行為に対しまして、区市と連携しながら、貯留槽や浸透ますなどの設置につきまして必要な指導を実施してまいりました。
新たに今年度からは、浸水被害が頻発している地域を対象にしまして、個人住宅への浸透ます設置費用の一部を区市に対して助成をしております。
さらに、七流域ごとに、総合治水対策協議会などを活用しまして、流域の特性に合わせたきめ細かな対策を進めていくため、豪雨対策計画を策定してまいります。
次に、圏央道の料金割引社会実験についてでございます。
圏央道では、高速道路網のさらなる有効活用に向け、料金引き下げによる交通量の変化を把握することを目的としまして、八月から、関越道、中央道間を全線利用する場合と中央道と連続利用する場合の二つにつきまして、料金割引社会実験が実施されております。
十一月に国が発表しました速報によりますと、実験前と比較しまして、全線の利用交通が一六%、中央道との連続利用につきましては一三%、それぞれ増加をいたしております。
都といたしましては、今回の社会実験の成果から、こうした料金施策が高速道路網の利用促進に大きく寄与するものと評価してございます。
最後になりますが、料金体系についてでございます。
本年七月、一都三県が共同いたしまして、環状道路の利用促進など首都圏の高速道路網を最大限利活用する料金政策につきまして、国策として実施するよう提言を行いました。
十一月に国土交通省が発表いたしました道路の中期計画素案におきましては、利用しやすい高速道路の料金体系の構築が盛り込まれたところでございます。
一方、都県の提言に盛り込まれました料金施策を実現するためには、原資となります安定した道路特定財源の確保が不可欠でございます。
都といたしましては、引き続き、財源の確保とともに、圏央道を初め首都圏の高速道路につきまして利用しやすい料金体系とすることを国に強く求めてまいります。
〔建設局長道家孝行君登壇〕
○建設局長(道家孝行君) 多摩地域の河川の整備状況と今後の方針についてでありますが、水害から都民の命と暮らしを守るため、多摩地域においても区部と同様に、河川整備を進めていくことは重要でございます。
これまで、護岸や調節池などの整備を鋭意進めてきた結果、五〇ミリ降雨に対する治水安全度は平成十八年度末で七四%になっております。
引き続き、空堀川や野川など過去に溢水による被害が発生した河川や、鶴見川や湯殿川など流域の開発等により大規模な浸水被害が発生するおそれがある河川の整備を重点的に進めて、水害の早期解消に努めてまいります。
整備に当たっては、治水機能を向上させ、安全を確保した上で、地域の自然に配慮し、緩やかな傾斜の護岸など水辺に近づける工夫をするとともに、水辺の生き物にも優しい多自然川づくりを進めてまいります。
今後とも、地元自治体の協力や住民の参加を得て、安全で潤いのある川づくりに取り組んでまいります。
〔水道局長東岡創示君登壇〕
○水道局長(東岡創示君) 公立小学校の水飲栓直結給水化モデル事業についてでありますが、各区市町と協議を重ねてきた結果、夏休み期間を中心に二十五校において直結給水化を完了し、年度末までには三十一校が実施される予定となっております。
実施校におきましては、教職員の立場から、水道水に満足しているとの回答が三割から六割へ増加し、学校の水道水を飲むと答えた児童も八割を超えるなど、大きな効果があったものと考えております。
来年度末までに、全体の約三割に相当する四百校を対象として実施していく予定でございますが、モデル事業の効果につきまして、さまざまな広報によりPRに努めるとともに、引き続き、区市町と調整を重ねてまいります。
次に、新たな水供給システムの構築についてでありますが、これまで、高度浄水処理の導入などおいしい水対策に取り組んできた結果、東京は、世界でも数少ない高いレベルの安全でおいしい水を供給しております。
今後、このレベルを高め、さらにおいしい水を供給するため、残留塩素の低減化に向けて、送配水段階での追加塩素注入設備を整備してまいります。
さらに、送配水施設のエネルギー管理に着目して、水道施設全体のエネルギーの使用状況を瞬時に把握し、送配水経路の最適化を図るなど、従来の水量、水圧をコントロールする水運用システムに、高い次元でのエネルギー対策を加えた水供給を目指してまいります。
従来の水運用に、こうしたおいしさとエネルギー管理の視点を融合させた水供給段階での取り組みについて、新しい東京モデルの水供給システムとして構築してまいります。
〔交通局長島田健一君登壇〕
○交通局長(島田健一君) 観光客などの誘致を促進するための新たな観光路線バスの取り組み状況についてお答えをいたします。
この路線バスは、東京にある観光スポットを点から線へと結びつけ、東京の魅力を満喫できるよう導入するものであり、下町ルートと都心ルートを予定しております。このうち下町ルートにつきましては先行して実施することとし、外部有識者の意見を踏まえ、東京駅から秋葉原、上野、浅草などを経由して、両国までの経路としております。
また、車両につきましても、首都大学東京との連携によりまして、観光路線バスと一目でわかる斬新なデザインといたします。
今後、この下町ルートにつきましては、平成二十年度早期の運行開始に向けて取り組んでまいります。
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