平成十九年東京都議会会議録第十号

○議長(川島忠一君) 五十五番大西さとる君。
   〔五十五番大西さとる君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○五十五番(大西さとる君) 行政改革、特に選挙の開票事務改善を通して質問をさせていただきます。
 ことしは選挙の年、今年度の選挙管理委員会の予算は九十三億円、予算的にも大きなテーマですが、それだけではなく、自治体における迅速性、効率性の意識の重要性、職員の意識改革の必要性ということに踏み込んで伺います。
 統一地方選挙では、各地で行政改革を訴える候補者が多くいたようです。行政改革とは一体何でしょうか。公務員の数を減らすことが行政改革でしょうか。事業や業務の民間委託を進めることでしょうか。
 もちろん、余剰人員をカットする必要はあります。しかし、既に適正な人数になっている部署においては、それ以上の削減は、残った人に業務がしわ寄せされ、サービスの低下を招きかねない結果となります。安易な業務委託は、質や安全性の低下を招くおそれがあります。
 そうではなくて、今あるものを、今あるだけでもっと効果を出す、要するに効率化というものを徹底的に追求すること、これが真の行政改革ではないでしょうか。
 選挙の開票事務改善は、効率化を追求する取り組みの一つであります。開票事務改善の動きは、昨年四月十八日の産経新聞の朝刊に、コンマ一秒の節約実る、多摩市長選四十六分で開票終了という記事が載ったことがきっかけになり、現在、全国的にコンマ一秒運動として、大きな運動になりかけています。
 五月二十三日の総務省選挙部の選挙特報でも、開票についての迅速化に取り組むよう、具体的な内容に踏み込んだ通知が行われています。
 この写真をごらんください。Tシャツにジャージ姿の職員がきびきび作業を行っています。都内でも先進的な自治体の開票風景でございます。これは別の自治体の開票風景です。ほおづえをついた女性もいますが、自分の担当の仕事が終了し、手持ちぶさたになっている職員が写っています。後ろでは、まだ開票している職員もいます。効率的に取り組んでいるつもりでしょうが、残念ながら、このような状況があるのも、これまた事実でございます。
 選挙の開票には時間がかかるという思い込みが、有権者や候補者、職員にあるのではないでしょうか。しかし、公職選挙法には、選挙の結果を選挙人に対して速やかに知らせるように努めなければならないという規定があります。
 また、地方自治法には、地方公共団体は、最少の経費で最大の効果を上げるようにしなければならないと規定されています。公選法からも自治法からも、選挙の開票事務は迅速に、そして効率的に行わなければならないことがわかります。
 今回の統一地方選挙で、佐賀県では、県の選挙管理委員会が中心となり、全県を挙げて開票事務の改善に取り組み、きめ細やかに対応することにより、知事選、県議選で開票所要時間の平均が五十四分も短縮するといった大きな成果を上げています。
 ところが、私が調べたところ、今回の東京都知事選挙においては、逆に開票所要時間の平均が前回より十五分も長くなっているようです。この現状をどう考えるのか、所見を伺います。
 四月の都知事選挙で、開票事務の費用として二億八千万円が計上されています。そのうち七〇%が開票従事者にかかわる費用、つまり約二億円が人件費です。平均時間が短縮されることで、このうちかなりの額が節減されるのではないかと思いますが、開票時間短縮の財政削減効果について、所見をお伺いいたします。
 また、他県の取り組みの話になりますが、京都府では、今年度の総務部の運営目標の中に、市町村の選挙管理委員会と連携し、コンマ一秒運動を通した効率的な開票事務を推進、参議院選挙で府内全市において取り組むということをホームページ上で公開をしております。
 岩手県では、自治体の規模にかかわらず、効率性を比較するために、事務従事者一人当たり一分間でどれだけ開票できるかの、一分間開票数を指標に、県内の自治体を評価しています。
 統一地方選で一番効率的であった紫波町という町では、一人一分間十・二一票を処理しています。ちなみに東京都内では、一番効率的であった大田区が五・六一票です。目黒区は一・五六と、幅がございます。
 今回の統一地方選挙では、福島県相馬市や広島県三次市、長野県小諸市で開票時間が三十分を切り、マスコミからも大きく取り上げられました。これらの自治体では、明確な目標設定をし、職員が担当事務を超えて研修、リハーサルを繰り返し、そこから生まれた創意工夫、アイデアが開票事務の短縮化に生かされていったとのことです。
 その結果として、市役所全体として、嫌々仕事をやっていたやらされ感から、みずからの意思で積極的に仕事に取り組むやりがい感に職員の意識が大きく変化し、この運動をきっかけに、他の業務にまでよい影響を与えたとのことです。こうした意識改革こそが本当の行政改革だと考えるものであります。
 しかしながら、こうした全国の自治体の改善運動をリードしたのが府中市や多摩市、そして足立区といった東京都内の自治体であることを忘れてはいけません。
 これらトップランナーともいえる東京の自治体に、全国から多くの自治体が視察に訪れ、ベンチマークしていき、そこから学んだことを自分たちの創意工夫をプラスして成果を上げているのです。県議選の開票をたった二十九分で終了した小諸市も、実は府中市の開票事務を視察して、参考にして、そして実現したとのことです。府中市など開票事務のトップランナー自治体を抱える東京都が率先してこの開票事務の改善に取り組み、リーダーシップを発揮する意義は極めて大きいといえます。
 これまで、都選管として、区市町村の開票事務の短縮のためにどのような工夫や努力をしてきたのか、今後の取り組みとあわせ、所見を伺います。
 また、区市町村の開票事務の改善を促すためには、財政的なインセンティブも重要です。開票事務の効率化により、人件費や会場費などの開票経費を削減することが可能になりますが、このことは、区市町村にとっては国や都からの交付金が減額されることにほかなりません。せっかく開票時間を短縮しても、交付金が削減されるだけの今の仕組みでは、区市町村がさらに事務改善をしようというモチベーションが働きにくくなってしまいます。
 そこで、努力して開票時間を短縮し、経費を削減した自治体に対して、削減した額を別の名目で還元するなどの財政的な優遇措置を検討するべきだと考えます。所見を伺います。
 七月には参議院選挙が予定されています。参議院選挙の比例代表は、かなり複雑な開票事務になります。私も、比例代表の開票立会人をして、明け方まで帰れなかったことを思い出します。こうなると、開票事務の改善に取り組んだか、そうでないかで、大きな差が出てしまいます。一時間、二時間の差は簡単に出ます。ここまでこのコンマ一秒運動が広がってくると、改善に取り組まなかった自治体が、努力を怠った自治体として目立ってしまうことにもなりかねません。
 参議院選挙は目の前です。区市町村の開票事務の改善に向けた都選管の取り組み、選挙管理事務局長の決意をお伺いいたします。
 大きな改革の流れは、小さな改善の積み重ねから起こります。ぜひ東京都がこの運動に積極的に取り組み、全国の自治体のトップランナーになり、都内の区市町村、そして都庁の職員の意識改革につなげていくことを要望するものです。
 最近の選挙の開票事務における全国的なスピードアップの動きについて、知事の所見を伺います。
 次に、正規労働者と非正規労働者の格差是正について伺います。
 パート労働者、派遣社員、契約社員といった形態の労働者が、正社員と全く同じ仕事をしているにもかかわらず、待遇的に大きな差が生まれている現状があります。
 五月二十五日、国において、正社員と格差是正を目指す改正パート労働法が成立いたしました。しかし、その内容は、待遇改善が期待されるパート労働者の範囲が限定されるなど、極めて不十分なものとなってしまっています。
 均等待遇、格差是正に取り組む必要があると考えますが、パート労働者の処遇改善さえその実行が期待できない国の取り組みを待っていては、いつまでたっても均等待遇、格差是正は実現しません。
 昨年十二月に東京都が策定した「十年後の東京」では、同じ仕事の質であれば、同様の労働条件とする公平な人事管理を行う企業を支援し、モデル企業として広く普及させていくことが示されております。
 私も、東京都として、正規、非正規を問わず公正な労働条件で働くことが可能になる社会の構築に向けて、早急に処遇の格差改善など具体的な取り組みを実施していくべきだと考えますが、所見を伺います。
 次に、エレベーターの安全確保対策について伺います。
 昨年六月に、港区の区営賃貸住宅のシンドラー社製エレベーターで死亡事故が起き、一時期は各種報道などで騒がれました。
 しかし、事故発生から一年が経過したにもかかわらず、事故の原因はいまだ警察が捜査中であり、国でも昨年九月に社会資本整備審議会に設置された対策部会の中間報告が出されましたが、エレベーターの安全確保対策は、事故以来、まだ何も改善されていないのが実情です。
 この間、シンドラー社が特別で、国内シェアの大半を占める大手五社のエレベーターは安全だという世論が形成されてきました。実はそうではなかったということが判明し、国内大手五社のエレベーターでさえ、ワイヤロープのストランドの破断が発生しているという、人命を危険にさらしかねないふぐあいの発生が相次いで報じられています。
 エレベーターは全国で約七十万台、そのうち東京には二割強を占める十五万台が設置されており、日本でエレベーターが最も集積している都市となっています。シンドラーエレベーターでの死亡事故も都内で起きたものです。
 現在、都は国の対策をただ待っているだけのようですが、国がもたついている間にも、また次の悲惨な事故が起きないとも限りません。エレベーターの安全確保対策について、都として独自に情報収集や調査研究を行い、具体策を国に提案するようなアクションを率先して起こすべきだと考えますが、所見をお伺いいたします。
 三つの分野でお伺いいたしましたが、東京が他県の模範となり、さらに他県をリードして諸問題を解決していただくことを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 大西さとる議員の一般質問にお答えいたします。
 開票事務のスピードアップについてでありますが、選挙は民主政治の根幹をなす重要な作業、仕組みでありまして、その管理執行は公正かつ正確であることが基本であります。この基本を十分に踏まえた上で、選挙の結果を早く知らせるためにも、開票の効率化を図ることは当然のこととは思います。
 しかしながら、最近の一分一秒を競うかのごとき風潮は、開票の精度を低下させ、選挙事務への信頼を損なうおそれもあると思います。これは決して早ければいいというものじゃないと思います。
 かつて中選挙区のころの衆議院で、何県でしたか、関東のある県で、これは一票差だかで衆議院の当落が決まったこともあります。それから、たしか、私もいろいろお世話になったことのある山中貞則さんは、晩年の選挙で、一回当確が出たけど、その後、わずか僅差で当選がひっくり返ったということもありました。こういう事例を踏まえますと、繰り返して申しますけれども、決して早ければいいというものじゃないと思います。
 これまで、都と区市町村の選挙管理委員会において、正確かつ効率的な開票への工夫や努力がされておりました。今後とも同様に対応していくものと考えております。
 他の質問については関係局長から答弁します。
   〔選挙管理委員会事務局長梶原康二君登壇〕

○選挙管理委員会事務局長(梶原康二君)  五点の質問にお答え申し上げます。
 まず、都知事選挙における開票作業時間についてでございますが、前回と比較して長くなった要因としては、立候補者の数が前回の五名から十四名へと大幅にふえたこと、また、投票率が約九・四ポイント上昇し、投票総数が約百十万票も増加したことなどが考えられます。
 このように、開票の現場におきましては、立候補者数、投票総数、さらには開票立会人が行う確認作業等により、その作業時間にかなりの差が生じるという実態があり、単純な比較は困難でございます。
 次に、開票作業時間短縮による節減効果についてでございます。
 作業時間を短縮した区市の中には、開票事務従事者を増員して対応した団体もあり、このような場合には、逆に人件費増となる可能性もございます。
 一般的には、開票作業時間が短縮されれば、従事者の手当の減などにより、経費の削減が見込まれるところであり、今後も区市町村と連携して、効率的な選挙の執行に努めてまいります。
 次に、開票作業時間短縮の取り組みについてでありますが、開票作業は区市町村において公正、正確に万全を期すとともに、迅速化に向けてもさまざまな工夫が重ねられてまいりました。
 都選挙管理委員会としても、これまで開票作業の効率化に向けた取り組みや、工夫事例を区市町村に情報提供するなどしてまいりました。今後も、区市町村職員向けの研修の活用など、多様な方法により支援してまいります。
 次に、時間短縮に対する財政的な優遇措置についてでございます。
 選挙執行に係る区市町村への交付金は、選挙の執行に際して実際に要した経費を交付するという仕組みとなっておりまして、削減した額の還元など、実費以外の額を交付するといった優遇措置は困難でございます。
 もとより、開票事務の効率化は必要であり、そのための機器や資材等に要する経費については、現行制度を運用していく中で適切に対応してまいります。
 最後に、参議院議員選挙に向けた取り組みについてでございます。
 参議院議員選挙の適正な執行に向け、五月には区市町村選挙管理委員会委員長会議を開催し、公正、正確な事務の執行に加え、開票事務の迅速化についても改めて要請しております。
 区市町村の現場では、既に着々と準備が進められている中、相互の連携を一層密にし、選挙の適正かつ効率的な執行に向け全力を挙げて取り組んでまいります。
   〔産業労働局長佐藤広君登壇〕

○産業労働局長(佐藤広君) 正規労働者と非正規労働者との処遇の格差の是正についてでございます。
 都はこれまでも、パートタイマーなどの非正規労働者の雇用環境の改善に向けまして、セミナーによる啓発や、パートアドバイザーの企業訪問による相談、助言等を実施してきたところでございます。
 また、雇用環境の改善に取り組もうとする中小企業に対しまして、専門家を派遣して支援するとともに、すぐれた取り組みを行っている企業をモデル企業に指定をいたしまして、ホームページ等で広く紹介しているところであります。
 今後とも、こうした取り組みを通じて、非正規労働者の雇用環境の改善に努めてまいります。
   〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕

○都市整備局長(只腰憲久君) エレベーターの安全確保対策についてでございます。
 エレベーターは、設置時のみならず、日常点検によりまして運行の安全を確保していくことが重要でございます。
 現在、国では、事故や一連のふぐあいの発生を受けまして、建築基準法に基づくエレベーターの定期検査制度の見直しを進めております。
 都といたしましても、検査制度を運用する立場から、その検討の場に参画し、適切な検査のあり方などにつきまして、現場としての考えを反映させてまいります。
 今後とも、国や区市、関係団体とも連携し、エレベーターの安全確保に向け万全を期してまいります。