平成十九年東京都議会会議録第十八号

○副議長(石井義修君) 二十八番佐藤広典君。
   〔二十八番佐藤広典君登壇〕

○二十八番(佐藤広典君) まず初めに、横田基地について伺います。
 横田基地の共用化については、引き続き米側と協議を継続することとなりましたが、多摩地域を含めた首都圏西部地域の航空利便性の向上と地域の活性化にとって不可欠でありますから、粘り強く交渉することにより、早期実現を目指していくべきであります。
 軍民共用化に当たっては、民間空港施設やアクセス交通などのインフラ整備が必要となりますが、今のところ、都の具体的な整備計画が明らかになっているわけではありません。
 しかし、これまで知事本局や都市整備局において、軍民共用化に伴うインフラ整備にかかわる委託調査を実施していると聞いております。知事本局については、十五年から十八年の四年間で六千四百七十五万四千円、都市整備局については、十三年から十八年の六年間で四千六十二万五千円を使って調査を行っております。
 日米交渉の途中の段階で、その調査結果をオープンにすることは難しいとしても、今後、共用化の協議の進展とあわせ、調査結果を十分に横田基地整備のビジョンに生かし、それを発表し、地元の意向も十分に踏まえた上で、大いに議論をすることにより、インフラ整備の具体化を図っていただくよう要望いたします。
 また、今後、横田基地が軍民共用化された場合の交通網の整備について、基本となるプランがありません。交通網整備の基本プランをつくり、インフラ整備の具体化を図っていただくよう要望いたします。
 首都圏における航空需要は、今後、国際航空、国内航空ともに増加すると見込まれております。これに対応するためには、羽田空港の再拡張による発着枠拡大、国際化とともに、横田基地の共用化が必要不可欠です。
 羽田空港には、多くの国際ビジネス航空やコミューター航空の乗り入れ需要がありますが、利用に当たり制約が多く、要望に十分こたえられない状況だと聞いております。
 そこで、横田基地の軍民共用化により、旅客定期便の運航だけではなく、羽田空港では対応できない、こうした国際ビジネス航空やコミューター航空の乗り入れ要望に柔軟に対応し、多様な航空サービスを提供すべきと考えますが、見解を伺います。
 また、多摩は製造業が多く立地しておりますから、貨物便が利用できるようになれば、地域の発展に役立つものと考えます。中小型のチャーター機と貨物に関しても利用できるよう検討していただくことを要望いたします。
 首都圏の空港の状況を見てみますと、既に成田空港と羽田空港には多くの旅客定期便が飛んでおり、既に飽和状態です。万が一大規模災害が起きて、どちらかの空港が使えない状況になり、長期間復旧のめどが立たないような事態が起きれば、ほかに受け皿となる空港が必要です。
 しかし、首都圏にある大規模な空港は限られておりますから、横田基地が空の玄関口として受け皿となるしかありません。成田空港と羽田空港に対して、横田基地はある程度距離があるため、補完的な役割を果たすことが可能ではないでしょうか。お互いに距離のある三つの空港が同時に被災することは少ないといえますから、お互いの補完的な機能を持つよう準備をしておくことが有効であると考えます。
 軍民共用化が実現する前であっても、災害時の首都圏航空受け入れ体制に欠陥が出てはなりません。災害時における横田基地の有効活用に向け、都は総合防災訓練の実施に当たり、横田基地を利用する協定を、その都度、在日米軍と結んでおりますが、災害時に特に重要なのは航空機の受け入れ体制です。災害が発生したとき、直ちに横田基地が使えるよう、航空機の受け入れ体制を含めた協定を在日米軍とあらかじめ結ぶべきと考えますが、見解を伺います。
 今申し上げましたように、災害に対しての備え、そして離発着枠の確保、産業振興と、横田基地の軍民共用化は、都の利益だけでなく、首都圏及び国益のためにもぜひとも実現すべき課題です。引き続き粘り強く交渉していただくことを要望いたします。
 続きまして、中小企業再生の施策についてお伺いいたします。
 現状では、中小企業にとっては依然として景気回復を実感できない状況にあります。受注先からのコストダウン要請や、原油を初めとした原材料価格などの上昇分を価格に転嫁できないことなどにより、利幅が急激に縮小し、資金繰りが逼迫した企業が増加をしております。
 東京都における最近の調査でも、中小企業の倒産は増加の傾向にあるなど、景気回復の恩恵を受けるどころか、むしろ再生支援の必要性が高まっております。早急に、中小企業の経営安定化のための施策を打ち出していくことが必要です。
 都の中小企業施策の一つとして、厳しい経営環境下にある中小企業を支援するために設立されたのが新銀行東京です。しかしながら、十一月三十日発表の中間決算によれば、非常に厳しい経営状況に陥っております。不良債権比率は一〇・一七%になり、不良債権処理額は半期で七十一億円に上ります。これでは、金融機関として中小企業を支援する融資を続けていくことは困難です。
 このような事態に陥った要因の一つに、新銀行東京が信用リスクの高い企業に多くの融資を行っていたということが挙げられます。融資先の多くが、経営再建が必要なほど経営的に厳しい中小企業が多かったがために、経営破綻等によりデフォルトが相次いだのではないでしょうか。このことは、新銀行東京が融資先企業の再生が適切にできていなかったということを意味します。新銀行東京が適切に融資先に対する再生支援を行っていれば、デフォルトを抑え、ここまで新銀行東京の財務内容が悪化しなかったのではないでしょうか。
 金融機関による再生支援策は、金利減免や返済期限の延長といった条件変更といわれる金融面での支援が当然主となりますが、これには限界がございます。経営再建の際に必要なのは、資金だけでなく、銀行等の債権者間の調整や事業改善そのものに携わる人材です。つまり、新銀行東京の事例は、地域金融機関が自前で企業再生をするには限界があり、企業再生の支援には、融資元の金融機関とは異なる企業再生の支援組織が必要だということを意味しております。
 都が、中小企業支援、とりわけリスクの高い企業への経営支援を行おうとするならば、経営再建の支援体制を整備することが不可欠です。
 都は、企業再生の取り組みとして、平成十六年十月創設の投資事業有限責任組合東京チャレンジファンドに二十五億円を出資し、地域金融機関などの出資と合わせて七十五億円規模のファンドで中小企業の再生を支援しております。このファンドは、中小企業の中でも、過剰債務を抱える非常にリスクの高い企業に投資をするわけですから、財務状況や今後の収支見通しなどを詳細に調査し、資本注入や社債の引き受けなど、通常の金融機関では容易に対応できない専門的な再生手法を使っているとのことです。
 しかしながら、この東京チャレンジファンドは、情報開示が適切になされていないため、だれが幾ら出資をし、どこへ幾ら投資をされたか、二十五億円という予算を使いながら、その状況が明らかにされておりません。そのため、運用者が出資者である地域金融機関や東京都といかに連携して支援を行っているかなど、このファンドが企業の再生に対して有効に活用されているかどうかが明確に示されてはおりません。
 投資先である中小企業に対する風評リスクの懸念から、ファンドの情報開示には限界があるのでしょうが、この東京チャレンジファンドの出資者として、都がどのような監視を行い、連携をしていくのか、示す必要があると思います。見解を伺います。
 また、さきにも申し上げましたが、企業再生には、資金だけでなく、金融機関を初めとする債権者間の調整や事業再生ができる人材が欠かせません。ところが、中小企業の再生は、経済効率性の観点からも、なかなかビジネスになりにくく、この分野の人材が不足をしております。早急に人材の育成を図るべきであります。
 中小企業の再生を行える人材の育成を行うに当たって、このファンドが所有するノウハウも活用できると考えますが、見解を伺います。
 原油や原材料価格の高騰により体力の低下した多くの中小企業を救うには、この再生ファンドだけではまだまだ十分とはいえません。むしろ、中小企業はその資金調達のほとんどを融資に依存しているのですから、都は制度融資の強化を図るべきであります。
 都の制度融資は、平成十八年度実績で約十五万七千件、一兆九千九百七十九億円の資金を供給するなど、都内中小企業にとって最も一般的なセーフティーネットであり、中小企業の経営の安定化を図るものであります。
 しかしながら、本年の十月からは、国の信用補完制度の見直しにより、責任共有制度が導入され、一部の制度を除き、金融機関が信用リスクの二〇%相当を負担することとなりました。そのため、金融機関にとって、信用リスクの高い企業に対する融資はますます困難な状況となり、貸し渋りが懸念をされております。中小企業への安定的な資金供給が断たれることは、ただでさえ原油価格の高騰などにより体力が低下しております中小企業を倒産へと追い込むことになってしまいます。これは、東京の経済活力にとって大きな損失を招くことになります。
 そこで伺います。都は、この責任共有制度の導入に当たり、再生に向け努力をする企業に対してしっかりとした対策をとるべきと考えますが、見解を伺います。
 経営状況が苦しく、資金繰りに窮した、担保も信用力もない中小企業の再生は、かなりリスクが高く、民間の金融機関では対応が困難な状況にあります。しかし、そういった企業に対して、都が民間のノウハウを活用し、中小企業の再生を支援していくことは、都の経済活力を支えていく上で大きな効果があると思います。
 国では、中堅企業や第三セクターの経営再建を支援する地域力再生機構を創設しようとしております。それでは中小企業の再生は進みません。
 東京チャレンジファンドや制度融資による支援にとどまることなく、中小企業に関する多くの再生専門家を集め、金融機関を初めとした債権者間の調整も強力に進める東京都産業再生機構を創設し、中小企業の再生に取り組むよう要望いたします。
 最後に、都の契約制度について伺います。
 公共工事発注・契約の適正化のため、国を初め都においても、一般競争入札の拡大や総合評価方式の拡大に取り組んでおります。適正な品質のものを適切かつなるべく安く買うという姿勢は、都民からの税金を使う以上当然のことです。しかし一方で、一般競争入札などでは、いわゆる低入札の問題が発生しているといわれております。
 低入札で問題となるのは、何といっても、まず工事の品質の確保、そしてダンピングです。不良不適格業者の参入などによる無理な受注によって、工事における安全管理がおろそかになったり、下請会社などへの低価格の押しつけが発生しているともいわれております。これに対して、都では、低入札価格調査制度を設けて対応しておりますが、入札契約全体の透明性のさらなる向上が必要ではないでしょうか。
 国土交通省では、昨年度に入札ボンド制度を試行し、ことしの三月には各地方整備局に対し、WTOの政府調達協定の対象となる予定価格七億二千万円以上の工事すべてに入札ボンドを導入するよう求めております。
 入札ボンド制度は、入札参加者の契約履行能力を金融機関などが入札前に保証する仕組みで、入札参加者が入札ボンドを申請すると、金融機関などは、入札参加者の財務的な履行能力を審査し、履行を保証できる場合に入札ボンドを発行するものです。
 国の制度では、入札に参加をしたい場合、応札額の五%に相当する額の入札ボンドを金融機関などに発行してもらいます。国でもまだ試行段階であり、その効果を議論するには時期尚早ではありますが、契約履行能力が著しく劣る建設業者の排除や、与信枠の制約による業者の絞り込み、ダンピングの抑止などに効果が期待されております。
 現在、都の登録の際に、さまざまな項目を提出させているということでありますが、都がそれを一つ一つ調査するのは非常に大変なことでありますし、二年に一度しか資料を出しません。財務内容をよく知っている金融機関が客観的な評価を行うことは有効なのではないかと思います。
 同様の試みが、既に宮城県や埼玉県で導入されているほか、岩手県、兵庫県でも今年度から導入されました。都でも入札ボンド制度導入に向けた検討を行うべきと考えますが、見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事本局長大原正行君登壇〕

○知事本局長(大原正行君) 佐藤広典議員の一般質問にお答えをいたします。
 まず、横田基地における多様な航空サービスの提供についてでございます。
 コミューター航空やビジネス航空は、小型の航空機による小回りのきく運航を特徴とするものでございまして、きめ細かい地域的な航空輸送や機動的な経済活動を支える航空サービスでございます。これらの航空サービスによる羽田空港への乗り入れは、大きなニーズがございますものの、現在、発着枠がほぼ満杯であるために、著しい制約を受けております。
 横田基地の軍民共用化が実現した場合に、通常の旅客定期便に加えまして、コミューター航空やビジネス航空を横田で受け入れることができれば、現状では首都圏で十分に対応することができない航空サービスの提供が可能となり、首都圏の活性化に寄与することができます。軍民共用化の具体化に当たりましては、こうした点も踏まえまして検討してまいります。
   〔総務局長押元洋君登壇〕

○総務局長(押元洋君) 災害時における横田基地の使用についてお答えを申し上げます。
 災害が起きた場合、広域的な航空機の活動拠点として横田基地を活用することは、極めて重要でございます。
 このため、都は、平成十三年度以来、総合防災訓練の会場として横田基地を使用し、広域的な応援隊の受け入れや、傷病者の後方搬送訓練等を実施してまいりました。
 また、訓練の成果等を踏まえ、災害時における米軍基地使用に関する協定を締結することを、本年全面的に見直した地域防災計画に明記し、現在、国及び在日米軍と協議をしております。
 今後とも、協定の早期締結に向け取り組んでまいります。
   〔産業労働局長佐藤広君登壇〕

○産業労働局長(佐藤広君) 中小企業再生施策に関する三点のご質問にお答えいたします。
 東京チャレンジファンドに対する都の監視及び連携についてでありますが、このファンドは、再生支援が適切と判断された事業者に投資をするとともに、実施に当たりましては、都のリバイバル支援事業や国の再生支援事業との連携を図るなど、都の中小企業再生支援策の一翼を担っております。
 また、監視につきましては、ファンドの運営状況等につきまして定期的な報告を受け、中小企業に対する再生支援が出資目的に沿って適正に行われているかといった観点から、必要な意見を述べることなどによりまして、対応を行っております。
 今後とも、このファンドの活動が中小企業の再生のための有効な支援策となるよう、出資者として適切な働きかけを行ってまいります。
 次に、中小企業の再生を行える人材育成についてでありますが、東京チャレンジファンドは、中小企業に対する再生支援を行うほかに、その専門的なノウハウを活用して、地域金融機関において再生を担う人材の育成を行うことも、その目的の一つとしております。
 そのため、ファンドでは、各金融機関の担当者を対象に再生支援に関する勉強会を開催するとともに、持ち込まれた再生案件につきまして、関係金融機関と共同で再生計画を作成するなど、再生手法の普及に努めております。
 今後とも、ファンドがその機能やノウハウを活用し、再生支援に携わる人材の育成を図るよう、働きかけてまいります。
 最後に、再生に向け努力する中小企業に対する金融支援についてでありますが、経営状況が悪化している中小企業者に対しては、経営支援融資におきまして資金繰りを支援しております。
 また、民事再生法に基づく再生手続等に入った企業に対しましては、金融機関が適時適切に資金を供給していく必要がございます。
 このため、既に都は、責任共有制度が導入された本年十月に再建企業向け融資を見直しいたしまして、保証割合を一〇〇%とするとともに、融資限度額をこれまでの一億円から二億円へ引き上げ、融資期間も一年から十年へ延長したところでございます。
 引き続き、中小企業者の資金調達の円滑化に努めてまいります。
   〔財務局長村山寛司君登壇〕

○財務局長(村山寛司君) 契約制度についてお答えをいたします。
 お尋ねの入札ボンド制度は、本来、入札参加者について、財務内容のほか、過去に行った工事の実績などを評価し、当該工事を遂行する能力を総合的に審査しようとするものでございます。
 しかし、現在、国等で試行されている入札ボンドは、これを引き受ける金融機関等に技術面等の工事遂行能力などを判断するノウハウが不足しておりますことから、結果的に財務面のみに着目した制度となっております。
 したがいまして、現時点において国と同様な形で入札ボンドを導入しても、不良不適格業者の排除等の効果は不十分なものとならざるを得ず、なお研究が必要な状況にあると考えております。
 今後とも、真に効果的な審査方法のあり方を含めまして、総合的な入札、契約制度の改革に取り組んでまいります。

○副議長(石井義修君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後二時五十四分休憩