午後三時二十分開議
○議長(川島忠一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
質問を続行いたします。
二十七番秋田一郎君。
〔二十七番秋田一郎君登壇〕
○二十七番(秋田一郎君) まず、オリンピック招致について伺います。
オリンピック招致に最も重要なことは、世界が共有できる普遍的な価値観を確立し、訴えていくことだと考えます。招致の大きなライバルとなるアメリカは、自由と民主主義、テロからの解放などの価値観を提示することが予想されますし、南米やアフリカは、貧困の解消を掲げるのではないでしょうか。
こうした普遍的な価値観の確立は、日本の最も苦手とするところですが、東京が世界と共有できる価値観として、環境が挙げられると考えます。例えば、東京都が率先し、八都県市が連携して取り組んだディーゼル車の排出ガス規制やCO2削減計画の義務づけ、ミネラルウオーターと同じくらい安全でおいしい水の供給、また、区部のほとんどすべての家庭をカバーしているすぐれた下水道設備など、環境に対する取り組みは、世界的にも東京が一番だと思います。
私たち日本人が当たり前に思っていることが、世界のほとんどの国では当たり前ではありません。こうしたノウハウを世界に還元することを訴えれば、東京の大きな強みになります。IOCも、環境に配慮したオリンピックの開催を求めていると聞きます。もちろん東京には、環境だけでなく、世界に誇れるものが数多くあります。
オリンピックの招致を成功させるために、こうした東京に内包する世界と共有できる価値観を積極的にアピールしていくべきと考えます。知事の考えをお伺いします。
翻って、オリンピックの意義は何か、いうまでもなく、スポーツを通じた平和の希求です。クーベルタン男爵がオリンピックマークに五大陸の平和を託したことは、周知のとおりです。
一方、日本が唯一の被爆国であり、それを基点に戦後六十年間ずっと平和を貫いてきたことは、日本が世界に示し得る重要な価値観の一つです。
オリンピックの競技の中で、唯一サッカーのみは、国内の複数の都市で実施することが可能な競技です。ならば、ぜひとも被爆都市である広島や長崎で行うべきです。世界で最も競技人口が多く、かつ熱狂的なファンが多いサッカーを広島や長崎で行い、全世界にテレビ中継することは、戦争の悲惨さと平和の尊さを再考する、まさにオリンピックの意義に合致する、全世界の歴史にとっても意義深いことだと考えますが、見解を伺います。
次に、こうしたコンセプトのアピール方法ですが、日本のプラスイメージは積極的にアピールするとしても、マイナス面はできるだけ答えない、聞かれたら答えることが常套手段と考えます。
例えば、現在の開催意義には、東京で二度目のオリンピックを開催ということが前面に打ち出されていますが、オリンピックを開催したことのない国がほとんどである現状からすれば、そのことを連呼することはいかがなものでしょうか。
また、アジアでの中国の影響力を考慮すると、中国をいたずらに刺激すべきではないと考えます。東アジアの国々の支配層は、大多数が中国系です。オリンピック招致を成功させるには、まずはアジアの支持を固めるため、近隣諸国と仲よくすべきです。そのためにも、ぜひとも知事には中国を電撃訪問していただくことを切に切にお願いします。
以上、海外向けの提言と意見を述べましたが、最後に、国内向けの要望をさせていただきます。
大阪が立候補をして負けた一因は、IOCの調査の結果、府民の支持が低かったからとも聞きます。現在の都民の関心の低さから考えると、東京もその二の舞になりかねません。
東京最大の広告塔は、石原知事ご自身であります。例えば、知事が各区市町村の町会連合会を行脚して、オリンピックに協力してくれと一言訴えれば、知事にあこがれ、知事と一緒に青春期を過ごした町場の人たちは、間違いなく意気に感じて協力してくれます。あの石原慎太郎がここまで本気なんだ、男にしてやろうと、一生懸命になってくれるはずです。これは、安倍総理も小泉さんもできない、知事以外だれにもできないことです。
頼るべきは、あら探しばかりして視聴率や部数に一喜一憂するマスコミではありません。我々の思いを意気に感じてくれる町場の人たちです。どうかお願いします。
また、緑を三倍にするような、そんな夢を与えていただければ、青少年だけではなく、これから生まれてくる人たちのためにもなるのではないのでしょうか。
オリンピック招致の成功に向けて私なりの考えを述べましたが、それもこれも、どうしてもオリンピックを東京でやりたい、その一心からであります。
最近は、青少年の本当に悲惨な事件が日々報道されております。なぜ日本は、東京はこんなふうになってしまったのでしょう。さまざまな原因があるとは思いますが、その一つは、間違いなく、衣食住足りて若者に夢がなくなってしまったからではないでしょうか。
WBCでのイチロー選手の活躍は、日本人であることの誇りを持たせてくれました。冬のオリンピックの荒川選手の活躍は、スケートリンクに再び子どもたちを戻しました。私は、スポーツの力を改めて感じております。だからこそ、オリンピックを東京で開催して、青少年に感動や夢を与えたいのです。
多くの方が、一回やったのだからいいよといいます。けれど、それは大人たちの余りに勝手な理屈です。四十歳の私も、多くの若者も、前回の東京オリンピックのときにはまだ生まれておりません。今度の二〇一六年が初めてです。我々の世代は、前回のオリンピックを見ていないのです。もしかすると、今回が最初で最後のチャンスかもしれません。
過日のある調査によれば、オリンピックに賛成する世代は、若者と高齢者が多いという結果もあります。だから、どうしても自分たちの手で、この東京で初めてのオリンピックを開催したいのです。どうか知事には、この思いを受けとめていただくことを最後にお願い申し上げます。
次に、新宿駅の地下歩行者ネットワークの整備について伺います。
まず、東西自由通路についてですが、新宿駅では、日本一の乗降客を抱えるターミナル駅にもかかわらず、約五百メートルの区間にわたり、鉄道により地域が東西に分断され、長年、歩行者の通行に不便が生じています。自由通路は、地元区民以上に、新宿を訪れる人たちにとって大変利便性の高い施設であり、新宿駅周辺の再生、活性化にも寄与するものと考えます。
また、新宿区では、この自由通路の計画の具体化に向けて検討していると聞いていますが、早期に整備効果を発揮させるためには、既存の空間を有効活用し、事業化することが重要だと考えます。
都は、積年の課題である自由通路の早期整備に向け、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
次に、サブナードの延伸について伺います。
現在、新宿三丁目周辺では、地下鉄十三号線の建設工事が進んでいます。これにあわせ、花園神社から高島屋までの明治通りに地下通路が設けられる予定です。
一方、駅周辺は歩行者があふれ、安全な通行が容易ではありません。地元からは、歩行者の利便性、快適性を向上し、回遊性を創出するため、サブナードの地下歩道を延伸し、明治通りの地下通路に接続することが望まれています。
十三号線の開業が目前に迫っている中、地下歩道延伸の実現に向け、早急に調査検討を進めるべきと考えます。所見を伺います。
次に、都の管理職、とりわけ若手の中間管理職について伺います。
先日の新聞報道で、管理職の仕事に魅力を感じない、自信がないなどを理由に、都の管理職試験の受験率が二割以下に低迷し、受験者数が過去最低を更新しているという記事を目にしました。
都においても、先般、管理職選考を改正し、職場で実績を上げている職員がチャレンジしやすい制度へと見直したと聞いています。しかし、私は、管理職になりたがらないという問題の根源的な原因は別にあると考えます。
都において昨年行った職員アンケートでは、課長以上に昇任したいという回答は二割にとどまっています。こうした職員の背景には、課長になって責任が重くなるにもかかわらず、その後数年間は、昇任する前の収入を下回る場合もあるといった実態が影響していると考えます。すなわち、管理職の選び方も大切ですが、選抜後の処遇に希望が持てない限り、管理職を目指そうとする職員はふえないのではないのでしょうか。
引き続き人件費を抑制していくことは、もちろん重要です。しかし、私は、組織を担い、責任を負いながら、深夜まで都民サービス向上の実現に努めている管理職がいることも知っています。このように努力し、職責を果たし、業績を上げた管理職に対しては、しかるべき処遇を行っていくべきです。
志を持った優秀な管理職を確保していくことは、都としての都民に対する責務であり、管理職の処遇改善は、必ずや都民の理解を得られるものと考えています。
そこで、管理職の処遇改善に向けた取り組みについて見解を伺います。
一方、個別的な事例は申し上げませんが、社会常識に欠けているのではないかと強い懸念を抱くような管理職も散見されます。潜在的には、都庁にも相当に根深い病巣があるのではないかと危惧しております。こうした状況が氷山の一角であるうちに、大きな問題が発生する前に、モラルダウンの病を断ち切らねばなりません。
管理職は、都民からも職員からも常に見られています。頑張った管理職を処遇するに当たっては、都の管理職が常に礼節をわきまえた行動をとるとともに、持てる能力をいかんなく発揮し、都民や職員から評価される組織のリーダーとなる必要があります。このことを強く要望し、最後の質問に移ります。
昨年、川崎で、マンション十五階から子どもが投げ落とされて死亡するという痛ましい事件が起こりました。この事件は、マンションの駐車場の横を走り抜ける犯人の映像を防犯カメラがとらえていることがわかり、犯人逮捕の決め手となりました。
最近、侵入窃盗など、マンションを舞台にした犯罪の事例が多いと聞きます。また、マンションの玄関や駐車場、駐輪場での不審者の目撃など、不安の声も多く耳にします。
そこで、マンションなど住宅の犯罪の状況はどうか伺います。
住宅を取り巻く犯罪の状況は、都民の不安を厳しく裏づけるものと考えます。川崎の事件や多くの侵入事例などを踏まえて、マンションへの防犯カメラの設置の呼びかけや、住宅の窓や扉などに対する防犯対策の取り組みが重要と考えます。
そこで、都は、防犯対策として住宅の防犯指針の改正に取り組んでいると聞きますが、どのようなものを考えているのか伺います。
都民の不安解消のため、住宅の防犯指針をぜひ普及、定着していただきたいと思います。
そこで、住宅の防犯指針を安全・安心まちづくりに確実につなげるために、都は、今後どのような具体策を講じていくのかを伺い、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 秋田一郎議員の一般質問にお答えいたします。
オリンピック招致に関してでありますが、招致を成功させるためには、東京の魅力や優位性を強く世界にアピールしていくことが必要でありますと同時に、国内にも、やはりそれをもっと十全に行う必要があると思っております。
大阪の場合には、非常に府民の方々の多くが冷淡だったと聞きましたが、私は、六年前のワールドカップ、日本でのサッカーの祭典の盛り上がりを見ました限り、私たちのキャンペーンによって、都民だけじゃなくて、国民全体の声として大きな盛り上がりがあり得ると期待しております。
ゆえにも、環境政策がアピールの一つの大きな柱でありまして、ディーゼル車規制を初めとする東京の先進的な環境への取り組みは、広く世界の理解と共感を得られると確信しておりますが、これはもう既に行ってきたことでありまして、新規の試みとして、例えば江戸川区がやった防犯カメラのためのワンコインの拠金、あるいは多摩の杉を整理するための、新しい植林をするためのスリーコイン運動のように、大してお金はかからぬと思いますから、苗木のために新しい拠金をしまして、東京の街路は、やはり樹木の数が少のうございますから、今ある木の間に、木種が違っても、今から、例えば家族の一つの記念として、思い出として、十年後に育つ木を期待して拠金をし、一本ずつ木を植えていただくような、そういう運動の展開も考えております。
今後はさらに東京が誇るITなどの先端技術や他人を思いやる伝統なども積極的にアピールしまして、非常に激しい国際都市間の競争を何とか勝ち抜き、東京でオリンピックを開催し、国民全体でもう一回大きな夢を見る、その夢の実現をしたいと思っております。
他の質問については、関係局長から答弁いたします。
〔東京オリンピック招致本部長熊野順祥君登壇〕
○東京オリンピック招致本部長(熊野順祥君) サッカーの競技会場についてでございますが、サッカーは、開催都市との距離を問わず、全国の会場で実施することが可能な競技でございます。
現在、IOCのファイルに向けまして、計画のブラッシュアップに取り組んでございますけれども、サッカー会場の選定に当たりましては、国際競技連盟の基準を踏まえることはもちろんのことでございますが、財団法人日本サッカー協会と協議しながら、ご指摘の世界へのアピールという点も含めまして、さまざまな観点から検討してまいります。
〔都市整備局長柿堺至君登壇〕
○都市整備局長(柿堺至君) 新宿駅周辺整備についての二点のご質問にお答え申し上げます。
まず、新宿駅の東西自由通路についてでございますが、自由通路は、駅周辺の回遊性を向上させ、にぎわいと活力あふれるまちの形成に必要な施設と認識しております。
都は、これまで地元区が設置した新宿駅周辺整備計画検討委員会に、国やJRなどとともに参画してまいりました。
さきの検討委員会では、JR新宿駅の西口改札と東口改札を結ぶ駅構内の通路を活用して、幅員二十五メートルの自由通路の都市計画決定を目指していくことが確認されました。
都としては、今後とも早期実現に向けて、国やJRとの協議、調整や、技術的支援を行うなど、区の取り組みに対し積極的に協力してまいります。
次に、サブナードの延伸についてでございますが、靖国通り地下歩行者道を延伸し、現在建設中の地下鉄十三号線の新駅と接続することは、歩行者の利便性や快適性、回遊性の向上に資するものと考えております。
その実現には、周辺のまちづくりとの整合を図った上で、技術的な課題や事業スキームの検討などが不可欠でございます。
都といたしましては、区が取り組むまちづくりへの支援を行うとともに、区と共同で検討会を設置し、課題解決に向けた調査検討を進めるなど、必要な協力を行ってまいります。
〔総務局長大原正行君登壇〕
○総務局長(大原正行君) 志を持った優秀な管理職の確保と処遇改善についてでございますが、行政ニーズの多様化などにより、管理職が従来以上に重責を担うようになっておりますことから、それに見合った制度が必要であると認識をしております。
これまでも、都は全国に先駆けて業績評価制度を導入するなど、職責、能力、業績に基づく人事制度の改革に取り組んでまいりました。
本年からは、努力し、成果を上げた管理職が適切に処遇されますよう、新たな昇給制度を導入し、能力、業績主義の徹底を図ったところでございます。
今後、処遇のあり方の検討に加えまして、人材育成の充実や適性を生かした配置管理などによりまして、都政を支える高い気概と使命感を持った優秀な管理職を確保、育成してまいります。
〔青少年・治安対策本部長舟本馨君登壇〕
○青少年・治安対策本部長(舟本馨君) 住宅における防犯対策に関する三点のご質問にお答えをいたします。
まず、マンションなど住宅の犯罪の状況についてでありますけれども、平成十七年の都内の侵入窃盗の認知件数は一万九千二百七十八件でありまして、そのうち約四五%が共同・集合住宅、約二六%が一戸建ての住宅で発生をしております。
また、十三歳未満の子どもに対する強制わいせつ事案の認知件数は百十七件でありましたが、そのうち約四五%が共同・集合住宅で発生しているという状況にございます。
次に、住宅の防犯指針の改正についてでありますが、住宅の防犯対策を強化するため、安全・安心まちづくり条例で定めますところの防犯のガイドラインであります住宅の防犯指針の改正作業を現在進めております。
その主な改正内容は、共同住宅の出入り口や駐車場などへの防犯カメラ設置の推進、より実効性のある自主防犯活動の推進、さらに住宅の窓や扉などからの侵入を防止する性能の高い建物部品の普及を図ることなどでございます。
次に、住宅の防犯指針改正に伴うその後の具体策についてでございますが、住宅の防犯性を高めるため、指針を実際に活用することが極めて重要であると考えています。
そこで、指針改正後、住宅業者などへの説明会やリーフレットの作成などの普及活動を速やかに開始してまいります。
また、地域との連携が希薄化しているマンションなどで連携を強めるため、自主防犯活動の立ち上げの誘導を図るとともに、防犯カメラや防犯性能の高い建物部品の普及を促進するなどの、地域の防犯力を高めるモデル事業も展開したいと考えております。
Copyright © 1999
Tokyo Metropolitan Assembly All Rights Reserved.