平成十九年東京都議会会議録第二号

   午後一時一分開議

○議長(川島忠一君) これより本日の会議を開きます。

○議長(川島忠一君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(川島忠一君) これより質問に入ります。
 百十三番宮崎章君。
   〔百十三番宮崎章君登壇〕

○百十三番(宮崎章君) 平成十九年第一回東京都議会定例会に当たり、都議会自由民主党を代表して質問をいたします。
 質問に入る前に、一言申し上げます。
 今月六日の夜、線路内に入り込んだ女性を助け出そうとして電車にはねられ、意識不明の重体になっていた警視庁板橋署常盤台交番の宮本邦彦巡査部長が、十二日に殉職されました。
 事故の後、交番には、近隣住民や地元小学校の児童等が回復を祈ってつくった千羽ヅルや花束が続々と届けられ、板橋署にも、連日、激励の電話や手紙が寄せられたとのことです。
 それら大勢の方々の願いもむなしいものとなりました。故宮本警部の責任感に満ちた勇気ある行動をたたえるとともに、ご遺族に心からお悔やみを申し上げます。
 故人のご冥福を心よりお祈り申し上げて、質問に入ります。
 今年は、国政においても、地方においても、政治が都民、国民の審判を仰ぐ重要な年であります。中でも、この春の都知事選挙は、東京の未来だけではなく、今後の我が国の方向を占うためにも非常に重要です。その知事選に、石原知事がこれまでになく早い時期に立候補宣言をされたことは、我が党にとってはもちろん、一千二百万都民にとっても大変心強いことだと思います。
 一部には、これまでの石原都政の輝かしい実績をねたんでか、事実をねじ曲げ、悪意に満ちたネガティブキャンペーンを繰り広げる向きもあるようですが、冷静かつ客観的な目で石原都政二期八年間を振り返れば、こうした言説がいかに根拠のないものであるかは火を見るより明らかであります。
 この八年でまず驚かされるのは、有言実行であります。ディーゼル車対策や新たな債券市場の創設による中小企業支援はもちろん、犯罪対策、東京ER、東京DMATの創設に見られる都民の安心を確保する独自の対策など、その実績は数知れません。
 中高一貫校の創設など、一連の都立高校改革では、硬直した学校の仕組みそのものを大きく変えるきっかけをつくり出し、また、民間活力を十二分に活用した認証保育所制度の創設によって、福祉の新しい形を全国に示しました。
 さらに特筆すべきは、こうした先進の政策を展開しながら、同時に財政再建を一気になし遂げたことであります。もちろん、こうした実績すべてが石原知事個人の力だけによるものではありません。そこには、都職員の創意工夫、そして知事と職員の強力なスクラムがあったことを忘れてはなりません。
 さらに、私たち都議会与党との絶妙な協力関係があってこそということをあえて申し添えさせていただきます。
 一方、東京そして日本の将来を考えれば、横田基地の軍民共用化や三環状道路の完成、オリンピック招致など、これからやり遂げなければならない課題は山積いたしております。
 継続こそ力であると知事がいわれたとおり、東京は、これまで以上に石原慎太郎を必要としているのであります。今、都民が求めているのは、上滑りな異論や反論を唱える者でも、現実性に乏しい空論を振りかざす者でもなく、いわんや、大衆の耳に心地よいことばかりを喧伝する者でもありません。実行不可能と思われる事柄であっても、東京のため、日本のために真に行うべきことを信念を持って実行に移す者であります。これこそが、都民、国民の負託を受けた政治家のあるべき姿であり、石原知事をおいてほかにいないのであります。
 そこで、まず、知事の三選にかける意気込みをお伺いいたします。
 石原知事の行動力はだれもが認めるところであります。その源泉は、具体的な施策を通じて、都民、国民に対する責任を果たしていくという力強い使命感にほかなりません。
 例えば、大気汚染のように、都民の生命を直接脅かす問題に対して、国に先駆けていち早く違反ディーゼル車一掃作戦を開始した後、矢継ぎ早に対策を繰り出し、都内の汚染状況が驚異的に改善されたことは、知事に異議を唱える会派でさえ認めざるを得ないでありましょう。
 さらに知事は、昨年九月、大気汚染訴訟に関する我が党の質問に対し、被害者を救済することを最優先すべきであること、裁判の範疇を超えた社会全体の課題として解決すべきことを答弁されました。
 質疑の翌日、控訴審の結審時に、裁判長は、裁判だけでは解決できない問題を含んでおり、関係者の英知を集めて抜本的に解決したいと述べ、知事と全く同様の認識を示しております。
 本来は国が責任を持つべきでありますが、知事は、ぜんそくに苦しむ被害者を救済する医療費助成制度と、さらなる公害対策の要求という抜本的な解決策を、東京高裁にみずから出向き、提案をしました。
 大きな社会問題となり、関係者の利害が錯綜している中、解決までには乗り越えるべき課題が山積しておりますが、あえてこのような困難な道程を選択した知事の考えをお聞きいたします。
 昨年末、東京の将来を展望する「十年後の東京」が公表されました。社会経済状況が大きく変動する時代にあって、長期的な見通しを立てることは大変難しいことですが、こういう時代だからこそ、行政がしっかりとした将来の道しるべを示す必要があると考えます。
 かねてから我が党は、夢のある東京の将来像を都民にわかりやすく示すべきと主張してまいりました。「十年後の東京」には、インフラ整備を初め、環境、福祉、文化、産業など幅広い分野について、十年後への思い切った目標設定などを行っております。また、図表や表現にも工夫を凝らした、都民にわかりやすいものとなっております。
 お聞きするところ、策定の段階から石原知事が力を入れられ、事務方との議論を何度も重ね、タイトルの表現など細部にもこだわられて策定されたとのことです。その後の知事の発言等をお聞きしても、「十年後の東京」への熱い思いがひしひしと伝わってきます。
 将来への長期ビジョンである「十年後の東京」の策定、公表に当たって、基本的な考え方と実現に向けた知事の決意を伺います。
 石原知事のリーダーシップのもと、立派な都市戦略ができたわけですが、これが絵にかいたもちであってはなりません。現段階では、十年後の東京が目指す姿と、その実現のための方向性を示したにすぎません。
 個々のテーマについては、今後、庁内で連携をとり、一丸となって施策を進めることと思いますが、「十年後の東京」の中で、実現に向けての実効性をどのように確保していこうと考えているのか伺います。
 機能的、魅力的な夢のある東京の将来をつくり上げていくには、当然のことながら、多摩・島しょ地域も含めた東京全体で取り組みを進めていく必要があります。
 昨年の第三回定例会の私の質問に対しても、「十年後の東京」は、多摩地域も含めた都全域における政策展開を示すとの答弁がありました。「十年後の東京」において、東京国体の開催などをにらみ、将来に向けた多摩地域の発展する姿をどのように描き、振興を図っていくかを知事に伺います。
 次に、行財政運営について伺います。
 平成十九年度予算案は、景気回復を反映して、都税収入は過去最高額を見込み、一般会計の予算規模は九年ぶりに六兆円台の後半となるなど、久々の大型予算となっています。我が党の要望も十分に踏まえ、都市再生、福祉と保健など、あらゆる分野での予算を増額し、十年後の東京に向けた施策を着実に推進しています。また、隠れ借金の解消など、財政基盤を強化する堅実な内容です。
 知事は、都財政の現状について、かつての瀕死の状態から立ち直っただけではなく、相当の若返りも図ることができたと述べています。最大の懸案であった財政再建を実現したその取り組みは、国やほかの自治体の模範となるものであります。この間の努力で得られた果実は、都民一人一人に還元していくべきです。
 また、十九年度予算は、石原都政二期八年間の総仕上げであると同時に、三期目のスタートとなる重要な予算です。
 そこで、八年間財政再建に取り組んできた成果に対する知事の率直な思いと、十九年度予算を含めてどう都民に還元するか、見解を伺います。
 十九年度予算では、福祉・医療、環境、スポーツ・文化の三分野で新たに特定事業の推進を目的とした基金を創設しています。これらの基金は、建物などハード面の整備だけではなく、ソフトの事業にも充当できるとのことであります。
 そこで、新たな三つの基金を創設した意義と、その具体的活用方針について伺います。
 また、財政再建は、歳入歳出両面にわたる積極果敢な努力が結実したものであります。歳入面では、景気回復による増収もありましたが、それだけではなく、先進的で、しかも地道な徴税努力があったことを見過ごしてはなりません。あらゆる施策の前提となる都税収入の確保に向けたこれまでの取り組みと今後の決意について伺います。
 次に、多摩の振興について伺います。
 この一月、多摩リーディングプロジェクトが改定されました。このリーディングプロジェクトによる取り組みと成果は市町村からも評価されており、今回の改定により事業内容が拡充されたことは、多摩地域の発展に意義あるものであります。
 一方、多摩振興のもう一つの主役である市町村に対する支援についても、我が党の強い要望にこたえ、市町村総合交付金が、十九年度、過去最高となる三百四十億円に増額されました。
 これらにより多摩振興体制の充実が図られたわけですが、都として今後どのように多摩振興に取り組んでいくのか伺います。
 次に、都区制度改革について伺います。
 平成十九年度都区財政調整協議は、昨年に引き続き激しい議論となり、我が党としても、協議の動向に強い関心を寄せてきました。都補助金の特別区財政調整交付金への振りかえを含め、調整税の特別区への配分割合を五五%とすることなどの都区合意により、財源配分の問題は決着いたしました。
 今後、都区双方が、東京の未来の創造に向け、大きな視点に立ち、都区のあり方について真摯に議論をしていくことが大切であります。
 既に、検討のための基本的な枠組み等が取りまとめられており、今後、事務配分、特別区の区域のあり方、税財政制度などの各項目について検討が本格化します。この検討は、都民、区民生活に大きな影響を与える重要な問題であり、我が党としても重大な関心を持っております。
 そこで、今後、どのように都区のあり方の検討を進めていくのか伺います。
 次に、公営企業改革について伺います。
 公営企業については、施設の大規模な更新や職員の大量退職を控え、抜本的な経営改革に取り組むことが必要です。そうした状況を踏まえ、公営三局は、平成十九年度を初年度とする経営計画をまとめたと伺っております。
 中でも、地下鉄、バス事業などを行う交通局は、民間に最も近い公営企業であり、公共の福祉の増進という本来の目的とともに、民間との競争に勝ち抜くため、一層の経営改革を進めることが求められています。
 このうち、都営地下鉄事業は、十九年度予算では、事業開始以来初めて経常収支が黒字になることを見込んでおります。この間の集客や経営の効率化など改善を進めてきた努力が実を結んだものと思います。
 しかし一方で、いまだ膨大な累積欠損金を抱える状況にあります。また、少子高齢化の進展に伴い、これまでのような乗客数の伸びは期待できません。さらに、安全確保やサービス向上を図るためにも多額の投資が必要となっており、今回の黒字転換を手放しで喜ぶことはできません。
 そこで、まず、都営地下鉄の今後の経営見通しについて伺います。
 地下鉄事業は、将来的には、東京メトロとの一元化という大きな課題がありますが、まず今回の黒字転換を一つのステップとして、経営の安定化を目指し、さらなる財務体質の改善を図ることが不可欠と考えます。
 このたび、交通局では新たな三カ年経営計画を公表しましたが、都営地下鉄としてどのように経営改善に取り組むのか伺います。
 次に、災害対策について伺います。
 都は、昨年公表した首都直下型地震の被害想定、また一昨年に発生した千葉県北西部地震や、中野区、杉並区の集中豪雨など実災害から得た教訓を踏まえ、地域防災計画の改定案を策定しました。
 建物の倒壊や火災で予想される人的被害の半減など、減災目標を初めて掲げるとともに、八都県市連携による広域対応や在日米軍への支援要請など、総合防災訓練の成果を反映したものになっております。また、都民の生命、財産及び首都東京を守るため、より実践的な計画となっております。
 そこで、本計画が目指す災害に強い東京の実現に向けた知事の決意を伺います。
 次に、東京港における海岸保全施設の整備について伺います。
 東京東部のいわゆるゼロメートル地帯を高潮の災害から守る防潮堤や水門などの海岸保全施設の果たす役割は、極めて重要であります。
 都では、これまでの施設整備により、高潮に対する安全性は確保されているとのことですが、一方、施設の老朽化対策や耐震対策が大きな課題となっています。
 折しも、本年一月、文部科学省の地震調査委員会は、今後十年以内に首都圏でマグニチュード七クラスの地震発生の確率は三〇%程度、三十年以内では七〇%程度と想定されると発表いたしました。
 これまでの我が党の質問に対して、都は、向こう十年間程度の緊急整備計画を策定していく旨、明らかにしていますが、首都直下地震の切迫性をかんがみると、集中的に投資し、短期間に完了させる計画を一刻も早く策定すべきであります。
 そこで、現在策定中である計画の内容のポイントと整備効果について伺います。
 次に、耐震改修促進計画について伺います。
 東京には、木造住宅から高層のマンション、オフィスビルまで多くの建築物が集積していますが、地震国日本では、いつどこで地震が発生してもおかしくない状況であります。
 こうした中、耐震改修促進法の改正により、都道府県に耐震改修促進計画の策定が義務づけられました。先日、耐震改修促進計画の素案が公表されましたが、まず、本計画策定のねらいについて伺います。
 本計画の素案を見ると、震災時に重要な役割を担う消防署、警察署、病院や学校等の公共建築物については、平成二十七年度の耐震化率の目標を一〇〇%にするなど、積極的な取り組み姿勢が示されています。しかし、都内の建築物の大半は民間建築物であり、その耐震化の促進には、都民や建物所有者の前向きな取り組みが不可欠です。
 都として民間建築物の耐震化に向けてどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 次に、今後十年間の都市基盤の事業展開について伺います。
 首都東京は、世界を代表する成熟を遂げた大都市として、我が国の発展をリードしてきたことはいうまでもありません。しかしながら、慢性的な交通渋滞や都市型水害、緑やオープンスペースの不足といった課題がいまだに残されております。
 石原知事は、こうした首都東京の抱える課題に対して、強力なリーダーシップを発揮して、多大な成果を上げてこられました。
 特に、凍結状態にあった外環道については、国への強力な働きかけにより、事業化へ道筋をつけるとともに、中央環状品川線では都みずから整備に乗り出し、昨年十一月に首都高速道路株式会社と共同で着工しました。三環状道路の整備促進に並々ならぬ情熱を注いだ知事の姿勢を評価するものであります。
 さらに、昨年五月には環状八号線を全線開通させ、一昨年秋の集中豪雨の際には、神田川・環七地下調節池の二期区間で緊急に取水を実施するなど、大きな成果を上げてきました。
 東京をさらなる成熟した都市とするためには、都市基盤の整備を一層強力に推進し、東京の抱える課題を克服することが不可欠です。
 そのため、道路、河川、公園などの整備に当たっては、十年後の東京を見据えた具体的な目標を設定し、事業を展開していくということが重要と考えますが、所見を伺います。
 また、道路、公園の緑、豊かな水辺などは、都市環境を向上させる貴重な空間でもあります。「十年後の東京」において、水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京の復活が目標の筆頭に掲げられております。
 そこで、東京をさらに風格ある都市とするため、道路の緑化や景観の向上、水辺空間の整備にどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 次に、景観計画について伺います。
 東京の街並みは、建築物の形態や色彩がばらばらで、屋外広告物も無秩序に乱立しております。成熟した都市にふさわしい景観をいまだ備えていないといっても過言ではありません。私たちには、東京の近代化や戦後の成長過程で損なわれてきたかつての美しい街並みの再生に取り組み、次世代へ継承していく責務があります。
 今定例会の施政方針で、知事は、新たに景観計画を策定すると表明いたしました。今後、美しい東京をどのように復活させる考えか、知事の決意を伺います。
 これまでの施策は、民間事業者などに対し、主に景観の配慮を要請するにとどまり、実効性の面で課題があったと思います。今回の計画では、どのように民間開発の景観を誘導していく考えか、具体的な取り組みを伺います。
 美しく魅力ある東京は、民間開発等の規制、誘導とともに、都みずから、道路や公園、河川などの整備を通じ、良好な景観の形成に範を示すことが重要です。公共施設の整備による景観形成について、景観計画における取り組みを伺います。
 次に、新たな住宅マスタープランの策定について伺います。
 「十年後の東京」では、より機能的、魅力的な東京の姿を世界に示し、美しいまち、安全なまちを実現して、次代に継承していくための戦略の必要性が示されました。我が党も二百年住宅ビジョンの策定に取り組んでいますが、東京をさらなる成熟した都市にするためには、住宅政策においても、こうした視点が重要であります。
 さきの定例会で住宅基本条例の抜本改正を行いましたが、都は、これを踏まえ、今後十年間に取り組むべき具体的施策を総合的かつ体系的に取りまとめた新たな住宅マスタープランの素案を、先日公表いたしました。
 住宅政策における課題は、複雑かつ多岐にわたっています。十年後の東京をさらに成熟を遂げた都市としていくために、今後どのように住宅政策を展開していくのか、知事の所見を伺います。
 次に、都民住宅について伺います。
 かつてのバブル期の深刻な住宅難対策として大きな役割を果たしたのが、民間土地所有者に働きかけて建設された民間活用型の住宅であります。都民住宅の建設の際には、利子補給や補助金の支援など、さまざまな手だてで民間土地所有者を都民住宅建設へと誘導しました。また、家賃補助を行い、段階的に家賃が上がる傾斜家賃制度を採用しました。
 当時は応募者が殺到したものでありますが、バブル経済崩壊後の社会経済状況の変化によって、事情は一変しました。傾斜家賃の上昇によって退去者が増加し、新規入居者も減少しています。空き家の増加により、都の政策に協力したオーナーの中には、入居者を確保するために家賃の引き下げを余儀なくされ、採算性の悪化と借入金の返済に苦しみ、経営破綻の危機に瀕している者もいます。
 一方、都には今後、多額の利子補給が残っています。これはもはや、バブル期の住宅政策による隠れた負の遺産ともいうべき状況であり、財政状況が好転している今こそ、脱却に向けた取り組みを行うべきであります。
 とりわけオーナー対策は重要な課題であります。五年後からは管理期間が満了する住宅が出始め、経営がさらに深刻化すると予想されます。こうした状況は、住宅のストックを有効に活用する上でも看過することはできません。
 経営危機に陥っている都民住宅のオーナーに対する対策を速やかに講じるとともに、期間満了後の経営のあり方についても抜本的な検討を行うべきと考えますが、所見を伺います。
 産業振興について伺います。
 都は、「十年後の東京」を踏まえ、先月、産業振興基本戦略素案を発表いたしました。基本戦略は、「十年後の東京」が目指す都市像の実現を産業振興の面から推進するため、今後十年の産業振興の施策展開の方向性を示しています。
 近年、世界各国において、IT産業など有望産業の振興を国家戦略として進めております。そのため、我が国においても、新経済成長戦略に基づく取り組みが開始されたところですが、日本の産業を牽引する東京における産業振興の成果が、日本経済の今後を左右するといっても過言ではないわけであります。
 今こそ、世界に誇れる東京の高い技術力、大学・研究機関などの知の集積、巨大な市場などを生かした戦略的な産業振興を行い、国際競争に勝ち抜き、その存在感を高めることが重要であります。
 しかし、国際競争が激化し、少子高齢化が進展する中で、東京の産業は、製造業の減少、人材の質と量の確保への懸念といった不安材料を抱えています。こうした点から、今回の基本戦略の策定に大きな期待を寄せているところであります。
 そこで、今回の産業振興基本戦略の策定に当たり、今後の産業振興に対する見解を知事に伺います。
 産業振興基本戦略の推進に当たっては、産業を取り巻く環境の変化を的確にとらえた具体的な施策の展開が求められます。産業振興基本戦略をどのように具体化していくのか伺います。
 次に、中小企業支援について伺います。
 本年十月から責任共有制度、いわゆる部分保証制度が導入される予定です。この制度が実施されますと、これまで融資額の全額が保証されていた東京都の制度融資の保証割合が八割に限定され、残りの二割は金融機関が負担することになります。
 この制度の導入に当たって、我が党は、中小企業の資金調達に大きな影響を及ぼすことがないよう、適切な対応を求めてきました。その結果、小口利用の小規模企業や創業関係など、都の制度融資利用者の四割程度については、これまでどおり信用保証協会による全部保証が維持されることとなりました。
 引き続き中小企業が円滑に資金を調達できるよう、都は具体的な取り組みを進めていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、中小企業についての人材育成についてお伺いをします。
 中小企業の人材不足はいまだ解消されておらず、人材育成機能の低下も指摘されています。一方、若年者や女性、高齢者など貴重な労働力が、雇用のミスマッチなどにより、十分に活用されていない状況にあります。
 都は、中小企業の人材確保、育成を支援するため、技術専門校の組織を再編し、職業能力開発センターを設置することとしています。また、知事が公約として都みずから雇用就業対策に取り組むことを掲げ、平成十六年度に開設したしごとセンターにおいては、利用者が四万八千人を超え、きめ細かなカウンセリングにより、二万人が就職に結びつきました。
 都は、こうした成果を踏まえ、多摩地域にも拠点を設置し、就業支援を強化するとしています。中小企業の人材確保、育成に大いに資するものと考えます。今後は、こうした施設を最大限に活用して、中小企業の人材確保、育成を強力に支援すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、東京の農地の保全について伺います。
 近年、都市における農地は、農地としての本来の機能はもとより、貴重な緑の空間として、また、自然の調整池として水害の防止にも寄与するなど、重要な役割を担っております。「十年後の東京」では、水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京を復活させるため、新たに千ヘクタールの緑を生み出すことに加え、今ある身近な緑である農地を保全することも掲げています。
 しかし、現実には、東京の市街化区域内の農地は、生産緑地制度がスタートした平成四年から十三年間で三一%も減少しています。さらに統計によりますと、都では、農業従事者の四割が七十歳以上と高齢化が進んでおり、近い将来、相続税問題によって、さらに多くの農地が減少することが想定されます。市街化区域において貴重な農地を残していくことは、現在の農地制度や相続税制では困難なものであります。
 そこで、都市農地の保全について知事の所見を伺います。
 次に、環境対策について伺います。
 国連機関の最新の報告書によれば、今世紀末には、地球の平均気温が最大で六・四度上昇すると予想しています。今や地球規模の環境の危機が現実的なものになりつつあります。
 このような深刻な環境問題の解決を目指すためには、国際的大都市である東京が先駆的な地球温暖化対策を実施し、範を示し、世界に向けて発信することが重要です。
 「十年後の東京」では、二〇二〇年のCO2発生量を二五%削減するとしています。こうした具体的かつ高い目標を掲げて取り組もうとしていることは、極めて意義のあるものであります。これらの目標の達成に向かって、新たな発想で、東京の持つさまざまなポテンシャルを最大限引き出す工夫をしながら、今まで以上の努力を積み重ねていかなければならないと考えます。
 地球温暖化対策にどう取り組むのか、知事の基本姿勢を伺います。
 今後、東京都をさらに魅力的な、快適な都市としていくためには、都心部も多摩も一層緑豊かな都市として発展させていくことが必要であります。そのため、東京湾の風を都心部まで呼び込むような緑の太い軸を形成するとともに、都民が緑の価値を直接実感できるような身近な緑の空間を数多くつくり出すことが大切です。また、地域の中で親しまれてきた既存の緑を守ることも、ますます重要性を増しています。
 こうした観点から、東京を緑に包まれた美しい都市として再生するため、大胆な方策を総合的に推進していくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、福祉、医療について質問をいたします。
 我が党は、石原知事とともに、この八年、利用者本位の福祉改革、患者中心の医療改革を推進するため、日本の福祉、保健、医療をリードする政策を次々と発信してきました。こうした取り組みを加速させ、世界に誇れる福祉・健康都市東京の実現を目指し、福祉、保健、医療施策のさらなる充実を促す観点から、何点か質問をいたします。
 都は、先般公表した「十年後の東京」の中で、世界のユニバーサルデザインの最先端をリードする大都市東京を目指していくことを明らかにしました。ユニバーサルデザインによる福祉のまちづくりには、段差解消やノンステップバスの導入に加え、おむつ交換もできるトイレなど、多様なニーズにきめ細やかに対応し、改善を重ねていく不断の取り組みが必要です。
 そこで、二〇一六年のオリンピック招致等を絶好の機会として、ユニバーサルデザインによる福祉のまちづくりを一層加速すべきと考えます。今後の対応についての所見を伺います。
 同じく「十年後の東京」で示された、お年寄りも子どももみんなが生き生き暮らせる東京の姿に、私は思いをはせるものであります。その実現のために、将来に向けた重点的なかつ集中的な取り組みが求められており、都がこうした取り組みを確実なものとするため、福祉・健康安心基金を設立することは、大いに評価するものであります。この基金を活用した今後の施策展開について伺います。
 また、福祉・健康安心基金は、がん対策にも活用すると聞いていますが、がん対策については、本年四月の基本法の施行に伴い、都においても、来年度、がん対策推進計画の策定に着手することとなります。がん治療の充実は多くの都民の切望するところであり、粒子線治療装置などの新たな機器の開発や外来での抗がん剤治療も進んできております。推進計画の策定に当たって、これらの動向も踏まえ、各種の施策の充実を図っていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、障害者施策について伺います。
 「十年後の東京」では、だれもが安心して暮らせる地域社会の実現を目指すことを示されています。障害の有無にかかわらず、だれもが安心して暮らせる地域社会の形成は、我々に課せられた責務であります。
 一方、国においては、障害者施策の改革が進められているわけですが、これは、都が取り組んできた福祉改革と軌を一にするものであります。
 都では、石原知事のもと、利用者本位の福祉のための改革を強力に推進しており、こうした理念に基づき、障害者地域生活支援・就労促進三か年プランに平成十八年度から取り組んでいます。この結果、グループホームや区市町村就労支援センターの整備が着々と進んできております。今年度末には東京都障害福祉計画を策定予定と聞いていますが、計画策定に向け、障害者施策に取り組む知事の基本姿勢を伺います。
 また、東京都障害福祉計画は、自立支援法に基づく障害者福祉サービスの確保に関する計画で数値目標も定めるとのことですが、その内容について伺います。
 自立支援法は、これまでの施設中心の施策から、地域で生活を継続できるものに改めていくという大きな構想のもとに制定されたものであります。理念は高く評価できますが、この改革が抜本的なものであるがゆえに、さまざまな意見が出ていることも事実であります。
 我が党では、こうした声に丁寧に対応するという趣旨から、昨年十一月に政府に対して提言を行ったところであります。国は、我が党の提言を受けて、利用者負担のさらなる軽減など、三つの柱から成る自立支援法の円滑な運用のための対応策を示しましたが、都は、今回の改善策についてどのように受けとめているのか、伺います。
 次に、シルバーパスについて伺います。
 先般、国の税制改正において、平成十八年度より高齢者の住民税非課税の基準が下げられました。今年度のシルバーパス発行において、この改正の影響により、収入が変わらないのにもかかわらず、それまで千円で購入できたパスが二万五百十円となってしまうという事態を避けるため、影響を受けた利用者について負担額を据え置きました。来年度も対象者を適正に把握し、今年度と同様の経過措置を継続させることは、事務的にも多くの困難を伴うと思いますが、介護保険料においても税制改正に伴う経過措置は二年間とされており、シルバーパスについて、もう一年間の継続を要望します。都の見解を伺います。
 なお、シルバーパスの利用者を取り巻く状況は急激に変化しています。本年三月より始まるICカードPASMOは、バスにも導入されますが、「十年後の東京」において、都民の足としてバスの復権等の政策が示されています。団塊世代の高齢化により、平成二十七年には四人に一人は高齢者という社会を迎える中、このような社会状況の変化も勘案した上で、シルバーパス事業の不断の見直しは欠かせないと考えます。
 次に、都立豊島病院について伺います。
 豊島病院については、平成二十一年度当初に東京都保健医療公社への運営移管を目指すという都としての基本方針が決定されました。公社病院は、公的病院の一翼を担うものとして認識していますが、最も大切なことは、公社化によって、都民の求める医療がより適切に、かつ安定的に提供されることです。
 そこで、まず、豊島病院を保健医療公社へ移管する意義について、具体的に伺います。
 我が党は、豊島病院の区移管の是非について検討してきた際にも、地域医療の充実に果たすべき基礎的自治体の役割の重要性について、繰り返し主張してきました。今後、保健医療公社が運営する病院というメリットを生かしながら、地元自治体も巻き込んだ新たな発想に基づく充実策を取り入れるなど、より一層の地域医療の拡充に取り組むべきと考えます。
 今後、豊島病院の公社化を検討するに当たっては、こうした視点を踏まえることが必要と考えますが、所見を伺います。
 次に、教育について伺います。
 教育の憲法ともいわれる教育基本法が、昨年十二月に改正されました。戦後の教育基本法制定から五十九年間、教育水準は向上し、生活は豊かになりました。その一方で、都市化や少子高齢化が進むなど、教育を取り巻く環境は大きく変化してきました。近年では、子どもの規範意識や学ぶ意欲の低下、家庭や地域の教育力の低下などが指摘されております。
 このような中、安倍総理の強いリーダーシップのもと、新しい時代の教育の基本理念を明確に示し、我が国の未来を切り開く教育を実現するため、我が党の悲願でもあった改正が実現をいたしました。
 新しい教育基本法では、人格の完成という教育の目的を明確にするとともに、その目的を実現するために、公共の精神や我が国と郷土を愛する態度など、教育の目標が新たに規定されました。
 そこで、今回の教育基本法の改正を受け、国もさまざまな取り組みを行うと聞いておりますが、都教育委員会は、今後の都の教育にどのように臨んでいくのか、所見を伺います。
 また、第十六条で、「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」と規定し、法律に基づいて行われる教育行政は、不当な支配には当たらないことを明確にしました。
 これまで、一部の団体などは、旧法を都合のいいように解釈し、教育行政が教育内容や方法にかかわることは、不当な支配であるという主張を展開してきました。国旗・国歌の指導の問題は、まさにその典型であります。
 教育基本法を踏まえ、子どもたちへの指導が適正に行われるようにするために、都教育委員会が今後どのように取り組んでいくのか、決意を伺います。
 さて、教育を考える上で、私立学校の存在も重要であります。今回、教育基本法第八条には、私立学校については、「国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。」と規定されました。これは、我が国の学校教育の発展に対して、私立学校が大きな役割を果たしてきたことを踏まえたもので、今後の私学振興に対する重要な意義づけをしたものであります。
 我が党として、教育基本法に盛り込まれる以前から、東京の教育における私立学校の重要性にかんがみ、私学振興の推進に努めてきたところであります。
 さきの都議会定例会において、我が党の代表質問に対して、公立学校と同様の取り扱いは、私立学校の建学の精神に基づいた教育を損なうおそれがあり、教育の自主性は十分に尊重されるべきであるとのお答えをいただいているところでありますが、改正教育基本法を踏まえ、私立学校の自主性と振興について知事はどのように考えているのか、所見を伺います。
 次に、スポーツ振興施策について伺います。
 スポーツの振興は、世界共通の文化として、世界の人々との相互の理解や認識を深めるなど、国際的な友好と親善のために有意義なものであります。そして、今、東京では、平成二十五年に東京国体の開催を、平成二十八年にはオリンピックの招致を目指して動き始めたところであります。これらの大会の成功のかぎを握るのは、現在小学生から高校生のジュニア選手であります。こうしたジュニア選手たちがトップアスリートに成長し、都内各地域で行われるあらゆる種目において熱戦を繰り広げる姿は、都民に夢や希望を与え、東京におけるスポーツ振興に大きく寄与することとなります。
 そこで、十年後の東京を見据えた、今後の東京都におけるジュニア選手の育成、強化を含めた競技力向上について所見を伺います。
 こうしたジュニア選手の競技力向上には、学校の運動部活動における競技指導もまた重要なこととなります。今後とも、学校における部活動の教育的意義にかんがみ、部活動の振興を一層図っていくことを願うとともに、東京国体や東京オリンピックの招致に向けて、ぜひ地元東京の高校生や選手の活躍を期待するものであります。
 そこで、学校の運動部活動による競技力向上に向けた取り組みについて、どのように推進をしていくのか、お聞きいたします。
 さて、最後になりますが、知事は、開会日の施政方針の中で、このまちを私たちの子孫が胸を張って住める首都としていくため、日本の頭脳部、心臓部である東京のかじ取りを引き続き身命を賭して担う覚悟であると力強く宣言されました。子どもたちや孫たちに何を継承していけるのか、今まさにこのことが厳しく問われているのであります。
 東京が積み重ねてきた歴史の延長線上に私たちが存在していることをもう一度しっかりと認識し、石原知事とともに東京の新しい未来に向かって新しい第一歩を踏み出していきたいとの決意を申し上げ、私の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
  〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 相変わらず声が戻りませんで、ひとつご容赦願います。
 答弁に先立ち、一言申し上げます。
 先週六日、東武東上線ときわ台駅で、線路内に進入した女性を助けようとして電車にはねられ重体となっていた警視庁板橋署の宮本邦彦巡査部長が、十二日、多くの方々の願いと懸命の治療のかいもなく、殉職されました。ご遺族の方々の悲しみはいかばかりかと、心よりお察し申し上げます。
 事故後、交番には花を手向ける人の姿が後を絶たず、警察に寄せる都民の厚い信頼を物語っておりました。みずからの命も顧みずに人命救助に向かった彼の勇気こそ、日本人が忘れかけていた他人のために尽くすという自己犠牲、この国の美風にほかなりません。
 ここに、故宮本警部の犠牲的行為を深く胸に刻み、末永くたたえるとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。
 それでは、宮崎章議員の代表質問にお答えいたします。
 三選にかける意気込みについてでありますが、この八年間、東京から日本を変えるために、都議会の皆様の協力を得ながら独自の政策を複合的、重層的に講じてまいりました。その実績に対する評価については、この春、都民の皆様の判断を仰ぐことになりますが、なかなか動かぬ国を動かし、特に、時にはトップダウンも交えてのさまざまな取り組みが都の再生と都民生活の向上にいささかなりとも貢献してきたことは、都民の皆様にもご理解いただけると思っております。
 しかし、東京発の日本再生は第一章を終えたばかりでありまして、改革を継続してこそ、その成果を日本の新たな発展に結実させていくことができると思います。そのためにも、この八年間の実績を次の四年につなげ、東京を緑とさらに澄んだ空気の大都市としていくことに全力を傾けなければならないと思っております。
 私は、東京から日本を変え、さらには世界の大都市に範を示す決意を新たにしまして、このまちを私たちの子孫が胸を張って楽しみながら住める都市としていくため、東京のかじ取りを引き続き身命を賭して担っていく覚悟でおります。
 次いで、困難と対峙する政治信条についてでありますが、大気汚染の問題に限らず、現に困難に直面している都民を前にして、その救済に万難を排して取り組み、具体的な政策を通じて都民を救うことこそが政治の本来の役割だと思います。
 私はこれまでも、こうした信念に基づき都政の運営に当たってまいりました。時には不可能と思えることであっても、正当な文明批判の視点に立って独自の政策を打ち出してきたつもりであります。これからも動きの鈍い国を待つことなく、都民、国民のために、よかれと思うことを直裁に実行していく覚悟でおります。
 「十年後の東京」についての基本的な考え方でありますが、東京発の日本再生を確固としたものにするためには、東京のポテンシャルを存分に発揮しながら、より高いレベルの成熟した都市を目指していく必要がございます。ここで描いた十年後の東京の姿は、これまでの八年間、都政を預かってきた経験や実績を踏まえ、昨年一年間、多角的な検討を行った上で、東京の可能性を具体的な政策の方向性として示した近未来図であります。
 例えば、新たに千ヘクタールの緑を生み出すとともに、街路樹を今の四十八万本から百万本にふやし、海の森から都心部の緑を街路樹で結ぶグリーンロードネットワークを形成することなど、あるいは三環状道路の整備などによりまして、東京から渋滞がなくなり、平日でもお盆や正月並みの快適な道路交通が実現すること、あるいは最先端の省エネルギー技術を活用し、二〇二〇年までに二〇〇〇年比で二五%のCO2排出削減を達成することなど、心がければ実現のできる、目指すべき東京の姿をはっきりと描いております。
 この実現のためには、都はもとより、都民、企業、行政などの東京全体でムーブメントを起こしていくことが必要でありまして、必ず達成できると確信しております。現に、この間、大きな企業の幹部に参集願って、この提案をいたしましたら、東急電鉄などはもう早速、自分の線路が走っている斜面ののりは全部緑化するという申し出もしてくれました。
 私たちの子孫が胸を張って住める魅力のある首都としていくため、東京が持つ有形無形の大都市力を結集し、一丸となった取り組みを進めてまいります。
 多摩地域が発展する姿についてでありますが、「十年後の東京」は、オリンピックの招致はもとより、その三年前に開催される東京国体も視野に入れまして、東京をさらに機能的で魅力的な都市につくりかえていこうとするものでありまして、緑化の推進や集中的な耐震化対策など、都全域を対象として東京の近未来像を描きました。
 その中で多摩地域は、圏央道の全線開通により沿線一体が都県境を越えて広域のエリアとしてつながり、また、横田基地の軍民共用化に伴う都市機能の充実など、首都圏の中核として一層の発展を遂げる姿を描いております。
 こうした基本的な認識のもとに、首都大学東京などの産業支援拠点を活用した産学公連携の推進によるアジアを代表する産業拠点、いわば多摩シリコンバレーの形成、多摩のすぐれた自然を生かした観光振興や緑の保全、旧秋川高校跡地を活用した中高一貫のアスリート養成校の創設など、多摩地域の新たな可能性を開く政策を掲げております。
 とりわけ多摩シリコンバレーなるものが形成され、発展しますと、多摩地域の経済的なポテンシャルは、あるいは都心部をはるかに上回る未来的なものになると私は思います。
 先端技術産業等の集積や数多くの大学・研究機関、豊かな自然環境など、都心部とは異なる多摩地域の潜在力を十二分に開花させ、市町村とともに連携しながら多摩地域の振興を図ってまいります。
 財政再建の成果と都民への還元についてでありますが、就任当時、都財政は瀕死の状態で、その立て直しが最大の課題でありました。いささか時間を要しましたが、財政再建は今、完全に達成できたと考えております。ようやく知事としての責任を果たすことができまして、肩の荷が少しは軽くなったというのが率直な思いであります。
 今後求められるのは、この成果を都民にしっかりと還元することでありまして、十年後の東京の姿を展望しながら、都民の負託に積極的にこたえていきたいと思っております。
 ただし、バブル期の対応を反省材料として、やみくもな歳出拡大に走るのではなく、安定的、継続的な施策の展開を目指し、財政基盤の強化にも十分留意する必要があると考えております。
 こうした点を踏まえ、財政再建の果実である新たな財源については、喫緊の課題への対応、懸案課題の解消、貯蓄の増強という三点にバランスよく振り向けることを基本に、十九年度予算の編成を行いました。
 次いで、地域防災計画についてでありますが、東京直下地震の被害想定や千葉県北西部地震などの実災害により浮き彫りとなってまいりました課題を克服し、災害に強い東京を実現するため、地域防災計画を抜本的に見直しました。
 地震対策では、人的被害の半減やライフラインの回復による避難生活の早期解消など、減災目標を初めて設定いたしました。
 今後十年以内に減災目標を達成するため、建物の耐震不燃化や緑の防災ネットワーク形成による延焼防止、電力やエレベーターの早期復旧などの対策を推進いたします。
 また、集中豪雨対策では、新たに迅速な初動態勢の確保などを図ってまいります。
 今後、都民や区市町村、防災機関などと連携を強め、防災対策を強力に推進するとともに、実践的な訓練を積み重ね、災害に強い東京の実現に全力を尽くしてまいります。
 次いで、美しい東京を復活させる決意についてでありますが、「十年後の東京」では、都市戦略の第一に美しいまち東京の復活を掲げ、今年度じゅうに思い切った規制に踏み込んだ景観計画を策定いたします。
 具体的には、水辺や文化財庭園などの周辺で、建築物の景観誘導とともに屋上設置の広告物や光源を使った広告物を規制して、水辺や緑と共存する都市空間を再生してまいります。また、一定規模以上の建築物を対象に外壁の色彩についての基準を示し、落ちつきの感じられる街並みを形成してまいります。
 今後、これらの施策を展開することにより、洗練された都市の姿を取り戻し、成熟を遂げた美しい首都東京を実現してまいります。
 今後の住宅政策の展開についてでありますが、これからの十年間で、東京をさらなる成熟を遂げた美しいまち、安全が確保された住み心地のよいまちへと生まれ変わらせる決意であります。
 そのために、大地震の切迫性の高まりや、急速に進展する少子高齢化社会などに対応して、住宅の耐震化や木造住宅密集地域の整備促進などにより、住まいの安心・安全を確保してまいります。
 また、住宅市場における価格破壊を目指しまして、東村山での実証実験では、通常より三割から三割半安い住宅の供給を現に実現いたしました。私、風邪を引いて出席できませんでしたが、来場した人たちが千人ぐらいで、大変だったようでありますけれども、こういった成果を活用し、低廉で質のいい長寿命住宅を普及してまいります。
 あわせて、中古住宅の流通促進を図るなど、世代を超えて住み継がれる住宅まちづくりを積極的に推進してまいります。
 今後の産業振興についてでありますが、都は、これまでのCLO、CBOの発行によって一兆円規模の新債券のマーケットをつくってまいりました。そのうちで五十五社が現に上場を果たしました。こうしたベンチャー企業の育成を初め、独自の産業振興策を打ち出して、国や他の自治体をリードしてもまいりました。
 東京は、他にまねのできないすぐれた技術を持つ中小企業の集積や、巨大で洗練された市場の存在、優秀な人材など大きな可能性を持っております。こうした東京の強みを存分に生かし、技術と経営の革新によって国際競争力を強化し、東京の産業を新たなステージに飛躍させるつもりでございます。
 このため、環境、危機管理、航空機など、今後成長が期待される産業を重点的、戦略的に育成して、東京の産業を牽引してまいります。「十年後の東京」の目指す都市像の実現を産業振興の面から強力に推進していきたいと思っております。
 次いで、都市農地の保全についてでありますが、都市の農地は、農業生産に加え、身近な緑として生活に潤いや安らぎをもたらすなど、都市の貴重な財産であります。
 しかし、この十年を見ますと、現行の農地制度や相続税制のもとで、都市部では千四百ヘクタールもの農地が失われてまいりました。農業者の高齢化が進む中で、このまま放置すれば農地の減少がさらに加速することは明らかでありまして、看過できない大問題であります。
 都市農地を保全していくためには、大都市においても農地が存続できる政策への転換と、相続税制度の改善が絶対に必要であります。これを強く国に求めていくとともに、都としても、農業が継続できるよう、独自の取り組みを率先して進めてまいります。
 次いで、地球温暖化対策への取り組みについてでありますが、地球温暖化のもたらす危機の深刻さは極めて明確になっておりまして、これまで温暖化対策に背を向けてきたアメリカにおいてすら、CO2の削減を求める声が高まっております。
 都は、先月末、CO2の大幅な削減を目指すカーボンマイナス都市づくり推進本部を設置し、世界最高のレベルの温暖化対策を東京から広く発信するべく、十年プロジェクトを本格始動いたしました。都が中心となって、エネルギー事業者、自動車メーカーなど民間企業の力を結集し、さまざまな共同プロジェクトを順次実施するなど、東京の持つポテンシャルを存分に発揮し、CO2の大きな削減を実現してまいります。
 東京だからこそ率先してできる先駆的で実現性のある施策を複合的、重層的に講じて、世界で最も環境負荷の少ない都市を実現してまいります。
 つい先刻、本会議が始まります前に、今度の日曜日に参加してくださる有名な女子のランナーたちの訪問を受けまして、その中で、ほかの都市もいろいろしておりますが東京マラソンのテーマは何でしょうかという問いがありましたので、これはまさに東京から世界を救うんだと。そのつもりで環境対策を積極的にやりますと。
 前にも申しましたが、ポーランドの詩人のゲオルグの言葉のように、地球があした滅びるとも、君はきょうその手でリンゴを植えるという、そういう美しい高潔な、積極的な志を持った人間たちの連帯、このマラソンの大会を通じてその連帯をつくっていきたいということを申しました。
 次いで、緑の都市づくりについてでありますが、「十年後の東京」で示した水と緑の回廊で包まれた東京という近未来像を実現し、世界に誇れる美しい都市を創出するためには、緑の創造と保全を目指す取り組みを飛躍的に強化しなければなりません。このため、都のあらゆる施策の中で緑の視点を重視し、区市町村とともに連携しながら、規制、誘導、税制、都市計画など行政の知恵と力を遺憾なく発揮していきます。
 同時に、民間の都市開発などにおいて一層の緑化を進めるとともに、都民や企業を巻き込み、緑のムーブメントを大々的に展開するなど、東京の総力を挙げた取り組みで美しい緑の都市の実現を目指してまいります。
 障害者施策についてでありますが、都はこれまでも、障害者が地域で安心して生活を送れるよう、グループホームの整備促進など、国に先駆けてさまざまな独自の施策を実施してまいりました。
 昨年十二月に策定した「十年後の東京」では、障害者の自立と社会参加が進み、障害の有無などにかかわらず、だれもが安心して暮らせる地域社会を目指すこととしました。今年度じゅうに策定する東京都障害福祉計画においても、都の先導的取り組みをさらに前進させるとともに、喫緊の課題である障害者の就労支援の充実強化を図り、障害者が地域で自立して暮らせる社会を実現してまいります。
 最後に、私立学校の自主性と振興についてでありますが、多くの子どもが通う東京都の私立学校では、それぞれ建学の精神に基づきまして創意工夫による教育が行われており、生徒、保護者を初め多数の都民から高い信頼を得ております。
 学校教育における私立学校の重要性を考えれば、教育の根本をなす教育基本法に新たに私立学校に関する規定が設けられたことは当然のことでありますけれども、その意義は大きいと思います。
 これまでも都は私立学校の振興に努めてまいりましたが、今後も改正の趣旨を踏まえ、その自主性を尊重し、振興を大いに図っていくつもりでございます。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、東京の教育と教育基本法の改正についてでありますが、都教育委員会では、かねてより我が国の歴史や文化を尊重し、国際社会に生きる日本人の育成及び時代の変化に主体的に対応し、日本の未来を担う人間の育成などを基本理念として教育行政に取り組んできております。
 具体的には、都立高校における都独自の教科科目「奉仕」の必修化や、「日本の伝統・文化」の設定を初め、子どもの生活習慣確立、地域教育の推進、東京教師養成塾、学校への主幹職設置など、数々の先進的な施策を展開してきたところでございます。
 先般改正されました教育基本法で示された公共の精神、伝統・文化の尊重、教員の研究、修養と研修の充実や、家庭教育、学校、家庭、地域の連携協力などは東京都の施策と軌を一にしたものでございまして、国や全国の自治体においてもこれらの課題に取り組まれることは、都教育委員会としても大変心強く思っているところでございます。
 今後も、これまでの取り組みの成果と時代状況を十分に踏まえまして、全国に先駆けた教育改革をさらに推進してまいります。
 次に、適正な教育行政の推進についてであります。
 都教育委員会は、これまでも、法令や学習指導要領に基づき適正な学校教育を実現するための施策を実施してまいりました。今回の改正で、教育は法律に基づいて行われるべきものであると明確に規定されましたが、このような当然のことを明文化せざるを得ない状況があったというふうに認識しております。
 今後とも、子どもたちへの指導が中立性、普遍性を確保し、国民全体の意思に基づいて行われるよう、引き続き各種法令等に基づき公正かつ適正な教育行政を推進してまいります。
 次に、十年後の東京を見据えた競技力向上策についてであります。
 東京国体やオリンピックにおいて東京都選手の活躍を実現するためには、ジュニア選手の発掘、育成を含めた総合的な競技力向上策を整備、推進していくことが不可欠でございます。
 このため、平成十九年度に東京都競技力向上推進本部を設置し、都体育協会、各競技団体、各学校体育連盟等と緊密に連携した選手の発掘、育成、強化の体制を構築するとともに、競技別一貫指導プログラムの整備や医科学サポート体制の確立を推進するなど、十年後を見据えた競技力向上策に取り組んでまいります。
 また、平成十九年度は、ジュニア育成地域推進事業や国体候補のジュニア選手強化事業についても拡充を図りまして、総合的な競技力向上策の一環として、ジュニア選手の発掘、育成、強化を重点的に進めてまいります。
 最後に、運動部活動による競技力向上についてでございます。
 これまで、都教育委員会は、運動部活動が児童生徒の人格形成や健全育成において有益な教育活動でありますことから、部活動の振興によりスポーツの普及に努めてきたところであります。東京国体やオリンピックを見据えますと、さらなる競技力の向上に重点化した事業を行うことが必要でございます。
 このため、今後、専門的な指導者がいない競技種目等につきましては、各競技団体等と連携を図りまして重点的に指導者養成を行ったり、拠点となる学校を指定しまして、こうした種目の競技人口を拡大してまいります。
 また、スポーツの特別推薦で入学した都立高校の生徒に対しまして、強化練習会の実施や専門的な指導者の導入により能力開発を行うなどいたしまして、運動部活動による競技力の向上を推進してまいります。
   〔知事本局長山口一久君登壇〕

○知事本局長(山口一久君) 「十年後の東京」の実現に向けた実効性の確保についてのご質問でございますが、この実現のためには、区市町村と十分連携を図りつつ、都民、企業と協働しながら東京全体で取り組みを進めていくことが必要でありますが、まず財政、組織、政策展開とが一体となった都の率先的な取り組みが欠かせないものと考えております。
 財政面につきましては、昨年設置いたしました東京オリンピック開催準備基金に加え、地球温暖化対策推進基金など新たに三つの基金を創設し、今後の政策展開について集中的、重点的な投資を行うことで取り組みを加速させます。
 また、推進体制の充実としましては、スポーツ振興のための専管組織を設けることや、先月設置しました緑の都市づくり推進本部、東京都子ども・若者問題対策会議を初め、組織横断型の戦略会議を今後もさまざまな分野で活用してまいります。
 こうした基金の戦略的活用と、組織の壁を超えた全庁の英知を束ね、毎年度の重要施策、重点事業の中で政策の確実な具体化を図りながら、東京の近未来像を実現してまいります。
   〔財務局長谷川健次君登壇〕

○財務局長(谷川健次君) 新たな基金創設の意義とその活用方針についてでございます。
 このたびの基金は、「十年後の東京」の推進に向け、集中的、重点的な財源投入が高い効果を発揮すると見込まれる福祉、医療など三つの分野について、より積極的な施策の展開を図ることを目的として設置したものでございます。
 税収の好調なこの時期に特定の施策に対する財源をあらかじめ確保することによりまして、景気変動に左右されることのない安定的な事業の実施と、それによる都民サービスの充実を担保する仕組みが構築でき、基金の創設には大きな意義があるものと考えてございます。
 活用に当たりましては、おおむね十年以内に終了する時限的な事業の中から、それぞれの基金の設置目的、投資効果などを考慮しつつ選定し、充当していく方針でございます。
   〔主税局長菅原秀夫君登壇〕

○主税局長(菅原秀夫君) 都税収入の確保に向けた取り組みにつきましてお答えを申し上げます。
 都民のご期待にこたえる施策を引き続き積極的に展開していくためには、都政を財政面から支えております都税の徴収確保に努めていくことが強く求められております。
 都は、インターネット公売の実施、自動車へのタイヤロックの装着など、全国に先駆けた、創意工夫を凝らしたさまざまな取り組みに努めてまいりまして、都税の徴収率は過去最高を更新しているところでございます。
 さらに、鉄軌道用地に係る固定資産税の課税の適正化につきましても問題提起をいたしまして、税制改正として結実させるなど、適正公平な課税の実現にも努めてまいりました。
 今後とも、現状に満足することなく、都税収入の確保に向けた取り組みをさらに積極的に積み重ねてまいりまして、唯一の歳入所管局に課せられた責務を全力で果たしてまいります。
   〔総務局長大原正行君登壇〕

○総務局長(大原正行君) 二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、多摩振興についてでございますが、都が多摩振興に取り組む基本的施策として、平成十七年に多摩リーディングプロジェクトを策定し、多摩南北道路主要五路線の整備など、これまで着実に事業を推進してまいりました。
 昨年十二月に策定をされました「十年後の東京」では、道路交通網の整備など都市機能の向上や、多摩シリコンバレーの形成など産業の活性化を図り、多摩地域を首都圏の中核拠点として発展させるとの方向が示されました。
 今回の多摩リーディングプロジェクトの改定は、こうした考え方を踏まえまして、内容の充実を図ったものでございます。
 都がみずから行う多摩重点推進事業につきましては、事業数をこれまでの二十事業から二十五事業に拡充し、区部、多摩を結ぶ骨格幹線道路の整備や多摩地域の産業支援の強化などを盛り込んでおります。
 また、十九年度予算額も七百八十七億円と今年度より大幅に増額するなど、事業の進捗や新たな課題に対応したものとなっております。
 こうした都の取り組みと同時に、多摩の振興には市町村の役割が極めて重要であることはご指摘のとおりでございます。そのために、市町村が主体的なまちづくりや地域の振興に積極的に取り組めるよう、市町村総合交付金については、過去最高額の三百四十億円を計上いたしました。この交付金を一層活用いたしまして、市町村を強力に支援してまいります。
 今後とも、都の関係局や市町村と十分連携を図りながら、多摩の振興に努めてまいります。
 次に、都区のあり方の検討についてでございます。
 東京が将来にわたり日本を牽引する役割を果たしていくためには、行政を担います都区のあり方についても、時代の要請に合わせて見直していく必要がございます。
 今後、都は、大都市経営の担い手として、東京の活力を支える都市基盤の整備を進めますとともに、集積のメリットを生かして、産業振興、人材育成、科学技術、文化振興などに積極的に取り組むことが求められております。
 また、特別区は、基礎的自治体として、その行財政能力を高め、より広範に地域の事務を担い、みずからの責任で、福祉、教育、住宅など、住民に身近な行政サービスを効率的に提供していかなければなりません。
 都区のあり方の検討に当たりましては、こうした都と特別区の役割が十分に果たせますよう、特別区への一層の事務移管とともに、これと密接にかかわる特別区の区域のあり方をあわせて検討し、それらを踏まえまして、税財政制度のあり方の検討へと進めてまいります。
 今回、検討組織として、都区協議会のもとに、都区のあり方検討委員会及び専門的な調査検討を行う幹事会を設置いたしまして、既に第一回の会議を開催いたしました。今後、特別区と精力的に検討を進めまして、おおむね二年後の平成二十年度末を目途に、都区のあり方の基本的方向を取りまとめてまいります。
   〔交通局長松澤敏夫君登壇〕

○交通局長(松澤敏夫君) 都営地下鉄に関する二点のご質問についてお答えをいたします。
 まず、都営地下鉄の今後の経営見通しについてでございますが、大江戸線のネットワーク効果などによる乗客数の着実な増加や減価償却費などの減少、また、これまでの効率化策が実りまして、地下鉄事業の経常損益では、平成十九年度予算において、昭和三十五年の開業以来、初めて黒字転換を見込める状況にまでなったところでございます。
 しかしながら、ご指摘のとおり、ストック面におきましては、累積欠損金がいまだ約四千八百億円と膨大な額に達しておりまして、その解消には相当な年月を要すると見込まれるところでございます。
 また、将来的には、少子高齢化や低成長経済のもとで乗客数の大幅な伸びが期待できない一方、今後、施設の更新期を迎え、これに伴う大規模な投資が増加することなどもありまして、依然として厳しい経営状況が続くものと考えております。
 次に、都営地下鉄の経営改善についてでございますが、今回策定いたしました三カ年の経営計画、新チャレンジ二〇〇七では、経営力の強化を重点的取り組みとして掲げまして、民間並みの効率性がこれまで以上に発揮できるよう、思い切った経営改革を進めることとしております。
 地下鉄事業につきましては、今後、この計画に沿って、駅業務の委託の拡大や職員定数の削減、徹底したコスト管理などの効率化の方策を確実に実施する一方、観光客やビジネス客を対象に戦略的なPRを行うなど、新たな視点での増客、増収対策にも努めてまいります。
 こうした取り組みによりまして、計画期間中は運賃を据え置く一方、財務体質の改善を進めまして、経常利益の拡大を図ることにより累積欠損金の解消を目指してまいります。
   〔港湾局長津島隆一君登壇〕

○港湾局長(津島隆一君) 東京港における海岸保全施設の緊急整備計画についてでございますが、ご指摘のとおり、首都直下地震の切迫性が高まっていることから、本計画は、緊急性を要する既存施設の耐震、老朽化対策を目的として策定するものでございます。
 具体的には、従来のペースでは二十五年間要するところを、おおむね十年間と短縮し、平成二十七年度を目標に完了させる見込みでございます。このうち、被災すると大きな被害を及ぼす外郭防潮堤と水門については優先的に実施し、今後五年程度ですべて完了させたいと考えております。
 現在、計画の取りまとめを行っているところであり、今後、この計画に基づき、財源確保を図り、着実に施設整備を進め、都民がより一層安心して暮らせる東京の実現に努めてまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 五点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、耐震改修促進計画策定のねらいについてでございますが、東京は、人口や政治、経済が集中する大都市であり、住宅を初めとする建築物の安全性を高め、都民はもとより、国内外から東京を訪れる多数の人々の安全と安心を確保することが重要でございます。このため、本計画は、十年後における住宅や建築物の耐震化の具体的な目標を設定し、その実現に向けた施策の考え方について明らかにするものでございます。
 本計画の策定により、建物所有者や区市町村等の関係機関が目標を共有するとともに、自助、共助、公助の原則を踏まえた適切な役割分担のもと、耐震化を促進し、震災に強い首都東京の実現を目指してまいります。
 次に、民間建築物の耐震化に向けた取り組みについてでございますが、都としては、建物所有者が主体的に耐震化に取り組んでいけるよう、適切な情報提供や技術的支援を行うとともに、公共的な観点から、木造住宅密集地域において住宅の耐震助成を開始し、より一層の耐震化に努めております。
 本計画では、これに加え、重要な幹線道路沿道の建物の耐震化を進めることとし、平成十九年度には、代表的な三路線を先行的に指定し、耐震助成を初めとした具体的な取り組みに着手いたします。
 今後は、区市町村とも連携し、こうした取り組みを強力に進め、災害時における道路ネットワークの確保を図り、災害への備えに万全を期してまいります。
 次に、民間開発における景観の誘導についてでございますが、今回の景観計画の素案では、これまでの自主条例に基づく届け出制度から、景観法を根拠にして、建築物等の色彩に関する変更命令や罰則の適用も可能となる実効性のある制度へと移行いたします。
 また、特定街区、総合設計制度等を活用する大規模な開発については、景観に与える影響を考慮して、許認可手続の一環として事前協議を実施し、周辺の街並みと調和のとれた計画といたします。
 特に、景観形成が重要な水辺や文化財庭園の周辺などにおいては、景観シミュレーションや模型等も活用し、地域の景観資源を生かした計画を誘導することにより都市の魅力を高めてまいります。
 次に、公共施設の整備による景観形成についてでございますが、道路や公園、河川などの公共施設は、その周辺の土地利用と相まって、地域の景観を特徴づける大きな要素となっております。このため、景観計画の素案では、景観上重要な公共施設を指定して、景観に配慮した整備を行うこととしております。
 具体的には、東京駅から皇居に向かう行幸通り、日本初の近代洋風公園である日比谷公園、江戸の昔から人々に親しまれてきた隅田川等を対象に、公共施設管理者と連携して施設の魅力を高めてまいります。
 今後、こうした取り組みを順次拡大し、美しく風格のある景観を創出してまいります。
 最後に、民間活用型都民住宅の経営についてでございますが、都はこれまで、入居率向上のため、国に働きかけ、所得、世帯構成及び住所の資格要件緩和など、制度の見直しに取り組んでまいりました。
 特に、長期の空き家については、所得要件の撤廃を実現いたしました。借り上げを行っている住宅供給公社においても、募集方法の見直しや家賃の適正化などに取り組んできております。
 しかし、空き家率の改善が見られない住宅があることなどを踏まえ、今後は、こうした住宅の実態把握や、さらなる入居促進に向けた取り組みを進めてまいります。
 あわせて、管理期間満了を見据え、オーナーの公庫借入金の償還期間の延長などを国に対して要望してまいります。
 さらに、関係部局による検討組織を立ち上げ、良質なストックである都民住宅の有効活用に向けて、オーナー対策を含め、対応策を幅広く検討してまいります。
   〔建設局長依田俊治君登壇〕

○建設局長(依田俊治君) 都市基盤整備に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、十年後の東京を見据えた道路、河川、公園の整備目標についてでありますが、東京を快適で利便性が高く、災害に強い都市とするためには、都民が実感できる明確な目標を掲げ、実現していくことが重要でございます。
 重立った具体的な目標として、道路では、幹線道路ネットワークの整備や連続立体交差事業の推進などにより、都内の混雑時の平均旅行速度をお盆や正月並みの二十五キロに向上させること、河川では、護岸や調節池の整備などの重点的な対策により、過去の水害と同規模の降雨による被害の九割を解消させること、公園では、日比谷公園十二個分に相当する都立公園を新たに開園させるとともに、防災上重要な拠点に位置づけられている二十七の公園で防災関連施設の整備を完了させることなどを設定し、その達成を目指して戦略的に事業を展開してまいります。
 今後とも、広く都民の理解を得ながら、財源の確保、一層のコスト縮減、区市町村との連携などに努め、都市基盤整備を着実に推進してまいります。
 次に、道路の緑化や水辺空間の整備など、今後十年間の取り組みについてでございますが、東京をさらに風格ある都市とするため、都市の骨格となる道路、河川、公園などの整備に当たっては、緑の充実や景観の向上の視点を十分に取り入れていくことが重要でございます。
 このため、緑の拠点となる公園の整備や、これらをつなぐ街路樹を倍増することなどにより、緑のネットワークを充実させてまいります。
 あわせて、センター・コア・エリア内やオリンピック関連施設周辺の都道の一〇〇%無電柱化に取り組むとともに、主要駅周辺などで区市とも連携して面的な無電柱化を進めることにより、道路景観の向上を図ってまいります。
 また、隅田川などではテラスやスーパー堤防の整備を、野川などの河川では多自然川づくりなどにより、魅力的な水辺空間を創出してまいります。
 こうした取り組みを一体的に展開し、水と緑に囲まれた美しい東京の実現に総力を挙げ取り組んでまいります。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、産業振興基本戦略の具体化についてであります。
 基本戦略においては、重点産業の育成、技術・経営革新の誘発と産業基盤の強化、魅力ある都市の創出、人材育成の四つの戦略を定め、今後の施策の方向性を示しております。
 この基本戦略を着実に実施するため、今後三年間で展開すべき施策を盛り込んだ産業振興指針を平成十九年度に策定し、この指針に基づき事業の具体化を図ってまいります。
 また、施策の実効性を高めるため、東京都産業力強化会議において全庁的取り組みを推進するとともに、国、八都県市、区市町村を初め、東京の強みであります大学・研究機関、民間企業等とのネットワークを強化拡充し、幅広く施策を展開してまいります。
 次に、資金供給の円滑化についてであります。
 責任共有制度導入に当たり、都の制度融資利用者の四割程度につきましては全部保証が維持されることとなりましたが、厳しい経営環境が続く中、資金繰りに苦しむ中小企業への迅速かつ適切な資金供給は極めて重要であります。このため、平成十九年度におきましては、全部保証の対象となる小規模事業者に対する融資を充実するため、預託金を五十億円増額することといたしました。
 また、部分保証の対象となる場合については、経営状況が悪化している小規模事業者を支援するため、経営支援融資において保証料補助を実施することとしました。
 今後とも、東京信用保証協会及び新銀行東京などの金融機関と連携協力を図り、中小企業の資金調達の円滑化に努めてまいります。
 最後に、中小企業の人材確保、育成の支援についてであります。
 団塊世代の大量退職が見込まれる中、多くの中小企業が人材の確保、育成に苦慮しております。このため、都は、来年度、技術専門校を四つのブロックに再編の上、職業能力開発センターを設置し、従来の職業訓練に加え、中小企業の人材確保、育成を支援していくことといたしました。
 同センターでは、総合相談窓口を設置し、企業内訓練のコーディネートや講師の紹介等を行うとともに、業界団体と連携し、雇用を前提とした企業委託訓練等を実施してまいります。
 また、飯田橋のしごとセンターでは四〇%を超える高い就職率を達成しておりますが、そのノウハウを活用し、ことしの夏を目途に、国分寺にしごとセンター多摩を開設することといたしました。
 しごとセンター多摩では、特に、身近な地域での支援が有効なフリーターの就業や、女性、団塊世代の再就職を支援し、潜在的な労働力の活用を図り、中小企業の人材確保につなげてまいります。
 さらに今後は、これらの施設の連携を強化し、企業と人材を結びつける新たな機会を提供するなど、中小企業の人材確保、育成への支援を一層充実してまいります。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 福祉、保健、医療に関する六点の質問にお答えいたします。
 まず、福祉のまちづくりについてでございますが、都はこれまでも、高齢者、障害者を初め、だれもが自由に行動し、社会参加できるよう、ユニバーサルデザインの理念に基づきまして、区市町村が行う地域特性に応じた面的、一体的なまちづくりを支援するモデル事業を実施してまいりました。
 これらの成果を踏まえまして、また、オリンピック、パラリンピックの招致、国体の開催等を好機といたしまして、来年度、ユニバーサルデザイン整備促進事業を本格的に開始し、競技会場等の集客施設の周辺地域を中心に、福祉のまちづくりを積極的に展開してまいります。
 こうしたことにより、東京で生活する人のみならず、全国、全世界から集う多くの人が安全、快適に過ごすことができる、世界のユニバーサルデザインの最先端都市東京を目指してまいります。
 次に、福祉・健康安心基金についてでございますが、本基金は、子育てや老後、健康に対する都民の不安の解消を目的に、将来に向けた戦略的政策展開を実効性のあるものとするため、平成十九年度に新たに設置するものでございます。
 この基金を財源といたしまして展開していく事業については、仕事と子育ての両立支援、がん検診体制の整備、医療人材確保対策、がん、認知症対策などの研究の充実、ユニバーサルデザインのまちづくりなどを予定しておりまして、具体的には来年度から検討してまいります。
 今後、福祉・健康安心基金を活用いたしまして、「十年後の東京」で示した、だれもが安心して暮らせる都市の実現に向けて、集中的、重点的に施策を展開してまいります。
 次に、がん対策の推進についてでございます。
 都はこれまでも、がん検診の受診促進やがん診療連携拠点病院の整備、緩和ケアに携わる人材の育成など、さまざまな取り組みを行ってまいりました。しかしながら、診断、治療技術の向上にもかかわらず、がんは依然として都民の死亡原因の第一位を占め、多くの都民の不安を招いている現状があり、都としても、これまで以上にがん対策を強化すべきと考えております。
 このため、平成十九年度早期に、医療関係者や学識経験者、患者団体の代表などから成る東京都がん対策推進協議会を設置いたしまして、予防、早期発見対策の充実、専門的治療水準の向上、相談支援体制の強化を中心にご検討いただく予定でございます。
 これを踏まえ、今後の都における総合的ながん対策を明らかにする東京都がん対策推進計画を来年度内に策定いたしまして、がん対策の充実に取り組んでまいります。
 お話しの先進的な放射線治療や化学療法などについては、現在、国が評価、検証を行っているところでございますが、この協議会で専門家の立場から幅広くご議論いただきまして、国の動向も踏まえて、今後のがん医療の向上に生かしてまいります。
 次に、障害福祉計画についてでございますが、現在策定中の東京都障害福祉計画では、障害者自立支援法の趣旨を踏まえ、これまで都が国に先駆けて進めてきた地域生活移行の取り組みや、喫緊の課題であります就労支援等の強化を基本に据えることとしております。
 こうした考えのもと、障害福祉サービスの必要見込み量を初め、入所施設から地域生活への移行や、いわゆる社会的入院の状態にある精神障害者の退院の促進、就労支援の充実強化などについて、平成二十三年度末までの具体的な数値目標を本計画に定める予定でございます。
 都は、区市町村や関係機関等からの意見なども十分踏まえながら、障害の有無等にかかわらず、だれもが安心して暮らせる地域社会の実現に向け、本計画の策定に鋭意取り組んでまいります。
 次に、障害者自立支援法の円滑な運用のための新たな改善策についてでございますが、自立支援法は、障害者がその有する能力や適性に応じ、自立した生活を営むことができるよう支援を行い、障害の程度や種別にかかわらず、安心して暮らすことのできる社会の実現を目的としております。
 しかしながら、今回の改革が広範かつ抜本的なものであったことから、昨年十月の本格施行後も、障害者を初め多方面からさまざまな意見が出されたのも事実でございます。
 今回の国の改善策は、法の目指す改革を着実に進めていくため、法の施行状況や関係者の意見を踏まえて、激変緩和という観点から対応するものでございまして、お話のあった具体的な対策を含むご提言や、昨年十一月に行った都の緊急要望などが結実したものと考えております。
 最後に、シルバーパス事業の経過措置についてでございますが、平成十八年度の経過措置は、税制改正の影響によりまして、シルバーパスの利用者負担金が千円から二万五百十円に増額となる方について、激変緩和の観点から、これを一年間、千円の負担に据え置く措置を講じたものでございます。
 シルバーパス事業を今後とも維持していくためには、利用者である高齢者の理解も得ながら、社会状況の変化に的確に対応していく必要がございます。ご要望のありました経過措置を十九年度も継続することについては、ご指摘の点なども踏まえまして、適切に検討してまいります。
   〔病院経営本部長大塚孝一君登壇〕

○病院経営本部長(大塚孝一君) 豊島病院に関連する二つのご質問にお答えいたします。
 まず、豊島病院を公社に移管する意義についてでございますが、診療報酬のマイナス改定や深刻な医師不足など、病院経営を取り巻く環境が厳しさを増す中で、限りある医療資源を最大限有効に活用していくためには、医療機関相互の機能連携を強化することが重要なかぎとなります。
 豊島病院は、区西北部二次保健医療圏内在住の患者さんが八割以上を占め、紹介率も六割に達するなど、現実に地域に密着した運営を展開しており、さらなる地域医療機能の充実が求められております。このため、これまで五つの地域病院を安定的に経営してきた実績を持つ東京都保健医療公社に移管することによりまして、地域の医療ニーズにより弾力的に対応するとともに、総体としての医療サービスのさらなる向上を図ろうとするものでございます。
 次に、豊島病院の公社化に当たりましての充実策についてでございますが、ご指摘のように、豊島病院が地域開放型病院として地元自治体と協力して地域医療の充実を図ることは、極めて重要であると認識しております。
 地元板橋区は、地域医療を充実するためみずから努力するとした上で、豊島病院には、小児医療やリハビリテーション医療の推進など、具体的な医療需要への対応を求めております。このため、豊島病院内に地元の自治体や地域の医療関係者等で構成する運営協議会準備会を設置いたしまして、地域のニーズを踏まえた具体的な医療機能などのほか、新たな発想による連携方法も含めまして、公社化に向けた課題について検討してまいります。

○議長(川島忠一君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後二時五十三分休憩