平成十八年東京都議会会議録第十七号

   午後五時三十九分開議

○議長(川島忠一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 二十番神林茂君。
   〔二十番神林茂君登壇〕

○二十番(神林茂君) 東京都は、我が党の要請にこたえ、石原知事のもと、国や他の自治体に先駆け、職員定数の削減や監理団体改革などの行財政改革に積極的に取り組んでまいりました。この結果として、財政再建団体転落かという極めて厳しい危機を乗り越えることができ、このことについては高く評価するものであります。
 今年になって財政再建に一つの区切りがついたとの見解のもとで、「今後の財政運営の指針」が策定されました。そこで、肝心なことは、行財政改革を推進する真の目的が、財政再建団体転落を乗り越えることだけではなく、時代の変化に即応させて、常に少しでも多くの成果を都民に還元していくことであるという点であります。
 私は、むしろ現在のような、景気の変動に一喜一憂することのない、財政に余裕のある今こそ、気を緩めることなく、最少の経費で最大の効果という基本に徹して、根本的な部分から洗い出し、さらなる行財政改革の推進に努めていくべきと考えております。
 そこで、まず初めに、知事の行財政改革に対する基本的な考え方を伺います。
 東京都は、十六万人もの職員を抱え、また四十二にも上る公益法人や株式会社などの監理団体と報告団体などを傘下に抱え、他の自治体と比較にならないほど膨大な組織となっております。このことが都民にとってわかりにくく、見えにくい組織になっており、ここに改革を行うべき原点があります。
 この膨大な組織を都民に見えるよう、効果的、効率的に運営していくためには、まず東京都は、将来を見据えて、既成の枠組みにとらわれず、都が本来なすべき事務事業を厳選し、その他の事務事業は極力、今後とも、民間でできることは民間に委託し、住民に身近な事務事業は区や市に移譲するなどして、組織や事務事業のスリム化を図ることであります。
 次に、専門的なポストに民間人を登用することや、外部の第三者による監査体制を強化することで、組織の風通しをよくすることが挙げられます。そしてさらに、都民に対して東京都の財政や事務事業の内容、行財政改革の取り組みなどをきちんと理解されるよう、わかりやすく、よく見える広報活動を行うことが必要と考えます。
 今後の行財政改革の推進に当たっては、このような根本的なところから洗い出し、都民から見えにくい膨大な組織を、将来展望を見据えて、しっかりと見直しを図っていくべきと考えます。ご所見を伺います。
 次に、内部努力の取り組みについて伺います。
 都がこれまで進めてきた行財政改革は、職員定数の削減や監理団体改革など、経費削減の観点からの見直しで、こうした内部努力の取り組みは、今後一歩たりとも後退してはなりません。
 例えば、東京都の職員定数は職員定数条例で定められ、事務量に基づいて人員が配置されています。民間では一般的に年間を通して暇な時期に合わせて職員配置を行い、忙しいときにはアルバイトやパートを活用して対応しています。今後、民間の内部努力の姿勢を考慮すれば、まだまだ職員定数の見直しが検討できるはずであります。
 また、都庁舎や事業所における光熱水費の削減や資料の作成の際の両面コピーの徹底など、日々の地道な経費削減などを着実に実行することが必要です。職員一人一人が一枚のコピーを節約すれば、都庁内で単純に十六万枚もの節約につながります。
 今後においても、職員定数の見直しや日々の経費削減など、内部努力の取り組みをさらに踏み込んでいくべきと考えますが、所見を伺います。
 都のこれまでの行政改革は、経費節減などのいわば量の行政改革ともいえる取り組みでしたが、今後は、質の面からの転換も図っていく時期に来ていると考えております。
 例えば組織運営について、都のような巨大組織は、往々にして組織としての一体感の醸成が難しく、縦割りの形態になりがちであります。
 最近の行政課題は、多様化、複雑化しており、一つのセクションだけで解決できるほど単純ではありません。これからの組織運営に当たっては、局の垣根を越えて重要課題の解決に取り組めるよう、局間連携を強化していくべきと考えます。
 また、都庁の仕事自体の進め方、いわゆる業務プロセスを見直していくことも重要です。都民サービスの質の向上を図り、業務の効率的執行を進めていくためには、現在実施している業務について、本当にこの方法が最も適切なのかということを常に検証して、見直していくことが必要であります。
 これらはあくまでも一例ですが、こうした行財政運営の質の転換を図る取り組みを一つ一つ確実に行っていくことが必要な時期に来ているのではないでしょうか。
 都の行財政運営を質の面からも転換する、いわば質の行革ということに対し、都としても積極的に取り組んでいくべきと考えますが、所見を伺います。
 監理団体イコール都の天下り団体だというような無責任な批判があります。私は、都の職員が退職後、監理団体などに職員として再就職することは、決して悪いこととは思っていません。むしろ、これまで行政分野で経験を重ねたOBが、退職後、引き続き都民生活の向上に奉仕の精神でご尽力いただくことは、蓄積された能力を発揮できるという観点から望ましいことだと考えます。
 問題なのは、監理団体の運営については、都民から見えにくいところがあることから、天下りといった不信感がなかなか払拭できないことです。
 このため、先ほど申し上げましたように、外部の人材も積極的に登用したり、外部監査体制を強化するとともに、人事給与制度の不断の見直しを行うなどの改革を行って、監理団体に対する都民の理解を深めていくことが重要だと考えます。
 そこで、監理団体の運営に関して、一層の透明性と信頼性を高めるよう、都としても積極的に働きかけるべきと考えますが、所見を伺います。
 いじめを原因とする自殺予告文書が文部科学大臣や東京都知事に送られたことが報道されるなど、いじめの問題が再び社会的な関心を集めております。子どもたちを取り巻く生活環境が変化する中で、遊びの中で社会性を養ったり、年齢の異なる人たちと人間関係をつくったりする機会が減っています。
 こうした中、都立高校では、平成十九年度から奉仕体験活動が必修化されます。いうまでもなく、教育活動は、子どもたちがこれからの社会で力を発揮していくことを期待して行っていくものであります。生徒たちが「奉仕」の授業を通して、奉仕の精神を学び、思いやりの心を身につけ、自分たちを取り巻くさまざまな人々とのかかわり合いの重要性を理解し、学習を終えてからも、みずからの意思で社会の一員として社会貢献に取り組んでいくことにつながれば、すばらしいことと思います。
 そこで、都立高校において平成十九年度から実施する「奉仕」の授業の取り組みをどのように地域社会に広げ、今後、子どもたちの奉仕活動をどのように継続させていくのか、都教育委員会の考えを伺います。
 社会貢献ということでは、都立高校の中では、地域の町会と協力して清掃活動を行ったり、校内で協力して光熱水費の節減に取り組んだり、さまざまな活動が行われております。生徒たちの中に、卒業後、将来も活動しようという機運を高めるためには、表彰制度を設けたり、節減した光熱水費の一部を学校に還元したりするなど、目に見える形で生徒の社会貢献活動を励まし、支援していくことが大切であります。
 そこで、学校の取り組みをより一層サポートし、生徒の社会貢献活動を積極的に励まし、支援していくことが大切であると考えますが、所見を伺います。
 最後に、特別区消防団について伺います。
 消防団員は、平素の仕事を持ちながら、自分たちのまちは自分たちで守るという崇高な精神のもと、いざ災害が発生すれば、一人でも多くの生命、身体、財産を守るため、仕事を投げ出し、昼夜を問わず出場していきます。
 また、平常時においても、地域住民から地域防災コーディネーターとしての大きな役割を期待されており、防災訓練時の初期消火や応急手当ての指導、各種防火防災の啓発などを通して、災害に強いまちづくりに積極的に取り組んでおります。
 このように、消防団の役割が拡大し、地域住民の期待が高まる状況にあるにもかかわらず、この東京における消防団員数は減少を続けております。少子高齢化社会が進み、今後ますますこのような現象が続くことが予想され、消防団員の確保対策はまさに喫緊の課題といえます。
 そこで、確保対策として、消防団員の処遇改善はもちろんのこと、女性や学生、事業所に勤務する方々など、募集対象を広げていくことが必要であります。また、消防署員や消防団員が地域の防災リーダーとして、町会や各種地域ボランティア団体などにさらに積極的な指導を行い、防災に対する人材育成や地域防災力の向上を図っていくことも大切な課題と考えます。
 そこで、まず、消防団員の減少が危惧される中、消防団員を確保するため、どのような取り組みをされていくのか伺います。
 続いて、特別区消防団の施設について伺います。
 消防庁では、消防団のポンプ搬送車や救助資機材などが収納でき、分団の会議や警戒の待機場所として活用できる分団本部施設を整備しています。この施設整備については、平成十七年度予算において我が党が強く要望したことにより、それまで遅々として進まなかった施設整備が大幅に整備できるようになりました。
 しかし、この分団本部施設の整備において最大の課題は、過密都市東京においての用地確保ではないでしょうか。そこで、今後さらに施設用地を求めていく際には、当然のことながら、都が所有している土地を借用するなど、都各局の連携を一層深めていくことはもとより、区の施設や学校などの一角を借用して用地を確保していくことが重要な課題となってまいります。
 分団本部施設整備をさらに促進するためには、消防団、市民消火隊、町会の防災組織などが合同で活用できるような地域の防災拠点づくりという視点でとらえて、消防庁と区などが連携して用地の取得、施設建設などを推進していくべきと考えますが、所見を伺います。
 以上で終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 神林茂議員の一般質問にお答えいたします。
 行財政改革についてでありますが、都はこれまで、国の改革が余り進まない中で、都民サービスの充実と東京の再生という都民からの負託にこたえるため、事業のあり方にまで踏み込みまして、徹底した行財政改革を進めてまいりました。
 そのための内部の意識改革として、従来希薄でした金利感覚とか、あるいは時間のコスト感覚の体得を徹底いたしまして、その結果、財源不足を解消するなど、都財政の再建に区切りをつけるとともに、認証保育所の設置やディーゼル車の排ガス規制などの取り組みを通じ、都民が実感できる成果を得てきたと思います。
 これからも手を緩めることなく、都民福祉の向上と東京のさらなる発展のために、現実性のある改革に取り組んでいきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、奉仕の取り組みを広げ、継続させることについてでございます。
 お話のように、「奉仕」の授業のねらいは、生徒に思いやりの心や社会の一員としての自覚を身につけさせることなどにあります。必修化に当たりまして、教育支援コーディネーターの活用を図りまして、体験先の開拓や授業のプログラムづくりなど、各学校に対して支援を行いまして、奉仕の活動を社会全体に広げていく予定でございます。
 また、在学中にその理念や意義を学ぶとともに、実体験を通しまして成就感や達成感を味わうことなどによりまして、生徒が「奉仕」の学習を終えた高校卒業後も、生涯にわたって社会に貢献することができる資質を高めるようにしてまいります。
 次に、生徒の社会貢献活動への支援についてでありますが、現在、多くの都立高校では、学校の特色を生かしました多様な社会貢献の活動に生徒が取り組んでおります。
 都教育委員会では、これまでも、人命救助などの行為や、部活動や社会貢献などにおきましてすぐれた成果を上げた児童生徒に対しまして、表彰を行ってまいりました。今後は、必修化した「奉仕」の授業の成果を生かした高校生の自主的な社会貢献の活動につきましても、新たに広く都民に対して発表し、表彰してまいります。
 また、奉仕の取り組みを含め、さまざまな形で特色ある教育活動を積極的に行っている学校に対しましては、例えば重点支援校の指定などを通しまして、支援の充実を図ってまいります。
   〔総務局長大原正行君登壇〕

○総務局長(大原正行君) 行財政改革に係ります四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、今後の行財政改革の推進についてでございますが、社会構造が大きく変化している中、活力ある東京を創造していくためには、不断の行財政改革を推進し、都政の対応力を高めていくことが必要でございます。
 都は、これまでも、組織の簡素化や官民の役割分担の見直し、住民に身近な事務の区市町村への移譲などについて積極的に取り組んでまいりました。その結果、警察、消防、教職員を含めた都の職員定数は、ピーク時の二十二万人台から十六万人台にまで大幅に減少してきておりまして、特にこの間、知事部局の職員については、五万七千人から二万六千人に半減以上減少しております。
 今後も、スリムで仕事ができる効率的な都庁の実現を目指しまして、行財政改革を推進してまいります。
 次に、さらなる内部努力についてでございます。
 不断の行財政改革を行っていく上では、みずからの内部努力が必要不可欠であります。これまで都は、職員定数の削減や監理団体改革など、国や他団体に先駆けた大胆な改革を積極的に実行し、着実に成果を上げてまいりました。
 今後も、行財政改革実行プログラムに基づきまして、四千人の職員定数の削減や人事制度改革を行いますとともに、ご指摘の日常業務における経費削減などを含めて、さらなる内部努力に取り組んでまいります。
 次に、質の行革についてでございます。
 行財政改革の推進に当たりましては、職員定数の削減やコスト削減といった量的な改革とともに、行財政運営の体質改善という質的な改革が必要でございます。
 都では、こうした観点から、国に先駆けまして、複式簿記・発生主義会計の新しい公会計制度を導入しますとともに、経営の戦略性を高めていくために、民間のノウハウを積極的に活用するなど、質の面からもさまざまな改革を行ってきております。
 今後、ご指摘のあった業務プロセスの見直しなども含めまして、行財政運営の質の向上にスピード感を持って取り組んでまいります。
 最後に、監理団体の運営についてでございます。
 都は、これまで監理団体について、団体数や都の財政支出の削減、役員退職金の廃止、役員報酬の大幅な見直し、都議会への経営実績等の報告など、行財政改革の大きな柱の一つとしてさまざまな改革を積極的に進めてまいりました。
 一方、公を担う主体が多様化する中で、監理団体が引き続きその一翼を担っていくためには、事業運営のあり方等について、都民の理解を一層高めていくことが重要であると認識をしております。
 このために、経営情報の開示手法のさらなる充実、官民を問わず有能な人材の積極的な登用、外部の監査機能の拡充などにつきまして、今後とも、各団体を積極的に指導してまいります。
   〔消防総監関口和重君登壇〕

○消防総監(関口和重君) 特別区消防団に関する二点の質問にお答えいたします。
 まず、消防団員確保に向けた取り組みについてのお尋ねですが、ご指摘のとおり、消防団活動体制の充実強化を図る上で、消防団員の確保は最も重要であります。
 団員を確保するには、団員の士気を高めるとともに、消防団活動に対する都民の理解を深める必要があります。
 このため、地域の防災拠点となる分団本部施設や可搬ポンプ積載車の整備を初め、夏服や防火服などの改善を進め、イメージアップを図るとともに、震災等大規模災害時において、重機操作や大型自動車運転などの資格が活用できる特殊技能団員制度を運用するなど、団員の士気高揚を図っております。また、インターネットなどを活用して、消防団の活動を広く都民に広報しております。
 以上のような取り組みを通じて、今後とも、事業所従業員、大学生、女性など、幅広い層からの入団促進に努めてまいります。
 次に、分団本部施設の整備促進における区等との連携についてのお尋ねですが、分団本部施設の整備につきましては、現在、東京都各局が所管している土地の活用や、区が保有している土地を提供していただくなど、用地の確保を進めております。
 今後とも、各区等との連携を一層強め、分団本部施設の整備促進に努めてまいります。