平成十八年東京都議会会議録第十六号

平成十八年十二月七日(木曜日)
 出席議員(百二十四名)
一番遠藤  守君
二番伊藤 興一君
三番きたしろ勝彦君
四番田中たけし君
五番鈴木 隆道君
六番後藤 雄一君
七番福士 敬子君
八番伊沢けい子君
九番そなえ邦彦君
十番原田 恭子君
十一番山口  拓君
十二番伊藤 ゆう君
十三番原田  大君
十四番河野百合恵君
十五番小竹ひろ子君
十六番松葉多美子君
十七番大松  成君
十八番中山 信行君
十九番高倉 良生君
二十番神林  茂君
二十一番早坂 義弘君
二十二番崎山 知尚君
二十三番宇田川聡史君
二十四番石森たかゆき君
二十五番高橋 信博君
二十六番鈴木あきまさ君
二十七番秋田 一郎君
二十八番山口 文江君
二十九番佐藤 広典君
三十番尾崎 大介君
三十一番伊藤まさき君
三十二番松下 玲子君
三十三番野上ゆきえ君
三十四番たぞえ民夫君
三十五番村松みえ子君
三十六番橘  正剛君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番谷村 孝彦君
四十番矢島 千秋君
四十一番高橋かずみ君
四十二番串田 克巳君
四十三番吉原  修君
四十四番山田 忠昭君
四十五番臼井  孝君
四十六番林田  武君
四十七番野島 善司君
四十八番服部ゆくお君
四十九番大西由紀子君
五十番西岡真一郎君
五十一番吉田康一郎君
五十二番斉藤あつし君
五十三番泉谷つよし君
五十四番くまき美奈子君
五十五番大西さとる君
五十六番増子 博樹君
五十七番かち佳代子君
五十八番植木こうじ君
五十九番長橋 桂一君
六十番野上 純子君
六十一番東村 邦浩君
六十二番小磯 善彦君
六十三番東野 秀平君
六十四番田代ひろし君
六十五番三宅 茂樹君
六十六番高木 けい君
六十七番山加 朱美君
六十八番村上 英子君
六十九番坂本たけし君
七十番川井しげお君
七十一番鈴木 一光君
七十二番吉野 利明君
七十三番いのつめまさみ君
七十四番門脇ふみよし君
七十五番小沢 昌也君
七十六番石毛しげる君
七十七番岡崎 幸夫君
七十八番柿沢 未途君
七十九番初鹿 明博君
八十番清水ひで子君
八十一番古館 和憲君
八十二番松村 友昭君
八十三番藤井  一君
八十四番ともとし春久君
八十五番木内 良明君
八十六番鈴木貫太郎君
八十七番倉林 辰雄君
八十八番樺山たかし君
八十九番近藤やよい君
九十番こいそ 明君
九十一番松原 忠義君
九十二番新藤 義彦君
九十三番古賀 俊昭君
九十四番立石 晴康君
九十五番桜井  武君
九十七番酒井 大史君
九十八番花輪ともふみ君
九十九番大沢  昇君
百番大津 浩子君
百一番大塚たかあき君
百二番相川  博君
百三番中村 明彦君
百四番曽根はじめ君
百五番大山とも子君
百六番石川 芳昭君
百七番中嶋 義雄君
百八番石井 義修君
百十番比留間敏夫君
百十一番遠藤  衛君
百十二番高島なおき君
百十三番宮崎  章君
百十四番大西 英男君
百十五番山崎 孝明君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十一番山下 太郎君
百二十二番馬場 裕子君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番田中  良君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番渡辺 康信君

 欠席議員(一名)
九十六番 野村 有信君
欠員
百九番 百二十番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事横山 洋吉君
副知事大塚 俊郎君
副知事関谷 保夫君
出納長幸田 昭一君
教育長中村 正彦君
知事本局長山口 一久君
総務局長大原 正行君
財務局長谷川 健次君
警視総監伊藤 哲朗君
主税局長菅原 秀夫君
生活文化局長渡辺日佐夫君
都市整備局長柿堺  至君
環境局長村山 寛司君
福祉保健局長山内 隆夫君
産業労働局長島田 健一君
建設局長依田 俊治君
港湾局長津島 隆一君
交通局長松澤 敏夫君
消防総監関口 和重君
水道局長御園 良彦君
下水道局長前田 正博君
青少年・治安対策本部長舟本  馨君
東京オリンピック招致本部長熊野 順祥君
病院経営本部長大塚 孝一君
中央卸売市場長比留間英人君
選挙管理委員会事務局長梶原 康二君
人事委員会事務局長高橋 道晴君
労働委員会事務局長押元  洋君
監査事務局長白石弥生子君
収用委員会事務局長中田 清己君

十二月七日議事日程第二号
第一 第二百七号議案
平成十八年度東京都臨海地域開発事業会計補正予算(第一号)
第二 第二百八号議案
市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三 第二百九号議案
職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第四 第二百十号議案
東京都の一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第五 第二百十一号議案
東京都の一般職の任期付研究員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第六 第二百十二号議案
東京都公営企業の管理者の給料等に関する条例の一部を改正する条例
第七 第二百十三号議案
職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
第八 第二百十四号議案
職員の旅費に関する条例の一部を改正する条例
第九 第二百十五号議案
東京都消費生活条例の一部を改正する条例
第十 第二百十六号議案
東京都文化振興条例の一部を改正する条例
第十一 第二百十七号議案
東京都教育相談センター設置条例の一部を改正する条例
第十二 第二百十八号議案
学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第十三 第二百十九号議案
東京都教育委員会教育長の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第十四 第二百二十号議案
学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第十五 第二百二十一号議案
義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例の一部を改正する条例
第十六 第二百二十二号議案
学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第十七 第二百二十三号議案
東京都教育委員会職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第十八 第二百二十四号議案
都立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第十九 第二百二十五号議案
東京都住宅基本条例
第二十 第二百二十六号議案
東京都特定公共賃貸住宅条例の一部を改正する条例
第二十一 第二百二十七号議案
保健所の設置等に関する条例の一部を改正する条例
第二十二 第二百二十八号議案
東京都大気汚染障害者認定審査会条例の一部を改正する条例
第二十三 第二百二十九号議案
興行場の構造設備及び衛生措置の基準等に関する条例の一部を改正する条例
第二十四 第二百三十号議案
プール等取締条例の一部を改正する条例
第二十五 第二百三十一号議案
東京都小規模貯水槽水道等における安全で衛生的な飲料水の確保に関する条例の一部を改正する条例
第二十六 第二百三十二号議案
食品衛生法施行条例の一部を改正する条例
第二十七 第二百三十三号議案
食品製造業等取締条例の一部を改正する条例
第二十八 第二百三十四号議案
東京都認定こども園の認定基準に関する条例
第二十九 第二百三十五号議案
東京都心身障害者扶養年金条例を廃止する条例
第三十 第二百三十六号議案
東京都心身障害者扶養年金会計条例の一部を改正する条例
第三十一 第二百三十七号議案
東京都心身障害者扶養年金基金条例の一部を改正する条例
第三十二 第二百三十八号議案
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定による任意入院者の症状等の報告に関する条例
第三十三 第二百三十九号議案
警視庁の警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する条例の一部を改正する条例
第三十四 第二百四十号議案
性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例の一部を改正する条例
第三十五 第二百四十一号議案
都営住宅十八CH―一〇四東(小松川三丁目第二・江戸川区施設)工事請負契約
第三十六 第二百四十二号議案
街路築造工事に伴う道路構造物設置工事(十八北南―府中三・四・七清水が丘)請負契約
第三十七 第二百四十三号議案
平成十八年度新海面処分場Gブロック西側護岸建設工事請負契約
第三十八 第二百四十四号議案
当せん金付証票の発売について
第三十九 第二百四十五号議案
都営住宅の買入れについて
第四十 第二百四十六号議案
再生手続開始申立事件において東京都が有する債権の取扱いについて
第四十一 第二百四十七号議案
再生手続開始申立事件において東京都が有する債権の取扱いについて
第四十二 第二百四十八号議案
再生手続開始申立事件において東京都が有する債権の取扱いについて
第四十三 第二百四十九号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び小金井市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十四 第二百五十号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び日野市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十五 第二百五十一号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び東村山市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十六 第二百五十二号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び狛江市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十七 第二百五十三号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び清瀬市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十八 第二百五十四号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及びあきる野市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第四十九 第二百五十五号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び西東京市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第五十 第二百五十六号議案
東京都水道事業の事務の委託の廃止及び日の出町公共下水道使用料徴収事務の受託について
第五十一 第二百五十七号議案
審理、喚問、聴聞等に出頭した者及び公聴会に参加した者の費用弁償に関する条例の一部を改正する条例

   午後一時開議

○議長(川島忠一君) これより本日の会議を開きます。

○議長(川島忠一君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(川島忠一君) これより質問に入ります。
 百十二番高島なおき君。
   〔百十二番高島なおき君登壇〕

○百十二番(高島なおき君) 平成十八年第四回東京都議会定例会に当たり、都議会自由民主党を代表して質問をいたします。
 ことし、国政の舞台では、戦後六十一年目にして初めて戦後生まれの首相が誕生いたしました。安倍首相には、憲法改正や教育基本法の改正など、この国の根幹にかかわる大きな仕事をぜひともしていただきたいと思いますが、私たちは決して戦後という不可解な時代に対して明確な決着をつけ得たわけではありません。
 特に、この国の次代を担うべき若い世代に目を向けたとき、私たち大人が子どもたちに何をし、何をしてこなかったのかを深く考えざるを得ないのであります。学校でのいじめの横行などを見るにつけ、人間として失ってはならない大切なものをどこかに置き去りにしてきたように思えてなりません。
 さらに、我が国を取り巻く国際情勢に目を転ずれば、核の脅威を背景に恫喝を繰り返す国が、国際社会に混乱を招来しようとしています。稚拙な技術力しか持たない独裁者が、みずからの延命にきゅうきゅうとしている姿には憐憫の情さえ感じざるを得ませんが、我が国は拉致という未解決の問題に直面しており、危機の実態からひとときも目をそらしてはいけないと思います。
 石原知事はよく、平和の毒が日本人をむしばんでいるといった趣旨のことをおっしゃいますが、まさに我が国の現状は、国内外で危機的な状況に直面しているにもかかわらず、平和ぼけに浸って安穏と構えているように見えます。このままでは、この国の安危を見誤ってしまうのではないでしょうか。
 石原知事は、この七年半の間、東京から日本を変えると都民、国民に訴え続け、強いリーダーシップのもと、ディーゼル車の排出ガス規制、CLO、CBOの発行による中小企業振興、認証保育所の設置など、有言実行の姿勢を貫き、さまざまな政策を実現してきました。
 我が党も、知事と軌を一にし、全面的に支持、支援し、都民福祉の向上に大いに貢献してきたと自負をしております。今こそ、東京から日本を変えるだけでなく、世界をも変える大きなうねりをつくり出していくべきと考えます。
 この八月には、東京が二〇一六年のオリンピックの国内立候補都市に選ばれ、これからまさに世界に打って出ようとしている時期でもあります。また、知事の最大の懸案の一つである横田基地の軍民共用化も、日米両政府による公式の検討組織がこの十月に設置された以上、十二カ月以内には共用化の具体案が提示されるところまで到達したのであります。
 我が党は、今後とも知事と手を携え、都政運営に邁進する所存でありますが、東京五輪招致の実現、横田軍民共用化の実現を、知事と一緒に見届けたいと考えているのであります。
 そこで、まさに今後の都政にかける知事の明確なる決意をお聞かせ願います。
 今後の日本や東京のあり方を見据え、知事には都政に対する強い決意をお持ちのことと思います。こうした知事の思いを実現するためにも、知事を補佐する執行機関には、副知事以下、局長から一般職員に至るまで、知事をしっかりと支え、石原都政のなお一層の発展のために命がけでご尽力いただきたいと、切に願うものであります。
 次に、東京オリンピックの招致について伺います。
 今後の知事の政治方針において、オリンピックは極めて重要な要素です。十年後を見越し、東京の将来像を構築し、オリンピック招致を成功させることは、まさに石原知事の使命ではないでしょうか。
 その重要な第一歩として、先月二十二日、東京オリンピック招致委員会が発足いたしました。三年後のIOC総会で東京都が開催都市に決定し、勝ち名乗りを上げることは、この招致委員会の活動いかんにかかっているといっても過言ではありません。そして、その会長は石原都知事であります。招致委員会の発足に当たっては生みの苦しみもあったと聞いておりますが、オリンピック招致を成功させるためは、会長として今後の知事のリーダーシップが問われてくるのではないでしょうか。
 そこで、招致活動の展開について知事の決意を伺います。
 先月の都議会自由民主党と公明党の海外合同調査団の調査では、勝利した都市は、招致戦術やグローバルな活動に秀でた国際的なアドバイザーを招いたり、エージェントを活用していることがわかりました。我が国では、これまで名古屋、大阪と連続して夏季オリンピック大会招致で負けてしまっています。東京オリンピックの招致に当たっては、こうした反省も踏まえ、招致に成功した海外の人材やノウハウを活用することが必要だと考えます。
 そこで、今後の招致活動に関し、外国人や外国企業の活用など、海外との関係を強化していくのか、所見を伺います。
 次に、国体は、いうまでもなく国内最大、最高のスポーツの祭典であり、東京国体の成功なくしてオリンピックの成功もないといっても過言ではありません。
 国体は、多くのスポーツの競技者にとって、郷土を背負って勝利を目指す、高校野球における甲子園大会のような存在であり、国体を目標に競技力の向上に日々邁進している青少年など、その裾野は極めて広い層にわたっています。
 また、大会の開催県においては、選手や観客と地元住民の触れ合いなどを通じて地域の活性化が図られるなど、国体の実施は大きな意義があると認識しています。
 このため、我が党は、東京国体への取り組みを通じ、全都的なスポーツ振興を図るとともに、広く多摩・島しょ地域の振興につながる取り組みを強化していくため、推進議連を立ち上げるよう、各会派に呼びかけを行ったところであります。
 また、本年十月の競技会場の希望調査では、多摩・島しょ地域を中心に数多くの区市町村から開催希望があり、区市町村の国体にかける期待も大きなものがあります。
 東京国体への取り組みについて、知事の所見を伺います。
 次に、都は、昨年度、これまでの施策の成果を踏まえ、新たな重要施策を策定していますが、今回の平成十九年度重点事業は、平成十八年度重点事業をさらに拡充し、二十四の事業を選定しています。
 その内容を見ると、首都東京の再生から都民生活の安全・安心の確保まで、非常に多岐にわたり事業が盛り込まれています。事業費も一千億円を超えるなど、これまでになく、今後の政策運営に向けた都の積極的な姿勢が見られます。
 しかし、何といっても今回の重点事業は、二〇一六年のオリンピックを見据え、長期的な都市戦略としての東京の都市像のキックオフと位置づけているところに大きな特色があると思います。予算編成に先立って東京都がそうした姿勢を明らかにすることは、大きな意義があることであります。
 そこで、今回の重点事業は、オリンピックをどうにらんで策定したのか、それが具体的な事業への反映としてどのように踏み出しているのか、所見を伺います。
 次に、平成十九年度予算編成について伺います。
 石原都政二期七年を通じた懸命な取り組みにより、十七年度決算は久々の黒字を達成し、都の預金ともいえる基金残高の確保も着実に進んでいるなど、都政の最重要課題であった財政再建は大きな進捗を見せました。ついこの間まで財源不足に悩まされ、毎年のやりくりに追われていることを思えば、まさに隔世の感があります。いよいよこれからは、財政再建により得られた財源を最大限に活用し、都民サービスの一層の向上に努めていくべきであります。
 都は、これからも人口減少社会に備えた医療、福祉の充実、都市基盤の拡充整備、オリンピックの招致など、多くの課題に積極的に取り組んでいかなければなりません。税収の不安定性を克服し、また、国との財政戦争とも呼ぶべき東京ひとり勝ち論の中で、都民の財源を守り、安定した行政サービスを提供していくためには、中長期的な視点を重視した財政運営に努めるとともに、都財政の健全性をさらにレベルアップしていくことが必要です。
 今月末には、来年度の予算が発表される予定です。七月に発表された今後の都財政運営の指針においても、中長期の視点を重視する姿勢を明確に打ち出していますが、この中長期的な視点の重視が今後の財政運営のキーワードであり、それでこそオリンピックの立候補都市にふさわしい対応となるものと考えます。
 そこで、指針のスタートとなる来年度は、好調な都税収入を最大限に活用し、現下の課題にもきっちりとこたえながら、同時に、五年先、十年先をにらんだ予算編成をすべきと考えますが、十九年度予算編成に当たっての知事の基本姿勢について伺います。
 次に、自治制度の改革については、首都圏全体を視野に入れ、中長期的な視点から、都政のあるべき姿について、行財政改革基本問題特別委員会で活発な議論を行ったところであります。
 折しも地方分権改革推進法案が国会に提出され、新たな地方分権改革の一歩を踏み出そうとしています。また、安倍総理の公約に基づき、道州制担当大臣のもとに懇談会を設置し、道州制ビジョンの策定を目指す動きがあるなど、国において地方自治のあり方に係る議論が本格化しております。
 こうした中、東京自治制度懇談会におけるこれまでの議論がまとめられ、都に対して助言、提言がなされたところであります。議論のまとめでは、国のいわゆる三位一体改革においてなおざりにされた国と地方の役割分担について一定の方向性を示すとともに、都市の時代には大都市の活力が国の明暗を左右するという認識のもと、国家全体の利益という観点から、大都市経営のあり方等について考え方を示しています。数字合わせに終わった三位一体改革の過ちを繰り返さないためにも、大変参考になる示唆に富んだ指摘であります。
 都は、この議論のまとめを受けて、今後どのように自治制度改革に取り組んでいくのか、伺います。
 また、東京自治制度懇談会の議論と時期を同じくして、都の三副知事や特別区長会の正副会長を中心とする都区のあり方に関する検討会において、検討の基本的方向が取りまとめられました。
 我が党は、かねてより、都と特別区の財源をねらい撃ちしようとする国の動きがある中で、都と区がコップの中の嵐のような小さな議論に陥ることなく、都区制度の抜本的な見直しに向けた検討を行っていくことが重要であると主張してきました。このたびの取りまとめは、都区間の事務の再配分や再編を含む区域のあり方の議論といった踏み込んだ内容であり、我が党の主張と合致したものであります。
 そこで、この取りまとめを踏まえ、今後、具体的にどのように取り組んでいくのか、伺います。
 次に、道路整備に向けた財源確保について伺います。
 東京を中心とする首都圏は、人、物及び情報が高度に集積し、日本経済全体の牽引役を果たしています。しかし、物流ネットワークの大半を担う道路の整備は著しく立ちおくれており、区部の平均旅行速度は、いまだ時速十八・八キロと、全国平均の半分程度にとどまり、それに伴う経済損失は都内で年間約二兆二千億と試算され、また、排出ガスによる大気汚染や温室効果ガスの増加など、環境にも大きな負荷がかかっています。
 こうした課題を解決するためには、首都圏の三環状道路を初めとした幹線道路ネットワークを重点的に整備する必要があります。そのためには、これまで以上に財源の確保が不可欠です。すなわち、道路特定財源を一般財源化して他へ回す余裕など全くなく、道路特定財源は、受益者負担の趣旨にのっとり、道路整備など、本来の目的に活用すべきであります。
 こうしたことから、我が党は、危機意識のもと、これまでの代表質問も含め、再三にわたり財源の確保と東京への配分拡大を主張してきております。また、さきの第三回定例会において、公明党と協力し、道路特定財源の首都東京の道路整備への重点投資に関する意見書を提出し、議決いたしました。これを受け、議論が重大な局面を迎える中、議長を先頭に直接国へ要請活動を行ってまいりました。
 いよいよ年末の政府の方針決定を迎えるに当たり、まさに今こそ議会と行政が連携し、一体となって、道路特定財源の確保と東京への配分拡大を訴えていかなければなりません。
 そこで、こうした状況を踏まえ、道路特定財源の確保と配分拡大に向けた知事の決意を、改めて伺います。
 次に、都独自の固定資産税の軽減措置について伺います。
 景気は緩やかに回復してきたといわれていますが、中小企業にとっていまだ厳しい経済環境であることは変わらず、景気回復の実感ができない状況であります。
 こうした状況の中、都が実施している固定資産税等の独自の軽減措置は、地価が高く、全国に比べ過大な税負担を強いられている中小企業にとって、事業の継続や経営の健全化に大きな力となっています。
 景気回復に水を差すことなく、また、依然として重い都民の税負担感に配慮するために、都独自の四つの軽減措置を来年度も引き続き継続すべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、都税の収納について伺います。
 都民が都税を納税する際に利用することが多いのは、銀行などの金融機関であります。しかし、銀行などの都内店舗は、十年前と比較すると約一千二百店舗が減少し、現在では約二千五百店舗となっています。各金融機関の窓口での待ち時間や、金融機関に出向くための手間なども都民の負担となっており、都税の収納について利便性の向上を求める切実な声が、近年、数多く寄せられています。
 こうした声にこたえ、都では、平成十六年五月に、全国都道府県の中でいち早くコンビニエンスストアにおいて自動車税の収納委託を開始し、その後、我が党の要望を受け、税目の拡大も行われました。
 その際、収納金の安全確保を図るため、経営指標などの基準を設け、これに該当したコンビニエンスストアを収納委託先として選定しているとのことです。その結果、現在、都が委託しているコンビニエンスストアは、都内全域では全店舗数の七割程度ですが、千代田区、中央区などの都心区では五割程度の店舗しか都税の収納を取り扱っていません。こうした地域では、都民が納税に不便を来している面があることも事実です。
 都民の利便性の向上のために、コンビニエンスストアへの委託をさらに拡大すべきと考えますが、今後の取り組みを伺います。
 次に、このたび、臨海三セク三社の再生計画案が東京地方裁判所から提示されましたが、都民の負担を最小限に抑えながら、できる限り負債を圧縮するなど、民事再生申し立て時における都の説明と、ほぼ同様の内容となっております。これでバブル崩壊を背景にした多額の負債が処理され、臨海副都心開発も新しい局面を迎えることとなります。
 そこで、まず、今後、開発を一層強力に推進するに当たり、知事は、今回の民事再生をどのようにとらえているのか、所見を伺います。
 ところで、民事再生の意義は、単なる借金の棒引きではなく、再生した会社の確かな事業継続にあることはいうまでもありません。このことを踏まえれば、この再生計画案に対する評価は、今後の事業展開の考え方や、その方向性にかかっているのであります。特に債権放棄額が二千億円を超え、都民にも一定の負担を求める内容となっていることから、この点は極めて重要であります。
 そこで、民事再生手続後の臨海三セクは、具体的にどのような会社に変わるのか、今後の経営見通しとあわせて伺います。
 次に、臨海地域の監理団体改革である持ち株会社構想について伺います。
 この構想については、過去二回の定例会において、我が党としても代表質問で取り上げ、その意義や効果、スケジュールなど、多方面にわたりただしてまいりました。
 平成二十一年度からの本格稼働に向けて、来年一月末には、いよいよ会社が立ち上がるということですが、これらが単に経営統合に名をかりた監理団体の寄せ集めに終わったのでは、何の意味もありません。重要なことは、持ち株会社という新たな監理団体が持つ資源、可能性を最大限駆使して、臨海地域の主要課題である東京港の国際競争力強化や臨海副都心のまちづくりなどに積極的に活用していくことであります。
 そこで、持ち株会社グループは、今後どのような事業展開を考えているのか、展望を伺います。
 次に、東京都消費生活条例の改正について伺います。
 悪質商法によるさまざまな事件が、相も変わらず毎日のように報道されています。年金収入しかない高齢者をねらって言葉巧みに近づき、布団や着物など、百万、二百万といった高額商品を次々と売りつけ、クレジットローンまで組ませるといった、非常に卑劣で悪質な手口が目立ちます。
 まじめに働いてこつこつためた老後資金を瞬く間に失い、茫然としている高齢者がたくさんおります。昨年度、都内の消費生活センターに寄せられた高齢者からの相談は、三万件近くにも上っております。弱い者を標的にして懐を肥やす、このような悪質事業者の横行を断じて許すわけにはいきません。悪質な行為を行った事業者に対しては、厳しい規制手段をもって臨むべきです。
 我が党は、第三回定例会において、現実に起きている消費者被害の拡大防止は待ったなしであることから、悪質事業者に対する規制強化に向けて条例改正を急ぐべきとの主張を行いました。今回の速やかな条例改正案の提出は、我々の主張に全面的に沿うものであり、評価できるものであります。
 この条例改正により、悪質事業者の行為をいかなる手段で取り締まることができるようになるのか、また、それがどのような効果をもたらすのか、まずお伺いをいたします。
 最近とかく問題とされる訪問販売や通信販売ですが、販売形態そのものは消費者にとって便利なものです。今回の規制強化によって、健全な事業者までもが制約を受けるのではと心配する声もありますが、悪質事業者が排除されれば、便利な販売形態を安心して利用できるわけですから、悪質事業者の規制強化は、消費者、事業者双方の利益につながるのです。
 改正条例の施行に向けた準備を進める中で、こうした改正の意義を積極的にアピールしていくべきと考えますが、どのように取り組んでいくのか、伺います。
 次に、東京の水道は、都民生活と首都東京の都市活動を支えるライフラインとして、いっときたりとも欠かせない存在であります。このため、我が党では、都市基盤としての整備の必要性について、機会をとらえて訴えてきました。
 これまでも水道局では着実な施設整備を進めてきましたが、その結果、現在では世界有数の規模と水準を有する事業となっております。しかしながら、より安全でおいしい水を求める都民ニーズの高まり、首都直下地震の切迫性を踏まえた一層の安定給水への取り組みの必要、集中的に到来する大規模浄水場の更新など、長期的な視点で見ると、新たな課題も山積しています。
 水道局では、先日、さまざまな課題を解決し、より安全でおいしい水の安定的な供給に万全を期すため、十年ぶりに東京水道長期構想STEPⅡを発表いたしました。しかしながら、施策を着実に実施していかなければ、都民の信頼を得ることはできません。
 また、十年後にオリンピックが招致されれば、海外からの多くのお客様を迎えることになり、東京の水道水準の高さを示すよい機会となります。
 そこで、この長期構想のねらいと、十年後に目指す姿、そして、この構想を実現していくための具体的な方策について伺います。
 ところで、知事もかねてから誇りにしている質の高い東京の水道水をすべての都民に供給するためには、給水をする側である水道局の施設整備も必要でありますが、あわせて、ビルや共同住宅などで設置者が管理している貯水槽水道にも踏み込んでいくことが重要であります。
 こうしたことから、我が党は、従来から、貯水槽水道の適正管理や、直結給水方式の普及促進について積極的に取り組むよう主張してきました。
 折しも、平成十九年度重点事業において、公立小学校の水を飲む蛇口を直結給水方式に切りかえるモデル事業や水道キャラバン隊による小学校の巡回など、快適な生活を支えるおいしい水対策を展開していくことが明らかにされました。
 しかし、学校に水筒を持参するなど、次世代を担う小学生の間でも水道水離れが進行しているとの話もあり、こうした状況を一刻も早く食いとめるために、迅速な対応が望まれます。
 この際、申し上げますが、公立小学校の水を飲む蛇口を直結給水方式に切りかえる事業は、その規模を最大限ふやすとともに、順次などといわず早急に取り組むべきであります。また、水道キャラバンについても実施規模を拡大すべきであります。見解を伺います。
 次に、本年六月一日から改正道路交通法の施行により、放置車両確認事務の民間委託が導入されるとともに、短時間の放置駐車に対する取り締まりも強化されました。この制度については、都民や中小企業など営業に影響が出ており、困っているなどとの意見が多数寄せられています。
 ついては、施行後の具体的な効果と、今後、その効果を定着させるため、どのように対応していくのか伺います。
 また、今回の新制度の運用に当たって、貨物等の集配車両に対する駐車禁止規制の緩和や駐車許可申請手続の簡素化はできないのか、警視総監の所見を伺います。
 次に、地球温暖化問題は、人類が直面する最も深刻な環境問題の一つであります。知事は、本定例会の所信表明において、世界に先駆けたCO2排出削減の取り組みを都政のあらゆる分野で民間企業や都民を巻き込んで展開するとし、来年度から校庭芝生化やバイオマス燃料の普及などを進めることを表明しています。我が党は、こうした知事の方針を全面的に支持するものであります。
 東京の有する世界最高水準の省エネ技術などを活用し、東京という都市をソフト、ハード両面においてCO2削減型へ抜本的に変えていく取り組みは、環境先進都市東京の姿を世界に発信すると同時に、経済、文化両面において東京の新しい活力を生み出す発展の原動力となるものであります。
 そうした取り組みを、大胆に、しかも集中的に展開していくことが重要であると考えますが、今後の都の温暖化対策への取り組み姿勢について知事の所見を伺います。
 次に、土壌汚染対策は、都民の健康と安全の確保や都市づくりの上で極めて重要であります。都は、国に先んじて環境確保条例により土壌汚染対策を進めており、それにより一定の成果は上がっていますが、一部には十分な対策がとられないまま推移している事例もあると聞いております。その背景には、土地取引との関係などさまざまな要因もあると考えますが、現場の汚染状況やその広がりに応じた調査分析方法、対策方法が十分に開発されていない事情もあると考えます。
 したがって、現場ごとに最も効率的、効果的な対策を講じ、土壌汚染対策をさらに進めていくためには、こうした現状を踏まえ、条例に基づく対策が進められてきた五年間の実績を検証するとともに、改めて実態を調査し、土壌汚染解決の道筋を明らかにする必要があると考えますが、所見を伺います。
 次に、産業振興対策について伺います。
 我が国は、一九九〇年代の失われた十年を克服し、今や戦後最長の景気回復を実現するに至っております。一方、人口減少社会の到来、世界的な環境、エネルギー問題の高まりなど、大きな転機に立っているのも事実であり、こうした中長期的な社会経済構造の変化に対応していく必要があります。時代の潮流を的確にとらえ、中長期的な戦略に基づいた産業施策を進めることは不可欠であり、こうした意味で、現在、都が産業振興の基本戦略を策定していることは、時宜にかなったものと考えます。
 そこで、現在検討中の産業振興戦略の策定に当たっての基本的な考え方と、今後の具体的なスケジュールについて伺います。
 また、東京の産業がアジア諸国などとの国際競争に打ち勝つためには、新しい製品やサービスの創造が不可欠です。東京には、独自の技術力と発想力で新製品や新サービスを開発するなど、創造的活動の担い手として期待される中小企業も数多く存在しています。しかし、激化する国際競争や社会経済の構造的変化の中で、これまでの事業展開の見直しを迫られる中小企業も少なくありません。
 リスクの高い技術開発などにチャレンジする中小企業を後押しするとともに、産業の基盤を支える中小企業のセーフティーネットを充実する必要があります。この二つの支援が相まって、東京の産業が将来にわたって発展していくことになると考えます。今こそ、こうした視点に立脚し、中小企業の支援を強化すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、二〇一六年の東京オリンピック招致を目指したさまざまな準備が始動していますが、この東京オリンピックのプレイベントともいえるアジア最大級の東京マラソンが、都内の名所をつなぐ魅力的なコース設定で来年二月に開催されます。都庁をスタートしてゴールするビッグサイトまで、コース全体の約六割は都道が利用されます。さらに、日比谷公園が十キロレースのゴール会場となっております。
 オリンピックの前哨と位置づけられた東京マラソンを成功させるために、コースである都道及びゴールとなる都立公園の準備と対応に万全を期することは無論のこと、コース沿道各所に集まる多数の観客の安全を確保することも重要です。
 そのため、障害者や高齢者、外国人を含むすべての観客が安全で安心に東京マラソンの応援やイベントに参加できるように、コース沿いの歩道のバリアフリー化に取り組むべきと考えますが、所見を伺います。
 続いて、知事がこれまでにない新しいお祭りとして東京マラソンと一体で盛大に実施していくとされている東京大マラソン祭りは、大変意義深い取り組みであり、また、その内容を伺うと、みこし、サンバ、ヘブンアーチスト等、趣向を凝らした心温まる応援イベントが盛りだくさんであり、大変楽しみであります。
 しかし、幾らよい内容のイベントを用意しても、多くの人に来てもらわなければ意味がありません。そのためには、東京大マラソン祭りを積極的にPRしていく必要があります。現在、「広報東京都」やホームページでその概要が紹介されていますが、まだまだ十分とは思えません。東京大マラソン祭りのPRをしっかり行い、多くの人にマラソンの応援やお祭りに参加し、楽しんでいただくことは、オリンピック招致活動の起爆剤としても重要な意義があると考えます。所見を伺います。
 次に、住宅基本条例の改正について伺います。
 住宅は、単なる寝食の場ではなく、人間交流や人間形成の場であるとともに、都市や街並みを構成する基本的な要素であります。住宅の質を高めることは、豊かさを実感できる住生活を実現するとともに、活力にあふれ、風格のある都市東京の再生を図る上で重要であります。
 本定例会では住宅基本条例の改正が提案されていますが、これを契機として、居住の場としても魅力ある都市東京の実現に向け、住宅政策の一層の充実を期待するものであります。そこで改めて、今後の住宅政策の推進に向けた知事の決意を伺います。
 バブル期の住宅問題を背景として住宅基本条例が制定された平成四年当時と比べ、社会経済情勢が大きく変化した今日、住宅政策が取り組むべき課題も変化してきており、改正案では、現行条例の全面的な見直しが図られております。そこで、今回の改正に当たっての基本的な考え方について伺います。
 条例改正案には、住宅政策におけるストック重視の姿勢が鮮明にあらわれております。都内の住宅ストックは、戸数の面では既に充足している状況にありますが、つくっては壊すスクラップ・アンド・ビルドが繰り返され、住宅の平均使用年数は約三十年と、欧米に比べて短命であります。環境負荷低減の観点からも、質のよい住宅をつくり、きちっと手入れし、長く大切に使うストック型の社会への本格的な転換が不可欠です。
 そのためには、良質な住宅が適正に評価され、円滑に売買される中古住宅市場の形成が重要な課題と考えます。中古住宅の流通促進に向けた今後の取り組みについて伺います。
 また、住宅の地震に対する安全性の確保に努めることが新たに明記されております。住宅を長く大切に使っていくためには、その住宅が十分な耐震性を備えていなければなりません。平成十五年の住宅・土地統計調査によれば、都内の住宅ストックの約三割が新耐震基準導入以前に建設されたものであり、既存住宅の耐震化の促進は喫緊の課題です。
 民間住宅については耐震化の促進に向けさまざまな取り組みが進められておりますが、都がみずから設置し管理する都営住宅の耐震化についてはどのように取り組もうとしているのか、見解を伺います。
 次に、木造住宅密集地域の整備改善について伺います。
 首都直下型地震の切迫性が指摘される中、老朽化した木造住宅等が密集する地域の整備改善を進めることによって、災害に対する安全性を確保し、事業効果を目に見える形で早期に発揮させることが重要であると考えます。
 そこで、木造住宅密集地域の整備促進について、区域を定め、集中的に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、私立学校の自主性、独自性について伺います。
 現在、高等学校の未履修が、公立、私立を問わず大変な問題となっております。この問題については適正な対応がとられなければなりませんが、公立、私立を同じように扱うことは、私立学校の自主性、独自性を危うくするものであります。
 私立学校では、公立学校が行うよりもはるか以前に中高一貫教育を行う学校もあり、また、公立学校が週五日制となっても土曜日の授業を行う学校もあるなど、それぞれ建学の精神に基づいた特色ある教育が行われています。このような私立学校の自主性、独自性を尊重するという観点から、私立学校法法定時に、議員の提案により、私立学校には、学校教育法に定められていた授業等の変更命令権の適用が除外されました。
 今回の未履修の問題は、私立学校の教育現場、あるいは次のステップに向けて懸命に頑張っている多くの子どもたちやその親の思いと大きく乖離して議論されているかのように思われます。そこで、私立学校の自主性、独自性についてどのようにお考えか、知事の所見を伺います。
 次に、いじめ対策について伺います。
 いじめにより児童生徒がみずからその命を絶つという痛ましい事件が相次いで発生しています。将来ある児童生徒が、いじめによる苦しみに耐え切れず、友達にも、保護者や教員からも手を差し伸べてもらえずに悲しみのうちにみずから命を絶ってしまうことは、察するに余りあり、極めて遺憾なことといわざるを得ません。このことは、学校教育の関係者だけではなく、広く大人である我々が深く胸に受けとめ、その解決に向けて力を合わせていかなければなりません。
 また、最近では、いじめを原因とする自殺予告の手紙が文部科学大臣に届けられるなど、都民からは、学校や教育委員会による迅速かつ的確な対応が期待されているところであります。
 そこで、このたびの一連のいじめ問題にかかわり、児童生徒がみずからその命を絶つという事件についてどのように受けとめているのか、所見を伺います。
 さて、今から二十年前になりますが、東京都においても、昭和六十一年二月一日、都内中学校の二年生が、いじめへの無念さや怒りなど悲痛な叫びを残してみずからの命を絶ちました。以来、東京都においては、二度とこのようなことを起こしてはならないという認識のもと、いじめ解決の方策をまとめた研究報告書の作成、いじめ問題に対しての取り組み強化月間の設置やスクールカウンセラー等臨床心理に関する専門家の派遣など、さまざまな施策を講じてきたと聞いております。
 このたびの一連の事件を受けて、都としてどのように取り組んだのか伺います。
 近年、東京都におけるいじめの発生件数自体は全体的に減少傾向にありますが、昨年度は、公立小学校では二百八十九件、公立中学校では五百九十七件ものいじめが発生しており、中学校は、わずかですが前年度に比べて増加していると聞いています。
 そのため、各学校においては、これまで以上に児童生徒の気持ちを一人一人の教職員が受けとめ、組織的な指導体制を確立して未然防止に努めなければなりません。また、学校だけでいじめの問題を解決するのは限界があることから、保護者や関係機関との緊密な連携や対応に努めるなど、早急にいじめへの対応の徹底を図ることが重要です。
 さらにまた、一連の自殺事件の中には、教職員がいじめに加担したり、いじめを助長していたとされる、信じられないような事例もありました。本来、児童生徒を指導すべき立場にある教員自身が、いじめは絶対に許されるものではないという確固たる自覚を持たなければ、いじめの問題を根本的に解決することはできないと考えます。
 教育長は、十一月八日の緊急アピールにおいて、子どもたちに、相談する勇気を持ってくださいと呼びかけました。また、保護者やすべての先生方や校長先生に対しても、子どもたちを守ってくださいとも呼びかけました。都民は、このアピールを読んだすべての子どもたちが、いじめのない学校に安心して楽しく通えるようになることを強く期待しています。
 いじめの発生をすべて防ぐことは難しいことですが、不幸にして起こってしまった場合には、早期に発見し、適切に対処していくことが重要です。今後、いじめ問題の解決に向けどのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、小中学校の適正規模、適正配置に取り組む区市町村への支援について伺います。
 少子化の進展の影響により、小中学校の小規模化が進んでおり、運動会や部活なども十分にできない学校すら出てきています。子どもの社会性をはぐくむためにも一定の学校規模は確保すべきであり、このような問題認識のもとで、既に幾つもの区市町村が学校の適正規模化に取り組んできました。
 都教育委員会でも、ようやくここに来て危機意識を持ち、都としての小中学校の適正規模、適正配置に取り組もうとしています。しかしながら、都教育委員会が真剣に考え始めたのは、いささか遅かったのではないでしょうか。
 足立区や台東区あるいは千代田区などでは、既に十数年前より、重大な決意を持って適正規模、適正配置に取り組み、大変な努力の中で、長い歴史を閉じなければならなくなった学校関係者の理解を求めてきました。また、保護者、住民、卒業生の方々も、区市の真摯な姿勢にこたえ、子どもたちがよりよい環境で教育を受けられるならばと、断腸の思いで統合に理解を示してきました。
 このように真剣に取り組んできた区市の立場で見れば、都教育委員会の取り組みが今になったことは、遅きに失したといわざるを得ません。今後、区市町村の真剣な取り組みに対して支援が時期を失することのないよう、しっかりと考えていただきたいと思います。
 そうした前提の上ではありますが、やはり学校の適正規模、適正配置への対応は、子どものことを考えるならば、早急に取り組まなければならない課題であることは間違いなく、都教育委員会として適正規模化に取り組もうとすること自体については、我々としては後押しをする必要があると考えています。
 そこで、小規模の学校における教育上の課題について、改めて都教育委員会の認識を伺います。また、このような小中学校の小規模化に対する都教育委員会の対応を伺います。
 次に、従来の大学医局中心の医師の育成、派遣システムは、平成十六年度の初期臨床研修の義務化などを契機として大きく揺らぎ、全国の病院で医師の不足が深刻な問題となっています。このような状況にあっても、都立病院は、救急医療など、高水準で専門性の高い行政的医療を適切に都民に提供するという役割を確実に果たし、都民にこたえていかなければなりません。
 これまで都立病院では、卒後二年間のジュニアレジデントや、小児科、産婦人科等の専門分野におけるシニアレジデントを受け入れるなど医師の育成に取り組んできており、幸いなことに志望者もかなり多いと聞いています。若手医師の意識も変化し、自由に研修病院を選択できるなど、医師の採用をめぐる環境は変化しつつあります。
 こうした中、都立病院みずからが独自の取り組みによって将来を担う質の高い医師を確保、育成する必要があると考えますが、所見を伺います。
 次に、今定例会において心身障害者扶養年金制度の廃止条例が提案されておりますが、扶養年金制度は、保護者亡き後の不安の軽減と障害者の福祉の向上を図るという目的で昭和四十四年に発足しました。制度の開始から三十七年が経過した今、財政的な行き詰まりから現行制度を維持することはもはや困難となっており、やむなく制度を廃止することとなったものと理解をしております。
 今後、制度の廃止に当たっては、我が党が第三回定例会において要望したとおり、加入者への対応を都として責任を持って実施するとともに、障害者が保護者亡き後も地域の中で自立して生活できるよう総合的な施策展開に今後とも積極的に取り組むことが重要と考えます。
 そこで、今回、心身障害者扶養年金条例の廃止を提案された知事の決意を伺います。
 ここで、一点申し上げます。
 本年四月から施行された障害者自立支援法のもとで、精神障害者も、身体障害者、知的障害者と同一の体系による福祉サービスを受けることができるようになりましたが、公共交通機関における運賃割引制度については、これまで、都営交通を除いて精神障害者に適用されていませんでした。
 この運賃割引制度の適用について、我が党は、去る九月五日、社団法人東京バス協会に赴き、民営バスにおける運賃割引制度を精神障害者に対しても適用されるよう、強く要請したところです。このような我が党の働きかけが実り、来年四月から運賃半額割引を実施したい旨の回答をいただきました。
 我が党は、今後も、障害者自立支援法の理念を具体的に実現していくために、率先して関係団体等への働きかけを行っていきます。福祉保健局においても、特段の配慮を持って施策を推進されるよう望みます。
 次に、福祉保健局が本年八月に発表した人口動態統計によれば、平成十七年中に悪性新生物、つまりがんで死亡した都民は約三万人で、全死亡者の三〇%を超え、死因としては昭和五十二年以降第一位で、しかも死亡率は年々上昇しています。医学技術の進展により、がんの診断、治療のレベルは上がっているものの、依然として都民の生命を脅かす病気であることには変わりはなく、都民も大きな不安を持っています。
 がんに関しては、マスコミ等でもさまざまな治療や医療機関に関する情報が提供されていますが、一方で、がんの予防や早期発見のために具体的にどうすればよいのか、また、いざ自分ががんにかかった場合にどのような医療機関、治療法を選べばよいのか、都民は大きな関心を持つとともに、不安を抱いているのも現実であります。
 こうした中で、本年六月には、我が国におけるがん対策の総合的かつ計画的な推進を目指すがん対策基本法が制定され、来年の四月から施行されることになっています。
 都においても、がん対策について、これまで以上に一歩踏み出した施策の展開を図るべきです。基本法では、各都道府県においてがん対策推進計画を策定することとされていますが、都としてどのように取り組んでいこうと考えているのか、所見を伺います。
 また、がんの中には、食生活など生活習慣の改善により罹患するリスクを低減させることができたり、早期に発見できれば完全に治癒できるものも多くあります。都民に対して、予防・検診受診を強力に呼びかけていく取り組みが必要と考えますが、所見を伺います。
 さらに、早期にがんを発見できたとしても、適切な治療に結びつけられなければ治癒は望めません。都内には、国立のがんセンターを初め、がん治療に関して高名な病院も多いわけですが、都内医療機関全体の診療水準の底上げが必要であると考えます。そのため、がん治療の拠点となる病院を整備し、診療水準の向上を図っていくことが重要ですが、都としての取り組みを伺います。
 次に、福祉、保健、医療に関する包括補助事業について伺います。
 都は、本年二月、福祉・健康都市東京ビジョンを策定し、福祉・医療改革を着実に推進しております。一方、住民の身近にあって、地域福祉、保健医療の担い手である区市町村は、地域ニーズに応じ、さまざまな取り組みを行っており、地域からの発想を生かしていくことが、都の福祉保健施策全体を向上させる大きな原動力になると考えます。
 今般、都が創設を予定している福祉保健区市町村包括補助事業は、その名のとおり、区市町村にとって大変力強い支援となるものです。しかし、支援に当たっては、都の福祉保健施策の方向性を前提とすることはもちろんですが、区市町村の主体性を損ねたり、地域の実情を軽視するものであっては、その意義や効果も薄れてしまいます。
 新たな包括事業は、都の目指す福祉保健施策の実現を推し進めるとともに、区市町村独自の取り組みを生かす柔軟な仕組みを持った制度とすべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、認定こども園は、幼稚園教育と保育を一体に提供する仕組みであり、少子化の進行や就業形態の多様化等を踏まえた新たな枠組みとして期待しているところであります。
 しかしながら、制度の円滑な実施に当たって、課題がないわけではありません。認定こども園制度は、認可保育所と認可幼稚園が連携したいわゆる幼保連携型以外にも、認可外保育施設などが地域の実情に応じて参入できる仕組みとなっていますが、一方で、国の財政措置については、認可を受けた部分のみに限定されています。
 こうした財政上の不均衡は、制度の普及を阻害することになりかねないとして、都議会は、先般、必要な財政支援を講じるよう国に強く要請したところであります。しかし、国の動きは全くありません。
 保育や教育のニーズが多様化している東京では、多様な仕組みによる事業展開が不可欠であります。我が党は、第三回定例会において、都独自の財政支援を主張し、本定例会の知事の所信表明演説では、補助制度を創設する旨の意向が明確に示されました。
 では、具体的にどのような財政支援を行おうとしているのか、その内容について伺います。
 また、認定こども園制度は、親の就業形態を問わないなど、これまで認証保育所で実践してきた多くの内容を国が取り入れたものであります。まさに、都の先駆的な取り組みが国の硬直的な制度に風穴をあけたといっても過言ではありません。
 そこで、都民ニーズにマッチした制度としていくためには、多大な支持を得ている認証保育所の考え方をこの制度の中に取り込むべきと考えますが、本定例会で条例提案されている認定こども園の認定基準に関する考え方について所見を伺います。
 次に、地域力の向上について伺います。
 我が党は、第二回定例会の代表質問において、近年の孤独死の問題、また児童虐待を初め、子どもが被害者、加害者となる事件の多発などを取り上げ、地域コミュニティの脆弱化、いわゆる地域力が低下しつつある現状を指摘しました。そして、こうした問題に対応するための取り組みの一例として、現行の民生・児童委員のすそ野を広げ、児童健全育成のための新たな制度を創設し、子育て家庭の不安に対応していくべきと提案しました。
 過日発表された都の平成十九年度重点事業において、地域力の向上に向けた取り組みの一環として、新たに民生・児童委員サポーターの配置が取り上げられております。我が党の提案を反映させた、まことに時宜を得た施策と考えております。
 そこで、この新たな仕組みの概要と今後の取り組みについて伺います。
 最後に、知事は、先週、東京高等裁判所に直接足を運び、大気汚染訴訟の解決に向けた医療費助成と自動車排気ガス対策など、国への要求案を提示されました。被害者の方々にとって何よりの朗報であるばかりか、都民の枠を超え、全国民に関係するこの大きな問題に対して文明批判の矢を放ったという点でも、極めて画期的な提案であったと思います。
 知事はこれまでも、強力なリーダーシップを発揮して数々の難問を解決してきました。現在進められているウイルス肝炎への対応についてもしかり、横田基地の軍民共用化でも、先日、アメリカ側の責任者であるローレス氏が直接来庁され、知事と情報交換をされたと聞いております。
 来年は、我が党にとっても、都政にとっても、そして石原知事にとっても大きな意味を持つ一年になろうかと思います。私たちは、都民、国民のために、しっかりと目線を前に向け、これまで以上に汗をかいていく覚悟であります。知事におかれましても、命を都政に預ける覚悟で、ぜひとも我々と一緒に戦い抜いていただきたいと熱望いたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 高島なおき議員の代表質問にお答えいたします。
 今後の都政にかける決意についてでありますが、私は、この八年近くの間、日本の頭脳部、心臓部であります東京から、何とかこの国を変えようというつもりで、国の一歩、二歩、三歩も先を行く独自の政策をさまざまに講じてきたつもりでございます。
 破綻の危機に際していた財政も、内部努力も相まって、土俵際から何とか押し戻すことができましたし、新たな公会計制度を構築することにより、行政の新しいフォーマットもでき上がりつつあります。
 また、横田基地の軍民共用化や三環状道路の整備などの懸案事項では、首相官邸にも参りまして直接談判にも及ぶことがございましたし、大気汚染訴訟では、おっしゃられたとおり、先般、裁判官に直接、文明批判としての都政の姿を伝えてまいりました。
 しかし、東京の再生はいまだ道半ばといわざるを得ず、東京をより快適で魅力的な都市としていくには、まさにこれからが正念場であると思っております。
 この夏、二〇一六年のオリンピック国内立候補都市が東京に決定しましたが、五輪開催は、東京そして日本の底力を世界に示す絶好の機会でありまして、いい出したからには、途中で投げ出すわけにはいかないと思います。
 現在、十年後の東京の姿を明らかにする二〇一六年の東京の都市像を既に大方策定しておりまして、今月中に発表する予定でございます。来年からの四年間は、その端緒となる重要な時期でありまして、私はこれからも、オリンピック開催を目指す十年後を見据えて、東京発の先進的な取り組みを重ね、都民の皆様はもとより、広く各界層のご支持を得ながら、首都東京のかじ取りを引き続き命がけでやっていきたいと思います。(拍手)
 次いで、オリンピック招致活動でありますが、この展開、オリンピック招致は、国を挙げての一大プロジェクトでありまして、単に東京ひとりの問題ではないと思います。東京が中心になって、日本全体でひとつ新しい大きな夢を見ようというプロジェクトでありまして、この夢を成就させるためには、先月立ち上げました東京オリンピック招致委員会を中心に、国の政府や、これも強く要求しますが、経済界、さらには国内スポーツ関連団体が一団となりまして、都民、国民の機運を盛り上げ、海外における招致運動を積極的に行う必要がございます。
 既に、前小泉首相、現安倍首相、そして官房長官などと突っ込んだ話し合いをしておりますが、今後は、招致委員会の長としてリーダーシップを発揮し、こうした複合的な招致運動を戦略的に展開していくことで、熾烈な選考レースを何とか勝ち抜いていきたいと思っております。
 次いで、東京国体への取り組みについてでありますが、先般、都議会において、平成二十五年の東京国体に向けた推進議員連盟の設立が図られました。大変心強く思っております。
 また、多摩・島しょ地域を中心に、多くの区市町村から競技開催の希望があるなど、東京国体への機運も高まりつつあります。こうした機運の中で、スポーツ振興を推進する体制を強化するとともに、多摩・島しょ地域の振興とも連動しまして、東京国体の準備を精力的に進めてまいります。
 二〇一六年の開催を目指しております東京オリンピックにつきましては、IOCの原則がございまして、評価原則がございまして、それを考慮して、やはり十キロ圏内に主な競技用施設を集中することにはしておりますが、その事前に、各国の、全世界の各アスリートが来日して練習をするための施設等に関しては、これはとても都内だけでは、要するに賄い切れません。多摩地域でも積極的に招致していただいて、受け入れていただきたいと思っております。そのあっせんは、当然、推進委員会がいたします。
 今後とも、都議会や区市町村、各競技団体の協力をいただきながら、東京国体を成功させ、その成果を東京オリンピックにつなげ、内外にインパクトを与え得るスポーツムーブメントとしていきたいと思っております。
 次いで、平成十九年度予算編成についてでありますが、都財政は、再建に向けた取り組みが実を結び、都税収入の増加と相まって、毎年度のやりくりに追われる状況から、将来に目を向けることのできる状況にまで大きく改善をしてまいりました。
 平成十九年度予算では、この機運を逃さず、安全対策や中小企業の振興など、現下の緊急課題へ対応すると同時に、ようやく骨格ができ、今月中にフルテキストができ上がります二〇一六年の、十年先の東京の都市像を踏まえまして、五年先、十年先を視野に入れながら、都市インフラの整備、環境、文化などについても積極的に推進し、東京の魅力をさらに高めていきたいと思っております。
 加えて、隠れ借金の早期解消や負の遺産の抜本的な処理など、残された懸案課題の解決にも精力的に取り組むことで、景気の変動にも動じることのない強固な財政基盤を築き上げていきたいと思っております。
 次いで、道路特定財源の確保についてでありますが、首都東京の致命的な欠陥であります慢性的な交通渋滞の解消には、外環を初めとする三環状道路などの整備が必要不可欠であります。
 これまで都は、首都圏の道路整備の重要性と、安定した財源である道路特定財源の必要性を、国や世論に訴えてまいりました。また、都議会でも同様の趣旨で意見書を議決し、国土交通大臣などに要請をしていただきました。納税者の代表である自動車関係団体からも、一般財源化に対する明確な反対の意を示しているにもかかわらず、国は、それを踏まえずに一般財源化に向けた検討を進めております。
 道路特定財源は、真に必要な道路整備など、本来の目的に充当すべきでありまして、一般財源化は絶対にやるべきではないと思っております。日本経済の牽引役を果たしている首都圏の道路整備の緊急性は極めて高く、道路特定財源を首都東京の道路整備に重点投資すべきであります。
 引き続き、財源の確保と東京への配分拡大を、あらゆる機会をとらえて国に働きかけ、真に、本当に必要な優先度の高い道路整備を全力で進めてまいりたいと思っております。
 次いで、固定資産税等の軽減措置でありますけれども、小規模非住宅用地や小規模住宅用地などに対する軽減措置は、全国に比べて著しく高い東京の地価水準のもとでの税負担に配慮するとともに、景気対策、中小企業支援、定住確保などに資する観点から都独自に実施してきたものでありますが、来年度の取り扱いについては、社会経済状況、景気の動向、都民の負担感などを勘案しつつ、今後、積極的に検討してまいります。
 今回の民事再生についてでありますけれども、私が知事に就任しましたときは、臨海副都心開発は、もう破綻寸前の状況にありました。都は、関係者の協力のもとに、さまざまな創意工夫を凝らした結果、今、臨海地域は都心とのアクセスも充実しまして、首都東京の新しい活力を担うまちに成長いたしました。
 この開発の先導役である臨海三セクも、バブル崩壊の影響を受けて厳しい経営が続いてまいりましたが、今回の民事再生により、経営基盤が一段と強化されると思います。一連の手続によりまして、都民の一定の負担が生じることにはなりますが、これで長年の懸案が解決されると思います。
 現在、開発は、総仕上げの十年という重要な段階に入っておりまして、新会社を持ち株会社グループに参加させることにより、開発を一層力強く進めていきたいと思っております。
 次いで、都における地球温暖化対策の展開についてでありますが、CO2の劇的な排出削減を実現するためには、化石燃料の多量な消費を前提としたこれまでの都市のあり方を見直しまして、再生可能エネルギーへの転換、豊かな緑空間の回復、物流の効率化などの施策を本格的に開始しなくてはならないと思っております。
 これらの施策は、先端的な技術と新産業を呼び起こし、東京の経済的活力の新たな原動力となると同時に、緑があふれ、まちを歩いて楽しめる都市空間を創出し、東京を一層魅力的な都市としていく上でも重要な意義を有していると思います。
 今後、こうした観点に立ちまして、二〇一六年を視野に、世界の都市に先駆け、CO2の大幅削減をいち早く実現するための十年プロジェクトを、大胆かつ集中的に展開してまいります。
 今後の住宅政策の推進についてでありますが、十年後のオリンピック開催を見据え、東京を、都市基盤や美しい街並みが整備され、環境への負担が少なく、安全・安心で豊かな生活が確保された、さらに機能的で魅力的な都市につくりかえていく必要がございます。
 住宅は、生活の基盤であると同時に、都市を形づくる基本的な要素であります。居住の場としての魅力の向上は、都市社会に活力と安定をもたらし、東京の持続的発展に寄与するものであります。
 住宅政策については、住宅の量的な充足や居住ニーズの多様化を踏まえ、公共住宅の新規建設中心から、市場やストックの活用重視へと転換を推し進めていくことが重要であると思っております。
 また、大地震の切迫性の高まりや耐震偽装問題の発生、少子高齢化の急速な進展などを背景として、住宅の安全性や都民の住生活の安心を確保することが焦眉の問題となっております。
 都は、安全で良質な住宅ストックの形成と市場の構造改革による価格の低廉化などに向けまして、施策の一層の充実を図るために、住宅基本条例の抜本的改正を提案いたしました。これを将来にわたる指針として、成熟した都市にふさわしい魅力のある居住環境を創造していきたいと思っております。
 次いで、私立学校の自主性、独自性についてでありますが、私立学校は、国立、公立学校とは異なりまして、創立者の教育理念に賛同した人たちが、個人の財産を寄附することによって設立されたものであります。
 それぞれの学校では、建学の精神に基づき教育が行われておりまして、独自の校風と長い歴史の中で培われてきた伝統がありまして、それぞれの伝統があります。生徒、保護者は、それを望んで入学しているわけであります。
 公立学校と同様の扱いは、それぞれの私立学校の建学の精神に基づいた教育を損ない、また、学校の個性を損なうおそれがあります。今後とも、私立学校における教育の自主性、独自性は十分に尊重されるべきと考えております。
 心身障害者扶養年金条例の廃止についてでありますが、いかなる政策も、時代の変化に対応した不断の見直しが必要であります。心身障害者扶養年金については、現行制度の維持がまことに困難となりまして、将来世代に過重な負担を追わせないために廃止せざるを得ないと判断いたしました。この事実を真摯に受けとめ、制度運営者として、制度の廃止後の対応にも加入者の方の理解が得られるよう、誠心誠意を持って取り組んでいきたいと思っております。
 障害者が、保護者亡き後も地域の中で自立し、安心して暮らせるように、地域生活基盤の整備を積極的に進めるなど、障害者福祉施策を総合的かつ計画的に推進していくつもりでございます。
 他の質問については、警視総監、出納長、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監伊藤哲朗君登壇〕

○警視総監(伊藤哲朗君) 違法駐車対策についてお答えいたします。
 初めに、改正道路交通法施行後の具体的な効果と今後の対応についてでありますが、都内主要十路線における法施行六カ月後の状況を調査いたしました結果、施行前と比べ、放置駐車が約五七%減少し、渋滞の長さが約二五%、平均走行時間が約八%、それぞれ短縮しているほか、パーキングメーターの利用が約三七%増加するなど、渋滞の緩和と交通の円滑化という効果があらわれているところであります。
 当庁といたしましては、このような効果をさらに定着させるため、違法駐車の実態や渋滞の状況などを踏まえ、駐車監視員の効果的な運用や警察官による指導取り締まりのほか、積極的な広報啓発活動など、総合的な駐車対策を推進してまいりたいと考えております。
 次に、駐車禁止規制の緩和につきましては、貨物集配中の貨物車を、場所、時間を指定して駐車禁止規制から除く路線を設けたり、パーキングメーターの駐車枠を大型化して貨物車を駐車可能とするなど、地域の駐車実態に応じた規制の見直しを行っているところであります。
 また、駐車許可の申請手続についてでありますが、貨物の積みおろしや冠婚葬祭に係る駐車許可につきましては、警察署のほか、交番、駐在所においても許可証の交付を行うなどの措置を講じているところでありまして、今後とも、都民の利便性に配慮した運用に努めてまいりたいと考えております。
   〔出納長幸田昭一君登壇〕

○出納長(幸田昭一君) 都税収納委託先の拡大についてお答えいたします。
 都では、平成十六年度より、情報開示や経営指標などの基準を満たしたコンビニエンスストアにつきまして、全国で初めて都税収納の委託をしてまいりました。
 今般、都民の皆様の利便性をより一層図る観点から、新たなルールを導入し、都税収納金の安全性が確保されるコンビニエンスストアにつきましても委託先とする方向で、鋭意、協議を進めております。
 これにより、平成十九年度から新たに委託することとなるコンビニエンスストアを合わせますと、都内全域のコンビニエンスストアの九八%余、約五千四百を超える店舗が収納委託先となる見込みでございまして、より身近なところで都民の納税先としてご活用いただけるものと考えております。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 教育施策に対しまして、五点のご質問がございました。
 まず、いじめ問題にかかわる事件についてであります。
 いじめによりまして、児童生徒がみずからの命を絶つという痛ましい事件が全国で起きておりまして、深刻な事態と重く受けとめております。
 子どもの命は、家庭、学校、地域が一体となって守るものでありますが、これらの事件では、児童生徒を守るべき学校、教職員の認識や対応に問題がある例や、教育委員会の対応が不適切であった例も見られ、保護者を初め国民の信頼を著しく損なっていることは極めて遺憾であります。
 次に、一連のいじめ問題にかかわる都としての取り組みについてであります。
 十一月八日に、子どもたちに対しまして、いかなる理由があったとしても、みずからの命は絶ってはいけないと訴えます緊急アピールを発表するとともに、いじめ等問題対策室におきまして二十四時間体制で電話相談に応じるなど、緊急に対応してきたところであります。
 また、都教育委員会は、いじめが起こっていないか、教員がいじめを助長していないかなどを再点検するための啓発資料を改めてすべての公立学校に配布するとともに、家庭、地域においても活用するよう働きかけてまいりました。
 さらに、生活文化局、福祉保健局、病院経営本部、警視庁、教育庁の連携を強化いたしまして、全庁を挙げていじめ問題に対する相談体制を整えるとともに、相談窓口について、都の刊行物等で広く保護者、都民に広報いたしました。
 加えて、都内の国立、公立、私立すべての学校の児童生徒及び保護者に相談カードを配布いたしまして、だれでも相談できる窓口について周知いたしました。
 次に、今後の取り組みについてでありますが、いじめは決して許されないことでありますが、いつでも、どこでも、どの学校でも起こり得るものであるという前提に立ちまして、学校教育に携わるすべての関係者一人一人が改めてこの問題の重大性を認識し、日ごろからいじめの兆候をいち早く把握し、迅速に対応できるようにすることが重要でございます。
 十一月八日から十二日まで実施いたしましたいじめ等問題対策室の緊急電話相談では、いじめを受けた子どもや保護者からの相談のほかに、教職員の不適切な対応、家庭の教育力の向上の必要性、いじめる側への指導の徹底など、さまざまなご意見が寄せられました。
 今後、これまで東京都教育委員会が蓄積してきましたいじめ問題の解決の方策に加えまして、新たに緊急相談に寄せられた相談内容等を整理、分析して資料にまとめ、教員研修だけでなく、保護者会や地域懇談会等においても活用するよう働きかけてまいります。
 さらに、広く都民の方々にもこの問題の重大性を認識していただくために、早急にフォーラムを開催し、いじめ問題の解決に向けて全都的な取り組みを推進してまいります。
 次に、小規模の学校における教育上の課題についてであります。
 学校教育において、子どもたちは、互いに切磋琢磨しながら、自立した人間として社会で活躍するために必要な知識や技能を学び、また、多くの人との協調や競い合いの中で人間関係の基礎を身につけることができると考えております。
 しかしながら、小規模校におきましては、多くの仲間と協力したり、互いに高め合ったりする機会が限られております。
 また、一学年一学級の規模では、クラスがえができず、人間関係が固定化しがちであるため、いじめが発生したり、学級が荒れたりした場合に、人間関係の修復が難しいなどの課題があると認識しております。
 さらに、小規模校におきましては、新任教員への指導や授業改善への取り組みなどにおきまして、校内で組織的に補い合うことが難しいことや、生徒のニーズに応じた多様な部活動が設置できないなどの課題が指摘されております。
 最後に、小中学校の小規模化への対応についてであります。
 都教育委員会といたしましては、小規模校におけます教育上の課題にかんがみまして、区市町村教育委員会が行う小中学校の適正規模化の取り組みを支援する必要があると考えております。
 このため、現在、区市町村教育委員会と意見交換を行っているところであります。この場での要望を踏まえまして、児童生徒の新しい学校への適応や通学上の安全確保への配慮、新しい学校を魅力あるものにするための備品等の整備等につきまして、区市町村が支援策の中から選択できる方法での支援を検討してまいります。
   〔東京オリンピック招致本部長熊野順祥君登壇〕

○東京オリンピック招致本部長(熊野順祥君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、オリンピック招致活動におきます海外との関係強化についてでございます。
 オリンピック招致を成功させるためには、IOCの動向や、これまでの海外の事例を十分に調査研究した上で招致活動を展開していくことが重要でございます。
 このため、過去のオリンピック招致に携わったアドバイザーの招聘や計画策定、広報戦略などを専門業務としております海外エージェント企業との契約などを検討しております。
 今後は、東京オリンピック招致委員会を中心にこれら国外に蓄積されているノウハウを活用するほか、国際競技団体との調整など、海外におけます諸活動を本格化させてまいります。
 次に、東京大マラソン祭りのPRについてでございます。
 でき得る限り多くの方々にご参加いただき、大会本体及びオリンピック招致機運を盛り上げていくために積極的なPR活動が重要であることはご指摘のとおりでございます。
 このため、年内には、祭りをPRするためのポスターやパンフレットを作成いたしまして、駅、公共施設、観光案内所等に掲出、配布するなど、大々的に祭りの周知に努めてまいります。
 また、年明けには、一層具体的かつ詳細な内容を記載いたしましたパンフレットやマラソン応援マップを作成するとともに、「広報東京都」、区市報、ホームページ、都提供の各種テレビ・ラジオ番組やマスコミ各社におけます積極的な報道など、集中的な広報に努めてまいります。
 以上申し上げましたように、あらゆる広報手段を活用し、東京大マラソン祭りについて積極的なPRに努めることなどによりまして、東京マラソンの準備に万全を期すとともに、オリンピック招致機運を盛り上げてまいります。
   〔知事本局長山口一久君登壇〕

○知事本局長(山口一久君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、平成十九年度重点事業についてでありますが、今回の重点事業は、十年後の東京の姿と政策展開を明らかにする二〇一六年の東京の都市像のキックオフとして、環境対策や都市基盤整備などを一層促進するとともに、急速に進む少子化やグローバル化に的確に対応する観点から事業を選定いたしました。
 具体的には、オリンピック招致に向けて、世界に先駆けたCO2半減都市モデルを目指す第一歩を踏み出すとともに、水辺空間を初めとする美しい風格のある景観の形成など、東京の魅力の発信に重点的に取り組んでまいります。
 また、交通渋滞を解消するための道路整備についても、引き続き精力的に取り組んでまいります。
 さらには、スポーツの振興を積極的に推進するとともに、東京大マラソン祭りや東京国体をスポーツイベントとして成功させ、オリンピックの招致機運を盛り上げてまいります。
 今後、年内に策定を予定している都市像とあわせて、戦略的な取り組みを展開し、東京をさらに高いレベルの成熟した都市にしてまいります。
 次に、東京自治制度懇談会の「議論のまとめ」についてでございますが、現在、国において地方分権改革に関する議論が活発に行われている中、東京自治制度懇談会では精力的にご議論をいただき、国と地方の役割、道州制導入の考え方などについて一定の方向性をお示しいただいたところであります。検討すべき課題も残されていることから、引き続きご議論いただく予定でございます。
 都といたしましては、新たな地方分権改革が地方の自主性、自立性を高める真の分権改革となるよう、懇談会の議論を踏まえ、国の地方分権改革推進委員会における検討状況等も見据えつつ、東京発自治論として都の主張を取りまとめ、今後三年以内に策定される地方分権改革推進計画に盛り込まれるよう、働きかけてまいります。
   〔総務局長大原正行君登壇〕

○総務局長(大原正行君) 都区のあり方の検討についてでございますが、都と特別区は、このたび、都区のあり方に関する検討会におきまして、検討の基本的方向を取りまとめました。
 その内容は四点から成っておりまして、一、都と区は、東京の財源のねらい撃ちや都心区の直轄化論に対して協力して対抗する。二、都区の事務配分について、大都市の一体性確保のために都が行う必要があるとされた事務を除き、都から特別区への事務移管をさらに進めるべきである。三、特別区の区域について、再編を含む区域のあり方の議論が必要である。四、税財政制度のあり方については、議論の推移を踏まえて最終的に整理をするとなっております。
 今後、この基本的方向に沿って議論を進めるために、都区協議会のもとに都区のあり方検討委員会を設置し、さらに、特別区の助役や都の部長など実務担当者を交えた幹事会を設けまして、移管対象事務の選定基準や、再編を含めた区域の考え方など、具体的な検討を進めてまいります。
   〔港湾局長津島隆一君登壇〕

○港湾局長(津島隆一君) 監理団体改革について二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、臨海三セクの今後の展望と経営見通しについてでございます。
 今回の民事再生は、今後、金利が上昇傾向にある金融情勢等を総合的に判断して行ったものでございます。このことによりまして、金融機関等からの借入金三千六百十一億円のうち二千百三十七億円の債権放棄を受ける等によりまして、建物資産価値見合いであります千三百十一億円まで債権額が圧縮いたします。これにより、年間支払い利息はこれまでの約六十億円から二十六億円程度にまで大幅に減少し、支払い利息が営業利益を上回るという、これまでの経営上の障害が解決されます。
 さらに、底地の現物出資による地代負担の軽減、地上系通信事業の民間事業者への事業譲渡の実施、不動産事業者との業務提携などによる戦略的な営業展開等を行うことで、一層の収益強化が図られると考えております。
 以上の結果、今後の見通しでございますが、平成十九年度当初には債務超過が解消され、今後、営業利益は七十億円から九十億円、経常利益は四十億円から八十億円を確保する予定でございます。
 また、圧縮された返済額千三百十一億円につきましては、年平均八十五億円のキャッシュフローを用いまして、毎年、元本五十億円程度を返済し、二十五年で完済する見込みでございます。
 こうした一連の取り組みにより、臨海三セクは経営基盤が抜本的に強化されることから、臨海副都心の企業集積の重要な拠点として、引き続き開発へのさらなる貢献が期待できるものと考えております。
 次に、持ち株会社グループの事業展開についてでございますが、本グループは、臨海地域において交通やエネルギー、ふ頭運営など、都民や企業を支える都市基盤を提供する各団体を経営統合するものでございます。
 東京港と臨海副都心を抱える臨海地域が、全体としてその機能や魅力の向上を図っていくためには、環境、防災、観光、そして交通ネットワークなどの諸課題を統一的に解決していく必要があり、今後、グループは、都や関係機関などと連携しながら、総合力を生かした複合的なサービスを行ってまいります。
 提供するサービスの具体的内容につきましては、来年一月に持ち株会社を設立後、グループ経営の基本方針を策定し、各団体との十分な調整を図りながら構築していく予定でございます。
 将来的には、臨海地域全体を物流機能と都市機能との調和のとれた成熟した地域に発展させていくため、このグループを、まちづくりの核としての役割を果たす信頼される企業体に育て上げてまいります。
   〔生活文化局長渡辺日佐夫君登壇〕

○生活文化局長(渡辺日佐夫君) 消費生活条例の改正に関する質問にお答えいたします。
 まず、悪質事業者を取り締まる手段と効果についてでございます。
 今回の条例改正では、国の法規制の対象となっていない取引において、消費者に虚偽の説明をしたり、声を荒らげて不安にさせ、契約を迫るなどの不適正取引行為を行う悪質事業者を取り締まるため、全国初となる禁止命令と罰則を導入いたしました。
 これにより、悪質事業者に対するより厳正な対応が可能となるだけでなく、指導の段階から、処分も辞さずとの姿勢で臨むことにより、悪質かつ巧妙化する手口の広がりを抑止する効果も期待できると考えております。
 また、被害の急速な拡大が懸念される緊急性の高い事案等については、速やかに行政処分の手続に入ることができるなど、迅速な対策が可能となると考えております。
 次に、条例改正の意義の積極的アピールについてでございます。
 今回の条例改正を実効あるものにしていくためには、ご指摘のとおり、改正の意義について、都民や事業者の十分な理解を得ることが必要でございます。このため、改正条例の施行までに六カ月余りの周知期間をとり、積極的にアピールしていく考えでございます。
 具体的には、都のホームページや「広報東京都」への掲載、各種説明会の開催など、さまざまな手段を用いて、区市町村を初め、消費者団体や事業者団体等に対し、幅広く周知を図ってまいります。
   〔水道局長御園良彦君登壇〕

○水道局長(御園良彦君) 水道事業に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、長期構想についてでありますが、この構想は、一千二百万都民が生活し、政治・経済の中心であります首都東京の水道施設を整備していくに当たりまして、これからおおむね四半世紀の間に行っていく整備の方向性を明らかにするとともに、都民へ発信していくことをねらいとして策定したものでございます。
 構想で明らかにしました十年後の姿といたしまして、八ッ場ダムの完成や、首都中枢機関及び主要な医療施設等への供給ルートの耐震化などによりまして、給水安定の向上を図ることとしております。
 さらに、平成二十五年度の利根川水系浄水場への高度浄水処理率一〇〇%達成など、一層安全でおいしい水の実現を目指しております。
 また、平成三十年代に大規模浄水場の更新が集中的に到来しますことから、着実に実施していくための施策の方向性を明らかにしております。
 今後、この構想を実現していくため、年内に策定予定の新しい経営プランで構想に掲げた各種施策を具体化し、都民生活と首都東京の都市活動を支える重要なライフラインとして、必要な施設整備を着実に進めてまいります。
 次に、公立小学校の直結給水化についてでございますが、公立小学校の水を飲む蛇口を直結給水方式に切りかえるモデル事業は、初年度であります十九年度には、区市町ごとに一校、計四十八校を予定しておりますが、ご指摘の趣旨を踏まえまして、翌二十年度までには、全体の約三割に相当する四百校を対象として実施してまいります。
 さらに、このモデル事業の実施状況や、各区市町教育委員会等の意向及び児童、学校関係者の意見などを踏まえまして、対象校の拡大を検討してまいります。
 また、子どもたちの水道に対する理解を深めるため、小学校を巡回して授業をサポートする水道キャラバンにつきましては、今年度から試行的に八十四校実施してきたところであります。その結果、実施状況が好評でありましたことから、今後、新規校の拡大を図るとともに、リピーター校も積極的に受け入れ、実施規模を拡大してまいります。
 こうした取り組みを積極的に推進することにより、水道に対する理解を一層深めるとともに、安全でおいしい水を蛇口から直接飲むという日本の水道文化を次世代に確実に引き継いでいきたいと考えております。
   〔環境局長村山寛司君登壇〕

○環境局長(村山寛司君) 土壌汚染対策についてのご質問にお答えをいたします。
 土壌汚染対策は、都民の健康の確保と生活環境の保全を図る上で重要な施策であるとともに、これを促進することは、都市の健全な発展や地域の活性化にとっても必要なものであります。このため、都はこれまで、幅広い分野の専門家の参加を得て検討を行いながら、事業者の負担軽減につながる低コストの処理技術や簡易な調査手法の普及に努めてまいりました。
 土壌汚染対策を一層促進していくためには、当該地域ごとの汚染の広がり方や地質、地下水との関係など状況に即して、効率的、効果的な対策を講ずることが重要であります。
 今後、こうした観点に立ちまして、業務の必要から有害物質を取り扱っている事業者の協力も得ながら、より詳細に実態や土壌汚染メカニズムの把握に努めまして、適切な調査分析方法や対策方法の開発の促進と普及に取り組んでまいります。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 二点のご質問についてお答えをいたします。
 産業振興の基本戦略の策定に当たっての基本的考え方と今後のスケジュールについてでございます。
 国際競争が激化する中で、東京の産業を発展させていくためには、効率性や生産性の向上に加え、新たな価値を生み出すイノベーションが重要であると認識しております。
 今回の戦略は、日本をリードしてきたこれまでの都の産業振興策を集大成した上で、東京の産業を新たなステージへ飛躍させるために、技術や人材に関する中長期的な施策の方向性を具体的に示すものであります。
 年明けの一月には素案を公表し、多くの方からご意見をいただき、年度内に策定してまいります。
 次に、中小企業支援についてであります。
 東京の産業力を強化していくためには、技術・経営の革新による新産業の創出と、しっかりした産業の土台づくりが重要であります。
 このため、環境、健康など今後高い成長が見込まれる産業分野における中小企業が中心となって実施する将来性の高い事業プロジェクトに対し、製品化、事業化を重点的に支援してまいります。
 また、産業の基盤を担う中小企業に対しては、これまで、制度融資や事業転換、再生に向けたリバイバル支援事業を展開し、支援してまいりました。今後ともこれら施策の周知に努め、事業効果を高めていくとともに、こうしたセーフティーネットの考え方に基づく資金供給や個別企業へのきめ細かな支援を充実強化してまいります。
   〔建設局長依田俊治君登壇〕

○建設局長(依田俊治君) 東京マラソンのコース沿いの歩道におけるバリアフリー化についてでございますが、東京オリンピックの前哨として位置づけられた東京大マラソン祭りを成功させることは大変重要でございます。
 そのためには、マラソンランナーが安心して走れるようコースを整備するとともに、多くの観客が安全に参加できるよう、コース沿いの歩道のバリアフリー化が必要でございます。
 コース沿いの歩道につきましては、既にバリアフリー化が一定程度完了しておりますが、今回、マラソンの開催に伴い、改めてきめ細かに点検し、勾配をさらに緩やかにする改善や、点字ブロックの拡充などを行っております。
 また、最寄り駅と、スタートとなる都庁前、ゴールとなる東京ビッグサイト、イベント会場となる日比谷公園や芝公園等を結ぶ歩道においても、安全で快適な歩行空間を確保するため、バリアフリー化を進めております。これらの工事は、マラソンコースとなる車道の整備とあわせて、来年一月には完了いたします。
 東京マラソンの成功に向け、都道の整備と管理を十分に行い、ランナーや観客など、すべての参加者の安全確保に万全を期してまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 住宅政策についての四点のご質問にお答えいたします。
 まず、条例改正の基本的な考え方についてでございますが、東京の住宅は、戸数が世帯数を一割以上上回っており、量的には充足しているものの、ストックの質の向上、住宅市場における透明性の確保、少子高齢化への対応などが課題となっております。
 これらを踏まえ、第一に、現在及び将来における住生活の基盤となる安全で良質な住宅ストックと良好な住環境の形成を図ること、第二に、都民がニーズに応じて適切に住宅を選択できるよう、住宅取引の安全確保など市場の環境整備を図ること、第三に、住宅におけるセーフティーネット機能を充実し、住宅に困窮する都民の居住の安定を図ること、以上を基本的方向として条例を改正するものでございます。
 次に、中古住宅の流通促進についてでございますが、良質な住宅を長期にわたり活用することは、環境に配慮したストック重視の住宅政策を展開していく上で重要でございます。
 こうしたことから、都は、中古住宅の流通促進を図るため、民間の関係団体等とともに、流通上の課題や対応策について検討をしております。
 これまでの検討結果を踏まえ、現在、中古戸建て住宅について、都民が安心して売買できるための確認事項や、契約上の注意事項等を整理しており、年度内を目途にガイドブックとして取りまとめる予定でございます。
 今後、その活用を図るとともに、中古住宅の流通促進に向け、不動産関係団体等との連携を強化し、市場の環境整備に努めてまいります。
 次に、都営住宅の耐震化についてでございますが、地震による建物の被害から都民の生命を守り、日常生活の安全を確保する上で、住宅の耐震性向上は重要でございます。
 本年、耐震改修促進法が改正され、平成二十七年までに住宅の九割以上の耐震化が目標とされたことも踏まえ、現在、都においても耐震改修促進計画を策定中でございます。
 都営住宅についても、この計画に基づき、今後、旧耐震基準で設計された住宅について、耐震化に向けた整備プログラムを作成してまいります。
 具体的には、建てかえ対象を除く約三千二百棟について、平成二十四年度を目途に耐震診断を行い、必要に応じて順次、耐震改修を実施してまいります。
 最後に、木造住宅密集地域を集中的に改善する取り組みについてでございますが、山手線から環状第七号線にかけて広がる木密地域は、道路や公園などが不足している上、宅地が狭小で、権利関係がふくそうしているため、建てかえが容易には進みにくく、防災上、脆弱な状況にございます。
 都は、これらの地域のうち、危険性が高く優先的に整備を行う地域を防災都市づくり推進計画で重点整備地域に指定し、修復型の木密事業や新たな防火規制などとともに、街路や公園などの基盤整備事業を実施しております。
 また、先導的な取り組みとして、東池袋地区などで延焼遮断帯の形成と沿道建物の不燃化を進める沿道一体整備事業を実施しており、来年度からは新たに十条地区においても重点事業として取り組んでまいります。
 今後とも、住民の協力を得ながら、地元区と連携し、効果的に事業手法を組み合わせ、木密地域の安全性向上に積極的に取り組んでまいります。
   〔病院経営本部長大塚孝一君登壇〕

○病院経営本部長(大塚孝一君) 都立病院における医師の確保、育成についてでございます。
 医師の採用環境が変化している中で、都立病院が安定的に医療を提供していくためには、ご指摘のとおり、若手医師を確保、育成する仕組みづくりが必要でございます。
 これまでも都立病院では臨床研修医制度を整備してまいりましたが、若手医師の育成策を強化するために、都独自の取り組みとして都立病院医師アカデミーを創設し、平成二十年度の開講を目指してまいります。
 この都立病院医師アカデミーでは、都立病院の豊富な臨床例を生かして研修カリキュラムを充実するとともに、指導医体制の強化を図ってまいります。
 また、研修から採用に至る一貫した育成システムや、他の公的病院などへの派遣・復職制度を導入するなど、処遇面での充実も図ることによりまして、次代の都立病院、公社病院の中核を担う質の高い若手医師の計画的な確保、育成に努めてまいります。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 福祉保健施策に関する七つの質問にお答えいたします。
 まず、都におけるがん対策推進計画についてでございますが、都民のがんへの不安を解消するためには、予防・早期発見対策の一層の推進や治療水準向上に向けた医療機関のネットワーク化に加えまして、患者、家族への情報提供や相談支援体制の充実など、総合的な対策を推進していくことが必要でございます。
 このため、大学病院などの高度な医療機関が集積しております大都市東京の特性を十分に生かしながら、今後設置を予定している、医療関係者や学識経験者、患者団体の代表などから成る協議会での議論を踏まえまして、総合的ながん対策推進計画を推進してまいります。
 次に、がんの予防・検診受診の呼びかけについてでございますが、都民をがんから守るためには、生活習慣の改善や、早期発見の機会となる検診の受診促進が極めて重要でございます。
 このため、都は、東京都健康推進プラン21後期五か年戦略において、がんの予防を重点課題の一つと位置づけ、普及啓発や検診に携わる人材の育成など、さまざまな施策を展開しております。
 特に、都においては乳がんの死亡率が全国で最も高いことから、ピンクリボン運動などを行うなど、広く都民に対しまして早期発見の重要性を啓発しております。
 今後も、がんの予防と検診受診の機運を一層高めるため、住民に身近な区市町村による取り組みを支援するとともに、職域を含めた広域的な普及啓発を健康保険組合等と協力し推進してまいります。
 次に、がん検診水準の向上についてでございますが、だれもが安心してがん治療を受けられるようにするためには、地域におけるがん医療のネットワークの拠点となる病院を確保するとともに、医療従事者への専門研修などを通じて、個々の医療機関の診療水準の向上を支援する仕組みを構築することが重要でございます。
 このため、高度かつ専門的ながん医療を提供するとともに、地域の医療機関への診療支援を行うがん診療連携拠点病院を、平成二十年度までに島しょを除くすべての二次保健医療圏に整備いたしまして、東京都全体のがん診療水準の向上を図ってまいります。
 次に、新たな包括補助事業についてでございますが、今回創設を予定しております福祉保健区市町村包括補助事業は、都が目指す福祉保健政策の実現を図るため、高齢者虐待防止や糖尿病予防など、都が提示する事業の中から区市町村が選択し、地域で実施するものでございます。
 これに加えまして、区市町村の主体性も生かせるものとするため、区市町村が地域の実情に合わせて独自に取り組む先駆的な取り組みも補助対象とする考え方でございます。
 このような柔軟な補助制度とすることによりまして、地域からの発想を生かしながら、大都市東京の福祉保健施策総体の向上を図ってまいります。
 次に、認定こども園に関する都独自の財政支援についてでございますが、認定こども園には、幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型の四つの類型がございます。お話しのとおり、国は既存の補助制度を一切充実することなく、各類型のうち、幼稚園、保育所の認可を受けた部分のみに財政措置の対象を限定しております。
 このため、都としては、認定こども園が大都市の多様な保育、教育等のニーズに柔軟に対応し、その機能を十分に発揮できるよう、国が財政措置を行わない部分に対しましても独自の補助制度を創設する予定でございます。
 次に、認定こども園の認定基準についてでございますが、認定こども園制度は、親の就労の有無にかかわらず利用できることや、直接契約の導入など、都が創設した認証保育所において、これまで全国に先駆けて実践してきた多くの内容が取り入れられたものでございます。
 今後、この認定こども園制度を都民ニーズにより的確に対応したものとするため、認定基準についても認証保育所の基準の考え方を積極的に取り入れまして、職員の資格要件や施設整備の基準を柔軟なものとしてまいります。
 最後に、民生・児童委員サポーターについてでございます。
 子育て不安や児童虐待等に加え、子どもが犯罪の被害者、加害者となる事件が多発しており、地域における子どもをめぐる課題が多様化、深刻化していることなどから、民生・児童委員の活動範囲も拡大し、対応がますます難しくなってきております。
 このため、子育て世代の三十代、四十代を中心とする地域の方を民生・児童委員サポーターとして活用しまして、子育てに関する相談支援や虐待の早期発見、学校等と連携した非行防止活動などに力を発揮していただくこととしたものでございます。
 今後、区市町村や町会、PTAなど関係団体と緊密に連携しながら、早期に都内全域にサポーターを配置し、多様な課題への地域の対応力の強化を図ってまいります。

○議長(川島忠一君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後二時五十七分休憩
   午後三時十六分開議

○副議長(木内良明君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十二番馬場裕子さん。
   〔百二十二番馬場裕子君登壇〕

○百二十二番(馬場裕子君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長にお伺いいたします。
 最初に、平成十九年度東京都予算編成にかかわる課題について何点か伺います。
 さきの月例経済報告では、消費に弱さが見られるという文言が加わったものの、景気は回復しているとし、日本経済は、月例経済報告上ではイザナギ景気を超えました。企業収益、雇用情勢ともに改善し、先行きについても、企業部門の好調さが持続しており、これが家計部門へ波及し、国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれるとしています。
 中長期的な展望においても、二〇〇八年度まで二%前後の伸びを続けた後、二〇二〇年度まで平均しておおむね一%台半ばとする予測も示されています。
 しかし、その一方では、川上のインフレ、川下のデフレというように、川上の資源、原材料価格が高騰する一方で、川下の製品価格は経済のグローバル化により低価格化し、企業経営の厳しさが増しているとの指摘もあります。
 こうした中では、当面の税収増は期待できるとしても、中長期的には不安定さはぬぐえず、また、現在の川上のインフレのもとでは、川上の資源、原材料価格の高騰を過度にあおるような公共投資には抑制的であるべきです。
 よって、平成十九年度予算編成においては、これまでの財政再建期に積み残してきたいわゆる隠れ借金、負の遺産を清算し、一部は基金に積み立て、強固で弾力的な財政基盤の構築に力を注ぐべきと考えますが、ご所見を伺います。
 予算の執行管理においては、これまで建設局が道路、橋梁、河川などについて先駆的に行ってきたアセットマネジメントについて、来年度は水道局も導入に向けた調査検討を行おうとしています。これは、施設を資産ととらえ、各施設の状態を客観的に把握、評価し、資産の状態を予測するとともに、いつどのような対策をどこに行うのが最適かを考慮し、計画的かつ効率的に管理する手法で、こうした手法に人口減少を加味した社会資本の総量に対するコントロールを加え、今後の右肩下がりの時代に社会資本を効率的、効果的に管理、更新していくことは、今後の都政全体にとっても重要な課題であると考えますが、ご所見を伺います。
 さて、この間、石原知事の海外出張を初めとした予算の使い方について、都民の批判、苦情が相次いでおります。
 例えば海外出張において、石原知事が必要な仕事のために規程に基づいて海外出張を行っているのであれば、何も問題はありません。しかし、その必要性に疑義が唱えられ、夫人同伴の規定がないことなど、関係者をも含めて規定額を大幅に上回っていては、必要な手続をしたとおっしゃっても、都民の批判は免れません。しかも、その時期が、知事自身が都財政の危機を訴え、財政再建のために各種予算を削り、職員の給与をカットしていた時期とあっては、都民を大きく失望させるものであります。
 知事は、事務局に任せている、規程はよく知らないし、それから外れているなら直さなければいけないと思うなどと語ったと報じられております。それはそれで事実でありましょうが、最終的な決裁責任者は石原知事自身であります。また、例えば知事の側近が、あたかも知事の命令であるかのごとく事務局に指示すれば、事務局はそれに従わざるを得ないでありましょう。事務局、職員が都民を視野に入れずに知事のために働けば、知事は裸の王様に見えてしまいます。
 いずれにしても、なぜこのようなことが起きたのかを知事みずからが真摯に検証し、正していかなければ、石原知事の都政運営に対する都民の不信感をぬぐうことはできません。知事の所見を伺います。
 次に、先日、東京自治制度懇談会の「議論のまとめ」が発表されました。そこで伺います。
 地方自治制度そのものの改革も視野に入れ制度改革を提言するとして、東京圏の自治体のあり方、大都市行政のあり方、国との関係の整理、税財政制度のあり方について検討する、これは、平成十二年十二月にまとめられた都政改革ビジョンⅠが、次のビジョンⅡを策定するために示したものです。以来六年の月日を経て、やっとこの「議論のまとめ」が発表されました。
 しかし、この懇談会は、東京都に助言、提言するために設置された懇談会であるはずなのに、今回は「議論のまとめ」でしかありません。六年にわたって棚上げとなっていた都政改革ビジョンⅡの策定がやっと棚からおろされると思っていたら、いまだ途中にとどまっており、棚からおろされるのかどうか定かでありません。
 都は何のためにこの東京自治制度懇談会を設置したのか、改めて伺うとともに、今回の「議論のまとめ」をどのように位置づけているのか伺います。
 現在、三年間の時限立法として国会に提出されている地方分権改革推進法案が成立すれば、この法に基づく地方分権改革推進委員会が発足し、三年間で実現すべきことが具体的に問われることになります。地方六団体が設置した新地方分権構想検討委員会は、この機会を第二期地方分権改革と位置づけ、このほど、分権型社会のビジョン「豊かな自治と新しい国のかたちを求めて」を発表しました。その中で、同委員会は、一日も早く意見、利害を超えて、地方六団体が詳細な工程表、ロードマップ、具体案をつくり、国民、国会、政府に対して投げかける必要があると訴えています。
 都は地方交付税不交付団体であり、それゆえに、自治体を代表して国に対して最も物がいえる自治体でありますが、残念ながら、この間の分権改革における都の位置は、四十七府県の中の一府県にすぎないものでした。鈴木都政が分権改革において主導的役割を果たしたこととは大きな違いであります。
 「孤立か連帯か―次なる分権改革と東京都の責任」、これはある雑誌に掲載された論文の見出しであります。私たちは、これまでにも繰り返し他自治体との連帯を求めてきましたが、今、都はどの道を選択しようとお考えなのか伺います。
 次に、新しい公の育成について伺います。
 都は、地方の自主自立と多様な主体が公を担う二十一世紀型の新たな行財政システムを構築するため、スリムで仕事ができる効率的な都庁の実現を目指すとしています。ここで仕事を分担する多様な主体は、都民や町会、自治会、企業、大学、NPOなどの民間で、都とさまざまな事業を通してかかわり合っています。しかし、それらの事業は、必ずしも新しい公に必要な協働意識、協力して働く意識の醸成や関係の明文化、対等な立場での協議、自立性の強化が伴っているわけではなく、真の協働関係はいまだ道半ばの状況です。
 都は、民間との間で相互に理解を深め、緊密なパートナーシップのもと新しい公を構築し、東京のより一層の活性化に取り組むべきと考えます。
 長い歴史を持つがさまざまな問題を抱える町会、自治会、高い専門性を持つが信用力や資金的困難などが課題のNPOなど、大都市がかかわる諸課題の克服に都が連携してかかわれる部分があります。都は、今後、これらの公を担う多様な主体の育成に取り組むべきと考えますが、知事のご見解を伺います。
 次に、地域力向上について伺います。
 このほど、都庁内のメンバーによる地域力向上方策検討委員会で検討されてきた八つのモデル事業が示されました。関係団体からのヒアリングや地域での協働を進めてきた区市町村からのアンケートなどをもとに事業が選定されています。この中には、連合町会、自治会などによる提案型事業も設定され、今後、審査委員会によって選定が行われると聞きます。
 都は今回、モデル事業を二年間実施した後、評価、分析を踏まえ、広く波及させる考えを持っていますが、それと並行して、大都市における地域力の向上や地域との協働などを区市町村や関係者と総合的に議論を行っていく検討会が必要だと考えます。
 大都市における町会、自治会の課題の一つに加入率の低下があります。そして、平成十六年版国民生活白書では、地域の活動に現在参加していないが、今後は参加したいと考える人は五割程度あるとしています。このうち、活動する時間がないと回答した人は三六・六%と最も高く、次いで、参加するきっかけが得られないこと一四・四%、身近に団体や活動内容に関する情報がないこと一一・三%となっていることから、きっかけづくりが重要な課題であると結んでいます。
 都は、こうした声をつなぐ仕組みづくりも検討することが必要と考えます。都の見解を伺います。
 NPOへの支援について伺います。
 NPO法が制定されてから、今月でちょうど八年になります。その後、認定NPO法人制度も導入され、国でも現在、NPO法人制度の見直しの議論が行われています。一方、昨年内閣府が実施した調査では、七割のNPO法人が課題として活動資金の不足を挙げています。NPO法人の資金基盤の強化が必要とされる中、来年度の都の重点事業で、NPOに対する融資制度を創設することが打ち出され、都政においてようやくNPOが認知され始めたと感じました。
 既に他県で融資制度が構築されている中、都は、つなぎの融資や事業拡大への資金など、需要に応じた使い勝手のよい支援策としていく必要があります。ことしの六月、地域の五十一団体から成る多摩NPO協会は、多摩信用金庫が開発したNPO事業支援ローンに連携して取り組むことに合意し、融資の際の審査業務に協会が協力することで融資の円滑化を図っていくことになりました。このことも一つの参考になるのではないでしょうか。
 新しい公のパートナーであるNPOの自立に向けた支援を求める上で、都の融資制度の基本的な考え方と仕組みなど、その見解を伺います。
 次に、社会的責任を果たそうとする企業への支援について伺います。
 株式会社のような民間企業においても、株主や顧客、取引先だけでなく、従業員や消費者、そして地域や社会など関係するすべての人たち、いわゆるステークホルダーに対して責任ある行動をとっていくという考え方、いわゆる企業の社会的責任、CSRが重要視されています。現在、大手金融機関などでは社会的信用投資というものが商品化されつつあり、また、大手製造業などでは、商品や資材を調達する基準を、グリーン調達から社会的責任調達に拡大する動きも見られます。
 都においても、入札・契約制度で社会的責任調達を実施することで、グリーン調達や最低賃金法など労働条件の確保、あるいは法律で努力義務が課せられている次世代育成支援の導入など、企業の取り組みが進むものと考えますが、ご見解を伺います。
 次に、まちづくりについて伺います。
 まず、住宅基本条例の全面改正についてです。
 私たちは、公共住宅こそが、良質な住宅ストックと良好な住環境の形成に向けた範を示すべきではないかと考えております。そのことにより、民間住宅への波及効果も期待できるのではないかと考えます。
 今後、都営住宅の建てかえを初めとする公共住宅の供給に当たっては、公共住宅ストックの質の向上という観点から、長寿命化、ユニバーサルデザイン化、環境性能の向上などのため、現行の設計基準や仕様を見直す必要があると考えます。また、良好な住環境の形成という観点からは、公共住宅の建物としてのハード面で地域の特性を十分に考慮するのはもちろんのこと、入居者が周辺地域と良好なコミュニティを形成しやすくするというソフト面においても、建物の計画段階から完成に至るまで、周辺地域との良好な関係を構築することが求められます。
 公共住宅が良質な住宅ストックと良好な住環境の形成に果たすべき役割について、ご所見を伺います。
 住宅市場の環境整備については、住宅取引の安全の確保や既存住宅の流通促進などが規定されますが、東京では、全世帯の四割弱が民間賃貸住宅に住んでいます。賃貸住宅市場においては、退去時の敷金精算や修繕などの管理をめぐるトラブルが多発しており、都が一昨年に敷金精算のルール、いわゆる東京ルールを賃貸住宅紛争防止条例として制定していることは、私たちも評価しています。
 しかし、それにもかかわらず、賃貸住宅に関するトラブルが減ったという話は耳にしないのが実情です。都民に対するルールの広報、周知の徹底、不動産業界とのさらなる連携強化など、積極的な取り組みが必要と考えますが、ご所見を伺います。
 民間住宅の居住の安定の確保については、高齢者や障害者などの民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に努めることが規定されます。特に、高齢者は賃貸住宅に入居しにくいといわれています。ある調査では、ことし四月現在、単身高齢者の入居を拒否している家主は全国で八・四%というデータがあります。平成十四年での一〇・七%に比べると減少していますが、まだまだ少なくないというのが現状ではないでしょうか。
 国には、こうした高齢者の賃貸住宅入居を支援する各種制度がありますが、建設戸数や制度の利用者数は伸び悩んでいるのが現状です。
 都でも、独自の制度としてあんしん入居制度を平成十三年に創設していますが、利用者数の伸び悩みから、昨年十月、地域の不動産店を対象とした申込窓口の拡大、利用料の値下げなど制度の改善を行っており、その後の一年間で契約件数の累計が二五%近く増加したとのことです。この伸び率だけを見る限り、制度改善の効果は着実にあらわれたようですが、実契約件数は二百一件にすぎません。
 拡大の進まない国の制度に対する改善提案や、広報、周知への協力、都のあんしん入居制度のさらなる改善方策の検討やPRの強化など、各種制度の一層の普及に向けた取り組みが必要と考えますが、ご所見を伺います。
 次に、木造住宅密集地域における防災性の向上についてです。
 十年後の二〇一六年には、我が国は本格的な超高齢社会を迎え、人口も減少に向かう時代になることが予測されています。そして、昭和五十六年施行の新耐震基準に従って建築された住宅も築三十年以上を迎え始める時期となり、新耐震基準の住宅についても、老朽化によるリフォームや耐震性の確保が問題となる時代となります。
 私たちは、そのような時代を迎える前、これからの十年間に木造住宅密集市街地の防災性の向上がどこまでできるかが、二十一世紀の超高齢社会における震災被害の深刻さを決定するといっても過言でないと考えます。
 安全・安心のまち東京を実現するためには、現在都が早期に防災性の向上を図ることとしている重点整備地域について、より一層の重点化を進め、防災性向上のスピードアップと面的な展開を図っていく必要があると考えます。その上で、木造住宅密集地域の残りの地域については、耐震診断・耐震改修促進制度を活用し、個別の住宅の耐震化を進めていく。このような二つの手法を並行して進めていくことが求められると考えます。
 木造住宅密集地域の整備における都が抱える現状の課題についての認識と今後の取り組みの方向性について、所見を伺います。
 次に、子育て支援策について伺います。
 認定こども園は、一言でいってわかりにくい制度です。現場を見れば、幼稚園と保育所、認証保育所という制度の違いによってやっていることが変わるわけではなく、個々の幼稚園や保育所によって違いがあるだけです。
 そこで、制度も一本化しようとするのがそもそもの発端でしたが、学校教育法と幼稚園を所管する文科省、児童福祉法と保育所を所管する厚労省の間の省益争いに決着がつかず、就学前の子どもを預かる場所は二つの法律に支配されたままです。
 認定こども園は、二つの制度を実施する箱を一本化することができますが、既存の認可保育所制度、幼稚園制度に加えた三元化となってしまいました。
 もう一段の改革が必要な制度ではありますが、私たちはこの制度を契機に、長期的には民主党が主張する幼保一本化が実現していくことを期待するものです。
 この東京には、休日や祝日、深夜や早朝に働き、都市の便利さを支えている親がいます。また、家庭にあって子育てに専念し、地域を守っている親もいます。こうした人が就学前の子どもを預けられる施設はとても限られていますが、認定こども園をきっかけに、対象年齢や開所時間が長い、必要に応じてだれでも預けられる場所を拡充していかなければなりません。
 国の制度では、従来からある認可以外の機能には財政的に裏づけがありません。そのため、認定こども園の類型によっては負担が大きく変わってしまうのです。国制度のままでは、認定を受ける園はほとんどないとまでいわれています。
 都としては、認定こども園が本来期待される機能を発揮できるよう、しっかりと対応すべきと考えますが、対応を伺います。
 利用者ニーズに応じた多様なサービスの一つとして、事業所内保育施設があります。認可外保育施設ですが、仕事と家庭の両立支援策として国補助が行われています。しかし、国補助はサンセット方式で、時限が切れた後、安定して保育所を運営することができないなど、支援策としては不十分な面もあります。
 このような中でも、最近、資生堂が汐留に開設した保育所を初めとして、都心のオフィス内に事業所内保育所を設置する企業が出てきました。優秀な社員が出産、育児により流出するのを食いとめるためというのがその理由です。
 平成十五年七月に制定された次世代育成支援対策推進法により、国や自治体、企業には、仕事と子育てが両立しやすい職場環境の整備が求められるようになりました。企業にとっては負担が重いですが、不足する保育所の単なる補完ではなく、従業員の育児と仕事の両立を支援することに重要な役割を果たしています。
 こうした事業所内保育施設については、都としても積極的に支援していくべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次世代育成支援に向けて、若年者の雇用不安を解消していくことも重要な課題です。
 昨年の国民生活白書でも、出生率が低下している要因として、結婚しても子どもを多く持てない夫婦がふえたことを指摘し、背景にパートやアルバイトで生活する低所得の若年者の増加があると分析しています。また、経済力に不安を抱える若者が増加することにより、若年者に占める未婚者の割合がふえて少子化を加速させることなどもいわれています。
 低所得ゆえに結婚できない若者、低所得ゆえに結婚しても子どもを持とうとしない若者への対策は急務です。特に、バブル経済の崩壊以降、民間企業での正規社員の採用が極端に減らされる中で、毎日を就職活動に費やしながらも、フリーターなどにならざるを得なかった若者たちに対しては、社会の責任で就職支援をしていくべきではないでしょうか。
 年長者のフリーターも含めた若年者の雇用対策について見解を伺います。
 次に、教育におけるセーフティーネットについて伺います。
 まずは、いじめについてです。いじめがあっても何もしない、いじめはないとしらを切る学校に、子どもを持つ親はとても怒り、そしてまた嘆いています。
 問題を深刻にしているのは、人をいじめてはならないという教えが、いつの間にかいじめはあってはならないという鉄則に変わってしまい、いじめによる自殺者ゼロという調査結果がまかり通る文部科学省という役所、ひいては学校の体質です。
 現実の社会では、ウマの合わない人ともつき合う知恵、度量を持たなければ生きていけません。ところが、学校や教育界では、みんな仲よく、いじめはあってはならないとなってしまいがちです。こうした、時に建前主義に過ぎる面が、いじめへの対応力を低下させているのではないでしょうか。
 いじめがあった場合には、まず隠さないこと、そして、そのためには、学校や教育委員会が組織として責任を持って解決に努力することが必要です。問題のあるなしではなく、いかにして迅速に察知するか、適切な対処ができるかが問われなければなりません。
 文科省の、全国でいじめによる自殺者ゼロは、東京のゼロでもあります。いじめの現実を糊塗するような調査結果といわれても仕方ありません。今後、都教委はいじめにどのように取り組むのか伺います。
 去る十一月二十九日、政府の教育再生会議において、いじめに関する緊急提言がまとめられ、いじめた生徒への懲戒として、社会奉仕や別教室での教育が盛り込まれました。社会奉仕や別教室での指導そのものを否定するわけではありませんが、そこで肝心なのは、いじめた子が同じことを二度とやらないようにすることです。
 同級生をいじめた、この行為の責任は本人、子どもですが、その過ちを繰り返させないことには、大人の責任でしっかりと取り組まなければなりません。社会奉仕活動をする中で、みずからの行いで何が起きたのか、本当の意味で気づき、悔い改めるようにするには、よほどの思慮を持って丁寧なプログラムをつくり上げなければ、単なる罰になってしまいます。
 事の性質は全く同じではありませんが、子どもや高齢者への虐待、またDV、配偶者からの暴力の加害者にも、暴力や傷害の罪を罰するだけではなく、繰り返させないための加害者更生プログラムが研究され、各地で実施されています。他者への尊敬、コミュニケーション能力、他者との協働を学び、暴力への衝動をコントロールする術を学ぶことで、新たな被害者を出さないようにするのです。教育再生会議のような短絡的な懲戒では、大人の責任は果たせないと考えます。
 いじめについて、各所で議論が起こっていますが、知事の所見を伺います。
 次に、日本語指導が必要な子どもへの支援についてです。
 日本語指導が必要な子どもとは、帰国子女や来日外国人などです。義務教育である小学校、中学校までは日本語学級があり、指導が行われています。
 しかし、高等学校の段階では、入試試験における配慮はなされておらず、入学後の支援も十分とはいえません。東京には、毎年毎月、数多くの外国人が来ており、中学三年生、高校一年生で日本に来ても、それぞれの学齢に合わせた支援が必要です。ところが、現状では、国際高校の二十五人というごくわずかな枠を除いては、他の生徒と全く同じ条件で入試に合格しなければなりません。
 入学試験での配慮、入学前の春休みや入学直後に集中して日本語指導を行うなど、日本語の問題をクリアできれば、日本に来るまでの教育でつけた学力を継続して伸ばすことができます。日本語能力を身につけ、高校教育を受けられるようにすることは、卒業後、よき市民として生活していくことの助けとなり、それは東京にとってもプラスになるのです。
 多言語化が著しい現在、個々の学校だけでの対応が難しいことは理解しますが、地域の力をかり、都内の支援ネットワークを構築することも可能でしょう。
 入学枠の確保を含め、日本語指導を必要とする子どもの高校入学、卒業を支援すべきと考えますが、見解を伺います。
 特別支援教育について。
 障害のある人もない人も、ともに生きる社会をつくっていく上で欠かせないのが教育のバリアフリー化です。我が国においては、特別支援教育として、分離教育から統合教育へ向けて変革を行おうとしています。
 十九年四月の特別支援教育実施に向け、かぎとなるのは、特別支援コーディネーターが機能するかどうかです。昨年、国においては、特別支援教育における定数増が認められませんでした。早くも特別支援教育の成否に危険信号がともっているのではないでしょうか。
 これまで全く存在しなかった仕事を担う人材を、来年四月から各学校に一人配置しなければならず、なおかつ国では定数を措置しない、すなわち何の財政措置もありません。
 こうした中、特に特別支援教育についてのノウハウに乏しい小中学校での実施が大きな課題です。都においては、小中学校における特別支援教育の実施に向け、どのように取り組んでいるのか伺います。
 次に、障害者施策について伺います。
 自立支援法の円滑な運用のためとして、国においては低所得者に対する四分の一の負担軽減措置や事業者の減収に対する激変緩和措置などを行う見込みです。
 民主党が法案作成時から指摘してきたことでもあり、十月に行った緊急提言を踏まえ、所得の低い障害者に対して負担軽減を行うこと、そもそも無理のあった運営費補助への日割り方式の欠点を補う予算が計上されることは、政府がみずから自立支援法の欠陥を認めたものとして、素直に評価するものです。
 しかし、経過措置にとどまらず、制度自体を見直し、しっかりとした対応を盛り込まなければ、真の対応とはいえません。また、自己負担の前提として必要な所得保障を一日も早く実現する必要があります。
 ところで、十月一日の本格実施のため、利用できるサービスを決定するための障害区分認定がすべての区市町村で行われました。関係者におかれましては、十月の本格施行をめぐり、事前の準備から事後の対応まで、いまだ多忙を極めておられます。こうした精力的な仕事に敬意を表するものでありますが、課題についてのみ申し上げます。
 障害者の生活を大きく左右する障害区分認定についてです。
 都は先日、状況調査結果を発表しました。この調査によれば、知的・精神障害者の四割以上が、一次審査判定結果が二次審査で上方に変更されています。二次審査では、医師による意見書と特記事項を参考に、一次判定結果について合議し、区分が決定されます。一次判定で調査員が知的や精神等の障害による特性をよく理解し、特記事項を記入できるかどうか、そして二次判定段階に特記事項の意味をきちんと読み取れる委員がいるかどうかで結果が大きく異なります。
 適切な判定が行われるよう、都もしっかりと指導する必要があります。今後どのように対応するのか伺います。
 次に、心身障害者扶養年金について伺います。
 本制度については、去る十月二十七日、石原都知事の諮問に対し、東京都心身障害者扶養年金審議会から廃止の最終答申が出されました。
 最終答申では、運営者である東京都の責任は重いとした上で、扶養年金の利用者、利用していない障害者、一般都民、それぞれの立場について考慮し、すべての人にとって許容し得る限界点を示したと述べられており、まさに苦渋の選択であったものと思います。
 一方で、制度の利用者から、長期間無理をして払い込んだ制度を突然廃止するといわれても、到底承服できない。自分はよいが、これからの人にも同様の制度が必要だとの指摘が依然強いのも事実です。ここに至った経緯も含め、今後の対応についてはできる限り説明の機会を設けるなど、理解を得る努力を続けていただきたいと思います。
 また、これにかわる全国制度への加入を確実にするとともに、都制度廃止時期と全国制度加入にずれが生じた場合には、はざまで不利益をこうむる方が出るおそれもあります。都としてしっかりとした対応をする必要があります。ご所見を伺います。
 次に、消費生活条例の改正について伺います。
 高齢者や知的障害者をねらった悪質かつ高額な被害が後を絶ちません。次々と新たな手口で襲いかかってくる悪質事業者に対する厳しい対処が求められています。
 今回、悪質事業者への規制強化ということで、行政処分と罰則を導入するわけですが、これを実効あるものとするには、悪質事業者に対する立入調査や証拠資料の捕捉など、今まで以上に迅速かつ的確な現場対応が求められます。
 それには、取引指導に当たる職員の技量を一層高めることが必要となりますが、どのように取り組むのか伺います。
 また、悪質事業者の手口が巧妙化し、消費者トラブルがふえている現状を見ると、新たな消費者被害に対し、相談処理、被害情報の発信、事業者調査などについても、都全体としてのレベルアップが欠かせません。そのためには、情報の収集提供体制において区市町村との連携を格段に強化する必要があると思いますが、そのための具体的な取り組みについて伺います。
 さて、このたび国では、シュレッダーによる幼児の指切断などの悲惨な事故を受けて、消費生活用製品安全法の改正が行われ、生活用品のメーカーや輸入業者に対し、事故があった場合の国への報告が義務づけられました。
 しかし、生活用品の事故では、消費者が自分の不注意だったと考え、メーカーに伝えないことも多くあると見られます。メーカーを通じて事故情報を把握しようとする国の取り組みだけでは、小さな事故が把握し切れないおそれがあります。
 六本木ヒルズの自動回転ドアの事故を調査した工学院大学の畑村氏は、この種の事故には、一つの重大事故の裏には二十九件のかすり傷程度のけががあり、その裏には三百件の冷やりとした体験が存在するという労働災害の経験則、ハインリッヒの法則が見事に当てはまったと指摘しています。小さな事故は大事故の予兆と考えて安全対策を行うことは、重大事故を防ぐ上で非常に有効だと考えます。
 都としても、国の取り組みでは把握し切れない身近な事故情報を収集し、事故予防に役立てるためのサーベイランス、調査監視の取り組みが必要です。消防、病院など、事故情報が集まる現場と連携して情報収集することが有効と考えますが、具体的な取り組みについて伺います。
 次に、文化行政について伺います。
 さきの第一回定例会において、民主党は、都が芸術文化振興において担う役割は、若手の育成だけでは語り切れない、上海や韓国が台頭する中、東京がアジアアートシーンのハブとなるためにはどのように取り組むのかと伺いました。
 その際、知事は、都の役割について、新しい創造的な文化を生み出し、発信するための環境整備と、都の魅力と都市のイメージを高め、歴史と文化を次代に継承することとし、今後アートカウンシルを設置して、東京ならではの先進的な文化政策をしていくと答弁しました。
 都の芸術文化振興には、若手の育成だけにとどまらない、広範な視野に立った芸術文化振興、特に伝統文化の継承についてもしっかりと取り組む必要があります。
 評議会は、知事の附属機関として設置されます。設置のための条例改正案の提案に当たり、評議会にどのようなミッションを課し、都の文化振興施策をどのように展開しようとの考えなのか、さらに具体的にお聞かせください。
 さて、さきの所信表明で、石原知事は、トーキョーワンダーサイト青山について述べましたが、若手芸術家の育成に取り組む、その意図は評価いたします。そのために、NPOの法人などを設立し、寄附によりトーキョーワンダーサイト事業を展開しているのであれば、何の問題もありません。その事業を知事の知人やご子息が担っておられれば、それは高い評価を得ることとなったでしょう。
 しかしながら、それが都民の税金、公費によって賄われ、お茶の水、渋谷の一等地、青山の一等地を使用するということであれば、人事も費用の支出も厳正に行わなければなりません。それが、人事は知事の知人夫妻とご子息、費用の支出はずさんとあれば、都政の私物化といわれても仕方がありません。
 知事は、余人にかえがたいと述べられました。確かにご子息は、父親である石原慎太郎氏にとっては余人にかえがたいでしょうが、都知事である石原慎太郎氏が公的業務に知人とご子息を充てたとあっては、世論の批判にはたえられません。こうしたことが東京芸術文化評議会の人選にまで及ぶのであれば、都政の私物化もきわまることになってしまいます。
 知事みずからがトップダウンで進めている事業と力を入れて発言されているこの事業については、今後の人事や運営について知事みずからに伺わざるを得ません。李下に冠を正さずです。知事のご所見を伺います。
 次に、新銀行東京について伺います。
 十一月三十日、新銀行東京の中間決算が発表され、百五十四億円の赤字を計上したことや、中小企業への融資も依然進んでいないことが明らかとなりました。石原知事は、十二月一日の定例記者会見で、ちょっと思惑違いがあったなどと述べられましたが、都民の税金が一千億円も投入されているわけですから、思惑違いでは済みません。
 私たちは、二〇〇四年三月の代表質問でも、新銀行のターゲットとなる中小企業群への融資は、都市銀行や地方銀行などの金融機関の主戦場になることが予想されるとして、それでもなお、新銀行設立の意義は変わらないのかとただしてきましたが、石原知事は、都市銀行などの取り組みは、規模も小さく、融資対象も優良な企業が中心だと反論していたではないですか。
 また、石原知事は、これからちょっと違う業務を展開しないといけないと思うと、路線の転換ともとれる発言をしていますが、私たちは、中小企業対策という当初の設立目的で事業が立ち行かないのであれば、民間への売却も含めて、新銀行東京のあり方を早急に検討すべきだと考えます。一千億円の出資、信頼して預金している多くの都民に向けて、石原知事として十分な説明がなされなければなりません。
 知事の新銀行東京に対する評価と今後の事業展開についてご見解を伺います。
 また、石原知事は、株主総会で立て直すための知恵を出そうとも述べています。私たちも、技術力や将来性にすぐれた中小企業を総合的に支援していくためには、協力を惜しむものではありません。
 しかし、ことしの予算議会において、例えば新銀行東京の資本の関係がどのようになっているのか、あるいは融資の商品別の実績はどのようになっているのか、あるいはATMが設置費用に比べて効果的に機能しているのかなど、私たちが質問をしてきたことに対して、都はさまざまな理由をつけて、こうした情報の公開を拒んできたのです。
 銀行をつくるまではマスタープランを示すなどして議会に説明をしておきながら、会社設立後は説明責任を果たさないのでは、それこそ協力してくれるなといっているのに等しいのではないでしょうか。
 新銀行東京の経営内容、事業内容の公開について見解を伺います。
 次に、臨海副都心開発について伺います。
 今定例会には、臨海三セクの民事再生法の手続に伴う債権放棄の事件案などが提案されています。今回の民事再生手続、いわゆる破綻については、私たち都議会民主党はこれまでも責任の明確化と原因の究明を主張し、またビル事業についても、都が関与して継続していくことに対する疑問を投げかけてきました。
 責任論については、石原知事は、国のせい、バブルのせいだと一貫して繰り返していますが、それは余りにも無責任ではないでしょうか。石原知事は、一九九〇年の日米構造協議の合意にかこつけて、しばしば私たち民主党の小沢一郎代表のことを批判されますが、他党の党首を批判するのであれば、まずみずからの行動を振り返るべきです。
 平成三年四月、この年の予算議会で臨海関連の予算が凍結されました。迎えた都知事選挙で鈴木知事が四選を果たし、その結果、ビル事業では、計画されていた五棟のフロンティアビルのうち三棟が建設され、テレコムセンタービルにもゴーを出したのです。
 私たちは、政治家として、政治的な俎上に上ることの多かった臨海副都心開発について、もっともっと関心を持って総括する必要があるのではないでしょうか。
 特に、石原知事は、当時の鈴木知事の四選を党紀に逆らって積極的に支持した一人でもあり、この鈴木四選が、結果としてビル事業の見直しを最小限にとどめ、現在に至っていることを考えるならば、国のせい、バブルのせいだと他人事のように語るのではなく、当時の政策判断に対する政治的な責任の所在についても言及する必要があるのではないでしょうか。
 今回、臨海三セクの債権放棄を提案するに当たり、石原知事はこの責任の所在についてどのように認識していらっしゃるのか、伺います。
 債権放棄さえすれば、もう二度と都民が失敗のツケを払うことはないのでしょうか。
 都は、経営安定化策を策定した平成十年にも、事業継続に確かな見通しがついたといっていました。中間見直しを行った平成十五年にも、計画を上回って経営改善が進んでいると答弁していました。昨年九月の段階でも、金融機関は臨海三セクを支援する、あるいは経営改善に一定の成果を上げているなどと述べていました。
 大丈夫だ、大丈夫だと繰り返してきた結果が今回の破綻という結果だったということを踏まえれば、何が問題であったのかの原因を究明し、それをどのように再生計画の中に生かしているのかといったことを示すべきだと考えます。
 少なくとも、各年度ごとの収支見通しや返済計画を明らかにするなど、具体的な根拠を示さなければ、今度こそ大丈夫だといわれても信用できるものではありません。再生計画の実効性の担保について見解を伺います。
 三セクのビル事業について、私たちの主張に対して、都は、臨海副都心開発の先導的役割を果たしているとか、地域冷暖房などの供給処理施設が地下に併設されているなどとして、平行線が続いています。
 しかし、そもそも思い起こしてださい。臨海建設株式会社は、当時の臨海開発の工事に関する膨大な積算、発注を民間からの出向職員に担わせるための受け皿となる第三セクターであったこと、また、フロンティアビルの建設は、その三セクに収益事業を行わせるための事業であったことを。さらに、テレコムセンタービル建設の発端となった昭和六十年、当時の鈴木知事が第一回世界テレポート連合創立総会で打ち出したテレポート構想が、もはやどれほど今日的でないものかを思い起こしてください。
 時代とともに役割も変わります。臨海副都心開発が総仕上げに向かっている中、また、官と民との役割の見直しが進むなど、社会経済状況は大きく変化しています。臨海三セクは、引き続き、その存在意義を検証し、団体の将来のあり方について不断の見直しを行っていくべきと考えますが、ご所見を伺います。
 質問は以上ですが、本日の定例会の冒頭で知事は次期への続投を表明されました。ただいま私の質問でも数件取り上げましたが、選挙までの間、今まで二期八年の総まとめをあらゆる機会に知事に問うことになります。都民に選択の情報を提示することが議会の役割と考えます。
 知事及び関係局長の真摯な答弁を求め、以上で都議会民主党を代表しての質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 馬場裕子議員の代表質問にお答えいたします。
 平成十九年度予算編成についてでありますが、東京はさまざまな課題を抱えておりますけれども、最たるものの一つは、三十年以上放置され続けてきた外環道の整備でありまして、立ちおくれた状況にある道路、港湾などの整備を加速させる必要があります。
 したがって、今後の都政において、都民生活の安全確保など、直面する課題だけではなく、都市インフラの整備や災害に強いまちづくりなど、東京の将来を見据えた施策への積極的な取り組みが求められております。
 一方、都財政は着実な回復を続けておりますが、隠れ借金や負の遺産など、課題も残っておりまして、完全な体質改善にはまだ至っておりません。
 こうしたことから、十九年度予算においては、中長期視点を重視して、将来への投資を積極的に行うと同時に、隠れ借金の解消などマイナス面の払拭にも精力的に取り組み、社会基盤の整備と財政基盤の強化という二つの課題を両立していきたいと考えております。
 次いで、海外出張についてでありますが、既に会見の場などでも説明してきましたとおり、出張に関する事務処理については、事務局がルールにのっとって適正に行っており、私の方から条件や注文をつけたことは一度もございません。正すべき点があれば、早急に正していきたいと思います。
 しかし、行政という仕事は、毎日机にしがみついているだけでは何もできません。現場に直接出向いて自分の目で確かめてこそ、斬新なアイデアも施策も生まれてくるのであります。
 例えば、横田の共同使用などについても、ワシントンで、知己である幾つかの調査機関を活用して、多角的なアプローチをし、問題の促進に役立ってきたと思いますし、ガラパゴスの出張やアメリカの国立公園などに足を運んだことが、実は小笠原や多摩の貴重な自然を守るレンジャー制度に結実したのでありまして、宝石のようで、しかし結果として荒れ果てた南島も、ガラパゴスの印象を起点にして施策を講じたために見事によみがえってまいりました。また、ロンドンでのトップ会談を通じて、温暖化を阻止する世界の諸都市の輪に、むしろ向こうから請われて参加するようになりました。
 また、国内においても、ディーゼル車の排気ガス規制では、かつて環境科学研究所を視察したときに、一日にペットボトル十二万本の粒子状物質がディーゼル車から吐き出されているというその実態を、ボトルに詰められた粉を見ることで、眺めて慄然として、あの施策を思いついたわけであります。
 ですから、これからも、国内外を問わずさまざまな現場にどんどんと出向き、現場主義を貫いてまいります。
 地方分権の改革についてでありますが、中央集権の統治システムが歴史的使命を終えた今、地方がみずからの課題をみずからの権限と責任で解決し得る地方分権改革の実現が必要であることを、全国知事会においても強く主張してまいりました。
 一昨年の全国知事会議では、義務教育費国庫負担金をめぐる議論で意見が分かれましたが、小異を捨てて大同につくという立場から、時の小泉総理に対して分権改革の推進を強く迫っております。
 また、八都県市首脳会議においても、首脳全員で協議し、国に対して、分権改革の推進を求めるアピールを再三行ってきております。
 しかし、これまでの国のいわゆる三位一体改革は、省益を墨守しようとする中央省庁の抵抗などによりまして、終始数字合わせに終わっておりまして、国と地方の役割分担のあり方など、地方分権改革の本質的議論が一向に行われてきませんでした。
 今後も、国に対して、真の地方分権改革を実現するよう、他の自治体とも連携して強く働きかけてまいります。
 次いで、新しい公についてでありますが、かつて福沢諭吉が、「立国は私なり、公に非ざるなり」と訴えたとおり、地域を思い、国を思う個々の人間、私の集積こそがまさに公を築くわけでありまして、日本は、明治の太政官制度以来続いております官尊民卑の発想からいまだに抜け出ずにおりますが、これからは、社会全体の利益につながる活動に多様な主体が積極的にかかわる仕組みをつくり上げていく必要がございます。
 今後とも、都は、二十一世紀にふさわしい新しい公の形を目指して、多様な主体の育成に取り組んでいきたいと思っております。
 いじめについてでありますけれども、いじめは、どの学校でも、どのような集団でも起こり得るものでありますが、子どもたちには思いやりの心を持ち、たくましく育ってもらいたいと思います。
 そのため、学校はもちろんのこと、家庭が責任を持って子どもの正義感や倫理観などをはぐくむことが必要であります。また、地域の大人が、我が子にも他人の子どもにも毅然とした態度で接することも必要であると思っております。
 次いで、東京文化評議会の人選についてでありますが、評議会は、東京の芸術文化を一層振興していくため、外部の専門家を集め、具体的な提案や知恵を集結する場として設置するものであります。
 今後、この評議会を東京の芸術文化振興の頭脳部と位置づけ、そこから得られる独創的で斬新的な提言をもとに、東京の文化的な魅力のさらなる向上を目指してまいります。
 これまでも、文化行政を進めることに当たり、写真美術館や現代美術館などの運営を民間の卓抜した経営者に任せるなどして、外部の人材を適切に活用し、大きな成果を上げてまいりました。
 評議会の人選に当たっても、我が国が世界に誇る当代きっての第一人者を、美術、音楽、建築、伝統芸能などの分野からえりすぐり、頭脳部にふさわしい人材として活用していきたいと思っております。
 なお、トーキョーワンダーサイトについてでありますけれども、これは、適切な行政手続のもとに、限られた世界でありますから、ごく限られた、しかも能力のある人材の協力をもとに行っておりまして、そういう意味で、現代アートに精通した人材を館長に起用し、海外においても、若手芸術家の育成支援の拠点として、既に高い評価を得ております。
 ぜひご認識願いたいんですが、いわゆるコンテンポラリーアート、現代美術というのは、非常に世界が狭くて、まだまだ日本では未成熟であります。しかし、どの国でも、進んだ近代都市は、いわゆるコンテンポラリーアーチストをさまざまに起用しまして新しいまちをつくっているので、これから東京が未来的な都市として、環境も整備し、魅力のあるまちとして育てていくためにも、現代芸術家たちの協力というのは不可欠でありまして、今さら丸の内に日本画を飾るというのはとてもミスマッチで、とてもそんなことはできません。
 現に、丸の内で先般、形の決まった牛に、それぞれの現代芸術家に彩色してもらいました。その中にはワンダーサイトから育った作家が何人かおりましたが、そういう形でこれからもこの事業を大いに活用して、東京の環境整備に努めていきたいと思います。
 お話しのような指摘をされるいわれは一切ございません。
 新銀行東京についてでありますが、新銀行東京は、これまでに一万件以上の融資、保証を行ってきましたが、その九割以上は赤字企業を含む中小企業に対するものでありまして、中小企業の金融において重要な役割を果たしてまいりました。
 ただ、当初、かなり大きな銀行から来られた責任者たちが、中小企業の借り手としての評価、見きわめというものはなかなか困難でありまして、その部分がかなり焦げついた節もありますけれども、いずれにしろ、経営環境の厳しい中小企業にも融資を行ってまいりました。
 しかしながら、収入の確保や不良債権の抑制、経費の削減など、経営面においてまだまだ思い切り改良する点がございます。今後とも、新銀行東京が中小企業支援に軸足を置きながら、改善を進めつつ積極的な事業展開を行うように、知恵を出すべきところは出し、必要な働きかけを行ってまいるつもりであります。
 次いで、臨海三セクの民事再生についてでありますが、私が知事に就任しましたときは、臨海副都心開発はバブル崩壊の直撃を受けて、進むも地獄、退くも地獄という状況でありました。しかし、一回出てしまった船を途中で沈めるわけにはいきません。難局を打開し、開発をやり遂げることが行政の責任であると受けとめ、ひるむことなく取り組んでまいりました。
 都も、いろいろ工夫をし、腐心し、知恵を出してやってまいりましたが、臨海三セクもこれまでさまざまな経営努力を重ね、その改善の成果を上げてまいりましたが、借入金の完済に長期間を要することや、現在及び将来の金融情勢などを総合的に勘案しますと、都民に一定の負担は生じますが、今この時点で民事再生による経営再建を決断することが、とり得る最善の方策と判断いたしました。
 民事再生後の臨海三セクは、持ち株会社グループのもとで今後も有効に活用し、総仕上げの段階に入った臨海副都心開発を一層強力に推進してまいります。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 教育に関する三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、いじめ問題への今後の取り組みについてであります。
 いじめは決して許されないことでありますが、どの学校でも起こり得るものであるという前提に立ちまして、学校教育に携わるすべての関係者が改めてこの問題の重大性を認識し、日ごろからいじめの兆候を把握し、迅速に対応できるようにすることが重要と考え、これまでも対処してきたところでございます。
 十一月八日から十二日まで実施いたしました、いじめ等問題対策室の緊急電話相談では、子どもや保護者からの相談のほかに、教職員の不適切な対応、家庭の教育力の向上の必要性など、さまざまな意見が寄せられました。
 今後、これまで都教育委員会が蓄積してきましたいじめ問題の解決の方策に加えまして、緊急相談の新たな相談内容等を整理分析して資料にまとめ、教員研修だけではなく、保護者会等におきましても活用するよう働きかけてまいります。
 次に、日本語指導を必要とする子どもへの支援についてであります。
 都教育委員会では、国際高校におきまして在京外国人を対象とした入試を実施しておりまして、また、他の都立高校におきましても、日本人と同様に、応募資格を満たしていれば、外国人生徒が受検し、入学することは可能であります。さらに、都立高校への入学後は、一人一人の生徒の日本語の習熟度に応じまして、他の生徒とは異なる学習内容によります個人指導や放課後等の補習授業を行っております。
 なお、国際中等教育学校として平成二十年度に設置を予定しております立川地区中高一貫六年制学校におきまして、一般生徒とは別に一定の枠を設けまして、帰国生徒及び在京外国人生徒についての新たな受け入れ体制を確保してまいります。
 次に、小中学校におきます特別支援教育の実施に向けた取り組みについてであります。
都教育委員会としましては、平成十六年度から本年度まで、四区市におきまして特別支援教育体制モデル事業を実施し、特別支援教育コーディネーターの具体的な役割、校内委員会など校内体制の整備、専門家、関係機関と連携した支援、個別の教育支援計画の作成などの方策につきまして成果を得ております。
 これらの成果を区市町村教育委員会に提供するとともに、区市町村との連携によりまして教員研修を充実するなどして、特別支援教育コーディネーターを初め、すべての教員が特別支援教育についての理解を深めるよう取り組んでまいります。
 今後とも、学校教育法改正後の国の動向を注視しながら、小中学校におきます特別支援教育のさらなる推進について検討してまいります。
   〔財務局長谷川健次君登壇〕

○財務局長(谷川健次君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、社会資本の効率的、効果的な管理、更新についてでございますが、大都市東京が必要としている社会資本の整備はいまだ十分といえる状況ではなく、首都圏の大動脈となる三環状道路や国際競争力を高める港湾施設の整備、集中豪雨に対する河川の改修などを着実に推進していく必要がございます。
 一方、高度成長期やバブル期に整備された社会資本や大規模施設などが更新時期を迎えていることから、その財政需要への対応は都政の重要な課題であり、アセットマネジメントの実施などにより更新経費の平準化と縮減を図り、効率的、効果的な管理に努めていくことが大切であると考えております。
 人口減少社会にあっても活力ある東京を維持するため、必要な社会資本を効率的、効果的に充実し、維持していくことが都の重要な責務であると認識しております。
 次に、契約制度における社会的責任調達についてでございます。
 環境や福祉などの政策課題の解決に寄与するような社会的責任に取り組む企業から製品やサービスを調達することには意義があると認識しております。
 これまでも、環境負荷ができるだけ小さい製品やサービスを選択して購入するグリーン調達、ISO認証取得者に対する格付の際の加算措置、障害者の多数雇用企業への優先指名など、企業の社会的責任に着目した措置を行っているところでございます。
 今後とも、公正性、競争性の確保を基本としながら、都の政策課題を踏まえた調達の方法について、さらに検討を進めてまいります。
   〔知事本局長山口一久君登壇〕

○知事本局長(山口一久君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京自治制度懇談会についてでありますが、東京自治制度懇談会は、大都市制度や道州制など、東京をめぐる地方制度の課題や改革の方向について調査検討する目的で設置されたものでありまして、今回の「議論のまとめ」は、昨年九月発足以降の議論を取りまとめ、東京都に対し助言、提言を行ったものであります。
 真の地方分権を実現するため、今後、懇談会への助言、提言を踏まえ、国の検討の動向も見据えつつ、都としての考え方を取りまとめ、国に対して主張してまいります。
 次に、地域力の向上についてでございますが、この事業は、これまで、都議会での議論や各方面の意見を踏まえ、平成十九年度の重点事業として位置づけ、防犯、防災、福祉などの課題に対し、地域の担い手である町会、自治会などが連携して取り組むモデル事業等を、都と区市町村が支援するものでございます。
 今後の実施に当たりましては、地域力向上方策検討委員会において、関係各局と連携し、地域の声も集約しながら、モデル事業の評価分析を行い、施策の充実を図ってまいります。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 NPO法人に対する融資制度についてでございますが、現在、都内には五千以上のNPO法人が存在しております。その多くは財政基盤が脆弱であり、また、金融機関におきましても十分な資金供給が行われていない状況にあります。
 一方、これらNPOは、保健、医療、福祉などの分野で活動しており、新たな経済主体としても期待が寄せられております。
 このため、金融機関からNPOが融資を受ける際、保証機関による八割程度の保証を付することで融資を受けやすくするための仕組みを構築し、資金調達の円滑化を図ってまいります。
 次に、年長のフリーターをも含めた若年者の雇用対策についてであります。
 若年者の就業を促進するためには、職業意識や就業に関する基礎的能力を付与することが重要であります。このため、しごとセンターにおいてカウンセリングや各種セミナーなどを行うとともに、技術専門校では、フリーター向けの単位制パソコン科などを実施しております。
 今後は、これらに加え、年長フリーターを対象とする合同就職面接会なども開催していくなど、若年者の雇用対策に取り組んでまいります。
 次に、新銀行東京の経営内容等の公開についてであります。
 新銀行東京では、中間、期末決算に加え、今年度からは、上場企業並みに四半期ごとの決算を開示しております。また、融資商品別の実績を発表するなど、積極的な情報開示を行っております。さらに、開業から本年十一月末までのプレス発表は五十件、これを含め、ホームページ上における情報提供は百三十三件に達するなど、開かれた経営に努めております。
 なお、他の金融機関との競争において不利益になるような情報につきましては、企業経営上、公開しておりません。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) まちづくりについての四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、公共住宅が良質なストック形成などに果たす役割についてでございますが、都営住宅などの公共住宅の供給に当たりましては、セーフティーネットとしての性格に留意しつつ、可能な限り良質な住宅ストックと良好な住環境の形成に寄与していくことが必要と認識しております。
 具体的には、コストの低減を図りながら、建てかえや改修を通じて、建物の長寿命化や設備の改善、バリアフリー化、省エネルギー化など、ストックの質の向上に努めております。
 また、建てかえ事業に際しましては、地域の活性化や防災性の向上に資するよう、必要に応じてその用地を活用し、公共公益施設の整備や良質な民間住宅の導入などを行っております。
 次に、賃貸住宅に関するトラブル防止への取り組みについてでございますが、都は、平成十六年に、宅建業者に対し原状回復の費用負担などについての説明を義務づける賃貸住宅紛争防止条例を制定し、宅建業者や家主への説明会を実施するとともに、都民向けリーフレットを作成するなど条例の周知を図ってまいりました。
 近年、都に寄せられた相談件数の増加は、こうした広報活動を通じ、家主や借り主などの契約当事者の関心が高まったこともその一因と考えております。
 今後とも、トラブル防止に向けて関係者の理解を深めるため、業界団体と連携して、条例の運用状況の把握に努め、その趣旨の一層の周知を図ってまいります。
 次に、高齢者入居支援についてでございますが、民間賃貸住宅に円滑に入居できる制度を充実することは、高齢者の居住の安定を確保する上で重要でございます。
 このため、都は、区市町村や不動産関係団体と連携し、高齢者の入居を拒まない高齢者円滑入居賃貸住宅の登録の拡大を図ってまいりました。
 また、あんしん入居制度の利用促進に向け、昨年、利用者負担額の軽減や申込窓口の拡大を実施いたしました。
 今後とも、貸し主や住宅関連事業者等に加え、高齢者支援を行っている各種団体へ幅広く周知を図り、普及啓発の強化に努めるなど、制度の一層の利用促進に取り組んでまいります。
 最後に、木造密集地域の整備における課題と今後の取り組みについてでございますが、木密地域は狭小敷地や道路に十分接していない建物が多いことに加え、権利関係がふくそうしていることなどから、建てかえが容易に進みにくく、防災上脆弱な状況にございます。
 都は、木密地域のうち、震災時に大きな被害が想定される地域を防災都市づくり推進計画で整備地域として定め、修復型の木密事業や新たな防火規制などを実施し、不燃化建てかえを推進しております。
 また、この地域においては、建物の倒壊による道路閉塞を防止するなど公共性が高い地区の住宅について、本年四月から耐震診断、改修への助成を開始したところでございます。
 さらに、集中的に事業を行う重点整備地域では、木密事業などに加え、道路や公園などの基盤整備事業を実施しております。
 今後とも、住民の協力を得ながら、地元区とも連携し、効果的に事業手法を組み合わせて、木密地域の安全性向上に積極的に取り組んでまいります。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 子育て支援などに関する四つの質問にお答えいたします。
 まず、認定こども園への支援についてでございますが、国の財政措置の対象が保育所、幼稚園の認可を受けた部分に限定されていることから、認定こども園が地域の実情に応じた保育、教育の提供にあわせ、子育て支援事業を実施する上で不十分なものと認識しております。
 このため、都としては、認定こども園が大都市の多様な保育、教育等のニーズに柔軟に対応し、その機能が十分に発揮できるよう、独自の補助制度を創設する予定でございます。
 次に、事業所内保育施設への支援についてでございますが、都は、平成十七年四月に策定いたしました次世代育成支援東京都行動計画に基づき、仕事と子育てを両立できる雇用環境の整備を進めております。
 事業所内保育施設への支援は、企業の次世代育成に対する取り組みを促進するとともに、仕事と子育ての両立支援に対する事業主の理解を深めるという点からも有効なものと考えております。
 このため、都は、来年度の重点事業として、良質な保育サービスを確保しながら、中小企業なども取り組みやすい柔軟な支援策を講じることによりまして、事業所内保育施設の設置促進を図っていくこととしたものでございます。
 次に、障害程度区分の認定についてでございますが、区市町村が実施する障害程度区分の認定は、百六項目の認定調査に基づく一次判定結果に加えまして、学識経験者から成る区市町村審査会におきまして二次判定を行い、定量化が困難な障害の内容についても、合議の中で反映される仕組みとなっております。
 都は、公正かつ公平な認定が行われるよう、心身の状況について訪問調査を行う認定調査員や区市町村審査会の委員を対象とした研修を実施するなど、人材の育成に努めております。
 今後とも、こうした研修を実施するとともに、認定状況の調査や調査結果の情報提供などを通じまして、区市町村において、より精度の高い認定が行われるよう支援してまいります。
 最後に、都の心身障害者扶養年金制度の廃止と全国制度への加入についてでございますが、全国制度として実施されている心身障害者扶養保険制度について、国は、財政の健全化を図るため、平成十九年度中に見直しを行うと聞いております。
 この見直し後の新たな全国制度への加入は、改めて条例制定が必要となりますが、都制度の廃止に伴う平成二十年三月末までの経過措置期間内に全国制度へ加入できるよう、都として国との調整に努めてまいります。
   〔生活文化局長渡辺日佐夫君登壇〕

○生活文化局長(渡辺日佐夫君) 消費生活条例の改正など四点の質問にお答えいたします。
 まず、取引指導に当たる職員の技量を一層高めるための取り組みについてでございます。
 悪質事業者に対する立入調査等を適切かつ効果的に行うため、現在、警視庁からの併任職員の応援を得て、証拠資料の発見や事業者からの聞き取りなどのノウハウについて、実地に即して確実に身につけるよう、積極的に取り組んでおります。
 また、経済産業省の執行実務研修などへ職員を継続して派遣し、最新の情報や知識の習得を図るとともに、機動的な現場対応の技法を確実に継承するため、実践的なマニュアル等を整備し、その活用を図っているところでございます。
 さらに、庁内公募制人事等を活用して、知識と意欲のある職員を集め、執行体制のレベルアップに努めております。
 今回の条例改正により、ご指摘のように、さらに迅速かつ的確な現場対応が求められることになるため、今後ともあらゆる機会を活用し、取引指導に携わる職員一人一人の技量を高めてまいります。
 次に、情報の収集、提供体制における区市町村との連携強化の具体的取り組みについてでございます。
 都の消費生活総合センターでは、二十三区と多摩の両地域において、毎月情報連絡会を開催し、相談事例や悪質事業者の手口等に関する情報の共有化を図っております。また、相談処理を的確に行うための有用な情報については、随時相談実務情報として整理し、区市町村に発信しております。
 今後は、このような連携体制をさらに強化するため、さまざまな案件が持ち込まれる都や区市町村の相談部門において、関係職員が最新の被害情報や相談処理に必要な情報をリアルタイムで活用できるよう、来年度に専用のホームページを整備する準備を進めてまいります。
 次に、生活用品の事故に関する情報収集の具体的取り組みについてでございます。
 事故情報を幅広く収集し、事故防止に役立てるためには、ご指摘のとおり、事故情報が集中する消防や病院等との連携が極めて有効であると考えております。これまでも、都立病院等のリスクマネジャーを通じて、病院で使用しているベッドや車いすなどに関する事故情報の収集を進めてまいりました。
 また、本年四月には、商品等事故情報連絡会を設置し、東京消防庁と定期的に情報交換を行っております。
 さらに、この十一月からは、病院経営本部がこの連絡会に参画し、消防、病院等との連携が一層強化されました。
 今後とも、積極的に事故情報を収集し、生活用品に起因する事故の未然防止に努めてまいります。
 最後に、東京芸術文化評議会のミッションと文化振興施策についてでございます。
 東京芸術文化評議会の機能は、東京の文化振興に関する基本的な方針や政策について、専門的な見地から調査、審議を行うとともに、社会環境の変化に機敏に対応した提言を行うことでございます。
 そのため、知事の諮問に応じて審議を行うだけにとどまらず、評議会みずからが新たな文化施策などを発案する権限を付与されているものでございます。
 今後は、評議会の提言を生かし、オリンピック及びパラリンピックの招致及び開催も見据えて、東京の文化的魅力を一層高める施策を総合的かつ効果的に展開してまいります。
   〔港湾局長津島隆一君登壇〕

○港湾局長(津島隆一君) 臨海三セクに関する二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、民事再生計画案の実効性についてでございます。
 今回の再生計画案は、東京地方裁判所の民事再生手続の中で、弁護士や公認会計士といった専門家、金融機関を初めとする債権者等の協議のもと作成されたものでございまして、臨海三セク再生の経済合理性や実現可能性が十分確認されたものと認識しております。
 再生計画案の内容と今後の見通しについてでございますが、債権額三千六百十一億円につきまして、二千百三十七億円の放棄を受けるなどによりまして、建物の資産価値見合いである千三百十一億円にまで債権額が圧縮いたします。また、底地の現物出資により地代負担が軽減いたします。
 この結果、年間支払い利息額が、これまでの約六十億円から二十六億円程度にまで減少するとともに、営業利益は七十億円から九十億円、経常利益は四十億円から八十億円と見込んでおります。
 圧縮された債権額千三百十一億円につきましては、年平均八十五億円のキャッシュフローを用いまして、毎年元本五十億円程度を返済し、二十五年で完済する予定でございます。
 なお、今年度末までに一連の手続を終え、十九年四月には、三社の合併後、現物出資を経て、経営基盤が強化された新会社が誕生いたします。
 次に、臨海三セクの将来のあり方や、事業の見直しについてでございます。
 臨海三セクは、臨海副都心に進出している約八百五十社のうち約百三十社が三セクビルに入居するなど、多様な企業の集積拠点として大事な機能を果たしております。
 また、副都心内のライフラインにかかわる重要なインフラ管理など、民間の経済合理性だけでは対応できない公益的な役割を担っております。
 今後、経営基盤が抜本的に強化された臨海三セクは、持ち株会社グループの一員として、開発に引き続き有効に活用し、社会経済状況の変化に的確に対応し、経営の効率化など見直しを不断に行ってまいります。

○副議長(木内良明君) この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後四時三十八分休憩
   午後四時五十六分開議

○副議長(木内良明君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百七番中嶋義雄君。
   〔百七番中嶋義雄君登壇〕

○百七番(中嶋義雄君) 都議会公明党を代表して質問いたしたいと思います。
 初めに、今後の財政運営について伺います。
 平成十二年度以降の二次にわたる財政再建推進プランによる取り組みにより、都財政はようやく健全性を取り戻しつつあるといえます。
 しかし、これからの社会経済環境を展望すれば、安閑としていられない状況にあることはだれの目にも明らかであります。本格的な少子高齢社会の到来、人口減少社会への移行というかつて経験したことのない事態への対応や、オリンピック招致に向けた都市活力の創造など、指摘されている課題は枚挙にいとまがありません。
 したがって、今後は、人口構造、経済、景気動向などの変化に臨機応変に対応しながらの難しいかじ取りが求められることになります。そして、その成否を分かつものこそ、財政運営に対する都民の共感を得ることができるか否かであります。したがって、財政再建への手を緩めることなく、さらに的確な財政運営を行って、その成果を着実に都民に還元することが重要であります。
 子育て支援、福祉・保健サービスの拡充や、安全・安心のまちづくりといった当面する課題から、防災都市の構築や東京の都市像の明確化といった中長期的な課題に至るまで、都民との問題意識の共有あるいは都民の共感を得る施策の展開が欠かせません。
 こうした視点から、平成十九年度予算においては、都民生活に密着する喫緊の課題に積極的に対応するとともに、中長期的な課題への対応を明確にして、文字どおり未来創造型の編成を行うべきであります。まず、知事の所見を伺いたいと思います。
 また、関連して、都税収入について伺いたいと思います。
 最近発表された政府の報告では、二〇〇二年以来の景気拡大が、本年の十一月で連続四年十カ月となり、戦後最長であったイザナギ景気を超えました。
 今回の景気拡大の特徴は、経済のグローバル化を追い風に企業が成長を続けていることであり、各上場企業が、先月発表した本年の中間決算においても、企業業績は一段と向上いたしております。その一方で、個人消費の伸び悩みなど、景気回復の持続に不安を抱かせる側面も見られます。
 そこで、このような景気状況を背景とした十八年度の都税収入の動向及び十九年度の都税収入の見通しを明らかにしていただきたいと思います。
 続いて、中小企業支援について何点か伺います。
 少子高齢化の進展により、十年後には、全国で約四百万人の労働力人口が減少すると予想されております。中でも、中小零細企業の人手不足がより一層深刻であります。一方で、子育て後の女性や高齢者、また正社員を希望しながらもフリーターにとどまらざるを得ない若者など、いわゆる就職困難層といわれる人たちが多数存在いたします。
 働く意欲を持ちながら希望どおりに働くことができないこうした人々に対して、的確な就業支援や能力開発を行うことは、中小企業の人手不足を改善する有力な方策であります。
 都は、来年度、都議会公明党の要望にこたえ、多摩地域にもしごとセンターを設置する方針を明らかにしました。ぜひとも多摩の特色を生かした事業の展開を心がけていただきたいと思います。
 特に、多摩地域には四十四もの大学があり、二十三万人を超える学生が学んでおります。文部科学省の学校基本調査によりますと、大学を卒業しても職につかない学生の割合は二割に上り、高卒無業者の割合の約二倍に上っております。大学院への進学や各種試験の準備もあるのでありましょうが、結果的にフリーターにならざるを得ない大卒者も多いと考えられます。
 そこで、しごとセンターの多摩拠点の設置を契機として、市町村や各大学等との連携に特に力を入れ、大学卒業者の就職支援など多摩地域の特色を踏まえた取り組みを行うべきであります。所見を伺いたいと思います。
 次に、団塊の世代の大量退職問題であります。
 熟練労働者の大量退職は、日本全体にとって、経営ノウハウや技術、技能の継承が困難になるという深刻な影響をもたらします。この点中小企業には、すぐれた技術力を有する人材を定年後もフレキシブルに雇用できるという柔軟性がございます。大手企業などで長年働き、マーケティングなどの専門分野に秀でた人材や、水準の高い技術者などの活用をぜひとも検討すべきであります。
 例えば、都の中小企業振興公社が実施しているニューマーケット開拓支援事業では、商社やメーカー等のOB六十人が、中小企業の販路開拓などを支援し、この三年間で四百件の契約を成立させており、目覚ましい実績を現に上げております。
 そこで、大手企業などを定年退職する団塊の世代と人材を求める中小企業とのマッチングを推進する事業を展開すべきでありますが、所見を伺いたいと思います。
 次に、重要なことは、中小企業の財務体質の強化であります。
 残念ながら、現状では、中小企業の財務体質の強化を進める上で、現行税制という厚い壁が存在いたします。その代表的な例が、中小企業の大半を占める同族会社に対する内部留保金課税の問題であります。
 同時に、事業承継に関する税制にも大きな問題がございます。つまり、相続に伴う税負担が中小企業の後継者に重くのしかかり、多くの中小企業が廃業に追い込まれている実態があります。都内では、平成十三年からの三年間で五万弱もの事業所が減少し、約三十万人の雇用の場が失われております。
 当然、税制の見直しは、国の責任ではあります。しかし、内部留保金課税の撤廃と事業承継税制の見直しに向けて、都においても国を動かすために必要な取り組みを改めて行うべきであると考えますが、所見を伺いたいと思います。
 また、関連して、固定資産税の軽減措置の継続を求めたいと思います。実感なき景気拡大といわれる中、給料は一向にふえず、世帯収入の減少傾向は続くなど、所得の伸び悩みが個人消費に影を落としております。十一月の月例経済報告では、個人消費の判断が久々に下方修正されるに至ったところであります。
 地価の高い二十三区に住み、そこで働く中小企業者に対し、景気を下支えする意味でも、固定資産税等の軽減措置を来年度もぜひ継続すべきであります。見解を伺います。
 中小企業対策に関連して、さらに質問をいたします。
 改正道路交通法により、駐車違反の取り締まりが強化されました。施行当初は一部に混乱があったものの、現在ではおおむね都民の理解が得られたと思います。しかし、来年度からさらに、放置車両確認事務の民間委託が拡大されると聞いております。
 そこで、施行から半年過ぎた現在、この施策によって生じた効果を都民に明らかにし、より以上の理解を得る努力を行うべきであります。所見を伺いたいと思います。
 公明党の調査によりますと、改正道路交通法施行の後、運送業者、特に宅配等の中小業者が駐車に関して大変に苦労しているとの報告があります。また、ヘルパー派遣などの福祉関連の事業者からも、規制緩和や配慮を求める声が数多く上がっております。
 そこで、まず、都民の意見や要望にこたえるため、駐車規制の解除や駐車許可の緩和、さらにパーキングメーターの増設や駐車枠の大型化などの対策をさらに拡充すべきであります。あわせて警視総監の所見を伺いたいと思います。
 また、都としては、民間の駐車場事業者に協力を要請し、荷さばきが可能な駐車場の拡大を図るべきであります。
 現在荒川区では、区の施設や所有地の一部を荷さばき場として提供しております。同様に、都においても都の施設等の活用を進めるとともに、他の区市などにも荷さばき対策を働きかけるべきであります。あわせて見解を伺います。
 次に、心身障害者扶養年金制度について伺います。
 本制度については、先般、審議会による最終答申が発表され、今定例会には廃止条例が提案されております。
 この扶養年金制度は昭和四十四年に発足しました。しかし、その後、障害者施策の充実に伴い、制度の持つ意味と役割が変容して、あわせて制度の財政的な行き詰まりから今回の判断に至ったことは、理解できるところであります。
 ただし、保護者亡き後の不安の軽減と障害者の福祉の向上という政策目的は軽視すべきではありません。制度の廃止に当たっては、第三回定例会で我が党が指摘したとおり、加入者に十分配慮した対応策の実施並びに保護者亡き後の不安解消を図るため、グループホームやショートステイ等の生活基盤整備が不可欠であります。
 同時に、加入者の方に対して十分な説明を行い、制度廃止に対する理解を得ることが重要であります。改めて知事の見解を伺います。
 次に、知的障害者入所更生施設について質問いたします。
 東京都の知的障害者の中で、入所更生施設で生活されている方々は約六千八百人に上り、その半数以上、約三千八百人の人々は、都の補助事業で設置された四十カ所以上の都外の民間施設で生活をしておられます。これらの施設は、ほとんどが平成八年ごろまでに整備されたものであり、地価の高い都内の状況と施設誘致に熱心であった当時の地方の事情などから、青森県から岐阜県に至る地域に設置されたという歴史がございます。
 障害者自立支援法の施行に伴い、障害者施策の理念が、施設保護から地域における自立支援へと大きくかじを切ろうとしている現在、これまで多くの障害者の生活の場であった都外施設について、都は今後の位置づけを明確にすべきであります。所見を伺いたいと思います。
 先日、我が党は、入所者のほとんどが都内出身である秋田の施設を視察してまいりました。自然豊かな広大な敷地の中で皆さんが大変明るく生活をしておられ、施設の経営者の方から、また都内からたまたま面会に来ていた家族の方からもお話を伺うことができました。
 先ほど述べたとおり、障害者福祉は、地域での生活を重視する方向に転換いたします。また、従来からの都外施設は、五年の経過措置があるものの、自立支援法に従った新たな事業の展開に努めなければなりません。
 しかし、その一方で、これまで都外施設で暮らしてきた障害者やその家族の方々には、地域における生活へと移行することに対し、戸惑いと不安を感じている人が少なくありません。したがって、東京都は、都外施設の今後のあり方や利用者の地域生活への移行に関して、こうした不安や戸惑いを解消するための配慮あるいは対応策を講じる必要があります。局の見解を求めたいと思います。
 次に、障害者の就労支援について伺いたいと思います。
 先日、第四回スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲームが熊本で開催され、我々も視察に行ってまいりました。
 このスペシャルオリンピックスの特徴は、大会を開催するだけにとどまらず、日常的にスポーツを通じて自立をサポートし、社会参加を支援していくことであります。障害者が地域で安心して生き生きと暮らすという理念を実現させるためには、このようなスポーツを通じた支援も極めて効果的であると実感をいたしました。
 そして、障害者の自立生活にとって最重要な課題が一般就労の促進であります。
 三重県のブリヂストン化成では、知的障害者を雇用して自立に十分な給与を支払い、企業としても収益を上げております。その責任者の言葉が印象的でありました。我々企業は、職場環境や用具の改善など一般就労の実現の努力を行う、しかし、私の会社では円滑な就労ができなくても、近くの菓子製造業の会社ではスムーズに就労できた例がある、行政はこうしたコーディネート機能をぜひ果たしてほしいと語っておりました。全く賛成でございます。
 既に一部の大手衣料品販売チェーン店では、バックヤードで雇用の拡大を図っております。平成二十年に全区市に設置される予定の就労支援センターでは、こうしたチェーン店などの企業に全力で働きかけ、福祉施設とも連携して、障害者の一般就労をぜひとも実現すべきであります。都の所見を伺います。
 次に、子どもの医療費助成制度について質問いたします。
 都議会公明党は、これまで、医療費助成制度の対象年齢を拡大すべきであると繰り返し訴えてまいりました。これを受けて都は、来年十月から、中三までを対象にした義務教育就学児医療費助成事業を創設する方針を示したことは、国や他自治体に先駆けての取り組みとして高く評価いたしたいと思います。
 しかし、一方で懸念材料があります。現在ですら乳幼児医療費助成制度については、都内各区市町村の財政力の違いによって格差が存在いたします。新たな義務教育課程の助成制度の導入でさらに格差が拡大しないよう、都はさまざまな角度から対応策を検討すべきであります。
 そこで着目すべき課題の一つが、現行の乳幼児医療費助成制度に対する国のペナルティーの存在であります。従来、国は、助成制度を実施している自治体に対し、国民健康保険法第七十条第二項を根拠に、国が本来負担すべき一部負担金の減額調整措置を講じております。
 ところが、本年の医療制度改革の一環として、平成二十年度からは、国みずからが就学前児童を対象に医療保険自己負担分の軽減を実施することになりました。国がペナルティーを課す根拠はもはやどこにもありません。
 都議会公明党は、こうした国の動きに対して、去る十一月三十日、厚生労働省にこの国庫支出金減額調整措置、いわゆるペナルティーの廃止について緊急申し入れを行いました。都においても国に対して強く廃止を要求すべきであります。現在の減額調整の額と国への働きかけについて所見を伺いたいと思います。
 次に、認定こども園について伺います。
 認定こども園制度は、従来、別々に行われてきた就学前の教育と保育を一体的に提供する仕組みであり、地域の子育て支援機能をあわせ持つものであります。この認定こども園の実施に当たっては、国の財政支援が不十分であるなど幾つかの課題も残されております。しかし、都独自の財政支援を実施するとともに、この制度のメリットを最大限に引き出して、都民のさまざまなニーズに的確にこたえていくべきであります。
 認定こども園では、幼稚園のスペースを活用して保育を実施することが可能となり、待機児解消に向けた選択肢が大きく広がります。ぜひとも保育所待機児解消に認定こども園制度を活用すべきであります。都の方針を伺いたいと思います。
 また、認定こども園の大きな特色は、在宅で子育てを行っている家庭への支援機能の発揮であります。
 近年、子育てに不安や負担を覚える親がふえており、これが深刻化して児童虐待などの大変に痛ましい結果に結びつくケースもあります。特に、核家族化や近隣関係の希薄化が進む大都市では、地域全体で支えていく取り組みが重要であります。都が基準を定める認定こども園においても、大都市特性を踏まえて、地域の子育て支援機能を十分に発揮させる必要があります。所見を伺います。
 続いて、ドクターヘリについて伺います。
 ドクターヘリは、重症救急患者に対応するため、医師と看護師が同乗し、必要な医療機器と医薬品を搭載して現場に向かうヘリコプターであり、既に導入している諸外国や国内の九つの県では、大きく救命率が向上しております。
 現在、同様のヘリの運航が島しょ地域と都立広尾病院などの間で実施されています。こうした現行の体制に加え、病院におけるヘリポートでの受け入れ態勢の整備が進めば、さらに搬送時間の短縮が図れるはずであります。搬送時間の短縮とドクターヘリの有効活用のため、ヘリポートのある病院に対し、ドクターヘリの受け入れと医師派遣等への協力を要請すべきであります。
 さらに、現在運航されている東京消防庁のヘリを東京版のドクターヘリとして、より効果的な運用を目指すべきであります。所見を伺います。
 次に、住宅政策について伺います。
 今定例会の最大のテーマの一つが住宅条例の改正であります。都の住宅基本条例は、平成四年に他道府県に先駆けて制定されました。当時は、地価や建設費の高騰により、中堅所得層でも都内で住宅を確保することが困難な時代でありました。そのような状況の中、中堅所得者向けの都民住宅の供給や優良民間賃貸住宅制度の推進は、時代の要請であったといえます。
 しかし、現在、社会経済情勢は大きく変化し、余剰住宅が約五十万戸に上っております。今後は、こうしたストックの有効活用の促進など政策転換が強く求められております。
 都営住宅は、各世代がともに暮らせるソーシャルミックスを踏まえた建てかえを推進することにより、より良質なストックの形成を図ることが可能であります。また、民間の住宅市場についても整備を進め、活用を図っていくべきであります。特に、子育てや介護を積極的に支援する新たな住宅政策を推進していくことや、耐震化促進など安全・安心の視点から住宅政策を展開していくことが都の責務であります。
 基本条例の改正後、新たな住宅マスタープランを策定することになりますが、このプランの中でこれらの具体策を明確に提示すべきであります。今後の住宅政策の方針について、まず知事の所見を伺いたいと思います。
 住宅基本条例の改正案には、公共住宅での子育て世帯の入居促進のほか、民間住宅においても子育て世帯の居住の安定を図ることが明記されました。
 都は、都営住宅で若年ファミリー世帯向けの期限つき入居などに取り組んでおりますが、小さな子どものいる世帯の支援について、都営住宅における新たな制度の導入を図るなど、より一層子育て支援対策を推進すべきであります。
 また、空き家が生じている都民住宅の新たな活用策の導入や、民間の中古戸建て市場の整備活用を通じ、子育て世帯の居住に適した住宅供給の促進に取り組むべきであります。所見を伺います。
 高齢者世帯が今後も増加する中で、その居住の安定も重要な課題であります。条例改正案では、民間住宅における高齢者の居住の安定が明記されておりますが、高齢者に対する今後の取り組みについても所見を伺いたいと思います。
 同じく、条例改正案では、住宅の安全性の確保が新たに盛り込まれました。東京の住宅の約九割を占める民間住宅の耐震化を促す意味でも、都が直接管理する都営住宅の耐震化の推進は不可欠であります。
 第三回定例会で我が党が指摘したとおり、いまだ約三千九百棟に上る都営住宅では耐震診断が行われておりません。したがって、耐震診断を着実に進めるとともに、耐震改修を積極的に推進すべきであります。改めて所見を伺います。
 次に、教育問題について質問いたします。
 いじめが原因という大変痛ましい事件が、北海道、福岡、大阪、岐阜、埼玉などで連続して起きました。子どもたちがみずから命を絶つなどという事態が連続して発生すること自体、異常であるといわねばなりません。四人の子育てがほぼ終了した私の立場からいえば、子どもたちの命、そして子どもたちの存在そのものが、何物にもかえがたい、とうといものであります。たとえ直接の親でなくても、大人の普遍的な責任として、子どもたちがその命を全うできる環境を断じて守らなくてはなりません。親の人生観や世界観、家庭のあり方から始まって、学校や教師、地域なども関係し、さらには社会や文化の状況、あるいは時代精神のようなものまで関係してくるであろう極めて難しい問題であることは重々承知をいたしております。しかしやはり、我々は着手可能な分野から対応策を模索していかねばなりません。
 まずは学校であります。いじめは、どの子にも、どの学校にも起こり得ることを前提に対処すべきであります。したがって、いじめの発生の有無を評価するのではなく、解決のためにいかに努力し対策を講じたか、あるいは発見のためにどれほど意を払ったかが重要であるという方向に意識を転換していくべきであります。所見を伺います。
 また、学校現場からは、担任が一人で問題を抱え込む、保護者の協力が得られにくいなどの声もあり、学校への支援が急務であります。
 そこで第一に、臨床心理士の資格を持つスクールカウンセラーの積極的な活用を図るべきであります。東京都では、すべての公立中学校にスクールカウンセラーを配置しておりますが、いじめが多発している地域の小学校でも、スクールカウンセラーやアドバイザリースタッフの活用を検討すべきであります。また、いじめの未然防止を図るために、特任の専門スタッフの派遣を実施すべきであります。見解を伺います。
 また、知事は今回の所信表明で、自殺総合対策東京会議を設置し、相談支援ネットワークを構築することを明らかにいたしました。ぜひとも都は、いじめによる自殺など若年層の自殺防止についても、関係者が連携して効果のある対策に乗り出すべきであります。改めて所見を伺います。
 次に、特別支援教育について伺います。
 本年六月に学校教育法が改正され、来年度より小中学校において本格的に特別支援教育を進めていくことになります。来年度には、都内のすべての小中学校で校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名を行うことになっております。本格的にスタートする特別支援教育において強く期待されているのが、障害教育の専門機関である盲・ろう・養護学校の果たす役割であります。
 盲・ろう・養護学校による小中学校に対する指導、相談等の支援が円滑に進められるための体制を早急に整備すべきであります。都教委の所見を伺いたいと思います。
 あわせて、小中学校における特別支援教育の体制整備のために、必要な人員配置を国に強く要望していくべきであります。所見を伺います。
 次に、都立高校の普通教室の冷房化について質問いたします。
 本年の第一回定例会において、公明党は、都立高校普通教室へのエアコン導入を主張いたしました。これを受けて都教委は、十九年度の予算要求に都立高校へのエアコン導入予算を加えたことは高く評価いたします。
 そこで、十九年度中には全都立高校への導入を完了し、二十年度夏には冷房設備として活用できるように推進すべきであります。また、省エネ、CO2削減、排熱処理などの対応を行い、環境への配慮を強くアピールすべきであります。所見を伺います。
 学校に関連して、校庭芝生化について伺います。
 校庭芝生化は、都心部のヒートアイランド現象の抑制とともに、子どもたちの環境教育にもつながります。例えば、芝生を育てることも学習の一環であるとして、生徒が芝生の種まきや芝刈りを行い、プランターで植えかえ用の芝生を育成している学校もございます。また、校庭にトンボやバッタ等の昆虫が集まり、格好の自然教育にもなっております。
 そこで、こうした事例をまとめて参考資料として配布したり、あるいは芝生の養生、維持管理のマニュアルを作成すべきであります。考えてみれば、都内の各学校は都心の緑のオアシスともいうべき貴重な存在であります。校庭の芝生化を行うと同時に、今後は屋上、壁面を含めた緑化をさらに推進すべきであります。学校が都会のオアシスとなるような取り組みを行うべきでありますが、所見を伺います。
 さて、知事は、オリンピックに関連して、CO2半減都市を目指すと宣言され、来年早々にも全庁的な組織づくりを行うと述べました。大賛成であります。今後の地球温暖化対策の展開は、都市づくりやインフラ整備などのハードの施策、また産業振興、福祉、教育などのソフトな施策など、都政のあらゆる分野において基本的な視点として貫いていくべきものであります。
 年明けにも設置が予定されている全庁的組織を活用し、大胆な施策展開を図っていくべきでありますが、知事の所見を伺いたいと思います。
 次に、消費生活条例の改正について質問いたします。
 東京都内の消費者被害は、現在、高齢者やいわゆる社会的弱者、また社会的経験の乏しい若年層の間で増加し、その手口は悪質化、巧妙化しております。こうした事態に対して都は、消費生活条例による行政指導の対象を拡大し、さらに全国初の不適正取引行為に対する禁止命令や罰則規定の導入を目指した条例改正案を提出いたしました。これを高く評価したいと思います。
 そこで質問です。第一は、違反行為を行った人物だけを罰するのでは不十分であり、法人、代表者もあわせて罰する、いわゆる両罰規定の導入を検討することが必要であります。
 第二に、今回の改正で、高齢者等の判断力不足に乗じる勧誘を不適正な取引行為として明確に位置づけたことは前進であります。しかし、高齢者、特に認知症の方などは、条例の内容を理解し、みずから行動するのは困難であります。こうした方々に対し、地域、行政、家庭が一体となった特別の配慮が必要であります。
 また、第三に、消費者契約法の改正に伴い、消費者団体訴訟制度が創設されました。そこで、訴訟に関する適格消費者団体への相談情報の提供を行うべきであります。また、訴訟費用が高額になる場合も考えられ、訴訟費用の援助についても都は積極的に取り組んでいくべきであります。
 以上三点について所見を伺います。
 なお、訴訟費用の援助などに関する事項については、改めて条例に明記することを強く求めておきたいと思います。
 続いて、東京オリンピック招致に関連して伺いたいと思います。
 我が党は先日、都議会自民党と東京オリンピック招致本部並びに日本オリンピック委員会と合同で、オリンピック招致の海外調査を実施いたしました。アテネ、ロンドンなどの招致事例を学ぶとともに、施設やインフラ整備の現場を回り、大変に実りがありました。
 まず、ロンドンの調査であります。ロンドンでは、ロンドンオリンピック組織委員会の計画部門の実務責任者であるマイク・パワー氏に話を伺い、今後の東京都の招致活動に関する非常に示唆に富んだ話を聞くことができました。
 話の要点は二つであります。一つは、大胆で独創的な計画の策定には、オリンピックの専門家や民間の企業の発想が不可欠であるということであります。二つ目は、IOC委員に対しては、百十三名それぞれの国籍、背景、立場、人物に適合したプロモートを行う必要があるということでありました。
 実際にロンドンでは、開催計画策定は専門家と民間企業が手がけ、IOC委員に対しても個別の綿密なPRパターンを作成し、接触の時期、方法、担当者も十分検討して実施したそうであります。こうしたロンドンの事例を参考にして、東京都も開催計画の策定とプロモートに当たるべきでありますが、所見を伺いたいと思います。
 一方、アテネでは、オリンピック開催にあわせて高速道路や地下鉄、トラムと呼ばれる路面交通システムを整備し、今でも市民から高い評価を得ておりました。オリンピックにあわせてインフラ整備を行うことが、都市の再生、都市の活性化に寄与した実例であります。都も三環状道路を初めとするインフラ整備に全力で取り組むべきであります。
 また、ドーハとドバイも印象的でありました。特にドバイは、現地のジェトロの責任者によると、単なる観光都市ではなく、世界の物流の拠点を目指しているそうであります。猛烈な勢いの都市開発に加え、四千メートル級の複数の滑走路を備えた大空港を建設中であり、現地にいると、決して不可能な話ではないと実感させられました。現在、アジア大会を開催中のドーハも、早晩ドバイを追いかけ、すさまじい発展を遂げる可能性があります。
 千客万来都市東京を実現し、都市間競争に勝ち抜くには、先進国の都市だけでなく、こうした新興の都市群のダイナミズムも視野に入れて、空港、道路、港湾、そして総合的なまちづくりに取り組んでいく必要がございます。改めて知事の決意を伺い、以下質問をいたします。
 最初に、航空路の整備であります。特に横田基地の共用化を実現し、首都圏の航空需要に対応できる空港の体制を整備すべきであります。
 本年五月、在日米軍再編の最終取りまとめである再編実施のためのロードマップが公表され、横田基地軍民共同使用の具体的な条件や態様に関する検討を開始し、十二カ月以内に終了すると明示されました。知事がこれまで先頭に立って進めてきた取り組みの成果がいよいよ結実の時期を迎えようとしています。また、横田基地の地元においては、昨年十一月に東京都商工会連合会が中心となって横田基地軍民共用化推進協議会が設置され、本年六月には武蔵村山市で横田基地の民間機利用促進市民の会が設立されるなど、軍民共用化を評価する動きが出てきております。
 こうした動向を踏まえ、今後の日米協議の促進、軍民共用化の早期実現に向けた知事の決意と見解を伺いたいと思います。
 同様に、横田空域の返還が重要であります。これも知事が積極的に進めてきた施策であり、それが功を奏し、同じく本年、日米政府間協議により一部返還される空域が合意されるに至りました。民間航空機の運航の障害となっている空域南側の約四割が二〇〇八年九月までに返還されるという内容であります。改めて、知事の率直な感想とその次への展望について伺いたいと思います。
 また、二〇〇九年末に予定されている羽田空港の再拡張・国際化も重要であります。羽田空港は、都心から約十キロメートルと非常に立地条件のよい空港であり、日本の国際競争力の向上、経済活性化のため、再拡張と国際化は不可欠であります。
 国は、現時点でおおむね年間三万回程度の近距離国際定期便の発着を想定していますが、これでは不十分であります。羽田はアジア、オセアニア便を運航し、成田はより遠方の便の受け入れを拡大して、今後の航空需要に的確に対応すべきであります。二〇一六年東京オリンピック招致のためにも羽田空港のさらなる国際化が不可欠であります。知事の所見を伺います。
 次に、東京港の国際競争力向上と魅力づくりであります。
 既に世界の港湾は活発な動きを呈しております。特に中国の上海、韓国の釜山などで巨大ハブ港の整備が進んでおります。上海港では二〇二〇年までに洋山地区に新たに五十二バースものコンテナターミナルを整備する計画があり、釜山港でも二〇一一年までに新たに三十バースのターミナルを整備する計画がございます。
 こうしたアジア諸港の計画に比べ、東京港は第七次改訂港湾計画でも新設はわずかに四バースにすぎません。このままでは大型コンテナ船が直接寄港する東京港のメーンポートの地位が危うくなりかねません。そこで、東京港の機能強化に向けたさらなる戦略を検討すべきであります。所見を伺いたいと思います。
 続いて、東京港の魅力づくりについてであります。
 東京港は物流の拠点であるとともに、臨海副都心という多様な可能性を秘めた都市機能が隣接するという特徴があり、臨海部の今後の開発と港湾の魅力づくりを連動させていく工夫が必要であります。また、魅力づくりに不可欠な客船誘致についても、フライ・アンド・クルーズと呼ばれる空と海の観光の連携を重視すべきであり、拡張される羽田空港と東京港を観光の視点からいかに関連づけるか検討すべきであります。
 空港との連携、またオリンピックの主要会場となる臨海部と連携した東京港の魅力づくりについて所見を伺い、代表質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 中嶋義雄議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、平成十九年度予算編成についてでございますが、都は、これまでの厳しい取り組みが何とか功を奏し、財政再建に区切りをつけることができましたが、今後重要になるのは、ここで生まれた成果を新しい東京の創造につなげていくことでございます。平成十九年度予算はその第一歩となるものでありまして、治安の回復や子育て支援など喫緊の課題から、災害に強いまちづくり、幹線道路の整備など息の長い取り組みに至るまで、さまざまな分野で施策の充実を図っていきたいと思っております。
 また、中長期の課題として忘れてならないのは、財政構造改革の取り組みでありまして、内部努力や施策の見直し、再構築については、財政状況のいかんにかかわらず引き続き徹底していく必要があると考えております。
 次いで、固定資産税などの軽減措置でありますが、景気拡大はイザナギ景気を抜いて戦後最長になったといわれておりますが、個人消費はおおむね横ばいに推移するなど、実感がなかなか伴われておりません。
 こうした状況の中で、これまで行ってきた都独自の軽減措置は、景気対策や都民の定住確保、中小企業支援などに対して大きな役割を果たしてきたと考えております。
 来年度の取り扱いにつきましては、社会経済状況や景気の動向を見きわめつつ、今後積極的に検討してまいります。
 心身障害者扶養年金条例の廃止についてでありますが、いかなる政策も、時代の変化に対応した不断の見直しが必要であります。心身障害者扶養年金については、現行制度の維持が困難となりまして、将来の世代に過重な負担を負わせないためにも、廃止せざるを得ないと判断いたしました。この事実を真摯に受けとめ、制度運営者として、制度の廃止後の対応にも加入者の方の理解が得られるよう、誠心誠意取り組んでいくつもりでございます。
 障害者が、保護者が亡くなった後も、地域の中で自立し、安心して暮らせるように、地域生活基盤の整備を積極的に進めていくなど、障害者福祉施策を総合的かつ計画的に推進してまいります。
 今後の住宅政策の展開についてでありますが、十年後のオリンピック開催を見据えまして、東京を、都市基盤や美しい街並みが整備され、環境への負荷が少なく、安全・安心で豊かな生活が確保された、さらに機能的で魅力的な都市につくりかえていく必要がございます。
 住宅は、生活の基盤であると同時に、都市を形づくる基本的な要素でありまして、居住の場としての魅力を高めることは、都市社会に活力と安定をもたらし、東京の持続的展開に寄与するものであると思います。
 住宅政策については、住宅の量的な充足や居住ニーズの多様化を踏まえ、公共住宅の新規建設中心から市場やストックの活用重視へと転換を進めていくことが必要であります。また、大地震の可能性の高まりや耐震偽装問題の発生、少子高齢化の急速な進展などを背景として、住宅の安全性や都民の住生活の安心を確保することが焦眉の課題となっております。
 都は、安全で良質な住宅ストックの形成、子どもから高齢者までの多様な人々が安心して暮らせる住まいづくりなどに向け、施策の一層の充実を図るために、住宅基本条例の抜本的改正を提案いたしました。これを将来にわたる指針として、成熟した都市にふさわしい魅力ある居住環境を創造していきたいと思っております。
 次いで、地球温暖化対策の展開についてでありますが、地球温暖化のもたらす危機は、異常気象の頻発に見られるように顕在化しつつありまして、都民の生命と財産を守る観点からも抜本的な対策が必要となっております。そのためには、東京の都市構造の省エネルギー型への転換、公共部門はもとより企業や家庭におけるエネルギー利用の効率化の徹底など、都市活動や都市生活のあらゆる側面で地球温暖化抑制のための方策をきめ細かく強化していかなければならないと思っております。
 こうした観点から、年明けに設置する全庁的組織においては、都市づくり、産業政策、教育、文化・スポーツなど都政のそれぞれの政策分野において温暖化対策を位置づけ、集中的に取り組みを展開してまいりたいと思います。
 ご指摘の小中高等学校の校庭を芝生化する問題も、先日、サッカーの川淵会長と話しまして、彼も非常に喜んで、協会としても、何もサッカーのためだけではなしに、大いに協力したいという約束もいただきました。
 次いで、オリンピック招致に向けた総合的な都市づくりについてでありますが、東京は今や世界屈指の大都市として成長し、都市機能の高度な集積や正確無比な公共交通網など、海外の諸都市に比べさまざまな優位性を持っております。オリンピックの開催をてこに、こうしたメリットを最大限に生かしながら、東京をさらに機能的で魅力的な都市につくりかえていく必要があると思います。
 このため、都市圏最大の欠点であります交通渋滞の解消に向けまして、三環状道路を初めとする骨格的な幹線道路の整備や羽田空港の再拡張・国際化、物流の効率化などに取り組みまして、陸海空の広域ネットワークを構築してまいりたいと思います。
 また、建物の色彩や形態に統一感がない市街地について、美しく風格のある景観を備えるとともに、緑豊かな潤いのある、世界に誇れるような街並みを形成していきたいと思っております。また、ご指摘のように、IOCの限られたメンバーのそれぞれの個性、特性というものを分析、調査しまして、きめの細かい対策を講じていきます。
 今後は、こうした取り組みによりまして、東京が持つ都市の力を最大限に発揮し、国際間のオリンピック招致競争に勝ち抜いて、成熟した都市の姿を世界に示し、オリンピックを開催することで、みんなで大きな夢を見たいと思います。
 次いで、横田基地の軍民共用化についてでありますが、先般、安倍首相にも前内閣の日米合意に沿って共用化を進めていくように要請し、これを受けて、首相は先月の日米首脳会談において、ブッシュ大統領に、ハノイでですか、新内閣も同じスタンスで取り組んでいくということをはっきりと伝えてくれました。
 また、先日、トランスフォーメーションの最高責任者であります、一、二度会ったことがありますが、ローレス国防副次官を都庁に招きまして、そのスタッフと軍民共用化についての意見交換を行いまして、共用化の必要性を改めて強く訴えて理解を深めさせましたが、都がつくってあります立体的な航空管制空域の模型を見せまして、彼は見れば見るほどこれは余りなものだということがわかったようであります。また、横田空港のニーズの、ヒンターランド、後背地であります地域は、決して関東だけじゃなくて山梨県も長野県も入るんだということで、地図を見せましたり、そこにある交通網などを見せまして、相手の認識をより深めたつもりでございます。
 米軍再編協議で合意された日米両政府によるスタディグループの公式協議が十月に始まっておりますが、それから十二カ月以内という期限がロードマップとして決められて、検討のスタートボタンが既に押されて、共用化はいよいよ具体的な段階に入りました。この協議を促進するために、都が設置した一橋大学の杉山学長をヘッドとする軍民共用具体化検討委員会の検討成果を国との連絡会議を通じて今後のスタディグループの協議に反映させていきたいと思っております。
 今後とも日米両政府に協議の促進を働きかけ、地元の意向を反映させながら、軍民共用化の早期実現を目指したいと思っております。
 次いで、横田空域の返還についてでありますが、随分時間がかかりましたが、第一段階として、日米協議において特定された空域が返還されることになりまして、羽田を離発着する航空機の安全性の向上や、大阪あるいは福岡、韓国方面に向かう飛行時間がはるかに短縮されます。これに伴うCO2の削減など多くの効果が期待されると思います。
 とにかく一部とはいえ、ようやく空域―地面ではありませんが、空が戻ってきたということも大事だと思いますし、これから全面返還に向けてのまず第一歩を踏み出したと認識しております。
 今後は、再拡張を進めている羽田空港の有用性を最大限に発揮させるためにも、今回の一部返還が着実に実行されるよう、そして一年以内にあそこから日本の飛行機が離発着するよう、そういう現実というものを到来させるために、引き続き国を通じて積極的な努力を進めていくつもりです。
 さらに、羽田空港の国際化についてでありますが、首都東京の国際競争力を強化し、これは首都だけでなく日本全体でありますけれども、首都圏、ひいては日本の発展に資するためには、羽田空港の国際化が不可欠であります。
 羽田空港は都心からまさに至近の距離にありまして、しかも二十四時間の運用が可能な空港であるために、その利便性は極めて高いわけです。当然、オリンピック開催時にはその有効性が最大限に発揮されることになります。
 羽田空港を世界に向けた我が国の玄関口として機能させていくために、再拡張後の羽田空港の持つ可能性を十二分に活用した国際化の推進を引き続き国に強く働きかけてまいります。
 先般、この問題に関しては、日本航空の社長が参りまして、そのときに聞きましたら、既に羽田を使って、日本航空と全日空が、日に二便、臨時便という形で韓国に飛ばしているそうですが、これは一番大きなジャンボを使っているけれども、いつも満員だそうでありまして、そういう点で、羽田の国際化の将来の可能性というのは十分憶測できると思います。
 他の質問については、警視総監、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔警視総監伊藤哲朗君登壇〕

○警視総監(伊藤哲朗君) 駐車対策につきましてお答えいたします。
 初めに、改正道路交通法施行後の状況についてでありますけれども、法施行六カ月後の状況を調査いたしましたところ、施行前と比べ放置駐車が大幅に減少したほか、渋滞の長さや平均走行時間がそれぞれ短縮しており、走りやすくなったという多くの声が寄せられるなど、都民が実感できる効果があらわれております。
 当庁といたしましては、これらの効果につきまして、あらゆるメディアを通じて積極的に広報を行い、都民のさらなる理解が得られますよう努めてまいりたいと考えております。
 次に、駐車規制につきましては、貨物集配中の貨物車を場所、時間を指定して駐車規制から除く路線を設けるなど、地域の駐車実態に応じた規制の見直しを行っているところであります。
 駐車許可につきましても、都民の利便性を考慮し、引っ越しや冠婚葬祭などのほか、訪問して行う看護、介護、入浴サービス等のために使用する車両に駐車許可証を交付するなどの措置を講じているところであります。
 また、パーキングメーターの駐車枠の大型化につきましては、既に貨物車用として三百八十六枠を運用しているところでありますけれども、利用実態等を考慮し、今年度中にはさらに百七十一枠を増設する予定であります。
 今後とも、地域の駐車実態や都民の要望などを踏まえ、駐車規制の見直しや貨物車用のパーキングメーターの設置拡大に努めてまいりたいと考えております。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 教育に関します六点の質問にお答え申し上げます。
 まず、いじめ問題にかかわります認識についてであります。
 いじめはどの学校にも起こり得るものでございまして、ご指摘のように、その発生の有無のみで評価するのではなくて、解決のためにどれほど意を払ったかが重要でございます。そのため、学校はいじめの事実を隠すことなく、その実態や解決策を保護者や学校運営連絡協議会等に報告するなどしまして、信頼関係を確立し、家庭や地域と一体となって問題解決に取り組むことが重要でございます。都教育委員会は、こうした認識のもと、区市町村教育委員会と連携いたしまして、いじめ問題の解決に当たってまいります。
 次に、小学校でのスクールカウンセラーやアドバイザリースタッフの活用についてでありますが、現在、多くの区市町村教育委員会は、小学校に固有のスクールカウンセラーを配置しております。また、中学校のスクールカウンセラーが、小中学校の教員研修会等におきまして教育相談の技能を高めるとともに、近隣の小学校の児童や保護者からの相談を受けております。さらに、緊急時には、都教育委員会はアドバイザリースタッフの派遣も行っております。
 今後は、区市町村教育委員会と連携を図りまして、必要に応じてスクールカウンセラーやアドバイザリースタッフを継続的に派遣するなど、効果的に制度の運用を図ってまいります。
 次に、専門スタッフの派遣についてでありますが、いじめの未然防止を図るためには、学校が家庭、地域との連携を図るとともに、必要に応じて専門家あるいは関係機関等と連携していくことが重要であります。
 現在、都教育委員会は、スクールカウンセラーやアドバイザリースタッフの派遣などによりまして、各学校の課題に応じた支援を行っているところでございます。
 今後は、これらの取り組みに加えまして、都教育委員会の指導主事が、いじめの未然防止を図るために専門スタッフとして区市町村教育委員会を訪問するとともに、要請に応じまして専門家を伴い学校を訪問するなど、各学校のいじめの未然防止について支援してまいります。
 次に、盲・ろう・養護学校によります小中学校への支援体制の整備についてでありますが、都立盲・ろう・養護学校におきましては、従来から地域の小中学校の特別支援教育に対する支援を行ってきているところであります。本年六月の学校教育法改正を踏まえまして、今後、高い専門性を持つ盲・ろう・養護学校の教員が小中学校を訪問いたしまして、よりきめ細かい指導、相談ができるようにするなど、地域の特別支援教育のセンター的機能をより充実させるための体制整備に努めてまいります。
 次に、特別支援教育に必要な人員配置の国への要望についてでありますが、都教育委員会では、学習障害等の児童生徒の指導を行うために必要な教員の配置等に対しまして財源措置を講ずるよう、かねてから国に対して提案要求を行っておりまして、学校教育法の改正も踏まえ、さらに今後も国に強く働きかけてまいります。
 最後に、都立学校普通教室の冷房化についてでありますが、教育環境改善につきましては、都立高校教育環境改善検討委員会の検討経過を踏まえまして、平成二十年度には全都立高校の普通教室等で冷房化が可能となるよう、平成十九年度の予算要求を行ったところでございます。
 また、都教育委員会では、これまでも学校におけます緑化の推進や雨水の有効活用など環境対策にも努めてきたところでありますが、今回の冷房化に当たりましては、省エネ効率の高い機器の導入を図るとともに、あわせまして太陽光発電設備や建物温度の上昇を防ぐ高反射率塗料を採用するなど、環境問題に対します都民の理解を得ながら、一層の環境負荷の低減に努めてまいります。
   〔主税局長菅原秀夫君登壇〕

○主税局長(菅原秀夫君) 今後の都税収入の動向につきましてお答えを申し上げます。
 平成十八年度は、十一月末の法人二税の中間申告等を見きわめる必要がございまして、現時点で確たることを申し上げる状況にはございませんけれども、最近の好調な企業業績等を反映いたしまして、堅調に推移するものと考えております。
 また、十九年度の都税収入につきましては、景気は引き続き回復基調にあるといわれる一方で、消費の伸びの鈍化や原材料費の増加、米国景気の減速等の懸念材料もございます。このため、九月中間決算で好調でございました上場企業の見込みでも、本年度の下期以降につきましては慎重な見通しとなっております。
 なお、平成十九年度は所得税から個人住民税への税源移譲が実施されるわけでありますけれども、今後、こうした税制改正や景気動向などの諸事情を十分勘案いたしまして、的確に算定をしてまいります。
   〔産業労働局長島田健一君登壇〕

○産業労働局長(島田健一君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 しごとセンターの多摩地域での事業展開についてでございますが、来年度から多摩地域にしごとセンターの拠点を設け、飯田橋のしごとセンターと同様、全年齢層を対象としたきめ細かなカウンセリングや職業紹介などのサービスを行い、就業促進に向けて取り組んでまいります。
 加えて、これまで市町村と連携して実施してきたセミナーについて、共同実施等の取り組みを強化するとともに、多摩地域に集積している大学に出向いて、就職の未内定者などを対象にカウンセリングを実施するなど、地域の特色に即した事業展開に取り組んでまいります。
 次に、団塊の世代と中小企業とのマッチングの取り組みについてであります。
 少子高齢化が進展する中、これからの東京の産業にとって、退職する方々が培った経験や能力を人材の確保が困難な中小企業で生かしていただくための仕組みづくりが重要であります。
 このため、都では、しごとセンターにおいて、財務管理、販路開拓などの実務経験が豊かな団塊の世代の方々を対象に、中小企業の経営環境を理解するための研修を実施してまいります。さらに、その修了者を登録し、合同就職面接会などにより、積極的に中小企業への就業を促進してまいります。
 次に、税制改正に向けての取り組みについてであります。
 東京の中小企業は、都内企業数全体の九九%、従業者数は七割以上を占めており、将来にわたってその活力を維持することが、東京の経済の発展、ひいては都民生活の充実にとって重要であると考えております。しかし、同族会社に対する内部留保金課税や事業承継時の相続税負担は、財務体質の強化や事業継続などの点で、中小企業の活力維持の阻害要因の一つとなっております。
 都はこれまで、国に対し、内部留保金課税制度の撤廃及び事業用資産相続時の負担軽減を強く要望してきました。今後は、さらに都内中小企業に対する実態調査を行い、これを踏まえ、商工関係団体と連携を図りながら、税制改正の実現に向けて、国に対し積極的に働きかけてまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、荷さばき可能な民間駐車場の拡大についてでございますが、都内における貨物の配送は、都民生活や経済活動を支える重要な役割を担っております。一方、貨物車による荷さばきのための路上駐車は、渋滞や事故の原因ともなっております。
 このため、都では、渋滞緩和を図るスムーズ東京21拡大作戦の一環として、コインパーキングに荷さばき車両を受け入れてもらえる取り組みを実施してまいりました。本年六月時点での受け入れ駐車場は約五十カ所でございましたが、改正道路交通法の施行にあわせ取り組みを一層進めたことにより、十一月末には約二百四十カ所となっております。
 荷さばき施設は、業務上必要な施設として、貨物を受け入れる側で確保するのが基本ではございますが、今後とも、地域の実情などに応じて、駐車場事業者等の協力を得ながら、荷さばきが可能な駐車場のさらなる拡大に努めてまいります。
 次に、都の施設等の荷さばき施設への活用についてでございますが、荷さばき対策を効果的に進めるためには、民間の施設だけでなく、公共の施設等を活用していくことも有意義でございます。
 都はこれまでも、都の施設を活用し、道路整備保全公社の駐車場へ荷さばき車両を受け入れることや、高速道路高架下において荷さばき施設を整備するなどの対策を実施してまいりました。
 今後は、庁内連絡会等を活用し、立地条件を加味しながら、都の施設の利用可能性を検討するとともに、区市に対しては、お話しのような先進的な取り組み事例が広く普及するよう働きかけるなど、効果的な対策を推進してまいります。
 次に、子育て世帯に対する住宅供給の促進についてでございますが、少子高齢化が進展する中、住宅政策においても子育て支援は重要な課題と認識しております。
 都営住宅では、これまで、ひとり親世帯や十八歳未満の子どもが三人以上いる多子世帯に対し優先入居を行うとともに、若年ファミリー世帯や多子世帯向けに期限つき入居を導入してまいりました。
 来年度からは、さらに、小学校就学前の子どものいる世帯を対象とした優先入居を実施するとともに、都民住宅などの公共住宅においても、子育て支援の観点から、ストックの活用について検討を進めてまいります。
 また、民間住宅については、子育て世帯に適した広さと価格の住宅の供給促進に向けて、不動産関係団体等との連絡会を活用し、適切な品質情報の提供を促すなどにより、中古住宅の流通を活性化してまいります。
 こうした多面的な取り組みにより、子どもを安心して産み育てられる住まいの確保を積極的に支援してまいります。
 次に、高齢者の安心居住に対する取り組みについてでございますが、高齢者が民間住宅に円滑に入居し、安心して居住できるようにしていくことは、高齢者の居住の安定を確保する上で重要でございます。
 都はこれまで、高齢者向け優良賃貸住宅の供給や、高齢者円滑入居賃貸住宅の登録の拡大等により、高齢者が安心して居住できる住宅の供給促進に取り組んでまいりました。また、住宅供給にかかわる関係事業者と連携し、入居に当たって制約を受けることがなく、バリアフリー化された住宅の供給を促進する仕組みについても検討してまいります。
 今後とも、高齢者が安心して居住できる環境整備に積極的に取り組んでまいります。
 最後に、都営住宅の耐震化についてでございますが、地震による建物の被害から居住者の生命を守り、日常生活の安全を確保するため、これまでも耐震性向上に努めてまいりました。
 本年、耐震改修促進法が改正され、平成二十七年までに住宅の九割以上の耐震化が目標とされたことを踏まえ、都においても、本年度中に耐震改修促進計画を策定する予定でございます。
 都営住宅についてもこの計画に位置づけ、旧耐震基準で設計された住宅のうち、建てかえ対象を除く約三千二百棟の耐震診断を平成二十四年度を目途に行うとともに、耐震改修についても、必要に応じ順次実施してまいります。
   〔福祉保健局長山内隆夫君登壇〕

○福祉保健局長(山内隆夫君) 福祉、医療に関する八つの質問にお答えいたします。
 まず、都外の知的障害者入所更生施設についてでございますが、都外施設は、入所待機者が増加し、都内での施設の設置が進まない中、昭和四十年代から整備を始めまして、入所施設での支援を希望する多くの知的障害者に安定した生活の場を提供してまいりました。
 しかしながら、近年の入所施設の整備については、住みなれた地域での生活を続けたいとする本人や家族の希望をできる限り尊重する観点から、基本的に都内での設置を促進しております。
 都外施設の今後のあり方については、施設設置の経緯を十分に尊重しつつ、障害者自立支援法の趣旨を踏まえて検討してまいります。
 次に、都外施設利用者の不安の解消についてでございます。
 都外施設利用者の中には、障害者自立支援法の施行によりまして、将来的に施設を退所しなければならないのではないか、また、長年住みなれた施設から地域での生活へ移行できるのかなど、さまざまな不安を抱いておられる方がいることは、ご指摘のとおりでございます。
 これまでも、円滑に地域生活への移行が図られるよう、希望する利用者に対して施設が実施する自立生活訓練について、都として補助を行ってまいりましたが、引き続き支援に努めてまいります。
 また、施設の退所について不安を抱いておられる方へは、自立支援法の趣旨や制度内容の周知を図るとともに、都外施設のあり方に関する検討状況について適宜情報提供を行うなど、利用者の不安解消に努めてまいります。
 次に、障害者の一般就労の促進についてでございます。
 障害者が企業等に就労し、経済的な自立を目指すためには、企業等の理解を得ることが必要でございます。このため、都では、平成十九年度重点事業として、障害者の就労支援の拠点であります区市町村障害者就労支援センターにおいて、授産施設から企業等での就労への移行を橋渡しする地域開拓促進コーディネーターの配置を支援することといたしました。
 今後、都は、ご指摘の点を踏まえ、地域開拓促進コーディネーターを活用しながら、チェーン店など波及効果の高い企業を開拓するなど、区市町村における障害者の一般就労を促進するための取り組みを積極的に支援してまいります。
 次に、国民健康保険制度における減額調整措置についてでございます。
 自治体が独自に医療費を助成している場合に、国は、国民健康保険法に基づきまして、本来担うべき負担金を減額する措置を講じております。
 今般の医療制度改革において、国は、少子化対策の観点から、子どもに対する医療費の軽減措置を、現在の三歳未満から就学前まで拡大することを既に決めているにもかかわらず、乳幼児医療費助成制度など、自治体が独自に実施している同様の取り組みに対しまして、国庫負担減額によりまして阻害するような措置を継続していることは、まことに理解しがたいと考えております。
 都は、従来から国に対し、この減額調整措置を廃止するよう強く提案要求してまいりましたが、今後とも粘り強く働きかけてまいります。
 なお、都内の区市町村に対する減額調整額は、平成十七年度で約二十七億一千万円であり、うち乳幼児医療費助成制度に係る分は約九億二千万円でございます。
 次に、保育所待機児童解消における認定こども園制度の活用についてでございます。
 認定こども園は、地域の多様な保育、教育ニーズに柔軟に対応することとあわせて、幼稚園に保育所機能が備わることなどによりまして、保育所待機児童解消にもこたえていくことが期待されるわけでございます。
 こうしたことから、認定こども園の四つの類型それぞれがその機能を十分に発揮できるよう、国が財政措置をしていない部分につきまして、都独自の補助制度を創設し、区市町村とも十分な連携を図りながら、制度の円滑な実施に努めてまいります。
 次に、認定こども園の子育て支援機能についてでございます。
 お話しのとおり、東京では、近隣関係の希薄化、核家族化の進行などによりまして、子育てに対して不安や負担を感じている親も多くなっております。都はこれまでも、こうした大都市の実情を踏まえ、認可保育所や児童館などの社会資源を有効に活用し、地域の子育て支援拠点の整備に努めてまいりました。
 認定こども園においても、これらの既存の取り組みと連携を図りながら、地域の実情に応じた子育て支援事業が積極的に実施されることが重要と考えております。このため、子育て相談や一時保育などの子育て支援事業を複数実施することを都の認定基準とするとともに、必要な財政支援を行っていく予定でございます。
 次に、ドクターヘリの効果的な運用についてでございますが、都は現在、島しょ地域等の医療機関において対応が困難な救急患者が発生した場合に備え、東京消防庁と連携し、大型ヘリに医師が同乗して医療処置を行いながら搬送する体制を二十四時間確保しております。
 この救急患者の搬送時間をより一層短縮するため、ヘリポートを備える都内の病院に対しまして、ヘリの受け入れと同乗医師の派遣を依頼するとともに、搭載する医療器材の充実を図るなど、東京消防庁のヘリを東京型ドクターヘリとしてより効果的な運用ができるよう、積極的に検討を進めてまいります。
 最後に、若年層の自殺防止対策についてでございます。
 未来ある子どもがみずから命を絶つということは、理由のいかんを問わず、あってはならないことでございます。
 都は、平成十九年度重点事業として、自殺総合対策東京会議を設置し、相談・支援ネットワークの構築や、身近なところで自殺のサインを早期に発見できる人材の育成など、総合的な施策の展開を図ることとしております。
 都教育委員会の緊急アピールにおいても、子どもたちに、家族や周りの人に悩みを打ち明けることが大切であると訴えており、新たな施策の中で、相談することの重要性に関して普及啓発を強力に推し進めるなど、若年層の自殺対策についても、教育庁を初めとする各局や民生・児童委員などの関係者と連携し、積極的に取り組んでまいります。
   〔環境局長村山寛司君登壇〕

○環境局長(村山寛司君) 校庭の芝生化事業についてのご質問にお答えいたします。
 校庭の芝生化は、都市の緑化にとって大きな役割を期待できるとともに、子どもたちに、学校という最も身近な場所で環境学習の場を提供する効果を生み出すものでございます。
 この事業を着実に推進していく上では、学校の教職員と子どもたちが一緒になって管理に参加する仕組みや、それを支える地域ぐるみの協力体制が存在することが重要でございます。
 したがいまして、事業実施に当たりましては、既に芝生化を行った学校の経験を参考としながら、環境学習での活用方法や維持管理のノウハウなどをまとめた事例集を作成するなどして、学校や地域の積極的な取り組みを促し、地域の緑の拠点ともなる校庭芝生化を推進してまいります。
   〔生活文化局長渡辺日佐夫君登壇〕

○生活文化局長(渡辺日佐夫君) 消費生活条例の改正に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京都消費生活条例に違反した者と法人・代表者とをあわせて処罰できる両罰規定の導入の検討についてでございます。
 今回の条例改正では、消費者の利益を著しく害する悪質事業者の行為を抑止するために、禁止命令に違反した場合と、立入調査等を拒否した場合について、事業者に対し罰則として過料を科すことといたしました。
 お話しの両罰規定の導入につきましては、東京都消費生活対策審議会の答申にもあるように、今後、行政刑罰とあわせて検討する必要があるので、改正条例の規制の効果を検証しつつ検討していく必要があると考えております。
 次に、高齢者、特に改正条例の周知が難しい認知症の高齢者等への具体的な取り組みについてでございます。
 高齢による気力や体力の低下に加え、病気や認知症等により判断力が不足している高齢者等の被害防止のためには、家族や民生委員、介護事業者等、高齢者の身近にいる人々による見守りや被害の早期発見が重要でございます。
 このため、被害に遭っている高齢者を発見した場合の適切な対処方法についてのマニュアルや、都や区市町村における連携の仕組みなどについて盛り込んだガイドラインを年度内に作成し、都全域にわたるセーフティーネットの構築に役立ててまいります。
 最後に、適格消費者団体への相談情報の提供と訴訟費用の援助についてでございます。
 本年五月の消費者契約法の改正により、消費者団体訴訟制度が創設され、消費者全体の利益擁護のため、不特定かつ多数の消費者に対して行われている事業者の不当な行為について、直接差しとめを求める権利が一定の消費者団体に認められることになりました。
 都は、この制度が有効に機能するよう、今後制定される内閣府令の内容等を踏まえて、相談情報の提供の範囲や方法等について適切に定めてまいります。
 なお、訴訟費用の援助につきましては、国の動向や制度発足後の団体の財政状況等を見きわめることが必要であると考えております。
   〔東京オリンピック招致本部長熊野順祥君登壇〕

○東京オリンピック招致本部長(熊野順祥君) オリンピックの招致活動についてでございますが、招致活動を行うに当たりましては、IOCの動向や、お話しのロンドンを初め、これまでの立候補都市の事例を十分に調査研究いたしまして、計画やIOC委員に対するプロモーションなどに反映させていくことが重要でございます。
 このため、今後の計画策定に当たりまして、過去のオリンピック招致に携わったアドバイザーの招聘あるいは計画策定などに精通した海外企業との契約などを現在検討しております。
 また、IOC委員へのプロモーションに関しましては、東京オリンピック招致委員会におきまして、各委員に対する影響力が期待される人材の登用など、より効果的な方策について検討してまいります。
   〔港湾局長津島隆一君登壇〕

○港湾局長(津島隆一君) 東京港の強化につきまして、二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、東京港の機能強化に向けた戦略についてでございます。
 東京港が引き続きメーンポートの役割を果たしていくためには、コンテナ船の大型化や、国際水平分業の進展などに伴って急増するアジア貨物などへの的確な対応が重要であると認識しております。
 このため、第七次改訂港湾計画を着実に推進してまいりますが、事業推進に当たりましては、中央防波堤外側埋立地における船舶の大型化に対応する新たなコンテナふ頭の整備に向け、早急に基本計画調査を進めるとともに、その機能を十分に発揮していくさまざまな取り組みを検討してまいります。
 また、急増する貨物に対応するため、ヤード機能の拡張や、新たな埋立地の造成による施設の集約化を行い、機能向上を図るとともに、IT化を促進するなど、既存ふ頭の効率性を最大限に高める運営も推進してまいります。
 こうした取り組みにより、東京港の国際競争力の一層の強化を図ってまいります。
 次に、空港や臨海部と連携した東京港の魅力づくりについてでございます。
 東京港は、空港や市街地と隣接した特色のある国際貿易港でございます。加えて、ご指摘のように羽田空港の再拡張や十年後のオリンピックを見据えますと、人々の交流や国際化の進展に十分こたえた東京港の魅力づくりが重要だと認識しております。
 このため、東京港においては、水上レストラン、観光桟橋など、水辺のさらなるにぎわいづくりを促進させるほか、環境にも十分配慮した港づくりを進めてまいります。
 また、首都東京の海の玄関として、航空機や船舶からの視点も踏まえたデザイン、色彩等に配慮した港湾施設と海上公園や水辺が調和した、東京港ならではの景観形成を図ってまいります。
 さらに、交通網の整備により空港へのアクセスも向上することから、お話しのフライ・アンド・クルーズを東京港のセールスポイントとした客船誘致も展開してまいります。
 今後は、こうした一連の施策を展開しつつ、東京港の魅力を世界にアピールしてまいります。

○副議長(木内良明君) 百二十六番吉田信夫君。
   〔百二十六番吉田信夫君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○百二十六番(吉田信夫君) 日本共産党を代表して質問します。
 戦後最長の景気拡大という政府発表とは裏腹に、大多数の都民の生活と営業はますます深刻な状態となっています。大企業は、徹底したリストラによって、この五年間で経常利益を十兆円も伸ばし、一方、労働者の給与総額は二兆三千億円も減らされました。加えて、定率減税縮小を初めとする庶民増税と介護保険料などの社会保障負担増が都民生活を直撃しているからです。こうしたときだからこそ、都政が都民の暮らしに思いを寄せ、支援の手立てを尽くすことが必要なのではないでしょうか。
 ところが、石原知事が行っていることは全く正反対です。知事は、大型開発などの投資に毎年一兆円規模の投資を行う一方で、都民には財政危機を理由に、老人福祉手当を初め福祉施策を容赦なく廃止、縮小し、福祉関係費は六年間で五百四十億円も後退、中小企業予算は毎年削減し、六割にまで後退しました。生活が困窮し応募者が急増しても、都営住宅の新規建設を行いませんでした。また、総額二億四千万円、十五回に及ぶ知事の海外出張の常識を超える浪費ぶりに都民の怒りが広がっています。
 さらに、税収増にもかかわらず、これを都民のために使わず、オリンピック招致を口実にした八兆円を超える浪費的大型開発を進めるために、毎年一千億円以上の積み立てに回そうとしています。この一千億円を都民のために使えば、高齢者の医療や介護の負担増の緩和、子どもの医療費無料化の小中学生までの拡充、ワーキングプア対策、小中学生の三十人学級実現などを一気に進めることができます。
 私は、オリンピックをてこにした浪費をやめ、都民の暮らしを守るために全力を尽くすべきことを強く申し述べておくものです。
 知事が行っている都民不在の都政運営を象徴的に示すのが、ワンダーサイト事業に見られる都政の私物化です。以下、この問題に絞って質問します。
 我が党はこの間、ワンダーサイトの館長、副館長に、知事の四男延啓氏の知人である今村夫妻が採用され、そのもとで延啓氏がワンダーサイトの設立から深くかかわり、しかも税金を使って海外出張などを行っていることを明らかにしてきました。この問題は、新聞やテレビで大きく取り上げられ、都民からも東京都に対し、民間企業でも身内を起用するのははばかられる、いわんや公的機関は論外、四男の海外旅行はどう考えても血税の私物化だなど、たくさんの怒りの声が寄せられています。
 ところが、石原知事は、記者会見で、ワンダーサイト事業はみずからのトップダウンで始めたことを認めたものの、四男を使っていることや今村夫妻を登用したことについて、自分が決めたわけではない、事務局に聞いてくれとみずからの介在を否定、さらに、私物化って何ですかとまでいいました。事実はどうでしょうか。
 知事自身が認めたように、今村氏は、知事が延啓氏からこういう人物がいますよと教わって館長に登用されています。今村氏は、ワンダーサイト館長に登用された同じ日に都の参与に任命されていますが、その理由の一つとして、知事の知己であることが挙げられています。今村夫人である家村氏についても、知事自身が、あなたやりなさいとみずからが勧めたことを認めているではありませんか。
 そして、今村館長夫妻が知事の全面的バックアップのもとでワンダーサイトの実権を握り、民間人である延啓氏をワンダーサイトの設立から今日まで深くかかわらせてきました。このことが知事自身の意向に沿うものであったことは、延啓氏について、余人をもってかえがたいから、どんな人間でも使うといい放ったことからも明らかです。事実、ワンダーサイトに飾られているステンドグラスの原画についても、知事が延啓氏に対して、君がやってみろといって描かせたことを認めています。
 ワンダーサイト事業は、都政の中で、知事サイドと今村夫妻による聖域ともいえる地位を占めるに至り、都の監査からも計画と実績に大きな乖離を指摘される乱脈な運営がされてきました。知事が子息の友人に都の事業を任せ、知事のバックアップでその友人が知事の子息を都の事業に使う。知事、これを私物化といわずして、何を私物化というのですか。
 そもそも行政の長は絶大な権限を持っており、また、公平、公正さが求められているからこそ、みずからの家族を行政にかかわらせることを厳に戒めるべきだとされています。知事の言動は、まさに行政の長としての資格が問われる重大な問題だといわざるを得ません。知事、お答えください。
 以下、具体的な問題についてただします。
 第一に、延啓氏にかかわる税金の使い方の問題です。
 我が党の調査などで、延啓氏が、二〇〇三年三月に能オペラの事前調査の目的でドイツ、フランスに海外出張しているのに加え、二〇〇四年には、スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会での知事主催のパーティー、東京ナイトのために、二回も出張していることが明らかになりました。
 ドイツ、フランスの出張は、一カ月だけアドバイザリーボード委員の肩書を与えることで、公費による海外出張をさせる理由としました。
 ダボスの出張については、都の開示した文書には延啓氏のものは見当たりません。この出張は条例に基づく手続がとられず、出張旅費は、パーティーのイベントの会場装飾、事前調査委託契約に紛れ込ませて支払われた形です。このことについて、生活文化局の荒川次長は、マスコミに対して、東京ナイトで演奏した大鼓演奏者からの依頼によるものと答えており、知事も、本人に聞いてくれ、頼んだ人がいるのだからと答えています。しかし、大鼓演奏者はもともと延啓氏の友人であり、能オペラのときも一緒に仕事をやろうとした仲間です。
 ここに開示されたメールがあります。この文書によれば、当時の荒川文化振興部長が今村参与に出したメールの中で、大鼓奏者と東京都が委託契約を結び、その契約の中に鏡板制作費を盛り込ませ、鏡板はその演奏者から延啓氏に制作発注してもらいますといい、制作費に延啓さんの旅費も含めることが記述されています。
 また、同じく開示された文書には、今村館長から都の担当者に対し、鏡板のイメージが示され、表具代、紙代、さらには制作者への報酬を三十万とすること、この内容で延啓氏と話し合うことまで示されています。これはまさしく延啓氏への税金の迂回支出ではありませんか。
 知事は、インタビューに違法でないと開き直りましたが、違法でなければ、自分の子息のためにこんな迂回支出をやってもいいというのですか。答弁を求めます。
 また、知事は、一昨日マスコミの取材に対し、ただでやらせておいて旅費まで出さないっていうのじゃ、行く人いませんよといいましたが、今村氏のメールを見る限り、鏡板の制作に当たって延啓氏が報酬を受けている疑いが強いといわなければなりません。事実を明らかにしてください。
 この東京ナイトで演奏した大鼓演奏者は、実は、二〇〇四年二月に開催するとして計画された能オペラで出演をする予定だった人です。このオペラは、知事自身認めたように、延啓氏が深くかかわって企画された上、石原知事が脚本を書き、作曲家の細川俊夫氏が作曲を受け持つものとして進められたものですが、結局、脚本の著作権をめぐるトラブルとなり、中止となりました。しかし、中止までの間に、事前調査の海外出張、出演者のオーディションや出演依頼、細川氏による課題曲の作曲、会場確保などが行われました。また、中止に伴う損害補償のコンサートが行われています。
 都が開示したメールの中で、この能オペラの中止に伴い、どのようなことが検討されたのかがかなり克明に示されています。その中には、今村夫人が関係者に対して、できる限りの補償をしたいが、能オペラ中止でワンダーサイトの財源がなくなり、大負担を抱えていること、その関係者には、ワンダーサイト、あるいは東京都の関連する機関の主催するコンサートに出席してもらい、これまでの謝礼として五万円払うが、それでは足らないから今後の出演などで補償しようと考えているとするものがあります。
 今村氏が損害補償の代替案で無料のコンサートを考えていることに対し、当時の荒川文化振興部長が、中止した能オペラのかわりにやる新作能「伝統と未来」をこの補償絡みのコンサートと一緒にやることで、知事たちがマスコミ等から追及されないか、外国からの賠償請求はないかどうか、余り目立つと、将来、議会から追及される可能性があるなどと心配している様子も示されています。
 海外出張を含めた準備費用、中止による損害補償の内容なども含め、能オペラに関連して、一体幾らの経費を要したのか、その明細と総額を明らかにしていただきたい。
 知事は、中止の原因について、細川氏が世界でも日本でも通用しない契約をしてくれといってきたからと、いかにも細川氏の側に一方的な責任があるかのようにいっています。本来、脚本の著作権にかかわる重大な問題は、事前にきちんと契約しておくのが常識です。それをせずにトラブルを起こし、税金をむだにしたことの責任が知事自身や延啓氏はないのですか。知事の明確な答弁を求めます。
 知事は、二〇〇一年のダボス会議に出席して、こんなにおもしろくない会議はなかったと述べていたにもかかわらず、開示された文書では、二〇〇四年の会議に招待もないのに出かけた上に、延啓氏と合流して東京ナイトを開催しました。そして、ダボス会議の一番の収穫は、東京ナイトが盛況だったことだとまでいいました。まるでダボス出張の最大の目的が東京ナイト開催であったかのようです。
 しかし、この出張のための費用は幾らかかっているのでしょうか。一晩のレセプションで三百四十万円という破格の費用をかけていますが、そのほかにも事前調査や公演委託契約、延啓氏がかかわった鏡板制作費や旅費など、東京ナイトにかかわった費用は約千七百万に及び、知事のダボス、パリ出張費用三千七百万円余の半分近く占めると推計されます。
 知事、知事や今村夫妻、さらに延啓氏まで加わり、総がかりで東京ナイトを開催し、千七百万円もかける必要があったのでしょうか。知事の答弁を求めます。
 次に、昨年一月にニューヨーク市で開催されたアートサミットへの延啓氏の参加問題です。これは、知事がニューヨーク市からの参加要請を受けて、都の代表として四名を派遣したものです。この代表について、ニューヨーク市は、公共芸術関係の都の責任者、公共芸術分野での民間の指導者や地域文化団体の方、公共芸術創作経験のある芸術家など、ふさわしい方を参加させてほしいと要請してきていたものです。これに対して石原知事が送った代表は、今村夫妻、延啓氏及び生活文化局の課長の四人でした。
 都職員を含めワンダーサイトの関係者が代表を独占するということは、余りにも異常なことといわなければなりません。それほど東京には公共芸術に関する専門家がいないというのですか。私も美術を学んだ者であり、専門の方の話も伺いました。東京には、現代美術館を初め美術館も多く、専門のスタッフが活躍されています。また、芸術系大学や民間にも公共芸術の分野で活動している方は数多くいるのです。
 そこで知事に伺いますが、どこで代表の選出を行ったのですか。延啓氏の代表はどこでだれが決めたのですか。そして、実際に送られた代表がニューヨーク市の示した基準を満たしているとどのように判断していたのですか。お答えください。
 これまで、東京都、ワンダーサイトが延啓氏にどのような理由でどれぐらい公費を支出したのか、ワンダーサイトにどのようにかかわらせてきたのか、具体的かつ全面的に事実を明らかにすべきです。答弁を求めます。
 知事はまた、みんなボランティアでやっているからといいましたが、これも事実と違います。今村夫妻は、参与、館長、副館長の三人分の給与、報酬を受け取っています。設立時には、今村夫人の口座には、正式採用となる前の二〇〇二年三月に七十三万円のお金がワンダーサイトコミッティから振り込まれています。一体どういう名目でこれだけのお金が振り込まれたのですか。また、二〇〇一年度決算では、アドバイザーに八十三万円が支払われていますが、これはだれに対して、どういう名目で支払われたのか、明らかにしていただきたい。
 これまで明らかにされた一部の資料だけでも、ボランティアなどというのはごまかしです。
 ワンダーサイト事業における知事の家族の重用に対し、都民の批判の声は大きく広がっています。ほとんどの都職員は、知事の息子の友人を都の仕事に引き入れ、その友人を通じて息子に都の仕事をさせるという都政私物化に心を痛めています。知事がこの声に耳を傾けようとせず、余人をもってかえがたいなどと居直っているからこそ、マスコミからも、息子を世に売り出すために都民の税金を使って活動場所をつくり、都政を私物化しているのではないかというのが問題の論点であるとの指摘がなされているんです。
 自分の息子がどんなに能力があっても、周囲の疑念の目を向けられないためにも、自分の息子であるがゆえに選定から外した方が望ましいという都民の声こそ、多くの都民の考えを代表したものということができます。
 知事の猛省を求め、再質問を留保し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 吉田信夫議員の代表質問にお答えいたします。
 トーキョーワンダーサイトの運営についてでありますが、都政を預かる者としては、都庁内部だけではなく、外部の専門家や有識者、さらに必要とあらば身内をも使って知恵を集結し、収集し、さまざまな課題に取り組んでいくべきだと思います。
 私の発案で始めた若手芸術家支援のトーキョーワンダーサイトも、世界が、先だけに、非常に限られた有能なタレントしかおりません。美術関係者などにも手伝ってもらいながら、これ、ほとんど全部ボランティアで、無料です。あなたが知っていらっしゃるのは今村夫妻と私の息子だけのようですけれども、例えばいろいろ展覧会場の壁などを塗ってくれた久住さんなんて年配になったらば無形文化財になるような方が、ほとんど無料でやってくださった。あるいは佐野君という、すぐれた、ワンダーサイトだけではなしに現代美術館も手伝ってもらっていますけど、額を飾ったりする、非常にスキルを持った専門家も、ほとんど無料でやってくださっています。
 いずれにしろ、私の発案で始めました若手芸術家支援のトーキョーワンダーサイトも、そういう限られた人材で運営されているわけですが、今後も、美術関係者などにも手伝ってもらいながら、事業を進めていくつもりでございます。
 ワンダーサイト青山のアートビレッジオープニングには、ブリティッシュ・カウンシルのジョアンナ・バーク駐日代表や国際交流基金の紿田理事などに来ていただきまして、本当に国もやっていない、すばらしい試みをありがとうということで、逆に感謝されました。大変感動していただきました。
 ワンダーサイトも、ワンダーウォールから始まりましたが、このごろ、いろいろな美大の教授たちが、有望な学生を見つけて、君もひとつワンダーサイトのコンペティションに応募したらどうだといってくれるようにまでなりました。
 次いで、東京ナイト開催に伴う四男のスイスへの渡航についてでありますが、経費の支出が違法なら、即座に是正もしますし、謝罪もします。これは事務局に任せていることですから、事務局の方に詳細をお聞きいただきたい。
 今回のケースでは、四男は、レセプション会の会場の舞台装置を受託した会社から舞台の背景画となる鏡板の制作を依頼されて派遣されたものであります。都が適正な手続に基づいて契約した会社から旅費の費用弁償を受けたものでありまして、私は違法性もないし、問題はないと思っております。
 次いで、能オペラに関する契約についてでありますが、能オペラは、トーキョーワンダーサイトの事業として、いろいろリハーサルを重ねながら、現代音楽の作曲家の発案によりまして、脚本の依頼もありまして始まったものですが、自分としては、能という伝統的な舞台芸術を、現代音楽との融合によって今までなかったパターンの新しい舞台というものを咲かせることができればと期待しておりました。しかし、私の日本における著作権者としての常識とかなり違う依頼が向こうから申し出がありまして、これは私自身が自分の著作権を全部放棄することになりますので、そういったことで交渉しましたが、折り合いがつかずに、結局、残念ながら作曲中止という表明があり、能オペラの企画そのものが中止になりました。
 次いで、ダボス会議でありますけれども、この会議の意味合いというのは私は余り感じませんから、二度行って、もう遠慮していますが、主催者の理事長のシュワブさんから再三また来いという依頼もございましたし、それにこたえて、たしか二度目は、それから、東京ナイトというオファーも向こうからあったと思いますが、いずれにしろ、各国の政府や経済界などの要人が集まるダボス会議でありまして、討論の内容は別にしましても、東京ナイトを行いました会のときには、主催者側からも、東京ナイトの開催というものの要請があったと聞いております。そのために、その機会をとらえて、東京の存在感を示して、あわせて伝統文化や観光資源、産業を紹介する目的で開催いたしました。
 当日は、世界経済フォーラムの理事長のシュワブ氏や、フォーブスマガジンのフォーブスさんとか、ヘッジファンドのソロスとか、いろいろな人がやってきまして、会場が狭過ぎて、一五〇%ぐらい人が来ちゃったものですから、暑過ぎて、雪が降っているダボスでありましたけれども、通気のために窓をあけたというような結果で、結果としては非常に大成功でありました。
 たまたま一人か二人、自民党の代議士も来ておられたようで、その人の印象のインタビューもテレビに出ていたそうでありますけれども、私としては、ほとんど無料で働いたスタッフがやってくれたにしては、大変な成果が上がっておりました。
 共産党は、巨額な支出といっておられますけれども、大きな成果を生むことができた。これが本当の都市外交というものだと思っております。
   〔生活文化局長渡辺日佐夫君登壇〕

○生活文化局長(渡辺日佐夫君) 五点の質問にお答えいたします。
 東京ナイトで使用した鏡板制作の報酬についてでございますが、鏡板制作に当たっては、石原延啓氏に対して報酬は一切支払われておりません。
 なお、お話のメールは、今村参与から都職員にあてたものでございますが、そのメールの中には、今村の勝手なイメージ、頭に浮かんでいます、ふと印象というか頭に浮かんだものですなどという文言がはっきりと記載されておりまして、確定的な事項をメールで記載したものではないというのが明らかにご理解できると思います。
 次に、能オペラに関する経費でございます。
 オーディション等の準備経費百五十七万円、中止に伴う補償経費百五十九万円など、合計四百七万円でございます。このほか、能オペラ以外の事業調査も兼ねた海外出張費などが約二百万円ございます。
 次に、ニューヨークで開かれた都市の公共芸術戦略サミットの東京都からの参加についてでございます。
 ニューヨーク市姉妹都市委員会理事長から都知事あて参加の依頼があったものでございます。公共芸術の振興についての情報の入手や、東京の文化の魅力を広く世界に発信する貴重な機会であることから、東京都生活文化局として出席を決定いたしました。具体的には、代表として文化担当参与と文化振興担当の課長が参加したものでございます。
 また、同委員会は、公共芸術関係の責任者や芸術家などの参加も希望していたため、パブリックアート事業を展開しているトーキョーワンダーサイトの事業担当者と、その運営に協力している芸術家であり、全米を代表する美術大学であるスクール・オブ・ビジュアル・アーツを卒業し、ニューヨークにも多くの知人や友人を持つ石原延啓氏がオブザーバーとして参加いたしました。オブザーバーとして参加したことは、事前に主催者に提出した出席名簿にも明記されております。
 なお、石原延啓氏は自費で参加しております。
 次に、石原延啓氏とトーキョーワンダーサイトとのかかわり合いについてでございます。
 石原延啓氏は、開設時からのボランティアとして、さまざまな事業で協力や助言を得てまいりました。
 公費支出は、出張に係る旅費、約六十万円でございます。内訳といたしましては、海外出張として、トーキョーワンダーサイトコミッティのアドバイザリーボード委員として平成十五年三月にドイツ、フランス等へ出張し、約五十五万円、また、国内では、キュレーティングアーチストとして平成十五年六月に福井県武生市、同年九月に新潟県妻有地方へそれぞれ出張し、合計約六万円を支出いたしました。
 なお、先ほど知事の答弁にもございましたが、トーキョーワンダーサイトでは、石原延啓氏以外にも、カリスマ左官と呼ばれる久住章氏、立花を生ける池坊の故岡田幸三氏を初め照明の専門家など、内外で活躍している芸術家や専門家からさまざまな形で協力、助言を得ております。
 最後に、トーキョーワンダーサイトコミッティからの振り込みと決算額についてでございます。
 平成十三年当時、トーキョーワンダーサイト事業の運営計画に当たって、専門的意見を必要とするため、美術館建設に精通した専門家であるライフスケープ研究所の家村佳代子氏及び今村有策氏に施設運営アドバイザーを委嘱しておりました。この助言者謝礼として、計八十三万円をライフスケープ研究所代表の家村佳代子氏の口座に振り込んだものでございます。十万円及び七十三万円の二回に分けて振り込んでおります。
   〔百二十六番吉田信夫君登壇〕

○百二十六番(吉田信夫君) 知事に再質問します。
 知事は、私が、四男の延啓氏をワンダーサイトにかかわらせ、公費による海外出張や作品制作などさまざまな分野にかかわらせていることについて、都政の私物化そのものではないかという質問をいたしました。それ自身について全く答えていないではありませんか。
 都の文化活動に外部の専門家や有識者の知恵を結集することは当然のことです。しかし、四男を都の事業にかかわらせることによって、ゆがみが具体的にあらわれており、現実に弊害が生まれているんです。
 東京ナイトにかかわって、適正な手続ということを強調しましたが、荒川部長が今村参与に送ったメールでは、都として契約の中に盛り込ませる、旅費も盛り込ませる、制作も発注してもらう、そうしたことがはっきり書かれているんです。まさにこのような極めて異例な公費の迂回支出を部長がやらざるを得ない、指示せざるを得ない。だから、知事の息子を都政の事業にかかわらせることはやめるべきだというふうにいっているんです。
 このような迂回支出という形をとること自身をとってみても、ゆがみと弊害は明らかではありませんか。私物化といわれても仕方がありません。改めて知事、きちんと答えてください。
 また、延啓氏が鏡板を制作することは、大鼓奏者が勝手に決めたのではなく、繰り返し指摘したように、都の部長の意向に沿って東京ナイトのイベントの契約が進められたのが事実ではありませんか。違いますか。答弁を求めます。
 大体、適正な手続というなら、なぜ公募して入札するというやり方はとらなかったんですか。それをせずに最初から大鼓奏者に決め、延啓氏に仕事が行くようにしたのではありませんか。こうしたことが都庁の中で大手を振るっていることこそ私物化というものです。
 東京ナイトにかかわって問題を指摘しましたけれども、頭に浮かんだというのは、イメージのことです。金額についてはっきり書かれているんです。しかも、これが実質的な内容であって、公式見積もり内容とは異なりますということまで書かれているんですよ。
 大体千七百万も使って、当たり前であるかにいうようなことは、都民感覚としては当然納得できません。
 改めて明確な答弁を求めて、再質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) いかにも共産党らしい貧しい発想だと思いますがね。
 トーキョーワンダーサイト、あるいは東京ナイトについて申しましたことは先ほどのとおりであります。
 公募しろとおっしゃいますけど、公募したこともありますが、ろくなアイデアが来ませんな。例えば、大手、大手とおっしゃるかもしれませんが、まあ、オリンピックに関しても、オリンピックの前夜祭のために公募したんでしょうか、どうでしょうか、随意なんでしょうか、私は知りませんが、とにかくある大手でものをつくらせましたら、全然だめで、四回つくらせてもだめで、前夜に私は注文をつけて、大改造しましてやっと間に合ったんです。
 それから、その専門家と称する人間にも出しましたが、東京マラソンのポスター、五回かき直しましたけど、ろくなものが出てこない。
 別にプロがいいわけじゃないし、新しい若い人たちに新しい発想があるんです。その中の一人がたまたま私の息子でありまして、ほかにも息子の仲間はたくさんいる。そういう人たちの力を私たちはどんどんこれからかりていきます。
   〔「議長、答弁漏れ」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕

○六十七番(山加朱美君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会されることを望みます。
   〔発言する者あり〕

○議長(川島忠一君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君) ご異議なしと認め、さよう決定いたします。
 明日は午後一時より会議を開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後六時五十五分散会

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