平成十九年東京都議会会議録第四号

○議長(川島忠一君) 三十三番野上ゆきえさん。
   〔三十三番野上ゆきえ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○三十三番(野上ゆきえ君) 初めに、外かく環状道路について伺います。
 外かく環状道路は、現在、大深度地下方式への都市計画変更手続が進められており、実現に向けて動き出しました。先月、沿線七区市から、条件つきながらも大深度地下方式とする計画変更に了承する旨の意見書が提出され、おおむね合意が得られてきたといわれています。
 ところで、三環状道路整備の必要性など都市基盤整備を語る中で、知事は、議会や記者会見などにおいて、文明工学的に見て欠かせないというフレーズを再三使っています。ところが、学術上文明工学なるものはありません。広辞苑にも載っておりません。英語でいうシビルエンジニアリングの邦訳文で多少使われている程度なのではないかと思いますが、シビルエンジニアリングの邦訳は、学術上一般的には土木工学です。
 文明工学なるものは、知事の造詣深い学問なのかもしれません。しかし、首都東京の知事たるお方が、本線、ジャンクションだけでも外かく環状道路整備として一兆二千億円の費用をなすこの事業に、一般都民にまるで認知されていない言葉を使ってみずからの政策の判断根拠として語っておられるのはいかがなものかと思います。
 そこでまず、文明工学とは一体どのような学問なのか、その定義について、文明工学に関して見識高い石原知事の所見を伺います。
 さて、外環計画を進める上で不可欠なのは、地域住民の理解と協力です。昨年六月に都が開催した地元説明会や大泉学園で実施されている外環オープンハウスなどにおいて、住民からさまざまな意見、要望が寄せられています。
 私の地元練馬では、青梅街道インターチェンジの計画案に最も関心が集まっています。平成十七年九月に示された計画案では、練馬区内に関越道方面への出入りが可能なハーフインターチェンジ方式となっています。しかし、我が会派の田中幹事長が、昨年、第一回定例会の文書質問で主張したのと同様に、私は、ハーフインターとする案は、地元の練馬区と隣接する杉並区との相反する主張を中途半端に満足させる、安易な妥協案ではなかったかと考えます。
 地元住民の中には、ハーフインターでは半分の利便性しか享受できない、中央道や東名高速方面への出入りが可能なフルインターチェンジをと望む声もあります。青梅街道インターチェンジ設置を検討するならば、平成十七年一月より住民からの意見収集を開始した際に示された、当初の二つの案、フルインターとしてつくるか、あるいはつくらないかのどちらかを選択するべきではなかったのかと考えるものです。
 同九月に国土交通省と都から示されたインターチェンジ設置に当たっての検討資料では、青梅街道インターチェンジについて、フルインター、ハーフインター、インターチェンジを設置しないという三つの案が比較されていますが、なぜこのハーフインターとする案が最適とされたのか、非常に理解しづらいというのが率直な感想です。
 そこで、青梅街道インターチェンジについては、いろいろと検討した上で、ハーフインター方式が採用されたものと推測されますが、だれが、どのような根拠をもって判断したのか、所見を伺います。
 特に青梅街道インターチェンジは杉並区と練馬区の区境にあることから、地域的な課題も多岐にわたるものと考えますが、事業化に向けてどのような課題があるのか伺います。
 都は、国とともに、これまで三百八十回にも及ぶ住民との話し合いや情報提供など、パブリックインボルブメント、いわゆるPI活動に取り組んできました。しかし、PI外環沿線会議において、都がPI会議での議論を来月に予定されている都市計画審議会に直接伝えることは難しいと表明したことに対し、市民委員は、一体この会議は何のためにやってきたのかと激しく反発し、会議自体の意義を問われるものとなったと聞いています。
 このように、話し合いや情報提供の場がどのような位置づけで、今後どのように進められるかがあいまいになっている上に、合意形成が図られることがないのが現状です。
 今後は、事業化に向け、外環道全体についての議論のみならず、個別地域の課題解決のための取り組みも必要だと考えます。そこで、特に青梅街道インターチェンジについて、どのように住民との合意形成を行っていくのか、所見を伺います。
 渋滞の解消や利便性の向上など、外環道の整備効果を高めるという面では、インターチェンジの果たす役割は大きいと考えます。設置には、賛成、反対の両論があることも承知しております。現時点でハーフインターが最適とされたものはやむを得ませんが、将来的なフルインター化に向けた検討も引き続き並行して行っていただくよう、強く要望しておきます。
 次に、都営大江戸線の延伸に向けた環境整備について伺います。
 都営大江戸線は、平成十二年一月の運輸政策審議会答申第十八号で、整備主体の見直し等の課題がありますが、少なくとも二〇一五年までに整備着手することが適当な区間とされ、東京都交通局経営計画新チャレンジ二〇〇七でも、大江戸線の光が丘から大泉学園町間の延伸が明示されており、少しでも早い延伸の実現をと地元住民の多くが待ち望んでいるところです。
 整備予定路線の約三分の一に当たる、光が丘駅側の笹目通りから土支田までの区間、土支田・高松地区においては、その半分を東京都が施行しますが、昨年八月に国の事業認可がおり、事業に着手する予定です。これにより、大江戸線の延伸に向け一歩前進いたしましたが、土支田・高松地区における補助二三〇号線の整備の現状並びに今後の取り組みについて、所見を伺います。
 さて、残る三分の二の区間、大泉町・大泉学園町地区においては、練馬区がまちづくり協議会を設置し、広く地域住民の意見を聞きながら沿道のまちづくりについて検討を開始し、平成十九年秋から測量再開、事業化に向けて一歩前進したと認識しています。このようなまちづくりの動きに関しては、基本的には地元の住民と練馬区とが主体的に担っていくべきものです。
 そこで、補助二三〇号線の整備主体となる東京都は、地元住民ないし地元住民代表者とどのように信頼を築き、そして具体的にどのような必要な支援や助言を行っていくのか伺います。
 次に、都立病院における医師確保、育成について伺います。
 厚生労働省の医師需給に関する検討会では、医師は平均で週に六十三・三時間働き、月九十時間以上は時間外労働をしており、同省の過労死認定基準が目安とする月八十時間の時間外労働を超えていると報告しました。
 医師をサポートする看護師の離職率も近年高どまりしており、日本看護協会によると、二〇〇五年度の全国での常勤看護職員離職率は一三・一%で、東京都は大阪府の一八・九%に次いで一七・七%となっています。都立病院においても、看護職員の退職者は毎年約一割に上ると聞いています。
 先日、ある都立病院の現状について看護師の方々を取材いたしました。電子カルテ導入で、検査や処置予約、薬の処方せん発行、会計等、効率的な病院経営が行えるようになった、これ自体は非常によい傾向であるといっておられました。反面、社会的な要請から、インフォームド・コンセントや感染症予防策の徹底、医療事故防止に以前より時間と手間がかかるようになり、慢性的に医師や看護師の業務は、記録をする時間がなく、業務過剰、みずからが行う医療サービスの質にいつも疑問を持っているといいます。
 電子カルテについては、記録方法の不徹底と不統一、POSシステムによる記載が困難という課題があり、電子化されたといっても、医師の自筆のサインが必要な保存文書はなくなっていないため、事務量がそれほど減っていないのも一つの要因です。
 このように課題の多い医療現場での医療従事者、特に医者の確保、育成について、以下三点伺います。
 全国各地の病院で産科や小児科を初めとした医師不足が深刻な問題になっており、地方の病院に限らず、地理的に有利な東京、大阪などの大都市の病院においても、医師の欠員により、一部の診療科が休止状態に陥るケースや、病院の存続までも危ぶまれるケースも耳にしています。豊島病院ではお産の取り扱い休止、墨東病院の産科は昨年十一月から、ハイリスクを除いた妊婦の新規受け付けを中止しました。
 特に公立病院における医師不足は地域住民に与える影響が大きく、都立病院としても、医師を安定的に確保しなければならないと考えます。都立病院における医師の充足状況と、医療サービスの確保にどのように取り組んでいくのか伺います。
 平成十六年度に導入した初期臨床研修制度により、大学病院も医師が不足し、系列病院からの医師引き揚げが相次いでいると聞いています。緊急に医師確保策を進めるとともに、長期的な取り組みも必要だと考えます。高水準で専門性の高い医療を提供し続けるためには、今後は都立病院みずからが医師を育成していく必要があると考えますが、所見を伺います。
 医師の意識が多様化している中、技術面のレベルアップができれば激務もいとわないという、志の高い医師も多いと思います。現実としては、給与、勤務条件などの処遇面も充実しなければ、優秀な医師を確保することは困難であると考えます。
 そこで、都立病院では医師の処遇改善についてどのように取り組んでいるのか、所見を伺います。
 最後に、市場化テストについて伺います。
 都は、平成十七年十一月に公表した行財政改革の新たな指針で、東京都版市場化テストの導入を明らかにし、来年度から都立技術専門校を対象にモデル事業の実施の予定です。しかし、このモデル事業は、いまだモニタリングの評価の方法についても定まっていないままです。サービスの質の評価手法がないままで市場化テストを行うことは、コストだけの競争を招き、サービスの質が劣化するのは明らかで、モデル事業とはいえ、公共サービスの質の向上、民のノウハウを活用するという、市場化テストの本来の目的とはややずれているのではないかとの不安や懸念もあります。
 さて、本格的な市場化テストの実施に当たっては、検討すべき課題が幾つかあると考えます。
 一つは、入札時における適正な競争原理の確保です。市場化テストの場合、一般に、非定型業務については、質の向上のための習熟期間を与える、サービスの安定的供給を担保するという観点から、長期契約を採用することに一定の合理性があると判断されますが、やはり非競争的な業務運営に陥る可能性も少なくありません。また、情報や技術のブラックボックス化、業務ノウハウの独占等の課題があるのではないかと考えます。必要な情報が落札した企業のプライバシーとして扱われ、多くの分野、項目で、市民が情報にアクセスする手段が失われる傾向にあるからです。
 そこで、市場化テストにおける入札時の適正な競争原理の確保について所見を伺います。
 また、現行法上、安全管理やサービス水準の確保についての評価の仕組みが定められていない中で、チェック機能も必要です。官民競争によって将来的に受託者が変更になる場合のサービスの維持向上策について所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 野上ゆきえ議員の一般質問にお答えいたします。
 文明工学についてでありますが、これは学問ではなくて、文明に関する工学的原理のことであります。これまでの私の発言を聞いていただければ十分理解できることだと思いますが、大変残念であります。(発言する者あり)それはあなた方の知性の問題でしょう。言葉は生き物ですからね、辞書に載っているだけが言葉じゃないんです。
 人間が謳歌している文明の仕組みは、時代が進めば進むほど、一見ますます複雑化しているようにも錯覚いたしますが、実はその原理は不変です。
 私は、運輸大臣時代、運輸省の新しいロゴをつくったときに提唱しまして、運輸は文明のアクセスというロゴをつくりまして、今でも生きておりますが、要するに人間の往来による情報や物の交流が文明を推進し、経済の実利を増幅させてきたのが人間の歴史であります。時間的、空間的に狭小になった今日にあって、この原理はますます鮮明になってきております。情報や物が大量に行き交うのが都市にほかならず、都市の持つこうした巨視的な役割を無視すると、国際空港や幹線道路を欠いた、いびつで非効率的な都市にならざるを得ません。こうしたことを成果としてこれからもよく学習し、認識していただきたいと思います。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、外環の青梅街道インターチェンジの設置についてでございますが、インターチェンジの形式は、周辺道路や利用圏域など、地域の状況を踏まえて選定するものでございます。青梅街道インターチェンジの交通量を推計したところ、東名高速方向に比べ、関越道方向への交通量が卓越しております。このため、地元区や住民の意見なども踏まえ、周辺の道路整備の状況や、隣接する目白通りインターチェンジの利用圏域などを勘案し、国と都でハーフインターとする判断をしたものでございます。
 次に、青梅街道インターチェンジの課題についてでございますが、その事業化に当たりましては、周辺環境との調和やまちづくりとの整合、インターチェンジ周辺の生活道路の確保などの課題がございます。
 次に、青梅街道インターチェンジに関する住民対応についてでございますが、外環については、これまで都は、国とともに、計画の早い段階から情報提供や話し合いなどを実施してまいりました。都市計画変更後も引き続き国や沿線自治体と連携し、地域住民の理解と協力が得られるよう、きめ細かく対応してまいります。
 最後に、土支田・高松地区における補助第二三〇号線の整備についてでございます。
 本区間では、道路整備に合わせて沿道のまちづくりを進める沿道一体整備事業を実施しております。道路整備については、昨年八月に事業着手し、現在、地権者と用地取得の折衝を行っているところでございます。
 また、沿道のまちづくりについては、練馬区が地区計画等の都市計画の手続を進めており、今後とも地元区と連携しながら、住民の理解と協力を得て、良好な市街地の形成に取り組んでまいります。
   〔建設局長依田俊治君登壇〕

○建設局長(依田俊治君) 補助第二三〇号線の大泉町・大泉学園町地区における地元対応についてでありますが、この区間については、練馬区が実施する沿道のまちづくりに合わせて整備を進めていくこととしております。本年二月には練馬区がまちづくり協議会を設置し、広く地域住民の意見を聞きながら、沿道のまちづくりについて検討を開始いたします。
 地域のまちづくりは、基本的には地元の住民と区が主体的に担っていくべきものですが、都は、協議会の場などの機会をとらえ、今までと同様に、必要により支援や助言を行ってまいります。
   〔病院経営本部長大塚孝一君登壇〕

○病院経営本部長(大塚孝一君) 都立病院に関する三問のご質問にお答えいたします。
 まず、都立病院における医師の充足状況と医療サービスの確保についてでございますが、平成十九年一月一日現在の充足率は九四%となっております。現実に医師の欠員が生じております産婦人科、麻酔科など一部の診療科では、各大学の医局に対する精力的な派遣要請やホームページ等を利用した公募採用を行うほか、非常勤医師の活用や地域の医療機関との連携を充実することなどによりまして、引き続き医療サービスの確保に向けて努力してまいります。
 次に、都立病院における医師の育成についてでございますが、これまでも初期臨床研修に加え、シニアレジデント制度、サブスペシャリティレジデント制度など、体系的な臨床研修制度を整備し、医師の人材育成に力を注いでまいりました。
 さらに、現在、都独自の取り組みとしまして、都立病院医師アカデミー、仮称でございますが、を創設する準備を進めており、今後の都立病院の中核を担う、質の高い若手医師の計画的育成を目指してまいります。
 最後に、都立病院における医師の処遇改善についてでございますが、これまでも、初任給調整手当の増額や職務住宅借り上げの拡充、院内保育室の充実など、さまざまな改善策を講じてまいりました。加えて、宿日直手当につきましても、この四月からの大幅な改善に向けて現在準備を進めております。
 今後ともさらなる処遇改善を図り、医師の確保に努めてまいります。
   〔総務局長大原正行君登壇〕

○総務局長(大原正行君) 市場化テストに係る二点のご質問にお答えを申し上げます。
 先ほど議員から、市場化テストについて、モニタリングあるいは評価について定まっていないというご指摘があったのですけれども、私どもは、平成十八年十一月、昨年の十一月ですけれども、東京都版市場化テストモデル事業における事業実施状況のモニタリング及び事業実施後の評価の詳細についてという文書を定めまして、モニタリング等の準備をしております。
 モニタリングは事業実施後に行うものでございますので、来年度に入りまして、事業が実施されてからモニタリングを行いまして、その結果については、総務局それから産業労働局のホームページで公表する予定でございます。
 そこでまず、市場化テストにおける適正な競争原理の確保策についてでございますが、市場化テストは、官民が対等な関係で競い合い、公共サービスの提供主体を決定する手法でございまして、民間事業者が参加しやすい環境を整備することが重要でございます。このため、今回の技術専門校を対象としたモデル事業におきましては、民間との競争にふさわしい科目を選定し、都の事業実績や詳細なコスト情報を開示しました上で、民間事業者の意見を聴取し、実施要項を策定いたしました。
 さらに、対象科目の選定から事業実施者の決定に至る一連の手続につきましては、外部委員を含めた監理委員会の監視のもとに実施をしておりまして、適正な競争が確保されたものと考えております。
 次に、受託者が変更になる場合のサービスの質の維持向上策についてでございます。
 当初の契約期間が終了し、再度官民競争入札を実施する場合は、改めて都の要求水準を明記した実施要項を策定することとなりますが、その際には、前回の事業実施者が行った事業内容で都の要求水準を上回ると評価されたサービスにつきましても、新たな実施要項に反映をすることとしております。
 また、事業実施者に対しては、日常的な指導、監督に加えまして、事業実施状況のモニタリングを行い、確実な事業遂行を求めていくこととしております。
 こうした仕組みを通じまして、事業実施者が変更することになりましても、より質の高い行政サービスを提供していくことができると考えております。
   〔三十三番野上ゆきえ君登壇〕

○三十三番(野上ゆきえ君) 先ほどの建設局長答弁について再質問いたします。
 私の質問を繰り返して述べていただくものではなく、これから補助二三〇号線の整備主体となる東京都としての見解を伺って、地元住民ないし地元住民代表者とどのように信頼を築き、どのように具体的に必要な支援や助言を行っていくのかということを伺ったものでありますので、答弁をお願いいたします。
   〔建設局長依田俊治君登壇〕

○建設局長(依田俊治君) 先ほども申しましたように、地域のまちづくりは区が主体となって行うべきものでございますけれども、東京都といたしましても、オブザーバーとして参加しておりますまちづくり協議会におきまして、そういった場を通じまして、道路整備とまちづくりが一体的に進められるよう、必要な技術的な支援などを行ってまいります。