平成十九年東京都議会会議録第十八号

○議長(比留間敏夫君) 六十八番矢島千秋君。
   〔六十八番矢島千秋君登壇〕

○六十八番(矢島千秋君) 石原知事の施策は、興味尽きないものであります。一億人の、世界では中規模国家である日本の一首都が、その活力を将来にわたり担うためには、内向きの都市であることは許されず、まさに現在行われている東南アジア諸都市との交流、協力の取り組みは、そのための重要な要素であります。
 東京には、台湾の前総裁、李登輝氏が、ある雑誌のインタビューに答え、日本文化は非常に高い精神性を持ち、自然との関係が密接で、自然と人間の間の調和を大切にするとの発言をしておりますように、新時代にふさわしい素地があるだけに、この取り組みは、東京はもとより日本の将来のあり方を示すものとして大いに期待するものであります。都市間協力のかなめとして、東京の役割の今後の方向性について、知事のご見解をお伺いいたします。
 しかしながら、江戸城の無血開城以来、明治時代の市街地改造、関東大震災、甚大な戦災被害と、戦後の混乱をくぐり抜けてきた東京でありますが、一方、大きな課題を抱えているように見えます。
 これまで多くの地方出身者のフロンティアから、東京生まれが増大し、都市住民の主流を形成する生活のまちとなりつつあり、また多くの人が活動する多元多様な様相と、一方、開発により一元的な様相を呈するホットスポットと林立する高層マンションが散在する都市に姿を変えています。この状況にあって東京は、矛盾に満ちた複雑多様な性格を包含した部分とを、どのようにか併存させることが、大都市の魅力を深めるものと考えます。そして、このかぎは、多様な解釈を許す共通の文化にあると思います。
 東京の魅力の源泉となる都市の混沌と、世界都市東京のまちづくりの可能性について、お考えをお伺いいたします。
 私もこの十月、海外調査団の一員として幾つかの都市に赴いてまいりました。このうち、首都であり、経済の中心都市でありますマドリード、パリでは、市街地の交通対策の柱として自動車専用環状線の整備を進めております。特にパリは、ナポレオン三世治下の時代、十七年かけ、オースマンの超過収用の活用と、建物の高さ、密度の厳しい規制により、既存都市の改造がなされ、シャンゼリゼの見通し線と並木、街並みの美しい風格のある花の都パリが形づくられました。そして現在の市長は、市街地での自動車の使用をあきらめさせる方針で取り組んでいると聞いております。
 一方、東京は、石原知事がリーダーシップを発揮した広告規制もそうでありますが、東京のまちの将来にかけて凍結されていた三環状道路の整備を進めており、このことは単に交通円滑化の改善にとどまることなく、知事の東京のあり方の理念にかかわる施策展開とも思えるのであります。
 その意味では、三環状の整備は、東京のまちの姿の次へのステップであるだけに、人々がおのおのの時間の過ぎ行くペースで充実した生活のできる東京に向け、その姿を理念に一層近づける、次の施策を展開する段階に来ているのではないでしょうか。お考えをお伺いいたします。
 次に、財務局所管に移りました事務事業評価についてお尋ねいたします。
 平成十七年度末に、東京の行政評価が、重要施策などを対象とした政策評価と財務局所管の事務事業評価に区分されました。財務局から各局への事務事業評価実施の通知によりますと、事業の実施結果を重視する予算編成の仕組みの一環として実施するとありますが、各ツールを集約化し、毎年一定のサイクルのもとで予算編成に資することは、待望久しいものであります。
 しかし、平成十八年度事務事業評価を踏まえ、二十年度の予算編成に臨むことになりますので、評価内容を予算編成に結びつけるには一年間のタイムラグがあるだけに、事業の必要性などを含めた基本に戻っての評価を考えるべきであります。そこで、財務局の決算分析、予算編成査定など、従来の方法に事務事業評価を加えることにより、どのような効果を生むかお伺いいたします。
 一九八八年に設立された科学者と政府担当者による気候変動に係る政府間パネルが、第四次報告書を出した本年、ノーベル平和賞を受賞しました。この機関の活動は公開され、報告書も関係各国政府が最終的に承認を与えた信頼性の高いものであり、科学的に地球温暖化の問題を決着させたといわれております。しかし、地球環境問題は深刻化を増すばかりで、もう引き返せないところに来ている危機感の中にあるのも事実であります。
 そのような折、東京都税制調査会の中間報告が、この十一月二十九日発表されました。その中で、環境税制について幾つかの課題が示され、検討が必要と報告されております。
 環境税の中間報告は、去る新聞報道で、第一面で期待を持って報道されたほど重要な施策と評価できるものですが、財源確保もさることながら、環境税の目的は、人為的に進んできた温暖化を、わずかの可能性の中でも理念と意思を持って取り組む東京のシンボルともいえる税制ではないかと思うのであります。環境税の審議の状況と、これらの点について、お考えをお伺いいたします。
 次に、二十一世紀の国づくりでの重要課題、大きな危機の中にある少子化対策について、税制支援の立場からお伺いいたします。
 この点について、報告書の中で、少子化対策として扶養控除にかえ税額控除を行うとの議論があるが、住民税への導入は、還付を行う場合、歳出増などの課題があり、検討が必要と触れられております。この問題は、アメリカ、イギリス、カナダ、オランダなどの国のように、給付つき税額控除である必要はなく、たとえ減税は納税額までであってもモデル世帯平均の七百万以下の勤労収入に限るなど、子育て支援の立場から、低所得者に恩恵が行き渡る減税は可能であり、それだけに効果は大きいのであります。
 これらの税制からの取り組みは、石原都政の意思を示す、重い腰を上げない国に先駆けた重要な施策であると思いますが、お考えをお伺いいたします。
 組織にとって強力な監査体制は、力を弱めるものではなく、モラルを上げ、効率化を果たさせる有用な手段であります。現在の合理化と効率化の観点から進められている人員削減の状況にあっても、監査業務はその重要性から見るべきものであって、過剰な減員は機能を損ねるものとなりかねません。自治体みずからこの点の強化は進めにくいと思いますので、議員として定数所管局に意見を申し述べておきます。
 さて、地方自治体の監査は、平成三年に行政監査が可能となり、同九年には包括外部監査が導入されました。一方、監査では、定例、随時、行政、決算、援助団体等、工事の各監査が行われ、平成十年度以降、指摘、意見等は年間二百件を挟む水準で推移しております。
 このうち、平成十七年度の指摘、意見等は二百十四件あり、措置されたものが二百八件でしたが、平成十八年度は二百二十件のうち百五十四件が措置され、この実績は少しく措置の状況が遅いように思われます。措置に至らないものを公表してはいけないとの規定があるわけでありませんから、この促進のため適切な早い時期に公表する必要があるかと考えます。
 また、監査後、必要に応じ、指摘、意見の表明までの手続がとられることになりますが、特に意見は、手順の変更にまで踏み込んだ業務改善につながるものであるだけに、意見の視点とその改善状況についてお伺いいたします。
 さらには、この意見による業務改善は、今後進めなければならない内部統制の観点からの業務過程監査として重要と思います。内部統制に対する取り組みの状況と今後の課題についてお伺いいたします。
 東京都は、国体開催、オリンピック招致に合わせ、スポーツ事業の展開をスポーツ・フォア・オールの立場から進めようとしております。東京都では、昭和三十六年制定、スポーツ振興法に基づき、翌年、条例が制定され、調査、審議し、知事に建議を行う東京都スポーツ振興審議会が設置され、四十五年を経過しております。
 この間、数多くのスポーツ振興に係る有用な意見が審議会から出されております。そして、この十月には性格を新たにした所管のもとで、第二十二期のスポーツ振興審議会が立ち上げられ、スポーツ振興戦略の策定に向け検討を開始したと聞いております。本来であれば、知事の諮問に答えることが望ましいのでありますが、実際、審議会では、スポーツと行政に見識の深い専門家がフリーにディスカスすることにより、幅広く、かつ踏み込んだ意見が寄せられることから、今後もこれを極力尊重し、新たなスポーツ振興戦略の策定に結びつけていかねばなりません。計画策定に向けた展開についてお伺いいたします。
 次に、体育施設整備についてお伺いいたします。
 スポーツは、ルールと施設がなければ成り立たないものであります。各区市町村も、大変整った施設を持つところもあり、団体使用、大会開催に限らず、個人公開を進めるなど、多くの都民の支持を受けております。東京都も広域自治体として大型施設を擁し、都民大会、各競技の全国大会などに提供しております。
 しかし、東京都の施設はわずかであり、その利用率は基本的に大変高く、生活文化スポーツ局所管の東京体育館は、平成十八年度稼働率は、メーンアリーナで九九%、サブアリーナで九八%に至っております。若干郊外の駒沢オリンピック公園総合運動場屋内施設でも九〇%以上の稼働状況であります。この体育館など屋内施設は、全国大会、世界大会が行われますと、多くの選手、役員、応援団が東京を訪れる集客施設でもあるだけに、施設不足ともいえる現在の状況は、機会損失と見えなくもありません。
 東京の体育施設は、都民が積極的に活動し、スポーツをみずから楽しみ、あるいは観戦し、また、施設で行われる大会には世界各地から東京を訪れる経済波及効果の大きい重要施設として位置づけ、新設も含め、計画的に整備を進めるべきものと考えますが、お考えをお伺いいたします。
 最後に、子どもの安全対策の取り組みについてお伺いいたします。
 ご承知のように、都民の皆さんの都政への要望は、治安が四年続いて第一位であり、特に子どもに対する犯罪が起こりにくい環境の整備が求められております。過去に大阪の池田小学校、さきの加古川の事件など見るまでもなく、小さな子どもを持つ親の心配は尽きないのであります。都政の重要な課題であります子どもを犯罪から守るため、どのような取り組みを都で行っているか、お伺いをいたします。
 また、地域では、自主的パトロールや警察、自治体の支援による防犯ボランティア団体が以前に比べれば格段にふえておりますが、まだまだ活動の余地は大きく、新たな防犯活動に取り組みたいという声も聞くのであります。このような中、地域での防犯活動の機運を醸成しつつ、効果的な防犯活動ができるようにするためには東京都の支援は不可欠であります。東京都は、こうした地域における防犯活動に対してどのような支援を行っているのか、お伺いいたします。
 しかし、形を変え犯罪を繰り返す、子どもを取り巻く社会環境に対するためには、現下の対応に加え、たゆまぬ家庭と地域への働きかけが重要であり、まさにここでは社会のあり方が問われるということになります。子どもを犯罪から守るためには、この点への働きかけを強化すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 以上をもちまして、私の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 矢島千秋議員の一般質問にお答えいたします。
 世界との交流、協力における東京の役割についてでありますが、我が国には、世界に誇る歴史、民族固有の伝統、文化がありまして、それが有形、無形の国力になっていると思います。それがさらに集中、集積しているのがこの東京だと思っております。例を挙げれば、世界で最も有名なミシュランのガイドブックが、先般、東京を世界一の食の都と評価いたしました。星をもらったレストランがパリでは八十台、ニューヨークでは五十に満たなかったのが、東京では百五十を超えたわけでありまして、これによって、東京を世界一の食の都と評価してくれたわけであります。
 一つの器の中に一つの小宇宙をつくり出してみせ、芸術の域にまで高めていく日本の食事の繊細さや、他国の料理であっても、独特の工夫を加えまして、本家以上に磨き上げていく探究心などが世界を魅了したのだと思います。
 こうした豊かな才能はもとより、礼儀正しさやもてなしの心、あるいは自然を愛する姿勢などが生み出す日本の特質を認識して、東京から世界に発信していくことが、日本と世界のコミュニケーションを深めることになると思っております。
 極めてナショナルなるものこそが初めてインターナショナルになるという、これは文化の原理だと思います。その意識を強く持ちまして、現在、招致を目指して、オリンピックもその意識にのっとって、それを実現していきたいと思っております。
 また、アジア大都市ネットワーク21を通じました交流、協力の取り組みをさらに進めるとともに、文化、産業、環境、観光などの都政の各分野を通じて世界のかけ橋となるように、幅広い施策を展開してまいりたいと思っております。
 他の質問については関係局長から答弁いたします。
   〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕

○都市整備局長(只腰憲久君) まず、東京のまちづくりの可能性でございますが、東京をより一層魅力ある都市とするためには、国際競争力を備えることに加えまして、歴史や文化、あるいは人々の価値観を踏まえまして、地域の特性を生かしたまちづくりを進めることが必要でございます。例えば都心部では、業務、商業、文化、居住など、多様な機能が効果的に組み合わさった、活力と魅力のある地域を形成していくことが重要であるのではないかというふうに考えております。一方、下町などでは、伝統的なコミュニティを継承しつつ、活気あふれる暮らしやすいまちを目指していくことが重要ではないかと思います。こうした東京の多様な魅力を引き出しながら、今後さらに高いレベルの成熟を遂げた都市の実現を図ってまいります。
 次に、将来の東京のまちの姿についてのご質問でございます。
 三環状道路の整備を初めとする陸海空のネットワークの強化によりまして、渋滞のない、効率的で利便性の高い東京が実現するものと考えております。同時に、都市再生によって創出されます機能的な業務、居住空間、潤いのある水と緑のネットワークの形成などによりまして、人々が心豊かに暮らせる時間と空間のゆとりが生まれるものと期待しております。あわせまして、先進的な環境負荷の少ない都市づくり、震災対策の一層の推進によります災害に強い都市づくりなどを進めまして、東京を、安全・安心なまちの実現を目指してまいります。
   〔財務局長村山寛司君登壇〕

○財務局長(村山寛司君) 事務事業評価についてのご質問にお答えいたします。
 都財政を取り巻く環境にさまざまな変動要因がある中で、事業の積極的かつ着実な改善を図る上では、事業の実施状況について、実態や効果を具体的に点検し、その質を高めていく努力が重要でございます。こうした観点に立ちまして、十九年度予算から事務事業評価を予算編成過程の中に組み込み、よりきめ細かい事後検証を実施し、その結果をモデルとして取り上げて、公表することといたしております。
 今後とも、予算編成の中において事務事業評価の仕組みを定着させ、活用範囲を広げていくことによりまして、事後検証の結果を反映した、より効率的、効果的な事業の構築を図ってまいります。
   〔主税局長熊野順祥君登壇〕

○主税局長(熊野順祥君) 二点についてお答え申し上げます。
 まず、環境税についてでございますが、東京都税制調査会は、東京都気候変動対策方針の推進を支援するための独自税制につきまして鋭意検討を行ってまいりました。その結果、先月の中間報告においては、揮発油税など、既存の税制との整合性など課題もあり、さらなる検討が必要であるとされております。
 気候変動対策は我が国の喫緊の課題でもございますので、今年度の検討の成果を踏まえつつ、CO2排出抑制のインセンティブなど幅広い角度から、東京都税制調査会において引き続き積極的な検討をお願いしたいと考えてございます。
 次に、子育て支援税制についてでございます。
 政策課題解決のために、減税など税制を活用することは有効な手段の一つでございます。しかしながら、税は財政の基盤であることから、減税の効果、税の公平とのバランス、税以外のより効果的な手法の可能性、税収への影響等を踏まえ、慎重に検討すべきものであると考えております。
 お話の子育て支援のための住民税の活用につきましては、住民税が自治体の基幹税であることなど課題も多うございます。少子化対策は都の重要施策の一つでもございますので、今後の研究課題とさせていただきます。
   〔監査事務局長白石弥生子君登壇〕

○監査事務局長(白石弥生子君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、監査の結果としての意見、要望についてでございます。
 監査の結果には、指摘と意見、要望があり、このうち指摘は、合規性の観点を中心に、明らかに不適切な状況の是正、改善を求めるものでございます。
 一方、意見、要望は、事務事業の制度や仕組みにつきまして、事業環境等を踏まえ、経済性、効率性、有効性の観点から、さらに是正、改善ができないか検討を求めるもので、お話のとおり、各局の業務の改善に資するものと考えております。
 改善状況ですが、年二回、各局から報告を受けまして、改善されていない場合には、二年間継続して是正に向けての措置を各局に促しております。この間、状況の変化などによりまして、一部の改善にとどまるものや措置に期間を要するものもありますが、大部分は改善されております。
 次に、内部統制の観点からの監査についてでございます。
 業務手順の明確化、チェック体制の強化など、内部統制の整備は民間企業と同様、都の事業執行においても重要であります。これまでの監査におきましても、例えば昨年の定例監査におきまして、内部統制に着目し、未収金徴収の事務手続について改善を求める指摘を行いましたほか、ことしの工事監査では、内部統制上の重要な課題であるチェック体制を重点監査事項としております。
 内部統制の整備運用に当たりましては、事業環境や事業運営などに係る組織のトップの認識が肝要でありますので、今後、監査委員が直接各局の幹部職員に面談するトップインタビューの導入を検討しております。
 今後とも内部統制の重要性を認識し、監査の充実に努めてまいります。
   〔生活文化スポーツ局長渡辺日佐夫君登壇〕

○生活文化スポーツ局長(渡辺日佐夫君) スポーツの振興に関する質問にお答えいたします。
 まず、新たなスポーツ振興戦略の策定についてでありますが、十月にスポーツ振興審議会を立ち上げ、計画策定に向けた審議を開始したところでございます。第一回審議会においては、「十年後の東京」の実現に向けた八つの目標とスポーツ振興のかかわりを軸に、長期的視点に立った議論が交わされました。今後は、具体的なスポーツ振興施策について各委員の専門分野を中心にご意見を伺う予定でございます。
 審議会での議論とご意見を十分に踏まえ、だれもがスポーツに親しめる社会を目指して、新たな戦略となるスポーツ振興基本計画を策定し、来年の夏をめどに発表したいと考えております。
 次に、都立体育施設の整備についてでありますが、都立体育施設では、全国的、国際的なスポーツ大会にふさわしい大規模施設として多くの大会が開催されております。また、アマチュアスポーツ活動の拠点として、都民のスポーツ・レクリエーション振興の中心としての役割も担っております。体育施設には老朽化しているものもあることから、これらの体育施設の機能を十分に発揮できるよう、適時適切な施設の改修に努めてまいります。
 また、今後、スポーツ振興審議会での議論や、大規模大会の施設需要、都民のスポーツニーズ、財政状況等を踏まえ、計画的な整備も検討してまいります。
   〔青少年・治安対策本部長久我英一君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(久我英一君) 子どもを犯罪から守るための取り組みについてでございますが、都では、自分で守る、学校で守る、地域で守るという三つの視点から、子どもの安全確保に取り組んでおります。
 具体的には、子どもたち自身が通学路などの安全を点検して、みずからを守る力を育成するための地域安全マップづくりの普及、公立小中学校等へ設置した防犯カメラを活用することによる学校内の安全性の向上、保護者や地域の方が通学路を見守る子ども安全ボランティア活動の推進等に取り組んでおります。また、今年度は、通学路の見守りをさらに強化するため、青色防犯パトロールの普及にも努めております。
 次に、地域における防犯活動に対する支援についてでありますが、都内では、ここ数年で住民自身による自主防犯活動の機運が高まり、現在では三千を超える防犯ボランティア団体がさまざまな活動をしております。都では、このような地域の防犯活動に対する支援として、ボランティア団体の立ち上げや相互交流の促進を図るため、大東京防犯ネットワークという都のホームページを通じた情報提供や、防犯活動で使用する腕章等装備品の支給などを行っております。
 また、十一月を子ども安全ボランティア推進月間として位置づけ、学校、PTAや地域のボランティアなどを対象に、子どもの安全確保に関するスキルアップと相互のネットワークづくりを図るため、子ども安全フォーラムを実施したところであります。
 最後に、家庭と地域への働きかけについてであります。
 子どもを取り巻く地域社会では、都市化、核家族化、情報化等の進展により人間関係が希薄になり、子どもを守り育てるコミュニティの機能が低下しております。そこで都では、家庭や地域で親と大人が責任を持って次代を担う子どもをはぐくむため、心の東京革命やあいさつ運動など、さまざまな取り組みを推進しております。また、町会、自治会や共同住宅の住民が連携して防犯活動を行うことにより、地域の防犯力を高める地域防犯モデル事業を実施しております。
 都といたしましては、今後とも重層的、複合的に諸対策を推進して、家庭や地域のきずなを強め、地域で子どもを犯罪から守り、育てる力の回復、向上に努めてまいります。