平成十九年東京都議会会議録第三号

○副議長(木内良明君) 七十三番いのつめまさみさん。
   〔七十三番いのつめまさみ君登壇〕

○七十三番(いのつめまさみ君) 石原知事、教育長、関係局長にお伺いいたします。
 まずは、外国人との共生についてです。
 東京都では、かつてニューヨーク市、北京市、パリ市、ニュー・サウス・ウェールズ州、ソウル特別市、ジャカルタ特別市など、多くの姉妹友好都市と多様な国際交流事業を実施するとともに、国際交流部署の予算、人員も充実していた時期がありました。一時は、国際局構想や国際交流センター構想もあったと聞いています。
 その後、平成二年四月には、生活文化局国際交流部から生活文化局国際部となり、石原知事就任後は、平成十三年四月には生活文化局国際部が知事本局秘書部外務課と生活文化局文化振興部地域国際化推進課になりました。平成十四年四月には東京都渉外労務管理事務所の廃止に伴う組織改正により、生活文化局文化振興部地域国際化推進課から事業推進課地域国際化推進係になりました。とうとう平成十八年四月には文化振興部事業推進課地域国際化推進係から都民生活部管理法人課市民交流国際係となりました。知事本局との分担もありますし、部から課に、課から係に縮小されました。
 一方、都内の在住外国人は、現在、約三十七万人と増加傾向にあります。私の地元新宿区では約三万人が外国人登録をしています。住民の一〇%以上を外国人が占めている地域もあります。学校では、保護者への文章を六カ国語で用意するきめ細やかな配慮がされています。
 定住化が進行する中で、在住外国人との多文化共生を進めていくため、地域国際化施策の充実が一層求められている状況の中で、都の現状は逆行しています。これでは十分な取り組みができません。地域国際化施策の充実に向けた対応姿勢の強化が必要と考えます。見解をお伺いします。
 都は、生活文化局長の諮問機関として地域国際化推進検討委員会を設置し、外国人にかかわる重要な課題を検討して施策に反映してきたとのことですが、本年度の新たなテーマ、諮問事項は何か、その内容と今後のスケジュールについて伺います。
 また、東京都は、前回、平成十七年の地域国際化推進検討委員会の答申を受け、平成十八年度の重点事業として外国人に対する防災情報提供対策の強化に取り組んでいるとのことだが、その一環として、去る一月十六日に東京都として初めて在住外国人支援のための防災訓練を実施したとも聞いています。地震を知らない外国人にとって、地震は、何が起こったのかとパニックに陥る人がいると聞いております。
 新宿のハイジアのエントランスにおいて防災訓練のビデオテープを流し広報していますが、そこで、この訓練の実施状況について伺いたいと思います。また、訓練の結果、反省点、今後の課題についてもあわせて伺います。
 外国人が地域の住民として、日本人と同じように生命の安全や快適な生活を保障され、豊かな生活を送れる都市東京をつくっていくことは、東京都が国際都市としての活力を維持し、アジアや世界の中心都市としての魅力を発信していくため、必要不可欠な基盤です。多文化共生は、オリンピック招致にもとても大きな要件と考えます。
 次に、アジアの将来を担う人材の育成支援についてお伺いいたします。
 東京都が昨年十二月に発表した「十年後の東京」では、アジアの将来を担う人材を戦略的に育成支援するとして、アジアの優秀な人材の受け入れを促進するため、渡航費や学費を支給するアジア人材ファンドの創設を挙げています。このアジア人材ファンドに向けた決意がどれほどあるのか、私には大いに疑問です。
 石原知事は、施政方針において、この「十年後の東京」を指して、空想的、抽象的なマニフェストなどではなく、東京の具体的な近未来図であると述べられました。しかし、「十年後の東京」が発表された後、ことし一月に発表された産業振興基本戦略ではどうでしょう。人材確保や人材育成の取り組みに、アジアという視点はどこを読んでも見当たりません。このように、ほかの基本施策に反映されないような「十年後の東京」を、果たして具体的な近未来像といえるのでしょうか。
 現在、東京は、アジア技術者育成事業として、アジア諸都市の中堅技能者に東京の中小企業での研修を実施していますが、地域はハノイ市に限定され、規模も十人以内となっています。私は、アジアの将来を担う人材の育成支援に向けて、広くアジアの地域から優秀な人材の受け入れを進め、アジア人材ファンドやアジア人材バンクの創設に積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解をお伺いします。
 次に、定住外国人の子どもたちへの教育についてお伺いいたします。
 私は、子どもの教育に国境があってはいけないと考えています。どこの国の子であっても、この東京に暮らす以上、学ぶ芽を育てる必要があります。海外で暮らす日本の子も、しっかりと教育を受けてほしいと思います。親の都合で日本に、東京に連れてこられた子どもがいます。その時期が高校受験期に重なったのを不運だったと片づけるわけにはいきません。東京に暮らす世界の子どもたちの学びたい気持ちをサポートする施策を東京でも検討すべきと考えます。
 各国の教育制度の違いにより、来日後、小中学校、高校に進学できず、行き場のない子どもがいます。十分な日本語教育を受けることができず、学校の授業についていくことができない子どもたちがいます。友人もできず、不登校、中退になってしまう子もいます。こうした子どもたちの増加は決して好ましいものではありません。
 多文化共生センター東京の調査によると、二〇〇五年度、東京都の公立中学校の外国籍の子どもは二千百四十五人です。ところが、二〇〇六年度に都立高校在籍の外国籍生徒は九百二十一人で、半数以下です。しかも、定時制における外国籍生徒の割合は日本人生徒の約三倍です。普通高校を希望しているのに、定時制があるから大丈夫というのでは話になりません。二〇〇七年度入試で在京外国人枠募集をするのは、都立では国際高校だけで、定員二十五名、しかも各国一人ずつと難関です。
 また、同調査によると、二〇〇五年度に外国籍生徒や保護者を対象に開催した進路ガイダンスでは、国語の授業が理解できる生徒は六%でした。どこの国の子であっても望んだ教育が受けられる都市が、成熟している国際都市と胸を張れるのではないでしょうか。小中学校に在籍する日本語を話せない外国人の児童生徒に対して、日本語指導加配教員だけでは不足のケースがあり、不足分はボランティアが日本語指導や高校受験の支援を行っています。都教育委員会として、こうしたボランティアに対する助成制度を設けるべきです。見解をお伺いします。
 また、外国人を対象にした進路指導は、保護者の言葉の壁と母国との入試制度の違いから、区立中学校の現場では困難をきわめています。外国人を対象にした進学説明会を、毎年、東京都教育委員会が都全体で開催する対応が必要だと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、日本語を母語としない生徒が入試直前に来日し、都立高校を受検する際に、試験問題の漢字にルビを振るとか、科目によっては母語での出題とか試験時間の延長など、何らかの措置を講ずる必要があると考えます。所見をお伺いします。
 次に、外国人学校の安全について伺います。
 区立小中学校、都立高校の耐震工事は進んでいます。私立学校の耐震工事への助成も行っています。しかし、これまで専門学校、外国人学校への耐震工事助成は行われませんでした。学校認可をとっている学校は地域住民の避難場所になる可能性があります。例えばインターナショナルスクール、朝鮮人学校、韓国人学校などです。これらの学校に対して耐震工事費の助成を行うべきと考えます。ご見解を伺います。
 東京都では、法務省入管、警視庁とともに、平成十五年十月に首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言を出しました。共同宣言では、首都東京の不法滞在者数を五年間で半減させることを示し、不法滞在者の摘発強化や不法滞在者を助長する環境の改善などの対策を強化していくとしました。
 私が朝、新宿区内の駅で街頭演説などをしておりますと、不法滞在者らしき人がワゴン車に乗せられていくのをたびたび見ます。法務省入管の発表によれば、国内の不法滞在者数は、平成十八年一月一日で約二十二万三千人と、共同宣言時の二十五万人と比較し、二年で約二万七千人減少しています。これは、歌舞伎町に入管の新宿出張所の設置や、共同宣言後の重点的な取り組みの成果といえます。
 合法的に来日している外国人とは共生していきたいと思いますが、不法滞在は困ります。新宿区内の医療機関は、人道的見地から、不法滞在者とおぼしき人に対しても医療を施します。容体がよくなると、いつの間にか治療費を払わず逃亡してしまう場合もあり、被害は大きく、病院は頭を抱えています。また、健康保険証の仲間同士での使い回しの不正が行われ、生命にかかわる事故にならないかと懸念されています。
 また、先日の新聞報道を見ますと、在日外国人による犯罪の発生件数は、東京都では減少する一方で、地方の一部では増加しています。これは、東京での摘発が厳しくなったからとの見方もできます。しかし、外国人の入国者は年々増加しており、不法滞在者を減少させるためには、摘発のみならず、東京都としての対策強化が必要です。
 そこで、不法滞在外国人減少に向けた東京都における今後の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、ルールとモラルについて質問いたします。
 企業や個人は、法律や規則といった法令を守るだけでなく、企業倫理や社会的規範を守ることも必要です。企業も社会の構成員の一人として、各種一般法、その他各種業法をすべて遵守し、従業員一同にもそれを徹底させなければなりません。
 昨年はマンションの耐震偽造設計が社会問題となり、最近では洋菓子メーカーが消費期限切れの材料使用、テレビ番組制作会社が捏造記事による番組を制作、金もうけになるなら何でも売ってしまうネット販売もあります。ガス器具会社の動作不良の隠ぺい、嘆かわしいことです。かつて日本人が持っていた誇りはどこに消えたのでしょうか。名こそ惜しけれと、名誉を汚す行為を恥じる文化でした。最近は、たばこのポイ捨て、携帯電話代は払っても子どもの給食費は払わない親、救急車をタクシーがわりに使う人、モラルに反する行為を平気でする人がふえています。
 知事は、ご自分の著書「国家なる幻影─わが政治への反回想」の中、ベトナムから政治への章に、ベトナムで農家の娘にとぎしてもらい、別れにご自分のブリーフを記念に上げた、とても喜ばれた、また、ベトナムで持った情事が何でこれほど官能的なのかと思えたのも、アオザイの手ざわりのせいだけでなく、ウイルスにむしばまれていた体が、周囲は戦場という状況の中でせつなせつなの反応をしていたからに違いないと、帰国後、肝炎で苦しまれたこととともに書いていらっしゃいます。私の道徳観では理解できないことです。
 知事に伺います。現代社会におけるルール違反や道徳心の欠如についてお聞かせください。
 コンプライアンス違反が起きやすい体質は、利益最優先、隠ぺい体質、独裁的な経営、上層部が絶対的な権力を持っているなどです。都庁内でもコンプライアンス違反を防がなければなりません。知事をトップに職員一人一人が自覚を持ち、法令遵守し、道徳心を持ち、社会の要請に柔軟に反応し(発言する者あり)誠実で公正な任務を遂行することが大切です。そのための職員研修や啓発を常に行う必要があると思います。取り組みをお聞かせください。(拍手)
   〔発言する者あり〕
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) いのつめまさみ議員の一般質問にお答えいたします。
 道徳心の欠如についてでありますが、今の日本には、ばれなければ何をしても許されるというあしき風潮が、企業、個人を問わず蔓延しているような気がいたします。私たちは、日本人として失ってはいけない何かをどこかに置き去りにしてきたように思えてなりません。コンプライアンスなどという横文字を持ち出すまでもなく、拝金主義に侵された企業、個人がルール違反を繰り返しているのが現状であると思います。
 なかなか即効薬は見当たりませんが、私たち自身が率先して範を示し、不正を働く者を度外するぐらいのことをしない限り、日本の立ち直りは難しいのではないかと思います。
 それにしても、五十年近く前の、私も当時二十代でしたが、他人の私的な体験談を持ち出して道徳観云々というのは、私にはちょっと理解できませんな。
 なお、他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 三点についてお答え申し上げます。
 まず、外国人児童生徒への支援を行うボランティアに対する助成についてであります。
 区市町村立小中学校におきます外国人児童生徒の受け入れに当たりましては、設置者であります区市町村教育委員会が、その判断に基づきまして、日本語学級の設置や日本語指導加配教員の活用を行うとともに、地域の実情に応じまして、語学指導員の配置、通訳補助員の派遣、日本語適応指導教室の設置のほか、ボランティアの活用などの取り組みを行っております。
 都教育委員会といたしましては、既に区市町村教育委員会に対しまして、日本語学級設置にかかわる教員配置及び日本語指導にかかわる教員加配のほか、日本語指導に関する情報提供等の支援を行っているところでございます。
 次に、外国人生徒を対象とした進学説明会についてでありますが、外国人生徒の都立高校への入学に関する相談につきましては、入試相談コーナーや教育相談センターなどで随時対応しております。また、すべての都立高校が参加し、保護者、受検生を対象といたしまして、十一月に二回開催します学校説明会におきましても、入試相談コーナーを設けまして個別の相談に応じるなど、適切に対応しております。
 次に、日本語を母国語としない生徒への受検の際の配慮についてであります。
 都教育委員会では、国際高校において在京外国人を対象とした入試を実施しておりまして、また、他の都立高校におきましても、日本人と同様に、応募資格を満たしていれば、外国人生徒が受検し、入学することは可能でございます。
 また、国際中等教育学校として平成二十年度に設置を予定しております立川地区中高一貫六年制学校におきまして、一般生徒とは別に一定の枠を設け、帰国生徒及び在京外国人生徒についての新たな受け入れ体制を確保してまいります。
 なお、帰国生徒等を対象といたしました入学者の選抜方法については、面接を重視するなど、一定の配慮を行っているところでございます。
   〔生活文化局長渡辺日佐夫君登壇〕

○生活文化局長(渡辺日佐夫君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、地域国際化の充実についてでございます。
 都はこれまでも、外国人も安心・安全に暮らせる東京とするために、地域国際化施策を推進してまいりました。平成十三年度からは、委員の半数を在住外国人とする地域国際化推進検討委員会を設置し、外国人が直面する課題について検討し、施策への反映を図っております。
 具体的には、防災やまちの表記などについて、区市町村や大使館、民間団体等に情報提供しており、本年度は防災DVDやリーフレットの作成、防災(語学)ボランティアの拡充等を行っております。
 今後とも、同委員会の提言を踏まえ、地域国際化施策の推進に取り組んでまいります。
 次に、本年度の地域国際化推進検討委員会についてでございます。
 今回のテーマは、民間団体との連携、協働による外国人都民の社会参加の促進でございます。具体的には、都内在住外国人への支援を行っている民間団体と行政との協力により、コミュニケーション支援や生活支援等を通じ、外国人の自立の促進と社会参加の実現を図る方策とその仕組みの検討を行っております。
 本年七月の提言を目指し、四回程度、委員会を開催してまいります。
 次に、外国人支援のための防災訓練についてでございます。
 都では、災害時に東京都外国人災害時情報センターを設置し、情報収集提供活動を行うこととしております。一月十六日に実施した訓練は、この情報センターが災害発生時に有効に機能するかどうかを検証するために、江戸東京博物館、しんじゅく多文化共生プラザなどを会場とし、新宿区や墨田区など区市の協力を得て実施したものでございます。当日は百名を超える防災(語学)ボランティアや外国人のほか、外国人を支援する団体や在住外国人メディアの参加も得ることができました。
 今後も、災害時に即した、より実践的な訓練となるよう、マニュアルの充実、外国人や通訳ボランティア、使用言語の拡大を図ってまいります。
 最後に、外国人学校に対する耐震工事費の助成についてでございます。
 都においては、児童生徒の安全確保のために、これまでも私立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校等に対する耐震工事費の補助を実施しているところでございます。専修学校、各種学校に対しても平成十九年度から耐震工事費を補助する予定でございますので、各種学校として認可されているインターナショナルスクールなどもその対象となります。
   〔知事本局長山口一久君登壇〕

○知事本局長(山口一久君) アジアの将来を担う人材の育成についてのご質問でございますが、東アジアは、今や世界で最もダイナミックに変貌を遂げており、この地域のさらなる発展に向けて、人材育成面で、東京がその知識や技術の集積を生かし、先導的役割を果たしていくことは当然でございます。
 ご指摘されるまでもなく、「十年後の東京」では、アジアの優秀な人材を東京で受け入れ、育成を図る仕組みとして、留学生等に経済的支援を行うアジア人材ファンドの創設や、帰国した留学生に関する人材情報をデータベース化するアジア人材バンクの構築を打ち出しております。
   〔青少年・治安対策本部長舟本馨君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(舟本馨君) 不法滞在外国人の減少に向けた取り組みについてでありますが、不法滞在者を減少させるためには、不法就労を許さない環境づくりが重要です。都では、昨年春から新たに、外国人の不法就労が多い業種を中心に、雇用主に対する適正雇用のための講習会を実施してきましたが、十九年度はさらに講習回数をふやしていきます。また、留学生、就学生の違法活動を防止するため、これらを受け入れている専修学校、各種学校などの教育機関に対する啓発指導を引き続き行っていきます。
 今後とも、入国管理局、警視庁等と連携をとり、粘り強く取り組んでまいります。
   〔総務局長大原正行君登壇〕

○総務局長(大原正行君) 都庁内のコンプライアンスとモラルについてでございますが、都におきましては、従前から各執行機関内部で法令審査や事業点検等に取り組みますとともに、監査委員による監査を行っております。
 また、平成十一年度からは、外部の公認会計士による包括外部監査を導入し、業務執行の厳正なチェックを行いますとともに、平成十八年度からは公益通報制度を整備いたしました。さらに、職員の服務規律の確保につきましても、汚職等防止研修を悉皆で行うなど、職員の非違行為の未然防止に万全を期しているところでございます。