平成十九年東京都議会会議録第二号

平成十九年二月十四日(水曜日)
 出席議員(百二十五名)
一番遠藤  守君
二番伊藤 興一君
三番きたしろ勝彦君
四番田中たけし君
五番鈴木 隆道君
六番後藤 雄一君
七番福士 敬子君
八番伊沢けい子君
九番そなえ邦彦君
十番原田 恭子君
十一番山口  拓君
十二番伊藤 ゆう君
十三番原田  大君
十四番河野百合恵君
十五番小竹ひろ子君
十六番松葉多美子君
十七番大松  成君
十八番中山 信行君
十九番高倉 良生君
二十番神林  茂君
二十一番早坂 義弘君
二十二番崎山 知尚君
二十三番宇田川聡史君
二十四番石森たかゆき君
二十五番高橋 信博君
二十六番鈴木あきまさ君
二十七番秋田 一郎君
二十八番山口 文江君
二十九番佐藤 広典君
三十番尾崎 大介君
三十一番伊藤まさき君
三十二番松下 玲子君
三十三番野上ゆきえ君
三十四番たぞえ民夫君
三十五番村松みえ子君
三十六番橘  正剛君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番谷村 孝彦君
四十番矢島 千秋君
四十一番高橋かずみ君
四十二番串田 克巳君
四十三番吉原  修君
四十四番山田 忠昭君
四十五番臼井  孝君
四十六番林田  武君
四十七番野島 善司君
四十八番服部ゆくお君
四十九番大西由紀子君
五十番西岡真一郎君
五十一番吉田康一郎君
五十二番斉藤あつし君
五十三番泉谷つよし君
五十四番くまき美奈子君
五十五番大西さとる君
五十六番増子 博樹君
五十七番かち佳代子君
五十八番植木こうじ君
五十九番長橋 桂一君
六十番野上 純子君
六十一番東村 邦浩君
六十二番小磯 善彦君
六十三番東野 秀平君
六十四番田代ひろし君
六十五番三宅 茂樹君
六十六番高木 けい君
六十七番山加 朱美君
六十八番村上 英子君
六十九番坂本たけし君
七十番川井しげお君
七十一番鈴木 一光君
七十二番吉野 利明君
七十三番いのつめまさみ君
七十四番門脇ふみよし君
七十五番小沢 昌也君
七十六番石毛しげる君
七十七番岡崎 幸夫君
七十八番柿沢 未途君
七十九番初鹿 明博君
八十番清水ひで子君
八十一番古館 和憲君
八十二番松村 友昭君
八十三番藤井  一君
八十四番ともとし春久君
八十五番木内 良明君
八十六番鈴木貫太郎君
八十七番倉林 辰雄君
八十八番樺山たかし君
八十九番近藤やよい君
九十番こいそ 明君
九十一番松原 忠義君
九十二番新藤 義彦君
九十三番古賀 俊昭君
九十四番立石 晴康君
九十五番桜井  武君
九十六番野村 有信君
九十七番酒井 大史君
九十八番花輪ともふみ君
九十九番大沢  昇君
百番大津 浩子君
百一番大塚たかあき君
百二番相川  博君
百三番中村 明彦君
百四番曽根はじめ君
百五番大山とも子君
百六番石川 芳昭君
百七番中嶋 義雄君
百八番石井 義修君
百十番比留間敏夫君
百十一番遠藤  衛君
百十二番高島なおき君
百十三番宮崎  章君
百十四番大西 英男君
百十五番山崎 孝明君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十一番山下 太郎君
百二十二番馬場 裕子君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番田中  良君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番渡辺 康信君

 欠席議員 なし
欠員
百九番 百二十番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事横山 洋吉君
副知事大塚 俊郎君
副知事関谷 保夫君
出納長幸田 昭一君
教育長中村 正彦君
知事本局長山口 一久君
総務局長大原 正行君
財務局長谷川 健次君
警視総監伊藤 哲朗君
主税局長菅原 秀夫君
生活文化局長渡辺日佐夫君
都市整備局長柿堺  至君
環境局長村山 寛司君
福祉保健局長山内 隆夫君
産業労働局長島田 健一君
建設局長依田 俊治君
港湾局長津島 隆一君
交通局長松澤 敏夫君
消防総監関口 和重君
水道局長御園 良彦君
下水道局長前田 正博君
青少年・治安対策本部長舟本  馨君
東京オリンピック招致本部長熊野 順祥君
病院経営本部長大塚 孝一君
中央卸売市場長比留間英人君
選挙管理委員会事務局長梶原 康二君
人事委員会事務局長高橋 道晴君
労働委員会事務局長押元  洋君
監査事務局長白石弥生子君
収用委員会事務局長中田 清己君

二月十四日議事日程第二号
第一 第一号議案
  平成十九年度東京都一般会計予算
第二 第二号議案
  平成十九年度東京都特別区財政調整会計予算
第三 第三号議案
  平成十九年度東京都地方消費税清算会計予算
第四 第四号議案
  平成十九年度東京都小笠原諸島生活再建資金会計予算
第五 第五号議案
  平成十九年度東京都母子福祉貸付資金会計予算
第六 第六号議案
  平成十九年度東京都心身障害者扶養年金会計予算
第七 第七号議案
  平成十九年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
第八 第八号議案
  平成十九年度東京都農業改良資金助成会計予算
第九 第九号議案
  平成十九年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
第十 第十号議案
  平成十九年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
第十一 第十一号議案
  平成十九年度東京都と場会計予算
第十二 第十二号議案
  平成十九年度東京都都営住宅等事業会計予算
第十三 第十三号議案
  平成十九年度東京都都営住宅等保証金会計予算
第十四 第十四号議案
  平成十九年度東京都都市開発資金会計予算
第十五 第十五号議案
  平成十九年度東京都用地会計予算
第十六 第十六号議案
  平成十九年度東京都公債費会計予算
第十七 第十七号議案
  平成十九年度東京都多摩ニュータウン事業会計予算
第十八 第十八号議案
  平成十九年度東京都臨海都市基盤整備事業会計予算
第十九 第十九号議案
  平成十九年度東京都病院会計予算
第二十 第二十号議案
  平成十九年度東京都中央卸売市場会計予算
第二十一 第二十一号議案
  平成十九年度東京都都市再開発事業会計予算
第二十二 第二十二号議案
  平成十九年度東京都臨海地域開発事業会計予算
第二十三 第二十三号議案
  平成十九年度東京都港湾事業会計予算
第二十四 第二十四号議案
  平成十九年度東京都交通事業会計予算
第二十五 第二十五号議案
  平成十九年度東京都高速電車事業会計予算
第二十六 第二十六号議案
  平成十九年度東京都電気事業会計予算
第二十七 第二十七号議案
  平成十九年度東京都水道事業会計予算
第二十八 第二十八号議案
平成十九年度東京都工業用水道事業会計予算
第二十九 第二十九号議案
  平成十九年度東京都下水道事業会計予算
第三十 第百二十六号議案
  平成十九年度東京都一般会計補正予算(第一号)
第三十一 第百二十七号議案
  平成十九年度東京都特別区財政調整会計補正予算(第一号)
第三十二 第三十号議案
  東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例
第三十三 第三十一号議案
  特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十四 第三十二号議案
  市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十五 第三十三号議案
 東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例
第三十六 第三十四号議案
  平成十八年度分の都と特別区及び特別区相互間の財政調整の特例に関する条例
第三十七 第三十五号議案
  東京都組織条例の一部を改正する条例
第三十八 第三十六号議案
  東京都職員定数条例の一部を改正する条例
第三十九 第三十七号議案
  東京都知事等の給料等に関する条例の一部を改正する条例
第四十 第三十八号議案
  東京都知事の給料等の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四十一 第三十九号議案
  災害時において応急措置の業務に従事した者の損害補償に関する条例の一部を改正する条例
第四十二 第四十号議案
  東京都国民保護対策本部及び緊急対処事態対策本部条例の一部を改正する条例
第四十三 第四十一号議案
  職員の定年等に関する条例の一部を改正する条例
第四十四 第四十二号議案
  東京都特別職報酬等審議会条例の一部を改正する条例
第四十五 第四十三号議案
  東京都知事等の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十六 第四十四号議案
  東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十七 第四十五号議案
  東京都人事委員会委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第四十八 第四十六号議案
  東京都監査委員条例の一部を改正する条例
第四十九 第四十七号議案
  東京都監査委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第五十 第四十八号議案
  東京都公債条例の一部を改正する条例
第五十一 第四十九号議案
  財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例の一部を改正する条例
第五十二 第五十号議案
  東京都都税条例の一部を改正する条例
第五十三 第五十一号議案
  東京都自動車税総合事務所設置条例の一部を改正する条例
第五十四 第五十二号議案
  東京都自動車税事務所設置条例を廃止する条例
第五十五 第五十三号議案
  アメリカ合衆国軍隊の構成員等の所有する自動車に対する自動車税の賦課徴収の特例に関する条例の一部を改正する条例
第五十六 第五十四号議案
  東京都収入証紙条例の一部を改正する条例
第五十七 第五十五号議案
  東京都副出納長設置条例を廃止する条例
第五十八 第五十六号議案
  東京都公益認定等審議会条例
第五十九 第五十七号議案
  東京都スポーツ・文化振興交流基金条例
第六十 第五十八号議案
  東京都私立学校教育助成条例の一部を改正する条例
第六十一 第五十九号議案
  東京都育英資金条例の一部を改正する条例
第六十二 第六十号議案
  東京都教育委員会の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第六十三 第六十一号議案
  東京都学校経営支援センター設置条例の一部を改正する条例
第六十四 第六十二号議案
  学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
第六十五 第六十三号議案
  都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例の一部を改正する条例
第六十六 第六十四号議案
  東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第六十七 第六十五号議案
  東京都立学校の授業料等徴収条例の一部を改正する条例
第六十八 第六十六号議案
  東京都立学校校外教育施設設置条例を廃止する条例
第六十九 第六十七号議案
  東京都体育施設条例の一部を改正する条例
第七十 第六十八号議案
  東京都都市整備局関係手数料条例の一部を改正する条例
第七十一 第六十九号議案
  東京都福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例
第七十二 第七十号議案
  東京都立看護専門学校条例の一部を改正する条例
第七十三 第七十一号議案
  東京都身体障害者更生援護施設条例の一部を改正する条例
第七十四 第七十二号議案
  東京都知的障害者援護施設条例の一部を改正する条例
第七十五 第七十三号議案
  東京都児童福祉施設条例の一部を改正する条例
第七十六 第七十四号議案
  東京都心身障害者福祉作業所条例を廃止する条例
第七十七 第七十五号議案
  東京都心身障害者生活実習所条例を廃止する条例
第七十八 第七十六号議案
  東京都養護老人ホーム条例の一部を改正する条例
第七十九 第七十七号議案
  東京都三宅島災害被災者帰島生活再建支援条例の一部を改正する条例
第八十 第七十八号議案
  東京都女性福祉資金貸付条例の一部を改正する条例
第八十一 第七十九号議案
  東京都感染症の診査に関する協議会条例の一部を改正する条例
第八十二 第八十号議案
  東京都結核の診査に関する協議会条例を廃止する条例
第八十三 第八十一号議案
  東京都薬物の濫用防止に関する条例の一部を改正する条例
第八十四 第八十二号議案
  東京都福祉・健康安心基金条例
第八十五 第八十三号議案
  東京都しごとセンター条例の一部を改正する条例
第八十六 第八十四号議案
  東京都立技術専門校条例の一部を改正する条例
第八十七 第八十五号議案
  東京都労働資料センター条例の一部を改正する条例
第八十八 第八十六号議案
  東京都農業関係試験等手数料条例の一部を改正する条例
第八十九 第八十七号議案
  東京都森林整備地域活動支援基金条例の一部を改正する条例
第九十 第八十八号議案
  東京都海上公園条例の一部を改正する条例
第九十一 第八十九号議案
  東京都地球温暖化対策推進基金条例
第九十二 第九十号議案
  都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例
第九十三 第九十一号議案
  東京都自然公園条例の一部を改正する条例
第九十四 第九十二号議案
  東京都環境科学研究所手数料条例の一部を改正する条例
第九十五 第九十三号議案
  東京都水防条例の一部を改正する条例
第九十六 第九十四号議案
  東京都公有土地水面使用料等徴収条例の一部を改正する条例
第九十七 第九十五号議案
  東京都立公園条例の一部を改正する条例
第九十八 第九十六号議案
  東京都特定自動車条例の一部を改正する条例
第九十九 第九十七号議案
  東京都給水条例の一部を改正する条例
第百 第九十八号議案
  東京都下水道条例の一部を改正する条例
第百一 第九十九号議案
  警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第百二 第百号議案
  警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例
第百三 第百一号議案
  警視庁留置施設視察委員会の設置に関する条例
第百四 第百二号議案
  東京消防庁職員定数条例の一部を改正する条例
第百五 第百三号議案
  特別区の消防団員等の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第百六 第百四号議案
  救急業務等に関する条例の一部を改正する条例
第百七 第百五号議案
  都営住宅十八CH─一〇五東(江東区大島九丁目第二・江東区施設)工事請負契約
第百八 第百六号議案
  都営住宅十八H─一〇九東(北区西が丘三丁目)工事請負契約
第百九 第百七号議案
  平成十八年度東京港臨海道路(Ⅱ期)若洲側アプローチ橋りょう鋼けた製作・運搬工事請負契約
第百十 第百八号議案
  包括外部監査契約の締結について
第百十一 第百九号議案
  東京都と神奈川県との境界にわたる町田市と相模原市との境界変更について
第百十二 第百十号議案
  境界変更に伴う財産処分に関する協議について
第百十三 第百十一号議案
  全国自治宝くじ事務協議会への新潟市及び浜松市の加入並びにこれに伴う全国自治宝くじ事務協議会規約の一部の変更について
第百十四 第百十二号議案
  都道の路線の認定について
第百十五 第百十三号議案
  都道の路線の廃止について
第百十六 第百十四号議案
  東京都道路公社が行う八王子中央有料道路事業の変更に対する同意について
第百十七 第百十五号議案
  東京都道路公社の道路の整備に関する基本計画の変更に係る国土交通大臣への認可申請について
第百十八 第百十六号議案
  平成十九年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担について
第百十九 第百十七号議案
  平成十八年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担の変更について
第百二十 第百十八号議案
  平成十八年度東京都一般会計補正予算(第一号)
第百二十一 第百十九号議案
  平成十八年度東京都特別区財政調整会計補正予算(第一号)
第百二十二 第百二十号議案
  平成十八年度東京都都市開発資金会計補正予算(第一号)
第百二十三 第百二十一号議案
  平成十八年度東京都公債費会計補正予算(第一号)
第百二十四 第百二十二号議案
  平成十八年度東京都都市再開発事業会計補正予算(第一号)
第百二十五 第百二十三号議案
  平成十八年度東京都臨海地域開発事業会計補正予算(第二号)
第百二十六 第百二十四号議案
  平成十八年度東京都水道事業会計補正予算(第一号)
第百二十七 第百二十五号議案
  平成十八年度東京都下水道事業会計補正予算(第一号)
第百二十八 第百二十八号議案
  東京都障害者自立支援対策臨時特例基金条例
第百二十九 第百二十九号議案
  都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例
第百三十 諮問第一号
  地方自治法第二百四十四条の四の規定に基づく審査請求に関する諮問について

   午後一時一分開議

○議長(川島忠一君) これより本日の会議を開きます。

○議長(川島忠一君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(川島忠一君) これより質問に入ります。
 百十三番宮崎章君。
   〔百十三番宮崎章君登壇〕

○百十三番(宮崎章君) 平成十九年第一回東京都議会定例会に当たり、都議会自由民主党を代表して質問をいたします。
 質問に入る前に、一言申し上げます。
 今月六日の夜、線路内に入り込んだ女性を助け出そうとして電車にはねられ、意識不明の重体になっていた警視庁板橋署常盤台交番の宮本邦彦巡査部長が、十二日に殉職されました。
 事故の後、交番には、近隣住民や地元小学校の児童等が回復を祈ってつくった千羽ヅルや花束が続々と届けられ、板橋署にも、連日、激励の電話や手紙が寄せられたとのことです。
 それら大勢の方々の願いもむなしいものとなりました。故宮本警部の責任感に満ちた勇気ある行動をたたえるとともに、ご遺族に心からお悔やみを申し上げます。
 故人のご冥福を心よりお祈り申し上げて、質問に入ります。
 今年は、国政においても、地方においても、政治が都民、国民の審判を仰ぐ重要な年であります。中でも、この春の都知事選挙は、東京の未来だけではなく、今後の我が国の方向を占うためにも非常に重要です。その知事選に、石原知事がこれまでになく早い時期に立候補宣言をされたことは、我が党にとってはもちろん、一千二百万都民にとっても大変心強いことだと思います。
 一部には、これまでの石原都政の輝かしい実績をねたんでか、事実をねじ曲げ、悪意に満ちたネガティブキャンペーンを繰り広げる向きもあるようですが、冷静かつ客観的な目で石原都政二期八年間を振り返れば、こうした言説がいかに根拠のないものであるかは火を見るより明らかであります。
 この八年でまず驚かされるのは、有言実行であります。ディーゼル車対策や新たな債券市場の創設による中小企業支援はもちろん、犯罪対策、東京ER、東京DMATの創設に見られる都民の安心を確保する独自の対策など、その実績は数知れません。
 中高一貫校の創設など、一連の都立高校改革では、硬直した学校の仕組みそのものを大きく変えるきっかけをつくり出し、また、民間活力を十二分に活用した認証保育所制度の創設によって、福祉の新しい形を全国に示しました。
 さらに特筆すべきは、こうした先進の政策を展開しながら、同時に財政再建を一気になし遂げたことであります。もちろん、こうした実績すべてが石原知事個人の力だけによるものではありません。そこには、都職員の創意工夫、そして知事と職員の強力なスクラムがあったことを忘れてはなりません。
 さらに、私たち都議会与党との絶妙な協力関係があってこそということをあえて申し添えさせていただきます。
 一方、東京そして日本の将来を考えれば、横田基地の軍民共用化や三環状道路の完成、オリンピック招致など、これからやり遂げなければならない課題は山積いたしております。
 継続こそ力であると知事がいわれたとおり、東京は、これまで以上に石原慎太郎を必要としているのであります。今、都民が求めているのは、上滑りな異論や反論を唱える者でも、現実性に乏しい空論を振りかざす者でもなく、いわんや、大衆の耳に心地よいことばかりを喧伝する者でもありません。実行不可能と思われる事柄であっても、東京のため、日本のために真に行うべきことを信念を持って実行に移す者であります。これこそが、都民、国民の負託を受けた政治家のあるべき姿であり、石原知事をおいてほかにいないのであります。
 そこで、まず、知事の三選にかける意気込みをお伺いいたします。
 石原知事の行動力はだれもが認めるところであります。その源泉は、具体的な施策を通じて、都民、国民に対する責任を果たしていくという力強い使命感にほかなりません。
 例えば、大気汚染のように、都民の生命を直接脅かす問題に対して、国に先駆けていち早く違反ディーゼル車一掃作戦を開始した後、矢継ぎ早に対策を繰り出し、都内の汚染状況が驚異的に改善されたことは、知事に異議を唱える会派でさえ認めざるを得ないでありましょう。
 さらに知事は、昨年九月、大気汚染訴訟に関する我が党の質問に対し、被害者を救済することを最優先すべきであること、裁判の範疇を超えた社会全体の課題として解決すべきことを答弁されました。
 質疑の翌日、控訴審の結審時に、裁判長は、裁判だけでは解決できない問題を含んでおり、関係者の英知を集めて抜本的に解決したいと述べ、知事と全く同様の認識を示しております。
 本来は国が責任を持つべきでありますが、知事は、ぜんそくに苦しむ被害者を救済する医療費助成制度と、さらなる公害対策の要求という抜本的な解決策を、東京高裁にみずから出向き、提案をしました。
 大きな社会問題となり、関係者の利害が錯綜している中、解決までには乗り越えるべき課題が山積しておりますが、あえてこのような困難な道程を選択した知事の考えをお聞きいたします。
 昨年末、東京の将来を展望する「十年後の東京」が公表されました。社会経済状況が大きく変動する時代にあって、長期的な見通しを立てることは大変難しいことですが、こういう時代だからこそ、行政がしっかりとした将来の道しるべを示す必要があると考えます。
 かねてから我が党は、夢のある東京の将来像を都民にわかりやすく示すべきと主張してまいりました。「十年後の東京」には、インフラ整備を初め、環境、福祉、文化、産業など幅広い分野について、十年後への思い切った目標設定などを行っております。また、図表や表現にも工夫を凝らした、都民にわかりやすいものとなっております。
 お聞きするところ、策定の段階から石原知事が力を入れられ、事務方との議論を何度も重ね、タイトルの表現など細部にもこだわられて策定されたとのことです。その後の知事の発言等をお聞きしても、「十年後の東京」への熱い思いがひしひしと伝わってきます。
 将来への長期ビジョンである「十年後の東京」の策定、公表に当たって、基本的な考え方と実現に向けた知事の決意を伺います。
 石原知事のリーダーシップのもと、立派な都市戦略ができたわけですが、これが絵にかいたもちであってはなりません。現段階では、十年後の東京が目指す姿と、その実現のための方向性を示したにすぎません。
 個々のテーマについては、今後、庁内で連携をとり、一丸となって施策を進めることと思いますが、「十年後の東京」の中で、実現に向けての実効性をどのように確保していこうと考えているのか伺います。
 機能的、魅力的な夢のある東京の将来をつくり上げていくには、当然のことながら、多摩・島しょ地域も含めた東京全体で取り組みを進めていく必要があります。
 昨年の第三回定例会の私の質問に対しても、「十年後の東京」は、多摩地域も含めた都全域における政策展開を示すとの答弁がありました。「十年後の東京」において、東京国体の開催などをにらみ、将来に向けた多摩地域の発展する姿をどのように描き、振興を図っていくかを知事に伺います。
 次に、行財政運営について伺います。
 平成十九年度予算案は、景気回復を反映して、都税収入は過去最高額を見込み、一般会計の予算規模は九年ぶりに六兆円台の後半となるなど、久々の大型予算となっています。我が党の要望も十分に踏まえ、都市再生、福祉と保健など、あらゆる分野での予算を増額し、十年後の東京に向けた施策を着実に推進しています。また、隠れ借金の解消など、財政基盤を強化する堅実な内容です。
 知事は、都財政の現状について、かつての瀕死の状態から立ち直っただけではなく、相当の若返りも図ることができたと述べています。最大の懸案であった財政再建を実現したその取り組みは、国やほかの自治体の模範となるものであります。この間の努力で得られた果実は、都民一人一人に還元していくべきです。
 また、十九年度予算は、石原都政二期八年間の総仕上げであると同時に、三期目のスタートとなる重要な予算です。
 そこで、八年間財政再建に取り組んできた成果に対する知事の率直な思いと、十九年度予算を含めてどう都民に還元するか、見解を伺います。
 十九年度予算では、福祉・医療、環境、スポーツ・文化の三分野で新たに特定事業の推進を目的とした基金を創設しています。これらの基金は、建物などハード面の整備だけではなく、ソフトの事業にも充当できるとのことであります。
 そこで、新たな三つの基金を創設した意義と、その具体的活用方針について伺います。
 また、財政再建は、歳入歳出両面にわたる積極果敢な努力が結実したものであります。歳入面では、景気回復による増収もありましたが、それだけではなく、先進的で、しかも地道な徴税努力があったことを見過ごしてはなりません。あらゆる施策の前提となる都税収入の確保に向けたこれまでの取り組みと今後の決意について伺います。
 次に、多摩の振興について伺います。
 この一月、多摩リーディングプロジェクトが改定されました。このリーディングプロジェクトによる取り組みと成果は市町村からも評価されており、今回の改定により事業内容が拡充されたことは、多摩地域の発展に意義あるものであります。
 一方、多摩振興のもう一つの主役である市町村に対する支援についても、我が党の強い要望にこたえ、市町村総合交付金が、十九年度、過去最高となる三百四十億円に増額されました。
 これらにより多摩振興体制の充実が図られたわけですが、都として今後どのように多摩振興に取り組んでいくのか伺います。
 次に、都区制度改革について伺います。
 平成十九年度都区財政調整協議は、昨年に引き続き激しい議論となり、我が党としても、協議の動向に強い関心を寄せてきました。都補助金の特別区財政調整交付金への振りかえを含め、調整税の特別区への配分割合を五五%とすることなどの都区合意により、財源配分の問題は決着いたしました。
 今後、都区双方が、東京の未来の創造に向け、大きな視点に立ち、都区のあり方について真摯に議論をしていくことが大切であります。
 既に、検討のための基本的な枠組み等が取りまとめられており、今後、事務配分、特別区の区域のあり方、税財政制度などの各項目について検討が本格化します。この検討は、都民、区民生活に大きな影響を与える重要な問題であり、我が党としても重大な関心を持っております。
 そこで、今後、どのように都区のあり方の検討を進めていくのか伺います。
 次に、公営企業改革について伺います。
 公営企業については、施設の大規模な更新や職員の大量退職を控え、抜本的な経営改革に取り組むことが必要です。そうした状況を踏まえ、公営三局は、平成十九年度を初年度とする経営計画をまとめたと伺っております。
 中でも、地下鉄、バス事業などを行う交通局は、民間に最も近い公営企業であり、公共の福祉の増進という本来の目的とともに、民間との競争に勝ち抜くため、一層の経営改革を進めることが求められています。
 このうち、都営地下鉄事業は、十九年度予算では、事業開始以来初めて経常収支が黒字になることを見込んでおります。この間の集客や経営の効率化など改善を進めてきた努力が実を結んだものと思います。
 しかし一方で、いまだ膨大な累積欠損金を抱える状況にあります。また、少子高齢化の進展に伴い、これまでのような乗客数の伸びは期待できません。さらに、安全確保やサービス向上を図るためにも多額の投資が必要となっており、今回の黒字転換を手放しで喜ぶことはできません。
 そこで、まず、都営地下鉄の今後の経営見通しについて伺います。
 地下鉄事業は、将来的には、東京メトロとの一元化という大きな課題がありますが、まず今回の黒字転換を一つのステップとして、経営の安定化を目指し、さらなる財務体質の改善を図ることが不可欠と考えます。
 このたび、交通局では新たな三カ年経営計画を公表しましたが、都営地下鉄としてどのように経営改善に取り組むのか伺います。
 次に、災害対策について伺います。
 都は、昨年公表した首都直下型地震の被害想定、また一昨年に発生した千葉県北西部地震や、中野区、杉並区の集中豪雨など実災害から得た教訓を踏まえ、地域防災計画の改定案を策定しました。
 建物の倒壊や火災で予想される人的被害の半減など、減災目標を初めて掲げるとともに、八都県市連携による広域対応や在日米軍への支援要請など、総合防災訓練の成果を反映したものになっております。また、都民の生命、財産及び首都東京を守るため、より実践的な計画となっております。
 そこで、本計画が目指す災害に強い東京の実現に向けた知事の決意を伺います。
 次に、東京港における海岸保全施設の整備について伺います。
 東京東部のいわゆるゼロメートル地帯を高潮の災害から守る防潮堤や水門などの海岸保全施設の果たす役割は、極めて重要であります。
 都では、これまでの施設整備により、高潮に対する安全性は確保されているとのことですが、一方、施設の老朽化対策や耐震対策が大きな課題となっています。
 折しも、本年一月、文部科学省の地震調査委員会は、今後十年以内に首都圏でマグニチュード七クラスの地震発生の確率は三〇%程度、三十年以内では七〇%程度と想定されると発表いたしました。
 これまでの我が党の質問に対して、都は、向こう十年間程度の緊急整備計画を策定していく旨、明らかにしていますが、首都直下地震の切迫性をかんがみると、集中的に投資し、短期間に完了させる計画を一刻も早く策定すべきであります。
 そこで、現在策定中である計画の内容のポイントと整備効果について伺います。
 次に、耐震改修促進計画について伺います。
 東京には、木造住宅から高層のマンション、オフィスビルまで多くの建築物が集積していますが、地震国日本では、いつどこで地震が発生してもおかしくない状況であります。
 こうした中、耐震改修促進法の改正により、都道府県に耐震改修促進計画の策定が義務づけられました。先日、耐震改修促進計画の素案が公表されましたが、まず、本計画策定のねらいについて伺います。
 本計画の素案を見ると、震災時に重要な役割を担う消防署、警察署、病院や学校等の公共建築物については、平成二十七年度の耐震化率の目標を一〇〇%にするなど、積極的な取り組み姿勢が示されています。しかし、都内の建築物の大半は民間建築物であり、その耐震化の促進には、都民や建物所有者の前向きな取り組みが不可欠です。
 都として民間建築物の耐震化に向けてどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 次に、今後十年間の都市基盤の事業展開について伺います。
 首都東京は、世界を代表する成熟を遂げた大都市として、我が国の発展をリードしてきたことはいうまでもありません。しかしながら、慢性的な交通渋滞や都市型水害、緑やオープンスペースの不足といった課題がいまだに残されております。
 石原知事は、こうした首都東京の抱える課題に対して、強力なリーダーシップを発揮して、多大な成果を上げてこられました。
 特に、凍結状態にあった外環道については、国への強力な働きかけにより、事業化へ道筋をつけるとともに、中央環状品川線では都みずから整備に乗り出し、昨年十一月に首都高速道路株式会社と共同で着工しました。三環状道路の整備促進に並々ならぬ情熱を注いだ知事の姿勢を評価するものであります。
 さらに、昨年五月には環状八号線を全線開通させ、一昨年秋の集中豪雨の際には、神田川・環七地下調節池の二期区間で緊急に取水を実施するなど、大きな成果を上げてきました。
 東京をさらなる成熟した都市とするためには、都市基盤の整備を一層強力に推進し、東京の抱える課題を克服することが不可欠です。
 そのため、道路、河川、公園などの整備に当たっては、十年後の東京を見据えた具体的な目標を設定し、事業を展開していくということが重要と考えますが、所見を伺います。
 また、道路、公園の緑、豊かな水辺などは、都市環境を向上させる貴重な空間でもあります。「十年後の東京」において、水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京の復活が目標の筆頭に掲げられております。
 そこで、東京をさらに風格ある都市とするため、道路の緑化や景観の向上、水辺空間の整備にどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 次に、景観計画について伺います。
 東京の街並みは、建築物の形態や色彩がばらばらで、屋外広告物も無秩序に乱立しております。成熟した都市にふさわしい景観をいまだ備えていないといっても過言ではありません。私たちには、東京の近代化や戦後の成長過程で損なわれてきたかつての美しい街並みの再生に取り組み、次世代へ継承していく責務があります。
 今定例会の施政方針で、知事は、新たに景観計画を策定すると表明いたしました。今後、美しい東京をどのように復活させる考えか、知事の決意を伺います。
 これまでの施策は、民間事業者などに対し、主に景観の配慮を要請するにとどまり、実効性の面で課題があったと思います。今回の計画では、どのように民間開発の景観を誘導していく考えか、具体的な取り組みを伺います。
 美しく魅力ある東京は、民間開発等の規制、誘導とともに、都みずから、道路や公園、河川などの整備を通じ、良好な景観の形成に範を示すことが重要です。公共施設の整備による景観形成について、景観計画における取り組みを伺います。
 次に、新たな住宅マスタープランの策定について伺います。
 「十年後の東京」では、より機能的、魅力的な東京の姿を世界に示し、美しいまち、安全なまちを実現して、次代に継承していくための戦略の必要性が示されました。我が党も二百年住宅ビジョンの策定に取り組んでいますが、東京をさらなる成熟した都市にするためには、住宅政策においても、こうした視点が重要であります。
 さきの定例会で住宅基本条例の抜本改正を行いましたが、都は、これを踏まえ、今後十年間に取り組むべき具体的施策を総合的かつ体系的に取りまとめた新たな住宅マスタープランの素案を、先日公表いたしました。
 住宅政策における課題は、複雑かつ多岐にわたっています。十年後の東京をさらに成熟を遂げた都市としていくために、今後どのように住宅政策を展開していくのか、知事の所見を伺います。
 次に、都民住宅について伺います。
 かつてのバブル期の深刻な住宅難対策として大きな役割を果たしたのが、民間土地所有者に働きかけて建設された民間活用型の住宅であります。都民住宅の建設の際には、利子補給や補助金の支援など、さまざまな手だてで民間土地所有者を都民住宅建設へと誘導しました。また、家賃補助を行い、段階的に家賃が上がる傾斜家賃制度を採用しました。
 当時は応募者が殺到したものでありますが、バブル経済崩壊後の社会経済状況の変化によって、事情は一変しました。傾斜家賃の上昇によって退去者が増加し、新規入居者も減少しています。空き家の増加により、都の政策に協力したオーナーの中には、入居者を確保するために家賃の引き下げを余儀なくされ、採算性の悪化と借入金の返済に苦しみ、経営破綻の危機に瀕している者もいます。
 一方、都には今後、多額の利子補給が残っています。これはもはや、バブル期の住宅政策による隠れた負の遺産ともいうべき状況であり、財政状況が好転している今こそ、脱却に向けた取り組みを行うべきであります。
 とりわけオーナー対策は重要な課題であります。五年後からは管理期間が満了する住宅が出始め、経営がさらに深刻化すると予想されます。こうした状況は、住宅のストックを有効に活用する上でも看過することはできません。
 経営危機に陥っている都民住宅のオーナーに対する対策を速やかに講じるとともに、期間満了後の経営のあり方についても抜本的な検討を行うべきと考えますが、所見を伺います。
 産業振興について伺います。
 都は、「十年後の東京」を踏まえ、先月、産業振興基本戦略素案を発表いたしました。基本戦略は、「十年後の東京」が目指す都市像の実現を産業振興の面から推進するため、今後十年の産業振興の施策展開の方向性を示しています。
 近年、世界各国において、IT産業など有望産業の振興を国家戦略として進めております。そのため、我が国においても、新経済成長戦略に基づく取り組みが開始されたところですが、日本の産業を牽引する東京における産業振興の成果が、日本経済の今後を左右するといっても過言ではないわけであります。
 今こそ、世界に誇れる東京の高い技術力、大学・研究機関などの知の集積、巨大な市場などを生かした戦略的な産業振興を行い、国際競争に勝ち抜き、その存在感を高めることが重要であります。
 しかし、国際競争が激化し、少子高齢化が進展する中で、東京の産業は、製造業の減少、人材の質と量の確保への懸念といった不安材料を抱えています。こうした点から、今回の基本戦略の策定に大きな期待を寄せているところであります。
 そこで、今回の産業振興基本戦略の策定に当たり、今後の産業振興に対する見解を知事に伺います。
 産業振興基本戦略の推進に当たっては、産業を取り巻く環境の変化を的確にとらえた具体的な施策の展開が求められます。産業振興基本戦略をどのように具体化していくのか伺います。
 次に、中小企業支援について伺います。
 本年十月から責任共有制度、いわゆる部分保証制度が導入される予定です。この制度が実施されますと、これまで融資額の全額が保証されていた東京都の制度融資の保証割合が八割に限定され、残りの二割は金融機関が負担することになります。
 この制度の導入に当たって、我が党は、中小企業の資金調達に大きな影響を及ぼすことがないよう、適切な対応を求めてきました。その結果、小口利用の小規模企業や創業関係など、都の制度融資利用者の四割程度については、これまでどおり信用保証協会による全部保証が維持されることとなりました。
 引き続き中小企業が円滑に資金を調達できるよう、都は具体的な取り組みを進めていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、中小企業についての人材育成についてお伺いをします。
 中小企業の人材不足はいまだ解消されておらず、人材育成機能の低下も指摘されています。一方、若年者や女性、高齢者など貴重な労働力が、雇用のミスマッチなどにより、十分に活用されていない状況にあります。
 都は、中小企業の人材確保、育成を支援するため、技術専門校の組織を再編し、職業能力開発センターを設置することとしています。また、知事が公約として都みずから雇用就業対策に取り組むことを掲げ、平成十六年度に開設したしごとセンターにおいては、利用者が四万八千人を超え、きめ細かなカウンセリングにより、二万人が就職に結びつきました。
 都は、こうした成果を踏まえ、多摩地域にも拠点を設置し、就業支援を強化するとしています。中小企業の人材確保、育成に大いに資するものと考えます。今後は、こうした施設を最大限に活用して、中小企業の人材確保、育成を強力に支援すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、東京の農地の保全について伺います。
 近年、都市における農地は、農地としての本来の機能はもとより、貴重な緑の空間として、また、自然の調整池として水害の防止にも寄与するなど、重要な役割を担っております。「十年後の東京」では、水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京を復活させるため、新たに千ヘクタールの緑を生み出すことに加え、今ある身近な緑である農地を保全することも掲げています。
 しかし、現実には、東京の市街化区域内の農地は、生産緑地制度がスタートした平成四年から十三年間で三一%も減少しています。さらに統計によりますと、都では、農業従事者の四割が七十歳以上と高齢化が進んでおり、近い将来、相続税問題によって、さらに多くの農地が減少することが想定されます。市街化区域において貴重な農地を残していくことは、現在の農地制度や相続税制では困難なものであります。
 そこで、都市農地の保全について知事の所見を伺います。
 次に、環境対策について伺います。
 国連機関の最新の報告書によれば、今世紀末には、地球の平均気温が最大で六・四度上昇すると予想しています。今や地球規模の環境の危機が現実的なものになりつつあります。
 このような深刻な環境問題の解決を目指すためには、国際的大都市である東京が先駆的な地球温暖化対策を実施し、範を示し、世界に向けて発信することが重要です。
 「十年後の東京」では、二〇二〇年のCO2発生量を二五%削減するとしています。こうした具体的かつ高い目標を掲げて取り組もうとしていることは、極めて意義のあるものであります。これらの目標の達成に向かって、新たな発想で、東京の持つさまざまなポテンシャルを最大限引き出す工夫をしながら、今まで以上の努力を積み重ねていかなければならないと考えます。
 地球温暖化対策にどう取り組むのか、知事の基本姿勢を伺います。
 今後、東京都をさらに魅力的な、快適な都市としていくためには、都心部も多摩も一層緑豊かな都市として発展させていくことが必要であります。そのため、東京湾の風を都心部まで呼び込むような緑の太い軸を形成するとともに、都民が緑の価値を直接実感できるような身近な緑の空間を数多くつくり出すことが大切です。また、地域の中で親しまれてきた既存の緑を守ることも、ますます重要性を増しています。
 こうした観点から、東京を緑に包まれた美しい都市として再生するため、大胆な方策を総合的に推進していくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、福祉、医療について質問をいたします。
 我が党は、石原知事とともに、この八年、利用者本位の福祉改革、患者中心の医療改革を推進するため、日本の福祉、保健、医療をリードする政策を次々と発信してきました。こうした取り組みを加速させ、世界に誇れる福祉・健康都市東京の実現を目指し、福祉、保健、医療施策のさらなる充実を促す観点から、何点か質問をいたします。
 都は、先般公表した「十年後の東京」の中で、世界のユニバーサルデザインの最先端をリードする大都市東京を目指していくことを明らかにしました。ユニバーサルデザインによる福祉のまちづくりには、段差解消やノンステップバスの導入に加え、おむつ交換もできるトイレなど、多様なニーズにきめ細やかに対応し、改善を重ねていく不断の取り組みが必要です。
 そこで、二〇一六年のオリンピック招致等を絶好の機会として、ユニバーサルデザインによる福祉のまちづくりを一層加速すべきと考えます。今後の対応についての所見を伺います。
 同じく「十年後の東京」で示された、お年寄りも子どももみんなが生き生き暮らせる東京の姿に、私は思いをはせるものであります。その実現のために、将来に向けた重点的なかつ集中的な取り組みが求められており、都がこうした取り組みを確実なものとするため、福祉・健康安心基金を設立することは、大いに評価するものであります。この基金を活用した今後の施策展開について伺います。
 また、福祉・健康安心基金は、がん対策にも活用すると聞いていますが、がん対策については、本年四月の基本法の施行に伴い、都においても、来年度、がん対策推進計画の策定に着手することとなります。がん治療の充実は多くの都民の切望するところであり、粒子線治療装置などの新たな機器の開発や外来での抗がん剤治療も進んできております。推進計画の策定に当たって、これらの動向も踏まえ、各種の施策の充実を図っていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、障害者施策について伺います。
 「十年後の東京」では、だれもが安心して暮らせる地域社会の実現を目指すことを示されています。障害の有無にかかわらず、だれもが安心して暮らせる地域社会の形成は、我々に課せられた責務であります。
 一方、国においては、障害者施策の改革が進められているわけですが、これは、都が取り組んできた福祉改革と軌を一にするものであります。
 都では、石原知事のもと、利用者本位の福祉のための改革を強力に推進しており、こうした理念に基づき、障害者地域生活支援・就労促進三か年プランに平成十八年度から取り組んでいます。この結果、グループホームや区市町村就労支援センターの整備が着々と進んできております。今年度末には東京都障害福祉計画を策定予定と聞いていますが、計画策定に向け、障害者施策に取り組む知事の基本姿勢を伺います。
 また、東京都障害福祉計画は、自立支援法に基づく障害者福祉サービスの確保に関する計画で数値目標も定めるとのことですが、その内容について伺います。
 自立支援法は、これまでの施設中心の施策から、地域で生活を継続できるものに改めていくという大きな構想のもとに制定されたものであります。理念は高く評価できますが、この改革が抜本的なものであるがゆえに、さまざまな意見が出ていることも事実であります。
 我が党では、こうした声に丁寧に対応するという趣旨から、昨年十一月に政府に対して提言を行ったところであります。国は、我が党の提言を受けて、利用者負担のさらなる軽減など、三つの柱から成る自立支援法の円滑な運用のための対応策を示しましたが、都は、今回の改善策についてどのように受けとめているのか、伺います。
 次に、シルバーパスについて伺います。
 先般、国の税制改正において、平成十八年度より高齢者の住民税非課税の基準が下げられました。今年度のシルバーパス発行において、この改正の影響により、収入が変わらないのにもかかわらず、それまで千円で購入できたパスが二万五百十円となってしまうという事態を避けるため、影響を受けた利用者について負担額を据え置きました。来年度も対象者を適正に把握し、今年度と同様の経過措置を継続させることは、事務的にも多くの困難を伴うと思いますが、介護保険料においても税制改正に伴う経過措置は二年間とされており、シルバーパスについて、もう一年間の継続を要望します。都の見解を伺います。
 なお、シルバーパスの利用者を取り巻く状況は急激に変化しています。本年三月より始まるICカードPASMOは、バスにも導入されますが、「十年後の東京」において、都民の足としてバスの復権等の政策が示されています。団塊世代の高齢化により、平成二十七年には四人に一人は高齢者という社会を迎える中、このような社会状況の変化も勘案した上で、シルバーパス事業の不断の見直しは欠かせないと考えます。
 次に、都立豊島病院について伺います。
 豊島病院については、平成二十一年度当初に東京都保健医療公社への運営移管を目指すという都としての基本方針が決定されました。公社病院は、公的病院の一翼を担うものとして認識していますが、最も大切なことは、公社化によって、都民の求める医療がより適切に、かつ安定的に提供されることです。
 そこで、まず、豊島病院を保健医療公社へ移管する意義について、具体的に伺います。
 我が党は、豊島病院の区移管の是非について検討してきた際にも、地域医療の充実に果たすべき基礎的自治体の役割の重要性について、繰り返し主張してきました。今後、保健医療公社が運営する病院というメリットを生かしながら、地元自治体も巻き込んだ新たな発想に基づく充実策を取り入れるなど、より一層の地域医療の拡充に取り組むべきと考えます。
 今後、豊島病院の公社化を検討するに当たっては、こうした視点を踏まえることが必要と考えますが、所見を伺います。
 次に、教育について伺います。
 教育の憲法ともいわれる教育基本法が、昨年十二月に改正されました。戦後の教育基本法制定から五十九年間、教育水準は向上し、生活は豊かになりました。その一方で、都市化や少子高齢化が進むなど、教育を取り巻く環境は大きく変化してきました。近年では、子どもの規範意識や学ぶ意欲の低下、家庭や地域の教育力の低下などが指摘されております。
 このような中、安倍総理の強いリーダーシップのもと、新しい時代の教育の基本理念を明確に示し、我が国の未来を切り開く教育を実現するため、我が党の悲願でもあった改正が実現をいたしました。
 新しい教育基本法では、人格の完成という教育の目的を明確にするとともに、その目的を実現するために、公共の精神や我が国と郷土を愛する態度など、教育の目標が新たに規定されました。
 そこで、今回の教育基本法の改正を受け、国もさまざまな取り組みを行うと聞いておりますが、都教育委員会は、今後の都の教育にどのように臨んでいくのか、所見を伺います。
 また、第十六条で、「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」と規定し、法律に基づいて行われる教育行政は、不当な支配には当たらないことを明確にしました。
 これまで、一部の団体などは、旧法を都合のいいように解釈し、教育行政が教育内容や方法にかかわることは、不当な支配であるという主張を展開してきました。国旗・国歌の指導の問題は、まさにその典型であります。
 教育基本法を踏まえ、子どもたちへの指導が適正に行われるようにするために、都教育委員会が今後どのように取り組んでいくのか、決意を伺います。
 さて、教育を考える上で、私立学校の存在も重要であります。今回、教育基本法第八条には、私立学校については、「国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。」と規定されました。これは、我が国の学校教育の発展に対して、私立学校が大きな役割を果たしてきたことを踏まえたもので、今後の私学振興に対する重要な意義づけをしたものであります。
 我が党として、教育基本法に盛り込まれる以前から、東京の教育における私立学校の重要性にかんがみ、私学振興の推進に努めてきたところであります。
 さきの都議会定例会において、我が党の代表質問に対して、公立学校と同様の取り扱いは、私立学校の建学の精神に基づいた教育を損なうおそれがあり、教育の自主性は十分に尊重されるべきであるとのお答えをいただいているところでありますが、改正教育基本法を踏まえ、私立学校の自主性と振興について知事はどのように考えているのか、所見を伺います。
 次に、スポーツ振興施策について伺います。
 スポーツの振興は、世界共通の文化として、世界の人々との相互の理解や認識を深めるなど、国際的な友好と親善のために有意義なものであります。そして、今、東京では、平成二十五年に東京国体の開催を、平成二十八年にはオリンピックの招致を目指して動き始めたところであります。これらの大会の成功のかぎを握るのは、現在小学生から高校生のジュニア選手であります。こうしたジュニア選手たちがトップアスリートに成長し、都内各地域で行われるあらゆる種目において熱戦を繰り広げる姿は、都民に夢や希望を与え、東京におけるスポーツ振興に大きく寄与することとなります。
 そこで、十年後の東京を見据えた、今後の東京都におけるジュニア選手の育成、強化を含めた競技力向上について所見を伺います。
 こうしたジュニア選手の競技力向上には、学校の運動部活動における競技指導もまた重要なこととなります。今後とも、学校における部活動の教育的意義にかんがみ、部活動の振興を一層図っていくことを願うとともに、東京国体や東京オリンピックの招致に向けて、ぜひ地元東京の高校生や選手の活躍を期待するものであります。
 そこで、学校の運動部活動による競技力向上に向けた取り組みについて、どのように推進をしていくのか、お聞きいたします。
 さて、最後になりますが、知事は、開会日の施政方針の中で、このまちを私たちの子孫が胸を張って住める首都としていくため、日本の頭脳部、心臓部である東京のかじ取りを引き続き身命を賭して担う覚悟であると力強く宣言されました。子どもたちや孫たちに何を継承していけるのか、今まさにこのことが厳しく問われているのであります。
 東京が積み重ねてきた歴史の延長線上に私たちが存在していることをもう一度しっかりと認識し、石原知事とともに東京の新しい未来に向かって新しい第一歩を踏み出していきたいとの決意を申し上げ、私の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
  〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 相変わらず声が戻りませんで、ひとつご容赦願います。
 答弁に先立ち、一言申し上げます。
 先週六日、東武東上線ときわ台駅で、線路内に進入した女性を助けようとして電車にはねられ重体となっていた警視庁板橋署の宮本邦彦巡査部長が、十二日、多くの方々の願いと懸命の治療のかいもなく、殉職されました。ご遺族の方々の悲しみはいかばかりかと、心よりお察し申し上げます。
 事故後、交番には花を手向ける人の姿が後を絶たず、警察に寄せる都民の厚い信頼を物語っておりました。みずからの命も顧みずに人命救助に向かった彼の勇気こそ、日本人が忘れかけていた他人のために尽くすという自己犠牲、この国の美風にほかなりません。
 ここに、故宮本警部の犠牲的行為を深く胸に刻み、末永くたたえるとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。
 それでは、宮崎章議員の代表質問にお答えいたします。
 三選にかける意気込みについてでありますが、この八年間、東京から日本を変えるために、都議会の皆様の協力を得ながら独自の政策を複合的、重層的に講じてまいりました。その実績に対する評価については、この春、都民の皆様の判断を仰ぐことになりますが、なかなか動かぬ国を動かし、特に、時にはトップダウンも交えてのさまざまな取り組みが都の再生と都民生活の向上にいささかなりとも貢献してきたことは、都民の皆様にもご理解いただけると思っております。
 しかし、東京発の日本再生は第一章を終えたばかりでありまして、改革を継続してこそ、その成果を日本の新たな発展に結実させていくことができると思います。そのためにも、この八年間の実績を次の四年につなげ、東京を緑とさらに澄んだ空気の大都市としていくことに全力を傾けなければならないと思っております。
 私は、東京から日本を変え、さらには世界の大都市に範を示す決意を新たにしまして、このまちを私たちの子孫が胸を張って楽しみながら住める都市としていくため、東京のかじ取りを引き続き身命を賭して担っていく覚悟でおります。
 次いで、困難と対峙する政治信条についてでありますが、大気汚染の問題に限らず、現に困難に直面している都民を前にして、その救済に万難を排して取り組み、具体的な政策を通じて都民を救うことこそが政治の本来の役割だと思います。
 私はこれまでも、こうした信念に基づき都政の運営に当たってまいりました。時には不可能と思えることであっても、正当な文明批判の視点に立って独自の政策を打ち出してきたつもりであります。これからも動きの鈍い国を待つことなく、都民、国民のために、よかれと思うことを直裁に実行していく覚悟でおります。
 「十年後の東京」についての基本的な考え方でありますが、東京発の日本再生を確固としたものにするためには、東京のポテンシャルを存分に発揮しながら、より高いレベルの成熟した都市を目指していく必要がございます。ここで描いた十年後の東京の姿は、これまでの八年間、都政を預かってきた経験や実績を踏まえ、昨年一年間、多角的な検討を行った上で、東京の可能性を具体的な政策の方向性として示した近未来図であります。
 例えば、新たに千ヘクタールの緑を生み出すとともに、街路樹を今の四十八万本から百万本にふやし、海の森から都心部の緑を街路樹で結ぶグリーンロードネットワークを形成することなど、あるいは三環状道路の整備などによりまして、東京から渋滞がなくなり、平日でもお盆や正月並みの快適な道路交通が実現すること、あるいは最先端の省エネルギー技術を活用し、二〇二〇年までに二〇〇〇年比で二五%のCO2排出削減を達成することなど、心がければ実現のできる、目指すべき東京の姿をはっきりと描いております。
 この実現のためには、都はもとより、都民、企業、行政などの東京全体でムーブメントを起こしていくことが必要でありまして、必ず達成できると確信しております。現に、この間、大きな企業の幹部に参集願って、この提案をいたしましたら、東急電鉄などはもう早速、自分の線路が走っている斜面ののりは全部緑化するという申し出もしてくれました。
 私たちの子孫が胸を張って住める魅力のある首都としていくため、東京が持つ有形無形の大都市力を結集し、一丸となった取り組みを進めてまいります。
 多摩地域が発展する姿についてでありますが、「十年後の東京」は、オリンピックの招致はもとより、その三年前に開催される東京国体も視野に入れまして、東京をさらに機能的で魅力的な都市につくりかえていこうとするものでありまして、緑化の推進や集中的な耐震化対策など、都全域を対象として東京の近未来像を描きました。
 その中で多摩地域は、圏央道の全線開通により沿線一体が都県境を越えて広域のエリアとしてつながり、また、横田基地の軍民共用化に伴う都市機能の充実など、首都圏の中核として一層の発展を遂げる姿を描いております。
 こうした基本的な認識のもとに、首都大学東京などの産業支援拠点を活用した産学公連携の推進によるアジアを代表する産業拠点、いわば多摩シリコンバレーの形成、多摩のすぐれた自然を生かした観光振興や緑の保全、旧秋川高校跡地を活用した中高一貫のアスリート養成校の創設など、多摩地域の新たな可能性を開く政策を掲げております。
 とりわけ多摩シリコンバレーなるものが形成され、発展しますと、多摩地域の経済的なポテンシャルは、あるいは都心部をはるかに上回る未来的なものになると私は思います。
 先端技術産業等の集積や数多くの大学・研究機関、豊かな自然環境など、都心部とは異なる多摩地域の潜在力を十二分に開花させ、市町村とともに連携しながら多摩地域の振興を図ってまいります。
 財政再建の成果と都民への還元についてでありますが、就任当時、都財政は瀕死の状態で、その立て直しが最大の課題でありました。いささか時間を要しましたが、財政再建は今、完全に達成できたと考えております。ようやく知事としての責任を果たすことができまして、肩の荷が少しは軽くなったというのが率直な思いであります。
 今後求められるのは、この成果を都民にしっかりと還元することでありまして、十年後の東京の姿を展望しながら、都民の負託に積極的にこたえていきたいと思っております。
 ただし、バブル期の対応を反省材料として、やみくもな歳出拡大に走るのではなく、安定的、継続的な施策の展開を目指し、財政基盤の強化にも十分留意する必要があると考えております。
 こうした点を踏まえ、財政再建の果実である新たな財源については、喫緊の課題への対応、懸案課題の解消、貯蓄の増強という三点にバランスよく振り向けることを基本に、十九年度予算の編成を行いました。
 次いで、地域防災計画についてでありますが、東京直下地震の被害想定や千葉県北西部地震などの実災害により浮き彫りとなってまいりました課題を克服し、災害に強い東京を実現するため、地域防災計画を抜本的に見直しました。
 地震対策では、人的被害の半減やライフラインの回復による避難生活の早期解消など、減災目標を初めて設定いたしました。
 今後十年以内に減災目標を達成するため、建物の耐震不燃化や緑の防災ネットワーク形成による延焼防止、電力やエレベーターの早期復旧などの対策を推進いたします。
 また、集中豪雨対策では、新たに迅速な初動態勢の確保などを図ってまいります。
 今後、都民や区市町村、防災機関などと連携を強め、防災対策を強力に推進するとともに、実践的な訓練を積み重ね、災害に強い東京の実現に全力を尽くしてまいります。
 次いで、美しい東京を復活させる決意についてでありますが、「十年後の東京」では、都市戦略の第一に美しいまち東京の復活を掲げ、今年度じゅうに思い切った規制に踏み込んだ景観計画を策定いたします。
 具体的には、水辺や文化財庭園などの周辺で、建築物の景観誘導とともに屋上設置の広告物や光源を使った広告物を規制して、水辺や緑と共存する都市空間を再生してまいります。また、一定規模以上の建築物を対象に外壁の色彩についての基準を示し、落ちつきの感じられる街並みを形成してまいります。
 今後、これらの施策を展開することにより、洗練された都市の姿を取り戻し、成熟を遂げた美しい首都東京を実現してまいります。
 今後の住宅政策の展開についてでありますが、これからの十年間で、東京をさらなる成熟を遂げた美しいまち、安全が確保された住み心地のよいまちへと生まれ変わらせる決意であります。
 そのために、大地震の切迫性の高まりや、急速に進展する少子高齢化社会などに対応して、住宅の耐震化や木造住宅密集地域の整備促進などにより、住まいの安心・安全を確保してまいります。
 また、住宅市場における価格破壊を目指しまして、東村山での実証実験では、通常より三割から三割半安い住宅の供給を現に実現いたしました。私、風邪を引いて出席できませんでしたが、来場した人たちが千人ぐらいで、大変だったようでありますけれども、こういった成果を活用し、低廉で質のいい長寿命住宅を普及してまいります。
 あわせて、中古住宅の流通促進を図るなど、世代を超えて住み継がれる住宅まちづくりを積極的に推進してまいります。
 今後の産業振興についてでありますが、都は、これまでのCLO、CBOの発行によって一兆円規模の新債券のマーケットをつくってまいりました。そのうちで五十五社が現に上場を果たしました。こうしたベンチャー企業の育成を初め、独自の産業振興策を打ち出して、国や他の自治体をリードしてもまいりました。
 東京は、他にまねのできないすぐれた技術を持つ中小企業の集積や、巨大で洗練された市場の存在、優秀な人材など大きな可能性を持っております。こうした東京の強みを存分に生かし、技術と経営の革新によって国際競争力を強化し、東京の産業を新たなステージに飛躍させるつもりでございます。
 このため、環境、危機管理、航空機など、今後成長が期待される産業を重点的、戦略的に育成して、東京の産業を牽引してまいります。「十年後の東京」の目指す都市像の実現を産業振興の面から強力に推進していきたいと思っております。
 次いで、都市農地の保全についてでありますが、都市の農地は、農業生産に加え、身近な緑として生活に潤いや安らぎをもたらすなど、都市の貴重な財産であります。
 しかし、この十年を見ますと、現行の農地制度や相続税制のもとで、都市部では千四百ヘクタールもの農地が失われてまいりました。農業者の高齢化が進む中で、このまま放置すれば農地の減少がさらに加速することは明らかでありまして、看過できない大問題であります。
 都市農地を保全していくためには、大都市においても農地が存続できる政策への転換と、相続税制度の改善が絶対に必要であります。これを強く国に求めていくとともに、都としても、農業が継続できるよう、独自の取り組みを率先して進めてまいります。
 次いで、地球温暖化対策への取り組みについてでありますが、地球温暖化のもたらす危機の深刻さは極めて明確になっておりまして、これまで温暖化対策に背を向けてきたアメリカにおいてすら、CO2の削減を求める声が高まっております。
 都は、先月末、CO2の大幅な削減を目指すカーボンマイナス都市づくり推進本部を設置し、世界最高のレベルの温暖化対策を東京から広く発信するべく、十年プロジェクトを本格始動いたしました。都が中心となって、エネルギー事業者、自動車メーカーなど民間企業の力を結集し、さまざまな共同プロジェクトを順次実施するなど、東京の持つポテンシャルを存分に発揮し、CO2の大きな削減を実現してまいります。
 東京だからこそ率先してできる先駆的で実現性のある施策を複合的、重層的に講じて、世界で最も環境負荷の少ない都市を実現してまいります。
 つい先刻、本会議が始まります前に、今度の日曜日に参加してくださる有名な女子のランナーたちの訪問を受けまして、その中で、ほかの都市もいろいろしておりますが東京マラソンのテーマは何でしょうかという問いがありましたので、これはまさに東京から世界を救うんだと。そのつもりで環境対策を積極的にやりますと。
 前にも申しましたが、ポーランドの詩人のゲオルグの言葉のように、地球があした滅びるとも、君はきょうその手でリンゴを植えるという、そういう美しい高潔な、積極的な志を持った人間たちの連帯、このマラソンの大会を通じてその連帯をつくっていきたいということを申しました。
 次いで、緑の都市づくりについてでありますが、「十年後の東京」で示した水と緑の回廊で包まれた東京という近未来像を実現し、世界に誇れる美しい都市を創出するためには、緑の創造と保全を目指す取り組みを飛躍的に強化しなければなりません。このため、都のあらゆる施策の中で緑の視点を重視し、区市町村とともに連携しながら、規制、誘導、税制、都市計画など行政の知恵と力を遺憾なく発揮していきます。
 同時に、民間の都市開発などにおいて一層の緑化を進めるとともに、都民や企業を巻き込み、緑のムーブメントを大々的に展開するなど、東京の総力を挙げた取り組みで美しい緑の都市の実現を目指してまいります。
 障害者施策についてでありますが、都はこれまでも、障害者が地域で安心して生活を送れるよう、グループホームの整備促進など、国に先駆けてさまざまな独自の施策を実施してまいりました。
 昨年十二月に策定した「十年後の東京」では、障害者の自立と社会参加が進み、障害の有無などにかかわらず、だれもが安心して暮らせる地域社会を目指すこととしました。今年度じゅうに策定する東京都障害福祉計画においても、都の先導的取り組みをさらに前進させるとともに、喫緊の課題である障害者の就労支援の充実強化を図り、障害者が地域で自立して暮らせる社会を実現してまいります。
 最後に、私立学校の自主性と振興についてでありますが、多くの子どもが通う東京都の私立学校では、それぞれ建学の精神に基づきまして創意工夫による教育が行われており、生徒、保護者を初め多数の都民から高い信頼を得ております。
 学校教育における私立学校の重要性を考えれば、教育の根本をなす教育基本法に新たに私立学校に関する規定が設けられたことは当然のことでありますけれども、その意義は大きいと思います。
 これまでも都は私立学校の振興に努めてまいりましたが、今後も改正の趣旨を踏まえ、その自主性を尊重し、振興を大いに図っていくつもりでございます。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、東京の教育と教育基本法の改正についてでありますが、都教育委員会では、かねてより我が国の歴史や文化を尊重し、国際社会に生きる日本人の育成及び時代の変化に主体的に対応し、日本の未来を担う人間の育成などを基本理念として教育行政に取り組んできております。
 具体的には、都立高校における都独自の教科科目「奉仕」の必修化や、「日本の伝統・文化」の設定を初め、子どもの生活習慣確立、地域教育の推進、東京教師養成塾、学校への主幹職設置など、数々の先進的な施策を展開してきたところでございます。
 先般改正されました教育基本法で示された公共の精神、伝統・文化の尊重、教員の研究、修養と研修の充実や、家庭教育、学校、家庭、地域の連携協力などは東京都の施策と軌を一にしたものでございまして、国や全国の自治体においてもこれらの課題に取り組まれることは、都教育委員会としても大変心強く思っているところでございます。
 今後も、これまでの取り組みの成果と時代状況を十分に踏まえまして、全国に先駆けた教育改革をさらに推進してまいります。
 次に、適正な教育行政の推進についてであります。
 都教育委員会は、これまでも、法令や学習指導要領に基づき適正な学校教育を実現するための施策を実施してまいりました。今回の改正で、教育は法律に基づいて行われるべきものであると明確に規定されましたが、このような当然のことを明文化せざるを得ない状況があったというふうに認識しております。
 今後とも、子どもたちへの指導が中立性、普遍性を確保し、国民全体の意思に基づいて行われるよう、引き続き各種法令等に基づき公正かつ適正な教育行政を推進してまいります。
 次に、十年後の東京を見据えた競技力向上策についてであります。
 東京国体やオリンピックにおいて東京都選手の活躍を実現するためには、ジュニア選手の発掘、育成を含めた総合的な競技力向上策を整備、推進していくことが不可欠でございます。
 このため、平成十九年度に東京都競技力向上推進本部を設置し、都体育協会、各競技団体、各学校体育連盟等と緊密に連携した選手の発掘、育成、強化の体制を構築するとともに、競技別一貫指導プログラムの整備や医科学サポート体制の確立を推進するなど、十年後を見据えた競技力向上策に取り組んでまいります。
 また、平成十九年度は、ジュニア育成地域推進事業や国体候補のジュニア選手強化事業についても拡充を図りまして、総合的な競技力向上策の一環として、ジュニア選手の発掘、育成、強化を重点的に進めてまいります。
 最後に、運動部活動による競技力向上についてでございます。
 これまで、都教育委員会は、運動部活動が児童生徒の人格形成や健全育成において有益な教育活動でありますことから、部活動の振興によりスポーツの普及に努めてきたところであります。東京国体やオリンピックを見据えますと、さらなる競技力の向上に重点化した事業を行うことが必要でございます。
 このため、今後、専門的な指導者がいない競技種目等につきましては、各競技団体等と連携を図りまして重点的に指導者養成を行ったり、拠点となる学校を指定しまして、こうした種目の競技人口を拡大してまいります。
 また、スポーツの特別推薦で入学した都立高校の生徒に対しまして、強化練習会の実施や専門的な指導者の導入により能力開発を行うなどいたしまして、運動部活動による競技力の向上を推進してまいります。
   〔知事本局長山口一久君登壇〕

○知事本局長(山口一久君) 「十年後の東京」の実現に向けた実効性の確保についてのご質問でございますが、この実現のためには、区市町村と十分連携を図りつつ、都民、企業と協働しながら東京全体で取り組みを進めていくことが必要でありますが、まず財政、組織、政策展開とが一体となった都の率先的な取り組みが欠かせないものと考えております。
 財政面につきましては、昨年設置いたしました東京オリンピック開催準備基金に加え、地球温暖化対策推進基金など新たに三つの基金を創設し、今後の政策展開について集中的、重点的な投資を行うことで取り組みを加速させます。
 また、推進体制の充実としましては、スポーツ振興のための専管組織を設けることや、先月設置しました緑の都市づくり推進本部、東京都子ども・若者問題対策会議を初め、組織横断型の戦略会議を今後もさまざまな分野で活用してまいります。
 こうした基金の戦略的活用と、組織の壁を超えた全庁の英知を束ね、毎年度の重要施策、重点事業の中で政策の確実な具体化を図りながら、東京の近未来像を実現してまいります。
   〔財務局長谷川健次君登壇〕

○財務局長(谷川健次君) 新たな基金創設の意義とその活用方針についてでございます。
 このたびの基金は、「十年後の東京」の推進に向け、集中的、重点的な財源投入が高い効果を発揮すると見込まれる福祉、医療など三つの分野について、より積極的な施策の展開を図ることを目的として設置したものでございます。
 税収の好調なこの時期に特定の施策に対する財源をあらかじめ確保することによりまして、景気変動に左右されることのない安定的な事業の実施と、それによる都民サービスの充実を担保する仕組みが構築でき、基金の創設には大きな意義があるものと考えてございます。
 活用に当たりましては、おおむね十年以内に終了する時限的な事業の中から、それぞれの基金の設置目的、投資効果などを考慮しつつ選定し、充当していく方針でございます。
   〔主税局長菅原秀夫君登壇〕

○主税局長(菅原秀夫君) 都税収入の確保に向けた取り組みにつきましてお答えを申し上げます。
 都民のご期待にこたえる施策を引き続き積極的に展開していくためには、都政を財政面から支えております都税の徴収確保に努めていくことが強く求められております。
 都は、インターネット公売の実施、自動車へのタイヤロックの装着など、全国に先駆けた、創意工夫を凝らしたさまざまな取り組みに努めてまいりまして、都税の徴収率は過去最高を更新しているところでございます。
 さらに、鉄軌道用地に係る固定資産税の課税の適正化につきましても問題提起をいたしまして、税制改正として結実させるなど、適正公平な課税の実現にも努めてまいりました。
 今後とも、現状に満足することなく、都税収入の確保に向けた取り組みをさらに積極的に積み重ねてまいりまして、唯一の歳入所管局に課せられた責務を全力で果たしてまいります。
   〔総務局長大原正行君登壇〕

○総務局長(大原正行君) 二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、多摩振興についてでございますが、都が多摩振興に取り組む基本的施策として、平成十七年に多摩リーディングプロジェクトを策定し、多摩南北道路主要五路線の整備など、これまで着実に事業を推進してまいりました。
 昨年十二月に策定をされました「十年後の東京」では、道路交通網の整備など都市機能の向上や、多摩シリコンバレーの形成など産業の活性化を図り、多摩地域を首都圏の中核拠点として発展させるとの方向が示されました。
 今回の多摩リーディングプロジェクトの改定は、こうした考え方を踏まえまして、内容の充実を図ったものでございます。
 都がみずから行う多摩重点推進事業につきましては、事業数をこれまでの二十事業から二十五事業に拡充し、区部、多摩を結ぶ骨格幹線道路の整備や多摩地域の産業支援の強化などを盛り込んでおります。
 また、十九年度予算額も七百八十七億円と今年度より大幅に増額するなど、事業の進捗や新たな課題に対応したものとなっております。
 こうした都の取り組みと同時に、多摩の振興には市町村の役割が極めて重要であることはご指摘のとおりでございます。そのために、市町村が主体的なまちづくりや地域の振興に積極的に取り組めるよう、市町村総合交付金については、過去最高額の三百四十億円を計上いたしました。この交付金を一層活用いたしまして、市町村を強力に支援してまいります。
 今後とも、都の関係局や市町村と十分連携を図りながら、多摩の振興に努めてまいります。
 次に、都区のあり方の検討についてでございます。
 東京が将来にわたり日本を牽引する役割を果たしていくためには、行政を担います都区のあり方についても、時代の要請に合わせて見直していく必要がございます。
 今後、都は、大都市経営の担い手として、東京の活力を支える都市基盤の整備を進めますとともに、集積のメリットを生かして、産業振興、人材育成、科学技術、文化振興などに積極的に取り組むことが求められております。
 また、特別区は、基礎的自治体として、その行財政能力を高め、より広範に地域の事務を担い、みずからの責任で、福祉、教育、住宅など、住民に身近な行政サービスを効率的に提供していかなければなりません。
 都区のあり方の検討に当たりましては、こうした都と特別区の役割が十分に果たせますよう、特別区への一層の事務移管とともに、これと密接にかかわる特別区の区域のあり方をあわせて検討し、それらを踏まえまして、税財政制度のあり方の検討へと進めてまいります。
 今回、検討組織として、都区協議会のもとに、都区のあり方検討委員会及び専門的な調査検討を行う幹事会を設置いたしまして、既に第一回の会議を開催いたしました。今後、特別区と精力的に検討を進めまして、おおむね二年後の平成二十年度末を目途に、都区のあり方の基本的方向を取りまとめてまいります。
   〔交通局長松澤敏夫君登壇〕

○交通局長(松澤敏夫君) 都営地下鉄に関する二点のご質問についてお答えをいたします。
 まず、都営地下鉄の今後の経営見通しについてでございますが、大江戸線のネットワーク効果などによる乗客数の着実な増加や減価償却費などの減少、また、これまでの効率化策が実りまして、地下鉄事業の経常損益では、平成十九年度予算において、昭和三十五年の開業以来、初めて黒字転換を見込める状況にまでなったところでございます。
 しかしながら、ご指摘のとおり、ストック面におきましては、累積欠損金がいまだ約四千八百億円と膨大な額に達しておりまして、その解消には相当な年月を要すると見込まれるところでございます。
 また、将来的には、少子高齢化や低成長経済のもとで乗客数の大幅な伸びが期待できない一方、今後、施設の更新期を迎え、これに伴う大規模な投資が増加することなどもありまして、依然として厳しい経営状況が続くものと考えております。
 次に、都営地下鉄の経営改善についてでございますが、今回策定いたしました三カ年の経営計画、新チャレンジ二〇〇七では、経営力の強化を重点的取り組みとして掲げまして、民間並みの効率性がこれまで以上に発揮できるよう、思い切った経営改革を進めることとしております。
 地下鉄事業につきましては、今後、この計画に沿って、駅業務の委託の拡大や職員定数の削減、徹底したコスト管理などの効率化の方策を確実に実施する一方、観光客やビジネス客を対象に戦略的なPRを行うなど、新たな視点での増客、増収対策にも努めてまいります。
 こうした取り組みによりまして、計画期間中は運賃を据え置く一方、財務体質の改善を進めまして、経常利益の拡大を図ることにより累積欠損金の解消を目指してまいります。
   〔港湾局長津島隆一君登壇〕

○港湾局長(津島隆一君) 東京港における海岸保全施設の緊急整備計画についてでございますが、ご指摘のとおり、首都直下地震の切迫性が高まっていることから、本計画は、緊急性を要する既存施設の耐震、老朽化対策を目的として策定するものでございます。
 具体的には、従来のペースでは二十五年間要するところを、おおむね十年間と短縮し、平成二十七年度を目標に完了させる見込みでございます。このうち、被災すると大きな被害を及ぼす外郭防潮堤と水門については優先的に実施し、今後五年程度ですべて完了させたいと考えております。
 現在、計画の取りまとめを行っているところであり、今後、この計画に基づき、財源確保を図り、着実に施設整備を進め、都民がより一層安心して暮らせる東京の実現に努めてまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 五点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、耐震改修促進計画策定のねらいについてでございますが、東京は、人口や政治、経済が集中する大都市であり、住宅を初めとする建築物の安全性を高め、都民はもとより、国内外から東京を訪れる多数の人々の安全と安心を確保することが重要でございます。このため、本計画は、十年後における住宅や建築物の耐震化の具体的な目標を設定し、その実現に向けた施策の考え方について明らかにするものでございます。
 本計画の策定により、建物所有者や区市町村等の関係機関が目標を共有するとともに、自助、共助、公助の原則を踏まえた適切な役割分担のもと、耐震化を促進し、震災に強い首都東京の実現を目指してまいります。
 次に、民間建築物の耐震化に向けた取り組みについてでございますが、都としては、建物所有者が主体的に耐震化に取り組んでいけるよう、適切な情報提供や技術的支援を行うとともに、公共的な観点から、木造住宅密集地域において住宅の耐震助成を開始し、より一層の耐震化に努めております。
 本計画では、これに加え、重要な幹線道路沿道の建物の耐震化を進めることとし、平成十九年度には、代表的な三路線を先行的に指定し、耐震助成を初めとした具体的な取り組みに着手いたします。
 今後は、区市町村とも連携し、こうした取り組みを強力に進め、災害時における道路ネットワークの確保を図り、災害への備えに万全を期してまいります。
 次に、民間開発における景観の誘導についてでございますが、今回の景観計画の素案では、これまでの自主条例に基づく届け出制度から、景観法を根拠にして、建築物等の色彩に関する変更命令や罰則の適用も可能となる実効性のある制度へと移行いたします。
 また、特定街区、総合設計制度等を活用する大規模な開発については、景観に与える影響を考慮して、許認可手続の一環として事前協議を実施し、周辺の街並みと調和のとれた計画といたします。
 特に、景観形成が重要な水辺や文化財庭園の周辺などにおいては、景観シミュレーションや模型等も活用し、地域の景観資源を生かした計画を誘導することにより都市の魅力を高めてまいります。
 次に、公共施設の整備による景観形成についてでございますが、道路や公園、河川などの公共施設は、その周辺の土地利用と相まって、地域の景観を特徴づける大きな要素となっております。このため、景観計画の素案では、景観上重要な公共施設を指定して、景観に配慮した整備を行うこととしております。
 具体的には、東京駅から皇居に向かう行幸通り、日本初の近代洋風公園である日比谷公園、江戸の昔から人々に親しまれてきた隅田川等を対象に、公共施設管理者と連携して施設の魅力を高めてまいります。
 今後、こうした取り組みを順次拡大し、美しく風格のある景観を創出してまいります。
 最後に、民間活用型都民住宅の経営についてでございますが、都はこれまで、入居率向上のため、国に働きかけ、所得、世帯構成及び住所の資格要件緩和など、制度の見直しに取り組んでまいりました。
 特に、長期の空き家については、所得要件の撤廃を実現いたしました。借り上げを行っている住宅供給公社においても、募集方法の見直しや家賃の適正化などに取り組んできております。
 しかし、空き家率の改善が見られない住宅があることなどを踏まえ、今後は、こうした住宅の実態把握や、さらなる入居促進に向けた取り組みを進めてまいります。
 あわせて、管理期間満了を見据え、オーナーの公庫借入金の償還期間の延長などを国に対して要望してまいります。
 さらに、関係部局による検討組織を立ち上げ、良質なストックである都民住宅の有効活用に向けて、オーナー対策を含め、対応策を幅広く検討してまいります。
   〔建設局長依田俊治君登壇〕

○建設局長(依田俊治君) 都市基盤整備に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、十年後の東京を見据えた道路、河川、公園の整備目標についてでありますが、東京を快適で利便性が高く、災害に強い都市とするためには、都民が実感できる明確な目標を掲げ、実現していくことが重要でございます。
 重立った具体的な目標として、道路では、幹線道路ネットワークの整備や連続立体交差事業の推進などにより、都内の混雑時の平均旅行速度をお盆や正月並みの二十五キロに向上させること、河川では、護岸や調節池の整備などの重点的な対策により、過去の水害と同規模の降雨による被害の九割を解消させること、公園では、日比谷公園十二個分に相当する都立公園を新たに開園させるとともに、防災上重要な拠点に位置づけられている二十七の公園で防災関連施設の整備を完了させることなどを設定し、その達成を目指して戦略的に事業を展開してまいります。
 今後とも、広く都民の理解を得ながら、財源の確保、一層のコスト縮減、区市町村との連携などに努め、都市基盤整備を着実に推進してまいります。
 次に、道路の緑化や水辺空間の整備など、今後十年間の取り組みについてでございますが、東京をさらに風格ある都市とするため、都市の骨格となる道路、河川、公園などの整備に当たっては、緑の充実や景観の向上の視点を十分に取り入れていくことが重要でございます。
 このため、緑の拠点となる公園の整備や、これらをつなぐ街路樹を倍増することなどにより、緑のネットワークを充実させてまいります。
 あわせて、センター・コア・エリア内やオリンピック関連施設周辺の都道の一〇〇%無電柱化に取り組むとともに、主要駅周辺などで区市とも連携して面的な無電柱化を進めることにより、道路景観の向上を図ってまいります。
 また、隅田川などではテラスやスーパー堤防の整備を、野川などの河川では多自然川づくりなどにより、魅力的な水辺空間を創出してまいります。
 こうした取り組みを一体的に展開し、水と緑に囲まれた美しい東京の実現に総力を挙げ取り組んでまいります。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、産業振興基本戦略の具体化についてであります。
 基本戦略においては、重点産業の育成、技術・経営革新の誘発と産業基盤の強化、魅力ある都市の創出、人材育成の四つの戦略を定め、今後の施策の方向性を示しております。
 この基本戦略を着実に実施するため、今後三年間で展開すべき施策を盛り込んだ産業振興指針を平成十九年度に策定し、この指針に基づき事業の具体化を図ってまいります。
 また、施策の実効性を高めるため、東京都産業力強化会議において全庁的取り組みを推進するとともに、国、八都県市、区市町村を初め、東京の強みであります大学・研究機関、民間企業等とのネットワークを強化拡充し、幅広く施策を展開してまいります。
 次に、資金供給の円滑化についてであります。
 責任共有制度導入に当たり、都の制度融資利用者の四割程度につきましては全部保証が維持されることとなりましたが、厳しい経営環境が続く中、資金繰りに苦しむ中小企業への迅速かつ適切な資金供給は極めて重要であります。このため、平成十九年度におきましては、全部保証の対象となる小規模事業者に対する融資を充実するため、預託金を五十億円増額することといたしました。
 また、部分保証の対象となる場合については、経営状況が悪化している小規模事業者を支援するため、経営支援融資において保証料補助を実施することとしました。
 今後とも、東京信用保証協会及び新銀行東京などの金融機関と連携協力を図り、中小企業の資金調達の円滑化に努めてまいります。
 最後に、中小企業の人材確保、育成の支援についてであります。
 団塊世代の大量退職が見込まれる中、多くの中小企業が人材の確保、育成に苦慮しております。このため、都は、来年度、技術専門校を四つのブロックに再編の上、職業能力開発センターを設置し、従来の職業訓練に加え、中小企業の人材確保、育成を支援していくことといたしました。
 同センターでは、総合相談窓口を設置し、企業内訓練のコーディネートや講師の紹介等を行うとともに、業界団体と連携し、雇用を前提とした企業委託訓練等を実施してまいります。
 また、飯田橋のしごとセンターでは四〇%を超える高い就職率を達成しておりますが、そのノウハウを活用し、ことしの夏を目途に、国分寺にしごとセンター多摩を開設することといたしました。
 しごとセンター多摩では、特に、身近な地域での支援が有効なフリーターの就業や、女性、団塊世代の再就職を支援し、潜在的な労働力の活用を図り、中小企業の人材確保につなげてまいります。
 さらに今後は、これらの施設の連携を強化し、企業と人材を結びつける新たな機会を提供するなど、中小企業の人材確保、育成への支援を一層充実してまいります。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 福祉、保健、医療に関する六点の質問にお答えいたします。
 まず、福祉のまちづくりについてでございますが、都はこれまでも、高齢者、障害者を初め、だれもが自由に行動し、社会参加できるよう、ユニバーサルデザインの理念に基づきまして、区市町村が行う地域特性に応じた面的、一体的なまちづくりを支援するモデル事業を実施してまいりました。
 これらの成果を踏まえまして、また、オリンピック、パラリンピックの招致、国体の開催等を好機といたしまして、来年度、ユニバーサルデザイン整備促進事業を本格的に開始し、競技会場等の集客施設の周辺地域を中心に、福祉のまちづくりを積極的に展開してまいります。
 こうしたことにより、東京で生活する人のみならず、全国、全世界から集う多くの人が安全、快適に過ごすことができる、世界のユニバーサルデザインの最先端都市東京を目指してまいります。
 次に、福祉・健康安心基金についてでございますが、本基金は、子育てや老後、健康に対する都民の不安の解消を目的に、将来に向けた戦略的政策展開を実効性のあるものとするため、平成十九年度に新たに設置するものでございます。
 この基金を財源といたしまして展開していく事業については、仕事と子育ての両立支援、がん検診体制の整備、医療人材確保対策、がん、認知症対策などの研究の充実、ユニバーサルデザインのまちづくりなどを予定しておりまして、具体的には来年度から検討してまいります。
 今後、福祉・健康安心基金を活用いたしまして、「十年後の東京」で示した、だれもが安心して暮らせる都市の実現に向けて、集中的、重点的に施策を展開してまいります。
 次に、がん対策の推進についてでございます。
 都はこれまでも、がん検診の受診促進やがん診療連携拠点病院の整備、緩和ケアに携わる人材の育成など、さまざまな取り組みを行ってまいりました。しかしながら、診断、治療技術の向上にもかかわらず、がんは依然として都民の死亡原因の第一位を占め、多くの都民の不安を招いている現状があり、都としても、これまで以上にがん対策を強化すべきと考えております。
 このため、平成十九年度早期に、医療関係者や学識経験者、患者団体の代表などから成る東京都がん対策推進協議会を設置いたしまして、予防、早期発見対策の充実、専門的治療水準の向上、相談支援体制の強化を中心にご検討いただく予定でございます。
 これを踏まえ、今後の都における総合的ながん対策を明らかにする東京都がん対策推進計画を来年度内に策定いたしまして、がん対策の充実に取り組んでまいります。
 お話しの先進的な放射線治療や化学療法などについては、現在、国が評価、検証を行っているところでございますが、この協議会で専門家の立場から幅広くご議論いただきまして、国の動向も踏まえて、今後のがん医療の向上に生かしてまいります。
 次に、障害福祉計画についてでございますが、現在策定中の東京都障害福祉計画では、障害者自立支援法の趣旨を踏まえ、これまで都が国に先駆けて進めてきた地域生活移行の取り組みや、喫緊の課題であります就労支援等の強化を基本に据えることとしております。
 こうした考えのもと、障害福祉サービスの必要見込み量を初め、入所施設から地域生活への移行や、いわゆる社会的入院の状態にある精神障害者の退院の促進、就労支援の充実強化などについて、平成二十三年度末までの具体的な数値目標を本計画に定める予定でございます。
 都は、区市町村や関係機関等からの意見なども十分踏まえながら、障害の有無等にかかわらず、だれもが安心して暮らせる地域社会の実現に向け、本計画の策定に鋭意取り組んでまいります。
 次に、障害者自立支援法の円滑な運用のための新たな改善策についてでございますが、自立支援法は、障害者がその有する能力や適性に応じ、自立した生活を営むことができるよう支援を行い、障害の程度や種別にかかわらず、安心して暮らすことのできる社会の実現を目的としております。
 しかしながら、今回の改革が広範かつ抜本的なものであったことから、昨年十月の本格施行後も、障害者を初め多方面からさまざまな意見が出されたのも事実でございます。
 今回の国の改善策は、法の目指す改革を着実に進めていくため、法の施行状況や関係者の意見を踏まえて、激変緩和という観点から対応するものでございまして、お話のあった具体的な対策を含むご提言や、昨年十一月に行った都の緊急要望などが結実したものと考えております。
 最後に、シルバーパス事業の経過措置についてでございますが、平成十八年度の経過措置は、税制改正の影響によりまして、シルバーパスの利用者負担金が千円から二万五百十円に増額となる方について、激変緩和の観点から、これを一年間、千円の負担に据え置く措置を講じたものでございます。
 シルバーパス事業を今後とも維持していくためには、利用者である高齢者の理解も得ながら、社会状況の変化に的確に対応していく必要がございます。ご要望のありました経過措置を十九年度も継続することについては、ご指摘の点なども踏まえまして、適切に検討してまいります。
   〔病院経営本部長大塚孝一君登壇〕

○病院経営本部長(大塚孝一君) 豊島病院に関連する二つのご質問にお答えいたします。
 まず、豊島病院を公社に移管する意義についてでございますが、診療報酬のマイナス改定や深刻な医師不足など、病院経営を取り巻く環境が厳しさを増す中で、限りある医療資源を最大限有効に活用していくためには、医療機関相互の機能連携を強化することが重要なかぎとなります。
 豊島病院は、区西北部二次保健医療圏内在住の患者さんが八割以上を占め、紹介率も六割に達するなど、現実に地域に密着した運営を展開しており、さらなる地域医療機能の充実が求められております。このため、これまで五つの地域病院を安定的に経営してきた実績を持つ東京都保健医療公社に移管することによりまして、地域の医療ニーズにより弾力的に対応するとともに、総体としての医療サービスのさらなる向上を図ろうとするものでございます。
 次に、豊島病院の公社化に当たりましての充実策についてでございますが、ご指摘のように、豊島病院が地域開放型病院として地元自治体と協力して地域医療の充実を図ることは、極めて重要であると認識しております。
 地元板橋区は、地域医療を充実するためみずから努力するとした上で、豊島病院には、小児医療やリハビリテーション医療の推進など、具体的な医療需要への対応を求めております。このため、豊島病院内に地元の自治体や地域の医療関係者等で構成する運営協議会準備会を設置いたしまして、地域のニーズを踏まえた具体的な医療機能などのほか、新たな発想による連携方法も含めまして、公社化に向けた課題について検討してまいります。

○議長(川島忠一君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後二時五十三分休憩

   午後三時十一分開議

○副議長(木内良明君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十四番田中良君。
   〔百二十四番田中良君登壇〕

○百二十四番(田中良君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 質問に入る前に、一言申し上げます。
 十二日、多くの方々の願いもむなしく、宮本邦彦巡査部長が逝去されました。故宮本警部のご遺族にお悔やみ申し上げますとともに、故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
 質問に入ります。
 まず、石原知事の都政運営について伺います。
 この間、海外出張費や知事交際費、また、ご子息の都政への関与あるいは裏献金疑惑が取り上げられ、石原知事と知事側近による都政の私物化が問題とされてまいりました。私たちは、こうした問題に加えて、石原知事の都政運営がいかに都政を傷つけているのかを一つ一つ明らかにし、今、都知事をかえることの重要性を訴えるものであります。
 「十年後の東京」について伺います。
 私たちはこれまでにも、都政の基本的指針として長期計画を示し、その中に実施計画、単年度予算を位置づけるという当たり前のことを行うことが、都政の未来に向かって職員のモチベーションを高めることにもつながるとし、東京の将来ビジョン策定を求めてまいりました。
 しかしながら、さきに明らかにされた「十年後の東京」は、ハードに偏重し、これまで都政に関して議論、提言されてきたものをパッチワーク的に張りつけたもので、新味のあるものではありません。そもそも、東京の将来ビジョンの中にオリンピックを位置づけるべきものを、オリンピックのためにすべての施策が位置づけられているところに根本的な間違いがあるのであります。
 知事は、さきの施政方針において、「十年後の東京」は、空想的、抽象的なマニフェストなどではなく、東京の具体的な近未来図であるとされました。
 そこで伺いますが、この「十年後の東京」は、都政においてどのように位置づけられるのでしょうか。行政計画なのか、構想、ビジョンなのか、単なる夢なのか、東京構想二〇〇〇との関係はどうなるのか、明らかにすべきであります。
 また、具体的なものであるならば、その財政的な裏づけをここで明確にしていただきたいと思います。
 さらに、ここに示されたような各種施策であっても、これを着実に具体化していくためには、都政運営の戦略的、総合的な管理が不可欠であります。しかし、朝から登庁することが極端に少なく、休日や庁外の仕事が多い石原知事には酷な課題であります。
 そもそも、今回の「十年後の東京」がパッチワーク的なものになってしまったのは、知事が在庁していることが少ないため、職員が知事決裁を要するような新しい仕事をしなくなったからではないのでしょうか。さらにいえば、計画を嫌い、知事にのみスポットライトを当てようという、これまでのピンポイントサプライズの手法が、職員全体の戦略目標を棚上げにし、職員のモチベーションと政策立案力を著しく低下させてきたことも大いに起因しているのではないでしょうか。
 知事は、これまでの都政運営の結果が今回の「十年後の東京」につながったことについてどのようにお考えか、見解を伺います。
 知事は、就任以来、人事は知事が直接指示するとしてまいりました。ピーター・ドラッカーも、トップが行う決定のうち、人事ほど重要なものはない、したがって、人事は正しく行われなければならないとしています。
 人事はそれほど重要な決定ですが、知事がこれまで行ってきた人事を見ると、例えば、知事が重視する環境行政のトップである環境局長は、平成十四年夏から十六年夏の二年間を除いて、毎年一年で交代しており、港湾局長、財務局長は四年間連続で交代し、収用委員会事務局長に至っては、平成十二年夏から五年間連続で交代しております。
 このように一年で交代した局長ポストは、知事就任以来の累計で六十二にも上るのであります。夏に就任した局長が、前局長の編成した予算を執行し、次年度予算を編成したところで異動する、これが何年も繰り返されることは、その局の新たな事業展開を阻害することにつながります。さらに、局長の一年交代は部課長人事にも影響を及ぼし、庁内を混乱させています。
 さらに、庁内には、これまでの人事の結果から、人事はその人の能力ではなく、知事と知事側近の好き嫌いで決められるという風評が流布していますが、このようなことで人事は正しく行われたといえるのでしょうか。
 ドラッカーは、組織の中の人間というものは、他人がどのように報われるかを見て、みずからの行動を決める、したがって、人事の決定に真剣に取り組むことなく、正しい人事を行うための幾つかの簡単な原則や手順に従うことのないトップは、組織の業績を損なう危険を冒しているだけではない、組織そのものへの敬意をも損なう危険を冒しているのであるとも述べています。
 知事の行うお好み人事は、まさに組織そのものへの敬意をも損なっていると考えるものでありますが、見解を伺います。
 私たちは、これまでにも幾度となく、分権改革の推進に向けた東京都以外の自治体との連携を求めてきました。都は地方交付税不交付団体であり、それゆえに自治体を代表して国に対して最も物がいえる自治体であります。その東京都が、おのれの利害のみを声高に叫び、ほかの自治体を顧みなければ、ますます孤立を深め、結果として東京都の利益を著しく損ねることになりはしませんか。
 石原知事は、さきの第四回定例会においても、地方分権改革の実現が必要として、今後も国に対して、真の地方分権改革を実現するよう、ほかの自治体とも連携して強く働きかけると答えてまいりました。
 しかし、確かに八都県市首脳会議にはすべて出席してきましたが、知事就任以来三十九回開催された全国知事会議に出席されたのは、わずか九回にすぎず、そのうち四回は政府主催による総理大臣、閣僚との懇談の席です。石原知事の顔は、国には向いていますが、他府県には向いていないといわざるを得ません。
 すべての会議に出席しろといっているのではありませんが、他府県の知事と直接会い、それぞれの事情を理解し、積極的に分権改革に向けたイニシアチブを発揮することが求められています。いわゆる改革派知事と呼ばれた各知事が分権改革の推進に向けて傾けてきた努力に比べて、知事の存在感はなきに等しいものです。
 第二期地方分権改革を迎える今、石原知事は、このような状況でいかに他府県との連携を図り、新地方分権構想検討委員会のビジョンに示すように、詳細な具体案をつくり、政府に投げかけていくつもりなのか、伺います。
 また、ドラッカーは、その著「未来への決断」において、大統領のための六つのルールを記しています。その第五のルールに、政権内に友人を入れてはならないを挙げ、このルールを無視した大統領は、皆、後悔することになっているとしています。
 一昨年の副知事更迭に引き続く、今回のご子息の友人を館長に据えたトーキョーワンダーサイトをめぐる一連の事態は、まさにこのとおりです。参与、館長に取り立てられたことを光栄に思うがゆえに、その影響力を行使してご子息を持ち上げ、それによって知事に恩返しをする。本来ならば、そのようなことは結果として知事を傷つけることになるがゆえに避けるべきであるにもかかわらず、それをせず、さらには、そうすべきでないと諭すべき知事側近がこれを支持し、知事自身が唯々諾々とこれを受け入れてきた、これが今回の事態を招いたのであります。
 しかも、やめさせることを極端に嫌い、あろうことか、館長の処遇を課長級から一気に理事級に引き上げ、部長級の副館長を置くということまでやってしまっているのです。
 さらに知事は、議会で問責決議を受け、一たんは都政から更迭した人物を参与に迎え入れ、またまたあろうことか、知事名代を名目に、参与就任祝いの海外旅行を公費でプレゼントされたとまで報じられています。
 公私の境目を見失い、周囲に太鼓持ちを置く裸の王様、これが現在の石原知事であります。今や時期を逸してしまいましたけれども、あえてドラッカーの警告を贈り、知事の見解を伺うものであります。
 また、知事は常々、行き過ぎた結果の平等を批判し、機会の平等の重要性について述べられておりますが、トーキョーワンダーサイトにおいては、殊さらにご子息とその友人を重用し、この機会の平等をみずから踏みにじっています。機会の平等が大事なのだと力説するその横で身内を優遇していては、何の説得力も持ちません。この点についてはどのようにお考えか、見解を伺います。
 昨年は、知事選で借りをつくった知事が、業者と癒着して腐敗し、地方自治への信頼を失墜させる事件が相次いで起きました。この一連の不祥事を受けて、一月二十四日に掲載された読売新聞の、知事と業者とのかかわりに関するアンケート調査結果によると、知事の五九%、二十七人が、集票マシンでもある業界から何らかの支援を受け、六七%、三十一人は、自分が支援を受けることには問題はないといい切っているとのことであります。
 しかし、石原知事は、選挙での業者・業界の支援に伴う政治腐敗への懸念があるかとの問いには、全く懸念していない、選挙で業者・業界の支援を受けた経験があるかとの問いには、ない、業者・業界からの支援についての考え方の問いには、問題があるので支援は受けるべきでないと答えています。
 一部に報じられた吉兆会合疑惑を意識しての回答でしょうが、「週刊文春」誌上では、ご子息の当選祝いの会で、水谷建設の元会長にお世話になったお礼をし、糸山政経塾に集まってくる若い経営者に選挙を手伝わせるというので、それは頼むとご子息を紹介したことを認めておられる石原知事の回答としては、にわかには信じがたいものであります。どなたかが配慮して書かれたのでしょうが、ここで知事自身の言葉で、さきのアンケートに対する回答を伺いたいと思います。
 そこで、いわゆる吉兆会合疑惑について伺います。
 平成十七年九月十四日、糸山英太郎氏の呼びかけで、水谷元会長と石原知事、三男宏高氏ら五人が、銀座の高級料亭吉兆で宏高氏の当選祝いの宴席が行われたというものです。その宴席に入る直前、糸山氏から知事にしょうちゅう箱が渡され、その箱に一千万円とも二千万円ともいわれる現金が詰められていたという疑惑であります。
 当然、石原知事は裏献金については否定していますが、この宴席に出席し、水谷建設の元会長にお世話になったお礼をしたことは認めておられるようです。
 しかし、一方には、糸山氏から依頼を受けて政治献金を用立てたという人物の証言があります。
 また、この証言を右翼と関連づけて否定した石原知事の特別秘書らに、一月三十日付で、貴殿の事実に反する発言等に関し抗議並びに訂正要求する通知書が送られています。この一連の事実関係について、知事はどのように説明されるのか、伺います。
 さらに伺います。知事の政治資金管理団体である石原慎太郎の会は、年に数回、会費二万円の昼食会を開催し、年間四千万円を超える収入を上げています。都知事という公職にある者が二万円の昼食会とはいかがかと思いますが、先日、日中に行われたシンポジウムにはカクテルパーティーまで付随していました。昼間から都知事がカクテルパーティーとは、都民の目にはどう映るでしょうか。
 無党派を標榜して都知事に就任された石原知事が、都知事の職を背景に政治資金パーティーを開催されているわけですが、政治と金がさまざまに議論されている中で、何のためにこのような資金集めの昼食会を開催されるのか、その理由を伺います。
 さて、さきの石原知事の施政方針表明の日、朝日新聞は石原知事に関する世論調査の結果を報じました。ピーク時には七八%を誇った支持率が、今回は五三%と二五ポイントも大きく落ち込み、これまでの調査で最も低くなったとされています。支持しないとする率は、かつての一四%から三五%へと、二・五倍もふえています。海外出張費や知事交際費などの公金の使い方は適切でない、六四%、ご子息の都政関与は適切でない、六三%と、いずれも六割を超え、都民の厳しい視線が示されています。三選出馬が望ましいとする者は四一%と、半数を割り込んでいます。
 一方、石原知事を最も身近で見ている都職員に対する「都政新報」のアンケート調査結果では、三選出馬すべきだは一九・三%と二割にも満たず、三選出馬すべきではないは五六・三%にも達しています。特徴的なのは、石原都政への評価が高い職層の方が、三選出馬に否定的だということであります。合格点が六割を超えた部長級以上で六二%、課長級で六六%が、出馬すべきではないとしているのであります。知事や知事側近の横暴にこれまでは何とか我慢してきた、しかし、これ以上はもういいかげんにしてくれという都職員の悲鳴が聞こえてきそうな結果であります。
 こうした世論の動向は、何が原因でこうなっているのかについて、知事はご自身どのようにお考えか、伺います。
 次に、平成十九年度予算について伺います。
 昨年七月に発表した「今後の財政運営の指針」に基づく初めての予算となる十九年度一般会計予算案は、企業部門の好調による税収増で、指針のフレームを上回る六兆六千二十億円、七・〇%の増、平成十年度の財政規模に匹敵する予算となりました。都税収入は、税源移譲分を除き実質で五千二十八億円、一一・二%の増を見込んでいます。歳出においては、さまざまな分野に満遍なく予算を措置しています。
 一方、都財政が抱える課題の一要素にすぎなかったオリンピック招致も、東京都が国内立候補都市に選定された後は、予算編成に大きな影響を与えています。重点事業の策定でも、招致に向けた事業を改めて選定しました。
 そもそも都民ニーズは、少子高齢化社会や各種災害への対応など、多岐の分野にわたります。再来年度からは、先送りしてきた都の大規模施設、庁舎等の社会資本ストックの改築も始まります。こうした中でも、オリンピック招致に向けた取り組みは着実に進めていかなければなりませんが、オリンピックを魔法のつえとするような野方図な財政運営を行うことは、都財政の規律をゆがめることになるのであります。
 オリンピックをにらみつつも、強い自己規律に基づく健全な財政運営が求められています。知事の見解を伺います。
 また、都は、この数年間が都財政の将来に大変重要な時期だとし、財政構造改革のブレーキになる負の遺産を取り除きながら、都財政の質的転換に積極的に取り組むとしています。そのため、都は隠れ借金と呼ぶ減債基金積み立て不足を解消し、他会計からの借入金を年度末に完済、多摩ニュータウン事業欠損金等の残高も約一千二百億円となりました。
 また、事業の見直しが避けられない負の遺産対策として、来年度予算で、まず心身障害者扶養年金制度とひよどり山有料道路事業に対応するとしています。
 ひよどり山事業については、有料道路を無料化し、債務を一括償還するため、六十九億円の予算計上を行っています。
 この有料道路の通行台数は、平成十七年度実績で計画の三八%しか達成できていません。そのため、七十億円の負債残高を抱え、近いうちに資金ショートを起こすことが確実な事態になっています。こうした負の遺産を処理していくことは理解しますが、そのためには、ひよどり山有料道路事業がなぜそうなったのかについてもきちんと総括していくことが不可欠であると思いますが、見解を伺います。
 負の遺産に関連して、臨海三セクについて伺います。
 一昨年、東京ファッションタウン株式会社と株式会社タイム二十四が破綻し、株式会社東京ビッグサイトがビル事業を引き継ぐことになりました。このスキームに対し、私たちは、東京都が七三・五%も出資し、役員の大半が東京都からの天下りである東京ビッグサイトがビル事業を継続しても、甘えの構造は断ち切れないと主張してまいりました。
 東京都は、ビル事業の自立的経営などとお題目では唱えていましたが、その実態はいまだにビル事業に対して過大な支援を行っているのです。
 例えば、東京ファッションタウンビルには、東京都の飯田橋技術専門校有明分校が入居していますが、その賃借料は、年間二億七千万円、平米当たり七万六千円であり、建物が最も新しい飯田橋技術専門校での年間減価償却費の平米当たり一万円に比べると、何と七倍以上も高いのであります。
 また、タイム二十四には東京都の創業支援施設がありますが、その多くを占めているインキュベーターオフィスの入居率は、東京都が企業に対する二分の一の家賃補助をしているにもかかわらず、四〇%台でしかありません。
 このような高い賃料、実質上使われていないオフィス床を確保することで、東京都はこれらビル事業の経営を下支えしているのであります。
 私は、東京都と監理団体とにはびこる甘えの構造こそが、負の遺産を助長するものであり、このような状況は早急に是正していくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、オリンピックについて伺います。
 アジア民族全体の感激である、これは、戦前から日本のスポーツ振興に汗を流してきた東龍太郎知事が、昭和三十九年の東京オリンピックを迎えるに当たり語った言葉です。また、柔道の父と呼ばれた嘉納治五郎IOC委員は、アジアの一角から世界平和をと訴え、昭和十五年の幻のオリンピック招致を成功させています。我々の先達たちは、平和とスポーツの祭典オリンピックを日本で開催するため、世界じゅうで招致活動を展開してきました。
 一方、石原知事は、参議院議員時代、昭和四十四年三月の参議院予算委員会ですが、政府が非核三原則を何でつくったのか理解に苦しむと語り、日本政府の非核三原則を否定する意見を述べました。その後、環境庁長官時代になると、内閣の閣僚として非核三原則の姿勢を遵守すると発言を百八十度変え、説明を求められた石原大臣は、昭和五十二年三月の衆議院公害対策・環境保全特別委員会ですが、時間の推移や国際情勢の変化など、いわゆる政治の係数が変化したと答弁しています。その後、また時間が推移して、昨年二月の「文藝春秋」誌上では、私が民営化された日本郵政公社の社長だったら、うまく政府に根回しして核開発にでも資金を回しますなとの発言を行っています。
 まずは、平和の祭典オリンピックを議論する上で、平和そして核に対する知事の見解を伺います。
 また、石原知事の歯にきぬ着せない発言は有名で、中国や韓国、北朝鮮などに対しても時に反発を招き、時には誤解を招きかねない発言を繰り返し、近代オリンピックの生みの親、クーベルタン男爵の母国語であり、英語と並ぶIOCの公用語であるフランス語についても、ろくに数の勘定ができないフランス語というのは、やっぱり国際語として脱落していきましたなどと発言し、これが蔑視だとして訴訟も起こされています。
 オリンピックを東京に招致するためには、世界各国のIOC委員の支持を得なければなりませんが、石原知事を先頭に立てての招致活動では、アジア、アフリカ、EU諸国の支持を得られないのではないかと危惧するものであります。知事の見解を伺います。
 都は、現在、来年の立候補ファイル作成に向け、開催概要計画の見直しを行っています。竹田JOC会長も、東京全体に磨きをかけたい、コンセプトをもう一度詰める必要があると意気込みを述べました。
 この開催計画で、今、晴海か神宮外苑かと議論されているのが、新設予定のオリンピックスタジアムです。国が臨海部の都有地に一千百七億円をかけて新設するとしたオリンピックスタジアムは、「十年後の東京」でも、都心部へと緑の拠点を結ぶグリーンロードネットワークの重要な緑地と位置づけています。
 しかし、JOCの招致戦略プロジェクトが、二月七日から三日間、各競技団体から開催概要計画に対する要望を聴取し、今後、メーンスタジアムに関してもJOCとして要望をまとめていくとしています。
 知事は、メーン会場の整備について、いずれにしろ国立競技場ですからと含みを残した発言をしつつ、いまだに臨海部メーン会場への交通路を示してはおりません。契約書において、JOCの意向を十分尊重するとした条文もあり、オリンピックスタジアムをどうするかが問われていますが、知事の見解を伺います。
 オリンピック招致の顔は現在石原知事ですが、昨年末、この招致組織の名誉総裁として、皇太子殿下ご夫妻に就任を要請する意向を明らかにしました。みずからがオリンピックのために都知事選挙に出馬するとして、オリンピックと知事選出馬を関連づけて政治課題とする中で、その当事者が、国民の総力戦と勝手に位置づけ、各国の立候補都市と競い合い招致活動を行う招致委員会の名誉総裁就任を皇太子殿下ご夫妻に要請すると発言するのは、余りにも不謹慎だと思います。この知事の思いつき発言は、招致委員会理事会が開催されない中、その独断が既成事実になりつつあります。
 知事は、イギリスのアン王女やエリザベス女王のロンドン招致を例にとり、自分の発言を正当化しますが、アン王女は一九七六年モントリオールオリンピックの馬術に出場したオリンピアンであり、イギリスオリンピック協会会長とイギリスのIOC委員として長年オリンピックムーブメントに貢献してきました。エリザベス女王もイギリスオリンピック協会の後援者として同じ立場にあります。ほかの王族たちも、IOC委員としてオリンピックやスポーツ界に尽力してまいりました。
 オリンピック招致に全力で取り組むことは理解をいたしますが、尾崎行雄翁の弾劾演説をも想起させる、軽々に皇室を利用するがごときの知事の手法は厳に慎まれるように求めるものであります。知事の見解を伺います。
 昨年十月、IOCのロゲ会長が来日し、都を二〇一六年オリンピック開催地の有力候補と評価し、オリンピックを成功させる上で重要な開催国選手の活躍も見込めると述べました。JOCでは、選手強化方針ゴールドプランステージⅡの中で、日本で開催する二〇一六年オリンピックにおいて世界トップスリーの金メダルを獲得する目標を掲げています。
 二〇〇〇年にシドニーオリンピックを成功させたスポーツ大国オーストラリアは、スポーツを、トップアスリートを頂点とし、全国民のスポーツ振興を基盤とした一体化構造で考えています。トップアスリートの活躍は、国民全体がスポーツを広く楽しんでいるかどうかで決まります。スポーツ振興は、体力向上や健康づくり、地域におけるコミュニケーションの進展にもつながります。
 しかし、日本における成人のスポーツ実施率は低いレベルにとどまり、トップレベルの競技スポーツと一般のスポーツ振興は二極化した傾向が見られます。都は、東京スポーツビジョンにおいて、平成二十五年の東京国体までに都民の六割が日常的にスポーツを実践することを目指し、「十年後の東京」では、国体までに総合型地域スポーツクラブを全区市町村へ設置するとしましたが、今後、生涯スポーツ社会の実現を目指すため、どのようなスポーツ振興策を図るのか、伺います。
 次に、高齢者施策について伺います。
 生涯現役、元気なまま人生を全うしたいというのは、だれもが願うところであります。しかし、現実には、多くの人々が徐々に身体機能や判断力を低下させていくことは避けられません。そうなったときにどう支えるかが行政を預かる者の責任であり、それこそが福祉であります。
 都の高齢者は、八割が元気高齢者、要介護者が二割です。この比率が現在と同じだとしても、十年後には現在よりも七十万人ふえると見込まれる高齢者数に比例して、支援を必要とする高齢者数は十四万人ふえ、六十万人に達すると考えられます。高齢者数の増加、ひいてはサービス量の増大への対応が必要です。
 加えて、核家族化と少子化の進行や価値観の変化から、子どもと同居しない高齢者のみの世帯や高齢者の単身世帯がふえていくにつれ、自宅介護が困難な方の割合がふえることも考えられます。また、療養病床の削減による社会的入院患者の受け皿や、要介護度の低い老人保健施設入所者が安心して暮らせる住まいも必要となります。
 このような状況にもかかわらず、「十年後の東京」において石原知事が示したのは、高齢者の八割は元気高齢者、高齢者像を一新などと、あたかも今後の高齢者は介護が必要なくなるかのような印象を与える書きぶりで、極めて見通しの甘い絵そらごとです。このままでは、今後団塊世代が高齢者となったときには、介護難民の団塊と化してしまいます。
 十年後、十五年後には確実にやってくる高齢者数の急激な増加に備え、長期的な展望を持たなければ、とても団塊世代の高齢期を支え切ることはできません。
 夢や希望は大切ですが、介護ロボットがあなたをケアしますといわれて、安心する都民がいるでしょうか。事高齢者ケアに関しては特に、このような空想的、抽象的な近未来図ではなく、しっかりとしたマニフェストたり得る「十年後の東京」を示す必要があると考えますが、見解を伺います。
 また、このような将来予測を前提に、しっかりとした中身のある施策の検討を早急に行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
 「十年後の東京」では、世界に先駆けて超高齢社会の都市モデルを創造するとあります。石原知事らしいフレーズです。しかし、現実の生活実感とのずれが余りに大きいと感じます。お上が何かのモデルを示し、人々に夢を与えるという発想や体質の古さに違和感を感じる都民も多いのではないでしょうか。
 超高齢社会をどう生きるかは、個々の都民の選択、行動の積み上げによって実現するものであります。問われているのは、世界に先駆けてなどとむやみに力むことではなく、いかに多様化する個々のニーズにこたえ、生活満足度を高めるかであります。
 東京では、先駆的な事業者により、プライバシーの保たれた住居に住み続けながら、徐々に必要となる介護サービスを付加したり、デイサービスを利用することができる、高齢者のニーズにどんどんこたえる試みが始まっています。これまでの福祉では考えられなかったような質の高いサービスが、自由な発想と行動力のある事業者によって次々と実現しているのであります。
 介護を必要とする高齢者の多様化する二ーズにこたえ、生活満足度を高めるためには、こうした先駆的取り組みへの支援などを一層拡充することが必要です。量の増加への対応に加え、質の高度化には何が必要とお考えか、伺います。
 次に、教育の再生について伺います。
 いじめ、不登校、学習意欲の低下、社会性のなさなど、子どもや学校が抱える課題に対する学校や教育委員会の対応力の低さがますます深刻な状況となり、学校不信が募っています。文部科学省を頂点とした都・区市町村教育委員会のヒエラルキーの末端として存在する学校のあり方、そして、議会や行政から独立した機関として教育に責任を持つという形になってはいるものの、実際には無責任体質、問題への対処能力の低さがクローズアップされ、教育委員会のあり方が根本的に問われています。
 一方では、倫理観の育成やしつけ、基本的な生活習慣の定着までも学校に求める時代となっており、学校不信の中で学校依存が強まっているという矛盾した状況になっています。しかし、信頼関係がなければ、学校が親のかわりにしつけなどできるはずもありません。現場は、どんどん肥大する要求に身動きがとれなくなっています。
 こうした閉塞状況を打開し、教育を再生するために、民主党は、自治体や地域が責任と権限を持ち、それぞれの学校を学びの共同体として自主的、自立的に運営できるようにすることこそが、今まさに必要とされていると考えます。
 最近の若者はけしからぬといった表層的な観点からではなく、個々の現場のあり方にもっともっと思いをはせ、現場が頑張れる学校づくりを進めなければ、教育の再生はなし得ません。
 危機的状況にある東京の教育再生に向けて、どのような取り組みをなされるお考えか、知事の見解を伺います。
 繰り返し申し上げますが、今なすべきは、現場における教師と親と地域との対話と協働を促し、学びを支援するコミュニティを全面的に応援することであります。
 教師によるいじめ事件や被害に遭った子どもが自殺するという深刻なケースでも、校長や教育委員会がその事実を知らなかったことに、だれもが驚きと失望を禁じ得ませんでした。限られた関係者だけではどうしても十分に目が届きませんし、教育委員会が毎日、すべての学校を細部にわたって監視することは不可能であります。
 学校をコミュニティスクールにして、地域住民や保護者が日ごろから積極的に学校にかかわっていれば、たとえ国や教育委員会の目はごまかせても、日ごろ接している保護者や地域ボランティアの目はごまかせず、早期の対応が可能となるはずです。そして同時に、コミュニティスクールは、教師だけがひとりで抱えていた問題をみんなで共有し、対応することができるのです。
 コミュニティスクール化は極めて有効な手法であり、既に実践している学校では、教員を含めた学校、地域がどんどん活性化しているといわれていますが、コミュニティスクール化をこれから進めていくべきだと思いますが、見解を伺います。
 陸の孤島と化している現在の学校を真の開かれた学校として再生するためには、学校を取り巻く環境を含めて、子どもの成長のために何が必要か、何が課題であるのかをまとめ、その中に地域内の学校、保護者、地域住民がそれぞれの役割を果たしていくようにする地域教育計画が必要です。
 子どもは学校で育つわけではなく、地域社会の経済、教育、文化、生活環境の中で育っていきます。地域のまちづくりに連動させて、地域の大人たちが教育活動を理解し、参加する。その中で、子どもは、社会的な存在としてコミュニケーション能力やマナー、ルールを自然と学ぶことができ、子どもの生きる力、ひいては考える力をはぐくむことができます。
 今、区市町村の現場では、行政や教育委員会が改革を行おうとしても、地域や保護者の理解が十分に得られず、なかなか進まないのが現状です。また、総合学習の時間一つとっても、社会学習に取り組む学校もあれば、学力強化の要望にこたえるため教科学習の補充に使うなど、その質や内容は各区市町村によってばらばらです。
 地域教育計画は、学校と地域社会との関係を深め、東京都全体としてはミニマムな水準を保ちながら、区市町村の創意工夫により教育の質を向上させていく枠組みとすることができると考えますが、見解を伺います。
 次に、雇用における格差是正について伺います。
 一月二十五日から始まった通常国会は、格差是正国会とも位置づけられ、特に雇用における格差問題が大きな争点となっており、都においても、雇用における格差是正に向けて積極的に取り組んでいく必要があります。
 石原知事は、平成十八年三月十四日の予算特別委員会で、フリーターやニートを指して穀つぶしと非難しましたが、フルタイムで働いていても、得られる収入が生活保護並みかそれ以下の水準でしかないワーキングプアといわれる働く貧困層に対して、無理解、無関心であってはなりません。
 私は、身分の違いや社会に出た時期の違いなどに関係なく、だれもが将来の暮らしに希望が見出せる社会を構築していくことが必要であると考えています。そのために、私は、都政においても、正規や非正規の雇用形態や年齢などに関係なく、個人の能力が正しく評価され、同じ仕事の内容には同じ処遇がなされるといった社会の構築に取り組んでいくべきだと考えています。
 石原知事は、雇用における格差についてどのように考え、その是正についてどのように取り組んでいこうとしているのか、見解を伺います。
 次に、非正規労働者の雇用改善について伺います。
 昨年五月に都が発表したパートタイマーに関する実態調査では、雇用契約を文書で行っている事業所は六割にも満たない状況にあります。東京都は今年度から、非正規労働者の雇用環境改善に取り組む中小企業に対して、コンサルタントの派遣やチャレンジ融資などを通じた支援を行っていますが、目標とする事業者数は三十社しかありません。
 平成十八年度版の労働経済白書では、少子化を加速させている一因は、非正規雇用の働き方が若年者を中心に広がっているためだと指摘されており、格差是正だけでなく、少子化といった視点からも、非正規労働者の雇用環境の改善は重要な課題です。
 私は、制度普及のために広報や相談体制を充実、あるいは企業へのインセンティブの充実などを含め、非正規労働者の雇用改善に向けて、さらに踏み込んだ取り組みを求めるものでありますが、見解を伺います。
 次に、若年者、特に年長フリーターをターゲットにした支援について伺います。
 前述の白書では、フリーターの数は減少傾向にあるものの、三十五歳から四十四歳の世代では逆に増加しており、ニートについても、二十五歳以上ではふえているとしています。これらの人たちが社会に出るようになったのは、バブル崩壊後のいわゆる就職氷河期です。本人の能力や努力という以前の問題として、当時の社会が彼らの就業機会を奪ってしまったことを考えれば、社会や行政の責任で改めて彼らに対し就業機会を提供していくことは当然のことではないでしょうか。
 そしてまた、少ない収入、少ない貯金に甘んじざるを得ない彼らの実態を踏まえるならば、奨学金などの貸付金制度の充実、職業訓練のための給付金制度の創設といった自立支援に向けた経済的支援に加えて、受け入れ企業の拡大など、総合的な支援策を講じていく必要があります。
 年長フリーターヘの総合的な支援策について、見解を伺います。
 「十年後の東京」では、再チャレンジ応援奨学金の創設が打ち出されていますが、その対象は、先端分野において活躍できる、高度のスキルを持った人材育成に限られています。今の若者の置かれている現状を考えるならば、すべての教育機関、職業訓練機関でも活用できる奨学金制度に加えて、彼らが一定期間仕事を休んでも生活することができる生活資金の貸し付けなど、より使い勝手のいい貸付制度を打ち出していくべきではないでしょうか。
 また、奨学金、貸付金に加えて、職業訓練での給付金制度の創設も必要です。年長フリーターは雇用保険に未加入な場合も多く、そのため教育訓練給付金が受けられません。また、正規社員の自己負担分を会社負担になるよう奨励しているのと比べても、非正規と正規の間には大きな格差が存在しています。
 栃木県では、若年者バウチャーモデル事業として、三十五歳未満の雇用保険制度の支援を受けることができない若者で、職業訓練受講の必要性が認められる者に対して、職業訓練受講費用の二分の一を給付する制度を始めています。東京都が都立技術専門校で実施している若年者の職業訓練の定員は二百三十人でしかなく、約三十万人といわれる都内のフリーター数と比べても、微々たるものでしかありません。
 奨学金、貸付金の拡充や教育訓練給付金制度の創設など、若者に対する経済的な支援策について見解を伺います。
 次に、雇用における年齢差別の禁止について伺います。
 民主党が今国会で提案を予定している格差是正緊急措置法の項目の一つに、雇用における年齢差別禁止があります。民主党の動きを受けてか、自民党の雇用・生活調査会においても検討が始まっていると聞いており、年齢差別が禁止されれば、団塊の世代の人たちの再就職を初め、年長フリーターの就業促進も期待できるのではないでしょうか。
 ところで、石原知事が平成十二年に策定した東京構想二〇〇〇では、求人時の年齢制限の撤廃に向けて企業を指導していくなど、国と連携した取り組みを強化することを打ち出していました。しかし、いまだに都内の求人広告では年齢制限を設けているものが多く見られます。
 国において雇用における年齢差別の禁止が具体的に動きつつある中で、かつてその取り組みを掲げていた石原知事は、雇用における年齢差別の禁止についてどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 次に、産業振興基本戦略について伺います。
 東京都は一月三十日に産業振興基本戦略素案を発表しましたが、まだまだ中小企業の意見を反映させていく余地は大きいように感じます。産業振興の主体的役割を果たすのは東京都ではありません。中小企業が活動しやすい公平、公正な市場を形成してこそ、東京の産業は大きく飛躍することが可能なのです。
 しかしながら、中小企業を取り巻く環境は、例えば商取引・金融慣行においていえば、下請いじめや第三者保証要求など優越的地位の乱用が依然として存在しています。また、理工学部を卒業した学生が、その経験が生かせる中小企業よりも、たとえ営業や事務職だとしても大企業を志望する風潮は、中小企業の人材確保を困難なものにしています。さらに、国際競争が激しくなる中で、事業承継税制など他国の企業と競い合う上での足かせも大きく、知的財産の保護といった面からも同一の競争条件となっていません。
 このような視点から、昨年十二月に民主党が打ち出した政権政策の基本方針(政策マグナカルタ)では中小企業憲章の制定を掲げていますが、東京都においても、中小企業を産業活動の中心に据えて、公正に競争できる環境を整備していくべきだと考えます。
 産業振興を戦略的に進めていくためには、まずは公正、公平な競争条件を整えることで中小企業の活力を高めていくことこそが重要であると考えますが、見解を伺います。
 次に、中小企業の資金調達に関連して、新銀行東京について伺います。
 産業振興基本戦略では、中小企業振興策でのこれまでの施策として、CLO、CBOの発行やベンチャーファンドの創設などが記載されているものの、新銀行東京は参考資料どまり。また、多様な金融手法を活用し、企業の資金調達を支援すると掲げた施策の取り組み例では、CLO、CBOと制度融資が触れられているのみで、中小企業の資金調達にかかわる新銀行東京の存在は極めて希薄なように感じます。
 私たちは、十二月議会の代表質問でも、中小企業対策という当初の設立目的で事業が立ち行かないのであれば、民間への売却も含めて、新銀行東京のあり方を早急に検討すべきだと主張してまいりました。これに対して石原知事は、当初、大きな銀行から来た責任者たちが、中小企業の借り手としての評価、見きわめが困難だったのか、その部分がかなり焦げついたとの認識を示し、また、年末の定例記者会見でも、ATMは利用価値が少ない、頻度が少ないので撤収し、かわりにほかの業務を展開するといった問題を発案の段階で発表すると述べられました。
 そこで、以下、三点について伺います。
 石原知事は、新銀行東京の経営状況が悪化しているのは、現場の人たちに責任があるかのような発言をしていますが、そもそも新銀行を発案し、今も最大の株主として影響力を有する知事の発言としては、極めて不見識ではないでしょうか。新銀行東京の経営悪化の原因として、改めて知事の見解を伺います。
 また、ATMは撤収し、かわりにほかの業務を展開するといった問題を発案の段階で発表すると述べていましたが、かわりの業務とは具体的に何か、いつごろ、どのような形で発表する予定なのか、伺います。
 さらに、ATMは利用価値が少ない、頻度が少ないので撤収すると述べていますが、ATMの利用頻度などについては、これまで私たちが質問したにもかかわらず、東京都が経営情報を理由に明らかにしてこなかったものであります。石原知事は、ATMの利用頻度などを一体どのように知り得たのか。石原知事と新銀行東京との関係について見解を伺います。
 次に、中小企業の事業承継について伺います。
 中小企業の事業承継については、相続税の軽減など、外国並みの事業承継税制の確立を国に要望していくことは当然ですが、これに加えて、東京都としても積極的な施策を講じていく必要があります。
 中小企業の事業承継を困難にしている後継者不足の問題は、会社経営者が、自分の息子や親族、あるいは社内を見渡して感じていることだと思います。しかし、これまで連綿と築き上げられてきた貴重な技術やノウハウが、次世代に引き継がれることなく消滅してしまうのでは、社会的にも大きな損失ではないでしょうか。
 信託法の改正など、事業を承継するためのツールもふえているところであり、私は、後継者の発掘、育成や、後継者不足に悩む中小企業とのマッチング、あるいは企業合併の円滑化などを進め、中小企業の事業承継を積極的に進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、知的財産権の保護、育成について伺います。
 産業振興基本戦略の策定の背景には、中国やインドなどアジア諸国の台頭による危機感があるようです。しかしながら、中国の台頭などは何年も前から指摘されていたことで、今さらといった感がしないでもありません。むしろ中国などの台頭は、安い賃金もさることながら、日本の知的財産を不当に侵害してきたことによって成り立っている部分もないとはいえません。
 特に、これから東京都が世界をリードするクリエーターを育成しようとするのであれば、あわせて、彼らの著作物やデザインなどを保護していくことは至上命題であります。
 他国の政策、国と国との交渉に属する問題については東京都としても限界がありますが、私は、国に十分に働きかけるなどして、海賊版や模倣品を撤廃し、日本の知的財産を保護、育成していくべきだと考えますが、知的財産の保護、育成に向けていかがお考えか、見解を伺います。
 次に、アニメ産業の振興について伺います。
 日本の文化として世界に誇れるコンテンツ産業の元祖ともいえるのは漫画であると思いますが、その漫画の分野では、かつてトキワ荘というものがありました。漫画家の梁山泊ともいうべきアパートに入居した漫画家の多くがその後著名になったことを思うと、夢を同じくする者同士の切磋琢磨を促す仕組みは注目されるべきことであります。
 一方で、アニメ産業の振興といった場合、アニメ業界に人材が定着しない一困は低賃金によるものだともいわれており、クリエーターの育成や中小企業とのマッチングとあわせて、中小企業の財政基盤を強化すべきと考えています。
 そこで、アニメ産業の振興に向けて、人材交流や中小企業の財政的な強化を兼ねて、アニメ産業の集積的な創業支援拠点を整備していくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、温暖化対策について伺います。
 既にロンドン市やベルリン市では、二〇一〇年までに一九九〇年比二〇%あるいは二五%のCO2削減目標を掲げています。他方、「十年後の東京」は、日標年次を十年先の二〇二〇年とした上で、基準年次も二〇〇〇年として二五%の削減目標を打ち出しています。しかし、二〇〇〇年は、一九九〇年に比べてCO2の排出量が九%もふえていることを考えれば、二五%といっても、数字を大きく見せかけただけの印象はぬぐえません。そもそも、東京都がこれまで掲げてきた、二〇一〇年までに一九九〇年比で六%削減という目標さえ、達成が困難なのではないでしょうか。
 温暖化は私たち一人一人の問題であり、アメリカが批准しないとか、国が怠慢だからといっている場合ではありません。東京都は東京都として、具体的にできることを大胆かつ着実に実施していく必要があるのであります。
 世界一の低CO2型大都市の実現に向けて具体的にどのように取り組んでいくのか、知事の見解を伺います。
 東京都でのCO2削減が進まない最大の要因は業務部門です。CO2排出量は一九九〇年以降二八%もふえており、事業所ビルの床面積の増加などが大きく影響しています。東京都も建築物環境計画書制度などにより温暖化対策を講じていますが、もはやこうした取り組みは、建築物だけでなく、まちそのものに拡大していく必要があります。
 国においては、新規市街地開発や再開発などが行われる面的な広がりを持った一定エリアにおいて、単なる建築物ごとの対策だけでは得られないCO2削減効果をもたらすモデル事業が今年度から始まっています。また、ロンドン市では、住宅、オフィス、商業施設などを含む複合開発においてCO2排出量ゼロを目指すゼロカーボン開発が提案されています。
 東京都内では、六本木や大手町や豊洲などにおいて、大手ディベロッパーがそれぞれの地域の広報戦略を展開しており、私は、こうした地域ごとの競争を環境的視点から促していくという仕組みづくりが極めて有効であると考えます。
 個々の建築物にとどまらず、一定の広がりを持った地域を対象にした温暖化対策の実施に向けて、見解を伺います。
 次に、ヒートアイランド対策について伺います。
 「十年後の東京」では、目玉の一つとして、都心部を貫くグリーンロードネットワークを形成することで風の道をつくり出していくことを掲げています。風の道については、都議会民主党がかねてより主張してきたものであり、知事が平成十六年八月十三日の定例記者会見で、今ごろいっても遅いなどと歯牙にもかけなかったことを思うと、隔世の感があります。しかし、風の通り道を阻害している原因が無秩序に建てられた超高層ビル群であることを踏まえれば、単に緑をふやしただけで風が吹くと考えるのは大きな間違いです。
 品川周辺地域では、まちづくりガイドラインを策定し、中低層の街区計画や、隣の棟との十分な間隔をあけた高層建築によって、海からの風や運河沿いの風の通り道を確保しようとしていますが、まちづくりの早い段階から環境対策を位置づけていくことが、風の道の確保については最低限必要なのです。そして、これを東京という都市を対象に実現するのであれば、緑の保全、創設にとどまらず、都市計画を初めとしたまちづくりの中で環境対策を明確に位置づけ、制度、政策の中に反映させていく必要があるのではないでしょうか。
 風の道の確保など、まちづくりでの環境創造に向けた石原知事の基本的な認識について伺います。
 次に、緑の保全、創出に向けた規制的な取り組みについて伺います。
 海の森や樹木などの新たな緑の整備にとどまらず、まちの中の身近な緑をふやし、失われつつある既存の緑を保全していくためには、規制的な手法による取り組みが効果的、効率的であります。
 私たちは、この間、住宅地域や商業、工業といった地域特性に応じた緑化基準の設定や、昔から残る緑の優先的保全、あるいは駐車場緑化や屋上緑化など緑化義務の強化を求めるとともに、丘陵地などにおける開発行為を原則的に禁止すべく、自然保護条例の改正などを求めてまいりました。
 東京都の持続可能な東京の実現をめざす新戦略プログラムでは、緑化計画書制度や開発許可制度の強化について、十八年度中に制度改正案の検討を行い、十九年度に実施することが記されていますが、その取り組みは先送りされたといっても過言ではありません。
 私は、緑施策の抜本的な見直し、強化に向けて早急に自然保護条例を改正すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、建築物の耐震化促進について伺います。
 昨年末、ある新聞で、都一〇〇%耐震化作戦という大きな見出しの記事が掲載されました。幹線沿いビル、学校・病院という小見出しもついていましたが、この小見出しを見れば、普通の人なら、さすがは東京だ、都内のすべての建物を耐震化するのだなと思ったことでしょう。ところが、記事の内容は、都内の旧耐震基準の建物のうち、病院や学校など防災上重要な公共建築物、大規模な百貨店、ホテル、劇場といった民間建築物及び緊急輸送道路沿道の建物についてのみ、今後十年間で一〇〇%耐震化を図るというものでした。
 しかも、現在、策定が進められている耐震改修促進計画の素案では、閉塞を防ぐべき道路は第一次緊急輸送道路だけでも約千キロメートルに及びますが、そのうち当面はモデル路線としてわずかに三路線、計三十八キロメートルが指定されるにすぎません。
 都が言及する緊急輸送道路沿道の建物の一〇〇%耐震化とは、モデル路線だけを対象としているのか、地域防災計画で指定する第一次、第二次、第三次路線のすべてまで対象とするのか、見解を伺います。
 さきの「十年後の東京」では、緊急輸送道路沿道の建物の耐震化とあわせて、都内住宅の耐震化率を九〇%以上とすることも示されました。しかし、これらは、国の基本方針をそのまま踏襲しているだけで、全国自治体に先駆けて取り組む決意表明をしたということ以外、とりたてて評価するに値しません。
 しかも、目標達成のためには、都内住宅の耐震化の現状を踏まえると、老朽化による自然更新分を差し引いても、今後十年間で一年当たり三万四千戸耐震改修する必要があります。しかし、十九年度予算案では、木造住宅については、耐震診断千五百棟、耐震改修五百棟分、マンションについては耐震診断千八百棟、耐震改修等改良工事利子補給五千戸分が計上されているだけで、このペースでは「十年後の東京」に掲げた目標を達成することなど到底不可能なことであります。
 十分な予算措置とともに、都民が制度をより利用しやすくするための取り組みも必要です。例えば江戸川区では、耐震診断助成制度の活用を促進するため、限度額を設けないこととしました。墨田区では、木造住宅密集地域で町ぐるみの耐震化を促すため、耐震モデルハウス計画が、まちづくり公社のバックアップのもと、住民組織によって進められています。
 このような助成制度の拡充や意識啓発のための工夫など、住宅の耐震化をより一層促すような独自の取り組みが都として求められているにもかかわらず、都は、あくまで国が法律で定めた枠組みの範囲内で耐震化の助成制度を設けているにすぎないというのが現状です。
 そこで、十年後における都内住宅の耐震化率を九〇%以上とする目標達成の見込みとその具体策について見解を伺います。
 平成十五年に内閣府の中央防災会議が策定した東海地震対策大綱では、公共建築物の耐震性能の公表が求められており、昨年一月の改正耐震改修促進法の施行に際しても、国土交通省は同様の趣旨の告示を出しています。
 既に静岡県などでは、保有する建物について、建物名や所在地、完成年はもちろんのこと、旧耐震基準か否か、耐震性能のランクなど、包み隠さず公表しており、建物利用者からも高く評価されています。
 一方、都では現在、都有施設の耐震性能を公表していませんが、耐震改修促進計画の素案では、防災上重要な公共建築物のうち、都立建築物について平成十九年度末までに耐震診断の実施状況を公表するとともに、学校、病院、庁舎等の主要な用途別に具体的な整備プログラムを作成することが示されています。
 私たちは、このように対象を限定せず、都営住宅も含めたすべての都有建築物について、その耐震性能を公表すべきと考えます。特に、都営住宅は公表すべきであります。居住者の不安をあおる可能性を心配する意見もありますが、実際に、都市再生機構では、所有、管理する賃貸住宅居住者に対して耐震性能を公表しており、居住者に混乱は生じていません。都有建築物から率先して耐震性能を公表することによって、危険な建物が身の回りにあることを都民に知らせることが、耐震改修を促進する原動力になると考えるものであります。
 都有建築物の耐震性能の公表について見解を伺います。
 以上で、都議会民主党を代表しての質問を終わります。
 ご答弁によっては再質問をさせていただきます。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 田中良議員の質問にお答えいたします。
 選挙も近いせいですか、大層お派手な質問演説でありましたが、聞くところ、あなたの都政に対する評価は三十点ということだそうですけれども、ならば、今までなぜ都が提案した提案に民主党はすべて賛成をしてこられたんでしょうかな。都の提案に対して厳しい条件がつけられたり、あるいは代案を出されたということは聞いたことがないのはなぜなんでしょうか。
 民主党も多士済々であられまして、田中大幹事長も次期知事候補のさらに候補の一人だそうでありますが、ならば、せっかくの機会ですから、独自の提案、主張もされて、論戦を挑まれたらいいのじゃないかと思います。
 さて、これまでの都政運営についてでありますけれども、私の在庁時間が短いから都政運営に支障を来しているなどという話は、どこかの別の政党の主張を聞いているようでありまして、都庁にいようがいまいが、私は、常に私なりに東京のことを考え、東京を眺めておりまして、都庁の外ででも大きなヒントを得て、都民のためにやるべきことをやってきたと思っております。そして職員も十分にそれにこたえてくれました。
 また、選挙を控え、知事への批判は甘んじてお受けもしますが、職員の士気や能力が劣ってきたなどというのは、全く事実無根のいいがかりでしかございません。
 庁内からの発案によりまして銀行税やしごとセンター、インターネット公売、これは、きのうテレビでやっていましたが、関西のどこですか、芦屋市までが早速東京のまねをしてやっていますけれども、次々に新しい政策が生み出されてきております。不正軽油の撲滅作戦でも、今も続いておりますが、女性の職員までが体を張って任務の遂行に当たってきておりまして、既に十回を数える東京スピリット賞では、毎年、職員の創意あふれる新しい試みが数多く披瀝されておりまして、こうした職員たちの汗と努力を民主党の皆さんもよくご存じのはずであると思います。
 参考に申しますと、平成十八年度の東京スピリット賞受賞者は、架空請求対策チーム、それから東京DMATの創設プロジェクトチーム、脱法ドラッグの対策チーム、東京しごとセンター開設チームでありまして、こういった新しい案がどんどん発案されるだけじゃなしに、実現されていることもひとつ改めてご認識いただきたいと思います。
 「十年後の東京」にしましても、これは職員がみんなして知恵を出し合いまして、一年以上かかっていろんなシミュレーションをし、練り上げてきたものでありまして、私も参加してこれまで八年間の集大成といえるべきものができ上がったと思っています。極めて具体的な近未来図が完成したと思っております。ゆえにもご指摘は当たりません。
 これまで行ってきた人事についてでありますが、私は、知事就任以来、スピードと成果を重視し、戦略的かつ機動的な執行体制を構築するため、時々の行政課題に応じた適材適所の人事配置を果敢に行ってきました。こうした体制のもとで、ディーゼル車規制、あるいは債券市場創設など、国に先んじたいろいろな施策も展開するとともに、危機に瀕した都財政の再建も実現できたと思っています。
 今後とも、庁内外の多様な人材を実力本位で広く登用し、直面する課題に一丸となって取り組んでいくつもりでございます。
 なお、ご指摘のあった一年で交代した局長級の数については、ちなみに、鈴木都政四期目で六十七人、青島都政下で六十八人、私の就任以降は、一期平均で見ますと六十七人でありまして、さして前後変わりはないと思います。
 人事は、私が各自の能力、人物を見極めて決めておりまして、好き嫌いで人事を行っているなどということは全く当たりません。
 次いで、ドラッカーの警告についてでありますが、先ほど貴重な格言をいただきましたが、私は、都民、国民のためなら、知人、友人であろうと、要所要所で骨身を惜しまず働いてもらっております。中でも優秀な民間の経営者の方々からは、常に貴重な提言をいただくなど、大きな成果を上げていると思っております。
 ちなみにドラッカーは先に引用された五つのルールの第一として、何を行わなければならないかをまず問えと警告しております。また二番目には、集中せよ、二兎を追うなかれともいっております。ただいま田中幹事長の代表質問に対しては、逆に私からこの言葉をお贈りしたいような気がします。
 次いで、機会の平等についてでありますが、文化施設の運営と雇用などの平等の問題を無理やり結びつけるとは、いかにも乱暴な論であるといわざるを得ません。
 トーキョーワンダーサイトを初めとする新しい文化振興策は、若手芸術家に門戸を開き、活躍する機会を新たに創出する取り組みにほかなりません。これは今まで日本になかったことであります。少なくとも国がやらなかったことです。これにより、現代美術の国際的なサーキットにこの東京もようやく加わることができました。文化振興事業の趣旨をぜひご理解いただきたいと思います。
 次いで、いわゆる吉兆会合疑惑についてでありますが、週刊誌で喧伝されている浅薄不確実極まりない情報を、ただ仄聞として引用されて、全く吟味もせずに質問されるのは、公党としての品格としてもいささかなものでありましょうか。疑惑と呼ばれるようなことは一切ないので、ご心配には及びません。
 政治資金パーティーについてでありますけれども、石原慎太郎の会なるものは、都政の課題を語り合う重要な機会でありまして、毎回多くの方々が参集して意見も交わしております。今回はシンポジウム形式で行いまして、安藤忠雄氏が二〇五〇年の東京の姿について自説を展開され、大変意義深いものとなりました。こうした集まりは、政治資金規正法に沿って適正に行われているものであります。
 次いで、世論の動向についてでありますけれども、都民の中にさまざまな意見があることは十分承知しております。しかし、世論調査の数字を唯一絶対の真実であるかのように受けとめるべきではないと私は思います。特に、限られた政党に近い限られた人物が、そういう業界紙が、明らかにためにしているそういうアンケートというものに振り回されては、都の職員そのものが私は迷惑していると思います。それをもってすべてをはかることなど絶対にあり得ないと思います。まあ、数字のデマゴーグに惑わされてはならないというのは、やはり政治家としての、これは互いに心得るべきことではないでしょうか。
 いずれにしても、一つ一つの数字に振り回されることなく、今後とも都民の声を広く真摯に聞き、都政運営に当たっていきたいと思っております。
 次いで、健全な財政運営についてでありますが、都は地方交付税の不交付団体であり、また、構造的に税収が大きく変動するリスクを抱えておりまして、こうしたことから、かねてより他の自治体よりも強い自己規制を課しながら財政運営を行ってきました。今日、財政再建が達成できたのは、当初よりこうした厳格な姿勢をみんなして貫いてきたことの何よりの証左であると思っております。
 この先もご懸念のような野方図な財政運営を行うつもりは毛頭ありません。オリンピックを含めた都民要望への着実な対応と健全な財政運営を両立させていきたいと考えております。
 次いで、平和と核についてでありますけれども、平和が、古今東西、万民の願いであることはいうまでもありません。しかし、平和は、平和、平和と唱えていれば実現するものでも決してありません。東京にオリンピックを招致することで、二十一世紀にふさわしい都市モデルを示すとともに、世界平和の実現に向けた強烈なメッセージを全世界に発信することができると考えております。
 また、核の問題についてでありますが、私の政治家としての信条は一貫しておりまして、ご懸念には及びません。しかし、あなたの方の民主党の党首の小沢代表は、かつては、日本がその気になれば一朝にして数千発の核弾頭をつくる能力を持っているなど、また鳩山幹事長も、日本の核保有について議論することそのものを禁じるというのはおかしいという発言をされたようでありますが、大分風向きが変わった、いい分が変わったようでありますけれども、まあ、民主党がそんな党であったということは、私もよく不明にして知りませんでした。
 そもそもこの問題は、緊迫する国際情勢を踏まえ、国政の中で刻々変化するであろう政治情勢というものを踏まえながら、冷静に、既存の特に観念にとらわれることなく存分によく議論を交わすべきものだと思っております。
 オリンピック招致への支持についてでありますけれども、オリンピック招致をかち取るためには、IOC委員の支持はもちろんでありますが、IOC委員に影響を持つ方々の賛同を求めていくことも重要であります。
 このため、政治、経済、外交などあらゆるチャンネルを通じて、いわゆる重層的な、複合的な外交展開が必要であります。東京オリンピック招致委員会を中心に、国を挙げての招致活動を展開していきたいと思っております。
 都としても、これまで都が先導してきたアジア大都市ネットワークやロンドンとの政策提携など、国際社会と連携したさまざまな取り組みを展開する中で、東京オリンピックへの支持を広げていくつもりであります。
 オリンピックスタジアムについてでありますが、オリンピックスタジアムは、開会式や閉会式、陸上競技などが開催され、すべての大会関係者や多くの観客が集う、その大会の象徴となる施設であります。このため、招致に当たっては、IOC委員から高い評価を得る施設とすることが重要であります。
 都としては、晴海地区に国の施設としてオリンピックスタジアムを整備する方針でありまして、JOCや国内競技団体の理解を得つつ、具体化に向けた検討を進めてまいります。
 次いで、オリンピック招致活動と皇室についてでありますが、オリンピック招致活動は、これまで何度も申し上げてきたとおり、国を挙げてのまさに国家的プロジェクトだと思います。
 日本の取り組みを国内外に印象づけていくためには、海外においても親しみを持って尊敬されて迎えられている皇太子殿下ご夫妻を含め、国民に敬愛されている皇室の方々に協力を仰いでいくことは大変意義深いことと考えております。現に、皇室外交というのはそれなりに非常に大きな成果を上げているじゃありませんか。
 「十年後の東京」における高齢者施策についてですが、いわゆる団塊の世代が高齢期を迎え、元気な高齢者が八割を占める中で、これまでのように、高齢者を、支えられる存在としての画一的なとらえ方ではなくて、もはや本質的に観点を変えまして、「十年後の東京」では、生活基盤や地域における支援体制の整備など、支援が必要な高齢者への取り組みにとどまることなく、社会を活性化させる存在として新たな高齢者像を描いております。
 現に、今回の東京大マラソンでもボランティアを募集しましたが、非常に数多くの高齢者が応募してくださいました。数そのものは飽和になりましたので、半分以上お断りするという、うれしい悲鳴を上げる次第でございます。
 いずれにしろ、最先端技術の活用などによりまして、高齢者の健康で自立した生活を支えるとともに、介護や子育て支援を初め、さまざまな社会的課題の解決に高齢者みずからが活躍できる場を提供するなど、多様な社会参加を促進し、超高齢化社会の都市モデルを東京から実現していきたいと思っております。したがって、空想的、抽象的近未来図という指摘は当たりません。
 次いで、教育再生についてでありますが、教育は、国家・社会の発展の基礎となる重要な営みであります。しかし、教育の現状を見ますと、親や大人たちは、子どもの教育を学校に任せ切りでおります。一方、学校は、競争原理の働かない中で画一的な教育から脱し切れておりません。
 子どもにとって、教育の原点は家庭であり、親こそ真の教師であると思います。親と大人は、子どもたちの教育についての責任を自覚し、その役割をしっかり果たすべきであると思います。
 また、学校は、これまでの画一的な教育を見直し、子どもの個性や創造力を伸ばしていくなど、教育改革を推進し、都民の期待にこたえていかなくてはならないと思います。
 次いで、雇用における格差についてでありますが、その前に、私の言葉を勝手に引用されまして歪曲されていますが、私が穀つぶしといったのは、これはフリーターじゃありませんよ。ニートのことはそう申しました。こういう歪曲した引用というのは非常に卑劣だと思います。
 近年、働く側の価値観や、厳しい競争を展開している企業の経営戦略の変化により、働き方や雇用形態が多様化してまいりました。仕事の内容や責任の重さなどにより、賃金など差が生じるのは当然でありますが、個人の能力や成果が正当に評価される、働き方を柔軟に変えられる社会を築いていくことが大切であると思います。
 このため、「十年後の東京」に示したとおり、働き方を自由に選択し、意欲あるだれもがチャレンジできる社会の実現に取り組んでいきたいと思っております。
 次いで、新銀行東京についてでありますけれども、新銀行東京は、他の金融機関との厳しい競争にさらされながらも、資金繰りに苦しむ中小企業に対して積極的に融資を行ってきました。
 しかし、結果は、今非常に苦しい状態にありますが、これは、私はやはり、私たち東京都は株主ではありますけれども、その株主が委託している経営者というものが、いろんな考え方を変えて努力をする必要があると思います。
 そういう面で、人事も含めて大株主としての発言の機会というものを考慮しておりますが、いずれにしろ、具体的には融資・保証の九割以上は中小企業に対するものでありまして、その約三割が赤字または債務超過の企業を対象としております。
 予想を超える不良債権が発生しましたが、中小企業金融において重要な役割を果たしていることには変わりありません。
 新銀行東京が、今後とも収入の確保や不良債権の抑制など、経営面の改善を進めつつ、中小企業支援に軸足を置いた事業展開を積極的に行うよう、出資者である東京都としても働きかけてまいります。
 次いで、地球温暖化対策への取り組みについてでありますが、都はこれまで、国に先駆け大規模なCO2排出事業者に削減計画の策定を求める制度を構築するなど、我が国の地球温暖化対策をリードしてきました。
 今後、「十年後の東京」で掲げた高い削減目標の達成に向け、民間企業や都民を大きく巻き込み、十年プロジェクトを本格的に展開し、引き続き我が国の温暖化対策を牽引していくつもりであります。
 次いで、まちづくりでの環境対策についてでありますが、都はこれまでも、都心部等で保水性舗装や屋上緑化、都市開発を進める中での風の道づくりなど、先進的なヒートアイランド対策に取り組んできました。
 今後も、「十年後の東京」に示したとおり、広域的、骨格的な緑を形成し、風の道を生み出すとともに、あらゆる都市空間を活用して緑化を推進するなど、都市づくりとも連動させながら、重層的、複合的に環境対策を展開していきたいと思います。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、スポーツ振興策についてでありますが、都民の健康やスポーツへの関心の高まりがある一方で、都民のスポーツ実践が必ずしも日常的に浸透しているとはいいがたい状況にございます。
 お話の生涯スポーツ社会は、子どもの体力向上や高齢者の健康づくりの実現など、都民全体が幅広くスポーツを楽しむ社会であると考えております。
 このため、都教育委員会は、幅広い世代の都民が身近でスポーツを楽しむことができる環境づくりと、各地区における地域スポーツ全体のすそ野を拡大するため、地域スポーツクラブの全区市町村での設置を目指しております。
 今後は、東京都地域スポーツクラブ設立支援協議会の設置や、地域スポーツクラブを段階的に育成していく新たなモデル事業を通じまして、設立支援の一層の拡充を図る一方、トップアスリートが参加する国際大会を観戦する事業などを推進いたしまして、スポーツ実践層の大幅な増加を図り、生涯スポーツ社会の実現を目指してまいります。
 次に、コミュニティスクール化の推進についてであります。
 コミュニティスクールにつきましては、学校運営協議会を通じまして保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って学校運営に参画することによりまして、学校、地域、家庭が一体となって、よりよい教育の実現に取り組むことができる一つの効果的な仕組みであると考えております。
 コミュニティスクールの指定につきましては、小中学校の設置者であります区市町村教育委員会が地域の実情を踏まえまして主体的に決定すべきものと考えておりますが、都教育委員会といたしましては、コミュニティスクールとなった学校の取り組み状況につきまして情報提供を行ってきておりまして、平成十九年四月には新たに二十二校で導入され、七区市で合計三十四校の小中学校がコミュニティスクールになる予定であるなど、都内では着実に取り組みが広がっているものと受けとめております。
 都教育委員会といたしましては、今後とも、本制度につきまして区市町村教育委員会への情報提供に努めてまいります。
 最後に、区市町村の創意工夫による教育についてであります。
 区市町村が教育の目標や施策の方向性などを明らかにし、自主的、自立的に教育行政を行うことは、大変重要なことと認識しております。
 小中学校におきます教育につきましては、設置者である区市町村教育委員会が地域の実情を踏まえ主体的に取り組むべきものと考えておりまして、都教育委員会は、今後とも区市町村の取り組みを尊重し、支援してまいります。
   〔知事本局長山口一久君登壇〕

○知事本局長(山口一久君) 四点の質問にお答えいたします。
 まず、「十年後の東京」の都政における位置づけについてでございますが、今回策定しました「十年後の東京」は、東京が、近未来に向け、都市のインフラはもとより、環境、安全、文化、観光、産業などさまざまな分野でより高いレベルの成長を遂げていく姿と、それに向けた政策展開の方向性を都市戦略として示したものでございます。
 策定に当たりましては、東京構想二〇〇〇に示されたさまざまな取り組み等を戦略的に実施していくために作成しました重要施策、重点事業による先駆的な政策展開など、これまでの実績を踏まえた上で、具体的でリアリティーのある東京の近未来図として完成させたものでございます。
 次に、「十年後の東京」の財政的な裏づけについてでございますが、この「十年後の東京」の実現に当たりましては、まず、区市町村を初め、都民、企業との連携を図りながら、東京全体で取り組みを進めていくことが必要でございます。また、都庁みずからも、組織横断型の戦略会議における検討や、昨年設置しました東京オリンピック開催準備基金に加え、地球温暖化対策推進基金など三つの新しい基金の創設により実効性を確保してまいります。
 今後、これらの基金を最大限活用するなど、重要施策、重点事業の取り組み等の中で、これからの政策展開の確実な具体化を図ってまいります。
 次に、地方分権改革の取り組みについてでございますが、単なる数字合わせに終始した国の三位一体改革の轍を踏まず、地方がみずからの課題をみずからの権限と責任で解決し得る真の分権改革を実現しなければならないと考えております。
 そのためには、まず国と地方の役割分担など本質的な議論を行うことが必要であり、これまでも都は、知事が直接、全国知事会等においてこのことを主張してまいりました。
 また、先月の全国知事会におきましても、知事みずからが道州制について都の主張を展開し、全体の賛同を得て、現実性のない記述を削除した経緯がございます。
 今後は、東京自治制度懇談会の議論を踏まえ、真の分権改革について都の考え方を取りまとめて広く発信するとともに、他の自治体と連携しながら、真の分権改革の実現を国に対し強く働きかけてまいります。
 最後に、知事へのアンケートについてでございますが、回答に当たっては、知事に確認しており、ご指摘のような、どなたかが配慮して書かれたというものではございません。
   〔建設局長依田俊治君登壇〕

○建設局長(依田俊治君) ひよどり山有料道路についてでありますが、本道路は、八王子中心部と新滝山街道を結ぶ南北方向の交通の円滑化に資する重要な道路であり、昭和四十四年に都市計画決定され、事業化に向け、平成七年に計画変更されました。
 八王子周辺の交通渋滞の緩和と圏央道アクセスの確保を早期に実現するため、建設費の一部と管理費を料金収入で賄う有料道路事業の手法を活用して平成八年に整備に着手し、十三年に開通いたしました。
 事業に当たっては、国が策定した新道路整備五箇年計画をもとに計画交通量を設定しましたが、交通量の伸び率が当初の見込みより低かったことや周辺道路整備のおくれなどにより、現在の交通量は計画の四割程度にとどまっております。
 平成十七年に実施した無料キャンペーンでは、本路線の交通量が大幅に増加し、並行する国道一六号の渋滞緩和などに大きな効果が確認できたことから、債務を一括償還して、本年六月に無料開放することにより、道路資産を有効活用し、地域の安全性、利便性の向上や環境改善を図っていくこととしたものでございます。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 十一件のご質問にお答えをいたします。
 まず、TFTビル等の都関係施設に関するお尋ねであります。
 飯田橋技術専門校有明分校は、ファッション関連産業の拠点であります東京ファッションタウンビルにおいて、アパレル・ファッション系科目を中心に職業訓練を行い、多くの修了生を関連業界に送り出しております。
 また、タイム二十四ビルの創業支援施設は、卒業企業のうち二社がベンチャー技術大賞優秀賞を受賞し、九社が資本金一億円を超すなど成果を上げております。
 一方、これらの二施設においては、平成十八年四月から賃料の引き下げ等を行い、その結果としてタイム二十四ビルの創業支援施設は入居率が向上しており、今後とも改善に努めてまいります。
 次に、非正規労働者の雇用改善に向けた取り組みについてであります。
 都はこれまでも、労働相談情報センターにおける労働相談の実施や、年間約二千六百事業所を訪問することなどによりまして、非正規労働者の雇用環境の改善を事業主に働きかけてまいりました。
 平成十八年度からは、積極的に雇用環境の改善に取り組む中小企業に専門家を派遣し、正社員への転換制度の導入や教育訓練の機会の付与など、すぐれた取り組みを支援するモデル事業を開始しております。
 今後とも、さまざまな機会をとらえて、非正規労働者の雇用環境の改善に努めてまいります。
 次に、年長フリーターに対する総合的な支援についてであります。
 都はこれまで、しごとセンターにおいてフリーター向けセミナーや個別カウンセリングを行うとともに、企業に対しては、若年者雇用に関する理解を深めてもらうため、セミナーを開催してまいりました。
 今後は、特に、年長フリーターを対象とした合同就職面接会を開催するなど、就職活動を支援してまいります。
 次に、若年者に対する経済的な支援策についてであります。
 都は、フリーター等若者に対する教育訓練のための給付金創設や貸付金の拡充を国に働きかけてまいりました。
 なお、これまで、技術専門校において、フリーター等を対象とした科目のほかにも、さまざまな科目で多くの若者の能力開発を行い、就業に結びつけてきたところであります。
 次に、雇用における年齢制限についてであります。
 雇用対策法の規定により、事業主は、労働者の募集、採用において年齢にかかわりなく均等な機会を与えるように努めなければならないとされております。
 今後とも、こうした法令の趣旨の普及啓発に努めてまいります。
 次に、中小企業が公正公平に競争できる環境整備についてであります。
 中小企業の活力を高めるための環境整備を図ることは重要であり、都では、平成十七年度から制度融資において第三者保証を廃止するなど、これまでさまざまな取り組みを行ってまいりました。
 一方、グローバル化が進展する中、東京の中小企業が海外の企業と対等に競争していく条件を整えることは、大きな課題であると認識しております。
 そのため、産業振興基本戦略では、国際競争条件の同一化のため、諸制度の改善を国に働きかけるなど、中小企業の国際競争力強化を支援することとしております。
 次に、新銀行東京の業務展開についてであります。
 ATM事業を含めた具体的な業務展開につきましては、新銀行東京がみずからの経営判断により行うものと認識しております。
 今後とも、都は、出資者として、新銀行東京が金融環境の変化に適切に対応し、収益面の改善を図りつつ、中小企業支援を一層充実するよう働きかけてまいります。
 次に、新銀行東京のATMの利用状況及び知事と新銀行東京との関係についてであります。
 新銀行東京のATMの利用が少ないことは新銀行東京から聞いておりまして、そのことを知事に報告いたしました。
 また、知事は、新銀行東京の出資者である東京都の代表者であり、その立場で、この銀行に関係をしております。
 次に、中小企業の事業承継についてであります。
 東京の産業力の維持強化の観点から、事業承継は重要な課題であると認識しております。しかし、後継者の確保、育成の問題等から、都内中小企業の事業承継は円滑には進んでいないのが実情であり、早急な対応が求められております。
 そのため、都は、平成十九年度、学識経験者等から成る研究会を設置し、事業承継の仕組みづくりについて検討していくこととしております。
 次に、知的財産の保護育成についてであります。
 都では、平成十五年に知的財産総合センターを開設し、中小企業への相談、啓発、助成事業等を行ってまいりました。特に、海外における知的財産保護対策としては、外国特許出願費用を助成し、大きな効果を上げております。
 模倣品などの侵害対策につきましても、国に先駆けて侵害調査費用等の助成制度を創設するとともに、侵害発生時の対策に関するセミナーの開催、相談、啓発などを実施しております。
 また、国に対しましては、侵害対策の充実を継続的に求めてまいりました。
 日本の知的財産の保護育成は都としても重要な課題と認識しており、今後とも、関係機関と十分に連携をとりつつ、効果的な対策を進めてまいります。
 最後に、アニメ産業の振興についてであります。
 都では、平成十九年度重点事業として、中野新橋に、入居企業をアニメ等コンテンツ産業に特化した創業支援施設を整備し、アニメ関連企業の成長を支援していくことといたしました。
 また、財政面でも、アニメ・映像産業への支援スキームを構築し、平成十八年二月から金融支援を実施しているところであります
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 高齢者施策に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、長期的な高齢者施策についてでございますが、都はこれまでも、将来の少子高齢化の進展を見据えまして、長期的な視点から介護サービス基盤の整備などを計画的に推進しております。昨年三月には、区市町村の推計に基づき、いわゆる団塊の世代が高齢期を迎える平成二十六年度までの施設、居住系サービスの長期的な需要予測を踏まえまして、高齢者保健福祉計画を改定いたしました。
 また、計画改定後に明らかとなった療養病床の再編成などの動向も踏まえまして、介護のみならず、在宅医療や住まいを含む地域における高齢者ケア全般について、三十年後までの需要を予測した上で、超長期的視点からの施策のあり方の検討を既に開始しております。本年秋までには、地域ケア整備構想として取りまとめるとともに、平成二十一年度からの次期計画改定に反映させてまいります。
 次に、介護サービスの質の向上についてでございますが、都はこれまでも、通所、訪問及び宿泊の機能を複合的に有する小規模多機能型サービス事業所の設置促進や、グループホームに認知症対応型のデイサービス事業所の併設を促進するなどの独自の取り組みによりまして、高齢者の介護ニーズの多様化に対応して、サービスの量の確保と質の向上を図ってまいりました。
 また、全国に先駆けて福祉サービス第三者評価制度を実施し、来年度からはその受審を実質的に義務づける取り組みを開始することとしております。
 さらに、高齢者の権利擁護や認知症ケアなどの新たな課題に的確に対応できる専門性の高い人材の育成にも引き続き取り組むなど、今後とも、介護サービスの質の一層の向上に努めてまいります。
   〔環境局長村山寛司君登壇〕

○環境局長(村山寛司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、まちづくりにおける温暖化対策についてですが、都はこれまで、建築物環境計画書制度や、これを基礎としたマンション環境性能表示制度により、建築物の省エネ性能の向上を促進してまいりました。
 これを受け、民間においても、都と連携し、環境性能の高いマンションに金利の優遇を行う新たな金融商品が開発されるなど、都の施策は、環境によい建築物が市場の中でより高く評価される状況を生み出すことに貢献しております。
 こうした成果を踏まえまして、今後とも、関係局が連携し、地域的なまちづくりにおけるCO2削減対策を一層推進してまいります。
 次に、緑の保全、創出に向けた取り組みについてですが、「十年後の東京」で示された世界に誇れる緑豊かな東京を実現するためには、規制、誘導の両面から総合的に緑施策を進めることが重要であり、自然保護条例の見直しについては、こうした諸施策を支えるにふさわしい内容とする必要があります。
 今後とも、こうした観点に立って、縁の保全、創出に向けた取り組みを一層推進してまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 建築物の耐震化促進について三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、耐震改修促進計画で指定の対象とする緊急輸送道路についてでございますが、平成十九年度には、代表的な三路線を先行的に指定し、耐震化助成など具体的な取り組みに着手するとともに、効果的な施策のあり方について検証してまいります。
 三路線以外については、沿道建築物の建築年次や高さに関する調査、三路線での検証結果等を踏まえ、第一次から第三次までの緊急輸送道路の中から中高層建築物が建築されていない区間などを除くなど、適切に指定してまいります。
 次に、住宅の耐震化率の目標達成の見込みとその具体策についてでございますが、住宅の耐震化を促進するためには、所有者みずからが主体的に取り組んでいくことが不可欠でございます。このため、都としては、これまでも、安価で信頼のできる耐震改修工法の普及など、独自の施策を実施してまいりました。
 今後は、耐震改修促進計画の策定を契機に、耐震化の助成制度の活用や情報提供をより一層行い、住宅の所有者に対して、耐震化に向けた取り組みを促してまいります。
 さらに、区市町村に対して、都の計画を踏まえた耐震改修促進計画を策定するよう要請するとともに、地域のまちづくりとも連携して、全力で目標を達成してまいります。
 最後に、都有建築物の耐震性能の公表についてでございますが、大地震の発生が切迫しているといわれている中、防災上重要な公共建築物の耐震性に関する情報を都民に提供することは重要であると認識しております。
 このため、耐震改修促進計画の素案では、震災時に重要な役割を担う消防署や警察署、庁舎を初め、都民の避難所となる学校や救護活動の拠点となる病院などについて、平成十九年度末までに耐震診断の実施状況を公表することとしております。
 都営住宅につきましても、平成二十四年度を目途に、耐震診断の必要な約三千二百棟について診断を行うこととしており、その実施状況を、順次、適切に公表してまいります。
   〔百二十四番田中良君登壇〕

○百二十四番(田中良君) 知事から、選挙の候補者の内示めいたご発言がございましたけれども、知事の好き嫌い人事とは全く関係なく、民主党はしっかりとした強力な候補者を近日中に擁立する運びとなるでしょう。ご心配は無用でございます。
 さて、ご答弁いただきましたが、何点かについて再質問を行います。
 まず、都知事は基本的に私の質問に答えておりません。まず、吉兆会合疑惑についてお尋ねをします。
 かつて知事は、テレビの放映で誤報が流されたということで、訴訟を起こすというようなことまでなされたというふうに記憶をしておりますが、(「何について、何について」と呼ぶ者あり)たしか、TBSの字幕かスーパーか何かでありましたね。そういうぐらい、ご自身の問題についてきちんと毅然とした態度をとられるならば、何ゆえ、この疑惑に対して発言をしている方々に対して法的手段をとらないのか、その点についてお尋ねをしたいというふうに思います。
 もう一つ、知事は、やましいことは何もないというふうにおっしゃいましたけれども、この日、会合に同席していたのは、いってみれば建設会社の経営者、それから霊園開発などの都の許認可権限の影響のある業者の経営者であります。そこに知事が出向いて接待を受けて帰ったということでございまして、知事が来るということが前提でこの方々には声をかけられているんです。したがって、都知事は、あらかじめみずから飲食の負担をするつもりがなくてこの会合に出席をされたのでしょうか、お尋ねをいたします。
 それから、私がお尋ねしたのは、政治資金について、集めた政治資金を、何に使うためにお集めになっているのかということを問うたのであります。集めた政治資金を、一体何に使うために集めたのかということについてお答えをいただきたい。
 それから、三つ目に核の問題についてでありますが、私がお尋ねをしたのは、端的にいえば、かつての非核三原則、非核三原則を遵守するといっていた都知事のお考えは、現在はどのようなお立場に立っていらっしゃるのかということについて明快にお尋ねをしたいと思います。お答えをいただきたいと思います。
 それから、銀行についてお尋ねをいたしますけれども、民間会社だから、さもご自身に責任がないかのような、こういう印象を与えるようなご答弁であったのでありますけれども、この新銀行というのは、そもそもが、都知事が選挙公約のときにみずからの選挙公約として掲げて、トップダウンとして一千億円の出資を予算化して行ったことではありませんか。この新銀行設立の経過のときに、理事者の方々からのご説明でそこははっきりと私はお話をして、これは下から上がってきた、つまり組織から上がってきた政策提案か、上から来たトップダウンの提案かということは、はっきり私は確認をしていますよ。そのときには、トップダウンの政策だということをはっきりと説明を受けているんです。
 したがって、この事業が失敗するかどうかということの責任は、知事、あなたにあるというふうに私ははっきり認識をしていますが、その点、ご答弁があいまいでしたので、もう一度お願いをしたいというふうに思います。
 以上です。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 順不同でお答えしますが、吉兆会合なるものは、当然でしょう、料理屋に行くんですから、飲み食いするのは。向こうがお祝いをしたいというので、私は息子の選挙を手伝ったお礼をしに行っただけの話でありまして、そこで会った人は初対面でありましたけれども、その人が後にどんなことで物議を醸すか醸さぬか、私、神様じゃないからわかりません、それは。
 それから、これを法的手段云々といったって、要するに事件が何だったんです、これ。うわさのうわさだけで、評判にはなりましたよ、私も非常に迷惑しましたけれども、糸山君も迷惑したと思いますけれども、あなたはどうして、私が何を、要するに法的な手段に訴えて、要するに告訴しろというんですか。何事もなかったわけで、ただ飲み食いしただけの話でありますから。
 それから、シンポジウムを含めまして、私の要するに政治団体が持っている資金を何に使うか、それは要するに政治活動に使うわけですよ。それはあなたは政治家だからご存じでしょう。いろんな人に会ったり話したり、いろんな相談も受けますし、いろんな知恵もいただきますよ。
 それから非核三原則、これは依然として私は同じですね。つくらず、持たず、持ち込まずと、それで済むんですか。現に、横須賀へ来ているキティーホーク、ちゃんと核弾頭を積んでいますよ。調べてみなさい、あなた。見せてくれるかどうかわからぬけれども。やっぱり抑止力というからには、ある意味で顕在化させなかったら抑止力にならぬでしょう。
 これは、佐藤さんが沖縄を取り戻すときに、とにかく核つきは嫌だという声があったので、何でもかんでも核抜きだということになったけれども、私は、沖縄が返った後、村松剛さんと一緒に、ランパートに頼んで、嘉手納にある核の、要するに核弾頭を見てきましたよ。そういうものですよ、それは。(発言する者あり)いや、そういうもので、私も是としているんじゃない。そういう現実なんですよ。
 それから、新銀行ですけれども、これは確かに私の選挙公約で、私の責任で、私が公約として訴えて実現しました。実現した限りは、私、責任がありますけれども、その後は、私は経営者じゃありませんから、これはやっぱり、あなただって、企業の運営というのはわかっているでしょう、常識があったら。(発言する者あり)資本家が資本を提供して運営させる、その会社の営業の責任というのは経営者にあるんじゃないですか。

○副議長(木内良明君) この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後四時五十六分休憩

   午後五時十一分開議

○副議長(木内良明君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百八番石井義修君。
   〔百八番石井義修君登壇〕

○百八番(石井義修君) 都議会公明党を代表し、知事並びに関係局長に質問いたします。
 今、我が国は十五年に及ぶ長期不況を乗り越えて、新しい時代を展望する一大転換点に立っております。
 国や他の自治体において明確なビジョンや長期政策が打ち出せない中、いち早く東京の長期戦略として「十年後の東京」の都市像を策定し、内外に向けて発信した知事の姿勢を高く評価するものであります。
 十五年不況の中で生じたさまざまな格差、また少子高齢の人口構造の地殻変動で生じた格差を粘り強く克服し、世界を席巻するグローバリゼーションの潮流の先頭に立つ、新しい二十一世紀のモデル都市東京をぜひともこの十年で実現したいものであります。石原知事の決意を率直に伺います。
 まず、知事の二期八年の実績について伺います。
 私は、都議会で、環境派議員として一貫してディーゼル排ガス対策を訴えてまいりました。ディーゼル排ガスに含まれる窒素酸化物、浮遊粒子状物質は、小児ぜんそく、アトピー性皮膚炎、これから始まる春の花粉症、肺がんの原因物質であるとともに、酸性雨となって森林を枯らし、コンクリート構造物を破損する原因物質でもあります。
 私は、今を去る十三年前、酸性雨被害の顕著な群馬県赤城山のシラカバ林、そして日光白根山のダケカンバ林の白骨死体のように枯死した現地調査写真をこの都議会本会議で掲げ、森林の酸性雨被害は、やがて人の命を枯らす地球の赤信号であると、繰り返しディーゼル排ガス対策を訴えてまいりましたが、鈴木知事はやりませんでした。青島知事も実現できませんでした。
 これに比べ、石原知事は、八都県市に拡大し、国に先駆けて見事に実現したのであります。命を守る公明党として、歴史の事実に照らし、高く評価するものであります。加えて、自動車大気汚染訴訟でも、健康被害の因果関係を認めようとはしない国に対し、公害被害者の患者の立場に立って闘う知事の姿勢は評価されるべきであります。
 また、行財政改革に取り組む知事の姿勢もぬきんでております。かつて都財政は、共産党、社会党主導の、経済原則を無視した美濃部都政の放漫財政によって破綻状況にありました。こうしたことから、私は都議会で二十六年間、一貫して都財政を立て直す行政改革の先頭に立って活動してきたのであります。退職不補充による都職員定数の削減、外郭団体の整理縮小、そして高額な役員報酬の大幅削減に取り組んでまいりました。
 ですから、知事の実績はよく理解できるのであります。知事就任時の平成十年度において、一千億円を超える赤字と一兆円を超える隠れ借金がありましたが、人、物、金の行政改革を断行し、十七年度決算で十六年ぶりに都財政を黒字に転換し、十九年度はさらに将来の財政需要に備え、九千二百億円の基金を積むまでになりました。加えて、公明党提案の複式簿記・発生主義会計の公会計制度を国や他の自治体に先駆けて実施したことも評価されるべきであります。
 この財政再建の成果が、あたかも税収増だけによってもたらされたものであるかのように批判する政党もありますが、明らかに誤りであります。
 二期八年を振り返り、知事の行財政改革の取り組みについて感想を伺います。
 「十年後の東京」に関連して伺います。
 第一に、「十年後の東京」を実現するには、行政だけではなく、企業や民間団体などの協力が不可欠であり、さらに首都圏の自治体やアジア諸都市との連携も重要であります。所見を伺います。
 第二に、災害に強い都市をつくり、首都東京の信用力を高める地震対策についてであります。
 今後十年で、学校、病院、百貨店等の民間建築物及び緊急輸送道路沿道の建築物を一〇〇%耐震化すると明言しております。さらに加えて、住宅を九〇%以上耐震化するために、木造住宅密集地域内の耐震化等を推進と書き込まれております。オリンピック開催の最大の課題の一つが地震対策であることを考えれば、これは断じて実現しなければならない目標であります。実現に至る道筋、施策展開、資金的裏づけについて具体的に伺います。
 第三に、世界に先駆けて超高齢社会の都市モデルを創造するとして述べている医療人材の育成についてであります。
 この後、質問でも述べるところでありますが、今日の決定的な医師、看護師不足を考えるとき、専門職大学院メディカルスクール構想は、従来の日本の医師養成システムを根本から変える構想であります。メディカルスクールの設置には、医師法など法改正が必要となりますが、首都大学東京を活用して優秀な医師の養成を行うなど、実現に向けた今後の具体的な取り組みについて伺います。
 第四に、公明党も昨年の予算特別委員会で提案しましたが、都は、新しい技術で世界をリードする産業都市をつくるとして、三環状道路整備により産業集積が進み、多摩地域における創造的な都市型産業を育成する多摩シリコンバレー構想を打ち出しております。そこで、多摩シリコンバレー構想の今後の展開について伺います。
 次に、十九年度予算について伺います。
 十九年度予算は、公明党の主張を大きく反映する予算として評価するものであります。
 第一は、投資的経費の単独事業は二年連続で一〇%以上を確保し、防災まちづくり、学校、病院、住宅の耐震化、環状道路、多摩南北道路整備、電線の地中化、集中豪雨対策としての中小河川改修、あかずの踏切立体化など、東京の都市再生と景気対策を兼ねた一石二鳥の予算となっていることであります。
 第二は、都でできる格差対策として、子育てと高齢対策、障害者自立支援、ニート、ひきこもり対策などに対応する福祉と保健の予算は、構成比、金額とも過去最高となっているのであります。
 特に、公明党が数多くの住民署名とともに、繰り返し知事に要請してきた中学三年生までの医療費助成制度について、財政力の弱い多摩の市町村にも特段の配慮をしつつ実施することであります。
 なお、この医療費助成制度について、共産党は、東京じゅうで、あたかも共産党が独自でやったような選挙宣伝をやっておりますが、これは明らかに誤りであります。財源を生み出す行革に真っ向から反対し、医療費助成を含む一般会計予算に反対する共産党に、みずからの実績という資格は全くないのであります。組み替え動議を出したとしても、それは説得力はないのであります。
 十九年度予算の評価できる第三は、十年後を展望しつつ、福祉・保健、地球温暖化、スポーツ・文化振興の三基金を積み立てて、東京の課題解決を目指す堅実な予算となっていることであります。
 なお、一年一年の予算執行によって世界に誇れる都市モデルを構築するためには、不安定な法人二税に依存する東京の税収構造を考え合わせれば、確実に毎年三%以上の経済成長が図られる景気・中小企業対策が不可欠であります。第一義的には国の経済政策によるところ大でありますが、こうしたことを含め、都における安定的な財源確保を図る財政基盤の強化に向けた知事の決意を伺います。
 また、都財政の中で負の遺産と位置づけられた四事業のうち、いまだ措置が講じられていない二つの事業、すなわち多摩都市モノレール事業と稲城大橋有料道路事業についても、財政支援など、早期に抜本的対策を講ずるべきではないかと考えます。見解を伺います。
 特に、多摩都市モノレールについては、横田基地の軍民共用化も視野に入れて検討すべき重要な交通インフラであり、その延伸が周辺地域からも強く求められていることを申し述べておきます。
 次に、高齢者対策について伺います。
 都内のひとり暮らしの高齢者は、平成十七年の国勢調査では約五十万人と増加し、高齢者人口に占めるひとり暮らしや高齢者夫婦のみで暮らす割合は五二・五%を占めていることがわかりました。また、二〇一五年には、七十五歳以上の後期高齢者のひとり暮らしの割合が三割に達すると予測されております。
 そのような中、療養病床の再編成への対応が重要になってまいります。国は、いわゆる社会的入院の是正を図るため、全国三十八万床ある療養病床について、患者の状態に合わせて介護施設などへの転換を図り、平成二十三年度末に十五万床にまで縮減しようとしております。
 ふえ続ける医療費の適正化を図るだけでなく、患者の立場からも社会的入院の是正は必要であり、そのためにも確実な受け皿の確保が求められております。病院から介護施設への転換には、当然改築や改修のための多額な設備費がかかり、さらに患者の一時退院など、移転先の確保が急務となります。
 国は、既存建物を取り壊して新たに整備する場合で、一ベッド当たり百二十万円の補助金を示していますが、これではいかにも低過ぎます。療養病床から介護老人保健施設への転換が円滑に進むよう、国の補助金に加え、入院患者の移転先の確保という視点から、事業者が都有地を種地として活用できるよう、積極的な転換支援策を実施すべきと考えます。所見を伺います。
 高齢者対策に関連して、シルバーパスについて伺います。
 これまで公明党は、シルバーパスが高齢者の社会参加、社会貢献活動には大変に効果的であると主張してまいりました。このシルバーパス制度を、高齢化が進む大都市に適した仕組みとして今後も維持していくことは、まことに重要であります。
 今般の税制改正においては、高齢者の課税対象額が引き下げられ、収入が変わらないのにもかかわらず、多くの高齢者が、千円ではなく二万五百十円のパスを購入しなければならなくなる事態が発生し、公明党は負担拡大について配慮するよう都に対して要望を重ねてまいりました。
 この要請を踏まえ、今年度、都が、税制改正の影響を受けた人の負担額について、激変緩和の観点から経過措置を設けたことを評価するものであります。高齢者の社会参加をさらに進めていくためにも、激変緩和の経過措置を十九年度も継続すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、中小病院の看護師不足問題について伺います。
 現在、病院の看護師不足が大きな社会問題になっております。その背景には、昨年四月に行われた医療報酬の改定があります。従来の入院患者十人に対し看護師一人という配置基準が改められ、患者七人に対し看護師一人という新基準が設けられました。そのため、看護師をふやせば大幅に増収になる大学病院などが看護師募集を大々的に行い、民間病院からの引き抜きや新卒看護師の青田刈りを行っております。
 公明党にも、地域医療を支える民間の中小病院で看護師の確保が困難をきわめ、病院経営が危機に陥っているという悲鳴にも似た声がたくさん寄せられております。
 そこで、まずこうした看護師不足問題についての都の認識と、今後の需給見通しを含めた対応策について伺います。
 また、看護師不足の主な原因の一つに、特殊な勤務形態や、結婚や出産等による高い離職率が挙げられます。少子化に伴い、新規の看護師養成の大幅な増加は見込めないことから、新人看護師の早期離職を防止し、定着対策に力を入れることが重要であります。こうした中小病院が取り組む課題に対して、都として積極的に支援していくべきであります。見解を伺います。
 さらに、これまで以上に看護師を確保していくには、全国で五十五万人いるといわれている潜在看護師の掘り起こしと活用が最重要課題であります。都は現在、東京都ナースプラザで、再就職に向けた研修や就業あっせんを区部と多摩の二カ所で行っております。しかし、現在働いていない潜在看護師は、子育てなどのさまざまな事情により、居住地から離れ、遠いところまで研修に行くことは困難であります。こうした状況を踏まえると、研修と就業あっせんが都内二カ所では全く不十分であります。
 都として潜在看護師の再就業を促進していくためには、身近な地域で研修を受けることができるよう、大幅に研修事業を拡大すべきであります。所見を伺います。
 次に、多重債務者対策について伺います。
 いわゆる多重債務の問題は、第一義的には、借りた本人に責任があるわけでありますが、貸し手側の執拗な督促や強硬な取り立てによる自殺や家庭崩壊など、多重債務者本人と家族、親族に大きな影響を与え、深刻な社会問題となっております。
 公明党は、早くからこの問題を取り上げ、平成十五年の第一回定例会において、借り手側が自殺や家庭崩壊に追い込まれないよう、都庁において、休日、夜間でも相談を受ける貸金被害受付ダイヤルの設置、弁護士や司法書士などの専門家による貸金被害無料法律相談の設置を訴え、貸金被害受付ダイヤルは平成十五年四月から、貸金被害無料法律相談は平成十五年十月から、全国に先駆けて実施されることになりました。
 そこでまず、この貸金被害受付ダイヤル、貸金被害無料法律相談の現在に至るまでの成果について伺います。
 また、多重債務に陥った要因の一つは、出資法の上限金利二九・二%と利息制限法の上限金利との間の、いわゆるグレーゾーン金利による安易で過剰な貸し付けであるといえます。
 昨年十二月の貸金業規制法等の改正で、グレーゾーン金利や借り手の返済能力を超える貸し付けがようやく是正されることになりました。しかし、現状では、事業の資金繰りや生活費の補てん等、やむを得ない理由をきっかけに多重債務に陥り、苦しんでいる人が多数いるのが実態であります。
 このたび、都がこのような生活困難者に対し、救いの手を差し伸べる多重債務者生活再生事業を来年度から創設することは、大いに評価するものであります。多重債務者の生活再建に当たっては、弁護士など法律の専門家による債務圧縮などの任意整理、また自己破産や民事再生手続について、関係機関との緊密な連携が必要であります。さらに、この事業を利用してもらうためには、幅広く都民に対して周知を図る必要があると考えます。所見を伺います。
 次に、産業振興基本戦略について伺います。
 都は、「十年後の東京」が目指す都市像の実現を、産業振興の面から推進する産業振興基本戦略素案を発表しました。
 基本戦略では、健康、コンテンツ、航空機産業など、東京を牽引する産業を重点産業として位置づけ、育成していくこととしております。特に公明党が評価するのは、大都市の課題を解決する産業の育成を重点に取り上げていることであります。大都市特有の課題ともいうべき、健康、環境、危機管理の水準を維持し、ワンランク上に高める産業として育成するというものであります。
 これら各分野の産業は、将来的にも高い成長性が見込まれ、東京の強みを発揮し、そして都民生活の向上に直接かかわる重要な分野であります。健康関連産業についていえば、都内に数多くの大学病院など高度医療施設が存在し、全国の約三割の医療機器製造業の集積があります。また、環境関連産業の都内市場規模は、平成十二年の約五・三兆円が、十年後には一・六倍の八・四兆円になると予測されております。さらに、危機管理産業は、警備業や防犯設備機器製造業などの市場規模の伸びが高く、都民の安心へのニーズから、今後も高い成長が見込まれております。
 健康、環境、危機管理は、都民生活にとって切実な問題であります。これを解決する産業の育成について、中長期的視点に立った支援策を検討していくことはもちろん重要ですが、同時に、都民にとって喫緊の課題であることを考えると、早急な振興策、支援策の実施が肝要であります。今後の取り組みについて所見を伺います。
 次に、中小企業向けの公的な信用保証制度における責任共有制度について伺います。
 我が国経済は、戦後最長といわれたイザナギ景気を上回る回復基調が続いているとされておりますが、中小企業を取り巻く環境は依然として足踏みの状態であり、厳しい状況下に置かれております。
 このような中、国は信用補完制度の見直しを進めており、その一環として、本年十月から、信用保証協会の保証つき融資について、金融機関がその責任の二割を分担するという責任共有制度の導入を予定しております。
 この制度の目的は、信用保証協会と金融機関とが責任の共有を図り、中小企業の事業意欲などを継続的に把握し、融資の実行やその後の経営支援などを進めるというものであります。
 しかしながら、東京商工会議所を初め、経済団体や、日々の資金繰りに苦しむ中小企業経営者の間からは、この制度が導入されることで、金利の上昇や貸し渋りが頻発するのではないかと、不安、懸念の声が上がっております。都は、こうした現場からの声を真摯に受けとめ、経営基盤の脆弱な中小企業に対する資金繰りなどの金融支援策を拡充、充実すべきであります。所見を伺います。
 次に、中小企業支援に関連して、水道料金の減免について伺います。
 都はこれまで、都議会の決議にこたえ、都独自に、生活弱者や社会福祉法人、加えて水道の大量消費を必要とする公衆浴場やメッキ、皮革関連企業などに対し、減免措置を講じてきたところであります。
 原油高騰など、零細企業への逆風が続いている現状を考慮し、東京水道経営プラン二〇〇七の計画期間である今後三カ年においても、都は減免措置を引き続き継続すべきであります。所見を伺います。
 同様に、下水道局についても所見を伺います。
 あわせて、この際伺います。ことしは水源地に雪が降りませんが、夏の水は大丈夫なのか、見通しを伺います。
 次に、雇用対策について伺います。
 約六百八十万人といわれる団塊世代の大量退職が始まり、二〇〇七年問題が現実のものとなっております。団塊世代の活用について、公明党は昨年の第四回定例会で、大手企業などで長年働き、マーケティングなどの専門分野で秀でた人材や高い水準の技術者などを中小企業で活用すべきと提案を行ってまいりました。
 このように専門分野を生かして働きたい人がいる一方で、これまでに経験した分野とは異なる分野での再就職を希望する人も多くおります。また、一般的に、団塊世代はパソコンなどITを活用する能力が不足しているといわれております。それらの科目の職業訓練ニーズも高いようであります。そこで、団塊世代の再就職をさらに円滑に進めるため、こうしたさまざまなニーズに対応した職業訓練を充実させるべきと考えますが、見解を伺います。
 ところで、団塊世代を含めた高齢者が活躍できる分野は、企業への再就職だけではなく、NPOやボランティア活動、シルバー人材センターでの就労、就農、起業、創業など多様であります。昨年十二月に発表された都民生活に関する世論調査でも、五十代、六十代の約二割の人が、企業への再就職以外のいろいろな働き方を希望しております。
 その中でも、身近な地域で働きたいというニーズにこたえるシルバー人材センターは、地域における高齢者就業の受け皿として大きな役割を果たしております。しかしながら、経験や能力を生かしたい、地域へ貢献したいなどの意欲を持っている人に新たな会員になってもらうためには、より魅力あるシルバー人材センターへとステップアップしていく必要があります。
 そこで、団塊世代に対する就業機会を確保するため、職域の拡大や就業の場の拡大を図るシルバー人材センターの取り組みに対して支援を強化すべきと考えます。見解を伺います。
 団塊世代の大量退職について、多くの中小企業は、人材の確保や育成の面で強い危機感を持っています。国の調査では、二〇〇七年問題に対して、全体では約三割の企業が、また製造業については約四割の企業が危機感を持っております。
 こうした中で、技術、技能を引き継ぐべき若者のものづくり離れ、技能離れは深刻であり、国のものづくり白書によると、平成十六年に新規学卒者が製造業へ就職した割合は約一八%と、十年前から約九ポイントも下がってきています。
 都は、技術専門校を再編の上、職業能力開発センターを設置し、中小企業の人材育成や確保に対する支援を強化する方針を打ち出しています。そこで、若者を初めとして、より広くものづくりを体験する機会を提供すべきであります。見解を伺います。
 次に、商店街の人材育成と活用策について伺います。
 少子高齢社会が進む中、子どもたちや高齢者が安心して生活できる地域コミュニティを維持していくことが喫緊の課題であります。中でも商店街は、地域のコミュニティの中核として役割を担っており、とりわけ地域の中で活動を担う若手人材の育成こそが、商店街の活性化のみならず、今後の地域力向上という視点から重要と考えます。
 都は、公明党の提案を受け、商店街の活性化を人材育成の面から支援する進め若手商人育成事業を実施してきました。この取り組みにより、商店街から有為な人材が輩出されるとともに、若手商人同士のネットワークが進んでいることも大いに評価できるのであります。
 こうした人材のネットワークは地域の宝となっておりますが、要は、単なる商店街の活動にとどまるのではなく、地域社会の福祉、環境、安全・安心、教育など、さまざまな分野で活躍することが期待されるところであります。この際、地域コミュニティのかなめとなる人材の育成を図る観点から、この進め若手商人育成事業の中に、地域に貢献する人材育成のカリキュラムを加えるべきと考えます。所見を伺います。
 また、改正まちづくり三法とのかかわりを考えると、商店街は、これまで以上に積極的にまちづくりに参画していくことが必要であります。都内の多くの地域では、活性化に向けてさまざまな課題を抱えており、商店街が中心となってその解決に取り組んでいくことが求められております。こうした課題解決には、進め若手商人育成事業でともに学んだ人たちが、互いの経験を共有しつつ、幅広い連携のもとで事業に取り組むことが極めて効果的であります。
 また、多くの経験を積んだ若手商人が新たな若手を指導するような仕組みをつくることで、こうした活動の輪が一層大きくなることが期待されるのであります。
 都は、今後若手人材のネットワーク化を図り、地域コミュニティ再生のリーダー役として活用する支援策を検討すべきと考えます。所見を伺います。
 次に、治安対策について伺います。
 今月十二日午後、東武東上線の線路内に入って、女性を助けようとして警視庁板橋署常盤台交番の宮本邦彦巡査部長が殉職されました。強い正義感と身の危険をも顧みず職責を全うしようとした命をかけたとうとい行動をたたえますとともに、心からご冥福をお祈り申し上げます。
 さて、昨年十二月に発表された都民生活に関する世論調査によりますと、都民要望が一番強いのは治安対策であります。安全神話の陰りが指摘されて久しい中、行政、警察、地域社会の努力により、昨年は刑法犯認知件数が減少、また検挙率も七年ぶりに三〇%台を回復するなど、統計的には治安の悪化傾向に歯どめがかかってまいりました。
 しかし、都民世論は、依然として治安対策に不安を持ち、治安対策の強化を望んでおります。この状況は、まさに都民が肌で感じる体感治安はまだまだ改善されていないということであります。
 そこでまず、警視庁における平成十九年の都民の体感治安を向上させるための施策について伺います。特に、都民との接点となる交番の問題、いわゆる空き交番対策、そして警察官によるパトロールの実施、これらの対策こそ都民の体感治安につながるとの意見が多く、この取り組みに力を入れていくべきであります。所見を伺います。
 次に、青少年治安対策について伺います。
 最近の犯罪の傾向を見ると、子どもや高齢者など社会的弱者を対象とした犯罪が増加しており、社会的な不安材料となっております。特に子どもが犯罪に巻き込まれる痛ましい事件の報道に接するたびに、暗たんたる気持ちになります。
 昨年夏、内閣府が公表した子どもの防犯に関する特別調査では、七割以上の人が身近にいる子どもが犯罪に巻き込まれる不安を感じていると回答しています。都においてもさまざまな取り組みを行ってきましたが、これまでの取り組みではカバーし切れない学校や地域での安全対策など、将来ある子どもの安全を確保する取り組みをさらに充実強化していくことは、喫緊の課題であります。
 子ども安全ボランティア団体のネットワーク化の推進、地域住民と警察、そして行政との連携強化など、万全を期すべきであります。断じて子どもたちを犠牲にさせない今後の取り組みを伺います。
 次に、青少年育成の具体策について伺います。
 第一は、都が先月三十日に設置した子ども・若者問題対策会議のあり方についてであります。
 いじめ問題一つを例にとっても、学校、家庭、地域などさまざまな要素が複雑に絡み合っているだけに、全庁横断的な組織である対策会議の設置は、従来の縦割り組織の限界を打ち破ることができるものと期待をしているところであります。
 そこで、対策会議は、各局との連携や情報共有だけにとどまることなく、迫力のある有効な施策や将来展望などを積極的に発信し、統合的かつ本格的な施策構築への端緒を開く役割を担うべきであります。見解を伺います。
 第二は、地域における青少年育成活動の推進についてであります。
 現在、地域では、若い世代育成の観点から、各種スポーツチーム、青少年健全育成事業、社会教育活動、さらには、心の東京革命の一環として展開されている大江戸舞祭りなどが展開されております。私は、次世代の人づくりの視点から、地域住民と一体となった活動や身体全体で学ぶ生きた学習の有効性に注目しております。
 長年にわたって活動を支えている各種分野の人たちに聞くと、活動に参加している青少年は、非行、いじめなどの問題行動が非常に少なく、社会に出てからも、他人への配慮、互助意識、ボランティア精神などが生かされているといいます。
 そこで、地域で展開されているこうした活動の有効性に改めて光を当て、活動をバックアップする全庁横断的な青少年育成人材バンクの創設や、幅広い支援策の充実強化など、都としても強力な支援体制を再構築すべきであります。見解を伺います。
 次に、地球温暖化対策とアジア貢献について伺います。
 アメリカの国立研究所の調査では、中国のCO2の排出量は、二〇〇三年時点で日本の四倍近くに達し、EUの旧加盟国十五カ国の合計をも超えております。間もなくアメリカを抜き、断トツの一位となるでありましょう。
 中国の環境問題は、既に深刻化している大気汚染と砂漠化の拡大に代表されるように、深刻かつ国際的な問題であります。と同時に、中国に代表される東アジア諸国の経済発展と環境保全の両立は、近い将来に工業化の進展が予想されるインドや南米、アフリカ諸国の今後の進路にも直接的な影響を及ぼすという点で、まさに地球環境の将来を左右するかぎといえます。
 一方、東京は世界に先駆け深刻な公害問題を経験してきましたが、大気汚染対策、水質汚濁対策に加え、知事のリーダーシップのもと、八都県市でディーゼル排ガス規制を実施するなど多くの実績を上げてきております。
 知事は、「十年後の東京」プランの中で、すぐれた民間技術を活用して世界で最も環境負荷の少ない都市モデルを実現し、その成果をアジアなどの世界に発信、還元していくとしております。
 また、安全でおいしい東京の水道水は、世界に誇れる技術水準であります。現にイスタンブール市が実施した世界主要十三都市における調査では、水道管理における行政能力、充足度及び効率性で東京が第一位に輝き、水道局の各施設には、毎年中国を含む世界各国から研修生が訪れております。
 このように、都のすぐれた環境技術に加えて、現在進めている環境負荷の少ない交通システムへの取り組みなど、都の持っているすべての環境技術を、これを求めるアジアの主要都市へ技術移転し、また技術提携し、さらに共同開発、技術職員の研修交流などを推進していく効果ははかり知れません。
 昨年五月、知事は、ロンドン市との間で実務的な政策提携を実現させました。同様に、東京は環境を主要テーマとして、環境問題では多くの課題を抱える北京を初めとするアジア諸都市とも連携、協力し、都庁の総力を挙げて、環境面での貢献を積極的に展開すべきであると提案するものであります。
 アジアの環境問題に関する所見と、これに対する東京の使命、役割、貢献について知事の所見を伺います。
 また、この際、十年後のオリンピック東京開催も念頭に置きながら、知事ご自身が北京を訪れ、環境面での技術支援、交流、貢献について率直に話し合ってはいかがでしょうか。必要とあれば私たち公明党も大いにお手伝いをさせていただきます。さらに、その折に、北京とのさまざまな交流事業の活性化についても話し合うべきと考えます。知事の所見を伺います。
 なお、今の質問と関連いたしますが、仄聞するところによれば、東京水道の技術力の高さへの取り組みが評価され、水道サービスの国際規格の確立を目指すISOの専門委員会の総会が、この秋、日本で開催されると聞いております。都は、この機会に世界に誇る漏水防止技術の普及や研修生枠の拡大など、水道技術を通してアジア諸国等への貢献策を一層充実させるべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、産業廃棄物対策について伺います。
 平成十四年度の予算特別委員会において、公明党は、産業廃棄物の不法投棄が大きな社会問題となったことを受け、不法投棄に対する強固な監視体制、いわゆる産廃Gメンを設置し、不法投棄を撲滅する取り組みを強化するよう提案いたしました。以後、都における新たに設けられた産廃Gメンによって広域的な監視活動や違反者に対する迅速な行政処分を実施するなど、大きな効果が上がっていると聞いております。
 しかし、依然として都内を初め近隣自治体では、一部の業者による不法投棄が行われております。都内で排出される産業廃棄物は、その約八割が処分先を他県に依存しております。
 また、不法投棄される産業廃棄物は、瓦れきや木くずなどの建設廃棄物が占める割合が高く、今後、より効果的に不法投棄対策を進めるには、建設廃棄物に重点を絞ることや、不法投棄された後の事後的な取り締まりだけではなく、廃棄物が発生する段階にまでさかのぼって監視活動を強化するなど、多角的な対策を講じていく必要があると考えます。所見を伺います。
 また、産業廃棄物の適正処理をさらに推進していくためには、規制を強化するとともに、実際に処理を担う産業廃棄物処理業界の健全な育成、発展が重要であります。このため、公明党は早くから、優良な処理業者を表彰したり評価する制度を創設するよう、都に強く要請してまいりました。
 都は、昨年九月改定した東京都廃棄物処理計画において、法令で定められた義務以上にすぐれた取り組みを行っている処理業者を第三者が評価する仕組みを導入することを掲げております。そこで、新たな制度の構築に当たっては、このように法を遵守し、懸命に努力しているすぐれた処理業者が市場の中で正当に評価され、業界全体の底上げが図られる仕組みとすべきであります。明快な所見を伺います。
 次に、総合駐車場対策について伺います。
 昨年六月から実施された違法駐車対策によって、主要幹線道路の車両の運行がスムーズになり、交通事故も減少傾向にあると報道されております。しかしながら、一方で、陸上貨物輸送を生業としているトラック協会に所属する運送業者の方々や中小事業者にとって、この規制への対応は並大抵でないことも事実であります。
 公明党は、これまで二度にわたり本会議で対応策を求めてまいりました。都としても前向きに取り組んでいることを評価しつつ、三度目の質問をいたします。
 まず、都として荷さばき場の設置のため都有地の有効活用を進めるとともに、都内の区市などにも荷さばき場の設置を強く働きかけているところでありますが、さらに加えて新設のマンション、商業施設、公共施設等でも荷さばき施設の設置を促進すべきであります。所見を伺います。
 また、警視庁においては、地域の駐車実態や都民要望などを正確に把握し、駐車規制の見直しや貨物車用パーキングのさらなる設置、拡大に努めるよう強く要望するものであります。
 次に、住宅等の耐震化について伺います。
 昨年の第四回定例会において、東京都住宅基本条例が約十五年ぶりに全面改正されたのに続き、先月には、この条例に基づく新たな住宅マスタープランの素案が発表されました。素案には、十年後の東京を見据え、成熟した都市にふさわしい豊かな住生活の実現を目指して、今後十年間に取り組むべき目標と施策が具体的に掲げられております。
 マスタープランの素案では、住まいの安全・安心の確保を今後十年間の住宅政策において特に重視する視点として、既存住宅の耐震化を重点施策に位置づけております。
 先月公表された東京都地域防災計画の素案では、首都直下地震による想定死者数を十年以内に半減させるなどの減災目標が初めて掲げられたのであります。
 そのような中、都内に約二十二万戸ある新耐震基準導入以前につくられたマンションについては、耐震診断等の実施に当たって、多数の区分所有者の合意形成が必要であることに加え、マンション業者の中には、耐震強度不足の発覚を恐れ、マンション住民の話し合いに応じない事例も見られるのであります。
 集合住宅耐震化の促進には、戸建て住宅以上の困難が伴うのであります。都は、今年度、マンションの耐震診断助成を開始しましたが、一層の耐震化の促進に向けた取り組みの強化を図るべきと考えます。見解を伺います。
 なお、都民の生命と財産を守るという観点からは、消防署等の耐震化も重要であります。特に、有事の際に命をかけて活動してくださる消防団の分団本部、防災資機材格納庫の一〇〇%耐震化も実現すべきであります。あわせて、女性消防団員のための手洗いも一〇〇%完備すべきであります。所見を伺います。
 また、関連して水道の耐震対策について伺います。
 水道局では、管路の耐震化を積極的に進めており、その努力を評価するところであります。昨年、中央防災会議は、マグニチュード七・三の東京湾北部地震が発災した場合の被害想定を発表しております。
 東京二十三区の上水道断水率は四六・三%、特に私の地元墨田区を含む東京東部九区のダメージは大きく、これを踏まえた地域防災計画の素案が発表されたところであります。震災時においても、医療機関、災害拠点病院を初めとする重要施設への給水は大丈夫なのか、重要施設への耐震化の具体的な内容と耐震化スケジュールについて伺います。
 次に、景観行政について伺います。
 景観計画及び新たな住宅マスタープランの策定を契機として東京を諸外国に負けない魅力ある景観を備えたまちにしていくことは重要であります。これは、オリンピック招致にも欠かせない東京の大きな課題でもあります。都も、いよいよ思い切った景観規制に踏み込むとしており、評価するものであります。
 特に、違反広告物への対応も着実に進めるべきであります。東京マラソンでは、東京の街並みが広く映し出されることになり、オリンピック招致への大きなステップともなります。
 そこで、東京の景観を乱す大きな原因となっている違反広告物や捨て看への対策もさらに強化すべきであります。所見を伺います。
 最後に、多摩の道路整備に関連して伺います。
 「十年後の東京」でも、道路の持つ多様な機能を発揮するとして、歩道拡幅と無電柱化でゆとり空間を創出すると、道路づくりの方向性が前向きに示されております。
 そこで、具体的に伺います。福生市熊川地区の横田基地わきを走る五日市街道は、片側一車線であるために、二十四時間三百六十五日、慢性渋滞が続いています。中でも、拝島駅前、国道一六号と交差する地点から立川市方面に向かう約四百メートルは、歩道が片側しか整備されていないために、近隣住民は常に危険と隣り合わせで暮らしております。その上、五日市街道の抜け道として一般住宅の生活道路に通過車両が容赦なく入ってくるために、大混乱に拍車がかかっています。ここには学童通学路もあり、早急な歩道整備を含めた本道路の整備を近隣住民が求めております。
 横田基地の軍民共用化政策を進めるために、まず基地周辺のアクセス道路の整備、そして市民の安全のための歩道整備は喫緊の課題であります。常に空港の騒音に悩まされ続けている近隣住民の心情を考慮するとき、一日も早い対応をすべきであります。所見を伺います。
 多摩の道路整備に関連して、もう一点伺います。
 国分寺市を走る都道一三四号線、通称連雀通りは、歩道が整備されていない箇所もあるために、車と歩行者の接触事故が発生する事件が頻発しております。
 特に、西武多摩湖線と交差する踏切部分は歩道が狭く、近くの市立第三小学校への学童通学路にもなっているところから、雨の日には児童生徒は通行車両の多い車道部分にはみ出して歩行するため、傘がトラックの風圧で引っ張られる危険な状態が続いております。 先日、私は、地元住民代表及びこの問題に懸命に取り組む市議会議員と、署名簿を添えて、長年の悲願である連雀通りの歩道整備を強く要請したところであります。改めて局長の所見を伺います。
 千里の道も一歩からといいます。十年後に世界に誇れるモデル都市東京を目指すためには、まず、こうした足元の一つ一つの住民要望に適切にこたえながら前進することが地方自治の要諦であると申し上げ、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 石井義修議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、二十一世紀のモデル都市東京の実現についてでありますが、文明の衝突ともいうべき今日の国際情勢と経済のグローバリズムのうねりが重なっている中で、大都市の力による新しい文明秩序の創造が期待されていると思います。
 そうした認識のもとで、これまで羽田空港の再拡張や外環道の整備凍結解除など、都市再生のインフラにおける突破口を開くとともに、ディーゼル車排出ガス規制を初めとする先進的な環境対策や、首都大学東京の開学などの教育改革など、国に先駆けたさまざまな分野で改革を進めてきたつもりでございます。
 今回策定しました「十年後の東京」は、これまでの八年にわたる実績を踏まえまして、具体的で現実性のある二十一世紀の東京の近未来図である思っております。
 例えば、世界で最も環境の負荷の少ない都市を目指しまして、CO2の排出を大幅に削減するとか、カーボンマイナス東京十年プロジェクトと称しておりますけれども、これを東京全体で展開していきたいと思っておりますし、三環状道路の整備などによって交通渋滞を解消し、そこから生じる都市空間のゆとりを生かして、東京における集中、集積を十分に都民にも満喫していただけるような、だれもがこのまちを住みながら楽しめるユニバーサルデザインのまちづくりも推進していくこと、あるいは、意欲のあるだれもがチャレンジできる社会とするため、学び直しを可能とする奨学金制度の導入や、複線的な人材育成ルートを構築することなど、これまでの先進的な改革をさらに加速させていきたいと思っております。
 ご指摘の、認識を改めましたが、五十万人もいる潜在的な働いていない看護師さんの活用などは、策を講じればできることと思います。
 東京をさらに高いレベルの成熟した都市としていくために、東京が今後十年にわたり展開していく先進的な取り組みを、二十一世紀の新しい都市モデルにまで高め、アジアを初めとする全世界に発信していきたいと思っております。
 これまでの行政改革の取り組みについてでありますが、八年前、都財政の現況を私なりに調査し、この庁舎にやってきましたが、職員から説明を聞くにつれ、思わずため息が出たのを覚えております。
 しかし、同時に、行財政改革、とりわけ財政再建が絶対に必要であるとの思いを改めて強く抱きました。全国でも最も厳しかった職員の給与カットや定数削減などで歳費を切り詰めるとともに、徴税努力など歳入の確保にも努めたことで、今は完全な回復を果たすことができたと考えております。
 これは決して私一人の努力などの結果でなくて、都庁の職員、そして議会とスクラムがかたく組まれたその結果の成果だと思っております。
 また、会計制度そのものを変えることが不可欠であると痛感しました。今年度から発生主義に基づく新しい複式簿記を稼働させましたが、これは、将来、役所と役人の体質を一変させるような改革を必ずもたらすことになると思っております。
 振り返ってみれば、厳しい道のりでありましたが、ここまでたどり着くことができたのは、都民、都議会、職員を初めとする関係者のご理解、協力の賜物だったと感謝しております。
 今後、行財政改革を継続させながら、この成果を目に見える形で都民に還元していくことが責務であると考えております。
 次いで、景気対策と財政基盤の強化についてでありますが、いつも申しているように、東京は日本の心臓部であり、頭脳部でありまして、環状道路、空港、港湾などへの投資が我が国経済にもたらす波及効果は、極めて他の自治体に比べて非常に大きいものがあると思います。我が国経済の活性化のためにも、議員のご指摘には重要な視点が含まれていると思います。
 東京ひとり勝ち論が喧伝されて、東京の財源を吸い上げようとする動きが強まっておりますが、東京での財源確保と継続的な投資の必要性を引き続き国に訴えていきたいと思っております。そのためにも、地場産業から上がる税収も貴重な財源でありまして、大型の投資だけでなく、企業業績の向上に直接結びつくような、中小企業への幅の広い多角的な支援策も不可欠であると認識しております。
 アジアの環境問題と東京都の役割でありますが、アジアの諸都市においては、人口とエネルギーの使用量の爆発的な増加によりまして、公害問題が深刻化するとともに、二酸化炭素排出量の激増によりまして、地球環境全体にも巨大な影響を与え始めております。
 先日、かつて宇宙飛行士として宇宙を飛んだ毛利さんから、大分前のことでありましょうが、宇宙船から眺めた日本近辺の海とか大気の汚染の状況というものを聞いてぞっといたしましたが、東京は、都市成長の過程において幾多の環境汚染を克服してきた経験を持っております。また、二酸化炭素の大幅な削減という最重要の環境課題への挑戦も開始しております。
 こうした取り組みの成果をアジアの諸都市に発信することは、東京が地球の未来のために果たし得る最大の貢献の一つであると思っております。効果的な貢献を行う上では、東京の企業の有する高い環境技術をアジアの諸都市のニーズに的確に適合させることが重要であると思います。
 また、東京が出資をして始めました大都市ネットワークもそのために有効な会合であると思っております。このため、発展途上国での環境プロジェクトにも豊富な経験を持つ国際協力銀行との連携も進めるように指示をいたしました。今後、その協力も得まして、アジアの環境問題の解決に積極的に貢献していきたいと思っております。
 次いで、北京との交流についてでありますが、世界は今、近代、現代を通じての西欧文明による世界支配がようやく終わりを告げまして、新しいアジアの時代の幕開けを迎えようとしていると思っております。
 北京に関しましては、既にある筋から中国在日大使からのアプローチもございまして、会って、率直な話、意見も交換したいと思っておりますが、こうした中、北京を初めアジアの諸都市とさまざまな分野で連携することは極めて重要であると思っております。
 二十年ぶりにアジアで開催される北京オリンピックの成功には期待もしておりまして、特にスポーツ交流は時宜にかなったものと考えております。
 そのため、ことし八月には東京でジュニアスポーツアジア大会交流大会を開催することとしておりまして、北京にも参加を呼びかけております。また、同じ八月に北京で開かれる日中友好交流都市小学生卓球大会には、東京からも選手を送ることとしております。
 こうしたスポーツ交流を初め、東京版スポーツODAの展開によりまして、スポーツ振興の先導的な役割を果たすなど、アジアとの連携をさらに深め、東京へのオリンピック招致につなげていきたいと思っております。
 他の質問については、警視総監及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監伊藤哲朗君登壇〕

○警視総監(伊藤哲朗君) 治安対策についてお答えいたします。
 初めに、体感治安を向上させていくための施策についてでありますが、警視庁では、平成十五年から総力を挙げて犯罪抑止対策に取り組んでいるところであり、特に強盗、侵入窃盗、ひったくりなど、都民の日常生活に大きな不安を与える犯罪を指定重点犯罪として、防犯、検挙の両面から集中的に抑止対策を行ってまいりました。
 その結果、指定重点犯罪の発生は年々減少しており、昨年も前年より約一四%減少いたしました。また、検挙件数につきましては、約一八%増加し、これらの罪種については検挙率も約六七%となるなど、着実に成果を上げることができたところであります。
 本年は、近年、子どもが被害者となる犯罪が多発し、都民、国民に大きな不安を与えていることから、指定重点犯罪に子どもに対する犯罪を新たに加え、その抑止に努めることとしたところであります。
 また、都民の体感治安の向上のためには、重要凶悪事件の検挙を初め、暴力団、来日外国人による犯罪の厳正な取り締まりや少年非行の防止も重要であることから、これらについても警視庁の重点目標に掲げ、諸対策を強力に推進してまいります。
 また、防犯面では、防犯ボランティア団体を初めとする地域の防犯活動への支援や犯罪に強い環境づくりを推進し、都民の体感治安の向上に努めてまいります。
 次に、空き交番対策及び警察官によるパトロールについてでありますが、交番は、警察官がパトロール活動を行う拠点である一方、地域の方々のさまざまな要望、相談、届け出等の窓口としての機能を果たしていくことが重要であると考えております。
 国民、都民の意識調査でも、もっとパトロールをしてほしい、いつも交番にいてほしいといった強い要望があります。当庁といたしましては、こうした点を踏まえ、パトロール活動と交番での在所警戒活動をバランスよく行うことができるよう、全庁的な交番の配置見直しを行い、交番機能の一層の強化に努めているところであります。
 具体的には、配置見直しの対象となっている交番を隣接の交番と統合し、パトロール活動と交番での在所警戒活動をともに充実させることにより、街頭警察活動の強化を図ることといたしております。
 また、廃止される交番についても、その大部分を地域安全センターとして存続させ、警察官OBの地域安全サポーターを配置することにより、地域警察官との効果的連携を図り、これまで以上にその地域の実態に即したきめ細かな地域警察活動を実施することとしております。
 こうした対策により、都民の体感治安の向上に努めてまいりたいと考えております。
 最後に、このたび、みずからの身命を賭して都民の生命、身体を守ろうとした板橋警察署宮本巡査部長が、回復への願いかなわず殉職されたことは、まことに痛恨のきわみであります。直ちに警視庁警部へ二階級特進の措置をとり、その多大な功績をたたえたところであります。
 これまで、地元住民の方々を初め、都民、国民の皆様から故宮本警部の回復を祈るたくさんの手紙や励ましのお言葉をいただきました。
 また、本日は知事並びに都議会の皆様方からまことにご懇篤なる弔辞を賜りました。
 私どもは、職に殉じた故宮本警部のとうとい行為に報いるためにも、都民、国民の安全を守るべく、職務に全力を傾注し、故人の遺志にこたえてまいる所存でございます。警視庁の全職員を代表いたしまして、心から御礼を申し上げます。
   〔知事本局長山口一久君登壇〕

○知事本局長(山口一久君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、「十年後の東京」の実現に向けたさまざまな主体との連携についてでありますが、東京には多彩な人材や膨大な数の企業、NPOなど社会的課題の解決に取り組む多様な主体が集積しております。
 「十年後の東京」を確実に実現するためには、行政の率先行動だけではなく、こうした都民、企業等の協働により、美しい都市景観の創出や緑化の推進など、東京全体で広範なムーブメントを巻き起こしていくことが必要であります。
 また、八都県市首脳会議等を通じ、首都圏が直面する環境、防災など広域的課題に取り組んでまいります。
 さらには、アジア大都市ネットワーク21を活用した環境問題の解決や新たな産業技術開発、東京版スポーツODAなどの展開によりまして、アジアとの連帯、連携を深めてまいります。
 次に、専門職大学院メディカルスクールについてでございますが、社会的なニーズに的確に対応できる、高度かつ専門的な職業能力を持つ実務家養成が人材育成の世界的な流れとなっておりまして、我が国においても法科大学院を初めとする各分野の専門職大学院の設置が相次いでおります。医師養成につきましても、こうした観点から検討する意義は大変大きいと認識しております。
 医療の質が問われるようになった今日、医師養成の複線型ルートを構築しまして、現場重視の教育により、臨床能力にすぐれた医師を養成するため、メディカルスクールの創設に向けた検討はぜひとも必要であります。
 しかし、ご指摘にありましたとおり、実現のためには医師法の改正などの課題があり、国や医療界の理解、協力が不可欠でございます。
 今後、まず外部専門家を交えた検討会の設置等を行い、教育内容や実現手法などについて、お話の趣旨も踏まえまして、幅広い議論を行うとともに、医師養成のあり方に関する世論を喚起してまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、「十年後の東京」における耐震化の目標を実現するための方策についてでございますが、耐震化の目標を達成するためには、公共建築物の着実な耐震化はもとより、民間の建物所有者が主体的に耐震化に取り組むことが不可欠でございます。
 都といたしましては、適切な情報提供や技術的支援を行うとともに、公共的な観点から必要がある場合には、助成制度等も活用し、民間の住宅や建築物の耐震化をより一層促進してまいります。
 区市町村に対しては、都の計画を踏まえた耐震改修促進計画を策定するよう要請するとともに、地域のまちづくりとも連携して、全力で目標を達成してまいります。
 また、必要な財源については、国の補助制度等を積極的に活用するなど、その確保に努めてまいります。
 次に、荷さばき施設の設置の促進についてでございますが、一定規模以上の商業施設や公共施設などについては、既に駐車場整備地区等において荷さばき駐車施設の附置を義務づけております。
 マンションについては、都はこれまで、総合設計制度を初めとする都市開発諸制度を活用する場合などには、荷さばきのための駐車スペースを設置するよう事業者に対して働きかけてまいりました。
 さらに、本年一月には総合駐車対策マニュアルを作成し、開発事業者に対して計画段階から荷さばき駐車施設の設置を検討するよう求めております。
 引き続き、ご提案の趣旨を踏まえ、区市町村とも連携し、荷さばき駐車施設の設置の促進に努めてまいります。
 次に、マンションの耐震化についてでございますが、マンションは多数の区分所有者による共同住宅であることから、耐震診断等の実施に当たっては合意形成が必要となるなどの課題がございます。
 そのため、都は、これまで管理組合へのアドバイザー派遣や改良工事への助成を行ってまいりましたが、昨年からは、耐震診断への支援を行う区市町村を対象とした助成を実施しております。
 現在までに二十区二市で耐震診断助成制度が実施されており、こうした区市等と連携し、管理組合や管理業団体へ引き続きその活用を働きかけてまいります。
 これらの制度に加え、今後は改修工法や具体的な実施事例等を幅広く情報収集し、提供するとともに、関係団体の協力を得て相談体制の充実を図るなど、耐震化の促進に向けた取り組みを強化してまいります。
 最後に、違反広告物対策についてでございますが、オリンピック招致に向けて、世界に誇り得る良好な景観を形成していくためには、建築物に対する景観誘導とともに、違反広告物への対策を強化する必要がございます。
 都は、これまで、地元の自治会や商店会、道路管理者等と協力して、道路上の捨て看板等の共同除却を行ってまいりました。
 これに加え、昨年十二月から、多摩地域においても、市や町と連携し、建築物に違反広告物を出している者への指導を強化いたしました。
 さらに、東京マラソンの開催に合わせ、地元区等とともに、コース沿道における捨て看板等の撤去を行っております。
 今後ともさまざまな機会を通じ、違反広告物対策に取り組み、良好な景観を備えた東京を実現してまいります。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 九点のご質問にお答えをいたします。
 まず、多摩シリコンバレーについてであります。
 多摩地域には電子部品や情報通信機器などの分野において先端技術を有する中小企業や大学、研究機関が数多く立地しております。
 さらに、圏央道や横田基地の軍民共用化などのインフラ整備によりまして、業種や都域を越える交流の促進が期待されており、こうした多摩地域のポテンシャルは一層高まっていくものと認識しております。
 このため、都としては、平成二十一年度に開設する産業支援拠点において、多摩の産業特性に応じた技術支援を行うとともに、この拠点を中核とし、産学公や大企業と中小企業など、多様な連携を推進することにより、新事業の創出を支援してまいります。
 次に、貸金被害受付ダイヤル及び無料法律相談についてであります。
 休日や夜間に相談の申し込みを受け付ける貸金被害受付ダイヤルには、平成十五年四月の開設から昨年末までに約七千八百件の利用があり、被害の防止及び救済に役立っております。
 また、都内の三つの弁護士会及び東京司法書士会の協力を得まして実施している貸金被害無料法律相談では、平成十五年十月の開設以来、昨年末までに二千人を超える多重債務者等の相談に対応しております。
 この相談では、個別の事情を踏まえまして、債務整理、自己破産申し立てなど、適切な助言を行い、被害者の救済を図っております。
 次に、健康、環境、危機管理など大都市の課題を解決する産業の育成についてであります。
 これらの産業は、快適で安心・安全な都市の実現に資するとともに、成長性が高く、企業に大きなビジネスチャンスをもたらすなど、東京の産業を牽引することが期待されております。このため、基本戦略におきまして、重点的に育成することといたしました。
 平成十九年度には、これらの分野の課題解決に資する民間企業のすぐれた事業を選定し、製品化から販路拡大まで一貫して支援する重点戦略プロジェクトを開始いたします。
 また、都内中小企業のすぐれた技術力を大都市の課題解決に活用するため、新技術や新製品の開発に対する支援を新たに実施するなど、これらの産業の育成に迅速に取り組んでまいります。
 次に、中小企業に対する金融支援についてであります。
 責任共有制度の導入による影響として、金融機関の貸し渋り等が懸念されていることは認識しております。このため、都は、制度の導入に当たりまして、小規模企業等については、融資額の全額が保証される小口資金融資を設けることといたしました。
 また、部分保証の対象となる経営支援融資を利用する小規模企業に対して、保証料の補助を実施するとともに、災害復旧資金融資を利用する中小企業には利子補給も行うこととしております。
 今後とも、東京信用保証協会等の関係機関と連携し、金融支援策の充実に努めてまいります。
 次に、団塊世代に対する職業訓練についてであります。
 退職後の再就職を円滑に進めるには、求人ニーズの高い職業へ就職するためのスキルを身につけることが必要であります。
 都はこれまで、高年齢者技術専門校を中心に、ホテル・レストランサービス科などの職業訓練を実施し、高齢者の再就職を支援してまいりました。今後は、高齢者の就業が見込める新たな訓練科目を開設するとともに、より身近な地域での受講機会を提供することとしております。
 このため、来年度には防災設備の管理等を学ぶ設備保全科を城南地域に新設するとともに、ニーズの高いパソコン科目の規模を拡大するなど、職業訓練の充実を図ってまいります。
 次に、シルバー人材センターへの支援強化についてであります。
 地域における高齢者の多様な就業ニーズの受け皿として、シルバー人材センターは重要な役割を果たしております。
 このため、都はこれまで、技能系職種に加え、事務系職種への職域拡大等に向けた各センターの取り組みを支援してまいりました。
 来年度からは、さらに団塊の世代の方々の就業機会を増加するため、労働者派遣事業を活用した取り組みや、複数のセンターが地域を越えて連携する広域事業を対象に加えるなど、支援の拡充を図ってまいります。
 次に、ものづくりを体験する機会の提供についてであります。
 都はこれまで、教育機関との連携によりまして、小中高生を対象としたものづくり教室や、若者が親方に弟子入りする職人塾を実施してまいりました。
 さらに、来年度は、職業能力開発センターにおいて、新たに若者を対象とした製造現場の見学や体験を行うものづくり体験塾を開始するとともに、関係団体との連携を強化し、中小企業の人材育成、確保につなげてまいります。
 次に、若手商人の育成についてであります。
 都はこれまで、進め若手商人育成事業を通じて、次代の商店街を担う多くの人材を育成してまいりました。本年度からは、こうした人材に対して、現場での実践力などを強化するための専門的な研修を新たに開始いたしました。
 お話の地域コミュニティのかなめとなる人材の育成は、地域住民と商店街との連携、交流の促進を通じ、商店街や地域の活性化につながっていくものであり、極めて重要であります。
 このため、来年度から研修カリキュラムに地域づくりの視点も取り入れてまいります。
 最後に、人材活用の支援策についてであります。
 都は、商店街の活性化に向け、来年度、若手商人育成事業の修了生について、専門家派遣事業や研修事業の講師に活用することを考えております。
 さらに、こうした人材を地域コミュニティの再生に活用していくためには、人材のネットワーク化による経験、情報の共有化や、地域の活性化に取り組むNPO法人、大学などとの連携強化を図ることが必要であります。
 今後、こうした方向で支援策を検討してまいります。

   〔財務局長谷川健次君登壇〕

○財務局長(谷川健次君) いわゆる負の遺産への対応についてでございます。
 十九年度予算では、都税の増収を好機ととらえまして、残された懸案である負の遺産の処理に本格的に着手し、心身障害者扶養年金と、ひよどり山有料道路事業につきまして、積極的な対応策を講じたところでございます。
 お話のございました多摩都市モノレール事業と稲城大橋有料道路事業につきましても、抜本的な見直しが必要と認識しておりまして、現在、各局と調整しながら事業見通しの精査や課題の整理などを進めてございます。
 引き続き精力的に検討を進め、機を逸することなく必要な改善に取り組んでいかなければならないと考えてございます。

   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 保健福祉に関する六点のご質問にお答えいたします。
 まず、療養病床の転換支援策についてでございますが、いわゆる社会的入院の是正を目的とする療養病床の再編成に当たっては、療養病床から、その受け皿となる介護施設等への円滑な転換を図ることが重要でございます。
 このため、都は、介護老人保健施設等への転換のための整備費について、独自の補助を行うなど、必要な支援策を講じることとしております。
 お話の都有地を活用した介護老人保健施設の整備については、こうした療養病床再編成に伴う転換支援策として有効と考えられることから、今後、関係局と協議してまいります。
 次に、シルバーパス事業の経過措置についてでございますが、平成十八年度の経過措置は、税制改正に伴う一年間の激変緩和措置として実施したものでございます。シルバーパス事業を今後とも維持していくためには、利用者である高齢者の理解も得ながら、社会状況の変化に的確に対応していく必要がございます。
 ご要望のあった経過措置を十九年度も継続することについては、ご指摘の点なども踏まえて適切に検討してまいります。
 次に、看護師不足問題についてでございますが、近年、医療の高度化、専門化などに伴いまして、看護師の需要が増加する中で、都はこれまでも独自の看護職員需給見通しを策定し、看護師確保対策に取り組んでまいりました。
 しかし、昨年四月の診療報酬改定におきまして、これまで以上に手厚い看護職員配置基準が新設され、その取得を目指す病院が急増したことが、さらに看護師需要を押し上げております。このため、本年一月、国の中央社会保険医療協議会も再度の診療報酬改定を厚生労働省に建議したところでございます。
 都としては、こうした国の動きを注視しつつ、新たな看護職員需給見通しを平成十九年度のできるだけ早い時期に策定しまして、養成対策、定着対策、再就業対策など、総合的な看護師確保対策に着実に取り組んでまいります。
 次に、新人看護師の定着対策についてでございますが、都内の新人看護師の離職率は高く、看護師として養成した貴重な人材が早期に離職しまして、看護の仕事から離れてしまうことは、大きな損失でございます。
 日本看護協会の調査によりますと、学校で学んだ知識と現場の看護業務とのギャップから来る自信喪失がありまして、このため、新人看護師の定着を図るには、こうしたギャップを埋める臨床の場での研修が重要でございます。
 しかし、看護師の採用が少ない中小病院については、新人に対する研修体制が十分でない場合がございます。都は、こうした病院に対して、臨床研修の充実に向けた助言と新人看護師への個別相談、指導を行うため、熟練した研修指導者を派遣する早期離職防止対策事業を平成十九年度から新たに実施してまいります。
 次に、再就業のための研修事業についてでございますが、ご指摘のとおり、潜在看護師の再就業を促進するためには、身近な地域で復職に必要な最新の看護技術を習得できる研修体制を整えることが必要でございます。
 このため、現在、東京都ナースプラザが区部と多摩地区の二カ所で行っている研修や就業相談事業に加えまして、平成十九年度から新たに都内十二の二次保健医療圏ごとに地域就業支援病院を二カ所予定いたしまして、潜在看護師一人一人の経験や技術、離職期間に応じたきめ細かな研修を実施することとしております。
 また、地域就業支援病院では、あわせて就業相談も行いまして、研修と再就業を効果的に結びつけていくことなど、都独自の施策を積極的に推進してまいります。
 最後に、多重債務者対策についてでございますが、来年度創設する多重債務者生活再生事業では、まず、本人の債務状況や借り入れの理由、現在の収入、資産等を、消費生活アドバイザーなど有資格者の相談員が把握するとともに、生活再建への意欲等を確認いたしまして、家計改善の指導をしながら債務整理の提案を行ってまいります。
 その上で、任意整理による返済の見通しが立つ場合には、必要な資金を融資し、それが困難な場合には自己破産等の手続を進めるなど、弁護士や認定司法書士が債務者の状況に応じたきめ細かな解決策を提供することとしております。
 こうした相談支援業務には高度な専門性が必要でございまして、弁護士会や日本司法支援センター等の専門機関、関係団体との緊密な連携を図ってまいります。
 また、この制度の趣旨、仕組みについて、さまざまな生活問題にかかわる各種相談機関や区市町村窓口を通して都民に対して幅広く周知を図り、生活再建に意欲を持つ多重債務者が本制度を正しく理解し、利用できるよう、積極的なPRに努めてまいります。

   〔水道局長御園良彦君登壇〕

○水道局長(御園良彦君) 水道事業に関する四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、水道料金の減免措置についてでございますが、現在実施しております生活保護世帯や公衆浴場などに対する水道料金の減免措置につきましては、都議会の決議の趣旨を尊重いたしまして、平成十九年三月三十一日まで実施する予定でございます。
 減免措置の継続につきましては、負担の公平の原則や財政状況などを踏まえますと難しい問題であると考えていますが、ご指摘の点を重く受けとめ、今後、補てん財源の確保を含めて関係局と調整するなど、慎重に検討していかなければならないと認識しております。
 次に、水源の状況についてでありますが、都の水源の約八割を占める利根川上流域の積雪は天然のダムの機能を果たしておりますが、ことしの冬は全国的に気温が高く、記録的な少雪でございます。矢木沢ダム地点の積雪量は、平年の約四五%と極めて少ない状況にあります。一方、利根川水系の八ダムの総貯水量は、昨年末の降水量が多かったこともございまして、今現在では、平年より三割程度多く、貯水量は七七%でございます。
 しかし、今後の降水状況等によっては、雪解けによる流出が少なく、この夏の給水が厳しくなることも予想されます。
 国土交通省では、今後とも、降水状況や下流部の水利用を踏まえた水資源開発施設の効率的な運用を行うこととしておりまして、都といたしましても、気象状況等を慎重に見守りながら、きめ細かな水運用を行うとともに、多摩川水系の貯水を図り、安定給水の確保に努めてまいります。
 次に、水道技術を通してのアジア貢献策についてでございますが、水道局ではこれまで、独立行政法人国際協力機構、いわゆるJICAと協力しながら、アジア諸国はもとより、アフリカなど広く世界各国への職員の派遣や研修生の受け入れを実施しております。また、アジア大都市ネットワークや日本水道協会などと連携した取り組みも実施しております。
 東京の漏水率は約四%でございますが、特にアジアの主要都市は漏水率が数十%を超える状況から、当局の漏水防止を初めとする水道技術による国際貢献が一層重要になると認識しております。
 今後、国際会議などにおきまして、漏水防止などに関する技術協力を行うとともに、実技フィールドを有する当局の研修・開発センターを、アジアに開かれた研修・開発センターとして活用するなど、積極的に研修生を受け入れる体制を強化してまいります。
 こうした技術協力などを通して、アジアを初め、国外の水道界への積極的な貢献を果たしてまいります。
 最後に、重要施設への供給ルートの耐震化についてでございますが、国の首都直下地震対策大綱や都の地域防災計画に基づき、首都中枢機関及び三次救急医療機関への水の供給ルートの耐震化が急務となっているとともに、震災時の後方医療施設である災害拠点病院や二次救急医療機関、そして、住民支援の主体として重要な責任と役割を担う区市町の庁舎への供給ルートの確保も課題となっております。
 水道局では、耐震性の高いダクタイル鋳鉄管への取りかえをほぼ完了しておりますが、阪神・淡路大震災を契機として、管そのものの強化に加えまして、新たに抜け出し防止機能のある耐震継ぎ手管を採用するなど、管路の一層の耐震化を積極的に進めてきておりまして、これら重要施設につきましては、優先的に供給ルートの耐震化を進めることにしております。
 耐震化に当たりましては、政府関係機関、国会、在日大使館などの首都中枢機関や重要な医療機関約百三十施設につきまして特に優先して平成二十三年度までに、その他の約二百四十施設につきましても平成二十八年度までに完了する計画としております。
 今後とも、震災対策を積極的に推進し、首都東京の安定給水に努めてまいります。
   〔下水道局長前田正博君登壇〕

○下水道局長(前田正博君) 下水道料金の減免措置についてでございますが、現在の下水道料金の減免措置は、平成十八年第一回定例会における下水道料金の減免措置に関する決議の趣旨を尊重し、財源補てんを受けつつ、十八年度限りの措置として実施しているところでございます。
 減免措置の継続は、公営企業における独立採算の原則、使用者間の負担の公平に対する例外的措置であり、難しい問題であると認識しておりますが、議会の意向を尊重し、補てん財源の確保を含め、今後慎重に検討していくべきものと考えております。
   〔青少年・治安対策本部長舟本馨君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(舟本馨君) 青少年対策につきましての三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、子どもの安全確保についてでございますけれども、広島、栃木などの痛ましい事件を受けまして、都は、子どもの安全を確保するための対策をこれまで講じてまいりました。
 今後も、もちろんさまざまな対策を充実強化する必要がありますが、特に、子ども安全ボランティアの支援につきましては、そのネットワーク化を促進するため、ボランティアの集いを積極的に開催し、またホームページをさらに活用するなどして、有益なノウハウなどの情報交換を充実させてまいります。
 また、引き続き、すべての学校に保護者、住民、警察、行政が一堂に会し、情報交換や意見交換ができる場の設置を目指してまいります。
 また、十九年度は、地域の取り組みを強化するため、青色防犯パトロールやスクールバスの補助制度を新設いたします。
 子どもの安全確保に万全を期するため、学校、保護者と地域住民や警察、行政とが一層連携を強め、各施策を重層的、複合的に推し進めてまいります。
 次に、子ども・若者問題対策会議の役割についてございます。
 当会議は、複雑多様化する子ども・若者問題に対して迅速かつ的確に対応するため、副知事を座長として、全庁横断的なものとして設置いたしました。当面、喫緊の課題として、子どもの安全対策、いじめ、児童虐待等を取り上げておりますが、これらの課題につきまして、現場主義のもとで全庁一丸となって取り組んでまいります。
 今後新たに生じる課題も含め、当会議をてこにして、より実効性のある踏み込んだ対策を講じ、また将来展望を広く都民に発信するなど、子どもや若者に関する施策の構築に積極的に取り組んでまいります。
 次に、地域における青少年育成活動に対する支援策についてでございます。
 スポーツ少年団や健全育成団体などの地域の活動が青少年の健全育成に大きく寄与しているものであり、都ではこれまで、関連する各局において支援を行ってまいりました。
 今後は、全庁横断的に設置した子ども・若者問題対策会議の場も十二分に活用して、健全育成団体の活動状況などの情報を一元的に集約しつつ、ご指摘のような新たなシステムの創設など、こうした地域活動を幅広くかつ協力に支援してまいりたいと考えております。
   〔環境局長村山寛司君登壇〕

○環境局長(村山寛司君) 産業廃棄物対策に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、産業廃棄物の不法投棄対策についてですが、お話のように、現在、不法投棄件数の約七割は建設廃棄物が占めております。加えて、今後都内では建築物の更新時期を迎えることから、解体工事に伴う建設廃棄物の一層の増加が見込まれます。
 一方、建築物の解体工事の現場では、敷地面積や工期の制約などから、廃棄物の分別や保管などについて、ともすれば適正な処理が行われにくい状況も見受けられます。
 このため、都は、新たな取り組みとして、平成十九年度当初から、中小規模の解体工事現場約二千カ所に直接出向き、廃棄物の分別の徹底や適正な保管、処分先の確認などについて、不法投棄の未然防止の観点から現場指導を行うことといたします。
 こうした取り組みにより、建設廃棄物の適正処理と不法投棄ゼロの実現を目指してまいります。
 次に、廃棄物処理業者を第三者が評価する新しい制度についてでございますが、本制度につきましては、現在、導入に向け、学識経験者等から成る検討会におきまして、評価基準や第三者評価機関のあり方などの検討を行っております。
 この制度の構築に当たっては、環境の保全や高度なリサイクルなどに努力する処理業者が正当に評価されること、そのことによりすぐれた取り組みを行う処理業者が市場で優位となること、そして、それらが相まって業界全体の底上げにつながっていくことが重要でございます。
 そうした観点に立ちまして、制度の枠組みについてさらに検討を深め、都独自の廃棄物処理業者第三者評価制度の十九年度中の導入を目指してまいります。
   〔消防総監関口和重君登壇〕

○消防総監(関口和重君) 消防団施設の耐震化等についてのお尋ねですが、特別区消防団の分団本部施設や防災資機材格納庫は、消防団の活動拠点として、平時の災害はもとより、震災等の大規模災害時におきましても重要な施設であります。
 このため、分団本部施設を最優先に計画的に耐震化を進めるとともに、防災資機材格納庫につきましても順次整備してまいります。
 また、手洗い設備等の整備につきましては、女性団員に十分配意して充実を図ってまいります。
   〔建設局長依田俊治君登壇〕

○建設局長(依田俊治君) 多摩の道路整備に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、五日市街道の立川─福生区間の拡幅整備についてでございますが、五日市街道は多摩地域における東西方向の主要な幹線道路であり、当該区間は、南北方向を結ぶ国道一六号と相まって円滑な交通を確保するとともに、歩行者の安全性向上など快適な生活環境の確保に必要な路線でございます。
 本区間の立川市西砂町から福生市熊川までの約一・九キロメートルにつきましては、多摩地域における第三次事業化計画の中で優先整備路線に位置づけられております。この区間は、ご指摘のように、現況幅員が十メートル程度であり、歩道も片側にしかないことに加え、国道一六号との交差点を先頭に著しい渋滞が発生しております。
 現在、国道一六号については、国が幹線機能強化のため、五日市街道との交差点付近から南側約一・五キロメートルについて、現在の片側一車線から三車線への拡幅事業を行っており、都は、一部区間の用地取得業務に東京都道路整備保全公社を活用するなど、国道事業の推進に協力しております。
 お尋ねの五日市街道の本区間につきましては、今後、国道事業の進捗状況や歩行者の利用状況などを踏まえ、事業化について検討してまいります。
 次に、連雀通りの歩道整備についてでございますが、三鷹市と国分寺市を結ぶ連雀通りは多摩地域の主要な道路でありますが、歩道のない箇所や幅員の狭い箇所がございます。
 そのため、国分寺市内では、本多二丁目交差点から西武多摩湖線の踏切までの約四百メートルの区間で歩道の整備に取り組んでおり、これまでに約九割の用地を取得し、順次工事を進めております。
 また、踏切内の歩道拡幅については、現在、鉄道事業者と事業化に向け協議を進めており、本年秋には工事に着手する予定でございます。
 さらに、踏切から西側のけやき公園までの区間の歩道整備につきましては、事業中の区間と踏切内の歩道の整備状況を踏まえ、事業化を進めてまいります。
 今後とも財源の確保に努めるとともに、地元自治体や関係住民の理解と協力を得て、だれもが安全かつ快適に利用できるよう、連雀通りを初めとする多摩地域における歩道整備を積極的に推進してまいります。

○副議長(木内良明君) 百五番大山とも子さん。
   〔百五番大山とも子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○百五番(大山とも子君) 日本共産党都議団を代表して質問します。
 今ほど石原知事の都政運営の基本姿勢が鋭く問われているときはありません。
 第一に、都民にはわずかな額の補助金までも切り捨て、痛みを押しつけながら、みずからは豪華海外出張やワンダーサイト事業での四男重用に見る浪費と都政私物化を進め、都民から厳しい批判が上がっていることです。ところが、この問題について、施政方針演説では一言の説明も反省の言葉もありませんでした。驚くべきことです。
 さらに、知事が、側近とともに、公費、税金を使った飲み食いを繰り返していることが明らかになりました。
 私たちは、開示文書に基づいて知事交際費の実態について調べましたが、知事と側近による接遇という名の公費での飲食は七年間で百五十五回に上り、千六百十五万円もの税金が使われています。その中には、高級料亭などで一般都民が口にすることのできない豪華な食事や高価なお酒を飲食するというものが少なくありません。
 知事の飲食による接待に対して、東京地裁が、七十八件中十一件について判決を下しました。二件については明確に違法と断定し、外二件についても適法との判断がなされなかったことを知事は重く受けとめるべきです。
 ところが、知事は、違法とされた二件について控訴するだけでなく、却下された六十七件は問題なかったかのように強調しています。とんでもありません。そもそも六十七件は、監査請求の期間が過ぎたために判断が下されなかっただけで、目的や高額な費用など、交際費の支出基準に照らして違法性の強い飲み食いが多くあります。
 知事、今、都民の中には、税金の使い方、政治と金についての怒りが大きく広がっています。料亭などでの飲食に高額の税金を使っていることは、違法であるかどうかだけでなく、税金の使い方として許されるのかという地方自治体としてのモラルが問われているのです。お答えください。
 重大なことは、密室での飲み食いの中で都政の重要課題が議論され、都政の方向がゆがめられてきた疑惑が浮かび上がったことです。
 例えば、二○○三年五月二十九日に三十四万円を使った棚橋参与らとの接待は、判決文では羽田空港の国際化問題に関する会合だったと紹介されています。知事は、この飲食の後に、自治体負担反対という態度を百八十度転換し、一千億円もの費用負担を決めたのです。
 また、二○○一年から二○○二年にかけて四回、五十五万円をかけた唐津一氏との接遇には大きな疑惑があります。この接遇の時期は、秋葉原のITセンター計画が具体化された時期でしたが、唐津氏は再開発計画を検討する懇談会の座長であり、請負企業を決めるコンペの審査委員長でもありながら、鹿島の石川名誉会長と親しく、今度こういうものをつくるけど、勉強しておいてくれと指示したことを認めています。
 結局、ITセンターの入札は落札した鹿島グループのみでしたが、公正中立であるべき唐津氏が鹿島にこの開発の勉強を指示していたとすれば、一種の官製談合といわれても仕方ないものです。知事、そう思いませんか。
 また、知事と唐津氏との四回の接遇は何のために行われ、何が話し合われたのですか。それぞれ明確にお答えください。
 知事の私的な顧問団、アドバイザリーボードとの飲食も繰り返しています。にもかかわらず、知事は、裁判の中でも氏名を明らかにすることを拒否しています。裁判で氏名を明かすこともできないような人たちとの飲み食いの場で、新銀行の設立、羽田空港の国際化、横田基地問題、東京大マラソンなど都政の重要問題を話し合っていたというのです。
 知事、これでは、密室の飲み食いで都政が動かされているといわれても仕方ないではありませんか。答弁を求めます。
 公務員への接遇を禁止した交際費の支出基準に反する接待、飲食も見過ごせません。都は、官官接待への社会的批判を受けて、公務員への接遇は禁止しています。
 ところが、石原知事と側近は、支出基準を破って公務員への接遇を繰り返し行っており、都が接遇する側の人物だと主張している都参与を除いても、米長都教育委員や、国会議員では麻生太郎、徳田虎雄氏などと二十回にわたって飲食を繰り返しています。
 国会議員などへの接遇は、明白な交際費の支出基準違反です。接遇費用は返還すべきです。知事、お答えください。
 その中でも問題なのは、二○○一年三月十三日、知事の長男や渡辺喜美衆議院議員など四名の議員との飲食への十九万円の公費支出です。この席上で知事は、君たち、四騎の会をつくれよと、自民党若手グループの結成を促したことが参加者によって明らかにされています。渡辺氏側は、都知事招待の会合で税金が使われたとは思わなかったと説明しています。
 都政とかかわりのない私的な政治グループの結成などが話し合われた懇談に、知事はなぜ都民の税金を使ったのですか。税金の私物化といわれても、いいわけできないのではありませんか。知事の答弁を求めます。
 知事と側近による公費飲食の多くは、しにせ料亭や高級レストランなどで頻繁に行われ、一回で五十万円、六十万円もの費用がかけられ、食事だけで一人二万円、お酒は一本三万円もするワインや日本酒まで注文し、まさに飲み放題という状況です。
 こうした実態が、支出基準が定めた適切な場所でもなく、支出額が社会通念上妥当で、かつ必要最小限とはいえず、納税者、都民の理解を得られないことは明らかです。既に都民から、今度は官官接待か、生活が困窮している中で払っている都民の税金を何だと思っているのかなど、怒りの声が都庁に寄せられています。
 知事は、鈴木、青島知事時代と比べて交際費の支出が減っていると弁解しています。しかし、官官接待への社会的な批判を受けて、官官接待を原則禁止し、交際費の支出基準も改定して、公務員への接遇の禁止、場所や費用の見直しを行い、支出を減らすレールを敷いたのは青島知事です。知事が自慢できることではありません。
 問題なのは、石原都政になって、局長など他の幹部は、飲食は私費負担に切りかえているのに、知事と側近だけが公費による飲食を続けていることです。知事は、税金で飲み食いを繰り返す理由について、酒を飲まないと本音が出てこないといっていますが、こんなことは通用しません。
 大体、他の多くの知事は、公費による飲食そのものを禁止しています。埼玉県では、交際費には知事の飲食代は含まれず、自分で出している、千葉県も、交際費の中で飲食の支出は認めておらず、飲食による接待の実績はないというのが実態です。他県では既にこうした改善が進められているのです。
 知事が、自分だけは官官接待の廃止も支出基準もおかまいなしというなら、余りにも傲慢です。また、いまだに酒席の場でなければ都政の重要問題を論議できないというなら、時代おくれの宴会政治の復活という指摘は免れません。
 知事が都民の批判を受け、知事のホームページでの公開を打ち出しましたが、遅過ぎます。既に三十以上の道府県が公開しているのです。しかも、重大なことは、知事が公費での飲食接待自体については廃止、縮小する意思を示していないことです。
 知事は、就任当初、交際費の公開を言明していたではありませんか。にもかかわらず、これまで棚上げしてきたみずからの政治家としての責任をどう考えているのですか。事務方に責任を押しつけていますが、何でもかんでも事務方のせいにするのはいいかげんやめたらいかがですか。
 税金を使って高級料亭や高額な飲食を伴う会合を開かなくても、他県がやっているように、都庁の会議室でも可能ではありませんか。公費での飲食、接待は一掃すべきです。それぞれ知事の答弁を求めます。
 都民の税金を使って飲食を繰り返すという状況は、知事のトップダウンで始まり、四男とその知人によって進められてきたワンダーサイト事業でも横行しています。
 私たちは、これまで開示されたワンダーサイト事業に係る領収書を調べました。その結果、行事のたびごとに交流会、レセプションなどが行われ、この中で、コース料理からワイン、ビールまで、公費による飲食への支出が繰り返されている実態が浮き彫りになりました。今村館長の行うさまざまな打ち合わせでも、飲み食いが繰り返されています。
 さらに、行事と無関係に、事務局用の消耗品購入の支払いとして、どら焼きやワイン、お弁当まで公費が使われているのにはあきれました。その中には、今村館長お食事代、家村様お食事代、どら焼き二百円などの記載もあります。こうした飲食費の総額は、今わかっているだけでも、五年間で総額三百二十万円になります。二〇〇五年一年だけで実に百六十万円もの税金が飲み食いに使われているのです。
 知事がみずからの四男を、余人をもってかえがたいとまでいって重用し、四男の友人グループにワンダーサイト事業を運営させ、事実上聖域化してきたことが、常識を逸脱した公私混同の公費による飲食になっているのではありませんか。
 ワンダーサイトでは、館長などの私的な食事やおやつ、飲み物としか思えないようなものまで公費を支出してきた疑いがあります。こうした支出の実質的な権限を持つ今村氏、家村氏の責任が問われています。知事、どうですか。
 さらに重大な問題があります。
 昨年六月九日、ワンダーサイトは、知事の四男延啓氏の名刺の印刷を発注しました。ここにそのときのコピーがあります。情報開示されたものです。名刺の肩書は、トーキョーワンダーサイトのアドバイザリーボード、キュレーティングアーチストです。延啓氏がアドバイザリーボード委員だったのは二〇〇二年三月一日から三十一日です。キュレーティングアーチストだったのは二〇〇三年六月十日から二〇〇四年三月三十一日です。昨年、延啓氏は何の肩書もなかったはずです。肩書詐称ではありませんか。この発注の決定権者は、当時副館長だった家村氏です。ワンダーサイトによる組織ぐるみの肩書詐称が行われたといわざるを得ません。
 知事、この問題について全貌を明らかにしてください。また、この問題をどう考え、対処するのですか。明確にお答えください。
 こうした乱脈きわまりない運営や問題を起こしているワンダーサイトについて、知事の責任は重大です。知事、責任をどう考えているのか、答えてください。
 このように、知事のトップダウン事業のほとんどは問題を抱えています。例えば新銀行東京です。
 一つは、中小企業に役立つ銀行という公約とは裏腹に、中小企業への貸し出しが全体の五一%にとどまっているのです。貸出金利は他の銀行の金利の二倍から三倍の九から一〇%となっており、毎日の資金繰りに苦しんでいる業者は相手にされていないからです。また、返済が滞れば、決算期ごとに処理する仕組みになっています。これでどうして中小企業のための銀行といえるのでしょうか。
 二つは、開業二年もたたないのに経営破綻の色合いを濃くしていることです。ことし三月期中間決算では、営業損失が百五十四億円も発生し、このままでは年度末までに昨年の二百九億円を上回ることが予想されています。これはマスタープランの想定をはるかに超えるもので、二年合わせて五百億円もの累積損失ということになれば、東京都が投資した一千億円の半分が消えてしまうことになりかねません。
 知事は、経営不振の原因について、開業一年目の融資に不良債権が多く、今後は改善されるといっていますが、こんな甘い見通しは通りません。専門家は、新銀行は苦し紛れに無差別に融資攻勢をかけているが、ますます危ない融資をつかむことになったり、また、リスクの高い商品に手を出しかねないと疑問を投げかけています。
 そもそも新銀行は他の銀行より高い預金金利を支払っていますし、銀行規模が信用金庫中堅クラスでしかないのに、大企業や大手銀行が集まる大手町の一等地に事務所を構えるなど、高コスト構造になっています。しかも、預金金利が高いのに、資金運用は、本来の収益源であるべき融資が六割にとどまり、残りの資金は低い利回りの国債の購入などでの運用を行っているのです。これではコストを回収できるわけがありません。こんなことは初めから想定できたことではありませんか。知事の見解を伺います。
 知事、今月五日から日本銀行の考査が行われています。日銀の考査や金融庁の検査は、二信組事件のときにも行われたように、通常の考査や検査以外に、金融機関に問題があるときに行われてきました。今回の考査も、新銀行東京の経営、運営に問題があるから行われたものと推察できます。
 なぜ日本銀行がこの時期に考査を行うのか、その理由、目的、考査対象が何であるのか、明らかにしてください。
 また、ある雑誌には、金融庁が昨年末、新銀行東京に文書を出したと報道しています。その内容を示してください。
 新銀行への民間出資はいまだ百八十五億円にとどまっており、市場の信任が得られていないのが現状です。また、開業して二年もたたないのに、設立時の執行役七人のうちの五人までが辞職するなど異常事態です。
 知事、地方自治体が手を出すべきではない銀行業に乗り出したことの誤りは明らかです。新銀行東京の破綻を認め、日本銀行の考査に協力するとともに、金融庁の指導を仰ぎ、処理を進めるなど、問題の解決を急ぐべきではありませんか。答弁を求めます。
 第二に、石原都政八年間の都政運営そのものも極めて重大な問題があります。
 知事はこの間、二次にわたる財政再建推進プランを策定し、あらゆる都民施策の聖域なしの見直しを進めましたが、中でも最大の問題が福祉の切り下げです。
 貧困と格差拡大、少子高齢化への対応など福祉の拡充が必要なときに、石原知事は就任直後、何がぜいたくかといえばまず福祉だと公言し、福祉と保健関係費を四百五十億円も減らしました。これは知事が就任した九九年度と二〇〇五年度の決算による数字です。
 寝たきり高齢者の老人福祉手当を廃止、シルバーパス全面有料化、障害者医療費助成や重度障害者手当の削減など、高齢者や障害者の命綱の経済的支援事業が真っ先に標的にされました。
 特別養護老人ホームの待機者は、九九年度の一万人から四万人に急増しているのに、整備費補助はわずか三割にまで激減しています。老人保健施設や認知症高齢者グループホームの整備率は全国最低のままです。
 小児医療、産科医療の危機が社会的問題になっているときに、小児科・産科の母子保健院を廃止、さらに、清瀬、八王子小児病院、梅ケ丘病院の廃止計画を強引に進めています。
 公立、私立の認可保育園に対する補助も削減や改悪の連続で、園長、職員、保護者から厳しい批判の声が上がっています。
 こんな福祉切り下げをした人は、歴代都知事の中にだれ一人いません。全国の道府県の中でも、こんなに福祉関係費を減らしたのは石原都政くらいです。
 福祉に冷たい石原都政との批判は、私たちだけがいっているのではありません。全国紙が行った都民世論調査で、石原知事の支持率が急落していますが、評価できない政策分野は福祉だという回答が一位です。都政専門紙が都の職員に行ったアンケート調査でも、石原都政は不合格だとする回答が大幅にふえ、評価できない政策分野は福祉、医療で、群を抜いて一位です。
 知事、石原都政の福祉政策は評価できないという都民のこの声を真摯に受けとめる必要があると思いますが、認識を伺います。
 一回で五十万、六十万円もの飲食の接待を節約するだけで、盲導犬のえさ代補助や、見えない、聞こえないという二重の障害がある盲ろう者の通訳介助者養成への補助の再開など、切実な都民要望が実現できるのです。これらの事業を直ちに再開すべきです。答弁を求めます。
 知事は、こうした福祉切り下げを、財政が厳しいことを理由に進めてきました。しかし、この間の都税収入は、知事が切り下げの根拠とした財政再建推進プランの見込みより、七年間で三兆三千億円、毎年平均五千億円も多かったのです。福祉切り下げの理由が成り立たなかったことは明らかです。
 知事は、隠れ借金を解消した、財政再建をしたといいますが、都税収入の大幅増に救われただけのことではありませんか。しかも、隠れ借金のうちの借金返済のための減債基金が六千億円不足しているという問題についていえば、そもそも知事が大型開発を抑制して都債の発行をバブル崩壊前の九二年の水準に抑えていれば、不足が発生することはなかった、つまり、みずからつくった借金を穴埋めしたにすぎないのです。
 福祉切り下げと対照的に、知事は国と一緒に、都市再生の名による超高層ビルのための再開発や、三環状を中心とした大型幹線道路の整備を都政の最重点課題にしてきました。経常経費として計上されている首都高への貸付金なども入れると、投資型経費に毎年一兆円規模の財政投入がされてきました。
 また、石原都政のもとで、都民の税金で負担する必要のない羽田空港拡張工事や、都が直接工事する必要のない首都高速道路品川線などに一千億円単位で次々税金が投入されることになりました。
 全国に例のない福祉切り下げの一方、ひたすら大型開発推進という最悪の逆立ち政治、それが石原都政の八年から浮かび上がる実像にほかなりません。
 それでは、これからの石原都政はどうでしょうか。
 来年度予算案では、福祉は伸ばした、福祉と保健の予算は過去最高だといいますが、到底自慢できるものではありません。高齢者人口がこの八年間に三割もふえ、少子化対策も急がれているのですから、ふえて当たり前です。しかも、実は都税収入に占める比率は、一八・八%から実質一五・八%へと逆に減らしてしまったではありませんか。
 中身を見ても、都独自の老人医療費助成マル福は完全廃止、シルバーパスの負担について、税制改悪により課税になった人は千円に据え置く特別措置は打ち切り、都独自の手話通訳派遣事業も廃止、百年の歴史を持つ板橋老人ホーム廃止など、重大な切り下げが打ち出されています。五千億円の増収の大半は、大型開発やオリンピック基金一千億円、石原知事が新たにふやした借金の返済などのための基金に消えてしまうのです。
 知事は、二〇一六年のオリンピック招致に向けて、長期計画「十年後の東京」を発表しました。一番の問題は、オリンピックに向けた三環状道路を中心としたインフラ整備に主眼が置かれ、福祉や暮らし、教育などの施策に見るべきものがないことです。
 福祉の目玉は介護ロボットの研究で、特別養護老人ホームやリハビリテーションの充実、介護保険の負担軽減など、都民要望にこたえる中身がありません。教育でも、三十人学級など行き届いた教育のための条件整備は見当たらず、中小企業対策で掲げられている多摩シリコンバレーは、三環状道路の一つである圏央道促進の理由づけといわれて仕方のないものです。切実な課題となっている商店街事業に一言も言及がないことは驚くべきことです。
 知事、これで十年後の東京は、都民生活が豊かになり、高齢者も若者も障害者も安心して生活できる都市になっているといえるのですか。答弁を求めます。
 結局、石原都政の過去、現在、未来を通じた最大の問題は、都民の痛みを軽減するためのお金は出し惜しむ一方、大型開発には惜しげもなく大金を使う逆立ち政治にあることは明白です。以下、緊急課題について提案します。
 まず、高齢者福祉です。
 国の年金課税強化により、住民税増税と、それに連動した国民健康保険料や介護保険料の値上げなど、高齢者に雪だるま式の重い負担が押し寄せています。前年に比べて年間十万円、二十万円もの負担増になった人が少なくありません。しかも、負担増は今後も続きます。来年四月からは、七十歳から七十五歳未満の高齢者の医療費負担は一割から二割にはね上がります。
 知事、住民税増税に連動する負担増を緩和する措置を検討すべきと考えますが、見解を伺います。
 町田市に住む七十四歳の女性は、月十三万円の厚生年金ですが、公団の家賃と公共料金で八万円かかります。そのため、週三回、パートで働いて、月五万円の収入で家計を補っています。ところが、昨年から住民税課税となり、介護保険料などの負担を合わせて年四万五千円だったのが六万五千円にはね上がりました。これが来年は九万二千円になると見込まれています。今でも、年金の振り込みがない月末にはお財布に三千円くらいしか残らないといいます。頸腕症候群で医療費もかかります。限界かとも思うけど、働かないと暮らしていけないと懸命に頑張っています。
 知事、この方は公団ですから家賃減免はありません。年金十三万円で生活保護も受けられません。七十四歳で、首や肩や腕の痛みをかばいながら働くのも限界に近づいています。そこへ二万円、三万円と負担がふえる。どうやって暮らしていけばよいのですか。こういう人に手を差し伸べることは地方自治体の大事な役割だと思いますが、そうは思いませんか。
 税制改悪により住民税課税になった人のシルバーパスを千円に据え置く特別措置を打ち切る道理はありません。この方も含め、およそ九万人が、十月の更新で千円から二万五百十円にはね上がることになります。特別措置は継続すべきです。
 また、所得に応じた三千円パスなどの導入を提案するものです。それぞれ答弁を求めます。
 医療費の負担増は命の問題に直結します。負担増は、受診抑制、ひいては病気の重症化につながり、結果として社会的な医療費の負担は一層大きくなります。早期発見、早期治療の推進こそ、高齢社会に対応するために必要なことだと思いますが、どうですか。
 六月末のマル福廃止は中止し、高齢者の医療費の負担軽減に取り組むことが必要です。
 次に、ワーキングプア、働く貧困層への支援です。
 働いても働いても生活保護水準以下の生活しかできない人が、全国では四百万人を超えているといわれています。東京でもパートや派遣労働者が二百十五万人を超え、労働者の三割以上を占めることから、事態は深刻です。
 家賃を払えず、住まいを持てず、一時間百円のネットカフェを毎日転々と渡り歩き、布団で寝ることもできない。やっと見つけた日雇い派遣の日当は、やっとその日が過ごせるだけ。三百円のノリ弁当を夕食に買い、半分だけ食べて、残りは翌日の朝食にする。そんな若者が東京にはたくさんいるのです。本人の責任だけで済ませることはできません。ある日突然解雇されたなど、多くの場合、さまざまな事情を抱えているのです。
 知事、未来があり、意欲もある若者を貧困の悪循環から救い出すため、都として雇用対策室を設置し、緊急にワーキングプアや偽装請負などの実態調査を実施することを提案するものです。
 また、時給七百十九円という低過ぎる最低賃金を引き上げるため、最低賃金の東京都基準をつくり、企業に働きかけることが急がれていると思いますが、いかがですか。
 さらに、都として教員や消防士などの雇用を広げ、住民サービスの向上に努めること、若者を雇用した中小企業への助成などの実施を求めるものです。それぞれ答弁を求めます。
 貧困と格差是正のためには、住まいの確保と家賃の負担軽減が重要です。
 ところが、石原知事は、就任以来、新規の都営住宅建設をやめてしまいました。その結果、都営住宅の倍率は平均五十五倍という事態です。
 住宅に困っている高齢者、障害者、働く貧困層、子育て世帯、ひとり親家庭などが入居できるよう、都営住宅を初めとした低家賃住宅を思い切ってふやすことが必要です。また、所得が低く、重い家賃に苦しんでいる人に対する家賃助成を創設すべきです。答弁を求めます。
 東京大学出版会から刊行された「日本の所得分配」に関する研究によると、日本の所得分配は先進諸国の中で不平等であり、低所得者が取り残されていること、日本では低所得者に対する給付が手薄であり、低所得者に対する税の還元を初めとした再配分を強化することにより、所得格差は大幅に是正されること、貧困率を下げる政策の必要性が明らかにされています。
 そこで私は、緊急対策の一つとして、ワーキングプアや年金の少ない高齢者で、生活保護だけでは救い切れない世帯に対する生活応援手当の創設を提案するものです。知事の見解を伺います。
 最後に、オリンピックをてことした三環状道路などへの莫大な投資の問題です。
 中でも、練馬区の関越道から世田谷区の東名高速までをつなぐ外かく環状道路は、二〇一六年のオリンピックに間に合わせるとして、来月十六日の都市計画審議会で、大深度地下と道幅四十メートルの上部道路を合わせた変更計画を決定しようとするなど、問答無用で進めようとするため、矛盾が噴き出しています。
 知事は、渋滞解消のため必要だといっていますが、外環道は三環状道路の中でも最も必要性が立証できないものです。知事がつくった「十年後の東京」の中では、オリンピックが開催される二〇一六年には圏央道と首都高速中央環状線が完成し、東京区部では、毎日が正月かお盆並み、すいすい快適ドライブが実現すると書いてあるのです。このこと自体、机上のプランともいうべきですが、その中で問題の外環道は、二〇一六年以降供用と書かれており、外環道がなくても、完成しなくても、都心の渋滞は解消しているというわけですから、建設の必要がないことをあなた自身が認めているではありませんか。
 しかも、外環道は、武蔵野の閑静な住宅地を分断、五千戸といわれる立ち退きや自動車公害、地下水脈や大泉ジャンクション近くの湧水の破壊など環境破壊とともに、全体で二兆円といわれる建設費の重圧をどうするのか、未解決です。
 本来、外環道は、国の道路計画を決める国幹会議の方針に基づき、旧日本道路公団の資金によって建設するとされてきたものですが、公団の民営化、株式会社化に伴い、不採算路線については、建設するかどうかは会社の判断とされることになりました。したがって、巨額な建設費が必要とされ、赤字になることが必至といわれる外環道を新会社に押しつけることは無理となりました。このため、昨年二月の国幹会議でも、外環道は予定路線にも挙げられなかったのです。会社レベルでも国レベルでも、建設のゴーサインは出されていないのです。
 ところが、石原知事は、圏央道や外環道を整備するために、都が貸し付けという形で資金を出してもいい、建設費もある時点で考えなければならないとまでいっていますが、事実ですか。知事、答えてください。
 また、外環道は国の道路で、有料道路として計画されたものです。東京都が財政支援する必要は全くありません。知事は、福祉に出すお金はわずかなものであっても出し渋っているではありませんか。それなのに大型開発となると、国の事業であっても、都民の税金を湯水のようにつぎ込んでも痛痒を感じない、まさに地方自治体の魂を投げ捨てたとしかいいようがありません。知事、どうですか。それぞれ答弁を求めます。
 都民の合意なしに建設に走っていることも許されません。都は、地元と三百八十回以上話し合い、沿線区長、市長と意見交換を行ってきたといいますが、住民からは、上部道路はなくなったと聞いていたのにだまされたと反対の声が上がり、住民との協議の場であるPI協議会も結論を出せずにいます。
 昨年十月には、沿線区市長による、現状での十分な検討と地元住民からの理解を得ることが不可欠という異例の共同声明が出され、上部道路については、武蔵野市議会が、全面廃止を加えた協議を求める内容の意見書を全会派一致で採択しています。三鷹市では、市長が、現段階では事業着手まで容認できないとし、外環道の是非を問う住民投票の請求運動が、成立に必要な数を大幅に超える署名を集めました。
 知事、来月の都市計画審議会への提案は取り下げることを求めるものです。
 答弁を求め、再質問を留保し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 大山とも子議員の代表質問にお答えいたします。
 交際費という税金の使い方についてでありますが、従来、原則的には、その妥当性、非妥当性については、基準を踏まえた事務局に任せておりました。しかし、いろいろ誤解が生じているようですから、その改良をするつもりはあると思いますけれども、いずれにしろ、都の政策を形成、実現するために必要な人物と会い、専門的な知見を得たり、情報収集をする、あるいは事の依頼をすることは、当然のことと考えております。
 相手によって、内容によっては、胸襟を開いて話し合うにふさわしい時間と場所があります。その必要性については、判決でも認められております。
 肝心なことは、こうした会合を含めた取り組みが後々実を結び、都政に生かされているかどうか、つまり、費用対効果の問題だと思います。この点については、この八年間の実績を見ていただければ、都民の皆様にはご理解いただけるものと思っております。
 次いで、税金の私物化という指摘がありますけれども、ご指摘の懇談があたかも私的な政治グループの結成のためだけに行われたかのようにいわれるのは、これは全く事実無根も甚だしいと思います。この懇談や、あるいは各省の高官OBを集めたアドバイザリーボードとの会合などは、相手方との信頼関係もありますし、政策形成に支障が生じるためにも、場合によっては、氏名や内容を明らかにできない場合がございます。
 こうしたさまざまな意見交換などが引き金となって、横田の基地の軍民共用化や羽田空港の国際化など進んできたわけでして、この四人の若い代議士たちも党内の論客でありますから、私としては、国際的な航空アクセスというものは国力の維持のためにいかに大事かという文明工学的な認識を持ってもらうために、そういう会合を持ちました。税金の私物化などといわれることは全くないと思います。
 次いで、トーキョーワンダーサイトについてでありますが、トーキョーワンダーサイトは私の発案で始めたものでありまして、ちょっと急いだために、立ち上がり時期の組織的な混乱がございました。それは認めまして、その改修に努めておりますが、その整備もいたしました。
 いずれにしろ、現代美術というものは世界の最先端を行く芸術の一つでありまして、アジアや欧米の多くの都市が、既に若手芸術家の育成や交流事業を実に積極的に進めております。
 しかし、この分野は非常に間口が狭く、限られた芸術家たちが切磋琢磨して作品を競い合っておりまして、発表や交流の場所の提供など、その活動を支援することが必要であると思っております。
 国の文化政策でも、箱はつくりますけれども、人を育てるというものは、芸術の行政というのは見られません。これが非常におくれていることが日本にとっても大きなハンディキャップになると思いましたので、都の遊休施設を使って始めたものでありまして、交流会の開催なども若手作家たちへの支援の一環であります。
 その結果、ワンダーサイトは国際的にも注目される活動拠点になりまして、ようやく日本のワンダーサイトが現代美術の世界のサーキットの中に入っていくことになりました。
 ことしに入り、組織、人材も強化するとともに、昨年開設した青山の施設も活用して、海外のアーチストも呼び込んで交流を促進するなど、トーキョーワンダーサイトを東京の文化発信の先鋒として、積極的に事業展開をしていくつもりでございます。
 新銀行東京についてでありますが、新銀行東京は、他の金融機関との厳しい競争にさらされながらも、資金繰りに苦しむ中小企業に対して積極的に融資を行ってまいりました。具体的には、融資・保証の九割以上は中小企業に対するものでありまして、その三割が赤字または債務超過の企業を対象としております。
 予想を超える不良債権が発生しましたが、これは中小企業金融においても重要な役割を果たしていることに変わりはないと思いますが、ただ、例えば東京がやっておりますCLO、CBOのような、ああいうマーケットが証明したように、東京には非常に技術的な可能性の高い中小企業がたくさんございまして、それが結果として、既に五十五社も上場にこぎつけたわけですから、それを範として、大手の銀行が今まで手を出さなかった中小企業に融資をするようになりました。これはちょっと私たちの誤算でありまして、こういう環境の変化にやや適応し切れなかったといううらみがございます。
 これは、今後とも、新銀行が経営に腐心して収益面の改善を図りつつ、中小企業支援を一層充実していくよう、必要な働きかけを都からも行っていくつもりであります。
 次いで、福祉政策についてでありますが、福祉予算は、東京の予算は過去最高の総額になりました。その運営の仕方に共産党は異議があるようですけれども、いずれにしろ額は過去最高のものになったと思います。
 お話の世論調査などの内容や前提についてはつまびらかにしておりませんが、その割に東京の福祉が非常に恵まれているというので、他県から引っ越してくる人が随分多いように聞いておりますけれども、私は、これまでの八年間、我が国の硬直した旧来のシステムを打ち破り、真に必要とする人への効率的、効果的なサービスが行き渡るよう、東京から日本を変えるという理念のもとに、認証保育所制度や東京ERの創設など、福祉改革、医療改革に取り組み、都民の負託にこたえてきたつもりでございます。
 昨年末策定した「十年後の東京」では、これまでの取り組みを発展させ、お年寄りも子どもも、だれもが生き生き暮らせる、世界に先駆けた超高齢化社会の都市モデルを創造していこうと思っております。
 そのため、見直すべきものは見直し、将来に対する布石として創設した福祉・健康安心基金も活用しながら、都民が真に必要とする政策に財源を集中投入することにより、大都市東京の持つポテンシャルを存分に引き出していきたいと思っております。
 十年後の東京における都民生活の充実についてでありますが、「十年後の東京」は、東京を舞台に活躍し、生活する人たちが将来展望を持てるよう、都市インフラはもとより、生活、環境、産業などさまざまな分野で、東京の具体的な近未来図を明らかにしたものであります。
 例えば福祉政策では、これまで取り組んできた施設整備や地域における支援体制の構築にとどまることなく、超高齢化社会をにらみ、自立した生活や在宅介護を援助する生活支援ロボットの開発促進など、そのほか三万人の障害者雇用の創出や待機児童五千人の解消など、具体的な目標を掲げて、将来の東京を描いております。
 また、だれもがまちを自由に行動できるユニバーサルデザインのまちづくりや、一人一人の意欲や能力が発揮できるよう複線的な人材育成ルートを構築していくなど、東京に集う多種多様な人材が生き生きと安心してできる都市を目指しております。
 したがって、共産党の指摘は全く当たりません。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 七件の質問についてお答えをいたします。
 まず、秋葉原ITセンターの事業者選定についてであります。
 都は、秋葉原地区にIT関連産業の世界拠点を形成することを目指し、ITセンターに導入すべき機能の調査を行い、これを踏まえ、機能概要を盛り込んだ募集要項を作成し、事業計画等を公募いたしました。
 提案された計画等について、学識経験者を含めた審査委員会を設置し、整備計画、周辺地域との連携等の項目について十分な審査を行うなど、適正な手続を経て、事業者を決定したところであります。
 次に、新銀行東京についてであります。
 新銀行東京は、資金繰りに苦しむ中小企業に対し、一万件以上の融資・保証を実施しており、中小企業金融において重要な役割を果たしております。
 都は、出資者として、今後とも新銀行東京が、収入の確保や不良債権の抑制など、経営面の改善を進めつつ、中小企業に役立つ銀行として発展していくよう、必要な働きかけを行ってまいります。
 次に、新銀行東京に対する日銀考査についてであります。
 新銀行東京からは、二月下旬までの予定で、日本銀行法第四十四条に基づき、開業後初めてとなる日本銀行の考査が実施されていると聞いております。
 考査は、日本銀行が、みずからの業務を適切に行うために、取引先金融機関等の業務や財産状況を調査するものであり、定例的なものと考えております。
 次に、新銀行東京に対する金融庁からの文書についてであります。
 金融庁は、銀行法に基づき、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため、必要に応じて、金融機関に対して報告を求めたり、検査等を行っております。
 その内容については、金融庁、各金融機関ともに明らかにしておらず、新銀行東京においても同様であります。したがいまして、都としては、文書についても、内容についても存じません。
 次に、雇用対策室の設置及び働く人々の実態調査についてであります。
 都は、現在、雇用対策を専管する雇用就業部を設置し、総合的な取り組みを実施しており、改めて雇用対策室を設置する考えはございません。
 また、実態調査については、就業構造基本調査に加え、毎月勤労統計調査や労働力調査等を実施し、都内で働く人々の就業実態の把握を行い、その結果を公表しております。
 次に、最低賃金についてであります。
 東京都内の最低賃金は、法に基づき、労働者の生計費、類似の労働者の賃金等を考慮し、国において、東京地方最低賃金審議会の審議を経て決定しておりまして、都として独自の基準をつくる考えはございません。
 なお、現在、国において、最低賃金制度のあり方が検討されており、その動向を見守ってまいります。
 最後に、若者を雇用した中小企業への助成などについてであります。
 若年者の雇用就業促進について、都はこれまで、しごとセンターにおいて、本人に対する個別カウンセリングや各種セミナー等を実施してまいりました。
 また、企業に対しては、若年者雇用に関する理解を得るため、企業向けセミナーを実施しておりますが、若者を雇用した中小企業への助成などについては考えておりません。
   〔知事本局長山口一久君登壇〕

○知事本局長(山口一久君) 知事交際費に関するご質問にお答えいたします。
 まず、唐津氏との懇談についてでございますが、知事が行う懇談は、都の政策を形成、実現するために必要なノウハウやサジェスチョンを得るために、各分野の専門家や有識者などに参加していただいているものでございますが、その内容については、相手方との信頼関係もあり、お答えできません。
 次に、懇談と都政運営に関するご指摘についてでございますが、知事が行う懇談は、都の政策を形成、実現する上で必要と判断して行っているものであり、こうした会合で得られた有益な意見や情報などを生かし、都庁内部での検討や都議会でのご審議を得て、後々、具体的な施策として結実しているものと考えております。
 次に、国会議員などとの懇談についてでございますが、都の政策を形成、実現する上で、大所高所からの知見や最新の国の動向などの情報収集が必要となる場合がございます。
 これらの懇談は、当時、都の政策実現のために必要と判断した上で行われ、その費用は適正に支出されたものでございます。
 今回の判決でも、相手が単に公務員であるというだけで、直ちに支出基準に抵触するという解釈はしておらず、相手がどのような立場であるかを考慮して判断すべきとしております。
 次に、交際費の公開についてでございますが、これまでも交際費に関する公文書は、開示請求があればすべて開示してきており、棚上げしてきたとのご指摘は当たりません。
 今後、より一層の透明性の向上を図るため、公文書の記載方法を改めるとともに、相手方の氏名を含め、ホームページでの全面公開を実施するものとしたものでございます。
 最後に、懇談に対する公費支出についてでございますが、都の政策を形成、実現する上で必要であれば、その目的、内容、相手方などに応じて公費による懇談を行うことができるものと考えてございます。
 また、懇談場所、時間についても、相手方のプライバシーへの配慮や双方の日程の都合により、庁舎外での夕刻以降となることも多くなります。庁舎外での夕刻以降の懇談も含めまして、その公費支出については、判決でも必要性が認められております。
   〔生活文化局長渡辺日佐夫君登壇〕

○生活文化局長(渡辺日佐夫君) トーキョーワンダーサイトに関するご質問にお答えいたします。
 まず、トーキョーワンダーサイトの運営についてでございます。
 トーキョーワンダーサイトは、作品の展示だけではなく、美術や音楽など、いろいろな分野の新進若手芸術家が集い、議論し、切磋琢磨し合うことを目的に開設されたものでございます。
 展覧会のオープニング等の際には、他の美術館等と同様に、レセプションや交流会を開催し、招待客や来館者に簡単な料理や飲み物を供しております。
 また、アーチストや美術関係者などが相互交流、情報交換をしやすい環境を整えておくことも必要であり、飲食の提供もその一環でございます。
 これらに要した経費につきましては、必要な範囲で支出されたものと認識しております。
 次に、トーキョーワンダーサイトにおける、どら焼きなど飲食代の支出についてでございます。
 トーキョーワンダーサイトでは、先ほど答弁したとおり、アーチスト相互の交流等に要した経費のほか、展覧会等のイベントの準備や事前打ち合わせなどに伴う費用も支出されており、これらを含め、ワンダーサイトの運営上、必要であったものと認識しております。
 次に、石原延啓氏の名刺についてでございます。
 石原延啓氏は、平成十五年三月はトーキョーワンダーサイトのアドバイザリーボード委員、また、平成十五年六月十日から翌年の三月末までの間はキュレーティングアーチストに位置づけられ、ボランティアとして活動をしておりました。その後も、同氏は、引き続き、ワンダーサイトをサポートするボランティアとして活動していたものでございます。
 名刺は、これらの経緯から、トーキョーワンダーサイトの館長の判断で印刷したものと聞いております。
 なお、名刺の作成、印刷経費につきましては、トーキョーワンダーサイトでは負担をしておりません。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 八点の質問にお答えいたします。
 まず、盲導犬のえさ代補助等についてでございます。
 盲導犬の飼育費は、補装具や日常生活用具の維持経費に相当するものでございまして、従前から、それらの経費が自己負担であること、それとの整合性を図る必要があること、また、盲ろう者通訳介助者養成については、関係団体が平成十三年度から自主事業として行っていることなどから、いずれも事業終了したものでございまして、両事業とも再開することは考えておりません。
 なお、都でも、盲導犬等の育成給付事業及び盲ろう者通訳介助者派遣事業のため、来年度予算案においても合わせて約六千万円を計上しております。
 次に、住民税増税に連動する負担についてでございますが、我が国の社会保障制度は大きな転換点にあり、将来にわたり制度を安定的に維持していくためには、年齢にかかわらず、社会全体で支えることが不可欠でございます。
 高齢者の中にも、現役世代並み、またはそれ以上の所得を得ている方もおり、高齢者は一律に弱者という先入観を排し、能力のある方に相応の負担を求めることは必要でございます。
 平成十六年度の税制改正に伴う国民健康保険料、介護保険料などの負担については、激変緩和の仕組みが既に設けられており、都が独自に実施する考えはございません。
 次に、低所得者層への対応についてでございますが、所得保障は、社会経済状況全体を踏まえ、基本的に国の責任で対応すべきものでございまして、各種年金や手当、さらに最後のセーフティーネットとしての生活保護などの諸制度が十分に整備されていると考えております。
 また、低所得の人に対しては、老人保健制度や医療保険制度、介護保険制度の中で、各種のきめ細かな本人負担の軽減措置が設けられております。
 これらの諸制度を、国と地方との役割分担のもと、公正かつ適切に実施していくことが、自治体の責務であると考えております。
 次に、シルバーパス事業の経過措置についてでございますが、平成十八年度の経過措置は、税制改正に伴う一年間の激変緩和措置として実施したものでございます。
 経過措置を十九年度も継続することについては、既に重ねて答弁申し上げているとおり、適切に対応してまいります。
 次に、シルバーパスの利用者負担についてでございますが、シルバーパス事業は、若年世代との間に負担の不公平があるなどの課題があったことから、平成十二年に、都民の理解を得て見直しを行い、所得に応じて、区市町村民税非課税の方は千円、課税の方は二万五百十円の利用者負担をいただく仕組みとなっております。
 ご提案の内容が、区市町村民税課税の方の二万五百十円の利用者負担を引き下げるという趣旨であれば、そうした措置を実施する考えはございません。
 次に、医療制度についてでございますが、今回の医療制度の改正は、国民皆保険制度を堅持し、将来にわたり持続可能なものとしていくとともに、公平性の観点から、低所得者層に配慮した負担上限額を設定した上で、給付の適正化を図ったものであり、受診抑制というご指摘は当たらないと考えております。
 疾病の予防についても、検診、保健指導の重点化、効率化を図るとともに、医療保険者に対し、四十歳以上の被保険者への検診や保健指導を義務づけるなど、早期発見、早期治療への取り組みを強化したものでございます。
 次に、老人医療費助成制度についてでございますが、本制度など一連の経済給付的事業の見直しは、制度間の整合性や世代間の負担の公平性などの観点に立って、利用者本位の新しい福祉の実現を目指す福祉改革の一環として実施したものでございます。
 また、本制度は、平成十二年の都議会における議論を経た上で、七年間にわたる経過措置を設けて、平成十九年六月末をもって廃止することが既に決定されております。
 したがって、本制度の廃止を見直すつもりはございません。
 最後に、年金の少ない高齢者等に対する手当の創設についてでございますが、生活保護の対象とならない低所得者層に対して、基本的に自治体が担うべき役割は、経済給付を行うことではなく、個々人のより自立した生活の実現に向けて、具体的なサービスの充実を図ることでございます。
 こうした考えのもと、都においては、これまでも関係機関と連携した生活福祉資金等の貸し付けを行うほか、各種就労支援施策を実施しております。
 また、住民に身近な区市町村においても、各種生活相談を実施するなど、サービスがきめ細かく提供されていると考えております。
 今後とも、こうした施策を着実に進めていくことが重要であり、お話の手当を創設する考えはございません。
   〔総務局長大原正行君登壇〕

○総務局長(大原正行君) 都としての教員や消防士などの雇用拡大についてでございますが、都の職員採用は、事業執行に必要な人員の確保、職員の退職動向などを総合的に勘案して行っております。
 現在、都では、行財政改革実行プログラムに基づき、平成十九年度からの三年間で、四千人程度の職員定数の削減に取り組んでいるところでございます。
 今後とも、こうした内部努力を継続しつつ、事業動向などにも十分留意しながら、適切に職員採用を行ってまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、低家賃住宅の増設等についてでございますが、都内の住宅の数は世帯数を一割以上上回っており、さらに、将来的には人口減少社会の到来が見込まれております。こうした状況などを踏まえ、都営住宅については新規の建設を行わず、ストックを活用して、公平かつ的確に供給することとしており、低家賃の住宅を増設する考えはございません。
 また、家賃助成については、生活保護制度との関係や財政負担のあり方など多くの課題があることから、都として創設することは考えておりません。
 次に、外環に関する新聞報道についてでございますが、平成十九年一月六日付の日本経済新聞に、ご指摘のほかに、知事は、外環道や圏央道の整備でも、都の資金支援が選択肢の一つになるとの見解を示したという記事が掲載されております。
 次に、外環整備の財源についてでございますが、外環は、首都圏の交通渋滞の緩和や環境改善はもとより、都市再生に不可欠な路線でございます。
 また、外環は、全国的な高速自動車交通網を新たに形成する国土開発幹線自動車道の予定路線に位置づけられており、国がその責任において整備すべき路線でございます。
 最後に、都市計画審議会への付議についてでございますが、沿線の区長、市長からは、地下方式を採用した都市計画変更案に対して、同意または了承などの回答を得ております。
 その上で、都市計画変更後の事業化に当たり、ジャンクション部の整備計画や周辺環境との調和などについて、具体的な対策を講じるよう要望されております。
 都といたしましては、法に定める要件が整っていることから、速やかに三月の都市計画審議会の議を経て都市計画を定め、早期事業化が図られるよう、積極的に取り組んでまいります。
   〔百五番大山とも子君登壇〕

○百五番(大山とも子君) 知事の四男の肩書詐称の問題です。
 こんなめちゃくちゃなやり方がまかり通るのは、ワンダーサイトが知事のトップダウンで始められ、四男を重用してきた結果、起きている問題です。知事は延啓氏の肩書詐称問題について答える責任があります。問題があると考えないのですか。ご自身で答えてください。
 また、今、その名刺の作成は今村館長の判断で作成されたことが明らかにされました。今村館長は知事が登用した人物ではありませんか。知事自身、今村氏のとった態度についてどう思うのか、答える責任があります。
 知事、以上二点、明確に答弁してください。知事に再質問です。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) その件については、先ほど局長が答えたとおりでございます。
   〔発言する者多し〕

○六十七番(山加朱美君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会されることを望みます。

○議長(川島忠一君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君) ご異議なしと認め、さよう決定いたします。
 明日は、午後一時より会議を開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後七時五十四分散会

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