平成十九年東京都議会会議録第三号

○副議長(木内良明君) 五十四番くまき美奈子さん。
   〔五十四番くまき美奈子君登壇〕

○五十四番(くまき美奈子君) まず初めに、感染症対策について伺います。
 私は、平成十七年第四回定例会でノロウイルス対策について質問いたしましたが、その後、都は、標準マニュアルやリーフレットを作成し、普及啓発を図ってきたと聞いています。
 しかしながら、この冬は、例年より早く、昨年十月ころから流行開始となり、日本全国で猛威を振るい、過去二十五年間で最大規模の流行となりました。また、今回の流行では、ホテルなどで集団感染がたびたび発生し、都民が感染症の恐ろしさを再認識する機会となりました。
 ノロウイルスの感染力は極めて強く、流行それ自体をとめることはなかなか難しいのが現状とのことですが、手洗いやうがいの徹底、適切な消毒などによって予防できる病気です。
 そこで、都は、今回のノロウイルスの大流行に対してどのような対策を講じたのか、伺います。
 ノロウイルス食中毒及び感染症集団発生を予防し、感染の拡大を予防するためには、都民一人一人が正しい知識や情報に基づいて対応するとともに、感染が明らかとなった調理従事者や介護、看護職員等の就労への配慮なども重要な要因であり、これらを含めて広範な啓蒙活動が必要だと考えます。
 こうした対応は流行が始まったばかりのインフルエンザに対しても有効です。また、現在世界的な脅威になっている、鳥インフルエンザが変異して人から人への感染が広がる新型インフルエンザの発生に対してや、すべての予防対策の基礎となるものです。
 そのためには、どのような予防対策を行えばよいのか、都民に正確な知識を伝えていく必要があります。さらに、都民への正確な情報提供は、感染症の予防や拡大防止にとどまらず、社会のパニックを防ぐ基本でもあります。都は、現在の健康安全研究センターを機能充実させて健康危機管理センターにする方針ですが、感染症について的確に情報提供することは、今すぐにでも取り組んでいく課題であると考えます。
 そこで、都は、都民にインフルエンザなどの感染症に対する知識や的確な情報をどのように提供していくのか伺います。
 次に、今月六日、私の地元板橋区の東武東上線ときわ台駅にて、踏切に侵入した女性と、これを制止し助けようとした警察官の二人ともが電車にはねられるという痛ましい事故が発生しました。女性の救助に当たった警視庁板橋署宮本巡査部長におかれましては、一刻も早い回復をとの願いも届かず、残念ながら十二日午後殉職されました。故宮本警部の正義感と責任感に衷心より敬意を表すとともに、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
 今回の事故については、単純に踏切だけの問題とはいえないさまざまな要因があるものの、いずれにせよ、軌道、車道、歩道が同一の平面にあることの危険性は明白です。近年、鉄道が関係する事故が多発しております。鉄道の安全確保は喫緊の課題であります。
 こうした観点から、次の二点について質問いたします。
 当時、ときわ台駅には、ホームに非常ボタンが設置されていましたが、駅ホームに駅員はいませんでした。また、今回二人が侵入した踏切には、障害物を検知するセンサーはあったものの、踏切内の異常を知らせるための警報ボタンが踏切には設置されていなかったとのことです。
 今回の事故を含め、鉄道にかかわる事故にはさまざまな形態がありますが、安全確保のための対策を拡充していくことが必要だと考えます。
 そこで、駅や踏切での事故を防止する観点から、都が進めているホームドアの設置や警報ボタンなど安全設備の設置を徹底し、さらに、緊急時対策の十分な周知徹底を図るなど、国土交通省、民間鉄道会社、市区町村とも連携した取り組みが重要だと考えます。安全対策の推進について、都の見解を伺います。
 このときわ台駅の踏切は、あかずの踏切ともいわれている場所で、時折遮断機を押し上げて通行していく人がいます。踏切での事故を完全になくすためには、鉄道の高架化などにより踏切を解消することが抜本的な方策であると考えます。
 そこで、ときわ台駅付近における踏切解消に向けた都の取り組みについて伺います。
 次に、適正な救急車の利用について伺います。
 救急出場の件数は全国的に年々増加しています。救急業務の本質と利用する都民の認識との整合を図り、救急車が正しく利用されることが必要です。救急出場が増加する要因の一つとして、少子高齢化や核家族化などの社会環境の変化があると思われます。例えば、急にぐあいが悪くなり、自分ひとりではどうしてよいかわからなかったり、休日でどこの病院に行けばよいかわからなかった場合に、とりあえず一一九番通報して、救急車に来てもらおうとするケースや、安易に救急車をタクシーがわりに利用している事例もあるようです。
 救急業務が、傷病者の身体を守るための緊急の業務であり、住民が等しく利用し得る公共の業務であることを理解し、都民みずからが救急車利用のルールとマナーを守ることが、真に救急車を必要としている傷病者の命を救うことにつながることを再認識することが必要です。
 このような安易な救急車利用を防ぎ、本当に生命の危険が迫っている人のところへいち早く救急車が到着できるように、都民の不安感を払拭する方策を考える必要があると思いますが、所見を伺います。
 次に、都民や来庁者の安全・安心を守る立場から、都庁舎におけるセキュリティー対策について伺います。
 都庁舎は、延べ床面積三十八万平方メートル、一万人以上の職員が働き、毎日二万人もの人々が訪れる、都民に開かれた建物です。特に第一、第二庁舎には各種の申請や相談のための窓口が設けられており、来庁者の出入りも多くなっています。また、東京の観光名所の一つとして、展望室などを中心に、外国人観光客を初め、内外から多くの見学者を迎え入れています。
 このような庁舎の性格から、セキュリティーの確保にはさまざまな工夫や努力を重ねておられると思いますが、いわゆる盗聴などの行為により来庁者のプライバシーが侵害され、安全・安心を損なわれるとすれば、その未然防止に向けた取り組みを強化していかなくてはなりません。
 このような行為に使用される機器類の販売や購入に対する法的規制がない中で、一昨年八月には、都庁舎で盗撮用カメラが、小平市役所では盗聴器が発見されました。都庁舎のケースでは、発見後、直ちに総務局が全庁舎の一斉検索を実施し、他の場所では異常がないことを確認し、連絡を受けた警察が、建造物不法侵入と軽犯罪法違反容疑で捜査を行いました。その後、この種の事案は報告されていないとのことですが、これらの行為は単なるいたずらで済まされないものです。
 一方、首都圏においては、大正十二年の関東大震災以来、大規模な地震災害を経験していません。しかし、いつ大震災が起きても不思議ではないほど事態は切迫しているといわれています。都庁舎には各種の防災設備が整備されているとはいえ、飲食店なども入居している現状から、大震災の際には、火災の危険性がないとはいい切れません。
 また、都庁舎は我が国の首都を代表する建物の一つでもあり、多岐にわたる中枢機能を有しています。そのシンボル性と相まって、社会的な影響力も重大なことから、テロ等の標的にならないとも限りません。
 そこで、このような状況下において、さきに述べた事例のような不審物などへの対策を含め、内外からの多くの来庁者がある都庁舎のセキュリティー対策全般について伺います。
 最後の質問に移ります。
 先日、柳沢厚生労働大臣が女性を子どもを産む機械に例えた発言をして、強い批判を浴びています。この発言は、女性の人格、人権を全く否定したものであり、人として人権感覚が問われ、政治家としての責任をとるべき発言です。
 大臣ご自身はただただ謝罪をされるばかりですが、それで許される問題では到底ありません。機械発言が女性を傷つけたからおわびするとか、撤回するとかの問題ではないのです。謝って済むことではないと、最初からだれもが直感していました。少子化問題の本質を理解していないとの指摘が与党内からも出ていますが、この表現の背景にある首相や柳沢厚生労働大臣の基本的な認識と国民の実感とのずれこそが、これだけ激しい反発を受けているのです。
 ところが、驚くことに、石原知事は定例会見で、この発言に対し、例えの仕方が悪かった、ちょっと短絡的過ぎたんじゃないかなどと、擁護ともとれる発言をしています。柳沢大臣は昭和十年生まれとのことで、石原知事と同年代です。年齢だけで人を判断するものではありませんが、こうした発言のもとになる感覚には、何か世代的な共通点があるのでしょうか。
 一方で、同じく昭和十年生まれの評論家岩見隆夫氏は、コラムの中で次のように述べています。子どもを産む機械、装置という例に加えて、後は一人頭で頑張ってもらうしかないという古くさいいい回しにも、戦前の母親を念頭に置いた柳沢大臣の女性観、母親観がにじみ出ているのではないか。一人頭などという無機質な表現を出産問題で使うとは、何と語彙に乏しい、戦前思考のままとまっている人物か──中略──不適切な閣僚を温存するのは許されることではないと。私も全く同感であります。
 同世代の男性として共感したがゆえのさきの擁護発言かもしれませんが、行政のトップである都知事としては、いささか適切さに欠ける認識といわざるを得ません。
 そこで、以前、都知事も、人の話を引用したとして、文明がもたらしたあしき有害なものはばばあ、女性が生殖機能を失っても生きていけるというのはむだで罪、なるほどとは思うけど、政治家としてはいえないなどと発言されました。
 現在、国際社会では、女性の人権への配慮がその国の成熟度をはかる重要な尺度になりつつあるといわれています。折しも首都東京は二〇一六年オリンピック国内候補都市に決定し、今まさに成熟した都市東京を国際社会に向けてアピールしていくところです。こうしたときに、国際社会や東京都民に対しても知事の発言が与える影響を考えると、はかり知れないものがあります。
 都知事は、この引用したといわれる発言のほかにも、さまざまな物議を醸し出す発言をされました。しかし、知事は、その責任をしばしば引用という言葉を用いて人に押しつけ、責任逃れともとれる対応をしてきました。
 東京都知事という要職にある方が、ご自身の口から発したことについて責任を持つというのは当然のことであり、この際、過去における都知事の発言について、みずから責任を明らかにするべきと考えます。
 知事の見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) くまき美奈子議員の一般質問にお答えいたします。
 私の過去の発言についてでありますが、引用は引用であります。ばばあ発言は、間違いなく私の発言ではなしに、高名なある宇宙学者がおっしゃったので、なるほどなといって、私はそれをある会合で話しましたら、共産党の支持者がいて、それが共産党に知らされて、向こうの紙面に載ったわけでありますけれども、それは理屈としてなるほどなといったわけでありまして、私自身の発言については、私が責任をとります。
 柳沢大臣の発言に関連していいますと、あなた方の党首代行の菅直人さんも、出生率のことを、子どもを産む生産性と、非常に無機的な表現で再三発言しております。一番最近は、平成十九年の党大会、民主党大会でその発言をしておられますけれども、いずれにしろ、どちらの場合も、発言の大意や流れを殊さら無視して、都合のいい部分だけを切り取って揚げ足をとることばかりに執着しているように見えますね。発言の全体像を把握することの方が、よほど重要なのではないかと私は思います。
 私自身は、私自身の発言については責任をとりますが、しかし、内容の改ざんまでしたところがありますけれども、これは、いい逃れしたことは一度もございません。したがって、ご指摘は全く当たりません。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 感染症に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ノロウイルスによる感染性胃腸炎の流行対策でございます。
 都は、この冬の集団感染の多発や患者報告数の急増など、大流行の兆しを受けまして、都民に注意を喚起するため、いち早く警報を発令したところでございます。
 また、都議会の皆様からもご要望を受けまして、適切な手洗い方法などの感染予防策について、インターネットを初めとするさまざまな広報媒体を通じて情報提供を行ったところでございます。
 さらに、給食施設等に対する食中毒防止のための重点監視に加え、体力が低下した入所者等を抱える高齢者施設や医療機関、さらに、多くの人が利用するホテルなどの事業者団体に対しまして、感染予防のための対応マニュアルを活用し、予防対策を重点的に周知するなど、ノロウイルスによる感染拡大防止の徹底を図ったところでございます。
 次に、都民への感染症に関する情報提供についてでございますが、感染症の蔓延防止に向けて、正しい知識や予防策の普及を図るため、都ではさまざまな感染症に関する情報を広く都民に周知しておるところでございます。また、食品関係者や医療従事者、さらには海外旅行者などへの必要な情報についても、インターネットやリーフレットなどにより的確に提供しております。
 お話のインフルエンザに関しては、流行状況や予防方法などについて、都民や医療機関等に対して幅広く情報提供するため、流行シーズン中、東京都インフルエンザ情報を毎週発行しております。
 さらに、昨年四月、健康安全研究センターに疫学情報室を設置いたしまして、情報収集、分析等に関する機能を強化したところであり、今後とも最新の感染症情報を都民に的確に発信してまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 踏切対策についての二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、駅や踏切の事故防止についてでございますが、緊急時に列車を停止させるための非常ボタンや障害物検知装置の設置などの安全対策については、基本的には各鉄道事業者が実施しております。
 都としては、都民の安全を確保していく立場から、今後とも、機会をとらえて、鉄道事業者に対し安全対策を徹底するよう働きかけてまいります。
 次に、東武東上線ときわ台駅付近における踏切対策についてでございますが、ときわ台駅から上板橋駅付近については、平成十六年に策定した踏切対策基本方針の中で、鉄道立体化の可能性を検討すべき区間の一つとして位置づけております。
 道路と鉄道の立体化については、地域におけるまちづくりと連動することから、今後、地元区が主体となり、道路と鉄道のあり方や、まちづくりを検討することが必要でございます。
 都としては、地元区の取り組み状況を踏まえ、適切に対応してまいります。
   〔消防総監関口和重君登壇〕

○消防総監(関口和重君) 救急車の利用に関し、都民の不安を払拭する方策についてのお尋ねですが、東京消防庁が実施している消防に関する世論調査では、救急車を要請した理由として、軽症か重症かの判断がつかなかった、診察可能な病院がわからなかったといった回答が多く寄せられています。
 こうしたことから、東京消防庁では、現在テレホンサービスで実施している医療機関案内業務を拡充し、医師の助言のもとに看護師や救急救命士等が応急処置や受診に関するアドバイスなどを行う救急相談センターを平成十九年度において整備いたしまして、都民の安心を図ってまいります。
   〔総務局長大原正行君登壇〕

○総務局長(大原正行君) 都庁舎のセキュリティー対策についてでございます。
 都庁舎には連日多くの都民や内外からの観光客が訪れておりまして、来庁者の安全の確保は最も基本的なものと認識をしております。
 都庁舎では、執務室への職員以外の入室を制限しますとともに、各出入り口や廊下、展望室などでは、巡視及び警備員の立哨、巡回、防犯カメラによる監視などにより、不審者や不審物の早期発見に努めております。
 また、現在、内外の治安情勢等を踏まえ、特別警戒態勢を継続中でありまして、テロや災害等に対する備えを強化しております。
 今後とも、警察や消防等と十分連携を図りながら、都庁舎のセキュリティーの確保に万全を期してまいります。

○副議長(木内良明君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時二十五分休憩