平成十九年東京都議会会議録第十号

○副議長(木内良明君) 十番西崎光子さん。
   〔十番西崎光子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○十番(西崎光子君) 初めて質問いたします。世田谷選出の西崎光子です。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに、今後の都政運営について伺います。
 知事は三期目の選挙に当たって、東京再起動を掲げて当選を果たしました。ところが、先日の所信表明では、今後四年間の都政運営に向けて何をどのように再起動するのか、具体案が示されませんでした。特に喫緊の重要課題である新銀行東京については、再起動のかじ取りをどのようにしていくのかが問われています。知事が二期目の公約に掲げ、まさにトップダウンで進められてきましたが、赤字が大きく膨らみ、知事は、発案は私で、その責任はあるが、金融の専門家ではない。経営者に責任があるとして、経営陣を刷新しました。
 そもそも新銀行設立の目標は、無担保融資で中小企業を救うことにありましたが、当然リスクが伴うものです。生活者ネットワークは、事業内容の詳細が示されないまま予算案の中に一千億円の出資を入れ込んで、一括審議とするなどの乱暴な新銀行の提案に反対してまいりました。赤字膨張の原因が審査能力不足や融資モデルそのものにあったのは明らかです。
 知事自身も新銀行について、進むも地獄、引くも地獄という、惨たんたるありさまですと発言しておられますが、この言葉は、都の大きな負の遺産である臨海についての知事の発言と重なります。これ以上の損失を招かないためにも、ここは知事のトップダウンで新銀行の幕引きをきっぱりと行うべきではないでしょうか。知事の見解を伺います。
 次に、民生・児童委員の制度の機能強化について伺います。
 認知症高齢者の増加や孤独死、そして児童虐待の問題など、少子高齢化に伴い、地域の福祉課題は増加、複雑化しています。これらの問題解決のためにさまざまな役割を求められている民生・児童委員の負担は重くなっています。
 こうした状況を踏まえ、東京都は今年度、機能強化を図るための新たな事業として、仮称民生・児童委員サポーター制度を創設することを予定しており、具体的な事業内容について今後検討すると聞いています。しかし、現場からは、サポーターの位置づけがあいまいであり、法的規定のないサポーターの協力には限界があるという意見もあります。ことしは民生・児童委員一斉改選の年であり、区市町村は現在その準備に追われています。新たに導入するサポーター制度が民生・児童委員の機能強化と負担軽減につながるためには、現場の意見を十分に踏まえた事業内容にすることが求められますが、現在の検討状況について伺います。
 次に、感染症対策、とりわけ麻疹対策について伺います。
 東京都健康安全研究センターのまとめによると、都内の学校等の施設における麻疹患者の発生は二千十七人であり、中でも大学生、高校生の患者が八百人と多いのが今回の流行の特徴です。この世代は、麻疹の予防接種を受けてない人が比較的多いことや、予防接種を受けても免疫が低下した者がいることが流行の背景でした。しかも、高校生や大学生は小児に比べて行動範囲が広く、塾や地域の活動を通じて感染が広がった可能性があります。このため、公立、私立学校の区別なく、幅広い予防策が求められます。
 今回の集団感染防止において、関係機関がどのように連携して取り組まれたのか伺います。
 茨城県の竜ヶ崎保健所では、過去の教訓を生かし、保育所、幼稚園、学校等における麻疹患者発生時の対応マニュアルを作成し、感染者を最小限に抑え、これを参考にしている自治体も多いと聞いています。都でも学校等での患者発生時の初動体制を強化するため、こうした取り組みを行うべきと考えますが、見解を伺います。
 先進国では麻疹は根絶に近い状態にあるのに比べ、日本は麻疹の輸出国と非難されており、麻疹患者の発生を限りなくゼロに近づける努力が求められています。厚労省は、専門家による検討会を開催し、国レベルでの予防強化にようやく乗り出すようです。しかし、東京は、若者が集散する人口密集地域であり、麻疹の根絶を目指し、率先して抗体を持たない都民への注意喚起と予防接種の奨励に努めるべきと考えますが、今後、都はどのようにしていくのか伺います。
 次に、温暖化対策について伺います。
 主要国首脳会議G8サミットは、六月七日、各国の思惑を超えて、温室効果ガス排出量を二〇五〇年まで少なくとも半減させることを真剣に検討するという合意を発表しました。既に、先行して東京都は、カーボンマイナス東京十年プロジェクトの基本方針である東京都気候変動対策方針の中で、東京が日本の気候変動対策をリードするとし、明確な政策提案により世論を喚起し、実現を目指すと明言しています。
 この中でうたわれた、今大きく動こうとしているのが環境自動車燃料導入プロジェクトです。都は既に今年度から第一世代、第二世代のバイオディーゼル燃料の率先導入プロジェクトを開始していますが、その進捗状況と今後の展開について伺います。
 バイオディーゼル燃料は植物油脂の成分を用いているので、温室効果ガスを増加させず、地球環境に優しい燃料といわれています。しかし、原料となる植物油脂の多くが菜種油やパーム油のように食料品として利用されてきたものであり、アメリカでのバイオエタノールの生産が急増したことで、マヨネーズやオレンジジュースまで値上がりしたとのことです。
 都は、バイオディーゼル燃料の率先導入を進めるに当たっても、食料品需要への影響に配慮し、廃食用油など、食用に適さない油脂を原料として活用すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 今、自治体、市民団体やNPOが家庭の廃油をリサイクルして、バイオディーゼル燃料として使用しています。小さな試みですが、将来を考えますと、持続可能な循環型エネルギーとして大いに可能性が広がります。東京都は大きな消費都市で、廃棄される食用油は大量にあると推測されます。この廃食用油の回収ルートと処理施設を設定することで大きなエネルギー源を手に入れると同時に、ごみの減量も図れると考えますが、見解を伺います。
 六月に山形県で第七回全国菜の花プロジェクト大会が開催されました。一面に広がる菜の花は人々の心をいやし、食卓を彩り、菜種油は調理用に、搾りかすは肥料に、調理後の廃油は石けんやディーゼル燃料にと、資源循環型のまちづくりに取り組んでいる人たちの大会です。この菜の花プロジェクトは、地域の廃油も回収し、バイオディーゼル燃料を使う運動をしています。このような草の根の運動の広がりが地球を守ることにつながっています。
 「十年後の東京」で、都民や環境団体が一体となって推進する温暖化対策を掲げている東京都は、こうした都民の自発的な取り組みと連携を深めていくべきと考えますが、いかがでしょうか。
 最後に、食の安全について伺います。
 これまで東京都が都民のBSEへの不安にこたえ、国産牛の全頭調査を行ってきたことは、日本市場の全頭調査への流れをつくり、国民の食の安全を守ることにつながってきたと評価しています。しかし、国はBSEについて、生後二十カ月以下の国産牛の検査費用補助を二〇〇八年七月で打ち切ることとしています。そして、折しも六月に入って、国は、アメリカの日本向け食肉処理施設に関する点検調査は終了したことを発表し、アメリカ牛肉の全面解禁に向けての動きが出てきました。しかし、国民の不安はまだまだぬぐえません。不安を払拭するためにも、中央卸売市場を通った牛肉は安全という芝浦ブランドを持たせる意味でも全頭調査は重要です。そこで、来年度以降引き続きBSEの全頭調査を行うのか、都のお考えを伺います。
 日本の食糧自給率はどんどん低下し、二〇〇五年では熱量に換算すると四〇%まで落ちています。主な食糧輸入国はアメリカ、中国で、特に輸入野菜の中国産の割合は重量ベースで六三%にもなっています。経済成長の目覚ましい中国では、一方で、食品の監視は手が回らない状況です。経済がグローバル化する中で、大量にふえ続ける輸入食品の国内での監視体制が問われています。
 そこで、東京都の輸入食品対策について、その監視体制、国との連携、都民への周知について伺います。
 食の安全に常に大きな関心を持ち続けている私たちにとって、築地の中央卸売市場の移転問題は見逃せない課題です。豊洲の新市場予定地の土壌汚染については、知事も、再調査の必要性を含め、専門家に意見を聞き、必要があれば実施すると都民に約束しました。その専門家会議の第一回目が開催され、今月末には二回目が予定されていますが、事業者がつくったデータや処理方法、過去の評価をなぞるだけでは見直しの意味をなしません。土壌汚染に関しては、法律の改正後の新たな基準でのデータ検証を進めてこそ、客観性が担保できると考えます。また、専門家会議の議論を多くの人と共有し、情報公開を進めることが信頼関係をつくる第一歩です。傍聴枠を大きく広げ、傍聴できなかった人への配慮を丁寧にすべきと考えますが、見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 西崎光子議員の一般質問にお答えいたします。
 新銀行東京についてでありますが、今決算においては、計画を上回る不良債権の発生などにより経営が悪化しました。これまでに一万六千六百件の融資、保証を実行しておりまして、中小企業金融において重要な役割を果たしていることには変わりはないと思います。
 都は出資者として、今後とも新銀行東京が、新経営陣のもとで収益面の改善を図りつつ、中小企業への金融支援を一層充実していくように働きかけを行ってまいります。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔福祉保健局長安藤立美君登壇〕

○福祉保健局長(安藤立美君) 六点についてお答えをいたします。
 まず、仮称民生・児童委員サポーター制度の検討状況についてでございますが、この制度は、児童虐待防止、子育て支援、高齢者の見守りなど、地域における課題が多様化していることから、民生・児童委員の活動のすそ野を広げ、地域力の向上を図ることを目的として導入するものでございます。
 現在、区市町村や民生・児童委員の代表などから成る検討会を設置し、地域の実情に即した制度となるよう、サポーターの選出方法や活動内容等について検討しております。
 今後も、関係者の意見を聞きながら、円滑な事業開始に向けて準備を進めてまいります。
 続きまして、集団感染防止における関係機関の連携についてでございますが、都では昨年度から、都内すべての保健所が集団感染の対策情報をリアルタイムで共有する、都独自のオンライン情報システムを運用しております。保健所は、このシステムからの情報を活用しながら、学校、校医、医師会等と連携し、速やかな休校措置を指導して感染経路を遮断するなど、感染拡大防止に努めてまいりました。
 このたびの流行では、都内の高校、大学で複数の患者が発生いたしました集団感染事例百五十二校に対し、速やかな指導を実施いたしました。
 次に、学校等での初動体制についてでございますが、麻疹は感染力が強いことから、免疫の弱い集団では感染が広がりやすく、患者発生時の初動が重要でございます。
 このため、都は、情報システムを活用して、患者発生情報等を迅速に伝達し、機動的な初動体制を確保してございます。
 今般の流行に際しましても、対策担当者の緊急連絡会の開催や、お話の対応マニュアル、これは国立感染症センターの監修したものでございますが、その一部を取り入れて都が独自に作成いたしました対策指針を活用するなど、地域における初動体制を着実に強化してございます。
 今後、各保健所が実施いたしました集団感染防止対策の事例について検討、分析するなど、対策の一層の強化に取り組んでまいります。
 次に、都民への注意喚起と予防接種勧奨についてであります。
 今般の流行に際しましても、都は、情報システムによります地域情報の把握や、指定医療機関での定点調査等から麻疹の流行を察知し、都民に対して速やかに注意喚起を行ってまいりました。
 麻疹の予防は、予防接種法に基づく定期の予防接種を確実に受けてもらうことが基本でございますが、接種期間が限られているため、法定の接種を受けられない子どもも一定数おります。
 都は、こうした子どもへの接種を促進し、ワクチン接種率のさらなる向上を図るため、今年度より、包括補助制度を通じた区市町村支援を開始しております。
 今後も、区市町村などと連携し、適切な情報提供と予防接種の勧奨に努めてまいります。
 次に、牛のBSE全頭検査についてでありますが、国は、生後二十カ月以下の牛の検査費用補助を来年七月末をもって終了することとしておりますが、その時点までは、これまでと同様に、すべての牛のBSE検査を実施していくことに変わりはございません。
 来年八月以降の検査に関しましては、今後の状況を踏まえ、適切に対応してまいります。
 最後に、輸入食品対策についてでありますが、都は、輸入食品対策を、東京都食品安全推進計画の重点事項として位置づけてございます。
 輸入業者や卸売市場に対しましては、健康安全研究センターの輸入食品監視班や市場衛生検査所が、また、小売りの段階では都内の保健所が、国の検疫所からの最新の違反情報なども踏まえまして、それぞれ効果的な監視指導を実施してございます。
 また、事業者の自主管理の推進を図るため、衛生講習会を開催し、輸入食品に関する最新情報を提供しております。
 さらに、都民に対しましては、ホームページで違反事例などを公表し、迅速な情報提供を行ってございます。
 今後とも、関係機関と連携し、こうした取り組みを着実に行い、都民の食の安全確保に努めてまいります。
   〔環境局長吉川和夫君登壇〕

○環境局長(吉川和夫君) バイオディーゼル燃料に関する四点のご質問にお答えいたします。
 まず、率先導入プロジェクトの進捗状況等についてでありますが、第一世代バイオディーゼル燃料は、植物を原料に含むため、品質劣化による車体等への影響を防ぐ観点から、適切な管理が必要であります。
 このため、都は、この秋より、都営バスを使ったモデル事業におきまして、燃料の管理方法などのノウハウを明らかにしてまいります。
 また、並行して、化学的処理により製造する、品質劣化のおそれがない第二世代バイオディーゼル燃料についても、実用化に向けた共同プロジェクトを進めてまいります。
 次に、バイオディーゼル燃料の原料についてでありますが、バイオディーゼル燃料の利用拡大が食料品需給の逼迫や熱帯雨林の伐採を促すことのないよう、都は、本年二月に開始した率先導入プロジェクトにおいて、既に原料調達などにも配慮しております。
 また、その一環として、廃食用油など、食用に適さない油脂の活用も検討を開始しております。
 次に、廃食用油の回収についてでありますが、約六割を占める業務用途からの廃食用油は、食品リサイクルの一環として、既に動物用飼料等へのリサイクルルートが確立しております。
 一方、一般家庭からの廃食用油は、一部の地域で回収されているものの、多くは固形化した後、可燃ごみとして出されている実態があります。
 現在、これらの実態を踏まえ、第二世代バイオディーゼル燃料の実用化に向けた取り組みにおいて、原料供給体制についても検討しております。
 最後に、都民等との連携についてであります。
 世界で最も環境負荷の少ない先進的な環境都市を実現するためには、都民、民間企業、NGOと行政が一体となり、カーボンマイナス東京十年プロジェクトを東京全体で展開していく必要があります。
 今後、そうした観点に立ち、都民などの省エネ意識をより高めるとともに、それぞれの役割と責任に応じた主体的な省エネ行動が積極的に推進されるよう努めてまいります。
   〔中央卸売市場長比留間英人君登壇〕

○中央卸売市場長(比留間英人君) 専門家会議の議論を都民と共有することについてでございます。
 豊洲新市場予定地の土壌汚染対策については、広く都民と情報を共有し、土壌汚染に対する不安を解消していくことが必要であると認識しております。
 このため、専門家会議は公開で行うとともに、会議終了後、速やかに会議の資料及び議事録等をホームページで公開するなど、審議過程の透明性の確保と都民との情報共有に努めているところでございます。
 会議の傍聴者数については、委員に密度の濃い実質的な討議をしていただくため、議論に集中できる静ひつな環境が保てるよう、四十人という枠を設けたところでございます。
 今後、できる限り多くの方々に会議の内容を理解していただけるよう、傍聴の希望に添えなかった方々への会議資料の配布などを検討してまいります。

○議長(川島忠一君) 以上をもって質問は終わりました。