平成十九年東京都議会会議録第三号

○議長(川島忠一君) 八十三番藤井一君。
   〔八十三番藤井一君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○八十三番(藤井一君) 初めに、東京型ドクターヘリについて伺います。
 我が党は、昨年の都議会定例会において、一貫してドクターヘリの運用について提案してまいりました。これを受けて、都が消防庁のヘリを活用した救急医療体制のより充実した仕組みを、東京型ドクターヘリとして来年度予算案に計上していることを大いに評価いたします。
 既にドクターヘリを導入した千葉北総病院の調査結果によると、ドクターヘリで搬送され治療した患者は、救急車で搬送した場合と比べて病気の重症化が防げること、入院日数が平均十七日短くなること、入院治療費も約百十万円少なくなることが報告されています。
 そこで、伺います。
 まず、東京型ドクターヘリの特徴及びこれを導入した場合のメリットは何か伺います。
 また、現在、島しょの救急患者をヘリポートで直接受け入れている病院は、都立広尾病院だけであります。そのことについて、我が党の質問に対し、都は、昨年の第四回定例会で、今後、ヘリポートを備える都内の病院に対し、ドクターヘリの受け入れと同乗医師の派遣を依頼すると答弁しましたが、具体的な取り組みについて伺います。
 さらに、島しょ地域の住民が最も望んでいることは、一分一秒でも早く適切な医療機関で治療を受けたいということであります。そこで、東京型ドクターヘリを運用することによって、今までと比べて救急患者の搬送時間についてどれほどの短縮が見込めるのか、伺います。
 次に、介護予防事業について伺います。
 介護保険制度は、昨年四月、大幅な制度改正が行われ、予防重視型の仕組みへと転換が図られました。今後は、介護予防をいかに普及し定着させ、所期の目的である高齢者の自立した生活を実現するかが大きな課題であります。
 公明党は、介護予防十カ年戦略において、介護予防拠点を中学校区に一カ所ずつ整備することを当面の目標に掲げ、また、フィットネスクラブなど民間施設の積極的な活用を提唱してきたところであります。
 そこで、まず、都内における介護予防拠点の整備状況と今後の都の取り組みについて伺います。
 第二に、地域のネットワークづくりについてであります。
 現在、虚弱高齢者である特定高齢者は、区市町村が行う介護予防プログラムを終了すると、多くの方に心身機能の向上が見られ、目標である生き生き生活に近づいていることが予想されます。しかし、その後も地域で介護予防への取り組みを自分で継続できるような受け皿が整備されていません。一人で介護予防に取り組むより、仲間の人たちと楽しく刺激し合う方が効果的であり、高齢者本人が主体的に継続するためには、地域のネットワークが必要と考えます。
 そこで、地域で活動するさまざまな自主グループやサークルなどを地域の介護予防のネットワークに組み入れるよう、都が支援すべきと考えます。所見を伺います。
 第三に、高齢者の介護予防の取り組みを促進するためには、身近な地域にあるさまざまな社会資源を活用して、介護予防に取り組む場を提供することが重要であります。
 例えば、都内には、身近な公園を利用して、ストレッチ体操などができる器具やスロープ、階段等を含めた回遊式の運動コースを設置し、高齢者の介護予防に取り組む場として活用している事例があります。こうした公園は、子どもや若い人など幅広い年代が楽しみながら、身近な健康づくりの拠点としても活用できます。
 そこで、都は、こうした器具を設置する公園等を健康づくり拠点、介護予防拠点として普及するために積極的に支援すべきと考えます。所見を伺います。
 次に、人と環境に優しい消毒対策について伺います。
 プールで泳ぐとき、水中で目をあけると目が痛みます。また、粘膜や皮膚を刺激し、肌を荒らすといわれています。この原因は、プールの水を殺菌消毒するために使用する次亜塩素酸ソーダから発生する塩素によるものです。例えば、次亜塩素酸ナトリウムの原液をさわると、皮膚が侵されます。専門家によると、これらの次亜塩素酸などの化学薬品が入った水では、塩素のにおいが強く、肌が荒れ、毛髪が変色したり、目の障害が起こると報告さています。
 これだけ技術が進んだ今日、十年一日のごとく昔ながらの塩素消毒を行っているのはおかしな話であります。都内にはすぐれた技術力を持った企業が多数あり、その中には、同じ塩素消毒であっても、塩素のにおいがほとんどなく、肌荒れなどの健康被害がない新たな消毒技術があると聞いております。プールの衛生を所管している部署に確認したところ、プール等取締条例で定める塩素剤等による消毒基準に適合していれば、プールで使用することは支障ないとのことであります。
 今、東京は、二〇一六年に東京オリンピック招致を目指して取り組んでおります。そこで、東京の環境への取り組みをアピールするために、より環境や健康に配慮した水を都立体育施設のプールで使用すべきと考えますが、所見を伺います。
 第二に、都は、昨年十二月にまとめた「十年後の東京」構想で、今後十年間で都内の公立小中学校を対象に校庭を芝生化する方針を打ち出しました。既に都は、平成十七年度にモデル事業として都内二十七校の校庭を芝生化しております。芝生化した学校では、生徒が芝生の上をはだしで駆け回ったり、寝ころんだりと、大変好評であると聞いております。
 しかしながら、大きな問題があります。それは、芝生を害虫から守るために農薬や殺虫剤等を使用すると、アレルギーや副作用など児童生徒の健康に悪影響を及ぼすことが懸念されます。いろいろな技術が開発されている現在にあっては、化学農薬等を使うのは可能な限り避けるべきであります。校庭における芝生の維持管理についての都の所見を伺います。
 第三に、石原知事は、昨年十二月二十六日に、校庭を全面芝生化した杉並区立和泉小学校を視察しました。その際、知事は、非常に印象的で、芝生化をこれから都の新規の広範な事業としていくとコメントしています。知事が、先駆的な環境対策として校庭の芝生化を進めていくことは大変すばらしいことだと思いますが、一歩進んで、成熟した都市として、衛生的で、緑が多いということだけではない、さきに述べた芝生やプールの殺菌消毒にも配慮した、真に人と環境に優しい都市を目指すべきではないでしょうか。知事の見解を伺います。
 次に、羽田空港の国際化及び空港跡地利用対策について伺います。
 羽田空港の国際化は、二〇〇九年の再拡張後の供用によって国際定期便が就航することになり、いよいよ名実ともに日本の表玄関としてのゲートウエーになります。
 日本における国際空港として、現在、成田空港、関西空港、中部空港がありますが、いずれも飛行機の発着回数、発着時間、空港使用料などで、中国、韓国、香港の空港と競争力でおくれをとっています。
 とりわけ首都東京の首都圏での空港は、現在の国の計画では、羽田空港が国際化されても追いつかないといわれています。首都東京の国際競争力を向上させ、首都圏全体の発展、ひいては日本の発展のために、羽田空港の機能をもっと向上させる必要があります。
 そこで、当面三万回といわれている羽田の国際線発着便数をもっとふやし、距離的には石垣島までの約二千キロを目安とされている運航距離制限を拡大すべきであると考えます。知事の見解を伺います。
 第二に、羽田空港跡地対策についてであります。
 昨年十二月、国と都と区から成る三者協が開催され、新たに利用できる空港跡地の面積五十三ヘクタールが国から正式に提示されました。国際ターミナル地区のPFI事業者も平成十八年に事業契約が締結され、今回、空港用地外としての跡地が出せる状態となり、いよいよ跡地問題が動き出したという感がいたします。今後、跡地については、国の提示内容が国、都、区の間で合意されれば、三者で共同して検討が行われると聞いております。
 そこで、羽田空港跡地利用の具体的な進め方と、跡地利用基本計画の策定時期はいつごろか、また、開発整備は何年先ごろと考えているのか、今後のスケジュールを明らかにしていただきたいと思います。
 第三に、地元の大田区は、平成十七年に跡地利用のイメージを作成しております。また、大田区は、京急とモノレールの弁天橋周辺の空港跡地の一部を購入して、区民交流施設等の整備を進める計画を明らかにしております。
 都においても、独自の跡地利用計画を策定し、都としての利用を図るべきと考えます。また、都として跡地を購入する意思があるのかどうか、今後の都の跡地利用への取り組みについて伺います。
 最後に、京浜急行連続立体交差事業について伺います。
 私は、都議会定例会で、鈴木、青島、石原知事と三代にわたって京浜急行の連続立体交差、すなわち高架化を進めるべきであると訴えてまいりました。そして、石原知事が国を動かし、平成十二年に事業認可の取得がなされました。ようやく高架化の工事が始まり、現在、建設のつち音が鳴り響いております。工事関係者の皆様の努力に対し、敬意と感謝を表したいと思います。
 区民を初め多くの方が一日も早い京急の高架化の完成を待ち望んでおります。そこで、伺います。
 まず、京浜急行の全線高架化は、平成二十四年度に完成する予定となっております。高架化工事を早期に完成するよう切に望むところですが、現在の工事の進捗状況について伺います。
 また、朝夕を初め一番交通渋滞の激しい環八と京浜急行が交差する踏切部の仮立体化工事が進められておりますが、この工事の見通しを明らかにしていただきたいと思います。
 さらに、京浜急行の沿線に住む住民の方々から、京急が高架化した場合、電車の騒音や振動が現在よりひどくなるのではないかとの不安の声が寄せられております。都は、これらの不安を解消するよう対応すべきと考えます。
 以上、所見を伺い、私の質問を終わります。 どうもありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 藤井一議員の一般質問にお答えいたします。
 人と環境に優しい都市づくりについてでありますが、これからの東京が目指すべき成熟した都市の環境とは、豊かな緑と水が美しい都市空間として存在するだけではなく、子どもから高齢者まで、都市に暮らすすべての人々が、その中で安心して健康に集うことのできるものでなくてはならないと思っております。
 とりわけ、人々が体を動かし、直接緑や水と触れ合う喜びを味わう校庭やプールなどの管理に当たっては、仰せのとおり、薬物の利用などを控えるなど、健康への十分な配慮が求められるべきだと思っております。
 先般、実はもう品川で一部活用されているそうでありますけれども、都もあるライセンスをおろしたそうですが、塩素を軽減して変質させる薬品を開発したという研究所に視察に行ってまいりました。これをもう少し精密に調べて、活用できれば、するべきではないかと思っておりますが、都はこうした配慮も含めまして、東京を一層人に優しく環境のよい都市とするよう、質の高い都市づくりを進めてまいります。
 次いで、羽田空港の国際化についてでありますが、羽田空港は都心から至近の距離に位置していまして、非常に高い便利性を誇る国内最大の空港であります。世界でも、首都にありながら、こんなに便利な空港はないと思いますが、さらにその再拡張後、国際旅客定期便や国際貨物便が就航することにより、ともかく二十四時間利用可能な空港ですから、日本全体の経済活性化や国際競争力の強化につながると思っております。
 したがって、羽田空港の国際化については、世界全体の動き、東南アジアの成熟度など諸情勢を加味して、広範な視点で考えるべきだと思っております。
 このためにも、再拡張後の羽田空港を十二分に活用し、当然国際化を図るよう国にも働きかけてまいりましたが、既に大方の合意は得ていると思います。
 大事なことは、一刻も早く工事を完成させて、あの空港を十二分に活用することだと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 環境、健康に配慮した水の活用についてのご質問にお答え申し上げます。
 東京辰巳国際水泳場など都立体育施設のプールでは、平成十八年度から導入いたしました指定管理者制度のもとで、国や都が定めるプールの水質基準を上回る管理基準を設定いたしまして、運営しております。
 都教育委員会では、環境を優先した東京オリンピックの実現に向けまして、競技会場や練習会場に予定されております都立体育施設の環境対策への取り組みが重要であると考えております。
 プールの水質管理につきましても、現在の水質の状況、環境や利用者の健康面でのメリット、費用対効果等を総合的に勘案し、検討してまいります。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 救急医療などに関する六点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京型ドクターヘリの効果についてでございますが、他県で運用されているドクターヘリは、小型ヘリで、日中の運行に限られております。これに比べ、東京型ドクターヘリは、東京消防庁との連携によりまして、夜間飛行が可能な体制が確保されていること、また、本土から約四百キロの島しょ地域まで飛行可能な大型ヘリであるとともに、広い機内に最新の医療器材を搭載いたしまして、適切な応急処置が実施できることなど、多くの点ですぐれております。
 さらに、これまでの都立広尾病院に加えまして、同乗医師の派遣や搬送患者の受け入れを行う病院を東京型ドクターヘリ協力病院として確保することによりまして、患者搬送時間の短縮が図られるとともに、症状に応じたより適切な病院の選択も可能になると考えております。
 次に、協力病院の確保についてでございますが、東京型ドクターヘリの充実に向け、ヘリに同乗する医師等を派遣し、患者を受け入れる協力病院を確保することは重要でございます。このため、東京消防庁が使用する江東及び立川のヘリポートに近接しているか、あるいは大型ヘリが直接離着することが可能で、救急医療に対応できる病院を十カ所程度確保することを目標に、協力要請を行ってまいります。
 次に、患者搬送時間の短縮についてでございますが、島しょ地域からの患者搬送時間の短縮は島民の大きな願いでありまして、これまでも東京消防庁等関係機関と連携いたしまして、その短縮に努めてきたところでございます。
 東京型ドクターヘリの搬送時間は、ヘリポートに近接する病院やヘリが直接離着陸できる病院など協力病院の確保に加え、ヘリを要請する際の連絡方法の改善やヘリの機体更新によるスピードアップによりまして、現行方式と比べ、最大で一時間程度の短縮を見込んでおります。
 次に、介護予防拠点の整備状況等についてでございますが、これまでに、区市町村が地域の高齢者を対象に介護予防事業を実施する拠点は八百四十五カ所、また要支援と認定された高齢者を対象に介護予防サービスを提供する通所事業者は千四百五十七カ所、両者合わせて延べ約二千三百カ所の介護予防拠点が整備されております。
 これによりまして、都が平成二十年度までに実現を目指す、中学校区などを単位として区市町村が設定する日常生活圏域における介護予防拠点の整備については、おおむね達成されているものと考えております。
 今後は、より身近な地域で、高齢者の状態や希望に合った多様な介護予防プログラムを提供できるよう、都独自の整備費補助とともに、人材養成に引き続き取り組み、拠点整備の一層の促進と内容の充実に努めてまいります。
 次に、介護予防のネットワークについてでございますが、高齢者が介護予防の活動を継続していくためには、区市町村が高齢者の自発的なグループ活動を育成、支援することが重要でございます。都は、こうした取り組みを推進するため、老人総合研究所を活用いたしまして、自主的に介護予防に取り組むグループ等をネットワーク化した、東京の介護予防を進める高齢者の会を発足させるとともに、昨年十一月には、この会とイベントを共催いたしまして、自主グループ等の活動事例を広く紹介するなど、相互交流の促進と普及啓発に努めてまいりました。
 今後、区市町村においてもこのような介護予防のネットワークが構築されるよう、介護予防を地域で担うリーダーを都として養成するなど、高齢者の介護予防活動への主体的な参加を促進してまいります。
 最後に、公園における介護予防の取り組みについてでございますが、介護予防を一層普及し、定着させていくためには、高齢者が身近な地域で、指導員の適切な指導を受けた上で、楽しく取り組める環境づくりが重要でございます。
 このため、ご提案のように、都民の憩いの場である公園にストレッチ体操などの運動器具を設置し、公園を介護予防の場として活用することは、高齢者のみならず、さまざまな年代の都民の健康づくりにも寄与する有意義な方策と考えられるわけでございます。
 このため、都は、今後、介護予防事業に活用する目的で区市町村が公園に器具等を設置する場合についても、新たに独自の介護予防拠点整備費補助の対象とすることによりまして、こうした取り組みの普及を図ってまいります。
   〔環境局長村山寛司君登壇〕

○環境局長(村山寛司君) 校庭の芝生管理における農薬等の取り扱いについてお答えいたします。
 校庭芝生化事業を進めていく上で、芝生の維持管理に当たって、児童生徒の健康に配慮し、できるだけ農薬等の使用を抑える、同時に、除草や病害虫防除を適切に行っていく、この二つをいかに両立させるかが課題でございます。
 この間、既に芝生化を実施した学校にお伺いし、経験などをお聞きしておりますが、多くの学校で農薬等を原則として使用せずに維持管理を行っております。それらの学校では、そのために専門家の知恵をかりたり、日常的な除草作業等に児童生徒を参加させたり、保護者や地域などと連携するなど、さまざまな工夫がなされており、そのことで児童生徒の間に自然を大切にする意識を高める教育効果を生んだり、保護者相互あるいは地域のきずなが深まるなど、当初想定していなかった芝生化の新たな効果の発揮につながっているとのことでございます。
 都は、こうしたノウハウや体験を取りまとめ、区市町村や学校に積極的に情報提供することにより、できるだけ農薬等を使用しない校庭芝生化を進めてまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 羽田空港に関する二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、羽田空港跡地についてでございますが、昨年十二月、羽田空港移転問題協議会、いわゆる三者協が開催され、国から跡地の範囲と面積が提示されました。これを受け、今後、跡地に関する議論が本格化すると考えております。
 都としては、本年度中に三者協を開催し、跡地利用の基本的な考え方や計画策定の具体的な進め方及び時期などについて協議してまいります。
 また、跡地の開発整備については、再拡張事業の供用開始時期などをにらみながら進めてまいります。
 次に、跡地の利用についてでございますが、跡地は空港に隣接する重要な空間であり、空港機能をサポートするとともに、空港の持つ可能性を活用した利用計画を立てることが重要でございます。
 都は、関係局から成る連絡会議などにより連携を図りながら三者協に臨み、国や地元区と調整し、跡地利用に主体的に取り組んでまいります。
 また、国が所有する跡地の取り扱いについては、今後進められる跡地利用に関する三者協の検討結果を踏まえて、適切に対応してまいります。
   〔建設局長依田俊治君登壇〕

○建設局長(依田俊治君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、京浜急行線連続立体交差事業の進捗状況についてでございます。
 本事業は、京急本線及び空港線の京急蒲田駅周辺約六キロメールの区間にある環状第八号線の踏切など二十八カ所の踏切を除却し、交通渋滞の解消、地域のまちづくりなどに寄与する、極めて重要な事業でございます。
 本事業区間のうち、既設線との取りつけ部や分岐部など約二・五キロメートルの区間では、仮線工法を採用しており、現在、仮線敷設の準備工事を行うとともに、京急蒲田駅部での建設工事を進めております。
 また、その他区間の約三・五キロメートルでは、全体工期の短縮を図るため、用地取得と並行して、既設線の直上に高架構造物を建設することができる直接高架工法を採用しており、現在、おおむね半分の区間において橋脚工事などを実施しております。
 平成十八年度末では、全区間で事業費ベース約五割の進捗を見込んでおり、着実に事業を進めております。
 次に、環八の踏切部における仮立体化工事の見通しについてでございますが、この踏切は環八に唯一残っている踏切であり、深刻な交通渋滞が発生していることから、早急な対応が求められております。
 そこで、環八の交通渋滞を早期に緩和するため、全線の立体化に先立ち、上り線を仮立体化することといたしました。この仮立体化工事は、既設線路沿いの用地を取得した上で、仮設の高架橋を設けるものであり、この整備によって、踏切の遮断時間が、ピーク時一時間当たりおおむね四十分であったものが二十五分に短縮し、交通渋滞が早期に大幅に緩和されるものと考えております。
 これまで難航していた用地取得のめどが立ちましたことから、平成二十年春には、上り線仮立体が完成する予定でございます。
 次に、高架化した後の騒音、振動対策についてでありますが、本事業を実施するに当たっては、高架化した後の電車による騒音や振動などについて、環境アセスメントに基づき、適切な環境対策を行ってまいります。具体的には、遮音壁を設置するほか、騒音や振動の低減に効果のある最も重いレールやつなぎ目が少ないロングレール、改良型のまくら木や道床などを採用しますが、実施する際には、その時点での最新技術を導入することとしております。このことによりまして必要な対応が図られるものと考えております。
 また、高架化完了後は、アセスの事後調査を実施し、その結果によって、追加の環境対策が必要な場合は適切な対応を図ってまいります。
 今後とも、関係住民の理解と協力を得ながら、一日も早い完成を目指し、本事業に積極的に取り組んでまいります。