午後三時十九分開議
○議長(比留間敏夫君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
質問を続行いたします。
二十二番早坂義弘君。
〔二十二番早坂義弘君登壇〕
○二十二番(早坂義弘君) なぜ東京はオリンピックに立候補したのか。それは、都民にとって利益があるからです。オリンピックは、たった二週間の開催でしかありませんが、それは単なるスポーツの祭典ではなく、開催国の発展にとって、時代を画する極めて大きな意義を持っています。
昭和三十九年、東京オリンピックの開催を契機に新幹線ができ、首都高速道路ができ、そして環状七号線もできました。カラーテレビの普及やどぶ川の一掃など、どれをとっても今日の、四十年後の我が国の骨格部分がこのとき形成されました。
そして、インフラ整備以上に大きな遺産として残ったものがあります。それは、戦後、奇跡の復興を遂げた我が国が、平和の象徴であるオリンピックを開催することで、名実ともに国際社会へ復帰したという国民全体の自信、高揚感、そして誇りであります。
では、今日二〇一六年、東京オリンピックへの立候補は都民にとってどんな利益があるのか。その答えの幾つかは「十年後の東京」に書いてあります。
かつて、ケネディは、国家があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国家のために何をできるかを問おうではないかと訴えました。
オリンピックは、都市を進化させるための最大の起爆剤であり、国民に大きな夢を与えることを改めて確認した上で、私はケネディに倣い、あえて、こう問いかけたいと思います。オリンピックが東京のために何をしてくれるかでなく、東京がオリンピックのために何をできるだろうか。
オリンピックは世界最高のスポーツの祭典ですから、端的にいえば、競技者に世界最高の競技環境を提供することが、その答えの第一です。このことは、各競技団体の意見を十分に取り入れ、かつ、我が国の技術力をもってすれば、ライバルの諸都市には決して負けません。莫大な費用をかけて派手に会場をしつらえるということではなく、質素で機能重視の高規格なものをつくることは、まさに我が国の得意とするところです。
また、競技場のコンディションという狭い意味の競技環境にとどまらず、例えば世界的感染症から選手を守ることなど、広い意味での競技環境の整備についても同じです。つい先日発行されたミシュランガイドブックでは、東京は世界一の美食のまちという高い評価を受けました。また、ハリウッドスターが来日して一番感激するのは、おもしろいことに、トイレのウォッシュレットだそうです。つまり、競技場のコンディションと選手を取り巻く生活環境のどちらをとっても、東京は世界最高の競技環境をオリンピックに提供できること、これが第一の答えです。
東京がオリンピックに対してできることの二つ目は、オリンピックの収益金の活用です。
かつて、スラム街の映像で、一つのサッカーボールを中心に、子どもがだんごになって集まっている姿を見て、大変強い印象を受けました。あるいは、どんな戦争を行っている国でも、子どもたちは砲撃の合間を縫って遊びを探します。
そこで、二〇一六年東京オリンピックでもたらされるであろう収益を、発展途上国や、戦争を行っている国々の子どもたちのスポーツ支援のために使うことを提案します。赤十字があらゆる戦地や途上国に乗り込んでいくように、オリンピックもそこに乗り込んで子どものスポーツを支援する、これはオリンピック憲章の崇高な理念である青少年の教育で世界平和をつくることにかない、二〇一六年東京大会が、オリンピックに貢献できる大きな一つだと考えます。
三つ目の答えは、地球規模での環境問題の解決です。
我が国は、従来から世界に最新技術を発信してきました。特に、省エネルギー技術は群を抜いています。一定のエネルギーでどれだけのGDPを生み出すかというエネルギー原単位ではヨーロッパの一・五倍、アメリカの二倍であり、世界一の効率を誇っています。
地球全体の炭酸ガスを削減するには、世界のCO2の五%を排出する我が国が、みずからの排出量を削減するだけでなく、四カ国で世界の五〇%のCO2を排出する、アメリカ、中国、ロシア、インドの排出量削減のために我が国の技術を提供しないことには解決しません。
東京オリンピックを、我が国の省エネルギー技術を全世界に発信する場であると位置づけることは、オリンピックに対する最大の貢献になろうかと思います。有形無形を問わず、それが都民の利益になるからこそ、東京はオリンピックに立候補しました。「オリンピックを日本に、二〇一六年!」では、東京がオリンピックに対して何をできるか、石原知事にお伺いをいたします。
次に、浸水対策について伺います。
近年、大型台風や局所的集中豪雨による被害が各地で多く発生しています。
一昨年の九月四日には、一時間に一〇〇ミリを超える集中豪雨により、我が杉並区などを中心に五千棟を超える浸水被害が発生しました。この豪雨災害では、私自身も腰までつかる経験をし、都市型水害の恐ろしさを目の当たりにしました。
このような集中豪雨による都市型水害の特徴は、河川のはんらんにとどまらず、下水道の能力を超えて浸水が発生することにあります。河川の被害は想像しやすいですが、下水道に関する被害は、都市の中心部など、思わぬところで発生するところに恐ろしさがあります。
集中豪雨直後の一般質問でも取り上げました和田弥生幹線が、十五年の歳月と五百億円の費用をかけ、本年五月に本格稼働を始めました。この完成により、今後、周辺の浸水被害が軽減されると確信しています。
災害対策の本質は、インフラ整備にこそあります。東京都は、一昨年の集中豪雨を契機に、都市整備局、建設局、下水道局の三局で今後の豪雨対策のあり方の検討を進め、本年八月に東京都豪雨対策基本方針を策定しました。この方針の中で下水道局はどのような対策を行うのか、伺います。
我が杉並区内で繰り返し浸水被害を受けている地域に、JR阿佐ヶ谷駅周辺があります。今後、この地域の豪雨対策をどのように実施するのか、伺います。
次に、安全教育について伺います。
子どもたちは、日々、犯罪のみならず、自然災害や交通事故など、さまざまな危険に取り囲まれています。
我が党は、これまで防犯カメラの設置や防犯パトロール、交通安全運動の実施など、社会が子どもたちを守るための仕組みづくりを行ってまいりました。一方で、子どもたちにも、だれかに守ってもらうということだけでなく、みずからも率先して、地域の安全を守るための力や態度を身につけさせる必要があります。事件や事故が発生した際に、各学校で一斉に注意を喚起することは必要ですが、常日ごろから安全教育を行い、事件や事故にとっさに反応できる気づき、すなわち反射神経のようなものを養うことが重要です。
安全教育には、防犯、防災、交通安全のみならず、例えば詐欺、薬物乱用、伝染病対策など、さまざまな分野があります。幾つかの分野と方法を組み合わせて行う必要があろうかと思います。
さて、学校教育において必ず指導すべき内容は、国が定める学習指導要領に示されています。ところが、現状では、安全教育の内容に定めはありません。そのため、学校での安全教育は、何か事件や事故が起こったときの応急的な対応になっているのです。
そこで提案ですが、国の基準がないのならば、東京都が、都内の子どもたちに最低限これだけは教えるべきとする、学校の安全教育に関する東京版安全指導基準を具体的に定めることが有効だと考えます。ご見解を伺います。
地域の安全は、警察や消防に任せておけば事足りるというものではありません。地域の構成員それぞれが、自分たちの安全は自分たちで守るのだという決意が必要です。そのためにも、ある一定レベルの安全教育を学校で、警察、消防はもちろん、町会、商店会、あるいは医師会など関係機関とも連携して行うことは、将来、安全に関する地域力を向上させることにつながると考えます。ご見解を伺います。
次に、救急救命について伺います。
東京消防庁管内における救急出動件数は、年間で七十万件に迫ろうとしています。出場件数の増加に伴い、救急車が現場に到着する時間も遅くなっています。
昨年の救急車の平均現場到着時間は六分十秒ですが、これは十年前と比較すると五十秒以上も遅くなっており、一刻を争う患者の搬送にとって、大きな問題になっています。
世論調査の結果によれば、救急車を呼んだ理由の中に、救急車で病院に行った方が優先的に診てくれると思ったというものや、通院の交通手段がなかったというものが含まれ、本来、救急車が必要でない場面での安易な利用が、出場件数をふやす理由になっています。それゆえ、明らかに緊急性がない場合については患者自身の力で通院をしてもらう、救急車の適正利用が必要ではないかと考えます。
そこで、東京消防庁では、本年六月から救急搬送トリアージを始めています。これは、現場に到着した救急隊が緊急性がないと判断した患者に関しては搬送しないというものです。その実績について伺います。
一方、救急車を呼んだ理由の中に、重症か軽症かの判断がつかなかった、夜間、休日で診察時間外であったというものがあります。これは、都民自身が救急車を呼ぶほどではないと考えていても、状況に対応できる相談窓口が不十分であったために、結果的に救急車を呼んだケースだと思われます。
東京消防庁では、東京都医師会などの協力を得て、本年六月からシャープ七一一九という短縮電話番号により、医師や看護師が都民からの相談を受け付ける救急相談センターを開設しました。このセンターについて、今後さらなる制度の拡充が必要だと考えます。ご見解を伺います。
最後に、都立文化施設について伺います。
上野の東京都美術館は八十年間に及ぶ歴史を有し、日展や院展など、広く全国から作品を募る公募展、また、新聞社やテレビ局などと共同して行う共催展の開催場所として、多くの都民、国民に親しまれてきました。
しかしながら、築後三十年以上が経過し、改修の時期に来ています。総事業費百億円をかけて、平成二十二年度から二年間休館し、工事を行うことになっています。
社会の変化に伴い、美術館に求められるニーズも多様化しています。利用者の声を十分に酌み取り、今後の具体的な設計に反映させていくべきであります。改修のチャンスを最大限に生かし、東京都美術館をさらに魅力的なものとしていくため、どのように改修を進めていくのか、伺います。
本年一月、東京都美術館と同様の機能を持った国立新美術館が開館しました。強力なライバルを迎えたわけですが、リニューアル後においても、伝統と実績を生かし、今後も公募展会場としての機能はしっかりと継続していくべきと考えます。ご見解を伺います。
ありがとうございました。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 早坂義弘議員の一般質問にお答えいたします。
オリンピックについてでありますが、早坂議員から健全な発想のご提言をいただきました。
東京がオリンピックに対して何ができるかを示すことは、オリンピック招致をかち取る上でも重要なことだと思います。人と地球の可能性を追求し、今までにない新しいオリンピックを実現していきたいと考えております。
大切なことの第一は、東京、日本が持つ世界最高の水準の技術の活用であります。アスリートが最高の力を発揮できるよう、また観客が競技を心から楽しめるよう、ユビキタスやロボットなど、科学技術の粋を集めた競技会場を整備してまいります。
第二は、オリンピック開催を機に、新しい都市モデルを提案し、地球環境を再生することでもあります。世界で最も環境負荷の少ない都市を実現し、地球の健康を取り戻す具体的な道筋を世界に示していきたいと思っております。
第三は、スポーツを通じて人々に夢と希望を与えることでありまして、国内はもとより、アジアやアフリカの子どもたちや青少年のスポーツ活動を支援する仕組みをつくり上げていきたいと思っております。
東京から地球社会への贈り物という開催意義を高く掲げて、オリンピック・パラリンピックの開催を実現したいと思っております。
他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
〔教育長中村正彦君登壇〕
○教育長(中村正彦君) 二点についてお答え申し上げます。
安全教育の基準を定めることについてであります。
安全に関して必ず指導する事項を明確に示し、すべての学校が年間を通じて意図的、計画的に指導できるよう支援していくことが重要であり、これまで都教育委員会は、生活安全、交通安全、災害安全の課題ごとに指導資料を配布するなどいたしまして、各学校における安全教育の充実を図ってまいりました。
今後、都教育委員会は、基本的指導事項を体系的に示した安全教育のプログラムの開発を進め、年度内には教員研修会を実施するとともに、リーフレットを全教員に配布して、安全教育が体系的に行われるよう、各学校を支援してまいります。
次に、地域力を向上させるための安全教育の充実についてでございます。
学校における安全教育を充実させていくために、各地域において、警察署、消防署などの関係機関と連携することは大変重要であります。これまで都教育委員会は、各学校が関係機関の協力のもとに実施するセーフティー教室、交通安全教室、防災訓練などの取り組みを支援してまいりました。
今後、関係機関との連携を重視して、安全教育のプログラムを開発し、子どもたちが将来、安全で安心なまちづくりに貢献する人材へと成長するよう、区市町村教育委員会とともに、各学校の安全教育の充実を図ってまいります。
〔下水道局長前田正博君登壇〕
○下水道局長(前田正博君) 豪雨対策基本方針における下水道局の対策についてでございますが、下水道局は、一時間五〇ミリの降雨に対応できる幹線やポンプ所などの基幹施設の整備を計画的に進めてまいりました。しかし、これらの基幹施設の整備には長い年月と多くの費用を要し、雨水整備率は、現在、約六割にとどまっております。
今回策定されました豪雨対策基本方針の中では、浸水予想区域図などをもとに、浸水の危険性が高い流域や、繰り返し浸水が発生している二十地区を、対策促進地区として選定いたしました。対策促進地区では、今後十年間で一時間五〇ミリメートルの降雨に対応できる基幹施設の整備を完了させることといたしました。
また、地下街などがあり、浸水時には重大な被害が発生する危険性が高い地区を六地区選定いたしまして、一時間七〇ミリメートルの降雨に対応できるよう、施設を整備いたします。
次に、JR阿佐ヶ谷駅周辺の豪雨対策についてでございますが、当該地区は、起伏が多いといった地域特性から、地盤の低いところで繰り返し浸水被害が発生しております。このため、豪雨対策基本方針の中では、この地区を二十ある対策促進地区の一つとして選定し、対策を実施することといたしました。
具体的には、内径二・八メートル、延長四百五十メートルの貯留管を新たに設置し、約二千四百立方メートルの雨水を貯留する計画で、早期完成を目指し、積極的に整備を進めてまいります。
今後とも、豪雨対策基本方針の施策を着実に実施し、浸水被害の軽減を図ってまいります。
〔消防総監小林輝幸君登壇〕
○消防総監(小林輝幸君) 救急に関する二点のご質問にお答えいたします。
初めに、救急搬送トリアージについてでありますが、東京消防庁では、真に救急車を必要とする都民に迅速に対応できるよう、救急現場において、医学的知見による基準に基づき、明らかに緊急性がないと判断したものにつきまして、傷病者自身での医療機関への受診を促し、同意が得られた場合には医療機関案内などを行った上で搬送しないこととする、救急搬送トリアージの試行を本年六月一日から実施しております。
救急搬送トリアージの実績でございますが、十一月末日までに緊急性がないと判断した件数は百六十二件、うち同意を得て搬送しなかったものは百件であり、他の搬送したものにつきましても、すべて軽症でございました。
今後は、試行状況を踏まえ、基準の検証や都民の理解を得まして、本格運用を目指してまいります。
次に、東京消防庁救急相談センターの制度の充実についてでありますが、本年六月一日から十一月末日までの総受け付け件数は十二万六千七百九件で、そのうち医療機関案内は十一万三千四十二件、医師もしくは看護師が対応した救急相談は全体の約一割に当たる一万二千二百八十六件で、その相談内容は多岐にわたりますとともに、電話が集中するなど、かけ直しをお願いする場合も発生しております。
今後は、こうした実態を踏まえまして、受け付け体制を充実しますとともに、東京都医師会、東京都福祉保健局などで構成する東京消防庁救急相談センター運営協議会におきまして、救急相談への対応の質をさらに高めてまいります。
〔生活文化スポーツ局長渡辺日佐夫君登壇〕
○生活文化スポーツ局長(渡辺日佐夫君) 東京都美術館に関する二点の質問にお答えいたします。
まず、東京都美術館の大規模改修についてでありますが、東京都美術館は、竣工以来三十年以上が経過しており、施設設備の深刻な老朽化への早急な対応が課題となっております。そこで、空調、電気等設備の全面更新を図ることといたしました。環境への負荷も考慮し、都民に親しまれている現在の建物を残しながら、二カ年かけての大規模改修を予定しております。
また、ご指摘のとおり、美術館に求められるニーズは一層の快適さや楽しさなど多様化しており、利用者の声を反映させ、エスカレーターの設置やエレベーターの増設、また、一部の展示室について天井高を上げる工事や、レストランの複数整備などを行うことといたしました。
今後の設計においても、利用者へのヒアリングを重ねて、美術館の魅力向上に努めてまいります。
次に、東京都美術館の公募展会場としての機能についてでありますが、美術団体が主催する公募展は、これまで新人の登竜門として、また美術界のすそ野を拡大し、芸術文化を支えるインフラとしての役割を果たしてきました。
東京都美術館は、長年にわたりこれらの美術団体に展覧会の場を提供し、日本の美術の発展に寄与してきました。今回の改修においても、多様な芸術文化活動の発表の場としての機能を引き続き担えるよう、公募展を開催する建物は、現在の構造を生かすこととしております。
リニューアル開館後も、美術団体の意見を十分聞きながら、施設運営を行ってまいります。
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