○副議長(木内良明君) 三十一番松下玲子さん。
〔三十一番松下玲子君登壇〕
○三十一番(松下玲子君) まず初めに、放置自転車対策について伺います。
先日、都内における駅前放置自転車の現況についてが発表され、昭和五十二年の調査開始以来、駅前放置自転車は初めて実数で十万台を下回ったとのことですが、毎年継続的に行っているこの調査の目的と調査方法について伺います。
駅前放置自転車は過去最低となったものの、放置自転車の撤去台数は過去最高の九十万九千台、このうち持ち主に返還されたものは四十八万六千台、引き取られず処分されたものは四十二万二千台です。撤去された自転車の約半分が持ち主に引き取られずに区市町村が処分しています。
処分の内訳を見ますと、廃棄物として有償処分が約六七%を占めています。廃棄物として無償処分は約二%、資源として業者に売却は約二三%、リサイクルは約八%です。
自転車法第六条三項は、処分自転車は売却し、買い受け人がいないときまたは売却できないと認められるときは廃棄の処分をすることができるとなっていますが、現状は七割近くの撤去自転車を区市町村の負担で代金を支払って廃棄物として処分しています。
今日、これだけ環境問題が重視され、折しも今月は環境月間です。省エネルギー、ごみ減量で二酸化炭素の排出を削減して、個人も企業も行政も地球温暖化防止に取り組まなければならない中で、まだ使える自転車、撤去された放置自転車が廃棄物として、しかも有償で処分をしている現状を改善すべきです。
これまでの調査を比較してみると、過去三回の調査以前は、処分先の内訳が今と異なり、産廃と資源回収業者が同じ数字で、有償か無償かも不明です。内訳が明らかになっているだけでも進歩かとは思いますが、自転車法にのっとり、また環境に配慮して、資源としての売却やリサイクルをふやし、財政負担の大きい有償廃棄処分を減らし、税金をむだ遣いしない方法に変更するべきです。
平成十七年に初めて資源として売却した、私の地元の武蔵野市の取り組みを聞きました。平成十七年の売却収入が約二百七十万円、廃棄費用が約八十二万円です。平成十六年には廃棄費用のみで約二百五十万円でしたので、費用として払っていたものが収入として受け取れるように変わり、平成十八年はほとんど売却できたとのことです。売却を実施した際には、先に取り組んでいた中野区の担当者にノウハウを聞いたようです。
都は、処分先の内訳をさらに分析し、先進的な取り組みのノウハウを収集し、積極的に区市町村に提供していくべきだと思います。
そこで、都は、引き取り手のない撤去自転車の処分先内訳の調査結果をどう受けとめ、今後、廃棄物として有償処分を減らすためにどのように取り組むか伺います。
もちろん、撤去台数を減らし、返還台数をふやすための努力も同時にしていただきたいと思います。長年の継続的な取り組みで駅前放置自転車が初めて十万台を下回ったのは喜ばしいことかもしれませんが、それでもまだ十万台近い自転車が駅前に放置されているのが現状です。道路を占拠している駅前放置自転車をなくし、安全で快適な通行ができるように、都はもっと積極的に取り組んでいただきたいと思います。
放置自転車対策のこれまでの都議会での議論を調べると、平成十三年の答弁では、地域性が強いことや自転車利用の実態などから、基本的には住民に身近な自治体である区市町村が実施することが効果的であるといっていたのが、平成十五年や十七年の議論では、放置自転車対策は条例に基づき区市町村が具体的な取り組みを進めることと、いつの間にかニュアンスが変わっている感じがします。
これはなぜかと思い、調べたところ、大体平成十三年までに、地元駅での放置自転車対策に頭を抱えていた各区市町は、放置自転車に関する条例を制定しています、そして、当該道路の管理者が例えば都であっても、条例の責任で区市町が放置自転車を撤去できるようになっているのです。そうした事実の積み重ねが現在に至っているのではないかと、私は推測します。
いま一度、自転車法の趣旨にのっとり取り組むべきです。例えば第五条一項は、自転車駐車場の設置に努めるのは地方公共団体または道路管理者であり、同六項では、整理、撤去は地方公共団体、道路管理者、警察、鉄道事業者が相互に協力して努めるとなっています。当然どちらにも都も区市町村も入るわけですから、区市町村が主体的に設置や撤去を行うものではないはずです。
そこで、区市町村と協力して、都として今後どのように放置自転車対策を進めていくのか、見解を伺います。
近年、自動車リサイクル法や家電リサイクル法など、個別リサイクル法が整備されています。所有者や製造業者、引き取り業者の役割分担や費用負担が明確に示され、それぞれの分野でリサイクルのシステムが確立されていますが、残念ながら自転車リサイクル法は整備されていません。これまでの議論を調べると、放置自動車が社会問題となっていたときに、自動車のリサイクルシステムの確立が放置自動車対策に有効であり、都としてもリサイクルシステムが早期に確立されるよう、国に積極的に働きかけ、取り組んでいたようです。
放置自転車の抜本的な対策として、自転車リサイクル法、自転車はサイクルともいいますから、サイクルリサイクル法と、響きもよい法律の法制化を、都が検討し、積極的に国に対して働きかけていただきたいと要望し、次の質問に移ります。
風致地区について伺います。
風致地区は、大正八年の旧都市計画法の制定に伴い創設された制度で、都市における緑地の保全に関する制度として、我が国初めてのものです。風致地区は、現行の昭和四十三年に成立した都市計画法に規定する、都市における風致を維持するために定められる地域地区であります。国交省の風致地区制度の都市の風致の定義とは、都市において水や緑などの自然的な要素に富んだ土地における良好な自然的景観であり、風致地区は、良好な自然的景観を形成している区域のうち、土地利用計画上、都市環境の保全を図るため風致の維持が必要な区域について定めるものです。
しかし、国交省の定義では、良好な自然的景観とはどのようなものであり、都市環境の保全や風致の維持とは具体的にどのような姿かは見えません。
そこで、東京都において風致地区の果たしている基本的な役割について伺います。
都市の風致の定義である良好な自然的景観とはどのようなものかを考えるとき、日本列島各都市で、自然的景観は、その土地ならではの地域性や歴史的な経緯が色濃く反映し、良好という言葉の意味も非常に幅が広いと思います。都内を眺めても、比較的自然が豊かな多摩地域と都心の二十三区では、良好という言葉の示す姿、目指す姿が異なるように思います。
そこで、都内に風致地区と指定されている地区は幾つあり、それぞれどのような特色か伺います。
都市計画法第五十八条は、風致地区内における建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採その他の行為については、政令で定める基準に従い、地方公共団体の条例で、都市の風致を維持するため必要な規制をすることができるとあります。
東京都は昭和四十五年に東京都風致地区条例を制定していますが、現在の条例の規定では、許可の基準や取り扱いが明確ではありません。また、個々の風致地区に対しての特徴や計画、運用方針が明記されていないため、この条例だけに基づいて実際に運用することは非常に困難であると思います。
条例を運用する際に、実際にある風致地区がどういった経緯で制定されて、今後どうしていきたいのか、東京都がそれぞれの地区における良好な風致や目指すべき姿はどういうものかということが、具体的な方針として、それも風致を保全する方針として定めるべきだと思います。
さらに、都市計画法や風致地区条例の趣旨を逸脱しない形で運用していくためには、細かく運用の基準も定めていなければ、良好な風致の保全はできないと思います。
平成十二年に都市計画法が改正された翌年、国交省は都市計画運用指針を発表し、その中には、風致保全方針を策定し、許可の運用に当たっての参考として活用することが望ましいとあります。沖縄県は三年前に風致保全方針を決定し、策定の目的や方針の位置づけを明確にし、県のホームページで公開しています。
都は、風致保全方針ではなく条例に基づく許可の審査基準を策定していて、運用してきているようですが、残念ながら都の審査基準は広く公開されていないようで、インターネットで検索しても見ることはできません。
東京都は、これまで風致地区条例をどのように運用してきたのか伺います。
現在、参議院宿舎が千代田区紀尾井町の風致地区内に移転し、新たに建設される計画があり、国から都に対して、協議を開始するよう依頼があったそうですが、協議開始を行わないようにと、移転反対住民が都知事を被告とした訴訟を起こしています。
国から都に対しての協議依頼や協議内容、訴訟について現在の状況はどのようになっているか伺います。
参議院宿舎の移転・建築計画は、約八十平米の広さの宿舎を八十戸つくり、高さは約五十六メートルになっています。風致地区の歴史ある緑地を破壊してまで、このような立派な宿舎を移転、建設する必要が本当にあるのでしょうか。建設是非については、本来参議院が再考すべき問題であることは承知していますが、残念ながら、これまで参議院の議会では議論も行われていないようです。
今回、私が現地に足を運び、調査を行った上で残念だと感じたことは、本来、参議院宿舎の是非や、移転、建てかえをせずに統廃合できないかなど、国の中、特に参議院で議論して解決すべき問題がすりかえられているように思えることです。つまり、風致地区を守りたい人たちと、紀尾井町のまちづくりを考えて旧宿舎の移転を望む人たちというような、同じ地域の住民を二分する形の議論のすりかえといえないでしょうか。
今後、風致地区を保全するためには、都として区域ごと保全方針を定めるなど、基本的な部分でしっかりと保全のための対策を講じる必要があると思います。緑豊かな歴史ある風致は、都民、国民共有の財産であり、未来へと守り、受け継いでいくべきものであることを強く要望して、次の質問に移ります。
境浄水場隣接都有地について伺います。
私の地元の武蔵野市には、東京都水道局所有の境浄水場があります。周辺は武蔵野市の西の玄関口武蔵境駅からも近く、拡幅事業で整備された都道、近隣は住宅街です。境浄水場の一部には、現在、西側隣接地に賃貸の駐車場と倉庫があり、この場所に昨年秋、商業施設を誘致する計画が、水道局のホームページに発表となりました。
これまでも、福祉保健局が、高齢者や障害者が地域で安心して暮らし続けられるよう、グループホームの増設を目的として、低廉な価格で都有地の貸し付けを行い、産業労働局が、首都東京の再生を担う民間事業者の活動をバックアップする目的で、都有地活用型企業支援事業を行うなど、各局所管で、それぞれの施策に応じた都有地の活用を行っています。
水道局では、境浄水場の西側に隣接する用地の活用を図るため、商業施設を建設することとして既にテナントも決まっていますが、水道局における用地の活用に対する基本的な考え方を伺います。
次に、都有地の活用に当たっては、地元自治体や地域住民の理解を得て、信頼関係を築いていくことが大切であると思います。また、どのようなテナントが入るかということも地域では非常に関心が高く、テナントの募集は広く情報公開を行い、募集をした上で、選定に当たっては地域への貢献度なども配慮すべきと考えますが、どのような考え方で募集や選定を行ったのか、見解を伺います。
昨年来、地元自治体や近隣住民に対して、都と共同事業者が説明を行っているようですが、私はこれまで、より広く地元市民に対して告知をした上で説明会を行うよう要望を続けてきました。先月、ようやくテナントが決定し、具体的な事業計画や店舗の内容などが今後明らかになり、地元とも具体的な協議ができる時期になりました。地域に受け入れられる施設となるよう、テナント事業者と水道局は広く市民の声に耳を傾けていただきたいと思います。
現在、武蔵野市は、月に二回市報を各戸配布しており、市の行政の施策や、時には都の施策に関しても周知を図っています。今後、境浄水場隣接都有地に関して、市報に載せ、広く市民に周知を行った説明会を開催するなど、地元自治体や住民の意向に十分配慮しながら事業を進めるべきと考えますが、見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔青少年・治安対策本部長舟本馨君登壇〕
○青少年・治安対策本部長(舟本馨君) 松下玲子議員の一般質問にお答えをいたします。
放置自転車の対策についてであります。
まず、現況調査の目的と調査方法についてでありますが、この調査は、駅前放置自転車対策の基礎資料とするために、都内の駅前放置自転車の現状などについて調査するものでありまして、毎年実施しております。
調査は、駅周辺のおおむね五百メートルの範囲の放置自転車の状況、自転車など駐車場の整備状況、そして、撤去、返還、処分状況などを、まず各区市町村が調査をし、それを都が取りまとめ、分析をして発表しているものでございます。
次に、引き取り手のない撤去自転車の処分方法についてでありますが、廃棄物として処分される自転車の数は多いとはいえ、他方、近年、自転車を資源として再利用するために売却する数は、従来よりかなり増加をしています。自転車を資源として売却するという方法は、経費の節減や資源リサイクルの観点から望ましいわけでありますので、自転車の再利用を促進していくために、区市町村に対して先駆的事例を紹介するなど、積極的な情報提供を行ってまいります。
次に、今後の都の放置自転車対策についてでありますが、都は、これまでと同様に、区市町村が実施する放置自転車対策が有効かつ適切に実施されるよう、所要の支援をし、また、広域自治体として総合的な対策を着実に行ってまいります。
具体的には、放置自転車の現況調査を行うとともに、駐輪場設置のための都有地の提供や、特別区都市計画交付金の交付などのほか、用地確保などの各種の調整や、駅前放置自転車クリーンキャンペーンなどの全都展開を今後とも実施してまいります。
〔都市整備局長只腰憲久君登壇〕
○都市整備局長(只腰憲久君) 風致地区でございますが、風致地区は、水や緑など良好な自然的景観の保持を目的とした都市計画上の地域地区でありまして、その維持のため、建築物の建築や宅地の造成、土地の形質の変更などに一定の規制が課されております。
これまで、河川や水域、丘陵、崖線など、自然景観の特性に応じて地区が定められておりまして、都市環境の保全を図る役割を担っております。
次に、風致地区の指定でございますが、現在都内では二十八カ所、三千五百七十ヘクタールが指定されております。例えば武蔵野の豊かな田園景観を持った地区、あるいは都心部に残された自然地形と文化財的要素が一体となった地区など、それぞれの地区におきまして自然的景観に応じた特性が見られるものと考えています。
〔建設局長道家孝行君登壇〕
○建設局長(道家孝行君) 初めに、風致地区条例の運用についてでありますが、風致地区内において建築物の建設、宅地の造成などを行うには、あらかじめ知事の許可が必要であります。許可に当たっては、東京都風致地区条例に基づく許可の審査基準を定め、許可の基準及びその取り扱いを明確にしております。
この審査基準では、風致地区内を地域の現況や特性に応じて五つに区分し、その区分ごとに、土地の面積、形状などの敷地条件や、建物の公共性、公益性の有無などに応じて、許可の基準をきめ細かく定めております。
さらに、この基準を受付窓口で公開し、その内容を説明するとともに、申請者からの相談に応じ指導に当たるなど、適切に条例を運用しております。
次に、参議院宿舎の建設についての現在の状況でありますが、風致地区条例では、国が建築物を建設する場合には、許可にかえて、あらかじめ知事に協議することとしております。国からは、千代田区の弁慶橋風致地区内の国有地に参議院宿舎を建設するとして、本年五月十六日に協議の申請があり、現在、建設計画の内容について国と協議中であります。
また、お尋ねの訴訟につきましては、現在訴状が届いておりませんので、その内容を把握しておりません。
〔水道局長東岡創示君登壇〕
○水道局長(東岡創示君) 境浄水場隣接都有地についての三点のご質問にお答えいたします。
まず、水道局用地の活用の基本的な考え方についてでございますが、水道事業は独立採算により事業運営を行っておりまして、常に経済性や企業性の発揮が求められております。このため、事業用として利用計画がない土地については、貴重な経営資源としてとらえ、企業努力の一環として積極的な利活用を図ることにより、収益の確保に努めております。具体的には、当該用地の特性に応じて、共同ビルの建設や事業用借地権の設定、駐車場としての暫定利用などを行っているところであります。
次に、テナントの募集及び選定についてでございますが、この用地のすぐれた立地条件を最大限に生かすため、商業施設を建設することといたしまして、昨年十月末にホームページに掲載するなど、情報公開を行った上でテナントを募集したところです。その結果、六件の応募がありましたが、選定に当たっては、事業の収益性とともに、隣接する浄水場の安全性や周辺環境への配慮、地域貢献などを総合的に評価し、本年五月にテナントを決定したところであります。
最後に、地元に配慮した事業の推進についてでございますが、これまでも、テナント募集の際など、随時地元への情報提供に努めてまいりました。このたびテナントが決定したことから、来月中旬に住民説明会を開催することとしておりますが、実施に向けては、地元自治体の協力も得ながら、広く住民に周知したいと考えております。
今後とも、事業の推進に当たっては、近隣との調和のとれた利用が行われるよう、十分な配慮を図ってまいります。
○副議長(木内良明君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
午後三時十分休憩
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