○議長(川島忠一君) 五十六番増子博樹君。
〔五十六番増子博樹君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○五十六番(増子博樹君) 昨日、自民党の要請にこたえて、石原知事が三選出馬を表明されました。先ほど何やら鈴木議員から発言がありましたが、民主党は、立派な候補者を擁立し、小沢一郎代表を先頭に一致団結して正々堂々と東京都知事選挙を戦っていきますことを、改めて申し上げておきます。
それでは、質問に入ります。
初めに、図書館について伺います。
ちょっと大げさにいえば、図書館は人類の英知が結集されているところであります。公共サービスの中でも派手に目立つようなものではありませんが、私たちの先人が残してくれたさまざまな知恵や知識が集積され、それらに対し自由にアクセスすることができる図書館は、社会の宝ともいえる大変重要な施設です。
一九六〇年代以来、我が国の図書館サービスは、貸し出しを中心に行われてきました。その結果、図書館の数や規模、所蔵資料の蓄積、職員の増加、図書館利用者の増加がもたらされました。現在でも、都民の間には、図書館は本を借りるところであって、図書館職員は本を貸し出す人と考えている人が少なくないのではないかと思います。
図書館の世界で最も有名なのがニューヨーク公共図書館です。ニューヨーク公共図書館は、四つの専門図書館と八十五の分館から成る複合体で、NPOが運営しています。年間予算は三百億円を超え、三千七百人のスタッフを要する世界最大の図書館です。
ここは、ニューヨーク経済のエンジンと呼ばれ、多くの起業家が情報を収集し、ビジネスに生かしてきたといわれています。ゼロックスの創始者、チェスター・カールソンは、毎晩この図書館に通い、物理学者の論文の中から複写の原理を発見し、静止写真画像の特許を取得して、世界で初めて電子複写機を誕生させました。
また、舞台芸術図書館で学んだ多くの人たちが芸術家として活躍をしています。映画界の巨匠、エリア・カザンやオリバー・ストーンも常連です。若き日のアーサー・シュレジンガー、サマーセット・モーム、トニ・モリソンらも、ニューヨーク公共図書館の利用者でした。
市民生活の支えとしても重要な役割を果たしており、ニューヨークでは、引っ越したらまず図書館に行けといわれるほど、医療や法律、防災やテロに関する情報など、およそ市民に必要な情報はとにかく図書館に行けば入手することができると、ニューヨークの多くの市民が感じているようです。
ニューヨーク公共図書館は、日本の図書館とは規模も内容も異なり、単純な比較はできませんが、目指すべき最高峰として、常に参考にしたい図書館であることは間違いがありません。
先日、ソウルの国立中央図書館に行ってまいりました。通常資料以外にも、国内外の修士、博士論文や学位論文の原文が収蔵されており、その充実ぶりには目をみはるものがありました。
韓国は、電子媒体と紙媒体を有機的に結びつけた図書館のハイブリッド化に取り組んでおり、国立中央図書館を中心に国会、科学技術院など八つの機関が参加し、統合検索ができるよう国家電子図書館が構築されています。学術書などがデータベース化され、公共図書館の端末から閲覧、印刷が可能となっています。
中央図書館と出版団体との交渉により、出版後五年が経過したものについては無料で電子化することができますし、五年以内の出版物でも、著作権管理団体を通じて有料で入手することができます。また、教育学術情報院では、学位論文のウエブ上での全文公開が行われています。二〇〇八年には、三万八千平米の国家デジタル情報総合センターとなる国立デジタル図書館が完成の予定です。
一方、我が国においては、国立国会図書館が納本制度を持つ中央図書館ですが、世界の中央図書館に比較して、デジタル化のおくれや、学士論文、都市、地方自治に関する資料の収集不足、不徹底な納本制度など、多くの課題を抱えており、残念ながら世界の最先端とはいえないようです。
都立図書館は、百年の歴史を持つ我が国屈指の図書館です。国立国会図書館は立法府図書館ですから、都立図書館は行政府図書館のトップリーダーであるともいえます。
都立図書館は、二百三十万の所蔵資料を有しているだけでなく、国会図書館に比較しても、サービスや利用について便利であることなどから、高い評価を受けているものと認識しています。
情報化への対応や都民活動の支援、産業情報、都市に関する情報や法律、医療情報の提供など、知のインフラとして、図書館は多くの役割を期待されていると思いますが、都教育委員会は、望まれる図書館像と都立図書館に期待される役割について、どのように考えているのか伺います。
資料、蔵書の収集は、図書館の最大の使命だと思います。平成十六年度に行われた調査で、中央図書館利用者が今後期待するサービスの圧倒的第一位が蔵書の充実です。
都立図書館の資料費は、平成九年度の約四億六千万円をピークに、平成十六年度には一億七千万円まで六〇%以上もの激減をしています。この間、区市町村もまた厳しい財政状況でしたが、平成九年度の五億三千万円に対して、平成十六年度の四億一千万円と、約二〇%程度の減にとどまっています。
図書の発行部数は年々増加しているにもかかわらず、厳しい財政状況によって資料費が削減され続け、収集方針、選定基準に見合うにもかかわらず、新刊書の六割程度しか収集できていないのが都立図書館の現実なのではないかと、図書館を愛する多くの人が心配をしています。
都立図書館を日本の中核図書館として、世界に名立たるサービスが供与できるように、税収が回復しつつある今こそ、積極的に資料、蔵書の充実に努めるべきだと思いますが、ご所見を伺います。
学校図書館は、昭和二十八年に制定された学校図書館法により、全国の小中高校に設置が推進されてきましたが、内容的には、予算面、人材面を含めて極めて貧弱としかいえない内容だと思います。
学校図書館法の第五条には司書教諭を置くべき規定がありますが、現実に難しい面もあって、附則として置かなくてよいという一項がついており、配置がおくれました。
学校図書館担当者は、校務分掌の係の一つとして位置づけられていますが、図書館についての専門知識を持つ人が担当になるとは限らず、しかも、学級担任や教科担任をしながらの担当となりますので、学校図書館経営は、片手間にならざるを得ないのが現状ではないでしょうか。さらには、校務分掌自体が毎年編成されることから、担当がしょっちゅうかわるということになります。
このような状況ですから、学校図書館を整備するとともに、学校図書館への支援が重要になってくると思われます。
国の平成十九年度概算要求の中に、学校図書館支援センター推進事業があります。これは、学校図書館機能の強化充実を図るために、教育センターなどに支援センターを置き、学校図書館に対する支援のあり方について調査研究を行う目的で行われる事業ですが、将来的には、公共図書館と学校図書館の緊密な連携も課題になってくるのではないかと思っています。
都立図書館と都立学校、あるいは区市町村立図書館と学校図書館の連携に対する支援など、都教育委員会として、学校図書館に対し、どのような支援を行っていくことができるのか、ご所見を伺います。
テレビやビデオ、インターネットなどの普及によって、子どもの読書離れが心配されています。読書は、心豊かな人生を送る上で大切な生涯学習です。そのためにも、子どものころから言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かにし、人生を深く生きる力をつけることができるように読書の習慣をつけることが重要です。
都は、子ども読書活動推進計画を策定し、平成十五年度以来、子どもの読書習慣づけに取り組んできました。この間、確かな成果を上げつつあると評価をしていますが、平成十九年度でこの計画が完了します。今後、この事業の評価を行うとともに、新たな読書推進計画を策定する必要があると思っています。
読書とともに、総合的な学習などで取り上げられた調べ学習についても、さらなる推進が必要だと思います。
図書館には生きる上で必要な情報がたくさんあります。先ほど紹介したニューヨーク公共図書館ではよくあることですが、日本でも、弁護士を雇う資金のない人が、図書館を利用して法律を調べ、消費者金融や信販会社を相手取って過払い金返還請求を求めた本人訴訟で勝訴した例や、暴力団抗争に巻き込まれて死亡した娘さんのかたきを討つために、図書館を利用して法律を調べ上げ、図書館の仲間たちとともに、十一年間もの間、法廷で闘い続けた事例などが報道されています。図書館が知のセーフティーネットでもあることの証明であります。
アメリカでは、小中学校段階で、図書館を利用しないと宿題ができないような仕組みもあると聞きます。日本においても、図書館を使った調べ学習を子どもたちに身につけさせる必要があると考えます。
子どもの読書活動推進計画への対策と、図書館を使った調べ学習を身につけるための都教育委員会の具体的な取り組みを伺います。
図書館が無料貸し本屋から、より住民の役に立つレベルの高い図書館に生まれ変わるため、重要な柱の一つがレファレンスです。レファレンスは、利用者が求めている資料を的確に探し出し、あるいは短時間で調査の回答を得るためのサービスです。これからの図書館は、住民の読書を支援するのみならず、地域の課題解決に向けた取り組みに必要な資料や情報を提供する課題解決支援機能の充実が求められます。そのためにも、住民の要望に的確にこたえられる有能な司書職員の育成は大きな課題です。
教育委員会が先ほど報告した都立図書館改革の具体的方策にも、これまでの不十分な司書職員研修を反省し、司書の能力向上に取り組んでいくことの必要性がうたわれていますが、これからの図書館で求められる司書の資質は大変高いものがあると思います。
アメリカでは、例えば法律分野においては、修士以上の資格を持つ図書館職員の養成を行うなど、司書により高い専門性を求めています。我が国において、現在ある司書の資格に、上級司書のようなレベルの高い司書制度を設ける必要があると思いますが、そのような制度になっていない現在は、専門的な知識を持つ人などの協力によりスキルアップを図ることが求められます。
レファレンスサービスが重要性を増していく中で、司書の確保とスキルアップが大変重要な課題であると思います。都教育委員会は、司書の育成と一層のレベルアップにどのように取り組むのかを伺います。
次に、動物行政について伺います。
二〇〇三年、ついに飼い猫、飼い犬の数が千九百二十二万頭となり、十五歳以下の子どもの数を上回ったというニュースは大きな驚きでした。ペット動物は、私たちの生活の中に大きな位置を占めつつあります。
しかし、捨てられたり処分されたりする動物が後を絶たないのもまた事実です。このような動物を減らすため、平成十五年度に策定された東京都動物愛護推進総合計画では、十年後の数値目標を、致死処分数五〇%減、致死処分の裏返しである返還、譲渡の割合を、犬については十四年度の七三・二%を八〇%に、猫については一・六%を三%に増加させるとしています。これに対して十七年度の実績値は、致死処分数は四一・七%の減、犬の返還、譲渡率が七八%、同じく猫が四・二%と、当局の努力を評価できる状況ではありますが、欧米の動物愛護先進国と比較すると、まだまだといわざるを得ません。
行政に引き取られ、処分される動物が多いということは、これは第一義的には飼い主の責任であります。しかしながら、実際には、飼い主が病気になったり転居したりと、手放さざるを得ないというような理由で都に引き取りを依頼する飼い主が多いという話も聞きます。
こうした状況を踏まえ、一層の飼い主責任を促すため、都は今後どのような取り組みを行っていくのか伺います。
最近、広島市のドッグパークが倒産し、放置された約五百頭もの犬に対し、多数のボランティアが救いの手を差し伸べたというマスコミ報道がありました。手厚い保護を受け、新たな飼い主に引き取られたということで、この報道に接した多くの人が、ボランティアの活発な活動にほっとすると同時に、心強いものを感じたのではないでしょうか。
命ある動物を少しでも多く救うため、返還、譲渡率のさらなるアップと目標達成に向けた一段の努力が必要なのではないでしょうか。そのためには、行政では手が回り切らない部分に十分対応できるように、民間のボランティアの力をかりるなど、譲渡事業を充実させ、譲渡率の増加を図っていくことが必要だと思いますが、その見解を伺います。
以上で私の質問を終わります。
ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔教育長中村正彦君登壇〕
○教育長(中村正彦君) 増子博樹議員の一般質問にお答え申し上げます。
まず、望まれる図書館像と都立図書館の期待される役割についてであります。
お話のとおり、図書館は、ニューヨークなど世界の大都市においても、知識や情報のよりどころとして市民生活に重要な役割を果たしております。都立図書館につきましても、課題解決のために効果的な情報サービスを提供していく図書館であることが求められているというように考えております。
このため、都市に関する情報やビジネス、法律、健康、医療に関する情報など、都民ニーズの高い分野に重点を置いたサービスを高度なレファレンスサービスとともに提供し、都民や都政に役立つ図書館として存在意義を発揮していく必要があるというふうに考えております。
次に、都立図書館の資料、蔵書の充実についてであります。
これまでも都立図書館では、都の広域的、総合的情報拠点として、幅広い専門的資料の収集によりまして蔵書の充実に努めてまいりました。
今後は、都民ニーズの特に高い分野に関する資料の重点的な収集などによりまして、さらに蔵書の充実を図るとともに、オンラインデータベースなど、速報性や検索機能にすぐれた電子資料を積極的に導入し、来館者がみずから利用できる環境を整備することによりまして、都民の課題解決に役立つサービスの提供を充実させてまいります。
次に、学校図書館に対する支援であります。
都立図書館はこれまでも、司書教諭、学校司書の研修への講師派遣や、都立学校図書館に対して図書館再活用資料の提供などを行ってまいりましたが、今後は、蔵書目録のデータベース化のガイドラインを作成し、利便性の高い学校図書館運営の促進を図るなど、さらに支援を充実させてまいります。
また、区市町村立図書館におきましても、学校図書館との蔵書ネットワーク構築によります図書の効率的利用の推進や、学校で活動する読み聞かせボランティアの養成など、学校と連携したさまざまな先進的取り組みを行っております。
今後は、このような取り組みを紹介するなど、普及推進を図ってまいります。
次に、子どもの読書活動推進計画への対応と調べ学習についてであります。
お話のとおり、東京都子ども読書活動推進計画が平成十九年度で終了しますことから、各事業の成果を踏まえながら、新たな推進方策につきまして検討を進めてまいります。
また、お話しの図書館を活用して行います調べ学習は、児童生徒がみずから学び、考え、よりよく問題を解決するなど、生きる力を身につけさせるために極めて有効であると考えております。
今後、図書館の活用方法などを示しましたガイドブックを作成し、学校や区市町村立図書館に配布するなど、学び方や物の考え方を身につける調べ学習の活動を推進してまいります。
最後に、司書の育成と一層のレベルアップについてであります。
都立図書館におきます司書業務は、都民の課題解決支援のために不可欠な高度なレファレンスサービスを初め、図書館サービスの企画立案、資料収集計画の策定など、高度な専門性を要する基幹的業務に特化し、さらに専門性を高めていくべきであると考えております。
このため、職責や役割に応じた能力開発の目標を明らかにしまして、新たに研修体系を整備するなど、司書の育成と資質向上に努めてまいります。
〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕
○福祉保健局長(山内隆夫君) 二点の質問にお答えいたします。
まず、動物の飼い主責任についてでございます。
東京都動物の愛護及び管理に関する条例では、飼い主は、動物の生涯にわたって適正に飼育するよう努めなければならないとされております。そのため、都は、区市町村や関係団体と連携して、パンフレットの配布や講習会の開催など普及啓発に努めるとともに、動物愛護相談センターにおける飼い主からの引き取りに当たっても、安易な飼育放棄を行わないように指導しております。
これらの対策とともに、動物の販売時に飼育に伴う義務や心構えを確実に周知するよう事業者への指導を強化するなど、今後とも飼い主責任の徹底を図ってまいります。
次に、動物の譲渡事業の充実についてでございます。
動物愛護相談センターで引き取った犬や猫の譲渡を推進するためには、動物愛護活動を行っている民間のボランティア団体と協働していくことが有効であると考えております。このため、動物愛護相談センターでは、個人への直接譲渡のほか、飼育経験が豊富で、会員のネットワークを活用した譲渡活動にも実績のある団体に動物を譲り渡し、協力して幅広く新たな飼い主探しを行っております。
このような取り組みによりまして、お話しのとおり、現行の十カ年計画で定めた犬の返還、譲渡の目標達成率が三年目で七〇%を超えるなど、高い成果を上げております。
今後とも、より多くの民間ボランティア団体と連携を深め、犬や猫の譲渡率の一層の向上に努めてまいります。
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