平成十九年東京都議会会議録第十号

○議長(川島忠一君) 十三番原田大君。
   〔十三番原田大君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○十三番(原田大君) まず、環境税について質問します。
 大都市東京を持続可能な形で発展させていくことは、未来に対する私たちの責任です。
 これまでの産業経済社会の発展の中で、人間社会は自然環境にさまざまなものをごみとして排出してきました。これまで、人間社会のごみは自然が、いってみればただで全部処理をしてくれていましたが、最近では、ごみの量が自然環境の処理能力を超えてきています。ここまで環境に与える負荷が大きくなると、ごみ処理には相応の処理コストを払うことが必要だという認識を新たにしなくてはなりません。
 昨今、自動車リサイクル法や家電リサイクル法の中で、リサイクル料金が課されるようになってきました。しかし、産業社会の根本的な課題であるエネルギー消費から排出されるごみ、すなわちCO2については、削減実績とあわせて、なかなか成果が上がっていないのが現状です。
 その影響については、例えば東京都においてもこの夏の水不足が心配されておりますが、それも温暖化による気候変動が原因ともいわれ、影響が実感されるようになってきました。温暖化対策、省エネ対策は待ったなしの状況です。
 そうした中、東京都においては、環境税制についてが東京都税制調査会の今年度の検討項目の柱の一つに取り上げられることが、本年五月十六日の第一回会合で決まりました。また、六月一日に発表された東京都気候変動対策方針では、都独自の省エネルギー促進税制の導入を、減免、課税の両面で検討を開始することが盛り込まれています。こうした都独自の環境税に対する取り組みが積極的に掲げられていることについては、大変よいことではありますが、問題は、どれだけ本気で環境税制導入に向けた取り組みができるかであります。
 東京都気候変動対策方針では、国の動きを、環境税の導入をめぐっていたずらに長期間の議論が続いていると批判していますが、これまでいたずらに議論が続き、実際に導入に至っていない点については、残念ながら都も同様であります。
 都税調の答申を見ると、平成十二年度には温暖化対策として炭素税を創設する旨がうたわれ、翌十三年度の答申ではかなりのページ数が割かれていました。以後、十六年度までは炭素税について言及がありますが、それから途絶えています。
 そうした中、今回、都税調でも、東京都気候変動対策方針でも言及がなされたわけです。今回こそは、他に誇れる環境税制を構築していかなくてはならないと思います。
 この炭素税について、外部不経済の内部化ということを考えれば、導入についての議論は不可欠であります。都は、省エネルギー促進税制の導入を、減免、課税の両面で検討を開始することとしていますが、炭素税はそのうちの増税要因となります。こうしたことまであわせて議論していくということでいいのか、見解を伺います。
 あわせて、導入に向けてどういった展望のもとで検討を開始しようとしているのか伺います。
 炭素税の議論を進める際、既存の自動車関係税や燃料関係税、ひいては道路特定財源との関係についての調整を図ることは避けて通れません。そもそも既存の仕組みには環境の視点が欠落しています。そうでなくても化石燃料関係には既にかなりの税金がかかっていることから、新たに炭素税を課すとなると、負担を抑える意味で、既存の化石燃料税の一部を環境目的税に振りかえる、あるいは既存の財源を環境目的に使用するといった議論が必要かと思います。
 ただし、この道路特定財源は、大都市における道路需要に反して、自治体の財源が不足しております。都議会としても昨年の第三回定例会におきまして意見書を決定いたしました。しかし同時に、環境対策も待ったなしであります。この道路特定財源の問題を避けた形で環境税の議論が行われれば、導入可能性は著しく低下するものと容易に想像ができます。
 環境税の議論を始めるに当たり、道路特定財源の問題を国との関係性も含めて整理することが不可欠であり、今回検討を再開するに当たり、検討を始める前提条件としてとらえるべきだと考えますが、見解を伺います。
 こうした課題はありますが、本当に循環する社会経済システムをつくり、持続可能な大都市東京を築いていくためには、これまでコストが正当に評価されてこなかった経済の静脈部分、つまり、目に見えないエネルギーのごみとしてのCO2の処理費用を社会経済システムの中に組み込まなくてはなりません。その一つの解決策が環境税です。国が動かないというならば、今度こそ都が率先して導入していかなければならないと考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、放置自転車のリサイクルに係るトラブル防止について質問します。
 今日、自転車は便利な乗り物として広く利用されています。駅前等の公共の場所における放置自転車の処理については、特別法も整備され、区市町村を中心に取り組みが進み、一定の成果が認められるところであります。
 しかしその一方で、置き去りにされた放置自転車の問題があります。それは、団地やマンション等、私有地ではあるものの半公的な敷地内、あるいは駅前等以外の公共の場所など、放置自転車対策の根拠法となっている自転車法の枠に入ってこない場所における放置自転車の問題であります。
 現在、自治体による放置自転車の処理については、自転車法を活用し、自転車防犯登録制度等も活用しながら取り組みが進められています。その際、引き取り手のない自転車で再利用できるものについては、整備を行った上で一般に販売されたりしています。もったいない精神が発揮され、環境的にもごみの量を減らしていく取り組みが多くの自治体で実践されています。
 そうした中、最近、こうした自治体の取り組みを参考にしながら、団地の自治会、マンションの管理者等が、その敷地内の放置自転車の処分と再利用を進めている例を耳にします。こうした動きの趣旨については、環境への取り組みを進めるものでもあり、また地域自治を進めるものでもあり、一般には、よい取り組みと受けとめられるのではないかと思います。しかしながら、ここに落とし穴があり、トラブルが続発しています。
 まず、団地等でリサイクルされた自転車を利用中に警察官に呼びとめられ、利用者が、占有離脱物横領、遺失物横領といった罪に問われるケースが続発しています。あるいは、廃棄物として処分された後、所有者からの、ごみではなく価値のあるものだったという主張によってトラブルが発生したケースも見受けられます。
 実際、駅前等の放置自転車については、自転車法によって自治体の処分権や所有権の移転に関する規定があり、これに基づいて自治体は合法的に処分や所有権の移転が行えますが、団地やマンションの敷地等ではこの法律は適用されません。ほとんどの自治体では、民有地等の放置自転車については、相談があっても、対応ができないと伝えているようであります。
 そこで、団地の自治会やマンション管理者等が困り果てた結果、自治体に倣って処分や再利用をしようとすると、その場合には、民法の規定に従って、もとの所有者の所有権が強く保護されているために、勝手に処分や再利用すると罪に問われてしまう可能性があるわけです。
 しかしながら、団地やマンション等における放置自転車はやはり迷惑なものであり、放置された側は被害者です。彼らが救済されないばかりか、環境のことを考えて自転車をリサイクルしようとした場合に罪に問われる可能性があるなど、現在の仕組みの中では彼らが置き去りにされてしまっています。
 こうした状況を打開するために、都として、まずはトラブルを未然に防ぐために、法的に問題のない処分方法について周知するなどの対応が考えられるかと思います。まず、例えば都営住宅や民間マンション等の敷地における放置自転車の対応についてどのような取り組みをしていくのか伺います。
 トラブルに巻き込まれることなく放置自転車を処分あるいは再利用するには、自転車が廃棄物であるとはっきりいえるかどうかが一つの判断基準になります。そこで、放置自転車がどういう状態であれば、明らかに廃棄物であると判断できて処分や再利用を行うことができるのか伺います。
 この問題の解決には、根本的には国の法整備が必要かもしれません。しかしその前に、自転車利用者のマナーの低下が放置自転車を生んでいます。都は自転車利用者のマナーの向上についてどのように対応するのか伺います。
 次に、特別支援教育について質問します。
 北区と障害児教育のかかわりは深く、一八九一年、明治二十四年に、日本最古の知的障害者のための社会福祉施設である滝乃川学園が現在の北区滝野川の地に創立されました。以来、現在でも、自治体、民間を含めてさまざまな取り組みが進められています。都立の関連施設も集中しており、障害者福祉の分野で大きな役割を担ってきました。
 さて、東京都では、平成十六年に特別支援教育推進計画が策定され、現在、第一次実施計画の計画期間中であります。そうした中、都立の盲・ろう・養護学校に在籍する児童生徒の希望者全員が居住する地域の小中学校にも副次的な籍を置く副籍制度が本年度より本格的にスタートしました。
 これに先立ち、北区においては、多摩の三市と並んで、二十三区では唯一となる特別支援教育体制・副籍モデル事業が実施されました。実際に副籍事業が行われる中、養護学校の児童が一般の区立の小学校の運動会に参加できたなどの成果がありました。その運動会では、区立小学校の児童が自発的に養護学校の生徒を手助けする光景が見られるなど、区立小学校の児童にとってもよい経験となったに違いありません。
 さて、養護学校に入ってからはそれなりの教育相談体制があるものの、障害児を持つ親にとって最大の悩みは、まず就学前に訪れます。保護者が幼い自分の子どもの状態を十分客観的に把握し、子どもの就学先を決定するのはなかなか困難なことです。養護学校に入ってしまえば、地域とのつながりはどうしても希薄になってしまいます。かといって、区立の普通の小学校では、うまく対応できるかといった心配もつきまといます。こうした子どもを持つ親の不安を解消するためにも、また、都立の養護学校と区立の小学校が互いに補い合って最大の教育成果を上げてくためにも、就学前の教育相談体制の充実が望まれます。
 例えば、王子第二養護学校では、自閉症や教育心理学の専門家を招き、たんぽぽ教室という、就学前の幼児を対象とした幼児教室を今年度より実施の予定と聞いています。こうした相談の機会があれば、発達障害の早期発見にもつながり、その後の教育方針を決めていく上でも大いに参考になるはずです。
 現在、知的障害を対象とする幼稚園がない分、養護学校の小学部においてこうした取り組みを進めていくことは重要だと考えます。都においては、こうした各校の創意工夫を支援することが重要であると思います。都における就学前児童を対象とした相談等の事業の取り組み状況と今後の方針について伺います。
 北区においては、保育園、児童館では臨床心理士の巡回相談を実施していますが、必ずしも就学相談との連携が十分ではありません。障害を持つ子どもにとって最良の環境を見出していくためには、幼稚園と保育園や児童館、それも区立、都立、私立の差なく、情報交換と連携の体制をつくっていくことが必要です。
 無論、こうした各地での取り組みについては、地域によって歴史や持てる資源が異なるため、都で一律のやり方を押しつけるのではなく、地域の特性を生かした仕組みをつくらなくてはなりません。こうした地域の特性を生かした上でのさまざまな関係機関との連携について、都は地元区市町村とも連携しながらどのように進めていくのか伺います。
 LD、ADHD、高機能自閉症等の児童生徒が特別支援教育の対象となり、また、副籍事業が始まった結果、学校関係者の仕事がふえています。その中には、一定の専門知識がないと対応が難しいものもあります。
 北区の事例では、モデル事業の実施結果を受けて、区が小児精神科医師、心理職、学識経験者などから成る専門委員会と巡回相談チームを組織し、対応に当たることとしています。この場合は、区が専門家を配置することとなりましたが、特別支援学校にも同様の専門職の配置が求められる場合もあるかと思います。
 都は、今回のモデル事業の結果を受けて、専門家の必要性及び配置計画等についてどのように考えているのか伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 原田大議員の一般質問にお答えいたします。
 環境税についてでありますが、都は、温暖化問題に実効性のある具体策を提示できない国を待つことなく、CO2の大幅な削減を可能とする都市モデルをこの東京で実現するため、大規模なCO2排出事業所、つまり多量の電力を消費しているビルに対する削減の義務化、排出量取引制度の導入など、独自の対策の実施を目指して取り組んでまいります。
 税制の活用も有効な手段の一つでありまして、企業や家庭等での省エネを促進するための新しい税制度の確立に向け、東京都税制調査会で検討していただくつもりであります。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、都におきます知的障害のある就学前の幼児の相談についてであります。就学前の幼児に対しましては、現在、就学相談室を設けて、就学する学校の選択についての相談を行っております。今後は、さらに地域のセンター的機能を有する都立特別支援学校小学部設置校においても、幼稚園や保育所に在籍する幼児に対して幅広く支援や助言を行ってまいります。
 次に、都とさまざまな関係機関との連携の進め方についてでありますが、都教育委員会では、東京都特別支援教育推進計画第一次実施計画におきまして、障害のある幼児に対する就学前機関の支援を小学校等につなげるため、保護者と幼稚園、保育所などが連携して作成します就学支援シートを開発してまいりました。今後、区市町村への就学支援シートの普及に努めていくとともに、特別支援学校と幼稚園、保育所や関係機関等との情報共有などを推進してまいります。
 次に、特別支援教育にかかわる専門家の必要性や配置についてでありますが、ご指摘の北区の事例のように、各区市町村が専門委員会と巡回相談チームを組織し、対応に当たることは極めて重要であります。都教育委員会は、これまでも区市町村におけるこうした組織づくりに対し、助言を行ったり、専門家を紹介したりするなどの支援を行ってきたところでございます。
 今後は、都立特別支援学校の教員がその専門性を発揮し、区市町村が設置する専門委員会や巡回相談チームの一員として活動にかかわることにより、区市町村における特別支援教育を支援してまいります。
   〔主税局長熊野順祥君登壇〕

○主税局長(熊野順祥君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず環境税の導入についてでございますが、東京都税制調査会は、平成十三年の答申におきまして、環境税を全国ベースの地方税として導入すべきとしてございます。今回、気候変動対策が我が国の喫緊の課題であり、カーボンマイナス東京十年プロジェクトを東京全体で展開することが重要であるとの認識に立ちまして、改めて東京都税制調査会に対しまして、独自の省エネ促進税制について、また省エネ投資等の促進、省エネ行動への誘導など、幅広い角度から検討をお願いしたものでございます。
 次に、省エネ促進税制検討の前提条件についてでございます。独自の省エネ促進税制につきましては、導入の効果、それから産業経済への影響、他の環境政策との関係、さらには、ご指摘の道路特定財源を初めとする既存の税制との整合性など、さまざまな視点から検討することが不可欠であると考えております。
   〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕

○都市整備局長(只腰憲久君) 都営住宅などにおける放置自転車についてでございます。都営住宅の日常管理は居住者で構成します自治会が自主的に対応しておりまして、都といたしましては、放置自転車の処分に係る法的な留意事項等につきまして、今後とも自治会への情報提供に努めてまいります。
 また、民間マンションの管理に関する情報につきましては、これまでも管理業団体などを通じまして提供を図っておりまして、放置自転車につきましても必要に応じて対応してまいります。
   〔環境局長吉川和夫君登壇〕

○環境局長(吉川和夫君) 放置自転車のリサイクルについてでありますが、廃棄物処理法における廃棄物とは不要になったものをいい、放置された自転車の場合には、所有権の放棄の意思が明示されている必要があります。しかし、現実にはその確認は困難であり、遺失物か廃棄物か、断定しがたい場合が多うございます。明確に廃棄物と判断される自転車につきましては、貴重な金属資源であることから、単に処分するのではなく、できる限り自転車として再利用したり、鉄スクラップ等としてリサイクルすることが重要であると考えております。
 都は、今後とも、関係機関や区市町村と連携して、再利用やリサイクルが円滑に進むよう周知を図ってまいります。
   〔青少年・治安対策本部長舟本馨君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(舟本馨君) 自転車利用者のマナーの向上についてでありますが、都は、例えば本年一月に実施しました自転車利用に関する緊急アピールの中で、歩道上の暴走行為の禁止などとともに、自転車放置の禁止についての訴えも行ったところであります。今後とも、利用者マナーの一層の向上を図るため、あん・あん自転車TOKYOキャンペーンなどを通じて、自転車放置の禁止についても普及啓発に努めてまいります。