平成十九年東京都議会会議録第一号

平成十九年二月七日(水曜日)
 出席議員(百二十四名)
一番遠藤  守君
二番伊藤 興一君
三番きたしろ勝彦君
四番田中たけし君
五番鈴木 隆道君
六番後藤 雄一君
七番福士 敬子君
八番伊沢けい子君
九番そなえ邦彦君
十番原田 恭子君
十一番山口  拓君
十二番伊藤 ゆう君
十三番原田  大君
十四番河野百合恵君
十五番小竹ひろ子君
十六番松葉多美子君
十七番大松  成君
十八番中山 信行君
十九番高倉 良生君
二十番神林  茂君
二十一番早坂 義弘君
二十二番崎山 知尚君
二十三番宇田川聡史君
二十四番石森たかゆき君
二十五番高橋 信博君
二十六番鈴木あきまさ君
二十七番秋田 一郎君
二十八番山口 文江君
二十九番佐藤 広典君
三十番尾崎 大介君
三十一番伊藤まさき君
三十二番松下 玲子君
三十三番野上ゆきえ君
三十四番たぞえ民夫君
三十五番村松みえ子君
三十六番橘  正剛君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番谷村 孝彦君
四十番矢島 千秋君
四十一番高橋かずみ君
四十二番串田 克巳君
四十三番吉原  修君
四十四番山田 忠昭君
四十五番臼井  孝君
四十六番林田  武君
四十七番野島 善司君
四十八番服部ゆくお君
四十九番大西由紀子君
五十番西岡真一郎君
五十一番吉田康一郎君
五十二番斉藤あつし君
五十三番泉谷つよし君
五十四番くまき美奈子君
五十五番大西さとる君
五十六番増子 博樹君
五十七番かち佳代子君
五十八番植木こうじ君
五十九番長橋 桂一君
六十番野上 純子君
六十一番東村 邦浩君
六十二番小磯 善彦君
六十三番東野 秀平君
六十四番田代ひろし君
六十五番三宅 茂樹君
六十六番高木 けい君
六十七番山加 朱美君
六十八番村上 英子君
六十九番坂本たけし君
七十番川井しげお君
七十一番鈴木 一光君
七十二番吉野 利明君
七十三番いのつめまさみ君
七十四番門脇ふみよし君
七十五番小沢 昌也君
七十六番石毛しげる君
七十七番岡崎 幸夫君
七十八番柿沢 未途君
七十九番初鹿 明博君
八十番清水ひで子君
八十一番古館 和憲君
八十二番松村 友昭君
八十四番ともとし春久君
八十五番木内 良明君
八十六番鈴木貫太郎君
八十七番倉林 辰雄君
八十八番樺山たかし君
八十九番近藤やよい君
九十番こいそ 明君
九十一番松原 忠義君
九十二番新藤 義彦君
九十三番古賀 俊昭君
九十四番立石 晴康君
九十五番桜井  武君
九十六番野村 有信君
九十七番酒井 大史君
九十八番花輪ともふみ君
九十九番大沢  昇君
百番大津 浩子君
百一番大塚たかあき君
百二番相川  博君
百三番中村 明彦君
百四番曽根はじめ君
百五番大山とも子君
百六番石川 芳昭君
百七番中嶋 義雄君
百八番石井 義修君
百十番比留間敏夫君
百十一番遠藤  衛君
百十二番高島なおき君
百十三番宮崎  章君
百十四番大西 英男君
百十五番山崎 孝明君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十一番山下 太郎君
百二十二番馬場 裕子君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番田中  良君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番渡辺 康信君

 欠席議員 一名
八十三番 藤井 一君
欠員
百九番 百二十番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事横山 洋吉君
副知事大塚 俊郎君
副知事関谷 保夫君
出納長幸田 昭一君
教育長中村 正彦君
知事本局長山口 一久君
総務局長大原 正行君
財務局長谷川 健次君
警視総監伊藤 哲朗君
主税局長菅原 秀夫君
生活文化局長渡辺日佐夫君
都市整備局長柿堺  至君
環境局長村山 寛司君
福祉保健局長山内 隆夫君
産業労働局長島田 健一君
建設局長依田 俊治君
港湾局長津島 隆一君
交通局長松澤 敏夫君
消防総監関口 和重君
水道局長御園 良彦君
下水道局長前田 正博君
青少年・治安対策本部長舟本  馨君
東京オリンピック招致本部長熊野 順祥君
病院経営本部長大塚 孝一君
中央卸売市場長比留間英人君
選挙管理委員会事務局長梶原 康二君
人事委員会事務局長高橋 道晴君
労働委員会事務局長押元  洋君
監査事務局長白石弥生子君
収用委員会事務局長中田 清己君
包括外部監査人園  マリ君

二月七日議事日程第一号
第一 第一号議案
  平成十九年度東京都一般会計予算
第二 第二号議案
  平成十九年度東京都特別区財政調整会計予算
第三 第三号議案
  平成十九年度東京都地方消費税清算会計予算
第四 第四号議案
  平成十九年度東京都小笠原諸島生活再建資金会計予算
第五 第五号議案
  平成十九年度東京都母子福祉貸付資金会計予算
第六 第六号議案
  平成十九年度東京都心身障害者扶養年金会計予算
第七 第七号議案
  平成十九年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
第八 第八号議案
  平成十九年度東京都農業改良資金助成会計予算
第九 第九号議案
  平成十九年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
第十 第十号議案
  平成十九年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
第十一 第十一号議案
  平成十九年度東京都と場会計予算
第十二 第十二号議案
  平成十九年度東京都都営住宅等事業会計予算
第十三 第十三号議案
  平成十九年度東京都都営住宅等保証金会計予算
第十四 第十四号議案
  平成十九年度東京都都市開発資金会計予算
第十五 第十五号議案
  平成十九年度東京都用地会計予算
第十六 第十六号議案
  平成十九年度東京都公債費会計予算
第十七 第十七号議案
  平成十九年度東京都多摩ニュータウン事業会計予算
第十八 第十八号議案
  平成十九年度東京都臨海都市基盤整備事業会計予算
第十九 第十九号議案
  平成十九年度東京都病院会計予算
第二十 第二十号議案
  平成十九年度東京都中央卸売市場会計予算
第二十一 第二十一号議案
  平成十九年度東京都都市再開発事業会計予算
第二十二 第二十二号議案
  平成十九年度東京都臨海地域開発事業会計予算
第二十三 第二十三号議案
  平成十九年度東京都港湾事業会計予算
第二十四 第二十四号議案
  平成十九年度東京都交通事業会計予算
第二十五 第二十五号議案
  平成十九年度東京都高速電車事業会計予算
第二十六 第二十六号議案
  平成十九年度東京都電気事業会計予算
第二十七 第二十七号議案
  平成十九年度東京都水道事業会計予算
第二十八 第二十八号議案
  平成十九年度東京都工業用水道事業会計予算
第二十九 第二十九号議案
  平成十九年度東京都下水道事業会計予算
第三十 第三十号議案
  東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例
第三十一 第三十一号議案
  特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十二 第三十二号議案
  市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十三 第三十三号議案
  東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例
第三十四 第三十四号議案
  平成十八年度分の都と特別区及び特別区相互間の財政調整の特例に関する条例
第三十五 第三十五号議案
  東京都組織条例の一部を改正する条例
第三十六 第三十六号議案
  東京都職員定数条例の一部を改正する条例
第三十七 第三十七号議案
  東京都知事等の給料等に関する条例の一部を改正する条例
第三十八 第三十八号議案
  東京都知事の給料等の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十九 第三十九号議案
  災害時において応急措置の業務に従事した者の損害補償に関する条例の一部を改正する条例
第四十 第四十号議案
  東京都国民保護対策本部及び緊急対処事態対策本部条例の一部を改正する条例
第四十一 第四十一号議案
  職員の定年等に関する条例の一部を改正する条例
第四十二 第四十二号議案
  東京都特別職報酬等審議会条例の一部を改正する条例
第四十三 第四十三号議案
  東京都知事等の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十四 第四十四号議案
  東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十五 第四十五号議案
  東京都人事委員会委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第四十六 第四十六号議案
  東京都監査委員条例の一部を改正する条例
第四十七 第四十七号議案
  東京都監査委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第四十八 第四十八号議案
  東京都公債条例の一部を改正する条例
第四十九 第四十九号議案
  財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例の一部を改正する条例
第五十 第五十号議案
  東京都都税条例の一部を改正する条例
第五十一 第五十一号議案
  東京都自動車税総合事務所設置条例の一部を改正する条例
第五十二 第五十二号議案
  東京都自動車税事務所設置条例を廃止する条例
第五十三 第五十三号議案
  アメリカ合衆国軍隊の構成員等の所有する自動車に対する自動車税の賦課徴収の特例に関する条例の一部を改正する条例
第五十四 第五十四号議案
  東京都収入証紙条例の一部を改正する条例
第五十五 第五十五号議案
  東京都副出納長設置条例を廃止する条例
第五十六 第五十六号議案
  東京都公益認定等審議会条例
第五十七 第五十七号議案
  東京都スポーツ・文化振興交流基金条例
第五十八 第五十八号議案
  東京都私立学校教育助成条例の一部を改正する条例
第五十九 第五十九号議案
  東京都育英資金条例の一部を改正する条例
第六十 第六十号議案
  東京都教育委員会の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第六十一 第六十一号議案
  東京都学校経営支援センター設置条例の一部を改正する条例
第六十二 第六十二号議案
  学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
第六十三 第六十三号議案
  都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例の一部を改正する条例
第六十四 第六十四号議案
  東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第六十五 第六十五号議案
  東京都立学校の授業料等徴収条例の一部を改正する条例
第六十六 第六十六号議案
  東京都立学校校外教育施設設置条例を廃止する条例
第六十七 第六十七号議案
  東京都体育施設条例の一部を改正する条例
第六十八 第六十八号議案
  東京都都市整備局関係手数料条例の一部を改正する条例
第六十九 第六十九号議案
  東京都福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例
第七十 第七十号議案
  東京都立看護専門学校条例の一部を改正する条例
第七十一 第七十一号議案
  東京都身体障害者更生援護施設条例の一部を改正する条例
第七十二 第七十二号議案
  東京都知的障害者援護施設条例の一部を改正する条例
第七十三 第七十三号議案
  東京都児童福祉施設条例の一部を改正する条例
第七十四 第七十四号議案
  東京都心身障害者福祉作業所条例を廃止する条例
第七十五 第七十五号議案
  東京都心身障害者生活実習所条例を廃止する条例
第七十六 第七十六号議案
  東京都養護老人ホーム条例の一部を改正する条例
第七十七 第七十七号議案
  東京都三宅島災害被災者帰島生活再建支援条例の一部を改正する条例
第七十八 第七十八号議案
  東京都女性福祉資金貸付条例の一部を改正する条例
第七十九 第七十九号議案
  東京都感染症の診査に関する協議会条例の一部を改正する条例
第八十 第八十号議案
  東京都結核の診査に関する協議会条例を廃止する条例
第八十一 第八十一号議案
  東京都薬物の濫用防止に関する条例の一部を改正する条例
第八十二 第八十二号議案
  東京都福祉・健康安心基金条例
第八十三 第八十三号議案
  東京都しごとセンター条例の一部を改正する条例
第八十四 第八十四号議案
  東京都立技術専門校条例の一部を改正する条例
第八十五 第八十五号議案
  東京都労働資料センター条例の一部を改正する条例
第八十六 第八十六号議案
  東京都農業関係試験等手数料条例の一部を改正する条例
第八十七 第八十七号議案
  東京都森林整備地域活動支援基金条例の一部を改正する条例
第八十八 第八十八号議案
  東京都海上公園条例の一部を改正する条例
第八十九 第八十九号議案
  東京都地球温暖化対策推進基金条例
第九十 第九十号議案
  都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例
第九十一 第九十一号議案
  東京都自然公園条例の一部を改正する条例
第九十二 第九十二号議案
  東京都環境科学研究所手数料条例の一部を改正する条例
第九十三 第九十三号議案
  東京都水防条例の一部を改正する条例
第九十四 第九十四号議案
  東京都公有土地水面使用料等徴収条例の一部を改正する条例
第九十五 第九十五号議案
  東京都立公園条例の一部を改正する条例
第九十六 第九十六号議案
  東京都特定自動車条例の一部を改正する条例
第九十七 第九十七号議案
  東京都給水条例の一部を改正する条例
第九十八 第九十八号議案
  東京都下水道条例の一部を改正する条例
第九十九 第九十九号議案
  警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第百 第百号議案
  警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例
第百一 第百一号議案
  警視庁留置施設視察委員会の設置に関する条例
第百二 第百二号議案
  東京消防庁職員定数条例の一部を改正する条例
第百三 第百三号議案
  特別区の消防団員等の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第百四 第百四号議案
  救急業務等に関する条例の一部を改正する条例
第百五 第百五号議案
  都営住宅十八CH─一〇五東(江東区大島九丁目第二・江東区施設)工事請負契約
第百六 第百六号議案
  都営住宅十八H─一〇九東(北区西が丘三丁目)工事請負契約
第百七 第百七号議案
  平成十八年度東京港臨海道路(Ⅱ期)若洲側アプローチ橋りょう鋼けた製作・運搬工事請負契約
第百八 第百八号議案
  包括外部監査契約の締結について
第百九 第百九号議案
  東京都と神奈川県との境界にわたる町田市と相模原市との境界変更について
第百十 第百十号議案
  境界変更に伴う財産処分に関する協議について
第百十一 第百十一号議案
  全国自治宝くじ事務協議会への新潟市及び浜松市の加入並びにこれに伴う全国自治宝くじ事務協議会規約の一部の変更について
第百十二 第百十二号議案
  都道の路線の認定について
第百十三 第百十三号議案
  都道の路線の廃止について
第百十四 第百十四号議案
  東京都道路公社が行う八王子中央有料道路事業の変更に対する同意について
第百十五 第百十五号議案
  東京都道路公社の道路の整備に関する基本計画の変更に係る国土交通大臣への認可申請について
第百十六 第百十六号議案
  平成十九年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担について
第百十七 第百十七号議案
  平成十八年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担の変更について
第百十八 第百十八号議案
  平成十八年度東京都一般会計補正予算(第一号)
第百十九 第百十九号議案
  平成十八年度東京都特別区財政調整会計補正予算(第一号)
第百二十 第百二十号議案
  平成十八年度東京都都市開発資金会計補正予算(第一号)
第百二十一 第百二十一号議案
  平成十八年度東京都公債費会計補正予算(第一号)
第百二十二 第百二十二号議案
  平成十八年度東京都都市再開発事業会計補正予算(第一号)
第百二十三 第百二十三号議案
  平成十八年度東京都臨海地域開発事業会計補正予算(第二号)
第百二十四 第百二十四号議案
  平成十八年度東京都水道事業会計補正予算(第一号)
第百二十五 第百二十五号議案
  平成十八年度東京都下水道事業会計補正予算(第一号)
第百二十六 第百二十六号議案
  平成十九年度東京都一般会計補正予算(第一号)
第百二十七 第百二十七号議案
  平成十九年度東京都特別区財政調整会計補正予算(第一号)
第百ニ十八 第百ニ十八号議案
  東京都障害者自立支援対策臨時特例基金条例
第百二十九 第百二十九号議案
  都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例
第百三十 諮問第一号
  地方自治法第二百四十四条の四の規定に基づく審査請求に関する諮問について
   午後一時一分開会・開議

○議長(川島忠一君) ただいまから平成十九年第一回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(川島忠一君) まず、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   七番 福士 敬子さん及び
 六十七番 山加 朱美さん
を指名いたします。

○議長(川島忠一君) この際、謹んでご報告を申し上げます。
 前東京都知事青島幸男氏には、去る平成十八年十二月二十日、逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。
 ここに生前のご功績をたたえるとともに、故人のご冥福をお祈りし、議会として深甚なる弔意を表します。

○議長(川島忠一君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(松原恒美君) 平成十九年一月三十一日付東京都告示第百七号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、平成十九年一月三十一日及び二月七日付で、本定例会に提出するため、議案百三十件の送付がありました。
 次に、知事及び監査委員並びに各行政委員会より、平成十九年中における東京都議会説明員及び説明員の委任について、地方自治法第百二十一条及び会議規則第四十二条の規定に基づき、それぞれ通知がありました。
 次に、包括外部監査人より、平成十九年二月二日付で、平成十八年度包括外部監査報告書の提出がありました。
 次に、知事より、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づく専決処分について、報告が三件ありました。
 内容は、東京都立学校設置条例の一部を改正する条例外二件の報告について、訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告について、並びに東京都高等学校・大学等進学奨励事業に係る貸付金の償還免除に関する報告についてであります。
 次に、監査委員より、平成十八年行政監査、平成十八年工事監査、平成十八年財政援助団体等監査及び例月出納検査の結果について、それぞれ報告がありました。
(別冊参照)

○議長(川島忠一君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 平成十八年第四回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
   〔文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾に掲載〕

○議長(川島忠一君) 次に、閉会中の都議会議員後藤雄一君の調査活動等に関する調査特別委員の辞任及び選任について申し上げます。
 去る一月二十六日付をもって東野秀平君より辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、同日付をもってこれを許可いたしました。
 なお、委員の欠員を補充するため、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、同日付をもって橘正剛君を指名いたしました。

○議長(川島忠一君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から三月九日までの三十一日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君) ご異議なしと認めます。よって、会期は三十一日間と決定いたしました。

○六十七番(山加朱美君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 平成十八年度包括外部監査結果の報告について、地方自治法第二百五十二条の三十四第一項の規定に基づき、包括外部監査人の説明を求めることを望みます。

○議長(川島忠一君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君) ご異議なしと認めます。よって、平成十八年度包括外部監査結果の報告について、包括外部監査人の説明を求めることに決定いたしました。
 ここで、園マリ包括外部監査人の出席を求めます。
   〔包括外部監査人園マリ君入場、着席〕

○議長(川島忠一君) ただいまご出席いただきました包括外部監査人をご紹介いたします。
 園マリさんでございます。
   〔包括外部監査人あいさつ〕

○議長(川島忠一君) 本日は、ご多忙のところ、監査結果報告の説明のためご出席をいただき、まことにありがとうございます。

○議長(川島忠一君) この際、知事より、平成十九年度施政方針について発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 風邪を引きまして声をつぶしましたので、お聞き苦しいと思いますけど、ひとつご容赦願います。
 平成十九年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。
 去る十二月二十日、前東京都知事青島幸男氏が逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。
 さて、今から八年前、私は、都民の皆様に東京から日本を変えると訴え、首都東京のかじ取りを担うこととなりました。しかし、当時の東京は、バブル崩壊後の長い低迷の中で、将来への展望を見出せず、都民生活を支えるべき都財政は、財政再建団体転落の瀬戸際にまで追い詰められておりました。
 こうした中、まず、全職員に対して危機意識の喚起を促し、現場を持つ東京の強みを十分に生かしながら、さまざまな努力を積み重ね、都政の屋台骨の立て直しに取り組んでまいりました。政策の立案に当たっては、職員の創意工夫を積極的に取り入れ、時にはトップダウンの手法を交えまして、国の二歩、三歩先を行く独自の取り組みを展開してきたつもりであります。その結果、破綻の危機に瀕していた財政を土俵中央にまで押し戻すことができました。
 また、八都県市の連携によるディーゼル車の排出ガス規制では、都民、事業者の全面的な協力のもと、大気汚染を大幅に改善する成果を上げ、新たに創設したCLO、CBOの債券市場は一兆円規模にまで成長しました。東京の優秀な中小企業五十五社がこれによって上場を果たしました。
 就任当初から主張してきた横田基地の軍民共用化については、日米両政府のスタディーグループによる具体的な検討が開始され、ようやく実現の一歩手前までこぎつけました。既に空域の一部は返還され、飛行時間の短縮による大きな経済効果も生み出しております。
 行財政改革の強力な切り札として都が新たに開発した公会計制度は、長い目で見て、行政のコスト意識の欠如を払拭し、明治の太政官制度以来続く官主導のこの国のあり方そのものを根底から変える大きな起爆剤になるものであると思っております。
 銀行に対する外形標準課税では、結果として、形こそ違え、国もこれに追随し、事業活動の規模に応じた税負担の原則を企業に浸透させる先駆けをつくり得ました。
 しかし、東京発の日本再生は第一章を終えたばかりでありまして、継続的な改革こそ真の改革の名に値するものであります。この八年間の具体的な実績を次の四年間につなげ、東京の魅力と都民福祉の向上に引き続き全力で取り組むとともに、東京における改革の成果を日本の新たな発展に結実させていかなければなりません。
 そのためにも、東京の将来像をしっかりと描くことが必要であります。昨年末に策定した「十年後の東京」は、空想的、抽象的なマニフェストなどではなく、実現可能な東京の具体的な近未来図でありまして、これにより、目指すべき東京の姿を国内外にはっきりと示すことができたと思っております。
 十年後の東京を描く際に重要なことは、日本が誇る省エネ技術やユビキタス技術など、都民生活にどう還元し、また、東京に集う多種多才な人材をいかに活用するかであります。東京と世界との関係、なかんずく東アジアの諸都市との連携も欠かすことはできません。こうした視点を重視し、東京のポテンシャルを存分に発揮しながら、より高いレベルの成熟のステージを目指してまいります。
 日本の人口は既に減少局面を迎えておりますが、大都市圏の人口は増加を続けており、とりわけ一都三県の人口は今後も当面増加すると予測しております。人口を初め東京に集中、集積するさまざまな力を改革の原動力として、日本のダイナモとしての東京のさらなる発展に取り組んでいく必要があります。
 今後、客観的なシミュレーションに裏づけられた確かな羅針盤をもとに、現実的な政策を確実かつ迅速に展開し、東京の未来に向かって新しい一歩を踏み出してまいります。
 十年後の東京の姿を一言でいいあらわせば、緑と澄んだ空気の快適な大都市東京であります。しかし、都心部の大規模緑地の総面積はニューヨークのセントラルパークの二倍に達しているにもかかわらず、その実感に乏しく、既存の緑のネットワークが十分になされているとは申せません。
 今後、東京湾の埋立地に皇居の広さに匹敵する巨大な森を造成するとともに、都民の積極的な参加を得て、街路樹を現在の二倍、百万本に倍増していきたいと思っております。また、校庭の芝生化は、ヒートアイランド現象の緩和に寄与するだけでなく、屋外で遊び回る子どもたちの元気な声が学校に戻ってくるなど、うれしい効果も生み出しておりまして、都内のすべての公立の小中学校で校庭の芝生化を進めてまいります。
 屋上・壁面緑化も含め、あらゆる都市空間を活用して緑化を推進するとともに、都民や企業を巻き込み、緑のムーブメントを大々的に展開し、サッカー場千五百面に相当する一千ヘクタールの緑を新たに創出したいと思っております。
 東京を緑あふれるまちとするため、先月末設置した緑の都市づくり推進本部を核として、全庁挙げて取り組んでまいります。
 同時に、都心部を中心に無電柱化を集中的に推進するほか、世界有数の水辺を持つ東京の特性を生かし、隅田川や運河地域などの水辺ににぎわいを取り戻すなど、東京のまちを水と緑の回廊でつないでまいります。
 現在、東京全体をカバーする景観計画を策定しており、来年度から新たな景観政策をスタートいたします。大都市では困難とされていた建物の色彩の規制に思い切って踏み込むなど、先進的な取り組みにより、かつてしっとりとしたモノクロームの町並みが続いていた江戸の伝統を受け継ぎ、緑豊かで美しい都市空間を復活していきたいと思っております。
 大都市における社会資本整備、とりわけ幹線道路の整備は、文明工学的に必然であり、私は、就任以来一貫して首都圏を結ぶ環状道路の必要性を訴え、みずから先頭に立って国を動かしてもまいりました。
 都内を走る自動車の平均時速は、マラソンランナーよりも遅い十八キロにすぎませんが、首都圏を結ぶ三つの環状道路が完成し、幹線道路ネットワークが完備されれば、お盆や正月並みに走行できる二十五キロにまで改善され、東京の最大の弱点である渋滞は一気に解消されます。東京は、人と物の流れが歴然とよくなり、都民にとっても訪れる人にとっても極めて効率的で快適なまちに生まれ変わるのであります。
 中央環状線については、板橋方面から新宿までの区間がことしじゅうに開通するとともに、最後の整備区間である品川線を、都がみずから事業者となり、事業化にこぎつけ、最速のスケジュールで建設を進めております。
 圏央道については、迅速な土地収用を進めた結果、六月には、あきる野インターチェンジから八王子ジャンクションまでの区間が完成し、いよいよ関越道と中央道が結ばれることとなります。
 残る外環道については、この春、大深度地下方式への都市計画変更を予定しており、一刻も早い事業着手に向け、国に対し、早急に整備路線として位置づけるよう強力に働きかけてまいります。
 あわせて、鉄道の立体交差事業を引き続き積極的に進め、ボトルネックの解消を図ってまいります。来年度、新たに西武池袋線の事業に着手するなど、今後十年間で八路線十カ所の立体化を完了させ、百カ所以上の踏切を解消する計画であります。また、来年度末、新交通システム日暮里・舎人ライナーが開業し、区部北東部の交通アクセスが大きく改善されるものと期待しております。
 幹線道路の整備は、渋滞の解消はもとより、都内の自動車から排出されるCO2の削減に大きく寄与すると同時に、大気汚染の解消にも直結する取り組みであります。これまで確かな成果を上げてきたディーゼル車排出ガス対策のさらなる充実に加え、道路整備による複合的な効果により、東京のみならず首都圏全体に澄んだ空気を取り戻すことができると確信しております。
 東京が直面する環境問題は、大気汚染に限りません。地球温暖化対策は、多量のエネルギーを消費する大都市が率先して取り組むべき課題であります。
 先月末、組織横断型の戦略会議としてカーボンマイナス都市づくり推進本部を設置し、世界最高レベルの温暖化対策の展開に向け、十年プロジェクトを本格的に始動いたしました。その一環として、来月、太陽エネルギーの大幅な利用拡大を目指し、エネルギー事業者等との検討会を立ち上げます。来年度には、都営バスでのバイオディーゼル燃料の導入に取り組むとともに、さらにその品質を高めた次世代のバイオ燃料の実用化に向け、民間企業との共同プロジェクトを開始いたします。
 今後、二〇二〇年までにCO2の排出量を二〇〇〇年比で二五%削減するための具体的な道筋を明らかにしていきたいと思います。
 緑と澄んだ空気の快適な大都市東京を実現するには、まず第一に、都庁の力を組織の壁を超えて結集する必要があります。温暖化対策と緑の取り組みを担う二つの推進本部を一体化した合同会議を設置し、重層的、複合的に政策を展開してまいります。
 次に、東京の未来を展望する新たな取り組みについて申し上げます。
 都はこれまで、発災時に都民の大きな力となる自衛隊や在日米軍の参加、協力を得て、実践に即した大規模な訓練を繰り返し実施するなど、いつ起きてもおかしくない大地震に対しての備えを講じてまいりました。
 現在、地域防災計画の全面的な改定を進めており、先月発表した素案において、地震による人命の被害を半減するなど具体的な数値目標を示したほか、ターミナル駅での混乱防止やエレベーターの閉じ込め対策など、都市型災害への対応策の強化も明らかにいたしました。
 今後は、建物の耐震化をスピードアップすることで、東京をさらに地震に強いまちにつくりかえていきたいと思います。消防署や警察署、学校などの防災上重要な公共建築物や、百貨店、ホテルなどの大勢の人々が利用する民間の建物はもちろんのこと、災害時の物資の輸送に欠かせない道路交通を確保するため、沿道の建築物についても一〇〇%の耐震化を目指してまいります。
 加えて、住宅についても今後十年間で九割の耐震化を達成していくことを、年度内に策定する住宅マスタープランの中で明らかにしてまいります。
 平成十六年十月の新潟県中越地震におけるハイパーレスキュー隊の活躍は記憶に新しいところでありますが、この春、四番目となる部隊を区部北東部に設置いたします。地域特性を踏まえ、集中豪雨等による水害にも迅速に対応できるようにするなど、引き続き大規模災害に対する対応力の強化に努めてまいります。
 首都東京の治安を回復するため、この八年間、警察力の量的、質的な増強はもとより、不法滞在外国人対策や繁華街での防犯カメラの設置、安全・安心まちづくり条例の制定など、犯罪の芽を摘む独自の施策を広範囲に展開してまいりました。しかし、防犯の基本は地域ぐるみの取り組みにほかならず、これにまさる対策はありません。
 来年度、マンションなどの共同住宅において、住民による防犯活動を支援し、防犯カメラの設置を促すモデル事業を実施するとともに、防犯パトロール車両への青色回転灯の設置を促進し、まちの体感治安を改善するなど、地域の防犯力の一層の向上に取り組んでまいります。
 また、通学路の安全を確保するため、学校から自宅まで距離がある地域においてスクールバスの購入を補助するなど、子どもの安全を地域全体で守る取り組みを積極的に支援してまいります。
 安全な水が潤沢に供給されることは、都民生活を支えるための最も基本的な要素の一つであります。
 最新の高度浄水技術によってつくられた東京の水道水は、世界一の安全性を誇っており、また、家庭の蛇口の水と同じ「東京水」が発売以来五万本以上の売り上げを記録するなど、そのおいしさも立証済みであります。来年度から公立の小学校で、貯水槽を経ずに直接蛇口から水道水が飲めるようにするモデル事業を開始し、日本が誇る水道文化を、次代を担う子どもたちに継承していきたいと思います。
 また、下水を高度処理した再生水は、ビルのトイレ用水を初め、枯渇した河川の清流復活や、ヒートアイランド対策の一環としての路面散水など、幅広い用途に活用しております。
 今後とも、都市の貴重な水資源の有効活用を進めるとともに、下水汚泥を最先端技術で炭化し、石炭の代替燃料として火力発電に利用することにより、温暖化防止に積極的に貢献してまいります。
 十年後の東京の人口構成は、全国的な少子化の進展の影響により、若年者も生産年齢人口も減少傾向が続く一方で、四人に一人が六十五歳以上の高齢者という、世界に例を見ない超高齢社会になると予測されます。
 三百万人を超える高齢者のうち八割の方々は、健康を保ち、高い活動意欲を有する元気な高齢者であります。支えられる存在という従来の高齢者像を、社会を活性化する存在へと百八十度の転換を図り、高齢者の多様な社会参加を促進し、社会全体に活力を与えていきたいと思います。介護を必要とする高齢者に対しては、老化等に関する最先端の研究成果や技術開発を積極的に活用し、介護予防や認知症対策を一層推進してまいります。
 こうした取り組みを通じて、世界に先駆けて超高齢社会の新しい都市モデルを構築していきたいと思っております。
 子育て支援策では、都独自の認証保育所制度の推進や、保育所と幼稚園の垣根を超えた認定こども園の設置など、多様な事業者の競い合いによって、大都市に合った保育サービスを拡充し、待機児童五千人の解消を図ってまいります。
 また、来年度、大企業に比べて育児休業が取得しにくい中小企業を対象に、育休をとる社員にかかわる経費の一部を助成する都独自の制度を創設いたします。仕事と出産、子育ての両立に向けた企業の意識改革を促し、子どもを産み育てやすい社会的な環境を整えてまいります。
 障害者が地域で自立して生活を送れるよう、都は、住まいや日中の活動の場など生活基盤の整備を計画的に進め、その結果、グループホームの定員が過去五年間で二倍以上に増加するなど、一定の成果を上げてきました。
 しかし、障害者の雇用状況は、法定雇用率を満たす企業が三割を切るなど、改善の余地を多く残しております。多様な企業が集積する東京の特性を生かし、福祉・保健、教育、労働の各分野の協力はもちろん、企業、経済団体等とともに連携を深め、今後十年間で、東京の障害者雇用を三万人以上増加させていきたいと思います。
 借金を苦にした自殺や自己破産者の増加など、多重債務が社会的な問題となっております。やむを得ない理由で多重債務に陥り、生活を圧迫されている低所得者を対象に、来年度、自治体として初めて総合的かつ大規模な支援制度を整備し、弁護士等と連携した相談援助や資金貸付を行い、多重債務者の再スタートを支援してまいります。
 近年、医療事故が大きく報じられ、医療訴訟が多発する中、小児科、産婦人科等の医師不足が懸念されるなど、医療に対する都民の不安感が増大しており、生涯を通じて質の高い医療を受けられる環境の創出が強く求められております。
 都は従来、都民の三百六十五日二十四時間の安心を確保するため、東京ERの創設など、東京発の医療改革を進めてまいりました。今後、改革の集大成として、患者中心の医療の実現を目指し、医療の質そのものを支える人材の育成に積極的に取り組んでまいります。
 国が定める二年間の初期研修を終えた医師を対象に、都立病院医師アカデミーを平成二十年度に開講し、体系的な臨床研修を通じて質の高い医師を養成してまいります。さらに、中長期的な取り組みとして、大学卒業後にも医師を目指すことのできるもう一つの道を確保するため、現場重視の教育で臨床能力にすぐれた医師を育てる専門職大学院メディカルスクールの実現に向けた検討を進めてまいります。
 東京発の一連の医療改革により、東京から日本の医師養成システムを大きく変えていきたいと思っております。
 東京は、高齢化の進行や防災、防犯ニーズの高まり、あるいは地球温暖化、ヒートアイランド現象など、日本を象徴する課題を数多く抱えており、こうした問題を日本のすぐれた科学技術を駆使して解決する新しい産業やビジネスの創造が期待されております。
 来月、今後の十年を見据えた産業振興の新しい基本戦略を策定いたします。区部と多摩に産業振興の戦略的な拠点を整備し、多摩シリコンバレーを形成するとともに、人材育成の面では、首都大学東京や産業技術大学院大学をフルに活用し、販路開拓では、アジア市場への展開を積極的に支援してまいります。
 技術の集積や巨大で洗練された市場の存在など、東京の強みを存分に生かし、技術と経営の革新によって国際競争力を強化するほか、健康、環境、危機管理など成長が期待される分野で新しい産業を、重点的、戦略的に育成していきたいと思います。
 東京には、欧米の都市にはない日本独自の伝統・文化や世界最高水準の各国の食文化に加え、近未来的な都市空間や、秋葉原に代表される先端のIT技術の集積など、都市の魅力があふれております。海外から東京を訪れる観光客は、積極的なシティーセールスの展開などにより、この数年増加はしているものの、依然として低い水準にとどまっております。
 今後、羽田空港の国際化をにらんだアジアへのPR、交流の強化や、ヨーロッパへの戦略的なシティーセールスの展開などを通じて、最先端技術や多様な文化を世界に発信し、十年後には外国人旅行者を一千万人に倍増し、世界有数の観光都市としていきたいと思っております。
 東京都美術館の改修と連動し、上野恩賜公園を文化の森として再生するほか、さまざまな食の魅力を体感できるよう、豊洲の整備を進めるとともに、浅草と両国、芝浦とお台場を船で結ぶ観光ルートを開発し、水辺の周遊性を向上させるなど、東京の多様な魅力を実感できるエリアを形成してまいります。
 世界的な観光都市を目指すには、東京を初めて訪れた旅行者でも迷わず安心してひとり歩きを楽しめるようにする必要があります。公共空間や交通機関の案内サインのあり方を早急に見直し、だれにも一目でわかり、街並みと調和した案内サインを、多摩産材も活用しながら整備してまいります。
 あわせて、これまで進めてきた駅を中心としたまちのバリアフリー化をさらに発展させ、東京に集うすべての人々が安全で快適な時間を過ごすことができるよう、ユニバーサルデザインの観点から東京のまちを見直していかなければなりません。外国語による案内の拡充など、外国人の視点を取り入れた取り組みを積極的に推進するとともに、ユビキタス技術などを大いに活用し、外国人を含むすべての人が不安や不自由を感じることなく歩けるまちづくりを進めてまいります。
 戦後日本の繁栄は、終身雇用に象徴される日本型の雇用慣行の中で訓練された優秀な人材によって支えられてきました。しかし、国際競争の激化などで雇用環境が大きく変化する中、人材育成を企業や組織にだけ頼ることはできず、一人一人が人生のあらゆる段階で、みずからの努力によってレベルアップを図っていく必要があります。
 今後、さまざまな人材が集積する東京の強みをさらに生かし、世代を問わず、すべての人の生き方、働き方の選択肢を広げ、意欲のある人を積極的に支援するシステムを構築してまいります。
 引き続き、しごとセンターにおいて雇用のマッチングを進めるとともに、高等専門学校の拡充等による複線的なものづくり教育システムの確立や、キャリアアップのための再チャレンジ応援奨学金の創設など、柔軟で多様な人づくりの仕組みをつくり上げていきたいと思います。
 子どもや若者をめぐっては、虐待やいじめ、ひきこもり、ニートなど、さまざまな問題が重層的に生じており、行政はもとより、警察、学校、地域のより一層の連携が強く求められております。このため、組織の垣根を超えた子ども・若者問題対策会議を先月設置したほか、来年度、若者の自立、立ち直りを支援するためのインターネットによる相談に加え、新たに電話や面接による総合的な相談窓口を設置いたします。
 一万人を超えるボランティアに支えられた東京マラソンのスタートが十日後に迫ってまいりました。沿道で多彩な催しを繰り広げる東京大マラソン祭りは、大都市における新しいスポーツイベントの先駆けでありまして、また来月には東京体育館においてフィギュアスケートの世界選手権大会が開催されます。さらに、この夏、アジア大都市ネットワークを中心に十を超えるアジアの都市の参加を得て、第一回のジュニアスポーツアジア交流大会を開催いたします。一連の大規模なスポーツイベントを通じて、国際大会の経験を積み重ねていきたいと思っております。
 国際的なスポーツムーブメントの最高峰であるオリンピックの招致に向け、来月初旬までには、東京オリンピック招致委員会をNPO法人化し、名実ともに活動の展開できる体制を整えます。ことし九月のIOCへの正式な立候補申請を第一ステップとして、世界を舞台に総力を挙げての招致運動を展開してまいります。
 スポーツの興隆を行政としてしっかり支えるため、新たに創設する基金を活用して東京版スポーツODAを展開し、ジュニアスポーツ振興の先導的役割を果たすとともに、スポーツ振興の推進体制を強化するため、事業を生活文化局に集約し、名称を生活文化スポーツ局といたします。
 次に、多摩・島しょ地域について申し上げます。
 圏央道が全線開通した暁には、多摩地域とつくばが、従来の半分以下となる一時間半で結ばれ、沿線一帯が都県境を越えて一つのエリアとしてつながります。また、横田基地の軍民共用化などの都市機能の充実も加わり、多摩地域の可能性はさらに飛躍的な高まりを見せ、広域多摩とも呼べる新しい圏域が形成されると予測されます。
 この機を逃さず、最先端技術やものづくり産業の集積、多くの大学、研究機関など、多摩の持つ優位性を存分に生かし、多摩シリコンバレーとして、また航空機関連産業の集積地として、都市型産業の一大拠点の創出を目指したいと思います。
 また、平成二十五年に開催する東京国体に向け、都議会、区市町村を初めとする関係者による準備委員会を来年度に設置するとともに、その所管を総務局に移管し、多摩・島しょ地域の振興と連動して、大会の準備を進めてまいります。
 先月改定した多摩リーディングプロジェクトに基づきまして、今後、多摩のさらなる振興に取り組んでまいります。
 小笠原諸島では、現在三名の都レンジャーをこの春六名に増員し、東京に残された貴重な自然を次の世代に引き継ぐための活動を展開しております。自然保護と観光振興の両立を目指し、引き続き、日本で四カ所目となる世界自然遺産の登録に向けて準備を進めてまいります。
 三宅島の公道でのオートバイレースがことし十一月に開催されることが決定しました。昨年、マン島において公道レースの練習走行中に不慮の事故で亡くなった日本人レーサー前田淳さんの遺志を継ぐトライアルでもあり、こうした新しい挑戦こそが島の未来を切り開いていくのだと思います。
 都としても、多摩・島しょ地域の可能性を大きく開花させるため、引き続き積極的に支援してまいります。
 これまで述べてきた「十年後の東京」を実現するためには、都政の足腰そのものが丈夫であることが不可欠であります。
 まず財政については、身を削り、歳費を切り詰める努力を積み重ねるとともに、現場における地道な徴税活動やインターネット公売などの新たな手法の導入なども実を結び、都財政はようやく厳しい時代を乗り越えて健全性を回復いたしました。
 この八年を振り返れば、国は依然として予算の三割以上を国債の発行に頼る借金まみれの体質から抜け出せずにいるのに対して、都は起債依存度を四%台にまで低減させておりまして、彼我の差は歴然であります。
 平成十九年度予算では、一兆円を上回っていた隠れ借金の解消にめどをつけるなど、財政再建を達成し、新しいステップに力強い第一歩を踏み出すことができました。直面する課題への対応はもちろん、福祉・健康安心基金等三つの基金を創設するなど、将来に対する布石も万全に打ったつもりであります。
 このように、都財政は、かつての瀕死の状態から立ち直っただけでなく、未来に向けた体力を備えることができたと考えております。
 また、職員定数をこの八年で二万人削減するとともに、国や他の自治体に先んじて職員の給与カットを実行するなど、都が率先して身を削る姿勢を全国に示すことができたと思っております。
 今後とも、行財政改革実行プログラムに掲げた目標達成に向け、着実に定数削減を進めるとともに、事務事業の執行体制を徹底して見直し、これまで以上に効率的な行政サービスの実現を目指してまいります。
 組織の機能強化では、組織の殻を破りテーマごとに集結する横断型の戦略会議を複数立ち上げ、都が持つ組織の力を十二分に引き出していきたいと思っております。
 最後に、今後の都政にかける決意について申し上げます。
 世界は今、文明の衝突ともいうべき国際情勢と経済のグローバリズムのうねりが交差する中、先進国の多くが低成長と少子高齢化という難問に直面する一方、発展目覚ましい新興の国々では環境問題やエネルギー問題が深刻化するなど、将来に大きな不安を残したまま、混迷の度合いをさらに増しているように見えます。
 しかし、予測不可能な時代にあって未来を予測する最良の方法とは、未来をみずからの手で切り開くことであります。都市集中の時代に生きる私たちは、都市の力こそ国力の表象であり、文明の推進力であることを改めて認識する必要があります。
 折しも先日、東京は、都債の格付では国を抜き、外債ではAaa、国内債ではAa2というトップクラスの評価を取得し、オリンピック招致や東京の再生に十分たえ得る財政的な基盤を備えていることを証明しました。また、「十年後の東京」で明らかにしたとおり、東京には、多彩な人材や膨大な情報の集積に加え、世界の都市問題を解決するかぎとなる環境技術やユビキタス技術が集積しております。
 こうした東京の優位性を最大限に生かして、今後十年にわたって先進的な取り組みを展開し、二十一世紀の新しい都市モデルを世界の諸都市に発信していくことができると思います。東京が持つ有形無形の大都市力を発揮すれば、この国に日はまた上るの勢いを取り戻し、さらには国際社会の安定とさらなる発展に東京が大きく貢献することができるのであります。
 東京には、江戸、明治から続く豊穣な歴史があります。その積み重ねを未来につないでいくことは、後の世代に対する私たちの責務にほかなりません。私は、東京から日本を変える決意を新たにして、このまちを、私たちの子孫が胸を張って楽しみながら住める都市としていくために、日本の頭脳部、心臓部である東京のかじ取りを引き続き身命を賭して担う覚悟であります。どうか、都議会の皆様、都民の皆様のご支持、ご支援をよろしくお願いいたします。
 なお、本定例会には、これまで申し上げた事項を含め、予算案三十九件、条例案七十七件など、合わせて百三十件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。
 以上をもちまして施政方針を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(川島忠一君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○議長(川島忠一君) 次に、警視総監より、都内の治安状況について発言の申し出がありますので、これを許します。
 警視総監伊藤哲朗君。
   〔警視総監伊藤哲朗君登壇〕

○警視総監(伊藤哲朗君) 都内の治安状況についてご報告いたします。
 昨年は、犯罪抑止総合対策を初め、暴力団総合対策、国際テロ対策、大規模災害対策及び重大交通事故防止対策など、さまざまな重要課題に取り組み、首都東京の治安維持と都民生活の安全確保に努めてまいりました。
 以下、その状況についてご説明いたします。
 第一は、犯罪抑止総合対策についてであります。
 初めに、犯罪抑止総合対策の推進結果と本年の基本方針についてであります。
 警視庁の最重要課題として、組織の総力を挙げて取り組んでまいりました犯罪抑止総合対策につきましては、都民の日常生活に大きな不安感を与える強盗、侵入窃盗、ひったくり及び性犯罪を重点犯罪に指定してきたところでありますが、昨年は、この四罪種に振り込め詐欺及び車上ねらいを加え、検挙と防犯の両面にわたり諸対策を積極的に推進してまいりました。
 その結果、昨年の指定重点犯罪の発生は前年に比べ約一四%減少し、一方、検挙件数については約一八%増加し、これらの罪種については検挙率も約六七%となるなど、検挙と防犯の両面で着実な成果を上げることができました。
 特に侵入窃盗については、発生件数が約一万七千件と前年に比べ約一〇%減少し、戦後最少を記録したほか、車上ねらいについても前年に比べ約二七%減少したところであります。
 しかしながら、振り込め詐欺については、前年に比べ約一三%増加の約千百件を検挙したものの、発生件数は依然として増加傾向にあり、昨年の認知件数は約三千二百件と前年に比べ約八%増加し、被害総額も約五十九億円に及んでおります。
 近年、子どもが被害者となる犯罪が多発し、都民、国民に大きな不安を与えていることから、本年は、指定重点犯罪に子どもに対する犯罪を新たに加え、犯罪の抑止及び検挙の両面から対策をより一層推進してまいります。
 次に、来日外国人犯罪対策についてであります。
 我が国に来日する外国人は年々増加傾向にあり、従来からの定住者と合わせ、外国人登録者数は、昭和期には約七十万人前後であったものが、平成に入ると百万人を超え、平成十七年には二百万人を超えるなど、年々増加しております。これに伴い、不法残留者、不法入国者の増加や、これら不法滞在者による犯罪も深刻な問題となっております。
 とりわけ、来日外国人犯罪組織は暴力団と結託し、悪質、凶悪な手口の侵入盗、強盗などさまざまな犯罪を引き起こすとともに、組織的に偽装結婚や旅券、外国人登録証明書の偽造を行っているほか、地下銀行、盗品故買網の構築など、組織的な犯罪インフラの拡大を図っており、その態様もますます巧妙化いたしております。
 警視庁では、これら来日外国人犯罪組織に対する重点的な検挙対策を推進した結果、全国の約四割に当たる約六千七百人の来日外国人犯罪者を検挙したほか、これら犯罪組織の人的供給源である不法滞在者等約六千百人を摘発するなど、犯罪インフラの壊滅に努めてまいりました。引き続き、来日外国人犯罪対策を強力に推進してまいります。
 次に、重要、特異事件の検挙対策についてであります。
 昨年中の特別捜査本部の開設は十四件で、平成十一年の四十二件など、毎年二十件以上開設してきた時期から比べると減少傾向にあり、昨年は、渋谷区鉢山町女子大生身の代金目的誘拐事件など、昨年以前に開設した事件を含め十件を検挙いたしました。
 しかしながら、事件発生から六年を経過した世田谷の一家四人強盗殺人事件、八王子のスーパー強盗殺人事件など、幾つかの重要事件が未解決のままであることから、一日も早い犯人の検挙に向けて、引き続き粘り強い捜査を展開してまいります。
 次に、四地区を中心とする盛り場対策についてであります。
 警視庁では、新宿歌舞伎町、池袋及び六本木の三地区に新たに渋谷地区を加え、四地区特別対策として、違法風俗店、暴力団、不良外国人に対する重点的かつ戦略的な対策を推進してまいりました。その結果、数多くの違法性風俗店やカジノ店などを閉鎖に追い込んだほか、昨年六月に施行された風俗案内所条例を適用して、風俗店の広告宣伝やチラシ配布等の違反を検挙するなど、新宿歌舞伎町を中心に盛り場環境の浄化に努めてきたところであります。
 今後も、本年四月から施行される、わいせつビデオ店等への営業場所の提供を禁止する規定を盛り込んだ改正ぼったくり防止条例など、関係法令の積極的な適用による取り締まりを推進するとともに、地域のボランティア団体や商店街振興組合等との連携を図り、盛り場環境のさらなる浄化に努めてまいります。
 次に、非行少年対策についてであります。
 少年犯罪につきましては、昨年、路上強盗やひったくりなど、いわゆる街頭犯罪で検挙した被疑者のうち、少年が約三七%を占めるなど、依然として深刻な状況にあります。
 警視庁では、昨年、少年犯罪が特に多発する地域を中心に、非行集団等の検挙、解体を強力に推進した結果、約一万三千人の非行少年を検挙、補導するとともに、約三百五十の非行集団を解体いたしました。
 また、スクールサポーター制度や警察と学校との相互連絡制度を効果的に運用するなどして、学校や地域等と一体となった少年の再非行防止、立ち直り支援活動を推進してまいりました。
 今後とも、次代を担う少年を健全に育成するという観点から、関係機関、団体等との緊密な連携を図りつつ、非行少年対策を積極的に推進してまいります。
 次に、安全・安心を実現するための防犯対策についてであります。
 近年、安全・安心に対する意識の高まりとともに、都民の皆様の防犯に対する関心が大いに高まっており、防犯ボランティアにつきましても、平成十五年にはわずか百五十三団体であったものが、昨年末には約三千二百団体、約十四万三千人となり、防犯パトロールなどの地域安全活動を展開しております。
 また、道路、公園、駐車場への街路灯、防犯カメラの設置など、防犯環境の整備のほか、青色回転灯を装備した車両による防犯パトロールなど、自治体等による各種防犯活動も活発に行われており、地域の犯罪抑止に大きく寄与しているところであります。
 警視庁では、これらの活動を支援するため、犯罪や防犯に関する情報、意見交換の機会の積極的提供及び合同パトロールを行ってまいりました。
 今後も、地域の方々や自治体、関係機関、団体との連携を強化しつつ、実効ある施策を積極的に推進し、安全・安心なまち東京の実現に努めてまいります。
 次に、地域実態に即した街頭警察活動についてであります。
 警視庁では、地域の安全・安心のよりどころとして重要な役割を担っている交番の機能を強化するため、パトロール活動と交番での在所警戒をバランスよく行うことができるよう、全庁的な交番の配置見直しを行っているところであります。
 具体的には、配置見直しの対象となっている交番を隣接の交番と統合し、パトロールと在所警戒活動の強化に努めるとともに、廃止される交番にあっても、地域安全センターとして警察官OBを配置することにより、地域警察官との効果的連携を図り、これまで以上にその地域の実態に即したきめ細かな地域警察活動を実施し、地域の方々の安全・安心の確保を図ってまいります。
 第二は、暴力団対策についてであります。
 全国で最大の勢力を擁する山口組は、全国の暴力団構成員の半数を占めるに至り、都内においても、國粹会を傘下におさめるなどして、住吉会、極東会に次ぐ三番目の勢力となり、在京暴力団との間で緊張状態が続いております。
 警視庁では、こうした情勢を踏まえ、山口組集中取締特別捜査本部を中心に、暴力団に対する強力な取り締まりを推進してまいりました。その結果、昨年は、山口組後藤組組長を検挙するなど、約六千四百人の暴力団構成員等を検挙し、稲川会による大量の自動小銃、けん銃等密輸入事件、極東会による北朝鮮からの大量の覚せい剤密輸事件等、社会的反響の大きな事件を解決いたしました。
 今後とも、暴力団の動向把握を徹底し、検挙対策を強力に推進してまいります。
 第三は、大規模災害に対する迅速、的確な対応についてであります。
 昨年は、都内において大規模な自然災害の発生はなかったものの、八月に発生した高圧電線の損傷事故による大規模停電では、信号機の滅灯や鉄道の運行停止など、都民生活に大きな支障が生じ、突発災害への対応の重要性を改めて認識させられたところであります。
 警視庁では、切迫性が指摘されている首都直下地震や東海地震を初めとするさまざまな災害を想定した実戦的な訓練を反復、継続し、発災に対する事案対応能力の向上を図るとともに、地域の方々や事業所等との合同避難誘導訓練を通じ、自主防災意識の醸成に努めてまいりました。
 今後も、有事即応の態勢を整え、災害警備の万全を期してまいります。
 第四は、テロ、ゲリラ等の防圧検挙についてであります。
 初めに、国際テロについてであります。
 昨年も、世界各地での爆弾テロ事件の発生や、八月の英国における旅客機爆破テロ計画の発覚など、イスラム過激派によるとされる大規模かつ無差別なテロの脅威は一向に衰退する兆しを見せておりません。
 警視庁では、来年、我が国でサミットの開催が予定されていることを踏まえ、テロ関連情報の収集、分析を強化するとともに、政府関連施設などの重要施設に加え、公共交通機関、繁華街などのいわゆるソフトターゲットの警戒強化や管理者との連絡体制の確立など、国際テロ対策を強力に推進してまいります。
 次に、極左暴力集団と右翼についてであります。
 極左暴力集団は、近年、組織拡大を図るため、過激な闘争戦術を一時的に控えているものの、その本質は何ら変わっておらず、憲法改正問題、在日米軍再編問題等をめぐり、再びテロ、ゲリラ事件を引き起こすことが懸念されます。
 また右翼は、昨年来、北朝鮮の核開発や総理の靖国神社参拝に対する中国、韓国における反日行動をとらえ、活発な抗議、要請行動を展開しておりますが、今後も、中国や韓国の要人来日など、国内外の諸問題に敏感に反応して大規模な抗議行動を行うことが懸念されます。
 警視庁では昨年、極左暴力集団の活動家四十七人、右翼構成員九十三人を検挙いたしましたが、引き続き、極左暴力集団、右翼によるテロ、ゲリラ事件の防圧検挙に向けた各種対策を強力に推進してまいります。
 次に、外事関係についてであります。
 北朝鮮による日本人拉致容疑事件につきましては、昨年、蓮池夫妻拉致容疑事案、地村夫妻拉致容疑事案及び原敕晃さん拉致容疑事案について、それぞれ北朝鮮工作員に対する逮捕状の発付を得て、国際手配いたしました。
 このほか、昨年八月には、大手精密機器メーカーによる核開発目的に転用可能な三次元測定機の不正輸出事件や、在日ロシア通商代表部員らによる軍事転用可能な光通信機器の窃盗事件を検挙しております。
 今後とも、対日有害活動の防圧検挙に努めてまいります。
 次に、オウム真理教についてであります。
 オウム真理教につきましては、全国十六都道府県に二十九カ所の主要施設と約千六百五十人の信者を擁し、うち都内には主要活動拠点が五カ所あり、約六百三十人の信者が居住しております。
 現在、教団内では、上祐史浩代表を中心とする上祐派と、松本帰依を絶対視する反上祐派が対立しており、極めて不安定な状況にあるほか、依然として潜在的危険性が払拭されない現状にあることから、引き続き、関係機関、自治体と緊密な連携を図りつつ、教団に対する監視体制を継続するとともに、違法行為に対する厳正な取り締まりを推進してまいります。
 第五は、交通対策についてであります。
 警視庁では昨年、交通死亡事故連続減少二〇〇六をスローガンに、高齢者及び二輪車に重点を置いた交通事故抑止対策や、飲酒運転を初めとする悪質、危険性の高い交通違反の指導取り締まりを強力に推進してまいりました。その結果、昨年の交通事故死者数は二百六十三人で、四年連続の減少を達成するとともに、戦後最少を記録することができました。
 また、放置駐車確認事務の民間委託等を内容とする新駐車対策法制の施行により、都心部の幹線道路を中心として、放置駐車の減少による交通渋滞の緩和など、さまざまな効果があらわれてきております。
 今後とも、重大交通事故抑止及び違法駐車のない東京の実現に向け、各種対策を強力に推進してまいります。
 このほか、今月十八日に開催される東京マラソン二〇〇七における交通対策や、六月に施行される中型自動車免許制度の円滑な実施に万全を期してまいります。
 第六は、都民の視点に立った警察活動についてであります。
 初めに、子どもを犯罪から守る取り組みについてであります。
 一昨年来、全国において子どもが犠牲となる痛ましい事件が発生し、都内においても、子どもを対象としたわいせつ事案や、この種事案の前兆と見られる声かけ事案が多発するなど、都民に大きな不安を与えております。
 このような現状を踏まえ、警視庁では、電子メール、ホームページ及び広報紙により不審者情報を広く都民に提供してきたほか、学校や地域住民と連携し、登下校時の通学路等における合同パトロールや被害防止教室、不審者侵入時の対応訓練などを実施してまいりました。
 また、大きな社会問題となっております児童虐待や悪質ないじめに対しては、児童相談所など関係機関との連携を強化し、情報の共有化を促進するとともに、事件化を視野に入れた迅速かつ適切な措置を講じてまいりました。
 今後とも、区市町村、学校、保護者及び地域との連携を一層強化して、子どもを犯罪から守るための諸対策を推進してまいります。
 次に、被害者支援活動についてであります。
 犯罪による被害者やその遺族は、犯罪行為による直接的な被害にとどまらず、精神面や経済面でも大きな打撃を受けております。
 警視庁では、犯罪被害者に対し、被害認知直後から刑事手続の説明や病院への付き添い等を行う初期支援活動、検挙状況について情報提供を行う被害者連絡活動を推進してまいりましたが、昨年四月からは、公費負担対象を拡大するなど、支援活動のさらなる充実強化に努めてまいりました。
 今後とも、自治体を初め関係機関、団体との緊密な連携を図りつつ、被害者の心情に配意した支援活動を推進してまいります。
 以上、都内の治安状況について申し上げましたが、警視庁では、昨年お認めいただいた警察官二百八十名の増員や交番相談員等再雇用職員の増員などにより、多くの警察官を現場警察活動に充てることができました。
 しかしながら、治安回復への道程をより確実なものとし、都民の体感治安を回復するためには人的基盤のさらなる強化が不可欠であり、今定例会におきましても、警察官増員のための条例の改正や必要な予算の確保をお願いしているところであります。
 警視庁といたしましては、今後とも、都民が期待する安全・安心なまち東京の実現に向け全力を尽くしてまいります。
 議員の皆様方におかれましては、なお一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、治安状況報告といたします。

○議長(川島忠一君) 以上をもって警視総監の発言は終わりました。

○議長(川島忠一君) 次に、監査委員より、監査結果の報告について発言の申し出がありますので、これを許します。
 監査委員古賀俊昭君。
   〔九十三番古賀俊昭君登壇〕

○九十三番(古賀俊昭君) 監査委員を代表いたしまして、過去一年間に実施した監査の結果について報告申し上げます。
 昨年は、これまでの長年にわたる財政再建の取り組みが実を結ぶとともに、新公会計制度が四月から導入され、都財政にとって節目となる年でありました。
 ご承知のとおり、監査委員の役割は、都の行財政が公正かつ効率的に運営されるよう監査することであります。
 この一年間は、六百三十六カ所で監査を実施し、問題点の指摘は二百二十件、不経済支出等の合計は約三億円であります。
 それでは、監査結果の報告に入ります。
 定例監査、行政監査、工事監査など多岐にわたる監査のうち、まず定例監査から報告いたします。
 定例監査は、都の行財政全般を対象とした最も基本的な監査です。本庁のすべての部と事業所の半数、計四百八十一カ所を対象としました。都の事務事業が適正に行われているかを監査し、今回はさらに収入未済金について重点的に監査を行いました。
 収入未済金は、一般会計において千百九十四億円であり、これに特別会計及び公営企業各会計の未収金を合計すると千四百三十五億円と、依然として高額となっています。その主なものは都税ですが、そのほか、都営住宅使用料や各種貸付金の返済など多種にわたっています。
 こうした収入未済金は、各局の滞納整理の強化により減少しつつあります。しかしながら、一部の局においては、督促を適切に行っていなかったり、滞納者の支払い能力の有無といった状況調査が行われていないなど、債権管理が適切に行われていない事例が見受けられました。
 多額の収入未済金の発生は、負担の公平を欠き、都政への信頼を損なうことになります。各局には、債権管理を徹底し、収入未済金の縮減に一層努力されるよう求めました。
 次に、行政監査について申し上げます。
 行政監査は、都の特定の事務や事業を対象として、経済的、効率的、効果的に行われているかという観点を主眼として行う監査であります。今回は、病院の収入管理及び各局共通の事項である都の土地及び建物の管理の二点について監査を実施しました。病院の収入管理については、システムの運用管理を含めて監査を実施しました。
 なお、監査に当たっては、外部のシステム監査人に調査を一部委託することにより、内容の充実を図りました。
 この結果、システムが必要な機能を備えていないために、診療報酬に係る未収金の情報が常時把握できていない事例や、逆に、必要な機能を備えているのに有効に活用せず、従前どおり手作業で事務処理が行われている事例などが見られました。システムを活用した収入管理など、事務執行のあり方について見直しを求めました。
 次に、都の土地及び建物の管理についてであります。
 土地や建物は、都民共通の財産として、適正な管理はもちろんのこと、有効な活用を図るべきものであります。しかしながら、監査の結果、都営住宅の高層化により生じた用地が更地のまま活用されていなかった事例や、レインボーブリッジに設置された二つの展望室が、利用者減少により長期にわたって閉鎖されている事例などが見られました。各種の制約から活用が進まない状況を打開するため、長期的な利活用の方針の策定などについて検討を求めました。
 次に、工事監査について申し上げます。
 工事監査は、百万円以上の工事を対象として、その約一割、千四百三十六件について実施しました。
 指摘した内容は、工事費の積算の誤りが大半を占め、不注意などによるものが少なくありませんでした。
 例えば、路面改良工事の積算で、基準より割高な施工方法で費用計上する一方で、必要な経費を計上しなかったことにより、過大積算と過少積算の両方が発生した事例がありました。チェック体制を強化するとともに、再発防止の徹底を求めました。
 また、高所作業を伴う工事では、作業の安全をより高めるために、足場の組み立てに先立って手すりを設置するよう定められていましたが、これが守られていませんでした。人命にかかわることであり、工事の安全確保の徹底を求めました。
 次に、都の出資団体や補助金交付団体に対する監査について申し上げます。
 監査を実施したのは、出資団体十三カ所、補助金交付団体百三十四カ所及び公の施設の管理受託団体八カ所であります。
 出資団体について見たところ、多摩都市モノレール株式会社では、支払い利息の負担が大きく厳しい経営状況が続いています。乗客数の増加や経費削減により営業損益は黒字に転換していますが、今後ともより一層の経営改善に取り組むよう求めました。
 また、補助金交付団体について見たところ、私立学校や社会福祉施設において補助金額の請求に誤りがありました。各局及び団体には、会計処理を適正に行うよう求めました。
 次に、決算審査について申し上げます。
 平成十七年度決算について、計数を確認するとともに、予算執行や資金管理、財産管理の面からも検証しました。新公会計制度を円滑に機能させていく上で、財産管理は特に重要であることから、重点的に審査を行いました。その結果、土地で三万二千平方メートル、建物で一万四千平方メートルもの登載の誤りがあり、現在高の把握を適正に行うよう求めました。
 このほかに、平成十八年は十六件の住民監査請求があり、このうち請求が法的要件を満たしている、公用車の使用に要した経費の返還を求めた請求など六件について監査を実施しました。
 ここで、監査結果に対する改善状況について申し上げます。
 これまで述べてきた監査は、指摘した問題点が改善されて初めて目的を達成します。このため、各局には、指摘を受けてどのように改善したかの報告を求めています。
 過去三年間に行った指摘について見ると、これまで九割弱が改善されています。売却予定地を事務所の駐車場として長年使用していた事例を昨年指摘しましたが、購入希望者を公募し入札した結果、四億六千七百万円で落札されたとの報告がありました。
 以上、この一年間に実施した監査について述べてまいりました。
 監査の結果、総じていえることが二点あります。
 第一に、日常の事務処理が担当者のみで進められ、組織内部のチェック体制が十分に機能していなかったために、事務処理の誤りが発生しても見過ごされている事例が少なからず見受けられたことです。
 第二に、長年懸案となっている課題の中には、所管だけでは解決困難なものが少なくありません。こうした懸案事項について、組織を挙げて解決に向けて取り組む体制が不十分であることです。
 管理者の皆様には、組織の責任者として先頭に立ち、職員の意識改革を促すとともに、組織として常に問題意識を持ち課題に取り組む体制づくりに努められるよう望みます。
 昨年十二月に都は「十年後の東京」を発表し、より高度に成熟した東京を目指す都市戦略を明らかにしました。新たな政策展開には、効率的、効果的な都政運営が基本となります。
 いよいよ今年は、新公会計制度による最初の財務諸表が作成されます。監査委員としても、都政運営がより効率的に行われるよう、新たに得られるコスト情報も活用して監査の充実に努めてまいります。
 最後に、私ども四名の監査委員は、都政が公正かつ効率的に運営されるよう、これからも監査委員の使命を全力で果たしていく決意であることを申し上げ、報告を終わります。(拍手)

○議長(川島忠一君) 以上をもって監査委員の発言は終わりました。

○議長(川島忠一君) 次に、包括外部監査人より、平成十八年度包括外部監査結果の報告について説明を求めます。
 包括外部監査人園マリさん。
   〔包括外部監査人園マリ君登壇〕

○包括外部監査人(園マリ君) 平成十八年度包括外部監査人の園マリと申します。
 平成十八年度は、産業労働局の業務である中小企業対策、観光振興対策及び雇用就業対策に関する事業の管理と財務事務の執行、並びに財団法人東京しごと財団の経営管理について監査を行い、二十四件の指摘と六十六件の意見を監査報告書に記載いたしました。
 本日は、主な事項についてご説明申し上げます。
 第一に、中小企業対策に係る貸付金の管理についてですが、まず、債権回収に懸念が生じているものがあります。
 具体的には、高度化資金貸付金のうち、十四の貸付先に対する九十八億四千四百万円が、平成十七年度末において、約定での完済予定日までの返済に懸念が生じております。うち三貸付先に対する一億六百万円は相手先が破綻しており、うち七百万円は現在においては全く回収可能性がありません。九千九百万円は、平成十二年に最後配当がなされていますが、その後の経緯に係る記録がなく、情報の把握、管理が不十分です。
 貸付先は破綻していないものの、仮に平成十七年度の返済状況が今後も継続した場合には、回収に三百年以上要するものも見られます。
 また、設備近代化資金貸付金は、平成十一年度に新規貸付を終了していますが、平成十七年度末の債権残高二百二十四件、九億二千八百万円のうち、二百二十二件、九億一千六百万円が延滞債権となっていて、大半の回収が極めて困難になっています。
 産業労働局は、財源の一部を東京都に貸し付けている国との協議を要する場合もあることなどから処理が進んでいない旨を説明していますが、関係先との連絡を密にして債権の状況を随時把握し、確実な回収ができるよう、管理、保全の充実に努める一方、明らかに回収が不能となったものは不納欠損処理を行う必要があります。
 なお、東京都は、平成十八年度から複式簿記と発生主義による新しい公会計制度を導入しましたが、この制度においては、債務者区分、債権分類を行った上で、企業会計の基準に準じて貸倒引当金を計上し、債権の状況を適正に開示する必要があります。
 次に、貸付金に関する事務処理の誤謬について申し上げます。
 監査の結果、平成十七年度東京都各会計歳入歳出決算附属書類の財産に関する調書の貸付金残高が千二百七十一億円余り過大に記載されていることが認められました。
 誤謬が発生した理由は複数あり、具体的には、東京都の事務手続上、年度内に返済が予定される貸付金は歳入調定され、貸付金としてではなく収入未済額として管理するため、貸付金から減額処理する必要がありますが、平成十七年度末の返済額について減額処理が漏れたこと、収入未済額を過年度から貸付金に含めて記載していたことなどです。
 減額処理が漏れたことは、単式簿記にも原因があり、新しい公会計制度が採用する複式簿記においては、発見、防止される仕組みがありますが、債権に関する規定を整備し、事務手続を組織として検証して、管理を改善する必要があります。
 なお、行政においては、予算執行に係る収支については厳密な手続がとられて検証されているものの、一たん予算執行されると、その結果として取得した財産については、貸借対照表が作成されていないこととも関係して、管理、把握が不十分になりがちであることはかねてからいわれております。
 しかし、貸付金は資金の利用目的と返済計画を明らかにした上で予算執行されるものであり、債権管理を充実することは、予算の目的を達成する意味からも極めて重要です。
 産業労働局は、債権管理の重要性に関する基本的な認識を局内に徹底する必要があります。
 次に、財団法人東京都中小企業振興公社に対する委託事業についてですが、委託事業に係る公社の管理運営費は東京都からの補助金で支弁されていますが、一方で、一部の委託事業で、事業費などに対する一定割合の管理費が委託費として支払われており、公社の自主事業の財源とされています。平成十七年度における金額は二千万円余りであり、当初から自主事業の財源として認識されております。
 産業労働局は、局が行う公益事業を、公社が社会経済情勢の変化に対応して補完するための政策的判断である旨を説明していますが、委託費の一部が自主事業に充当されていることは、公社の決算書からもわかりにくく、局と公社との間の裁量で自主事業の財源を確保できることにつながります。
 また、実質的に公費で行われる事業としては、事業の費用対効果などに関する局の把握、指導も不十分であり、公社への委託費に含まれる管理費のあり方を検討、改善する必要があります。
 第二に、観光振興対策事業に関しましては、東京都の魅力を海外に伝えるためにミッションを派遣して行う海外シティープロモーション事業の平成十七年度の費用は二億七千七百万円ですが、都民生活への影響が直接的にはわかりにくい事業であるため、その必要性と効果について都民の理解がより得られるよう努めることが特に求められます。
 商談会、セミナー、レセプションについては、参加者数や商談件数などは把握されているものの、以後の観光振興に具体的にどのように結びついたかの判断材料としては十分とはいえないため、事業の効果測定を確実に行い、その結果を、事業の概要とともに都民に説明していく必要があることを意見としております。
 なお、財団法人東京観光財団に対する委託事業についても、委託費の一部が当初から財団の自主事業に充当することが予定されており、検討、改善する必要があります。
 第三に、雇用就業対策に関しまして、都立技術専門校の管理について申し上げます。
 都立技術専門校は、行財政改革実行プログラムに基づき、一部に市場化テストが導入されていますが、東京都が直接行うか、民間に任せるかのコスト面での判断基準となるのは、人件費、資本費を含むフルコストです。
 平成十七年度までは、各校の年間の収支は把握しているものの、人件費、減価償却費などを発生主義でとらえた行政コスト計算はされておらず、校別または講座別の履修者一人当たりコストを把握して、原価管理や民間と比較するためのデータとして活用する仕組みをつくり、その上で、向上訓練の科目のうち、広く民間で行われているものについては、東京都の事業として講座を設ける必要性をより吟味することが求められます。
 また、教材の管理は、基本的に担当の職業訓練指導員に任されていますが、主要なものは組織として定期的に管理することが必要です。
 さらに、東京ファッションタウンビルを賃借して運営されている飯田橋技術専門校有明分校は、平成十七年度の建物賃借料が年間約二億七千万円で、建物が最も新しい飯田橋技術専門校の建物減価償却費と比較しても、建物施設に係る東京都の財政負担が大幅に上回っているため、東京都の他の施設の活用などにより、建物に要する公費の削減が求められることを意見としております。
 第四に、財団法人東京しごと財団の経営管理に関しましては、財団が再委託する事業について、業務内容ごとに金額を積み上げて作成された見積書の入手などにより、事業費のより細かな検討が求められること、平成十七年度末において、退職給与引当金が期末要支給額二億四千四百万円に対して九千六百万円不足しており、妥当な額を引き当てる必要があることを申し述べました。
 以上、平成十八年度包括外部監査の結果のご説明といたします。(拍手)

○議長(川島忠一君) 以上をもって包括外部監査人の説明は終わりました。

○六十七番(山加朱美君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明八日から十三日まで六日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(川島忠一君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明八日から十三日まで六日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、二月十四日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後二時二十七分散会


文書質問趣意書及び答弁書

一八財主議第四五一号
平成十九年一月三十日
東京都知事 石原慎太郎
東京都議会議長 川島 忠一殿
文書質問に対する答弁書の送付について
 平成18年第四回東京都議会定例会における下記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。

河野百合恵議員
村松みえ子議員
石毛しげる議員
古館和憲議員
松村友昭議員
曽根はじめ議員

平成18年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 河野百合恵

質問事項
一 瑞江駅西部地区、篠崎駅東部地区の区画整理事業について
二 持続可能な東京の都市づくりと木造住宅密集地域の改善について

一 瑞江駅西部地区、篠崎駅東部地区の区画整理事業について
現在、江戸川区内で東京都は、瑞江駅西部地区、篠崎駅東部地区の2地区の区画整理事業を施行しています。私は、2002年第三回定例会で、江戸川区内の東京都施行区画整理事業の遅れについて文書質問をしました。瑞江駅西部地区は2002年度、篠崎駅東部地区は2001年度から、移転工事が始まっていますが、2005年度までの進捗状況を移転棟数で見ると、瑞江駅西部地区は125棟、14.2%、篠崎駅東部は206棟、41.5%です。東京都は「施行期間内に事業を完了させる」と説明していますが、「都は本当に約束を守ってくれるのか」という住民の声は、今なお強いものがあります。区画整理事業地区内住民の不安が解消され、安心して住み続けられる街づくりが行われることを願い、以下、質問します。
 1 瑞江駅西部地区の事業計画決定は1994年度、続いて、篠崎駅東部地区は1995年度に事業計画が決定されました。それから数えても、すでに十数年の時が経過しています。2000年に東京都は2つの地区の完成年度を延期しました。瑞江駅西部地区は11年延期で2014年度、篠崎駅東部地区は13年延期で2017年度ということになりました。そのために住民は老朽化した家の建て替えもままならず、区画整理事業による様々な生活の不便、精神的負担感を抱えながらの生活を余儀なくされています。
 都は、事業の遅れの原因について、事業計画や換地設計に対する住民からの意見書の処理に時間がかかった、などの理由を挙げていますが、根本的な原因は東京都の街づくりの姿勢にあるのではないでしょうか。たとえば、瑞江駅西部地区で事業計画に対する987通の住民意見書が提出されたのは、平均減歩率が19.57%と他地区を大幅に上回る案だったことによるもので、瑞江南部・北部地区など周辺3地区に比較しても、住民負担が重すぎたからに外なりません。先行して区画整理が実施された隣接の西瑞江地区、瑞江駅南部地区などに比較して、都の予算が大きく削減されたことも遅れの要因です。
 2つの地区で区画整理事業の測量説明会が開かれたのは1988年、1989年です。約20年にも及ぶ長い期間、区画整理事業地区内に居住していることで苦労を重ねてきた住民の思いを、施行者である東京都はどのようにうけとめていますか。お答えください。また、住民に約束している年度内に事業完了させる工事計画は、どのように考えているのでしょうか。合わせて答弁を求めます。
 2 2006年度の事業予算は、瑞江駅西部地区が29億円(移転予定棟数80棟)、篠崎駅東部地区が23億円(移転予定棟数59棟)です。2005年度に比べて若干増額ではありますが、一方で、2007年度以降に移転が必要な棟数は瑞江駅西部地区で799棟(78%)、篠崎駅東部地区で233棟(46.8%)残っています。瑞江駅西部地区の今年度の移転予定棟数80棟で、2007年度以降に残っている799棟を割ってみると、移転が完了するのは11年後の2017年度になってしまいます。
 かつて、第一区画整理事務所には、毎年度80億から100億前後の予算が確保され、そのほとんどが区画整理事業費にあてられていました。ところが、2000年度に特別会計の臨海都市基盤整備事業が所管に加わり、また、臨海副都心関連の道路と橋梁建設費が街路事業として第一区画整理事務所の一般会計から支出されることになりました。
 2002年度の予算は、街路整備事業が約45億円、篠崎駅東部、瑞江駅西部の区画整理事業費が約10億円、2004年度は街路整備費63億円、2つの地区の区画整理事業費は28億という状況になりました。
 多数の住民が生活している地域の区画整理事業より、東京都が「都市再生」と銘打って力を入れている臨海副都心開発関連に予算配分の重点が大きく傾いていることが明白ではないでしょうか。
 区画整理事業を専管すべき第一区画整理事務所がなぜ、臨海部開発関連の事業に取り組み、予算の重点配分を行わなくてはならないのか、住民に対して納得が行く説明はされていません。
 第一区画整理事務所に臨海部開発の事業を加えたこと、予算配分の偏りがなぜ起きているのか、具体的に経過、理由をお答えください。
 3 区画整理事業は、移転した後の換地処分、清算金の徴収、交付の決定などの手続き終了で事業完成となります。清算金の決定などの手続きには、最低でも2年余かかると言われています。従って、瑞江駅西部地区では2012年度までに移転が終了しなければ、2014年に施行完了とはなりません。現状のような取り組みでは、到底間にあわないではありませんか。
 また、都は、「今後、瑞江駅西部地区は南側地区の事業に取り組んでいく計画」と説明していますが、南側の地域は、戸建て住宅が密集し、道路は幅員が狭い上に曲がりくねっており、地域全体が一括して移転しなければならないような街の形状です。予算をこれまで以上に増額させなければ南側地域の事業を進めるのは困難です。
 こうした状況に照らして考えると、今までのようなレベルの予算のつけ方では、東京都が言明している「施行期間内に事業を完了させる」ことは困難ではないか、と住民が疑問をもつのは当然です。
 住民要望を尊重し、事業を進めていくためには、都が特段の努力をして予算を大幅に増額させる必要があると考えますが。いかがでしょうか。答弁を求めます。
 4 区画整理事業を進めるには、施行者の東京都が住民の意見や要望に丁寧に対応していくことが重要です。事業地区内には、江東区にある第一区画整理事務所の出先機関の地区事務所が設けられ、職員が区画整理の仕組みの説明や補償問題をはじめとした住民の相談窓口となっています。
 地権者、借地権者などから寄せられる個々の細かな相談等にも応じてくれていますが、関係住民は、第一区画整理事務所を含めて事業を担当する職員はできるだけ継続して任にあたってほしいこと、事業の進捗に見合った人員増を行うことを希望しています。
 都の職員配置について住民の要望に応えていただくことを求めますが、お考えはいかがでしょうか。
 5 現在、第一区画整理事務所の一般会計で所管している区画整理事業は、瑞江駅西部地区、篠崎駅東部地区です。一方、臨海都市基盤整備事業会計による区画整理事業は、晴海四・五丁目地区、豊洲地区、有明北地区などがあります。今年度の予算を比べると一般会計は61億、臨海都市基盤整備事業会計は141億となっています。特に豊洲地区は約72億、有明北は51億と突出しています。石原知事は、破綻が明らかな臨海副都心開発を見直すことをせず、2016年のオリンピック招致を理由にいっそう臨海開発を促進しようとしています。区画整理事業の予算配分からも、知事の大型開発優先の姿勢が浮き彫りになっています。
 木造の低層戸建て住宅が密集し、そこに住む住民が年々高齢化している瑞江駅西部地区や篠崎駅東部地区の区画整理事業の方こそ、防災や福祉の側面から優先順位が高いのではないですか。
 他会計の予算を回すような方法で、破綻している臨海部開発の救済を行うようなあり方をあらため、都民生活を大切にする方向に予算配分を切り替えることを求めますが、いかがでしょうか。見解をお示しください。
二 持続可能な東京の都市づくりと木造住宅密集地域の改善について
 1 石原知事が推進する巨大開発型の都市再生と、瑞江駅西部、篠崎駅東部の区画整理事業を比較してみたとき、東京の街づくりが2極化していることは明瞭です。
 世界では、サスティナブルデベロップメント(持続可能な発展)、コンパクトシティが、都市づくりの望ましい方向として注目されています。都の都市再生路線は、東京をサスティナブルな都市にしていくことができるでしょうか。国の「都市再生特別措置法」によって東京が都市再生地域に指定した地区は東京駅周辺や六本木、新宿など都内では1級地とも言える所で、ここに急速な勢いで超高層ビルを次々に建設しています。超高層ビルと大型幹線道路建設を軸にした都市再生は、東京が直面しているヒートアイランド現象やCO2などの温室効果ガス排出増による温暖化をますます深刻にすると、指摘されています。世界的な取り組みになっている「持続可能な都市」のあり方と逆の方向に進んでいると言わざるをえません。
 1992年にオリンピックが開催されたスペインのバルセロナや、2012年のオリンピック開催都市に決まったロンドンでは、都市の周辺地域や工場閉鎖などで疲弊した地区の再生に力を注ぎ、生活と環境重視の立場で街づくりに取り組んでいることが評価を受けています。
 昨年発行になった「持続可能な都市、欧米の取り組みから何を学ぶか」の書には、次のような考え方が紹介されています。「『開発の誘導』の都市政策思想に従えば、まずどこが都市再生の課題地域として検討されるのが適当であろうか。2002年夏、都市計画家らが集まった内輪の小さな会合で『本来的には、都市災害に脆弱だといわれる木造住宅の密集地域などが最優先して都市再生特区に指定されるのがふさわしい』という意見が飛び出し、議論が盛り上がった。木造住宅密集地域こそ、火災の際の延焼の心配や、地震などのときの建物の倒壊など物理的な意味でサスティナビリティが最も問われるところである」とし、「木造住宅地域の衰退の傾向は深刻である」とも記されています。成熟した都市の姿を世界に示すというのなら、住む人も訪れる人も居心地がよく、豊かな緑や水に親しめ、文化と歴史の香りが漂う東京をつくることではないでしょうか。真の意味でサスティナブルな東京にしていくためにも、瑞江駅西部地区、篠崎駅東部地区に代表されるような木造戸建て住宅が密集している地域の遅れた街づくりの位置づけをもっと高めるべき、と考えます。「持続可能な都市・東京をつくる」立場から、都の都市政策の見直しを求めます。ご見解をお示しください。
 2 東京都内の木造住宅密集地域は、約2万3000ヘクタールあります。東京都は、2003年9月に「防災都市づくり推進計画(基本計画)」を改定し、防災上、危険度が高い整備地域として指定していた9200ヘクタールを6500ヘクタールに縮小してしまいました。重大な施策の後退です。都都市整備局の資料によれば、今年4月1日現在、都の木造住宅密集地域整備事業の実施地区は、19区53地区、2200ヘクタールで、都内の木造密集地域全体の10%弱にとどまっています。
 木造住宅密集地域は老朽化した住宅の割合が高く、高齢者など弱い立場の人が少なくありません。木造住宅密集地域は防災上、改善が急がれます。家や土地を借りているなど弱い立場の人たちのために公共住宅の建設を進めることや、住宅再建にむけての種地の確保などが必要です。建替えや住替えへの行き届いた支援の仕組みづくりが、整備を前進させる保障になります。合わせて、狭小な幅員の生活道路の拡幅や公園整備など公共施設を整えることも重要です。こうした施策を推進していくには、木造住宅密集地域整備予算を抜本的に拡充することが求められます。都民の生命と財産を守るうえで喫緊の課題になっていることを認識し、対策を強めていただくよう要望します。お考えはいかがでしょうか。
 3 今年度から、東京都は木造住宅耐震化促進事業を開始し、耐震診断や耐震改修工事への助成を実施しています。阪神・淡路大震災など甚大な被害が発生した地震災害の教訓からの、切実な都民要望が一歩前進という形でかなえられました。しかし、問題は実際に耐震診断や耐震改修助成の制度の活用が十分に進んでいないことです。今年11月、都は、耐震化を促進するために「安価で信頼できる木造住宅の『耐震改修工法・装置』の事例の募集」を行うことを告知しました。都民が適切な改修方法がわからないなどのことが耐震化が進まない理由としてあげていますが、私は、耐震化を促進していくには、都民が利用しやすくなるような制度の改善を行うべきと考えます。
 現在の都の制度は、木造住宅密集地域内の整備地域に指定されている6500ヘクタールの地域内にある1981年以前建築の住宅に限られること、幅員6メートル以下の道路に面している住宅であること、耐震強度が1以上であることなど、助成が受けられる要件が極めて厳しいものになっています。国の住宅・建築物耐震改修等事業補助制度や地域住宅交付金制度による制度であり、自己負担の重さなどが利用増につながらない要因であると言われています。都内の自治体では、墨田区や足立区などが、国や都の制度に独自の上乗せをして耐震化促進にむけ独自施策を構築しています。都としても、木造住宅耐震化促進にむけて、助成対象や助成額の拡充に取り組むよう提言します。御所見はいかがでしょうか。

平成18年第四回都議会定例会
河野百合恵議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 瑞江駅西部地区、篠崎駅東部地区の区画整理事業について
 1 20年もの長い期間、苦労を重ねてきた事業地区内の住民の思いを、都はどううけとめているか。住民に約束している年度内に事業完了させる工事計画は、どう考えているのか、伺う。

回答
 瑞江駅西部地区及び篠崎駅東部地区については、地元から事業の早期完了の要望があることは十分に認識しています。
地元の合意形成に時間を要しましたが、移転工事に着手して以降、事業は順調に進捗しています。
今後とも事業期間内の完了に向け、施行計画に沿って、着実に事業を進めていきます。

質問事項
一の2 区画整理事業を専管すべき第一区画整理事務所がなぜ、臨海部開発関連事業に取り組むのか。当所に臨海部開発関連事業を加えたこと、予算配分の偏りがなぜ起きているのか、具体的に経過、理由を伺う。

回答
 豊洲・晴海及び有明北地区は、大街区方式の土地区画整理事業を主体としてその整備を進めており、事業着手以来、担当事務所の変更はありましたが、現在は第一区画整理事務所が所管しています。
臨海部並びに瑞江駅西部地区など周辺区部の土地区画整理事業については、それぞれの進捗状況に応じ必要な予算の確保に努めてきました。

質問事項
一の3 今までのレベルの予算では、施行期間内の事業完了は困難である。住民要望を尊重し、事業を進めていくには、予算を大幅に増額させる必要があるが、いかがか。

回答
 瑞江駅西部地区及び篠崎駅東部地区は、本格的に移転工事を着手して以降、毎年度必要な事業費の確保に努めてきました。
今後とも、事業期間内の完了に向けて、予算の確保に取り組んでいきます。

質問事項
一の4 関係住民は、事業担当職員はできるだけ継続して任にあたること、事業の進捗に見合った人員増を行うことを希望している。職員配置について住民の要望に応えるべきだが、いかがか。

回答
 土地区画整理事業は、地元地権者との調整や話し合いを十分行いながら、事業を推進していくことが重要であり、地区事務所を設置し、円滑な事業の推進を図ってきました。
今後とも、適切な人員の確保に努めていきます。

質問事項
一の5 瑞江駅西部地区などの区画整理事業こそ防災や福祉の面から優先順位が高いのではないか。破綻している臨海部開発の救済を行うあり方をあらため、都民生活を大切にする方向に予算配分を切り替えるべきだが、いかがか。

回答
 瑞江駅西部地区など周辺区部の土地区画整理事業は、地域の防災性の向上を図るなど健全な市街地を形成する上で、また、豊洲・晴海及び有明北地区の土地区画整理事業は、東京の都市再生を推進する上で、ともに重要な事業です。
今後とも、それぞれの進捗状況を踏まえながら必要な予算の確保に努め、事業を着実に推進していきます。

質問事項
二 持続可能な東京の都市づくりと木造住宅密集地域の改善について
1 真の意味でサスティナブルな東京にしていくため、木造住宅密集地域の街づくりの位置づけを高めるべきである。持続可能な都市・東京をつくる立場から、都の都市政策の見直しを求める。見解を伺う。

回答
 都は、都市計画区域マスタープランの中で、「持続的発展を可能とする環境との共生」を都市づくりにおける基本理念の一つに掲げ、木造住宅密集地域については、防災性の向上を図り、安全で良好な環境を備えた質の高い市街地として再生することとしています。
これを実現するため、防災都市づくりの施策の指針と具体的な整備計画を定めた防災都市づくり推進計画を策定し、木造住宅密集地域の早期整備に努めています。

質問事項
二の2 木造住宅密集地域は防災上改善が急がれており、建替等への支援の仕組みづくりや公共施設整備などが重要である。木造住宅密集地域整備予算を拡充し、対策を強めるよう要望する。考えを伺う。

回答
 都は、防災都市づくり推進計画に基づき、整備すべき地域の重点化を図り、修復型の木密事業や新たな防火規制などとともに、街路や公園などの基盤整備事業を実施し、公共施設の整備と不燃建築物への建替えを促進しています。
今後とも、必要な予算の確保に努め、住民の協力を得ながら、地元区と連携し、木造住宅密集地域の整備を推進していきます。

質問事項
二の3 墨田区や足立区などは、国や都の制度に独自の上乗せをしている。都としても、木造住宅耐震化促進にむけて、助成対象や助成額の拡充に取り組むよう提言する。所見を伺う。

回答
 住宅の耐震化は、自助・共助・公助の原則を踏まえ、所有者によって行われることが基本ですが、震災対策上公共性が高い地域の住宅については、耐震化の促進を図るため、区の制度と連携の上、耐震診断・耐震改修に関する助成事業を平成18年4月から開始しています。
都では、建物の倒壊による道路閉塞を防止することを目的に、助成事業を実施しています。

平成18年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 村松みえ子

質問事項
一 稲城南山開発について

一 稲城南山開発について
「東京都の環境白書2006」では、地球の温暖化について、「日本では、ここ数年異常気象が多発している」として、地球全体が過去100年間で0.6度、平均気温が上昇し、日本全体は1.06度の平均気温の上昇で、一方東京では3度も上昇し、地球全体の5倍の温度が上昇しているという深刻な状況が指摘されています。こうした環境を早急に改善し、東京に住み続けられる環境をつくらなければなりません。そのためにも、大気を浄化する大切な作用をする緑地を保全することは欠かせません。
東京都が、今年4月12日に条件付きで認可した「南山東部土地区画整理事業組合設立」は、稲城市民にも都民にも大きな問題点をはらんでいます。
京王線新宿駅から約30分のところに京王稲城駅があり、稲城駅からよみうりランド駅の南側につながる丘陵地が南山です。南山には、豊かな生態系の象徴といわれるオオタカの営巣が確認され、多摩のカンアオイ、キンラン、銀ランなどが生息する、東京近郊で高尾山に次ぐ自然の宝庫と言われているところです。この貴重な丘陵地を開発しようというのですから、多くの市民、都民が「都心に近い貴重な緑地を残して」と声をあげるのも当然です。
計画区域は、約86ヘクタール(多摩動物公園の1.7倍の広さ)の土地に2550世帯、7600人が住む住宅と、中央高速道路から川崎方面に貫通する道路の建設計画です。
この計画にはいくつかの問題点が指摘されています。
1つ目は、南山開発事業は開発地内で土砂の処理をし、地区外には持ち出さないということから、最大30メートル山を崩し、その土砂で谷を最大35メートル(約10階建ての高さ)埋め立てる計画で、大地震のときは、中越地震・宮城県沖地震で大きな被害を受けた振興団地と同じ危険が指摘されています。さらに、この土地は「稲城砂層」といって雨水を大量に含むと、粒子がばらばらになり、流動化を起こし一瞬にして崩壊する性格を持っているものです。
 1「稲城砂層」といわれる地域での住宅建設は、大地震のとき中越地震・宮城県沖地震の被害を上回る影響があると思うがどうか。
 2つ目は、中央高速道路から川崎方面に貫通する道路による大気汚染についてです。かつて稲城市は、都内では比較的汚染されてない地域といわれていました。しかし、尾根幹線の開通、川崎街道・府中街道の拡幅、多摩川原橋、是政橋、稲城大橋の整備などで飛躍的に通過車両が増加し、多摩地区の中では汚染度が上がっています。
 稲城市が平成17年1月に行った調査によると、喘息の警戒数値である0.040ppmを超え、0.067ppmを観測しています。また、市内の民主団体の調査でも、過去5年間に0.06ppmを超しているところが9箇所、0.04ppmを超えているところが41か所もあります。また、60地点で調査した50地点で高度な汚染が観測されています。
 東京都教育委員会資料では、稲城の喘息被患率は6%から8%で、都内の新宿、豊島、中央、墨田、江戸川、目黒、板橋、練馬、杉並と同率で、多摩地区では、狛江、三鷹、府中、多摩、国立、清瀬、東大和、瑞穂、福生市と同率であり、調布、町田、八王子、日野、立川、国分寺、小平、東久留米、西東京、武蔵野、小金井市より高く、平成13年度時の2%のもっとも低い状況から比べて高い水準になっていることが明らかになっています。
 2 稲城市民の大気汚染を心配する住民にどのように答えるのですか。
 3つ目は、2550世帯7600人を誘致するとしていますが、小学校や保育園の建設の計画がなく、同じようなケースの若葉台地域の小学校では、28クラスで教室が足りず、今年の4月に6教室を増築する事態になる心配もあります。
 3 「開発先にありき」でなく、広く市民の声を聞くことが大事と思いますが、どうですか。
 4つ目は、東京都が認可する際の条件であった「東京における自然の保護と回復に関する条例第47条第3項の規定にもとづく協議について」の回答の中の「特記条件」(17環境自緑協第5号)動植物の生息または生育についての適正な配慮についての
 4 「各工区の造成を行いながらオオタカの生息行動調査を継続し、オオタカに関する状況及び工事の実施状況について、2ヶ月ごとに報告すること。また、生息状況、繁殖行動等に大きな異状があった場合は、作業を中断し、速やかにその異状の状況及び講じる措置を本都と協議し指示に従うこと」を都として組合に厳重に遵守させるべきと考えますが、どうですか。
 5 オオタカ繁殖期(「猛禽類保護の進め方」において敏感度から極大までとされる時期)における作業については、施工前に猛禽類専門家の意見を聞き、確実な保護対策を講じた上で実施すること」についても都は、組合に厳重に遵守させるべきと考えますが、どうですか。
 6 オオタカが根方谷戸地区で引き続き繁殖に執着するような状況にあった場合は、猛禽専門家の意見を聞き、事業の計画変更も含めて検討をおこなうこと」を都は、組合に厳重に遵守させる必要があると考えますが、どうですか。
 7 東京都は、「南山開発は、地震で崩壊する危険がある宅地造成で、特に流動化現象が起きる危険で有名な稲城砂層が主体で、特別の安全・耐震対策、特別の指導が必要なこと」を口頭陳述した地元住民に、「稲城は『稲城砂層』という特殊な地層なので、学識経験者を入れた研究審議会をつくって、検討結果を報告するよう指導している。宅造許可は、この報告を見て許可することになる。造成工事中の周辺の騒音・振動被害、仮土堰堤の崩壊事故について、周辺住民への事前説明会を実施するよう組合に指導する」と答えていますが、その通りやりますね。
 5つ目は、これ以上の開発が必要かどうかという問題です。すでに稲城地域は、多摩ニュータウン事業で、UR都市整備機構が稲城エリア開発済みの未利用地が18ヘクタールあり、雑草に覆われています。また向陽台3団地では、すでに建設された総戸数782戸のうち166戸の空室も目立っています。
 8 稲城市民の95%が「稲城の自然を守りたい」と、04年の市民アンケートに答えているように、緑地を破壊して開発する前に、多摩ニュータウン事業でつくってきた住宅地や住宅を友好に活用することの方が、社会環境に良いのではないでしょうか。

平成18年第四回都議会定例会
村松みえ子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 稲城南山開発について
1 南山開発事業の土地は稲城砂層であり雨水を大量に含むと流動化を起こし、崩落する性格を持っている。この地域での住宅建設は、大地震のとき中越地震・宮城県沖地震の被害を上回る影響があると思うがどうか。

回答
 都では、宅地造成等規制法に基づく許可に際し、以前から地震時の安全性に配慮した技術基準を定め、南山東部地区と同様の地質を含む多摩ニュータウンをはじめとする大規模な造成工事を審査するなど、多くの実績を有しています。
平成18年11月、中越地震や宮城県沖地震等での災害状況を踏まえ、大地震時の滑動崩落等の被害防止に関する技術的基準が宅地造成等規制法施行令に追加されました。
本事業の宅地造成については、これらの法令等に則り適正に審査し、必要な検査等を行います。

質問事項
一の2 中央高速から川崎方面に貫通する道路が計画されているが、稲城市では大気汚染度が上がっている。稲城市民の大気汚染を心配する住民にどのように答えるのか伺う。

回答
 南山東部地区で計画されている道路は2車線であるため、都条例に基づく環境影響評価の対象になりませんが、既に公表されている南山東部土地区画整理事業の環境影響評価書では、参考として工事完了後の自動車排出ガスによる周辺環境への影響を検討しています。それによると、二酸化窒素の影響濃度の年平均値は、現況濃度に対して最大1.5%程度と予測されています。

質問事項
一の3 計画では2550世帯、7600人を誘致するとしているが、小学校や保育園の建設計画がない。開発先にありきでなく、広く市民の声を聞くことが大事と思うが、どうか。

回答
 南山東部土地区画整理組合の設立認可に当たっては、土地区画整理法に基づき事業計画を公衆の縦覧に供し、広く市民の意見を聞いてきました。
なお、南山東部地区における小学校及び保育園の建設については、稲城市が「稲城市立学校適正学区等検討委員会」等で検討を行っていく予定です。

質問事項
一の4 都が認可する際、オオタカの生息行動調査の継続と報告、異常があった場合の作業中断などを条件としている。都として組合に厳重に遵守させるべきだが、どうか。

回答
 都は、本件開発申請に対する同意に際し、動植物の生育又は育成についての適正な配慮を求めるため、オオタカの生息行動調査などの条件を付しています。
組合に対しては、東京における自然の保護と回復に関する条例の趣旨が徹底されるよう、引き続き同意条件の確実な履行について適正に指導していきます。

質問事項
一の5 オオタカ繁殖期の作業は、施工前に猛禽類専門家の意見を聞き、確実な保護対策を講じた上で実施する、との条件についても、都は組合に厳重に遵守させるべきだが、どうか。

回答
 都は、本件開発申請に対する同意に際し、動植物の生育又は育成についての適正な配慮を求めるため、オオタカの生息行動調査などの条件を付しています。
組合に対しては、東京における自然の保護と回復に関する条例の趣旨が徹底されるよう、引き続き同意条件の確実な履行について適正に指導していきます。

質問事項
一の6 オオタカが根方谷戸地区で引き続き繁殖に執着するような状況にあった場合は、猛禽類専門家の意見を聞き、事業の計画変更も含めて検討をおこなう、との条件を、都は組合に厳重に遵守させるべきだが、どうか。

回答
 都は、本件開発申請に対する同意に際し、動植物の生育又は育成についての適正な配慮を求めるため、オオタカの生息行動調査などの条件を付しています。
組合に対しては、東京における自然の保護と回復に関する条例の趣旨が徹底されるよう、引き続き同意条件の確実な履行について適正に指導していきます。

質問事項
一の7 都は、宅造許可は検討結果報告を見て許可する、造成工事中の騒音等について、周辺住民への事前説明会の実施を組合に指導する、と答えているが、そのとおりやるのか、伺う。

回答
 宅地造成等規制法による許可に際しては、学識経験者等で構成する「南山東部土地区画整理事業造成工事検討委員会」の検討結果も考慮し、法令等に則って適正に審査します。
また、造成工事に係る事前説明会については、工事着手前に実施するよう組合を指導していきます。

質問事項
一の8 稲城市民の95%が、稲城の自然を守りたいとアンケートに答えている。緑地を破壊して開発する前に、多摩ニュータウン事業でつくった住宅地などを有効に活用する方が、社会環境に良いのではないか、伺う。

回答
 「稲城市都市計画マスタープラン」では、多摩ニュータウン地区において良好な居住環境の維持と自立的な生活圏の形成を目指すとともに、南山東部地区において都市防災上危険な崖地の解消や既存樹林地、寺社林を活かしたまちづくりを目指すことが位置付けられています。
南山東部土地区画整理事業は、この都市計画マスタープランに則り、公園、緑地等を適切に配置し、周辺環境と調和したまちづくりを実現するものです。

平成18年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 石毛しげる

質問事項
一 配偶者暴力被害者支援について

一 配偶者暴力被害者支援について
配偶者暴力問題は、被害者に対する支援や援助を主に民間の支援団体などが中心となって地道に活動し、加害者などからの脅威や被害者などに向けられる偏見などに負けず、努力してきたことが社会的にも認知されてきたものです。
民間団体などの人権擁護や男女平等にも係る問題意識が実を結び、国を動かして5年前に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(以下、配偶者暴力防止法という。)」が制定され、これまで全国的に配偶者暴力に対する取組みが行政の中でも推進されてきました。
都においては、平成16年12月の配偶者暴力防止法改正に基づき、平成18年3月に「配偶者暴力対策基本計画(以下、基本計画という。)」を策定し、区市町村を含めた行政の配偶者暴力対策の方向性を示し、都内全域における配偶者暴力被害者支援についての施策を打ち出しています。
この計画でも示されているように、被害者支援は行政の対策だけでなく、NPOやボランティアを含む民間団体が相談をはじめとする被害者に対するきめ細やかな支援に取り組んでいます。私は、そこで活動する方々から、仕事の内容や被害の実態についての話を聞くにつれ、その困難性と複雑さを痛感しているところです。
都は、今回策定した基本計画の中で様々な角度から、被害者への相談対応と自立支援等多くの施策を示しています。しかし、相談や支援の現場で活動している民間団体の皆さんの話を聞き、配偶者暴力対策についてはまだまだ多くの問題があると考えています。そこで、配偶者暴力対策に対する都の施策や支援に関して、何点か質問します。
 1 相談体制の充実について
  ア 配偶者暴力被害者が相談をしようと身近な区市町村の相談窓口に行ったとき、その区市町村により相談対応が違っていると聞いています。被害者の置かれた状況は区市町村によって差があるわけではありません。被害者がどこの区市町村に居住していても、被害者相談が一定の水準で受けられなくてはなりません。そのためには都がガイドラインを示すべきであると考えますが、如何ですか。
  イ また、被害者相談を受ける相談員の多くは、一般的な相談業務の経験はあっても、DVに関する知識や被害者支援の経験が十分ではないというのが実態ではないかと思います。DVの特殊性を理解したうえで対応しなければ、二次被害も起こってしまいます。適切な支援を行うために、研修体制の充実が望まれますが、考えを伺います。
 2 一時保護の充実と広域利用について
  ア 都では、福祉事務所やウィメンズプラザ、女性相談センターなどでの相談を通じて、状況や緊急性に応じた一時保護を実施しているようですが、その場合の判断について、都としての考えを伺います。
  イ また、配偶者暴力被害者の安全確保にとって、警察が果たす役割は重要だと考えますが、被害者の一時保護を所管する局では、警察とどのような連携を図っているのでしょうか。お答えください。
  ウ 配偶者暴力被害は大人だけではなく、その家族である子どもの心身にも大きな影響があります。一時保護された配偶者暴力被害女性は子どもを連れて逃げてくる場合が多いと聞いていますが、一時保護期間中、都ではそのような同伴児への支援をどのように行っていますか。
 3 被害者の生活再建と自立のための支援について
  ア 配偶者暴力のひとつの特徴として、加害者から避難した被害者の多くは暴力等の影響により、心身が不安定になることが多く見られます。そうした中で、被害者が安心して受けられる相談やカウンセリングなどは、本人の心身の安定を図り、自立への意欲を喚起する上でも、不可欠なものであると思います。暴力から逃れてきた女性など、経済的にも困窮している被害者が安心して受けられる公的機関のカウンセリングの充実が必要であると考えますが、伺います。
  イ 自立支援には、心身のケアだけでなく生活の再建ということも含まれます。家を出た被害者には着の身着のまま、飛び出してきたケースもあり、一時保護などの後、自立して生活を営むまでには相当の時間と本人を含む関係者の努力が必要となります。自立を考えるときにはまず、住居の問題が発生します。現在、都では都営住宅の優先入所などの制度も整備されつつあるようですが、まだ十分ではありません。更なる充実を図っていただきたいと思います。住居の問題の次には、経済的な問題が生じます。生活保護などの受給も支援のひとつではありますが、いつまでも公的機関に頼るのではなく就職し、自らの手で糧を得る、真の自立を望む被害者も多いと思います。そうした自立を促すためには、まず、就業支援が必要です。加害者から逃れるために偽名などを使って生活をしている被害者が、安心して就労に役立つ職業訓練や就労にあたっての支援を受けられる体制があるのか、または、そのような仕組みについての検討がなされているのか、伺います。
  ウ また、暴力を受けている被害者には子どもがいるケースが多い状況にあります。配偶者暴力のある家庭で育った子どもは、子ども自らも虐待を受けていたり、身体的な虐待などがない場合でも目撃などにより精神的に不安定であることが多いと聞いています。配偶者暴力被害者の支援を行っているときに、こうした子どもに対するケアは見過ごされがちだと思われますが、そのケアは子どもの将来を考えると非常に重要なものであると考えます。この、子どもたちのケアについて、都の考えを伺います。
 4 被害者の支援にかかる関係機関の連携について
  ア 配偶者暴力相談、被害者支援にあたっては、都だけでなく区市町村などの自治体や民間団体、警察など多くの関係機関との連携が必要になってくるものだと考えます。都の基本計画では、関係機関・団体との連携の推進を目標に掲げており、被害者支援にかかる体制強化を推進していくものであると期待をしています。配偶者暴力被害者にとっては、加害者から逃れた場合も、加害者との生活を継続することを選択した場合も、様々な支援体制が必要となることから、地域に密着した区市町村と広域的な行政関係機関の連携による支援が重要だと考えます。都は、被害者支援に係る連携の促進についてどのように考えているのか、伺います。
  イ また、加害者から逃れた被害者は、加害者の手が伸びないよう、できるだけ遠くに逃れる場合があります。そうしたとき、知り合いもない場所で生活することになり、気持ちが沈むなど引きこもりがちになるケースもあると思われます。そのようなときには、何らかの社会と関わりを作るきっかけが必要だと考えます。民間の支援団体は、相談や被害者支援を行う中で、きめ細やかに対応しており、この点においても積極的に活動しています。行政においてはボランティアや少ない資源の中で活動しているこうした団体への支援が必要であると考えますが、都の考えを伺います。
 5 配偶者暴力等の未然防止と啓発について
 改めて言うまでもなく、配偶者暴力、いわゆるDVは、昨今様々な場面で問題になっています。今まで行政においては被害者支援に重点が置かれ、様々な施策が講じられていますが、その原因となっている暴力加害者対策にも力を入れていくべきであると考えます。配偶者暴力被害を増やさないためには、加害者を増やさないこと、すなわち、教育と未然防止施策が不可欠ではないかと考えます。
 最近では、電車や学校内などで相手を小突くなどの暴力や、メールなどのチェックや行動制限を行うなど、高校生や大学生のカップルにおいても暴力が存在しており、加害者においては、自分の行為が暴力であることにも気づかないものが多いと聞きます。いわゆるデートDVと呼ばれるこの問題は深刻化していますが、きちんと教育し、正しい知識を普及することで、暴力の防止につながるものであると考えます。都においては、若年層に向けた暴力の未然防止及び啓発について、どのように考えているか、伺います。

平成18年第四回都議会定例会
石毛しげる議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 配偶者暴力被害者支援について
 1 相談体制の充実について
  ア 配偶者暴力被害者への相談対応が、区市町村により違っている。被害者相談が一定の水準で受けられるよう、都がガイドラインを示すべきだが、いかがか。

回答
 配偶者暴力被害者支援を担う関係各機関が連携し、被害者に対して適切な対応を取ることを目的として、都では「配偶者暴力被害者支援基本プログラム」を平成18年3月に作成しました。
このプログラムは、相談から自立に至る段階に応じて、関係機関の機能や役割を体系的に示しており、被害者の状況や意思に基づいて関係機関が適切な支援を行う際のマニュアルとしても利用できる内容となっています。
区市町村の相談窓口など支援機関に対してもこのプログラムを配布しており、引き続き活用についての周知を図り、相談をはじめとする支援体制の充実に努めていきます。

質問事項
一の1のイ 相談員の多くはDVに関する知識や被害者支援の経験が十分でないのが実態ではないか。適切な支援を行うため、研修体制の充実が望まれるが、考えを伺う。

回答
 相談を含め被害者支援を行う者は、二次被害を起こさないことはもちろん、被害者の立場に立って、慎重に対応することが必要です。
東京ウィメンズプラザにおいて、相談員を対象とした相談員養成研修や関係機関の職員等を対象とした職務関係者研修を実施するほか、複雑な事例の円滑な解決を図るため、専門家による指導助言を行うスーパーバイズなど、相談対応能力の向上に努めています。
今後とも、被害者への適切な支援を行うため、相談員等に対する研修の充実を図っていきます。

質問事項
一の2 一時保護の充実と広域利用について
 ア 都では、福祉事務所やウィメンズプラザ、女性相談センターなどでの相談を通じ、状況や緊急性に応じた一時保護を実施しているが、その場合の判断について伺う。

回答
 配偶者暴力被害者の一時保護は、都の配偶者暴力相談支援センターのひとつである女性相談センターの一時保護所で行うほか、民間の婦人保護施設などに委託して実施しています。
一時保護は、被害者の生命の危険性や、家庭生活の継続の可能性などを総合的に検討し、被害者の意思を確認した上で行っています。
また、一時保護を行う場所は、被害者の心身の状況や、配偶者等の勤務地、居住地などを考慮して決定しており、配偶者等からの追及が激しい場合などは、公的な機関である女性相談センターで一時保護することを基本としています。

質問事項
一の2のイ 配偶者暴力被害者の安全確保にとり、警察が果たす役割は重要である。被害者の一時保護を所管する局では、警察とどのような連携を図っているのか伺う。

回答
 配偶者暴力被害者の一時保護期間中は、配偶者等からの暴力防止及び被害者の保護の観点から、警察と密接に連携していくことが重要です。
こうしたことから、女性相談センターの一時保護所では、配偶者等による付近のうろつきやつきまといの行為が予想される場合などには、地元警察に対してパトロールの強化を依頼しています。
また、一時保護期間中の被害者が、荷物を取りに一時帰宅する際、警察官による同行の協力を得るなど、被害者の安全確保に努めています。

質問事項
一の2のウ 配偶者暴力被害女性は、子どもを連れて逃げてくる場合が多い。一時保護期間中、都では同伴児への支援をどのように行っているのか伺う。

回答
 配偶者暴力被害者の同伴児は、これまでの生活環境の影響から、強い緊張感や恐怖心を抱いていることが多いため、落ち着いて生活できるよう、心身の負担感を取り除くことが必要です。
このため、一時保護所の入所時に、医師がけがや病気の状況を確認した上で、一時保護期間中は、心理療法担当職員等が心のケアや親への助言を行うほか、必要に応じて児童相談所と連携しながら、同伴児の状況に応じたきめ細かな支援を行っています。
さらに、女性相談センターでは、専用スペースを設け、保育士資格を持つ者が保育に当たるとともに、小学生以上の子どもには職員やボランティアによる学習指導を実施するなど、同伴児が安心して生活できるための環境を整えています。

質問事項
一の3 被害者の生活再建と自立のための支援について
 ア 被害者の多くは、暴力等の影響により心身が不安定になる。暴力から逃れてきた女性など、経済的にも困窮している被害者が安心して受けられる公的機関のカウンセリングの充実が必要だが、所見を伺う。

回答
 配偶者暴力被害者が暴力の影響から立ち直り、自立した生活を再建していくためには、心のケアが重要であると考えています。
都においては、地域で自立生活を送ろうとする被害者の心理面での健康回復を目的として東京ウィメンズプラザで精神科医師による面接相談を行っているほか、精神保健福祉センター等の相談機関においても相談に応じています。
また、東京ウィメンズプラザで実施する自立支援講座の中で、精神的な不安を解消するための具体的なアドバイスなど心のサポート等も行っています。

質問事項
一の3のイ 偽名を使用している場合でも被害者が安心して職業訓練や就労支援を受けられる体制があるのか、仕組みの検討がなされているのか伺う。

回答
 配偶者暴力被害者の就労を支援するため、東京ウィメンズプラザにおいてパソコン技術の習得を支援するIT講座の開催や、自立支援講座の中で就労に関する情報提供などを行っています。
また、都立技術専門校において、求職者向けの公共職業訓練を実施しているほか、母子家庭の母等を対象とした職業訓練を実施しています。
これらの就労を支援する講座等に通う場合には、申請時の手続きにおいては本名で行うことが必要になりますが、配偶者暴力被害者等事情がある方については、希望により仮名を使用することもできます。
連絡先など個人情報については情報管理を徹底し、今後とも被害者が安心して受講できるよう努めていきます。

質問事項
一の3のウ 配偶者暴力のある家庭で育った子どもは、自らも虐待を受けていたり、目撃により精神的に不安定なことが多い。子どもたちのケアについて、考えを伺う。

回答
 配偶者暴力は子どもにも大きな影響を与えており、配偶者暴力のある家庭にいる子どものケアは、大きな課題であると認識しています。
このため、平成18年度から東京ウィメンズプラザにおいて、子どもを対象に遊びを通じて心の傷の回復を図る講座を継続的に実施しています。
また、被害者とその子どもを支援する関係機関が共通の認識を持って対応することができるよう、それぞれの役割を明確にし連携を図るための「子どものケアプログラム」の作成に取り組んでいます。

質問事項
一の4 被害者の支援に係る関係機関の連携について
 ア 配偶者暴力被害者には様々な支援体制が必要であり、地域に密着した区市町村と広域的な行政関係機関の連携による支援が重要である。被害者支援に係る連携の促進についてどう考えているのか伺う。

回答
 配偶者暴力被害者に対しては、相談から生活の再建に至る各段階に応じて、都をはじめ区市町村等の関係機関が総合的に支援に取り組む必要があります。
都は、これまでの施策推進のための会議と実務上の連携を行う会議を発展的に再編統合し、より緊密に連携し適切な被害者支援を行うために「配偶者暴力対策のためのネットワーク会議(仮称)」を設置する予定です。
今後、都における広域連携ネットワークを構築し、関係機関の円滑な連携を促進していきます。

質問事項
一の4のイ 民間の支援団体は、相談や被害者支援を行う中で、きめ細やかに対応している。ボランティアや少ない資源で活動している団体への支援が必要だが、考えを伺う。

回答
 民間団体はそれぞれ独自の立場から相談や一時保護など様々な活動を行っており、被害者支援に重要な役割を果たしています。
こうした民間団体に対しては、活動するための場の提供や、人材育成の支援のほか、民間団体の支援活動に対して経費の一部を補助するなど、多様な支援を行っています。

質問事項
一の5 高校生や大学生のいわゆるデートDV問題が深刻化しているが、きちんと教育し、正しい知識を普及することで暴力防止につながる。若年層に向けた暴力の未然防止及び啓発について、どう考えているか伺う。

回答
 配偶者暴力のない社会を実現するためには、未然防止が重要であり、基本計画においても「暴力の未然防止と早期発見の推進」を掲げています。
これまでも、高校生や大学生などの若年層を対象に、男女の対等なパートナーシップを学ぶ講演会や、いわゆるデートDVをテーマに都民向けの配偶者暴力防止講習会を開催しています。また、当事者に接する機会の多い医療・福祉・教育等の職務関係者を対象としたデートDVに関する研修会も実施しています。
今後とも、若年層に対する配偶者暴力の未然防止に取り組んでいきます。

平成18年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 古館和憲

質問事項
一 首都東京の安全と平和をおびやかす「米軍再編」について
二 都職員を増やし働きやすい環境を
三 都施設の改善について

一 首都東京の安全と平和をおびやかす「米軍再編」について
いま、アメリカがおこす戦争に自衛隊を世界のどこにでも参加させる体制づくりが「米軍再編」の名のもとですすめられています。この「米軍再編」は、「朝鮮戦争以来の大規模な再編」といわれ、日本の自衛隊を米軍勢力の一員として、その指揮下に組み込んでいく。そのために全国135カ所の米軍基地を自衛隊も取り込んで、再編強化するというものです。今回の日米合意で、横田基地については、米軍が引き続き居座り続けるとともに、自衛隊も居座らせて共同使用する--すなわち、基地の永久化・固定化が具体化されようとしています。
この米軍再編計画にたいして、石原知事は「軍軍共用化はやむをえない」として、いち早く横田基地の再編計画を容認する態度を取りました。
しかし、石原知事は七年前、知事選の立候補に当たって「横田基地の返還」を公約にかかげ、00年の第一回定例会で、知事は「横田基地についての都の最終目標は、あくまで返還であり・・・国に対して返還を求めていく」と、明確に答えています。
 1 いま石原知事に問われていることは、知事の公約に照らして、基地の返還にむけて努力することではありませんか。はっきりとお答えください。また、横田空域の返還については都民の世論を反映して、一部返還が可能になることが明らかにされましたが、全面返還にむけてさらに働きかけを強めることを求めます。答弁を求めます。
 平穏な生活と安全が脅かされ続けているのは、地域の住民です。しかもいま、基地騒音ばかりか、航空機事故などの危険要因として基地周辺の住民を不安にさせているのが、日本などに飛来している米軍機に劣化ウランなど放射性物質が使用されているとのマスコミによる報道です。それによると「いずれの物質も人体への被曝があれば放射線障害がおきる」とされています。04年には、沖縄国際大学で起きた米軍ヘリ墜落事故でも放射線物質が燃え、住民の健康不安を招いたことは記憶に新しいことです。
 2 劣化ウランの軍用機での使用について、米軍に使用実態を公開させること。また、すでに使用が明らかになっている軍用機について乗り入れの規制を求めること。
 また、日本経済新聞10月29日の一面で、在日米軍がミサイル防衛の中核をなす地対空誘導弾パトリオット3ミサイルを首都圏の米軍基地に配備する検討を始めたとする記事がのせられました。「日本政府への非公式な連絡」としつつも、その候補地に横田基地、横須賀基地があがっているとのことです。
 3 これらの報道について、先の決算委員会の場では、防衛庁として「承知していない」とのことでしたが、地対空ミサイルの配備についてはその後、どのような状況になっているかを改めてただしていただきたい。また都として、パトリオット3ミサイルについて、その配備に反対である旨を関係機関に申し入れすべきです。
 次に2006年9月1日におこなわれた「東京都・足立区合同総合防災訓練」についてです。
 この防災訓練は、首都圏の八都県市(東京・神奈川・千葉・埼玉の各都県、横浜・川崎・千葉・埼玉の各市)合同での防災訓練であり、第27回目を数えました。
 今回の「防災訓練」では「帰宅困難者」対策が大きな目玉として実施され、とりわけ突出した形で行なわれたのが自衛隊護衛艦とともに、米第7艦隊所属のフリゲート艦「ゲイリー」が出動したことです。
 この出動にかかわって、8月4日の記者会見で石原知事は「米軍は今までもやっているが、海軍も来いと言ったんです」「ぼくは空母艦もってこいと言ったが、そうはいかないらしいが」と述べました。
 4 この発言は、いつ、誰にたいしておこなったものか。また、防災訓練に米軍艦船を参加させることについて、誰が、いつ考えたのか明らかにされたい。
 防災訓練当日、驚きだったのは米軍艦船が、足立会場から移動してきた「帰宅困難者」を運ばずに、晴海で待機していた帰宅困難者に見立てた都職員であったことです。
 5 これは、明らかに知事の行程を最優先してのことではなかったのか。明らかにされたい。
 6 また、米軍のヘリコプターが医薬品の輸送をおこなったが、医薬品の輸送にあたる仕事は本来、消防などの災害対策用ヘリコプターではないのか。さらに、横田基地を全国からの終結基地としていましたが、緊急事態を想定した場合、立川防災基地や調布飛行場、羽田、成田などの空港を活用することがなぜできなかったのか、あわせてお答えいただきたい。
 7 東京都地域防災計画(震災編)、また「東京都震災対策事業計画」(17年度から19年度)でも、「図上訓練の実施」は、「国、警察、消防、自衛隊などの防災機関の協力をえて取り組む必要がある」としており、米軍の出動などは一切想定されていないではないか。
 いうまでもなく、在日米軍の任務は、朝鮮半島から中東に及ぶ「不安定な弧」にむけて侵攻戦争をおこなうための軍隊であって、本来、日本政府や自治体の管理に服する必要などないものです。このように米軍を参加させることはアメリカの世界戦略のための「米軍再編」を自治体がバックアップすることになりかねないものです。
 自衛隊が装甲自動車の渡航訓練や、自衛隊テントで中学生が「ボランティア」の腕章をつけてカレーライス配りなどをしていたことに少なくない参加者から疑問や批判の声があがっていました。
 8 首都における防災訓練は、あくまでもその中心に住民と自治体をすえること。そのための都としての第一義的任務は、東京都が有しているさまざまな能力をフルに活用することです。首都警察としての警視庁はもとより、「21世紀新たなる前進首都東京の防災」を行政目標に掲げている東京消防庁などの役割に正当な光を当てることだと考えるがどうか。
二 都職員を増やし働きやすい環境を
都はこれまでも職員定数を削減し続けてきましたが、石原都政のもとで二次にわたって都職員の人員削減をしつづけてきました。削減対象は正規職員だけでなく、定数には含まれていない非常勤職員、臨時職員なども対象として容赦なく減らしつづけてきました。その結果、この三年間で4000人の定数削減目標を大幅に超過達成させ、いままた「行財政改革実行プログラム」によって、これから三年間でさらに4000人もの定数削減計画をうちだしています。
こうしたなかで、多くの職場で慢性的な超過勤務が強いられ、業務体制、業務計画も残業を前提としたものにならざるをえないなどの実態が広がっています。欠員が補充されないままの勤務が連続的に続くことによる加重負担などで、たとえば長期病欠に追い込まれている職員は、01年、1208人でしたが、05年度は2099人と年をおって多くなっています。
 1 今後、団塊の世代などによる大幅な退職時期を迎える中で、さらに職員を削減していく計画は、都民生活をまもるという都政としての基本的な使命からみても逆行としか言いようがありません。4000人の定数削減計画は撤回し、増員することを求めます。
 さらに、いま職場から共通してあげられている声の一つが、超過勤務状態が慢性化している事態を是正してほしいということです。しかも重視しなければならないことは、それにともなってサービス残業が横行していることです。これは職員組合などからも「サービス残業の根絶」が強い要求としてだされています。
 2 働いた対価としての賃金が払ってもらえないという、いわゆるサービス残業は法律違反ではありませんか。
 3 ただちに、是正措置をとるとともに、超過勤務の実態把握を全庁的に実施し、その結果を明らかにすること。また、超過勤務のカード入力の導入を直ちにおこなうことを求めます。
 また、都が採用している一般事務の臨時職員などの賃金については、ここ数年間時給で785円に据え置かれており、増額が求められています。この785円という金額は、東京労働局が決めた最低賃金の719円を上回ってはいますが、それにしても低すぎます。東京23区の自治体では、平均額が一時間当たり880円台で、三多摩でも830円台です。都が785円では、あまりにも低すぎるのではありませんか。
 4 一般事務の臨時職の賃金を少なくとも23区平均の880円相当に引き上げることを求めます。
 5 また、都として委託業者に雇用された賃金について、どのような水準になっているかもあわせて調査し、引き上げることを求めます。
三 都施設の改善について
都民と直結した建物や施設の改築、改善などは待ったなしの課題です。
都営住宅について現在の管理戸数の6割強が旧耐震基準のままになっています。これらの住宅は耐震化されているかどうかについて、これから調査するとしています。
 1 この計画については08年度から始める予定ですが、オリンピック事業に毎年1000億円も積み立てる計画よりも都営住宅などの耐震化調査を速やかに実施し、必要な補修・補強をただちに実施することを求めます。
 2 また、同時に、老朽施設や使わなくなった建物などについては廃止するのではなく、耐震補強など必要な改修などの対策をとり、大いにいかしていくことを求めます。
 さらに動物愛護相談センターの老朽化に加えて収容動物多種類の品質や年齢、性別に対応できていないこと。松沢病院をはじめとする老朽病棟の改修と建替え、駒込病院の脱衣場の床、シャワー・浴槽の改善をはじめ、多くの改築、改修・改善の声が現場から上がっています。都税事務所の出先の各庁舎、とりわけ建築年数が旧い中央、立川、足立をはじめとする少なくないところで、この間に天井が落下したり、漏水、停電などの事故が発生するなど深刻です。老朽化とともに、地震対策、騒音対策をすすめ、事務・書庫や休憩室の狭隘化。今後のIT化への対応など、職員の健康確保だけでなく来庁者にたいする接遇の点でも改修や改善が急がれているところが少なくありません。
 3 都はこれまで、財政難を理由に耐震や補修改善を先送りしてきましたが、今そのツケが回ってきています。庁舎をはじめとする諸施設の改築や改修については、そこで働く職員が一番熟知しています。職員の声を聞くシステムを確立して、適切に対応することを求ます。

平成18年第四回都議会定例会
古館和憲議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 首都東京の安全と平和をおびやかす「米軍再編」について
 1 知事は、横田基地の再編計画を容認する態度を取ったが、問われているのは、基地の返還にむけ努力することではないか。また、横田空域の全面返還にむけさらに働きかけを強めることを求める。答弁を求める。

回答
 都の米軍基地に対する基本姿勢は、「整理・縮小・返還の促進」であり、横田基地については、返還までの対策として軍民共用化を目指すものです。
また、横田空域の返還については、2006年5月に合意された米軍再編のロードマップにおいて、一部空域を2008年9月までに返還することとされ、2006年10月に返還空域が特定されたところです。さらに、全面返還についても、必要な条件の検討を2009年度に完了することとされています。都としては、一部返還が着実に実行されるよう注視していくとともに、早期全面返還の実現に向け、引き続き国に対し積極的な取組を求めていきます。

質問事項
一の2 劣化ウランの軍用機での使用について、米軍に使用実態を公開させること。また、すでに使用が明らかになっている軍用機の乗り入れ規制を求めるべきだが、答弁を求める。

回答
 米軍における航空機の劣化ウランの使用実態について、国に照会しましたが、国では、米軍から「航空機の安全面については、周辺住民に影響を与えないよう製造している」と回答を得ているとのことでした。
なお、劣化ウランの人体及び環境への影響については、世界保健機構などで調査が行われていますが、人体及び環境への影響に関して確定的な結論が出ているとは言えない状況です。

質問事項
一の3 防衛庁に対し、地対空ミサイル配備の状況をただすべきである。また都として、パトリオット3ミサイルの配備に反対である旨を関係機関に申し入れるべきである。答弁を求める。

回答
 地対空誘導弾パトリオット3ミサイル(PAC3)配備について、国に照会していますが、首都圏の米軍基地に配備するよう申し入れた事実はないとの回答を得ています。
また、平成18年11月3日付の米軍機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」によると、ライト在日米軍司令官が「PAC3のミサイル防衛について、東京への配備計画はない。」と明言しています。

質問事項
一の4 防災訓練での米艦出動に関し、知事は記者会見で「海軍も来いと言った」などと述べたが、この発言はいつ、誰に対しおこなったものか。また、防災訓練に米軍艦船を参加させることを誰が、いつ考えたのか伺う。

回答
 都は、これまで横田基地や赤坂プレスセンターを活用した訓練を実施してきましたが、今回の訓練では、在日米軍の参加を検討し、平成18年6月15日に知事から在日米軍司令官及び米海軍第7艦隊司令官に対し、要請しました。

質問事項
一の5 訓練当日、米軍艦船は、足立会場から移動してきた帰宅困難者を運ばず、晴海待機の帰宅困難者に見立てた都職員だった。これは明らかに知事の行程を最優先してのことではなかったのか、伺う。

回答
 今回が、在日米軍にとっては、はじめてのケースであったことから、混乱を避けるため、乗船する帰宅困難者は都職員としました。

質問事項
一の6 米軍ヘリが医薬品を輸送したが、この仕事は本来、消防などの災害対策用ヘリではないか。さらに、横田基地を集結基地としていたが、立川防災基地や調布飛行場など他空港の活用がなぜできなかったのか、伺う。

回答
 災害時には、あらゆる手立てを講じて、被災者の救援に当たることが重要です。
このため、災害時の救援活動に必要となる人員、資機材、輸送能力などを有する在日米軍に対し、ヘリコプターによる物資の輸送を要請しました。
また、立川防災基地や調布飛行場では、大量輸送が可能な大型航空機の離着陸が不可能なため、横田基地を輸送拠点とした訓練を実施しました。

質問事項
一の7 地域防災計画などでも、図上訓練の実施は、国、警察、消防、自衛隊などの防災機関の協力をえて取り組む必要がある、としており、米軍の出動などは一切想定されていない。答弁を求める。

回答
 地域防災計画には、国外からの支援について明記していませんが、災害時における国際人道支援は世界の共通認識となっており、大規模災害では、国内のみならず国外からの支援活動が実施されています。
このため、今回の訓練では、在日米軍及びソウル特別市災害レスキュー隊による国外支援を想定した訓練を実施しました。

質問事項
一の8 首都での防災訓練は、その中心に住民と自治体をすえること。都の第一任務は、都が有する能力をフルに活用することであり、警視庁はもとより、東京消防庁などの役割に正当な光を当てることだと考えるが、どうか。

回答
 都は、これまで、住民による自助・共助と、これを支える防災機関による公助を基本とし、総合的な災害対応能力を高めることを目的に、防災訓練を実施しています。
今回の訓練においても、257機関、27400人の参加を得て、避難誘導、初期消火など、住民による自助・共助の訓練を行うとともに、都が各防災機関と共に、相互に連携した救助活動訓練などを実施しました。

質問事項
二 都職員を増やし働きやすい環境を
 1 今後大幅な退職時期を迎える中、さらなる職員削減計画は、都民生活をまもるという都政の基本的使命からみて逆行している。4000人の定数削減計画は撤回し、増員することを求める。答弁を求める。

回答
 職員の大量退職や少子化による労働市場の縮小などの現実を考えると、より少ない人材で、都民サービスの一層の充実を図る組織体制を築いていかなければなりません。
そのため、全庁を挙げて、簡素で効率的な執行体制の整備や事務事業の見直しを行うとともに、多様な経営改革手法の積極的な導入、公営企業の抜本的な改革などの取組を進め、さらなる職員定数の削減に取り組みます。

質問事項
二の2 職場では、超過勤務状態が慢性化し、それにともないサービス残業が横行している。働いた対価としての賃金が払ってもらえないという、いわゆるサービス残業は法律違反ではないか、伺う。

回答
 都における職員の超過勤務は、管理職による事前命令、事後確認に基づき超過勤務命令簿により適正に管理しており、随時、各局に対して通知し、指導を徹底しています。
超過勤務の縮減についても、今後とも、管理職による超過勤務時間の管理を徹底していくとともに、全庁一斉定時退庁日やノー超勤ウィークの効果的な実施など、具体的に取り組んでいきます。

質問事項
二の3 ただちに是正措置をとるとともに、超過勤務の実態把握を全庁的に実施し、その結果を明らかにすること。また、超過勤務のカード入力導入を直ちにおこなうことを求める。答弁を求める。

回答
 超過勤務は、超過勤務命令簿により事前命令、事後確認を行っており、適正に管理されています。今後ともその徹底を図っていきます。

質問事項
二の4 都が採用している一般事務の臨時職員などの賃金は、ここ数年間時給785円に据え置かれている。23区平均の880円相当に引き上げることを求める。答弁を求める。

回答
 一般事務補助に従事する臨時職員の賃金については、予算の範囲内で各局において決定することとされています。
なお、財務局では予算上の参考単価として、国や他団体の賃金状況や都人事委員会勧告内容などを総合的に勘案して適切に定めており、平成19年度で日額6310円としています。

質問事項
二の5 都として、委託業者に雇用された賃金について、どのような水準になっているかを調査し、引き上げることを求める。答弁を求める。

回答
 従業員の賃金の額は、会社の経営上の意思決定の結果であり、受託会社の問題です。
受託会社にはそれぞれの会社の給与規定があり、それに基づいた給与が支払われているものと考えています。

質問事項
三 都施設の改善について
 1 都営住宅は、現在の管理戸数の6割強が旧耐震基準のままになっている。都営住宅などの耐震化調査を速やかに実施し、必要な補修・補強をただちに実施することを求める。答弁を求める。

回答
 旧耐震基準で設計された都営住宅については、建替え対象を除く約3200棟の耐震診断を平成24年度を目途に行うとともに、耐震改修についても必要に応じ、順次、実施することとしています。

質問事項
三の2 老朽施設や使わなくなった建物などは廃止するのではなく、耐震補強など必要な改修などの対策をとり、大いにいかしていくことを求める。答弁を求める。

回答
 事業の見直しにより不要となった施設は、新たな用途に転用するなど、有効活用を図っています。
また、老朽化した施設を使用する場合は、設備の更新や耐震性能の向上などの改修を図っています。

質問事項
三の3 庁舎をはじめとする諸施設の改築や改修については、そこで働く職員が一番熟知している。職員の声を聞くシステムを確立し、適切に対応することを求める。答弁を求める。

回答
 これまでも施設管理者などからヒアリングを行い、施設の利用状況などを把握した上、改築・改修を行っています。

平成18年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 松村友昭

質問事項
一 東京外かく環状道路について

一 東京外かく環状道路について
石原知事は、所信表明で、「10年後のオリンピックに備え、首都圏を巡る幹線道路をモータリーゼーションの時代にふさわしい形で完成させる必要」をぶち上げて、持続可能な社会のため、脱車社会をめざす世界の流れとまったく逆立ちした方向に踏み出そうとしています。
とくに、外かく環状道路について、国の“凍結宣言”もないがしろにし、国土開発幹線自動車道建設会議の審議もないまま、早期事業化を図るとして、アセス準備書や計画変更案の公告縦覧から半年もたたない11月16日には、環境影響評価書案を国に提出、都市計画変更案についての関係区市長からの意見照会の回答期日を来年1月12日までとしています。
その上、来年早々、国から外環の「環境影響評価書」が提出され次第、次回の都都市計画審議会にかけて結論をだそうなどという異常な形で都市計画手続きを進めています。
沿線区市長共同声明は、「外環の都市計画の変更は事業着手に道を開くものである以上、現段階での充分な検討と地元住民からの理解を得ることが不可欠である。沿線各区市にとって外環計画は単なる道路計画ではなく、外環整備の結果としてまちづくり全般への大きな影響が予想され、この点から充分な検討なくして沿線住民からの理解は得られない」としています。
 1 地元自治体と十分協議し、沿線地域住民に十分な説明と最大限の情報提供、理解を求めるべきです。見解を伺います。
 アセスと都市計画変更案が公告縦覧されて以来この半年間、都民からの意見が2483件、「環境影響評価準備書」にかかわる都民の意見を聴く会では、27名の意見口述がありました。
 これらの意見の中には、「外環の目的をもっぱら交通渋滞の解消としますが、国土交通省の道路交通センサスを使って詳細に調べてみたところ、3環状道路、圏央道、外環、中央環状線の既存区間において、周辺道路で交通量の減少効果が見られないうえ、道路新設部分で、さらに交通量が増加しています。事業を進める前に過去の事例を検証するべきだ」「八王子城跡のトンネル工事が計画どおりにいくであろうというふうに技術的に評価されても、現実的にはあれだけの水に対する影響、完全な環境破壊を起こしてしまった。そういうことが現実に起こるわけなので、流動保全工法にしても、十分に実証された段階で今度のような大工事に適用すべきではないか」など、いくつもの計画の基本にかかわる問題が質されています。
 2 手続きをすすめる前に、これらの都民の意見に対する見解を明らかにすべきです。
 3 また、すでに国に提出されている「環境影響評価書案」に、準備書の記載事項にどのように検討が加えられ、「環境影響評価書案」が修正されたか都民に明らかにすべきです。
 4 法アセスでは、事業者が「環境影響評価書案」を提出してから90日以内に国から回答されるとなっていますが、国の「環境影響評価書」が示されたら、ただちに都民に公開して、都民の意見を求めるべきだと考えますが、それぞれ見解を求めます。
 外環の現計画が多くの立ち退きなど、あまりにも住民生活を犠牲にするもので、事業化不可能であることは明らかな中、大深度地下利用による地下式への構造を見直す案が出されたが、この時点で、外環上部道路の「外環その2」も今後検討するなどという都の見解にだま し討ちだとの大きな怒りの声が湧き起こっています。
 外環計画に関する沿線区市長共同声明でも、「外環の2の扱いについては、現時点では今回の(外環本線の都市計画変更を是とするかどうか)の検討と切り離して考えることが出来ない課題となっている。」としています。
 5 外環その二の都市計画をただちに廃止し、その上で外環本体の必要性の可否について、都民とともに検討すべきであると考えるが、見解を求めます。
 外環の都市計画変更案が、環境を破壊する計画となることの象徴とも言えるのが、「八の釜憩いの森」の消失です。
 私の家から歩いて5分程度に位置するこの湧水地を、近隣の子ども達は、地獄谷と呼んで、その神秘的な自然を宝物のように畏敬していました。その規模も当時よりだいぶ縮小されましたが、五十年間昏々と湧水が湧き続けているこの場所を区も保存し続けています。
 6 ここが消滅するなどということがあってはならないと考えますが、代償措置をとるとはどういうものか、具体的に都民に提示し、その是非を問うべきです。
 以上、いくつかの点を質しましたが、いずれも住民、及び自治体の理解も合意も取れていません。
 7 こうした状況の下で、次回都計審に「外かく環状道路」案件を付議するなどという拙速は断じて許されないと思いますが、見解を伺います。

平成18年第四回都議会定例会
松村友昭議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 東京外かく環状道路について
 1 沿線区市長共同声明は、現段階での十分な検討と地元住民の理解が不可欠、としている。地元自治体と十分協議し、沿線地域住民に十分な説明と最大限の情報提供、理解を求めるべきだが、見解を伺う。

回答
 平成18年10月25日に出された沿線区市長共同声明では「首都圏における環状道路について、幹線道路の渋滞緩和等の観点から、その必要性を認識するものである。また、現在外環計画の中で検討されている地下方式を基本とする計画案についても、一定の評価を行うものである。」とされています。
その上で「外環計画については、引き続き沿線地域住民に十分な説明を行うとともに、最大限の情報提供を行い、理解を求めること。」としています。
都はこれまで、地元と380回以上の話し合いを重ねるとともに、沿線区長・市長との意見交換も行ってきました。
今後とも、共同声明を踏まえ、国や沿線区市とともに情報提供、説明に努め、住民の理解と協力を得て、外環道の早期整備を目指していきます。

質問事項
一の2 アセスと都市計画変更案に対する都民意見では、いくつもの計画の基本にかかわる問題が質されている。手続きを進める前に、都民の意見に対する見解を明らかにすべきだが、見解を求める。

回答
 外環道の環境影響評価準備書に対する意見書の概要及び都市計画決定権者の見解については、平成18年8月9日に東京都知事(環境局)及び沿線7区市長へ送付するとともに、記者発表やホームページなどにより公表しています。
また、都市計画変更案に対する意見書の要旨及び見解については、都市計画法の規定に基づき、東京都都市計画審議会に提出します。

質問事項
一の3 すでに国に提出されている環境影響評価書案に、準備書の記載事項にどのような検討が加えられ、修正されたか、都民に明らかにすべきだが、見解を求める。

回答
 環境影響評価書は、準備書からの修正内容も含め作成した後、法の規定に基づき、東京都都市計画審議会に都市計画変更案と合わせて付議し、答申を得た後に1か月間縦覧します。

質問事項
一の4 国の環境影響評価書が示されたら、ただちに都民に公開し、都民の意見を求めるべきだが、見解を求める。

回答
 外環道の環境影響評価書は、今後、法の規定に基づき、東京都都市計画審議会に都市計画変更案と合わせて付議し、答申を得た後に1か月間縦覧します。

質問事項
一の5 都は、外環地上部道路の外環その2を今後検討するとした。外環その2の都市計画をただちに廃止し、その上で外環本体の必要性の可否について都民とともに検討すべきだが、見解を求める。

回答
 外環ノ2については、緑豊かな道路とするなど三つの検討の方向性を示したパンフレットなどを作成し、地元の意見を聴いている段階です。今後、国や沿線自治体などと早期に結論が得られるよう検討を進めていきます。
また、外環本線については、これまでの地元との話し合いや沿線区長・市長との意見交換などの取組を踏まえ、外環道整備の必要性や地下化について、概ねの理解が得られたと判断し、平成18年6月から都市計画変更及び環境影響評価の手続を進めています。

質問事項
一の6 八の釜憩いの森が消滅することがあってはならないと考えるが、代償措置をとるとはどういうものか、具体的に都民に提示し、その是非を問うべきである。見解を求める。

回答
 八の釜憩いの森については、外環道の設計を基に、練馬区の教育委員会、公園管理者などの意見を聴きながら、その代償措置を検討していくことになります。
なお、外環道の設計については、現在、手続中の都市計画変更が決定された後、事業予定者である国土交通省が具体的に行うことになります。

質問事項
一の7 いくつかの点を質したが、いずれも住民、及び自治体の理解も合意も取れていない。こうした状況の下、次回都計審に外かく環状道路案件を付議するなどという拙速は断じて許されないと思うが、見解を伺う。

回答
 外環道は首都圏の交通混雑の緩和や、環境改善のみならず、都市再生にとっても不可欠な道路です。
これまで外環沿線協議会及び同会議や意見を聴く会など幅広く地元との話し合いを行うとともに、沿線区長・市長からも意見を聴いてきました。
こうした取組を重ねた結果、外環道整備の必要性や地下化について、概ねの理解が得られたと判断し、平成18年6月から都市計画変更及び環境影響評価の手続を進めてきました。
今後、都市計画審議会へ付議するとともに、地元の理解と協力を得ながら、外環道の早期事業化に向け取り組んでいきます。

平成18年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 曽根はじめ

質問事項
一 ワーキングプア対策について

一 ワーキングプア対策について
いま、働いても働いても生活保護なみのくらしから抜け出せない「ワーキングプア」とよばれる階層が日本中に広がり、若い世代から中高年にまで急速に広がっていることから、深刻な社会問題として解決が求められています。
しかも東京のような大都市ほどワーキングプア階層が集中しているとみられることから、都としての対策も急がれています。
今日、年収が生活保護基準なみの3人世帯200万円を下回るというワーキングプアは、約550万人いるといわれますが、東京でも215万人を超えて常用労働者の3割以上を占めている派遣・パート労働者の多くがワーキングプアに当たると考えられます。
パート労働者の7割近くが年収130万円未満であり、派遣労働者の場合も、大半が3ヶ月以下の短期契約であるなどきわめて不安定で劣悪な雇用状態です。
とりわけ非正規雇用が半分を占めている若い世代のなかでは、ワーキングプアが単身者はもちろん、家族世帯にも急速に拡大しています。
夫婦ともフリーターで「月収二十万円に届かない」例や、昼と夜のパート労働で「ぼろぼろになるほど働いても子ども二人を育てるのがやっと」という母子家庭の母親など、深刻な実態は枚挙にいとまがありません。
一方、正規労働者のなかでも、高い学歴やスキルがありながら正当に評価されずワーキングプアに陥っているケースもあります。
今年2月NHK「ホットモーニング」では、都立大を出てドイツに1年留学し通訳・翻訳能力も高い27歳の女性が、海外旅行の添乗員で月16万円から17万円の給料、6畳の部屋にテレビも暖房器具もなく布団に重ね着で寒さをしのぎ、流しの給湯器で髪を洗い、月の半分近くを24時間拘束の添乗員として働く姿を密着取材で追って大きな反響がありました。
そのSさんが、首都圏青年ユニオンの仲間とともに訴えているのが、正規労働者の中でも長時間過密労働と低賃金構造で、食事と睡眠以外ゆとりも楽しみもなく働き続け、将来に希望も持てず、弱い者から心身を病んでいく若年労働者が広範に存在している東京の実態です。
首都圏青年ユニオンの調査では、職場で上司から暴力やいじめを受けたり残業代を全く払われなかったりしても、自らの労働基本権の知識もなく、誰に相談してよいかも分からず悶々としている青年が正規・非正規にかかわらず非常に多いことがレポートされています。
都はようやく4年前から青年の雇用対策を取り組み始め、就職説明会やジョブカフェなどの取組みが始まりましたが、他県では財政の厳しい下でもジョブカフェなどを複数箇所配置したり、地元中小企業の若年者雇用に力を入れているのに比べ、東京都は、その財政力や若年人口規模から見ても、取組みはきわめて不十分といわざるをえません。
私は、若者を中心に、ワーキングプアの増大を防止するとともに、働いてもくらしが良くならない現状を、労働者が自ら打開していけるよう、自治体として最大限の支援を求める立場から、以下何点か提案し見解を求めるものです。
 1 都として東京のワーキングプアの実態を正確に把握するための調査を行い、都民に公表すべきですが、どうか。
 2 若年者の正規労働者としての採用機会を増やすため、一括採用後の新規採用の枠を設け、拡大していくことや、中途採用者定着のための研修の充実など、若者の雇用拡大を企業に働きかけ、実績を上げた企業への支援または優遇策をとるよう提案します。
 3 パート労働者への社会保険適用と処遇改善で正規・非正規の均等待遇をめざすこと。あわせて中小企業などの非正規から正規への採用を奨励・支援すべきです。
 4 都の契約相手企業や調達先の企業において、若者雇用や育児休業制度等子育て支援、また正規採用の拡大などの取組みに、都の契約関係において何らかの優遇策を設けること、逆に、残業代未払いや偽装請負などの違法行為を行った企業については契約に制限を設けるなど、雇用の安定化に有効な措置を講じるべきですが、どうか。
 職につきたくても就けないでいる若者などへの支援も重要な課題です。
 5 一定期間、職につけなかった若者に対し、都として緊急雇用事業を創設し、雇用の促進をはかること。また、教員、消防隊員や看護師をはじめ、都の職員の採用枠を拡大するよう求めます。
 6 若者の商店街などの空き店舗を活用した開業を支援するため、家賃補助や経営相談、融資など資金力に乏しい若者を支援するしくみを検討すべきです。
 7 中高年にも広がっているパート・フリーター労働者が、気軽に相談でき、これまで培ったキャリアを生かす場合や適切にスキルを身につけ就職を探す場合など、それぞれの適性に合った安心して働ける職場を見出せるよう、相談窓口、就職セミナー、カウンセリング、適性の診断、専門技術訓練、就職面接会、就職先の斡旋、訓練期間の生活支援など一貫したシステムを都として確立し、実施するよう提案します。
 8 東京しごとセンター・ジョブカフェは、新たに多摩地域に展開するとともに、区市町村との連携で、区市町村の窓口にもサテライトの端末を置き、ネットワークで情報を共有化させることによって、身近な窓口で都内全域の求職情報を得られるよう思い切った機能の充実を求めるものです。
 9 ジョブカフェなどの相談窓口には、「ニート」や「社会的引きこもり」といわれる若者でも仕事につき、社会に出られるための専門相談員も配置して、きめ細かい対応ができるようにする必要があると考えます。
 10 大学等研究機関と協力して、若者が社会人としての権利や責任の自覚、労働の価値などを学ぶための教育プログラムの研究・開発を進め、都立高校や大学などに普及して、学校教育のうちから学べる機会を提供すべきと思いますが、いかがですか。
 ワーキングプアのくらしの安定化にも、自治体として取り組むべきです。
 11 都内単身者の家賃も含めた生活保護費が13万円程度なのに比べて、実態に合わない時給700円台の最低賃金を引き上げるよう国にはたらきかけるとともに、都として独自基準を設定して民間企業に協力を呼びかけることを求めます。
 12 東京の重い住宅費負担の軽減を進める必要があります。都営住宅の募集対象と応募粋を若年単身者にも広げ、子育て世帯などに思い切って拡大すべきです。またそのためにも都営住宅の新規建設を再開すべきですが、どうか。
 13 民間への家賃補助も重要です。大阪市は年間延べ3万7千世帯の新婚世帯に月2万円から3万円の家賃補助を行っており、若い世帯の定住に大きな効果をあげています。都としても、全国一高い住宅費の軽減のために、せめて大阪市並みの家賃補助制度を設けるよう提案します。また住宅手当を支給する中小企業への補助なども実施すべきです。
以上、それぞれの提案について、答弁を求めるものです。

平成18年第四回都議会定例会
曽根はじめ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 ワーキングプア対策について
 1 都として東京のワーキングプアの実態を正確に把握するための調査を行い、都民に公表すべきだが、どうか。

回答
 都では、就業構造基本調査に加え、毎月勤労統計調査や労働力調査等を実施し、都内で働く人々の就業実態の把握を行い、その結果を公表しています。
今後とも、都内で働く人々の適切な実態把握に努めていきます。

質問事項
一の2 一括採用後の新規採用枠の拡大、中途採用者定着のための研修の充実など、若年者の雇用拡大を企業に働きかけ、実績を上げた企業への支援または優遇策をとるよう提案する。答弁を求める。

回答
 採用枠等は、個々の企業の経営判断によるものです。
都は、若年者雇用に関する理解を得るため、中小企業団体等と連携して、「企業向けセミナー」を開催しています。

質問事項
一の3 パート労働者への社会保険適用と処遇改善で正規・非正規の均等処遇をめざすこと。あわせて中小企業などの非正規から正規への採用を奨励・支援すべきである。答弁を求める。

回答
 国では、労働関係法令や指針等に基づき、就業実態や処遇の均衡を考慮して、雇用管理の改善に取り組むことを事業主に求めています。
都においては、大企業も含め、都内企業への法令等の普及啓発を図っているほか、非正規労働者の雇用環境の改善に取り組む中小企業に対して、平成18年度から、制度融資や専門家派遣などで支援しています。

質問事項
一の4 企業の若年者雇用や子育て支援などの取組に、都の契約関係で優遇策を設け、残業代未払いなど違法行為を行った企業は契約を制限するなど、雇用の安定化に有効な措置を講じるべきだが、どうか。

回答
 都はこれまでも、障害者多数雇用企業に対して優先指名などの措置を行っています。
若年者雇用や子育て支援などについては、その取組に対する基準が確立されていないことや公正性、競争性の確保の観点から、慎重な対応が必要であると考えています。

質問事項
一の5 一定期間職につけなかった若者に対し、都として緊急雇用事業を創設し、雇用の促進をはかること。また、教員、消防隊員や看護師をはじめ、都の職員採用枠を拡大するよう求める。答弁を求める。

回答
 都は、若者の就業を推進するため、東京しごとセンターに「ヤングコーナー」を設け、各種セミナーやカウンセリングをはじめ、合同面接会の開催等の様々な就業支援事業を実施しています。なお、一定期間職につけない若者に対する都独自の緊急雇用事業を創設する考えはありません。
また、都の職員の採用は、事業執行に必要な人員の確保、職員の退職動向などを総合的に勘案して行っています。
現在、都では、「行財政改革実行プログラム」に基づき、内部努力として平成19年度から平成21年度までの3年間で4000人程度の職員定数の削減に取り組むこととしています。
今後とも都の職員の採用については、内部努力を継続しつつ、事業動向などにも留意しながら、適切に対応していきます。

質問事項
一の6 若者の商店街などの空き店舗を活用した開業を支援するため、家賃補助や経営相談、融資など資金力に乏しい若者を支援するしくみを検討すべきである。答弁を求める。

回答
 都では「新・元気を出せ商店街事業」で空き店舗の改修や家賃を商店街に補助しています。また、創業に関する各種問い合わせに対応する「創業相談」、創業に必要な知識を学ぶ「TOKYO起業塾」、制度融資における「創業融資」など、様々な支援事業を状況に応じてきめ細やかに展開しています。

質問事項
一の7 パート・フリーター労働者が、それぞれの適性にあった職場を見出せるよう、相談窓口、就職セミナー、専門技術訓練、就職先斡旋など一貫したシステムを都として確立し、実施すべきだが、答弁を求める。

回答
 都は、東京しごとセンターにおいて、パート・アルバイト等の離転職者を含むすべての年齢層の方を対象に、カウンセリングからセミナーの受講、ハローワークや民間事業者との連携による職業紹介まで一貫して、仕事に関する各種サービスを提供しています。

質問事項
一の8 東京しごとセンター・ジョブカフェは、新たに多摩地域に展開するとともにネットワークでの情報共有化により、区市町村の窓口で都内全域の求職情報を得られるよう、機能充実を求める。答弁を求める。

回答
 都は、平成19年度から、多摩地域にしごとセンターの拠点を設け、全年齢層を対象としたカウンセリングや職業紹介などのサービスを行い、就業の促進に向けて取り組んでいきます。
なお、ハローワーク等の有する求人情報については、すでにインターネットで検索・閲覧できるサービスが実施されています。

質問事項
一の9 ジョブカフェなどの相談窓口には、ニートや社会的引きこもりといわれる若者でも仕事につけるよう、専門相談員も配置し、きめ細かい対応ができるようにすべきだが、答弁を求める。

回答
 都は、平成18年7月に東京しごとセンターに「若者しごとホットライン」を開設し、若者の就業に関する各種相談に電話で応じています。さらに、東京しごとセンターに配置している就職支援アドバイザーが、担当制により、きめ細かなアドバイスや就職活動の支援を行っています。

質問事項
一の10 大学等研究機関と協力し、若者が社会人としての自覚、労働の価値などを学ぶための教育プログラムの研究・開発を進め、都立高校や大学などに普及し、学校教育で学べる機会を提供すべきだが、いかがか。

回答
 現在、首都大学東京において、大都市で活躍する人材の育成を目指し、学生を対象に自己の適性・志向を的確に把握し、職業観の醸成を図るとともに、自らの将来像を描き行動する力を育成するための教育プログラムの開発を進めています。

質問事項
一の11 都内単身者の生活保護費に比べ、実態に合わない時給700円台の最低賃金を引き上げるよう国に働きかけるとともに、都として独自基準を設定して民間企業に協力を呼びかけることを求める。答弁を求める。

回答
 都内の最低賃金は、法に基づき、労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の事業の賃金支払能力を考慮し、東京地方最低賃金審議会の審議を経て東京労働局長が決定しており、都として独自基準を設定するなどの考えはありません。

質問事項
一の12 都営住宅の募集対象と応募枠を若年単身者にも広げ、子育て世帯などに思い切って拡大すべきである。またそのためにも都営住宅の新規建設を再開すべきだが、どうか。

回答
 既に都内の住宅の数が世帯数を1割以上上回っており、さらに将来の人口減少社会の到来が見込まれていることなどを踏まえ、都営住宅については、新規の建設を行わずに、ストックを活用して、公平かつ的確に供給することとしています。
子育て世帯に対しては、期限付き入居の導入、収入基準の緩和などにより、入居促進に配慮しているところです。
また、若年単身者については、公営住宅法上、施策対象外となっており、都としても、高齢単身者などに比べ、市場での住宅確保が容易であることから、都営住宅の施策対象とすることは考えていません。

質問事項
一の13 都として、全国一高い住宅費の軽減のため、大阪市並の家賃補助制度を設けるよう提案する。また住宅手当を支給する中小企業への補助なども実施すべきである。答弁を求める。

回答
 家賃助成については、生活保護制度との関係や財政負担のあり方など、多くの課題があることから、都として創設することは考えていません。
また、住宅手当制度は、企業自らが決定するものであり、都が補助すべきものとは考えていません。

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