平成十九年東京都議会会議録第十六号

平成十九年十二月四日(火曜日)
 出席議員 百二十五名
一番遠藤  守君
二番伊藤 興一君
三番米沢 正和君
四番鈴木 章浩君
五番きたしろ勝彦君
六番後藤 雄一君
七番福士 敬子君
八番伊沢けい子君
九番そなえ邦彦君
十番西崎 光子君
十一番西岡真一郎君
十二番伊藤 ゆう君
十三番原田  大君
十四番河野百合恵君
十五番小竹ひろ子君
十六番松葉多美子君
十七番大松  成君
十八番中山 信行君
十九番高倉 良生君
二十番田中たけし君
二十一番神林  茂君
二十二番早坂 義弘君
二十三番高木 けい君
二十四番崎山 知尚君
二十五番宇田川聡史君
二十六番高橋 信博君
二十七番原田 恭子君
二十八番佐藤 広典君
二十九番尾崎 大介君
三十番山口  拓君
三十一番伊藤まさき君
三十二番松下 玲子君
三十三番野上ゆきえ君
三十四番たぞえ民夫君
三十五番村松みえ子君
三十六番橘  正剛君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番谷村 孝彦君
四十番村上 英子君
四十一番鈴木あきまさ君
四十二番秋田 一郎君
四十三番山加 朱美君
四十四番串田 克巳君
四十五番吉原  修君
四十六番山田 忠昭君
四十七番田代ひろし君
四十九番山口 文江君
五十番今村 るか君
五十一番吉田康一郎君
五十二番斉藤あつし君
五十三番泉谷つよし君
五十四番くまき美奈子君
五十五番大西さとる君
五十六番増子 博樹君
五十七番かち佳代子君
五十八番植木こうじ君
五十九番野上 純子君
六十番東村 邦浩君
六十一番長橋 桂一君
六十二番小磯 善彦君
六十三番三宅 茂樹君
六十四番高島なおき君
六十五番鈴木 一光君
六十六番菅  東一君
六十七番石森たかゆき君
六十八番矢島 千秋君
六十九番鈴木 隆道君
七十番こいそ 明君
七十一番倉林 辰雄君
七十二番遠藤  衛君
七十三番大西由紀子君
七十四番いのつめまさみ君
七十五番門脇ふみよし君
七十六番小沢 昌也君
七十七番石毛しげる君
七十八番岡崎 幸夫君
七十九番柿沢 未途君
八十番清水ひで子君
八十一番古館 和憲君
八十二番松村 友昭君
八十三番東野 秀平君
八十四番ともとし春久君
八十五番鈴木貫太郎君
八十六番石川 芳昭君
八十七番三原まさつぐ君
八十八番田島 和明君
八十九番林田  武君
九十番野島 善司君
九十一番高橋かずみ君
九十二番樺山たかし君
九十三番新藤 義彦君
九十四番古賀 俊昭君
九十五番立石 晴康君
九十六番桜井  武君
九十七番初鹿 明博君
九十八番酒井 大史君
九十九番花輪ともふみ君
百番大津 浩子君
百一番大塚たかあき君
百二番相川  博君
百三番中村 明彦君
百四番曽根はじめ君
百五番大山とも子君
百六番藤井  一君
百七番中嶋 義雄君
百八番木内 良明君
百九番石井 義修君
百十番宮崎  章君
百十一番服部ゆくお君
百十二番川井しげお君
百十三番吉野 利明君
百十五番比留間敏夫君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番馬場 裕子君
百二十一番大沢  昇君
百二十二番山下 太郎君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番田中  良君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番渡辺 康信君

 欠席議員 一名
百十四番 野村 有信君
 欠員
四十八番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事谷川 健次君
副知事菅原 秀夫君
副知事山口 一久君
副知事猪瀬 直樹君
教育長中村 正彦君
知事本局長大原 正行君
総務局長押元  洋君
財務局長村山 寛司君
主税局長熊野 順祥君
警視総監矢代 隆義君
生活文化スポーツ局長渡辺日佐夫君
都市整備局長只腰 憲久君
環境局長吉川 和夫君
福祉保健局長安藤 立美君
産業労働局長佐藤  広君
建設局長道家 孝行君
港湾局長斉藤 一美君
会計管理局長三枝 修一君
交通局長島田 健一君
消防総監小林 輝幸君
水道局長東岡 創示君
下水道局長前田 正博君
青少年・治安対策本部長久我 英一君
東京オリンピック招致本部長荒川  満君
病院経営本部長秋山 俊行君
中央卸売市場長比留間英人君
選挙管理委員会事務局長梶原 康二君
人事委員会事務局長矢口 幸一君
労働委員会事務局長有留 武司君
監査事務局長白石弥生子君
収用委員会事務局長中田 清己君

十二月四日議事日程第一号
第一 第百八十六号議案
  職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第二 第百八十七号議案
  東京都の一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三 第百八十八号議案
  東京都の一般職の任期付研究員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四 第百八十九号議案
  職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
第五 第百九十号議案
  職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第六 第百九十一号議案
  東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第七 第百九十二号議案
  東京都育英資金条例の一部を改正する条例
第八 第百九十三号議案
  東京都私立学校教育助成条例の一部を改正する条例
第九 第百九十四号議案
  学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第十 第百九十五号議案
  学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第十一 第百九十六号議案
  都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例の一部を改正する条例
第十二 第百九十七号議案
  都立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第十三 第百九十八号議案
  東京都児童相談所条例の一部を改正する条例
第十四 第百九十九号議案
  東京都心身障害者扶養共済制度条例
第十五 第二百号議案
  大気汚染に係る健康障害者に対する医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例
第十六 第二百一号議案
  東京都海上公園条例の一部を改正する条例
第十七 第二百二号議案
  東京都立公園条例の一部を改正する条例
第十八 第二百三号議案
  公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例
第十九 第二百四号議案
  性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例の一部を改正する条例
第二十 第二百五号議案
  東京都安全・安心まちづくり条例の一部を改正する条例
第二十一 第二百六号議案
  警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例
第二十二 第二百七号議案
  東京都医学系総合研究所(仮称)(H十九)Ⅰ期新築電気設備工事請負契約
第二十三 第二百八号議案
  東京都医学系総合研究所(仮称)(H十九)Ⅰ期新築空調設備工事請負契約
第二十四 第二百九号議案
  富士見橋鋼けた製作・架設工事請負契約
第二十五 第二百十号議案
  瑞穂大橋鋼けた製作・架設工事請負契約
第二十六 第二百十一号議案
  平成十九年度東京港臨海道路(Ⅱ期)中防側アプローチ橋りょう鋼けた製作・架設工事請負契約
第二十七 第二百十二号議案
  当せん金付証票の発売について
第二十八 第二百十三号議案
  東京都立小峰公園の指定管理者の指定について
第二十九 第二百十四号議案
  東京都立明治公園外一公園の指定管理者の指定について
第三十 第二百十五号議案
  東京都立大神山公園の指定管理者の指定について
第三十一 第二百十六号議案
  東京都立横網町公園の指定管理者の指定について
第三十二 第二百十七号議案
  東京都水道事業の事務の委託の廃止及び八王子市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第三十三 第二百十八号議案
  東京都水道事業の事務の委託の廃止及び立川市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第三十四 第二百十九号議案
  東京都水道事業の事務の委託の廃止及び町田市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第三十五 第二百二十号議案
  東京都水道事業の事務の委託の廃止及び国分寺市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第三十六 第二百二十一号議案
  東京都水道事業の事務の委託の廃止及び福生市公共下水道使用料徴収事務の受託について

   午後一時一分開会・開議

○議長(比留間敏夫君) ただいまから平成十九年第四回東京都議会定例会を開会をいたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(比留間敏夫君) まず、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   九番 そなえ邦彦君 及び
 六十五番 鈴木 一光君
を指名をいたします。

○議長(比留間敏夫君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(大村雅一君) 平成十九年十一月二十七日付東京都告示第千五百三号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、同日付で、本定例会に提出するため、議案三十六件の送付がありました。
 次に、選挙管理委員会委員長より、選挙管理委員及び同補充員の任期について、来る平成十九年十二月二十二日をもって満了するとの通知がありました。
 次に、知事より、平成十九年第三回定例会の会議において同意を得た、監査委員、教育委員会委員、公安委員会委員及び土地利用審査会委員の任命について、発令したとの通知がありました。
 また、先般の人事異動に伴う東京都議会説明員の変更について、地方自治法第百二十一条及び会議規則第四十二条の規定に基づき通知がありました。
 次に、人事委員会より、平成十九年十月十二日付で、都の一般職の職員の給与についての勧告等がありました。
 次に、知事より、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づき専決処分した訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告がありました。
 次に、監査委員より、例月出納検査の結果について報告がありました。
 また、監査結果に基づき知事等が講じた措置に関する報告がありました。

○議長(比留間敏夫君) この際、平成十九年十一月二十日付をもちまして、自治功労者として地方自治法施行六十周年記念総務大臣表彰を受けられました方をご紹介いたします。
 三田敏哉君。
 ここに敬意を表し、心からお祝いを申し上げます。
   〔拍手〕

○議長(比留間敏夫君) 次に、平成十九年十月二十三日付をもちまして、全国都道府県議会議長会において自治功労者として表彰を受けられました方々をご紹介をいたします。
 在職三十年以上、桜井武君。
 在職十年以上、遠藤衛君、倉林辰雄君、馬場裕子さん、田代ひろし君、村松みえ子さん、古館和憲君、吉野利明君、川井しげお君、かち佳代子さん、吉田信夫君、たぞえ民夫君、三宅茂樹君、高島なおき君、鈴木一光君、清水ひで子さん、こいそ明君、土屋たかゆき君。
 ここに敬意を表し、心からお祝いを申し上げます。
   〔拍手〕

○議長(比留間敏夫君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 第三回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
   〔文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾に掲載〕

○議長(比留間敏夫君) 次に、先般の人事異動に伴い異動のありました説明員をご紹介いたします。
 港湾局長斉藤一美君。
   〔理事者あいさつ〕

○議長(比留間敏夫君) 以上をもちまして説明員の紹介は終わりました。

○議長(比留間敏夫君) 次に、東京都議会友好代表団について申し上げます。
 本議会を代表いたしまして、去る十一月六日から十二日まで、北京市及びソウル特別市へ友好代表団を派遣いたしました。
 友好代表団を代表いたしまして、報告のため、発言の申し出がありますので、これを許します。
 北京市及びソウル特別市訪問東京都議会友好代表団団長石井義修君。
   〔百九番石井義修君登壇〕

○百九番(石井義修君) 東京都議会友好代表団のソウル特別市及び北京市、上海市訪問についてご報告をさせていただきます。
 山田忠昭副団長を初め、自由民主党、民主党、公明党、日本共産党の各会派の代表から成る友好代表団十名は、ソウル特別市議会及び北京市人民代表大会常務委員会の招聘を受け、十一月六日から十二日まで七日間、ソウル市、北京市及び上海市を訪問いたしました。
 まず、十一月六日から八日まで、ソウル市を訪問いたしました。
 ソウル特別市議会の朴柱雄(パク・ジュンユン)議長及びソウル特別市政府の權泳臻(クォン・ヨンジン)政務副市長を表敬訪問し、友好関係のさらなる推進を確認するとともに、交通政策、環境対策などの都市づくり政策について活発な意見交換を行ってまいりました。
 ソウル市では、市議会で実際に運用されております電子会議システム、また、都市の再生事業の一環としての清流復活事業、清渓川(チョンゲチョン)の復元事業に感動いたしました。これについては後ほど触れたいと思います。
 都市計画局の担当者から、ソウル市の都市政策について詳細な説明を受け、安全・安心、緑豊かな都市づくりをめぐって、東京の実情を紹介するなど、率直な意見交換を行ってまいりました。
 さらに、十九年前に開催されたソウルオリンピックのメーンスタジアムと、五年前に開催されましたワールドカップスタジアムを視察してまいりましたが、いずれも日本のスタジアムでは例のない多目的な活用をしており、大いに参考になったところであります。
 続いて、八日から十日まで、北京市を訪問いたしました。
 私自身は、都議会の訪問団としては今回三回目、それ以前に中日友好協会の招請で四回、計七回目の中国訪問となりましたが、北京市、上海市の変貌に驚かされたところであります。
 北京市人民代表大会常務委員会の杜徳印(ト・トクイン)主任を表敬訪問し、日中国交回復三十五周年の節目に当たり、二十八年の歴史を持つ東京、北京の交流が、日中の友好にも大きく貢献することを再確認するとともに、両都市の抱える、環境に配慮した持続的都市づくり等の諸課題について意見交換を行ってきたところであります。
 北京市の都市計画については、映像や模型などさまざまな手法で、四千年の歴史の上に立って未来を志向する大胆な都市づくりを目の当たりにしてまいりました。
 来年に迫った北京オリンピックに向けて、環状道路が五本も完成しておりました。これまで何回も目にした道路を埋め尽くす自転車が全くなくなり、高速道路網が整備されておりました。LNGのバスが走っておりました。
 オリンピックの会場建設も急ピッチで進んでおります。鳥の巣と呼ばれる斬新なデザインのメーンスタジアムはもとより、北京市の意気込みがあらわれた施設群と会場のスケールの大きさに驚かされました。
 続いて、十日から十二日まで、上海市を訪問いたしました。
 上海市人民代表大会常務委員会のコ・イ副主任の表敬訪問では、上海市の発展に向けては環境にも十分配慮しているという話を伺いました。
 実用化されたリニアモーターカーでは、時速四百三十一キロメートルを体験し、さらに、森ビルが施工しております、世界一の高さになる、来年完成予定の上海国際金融センターの建設現場の最上階から上海市を展望いたしましたが、変貌し続ける上海市のエネルギーを実感したところであります。
 七日間で三都市の訪問というハードなスケジュールでしたが、発展著しいソウル市、北京市、上海市の現実の姿を実際に見聞いたしてまいりました。特に、次の三点が強く印象に残ったところであります。
 第一は、ソウル市の清流復活事業、清渓川(チョンゲチョン)の復元事業であります。
 パネルをごらんいただきたいと思います。
 皆さんもご承知のように、ソウル市の中心を流れる漢江(ハンガン)の支流であります清渓川(チョンゲチョン)は、朝鮮王朝時代からソウル市民に親しまれてきた川でありました。しかしながら、二十世紀の半ばの経済発展によって、川は極度に汚染され、やがて高架道路の建設のためにふたをかけ、暗渠化され、その姿を消してしまったところであります。しかし、二〇〇二年、ソウル市の李明博(イ・ミョンバク)市長、現在の大統領候補でありますけれども、のマニフェストによりまして復元事業が決まるや、わずか二年三カ月で高架道路を取り払い、側道も整備し、五・八キロメートルの清流が復活したのであります。
 工事期間の短さもさることながら、四千回を超える周辺住民との粘り強い対話、交渉、話し合い、その上に立った受け皿としての住宅や商業施設の整備、地下鉄やバス路線の整備などの交通対策など、大きな難問にも積極果敢に取り組んだ事業でありました。
 東京に当てはめてみれば、銀座、宝町、京橋、日本橋に至る高速道路を取り払い、水と緑の清流を復活させた、そのような事業でありました。
 第二番目は、ソウル市議会の電子会議システムであります。
 このパネルをごらんいただきたいと思います。
 このように、本会議場百六、この東京都議会の約四分の三の大きさでありますけれども、百六の各議員の議席にパソコンのディスプレーがありまして、そして、議案などの資料の閲覧、本会議、常任委員会の各議員の発言の議事録の検索が瞬時に自分の議席でできるのであります。議席の後ろには大型スクリーンが設置されており、さまざまな資料がそこに映し出されることができるのであります。東京都議会議員代表団歓迎の大きな文字が掲げられておったところであります。もちろん、記名、無記名の電子投票がその場でできます。即座に結果も掲示されるのであります。
 第三番目は、ソウル市、北京市、上海市ともに、みずからの都市のPRに極めて積極的であったということであります。
 各都市の都市計画展示館では、先進的な技術による模型やコンピューターグラフィック映像を駆使して、都市のそもそもの成り立ち、歴史的変遷、そして未来の姿まで、市民だけでなく、外国のすべての来訪者に理解できるように工夫がされております。十分程度にまとめられた、各国の言語で制作された映像には、その都市の誇りと熱意が込められており、すばらしいものでありました。
 帰国して、東京都に外国のお客さんが来られた折に東京を知ってもらう同様の紹介ビデオがあるのかどうか探してみましたが、どこの局にもありませんでした。まことに残念であり、寂しい話であります。所管は知事本局と生活文化スポーツ局であります。
 東京都は、ディーゼル車対策など、世界に誇れる都市づくりを実践しているのでありますから、世界に向けたシティーセールスをしていく上で、また、オリンピック東京招致に向けたPRのために、ぜひとも、英語、中国語、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語など、各国語で東京を紹介する映像、ビデオなどの媒体を作成すべきではないか。これは、参加した十名の団員の総意で、石原知事に申し上げるものであります。
 以上、述べてまいりましたけれども、今回の三都市の訪問は、都議会の先人によって築かれた友好交流の歴史の上に立って、さらに新しい都市間のきずなを強くすることができたと確信をするものであります。
 そして、このたびの訪問に当たり、お世話をいただいたソウル市、北京市、上海市の皆様に改めて心から感謝と御礼を申し上げまして、報告とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(比留間敏夫君) 以上をもって、東京都議会友好代表団の報告は終わりました。

○議長(比留間敏夫君) 次に、東京都議会海外調査団について申し上げます。
 本議会において、去る十月二十二日から三十一日まで、カイロ、ルクソール、マドリード、パリ及びナントへ、また十月七日から十六日まで、カンゲルルススアーク、レイキャビク、ヴァンター、ブルージュ及びストックホルムへ、それぞれ海外調査団を派遣いたしました。
 海外調査団を代表いたしまして、それぞれ報告のため発言の申し出がありますので、これを許します。
 六十五番鈴木一光君。
   〔六十五番鈴木一光君登壇〕

○六十五番(鈴木一光君) 今、議長からお話がありましたように、このたび、都議会を代表いたしまして、我が都議会自由民主党から、私、鈴木一光を団長として、林田武議員、矢島千秋議員、鈴木隆道議員、神林茂議員の五名で、エジプト、スペイン、フランスの三カ国を、十月二十二日から三十一日までの十日間にわたり調査してまいりましたので、簡潔にその報告をいたします。
 調査の目的といたしましては、環境施策、観光振興・文化財保護施策、公共交通施策、都市政策等についてであります。訪問都市は、エジプトのカイロ及びルクソール、スペインのマドリード、フランスのナント及びパリであります。
 まず、エジプトであります。
 カイロ及びルクソールでは、主に観光振興と文化財保護を調査するため、エジプト政府の観光局や考古庁を訪問し、歴史的に貴重な文化財の保護と観光資源としての活用などについて説明を受けました。
 エジプトは、七千年もの歴史を持つ国です。貴重な文化財が多数あるわけでありますが、それを保護し、観光資源として活用していることは、東京の文化行政を考える上で大いに参考になりました。
 もともと、エジプトは親日的な国ということもあり、東京都とも平成二年に姉妹友好都市提携をしておりますが、実際にいろいろとお話を伺う中で、日本との交流、特に東京とのさらなる交流を強く望んでいることを感じました。
 また、カイロは世界で二番目に大気汚染がひどいということを伺いました。確かに自動車の渋滞はひどく、朝から空気はよどんでいました。東京のオリンピック・パラリンピック招致を進める上で、環境は大きな目玉となります。東京の環境を一層改善し、水と緑の東京を実現することはもちろん大切でありますが、地球全体の環境を考えたときには、東京の持つ環境技術で地球の環境を改善していくことも大切です。姉妹友好都市であるカイロの大気汚染の改善をしていくことにも大きな意義があるのではないかと思います。オリンピック開催地決定に際しても、東京がカイロの大気汚染の改善に一役買ったとなれば、好印象を持たれるのではないかと思います。
 また、エジプトの政府の高官から、もし東京でエジプト展を開催してくれるならば、何でも提供する、一切問題ないと。二日間滞在したわけですが、二日間滞在の中でいろんなものを見て、どれが欲しいということを遠慮なくいってもらいたいというふうな、大変にありがたい言葉をいただいてまいりましたので、ぜひ東京でエジプト展の開催のご検討をお願いをしたいと思います。
 次に、スペインのマドリードに参りました。
 マドリード市の国際観光部門及び都市整備部門を訪問いたしました。そのときにこのネクタイをいただいてまいりました。裏を見ると、メード・イン・フランスと書いてあって、非常におおらかな人間性だなというふうなことも感じましたけれども、マドリードは、ご承知のように、二〇一六年オリンピック・パラリンピックに東京都とともに立候補しており、有力候補といわれています。オリンピックについてはお互いに頑張ろうとエールを交換してまいりました。
 二〇一二年オリンピックがロンドンに決定したとき、パリとマドリードは最後まで残りましたが、マドリードは負けて悲しんだとか落胆したとかということがなく、王室みずから先頭に立って招致活動を行い、負けたときも、大きな夢を見ることができて楽しかった、また頑張ろうというふうに述べていたそうであります。国民性の違いというものを痛切に感じました。
 しかし、二〇一二年の惜敗にもかかわらず、二〇一六年も立候補しています。マドリード市は、我々が思っている以上に気合いが入っていました。手ごわい相手になろうかと思います。
 また、オリンピック招致の上で大きな要素となるのは都市の魅力です。その点、マドリードは観光施策に大変力を入れておりまして、GDPの一〇%が観光業からの収入、人口の九%が観光に携わる職業についているという観光都市であります。
 その背景には、EU第三位の空港を持つアクセスのよさ、リーズナブルな価格で一定水準を確保したホテル、ビジネス関連イベントを開催する国際会議場などの充実したインフラ、プラド美術館などの豊富な文化施設、豊富なスポーツイベント、スペインの伝統料理など食文化の豊かさ、半径百キロメートル以内にトレドなどユネスコ世界遺産が四カ所あることなどが挙げられます。
 これらの多くは、東京が持つ都市の魅力と共通するものがあります。東京も、千客万来の都市東京を目指しており、マドリードの豊かな文化財や恵まれたロケーションを生かした観光プロモーションなど、学ぶところが多いと感じました。
 また、マドリード市は日本との交流を強く望んでいました。特に、ジャパンプロジェクトというものを立ち上げて、特に日本をターゲットとして観光客を誘致しようというふうなことをおっしゃっておりました。今、もしこれが、東京からマドリードに友好都市提携を結びましょうといった場合には、多分喜んで向こうは友好都市提携を結ぼうという話になるだろうというふうに思います。ということは、オリンピック、いざというときには、そういった友好関係というものは、強力な味方になってくれるということも考えられるわけでありますので、ぜひご検討いただきたいと思います。
 最後に、フランスであります。
 フランスでは、ナント市とパリ市を訪問し、主に交通施策による環境対策について調査しました。
 まず、フランスの路面電車トラムの現状を研究するため、トラムが最初に導入されたナント市を訪問し、トラムの歴史やシステムについて調査を行いました。
 ナント市のトラムの歴史は古く、第二次世界大戦前から導入されましたが、戦争を挟んで一時廃止されました。しかし、一九七八年、当時の市長の英断により、トラムの導入が決まり、その後、トラムの路線もふえ、現在では、ナント都市圏で交通を利用する市民の二分の一はトラムを利用しているといいます。導入当初、トラムに賛成の市民は五〇%にとどまりましたが、現在は九〇%の市民が支持をしているといいます。
 一度は廃止されたトラムを復活した理由は、三つあります。
 第一に、環境保全のためです。路面電車トラムは、自動車中心の交通体系から発生する環境汚染から市民を守ることになるからであります。
 第二に、車とトラムの共同によって、トラムによってまちを分断させることなく、周辺との新しい空間をつくり、ゆったりしたまちづくりの景観をつくり出せることであります。
 第三に、トラムを有効に活用することによって、都心に働くすべての人々の移動を改善させ、都市中心部の再生に寄与するからであります。
 自動車やバスとの共存を図りながら、トラムを活用した見事な都市再生であるといえましょう。
 国内でも、一度は廃止された路面電車が、次世代型路面電車LRTとして脚光を浴びてきています。東京では、都電荒川線が唯一の路面電車の路線として運行されていますが、車社会、環境問題を考えるとき、都民の足としての路面電車の復活を真剣に考えるべきではないかと思います。
 最後に、パリを訪問し、パリ市の交通対策部門で、トラムと自転車を活用した交通政策について説明を受けました。
 パリでは、人々が車を使うことをあきらめさせることを目的に交通政策を行っている市長の方針により、自動車交通の四〇%減を目標に交通政策が実施されています。その中心がトラムです。パリ市も、ナント市と同じく一時廃止しましたが、一九九二年に復活し、今では環状幹線の重要な部分を担っています。そして、その資金は、一定規模以上の事業者が交通事業者に直接納付する交通負担金によっています。
 もう一つは、自転車の活用です。自転車は、レンタサイクルを初め、交通手段として定着しています。レンタサイクルは、一日券から一カ月券までの各チケットを購入すれば、だれでもが乗ることのできるシステムであります。パリ市としては、市内に自動車を入れないようにするため、自転車の活用に注目し、パーク・アンド・ライドに相当力を入れており、東京にも大いに参考になると感じました。
 東京の道路計画には自転車が欠如しています。そのため、自転車は加害者にも被害者にもなります。歩道を暴走する自転車が横行する一方、車道では被害者になる可能性があります。自転車は本来環境に優しい乗り物であり、これを活用しない手はありません。
 パリでは、自転車専用道をつくっています。片側二車線あれば、一車線を自転車専用にしているところもありました。東京でも、これくらい思い切った方策をとらなければ、車社会からの切りかえは難しいのではないでしょうか。
 既成の都市の中でまちづくりを進めるためには、明確な方針と強い意志なくしては進め得ないことを改めて痛感をいたしました
 最後に、いずれの訪問国においても、それぞれ日本大使館を訪問し、大使、公使などから各国の概況についてお話を聞くとともに、東京が目指す二〇一六年オリンピック・パラリンピックの招致に向けて、開催地決定に大きな力を持つEU諸国の現状などについても極めて率直な意見交換ができました。
 今回の視察で感じたことは、視察は大変有意義であるということを改めて痛感をいたしました。我々議員は、だれもが積極的に視察に出かけるべきであると考えます。
 報告は以上であります。
 なお、詳細につきましては、現在報告書として取りまとめているところでありますので、本日は概要のみ口頭にて報告をいたしました。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(比留間敏夫君) 続きまして、十三番原田大君。
   〔十三番原田大君登壇〕

○十三番(原田大君) 平成十九年度都議会海外調査団の報告をいたします。
 都議会民主党の中村明彦議員を団長に、酒井大史議員、石毛しげる議員、そして私、原田大の四名は、去る十月七日から十月十六日までの十日間、北欧諸国を中心とするヨーロッパを訪問し、政策調査を行いました。
 今回の調査では、東京の持続可能な発展に欠かせない三つのテーマを選定いたしました。第一に、温暖化等の環境問題に配慮した新エネルギー政策、第二に、ITを活用した高付加価値産業育成、そして第三に、水辺空間の豊かさを生かした都市空間形成であります。
 この調査目的を達するため、デンマーク領グリーンランドのカンゲルルススアーク市、アイスランドのレイキャビク市、フィンランドのヴァンター市、スウェーデンのストックホルム市、ベルギーのブルージュ市を訪問いたしました。
 以下、各テーマに沿ってご報告いたします。
 まず、温暖化等の環境問題に配慮した新エネルギー政策の調査であります。
 今回は、グリーンランドで温暖化の影響等の調査を、レイキャビク市で水素・燃料電池を利用した新エネルギー政策等の調査を行いました。
 まず、グリーンランドでは、入り口となるカンゲルルススアーク市から車で二時間の内陸氷河まで行き、見渡す限りの壮大な氷の大地に圧倒されました。しかし、この永遠に見える白い大地でも、以前は雪しか降らなかったところで雨が降り、寒冷な気候に適応した生態系、そして生活体系が温暖化によって脅かされています。さらに、一度白い氷が解けて黒い岩肌が露出してしまうと、太陽熱を吸収しやすくなり、氷の融解が加速度的に起こってしまうとのことで、早期の取り組みの重要性が指摘をされました。
 次に、アイスランドのレイキャビク市に行き、当地のエネルギー政策を視察してまいりました。
 アイスランドでは、現在、地熱と水力でエネルギー需要の約七割を賄っています。残りの三割は石油の輸入に頼っていますが、この石油の大部分は、自動車及び漁船の燃料として使われております。したがって、これを燃料電池で代替できれば、地熱発電の安価な電力を利用して水素は安価に手に入るので、エネルギー自給率を一〇〇%近くにできるという野心的な取り組みをしております。
 我々は、新エネルギープロジェクトに取り組むINE社を訪問し、水素バスや水素自動車の導入プロジェクト等について視察を行うとともに、意見交換を行いました。また、建設中の地熱発電所を訪問し、地熱利用の実態調査を行いました。
 アイスランドと状況の異なる東京で、アイスランドのエネルギー政策をそのまま適用することはできませんが、東京でも、東京の事情に応じたエネルギーシステムの構築が必要だと実感をいたしました。
 次に、ITを活用した高付加価値産業育成政策を視察するため、フィンランドのヴァンター市及びスウェーデンのストックホルム市を訪問いたしました。
 ヴァンター市のIT戦略計画で注目すべきは、フィンランド政府や他市と連携した計画づくりを行う方向へと進んでいることです。例えば、さまざまな電子行政サービスのかぎとなるシティーカードの開発も、国内四市で連携して取り組んでおりました。また、セキュリティーと利用者の利便性確保などについて、東京都でも参考にすべき点がありました。
 スウェーデンのストックホルム市では、ストックホルム市の区の一つであるシスタが、周辺三市と連携して、シスタ・サイエンスシティーを開発、IT企業を中心としたまちづくりを進めています。各市が連携を始めて国と交渉し、インフラ整備等を進めた上、IT産業のクリーンであるという特徴を生かして、職・住・商業の近接したまちづくりがなされていました。
 この北欧のシリコンバレーともいわれるシスタ・サイエンスシティーが、世界のITを牽引しているのみならず、域内の雇用や住宅需要の喚起にも貢献していることは注目に値します。
 東京都においても、「十年後の東京」の中で多摩シリコンバレーをうたっていますが、ストックホルム市の例に倣い、具体的な計画性を持って都が主体的に取り組む必要性を強く感じたところであります。
 最後に、水辺空間の豊かさを生かした都市空間形成の調査のため、ベルギーのブルージュを訪問いたしました。
 世界遺産にも指定されているブルージュは、外壁の建てかえを厳しく制限して、中世の美しい街並みを残しています。視察では、こうした街並みの維持や修復などの問題点、旧市街への自動車の乗り入れを制限するパーク・アンド・ライド、駅からのシャトルバス運行、市中の通り抜けを不可能にするループ式一方通行、観光バスを含む大型バス乗り入れ規制の実施などについて見てまいりました。
 自動車の制限をする一方、水路が観光に活用されてもおりました。まちの美観では、ネオンや看板といった広告等の制限が挙げられます。また、夜間のライトアップといった、歴史や文化を生かす演出もありました。
 これからの東京の発展を考えた場合、経済的な繁栄を維持しつつも、自然環境に配慮し、また、都市を人間性あふれるものにすることが必要です。今回の視察結果を、東京の発展のための政策提言につなげていきたいと思います。
 なお、詳細につきましては、後日、報告書を取りまとめ、ご報告したいと思います。
 ご清聴ありがとうございました(拍手)

○議長(比留間敏夫君) 以上をもって、東京都議会海外調査団の報告は終わりました。

○議長(比留間敏夫君) 会期についてお諮りをいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から十二月十九日までの十六日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(比留間敏夫君) ご異議なしと認め、よって、会期は十六日間と決定をいたしました。

○議長(比留間敏夫君) この際、知事より発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 平成十九年第四回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。
 先週、フィリピンの首都マニラで開催されましたアジア大都市ネットワーク21第六回総会に出席し、地球温暖化対策について議論を深めてまいりました。
 産業革命以来、世界は化石燃料を大量に消費して大いに発展はしたものの、その過程で排出されたCO2の影響により地球は温暖化し、水没の危機に瀕するツバル諸島に象徴される地球環境の異変を引き起こしております。
 このまま手をこまねいていれば、海面上昇に加え、温暖化による気候変動がもたらす台風の巨大化や干ばつなどのために、生きる場所もすべも失った難民が世界に多数発生するのは必至であります。これにより南北の格差や貧困は深刻化し、新たな紛争の火種になりかねません。
 発展の代償である地球の異変は、国境を越え世界じゅうに広がりつつあり、もはや環境を軸としてすべての国を引き込んだ新たな国際的枠組みを構築しなければ、人類に未来はありません。世界も遅まきながらこれに目覚め、足並みがそろわないながらも、ポスト京都議定書をめぐる議論が国連の場で始まりました。来年開催される北海道洞爺湖サミットでも最重要議題となることは確実であります。
 今回のアジア大都市ネットワーク21総会では、東京が環境政策のトップランナーとして参加都市に強く働きかけ、CO2の排出削減に共同して取り組むことを合意できました。
 アジアは、世界の人口の半分以上を占めるとともに、経済の成長が著しく、アメリカやEUに匹敵する第三の極となりつつあります。そのアジア諸国の頭脳部、心臓部を担う大都市が、それぞれの国家の国益や発展段階の差異を超えて、先進国と途上国の利害が複雑に交錯する地球環境問題の解決に向けて連携することは、新たな国際的枠組みの成立への強力な後押しとなります。
 来年二月には、東京で環境技術に関する実務者会議「第一回アジア・エネルギー環境技術ワークショップ」を開き、日本が培ってきた技術や東京の先進的政策ノウハウをアジアに提供いたします。
 東京は、アジアと連携していくとともに、大規模なCO2排出事業者に対する削減の義務化など先駆的な施策を着実に推進し、地球温暖化に立ち向かってまいります。
 地球環境問題だけでなく、高齢化や高度な都市化に伴い生じるさまざまな課題は、二十一世紀の世界に共通するテーマであります。こうした課題を克服するには、世界が同じ危機意識を持つことが不可欠であり、スポーツで世界の人々の心を一にするオリンピックは、その重要な機会ともなります。
 東京は、これらの課題を世界で最初に大規模に経験しつつありますが、既に先進的な政策を講じ取り組んでおります。こうした経験を持ち、現代文明の光も影も知る東京こそが、オリンピックを契機に、課題の解決策を世界に向けて示すことができると思います。
 先般、開催意義や競技会場の配置などを盛り込んだ開催基本計画を公表いたしました。これをもとに二〇一六年オリンピック・パラリンピック東京大会を開催することで、前回の東京大会が東京と日本の復興の扉を開いたように、地球社会の未来のため新たな扉を開いていきたいと思います。
 東京から、スポーツとオリンピックの持つ力を最大限生かして、新たな扉をあける二つのかぎを世界に示してまいります。
 まず一つは、スポーツを通じて人々に夢と希望を与えていくことであります。
 私たちは、トップアスリートが表現する肉体の力強さや、たぐいまれなる精神のたくましさに感動し、夢や生きる希望を得るわけです。
 子どもたちの気力や体力の低下が懸念される中、オリンピックやパラリンピックを契機に、次代を担う子どもたちにかけがえのない心の財産を残すとともに、スポーツに打ち込んで成長する喜びを与え、その生き生きとしたひとみの輝きを取り戻していきたいと思います。
 また、高齢化が進む現在、すべての人々がスポーツを通じて健やかな生活を手に入れ、夢と希望を持って人生を送ることができるようにしたいと思います。
 もう一つは、新しい都市モデルを提案し、地球環境を再生することであります。
 私たちを魅了してやまないトップアスリートにとって、きれいな空気と豊かな水と緑にあふれた都市こそ最高の舞台であります。また、大会に向けた十年間は、地球温暖化を解決するための正念場でもありまして、環境に負荷をかけている都市はその行動を問われております。
 世界じゅうの目が注がれる大会の舞台づくりに当たり、最先端の環境技術や政策ノウハウを用いて都市のあり方を進化させることにより、地球の健康を取り戻す具体的な道筋を世界に示してまいります。
 こうした考えのもと、大会運営面にさまざまな工夫を凝らしてまいります。
 まず、全国の子どもたちが一人でも多く会場に足を運び、あるいはメディアを通じて、トップアスリートの最高の活躍をみずからの目と耳と肌で感じることができるように、オリンピックの開催期間は、子どもたちの夏休み等を考慮しまして、七月二十九日から八月十四日に設定いたしました。
 また、世界一コンパクトな大会を目指し、ほとんどの競技会場を、晴海オリンピックスタジアムを中心とした半径八キロ圏内に集中させました。
 環境への影響を極力抑えるため、既存の競技施設をできる限り使用するとともに、観客の輸送等には、正確無比で都内を縦横に走る公共交通網を最大限に活用いたします。オリンピックスタジアムへのアクセスには、環境に配慮したバス高速輸送システムを導入いたします。
 開催基本計画に掲げた「人を育て、緑を守り、都市を躍動させるオリンピック」を成功させるためにも、「十年後の東京」に基づき、東京をより高い次元で成熟させ、大会を通じて二十一世紀の新しい都市モデルとして世界に披瀝してまいります。
 来年はオリンピックイヤーでありまして、八月、北京大会が開かれます。ソウル大会から二十年ぶりとなるアジアでの開催に、多くの都民、国民が現地を訪れ、北京市民はもとより世界じゅうの人々と交歓を深めることになると思います。東京の友好都市北京が、オリンピックの精神を具現化して大会を成功させることを祈念いたします。
 これから北京大会に全世界の耳目が集まる中、二〇一六年大会に立候補した都市への関心も高まります。この機を逃すことなく全力で取り組み、都市間競争を勝ち抜いて、必ずや日本にオリンピックを招致し、東京で開催する決意であります。
 来年一月には、IOCに対して申請ファイルを提出いたします。子どもたちに心の財産を残し、環境問題に先進的に取り組む東京の志を世界に示すとともに、充実した都市機能もアピールしてまいります。
 招致議員連盟などから既に百万人を超える数の招致を求める署名をいただきましたが、都民、国民の皆様、都議会の皆様には、二年後の平成二十一年十月二日に開かれるIOC総会での開催都市決定に向け、さらなるご協力をお願いいたします。
 都政がその持てる力を尽くして世界に新しい潮流をつくり出そうとしているその一方、国政には近視眼的な議論が充満し、とりわけ地方税財政制度について本質から外れた動きが続いております。
 本来、中央政府の財源は国税により、地方政府の財源はその地域の住民が納める地方税によるのが基本であります。しかし、霞が関がすべてを差配するこの国の構造のもと、地方は国からの財源に依存し、地域における受益と負担の関係があいまいなまま、国の硬直的な行財政運営を後追いせざるを得ませんでした。それゆえに昨今、そのツケに苦しみ、しわ寄せが住民に及んでおります。
 しかし、国はみずからの誤りを反省しないばかりか、都市と地方の格差を喧伝し、その是正案と称する牽強付会ともいうべき代物で糊塗しようとしております。その最たるものが、地方税である法人二税を国が徴収し再配分するという案であります。さらに、最近では、地方税である法人事業税について、二十年度税制改正で、都から三千億円程度を地方に移すという合意ができたと報道されておりますが、そんな話は全く聞いておりませんし、ましてや内諾など全くしておりません。これは受益と負担の関係をさらにあいまいにし、地方を真の自立から一層遠ざけるものでしかありません。
 また、東京は三百万人を超える昼間流入人口を抱え、都は、そのために生じる膨大な行政需要に対処しながら、我が国の頭脳部、心臓部を維持して発展を図っております。
 さらに、日本の将来に不可欠なインフラ整備を国が遅々として進めないことから、やむなく国にかわってみずからの負担で進めております。東京の膨大な行政需要は、日本の屋台骨を支えるためのものであります。
 都は、こうした行政需要に対応するため、行財政改革に取り組み、平成以降、職員を四割以上も削減するなど、徹底して努力してきました。にもかかわらず、国のご都合主義によって税源を奪われ、財政再建団体に転落すれば、まさにこれは東京の死であります。これは地方自治の死であり、日本の死を招くことにつながります。
 国は、小手先の手法に走らず、地方の税財政基盤を確立するために、消費税の税率引き上げや国と地方の配分についての抜本的な検討を進めるとともに、必要十分な地方交付税を確保すべきであります。
 また、国に対して、東京の懐に手を突っ込む前に、まず、みずからの身を切る改革を断行し、地方への関与や補助金、二重行政を廃してスリムになることを強く求めます。
 動きの遅い国の分権改革・地方税財政制度改革をただ待つだけでは、地方は国と共倒れになりかねません。今なすべきは、都市と地方がその持てる力を融合させ、ともにみずからの活路を開くことなのであり、東京は、地域に活力を取り戻そうとする自治体や企業などと手を携えてまいります。
 そこで、都が開催する日本最大級の見本市である産業交流展に、全国の中小企業が出展する機会を提供いたします。これにより、地方と東京の中小企業や大学、研究機関などの交流を進め、新技術、新製品の開発や販路の開拓のために連携を促進してまいります。また、全国の中小企業が東京で活動する拠点を提供いたします。
 さらに、展望室だけでも国内外から年間百八十万の人が訪れるこの都庁舎を、都道府県の情報発信拠点として最大限活用し、日本の各地域の魅力を、この都庁舎でとにかく広くPRしてまいります。
 東京と地方がそれぞれの現場を踏まえ、知恵を出し合い協力することで、共存共栄の道を見出していくとともに、都市と地方の力の総和によって日本全体に新しい活力を生んでまいりたいと思います。
 これまで申し上げてきた意欲的な取り組みを進めるとともに、東京に存在する多くの課題を積極的に克服していくことで、日本と世界をこの東京がリードしていきたいと思います。
 三千四百万人以上の人口が集積する首都圏の最大の弱点は交通渋滞であります。渋滞により発生する経済損失や環境悪化は、東京のみならず、日本の発展のボトルネックとなっております。
 都はこれまで、三環状道路を初め、区部の環状道路や多摩南北道路の整備を促進しており、今月にはいよいよ中央環状線の新宿から池袋までの区間が開通いたします。今後、道路整備をさらに進め、十年後を目途に、お盆や正月並みのスムーズで環境に優しい車の流れを実現したいと思っております。
 先般、国が公表した道路の中期計画の素案には、都が主張してきた道路ネットワークの整備や、高速道路を利用しやすい料金体系の構築などが盛り込まれました。こうした施策を実現するには、道路特定財源にかかわる暫定税率を延長して財源を確保し、首都圏に集中的に投入すべきであります。
 また、外環道についても、都は既に四百回以上にわたる地元との意見交換を経て、大深度地下方式への都市計画変更を完了しており、国は一刻も早く整備計画路線に格上げしてしかるべきであります。
 今後とも、首都圏の着実な道路整備のために国を動かしてまいります。
 都みずからも共同事業者となって整備を進めている中央環状品川線については、平成二十五年度の完成を目指して最速のスケジュールで推進してまいります。
 もう一つの大きな弱点は、空港容量の絶対的な不足であります。
 人と物の交流が都市や国家の活力と繁栄に直結するこの現代において、その手段を欠いてはとても世界には太刀打ちできません。そのために、都は、羽田空港の再拡張・国際化と横田基地の軍民共用化を推進してまいりました。
 羽田空港については、第四滑走路の建設に一千億円の無利子貸付を行うなど、従来の自治体の枠を超えた対応を行い、工事は着実に進んでおります。また、空港の沖合展開に伴う跡地は、国際線ターミナルなど国際化の拠点施設に隣接する重要な空間であり、空港と連携する旅客サービス施設などに活用して、再拡張後の空港機能の強化を図っていく必要があります。今年度中に国及び関係自治体との調整を進め、跡地利用の基本計画を取りまとめてまいります。
 一方、横田基地の軍民共用化は、小泉・ブッシュ会談の合意を出発点として、米国政府に早期実現を求めてまいりました。日米両政府によるスタディーグループは十月を期限に検討を重ねてまいりましたが、米側の軍事運用にかかわる幾つかの課題がまだ残されております。いずれも調整は可能な事項ばかりであります。在日米軍基地の中で戦略上重要な位置を占める三沢基地ですら、既に冷戦時代に軍民共用化をしていたのでありまして、米国政府は、主な機能がしょせん兵たん基地でしかない横田基地の軍民共用化に真摯に対処して当然であります。
 先般、こうした考えを直接シーファー駐日大使に伝えるとともに、福田総理とも面会し、横田基地の軍民共用化は我が国の国力の維持のために必要不可欠であるとの基本的な立場を確認いたしました。
 今後も、国の関係省庁と都が一枚岩の結束を保ちながら、米側に対して具体的な提案を持ちかけるなど、粘り強く協議を続けることにより、軍民共用化の早期実現を目指してまいります。
 東京は、そこに住む人々が安心して暮らすためのさまざまな仕組みを充実させ、日本と世界をリードしていく都市にふさわしい成熟を遂げる必要があります。
 東京の高齢者は、十年後には全国でも群を抜き、三百万人を大きく超えるものと見込まれております。超高齢社会を迎えて、だれもが安心して暮らせる都市を実現しなくてはなりません。
 昨日、高齢者の地域での生活を支える基本方針となる地域ケア体制整備構想を策定いたしました。この構想をもとに、高齢者が住みなれた地域での生活を継続できる社会の実現を目指して、地域ケアの拠点となる地域包括支援センターをサポートするとともに、医療、介護、見守り等のネットワーク構築など、サービス基盤の充実にも取り組んでまいります。
 来年度には、具体的な施策展開を明らかにするため、平成二十一年度から二十三年度を計画期間として高齢者保健福祉計画を改定し、超高齢社会への備えを固めてまいります。
 がんは、年間三万人の都民の命を奪っております。都民の不安を解消するため、予防や早期発見の取り組みを強化するとともに、がんに罹患しても最善の治療を受けられる体制を強化していかなくてはなりません。
 都は、来年三月を目途に東京都がん対策推進計画を策定し、がんの早期発見、化学療法、放射線治療、緩和ケアなどの多様な治療方法の推進、専門医療従事者の育成などに取り組んでまいります。
 また、すぐれた診療機能を備えた病院が集まる東京のメリットを生かして、国が指定する拠点病院と同等の診療能力を有する病院を、来年四月から都独自に認定いたします。拠点病院と認定病院とが地域の医療機関を支援する体制を構築し、都全体のがん診療水準の向上に努めてまいります。
 自動車排出ガスによる大気汚染は、大都市における二十世紀の負の遺産ともいうべきものでありまして、多くの方々が東京大気汚染訴訟の推移を注目しながら、長い間、病に苦しんでこられました。都は、独自の患者救済策を提案して、八月に歴史的な和解に至り、さきの第三回定例会で都議会の承認もいただきました。現在、医療費助成制度の実施に向け、窓口となる区市町村との協議を行うとともに、本定例会には制度創設のための条例改正案を提案いたしました。全力で準備を進め、来年八月からの助成開始を目指してまいります。
 築地市場は、戦前戦後を通じ東京の台所として役割を果たしておりますが、モータリゼーションやIT技術の進展などに伴う流通環境の変化により、市場の施設、設備が時代に合わなくなり、老朽化や場内の狭隘化も進んで、市場機能を十分に果たせない状況にあります。
 このため、市場関係団体との協議を踏まえて、江東区豊洲への移転を進めておりますが、食の安全・安心に万全を期すため、専門家会議を設けて、移転予定地に対する土壌汚染対策を評価、検証しております。
 今般、専門家会議の意見を踏まえて、移転予定地の全面にわたり四千百カ所の詳細な土壌・地下水調査を行います。この調査結果をもとにして万全の対策を講じ、着実に移転を進めてまいります。
 いつの時代も、国家・社会の発展の基礎は次代を担う子どもであります。東京が日本と世界をリードし続けるには、子どもたちに努力する力や社会の発展を担う力を体得させる必要があります。そこでは、子どもたちの学力や体力、忍耐力などをバランスよくはぐくまなくてはなりませんが、昨今の学力の低下が懸念されております。
 国は四十三年ぶりに全国学力テストを実施し、十月、結果を公表いたしました。これは遅きに失したとしかいいようがありません。都は、平成十五年度から独自に、児童・生徒の学力向上を図るための調査を実施して、授業の改善を進めております。今後も、独自調査と国の調査の結果を徹底活用し、さらに学力を向上させてまいります。
 また、教育課題が複雑化、多様化する中で、教員の資質向上が急がれており、都は東京教師道場を設置して、教員の授業力向上を図ってまいりました。
 また、来年四月に設置される教職大学院に、学校教育の中核となる現職教員を派遣するとともに、新人教員の養成、確保のために連携するなど、新たな仕組みを構築してまいります。
 次に、多摩・島しょの振興について申し上げます。
 多摩の発展のためには、バランスのとれた道路ネットワークの形成、とりわけ南北方向の交通の円滑化を図っていかなければなりません。
 先般、新しい多摩大橋が開通し、来年春の八王子村山線の全線開通に向け、大きな山場を越えることができました。本路線の全線開通は、現在整備を進めている多摩南北道路の主要五路線のうちでは最初となるものであります。今後とも着実に整備を進め、首都圏の活力の一翼を担う多摩地域における都市基盤の充実に取り組んでまいります。
 また、この地域は、豊かな自然に加えて、長い歴史や伝統を持つ観光資源に満ちております。六月には関越道と中央道を結ぶ圏央道の区間が開通したことで、都内や近県からのアクセスが大幅に向上し、四季折々の風物に触れ親しむことがより便利になりました。
 こうした中、都は、多摩産材を活用した案内標識の設置など、観光ルートの整備を進め、新たな観光客の流れやまちのにぎわいを創出するための地域支援に取り組んでまいります。
 先月十六日から十八日までの三日間、三宅島においてモーターサイクルフェスティバルが開催されました。全国各地から延べ二百台ものバイクが参加し、関係者を含め一千人近くの人々が島を訪れました。
 私も十七日に訪れて一泊し、レース等をみずからの目で確かめ、島の空気を肌で感じてまいりました。島内外の人々が交流し活気にあふれる会場を見て、三宅島の観光、産業振興に大きな弾みがついたと強く実感いたしました。引き続き、復興に向けた三宅島の取り組みを積極的に支援してまいります。
 東京再起動を掲げた三期目のスタートから半年余りが経過いたしました。東京大気汚染訴訟では、全国の範となる解決モデルを提案して和解に導き、地球温暖化問題では、ニューヨーク、ツバルなどを訪れ、次の世代に残す地球を守るためのメッセージを、都民、国民はもとより、世界に向けて発信いたしました。これらを初め、より安心で安全な東京を実現するための取り組みを鋭意進めてまいります。
 一方、国政を見ると、政治家は選挙目当ての議論に終始し、官僚は、年金や肝炎の問題で、本来仕えるべき国民をないがしろにしている姿を露呈しました。国のかじ取りを任された者のこうした姿を眺めるにつけ、国家の強固な意思と行動力を示し得ない日本の厳しい現状に暗然とする思いであります。
 これは、政治家や官僚の自己保身もさることながら、さきの敗戦後、奇跡的な経済復興とは裏腹に、日本みずからのアイデンティティーを見失い、みずからの持てる力を認識できず自信を失ったことに原因があると思われてなりません。
 かつての東京もまた、みずからの力と存在の意義を明確に意識できずにおりました。そこで、知事就任以来、都政を預かる者として、東京のアイデンティティーが日本の首都という点にあることを強く意識して、幾つかの改革に取り組んでまいりました。三期目を開始するに当たり、職員に、単なる地方公務員ではない、首都公務員としての気概を持てと激励したのも、そうしたみずからがよって立つ足場を強く意識することを求めたわけであります。
 我が国は今、まさに内憂外患といえる状況にあります。しかし、日本は、長い歴史に培われた伝統文化とあわせて、高度で緻密な技術力を持つ国であり、必ずや自分の力と存在意義を再認識する日が来ると信じております。
 東京には、こうした日本の力が集中、集積しております。これを最大限に生かして先進的な取り組みを展開し、この国を覚せいさせるとともに、二十一世紀の都市モデルとして世界にも貢献していきたいと思います。
 今後の取り組みを着実なものとするため、年内を目途として、都の行財政運営を先導する「十年後の東京」の実現に向けた実行プログラムを策定し、今後の事業展開を内外に明らかにいたします。また、首都の誇りと日本への愛着とともに、地球の未来への視座を持って、都政運営に全力を尽くしてまいります。
 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例案二十一件、契約案五件など、合わせて三十六件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。
 以上をもちまして所信表明を終わります。ありがとうございました。(拍手)

○議長(比留間敏夫君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○六十七番(石森たかゆき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明五日から十日まで六日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(比留間敏夫君) お諮りをいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(比留間敏夫君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明五日から十日まで六日間、議案調査のため休会することに決定をいたしました。
 なお、次回の会議は、十二月十一日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後二時五分散会


文書質問趣意書及び答弁書

一九財主議第三四一号
平成十九年十一月二十六日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 比留間敏夫殿
   文書質問に対する答弁書の送付について
 平成十九年第三回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。
     記
   福士敬子議員
   そなえ邦彦議員
   河野百合恵議員
   たぞえ民夫議員
   斉藤あつし議員
   植木こうじ議員
   酒井大史議員

平成19年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 福士敬子

質問事項
一 東京都の管理する緑地公園を使用してのミサイル部隊の移動・展開訓練について
一 東京都の管理する緑地公園を使用してのミサイル部隊の移動・展開訓練について
 防衛省は、航空自衛隊入間基地に配備されている弾道ミサイル防衛のための地対空迎撃ミサイルであるパトリオット3(PAC3)を都内に展開することを検討し、その展開先として東京都が管理する代々木公園や晴海ふ頭公園など複数の緑地公園が考えられているという報道がなされている。(8月30日付「読売新聞」、8月31日付「朝日新聞」など)
 これらが実施されれば、アジア近隣諸国との間の緊張関係を高める可能性がある他、基地から展開予定地の公園までの間の騒音やミサイル誘導に伴う電磁波障害、公園利用者への利用制限の告知など都民の生活上にさまざまな点で重要な支障をきたすと考え、文章質問を行う。
1 ミサイル部隊の都内への展開訓練に対して、防衛省から東京都に連絡があったのか。その内容も含めて具体的に明らかにされたい。また防衛省から東京都に対して連絡がないのにマスコミ報道がされたのであれば、その経過を確認し、マスコミへの情報が先行することのないように防衛省に対して抗議を行うべきと考える。抗議を行ったのならその日時および内容を、抗議を行わないならその理由を示されたい。
2 防衛省が東京都の管理する公園にミサイル部隊の展開計画を持っているのか確認しているのか。その場合は情報を公開せよ。確認の必要性についてはどう考えているのか。その理由も含め明らかにせよ。
3 都市公園法第1条には「都市公園の健全な発達を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする」と定められており東京都の管理する公園でのミサイル部隊の移動や展開訓練は、この項目に明白に抵触する。また東京都立公園条例第16条の規定その他に抵触する。したがって規則上できないものと考えるが、東京都の見解を明らかにされたい。
4 その上でもし防衛省から東京都に対し公園使用の要請があったとしたら東京都はどのような態度を示すのか。明確にされたい。
5 東京都の管理する公園からミサイルが発射された場合、迎撃に成功したとしてもミサイルの破片などで近隣の住民に被害が及ぶことが予想される。その被害想定を東京都はしているのか。またミサイル誘導に伴う電磁波障害の危険性について都はどのように認識しているのか。ミサイル迎撃に失敗した際の迎撃ミサイルの落下による被害を受ける対象は東京都の住民だけでなく、埼玉県・千葉県・神奈川県の住民も該当すると思われるが、その対策について東京都の見解を明らかにされたい。
6 PAC3ミサイル発射の際には、人体に有害な煙が発生するとの指摘もなされている。東京都として煙の成分と人体への影響、及び周辺住民の保護について防衛省に確認すべきと考えるがどうか。
7 市ヶ谷駐屯地に展開する場合、迎撃時には隣接する高層マンション(建設中)の窓ガラスが風圧により破壊されるとの報道(5月9日付、朝日新聞)がなされている。都民の安全に責任を負うべき東京都として、この問題の事実確認及び対処策を防衛省に確認すべきと考えるがどうするつもりか。
8 ミサイル部隊の移動・展開訓練が東京都の管理する公園で実施される場合、一般使用者への利用制限の告知などは東京都が担当せざるを得ないと思うが、その際の具体的方法などは検討しているのか。明らかにされたい。
9 ミサイル部隊の都内への展開に対して、防衛省から東京都に連絡があった場合、公園管理者の東京都だけの問題ではなく、沿道の区市町村にも関わる問題であると考える。
ア その際の東京都と沿道の区市町村との連絡体制についてどのようになっているか。明らかにされたい。
イ またミサイル部隊の公園への展開については、公園管理者の東京都のみの判断で公園使用の諾否を決定するのではなく、公園所在地の当該自治体の長や住民区民との十分な協議を経たうえで決定されるべきと考える。都としてこうしたプロセスを踏む意思はあるのか。
10 入間基地から東京都の管理する公園に行くまでの順路は事前に把握できるのか。その情報公開をすべきだと思うがどうか。それらの確認はどうなっているのか。
11 ミサイル関連装備は大型トレーラーなど数多くの車両に載せて移動させるため、交通規制がなされることが予想される。東京都として事前に交通規制の計画を把握し、都民に情報公開すべきと考えるがどうなっているか。
12 公園及び駐屯地にミサイル関連装備が展開された場合、装備の防衛を名目として過剰な警備態勢が敷かれることが懸念される。東京都として事前に警備計画を把握し、人権侵害等のないよう防衛省・警備当局に要請すべきと考える。都の考えを明らかにされたい。

平成19年第三回都議会定例会
福士敬子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 東京都の管理する緑地公園を使用してのミサイル部隊の移動・展開訓練について
1 防衛省がPAC3の都管理の公園等への展開を検討しているとの報道があった。この展開訓練について、防衛省から連絡があったのか。また、マスコミへの情報が先行しているのなら抗議すべきだが、行ったかどうか伺う。

回答
 ミサイル部隊の都内への移動・展開訓練については、防衛省から連絡を受けていません。マスコミへの情報提供については、防衛省が適切に判断すべきものと考えています。

質問事項
一の2 防衛省が都管理の公園にミサイル部隊の展開計画を持っているか確認したのか。その場合は情報を公開すべきである。また、確認の必要性はどう考えているのか。その理由も含め明らかにすべきだが、見解を伺う。

回答
 防衛省から連絡があれば、具体的な内容を見た上で、都として適切に判断をします。

質問事項
一の3 都管理の公園でのミサイル部隊の移動や展開訓練は、都市公園法第1条や都立公園条例第16条の規定に抵触する。したがって規則上できないものと考えるが、都の見解を伺う。

回答
 防衛省から連絡がなく、具体的内容が不明のため、現時点では公園使用の可否についての判断はできません。

質問事項
一の4 その上で、もし、防衛省から都に対し公園の使用の要請があったとしたら、都はどのような態度を示すのか伺う。

回答
 防衛省から公園の使用の要請があった場合は、その時点で具体的な内容を見た上で、適切に判断します。

質問事項
一の5 都管理の公園からミサイルが発射された場合、迎撃の破片などでの被害想定、ミサイル誘導に伴う電磁波障害の危険性への認識及び迎撃失敗の際の迎撃ミサイル落下による被害への対策について見解を伺う。

回答
 迎撃の必要性と影響等については、政府が判断すべきものと考えています。

質問事項
一の6 PAC3発射の際には、人体に有害な煙が発生するとの指摘もある。都として煙の成分と人体への影響、及び周辺住民の保護について防衛省に確認すべきだが見解を伺う。

回答
 迎撃の必要性と影響等については、政府が判断すべきものと考えています。

質問事項
一の7 市ヶ谷駐屯地に展開する場合、迎撃時には隣接マンションの窓ガラスが風圧で破壊されるとの報道がある。都として、この問題の事実確認及び対処策を防衛省に確認すべきだが見解を伺う。

回答
 迎撃の必要性と影響等については、政府が判断すべきものと考えています。

質問事項
一の8 ミサイル部隊の移動・展開訓練が都管理の公園で実施される場合、一般使用者への利用制限の告知などは都が担当せざるを得ないと思うが、その際の具体的方法などは検討しているのか伺う。

回答
 防衛省から連絡を受けていないため、その際の対応については検討していません。

質問事項
一の9 ミサイル部隊の都内への展開について
ア 防衛省から部隊の都内展開の連絡があった場合、公園管理者の都と沿道区市町村との連絡体制はどうなっているのか伺う。

回答
 沿道区市町村への連絡の必要性については、防衛省が判断すべきものと考えています。

質問事項
一の9のイ また、公園使用の諾否の決定に地元自治体等との協議というプロセスを踏む意志はあるのか伺う。

回答
 防衛省から公園の使用の要請があった場合は、公園管理者として適切に判断します。

質問事項
一の10 入間基地から都管理の公園に行くまでの順路は事前に把握できるのか。その情報公開をすべきだがどうか。それらの確認はどうなっているのか伺う。

回答
 防衛省から連絡があれば、法令等に基づき、適切に対処していきます。

質問事項
一の11 ミサイル関連装備は多くの車両に載せて移動させるため、交通規制が予想される。都として事前に交通規制計画を把握し、都民に情報公開すべきだが、見解を伺う。

回答
 ミサイル部隊の移動・展開訓練に係る交通規制については不明です。

質問事項
一の12 公園等にミサイル関連装備が展開された場合、装備防衛を名目にした過剰な警備が懸念される。事前に警備計画を把握し、人権侵害等のないよう防衛省等だが、都の考えを伺う。

回答
 防衛省から連絡があれば、具体的な内容を見た上で、都として適切に判断をします。

平成19年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 そなえ邦彦

質問事項
一 都の防災対策について

一 都の防災対策について
 3月の能登半島地震では、多大な犠牲者と被害が生じました。
 都は、昨年5月に公表された、新たな首都直下型地震の被害想定や、最近の災害から得た教訓を踏まえ「地域防災計画」の抜本的な見直しを行いました。
 そこで、改めて、都の防災対策について、何点かお伺いいたします。
1 都の「指定地方公共機関」に指定されている機関には、どの様なものがあるか、又、その目的は何なのか。
2 その他都と関係機関と、防災に関して「協定」を締結しているのか。
3 災害時の帰宅困難者への支援策はどうなっているのか。
4 木造密集地域への耐震診断、耐震補強への補助状況はどうなっているのか。
5 家具類の転倒防止のための家具固定への補助状況はどうなっているのか。
6 住宅用火災警報器の設置状況とそれへの補助状況はどうなっているのか。
7 学校での防災教育の実態はどうなっているのか。
8 在日米軍は、合同でどのような訓練を行い、今後、災害時にどのような要請をしていくのか。又、その根拠は何か。

平成19年第三回都議会定例会
そなえ邦彦議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 都の防災対策について
1 都の指定地方公共機関に指定されている機関にはどの様なものがあり、また、その目的は何か伺う。

回答
 指定地方公共機関は、都の地域防災計画の作成及び実施が円滑に行われるよう、協力を得ることを目的として、災害対策基本法に基づき、知事が指定するものであり、都は、鉄道事業者や放送事業者等、これまで40機関を指定しています。

質問事項
一の2 その他、都と関係機関とで、防災に関して協定を締結しているのか伺う。

回答
 都は、東京都医薬品卸業協会との「災害時における医薬品等の調達業務に関する協定」をはじめ、事業者団体や民間事業者と58の協定を締結しています。

質問事項
一の3 災害時の帰宅困難者への支援策について伺う。

回答
 都では、災害時における駅周辺の混乱を防止するとともに、鉄道運行状況や帰宅道路に関する情報の提供、代替輸送手段の確保、徒歩帰宅者に対する沿道支援等、帰宅困難者への支援を行うこととしています。
 また、事業者に対しては、東京都震災対策条例に基づき作成する事業所防災計画の中に、帰宅困難者への情報の提供や保護支援などの対策を盛り込むよう指導しています。

質問事項
一の4 木造密集地域への耐震診断、耐震補強への補助状況について伺う。

回答
 都は、木造住宅密集地域のうち、防災都市づくり推進計画に定められた整備地域を対象に、区と連携して、木造住宅の耐震診断及び耐震改修への助成を実施しています。
 平成18年度の実績は、耐震診断助成については551件、耐震改修助成については、22件となっています。
 なお、平成19年度からは、整備地域を抱えるすべての区で助成が実施されており、平成19年度予算では、耐震診断助成1500件、耐震改修助成500件となっています。

質問事項
 家具類の転倒防止のための家具固定への補助状況について伺う。

回答
 都では、高齢者の安全・安心確保策の一環として、従前から区市町村による家具等の転倒防止器具の設置に関する取組を支援しており、平成18年度には申請のあった32区市町に対して助成しています。

質問事項
一の6 住宅用火災警報器の設置状況とそれへの補助状況について伺う。

回答
 住宅用火災警報器の設置状況については、平成18年に東京消防庁が実施した「消防に関する世論調査」において、19.3パーセントの世帯が、火災に対する備えとして住宅用火災警報器を設置していると回答しています。
 なお、現在既に設置義務化されている、新築及び改築される住宅の平成18年度における住宅用火災警報器等の設置状況は、竣工した住戸7万2654戸のうち7万2572戸に設置され、99.9パーセントの設置率です。
 また、住宅用火災警報器の設置への補助については、区市町村に対し、給付や助成事業の実施を働きかけるとともに、都民に対し、これらの制度の有効な活用について呼びかけています。

質問事項
一の7 学校での防災教育の実態について伺う。

回答
 学校における防災教育の目標は、児童・生徒が様々な災害発生時における危険について理解し、正しい備えと適切な行動がとれるようにすることにあります。
 そのため、各学校では、すべての学年で災害時の避難訓練を定期的に行うとともに、自然災害への備えや応急手当などについての授業を行い、実践的な資質や能力を養っています。
 都教育委員会は、こうした学校の取組の充実を図るため、昭和48年度から、各校種別に、副読本「地震と安全」を作成して、都内全児童・生徒に配布しています。

質問事項
一の8 在日米軍は、合同でどのような訓練を行い、今後、災害時にどのような要請をしていくのか。又、その根拠は何か。

回答
 平成19年度の総合防災訓練では、在日米軍はヘリコプターを使った物資輸送及び医療搬送訓練、横田基地消防隊と東京消防庁の連携による消火訓練、艦船による帰宅困難者の輸送訓練に参加しました。
 災害が発生した場合には、都は、東京都地域防災計画に基づき、在日米軍に対して必要な支援を要請します。

平成19年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 河野百合恵

質問事項
一 浸水被害防止対策について

一 浸水被害防止対策について
 地球温暖化が原因とされる集中豪雨が毎年のように日本各地に水害をもたらしています。今年9月も台風11号と秋雨前線で関東地方や東北地方に豪雨が降り、とりわけ東北地方では、秋田県の北秋田市や能代市には災害救助法が適用になりました。
 東京では、2004年、2005年に連続して豪雨被害が発生しており、今年も多摩川の増水など心配な事態が起きました。
 今年7月、東京都は都市整備局、建設局、下水道局が共同で「東京都豪雨対策基本方針の中間まとめ」を発表しました。中間まとめは、「近年、都内の一部地域において局所的集中豪雨が頻発している」とし、都の豪雨対策は「対策促進エリア」を設定し、重点的に取り組みを進めるとしています。都が選定した対策促進エリアは、区部西部に重点が置かれ、東部低地帯の江戸川区や葛飾区などは、対象からはずされています。
 都は、近年、東京において時間50ミリを越える豪雨が増加しているとしながらも、対策エリアの選定について、かつて被害が多かった東部低地帯から浸水被害の形態が変化し、区部西部に大きな被害が発生するようになっていると説明づけています。
 確かに、区部西部はヒートアイランド現象の影響などで「環八雲」が発生し、大量降雨の頻度が増していますから、集中豪雨対策を進めることは当然です。
 しかし、同時に東部低地帯の浸水対策が、都民の生命と財産を守る自治体の使命に照らして、都政では避けられない喫緊の課題であることにかわりはありません。
 私が住んでいる江戸川区では、2004年10月、台風22号が襲来した際、区内全域で床下浸水が起こり、江戸川区土木部に被害通報があったものだけで126ケ所を数えました。区部西部だけでなく、東部地域でも浸水被害は発生しているのです。
 浸水被害があった地域では、下水道の水が逆流してきたり、お店の商品が水に浸かってしまったり、自動販売機にも水が入り故障するなど数えきれない被害がありました。区から支給される土嚢で、懸命に水の浸入を防ぐ住民の苦労は涙ぐましいものでした。地域住民は、今も大雨の予報があるたびに、不安で眠れないと話しています。
 浸水被害は、行政の努力で被害を最小限に食い止めることができます。そこで、伺います。
1 江戸川区中央1.2丁目の境界に下水道が敷設された時、東京都は雨水を取り入れる貯留管を設置しました。貯留管が設けられた周辺地域では浸水被害が起こりませんでした。当時、都下水道局は、南側にもう1ケ所、貯留管を設置する計画を持っていました。しかし、今日にいたっても住民に約束した貯留管は設置されていません。そのために、2004年の時は、貯留管未設置の地域では、軒並み床下浸水の被害が発生し、近くにある江戸川区役所の土木庁舎にも水が入る事態になりました。都下水道局は、「江戸川区は比較的遅い時期に下水道ができた地域だから、今すぐ対応できない、都心の古くなっている下水管を改良することが急がれる」との態度で、区民の水害防止を求める要望に応えた対応をする意思を見せていません。
 浸水被害から住民を救ううえで、効果が明らかな下水道貯留管を一日も早く敷設すべきではありませんか。お答えください。
2 都心部は、都市再生路線のもとで巨大開発が展開され、都民にとっては気の遠くなるような事業費が投入されています。
 比べて、江戸川区民が望んでいる下水道貯留管の工事費は、都財政の現状なら十分生み出せる金額ではないでしょうか。下水道貯留管敷設の工事費はいったい幾らかかるのでしょうか。金額をお示しください。
3 毎年、発生する集中豪雨による被害を防ぐには、河川整備や、遊水地、調整池の増設、透水性舗装の促進や雨水浸透マスへの補助の充実などさまざまな対策を講じることが重要です。
 これらの取り組みを、都は区部西部地域を重点に進める方針ですが、集中豪雨被害が起きる可能性がある地域について事業を進めていただくよう要望します。お考えをお聞かせください。
4 江戸川区の隣の墨田区では、早い時期から雨水の利用に力を注いできています。特に区民との協力で、各戸に雨水貯留タンクを置き、その費用を区が補助する努力も進めてきました。「町のなかに小さなダムを無数につくる」という考えにもとづいて取り組まれている雨水貯留タンクは、浸水被害を減らし、区民の環境問題への意識も高めています。他の自治体にも助成制度は広がっています。
 都が、墨田区のような努力をしている自治体の取り組みを広く都民や企業に知らせていくとともに、雨水タンクへの補助制度を創設するなどの支援策を講じることを求めるものですが、いかがでしょうか。
5 国土交通省は、1987年から首都圏・近畿圏の水防対策として利根川水系、荒川水系など5河川6水系で高規格堤防、いわゆるスーパー堤防の建設計画を進めようとしています。江戸川区もこれを受けて、江戸川流域の北小岩から篠崎地域や、荒川流域の平井・小松川地域にスーパー堤防を建設する計画を明らかにしています。北小岩地域のスーパー堤防計画は、江戸川右岸を約2.2キロメートルにわたって200から300メートルの幅で盛土して整備するというもので、対象面積は約48ヘクタールに及びます。この地域には約1800棟の建築物があり、6000人近い人が居住しています。居住者は一度立ち退きを求められ、盛土したスーパー堤防の上の土地に区画整理事業が施行されて、新しい家を建築することになるのです。住民にとっては多大な犠牲が伴う公共事業となります。
 北小岩や東小岩、篠崎地域などに、江戸川区が国土交通省とともに進めようとしているスーパー堤防事業は、住民の負担・犠牲があまりにも大きすぎること、水防対策として実際に必要で効果ある事業になるか、など疑問が数多く出され、批判、反対の声が高まっています。
 北小岩・東小岩地域48ヘクタールのスーパー堤防建設と区画整理事業にかかる予算額は1700億と言われています。事業を行なうとすれば、東京都も直轄事業負担金などの支出が求められることになりますが、都の負担は幾らになるのでしょうか。内訳、金額などをお示しください。
6 昨年7月に開催された利根川治水大会で、熊谷市長が「スーパー堤防は巨額の事業費がかかり、長く時間がかかる。また地権者の合意を得るのがむずかしい」と見解を示されて、熊谷市ではスーパー堤防建設とは違う水防対策に転じることを検討している、と発言されていました。治水対策を進めてきた自治体の長が疑問を呈し、また、計画が持ち上がっている江戸川区などでは、住民から強い異論が出ているスーパー堤防計画について、再検討すべきと考えます。どうお考えですか。
7 街づくり、災害対策は住民参加で納得・合意を大前提にすすめられなくてはなりません。都の財政負担も発生するスーパー堤防計画については、国や地元自治体、住民と十分に協議をし、住民の声を反映させた治水対策になるよう都としての役割を発揮していただくことを望みます。御所見をお示しください。

平成19年第三回都議会定例会
河野百合恵議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 浸水被害防止対策について
1 江戸川区では、下水道貯留管の設置地域では浸水被害が無いが、当該地区の南側の未設置地域では被害が発生している。浸水被害から住民を救う上で、効果が明らかな貯留管を早急に敷設すべきだが、所見を伺う。

回答
 当該地区では、昭和60年代から平成のはじめにかけ、道路冠水や床下浸水が発生していました。
 都は、浸水被害を軽減するために貯留管の整備を計画し、その一部を平成11年度に完成させました。これにより、当該地区では浸水被害が軽減され、着実に効果が上がっています。
 引き続き整備する予定であった南側の貯留管については、平成16年度の浸水被害を踏まえ、より効果的な浸水対策とするため、地域特性などを考慮した再検討を行い、計画を見直しました。
 計画の見直しに際し区と協議した結果、区が計画している道路事業の施行に合わせて、拡幅される道路の下に整備することとしました。

質問事項
一の2 都心部は、巨大開発に多額の事業費が投入されており、江戸川区民の望みの下水道貯留管の工事費は都財政の現状なら十分生み出せる金額と考える。いったい幾らか。金額を示して欲しい。

回答
 整備を行う貯留管については、今後、区が計画している道路事業の施行に合わせ、具体的な内容を検討していくこととしており、工事費についても、これに合わせて算出します。

質問事項
一の3 集中豪雨被害の防止には、河川整備、遊水地、調節池の増設などの対策が重要だ。これらを区部西部地域だけでなく、集中豪雨被害の可能性のある地域について進めるべきだが、見解を伺う。

回答
 平成19年8月に策定した東京都豪雨対策基本方針では、効果的・効率的な豪雨対策を実現するため、都内全域を対象に、過去の豪雨による浸水被害や降雨特性などを踏まえて、流域単位、地区単位、施設単位で対策促進エリアを選定しています。
 この対策促進エリアでは、神田川流域などでの河川整備、隅田川幹線地区などでの下水道整備を進めるとともに、これらの整備と合わせて雨水流出抑制などの流域対策を重点的に実施することとしています。 

質問事項
一の4 墨田区では、各戸に置く雨水貯留タンクへ補助をしている。都がこのような取組を広く都民などに知らせていくとともに、雨水タンクへの補助などの支援策を講ずべきだが、所見を伺う。

回答
 各戸に置く雨水貯留タンクなど、小規模施設への補助については、墨田区のほか台東区、足立区などでも実施しています。
 こうした地域の実情に応じた取組は、基本的に、その普及広報を含め区市町村が行うべきものと考えます。
 都は、広域的自治体として、延べ床面積1万平方メートル以上の大規模施設を対象として、「水の有効利用促進要綱」に基づき、雨水貯留施設の設置を促進しています。

質問事項
一の5 スーパー堤防事業は住民の負担・犠牲が大きいなど、批判、反対の声が高いが、北小岩・東小岩地域のスーパー堤防建設事業等にかかる都の直轄事業負担金の負担額はいくらになるのか。

回答
 江戸川のスーパー堤防は、国が事業主体となり全区間整備することとされています。
 北小岩地区におけるスーパー堤防の整備は、現在、事業化に向けた準備段階であり、事業費など事業内容については承知していません。
 なお、国による都関連のスーパー堤防事業が実施された場合、都は、河川法に基づく直轄事業負担金として、河川事業費の3分の1を負担することになります。

質問事項
一の6 昨年の利根川治水大会で、熊谷市長がスーパー堤防事業について疑問を呈した。また江戸川区でも住民から強い異論が出ており、スーパー堤防計画について再検討すべきだが、所見を伺う。

回答
 江戸川では、国が昭和62年度にスーパー堤防事業に着手しています。
 市街化が進んでいる北小岩地区において、まちづくりと一体となって、洪水や地震に強いスーパー堤防事業を進めることは、江戸川の治水安全度を高める上で、意義のあることと考えます。

質問事項
一の7 街づくり、災害対策は住民参加で納得・合意を前提とすべきである。都負担もあるスーパー堤防計画について、住民の声を反映させた治水対策になるよう都の役割の発揮を望むが、所見を伺う。

回答
 スーパー堤防事業は、区画整理事業など、まちづくりと一体的に進める事業であり、住民の理解と協力を得ることが必要です。
 都は、事業主体である国や江戸川区と連携し、都民を水害から守るスーパー堤防の整備促進に協力していきます。

平成19年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 たぞえ民夫

質問事項
一 遊戯施設の安全管理の徹底について
一 遊戯施設の安全管理の徹底について
 地方でも都市でも、遊園地での遊戯施設事故が重大な社会問題となっています。大阪府吹田市の遊園地「エキスポランド」で今年5月、乗客1人が死亡、19人が負傷するコースター脱線事故が発生しました。この事故は、コースターの車軸が金属疲労で破断したことが原因でした。このような痛ましい事故が全国で続発し、都民も胸を痛めています。
 遊戯施設の検査標準(日本工業規格)は、全車軸を年1回調べるよう定め、メーカーも異常がなくても車軸を8年間ごとに交換するよう推奨しているにもかかわらず、車軸を運行開始から15年間1度も交換していなかったほか、探傷試験を先送りさえしていました。
 事態を重く見た国土交通省は、特定行政庁や遊戯施設の所有者、管理者にたいして、緊急点検の実施を通知しましたが、都内では18ケ所の遊園地のうち、台東区内の「浅草花やしき」と、日野市内の「多摩テック」で、不適合とする損傷箇所が見つかり、都民から驚きの声が上がっています。
1 緊急点検の結果、遊園地からどのような報告が示されたのですか。
 「多摩テック」には年間40万人が訪れ、都立多摩動物園にも隣接していることから、多くの都民が利用しています。これらの施設が安全対策を怠り、子どもたちや利用者の安全で楽しい遊び場という夢と期待を失うようなことは絶対にあってはなりません。
2 遊戯施設が集中する東京で、未然に事故を防ぐことは緊急の課題と考えますが、見解を伺います。
 都内にある遊戯施設は、地元の特定行政庁と東京都が直接指導する施設に分類されています。例えば、文京区内の後楽園遊園地や、日野市内の多摩テックなどは特定行政庁である地元の自治体が監督していますが、あきる野市内のサマーランドは東京都が特定行政庁として監督しています。
 そのため、都が直接監督していない遊戯施設は、実質的に地元の特定行政庁が定期点検などを対応するため、都は実態を掌握することが困難です。
3 遊戯施設の近代化や構造の複雑化に対応するため、東京都が都内の遊戯施設の全体を把握する必要があるのではないですか。
 この問題を解決するには、おおもとである遊戯施設の定期検査を定めている建築基準法のあり方も問題です。
 それは、建築基準法第12条3項で、「定期に検査をさせ」、特定行政庁に報告することを規定している定期点検と、日本工業規格(JIS)の検査標準で示している、「車輪軸は一年間に1回以上」の探傷試験をおこなうこととの関連が明確ではありません。
 そのため、東京都は今年5月、建築基準法施行細則を改正し、施設の名称や知事が定める定期検査の成績表・検査表を補充し、車輪軸については探傷試験を追加しました。地方自治体がこのような対応をせざるをえないこと自身、建築基準法が社会問題になっている事態に十分に対応できないことを物語っているのではないでしょうか。こうしたことが、安全対策を遅らせている原因になっています。
4 建築基準法令の抜本的見直しを国に求めるべきではないですか。
 4月の六本木ヒルズでのエレベーター火災、5月のエキスポランドでの死傷事故では、原因とみられる不具合が検査資格者による定期点検で見過ごされていた可能性が指摘されています。現在、遊戯施設やエレベーターの検査資格者は全国で約3万人いますが、検査資格者は、財団法人『日本建築設備・昇降機センター』が実施する4日間の講習修了者に資格が与えられ、検査業務が行なわれています。しかし、修理や交換が必要と判断するための判定基準が法律上位置づけがあいまいなもとで、一方、遊戯施設の近代化にともなう機械の高度化、複雑化が進行しています。定期点検をおこなう検査資格者の技術の向上は急がれています。
5 国に、3年から5年を周期とした定期的な更新講習の義務付けを求めるよう提案しますが、どうですか。
 事故が多発している背景に、遊戯施設の所有者、管理者の安全管理をおざなりにしてきた国の姿勢を転換して、国民の命を守り、安心して遊戯で楽しめるための手立てが急がれています。遊戯施設の事故は、もはや一刻も放置できません。こうしたときこそ、都民のいのちを守る先頭に東京都が立つべきです。
6 都は、事業者が都内で遊園地を開設する場合は、規模と合わせて、すべての遊戯の種類と設置数など、事前に把握する必要があると思いますが、見解を伺います。
 建築基準法第88条では、観光のための乗用エレベーターやエスカレーター、高架構造のウォーターシュート、コースター、回転運動をおこなうメリーゴーランドや観覧車、滑走面に水を流し、水着やゴム製などの補助具を使用して滑走するウォータースライドについて定期点検を規定しています。
 東京都にあってはこれらの施設には、半年に1回の定期点検を義務付けていますが、基準法の対象になっていない、例えば軌道上をゆっくり走る豆汽車やゴーカートなどは、定期点検と報告義務は求められていません。
7 建築基準法88条の対象になっていない遊戯施設についても、都として点検整備の実施記録の報告を求め、状況を把握する必要があると考えますが、見解を伺います。

平成19年第三回都議会定例会
たぞえ民夫議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 遊戯施設の安全管理の徹底について
1 遊園地での遊戯施設事故が重大な社会問題となるなか、国交省は、施設の管理者等に緊急点検の実施を通知し、都内でも不適合の損傷箇所が見つかった。緊急点検の結果、遊園地からの報告内容について伺う。

回答
 大阪府で5月に発生したジェット・コースター事故を契機にした緊急点検では、都内は、116の遊戯施設が対象となっています。
 このうち、浅草花やしきのコースター、多摩テックのでんでん虫とガリオンで、車軸や車輪に関する不具合が、江戸川区立のプールガーデンのウォータースライドで、滑走面に関する不具合が発見され、いずれの施設も是正済みと報告を受けています。

質問事項
一の2 遊戯施設が集中する東京で、未然に事故を防ぐことは緊急の課題と考えるが、見解を伺う。

回答
 年齢を問わず不特定多数の者の利用があり、近年、多種多様になっている遊戯施設の安全性を確保することは、重要な課題であると認識しています。
 このため、都では、特定行政庁として、所有者等に対して、建築基準法に基づく定期検査や安全運行に関する指導を実施するとともに、区市とも連携し、都内の遊戯施設の事故防止に努めています。

質問事項
一の3 遊戯施設の近代化や構造の複雑化に対応するため、都が、直接監督していない遊戯施設も含め、都内全体を把握すべきではないか。

回答
 建築基準法に基づく遊戯施設は、建築確認や完了検査、定期検査等について特定行政庁が所管することになっており、特定行政庁ごとに、遊戯施設の実態を把握することが基本です。
 都としては、これまでも、広域的な観点から区市との連絡会等を通じて、適宜情報を把握しています。

質問事項
一の4 遊戯施設の定期検査を定めている建築基準法が社会問題になっている事態に十分に対応できていない。建築基準法令の抜本的見直しを国に求めるべきではないか。

回答
 国においては、大阪府で5月に発生したジェット・コ-スタ-の死亡事故を受け、遊戯施設に関わる定期検査の方法、内容のあり方等について、社会資本整備審議会に諮り、検討していると聞いています。

質問事項
一の5 遊戯施設やエレベーターの定期点検を行う検査資格者の技術の向上は急がれている。国に、3年から5年を周期とした定期的な更新講習の義務付けを求めるよう提案するがどうか。

回答
 社会資本整備審議会において、法令改正や新技術に対応した検査方法、判定基準等を内容とした定期的な講習と修了考査を義務付けることを、既に検討していると聞いています。

質問事項
一の6 都は、事業者が都内で遊園地を開設する場合、規模と合わせて、すべての遊戯の種類と設置数などを事前に把握すべきだが、見解を伺う。

回答
 遊戯施設は、ブランコや滑り台などの簡易なものから、高速回転運行するコースターなど複雑で大規模なものまで様々です。
 このため、建築物の構造等の最低の基準を定め、国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的とする建築基準法は、第88条において、故障等があった場合に人命に危害が及ぶ可能性が高い一定の遊戯施設を指定し、構造強度等に関する基準を定め、設置時においては建築確認と検査を行うとともに、完成後には定期検査報告制度を設け、その安全を確保しています。
 それ以外の簡易な遊戯施設の安全確保については、所有者等の責任において行われることが基本であると考えます。

質問事項
一の7 建築基準法88条の対象になっていない遊戯施設についても、都として点検整備の実施記録の報告を求め、状況を把握すべきだが、見解を伺う。

回答
 建築基準法第88条に指定されていない遊戯施設については、利用者の安全を確保する上で、日常の維持管理が重要であるという観点から、所有者等の責任において、点検整備と記録を行うことが基本であると考えます。

平成19年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 斉藤あつし

質問事項
一 看護専門職の不足について
二 児童虐待の現状について
一 看護専門職の不足について
 以前に都立村山養護学校で看護師を募集しておりましたが、応募が無く、同校校長が小平市教育委員会の校長会にまで足を運び、勤務可能な知人がいないか小中学校の学校長に声かけていただけるようお願いに来ていました。東京都の施設という人事・福利面でも安定した勤務において人材確保が難しいのは深刻な状況と言えるのではないでしょうか。そこで質問します。
1 過去に上記のような困窮事例がありましたが、その原因・背景はどのようなものと考えているのか。また、その後この件はどのような手段により解決したのか。
 福祉業界の介護職員の人手不足は高齢者分野を含めて深刻であり、特に東京都は「福祉分野の有効求人倍率」が全国平均1.17(平成18年11月)に対し4.72と4倍になっています。看護職についても業務内容や勤務環境に差はあると思うが、順調な話ばかり聞こえてくるわけではありません。そこで質問します。
2 医療機関をはじめとする関係施設での看護職の確保に関しての需給状況について教えていただきたい。また、現在、東京都としてどのような看護職の確保対策を行っているのか教えていただきたい。
二 児童虐待の現状について
 児童虐待の報道は以前よりは若干沈静化したが、あくまで報道レベルではないかと思われる。各区市町村では家庭支援センターの設置などで地域ネットワークは以前よりも充実したと思われる。しかし、実態に職員数、専門職員数が追いついているのか。「家庭再統合」など虐待家庭にどこまで推進できるか未知数の課題もかかえている。児童虐待対策の現状について伺う。
1 児童虐待の実態について教えていただきたい。
2 市の家庭支援センターが以前よりも増えているが連携は順調か。
3 児童相談所の職員は充足しているのか。
4 母子生活支援施設は虐待の加害者からの避難目的もあるが、自治体単位の「費用払いシステム」があるために自治体外への遠方避難ができないという問題の指摘を受けることがある。実情とあわない仕組みになってはいないのか。所見を伺う。

平成19年第三回都議会定例会
斉藤あつし議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 看護師等の専門職の不足について
1 以前に都立村山養護学校で看護師を募集したが、応募が無く、校長が小平市の教育委員会の校長会にまで足を運んで、勤務可能な知人がいないか小中学校の校長に声かけの依頼に来ていた。過去に上記のような困窮事例があったが、その原因・背景はどのようなものと考えているのか。また、その後この件はどのような手段により解決したのか。

回答
 都教育委員会は、平成18年度より、都立肢体不自由養護学校において日常的に医療的ケアを必要とする児童・生徒のニーズに的確に対応するため、従前より配置されている常勤看護師に加え、新たに非常勤看護師を大幅に任用することとしました。
 これを受け、初年度である平成18年度に、すべての都立肢体不自由養護学校が一斉に非常勤看護師の募集を行い、特に、東京小児療育病院に隣接する都立村山養護学校では、都立肢体不自由養護学校全体の任用計画人員の約3分の1に当たる23名の非常勤看護師を平成18年度当初から任用することとしましたが、同年6月現在で、11名を確保するに留まりました。
 このため、村山養護学校では、同年8月以降、小平市など地域の小・中学校への協力依頼、タウン誌への広告等による募集活動等を精力的に行い、都教育委員会においても広報東京都などにより募集を行いました。
 その結果、平成19年度当初には、ほぼ当該年度の計画人員である28名の看護師を確保することができ、その後も現在に至るまで、この水準で推移しています。

質問事項
一の2 医療機関をはじめとする関係施設での看護職の需給状況及び都の看護職の確保対策について伺う。

回答
 平成19年11月に策定した「東京都看護職員需給見通し」では、平成19年の看護職員の需要数は11万0688人、供給数は10万8177人と見込まれており、充足率は97.7パーセントとなっています。
 都では、看護職員の確保を図るため、都立看護専門学校の運営や民間看護師養成所等への運営支援などの養成対策、院内保育の運営や勤務環境改善のための支援などの定着対策、東京都ナースプラザにおける再就業研修や就業あっせんなどの再就業対策などに取り組んできました。
 また平成19年度からは、これらに加え、新人看護職員の早期離職の防止を図るため、専任研修指導者の配置に対する支援等を行うとともに、離職した看護師が身近な地域の病院で再就業研修や就業相談を行う取組を新たに実施しています。
 今後とも、養成対策、定着対策及び再就業対策など、総合的な看護職員確保対策に取り組んでいきます。

質問事項
二 児童虐待の現状について
1 児童虐待の実態について伺う。

回答
 児童相談所における相談対応状況でみると、児童虐待の相談対応件数は、平成14年度は2353件でしたが、平成18年度には3265件となっており、この5年間で約1.4倍に増加しています。
 平成18年度の相談対応状況のうち、被虐待児の年齢別の状況では、小学生以下が62.6パーセントであり、主たる虐待者別の状況では、実母が52.5パーセントで最も多く、次いで実父の16.8パーセントとなっています。

質問事項
二の2 市の子ども家庭支援センターが以前よりも増えているが連携は順調か伺う。

回答
 都は、これまで、区市町村に対し、地域で身近な相談窓口としての子ども家庭支援センターの設置を働きかけてきました。
 その結果、平成19年10月1日現在、子ども家庭支援センターは57の区市町村に設置され、そのうち43の区市町が児童虐待の対応力を強化した先駆型子ども家庭支援センターとなっています。
 平成17年4月の改正児童福祉法の施行により、区市町村は児童相談の第一義的窓口とされ、児童相談所は、専門的知識や技術等が必要な困難な事例への対応や、児童福祉施設への入所等の措置が必要な場合の対応を行うこととされました。
 児童相談所は、子ども家庭支援センターに対し、地域の関係機関が連携して児童虐待防止等の取組を行う「要保護児童対策地域協議会」の設置を促すとともに、その運営を支援しています。
 また、子ども家庭支援センター職員と家庭訪問を協働で実施するほか、個別の相談事例への助言を行っています。
 さらに、児童相談所において子ども家庭支援センター職員の受入研修を行い、実践的な相談対応力の向上を図るなど、連携強化に向けた取組を行っています。

質問事項
二の3 児童相談所の職員は充足しているのか伺う。

回答
 都では、増大する虐待相談に的確に対応するため、児童相談所において相談援助業務を行う児童福祉司を、平成13年度から19年度までの間に53名増員し159名としたほか、子どもの心理的ケアを行う児童心理司を、平成19年度に13名増員し54名としました。
 また、児童の心理的ケアの充実を図るため、児童相談センターに常勤の精神科医と心理職を配置するとともに、一時保護所には非常勤の心理職を各1名配置しています。

質問事項
二の4 母子生活支援施設には避難目的もあるが、自治体単位の費用払いシステムのために自治体外への遠方避難ができないとの指摘がある。実情とあわない仕組みになっていないのか、所見を伺う。

回答
 母子生活支援施設の広域利用については、福祉事務所を所管する区市が入所について必要な連絡及び調整を図ることになっています。
 現在、23区では広域利用が行われていないところがありますが、これは、区立の施設が多く、条例等により自区民の利用としていることや、区独自の異なった運営費加算があるなどの課題によるものと考えます。
 都としては、広域行政の観点から、区市の広域利用推進への取組を支援していきます。

平成19年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 植木こうじ

質問事項
一 貧困と格差の広がりに新たな住宅対策を
一 貧困と格差の広がりに新たな住宅対策を
 今日、構造改革路線のもとで広がる貧困と格差が大きな社会問題になり、それは住宅政策の分野でも新たな対応が迫られる事態になるなど、もはや、避けてとおることのできない状況になってきています。
 日本の貧困と格差の広がりについて、国連の「2007アジア太平洋経済社会報告」では「経済回復にもかかわらず」「国民所得における雇用者所得の比率はこの5年間減り続けている」として特に、25歳から35歳の若年層について賃金所得のジニ係数が94年の0.22から05年の0.25に上昇したとして、低賃金の非正規雇用者の増加によるものであると指摘しています。
 厚生労働省の調査で明らかになったネットカフェ難民問題はこの貧困と格差がもっとも端的に現れたものとして注目をあびました。
 調査では、住宅喪失者が全国で5400人におよび、うち東京23区内には約2000人といわれている。そのうち、非正規労働者が1400人もおよび、正規社員すら住宅喪失者になっていること、この背景には不安定就労者や低賃金の問題があることを指摘さえしています。
 ネットカフェ難民に加えて、24時間営業の漫画カフェやマクドナルドなども含めると住宅喪失者はさらに増えることは間違いなく、働いている人々でさえ住宅を喪失するという極めて重大な問題になっているのです。
 高齢者もわずかばかりの年金で生活している方々に、老年者控除の廃止や課税水準の引き下げ、介護保険料の引き上げが相次いでいる上に、来年からの後期高齢者医療制度など負担の増大に悲鳴の声が上がるなど生活実態が大きく変化しています。こうした中で、現役時には払えた住宅家賃が払えなくなるなど高齢者の公営住宅への要求も強くなっています。
 こうしたなかで、特別区議会議長会が来年度予算に関する要望書で「民間賃貸住宅において貸主が入居制限などをおこなうことにより、住宅に困窮する低所得者・高齢者・障害者等が存在する。」「公営住宅への入居希望者は依然として多い。大都市の実情に即した公営住宅計画に改善し、公営住宅の建設促進を図られたい。」と異例の要望書を提出しました。
1 知事、こうした貧困と格差の広がりのなかでネットカフェ難民のみならず、住宅に困窮する幅広い低所得者や高齢者・障害者が存在し、強い住宅要求が新たに広がっていることをどう受け止めておりますか、お答えください。
2 ところが、石原都政はこうした時代の変化に対応するのでなく「住宅市場の構造改革」だと住宅ビックバンを打ち出しました。
 その後、「住宅供給における公的主体の役割を強化」するとうたっていた「東京都住宅基本条例」そのものを改定し、従来、公的住宅の建設を中心とした直接供給政策を根本的に転換し、これからは住宅政策の基本を民間の住宅供給への支援にするとして、「市場」の活用やストックの活用重視の方向を打ち出してきたのです。
 これらは、日本経団連が住宅政策提言で、「住宅は足りている」、これからは「個人が住宅を占有」するのでなく「住み替え、住み継ぐ」ものに変えなければとあからさまに述べ、民間活力による住宅建設をうながしたように、政府、財界が一体となってすすめてきた住宅分野の構造改革路線と機をいつにするものです。
 そもそも住宅ビックバンなど住宅の構造改革は、官から民へ自己責任論を進めるもので既にイギリスのサッチャー政権が失敗した構造改革の二の舞です。
 先の参院選でも示されたように安倍(自・公)政権が進めてきた構造改革路線が、あらゆる分野で破綻が明らかになり、自・公政治そのものが行き詰まってきました。にもかかわらず、東京都がこれまでどおりの住宅政策における構造改革路線を引き続き進めることは問題です。
 知事は、都内の住宅戸数は充足している、新たな公的住宅の供給は必要なくなったと新規建設を中止しました。しかも、やることといえば年間3000戸の建て替えと、老朽化した住宅の改善工事にとどめ、大規模団地の建て替え事業については、敷地の有効活用を口実に容積率を高めた高層住宅や、一定規模以下の団地を「非建替え団地」と選別化して、団地住民を移転させ、浮かした土地をもっぱら「都市再生」など街づくりに提供してきた。
 都営住宅の新規建設を一切打ち切って抑制してきたため、住宅への拡充要求は年々増え続けているのです。都営住宅の空き家募集の倍率は石原知事が就任した1999年には11.6倍だったのが2006年には55.1倍と平均競争率がわずか7年間で5倍にもなったのです。全国の平均倍率と比べても十数倍にもなるなど、東京では住む場所に困っている人が確実に増えているのが実態です。
 結局、石原知事が進めてきたのは、財界や大手住宅ディベロッパーの立場に建って、住宅に困っている都民の声を無視し続けてきた8年間で、もはや許されなくなってきているのです。
ア こうした民間ディベロッパーによる住宅供給を基本とする構造改革路線を改めて、「住宅は人権」という立場にたって貧困と格差の新たな事態に対応して低所得者、高齢者、子供を育成する家庭などへの対応を行うよう求めるものです。
イ さらに住宅供給計画において、「住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤」という立場に立って、「住宅の確保に特に配慮する」ために、公営住宅の新規建設に踏み切るべきです。それぞれ、お答えください。
 住む場所に困っている人々の状況も多岐にわたるようになって新たな具体的な対応が求められています。
 その一つが、ネットカフェ難民やホームレスへの対応の問題です。ネットカフェ難民は、非正規労働者や正規社員が住宅喪失者になるなど不安定就労者や低賃金の実態の反映があります。年齢も25才代が3割近く、55才代も2割以上になるなど働きざかりが多いことも問題です。
3 住宅を喪失したきっかけは「仕事をやめた」ことが原因の多くを占めていますが、いったん住居を喪失すると入居の初期費用がない、家賃が安定的に払えない、保証人がいないなどで新たな住宅確保が困難になるのが特徴です。仕事の確保への支援や低賃金の解消と同時に、居住支援として入居時の保証金や保証人対策、家賃への支援など賃貸契約への支援を行うとともに、緊急入居できる住宅提供など総合的な支援策を提案しますが、答弁を願います。
4 また、ホームレスも倒産や仕事がなくなったことがきっかけに住宅やアパートを出なければならなくなった人が63%に及んでいます。仕事確保への支援を行うと同時に居住継続のための家賃助成や緊急入居への支援が引き続き必要ですがどうか。
 住宅難民はネットカフェ難民に限らず、リストラや病気などでとたんにそれまでの生活が狂ってしまうケースや、年金生活になって住居費の負担割合が増えるなど住宅の困窮度が増すケースが広がっています。
 各区市町村で、住み替え家賃助成や新婚・子育て世代、高齢者、障害者などの家賃助成に努力していますが、基本は各自治体の定住者対策が中心で、今求められている住宅困窮者に対して住宅セーフティネットとしての家賃助成になっておりません。民間住宅への入居拒否の解消をうたった住宅セーフティネット法でも、「憲法25条の趣旨が具体化されるよう」にという文言が加えられたように、そもそも民間住宅にさえ自力では入居できない、或いは、公営住宅への入居資格がありながら入居できない人々に家賃助成を行うことが必要になってきているのです。
5 東京都は「家賃助成は典型的な所得再配分政策であり、国と一体となって検討すべき」と消極的ですが、知事は「国がやらないなら」と常に言っているように都民の生活基盤を確保するためにこそ東京都が力を発揮すべきです。新たな貧困と格差の広がりへの対応として、少なくとも都営住宅入居基準内の収入の人への家賃助成に踏み切るべきです。お答えください。
 さらに問題なのは、都営住宅の使用承継について、従来、1親等まで認めていたのに、国の通達に基づいて原則、配偶者に限定したため、高齢者、障害者など例外規定はありますが、障害や健康の問題があっても住宅の承継ができず高い家賃の民間住宅に移らざるを得なくなる事態が生じると、多くの不安を抱えた方々から訴えが寄せられています。
 障害者で言えば4級、5級の知的障害者は承継の対象外ですから親が亡くなると、退去猶予期間を3ヶ月から半年に延ばしたとしてもパニックになってしまいます。ある女性は、「私が死んだら、知的障害で愛の手帳4の子はどうしたらよいのか」と訴えています。
 また、2級の精神障害者のお子さんを持つAさんは、「精神障害者は一級の人しか入居できない、娘は身の回りのこともできず、働きに出ることもできないし、薬を飲んでいても幻聴が毎日のように起きます。親が死んだら野垂れ死にするしかありません。精神障害者は、生きる価値もないというのでしょうか。」と連綿と手紙で訴えてきました。
6 都営住宅担当者は相談窓口で福祉の窓口を紹介します、と述べて平然としていますが、保健福祉局にいったら、住まいが見つかるまで丁寧に斡旋してくれるのでしょうか。また、「新たに都営住宅の応募を申し込めばよいではないか」とも言いますが、申し込んで入れなかった場合は、見つかるまで都営住宅に住まわせてくれるのでしょうか。軽度の障害者でも民間アパートに頼んでもなかなか入れないのが実態だということをどう理解しているのでしょうか。お答えください。
7 障害者等について
ア 何故、控除対象であるかないかを基準に規定を設けたのか、その理由を明らかにすべきです。
イ 障害者は障害の程度によってだけで生活実態が判るわけではないので、「特に居住の安定を図る必要のある者」という立場にたって一律に線引きすべきではありません。それぞれ、答弁を求めます。
8 こように、「使用承継の厳格化」によって退去を迫られる者の中には高齢者や障害者、難病患者などが少なくなく、高い家賃の民間住宅に移ることになれば居住の安定を著しく阻害され生活自体が立ち行かなくなることが予想されます。
ア だからこそ、全国では、通知に係わらず、従前の承継制度を継続する自治体も多く、親が死んで悲しんでいる子供を追い出すことはできないとして実施を中止する自治体も多くあります。これが人間として当たり前の判断ではないでしょうか。居住の安定を図るためにも、親が死んで悲しんでいる子供を追い出すような非人間的な使用承継の改定は直ちに見直すべきです。
イ 同時に、国及び政府に対して、公営住宅の使用承継に関する国土交通省住宅局長通知および、住宅総務課長通知の撤回を求めるべきと思うが、それぞれ見解を伺います。
9 さらに、政府は公営住宅法施行令の一部改定で、2009年4月から収入基準について政令月収20万円だったのを、15万8000円に引き下げるとしています。これは、これまで収入基準以内だった家庭がいきなり収入超過者となる世帯がふえることになります。住み続けるには近傍同種家賃をはらうことになるが、家庭の実情によっては家賃が払えなくなる人が出かねません。こうした事態を避けるためにも国に対して実施の撤回を求めるべきと思うが、お答えください。
 最後に、東京都が目玉政策として「活力ある地域社会の形成への寄与」と称して都営住宅用地を民間住宅ディベロッパーに提供する問題について指摘します。
10 南青山都営住宅用地の半分を民間に提供して建てた超高級マンション青山1丁目タワーは、賃料が1平方メートル約1万円、50平方メートルで4~50万円もするもので最大で350平方メートルもの住宅もあります。多くは外資系の会社などが賃貸契約を結んでいると都の職員が話していましたが、とても一般の都民の手が届かない文字通り超豪華マンションが建てられオープンセレモニーが華々しく行われました。
 都営住宅を建設しないで一般都民の入れない超高級マンションの建設を促進するために都営住宅用地を提供するのが都の進めるべき住宅政策といえるのでしょうか。
 こうした民間の住宅供給への支援を住宅政策の基本にすえるという東京都の住宅政策をいまこそ転換すべきことを改めて求めておきます。

平成19年第三回都議会定例会
植木こうじ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 貧困と格差の広がりに新たな住宅対策を
1 貧困と格差の広がりの中でネットカフェ難民のみならず、住宅に困窮する幅広い低所得者や高齢者・障害者が存在し、強い住宅要求が新たに広がっていることをどう受け止めているか伺う。

回答
 都は、これまでも、都営住宅において高齢者や子育て世帯等に対する優先入居などを実施するとともに、入居制限を行わない民間賃貸住宅の供給促進などに取り組んできました。
 今後とも、公共住宅に加え、民間住宅も含めた重層的な住宅セーフティネットの機能構築に向けて取り組んでいきます。

質問事項
一の2 住宅施策の見直しについて
ア 民間による住宅供給を基本とする路線を改め、住宅は人権という立場にたって貧困と格差に対応して低所得者、高齢者、子供を育成する家庭などへの対応を求めるものだが、見解を伺う。

回答
 住宅が量的に充足し、民間住宅市場が発達した今日において、高齢者世帯の増加や家族形態の変化、居住ニーズの多様化に柔軟に対応し、都民の住まいの安心を確保するためには、福祉施策との連携・役割分担を図りながら、公共住宅に加え、民間住宅も含めた重層的な住宅セーフティネットの機能を構築していくことが必要です。
 今後とも、既存の住宅ストックを有効に活用し、住宅に困窮する都民の居住の安定の確保に取り組んでいきます。

質問事項
一の2のイ 住宅供給計画において、住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤という立場にたち、住宅の確保に特に配慮するために、公営住宅の新規建設に踏み切るべきだが、見解を伺う。

回答
 既に都内の住宅の数が世帯数を一割以上上回っており、さらに将来の人口減少社会の到来が見込まれていることなどを踏まえ、都営住宅については、新規の建設を行わずに、ストックを活用して、公平かつ的確に供給していきます。

質問事項
一の3 ネットカフェ難民は、入居の初期費用が無いなど新たな住宅確保が困難になる特徴がある。入居時の保証金対策などの支援、緊急入居できる住宅提供など総合的な支援策を提案するが、いかがか。

回答
 インターネットカフェ等で常連的に宿泊している方々に対しては、平成19年第三回都議会定例会において答弁したとおり、その生活実態を踏まえ、的確な支援策を講じていきます。

質問事項
一の4 ホームレスも倒産や仕事がなくなったことをきっかけに住宅を失った人が63%いる。仕事確保への支援と同時に居住継続のための家賃助成や緊急入居への支援が引き続き必要だが、どうか。

回答
 ホームレス対策については、都はこれまでも特別区と共同で、緊急一時保護センター及び自立支援センターを設置し、心身の健康回復や就業・住宅相談などにより自立を支援するとともに、地域生活移行支援事業において、地域での自立した生活への移行を推進してきました。
 ホームレスが早期に路上生活から脱却し、地域での自立が図れるよう、特別区と協力しながら支援に努めていきます。

質問事項
一の5 都は、家賃助成は典型的な所得再配分政策であり、国と一体となって検討すべきと消極的だが、都民の生活基盤確保に力を発揮すべきだ。都営住宅入居基準内の収入の人へ家賃助成すべきだが、伺う。

回答
 家賃助成については、生活保護制度との関係や財政負担のあり方など、多くの課題があることから、都として実施することは考えていません。

質問事項
一の6 規定変更で都営住宅の使用承継できない障害者等について、相談窓口では、福祉の窓口を紹介するなどと平然としているが、軽度の障害者でも民間アパートに入居困難な実態をどう理解しているのか、伺う。

回答
 都営住宅の入居は公募によることが原則で、入居を希望している都民が多数いる一方で、長年にわたり同一親族が居住し続けることとなると、入居者・非入居者間の公平性を著しく損なってしまうことから、今回の制度改正を行ったものです。
 制度の実施に当たっては、福祉の窓口を紹介するほか、住宅供給公社、都市再生機構などの公共住宅の募集情報の提供等について、丁寧に対応しています。
 また、あらたな都営住宅の申し込みに際し、一定の級以上の障害者がいる世帯については5倍ないし7倍の優遇倍率が適用されるとともに、ポイント方式の募集に申し込むことができるほか、単身者も申込みが可能となっています。

質問事項
一の7 障害者等の基準について
ア 障害者等について何故、控除対象であるかないかを基準に規定を設けたのか、その理由を明らかにすべきだが、見解を伺う。

回答
 「特に居住の安定を図る必要がある者」については、適用に際して公平性を確保することが必要なことから、客観的な基準として、所得税法施行令において特別障害者として認められている範囲を準用しました。これについては、改正前の制度でも同様の取り扱いをしてきました。
 なお、税法上の特別障害者控除を具体的に受けていない場合でも、受けられる対象となっていることが、障害者手帳や、原爆被爆者の厚生労働大臣認定等により確認できれば、使用承継を許可することができます。

質問事項
一の7のイ 障害者は障害の程度によってだけで生活実態が判るわけではないので、特に居住の安定を図る必要がある者という立場に立って一律に線を引くべきではないと考えるが、見解を伺う。

回答
 「特に居住の安定を図る必要がある者」については、適用に際して公平性を確保することが必要なことから、客観的な基準として、所得税法施行令において特別障害者として認められている範囲を、改正前と同様に準用しました。

質問事項
一の8 使用承継の改定見直しについて
ア 全国では通知に係わらず、従前の承継制度を継続する自治体や実施を中止した自治体も多い。居住の安定を図るためにも非人間的な使用承継の改定は直ちに見直すべきだが、見解を伺う。

回答
 都営住宅の入居は公募によることが原則で、入居を希望している都民が多数いる一方で、長年にわたり同一親族が居住し続けることとなると、入居者・非入居者間の公平性を著しく損なってしまうことから、国のガイドライン等に基づき今回の制度改正を行ったものです。
 実施に当たっては、規則改正から施行まで一年間の猶予期間をおくなど様々な配慮を行っており、今後とも適切な制度運用を図っていきます。
 なお、他の道府県、政令指定市でも制度改正が進められており、国土交通省の調査では、平成19年4月1日現在で、その内25の自治体が、既に新制度を施行又は施行決定済みです。

質問事項
一の8のイ 同時に、国及び政府に対し、公営住宅の使用承継に関する国土交通省住宅局長通知などの撤回を求めるべきだが、見解を伺う。

回答
 都営住宅の入居は公募によることが原則で、入居を希望している都民が多数いる一方で、長年にわたり同一親族が居住し続けることとなると、入居者・非入居者間の公平性を著しく損なってしまうことから、今回の制度改正を行ったものです。
 公営住宅の使用承継に関する国土交通省からの通知については、その内容が、都営住宅における入居者・非入居者間の公平性の観点から適切なものであるとともに、東京都住宅政策審議会においても、使用承継のさらなる厳格化を図るべきであるとの同趣旨の提言がなされていることから、撤回を求めることは考えていません。

質問事項
一の9 施行令改定による収入基準の引下げによって収入超過となる人が住み続けるには近傍同種家賃を払うことになるが、事情により家賃が払えなくなる人が出かねない。国に実施の撤回を求めるべきだが、見解を伺う。

回答
 入居収入基準の見直しについて、国は平成18年8~9月にパブリックコメントを行った後、現時点では政令改正を行っていません。
 都としては、今後とも国の動きを踏まえて適切に対応していきます。

質問事項
一の10 青山一丁目タワーのような超高級マンション建設に都営住宅用地を提供するのが都の進めるべき住宅政策と言えるのか。都の住宅政策を転換すべきだが、見解を伺う。

回答
 都はこれまでも、都営住宅の建替えにより創出した用地について、地域のまちづくりに戦略的に活用しており、今後とも、地域の特性を踏まえ、区市町村と連携しながら有効に活用していきます。

平成19年第三回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 酒井大史

質問事項
一 東京都犯罪被害者等支援推進計画(仮称)について

一 東京都犯罪被害者等支援推進計画(仮称)について
 犯罪被害者支援の推進については、都議会本会議等において過去数回にわたり質問し、また提案を行ってきた。
 この間、国においては「犯罪被害者等基本法」が制定され、また法に基づく「犯罪被害者等基本計画」が作成され、実施に移されている。
 この度、東京都においても「東京都犯罪被害者等支援推進計画(仮称)」中間のまとめが発表された。
 当該推進計画は、「犯罪被害者等基本法」に基づき閣議決定された「犯罪被害者等基本計画」に沿ったものであり、平成19年第一回都議会定例会において、私が行った一般質問に対し総合的な計画作成を知事が明言したことを受けるものであり、作成自体には評価をするものである。
 しかしながら、中間のまとめを見る限り現状把握や施策内容、計画の立て方について、不十分な点も多く見受けられる。これらの点については、平成19年第三回都議会定例会における都議会民主党の代表質問において、大枠については質問をし、答弁を得たところであるが、平成20年1月を目途に作成される予定の本計画において、より充実したものとなるよう念願し、中間まとめを踏まえ本計画策定に向けた都の方針等について質問する。以下の点について、都の見解を伺います。
1 計画の前段及び全般にわたる問題点について
ア 現状認識において、刑法犯の認知件数について言及し把握しているものの、被害者支援を行う上で当然把握しておかなくてはならない犯罪被害者数についての言及がなく不十分といわざるを得ない。犯罪の認知件数の把握とは別に、被害者の実際の人数の把握する考えはないのか。また犯罪被害者の実態調査を行う考えはないか。(都民センターが行った実態調査の一部報告があるが、サンプル数119名のみであり、サンプルとしては少ないと考える)
イ 計画の対象となる犯罪被害者等の定義が無いが、どのように対応するのか。
ウ 都内全域において被害者支援を推進していくため、区市町村や民間団体等との連携とは、どのように進めていくのか。基本的な役割分担及び支援策についても伺う。
2 具体的な支援策についての課題について
 損害回復・経済的支援について
 経済的支援について、この計画の中では後段の部分で国に要望する旨が記載されているが、犯罪被害者等基本法では、地方公共団体も国と共に実施主体になっている以上、都としての独自策も必要と考える、以下具体策を列挙する。
ア 損害賠償請求は、現在、被害者本人が行う(民事訴訟/保険など)が、その負担は大きい。米国のように、医療費や生活の変更に伴う経済的負担については、都が制度を創設することや、地方自治体への補助金なども必要になるが、どのように考えるか。
イ 都も認識しているとおり、犯罪被害給付金は、国家予算が少ないため、対象者が限定されている。被害回復のための都独自の給付金制度が必要だと考えるが如何か。
ウ 性被害者への緊急避妊などへの一部負担を、「全額負担」に変更する考えはないか。
エ DV被害者などへの転居費、就職支度金の貸し付け制度(現行)を、更に充実する考えはないか。
居住の安定について
オ 事件の影響で、自宅に一時的にすめなくなった場合に、公費での居住確保をする考えはないか。(DV、児童虐待などの制度を対象者の範囲を広げる。)
カ これらの手続きをサポートする職員(被害者総合窓口)を、すべての地方自治体に設置することはできないか。(杉並区、日野市などの例)
雇用の安定について
キ 被害者は、事件後、事情聴取や実況見分、裁判傍聴などで仕事を休まなければいけない場合が多いため、特別な休暇制度が必要だが、制度創設を都が主導する考えはないか。
ク 今後、被害者の訴訟参加制度が創設されたため、刑事裁判に出席のために仕事を休む事例が増えてくる。そのための休暇制度などは、裁判員制度と同等のものが必要になるが、その点についての都の見解は。また国への働きかけを行う考えはないか。
精神的、身体的被害の回復、防止への取り組みについて
ケ PTSDの知識のある専門家が少なく、二次被害の実態もあるため、都として専門家を養成していく必要があると考えるがいかがか。
コ 保健師の必要性が注目されている。児童相談、うつ病、などが増えており、さらに犯罪被害者支援も業務に入ってくることを考えると、大幅な増加が望まれる(5千人に一人程度)が見解は。
サ 救急医療に連動した精神的ケアの実施は必要だが、実際には、重度な精神的ケアと共に、軽度な精神的サポートがあれば落ち着くケースが多い。都は区市町村と適切な役割分担を行っていく中で、杉並区などが実施している「生活支援」制度を参考に、「普通の生活」を目指した軽度なサポート体制の整備などを、区市町村に対して促していくべきではないか。
シ 児童虐待に対する対応充実については、職員数の大幅な増強が求められるが計画はどのようになっているのか。
ス 少年被害者の保護を「要保護児童対策地域協議会」で行うのはよいが、いじめや虐待だけのケースを想定しているのか。他にも、家族が被害者になった場合や本人が被害者になった場合の対応などそれぞれどのようになっているのか。
セ スクールカウンセラーの充実は当然のことだが、「被害者はカウンセラーに」という風潮は、被害回復の外注化という批判がないわけではない。また、カウンセラーではできない被害回復があり、それは、「子どもの話を(解決するのではなく)、じっくりと聞き続ける」という作業になるが、そのようなアプローチはできるか。
ソ 犯罪被害者に関する情報の提供を警視庁が行っているが、「指定被害者が、情報を受け取れるようにはなっていないと言われているが、どのように対応しているのか。
タ 児童虐待の防止については、「防止教育」は当然必要だが、児童虐待についての授業を行うことについて見解を伺う。
チ 教育委員会の「人権教育指導推進委員会」で児童虐待を扱っているようだが、その他の犯罪被害者については、扱う委員会はないのか。
ツ 職員への研修は、何年で全ての職員が研修を受けられるようになるか。(先進自治体のひとつ、日野市では、年2回の研修を行い、毎回100人以上の職員が参加。6年で全職員が研修を受ける計算になる。)
テ 女性警察官の指定は良いことだが、男性が被害にあう場合も少なくない。特に少年の場合は暗数が相当いる。そのため、女性警察官のみならず、男性警察官も、指定を受けるべきと思うが如何か。
ト 警察署の被害者相談室の設置の際は、どのような検討が行われるのか。被害者相談室の設置の際は、地域の関係者や被害者団体と相談して設置することが望ましいと考えるが如何か。
刑事手続きへの関与の拡大への取り組みについて
ナ 被害者の手引きなどは、全被害者の何%に配布できているのか。
ニ 被害者の手引きの配布や被害者連絡などを行う「一定の被害者等」はどの程度の被害者か。また、昨年の実績は。
支援のための体制整備への取り組みについて
ヌ 人権部が行っている「じんけんのとびら」などでの告知は、どのくらいの都民に告知されるのが理想か。またそのための方策は。
ネ 警察で行っている被害者ネットワークの実施状況は。
ノ 警察が犯罪被害者ホットラインの中で、「被害者の状況に応じて、都民センターを初めとする関係機関や団体を紹介」とあるが、この関係機関や団体とはどのような団体か。
ハ 平成18年度の都の交通事故相談の相談実績とその内容について伺う。
ヒ ヤングテレホンや電子メールでの少年からの相談件数は。
フ 学校での犯罪被害者への対応は、スクールカウンセラーなどへの外注だけではなく、教員が犯罪被害者の現状を知るような対応が必要だと考えるが如何か。
ヘ 「自助グループ」については、都民センターだけではなく、様々な自主的な被害者団体があるので、これらの団体とも連携を進める必要があると考えるが如何か。
ホ 人権部のHP「じんけんのとびら」をみたが、犯罪被害者がアクセスしても、どこに書かれているのかわからない状況。見解を伺う。
マ 犯罪発生直後からの支援は指定被害者支援制度を根拠に行っているが、昨年の実績数はどのくらいか。それは、全被害者の何%を支援したのか。
ミ 犯罪被害者児童・生徒が不登校になった場合に、昨年までどのような対応をしていたのか。
ム 民間団体の研修への支援として、講師派遣があるが、それでは不十分であると考える。支援団体だけでなく、被害者団体も含めて支援し、年間の開催目標を定めて、都内全域で開催するような動きが必要と考えるが見解は。
メ 警察における民間の団体との連携でも、都民センター、東京都、警察署などとの連携に、被害者団体も加える必要と考えるが見解は。
都民の理解の増進と配慮・協力の確保への取り組みについて
モ 現在、公立学校における人権教育プログラムにおいて、その課題の一つに犯罪被害者等の人権を掲げているが、活用実態が分からない。今後の取り組みはどうするのか。
ヤ 学校教育では、命のかけがえのなさの教育のほか、被害に遭った場合の対応についての教育も進める必要があると考えるが見解は。
3 新たな都の取り組みについて
ア 支援のための総合的窓口の設置については評価できる。しかし、設置数等が明確ではないので、その点を明らかにして欲しい。先進国の状況を見ると、被害者支援センターを40万人に一カ所程度設置できることが望ましい。基本的には都内全区市町村の窓口で対応できることが望ましいが見解は。また都の総合窓口の役割、位置づけはどのようなものを想定しているのか。
イ 支援担当職員向けマニュアルの作成について、都では医療機関向けマニュアルの実績もあり、評価できるが、何時までに作成するのか。またマニュアルを作成するだけでなく研修体制を確立することも必要と考えるが如何か。(再掲)

平成19年第三回都議会定例会
酒井大史議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 東京都犯罪被害者等支援推進計画(仮称)について
1 計画の前段及び全般にわたる問題点について
ア 都の計画の中間のまとめは、現状把握や施策内容など不十分な点も多い。犯罪の認知件数の把握とは別に、被害者の実人数を把握する考えや犯罪被害者の実態調査を行う考えはないか伺う。

回答
 犯罪被害者等へ適切な支援を行うためには、被害者等の置かれた状況など、その現状を正確に把握し分析することが重要です。
 被害者等の実態、要望等については、これまで、国や民間団体等が調査を行っており、都においても、平成18年12月に被害者団体等に対して、調査を実施しました。
 都としては、今後、これらの調査結果等も踏まえ、平成20年1月を目途に計画を策定していく予定です。

質問事項
一の1のイ 計画の対象となる犯罪被害者等の定義がないが、どう対応するのか伺う。

回答
 本計画の対象となる犯罪被害者等の定義は、「刑法や我が国の刑罰法令に触れる行為、及び、これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為により被害を被った者、及びその家族又は遺族」であり、都民を原則とします。
 なお、都民ではないが、都内で被害に遭われた方々についても相談などに応じることがあると考えています。

質問事項
一の1のウ 都内全域において被害者支援を推進するため、区市町村や民間団体等との連携の進め方、基本的な役割分担及び支援策について伺う。

回答
 犯罪被害者等を途切れることなく支援するためには、区市町村や民間団体等との連携が重要です。
 このため、都がまず本計画を策定し、区市町村や民間団体等に示すとともに、様々な機会をとらえて、区市町村に対して、地域の実情に応じたきめ細かい支援施策の必要性等を説明していきます。

質問事項
一の2 具体的な支援策についての課題について
ア 現在、被害者本人が行う損害賠償請求の負担は大きい。医療費や生活の変更に伴う経済的負担について、都による制度創設や地方自治体への補助金等も必要だが、所見を伺う。

回答
 平成19年6月に、「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が公布され、犯罪被害者等による損害賠償請求について刑事手続の成果を利用する制度が創設されたことにより、損害賠償請求に係る負担の軽減につながるものと考えています。
 都としては、警視庁が現在行っている犯罪被害者等給付金に関する取組等、各局等が実施している様々な施策を引き続き推進するとともに、被害者等への情報提供や相談等にきめ細かく対応できるようにしていきます。

質問事項
一の2のイ 犯罪被害給付金は、国家予算が少ないため、対象者が限定されている。被害回復のための都独自の給付金制度が必要だが、所見を伺う。

回答
 犯罪被害者等給付金については、国の検討会における最終取りまとめにおいて、給付金の最高額を引き上げる等の方向が示され、現在、取りまとめを受けた施策の具体化に向けた検討がされていると聞いています。
 都としては、国に対して、更なる制度の拡充を要望していきます。

質問事項
一の2のウ 性被害者への緊急避妊などへの一部負担を、全額負担に変更する考えはないか伺う。

回答
 平成18年4月1日から、被害者の経済的負担の軽減を図るため、性犯罪被害者に対しては、診断書料及び診察料に加え
・緊急避妊薬費用(医療機関において支払った額のうち、6千円を限度)
・性感染症検査費用(医療機関において支払った額のうち、2万円を限度)
・人工妊娠中絶費用(医療機関において支払った額のうち、15万円を限度)
について、公費で支出しています。
 これらの費用については、医療機関における個人負担の平均額を考慮して算出したものです。
 性犯罪被害者の緊急避妊等に要する経費については、保険を適用した金額を除いて、公費により補われていることから、被害者本人の負担に係る金額はほとんどないと承知しています。

質問事項
一の2のエ DV被害者などへの転居費、就職支度金の貸付制度を、さらに充実する考えはないか伺う。

回答
 DV被害者など、これまでの生活基盤が突然なくなり、新たな生活を始めなければならない人に対しては、当面の経済的な負担軽減のための支援が重要です。
 現在、都の貸付金には、東京都生活福祉資金、東京都母子福祉資金及び東京都女性福祉資金などの制度があり、転宅に必要な費用や、就職に必要な費用など、目的に応じた貸付けを行っています。
 今後とも、適切な貸付けに努めていきます。

質問事項
一の2のオ 事件の影響で、自宅に一時的にすめなくなった場合に、公費での居住確保の考えはないか伺う。

回答
 東京都犯罪被害者等支援推進計画(仮称)中間のまとめでは、新たに、被害直後における居住について、既存の取組のほか一時的に滞在できるホテル等の確保を検討することとしています。
 都としては、施策の具体化に向けて、さらに取り組んでいきます。

質問事項
一の2のカ 居住確保の手続きをサポートする職員または被害者総合窓口を、すべての地方自治体に設置できないか伺う。

回答
 地方公共団体における犯罪被害者等への支援については、犯罪被害者等基本法で、地方公共団体がその地域の状況に応じて施策を策定し実施する責務を有する、と規定されており、各区市町村においても主体的に施策を策定し実施することが重要だと考えています。
 都としては、今後、各区市町村が総合窓口設置を含め、被害者支援に取り組むよう、働きかけていきます。

質問事項
一の2のキ 被害者は、事件後、事情聴取や実況見分などへの対応のため、特別な休暇制度が必要である。都が制度創設を主導する考えはないか伺う。

回答
 労働者の休暇制度は、労働基準法など労働法制の問題です。現在、国で、犯罪被害者に対する休暇制度の導入について、現状に関する調査を行い、必要な施策を検討しています。このため、都としては、国の動向を見守っていきます。

質問事項
一の2のク 被害者の訴訟参加制度創設により、刑事裁判に出席するための休暇制度は、裁判員制度と同等のものが必要になるが、都の見解を伺う。また国への働きかけを行う考えはないか伺う。

回答
 平成19年6月、刑事訴訟法の一部改正が成立し、平成20年末を目途に被害者の訴訟参加制度が創設されることは承知しています。刑事裁判に出席するための休暇制度は、国の法制度の問題であり、都としては、国の動向を見守っていきます。

質問事項
一の2のケ PTSDの知識のある専門家が少なく、二次被害の実態もあるため、都として専門家を養成していくべきだが、所見を伺う。

回答
 PTSD対策に係る専門家の養成研修については、現在、国において「こころの健康づくり対策」研修会の中で実施されています。
 都においては、引き続き精神保健福祉センター等の職員をこの研修に派遣し、PTSDに対する都民や関係機関からの相談に的確に対応できるよう、職員の専門性を高めていきます。

質問事項
一の2のコ 増加する児童相談やうつ病に加え、犯罪被害者支援も業務に入ってくると、保健師の大幅な増加が望まれるが、見解を伺う。

回答
 保健所、保健センター等では、精神保健福祉相談の一環として、犯罪被害者等についても、保健師等による相談体制を確保しています。
 今後とも、区市町村とともに、医療機関や警察・教育等の関係機関と連携して、犯罪被害者等の支援に努めていきます。

質問事項
一の2のサ 軽度な精神的サポートがあれば落ち着くケースが多い。普通の生活を目指した軽度なサポート体制の整備などを区市町村に対して促すべきだが、所見を伺う。

回答
 都では、精神保健福祉センターや保健所等において、関係機関と連携を図りながら精神保健福祉相談を実施し、こころの病気や精神的な問題をもつ都民をサポートしています。
 なお、日常の生活支援などのサポート体制については、都と区市町村の役割分担を踏まえ、地域の実情に合わせて住民に身近な区市町村で検討していくべきものと考えます。

質問事項
一の2のシ 児童虐待への対応の充実には、職員数の大幅な増強が求められるが、その計画について伺う。

回答
 都では、増大する虐待相談に的確に対応するため、児童相談所において相談援助業務を行う児童福祉司を、平成13年度から19年度までの間に53名増員し159名としたほか、子どもの心理的ケアを行う児童心理司を、平成19年度に13名増員し54名としました。
 また、児童の心理的ケアの充実を図るため、児童相談センターに常勤の精神科医と心理職を配置するとともに、一時保護所には非常勤の心理職を各1名配置しています。
 さらに、都は、児童相談の第一義的窓口である区市町村に、児童虐待への対応力を強化した先駆型子ども家庭支援センターの設置を進めており、都の児童相談所との連携を図りながら虐待等の相談に対応していきます。

質問事項
一の2のス 要保護児童対策地域協議会で行う少年被害者の保護は、いじめや虐待だけのケースを想定しているのか。他に、家族や本人が被害者になった場合の対応はそれぞれどうなっているのか伺う。

回答
 「要保護児童対策地域協議会」が対象とする児童には、虐待を受けた児童ばかりでなく、保護者がいなくなった児童や非行児童など、様々な事情により支援が必要な児童が含まれています。
 犯罪に巻き込まれた児童についても援助が必要な場合には、同協議会での連携の下、児童相談所のほか、医療機関や警察、教育等の関係機関が、適切な援助を行っています。

質問事項
一の2のセ スクールカウンセラーの充実は当然のことだが、スクールカウンセラーではできない被害回復があり、それは子どもの話をじっくり聞き続けるという作業だが、そうしたアプローチはできるか伺う。

回答
 スクールカウンセラーは、心理相談に関する専門的知識や経験を有し、児童・生徒や保護者への相談に応じるとともに、教員への助言等を通して、学校の組織的な教育相談機能の充実に大きな役割を果たしています。
 犯罪等の被害を受けた児童・生徒に対し、学校はスクールカウンセラー等と連携を図りながら、学級担任や養護教諭、教育相談担当などを中心に、組織的な相談活動を継続することが大切であると考えます。

質問事項
一の2のソ 犯罪被害者に関する情報提供を警視庁が行っているが、指定被害者が情報を受け取れていない。どのように対応しているのか伺う。

回答
 被害者等の抱える問題は、生命、身体、財産上の直接的な被害だけでなく、捜査や裁判の過程における精神的、時間的負担や失業などによる経済的困窮など、広範囲にわたっています。
 警視庁では、殺人、性犯罪等の身体犯や重大な交通事故事件等の被害者に対し、あらかじめ初期支援要員に指定されている捜査員が、各種捜査活動の補助、病院等への付き添いなどを行うとともに、刑事手続の流れや各種救済制度、関係機関・団体の情報を掲載した小冊子「被害者の手引」を交付することとしています。
 さらに、被害者の要望に応じ、被害者連絡員に指定された捜査員が、捜査状況等の連絡を行い、適切な情報提供に努めています。

質問事項
一の2のタ 児童虐待の防止教育だけでなく、児童虐待についての授業を行うことについての見解を伺う。

回答
 都教育委員会では、虐待に関する指導資料やチェックリストの作成・配布などにより、児童虐待の未然防止や早期発見ができるよう、区市町村教育委員会や学校を指導しています。
 児童虐待についての授業は、児童・生徒と保護者との信頼関係を損なわないよう配慮する必要があるなど、様々な課題もあります。
 都教育委員会が設置している人権尊重教育推進校における研究や他県の事例などの情報も参考にして、各学校が、児童・生徒の発達段階を踏まえて適切に指導できるよう、指導・助言していきます。

質問事項
一の2のチ 教育委員会の人権教育指導推進委員会で児童虐待を扱っているが、その他の犯罪被害者について扱う委員会はないのか伺う。

回答
 人権教育指導推進委員会は、都教育委員会と区市教育委員会が人権教育推進上の課題や方策等について研究・協議を行うために設置されているものであり、児童虐待だけでなく、犯罪被害者等を含めた東京都人権施策推進指針に示されている様々な人権課題を扱っています。
 この他に都教育委員会では、校長、副校長、主幹・教諭を対象とした人権教育に関する研究協議会を実施し、人権教育の内容や方法についての研究・協議を行っています。
 今後とも、関係機関等との連携を図りながら、様々な人権課題についての正しい理解と認識を深めることができるよう、取り組んでいきます。

質問事項
一の2のツ 何年で、全ての職員が研修を受けられるようになるか伺う。

回答
 犯罪被害者等への施策を推進していくためには、支援に携わる職員が、被害者等の心情や、その置かれている状況等に対する理解を深めることが重要です。
 そのためには、職員に対する研修が有用であると考えています。
 その具体的な内容・進め方については、引き続き検討していきます。

質問事項
一の2のテ 女性警察官のみならず、男性警察官も指定を受けるべきだが、所見を伺う。

回答
 性犯罪被害者が女性警察官による対応を希望する場合は、あらかじめ専門的な教養を受講し、性犯罪捜査員に指定された女性警察官が、事情聴取や証拠採取等の必要な捜査活動を行っています。
 また、性犯罪被害者が少年の場合については、本人及び保護者等の希望を確認して性犯罪捜査員又は男性の捜査員が事情聴取等の捜査活動を行うなど、被害者に応じた適切な対応に努めています。
 なお、捜査員に対しては、性犯罪捜査における被害者の精神的負担を軽減するため、刑事任用科等の教養の場において、届出の受理、事情聴取要領、供述調書の作成要領及び被害者連絡等に関する指導教養を行っています。

質問事項
一の2のト 警察署の被害者相談室設置の際は、どのような検討が行われるのか。また、地域の関係者や被害者団体と相談した上での相談室設置が望ましいが、所見を伺う。

回答
 平成12年9月に総理府が実施した「犯罪被害者に関する世論調査」において寄せられた、「落ち着いて話ができる事情聴取場所を確保して欲しい。」との要望事項を踏まえ、モデル署(高井戸署)を設置しました。同署における捜査員及び被害者等の意見を聴取、検討の上定めた、相談室の整備基準に基づき、平成13年以降に新築された警察署には、専用の相談室を設置しています。
 それ以外の警察署については、できる限り既存の相談室や調室の内装や照明等を改善して、被害者の心情に配意した相談室の整備に努めています。

質問事項
一の2のナ 被害者の手引きなどは、全被害者の何%に配布しているのか伺う。

回答
 「被害者の手引」は、全ての被害者に対して交付しているものではありません。
 「被害者の手引」は、原則として、指定被害者支援の対象事件である身体犯及び重大な交通事故事件等の被害者に対して交付することとしており、必要に応じて財産犯等の被害者やその家族、友人等の関係者に対しても配付しています。
 また、被害者支援に関するリーフレットについては、各種会議や催し物等の機会を通じて幅広く配布し、広報啓発活動を行っています。

質問事項
一の2のニ 被害者の手引きの配布や被害者連絡などを行う「一定の被害者等」はどの程度の被害者か伺う。また昨年の実績について伺う。

回答
 「一定の被害者等」とは、殺人、強盗致死傷、性犯罪等の身体犯及びひき逃げ事件、交通死亡事故等の重大な交通事故事件等の被害者及びその遺族をいい、他の財産犯等の被害者と比較して、被害によって受ける精神的苦痛がより大きく、事件への関心も強いことから、警視庁指定被害者支援実施要領において対象事件として定め、その被害者に対して初期支援、被害者連絡及び地域警察官による訪問・連絡活動を実施しています。
 また、指定支援対象事件の被害者に対しては、原則として「被害者の手引」を交付することとしており、平成18年中に初期支援を実施した被害者は4664名です。そのうち、被害者連絡の要望のあった被害者については1678名です。

質問事項
一の2のヌ 人権部が行う「じんけんのとびら」などでの告知は、どのくらいの都民に告知されるのが理想か伺う。またそのための方策について伺う。

回答
 インターネットには、アクセスすればいつでも容易に必要な情報を引き出すことができるという長所があることから、ホームページ「じんけんのとびら」は、有効な広報媒体の一つであると考えており、その内容の充実に努めています。
 今後、「じんけんのとびら」をはじめ様々な媒体を活用し、幅広く都民への周知に努めていきます。

質問事項
一の2のネ 警察で行っている被害者ネットワークの実施状況について伺う。

回答
 地域の実態に応じた効果的な支援活動を推進するため、各警察署において、管内にある病院や被害者支援に関係する行政機関、民間団体等により、警察署犯罪被害者支援ネットワークを構築しています。
 平成18年の活動状況については、ネットワーク会員等を招聘し、連絡会議を開催した警察署が79署(88回)、ネットワーク会員等に対する被害者等による講演会を開催した警察署が65署(67回)、ネットワーク会員に対する会報を発行している警察署が78警察署となっています。

質問事項
一の2のノ 警察が犯罪被害者ホットラインの中で、被害者の状況に応じて紹介するとされている関係機関や団体とはどのような団体か伺う。

回答
 警視庁では、東京都犯罪被害者支援連絡会を設立し、連絡会に参加する37機関・団体が相互に協力連携して被害者に対する効果的な支援活動を推進しています。
 犯罪被害者ホットラインにおいて受理した相談のうち、被害者の要望に適切に対応するため、同連絡会に参加する機関・団体である社団法人被害者支援都民センターをはじめ、東京地方検察庁、法テラス、東京三弁護士会、東京都の関係部局に設置している相談窓口等を紹介しています。

質問事項
一の2のハ 平成18年度の都の交通事故相談の相談実績とその内容について伺う。

回答
 生活文化スポーツ局が実施している交通事故相談は、被害者の救済を図ることを目的として、専門の相談員が弁護士の助言を受けて相談に応じています。
 平成18年度の相談実績は全体で1万8285件です。内容としては、事故の初期段階の問い合わせや保険、過失相殺など損害賠償額の内容等の賠償問題に関する相談が1万5180件、他機関・救済制度紹介が849件、その他が2256件です。
 また、相談は交通事故被害者・加害者相方から受けていますが、被害者からの相談が83.5パーセントを占めています。
 なお、相談の内容によって交通事故被害者・加害者の間で解決が困難な案件については財団法人交通事故紛争処理センター、財団法人日弁連交通事故相談センターなど他の機関を紹介しています。

質問事項
一の2のヒ ヤングテレホンや電子メールでの少年からの相談件数について伺う。

回答
 平成18年中のヤング・テレホン・コーナーに寄せられた相談総数は、5417件で、そのうち少年自身からの相談件数は1978件、保護者からの相談が1342件、成人からの相談が2097件です。
 電子メールについては、平成18年中の警視庁ホームページに寄せられた意見、要望等の件数は1万5171件です。個人のプライバシー保護の観点から、相手方の年齢、性別等については判明していません。

質問事項
一の2のフ 学校での犯罪被害者への対応は、スクールカウンセラーなどだけでなく、教員が犯罪被害者の現状を知るような対応が必要だが、所見を伺う。

回答
 都教育委員会では、教員用の人権教育に関する実践的な手引である「人権教育プログラム」に、犯罪被害者等に関する実践・指導事例及び関係資料を掲載するとともに、人権教育に関する研究協議会等を通して、教員が犯罪被害者等の現状を理解できるように取り組んでいます。

質問事項
一の2のヘ 自助グループについては、様々な被害者団体があり、これらの団体とも連携を進めるべきだが、所見を伺う。

回答
 警視庁においては、被害者支援を適正かつ確実に行うことができる営利を目的としない民間援助団体として、東京都公安委員会から犯罪被害者等早期援助団体に指定されている社団法人被害者支援都民センターを通じて、被害者に対する自助グループの紹介を行っています。
 また、同センターを通じ、警察署等に対する「遺族の手記」の配付、各種講習や警察署における被害者等による講演会の開催に際して、自助グループと協力、連携しています。

質問事項
一の2のホ 人権部のHP「じんけんのとびら」に犯罪被害者がアクセスしても、どこに書かれているのか分からない状況だが、見解を伺う。

回答
 ホームページ「じんけんのとびら」では、犯罪被害者等に関する問題について、「みんなの人権」コーナーで被害者やその家族の人権問題について解説するとともに、「相談」コーナーにおいて犯罪被害に関する相談や支援を行っている機関を紹介しています。
 今後とも、利用者がよりアクセスしやすく、また被害者等への支援策など必要な情報が容易かつ的確に得られるよう、引き続き使いやすいホームページづくりに努めていきます。

質問事項
一の2のマ 犯罪発生直後からの支援は、指定被害者支援制度を根拠に行っているが、昨年の実績数について伺う。また、被害者の何%に当たるのか伺う。

回答
 平成18年中における指定被害者支援対象事件のうち、初期支援を実施した被害者は4664名で、そのうち身体犯等の被害者が2252名、重大な交通事故事件の被害者が2412名です。
 また、被害者連絡の要望者数は1678名、さらに身体犯等の被害者に行っている訪問・連絡活動の要望者数については20名です。
 なお、指定被害者支援は、全ての被害者を対象にしたものではありません。

質問事項
一の2のミ 犯罪被害者児童・生徒が不登校になった場合、昨年までどのような対応をしていたのか伺う。

回答
 不登校児童・生徒に対しては、その背景や原因にかかわらず、一人一人の状況に応じたきめ細かい対応が必要です。
 都教育委員会では、スクールカウンセラーを全公立中学校に配置するなど、学校の組織的な教育相談体制の整備に向けた支援を行っています。また、区市町村教育委員会と連携し、教育相談室や適応指導教室などの機能充実に向けた連絡会の開催や情報提供等の支援を行い、不登校児童・生徒が専門的な相談や指導が受けられるよう取り組んでいます。

質問事項
一の2のム 民間団体の研修支援としてある講師派遣では不十分である。支援団体だけでなく、被害者団体も含めて支援し、年間の開催目標を定め、都内全域で開催する動きも必要だが、見解を伺う。

回答
 犯罪被害者等を途切れることなく支援するためには、民間団体等の果たす役割も重要です。
 今後、支援に携わる職員への研修を検討する中で、こうした民間団体等に対する研修支援についても、合わせて検討していきます。

質問事項
一の2のメ 都民センター、東京都、警察署などとの連携に、被害者団体も加えるべきだが、見解を伺う。

回答
 警視庁では、社団法人被害者支援都民センター等のほか、自助グループや他道府県において犯罪被害者等早期援助団体に指定されている民間援助団体とも協力、連携しています。
 今後とも、必要に応じて、民間援助団体等と連携を図っていきます。

質問事項
一の2のモ 公立学校の人権教育プログラムの課題の一つに、犯罪被害者等の人権を掲げているが、活用実態が分からない。今後の取組について伺う。

回答
 都教育委員会では、平成15年以降、「人権教育プログラム」に、様々な人権課題に関する実践・指導事例や関係資料等を掲載し、都内の公立幼稚園・学校のすべての教員に配布しています。
 各学校では、職員会議、校内研修会、指導計画の作成等の際に「人権教育プログラム」を活用しています。また、都教育委員会が行う人権教育に関する教員研修において、「犯罪被害者やその家族」を含む様々な人権課題について正しい理解と認識を深め、学校で積極的に活用できるよう指導しています。
 今後とも、国が策定した「人権教育・啓発に関する基本計画」を踏まえるとともに、「東京都人権施策推進指針」等に基づき、「人権教育プログラム」の内容の充実に努め、学校が人権教育を一層推進することができるよう、引き続き取り組んでいきます。

質問事項
一の2のヤ 学校教育では、命のかけがえのなさの教育のほか、被害に遭った場合の対応についての教育も進めるべきだが、見解を伺う。

回答
 今日の社会では、児童・生徒やその家族を含めて、誰もが犯罪被害者となる可能性があります。
 学校では、様々な場面で児童・生徒に命の大切さを指導しています。また、都教育委員会が発行した「非行防止・犯罪被害防止教育推進指導資料」などを活用し、発達段階に応じて、危険を予測し、回避する能力や、犯罪等の被害に遭った場合に身近な人に助けを求めたり、教員やスクールカウンセラー等に相談したりするなど、的確に行動できる力の育成を図っています。

質問事項
一の3 新たな都の取組について
ア 支援のための総合的窓口の設置数等について明らかにしてほしい。都内全区市町村の窓口で対応できることが望ましいが、見解を伺う。また、都の総合窓口の役割、位置づけについて伺う。

回答
 総合的窓口の役割等については、犯罪被害者等に対して情報提供や相談等を行うことにより、被害者等が再び平穏な生活を営めるようになるまで途切れることなく支援していくことだと考えています。
 総合的窓口のあり方については、設置数を含め、引き続き検討していきます。
 また、都としては、今後、各区市町村が総合窓口設置を含め、被害者支援に取り組むよう、働きかけていきます。

質問事項
一の3のイ 支援担当職員向けマニュアルは、いつまでに作成するのか伺う。また、マニュアル作成だけでなく、研修体制の確立も必要だが、所見を伺う。

回答
 支援担当職員向けのマニュアルについては、早急に作成していきたいと考えています。
 また、犯罪被害者等への支援を行う窓口職員に対しては、被害者等の心情等に配慮したきめ細かい対応が可能となるよう、より専門的な内容の研修を実施していく予定です。