平成十九年東京都議会会議録第三号

○議長(川島忠一君) 九十七番酒井大史君。
   〔九十七番酒井大史君登壇〕

○九十七番(酒井大史君) 初めに、犯罪被害者支援について伺います。
 この問題については、過去四回の一般質問で取り上げ、今回が五回目となりますが、この間、犯罪被害者を取り巻く環境は大きく変化しました。特に国においてはその取り組みは顕著で、平成十六年十二月一日、犯罪被害者等基本法が成立、十七年四月に施行されるとともに、同年十二月には、法に基づく犯罪被害者等基本計画が閣議決定され、平成十八年四月一日より計画が実施に移されています。
 また、刑事裁判においても、被害者に一定の制約はあるものの、証人尋問、被告人質問、求刑をも認めるという、これまでの刑事訴訟制度を大きく変えることになる被害者参加制度を法制審議会がまとめたとの報道もあり、犯罪被害者にもようやく光が当たり始めた感があります。
 東京都においても、この間、警視庁を中心とした取り組みのみならず、医療機関向け犯罪被害者支援マニュアルの作成や、人権教育プログラム(学校教育編)に犯罪被害者やその家族の項目を設けるなど、一定の取り組みをしていただきました。
 しかし、刑法犯の認知件数はここ数年減少し、また昨年は、飲酒運転の厳罰化と取り締まり強化により、交通事故による犠牲者は減少しているものの、毎年一定数の犯罪被害者が新たに発生しています。昨年初めて発行された犯罪被害者白書によると、平成十六年における交通業過を除く刑法犯被害者総数は四万八千百九十人で、うち死者は千三百九十七人、重傷者は三千四百七十九人、軽傷者は四万三千三百十四人ということです。
 これだけ多くの方が毎年新たに被害者になっている状況の中で、これ以上被害者をつくらないための治安の回復のみならず、不幸にも被害に遭ってしまった方やその家族の立ち直りに向けた支援策は、国だけではなく、地方公共団体においても早急に確立していく必要があることはいうまでもありません。現に、犯罪被害者等基本法においては、そのほとんどの項目において、実施主体は国及び地方公共団体としています。
 そこで、今回は、平成十八年四月より犯罪被害者等基本計画が実施に移されたことを受けて、都の取り組みについて何点かお伺いします。
 昨年三月に開催された都道府県・政令指定都市犯罪被害者等施策主管課室長会議において、内閣府は総合的な窓口の整備を要請しましたが、内閣府犯罪被害者等施策推進室長の話では、当時、ほとんどの自治体で、内閣府からの要請を受ける担当窓口すら決まっていない状況であったと伺いました。
 幸いにも、東京都においては総務局人権部が担当しており、要請の受け手としては不都合はなかったことと思いますが、現在、人権部は庁内の総合窓口としてどのような対応をしているのか、まず伺います。
 その上で、国は、犯罪被害者等が再び平穏な生活を取り戻すまでの間、途切れることのない情報提供、支援を受けていくためには、地域の身近な公的機関である地方公共団体の取り組みが重要であるとしています。そして、その取り組みの第一歩として、犯罪被害者等からの問い合わせや相談があった場合に総合的な対応を行う窓口の設置が望まれます。現在、福井県や都内杉並区、日野市では設置されていますが、総務局人権部としては、犯罪被害者等からの問い合わせや相談を受ける体制は確立されているのか、体制整備の現状と今後の取り組み方針を伺います。
 次に、初めにも触れましたが、東京都においては、他府県に先駆けて、平成十五年十月に医療機関向け犯罪被害者支援マニュアルを作成していただきました。このマニュアルは、医療機関における犯罪被害者等に対する二次被害防止にも役立つものであり、大変有益なものです。
 作成当時、健康局は、都内全病院に直接送付するとともに、東京都医師会及び東京都歯科医師会に対して診療所への配布を依頼、都内全病院の管理者を対象とした講習会で直接説明するなど、関係者に周知し、理解の徹底を図っていくと述べられました。このマニュアルについては、継続的に周知を図っていく必要があると考えます。
 マニュアル作成から三年が経過しましたが、この間の周知状況と今後の取り組みについて伺います。
 また、このマニュアルだけではなく、都においては、平成十五年三月発行の人権教育プログラムに、中学校「総合的な学習の時間」に扱う人権課題として、犯罪被害者やその家族の項目を掲載していただきました。犯罪被害者等に対する偏見や差別意識をなくしていくため、このプログラムは大変重要なものであります。
 平成十五年以降、これまで毎年継続的に掲載していただいていますが、公立学校における活用状況について伺うとともに、引き続き人権教育の一環として取り組んでいくべきものと考えますが、所見を伺います。
 以上、今回は、犯罪被害者支援に関して、都の体制整備、二次被害防止に向けての取り組み、犯罪被害者に対する差別意識払拭に向けての取り組みについて伺いました。
 犯罪被害者等基本計画の中には、このほかにも、損害回復・経済的支援等への取り組みとして、損害賠償の請求についての援助、給付金の支給にかかわる制度の充実、居住の安定、雇用の安定が、また、精神的・身体的被害の回復・防止への取り組みとして、保健医療サービス及び福祉サービスの提供など、犯罪被害者等のための具体的な施策として取り上げられています。この中には、都が取り組まなければならない多くの課題があります。
 都として、不幸にも犯罪の被害に遭ってしまった都民の立ち直りに向けて主体的に取り組んでいく、さらにスタンダードな計画にとどまることなく、東京がこの国の犯罪被害者支援をリードしていく姿勢を示すため、東京都としての基本条例として、仮称でありますが、東京都犯罪被害者等支援条例を策定すべきであると考えます。
 この点については、過去何度もご提案申し上げ、知事からも前向きな答弁をいただきながらも、実現には至っておりません。都議会民主党としても、この間、犯罪被害者支援条例プロジェクトチームを設置し、検討を重ね、座長私案として条例案も準備させていただいています。
 東京都として、ぜひ、犯罪被害者等支援条例の制定とあわせて、秋田県が平成十八年二月に総合的な支援計画を策定するとともに、県内の市町村に対しては基本条例や見舞金支給条例の制定を要請している例もあることから、都としても、各局にわたる被害者支援を連携して計画的に行っていくため、総合的な支援計画を策定する必要があると考えますが、本件に関心をお持ちの知事の見解をお伺いいたします。
 さらに、市民生活に身近な市区町村と支援相談窓口の設置に向けて連携していく必要があると考えますが、あわせて所見を伺います。
 次に、児童虐待の防止について伺います。
 近年、子どもを取り巻く悲惨な事件が相次ぐ中で、都民の多くが子どもの安心・安全に大きな関心を抱いています。警察を初め地域の見守りの中、子どもに対する外部からの犯罪については監視の目が広がりつつあるものの、内部、すなわち家庭内での虐待という犯罪から子どもを守ることについては、監視の目が届きにくいこともあり、より深刻な状況にあります。
 平成十六年十月一日に改正児童虐待防止法が施行され、児童虐待への早期対応のみならず、児童虐待の早期発見に向けた通告義務の拡大がなされましたが、状況は一向に改善されず、平成十七年に全国の児童相談所が受けた児童虐待の相談件数は三万四千四百七十二件もあり、平成十八年版犯罪白書によると、そのうち、児童虐待にかかわる検挙件数は二百二十二件、検挙人員は二百四十二人であったということです。もちろんこれは顕在化した事例であり、このほかにも虐待に苦しんでいる子どもがいることは容易に想像されます。
 また、最近問題になっている給食費の未払いも、ある意味で育児放棄、ネグレクトの一種と私は考えています。
 現に虐待を受けている子どもたちが最悪の事態になる前に救出するとともに、虐待を受けることのないような環境を構築していくことも急務の課題であります。先ほど取り上げました犯罪被害者等基本計画の中でも、児童虐待の防止、早期発見、早期対応のための体制整備が盛り込まれております。
 そこで、都としての児童虐待に対する取り組みについて、何点か質問いたします。
 まず初めに、都がこれまで取り組んできた児童虐待に対する取り組み状況と課題について伺います。
 また、新年度予算の中で、児童虐待への対応に関連した新規事業として、医療機関における虐待対応力の強化と専門機能強化型児童養護施設制度を掲げていますが、その具体的な内容を伺います。
 次に、国では与野党が連携して、児童虐待の急増に歯どめをかけるため、親の責任を明らかにし、その上で親権を制限する方向で、児童虐待防止法改正の検討を行っています。具体的には、知事が呼び出し命令を出し、それに応じない場合は、児童相談所が保護者の住居に立入調査できるといった、児童相談所がこれまで以上に迅速に対応する仕組みを創設するものですが、都としてこれをどのように受けとめているのか伺います。
 また、法改正がなされた場合はもちろんのこと、現状においても、児童相談所のさらなる機能強化、人員の確保が必要であると考えます。このことは、東京都社会福祉協議会が行った児童虐待対応及び予防に関するアンケート報告書の中でも、区市町村は、児童相談所に、家庭訪問に同行してほしいなどの支援を求める声が多く上がっていることからもうかがえます。都として、児童相談所の機能強化に向けたこれまでの取り組み状況と今後の方針を伺います。
 さらに、虐待などさまざまな課題を抱えた子どもたちの回復のためには、できるだけ家庭的な環境のもとで安心して養育されることが大切です。そこで、養育家庭制度の充実について、都としての取り組み状況を伺い、次の質問に移ります。
 最後に、自殺者対策について伺います。
 本件に関しては、自殺願望の女性を救助しようとした警察官が命を落とすという大変痛ましい事件もありましたが、毎年三万人以上の方がみずから命を絶ってしまう現状自体が大きな社会問題となっています。
 警察庁生活安全局地域課の資料によると、平成十七年中における自殺者の総数は三万二千五百五十二人で、前年に比べ二百二十七人増加しています。また、原因、動機については、健康問題が四千百四十五人で、遺書ありの自殺者の四〇%を占め、次いで、経済・生活問題が三千二百五十五人、三一・四%、家庭問題が千十一人、九・八%、勤務問題が六百五十四人、六・三%の順となっています。
 このような状況を受け、国では平成十八年六月に自殺対策基本法が制定され、十月に施行されました。また、都においても、これまで、平成十五年度、十六年度において、西多摩地区におけるうつ病対策として自殺防止プロジェクトなどを実施しており、この点については過去の一般質問でも取り上げさせていただき、専門医等によるうつ病対策のみならず、経済的な問題を解決するため、特に中高年世代に向けたきめの細かい就業支援や労働相談、健康相談等、総合的な対策の必要性を指摘させていただきました。
 そこで伺います。
 平成十八年第四回都議会定例会所信表明で、知事は、社会全体で自殺防止に取り組むため、自殺総合対策東京会議を設置すると述べられましたが、その位置づけや役割などについて伺います。
 また、都のこれまでの取り組みがどのように自殺対策に反映されているのか、あわせて伺います。
 次に、この自殺者対策は、国との連携のみならず、他県との連携も重要であると考えます。この点について、平成十八年十一月、お隣の千葉県が、都市勤労者の自殺予防には、地域や家庭における気づきと支援、職場における労働環境やサポート体制の向上が不可欠であると同時に、首都圏においては各都県市間での通勤者が多いため、居住地と勤務地双方での啓発、情報の共有や連携が必要であるなど、課題が考えられることから、八都県市が共通の重要課題である都市型の自殺対策に共同で取り組み、広域的に情報発信していくことで自殺防止の推進に大きな効果が期待できると提案し、具体的には、総合的な自殺対策推進のため、広域的なキャンペーンの実施、経済界への働きかけなどの対策や、地域と職域との連携方策を八都県市共同で調査研究するとともに、必要な経費について十分な財政措置をとるよう国に対し要望していくことなどを掲げました。
 そこで、都としては、この千葉県の提案についてどのように対応していくのか伺います。
 最後に、自殺者対策については、うつ病など医療面からのアプローチのほかに、経済問題を解決していく面でのアプローチもあると思います。遺書あり自殺原因の第二位に経済・生活問題が挙がっておりますが、この中には、今問題になっている悪徳金融業者等の被害に遭っている多重債務者や、法的には支払いの義務のないグレーゾーン金利で苦しんでいる債務者もいるものと考えられます。
 この多重債務者対策については、先般の施政方針の中でも述べられておりましたが、都として具体的にどのような制度を構築するのか伺います。
 また、鹿児島県奄美市では多重債務者対策に積極的に取り組んでいますが、市民に身近な市区町村で行っている弁護士等による市民相談を活用するなど連携して、多重債務者が自殺に追い込まれないような地域ネットワークを構築すべきと考えますが、所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 酒井大史議員の一般質問にお答えいたします。
 犯罪被害者等支援についてでありますが、犯罪発生において、加害者の人権もまた保障されるのは結構でありますけれども、その反面、犯罪被害者や遺族の方々が、精神的、身体的あるいは経済的にも極めて過酷な状況に置かれていることは、まことに理不尽なことであると思います。
 国において、犯罪被害者等基本法及びこれに基づく基本計画が策定され、支援のフレームが整えられたとはいえ、被害者補償制度や刑事手続への関与の拡充など、本来、国の責任において実施すべき施策は、いまだにかなりおくれていると思われます。
 都としては、犯罪被害者の切実な思いにこたえ、適切な支援を図るため、区市町村のみならず、民間団体とも連携し、体系的で実効のある支援プランを策定していきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 人権教育プログラムの活用についてのご質問にお答え申し上げます。
 都教育委員会では、平成十五年以降、教員用の人権教育に関します実践的な手引であります人権教育プログラムに、さまざまな人権課題に関する実践・指導事例や関係資料等を掲載し、都内の公立幼稚園、学校のすべての教員に配布してきたところでございます。
 学校は、この人権教育プログラムを、職員会議や校内研修、指導計画の作成などの際に活用しております。
 また、都教育委員会が行います人権教育に関する教員研修では、内容の周知を図ることによりまして、犯罪被害者やその家族を含むさまざまな人権課題について、正しい理解と認識を深め、学校で積極的に活用できるよう指導しております。
 今後とも、国が策定しました人権教育・啓発に関する基本計画を踏まえるとともに、東京都人権施策推進指針等に基づきまして、人権教育プログラムの内容の充実に努め、学校が人権教育を一層推進することができるよう、引き続き取り組んでまいります。
   〔総務局長大原正行君登壇〕

○総務局長(大原正行君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、犯罪被害者等支援の総合窓口についてでございますが、平成十八年六月、犯罪被害者等支援に関する都としての総合的対応窓口を総務局に設置いたしますとともに、関係各局にも担当の窓口を設置いたしました。
 同年十月には、総合的対応窓口として支援施策を適切に進めていくために、犯罪被害者団体等の意見や要望を把握するための調査を実施し、現在、調査結果の集計、分析を行っております。
 また、十二月には、犯罪被害者等の支援のための啓発用リーフレットを作成し、都民への周知を図っているところでございます。
 次に、犯罪被害者等に対する相談体制の整備についてでございます。
 都ではこれまでも、被害者等からの相談に応じて、関係各局や関係団体等と連携協力して、情報提供、助言などを行ってまいりました。
 今後、被害者等が必要とする支援をより円滑かつ迅速に受けられますよう、情報の共有化など、相談機関相互の緊密な協力体制を整備し、相談事業の充実を図ってまいります。
 また、被害者等の心情や置かれた状況を理解した上で、職員がとるべき具体的な対応などを示しました実践マニュアルを作成し、相談内容のレベルアップに努めてまいります。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 児童虐待、自殺防止などに関する九点のご質問にお答えいたします。
 まず、医療機関向け犯罪被害者支援マニュアルについてでございますが、都は、医療機関での具体的な対応方法をマニュアルとして取りまとめ、平成十五年十一月に、都内の全病院に配布するとともに、東京都医師会、東京都歯科医師会を通じて診療所に配布したところでございます。あわせて、児童相談所などの関係機関にも配布し、医療機関の対応を周知しております。平成十六年三月には、都内全病院を対象とした病院管理講習会において内容を説明し、周知を図ったところでございます。
 今後とも関係団体との連携のもと、必要に応じて病院管理講習会などさまざまな機会を活用し、周知に努めてまいります。
 次に、児童虐待対策の取り組み状況と課題についてでございますが、都は、近年の急増する児童虐待に的確に対応するため、児童相談所の組織、人員体制の強化はもとより、児童虐待への対応機能を備えた先駆型子ども家庭支援センターの設置を区市に強力に働きかけるなど、相談支援体制の充実に努めてまいりました。
 年々深刻さを増す児童虐待に対し、今後も十分に対応していくためには、児童相談所のさらなる体制強化や児童福祉司の専門性を高めるとともに、区市町村職員や関係者の対応力の向上、関係機関の連携強化による取り組みの推進などが必要と考えております。
 次に、平成十九年度の新規事業についてでございますが、医療機関における虐待対応力強化事業は、日ごろから子どもを診察する機会を持つ医療機関の虐待対応力をより一層高めるための取り組みであります。
 具体的には、虐待の可能性や対処方法などに迷った医師が、都が選定した専門知識を有する医師や弁護士に相談し助言を得るドクターアドバイザーシステムの創設などを行うものでございます。
 また、専門機能強化型児童養護施設制度は、情緒面や心理面などの問題を抱える子どもへの対応を積極的に行っている児童養護施設に精神科医師や臨床心理士を配置し、被虐待児童などの治療的、専門的ケアの充実を図る試行的、先導的な取り組みでございます。
 次に、児童虐待防止法改正の動きについてでございますが、都は、従来から、虐待における児童相談所の立入調査に際しまして、裁判所の令状によるなど、司法機関が関与する仕組みの創設を図り、適正かつ実効性のある手続を制度化するよう、国に対して提案要求しているところでございます。
 現在、国で検討しているいわゆる呼び出し命令を伴った仕組みは、保護者がこれに応じない場合に、児童相談所が住居に立ち入ることが可能となるものでございます。
 こうした国の検討の方向は、都の提案要求の趣旨に沿ったものであり、立入調査に関する手続の明確化が図られる点から、一定の評価はしております。
 今後、国の動向を注視しながら、必要に応じて法改正に関する緊急提案要求を行うなど、適切に対応してまいります。
 次に、児童相談所機能強化に向けた取り組みについてでございます。
 都は、これまで、児童相談所の児童福祉司の増員や非常勤弁護士の配置など、児童相談所の機能強化に向けたさまざまな取り組みを行ってまいりました。平成十九年においても、児童心理司を大幅に増員するなど、さらなる充実を図る予定でございます。
 今後は、児童福祉司や児童心理司の計画的な育成方法の確立や、児童相談所の機能強化に向けた再編整備、また、これと連動した区市町村の相談体制の充実への支援などを進めていく考えでございます。
 次に、養育家庭制度の充実に向けた取り組みについてでございますが、お話のように、虐待などさまざまな課題を抱えた子どもたちは、できるだけ家庭的な環境のもとで健やかにはぐくまれることが望ましいことから、これまでも専門的なケアを必要とする子どもを養育する専門養育家庭の創設など、養育家庭制度の充実に努めてまいりました。
 また、養育家庭の経験年数に応じたきめ細かな研修を実施するなど、資質向上に向けた取り組みも行っております。
 今後ともこうした取り組みを一層推進し、養育家庭制度の充実に努めてまいります。
 次に、自殺総合対策東京会議についてでございますが、自殺は、個人的な問題としてのみとらえるべきものではなく、その背景にさまざまな社会的要因があることから、社会全体で自殺対策に取り組むことが重要でございます。
 東京会議は、自殺対策の推進基盤として、保健医療福祉や経済労働、教育分野の関係団体、自殺防止等に関する活動を行う民間団体、有識者など、幅広い分野からの委員で構成する予定であり、多角的な観点から、自殺対策に関する社会的な推進方策の検討などに取り組んでまいります。
 また、保健所が労働関係機関と連携して実施してきた地域でのうつ病対策など、これまでの精神保健施策における取り組み成果を生かしながら、効果的な施策展開に努めてまいります。
 次に、八都県市首脳会議での千葉県の提案についてでございますが、八都県市首脳会議では、この提案について、次回の首脳会議までに実務レベルでの課題整理や検討を行うこととされたところであります。平成十八年十二月に設置された担当部局による検討組織において、都としても提案内容に関する検討を行っております。
 都としては、今後この検討結果を踏まえ、八都県市による広域的な取り組みについても、適切に対応してまいります。
 最後に、多重債務者対策についてでございますが、来年度創設する多重債務者生活再建事業では、まず債務を把握し、家計改善、債務整理の提案を行った上で、返済見通しが立つ場合には必要な資金を融資し、困難な場合には自己破産等の手続をとるなど、債務者の状況に応じた解決策を提供することとしております。
 多重債務による自殺の防止を図るためには、このような仕組みを通じて債務者が直面する経済的問題を解決するほか、精神保健など多様な観点から社会的支援を行うことが重要でございます。
 このため、都は、今後構築する、区市町村を初め保健医療、労働、法律など幅広い分野の関係機関等による自殺予防のための相談支援ネットワークの中で、多重債務者の自殺防止についても取り組んでまいります。