○議長(川島忠一君) 七十九番初鹿明博君。
〔七十九番初鹿明博君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○七十九番(初鹿明博君) 石原知事は、都独自の認証保育所制度を創設し、待機児童の解消に努めるなど、子育て支援を進めているといっていますが、これだけで満足しており、子育て世代が抱えているその他さまざまな課題を十分に理解をしているのか、甚だ疑問です。
働きながら子育てしている親にとって、保育所に入所できればすべて問題解決というわけではありません。保育所に入所できても、子どもが風邪を引くなど病気にかかると、保育所では預かってもらえず、対応に大変な苦労を強いられています。仕事も、一日二日ならともかく、何日も続けては休めず、かといって預け先もなかなか見つかりません。風邪などの病気の子どもを預かる病児・病後児保育を拡大していくことは、働きながら安心して子育てできる環境をつくる上で喫緊の課題です。
しかし、実態は、都内の病児・病後児保育施設は、六十四カ所、二百六十名の定員しかなく、これではインフルエンザの流行期など対応できるはずはありません。
また、病児保育施設は、インフルエンザの流行期などは定員を超えて申し込みがある一方、季節によっては受け入れ定員を満たない日が続くなど、補助金をもらっても赤字運営を強いられているのが実情です。
子どもは病態が急変しやすいため、小児科など医療施設に併設されている施設が病児保育には望ましいですが、施設型だけで地域のニーズをすべてカバーすることは限界があります。
このような状況の中で、施設を持たずに自宅や派遣で病気の子どもを預かる地域型病児保育が広がりを見せています。江東区を拠点に活動するNPO法人フローレンスは、地域型病児保育の草分け的存在で、地域の小児科医と提携し、会員登録した子どもを、研修を受けた子どもレスキュー隊員が自宅もしくは訪問で預かるという形をとっており、マスコミでも取り上げられ、会員数も受け入れ地域も拡大しています。
厚生労働省も、非施設型病児保育である緊急サポートネットワーク事業を開始し、東京都でも中野区、町田市、清瀬市でこの事業がスタートしています。
今後、施設を持たず家庭の中で子どもを預かる地域型病児保育が拡大していくと思いますが、都が一昨年作成した東京都病後児保育事業マニュアルにおいては、実施例がほとんどないことから、参考として留意が必要な事項について個別に触れるにとどめるとなっており、施設を持たない地域型病児保育には統一的な安全基準がありません。最低限の保育の質を担保するためにも、都として一定の安全基準を設けるべきと考えますが、所見を伺います。
家庭的な保育は、病児保育に限らず、夜間保育、一時保育、障害児保育など、施設型保育では十分に対応できない分野で一定のニーズがあり、現に多くの母親が助けられております。
家庭の中で子どもを預かるケースとして、家庭福祉員、いわゆる保育ママや、地域の助け合いの組織であるファミリー・サポート・センター、そして認可外保育施設という位置づけになる民間の個人や団体があります。民間で業として行う場合、家庭的保育でも認可外保育施設としての届け出が必要で、施設としての安全基準を満たすことが要求されます。一方、保育ママやファミリー・サポート・センターにはこの基準は適用されず、自治体ごとまちまちの対応になっています。
多くの子どもをある程度の広さの中で預かる施設保育と、一軒家やマンションの一室で少人数の子どもを預かる家庭的保育とでは、安全上配慮すべき点は異なるはずです。家庭内で預かる場合、例えば家具に転倒防止の措置がされているか、はさみや刃物などが放置されていないか、たばこなど誤飲のおそれのあるものが置かれていないかなど、家庭内だからこそ気をつけなくてはならない基準があるはずです。
そこで、都として、統一した家庭的保育ならではの安全基準をつくるべきと考えますが、所見を伺います。
さて、このような形で安全基準を厳しくしていくと、届け出せずに、やみに潜って営業を行うケースが増加する可能性があります。現在も、届け出をすれば年に一回の行政の立入調査があり、あれこれ問題点を指摘されますが、届け出なければ、煩わしい行政のチェックが入らないため、届け出ずに営業している事業者が少なからずいます。
利用者の大半は、届け出済みの施設なのか、無届けなのか、それどころか、認可外の施設が届け出制になっていることすらも知らずに子どもを預けているのだと思います。届け出ているか否かを利用者がすぐにわかり、選択する上での判断基準となるようにすることが、結果として事業者の届け出を促すことにつながると思いますが、そこで、認可外保育施設の届け出をしていることが利用者に一目瞭然で判断つくように、入り口に貼付する届け出済みステッカーを作成したらいかがでしょうか、所見を伺います。
先月、特色ある障害児教育を行っているという京都市立西総合養護学校を視察してまいりました。京都市では、全国で唯一、この西総合養護学校を初め、東、北、呉竹の四校の養護学校をコミュニティスクールに指定しています。
養護学校というと、学校のある地域外から大半の児童生徒が通学してくるため、地域からは嫌がられるケースも見受けられますが、コミュニティスクールとなり、地域に開かれることによって、地域の方々による学校理解や、障害児に対する理解も深まり、地域によりよい影響を与えます。また、地域からのボランティアもより多く学校に参加することとなり、学校にとっても大きなメリットとなります。
また、高等学校においても、既にチャレンジスクールなどで大学生のボランティアを活用している事例はありますが、コミュニティスクールに指定することで、さらに多くのボランティアが学校にかかわりを持つと同時に、地域の学校理解も深まり、職場体験の受け入れ先の拡大など、よりよい効果が期待できます。
都としても、都立盲・ろう・養護学校や都立高等学校をコミュニティスクールに指定すべきと考えますが、所見を伺います。
京都市の取り組みとして興味深いのは、養護学校の生徒が作業学習で作成した製品を販売する「歩」という名のアンテナショップを持っていることです。この店では、各養護学校の生徒が日がわりで店番に立ち、自分たちがつくった商品を自分たち自身の手で販売するという活動をすることによって、自信を培い、社会参加、自立をする力をはぐくんでいくことをねらいとしています。
都でも、養護学校の生徒の実習の場として、また、都民の皆さんが生徒と触れ合い、障害児への理解を深めるためにも、このような取り組みを行うべきと考えますが、所見を伺います。
京都市では、総合養護学校という名のとおり、障害の種別にとらわれずに、知的障害のある子ども、肢体不自由の子どもを一つの学校で受け入れる取り組みを始めています。現在、車いすの児童の普通学級での受け入れが進み、肢体不自由校に通う生徒の大半は重複した障害を持つようになっていることを考えますと、障害の種別で分けることが必要なのか、疑問に思えます。
西総合養護学校では、多動の自閉症の子どもと車いすの子どもが同じ空間にいて事故が起こるのではないかという当初の心配も杞憂に終わり、知的障害のある生徒が肢体不自由の生徒の車いすを押している姿が見られるなど、教育上非常によい効果をもたらしていると感じました。
社会に出れば、障害のある人もない人も同じ地域で暮らすことになります。しかし、学校では、まずは障害があるかなしかで分けられ、さらに障害児は障害の種別ごとに分けられます。障害者自身が自分の障害とは異なる障害者のことを理解していなくて、障害のない人とある人との間の理解が進むはずはありません。
障害のある人もない人も、どんな障害を持つ人も、ともに助け合いながら暮らしていく真のノーマライゼーション社会を目指す上で、学校においても、でき得る限り、障害の有無や種類にかかわらず、同じ空間で授業を受け、学校生活を送っていくことが理想です。
こうした理想を目指す第一歩として、都教育委員会として、京都市の取り組みを参考にしながら、異なる障害の子どもを受け入れる学校をできるだけ拡大すべきと考えますが、ご所見を伺います。
昨年十月から障害者自立支援法が本格施行となり、障害者を取り巻く環境は大きく変化し始めています。今後は、地域で暮らす障害者は格段に増加し、障害のある人とない人がかかわりを持ちながら暮らしていく場面が多くなると考えられます。
しかしながら、依然として障害者施設の建設に対して反対運動が起こるなど、障害者への無理解や偏見から、障害者やその家族の多くが暮らしにくさを感じています。悪意からの差別も依然として存在する一方、何げない言動が障害者を傷つけ、差別されたと感じさせている例も数多くあります。
さて、このような現状の中で、差別や偏見に苦しむ障害者やその家族にとって、昨年は画期的な年となりました。お隣の千葉県で、障害者の差別をなくすための条例、障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例が、困難な状況を乗り越え、成立したのです。
千葉県では、障害者差別をなくすための研究会を民間からの公募でつくり、まずは県民から実際の差別事例を八百件以上収集し、集まった差別事例を、教育、福祉、医療、労働、商品・サービスの提供、建物・公共交通機関、不動産取引、情報提供などの分野に分け、これは差別なのか、どうしてこのような差別が起こるのか、どうすれば解決できるのかということについて話し合ったといいます。この研究会には、障害当事者や家族のみならず、企業の側からも委員に加わり、条例の作成に携わりました。
また、各地でタウンミーティングを開催するなど、多くの県民を巻き込んでの活動が、結果として多くの県民に障害者のことについて考えさせるきっかけになりました。
また、障害者も、自分と異なる障害を持つ人のことをほとんど理解していなかったことや、障害者も社会のあり方を理解しなくてはいけないということが、会を進めていく中で気づき出したそうです。
研究会の座長を務めた野沢和弘氏を我が会派の勉強会に講師として招いたときに、次のようなエピソードをご紹介いただきました。
研究会の副座長を務める視覚障害者の方が、タウンミーティングで次のようなお話をされたそうです。神様のいたずらで、障害者はどの時代も、どのまちでも一定の割合で生まれる。しかし、神様のいたずらが過ぎて、このまちで目の見えない人が多くなったらどうなるか。私はこのまちの市長選に立候補する。目の見えない人が多いので、私は多分当選するでしょう。そのとき、私は選挙公約をこうします。まちの財政も厳しいし、地球環境にも配慮しなければならないので、まちの明かりをすべて撤去する。そしたら、目の見える人たちが飛んでくるでしょう、夜、危なくて通りを歩けやしないじゃないかと。市長になった私はこういいます。あなたたちの気持ちはわかるけど、一部の人たちの意見ばかり聞くわけにはいきません。少しは一般市民のことも考えてください。視覚障害者である私たち一般市民にとっては、明かりなんて何の必要もない。地球環境がこんなに危機に瀕しているのに、何で目の見える人はわかってくれないのだろう。
障害の問題の本質は、何かができるかできないかということではなく、どういう特性を持った人が多数で、どういう特性を持った人が少数なのか、そして、多数の人は少数の人のことをわかっているのかいないのかということに尽きるのではないかと、野沢氏は私たちに残していきました。
多数派である私たちは、もう少し少数派のことを配慮して生きなくてはならないのではないでしょうか。いや、だれしもが、石原知事あなた自身も含めて、病気や事故で障害者になるかもしれないし、年をとれば体に不自由なところも出る、認知症にもなるかもしれません。人生の中で、元気で健康な多数者であることは意外と短いのかもしれません。家族や知人に少数者が生まれる可能性もあります。そう考えると、だれもが、そう、石原知事あなたも、障害者のことを人ごとではなくなるはずです。
だれもが自分の心の中にある差別する心を見詰め直し、自分と異なる世界を考えるきっかけとなる条例をつくることができたら、東京都も世界から尊敬される都市になると思います。
さきの都議選の際に、障害者差別禁止法、JDAを実現する全国ネットワークが実施したアンケートによりますと、私たち民主党を初め、自民、公明、共産、生活者ネットと、すべての会派が条例制定に賛意を示しています。
本来なら、国が障害者差別禁止法を制定すべきでありますが、日弁連やDPIという障害者団体が障害者差別禁止法案を発表しているにもかかわらず、国の動きは緩慢で、国連総会で障害者差別禁止条約も成立しましたが、法整備に向けた動きはまだ見えておりません。
法整備が進まない中、首都東京が独自の条例をつくることは、国に対しても大きなプレシャーになるでしょうし、他府県への影響も大きいと思います。
条例をつくったからといって、直ちに差別がなくならないことは承知の上ですが、何もしないでは、人々の心の中に変化はあらわれてこないとも思います。条例制定によって、障害のない人は障害者のことを知るきっかけとなり、障害のある人は社会のことを理解するようになるはずです。
昨年の我が会派、門脇ふみよし議員の質問に対して、知事は、何よりも何よりも大事なことは心の問題だと思いますと答えました。人々の心を動かすきっかけをつくるためにも、多くの障害者やその家族が制定を待ち望んでいる障害者の差別をなくすための条例を東京都として制定すべきだと考えますが、国に先駆けてさまざまな問題に取り組んできたとおっしゃる知事の所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 初鹿明博議員の一般質問にお答えいたします。
障害者の差別をなくすための条例についてでありますが、都はこれまで、どんなに障害が重くとも、障害者がみずからの人生のあり方を選択、決定し、人間としての尊厳を持って生活できるよう、障害者施策の充実に取り組んでまいりました。
障害者の差別をなくすため、都は、あらゆる機会をとらえて、障害のある方とない方との交流を広げ、障害に対する都民の理解を深めるとともに、障害者の自立を支援する具体的な施策も着実に積み重ねてまいりました。
我が国には障害者基本法がありますが、障害者権利条約はまだ批准されておりません。また、既に条例を制定している自治体もありますが、差別の認定などの判断がかなり困難であるとも聞いております。
都としては、他の自治体の状況なども勘案しながら、しっかりと取り組んでまいります。
他の質問については、教育長及び福祉保健局長から答弁いたします。
〔教育長中村正彦君登壇〕
○教育長(中村正彦君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
まず、都立学校をコミュニティスクールに指定すべきとのお尋ねについてであります。
コミュニティスクールの仕組みは、国におきまして、小中学校を念頭に、保護者や地域住民の参加、連携等をねらいとして設けられているものであります。
こうしたコミュニティスクール制度を、全都を学区とする都立高校や、複数区市をまたがる通学区域となることの多い都立盲・ろう・養護学校に導入することについては、慎重に考える必要があるというふうに考えております。
都立学校におきましては、既に全校に学校運営連絡協議会を設置いたしまして、保護者や地域住民の学校運営への参加を図っているところであります。
また、ボランティア等の活用につきましては、地域住民や学生等のボランティア参加の環境整備に努めているところでもあります。
今後とも、都立学校におけるこうした取り組みを進めてまいります。
次に、養護学校の職業教育等で作成した物品の販売についてでありますが、物品の販売を含め、盲・ろう・養護学校の職業教育の成果を地域社会等へ提供していくことにつきましては、職業教育の充実、生徒の社会参加への意欲向上、地域社会の理解促進等の効果が期待できることから、従来より、各養護学校におきまして、近隣の商店等と連携した委託販売など、さまざまな取り組みが行われているところであります。
また、あす十七日には、東京都西部学校経営支援センターの主催によりまして、多摩教育センターにおきまして、盲・ろう・養護学校の生徒の制作した物品を販売するフリーマーケットを初めて実施いたします。多くの都民の方々にぜひお出かけいただきたいと思っております。
都教育委員会としましても、このような職業教育の成果を提供する取り組みを進めてまいります。
次に、異なる障害の子どもの受け入れを行う学校についてでありますが、障害が重複する児童生徒に対しまして、それぞれの障害に応じた教育の専門性を活用することにより、教育内容、方法の充実を図ることが重要であります。
こうした観点から、平成十六年十一月に策定いたしました東京都特別支援教育推進計画におきましては、知的障害教育部門と肢体不自由教育部門を併置する学校としまして、現在、町田養護学校及びあきる野学園養護学校に加えまして、多摩養護学校、永福学園養護学校、青梅東学園養護学校、これは仮称でございますが、この三校を整備していくこととしております。
今後とも、推進計画に基づき整備を進めてまいります。
〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕
○福祉保健局長(山内隆夫君) 子育て支援に関する三点のご質問にお答えいたします。
初めに、病児・病後児保育の安全基準についてでございますが、病児・病後児保育は、症状が急変する子どもを預かることから、特に安全面に配慮した運営が求められます。
このため、都では、平成十七年度、本事業を適正に運営する指針となる病後児保育事業マニュアルを策定いたしまして、保育の実施主体である区市町村や事業者に広く周知を図っております。
お話の、個人の自宅で実施する病児・病後児保育は、現在、幾つかの区市町村でのみ実施しております。本マニュアルは、こうした場合においても、緊急時の対応や感染症対策など、活用できるものを多く盛り込んでおり、実施形態を問わず、適切な安全確保に資するものと考えております。
次に、家庭的保育の安全基準についてでございますが、保育を実施するに当たっては、子どもの安全を十分に確保することが最も重要でございます。
こうしたことから、都は、認可外保育施設指導監督基準を策定しまして、保育する乳幼児が五人以下の小規模な事業所もすべて届け出対象とするなど、国を上回る厳格な基準を設け、安全性に重点を置いた指導を行っております。
お話にあった民間事業者などが実施している家庭的保育についても、この基準の対象であり、安全確保の観点から、家具の転倒防止など設備面や、感染症予防などの衛生面の対策を適切に行うよう指導しております。
最後に、認可外保育施設の届け出についてでございますが、都では、開設を届け出た認可外保育施設に対し、施設内の見やすい場所に、施設の概要や保育内容などを記載した書面の提示を既に義務づけております。
また、施設を選択する際には、利用者が保育内容や設備の状況を確認できるよう、利用に当たっての留意点や、届け出された施設の立入調査の結果などを都のホームページで公表しております。
引き続き、認可外保育施設の基本情報や検査結果などの情報公開に努めてまいります。
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