平成十九年東京都議会会議録第十七号

   午後三時二十一分開議

○副議長(石井義修君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十二番山下太郎君。
   〔百二十二番山下太郎君登壇〕

○百二十二番(山下太郎君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 初めに、平成二十年度東京都予算編成にかかわる諸課題について伺います。
 政府の月例経済報告では、十月月例に続いて十一月月例においても、景気はこのところ一部に弱さが見られるものの回復しているとし、先行きについては、サブプライム住宅ローンを背景とする金融資本市場の変動や原油価格の動向に留意する必要があるとしつつも、企業部門の好調さが持続し、これが家計部門に波及し、国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれるとしています。
 また、幾つかのシンクタンクの中期見通しにおいても、二〇二〇年度までの日本経済は、一%台半ばの成長を維持、あるいは、一時的な減速はあるものの、基本的には緩やかな拡大が続くとしています。
 不安を抱えつつも楽観的な見通しを立てているわけですが、来年度予算全体のスキームを設定するに当たって、今後の景気動向と税収見込みをどのようにお考えか、伺います。
 次に、福田総理と石原知事との合意について伺います。
 福田総理と石原知事は、自治体の税収格差を是正するためとして、東京都などの大都市圏の法人事業税の一部を移管し、税収の少ない地方自治体に配分する案について、抜本改革までの暫定措置とすることを条件に合意されたようであります。
 知事コメントでは、都の重要施策の実現について踏み込んだ提案をされたことは重要との認識を示されていますが、それが、分権に逆行し、税の原則に反する税制改悪という重大案件との交換条件となり得るのでしょうか。理屈が通るものを示してもらいたい、これは、先週の記者会見における知事の発言であります。しかし、今回の合意のどこに理屈が通っているのでありましょうか。
 自治体間の税収格差を調整し、ナショナルミニマムを保障するのは地方交付税の役割であり、これを、地方税の一部を剥奪して行おうというのは、国としての責任を放棄するものであり、全く筋が違うといわなければなりません。
 一部報道によると、石原知事は、法人事業税の配分見直しをめぐり、一部で都の合意が伝えられたことに猛反発し、副知事ら最高幹部を執務室に呼び、国との徹底抗戦を確認したとのことですが、これでは、結果的には政府・自民党に押し切られた形になったとの印象をぬぐい切れません。この間の交渉の間に知事はいかなるリーダーシップを発揮されたのか、ご説明をいただきたいと思います。
 次に、知事の選挙公約である低所得者減税から進化したとされている低所得者生活安定化プログラムについてです。
 この一連の対策は、この公約発表当初から民主党がいってきた、自立支援策を行うのが本来の姿であるという指摘に合致したものです。働ける年齢層への就業促進扶助、現に働いている低所得者層への所得向上策といった、これまでの失業保険や生活保護ではカバーしていなかったため統計にもあらわれていなかった、見えない低所得者への新しい取り組みとして、率直に評価をいたしております。景気が回復している時期にこのような取り組みを行うことはよい選択だと思いますし、新しい雇用政策におけるモデルとなることを期待するものです。
 この取り組みで求められる目標は、労働能力がありながら低所得者にとどまる者をしっかりとした納税者にしていくことであり、一時的な就労で終わらせるべきでないと考えますが、知事の所見を伺います。
 社会統計は、住居や仕事、年金のある人や、生活保護など既存の福祉制度を利用している人は把握できます。路上生活者の数についても調査がありますが、深夜営業のレストランやファストフード店、簡易宿泊所、病院、施設への入退所を繰り返し転々とする人は、安定した住居を持たないという点ではホームレスですが、この調査では把握されていません。
 この数を把握する必要性をご理解いただくために、私自身が経験した出来事を紹介したいと思います。
 最近、景気がよいといわれる、とある政令指定都市で、深夜に駅前のファミリーレストランに入りました。ほぼ満席の店内を見渡すと、ほとんどの方は、私同様、始発電車までの時間調整をしているように見えました。テーブルに突っ伏して寝ている方、話を楽しむ方などがいらっしゃいましたが、特に目にとまったのは四十代から五十代のグループでした。数百円でおかわり自由の飲み物を四人でとり合いをしており、聞こえてくる会話から、日雇い労働で住むところがないと推測できました。ご苦労されているなあと、悲しい気持ちで店内を見渡すと、お客の半数以上が大きな荷物を抱えており、この方々と同じような境遇であると私には推測できました。
 アイスコーヒーを頼むと、他の系列店ではテーブルに常備されているミルクや砂糖がありませんでした。店員さんに確認したところ、以前は置いていましたが、全部持っていかれるので、その都度お出ししていますとのことでした。まさかと思いましたが、私がアメリカ留学時代、貧困街で経験したのと同じ状況でございました。
 もし私が一人でなければ、会話に気をとられて見過ごしてしまっていたかもしれません。それほど、一見ごく普通の光景でした。私は、限られた地域に見られた現象が、その数を増し、都市部全体に広がっていると体感し、困窮されている方々が少しでも明るい未来を描ける方法を真剣に考える必要があると再認識をいたしました。
 知事は、低所得者生活プログラムを実行し、本当に困っている人をサポートしようとされるなら、少なくとも日本の首都東京において一体どれだけの人がこういった状況にあるのかを把握するために徹底した調査をすべきと考えますが、ご所見を伺います。
 このプログラムの特徴である、いわゆるネットカフェ難民などの見えない低所得者層への支援が行われることは、画期的な取り組みであります。しかし、施策を具体化していく上でよく検討していただきたい点があります。現段階での枠組みでは、主たる生計者であることが一つの条件であるということでございますが、この条件を強調してしまうと、本来主たる生計者として独立した暮らしを営むべき年齢にありながら独立できていない人が見過ごされてしまうおそれがあります。彼らは、十年後、二十年後、親が年老いたときに生計を担うことができず、低所得者として一気に顕在化してしまいます。
 また、ネットカフェ難民といわれる人々にとらわれ過ぎると、先ほど申し上げた、一体どれだけいるのか把握すらされていない多くの不安定就労者、低所得者は見えないままになってしまうのではないかと考えます。
 プログラムの対象については、実態すら把握できていないことを踏まえ、ネットカフェ難民といわれる人々のみならず、親にパラサイトしているフリーターや低所得の派遣労働者など、できるだけ多くの低所得者が利用しやすい仕組みを考えるべきだと思いますが、ご所見を伺います。
 不安定就労に陥る人たちは、就労以前に、心身や生活上の困難を抱えていたり、自身の低学歴に加え、親の教育歴、所得水準の低さとも明確な相関関係があるとの指摘があります。つまり、多くの若者たちは貧困の再生産のサイクルに閉じ込められ、構造的に生み出されているわけであります。
 特に、バブル期にマスコミが見出したフリーターは、その後の不況で数が激増するも、自由な生き方、親に依存する豊かな若者といったイメージが定着してしまったため、対策がおくれてしまいました。彼らの学卒時に求人と正規雇用が急激に減少し、安定した所得の得られる仕事から社会的に排除され、働きたくても働けなかったのであります。
 貧困の再生産から抜け出すためには、高校や大学、専門学校への再入学など、年単位での時間が必要です。資格取得の支援についても、修学資金だけでは、その間の生活が維持できませんし、私たちが提案してきた職業訓練期間中の生活資金も、六カ月間だけでは十分とはいえません。また、訓練期間中の母子家庭へのホームヘルパー派遣に加え、保育施設の利用を可能にする支援なども考えるべきであります。
 このプログラムは、これまで日本の雇用政策、生活保護からこぼれていた方を対象とするだけに、やってみなければわからない部分が残るのはやむを得ません。それだけに、ひとまず区切りとして期間を設けることは理解できますが、やはり三年で効果を上げるところまでいくのか、疑問をぬぐえません。
 このような低所得者対策を実施するということは、貧困の再生産のサイクル、社会的排除の流れに介入し、社会的包摂へ向かう大きく長い戦いとなります。若年者の就労対策に取り組んできた英国などの例を見ても、二十年以上前から試行錯誤を繰り返し、いまだに解決には至っていません。
 こうした点を踏まえ、職業訓練を中心とした六カ月の適用期間、また、三年という低所得者プログラムの期間についてどのように考えるのか、伺います。
 最後に、区市町村を一時相談窓口として考えているようですが、これまで区市町村は、経済や雇用という相談に対応し切れるほどの実績やノウハウがないのが現実です。多様な状況下の利用申請者に十分に前向きな対応ができず、メニューの多いこの施策の対象になるにもかかわらず利用につながらないといったことがないように、市区町村の担当者への理解を深める努力が不可欠です。
 また、実際には都の担当部署が支援を実施するとのスキームを考えているとのことですが、多くの利用者に対し十分な実施体制が確保できるよう、現行体制を強化する必要があるということを申し上げておきます。
 次に、多摩・島しょ地域の諸課題について伺います。
 平成十二年十二月に策定された東京構想二〇〇〇を踏まえ、十五年後の多摩地域のあるべき姿を明らかにし、その実現のための取り組みを示した多摩の将来像が平成十三年八月に作成されました。
 昨年の十二月には、二度目の東京オリンピック招致を契機として「十年後の東京」が策定され、翌月には、重点推進事業の充実を図った多摩リーディングプロジェクト改訂版が作成されました。
 都全域の近未来図とした「十年後の東京」が区部中心の構成であり、多摩への取り組みが事業改訂版にとどまっていることに、知事の心は多摩に向いていないのではないかと思うほどであります。
 また、「十年後の東京」に多摩の説明もありますが、多摩全体がシリコンバレーとなるわけではありません。都は、多彩な地域特性がある多摩がどう変わるのかを示す多摩の将来像の改訂版、近未来図を改めて考えるべきではないでしょうか。知事の所見を伺います。
 次に、横田基地軍民共用化について伺います。
 都は、都内最大の米軍基地である横田飛行場の返還を最終目標とし、それまでの対策として、基地の軍民共用化の早期実現に取り組んでいます。
 知事は、一期目の公約、そして三期目においても、東京再起動の優先課題として、歴代総理や米国関係者に働きかけを行うなど、率先してこの問題にかかわってきました。それが在日米軍再編の一つとして組み込まれ、この秋、共用化の検討結果が公表されることになっていました。
 都議会民主党も、返還までの対策として横田基地の民間航空との共用化を進めるとともに、都民の平穏で安心な、安全な生活を守り、地域のまちづくりを進める立場にあり、都の取り組みに敬意を表しています。
 しかし、日米双方を行き来した会合を重ねてきたにもかかわらず、いまだに継続協議となっています。この間、都も国に、連絡会を通じてさまざまな提案を行ってきたわけですが、果たして日米間に共用化に対する共通認識が生まれたのか、また、日本から今後、新提案が示されるとも聞いていますが、まずは第一段階である検討の合意の可能性について、また、十年先も展望して長期的な課題である横田基地の軍民共用化の実現に関して、知事の所見を伺います。
 また、横田基地の軍民共用化は、都の「十年後の東京」や多摩リーディングプロジェクト改訂版において、多摩地域を首都圏の中核や観光拠点として発展させる重要な位置にあり、その実現の可否は、圏央道等の整備とともに、多摩振興に大きな影響を及ぼします。 軍民共用化に当たっては、地域の経済発展ばかりでなく、騒音対策など都市部の基地に起因する生活環境問題への対策を、国とともに万全に行わなければなりません。
 そこで、今回の日米協議は、これらの視点を十分に踏まえた上で進められているのか、地元自治体に経過は説明しているのか、所見を伺います。
 平成二十五年に多摩・島しょ地域を中心に開催される東京国体について伺います。
 昨今の国体は、開催地負担の大きさに比べ、マンネリ化等の問題があり、知事が国体の意義を問いかけたこともあるように、国体改革の必要性が指摘されています。課題としては、オリンピック選手等のトップアスリートが参加しないことやプロ競技者が参加できないこと、学校教育制度に重きを置いた年齢制限があり、ジュニア競技者の育成に対応できていないこと等があります。
 今回は、トップアスリートの育成など、競技力向上と都民全体のスポーツ振興を高める大きな契機とすべき大会であり、東京から新しい国体、総合スポーツ大会をつくり上げていく取り組みが重要であると考えます。市長会からは、国体を盛り上げる事前事業開催への支援策等も要望されています。また、幅広い都民参加型のデモンストレーションをより多く開催することも考えられます。
 国体を盛り上げるための新しい試み、そして新しい国体へ向けた取り組みをどのように考えているのか、知事に伺います。
 今回の国体は、東京で三回目の開催であり、その発端は、市長会と町村長会から提出された平成元年の東京多摩国体の誘致の要望書と、同五年の多摩東京国体の推進に関する要望書によります。そのため、正式名称の東京国体のほかに、開催地の期待と盛り上げのため、サブタイトルやスローガンなどに多摩・島しょを明確に盛り込むことが必要と考えます。
 また、都では、この国体を契機として市町村振興を推進していく予定であり、まずは財政面における競技施設費補助が来年度から実施されます。
 しかし、この補助だけでは市町村振興につながりません。都は、国体開催をきっかけとしてどのように市町村振興を展開しようとお考えなのか、お伺いいたします。
 三宅島の復興とモーターサイクルフェスティバルについて伺います。
 今回、我々民主党からは、三名の議員が、実際にイベントを観覧するとともに、火山ガスの高濃度地区や産業など、村の復興の現状もあわせて視察をしてきました。村民の念願であった三宅島空港が来春に再開する運びになったことは、今後の観光産業の発展に大きな弾みとなります。我々も、新たな企画によって島の愛好者をふやしていく試みは間違っていないと考えています。
 また、今回のイベント開催に尽力した関係者のご努力に心から敬意を表します。
 イベントは、島の復興、発展を願い島内一周を行ったオープニングパレードに始まり、メーンプログラムである全日本ドラッグレース選手権三宅大会では、三宅島空港にプロストックバイクの爆音が響き渡り、その迫力あるスピードは、村民を初め観衆を大いに引きつけました。
 イベントが終了して、その検証をする上で最も大切な観点は、三宅島にどのような効果がもたらされたのか、また、参加者の皆さんが再度島を訪問したいと感じていただけたのかということです。本大会の最大の企画・支援者である都は、村とともに、その成果と経済波及効果を確認し、また、村民や参加者などの声を積極的に聞き、事業の検証を行っていくべきであります。所見を伺います。
 今後とも、三宅島への観光客をふやす新たな取り組みが必要です。島は、すばらしい海洋などの自然環境に恵まれ、ダイビングや磯釣り等のスポットとして有名です。また、たび重なる火山活動の猛威を物語る溶岩流などは、ほかでは見ることのできない景観であり、これを観察すること、故ジャック・モイヤー氏が推進していた魚やサンゴなどの自然環境実習とともに、島の自然の活用が子どもたちの学びに大変有効であると考えています。
 さらに、来年、空港が再開されるこの機会に、島全体を資源として、あらゆるジャンルのロケーション撮影を誘致し、撮影隊だけでなく、作品を通じての観光客もふやす、直接・間接的経済効果を期待する施策を始めるのはどうでしょうか。映像制作から、島の文化に新たな創造を引き出せるかもしれません。東京近郊に位置する島は、ロケ候補地として大変チャンスがあります。実際に、民間で島を舞台にした撮影企画が提案されていると聞きます。この施策では、より効果を上げるため、フィルムコミッションの立ち上げなども考えられます。都も、東京ロケーションボックスの経験を生かせるのではないでしょうか。
 島が本来持っている魅力を多様な施策として活用し、みずから復興を進めていく、都は、こうした島の姿勢に長期的展望を持って支援していくことが必要であると考えます。ご所見を伺います。
 次に、医療行政について伺います。
 私ごとですが、ことし一児の父となり、我がこととしてさまざまな事態に直面し、都のサービスを利用してみて、改めて施策充実の必要性を痛感しているところであります。
 小児救急電話相談のシャープ八〇〇〇にも、子どもが夜間、四十度近い熱を発した際、電話をしました。これは全国共通の電話番号シャープ八〇〇〇番にかけると、各都道府県の相談窓口に自動転送され、小児科医師や看護師が子どもの病状に応じた対処の仕方や受診できる病院などのアドバイスをくれるものです。私の場合、時間が夜十時を回っていたため、相談は終了しており、救急車を呼ぶ必要があるかどうか、東京消防庁の救急相談センター、シャープ七一一九に相談しました。その結果、救急車は呼ばずに、車で最寄りの救急病院に行くことにしました。私が行ったときもそうでしたが、小児救急の外来は夜十二時を回ってもおおむね混雑していると伺っており、ほかに頼れるところがないから多くの親が来ているのではないでしょうか。
 しかし、小児救急電話相談シャープ八〇〇〇の利用時間は、平日、夕方五時から夜十時まで、土日、祝日、年末年始には朝九時から夕方五時までです。他の自治体では、平日でも夜十時以降も、二十三道府県、休日は三十三府県が実施しています。
 救急の前段階での対応を目的として、小児救急相談電話という看板を掲げるのであれば、それに見合う実態を整えることが必要だと考えます。子どもの病気への対処方法をアドバイスする小児救急電話相談シャープ八〇〇〇は、平日、土日、休日とも実施時間を延長すべきと考えますが、所見を伺います。
 高熱を発した場合の熱性けいれんはよくあることで、心配ないという知識はあっても、我が子が本当にそのケースなのかどうか、電話では不安をぬぐい切れず、どうしても万が一のことを考えてしまいます。私の場合も、応答してくださる方は、実際に診ていませんから当然でありますけれども、大丈夫だとは思いますが、お父さんがご判断してくださいとおっしゃいました。
 このような課題は、電話サービスの限界ではあります。ただ、これをメリットとして考えた場合に、専門家のリードで状況を整理し、医師に伝えるポイントを絞り込み、診察に臨むという点では、よい流れをつくることができます。この観点はもっと重視してもよいのではないでしょうか。
 また、都内の、トロント小児病院で行われた調査結果には、救急外来患者の〇・六%はICUを必要とする重篤な患者、一一%が入院が必要な患者であり、小児救急患者の中には、重症者は必ずいるとのことです。素人に病院へ来ないという判断をさせるよりは、たくさんの患者の中に必ずいる重症患者を手おくれにさせないために何ができるかを考えていただきたいのであります。
 そこで、シャープ八〇〇〇について運用の実績をどのように分析しているのか、また、事前に情報を整理して診察に臨むという観点から、一層の活用を図るための取り組みを求めるものですが、所見を伺います。
 また、直接病院に来た場合でも、診察を前に同様のことができれば、現場はかなり改善できるのではないでしょうか。都立病院では、医療の現場の負担を軽減するために、幾つかの病院で新たな形の医療事務職導入を目指していると聞いています。これは三百五十人規模のアメリカの病院であれば、レジデント百人、秘書九十人などがいることからも、必要な役割であり、日本にはない周辺の職員のモデルとなり得ます。日本の医療機関として前向きに構築すべき体制と考えます。転院などでは、事前の情報収集はあるようですが、外来ではまだこれからの試みだと思いますので、頑張っていただきたいと思います。
 しかし、このような患者や家族の病状を踏まえて対応でき、医師ともやりとりできる人材が簡単には見つからないと予想されます。体制構築と並行して人材の発掘、育成の努力をすべきと考えます。
 さらには、かなりの専門性もあるために、報酬面での身分確保も確立すべきと考えます。
 東京都はこのような課題についてどのようにお考えなのか、ご所見を伺います。
 小児科医師の激務によるバーンアウト、医師不足が連日報道されています。私たちが直接伺ったお話でも、大学病院の勤務医師は従来五十代まで働くのが一般的だったのに、最近は、後進の指導に当たるべき中核の年齢層の医師が早目に開業してしまい、空洞化が起きているとのお話でした。
 また、当直明けからの勤務が終わり、疲労のピーク時でも、病床から自分の担当する子どもが出血したと連絡が入れば、数時間にわたり処置を行うことはよくあること、自分と患者の関係から、どんなに疲れていても帰ることはできない、こう淡々と語る言葉に、ただただ感謝と尊敬、私たちに何ができるのかという焦燥感、とんでもない事態への驚愕、いろいろな感情にさいなまれました。
 医師は、ただ自分と患者との一対一の関係から日々踏ん張っている、今の救急はその個人におんぶにだっこしている、制度としてバックアップしなければならない、言葉にしてしまうと陳腐かもしれませんが、そう感じました。
 さらに、私たちがいただいた彼の時間は、半年ぶりの、しかも午後だけのオフであったと、ふとおっしゃったときには、いろいろな意味で申しわけない思いでいっぱいになりました。
 いささか情緒が過ぎたかもしれませんが、恥じらうことなく皆様にお伝えしなければならないと思い、申し上げました。
 こうした現場へのバックアップ策として、具体的に提案をいたしますが、二次救急において、実態は夜勤であるのに制度上は休息を基本とする当直とされている点を改め、三十時間や四十時間という超長時間勤務を解消すること、一人の医師が軽症、重症、救急患者、病床、外来に対応する一人三役状態を解消するため、プライマリーケア担当医師を配置すること、さらに、トリアージや患者情報の整理を行う医師の補助者を配置することが必要です。そして、都がすべきなことは、こうしたことを国がやらないのであれば、東京都が実施することであります。この問題は、医療制度、診療報酬の設定に起因しており、今日のこの深刻な状態を招いた我が国の医療政策の無策に強い怒りを感じます。これが実現していない現状では、特に小児救急の分野では、公で負担しなければ、これ以上の空洞化を阻止するための十分な体制を構築することはできません。
 最近の親は情けないと批判するのは簡単ですが、東京の家庭は核家族が八六%以上、一人っ子が三六%と、家族のあり方も変わってきています。二十四時間三百六十五日、専門の医師がいる、医療施設が整った病院で診てほしいという親の気持ちを是正させる、建前論を基本とした受診抑制策と小手先の改革では、現場は疲弊の段階を超え、崩壊へと進まざるを得ません。私の提案に対する知事の見解を伺います。
 なお、医療行政に関する最後の質問は、一番最後にさせていただきます。
 次に、築地市場の移転問題について伺います。
 都議会民主党が国の民主党に働きかけてきた土壌汚染対策法の附則三条を見直す法律案が十二月四日、参議院に提出されました。この法案が成立すれば、法施行前に有害物質使用施設を廃止した土地のうち一定の用途に使用されるものについては、現行法レベルに基づく土壌汚染状況調査を行うことになります。
 また、基準を超える汚染土壌があれば、その土地は汚染されている区域として指定区域に指定されることになります。
 この法案の可否にかかわらず、土壌汚染の対策についても、少なくとも汚染土壌の全面的な除去や地下水の管理徹底など、土壌汚染対策法に指定されることのないレベルにまで対策を講じていかなければ、都民の理解は得られないのではないでしょうか。
 知事は所信表明で、検査結果をもとに万全の対策を講じていくと述べられていますが、今のところ、万全の対策の意味するところが、私たちと知事との間では違うようです。
 豊洲の土壌汚染に対する万全の対策について、知事の所見を伺います。
 この間、市場移転問題での猪瀬副知事の発言が一部で問題視されています。インターネットで連載されている副知事のコラムから引用すると、その内容は、例えば、築地市場はイオンやイトーヨーカ堂に価格決定力を奪われつつあるとか、車社会に対応できずシャッター通りになった駅前商店街と同じとか、あるいは、取扱量は減少し、移転がおくれるほどじり貧化するが、移転をすれば取扱高が再浮上する可能性もあるなどです。
 これらの発言については、築地の地元、中央区議会でも取り上げられ、矢田美英区長は、データをもとに客観的な議論をといいつつも、築地市場にとって負のデータばかりを列挙しており、市場移転を前提とした議論といわざるを得ないと述べるとともに、東京都の責任者としての視点が欠けていると答弁しています。
 私たちのところにも、仲卸の小間の権利について、バブルのときは一小間一億円だったが、今は五百万円から七百万円との猪瀬氏の発言に、市場関係者からデータを示せとの声が届いています。
 今後、地元区を初め市場関係者などと真摯な議論、協議を重ねていかなければならないときに、担当でもない人が副知事の肩書で発言、発信し、不要な混乱を招くことは、好ましいことではありません。
 私は、東京都のしかるべき責任者が地元区や市場関係者と誠実に協議を重ねていくことが極めて重要であると考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、新銀行東京について伺います。
 十一月二十二日、石原知事は、新銀行東京の事実上の経営トップである代表執行役の森田氏が退任し、後任に東京都の港湾局長である津島氏を充てることを発表しました。健康上の理由で退任したとはいえ、半年間でトップが二度もかわるというのは、オリンピック絡みの都庁人事でも見たことがありません。まさに異常であります。
 石原知事は、新銀行東京の失敗について、経営の責任は経営者にあると強弁をし、責任を逃れてまいりましたが、今回のように経営のトップが次々と入れかわるような事態に陥っているのはだれの責任なんでしょうか。知事の所見を伺います。
 六月の本会議において、東京都は、代表執行役に就任予定の森田氏に対して、長年金融界に身を置き、中小企業支援にも精通したその知識と経験を十分に生かしてもらうことを期待していると答弁していました。であるならば、今回の人事は何なんでしょうか。もはや新銀行東京は、民間からのなり手がなく、都庁の官僚を人身御供として送り込むという状況にあるとしか思えません。
 石原知事は、銀行側から適任者の推薦依頼があったと述べていますが、銀行経営の責任者として都庁の官僚が本当にふさわしいとお考えなのでしょうか。金融を初めとした経済に精通した民間人の登用を模索したのか、しなかったのかも含め、銀行経営の適任者に対する知事の認識をお伺いいたします。
 また、石原知事は、新たな代表執行役である津島氏に対して、新銀行の立ち上げとその後の経過について精通していると評していますが、そもそも新銀行東京の失敗は、立ち上げ当時のプランの見通しの甘さにもその一因があったのではないでしょうか。
 一方で、津島氏は港湾局長として臨海三セクの破綻処理を手がけたことがあり、むしろ彼の手腕を期待するのであれば、新銀行東京の破綻処理にこそふさわしいように思います。
 石原知事は、新たな代表執行役にどのようなことを期待しているのか、見解を伺います。
 トップが突然交代する中、新銀行東京は、十一月三十日に平成二十年三月期の中間決算を発表いたしました。九月までの半年間の赤字が八十七億円と、六月に策定された新中期経営計画と比べれば三億円ほど改善しているかのように思われます。しかし、その主な要因は、融資実績が低調だったことにより、貸倒引当金が不要になったことにあるのです。
 さらに、デフォルト対策でも、予想以上に経費が膨らんでいることからも、改善したといえる状況にはありません。
 六月に策定したばかりの新中期経営計画と中間決算との間には、既に大きな乖離が生じているように思いますが、東京都は、デフォルト対策で既に経費が膨らんでいることや融資実績が低調なことに対してどのように認識しているのか、見解を伺います。
 新銀行東京の中間決算の記者会見では、その日に代表執行役に就任したばかりの津島氏が、状況によっては計画にこだわらないと述べるなど、早くも六月に策定されたばかりの新中期経営計画の見直しを示唆しています。
 石原知事は定例会見において、都が持っているいろんなオプションを活用するなどして頑張ってもらいたいと述べていますが、東京都との連携を名目にして新銀行東京を支援していくようなことがあってはなりません。
 石原知事は、東京都と新銀行東京との事業連携についてどのようにお考えなのか、見解を伺います。
 また、石原知事はこの間、新銀行東京への追加出資はしないということを述べられてきましたが、十一月三十日の定例会見では、ニーズがあるのかないのか、新しい責任者の報告を踏まえて考える問題と含みのある発言をしています。
 新銀行東京への追加出資は、都民の税金をさらにむだにする行為にほかなりません。追加出資の是非について、改めてこの本会議の場において表明されることを求めるものでありますが、知事の見解を伺います。
 新銀行東京は、既に死に体であります。私たち都議会民主党は、民間への売却を含めて、新銀行東京のあり方を早急に検討すべきだと主張してきましたが、もはやこのような段階になって、新銀行東京を買ってくれるところがあるのかさえ定かではありません。新銀行東京の維持存続にこだわるのではなく、都民に一番負担の少ない形で、東京都が新銀行東京から撤退する方法を早急に検討すべきと考えますが、石原知事の見解を伺います。
 さらに、新銀行東京について、この間私たちが求めてきた情報公開が全く進んでいないことも残念でなりません。私たちの質問に東京都は、企業経営上秘密としているものを除き、情報公開を進めるよう都として働きかけていくとの答えを繰り返すのみで、具体的な情報はほとんど公開されておりません。
 都民の税金が一千億も投入されているわけですから、東京都は、新銀行東京に働きかけるだけでなく、株主としての権利を駆使して、みずから情報を積極的に入手すべきであります。これまで私たちが公開を求めてきた全株主のリストを初め、月別、地域別の融資実績、四半期ごとの決算などについては、再度公開を求めるものです。
 また、これら以外の情報についても、新銀行東京の経営上、公開しても影響がない情報については、東京都が積極的に入手、整理し、都民の前に積極的に公開し、東京都としての説明責任を果たしていくべきと考えますが、あわせて見解を伺います。
 次に、温暖化対策について伺います。
 知事は所信表明の冒頭で、アジア大都市ネットワーク21第六回総会に出席し、地球温暖化対策について議論を深めてきたと述べるとともに、アジア諸国における新たな国際的枠組みの成立に向けた取り組みを発表しました。私たちも、日本の首都である東京都がアジアの大都市と連携し、温暖化対策をリードし、進めていくことは、極めて有意義なことであると考えています。
 しかし、その枠組みとなるアジア大都市ネットワーク21に、中国の首都であり一千五百万人の人口を擁する北京市が入っていないのは、今後、アジア全体での温暖化対策に取り組んでいく上で支障を来すことになるのではないでしょうか。
 知事は、同じく所信表明で、東京の友好都市北京がオリンピック精神を具現化して大会を成功させることを祈念するとエールを送っていますが、いみじくも東京都が二〇一六年の招致を目指す東京オリンピックのテーマも、地球環境の再生です。今こそ温暖化対策を足がかりにして、アジア大都市ネットワーク21に北京市が復帰するよう働きかけてはいかがでしょうか。アジアの大都市を巻き込んだ温暖化対策の推進に向けて、知事の見解を伺います。
 また、知事が所信表明で着実に推進していくと述べられた大規模なCO2排出事業者に対する削減義務化などの施策については、一度、二〇〇二年に策定した地球温暖化対策東京作戦でも打ち出し、実現しなかった施策です。今回も、十二月二十五日に開かれた東京都のステークホルダーミーティング、利害関係者との意見交換会では、経済団体から、経済活動を損なうとか他県への事務所の流出を招くなど、反対意見が相次いだと伺っております。導入に向けた道のりは、なお厳しいものがあると思われます。
 しかし、温暖化対策は待ったなしの問題です。私は、知事が率先して経済団体の理解と協力を得るなどして、実効性のある温暖化対策に取り組んでいくべきだと考えますが、所見を伺います。
 また、温暖化対策は、義務的手法だけでなく、支援策を通じて進めていくことも重要で、特に中小企業者の温暖化対策を進める上では欠かすことができません。
 東京都は、平成十七年一月より環境金融プロジェクトの取り組みを進め、環境配慮型金融商品の創設を促すとともに、最近では八月三十一日に環境CBOを創設していますが、こうした施策をさらに進めるとともに、総合的な支援策を構築していくことが必要です。
 私は、東京都の制度融資に温暖化対策に向けたメニューを追加、充実させていくとともに、温暖化対策に取り組もうとする中小企業への相談体制の充実やESCO事業者などによる省エネ診断を支援する制度の創設など、温暖化対策に向けた中小企業者への支援について積極的かつ総合的に取り組んでいくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、環境税の導入について伺います。
 民主党は、さきの参議院選挙でのマニフェストなどにおいても、石炭を含む化石燃料を対象とした地球温暖化対策税の導入などを掲げているところです。しかし一方で、政府・自民党は、環境税の導入には極めて後ろ向きです。
 このような中、知事の諮問機関である東京都税制調査会は、十一月二十九日、東京都独自課税として環境税の検討を進める中間報告をまとめました。来年秋の最終報告に向けて、今後、活発な議論が期待されますが、国の対応が遅いのであれば、率先して東京都がこの問題に取り組むべきと考えます。環境税の導入に向けた今後の取り組みについて、知事の所見を伺います。
 最後に、重大な危機意識を持って質問させていただきます。
 平成十九年十一月二十八日、多摩北部医療センターの非常勤医師が総武線車内で、約百七十人分の氏名、生年月日、診察日時、病名、病状の変化などを含む個人情報のデータが入ったパソコンを紛失するという事故が起きました。事故発生から七日経過し、私が問い合わせるまで、ただの一枚の紙のみが送りつけられただけでした。ほかに何の説明もないことを不審に思った私が調べてみると、何と本年度に入ってたったの半年間で、都と監理団体において計十四件もの個人情報を漏えい、紛失する事故が起きていたことがわかりました。中でも病院経営本部が監督、指導する病院における紛失事故は、今回の事故と合わせて四件にも及びます。
 個人の病名、病状の変化などの命にかかわる個人情報が流出する危機に瀕していることが一体どういうことなのか、果たして病院経営本部は本当に事の重大さを認識しているのか、私には甚だ疑問であります。半年間で四回もの再発を繰り返す病院経営本部には何の緊張感、危機感もなく、明らかに重大な過失があると思われます。私は疑問を通り越して怒りすら覚えています。
 民間企業では、ジャパネットたかたで同様の事件が発覚した際には、約二カ月間の広告活動や商品の販売を自粛し、およそ百五十億円の減収に耐えながら、発覚当日から事業再開まで毎週謝罪と報告を繰り返しました。このとき社長は会社を清算することも考えていたといいます。
 また、ソフトバンクでの情報漏えい時にも、全会員に五百円相当の金券を送るほか、通常有料のサービスを三カ月間無料にし、経営陣も、孫正義氏を減給五〇%六カ月、副社長、取締役を減俸三〇%三カ月という社内処分を下しました。
 このように、民間企業では大変厳しいペナルティーを払って再発防止と信頼回復に努めているにもかかわらず、それを監督指導する立場の行政が、組織として何の責任もとらず、事故が起きるたびに、ただ、今後このようなことがないようにいたしますと繰り返すだけでは、到底都民の理解が得られるはずがありません。
 病院経営本部は、この半年間で四件もの個人情報の紛失事故を受けて、どのように組織として責任をとるおつもりなのか、そして、今後どのように再発防止に努めるのか、見解を伺います。
 最後に、情報化社会がますます進む中、こういうときにこそ知事の強いリーダーシップで、情報管理について職員の意識レベルの向上を徹底していただきたいと申し上げまして、私の都議会民主党を代表しての質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 山下太郎議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、法人事業税の配分見直しについてでありますが、そもそも日本の税制は、国が勝手に決められるものでありまして、知事に全く相談せずに決められるという法体系になっております。過去にも二度、法人事業税の分割基準は、理屈を通り越した変更を強いられました。そういうことをご認識いただいて、批判、質問されるなら、法律の勉強をなさってからされないと恥ずかしいことになります。
 それを、さらに逆手に取ってこの事態に条件をつけるということが、私は政治というものだと思います。
 きょう、いかにもこの改革が理が通らないゆえに、総理が私に対して地方の窮状への理解を求めてきたわけでありまして、私としては、大都市の税源を、財源を理由なく地方へ移転させるような措置は税の原則にもとるし、地方分権に逆行するものであり、納得できないということを強く主張してきましたし、きょうも明確に反対だと申しました。だからこそ総理は、首都東京の重要施策の大切さを理解して、個別団体との間で初めて、国と自治体の間での協議の場を新たに設置するということを提案してきたわけであります。
 こうしたやりとりを踏まえまして、この国の発展を牽引する役割を担う首都東京が、同時に地方の一員でもある東京が、その東京を預かる都知事としましても、いかになすべきかを熟慮し、今日の措置を税制の抜本改正までの暫定措置とすることを条件に協力することを決断いたしました。
 今後は、総理との合意に基づきまして設けることになりました東京の重要施策の推進を目的とする実務者による新たな協議の場をフルに活用して、東京の諸課題の実現に向けて、首都東京、そして日本の発展のために全力を傾けてまいります。
 次いで、低所得者生活安定化プログラムについてでありますが、現在、我が国では、額に汗をして懸命に働いているにもかかわらず低所得の状況から抜け出せない人々や、就職氷河期を経験した世代を中心として、職にも恵まれず、住居の確保もままならない人が存在しております。
 今回のプログラムは、真に困っている都民一人一人に手を差し伸べ、将来に向かって明るい展望が開けるよう、多様な施策を重層的に講じるものでありまして、この取り組みによって、こうした方々がみずから生活安定への道を切り開き、社会を支える力となることによりまして、豊かで活力のある東京を実現していきたいと思っております。
 次いで、多摩の将来像についてでありますが、昨年末に策定しました「十年後の東京」では、オリンピックの招致はもとより、平成二十五年に開催する国体も視野に入れまして、東京をさらに機能的で魅力的な都市につくりかえることを目的に、都全域を対象として東京の近未来像を描きました。
 とりわけ多摩地域については、圏央道の全線開通や横田基地の軍民共用化を契機に、首都圏の中核として強く発展する姿を示しております。
 多摩地域は、先端技術産業や数多くの大学、研究機関の集積、豊かな自然環境などを生かしまして、従来にない特色のある都市づくりが可能な地域であります。
 今後も、これらの大きなポテンシャルを生かして、都市基盤の整備を初め広域的な課題にも取り組み、市町村とも連携しながら、活力と魅力にあふれた多摩を創造し、東京の再生、ひいては日本の再生を目指していきたいと思っております。
 次いで、横田基地の軍民共用化についてでありますが、横田基地の軍民共用化にかかわる日米協議は、この十月を期限として検討が重ねられてきましたが、米側の軍事運用にかかわる幾つかの課題が残されておりまして、引き続き協議を行うことになっております。
 これまでの日米協議で米国から指摘されている課題は、いずれも調整可能な事項ばかりであります。
 在日米軍基地の中で戦略上重要な地位を占める三沢基地ですら、既に冷戦時代に軍民共用化していたのでありまして、横田でこれが実現できないわけはありません。しかし、交渉の中での得た感触としては、国政のレベルで民主党が唱えている、インド洋の給油活動の、要するに筋の通らない反対というものが、かなり陰に陽にマイナス要因に働いているのは実感であります。それが外交というものかもしれませんが。今後も、国の関係省庁と都が一枚岩の結束を保ちながら、米側に対し説得力のある具体的な提案を行うなど、粘り強く協議をすることによりまして、軍民共用化の早期実現を目指してまいります。
 新しい国体に向けた取り組みについてでありますが、およそ半世紀ぶりに東京で開催する東京国体は、その三年後に予定されている東京オリンピック成功の原動力ともすべく、東京の総力を挙げて取り組み、これまでにない新しい国体の姿を発信するものにしていきたいと思っています。
 このため、都議会初め区市町村、経済産業界、スポーツ団体など各界各層の方々にご参加いただき、七月に東京国体準備委員会を設立し、開催の準備に万全を期すことにいたしました。
 今後、都民の幅広い共感と賛同を得て、開催への機運を盛り上げ、東京国体の成功に向けて取り組んでまいります。
 次いで、小児医療についてでありますが、子どもの健康を守り、子どもを持つすべての家庭が安心して子育てをしていくためには、小児救急医療の充実が重要な課題であります。
 都は、これまでも、休日、夜間の小児救急医療体制の整備など、小児医療水準の向上に努めてまいりました。
 しかし、都内でも小児科などの医師不足が顕在化しておりまして、都として、医師の確保や病院勤務医の負担軽減策について検討を行うとともに、国に提案要求しております。
 今後とも、小児医療の充実に取り組み、子どもが健やかに成長し、未来に希望の持てる社会を実現していきたいと思っております。
 次いで、豊洲新市場予定地における土壌汚染対策についてでありますが、豊洲新市場予定地での土壌汚染対策については、専門家会議の提言に基づきまして、敷地全域にわたり、十メートルメッシュで土壌と地下水の調査を行うこととしました。この調査は、土壌汚染対策法が求める内容と同等であります。
 専門家会議では、調査と並行して、汚染物質の特定と除去、盛り土等による封じ込め、地下水の管理のほか、震災対策など必要な対策についても検討が進められておりまして、来年度の前半には具体的な提言がなされる予定であります。これらの対策は、法令が求める対策と照らしても、安全性を確保する上で極めて手厚いものとなります。
 今後、この提言を確実に実施し、豊洲新市場予定地の土壌汚染対策に万全を期すことによりまして、都民、市場関係者が安心できる市場として、早期に開場させていきたいと思っています。
 次いで、築地市場移転についてでありますが、築地市場の移転に当たっては、移転の必要性や土壌汚染対策等について、市場関係者や地元区の理解を得ることが重要であります。
 都としても、今後とも、市場関係者や地元区との協議を重ね、その意見を十分に聞きながら、豊洲新市場の整備を進めてまいります。
 猪瀬副知事は、就任早々、築地市場に足を運び、流通環境の変化に対応し切れていない実情を目の当たりにして、客観的かつ正確なデータに基づき、移転の必要性について述べたものであります。
 次いで、新銀行東京の代表の人選についてでありますが、前代表の突然の退任の意向を受けまして、新銀行東京としても、代表を一日たりとも空席にできないとの判断から、都に適任者の推薦を依頼してまいりました。こうした事態の中で、都は、この銀行の創設に関与した津島前港湾局長が適任であると判断し、推薦いたしました。
 なお、新銀行東京の経営者には、この銀行の理念の実現に意欲を持ち、かつ思い切った経営改善を強力に進めることのできる手腕が求められております。
 次いで、新代表に期待する役割についてでありますが、新代表には、これまで幅広い分野で活躍してきた経験を生かしまして、都と十分に連携を図りながら、東京都の持つさまざまな金融にかかわるオプションというものを踏まえて、経営改善の取り組みに大いに力を発揮していただくことを期待しております。
 次いで、新銀行東京への追加出資でありますが、追加出資のニーズがあるや否かは、銀行の経営陣がその時々資本政策の中で判断するものであります。今は銀行が経営改善の取り組みを着実に進めていくことが必要でありまして、追加出資は考えておりません。
 次いで、アジア大都市を巻き込んだ地球温暖化対策の推進についてでありますが、近年、地球の温暖化は深刻の度を増しておりまして、今こそ世界のすべての国が参加する新たな枠組みをつくり、具体的な対策に踏み出さなきゃならないと思っております。
 きょうの新聞にも出ておりましたが、ブータンという国は、背後にあります氷河湖が決壊しますと、頭上からの津波に襲われて全滅する、ほとんど瞬間的に全滅する、そういう危惧というものを持たれておりますが、こういった現象が現に大惨事として起こらないと、なかなか世界がこの問題について共通の強い認識を持つには至らない、そういう残念な状況にあります。
 そうした中でも、日本の首都である東京は、経済成長の著しいアジアの頭脳部、心臓部を担う大都市と国益や発展段階の差異を超えて連携して、新たな枠組みをつくって後押ししていきたいと思っております。来年二月には各都市の実務担当者を招きまして、日本の環境技術や東京の先進的な政策ノウハウを提供するとともに、協力関係をさらに進めてまいります。
 なお、本年十月、都を訪れた北京市環境保護局の一行には、北京オリンピックを控え喫緊の課題となっている大気汚染の改善のために、都独自のディーゼル車排出ガス規制についてなど説明するとともに、環境科学研究所に案内しまして、技術面の情報提供を行ってまいりました。
 環境問題には国境はなく、都市間の立場の違いもなく、ご指摘をまつまでもなく、世界の各都市と地球の未来のために協力してまいります。
 次いで、実効性のある温暖化対策についてでありますが、地球温暖化の進行は、近年、急激に加速していることが明らかになっておりまして、今後十年程度の間に思い切った対策を打ちませんと、破局的な事態を招きかねないというのが、特にヨーロッパの専門家たちの共通した認識であります。
 温暖化対策は、もはや経済の効率とはトレードオフできるものではなくて、人類の生存そのものにかかわる問題となってきた。金を持っても死んでしまってはしようがないわけでありまして、そういった認識は、やっぱり企業の経営者にも求められるものでありまして、こうした認識に立って温暖化対策の強化に取り組むことでありまして、従来の自主的な取り組みだけではCO2の大幅な削減が進まないことは明らかであります。
 都は、日本の地球温暖化対策をリードするためにも、大規模な排出事業所への削減義務を初めとする実効性のある施策を展開していきたいと思っております。
 次いで、環境税についてでありますが、環境税の問題は、税を負担する企業や住民が、地球環境が危険的な状況にあり、もはや一刻の猶予も許されないところまで来ていることや、後の世代に対する責任をどれだけ認識するかにかかっております。
 いずれにせよ、文明の発展の代償であります地球のこの異変を前に手をこまぬいていては、人類に未来はないのではないかと思います。地球温暖化対策に、国はもっと責任を持って取り組むべきだと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔主税局長熊野順祥君登壇〕

○主税局長(熊野順祥君) 今後の景気動向と税収見込みについてお答え申し上げます。
 平成十九年度の都税収入は、十一月末の法人二税の中間申告などを見きわめる必要がございまして、確たることを申し上げる状況にはございませんが、企業収益の好調は持続しておりまして、堅調に推移していくものと考えております。
 今後の景気につきましては、お話のように、企業部門主導で回復基調を保つといわれています一方、原油など資源価格の高騰、米国経済の減速、そして為替相場の変動など、懸念材料がございます。このため、九月中間決算で好調であった上場企業の見込みにおきましても、本年度の下期以降は減速の見通しとなってございます。
 平成二十年度の都税収入につきましては、今後こうした景気動向、税制改正などを注視しつつ、的確に算定してまいります。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 五点についてお答えを申し上げます。
 まず、生活困窮者の実態調査についてでありますが、先般、厚生労働省において、住居がなく、インターネットカフェ等に寝泊まりしながら不安定な雇用形態で就業している方の実態調査が行われました。
 また、今回の低所得者生活安定化プログラムを実施するに当たりましては、インターネットカフェ等で常連的に寝泊まりしている方に対し、こちらから出向いて相談に応じるなど、きめ細かい対応を行う予定でございまして、その中で明らかになるこうした方々の生活実態を、今後の事業展開に活用してまいります。
 次に、プログラムの対象者についてでありますが、今回のプログラムは、一定以上の資産を保有している方や、同居する家族にも収入がある方などを除きまして、真に困っている方を対象として、一人一人の実態を踏まえた支援を行うものであります。したがって、お話の親元で暮らすフリーターなどは、対象として想定はしてございません。
 次に、シャープ八〇〇〇番の実施時間についてでありますが、小児救急電話相談、シャープ八〇〇〇番は、母子の健康に関する相談を行うことにより、母親の育児不安の解消と小児救急の前段階での安心の確保を目的としてございます。
 都では、小児救急電話相談であるこのシャープ八〇〇〇番以外にも、音声、ファクシミリのTOKYO子育て情報サービスやインターネットのこども医療ガイドによりまして、子どもの事故や病気への対処法を、二十四時間、独自に情報提供しております。
 さらに、普及啓発冊子であります「知って安心 暮らしの中の医療情報ナビ」を作成、配布いたしまして、子どもの急な発熱時の相談先や医療機関の利用方法などについて、平常時からの周知を図っております。
 こうしたさまざまな取り組みを行うことによりまして保護者の安心を確保しておりまして、シャープ八〇〇〇番の実施時間の延長につきましては、今後の研究課題と認識をしております。
 次に、シャープ八〇〇〇番の実績と活用についてであります。
 シャープ八〇〇〇番の相談は、まず保健師、助産師等の相談員が対応し、必要に応じて小児科医に転送をしております。
 平成十八年度の相談は約二万件でありまして、その主な内容は、子どもの病気や事故に関することが約六割、育児相談が約四割でありました。なお、相談内容や緊急性から医師の対応を要する相談は、約八十件でありました。
 現在、妊婦に対して、母子健康手帳を交付する際に、都が作成いたしましたシャープ八〇〇〇番の案内カードを必ず配布をしてございます。
 今後とも、さまざまな関係機関と連携しつつ、保護者の不安の解消に役立つよう、普及啓発に努めてまいります。
 最後に、医師の事務補助者についてでありますが、書類作成などをサポートする事務補助者を活用することは、病院勤務医師の負担を軽減するとともに、診療に専念できる環境を確保する上で有効であると認識をしております。
 医師の事務補助者の導入に当たりましては、専門職種としての資格の明確化や養成制度の確立、診療報酬での措置が必要と考えておりまして、既に制度設計者であります国に対して、具体的な提案要求を行っているところでございます。
   〔産業労働局長佐藤広君登壇〕

○産業労働局長(佐藤広君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず、低所得者生活安定化プログラムについてでありますが、職業訓練など個々の支援につきましては、プログラムの対象者を早期に安定した就労に結びつけるとの観点から、適切な期間を設定してまいります。
 また、今回のプログラムにつきましては、対象者に対してきめ細かく的確な施策を重点的に講じることが効果的であることから、緊急総合対策として三カ年で実施していくこととしております。
 次に、新銀行東京の今回の代表交代の責任についてでありますが、森田前代表執行役は、本年六月に就任し、この間、新銀行東京の経営改善に向けて尽力をされましたが、健康上の理由で、十一月末日をもって退任をいたしました。今回の代表交代は、こうした不測の事態を受けて銀行側が判断したものでございます。
 次に、新銀行東京の現状についてでございますが、新銀行東京は、新中期経営計画におきまして、不良債権鎮静化までは慎重な運営を行い、採算を確保できるような適正規模に資産を圧縮することとしており、今中間決算における融資残高は、おおむね計画どおりとなりました。
 しかしながら、新経営陣のもとで、債務者実態の把握やそれに基づく貸倒引き当ての見直しを行いました結果、想定を上回る不良債権処理費用が発生するなど、不安定な要素も多い状況です。
 したがいまして、まずは新銀行東京が足元の状況をしっかり見据えて、デフォルトの抑制や営業経費の削減など、経営改善の取り組みを着実に進めていくことが重要と考えております。
 次に、新銀行東京との連携についてでありますが、新銀行東京の経営改善の取り組みは緒についたばかりであります。
 都は、今後、新銀行東京との連携を一層強め、具体的な取り組みが着実に進展するよう、適正な支援を行ってまいります。
 次に、新銀行東京の今後についてでございますが、新銀行東京は、最近の厳しい競争環境にさらされながらも、中小企業金融において役割を果たす一方で、現在、思い切った経営改善に取り組んでいるところでございます。
 今後におきましても、新銀行東京が足元の状況をしっかり見据えて、デフォルトの抑制や営業経費の削減など、経営改善の取り組みを着実に進めていくことが重要であります。
 最後に、新銀行東京の情報開示についてでありますが、都は、これまでも新銀行東京に対しまして、他の金融機関との競争にかかわるものなど、企業運営上秘密としているものを除きまして、業務等に関する情報を積極的かつわかりやすく開示するよう働きかけてまいりました。
 どのような情報を公開するかにつきましては銀行の経営判断でありますが、今後においても、例えば全株主のリストのように、出資者との関係で公表できないようなものを除きまして、積極的な情報開示を求めていくことに変わりはございません。
 なお、地域別融資実績及び四半期決算につきましては、明らかにされておりません。
   〔知事本局長大原正行君登壇〕

○知事本局長(大原正行君) 横田基地の軍民共用化についてでございます。
 横田基地の軍民共用化は、圏央道等の整備とともに、多摩地域を首都圏の中核拠点として発展させるための契機となるものでございまして、地域経済の活性化のために重要な意味を持つものと考えております。
 軍民共用化に当たりましては、騒音対策などの生活環境問題への対応を行うことも必要でございまして、日米協議は、都と国の関係省庁がこうした視点を踏まえた検討、調整を行った上で進められております。
 地元自治体への経過説明につきましては、横田に係る日米協議が外交交渉であるという制約の中で可能な限り行ってきておりまして、今後とも、地元の理解と協力が得られるよう努力を重ねてまいります。
   〔総務局長押元洋君登壇〕

○総務局長(押元洋君) 多摩・島しょ振興に関する三つのご質問にお答えを申し上げます。
 まず、国体開催を契機とした市町村振興についてでございますが、平成二十五年に多摩・島しょ地域を中心に開催いたします国体は、スポーツ振興のみならず、地域振興という点においても大きな意義がございます。都は、多摩地域のすべての市町村を競技会場地に選定するなど、国体開催の意義を踏まえまして、精力的に準備を進めております。
 六年後の大会開催が、多摩・島しょ地域の一層の活性化に結びつきますよう、スポーツ施設の整備や観光産業振興、地域づくりなどに、市町村と連携を図りながら積極的に取り組んでまいります。
 次に、三宅島モーターサイクルフェスティバルの成果等についてでございます。
 イベント期間中は、関係者を含め一千人近くの方が島を訪れまして、島は久しぶりににぎわいを取り戻しました。多くの参加者からは、また島を訪れたいとの声が上がり、島民の間にも、継続して実施することへの期待が高まっております。
 今回の成果としては、多くの参加者を迎え、観光を初めとする今後の島の活性化に大きな弾みがついたことが挙げられます。一方、今後の課題といたしましては、参加者の受け入れ体制やバイクの輸送体制の改善などがございます。
 都といたしましても、今回の成果と課題を踏まえ、引き続き島の取り組みを積極的に支援してまいります。
 最後に、三宅島の魅力を活用した復興への取り組みについてでございます。
 三宅島は、紺碧の太平洋に囲まれ、火山活動による特徴ある景観が広がり、多種多様な野鳥が生息するなど、豊かな自然に恵まれております。
 こうした島の魅力を国の内外に幅広くPRし、自然環境学習やロケーションの場として積極的に活用してもらうことは、島の観光振興策として有効でございます。現在、三宅村では、今後の復興に向けて、自然環境を生かした取り組みを幅広く実施していく方針であると伺っております。
 都としても、関係各局が連携し、こうした島の取り組みを長期的に支援してまいります。
   〔環境局長吉川和夫君登壇〕

○環境局長(吉川和夫君) 中小事業者の温暖化対策についてでございますが、都内における産業、業務部門の温暖化ガスを確実に削減していくためには、大規模事業者のみならず、中小事業者の排出削減対策の強化も必要でございます。
 多くの中小事業者は、省エネに関する知識や情報、省エネ投資を行う資金力が大規模事業者に比較し不十分なことなどから、取り組みが立ちおくれております。
 今後とも、都は、省エネのメリットや進め方等に関する研修会を開催するとともに、それぞれの事業者に応じた具体的な対策を提案する省エネ診断の充実を図ってまいります。
 また、省エネ投資を促進するための環境金融プロジェクトを推進していくなど、中小事業者の温暖化ガスの削減に向けたさまざまな施策を展開してまいります。
   〔病院経営本部長秋山俊行君登壇〕

○病院経営本部長(秋山俊行君) 都立病院などにおけます個人情報の紛失事故についてでございますが、病院は、患者の病名、容態や診療経過など、重要な個人情報を多数取り扱う職場でありますことから、そこで働く職員は、情報管理に細心の注意を払いながら日々の業務を遂行していくことが不可欠であるというふうに認識をしております。
 都立病院では、これまで、情報セキュリティーのための組織体制や個人情報の取扱方法を定め、情報の管理を行ってまいりましたが、今回、個人情報の紛失事故が重なったことにつきましては、これまでの取り組みが必ずしも十分であったとはいえず、まだまだ改善すべき点があるものと痛感したところでございます。
 このため、病院経営本部といたしましては、問題発生後に本部職員を各病院に派遣いたしまして、個人情報の管理状況に関する緊急点検を実施するなど、迅速な対応に努めますとともに、新たに全職員を対象とした情報セキュリティーに関する研修を進め、職員の意識啓発にも具体的に取り組んでおります。
 また、今回紛失の対象となりましたUSBメモリーにつきましては、小型軽量で紛失のおそれが高い外部記録媒体であるため、私物の使用を禁止した上で、認証機能つきのものへ切りかえ、保管管理を徹底いたしますとともに、個人情報を含む電子ファイルにつきましてはパスワードを付与するよう、セキュリティー対策に関しても周知徹底を図ったところでございます。
 さらに、日々、多くの診療部門などで膨大な量の個人情報が発生し、それを治療に生かすため、多数の職員がアクセスし、利用しているという病院の実態を踏まえまして、各病院に新たに設置いたしました個人情報管理チームが院内を定期的に巡回し、その結果につきましては各部門の責任者が改善を図る仕組みとするなど、現場での具体的かつ継続的な対策も講じているところでございます。
 病院経営本部といたしましては、こうした取り組みを一つ一つ着実に積み重ねることによりまして、職員一人一人の意識改革を繰り返し促しまして、再発防止に取り組んでいく考えでございます。
 なお、お話の多摩北部医療センターにつきましては、都の監理団体である財団法人東京都保健医療公社が運営していることから、同公社に対しまして、個人情報の適切な管理と職員の意識改革を徹底するよう、改めて指導してまいります。

○副議長(石井義修君) この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後四時三十三分休憩