○議長(比留間敏夫君) 五十八番植木こうじ君。
〔五十八番植木こうじ君登壇〕
○五十八番(植木こうじ君) 住宅の問題について伺います。
今、東京では、生活の基本であり、豊かな文化的な生活を支える基礎となる住宅が確保できなかったり、家賃が高くて生活費を切り詰めて、何とかしのいでいる都民がふえています。
とりわけ、若者は、厚生労働省のネットカフェ調査でも、都内だけで二千人の若者が住宅を借りることができず、ネットカフェやバーガーショップで寝泊りしている実態が明らかにされました。
また、わずかな年金で暮らしている高齢者の場合も、庶民増税や負担増のもとで、条件の悪いアパートで我慢したり、家賃を払った後、生活費の節約のため、値上がった灯油を買わずにじっと我慢している人など、深刻です。
ある人は、都営住宅に二十回申し込んだが当たらず途方に暮れているといい、またある方は、年金が月十五万円なのに家賃が七万三千円と、収入の半分が家賃に消えてしまうと嘆いていました。
私の地元の中野のある不動産業者は、住宅分野でも格差社会になっているといい、六本木の超高級マンションが即売となる一方で、安い家賃を探す人がふえているといっていました。
知事、このように住宅に困っている都民がふえている実態についてどう認識し、どう対応しようと考えていますか。また、今日の事態は、収入が低く、住宅に困窮している人のための都営住宅に行政の光を当てる必要性を改めて浮かび上がらせていると考えますが、知事の見解を伺います。
そこで、都営住宅にかかわって何点か伺います。
まず、都営住宅の建設です。
東京都は、この間、入居を希望する都民がふえ続けているのに、都営住宅の新規建設を打ち切り、募集戸数は、石原都政の八年間で三分の一に減らされているのです。
こうしたもとで、特別区議会議長会は、公営住宅への入居希望者は依然として多いとして、公営住宅の建設促進を図られたいという要望書を知事に提出しました。知事は、この要望をどう受けとめているのですか。お答えください。
ここで私が強調したいのは、東京都には都営住宅を建設する財源も土地も十分にあるということです。財源についていえば、この間、大幅税収増で三千億円も積み立てている基金を回せばよいことであり、用地は五百六ヘクタールもある未利用の都有地を活用すればよいことです。
このように、新たに土地を購入しなくても都営住宅を建てるための都有地はあります。税収も大きく伸びており、新規に建設できる条件はかつてなく広がっています。答弁を求めます。
また、東京都は、新規に都営住宅を建てようとしないだけでなく、建てかえに当たって住宅を集約化して生み出した用地を、住宅は充足しているといっていながら、マンション開発業者などに売却することまでしています。少なくとも都営住宅を廃止して用地を民間の開発業者に売却することは改めるべきだと考えますが、見解を伺います。
既存の都営住宅を有効に活用することで、入居の希望にこたえることも可能です。日本共産党は、都民の方から都営住宅の空き家がふえているという告発を受け、調査を行いました。日野市の多摩平アパートでは、百六十戸のうち六十一戸が空き家となっています。中には何年間も使われていないものもあります。私も現地を見ましたが、空き家には日やけどめのシートが張られており、一目瞭然です。地元の中野区の江古田住宅では、七十六戸のうち九戸が空き家になっています。このような住宅は、空き家は、都内にたくさんあります。
知事、これらの空き家を活用すれば都民の要望にこたえることは可能です。公募にかけるべきと考えますが、答弁を求めます。
都営住宅を安心して住み続けられる住まいにすることは、東京都の責任です。この問題では、東京都が都営住宅の使用承継をこれまで親子間まで認めていたものを、原則として配偶者に限定し、誓約書まで書かせ、追い出そうとしている問題を指摘しないわけにはいきません。
この問題では、生活と健康を守る会の方々が都と交渉を行いましたが、そこでの都の対応は冷たいものでした。十一月に親を亡くした知的障害四度の方は、相談に行ったら、障害の等級を上げられないのかと非常識なことをいわれたと怒りの声をぶつけていました。交通事故で足を引きずりながらパートで働いている方は、退去したくてもアパート代もない、それでも出ていけというのなら死ぬしかないと悲痛な声を上げていました。
知事、これらの方は、都営住宅の収入基準以下の方たちです。当然、都営住宅に住む権利のある方をなぜ追い出さなければならないのですか。答弁を求めます。
東京都が、六カ月たったら明け渡すことを約束させる誓約書を書かせることも、許されません。ある方は、父の死亡を届けたら、事情を聞くこともなく誓約書が送られてきました。そこには、六カ月たって退去しない場合、損害賠償として高い民間家賃を払うこと、明け渡し訴訟を起こすことなど、受け取った方を追い詰めるような文言が書かれています。大阪府を初め全国で誓約書を書かせている自治体はほとんどありません。親を亡くして嘆き悲しんでいるときに、このような非人道的な文書を送りつけることを許すことはできません。誓約書の強制は中止すべきですが、どうですか。
また、これまでどおり一親等まで承継を認めること、少なくとも障害者や病弱者については承継を認めるべきです。答弁を求めます。
住宅の改善も課題です。
居住者の強い要望の一つが、ヘルパーさんやお孫さんが来ても座るところがない狭過ぎる単身用住宅の改善です。単身用住宅の面積を広げること、少なくとも、今後配置を改善するなど住みやすいようにすべきと思いますが、いかがですか。
また、高齢者の移動と社会参加を促進するために、エレベーターの未設置の解消を急ぐこと、設置が困難な住宅から低層階やエレベーターのある住宅への転居を待っている居住者も多く、要望に積極的にこたえることも必要です。それぞれ答弁を求めます。
家賃の負担の軽減も切実な願いです。年金や社会保障の改悪や医療費など相次ぐ負担増で、生活を脅かされている方が多くなっています。こうした深刻な事態を踏まえて、減免制度を家賃の原則免除を含めたものに復活するよう求めるものですが、答弁を求めます。
高齢者が多数を占めることとなった都営住宅では、お年寄りが地域社会から孤立した生活を強いられる場合もあり、草刈りや自治会活動などに支障を来すことが少なくありません。大規模団地の管理人の常駐や巡回管理人の制度の拡充、さらには計画的に若年層や子育て世代などの入居を促進し、高齢者を支える仕組みづくりを進めるなど、さらには地域での見守りシステムとの連携を提案するものですが、いかがですか。
最後に、都営住宅の資格を持ちながら、応募しても入れない人がたくさんおり、対策が急がれています。こうした人たちに対して家賃の一部を補助することは、所得の再配分機能の一つとして有効であると考えますがどうか。
再質問を保留し、質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 植木こうじ議員の一般質問にお答えいたします。
住宅に困窮する都民への対応についてでありますが、東京における居住水準は着実に改善してきておりますが、なお住宅に困窮する都民に対しては、既存の都営住宅などの公共住宅のストックを有効に活用し、居住の安定を確保してきました。
さらに、公共住宅に加え、民間住宅も含めた重層的な住宅セーフティーネット機能の構築に取り組んでおります。今後とも、都民が真に豊かさを実感できる社会を実現するため、時代に即した住宅政策を総合的に展開してまいります。
他の質問については、関係局長から答弁します。
〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕
○都市整備局長(只腰憲久君) 都営住宅等にかかわる十三点のご質問にお答えいたします。
まず、住宅困窮者のための都営住宅についてでございますが、都はこれまでも、高齢者や子育て世帯に対する優先入居を実施するなど、真に住宅に困窮する都民に公平かつ的確に供給してまいりました。今後とも引き続き適切に対応してまいります。
次に、公営住宅の建設促進に関する特別区議会議長会からの要望についてでございます。
地域の住宅政策の推進に当たりましては、区市町村の役割が重要でございまして、都と区市町村は役割を適切に分担しながら、それぞれ主体的に取り組んでいく必要があると考えております。
次に、都営住宅の新規建設でございますが、既に都内の住宅の数が世帯数を一割以上上回っておりまして、さらに将来の人口減少社会の到来が見込まれていることなどを踏まえまして、都営住宅につきましては、新規の建設を行わずに、ストックを活用して公平かつ的確に供給してまいります。
次に、都営住宅の用地についてでございますが、都民共有の貴重な財産であることから、建てかえにより生み出した用地につきましては、民間事業者の創意工夫も引き出しながら、地域の特性を生かしたまちづくりなどを進めていくことが必要と考えております。
次に、都営住宅の空き家でございますが、現在、都営住宅の建てかえを年間三千戸、スーパーリフォーム事業は千九百戸を実施しております。移転先としては、一定数の空き家が必要でございまして、その確保をしております。
このほかにつきましても、修繕や入居手続等のために一時的に空き家となっているものでございまして、公募によりまして年間約七千戸の入居が行われております。
次に、都営住宅の使用承継制度についてでございます。
都営住宅の入居は公募によることが原則でございまして、今回の制度の見直しでは、入居者・非入居者間の公平性を確保するため、国の通知も踏まえ、名義人が死亡した場合等の使用承継を、原則として配偶者に限ることといたしました。
施行に当たりましては、使用承継できない場合の退去猶予期間を、従来の原則三カ月から六カ月に延長したほか、賃貸住宅の募集情報の提供、区市町村の福祉の窓口を紹介するなど、きめ細かい対応に努めております。
次に、お話の誓約書についてでございます。
名義人の死亡等の届け出があった場合に、名義人と同居していた親族が承継の許可基準に該当しない場合や承継を希望しない場合でありましても、六カ月は退去を猶予するよう配慮してございます。このことを確認する意味で、対象者から、猶予期限を明記した誓約書を提出していただいております。
使用承継の範囲でございますが、入居を希望している都民が多数いる一方で、長年にわたり同一親族が居住し続けることになりますと、都営住宅の利用機会の公平性を著しく損なうことから、承継を一親等には認めないこととしたものでございます。
ただし、高齢者、障害者、病弱者で、特に居住の安定を図る必要のある方につきましては、名義人の三親等まで許可することとしております。
次に、都営住宅の建てかえで供給する住宅についてでございますが、建てかえに当たりましては、居住者の世帯人数により基準を設け、住みやすい間取りとなるよう工夫しながら、適切な面積規模の住宅を供給しております。
次に、エレベーターの設置でございますが、既設都営住宅におきましては、平成三年度から一定規模以上で、設置が可能な住宅棟のうち、居住者の合意が得られたものから順次進めておりまして、昨年度末までに千基以上のエレベーターを設置してまいりました。
また、エレベーター設置が困難な住宅から低層階などへの住みかえにつきましては、年間約五百件程度実施しておりまして、適切に対応しているものと考えております。
次に、家賃の減免制度でございますが、都営住宅の減免制度は、使用料の負担をより公平なものとする観点から、平成十二年度に抜本的な見直しを行っております。この見直しは、原則として免除を廃止し、使用料の減額を定額から定率方式に改めることにより、住宅の応益性や入居者の負担能力をより正確に反映できるようにしたものでございます。現在の制度は適切であり、元に戻すことは考えておりません。
次に、高齢者を支える仕組みづくりでございます。
巡回管理人制度は、従来の常駐型の専任管理人制度を改め、より効率的かつ効果的にしたものでございます。また、子育て世帯の入居機会の拡大を図るため、若年ファミリー世帯向け定期使用住宅の募集などを既に実施しております。今後とも、これらの制度を的確に運用してまいります。
一方、地域での見守りシステムにつきましては、地元区市町等によります緊急通報システムなどが用意されておりまして、都営住宅におきましても、居住者の方々がこのようなサービスを利用することが可能となっております。
最後になりますが、家賃補助でございます。
家賃補助は、生活保護制度との関係や財政負担のあり方など、多くの課題がありますことから、都として実施することは考えておりません。
〔五十八番植木こうじ君登壇〕
○五十八番(植木こうじ君) 二点の再質問を行います。
知事は、居住水準は改善している、ストックは充足していると答えましたが、私が聞いているのは、所得の低い人や若者が入れる住宅が足りないことをどう考えているのかということです。
現実に、この十年間に収入が三百万円に満たない世帯が一五%から三一%に倍加しました。都営住宅階層の世帯は、全世帯の三割以上にもなり、二百万世帯をはるかに超えているのです。都営住宅戸数の八倍近い世帯です。だから都営住宅の応募者がふえ続け、知事が就任した一九九九年の平均十一倍から、実に三十五倍へと急増し、年間二十万人を超えているではありませんか。なぜ、これらの人たちのための住宅が不足していることを認めないのですか。お答えください。
また、空き家を活用する問題です。
入居者と非入居者との公正をというなら、入居できない人が大量に生まれているのは、都営住宅の絶対量が足りないということです。
さらに、戸数が足りないだけではない。私どもが調査したら、何と一万一千四百七十六戸も空き家があります。もちろんこの中には、建てかえのための事業用住宅も含まれていますが、四・四%という空き家率は異常です。公正をというのだったら、新規建設を再開するとともに、少なくともこの空き家の活用を図るべきではないですか。お答えください。
以上で再質問を終わりにします。(拍手)
〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕
○都市整備局長(只腰憲久君) 先ほど知事からご答弁申し上げましたが、東京における居住水準につきましては、最低居住水準未満の世帯数の割合が、この十年間で半減するなど着実に改善をしてきております。
しかしながら、一方で、現に住宅に困窮している都民に対しましては、居住の安定を確保するため、管理の適正化等の取り組みによりまして、都営住宅などの公共住宅のストックを有効に活用するとともに、入居制限を行わない民間賃貸住宅の供給促進など、民間住宅も含めた重層的なセーフティーネット機能の構築に取り組んでまいります。
次に、都営住宅の空き家でございますが、これは先ほどの繰り返しの答弁になりますが、建てかえあるいはスーパーリフォーム事業を実施するためには、移転先としての一定数の空き家が必ず必要でございます。そのための確保をしているところでございます。
また、七千戸の公募による入居を行っているわけでございますが、そのためには、前の方がお出になった後の修繕並びに入居の手続のために、一時的な空き家はどうしても必要ということでございます。
以上でございます。
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