平成十九年東京都議会会議録第二号

   午後五時十一分開議

○副議長(木内良明君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百八番石井義修君。
   〔百八番石井義修君登壇〕

○百八番(石井義修君) 都議会公明党を代表し、知事並びに関係局長に質問いたします。
 今、我が国は十五年に及ぶ長期不況を乗り越えて、新しい時代を展望する一大転換点に立っております。
 国や他の自治体において明確なビジョンや長期政策が打ち出せない中、いち早く東京の長期戦略として「十年後の東京」の都市像を策定し、内外に向けて発信した知事の姿勢を高く評価するものであります。
 十五年不況の中で生じたさまざまな格差、また少子高齢の人口構造の地殻変動で生じた格差を粘り強く克服し、世界を席巻するグローバリゼーションの潮流の先頭に立つ、新しい二十一世紀のモデル都市東京をぜひともこの十年で実現したいものであります。石原知事の決意を率直に伺います。
 まず、知事の二期八年の実績について伺います。
 私は、都議会で、環境派議員として一貫してディーゼル排ガス対策を訴えてまいりました。ディーゼル排ガスに含まれる窒素酸化物、浮遊粒子状物質は、小児ぜんそく、アトピー性皮膚炎、これから始まる春の花粉症、肺がんの原因物質であるとともに、酸性雨となって森林を枯らし、コンクリート構造物を破損する原因物質でもあります。
 私は、今を去る十三年前、酸性雨被害の顕著な群馬県赤城山のシラカバ林、そして日光白根山のダケカンバ林の白骨死体のように枯死した現地調査写真をこの都議会本会議で掲げ、森林の酸性雨被害は、やがて人の命を枯らす地球の赤信号であると、繰り返しディーゼル排ガス対策を訴えてまいりましたが、鈴木知事はやりませんでした。青島知事も実現できませんでした。
 これに比べ、石原知事は、八都県市に拡大し、国に先駆けて見事に実現したのであります。命を守る公明党として、歴史の事実に照らし、高く評価するものであります。加えて、自動車大気汚染訴訟でも、健康被害の因果関係を認めようとはしない国に対し、公害被害者の患者の立場に立って闘う知事の姿勢は評価されるべきであります。
 また、行財政改革に取り組む知事の姿勢もぬきんでております。かつて都財政は、共産党、社会党主導の、経済原則を無視した美濃部都政の放漫財政によって破綻状況にありました。こうしたことから、私は都議会で二十六年間、一貫して都財政を立て直す行政改革の先頭に立って活動してきたのであります。退職不補充による都職員定数の削減、外郭団体の整理縮小、そして高額な役員報酬の大幅削減に取り組んでまいりました。
 ですから、知事の実績はよく理解できるのであります。知事就任時の平成十年度において、一千億円を超える赤字と一兆円を超える隠れ借金がありましたが、人、物、金の行政改革を断行し、十七年度決算で十六年ぶりに都財政を黒字に転換し、十九年度はさらに将来の財政需要に備え、九千二百億円の基金を積むまでになりました。加えて、公明党提案の複式簿記・発生主義会計の公会計制度を国や他の自治体に先駆けて実施したことも評価されるべきであります。
 この財政再建の成果が、あたかも税収増だけによってもたらされたものであるかのように批判する政党もありますが、明らかに誤りであります。
 二期八年を振り返り、知事の行財政改革の取り組みについて感想を伺います。
 「十年後の東京」に関連して伺います。
 第一に、「十年後の東京」を実現するには、行政だけではなく、企業や民間団体などの協力が不可欠であり、さらに首都圏の自治体やアジア諸都市との連携も重要であります。所見を伺います。
 第二に、災害に強い都市をつくり、首都東京の信用力を高める地震対策についてであります。
 今後十年で、学校、病院、百貨店等の民間建築物及び緊急輸送道路沿道の建築物を一〇〇%耐震化すると明言しております。さらに加えて、住宅を九〇%以上耐震化するために、木造住宅密集地域内の耐震化等を推進と書き込まれております。オリンピック開催の最大の課題の一つが地震対策であることを考えれば、これは断じて実現しなければならない目標であります。実現に至る道筋、施策展開、資金的裏づけについて具体的に伺います。
 第三に、世界に先駆けて超高齢社会の都市モデルを創造するとして述べている医療人材の育成についてであります。
 この後、質問でも述べるところでありますが、今日の決定的な医師、看護師不足を考えるとき、専門職大学院メディカルスクール構想は、従来の日本の医師養成システムを根本から変える構想であります。メディカルスクールの設置には、医師法など法改正が必要となりますが、首都大学東京を活用して優秀な医師の養成を行うなど、実現に向けた今後の具体的な取り組みについて伺います。
 第四に、公明党も昨年の予算特別委員会で提案しましたが、都は、新しい技術で世界をリードする産業都市をつくるとして、三環状道路整備により産業集積が進み、多摩地域における創造的な都市型産業を育成する多摩シリコンバレー構想を打ち出しております。そこで、多摩シリコンバレー構想の今後の展開について伺います。
 次に、十九年度予算について伺います。
 十九年度予算は、公明党の主張を大きく反映する予算として評価するものであります。
 第一は、投資的経費の単独事業は二年連続で一〇%以上を確保し、防災まちづくり、学校、病院、住宅の耐震化、環状道路、多摩南北道路整備、電線の地中化、集中豪雨対策としての中小河川改修、あかずの踏切立体化など、東京の都市再生と景気対策を兼ねた一石二鳥の予算となっていることであります。
 第二は、都でできる格差対策として、子育てと高齢対策、障害者自立支援、ニート、ひきこもり対策などに対応する福祉と保健の予算は、構成比、金額とも過去最高となっているのであります。
 特に、公明党が数多くの住民署名とともに、繰り返し知事に要請してきた中学三年生までの医療費助成制度について、財政力の弱い多摩の市町村にも特段の配慮をしつつ実施することであります。
 なお、この医療費助成制度について、共産党は、東京じゅうで、あたかも共産党が独自でやったような選挙宣伝をやっておりますが、これは明らかに誤りであります。財源を生み出す行革に真っ向から反対し、医療費助成を含む一般会計予算に反対する共産党に、みずからの実績という資格は全くないのであります。組み替え動議を出したとしても、それは説得力はないのであります。
 十九年度予算の評価できる第三は、十年後を展望しつつ、福祉・保健、地球温暖化、スポーツ・文化振興の三基金を積み立てて、東京の課題解決を目指す堅実な予算となっていることであります。
 なお、一年一年の予算執行によって世界に誇れる都市モデルを構築するためには、不安定な法人二税に依存する東京の税収構造を考え合わせれば、確実に毎年三%以上の経済成長が図られる景気・中小企業対策が不可欠であります。第一義的には国の経済政策によるところ大でありますが、こうしたことを含め、都における安定的な財源確保を図る財政基盤の強化に向けた知事の決意を伺います。
 また、都財政の中で負の遺産と位置づけられた四事業のうち、いまだ措置が講じられていない二つの事業、すなわち多摩都市モノレール事業と稲城大橋有料道路事業についても、財政支援など、早期に抜本的対策を講ずるべきではないかと考えます。見解を伺います。
 特に、多摩都市モノレールについては、横田基地の軍民共用化も視野に入れて検討すべき重要な交通インフラであり、その延伸が周辺地域からも強く求められていることを申し述べておきます。
 次に、高齢者対策について伺います。
 都内のひとり暮らしの高齢者は、平成十七年の国勢調査では約五十万人と増加し、高齢者人口に占めるひとり暮らしや高齢者夫婦のみで暮らす割合は五二・五%を占めていることがわかりました。また、二〇一五年には、七十五歳以上の後期高齢者のひとり暮らしの割合が三割に達すると予測されております。
 そのような中、療養病床の再編成への対応が重要になってまいります。国は、いわゆる社会的入院の是正を図るため、全国三十八万床ある療養病床について、患者の状態に合わせて介護施設などへの転換を図り、平成二十三年度末に十五万床にまで縮減しようとしております。
 ふえ続ける医療費の適正化を図るだけでなく、患者の立場からも社会的入院の是正は必要であり、そのためにも確実な受け皿の確保が求められております。病院から介護施設への転換には、当然改築や改修のための多額な設備費がかかり、さらに患者の一時退院など、移転先の確保が急務となります。
 国は、既存建物を取り壊して新たに整備する場合で、一ベッド当たり百二十万円の補助金を示していますが、これではいかにも低過ぎます。療養病床から介護老人保健施設への転換が円滑に進むよう、国の補助金に加え、入院患者の移転先の確保という視点から、事業者が都有地を種地として活用できるよう、積極的な転換支援策を実施すべきと考えます。所見を伺います。
 高齢者対策に関連して、シルバーパスについて伺います。
 これまで公明党は、シルバーパスが高齢者の社会参加、社会貢献活動には大変に効果的であると主張してまいりました。このシルバーパス制度を、高齢化が進む大都市に適した仕組みとして今後も維持していくことは、まことに重要であります。
 今般の税制改正においては、高齢者の課税対象額が引き下げられ、収入が変わらないのにもかかわらず、多くの高齢者が、千円ではなく二万五百十円のパスを購入しなければならなくなる事態が発生し、公明党は負担拡大について配慮するよう都に対して要望を重ねてまいりました。
 この要請を踏まえ、今年度、都が、税制改正の影響を受けた人の負担額について、激変緩和の観点から経過措置を設けたことを評価するものであります。高齢者の社会参加をさらに進めていくためにも、激変緩和の経過措置を十九年度も継続すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、中小病院の看護師不足問題について伺います。
 現在、病院の看護師不足が大きな社会問題になっております。その背景には、昨年四月に行われた医療報酬の改定があります。従来の入院患者十人に対し看護師一人という配置基準が改められ、患者七人に対し看護師一人という新基準が設けられました。そのため、看護師をふやせば大幅に増収になる大学病院などが看護師募集を大々的に行い、民間病院からの引き抜きや新卒看護師の青田刈りを行っております。
 公明党にも、地域医療を支える民間の中小病院で看護師の確保が困難をきわめ、病院経営が危機に陥っているという悲鳴にも似た声がたくさん寄せられております。
 そこで、まずこうした看護師不足問題についての都の認識と、今後の需給見通しを含めた対応策について伺います。
 また、看護師不足の主な原因の一つに、特殊な勤務形態や、結婚や出産等による高い離職率が挙げられます。少子化に伴い、新規の看護師養成の大幅な増加は見込めないことから、新人看護師の早期離職を防止し、定着対策に力を入れることが重要であります。こうした中小病院が取り組む課題に対して、都として積極的に支援していくべきであります。見解を伺います。
 さらに、これまで以上に看護師を確保していくには、全国で五十五万人いるといわれている潜在看護師の掘り起こしと活用が最重要課題であります。都は現在、東京都ナースプラザで、再就職に向けた研修や就業あっせんを区部と多摩の二カ所で行っております。しかし、現在働いていない潜在看護師は、子育てなどのさまざまな事情により、居住地から離れ、遠いところまで研修に行くことは困難であります。こうした状況を踏まえると、研修と就業あっせんが都内二カ所では全く不十分であります。
 都として潜在看護師の再就業を促進していくためには、身近な地域で研修を受けることができるよう、大幅に研修事業を拡大すべきであります。所見を伺います。
 次に、多重債務者対策について伺います。
 いわゆる多重債務の問題は、第一義的には、借りた本人に責任があるわけでありますが、貸し手側の執拗な督促や強硬な取り立てによる自殺や家庭崩壊など、多重債務者本人と家族、親族に大きな影響を与え、深刻な社会問題となっております。
 公明党は、早くからこの問題を取り上げ、平成十五年の第一回定例会において、借り手側が自殺や家庭崩壊に追い込まれないよう、都庁において、休日、夜間でも相談を受ける貸金被害受付ダイヤルの設置、弁護士や司法書士などの専門家による貸金被害無料法律相談の設置を訴え、貸金被害受付ダイヤルは平成十五年四月から、貸金被害無料法律相談は平成十五年十月から、全国に先駆けて実施されることになりました。
 そこでまず、この貸金被害受付ダイヤル、貸金被害無料法律相談の現在に至るまでの成果について伺います。
 また、多重債務に陥った要因の一つは、出資法の上限金利二九・二%と利息制限法の上限金利との間の、いわゆるグレーゾーン金利による安易で過剰な貸し付けであるといえます。
 昨年十二月の貸金業規制法等の改正で、グレーゾーン金利や借り手の返済能力を超える貸し付けがようやく是正されることになりました。しかし、現状では、事業の資金繰りや生活費の補てん等、やむを得ない理由をきっかけに多重債務に陥り、苦しんでいる人が多数いるのが実態であります。
 このたび、都がこのような生活困難者に対し、救いの手を差し伸べる多重債務者生活再生事業を来年度から創設することは、大いに評価するものであります。多重債務者の生活再建に当たっては、弁護士など法律の専門家による債務圧縮などの任意整理、また自己破産や民事再生手続について、関係機関との緊密な連携が必要であります。さらに、この事業を利用してもらうためには、幅広く都民に対して周知を図る必要があると考えます。所見を伺います。
 次に、産業振興基本戦略について伺います。
 都は、「十年後の東京」が目指す都市像の実現を、産業振興の面から推進する産業振興基本戦略素案を発表しました。
 基本戦略では、健康、コンテンツ、航空機産業など、東京を牽引する産業を重点産業として位置づけ、育成していくこととしております。特に公明党が評価するのは、大都市の課題を解決する産業の育成を重点に取り上げていることであります。大都市特有の課題ともいうべき、健康、環境、危機管理の水準を維持し、ワンランク上に高める産業として育成するというものであります。
 これら各分野の産業は、将来的にも高い成長性が見込まれ、東京の強みを発揮し、そして都民生活の向上に直接かかわる重要な分野であります。健康関連産業についていえば、都内に数多くの大学病院など高度医療施設が存在し、全国の約三割の医療機器製造業の集積があります。また、環境関連産業の都内市場規模は、平成十二年の約五・三兆円が、十年後には一・六倍の八・四兆円になると予測されております。さらに、危機管理産業は、警備業や防犯設備機器製造業などの市場規模の伸びが高く、都民の安心へのニーズから、今後も高い成長が見込まれております。
 健康、環境、危機管理は、都民生活にとって切実な問題であります。これを解決する産業の育成について、中長期的視点に立った支援策を検討していくことはもちろん重要ですが、同時に、都民にとって喫緊の課題であることを考えると、早急な振興策、支援策の実施が肝要であります。今後の取り組みについて所見を伺います。
 次に、中小企業向けの公的な信用保証制度における責任共有制度について伺います。
 我が国経済は、戦後最長といわれたイザナギ景気を上回る回復基調が続いているとされておりますが、中小企業を取り巻く環境は依然として足踏みの状態であり、厳しい状況下に置かれております。
 このような中、国は信用補完制度の見直しを進めており、その一環として、本年十月から、信用保証協会の保証つき融資について、金融機関がその責任の二割を分担するという責任共有制度の導入を予定しております。
 この制度の目的は、信用保証協会と金融機関とが責任の共有を図り、中小企業の事業意欲などを継続的に把握し、融資の実行やその後の経営支援などを進めるというものであります。
 しかしながら、東京商工会議所を初め、経済団体や、日々の資金繰りに苦しむ中小企業経営者の間からは、この制度が導入されることで、金利の上昇や貸し渋りが頻発するのではないかと、不安、懸念の声が上がっております。都は、こうした現場からの声を真摯に受けとめ、経営基盤の脆弱な中小企業に対する資金繰りなどの金融支援策を拡充、充実すべきであります。所見を伺います。
 次に、中小企業支援に関連して、水道料金の減免について伺います。
 都はこれまで、都議会の決議にこたえ、都独自に、生活弱者や社会福祉法人、加えて水道の大量消費を必要とする公衆浴場やメッキ、皮革関連企業などに対し、減免措置を講じてきたところであります。
 原油高騰など、零細企業への逆風が続いている現状を考慮し、東京水道経営プラン二〇〇七の計画期間である今後三カ年においても、都は減免措置を引き続き継続すべきであります。所見を伺います。
 同様に、下水道局についても所見を伺います。
 あわせて、この際伺います。ことしは水源地に雪が降りませんが、夏の水は大丈夫なのか、見通しを伺います。
 次に、雇用対策について伺います。
 約六百八十万人といわれる団塊世代の大量退職が始まり、二〇〇七年問題が現実のものとなっております。団塊世代の活用について、公明党は昨年の第四回定例会で、大手企業などで長年働き、マーケティングなどの専門分野で秀でた人材や高い水準の技術者などを中小企業で活用すべきと提案を行ってまいりました。
 このように専門分野を生かして働きたい人がいる一方で、これまでに経験した分野とは異なる分野での再就職を希望する人も多くおります。また、一般的に、団塊世代はパソコンなどITを活用する能力が不足しているといわれております。それらの科目の職業訓練ニーズも高いようであります。そこで、団塊世代の再就職をさらに円滑に進めるため、こうしたさまざまなニーズに対応した職業訓練を充実させるべきと考えますが、見解を伺います。
 ところで、団塊世代を含めた高齢者が活躍できる分野は、企業への再就職だけではなく、NPOやボランティア活動、シルバー人材センターでの就労、就農、起業、創業など多様であります。昨年十二月に発表された都民生活に関する世論調査でも、五十代、六十代の約二割の人が、企業への再就職以外のいろいろな働き方を希望しております。
 その中でも、身近な地域で働きたいというニーズにこたえるシルバー人材センターは、地域における高齢者就業の受け皿として大きな役割を果たしております。しかしながら、経験や能力を生かしたい、地域へ貢献したいなどの意欲を持っている人に新たな会員になってもらうためには、より魅力あるシルバー人材センターへとステップアップしていく必要があります。
 そこで、団塊世代に対する就業機会を確保するため、職域の拡大や就業の場の拡大を図るシルバー人材センターの取り組みに対して支援を強化すべきと考えます。見解を伺います。
 団塊世代の大量退職について、多くの中小企業は、人材の確保や育成の面で強い危機感を持っています。国の調査では、二〇〇七年問題に対して、全体では約三割の企業が、また製造業については約四割の企業が危機感を持っております。
 こうした中で、技術、技能を引き継ぐべき若者のものづくり離れ、技能離れは深刻であり、国のものづくり白書によると、平成十六年に新規学卒者が製造業へ就職した割合は約一八%と、十年前から約九ポイントも下がってきています。
 都は、技術専門校を再編の上、職業能力開発センターを設置し、中小企業の人材育成や確保に対する支援を強化する方針を打ち出しています。そこで、若者を初めとして、より広くものづくりを体験する機会を提供すべきであります。見解を伺います。
 次に、商店街の人材育成と活用策について伺います。
 少子高齢社会が進む中、子どもたちや高齢者が安心して生活できる地域コミュニティを維持していくことが喫緊の課題であります。中でも商店街は、地域のコミュニティの中核として役割を担っており、とりわけ地域の中で活動を担う若手人材の育成こそが、商店街の活性化のみならず、今後の地域力向上という視点から重要と考えます。
 都は、公明党の提案を受け、商店街の活性化を人材育成の面から支援する進め若手商人育成事業を実施してきました。この取り組みにより、商店街から有為な人材が輩出されるとともに、若手商人同士のネットワークが進んでいることも大いに評価できるのであります。
 こうした人材のネットワークは地域の宝となっておりますが、要は、単なる商店街の活動にとどまるのではなく、地域社会の福祉、環境、安全・安心、教育など、さまざまな分野で活躍することが期待されるところであります。この際、地域コミュニティのかなめとなる人材の育成を図る観点から、この進め若手商人育成事業の中に、地域に貢献する人材育成のカリキュラムを加えるべきと考えます。所見を伺います。
 また、改正まちづくり三法とのかかわりを考えると、商店街は、これまで以上に積極的にまちづくりに参画していくことが必要であります。都内の多くの地域では、活性化に向けてさまざまな課題を抱えており、商店街が中心となってその解決に取り組んでいくことが求められております。こうした課題解決には、進め若手商人育成事業でともに学んだ人たちが、互いの経験を共有しつつ、幅広い連携のもとで事業に取り組むことが極めて効果的であります。
 また、多くの経験を積んだ若手商人が新たな若手を指導するような仕組みをつくることで、こうした活動の輪が一層大きくなることが期待されるのであります。
 都は、今後若手人材のネットワーク化を図り、地域コミュニティ再生のリーダー役として活用する支援策を検討すべきと考えます。所見を伺います。
 次に、治安対策について伺います。
 今月十二日午後、東武東上線の線路内に入って、女性を助けようとして警視庁板橋署常盤台交番の宮本邦彦巡査部長が殉職されました。強い正義感と身の危険をも顧みず職責を全うしようとした命をかけたとうとい行動をたたえますとともに、心からご冥福をお祈り申し上げます。
 さて、昨年十二月に発表された都民生活に関する世論調査によりますと、都民要望が一番強いのは治安対策であります。安全神話の陰りが指摘されて久しい中、行政、警察、地域社会の努力により、昨年は刑法犯認知件数が減少、また検挙率も七年ぶりに三〇%台を回復するなど、統計的には治安の悪化傾向に歯どめがかかってまいりました。
 しかし、都民世論は、依然として治安対策に不安を持ち、治安対策の強化を望んでおります。この状況は、まさに都民が肌で感じる体感治安はまだまだ改善されていないということであります。
 そこでまず、警視庁における平成十九年の都民の体感治安を向上させるための施策について伺います。特に、都民との接点となる交番の問題、いわゆる空き交番対策、そして警察官によるパトロールの実施、これらの対策こそ都民の体感治安につながるとの意見が多く、この取り組みに力を入れていくべきであります。所見を伺います。
 次に、青少年治安対策について伺います。
 最近の犯罪の傾向を見ると、子どもや高齢者など社会的弱者を対象とした犯罪が増加しており、社会的な不安材料となっております。特に子どもが犯罪に巻き込まれる痛ましい事件の報道に接するたびに、暗たんたる気持ちになります。
 昨年夏、内閣府が公表した子どもの防犯に関する特別調査では、七割以上の人が身近にいる子どもが犯罪に巻き込まれる不安を感じていると回答しています。都においてもさまざまな取り組みを行ってきましたが、これまでの取り組みではカバーし切れない学校や地域での安全対策など、将来ある子どもの安全を確保する取り組みをさらに充実強化していくことは、喫緊の課題であります。
 子ども安全ボランティア団体のネットワーク化の推進、地域住民と警察、そして行政との連携強化など、万全を期すべきであります。断じて子どもたちを犠牲にさせない今後の取り組みを伺います。
 次に、青少年育成の具体策について伺います。
 第一は、都が先月三十日に設置した子ども・若者問題対策会議のあり方についてであります。
 いじめ問題一つを例にとっても、学校、家庭、地域などさまざまな要素が複雑に絡み合っているだけに、全庁横断的な組織である対策会議の設置は、従来の縦割り組織の限界を打ち破ることができるものと期待をしているところであります。
 そこで、対策会議は、各局との連携や情報共有だけにとどまることなく、迫力のある有効な施策や将来展望などを積極的に発信し、統合的かつ本格的な施策構築への端緒を開く役割を担うべきであります。見解を伺います。
 第二は、地域における青少年育成活動の推進についてであります。
 現在、地域では、若い世代育成の観点から、各種スポーツチーム、青少年健全育成事業、社会教育活動、さらには、心の東京革命の一環として展開されている大江戸舞祭りなどが展開されております。私は、次世代の人づくりの視点から、地域住民と一体となった活動や身体全体で学ぶ生きた学習の有効性に注目しております。
 長年にわたって活動を支えている各種分野の人たちに聞くと、活動に参加している青少年は、非行、いじめなどの問題行動が非常に少なく、社会に出てからも、他人への配慮、互助意識、ボランティア精神などが生かされているといいます。
 そこで、地域で展開されているこうした活動の有効性に改めて光を当て、活動をバックアップする全庁横断的な青少年育成人材バンクの創設や、幅広い支援策の充実強化など、都としても強力な支援体制を再構築すべきであります。見解を伺います。
 次に、地球温暖化対策とアジア貢献について伺います。
 アメリカの国立研究所の調査では、中国のCO2の排出量は、二〇〇三年時点で日本の四倍近くに達し、EUの旧加盟国十五カ国の合計をも超えております。間もなくアメリカを抜き、断トツの一位となるでありましょう。
 中国の環境問題は、既に深刻化している大気汚染と砂漠化の拡大に代表されるように、深刻かつ国際的な問題であります。と同時に、中国に代表される東アジア諸国の経済発展と環境保全の両立は、近い将来に工業化の進展が予想されるインドや南米、アフリカ諸国の今後の進路にも直接的な影響を及ぼすという点で、まさに地球環境の将来を左右するかぎといえます。
 一方、東京は世界に先駆け深刻な公害問題を経験してきましたが、大気汚染対策、水質汚濁対策に加え、知事のリーダーシップのもと、八都県市でディーゼル排ガス規制を実施するなど多くの実績を上げてきております。
 知事は、「十年後の東京」プランの中で、すぐれた民間技術を活用して世界で最も環境負荷の少ない都市モデルを実現し、その成果をアジアなどの世界に発信、還元していくとしております。
 また、安全でおいしい東京の水道水は、世界に誇れる技術水準であります。現にイスタンブール市が実施した世界主要十三都市における調査では、水道管理における行政能力、充足度及び効率性で東京が第一位に輝き、水道局の各施設には、毎年中国を含む世界各国から研修生が訪れております。
 このように、都のすぐれた環境技術に加えて、現在進めている環境負荷の少ない交通システムへの取り組みなど、都の持っているすべての環境技術を、これを求めるアジアの主要都市へ技術移転し、また技術提携し、さらに共同開発、技術職員の研修交流などを推進していく効果ははかり知れません。
 昨年五月、知事は、ロンドン市との間で実務的な政策提携を実現させました。同様に、東京は環境を主要テーマとして、環境問題では多くの課題を抱える北京を初めとするアジア諸都市とも連携、協力し、都庁の総力を挙げて、環境面での貢献を積極的に展開すべきであると提案するものであります。
 アジアの環境問題に関する所見と、これに対する東京の使命、役割、貢献について知事の所見を伺います。
 また、この際、十年後のオリンピック東京開催も念頭に置きながら、知事ご自身が北京を訪れ、環境面での技術支援、交流、貢献について率直に話し合ってはいかがでしょうか。必要とあれば私たち公明党も大いにお手伝いをさせていただきます。さらに、その折に、北京とのさまざまな交流事業の活性化についても話し合うべきと考えます。知事の所見を伺います。
 なお、今の質問と関連いたしますが、仄聞するところによれば、東京水道の技術力の高さへの取り組みが評価され、水道サービスの国際規格の確立を目指すISOの専門委員会の総会が、この秋、日本で開催されると聞いております。都は、この機会に世界に誇る漏水防止技術の普及や研修生枠の拡大など、水道技術を通してアジア諸国等への貢献策を一層充実させるべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、産業廃棄物対策について伺います。
 平成十四年度の予算特別委員会において、公明党は、産業廃棄物の不法投棄が大きな社会問題となったことを受け、不法投棄に対する強固な監視体制、いわゆる産廃Gメンを設置し、不法投棄を撲滅する取り組みを強化するよう提案いたしました。以後、都における新たに設けられた産廃Gメンによって広域的な監視活動や違反者に対する迅速な行政処分を実施するなど、大きな効果が上がっていると聞いております。
 しかし、依然として都内を初め近隣自治体では、一部の業者による不法投棄が行われております。都内で排出される産業廃棄物は、その約八割が処分先を他県に依存しております。
 また、不法投棄される産業廃棄物は、瓦れきや木くずなどの建設廃棄物が占める割合が高く、今後、より効果的に不法投棄対策を進めるには、建設廃棄物に重点を絞ることや、不法投棄された後の事後的な取り締まりだけではなく、廃棄物が発生する段階にまでさかのぼって監視活動を強化するなど、多角的な対策を講じていく必要があると考えます。所見を伺います。
 また、産業廃棄物の適正処理をさらに推進していくためには、規制を強化するとともに、実際に処理を担う産業廃棄物処理業界の健全な育成、発展が重要であります。このため、公明党は早くから、優良な処理業者を表彰したり評価する制度を創設するよう、都に強く要請してまいりました。
 都は、昨年九月改定した東京都廃棄物処理計画において、法令で定められた義務以上にすぐれた取り組みを行っている処理業者を第三者が評価する仕組みを導入することを掲げております。そこで、新たな制度の構築に当たっては、このように法を遵守し、懸命に努力しているすぐれた処理業者が市場の中で正当に評価され、業界全体の底上げが図られる仕組みとすべきであります。明快な所見を伺います。
 次に、総合駐車場対策について伺います。
 昨年六月から実施された違法駐車対策によって、主要幹線道路の車両の運行がスムーズになり、交通事故も減少傾向にあると報道されております。しかしながら、一方で、陸上貨物輸送を生業としているトラック協会に所属する運送業者の方々や中小事業者にとって、この規制への対応は並大抵でないことも事実であります。
 公明党は、これまで二度にわたり本会議で対応策を求めてまいりました。都としても前向きに取り組んでいることを評価しつつ、三度目の質問をいたします。
 まず、都として荷さばき場の設置のため都有地の有効活用を進めるとともに、都内の区市などにも荷さばき場の設置を強く働きかけているところでありますが、さらに加えて新設のマンション、商業施設、公共施設等でも荷さばき施設の設置を促進すべきであります。所見を伺います。
 また、警視庁においては、地域の駐車実態や都民要望などを正確に把握し、駐車規制の見直しや貨物車用パーキングのさらなる設置、拡大に努めるよう強く要望するものであります。
 次に、住宅等の耐震化について伺います。
 昨年の第四回定例会において、東京都住宅基本条例が約十五年ぶりに全面改正されたのに続き、先月には、この条例に基づく新たな住宅マスタープランの素案が発表されました。素案には、十年後の東京を見据え、成熟した都市にふさわしい豊かな住生活の実現を目指して、今後十年間に取り組むべき目標と施策が具体的に掲げられております。
 マスタープランの素案では、住まいの安全・安心の確保を今後十年間の住宅政策において特に重視する視点として、既存住宅の耐震化を重点施策に位置づけております。
 先月公表された東京都地域防災計画の素案では、首都直下地震による想定死者数を十年以内に半減させるなどの減災目標が初めて掲げられたのであります。
 そのような中、都内に約二十二万戸ある新耐震基準導入以前につくられたマンションについては、耐震診断等の実施に当たって、多数の区分所有者の合意形成が必要であることに加え、マンション業者の中には、耐震強度不足の発覚を恐れ、マンション住民の話し合いに応じない事例も見られるのであります。
 集合住宅耐震化の促進には、戸建て住宅以上の困難が伴うのであります。都は、今年度、マンションの耐震診断助成を開始しましたが、一層の耐震化の促進に向けた取り組みの強化を図るべきと考えます。見解を伺います。
 なお、都民の生命と財産を守るという観点からは、消防署等の耐震化も重要であります。特に、有事の際に命をかけて活動してくださる消防団の分団本部、防災資機材格納庫の一〇〇%耐震化も実現すべきであります。あわせて、女性消防団員のための手洗いも一〇〇%完備すべきであります。所見を伺います。
 また、関連して水道の耐震対策について伺います。
 水道局では、管路の耐震化を積極的に進めており、その努力を評価するところであります。昨年、中央防災会議は、マグニチュード七・三の東京湾北部地震が発災した場合の被害想定を発表しております。
 東京二十三区の上水道断水率は四六・三%、特に私の地元墨田区を含む東京東部九区のダメージは大きく、これを踏まえた地域防災計画の素案が発表されたところであります。震災時においても、医療機関、災害拠点病院を初めとする重要施設への給水は大丈夫なのか、重要施設への耐震化の具体的な内容と耐震化スケジュールについて伺います。
 次に、景観行政について伺います。
 景観計画及び新たな住宅マスタープランの策定を契機として東京を諸外国に負けない魅力ある景観を備えたまちにしていくことは重要であります。これは、オリンピック招致にも欠かせない東京の大きな課題でもあります。都も、いよいよ思い切った景観規制に踏み込むとしており、評価するものであります。
 特に、違反広告物への対応も着実に進めるべきであります。東京マラソンでは、東京の街並みが広く映し出されることになり、オリンピック招致への大きなステップともなります。
 そこで、東京の景観を乱す大きな原因となっている違反広告物や捨て看への対策もさらに強化すべきであります。所見を伺います。
 最後に、多摩の道路整備に関連して伺います。
 「十年後の東京」でも、道路の持つ多様な機能を発揮するとして、歩道拡幅と無電柱化でゆとり空間を創出すると、道路づくりの方向性が前向きに示されております。
 そこで、具体的に伺います。福生市熊川地区の横田基地わきを走る五日市街道は、片側一車線であるために、二十四時間三百六十五日、慢性渋滞が続いています。中でも、拝島駅前、国道一六号と交差する地点から立川市方面に向かう約四百メートルは、歩道が片側しか整備されていないために、近隣住民は常に危険と隣り合わせで暮らしております。その上、五日市街道の抜け道として一般住宅の生活道路に通過車両が容赦なく入ってくるために、大混乱に拍車がかかっています。ここには学童通学路もあり、早急な歩道整備を含めた本道路の整備を近隣住民が求めております。
 横田基地の軍民共用化政策を進めるために、まず基地周辺のアクセス道路の整備、そして市民の安全のための歩道整備は喫緊の課題であります。常に空港の騒音に悩まされ続けている近隣住民の心情を考慮するとき、一日も早い対応をすべきであります。所見を伺います。
 多摩の道路整備に関連して、もう一点伺います。
 国分寺市を走る都道一三四号線、通称連雀通りは、歩道が整備されていない箇所もあるために、車と歩行者の接触事故が発生する事件が頻発しております。
 特に、西武多摩湖線と交差する踏切部分は歩道が狭く、近くの市立第三小学校への学童通学路にもなっているところから、雨の日には児童生徒は通行車両の多い車道部分にはみ出して歩行するため、傘がトラックの風圧で引っ張られる危険な状態が続いております。 先日、私は、地元住民代表及びこの問題に懸命に取り組む市議会議員と、署名簿を添えて、長年の悲願である連雀通りの歩道整備を強く要請したところであります。改めて局長の所見を伺います。
 千里の道も一歩からといいます。十年後に世界に誇れるモデル都市東京を目指すためには、まず、こうした足元の一つ一つの住民要望に適切にこたえながら前進することが地方自治の要諦であると申し上げ、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 石井義修議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、二十一世紀のモデル都市東京の実現についてでありますが、文明の衝突ともいうべき今日の国際情勢と経済のグローバリズムのうねりが重なっている中で、大都市の力による新しい文明秩序の創造が期待されていると思います。
 そうした認識のもとで、これまで羽田空港の再拡張や外環道の整備凍結解除など、都市再生のインフラにおける突破口を開くとともに、ディーゼル車排出ガス規制を初めとする先進的な環境対策や、首都大学東京の開学などの教育改革など、国に先駆けたさまざまな分野で改革を進めてきたつもりでございます。
 今回策定しました「十年後の東京」は、これまでの八年にわたる実績を踏まえまして、具体的で現実性のある二十一世紀の東京の近未来図である思っております。
 例えば、世界で最も環境の負荷の少ない都市を目指しまして、CO2の排出を大幅に削減するとか、カーボンマイナス東京十年プロジェクトと称しておりますけれども、これを東京全体で展開していきたいと思っておりますし、三環状道路の整備などによって交通渋滞を解消し、そこから生じる都市空間のゆとりを生かして、東京における集中、集積を十分に都民にも満喫していただけるような、だれもがこのまちを住みながら楽しめるユニバーサルデザインのまちづくりも推進していくこと、あるいは、意欲のあるだれもがチャレンジできる社会とするため、学び直しを可能とする奨学金制度の導入や、複線的な人材育成ルートを構築することなど、これまでの先進的な改革をさらに加速させていきたいと思っております。
 ご指摘の、認識を改めましたが、五十万人もいる潜在的な働いていない看護師さんの活用などは、策を講じればできることと思います。
 東京をさらに高いレベルの成熟した都市としていくために、東京が今後十年にわたり展開していく先進的な取り組みを、二十一世紀の新しい都市モデルにまで高め、アジアを初めとする全世界に発信していきたいと思っております。
 これまでの行政改革の取り組みについてでありますが、八年前、都財政の現況を私なりに調査し、この庁舎にやってきましたが、職員から説明を聞くにつれ、思わずため息が出たのを覚えております。
 しかし、同時に、行財政改革、とりわけ財政再建が絶対に必要であるとの思いを改めて強く抱きました。全国でも最も厳しかった職員の給与カットや定数削減などで歳費を切り詰めるとともに、徴税努力など歳入の確保にも努めたことで、今は完全な回復を果たすことができたと考えております。
 これは決して私一人の努力などの結果でなくて、都庁の職員、そして議会とスクラムがかたく組まれたその結果の成果だと思っております。
 また、会計制度そのものを変えることが不可欠であると痛感しました。今年度から発生主義に基づく新しい複式簿記を稼働させましたが、これは、将来、役所と役人の体質を一変させるような改革を必ずもたらすことになると思っております。
 振り返ってみれば、厳しい道のりでありましたが、ここまでたどり着くことができたのは、都民、都議会、職員を初めとする関係者のご理解、協力の賜物だったと感謝しております。
 今後、行財政改革を継続させながら、この成果を目に見える形で都民に還元していくことが責務であると考えております。
 次いで、景気対策と財政基盤の強化についてでありますが、いつも申しているように、東京は日本の心臓部であり、頭脳部でありまして、環状道路、空港、港湾などへの投資が我が国経済にもたらす波及効果は、極めて他の自治体に比べて非常に大きいものがあると思います。我が国経済の活性化のためにも、議員のご指摘には重要な視点が含まれていると思います。
 東京ひとり勝ち論が喧伝されて、東京の財源を吸い上げようとする動きが強まっておりますが、東京での財源確保と継続的な投資の必要性を引き続き国に訴えていきたいと思っております。そのためにも、地場産業から上がる税収も貴重な財源でありまして、大型の投資だけでなく、企業業績の向上に直接結びつくような、中小企業への幅の広い多角的な支援策も不可欠であると認識しております。
 アジアの環境問題と東京都の役割でありますが、アジアの諸都市においては、人口とエネルギーの使用量の爆発的な増加によりまして、公害問題が深刻化するとともに、二酸化炭素排出量の激増によりまして、地球環境全体にも巨大な影響を与え始めております。
 先日、かつて宇宙飛行士として宇宙を飛んだ毛利さんから、大分前のことでありましょうが、宇宙船から眺めた日本近辺の海とか大気の汚染の状況というものを聞いてぞっといたしましたが、東京は、都市成長の過程において幾多の環境汚染を克服してきた経験を持っております。また、二酸化炭素の大幅な削減という最重要の環境課題への挑戦も開始しております。
 こうした取り組みの成果をアジアの諸都市に発信することは、東京が地球の未来のために果たし得る最大の貢献の一つであると思っております。効果的な貢献を行う上では、東京の企業の有する高い環境技術をアジアの諸都市のニーズに的確に適合させることが重要であると思います。
 また、東京が出資をして始めました大都市ネットワークもそのために有効な会合であると思っております。このため、発展途上国での環境プロジェクトにも豊富な経験を持つ国際協力銀行との連携も進めるように指示をいたしました。今後、その協力も得まして、アジアの環境問題の解決に積極的に貢献していきたいと思っております。
 次いで、北京との交流についてでありますが、世界は今、近代、現代を通じての西欧文明による世界支配がようやく終わりを告げまして、新しいアジアの時代の幕開けを迎えようとしていると思っております。
 北京に関しましては、既にある筋から中国在日大使からのアプローチもございまして、会って、率直な話、意見も交換したいと思っておりますが、こうした中、北京を初めアジアの諸都市とさまざまな分野で連携することは極めて重要であると思っております。
 二十年ぶりにアジアで開催される北京オリンピックの成功には期待もしておりまして、特にスポーツ交流は時宜にかなったものと考えております。
 そのため、ことし八月には東京でジュニアスポーツアジア大会交流大会を開催することとしておりまして、北京にも参加を呼びかけております。また、同じ八月に北京で開かれる日中友好交流都市小学生卓球大会には、東京からも選手を送ることとしております。
 こうしたスポーツ交流を初め、東京版スポーツODAの展開によりまして、スポーツ振興の先導的な役割を果たすなど、アジアとの連携をさらに深め、東京へのオリンピック招致につなげていきたいと思っております。
 他の質問については、警視総監及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監伊藤哲朗君登壇〕

○警視総監(伊藤哲朗君) 治安対策についてお答えいたします。
 初めに、体感治安を向上させていくための施策についてでありますが、警視庁では、平成十五年から総力を挙げて犯罪抑止対策に取り組んでいるところであり、特に強盗、侵入窃盗、ひったくりなど、都民の日常生活に大きな不安を与える犯罪を指定重点犯罪として、防犯、検挙の両面から集中的に抑止対策を行ってまいりました。
 その結果、指定重点犯罪の発生は年々減少しており、昨年も前年より約一四%減少いたしました。また、検挙件数につきましては、約一八%増加し、これらの罪種については検挙率も約六七%となるなど、着実に成果を上げることができたところであります。
 本年は、近年、子どもが被害者となる犯罪が多発し、都民、国民に大きな不安を与えていることから、指定重点犯罪に子どもに対する犯罪を新たに加え、その抑止に努めることとしたところであります。
 また、都民の体感治安の向上のためには、重要凶悪事件の検挙を初め、暴力団、来日外国人による犯罪の厳正な取り締まりや少年非行の防止も重要であることから、これらについても警視庁の重点目標に掲げ、諸対策を強力に推進してまいります。
 また、防犯面では、防犯ボランティア団体を初めとする地域の防犯活動への支援や犯罪に強い環境づくりを推進し、都民の体感治安の向上に努めてまいります。
 次に、空き交番対策及び警察官によるパトロールについてでありますが、交番は、警察官がパトロール活動を行う拠点である一方、地域の方々のさまざまな要望、相談、届け出等の窓口としての機能を果たしていくことが重要であると考えております。
 国民、都民の意識調査でも、もっとパトロールをしてほしい、いつも交番にいてほしいといった強い要望があります。当庁といたしましては、こうした点を踏まえ、パトロール活動と交番での在所警戒活動をバランスよく行うことができるよう、全庁的な交番の配置見直しを行い、交番機能の一層の強化に努めているところであります。
 具体的には、配置見直しの対象となっている交番を隣接の交番と統合し、パトロール活動と交番での在所警戒活動をともに充実させることにより、街頭警察活動の強化を図ることといたしております。
 また、廃止される交番についても、その大部分を地域安全センターとして存続させ、警察官OBの地域安全サポーターを配置することにより、地域警察官との効果的連携を図り、これまで以上にその地域の実態に即したきめ細かな地域警察活動を実施することとしております。
 こうした対策により、都民の体感治安の向上に努めてまいりたいと考えております。
 最後に、このたび、みずからの身命を賭して都民の生命、身体を守ろうとした板橋警察署宮本巡査部長が、回復への願いかなわず殉職されたことは、まことに痛恨のきわみであります。直ちに警視庁警部へ二階級特進の措置をとり、その多大な功績をたたえたところであります。
 これまで、地元住民の方々を初め、都民、国民の皆様から故宮本警部の回復を祈るたくさんの手紙や励ましのお言葉をいただきました。
 また、本日は知事並びに都議会の皆様方からまことにご懇篤なる弔辞を賜りました。
 私どもは、職に殉じた故宮本警部のとうとい行為に報いるためにも、都民、国民の安全を守るべく、職務に全力を傾注し、故人の遺志にこたえてまいる所存でございます。警視庁の全職員を代表いたしまして、心から御礼を申し上げます。
   〔知事本局長山口一久君登壇〕

○知事本局長(山口一久君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、「十年後の東京」の実現に向けたさまざまな主体との連携についてでありますが、東京には多彩な人材や膨大な数の企業、NPOなど社会的課題の解決に取り組む多様な主体が集積しております。
 「十年後の東京」を確実に実現するためには、行政の率先行動だけではなく、こうした都民、企業等の協働により、美しい都市景観の創出や緑化の推進など、東京全体で広範なムーブメントを巻き起こしていくことが必要であります。
 また、八都県市首脳会議等を通じ、首都圏が直面する環境、防災など広域的課題に取り組んでまいります。
 さらには、アジア大都市ネットワーク21を活用した環境問題の解決や新たな産業技術開発、東京版スポーツODAなどの展開によりまして、アジアとの連帯、連携を深めてまいります。
 次に、専門職大学院メディカルスクールについてでございますが、社会的なニーズに的確に対応できる、高度かつ専門的な職業能力を持つ実務家養成が人材育成の世界的な流れとなっておりまして、我が国においても法科大学院を初めとする各分野の専門職大学院の設置が相次いでおります。医師養成につきましても、こうした観点から検討する意義は大変大きいと認識しております。
 医療の質が問われるようになった今日、医師養成の複線型ルートを構築しまして、現場重視の教育により、臨床能力にすぐれた医師を養成するため、メディカルスクールの創設に向けた検討はぜひとも必要であります。
 しかし、ご指摘にありましたとおり、実現のためには医師法の改正などの課題があり、国や医療界の理解、協力が不可欠でございます。
 今後、まず外部専門家を交えた検討会の設置等を行い、教育内容や実現手法などについて、お話の趣旨も踏まえまして、幅広い議論を行うとともに、医師養成のあり方に関する世論を喚起してまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、「十年後の東京」における耐震化の目標を実現するための方策についてでございますが、耐震化の目標を達成するためには、公共建築物の着実な耐震化はもとより、民間の建物所有者が主体的に耐震化に取り組むことが不可欠でございます。
 都といたしましては、適切な情報提供や技術的支援を行うとともに、公共的な観点から必要がある場合には、助成制度等も活用し、民間の住宅や建築物の耐震化をより一層促進してまいります。
 区市町村に対しては、都の計画を踏まえた耐震改修促進計画を策定するよう要請するとともに、地域のまちづくりとも連携して、全力で目標を達成してまいります。
 また、必要な財源については、国の補助制度等を積極的に活用するなど、その確保に努めてまいります。
 次に、荷さばき施設の設置の促進についてでございますが、一定規模以上の商業施設や公共施設などについては、既に駐車場整備地区等において荷さばき駐車施設の附置を義務づけております。
 マンションについては、都はこれまで、総合設計制度を初めとする都市開発諸制度を活用する場合などには、荷さばきのための駐車スペースを設置するよう事業者に対して働きかけてまいりました。
 さらに、本年一月には総合駐車対策マニュアルを作成し、開発事業者に対して計画段階から荷さばき駐車施設の設置を検討するよう求めております。
 引き続き、ご提案の趣旨を踏まえ、区市町村とも連携し、荷さばき駐車施設の設置の促進に努めてまいります。
 次に、マンションの耐震化についてでございますが、マンションは多数の区分所有者による共同住宅であることから、耐震診断等の実施に当たっては合意形成が必要となるなどの課題がございます。
 そのため、都は、これまで管理組合へのアドバイザー派遣や改良工事への助成を行ってまいりましたが、昨年からは、耐震診断への支援を行う区市町村を対象とした助成を実施しております。
 現在までに二十区二市で耐震診断助成制度が実施されており、こうした区市等と連携し、管理組合や管理業団体へ引き続きその活用を働きかけてまいります。
 これらの制度に加え、今後は改修工法や具体的な実施事例等を幅広く情報収集し、提供するとともに、関係団体の協力を得て相談体制の充実を図るなど、耐震化の促進に向けた取り組みを強化してまいります。
 最後に、違反広告物対策についてでございますが、オリンピック招致に向けて、世界に誇り得る良好な景観を形成していくためには、建築物に対する景観誘導とともに、違反広告物への対策を強化する必要がございます。
 都は、これまで、地元の自治会や商店会、道路管理者等と協力して、道路上の捨て看板等の共同除却を行ってまいりました。
 これに加え、昨年十二月から、多摩地域においても、市や町と連携し、建築物に違反広告物を出している者への指導を強化いたしました。
 さらに、東京マラソンの開催に合わせ、地元区等とともに、コース沿道における捨て看板等の撤去を行っております。
 今後ともさまざまな機会を通じ、違反広告物対策に取り組み、良好な景観を備えた東京を実現してまいります。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 九点のご質問にお答えをいたします。
 まず、多摩シリコンバレーについてであります。
 多摩地域には電子部品や情報通信機器などの分野において先端技術を有する中小企業や大学、研究機関が数多く立地しております。
 さらに、圏央道や横田基地の軍民共用化などのインフラ整備によりまして、業種や都域を越える交流の促進が期待されており、こうした多摩地域のポテンシャルは一層高まっていくものと認識しております。
 このため、都としては、平成二十一年度に開設する産業支援拠点において、多摩の産業特性に応じた技術支援を行うとともに、この拠点を中核とし、産学公や大企業と中小企業など、多様な連携を推進することにより、新事業の創出を支援してまいります。
 次に、貸金被害受付ダイヤル及び無料法律相談についてであります。
 休日や夜間に相談の申し込みを受け付ける貸金被害受付ダイヤルには、平成十五年四月の開設から昨年末までに約七千八百件の利用があり、被害の防止及び救済に役立っております。
 また、都内の三つの弁護士会及び東京司法書士会の協力を得まして実施している貸金被害無料法律相談では、平成十五年十月の開設以来、昨年末までに二千人を超える多重債務者等の相談に対応しております。
 この相談では、個別の事情を踏まえまして、債務整理、自己破産申し立てなど、適切な助言を行い、被害者の救済を図っております。
 次に、健康、環境、危機管理など大都市の課題を解決する産業の育成についてであります。
 これらの産業は、快適で安心・安全な都市の実現に資するとともに、成長性が高く、企業に大きなビジネスチャンスをもたらすなど、東京の産業を牽引することが期待されております。このため、基本戦略におきまして、重点的に育成することといたしました。
 平成十九年度には、これらの分野の課題解決に資する民間企業のすぐれた事業を選定し、製品化から販路拡大まで一貫して支援する重点戦略プロジェクトを開始いたします。
 また、都内中小企業のすぐれた技術力を大都市の課題解決に活用するため、新技術や新製品の開発に対する支援を新たに実施するなど、これらの産業の育成に迅速に取り組んでまいります。
 次に、中小企業に対する金融支援についてであります。
 責任共有制度の導入による影響として、金融機関の貸し渋り等が懸念されていることは認識しております。このため、都は、制度の導入に当たりまして、小規模企業等については、融資額の全額が保証される小口資金融資を設けることといたしました。
 また、部分保証の対象となる経営支援融資を利用する小規模企業に対して、保証料の補助を実施するとともに、災害復旧資金融資を利用する中小企業には利子補給も行うこととしております。
 今後とも、東京信用保証協会等の関係機関と連携し、金融支援策の充実に努めてまいります。
 次に、団塊世代に対する職業訓練についてであります。
 退職後の再就職を円滑に進めるには、求人ニーズの高い職業へ就職するためのスキルを身につけることが必要であります。
 都はこれまで、高年齢者技術専門校を中心に、ホテル・レストランサービス科などの職業訓練を実施し、高齢者の再就職を支援してまいりました。今後は、高齢者の就業が見込める新たな訓練科目を開設するとともに、より身近な地域での受講機会を提供することとしております。
 このため、来年度には防災設備の管理等を学ぶ設備保全科を城南地域に新設するとともに、ニーズの高いパソコン科目の規模を拡大するなど、職業訓練の充実を図ってまいります。
 次に、シルバー人材センターへの支援強化についてであります。
 地域における高齢者の多様な就業ニーズの受け皿として、シルバー人材センターは重要な役割を果たしております。
 このため、都はこれまで、技能系職種に加え、事務系職種への職域拡大等に向けた各センターの取り組みを支援してまいりました。
 来年度からは、さらに団塊の世代の方々の就業機会を増加するため、労働者派遣事業を活用した取り組みや、複数のセンターが地域を越えて連携する広域事業を対象に加えるなど、支援の拡充を図ってまいります。
 次に、ものづくりを体験する機会の提供についてであります。
 都はこれまで、教育機関との連携によりまして、小中高生を対象としたものづくり教室や、若者が親方に弟子入りする職人塾を実施してまいりました。
 さらに、来年度は、職業能力開発センターにおいて、新たに若者を対象とした製造現場の見学や体験を行うものづくり体験塾を開始するとともに、関係団体との連携を強化し、中小企業の人材育成、確保につなげてまいります。
 次に、若手商人の育成についてであります。
 都はこれまで、進め若手商人育成事業を通じて、次代の商店街を担う多くの人材を育成してまいりました。本年度からは、こうした人材に対して、現場での実践力などを強化するための専門的な研修を新たに開始いたしました。
 お話の地域コミュニティのかなめとなる人材の育成は、地域住民と商店街との連携、交流の促進を通じ、商店街や地域の活性化につながっていくものであり、極めて重要であります。
 このため、来年度から研修カリキュラムに地域づくりの視点も取り入れてまいります。
 最後に、人材活用の支援策についてであります。
 都は、商店街の活性化に向け、来年度、若手商人育成事業の修了生について、専門家派遣事業や研修事業の講師に活用することを考えております。
 さらに、こうした人材を地域コミュニティの再生に活用していくためには、人材のネットワーク化による経験、情報の共有化や、地域の活性化に取り組むNPO法人、大学などとの連携強化を図ることが必要であります。
 今後、こうした方向で支援策を検討してまいります。

   〔財務局長谷川健次君登壇〕

○財務局長(谷川健次君) いわゆる負の遺産への対応についてでございます。
 十九年度予算では、都税の増収を好機ととらえまして、残された懸案である負の遺産の処理に本格的に着手し、心身障害者扶養年金と、ひよどり山有料道路事業につきまして、積極的な対応策を講じたところでございます。
 お話のございました多摩都市モノレール事業と稲城大橋有料道路事業につきましても、抜本的な見直しが必要と認識しておりまして、現在、各局と調整しながら事業見通しの精査や課題の整理などを進めてございます。
 引き続き精力的に検討を進め、機を逸することなく必要な改善に取り組んでいかなければならないと考えてございます。

   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 保健福祉に関する六点のご質問にお答えいたします。
 まず、療養病床の転換支援策についてでございますが、いわゆる社会的入院の是正を目的とする療養病床の再編成に当たっては、療養病床から、その受け皿となる介護施設等への円滑な転換を図ることが重要でございます。
 このため、都は、介護老人保健施設等への転換のための整備費について、独自の補助を行うなど、必要な支援策を講じることとしております。
 お話の都有地を活用した介護老人保健施設の整備については、こうした療養病床再編成に伴う転換支援策として有効と考えられることから、今後、関係局と協議してまいります。
 次に、シルバーパス事業の経過措置についてでございますが、平成十八年度の経過措置は、税制改正に伴う一年間の激変緩和措置として実施したものでございます。シルバーパス事業を今後とも維持していくためには、利用者である高齢者の理解も得ながら、社会状況の変化に的確に対応していく必要がございます。
 ご要望のあった経過措置を十九年度も継続することについては、ご指摘の点なども踏まえて適切に検討してまいります。
 次に、看護師不足問題についてでございますが、近年、医療の高度化、専門化などに伴いまして、看護師の需要が増加する中で、都はこれまでも独自の看護職員需給見通しを策定し、看護師確保対策に取り組んでまいりました。
 しかし、昨年四月の診療報酬改定におきまして、これまで以上に手厚い看護職員配置基準が新設され、その取得を目指す病院が急増したことが、さらに看護師需要を押し上げております。このため、本年一月、国の中央社会保険医療協議会も再度の診療報酬改定を厚生労働省に建議したところでございます。
 都としては、こうした国の動きを注視しつつ、新たな看護職員需給見通しを平成十九年度のできるだけ早い時期に策定しまして、養成対策、定着対策、再就業対策など、総合的な看護師確保対策に着実に取り組んでまいります。
 次に、新人看護師の定着対策についてでございますが、都内の新人看護師の離職率は高く、看護師として養成した貴重な人材が早期に離職しまして、看護の仕事から離れてしまうことは、大きな損失でございます。
 日本看護協会の調査によりますと、学校で学んだ知識と現場の看護業務とのギャップから来る自信喪失がありまして、このため、新人看護師の定着を図るには、こうしたギャップを埋める臨床の場での研修が重要でございます。
 しかし、看護師の採用が少ない中小病院については、新人に対する研修体制が十分でない場合がございます。都は、こうした病院に対して、臨床研修の充実に向けた助言と新人看護師への個別相談、指導を行うため、熟練した研修指導者を派遣する早期離職防止対策事業を平成十九年度から新たに実施してまいります。
 次に、再就業のための研修事業についてでございますが、ご指摘のとおり、潜在看護師の再就業を促進するためには、身近な地域で復職に必要な最新の看護技術を習得できる研修体制を整えることが必要でございます。
 このため、現在、東京都ナースプラザが区部と多摩地区の二カ所で行っている研修や就業相談事業に加えまして、平成十九年度から新たに都内十二の二次保健医療圏ごとに地域就業支援病院を二カ所予定いたしまして、潜在看護師一人一人の経験や技術、離職期間に応じたきめ細かな研修を実施することとしております。
 また、地域就業支援病院では、あわせて就業相談も行いまして、研修と再就業を効果的に結びつけていくことなど、都独自の施策を積極的に推進してまいります。
 最後に、多重債務者対策についてでございますが、来年度創設する多重債務者生活再生事業では、まず、本人の債務状況や借り入れの理由、現在の収入、資産等を、消費生活アドバイザーなど有資格者の相談員が把握するとともに、生活再建への意欲等を確認いたしまして、家計改善の指導をしながら債務整理の提案を行ってまいります。
 その上で、任意整理による返済の見通しが立つ場合には、必要な資金を融資し、それが困難な場合には自己破産等の手続を進めるなど、弁護士や認定司法書士が債務者の状況に応じたきめ細かな解決策を提供することとしております。
 こうした相談支援業務には高度な専門性が必要でございまして、弁護士会や日本司法支援センター等の専門機関、関係団体との緊密な連携を図ってまいります。
 また、この制度の趣旨、仕組みについて、さまざまな生活問題にかかわる各種相談機関や区市町村窓口を通して都民に対して幅広く周知を図り、生活再建に意欲を持つ多重債務者が本制度を正しく理解し、利用できるよう、積極的なPRに努めてまいります。

   〔水道局長御園良彦君登壇〕

○水道局長(御園良彦君) 水道事業に関する四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、水道料金の減免措置についてでございますが、現在実施しております生活保護世帯や公衆浴場などに対する水道料金の減免措置につきましては、都議会の決議の趣旨を尊重いたしまして、平成十九年三月三十一日まで実施する予定でございます。
 減免措置の継続につきましては、負担の公平の原則や財政状況などを踏まえますと難しい問題であると考えていますが、ご指摘の点を重く受けとめ、今後、補てん財源の確保を含めて関係局と調整するなど、慎重に検討していかなければならないと認識しております。
 次に、水源の状況についてでありますが、都の水源の約八割を占める利根川上流域の積雪は天然のダムの機能を果たしておりますが、ことしの冬は全国的に気温が高く、記録的な少雪でございます。矢木沢ダム地点の積雪量は、平年の約四五%と極めて少ない状況にあります。一方、利根川水系の八ダムの総貯水量は、昨年末の降水量が多かったこともございまして、今現在では、平年より三割程度多く、貯水量は七七%でございます。
 しかし、今後の降水状況等によっては、雪解けによる流出が少なく、この夏の給水が厳しくなることも予想されます。
 国土交通省では、今後とも、降水状況や下流部の水利用を踏まえた水資源開発施設の効率的な運用を行うこととしておりまして、都といたしましても、気象状況等を慎重に見守りながら、きめ細かな水運用を行うとともに、多摩川水系の貯水を図り、安定給水の確保に努めてまいります。
 次に、水道技術を通してのアジア貢献策についてでございますが、水道局ではこれまで、独立行政法人国際協力機構、いわゆるJICAと協力しながら、アジア諸国はもとより、アフリカなど広く世界各国への職員の派遣や研修生の受け入れを実施しております。また、アジア大都市ネットワークや日本水道協会などと連携した取り組みも実施しております。
 東京の漏水率は約四%でございますが、特にアジアの主要都市は漏水率が数十%を超える状況から、当局の漏水防止を初めとする水道技術による国際貢献が一層重要になると認識しております。
 今後、国際会議などにおきまして、漏水防止などに関する技術協力を行うとともに、実技フィールドを有する当局の研修・開発センターを、アジアに開かれた研修・開発センターとして活用するなど、積極的に研修生を受け入れる体制を強化してまいります。
 こうした技術協力などを通して、アジアを初め、国外の水道界への積極的な貢献を果たしてまいります。
 最後に、重要施設への供給ルートの耐震化についてでございますが、国の首都直下地震対策大綱や都の地域防災計画に基づき、首都中枢機関及び三次救急医療機関への水の供給ルートの耐震化が急務となっているとともに、震災時の後方医療施設である災害拠点病院や二次救急医療機関、そして、住民支援の主体として重要な責任と役割を担う区市町の庁舎への供給ルートの確保も課題となっております。
 水道局では、耐震性の高いダクタイル鋳鉄管への取りかえをほぼ完了しておりますが、阪神・淡路大震災を契機として、管そのものの強化に加えまして、新たに抜け出し防止機能のある耐震継ぎ手管を採用するなど、管路の一層の耐震化を積極的に進めてきておりまして、これら重要施設につきましては、優先的に供給ルートの耐震化を進めることにしております。
 耐震化に当たりましては、政府関係機関、国会、在日大使館などの首都中枢機関や重要な医療機関約百三十施設につきまして特に優先して平成二十三年度までに、その他の約二百四十施設につきましても平成二十八年度までに完了する計画としております。
 今後とも、震災対策を積極的に推進し、首都東京の安定給水に努めてまいります。
   〔下水道局長前田正博君登壇〕

○下水道局長(前田正博君) 下水道料金の減免措置についてでございますが、現在の下水道料金の減免措置は、平成十八年第一回定例会における下水道料金の減免措置に関する決議の趣旨を尊重し、財源補てんを受けつつ、十八年度限りの措置として実施しているところでございます。
 減免措置の継続は、公営企業における独立採算の原則、使用者間の負担の公平に対する例外的措置であり、難しい問題であると認識しておりますが、議会の意向を尊重し、補てん財源の確保を含め、今後慎重に検討していくべきものと考えております。
   〔青少年・治安対策本部長舟本馨君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(舟本馨君) 青少年対策につきましての三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、子どもの安全確保についてでございますけれども、広島、栃木などの痛ましい事件を受けまして、都は、子どもの安全を確保するための対策をこれまで講じてまいりました。
 今後も、もちろんさまざまな対策を充実強化する必要がありますが、特に、子ども安全ボランティアの支援につきましては、そのネットワーク化を促進するため、ボランティアの集いを積極的に開催し、またホームページをさらに活用するなどして、有益なノウハウなどの情報交換を充実させてまいります。
 また、引き続き、すべての学校に保護者、住民、警察、行政が一堂に会し、情報交換や意見交換ができる場の設置を目指してまいります。
 また、十九年度は、地域の取り組みを強化するため、青色防犯パトロールやスクールバスの補助制度を新設いたします。
 子どもの安全確保に万全を期するため、学校、保護者と地域住民や警察、行政とが一層連携を強め、各施策を重層的、複合的に推し進めてまいります。
 次に、子ども・若者問題対策会議の役割についてございます。
 当会議は、複雑多様化する子ども・若者問題に対して迅速かつ的確に対応するため、副知事を座長として、全庁横断的なものとして設置いたしました。当面、喫緊の課題として、子どもの安全対策、いじめ、児童虐待等を取り上げておりますが、これらの課題につきまして、現場主義のもとで全庁一丸となって取り組んでまいります。
 今後新たに生じる課題も含め、当会議をてこにして、より実効性のある踏み込んだ対策を講じ、また将来展望を広く都民に発信するなど、子どもや若者に関する施策の構築に積極的に取り組んでまいります。
 次に、地域における青少年育成活動に対する支援策についてでございます。
 スポーツ少年団や健全育成団体などの地域の活動が青少年の健全育成に大きく寄与しているものであり、都ではこれまで、関連する各局において支援を行ってまいりました。
 今後は、全庁横断的に設置した子ども・若者問題対策会議の場も十二分に活用して、健全育成団体の活動状況などの情報を一元的に集約しつつ、ご指摘のような新たなシステムの創設など、こうした地域活動を幅広くかつ協力に支援してまいりたいと考えております。
   〔環境局長村山寛司君登壇〕

○環境局長(村山寛司君) 産業廃棄物対策に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、産業廃棄物の不法投棄対策についてですが、お話のように、現在、不法投棄件数の約七割は建設廃棄物が占めております。加えて、今後都内では建築物の更新時期を迎えることから、解体工事に伴う建設廃棄物の一層の増加が見込まれます。
 一方、建築物の解体工事の現場では、敷地面積や工期の制約などから、廃棄物の分別や保管などについて、ともすれば適正な処理が行われにくい状況も見受けられます。
 このため、都は、新たな取り組みとして、平成十九年度当初から、中小規模の解体工事現場約二千カ所に直接出向き、廃棄物の分別の徹底や適正な保管、処分先の確認などについて、不法投棄の未然防止の観点から現場指導を行うことといたします。
 こうした取り組みにより、建設廃棄物の適正処理と不法投棄ゼロの実現を目指してまいります。
 次に、廃棄物処理業者を第三者が評価する新しい制度についてでございますが、本制度につきましては、現在、導入に向け、学識経験者等から成る検討会におきまして、評価基準や第三者評価機関のあり方などの検討を行っております。
 この制度の構築に当たっては、環境の保全や高度なリサイクルなどに努力する処理業者が正当に評価されること、そのことによりすぐれた取り組みを行う処理業者が市場で優位となること、そして、それらが相まって業界全体の底上げにつながっていくことが重要でございます。
 そうした観点に立ちまして、制度の枠組みについてさらに検討を深め、都独自の廃棄物処理業者第三者評価制度の十九年度中の導入を目指してまいります。
   〔消防総監関口和重君登壇〕

○消防総監(関口和重君) 消防団施設の耐震化等についてのお尋ねですが、特別区消防団の分団本部施設や防災資機材格納庫は、消防団の活動拠点として、平時の災害はもとより、震災等の大規模災害時におきましても重要な施設であります。
 このため、分団本部施設を最優先に計画的に耐震化を進めるとともに、防災資機材格納庫につきましても順次整備してまいります。
 また、手洗い設備等の整備につきましては、女性団員に十分配意して充実を図ってまいります。
   〔建設局長依田俊治君登壇〕

○建設局長(依田俊治君) 多摩の道路整備に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、五日市街道の立川─福生区間の拡幅整備についてでございますが、五日市街道は多摩地域における東西方向の主要な幹線道路であり、当該区間は、南北方向を結ぶ国道一六号と相まって円滑な交通を確保するとともに、歩行者の安全性向上など快適な生活環境の確保に必要な路線でございます。
 本区間の立川市西砂町から福生市熊川までの約一・九キロメートルにつきましては、多摩地域における第三次事業化計画の中で優先整備路線に位置づけられております。この区間は、ご指摘のように、現況幅員が十メートル程度であり、歩道も片側にしかないことに加え、国道一六号との交差点を先頭に著しい渋滞が発生しております。
 現在、国道一六号については、国が幹線機能強化のため、五日市街道との交差点付近から南側約一・五キロメートルについて、現在の片側一車線から三車線への拡幅事業を行っており、都は、一部区間の用地取得業務に東京都道路整備保全公社を活用するなど、国道事業の推進に協力しております。
 お尋ねの五日市街道の本区間につきましては、今後、国道事業の進捗状況や歩行者の利用状況などを踏まえ、事業化について検討してまいります。
 次に、連雀通りの歩道整備についてでございますが、三鷹市と国分寺市を結ぶ連雀通りは多摩地域の主要な道路でありますが、歩道のない箇所や幅員の狭い箇所がございます。
 そのため、国分寺市内では、本多二丁目交差点から西武多摩湖線の踏切までの約四百メートルの区間で歩道の整備に取り組んでおり、これまでに約九割の用地を取得し、順次工事を進めております。
 また、踏切内の歩道拡幅については、現在、鉄道事業者と事業化に向け協議を進めており、本年秋には工事に着手する予定でございます。
 さらに、踏切から西側のけやき公園までの区間の歩道整備につきましては、事業中の区間と踏切内の歩道の整備状況を踏まえ、事業化を進めてまいります。
 今後とも財源の確保に努めるとともに、地元自治体や関係住民の理解と協力を得て、だれもが安全かつ快適に利用できるよう、連雀通りを初めとする多摩地域における歩道整備を積極的に推進してまいります。