平成十八年東京都議会会議録第十三号

○議長(川島忠一君) 三十八番吉倉正美君。
   〔三十八番吉倉正美君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○三十八番(吉倉正美君) 最初に、東京オリンピック招致に向けた最先端技術の活用について伺います。
 知事は所信表明の中で、日本が誇る先端技術を町の中で有効に活用していくことも、魅力ある町の実現に欠かせない要素であると述べられております。
 日本が世界に誇る先端技術を披瀝するオリンピックを開催するために最も期待されている科学技術の一つが、ユビキタス技術であります。日本のユビキタス技術の研究開発は世界のトップレベルにあり、ICタグを活用して、いつでも、どこでも、だれにでも、音声、映像、文字など多様な形で情報提供が可能となり、次世代の世界標準のITになると期待されております。
 例えば、都心の歩道や地下街などの歩行空間にICタグを設置して、携帯電話等のモバイル端末を通じて位置情報を提供することにより、障害者や高齢者を含む国内外のすべての観光客を安全、快適に目的地まで誘導するシステムを構築することができます。同様に、電車やバスの運行状況や停車駅の情報なども提供でき、さらに、入場券、乗車券にICタグを張りつけて、高齢者や障害者の移動をトータルにサポートすることも可能であります。
 都はこれまで、上野で実証実験を行い、全国の注目を集めております。また、今年度に予定されている銀座の実証実験では、公衆無線LANを活用したモバイル端末の情報更新も行われると聞いております。
 こうしたユビキタス技術による東京のインフラ整備は、ユニバーサルデザインのまちづくりや観光、商業振興のツールとして、オリンピック終了後も大いに活用できます。また、研究開発や普及に際しては、民間企業が競い合って参入する仕組みをつくることにより産業の活性化を促すことも可能です。大会会場の配置される都心部全体が、あたかも先端技術・福祉技術博覧会となるようなコンセプトをつくり上げるべきであります。
 このように幅広い可能性を持った先端技術の活用によるオリンピック招致戦略について、知事の所見を伺います。
 次に、具体的課題についてでありますが、第一は、オリンピックスタジアムなどの競技場や選手村、メディアセンター等の施設の周辺に公衆無線LANのサービスエリアを設定し、訪れる外国人や障害者、高齢者の方々に位置情報を提供するとともに、誘導、案内、音声ガイダンスなどのためにユビキタス技術を活用すべきであります。加えて、競技情報を初め、災害時の避難経路や障害者トイレの案内など、多種多様なサービスの提供に努めるべきであります。所見を伺います。
 第二は言葉のバリアフリーです。国土交通省が行っている外国人旅行者へのユビキタス観光ガイドの実証実験の結果を踏まえ、今後は、携帯電話等を用いた多言語自動翻訳システムの開発が求められております。都は、国の開発状況をもとに、多言語での情報提供サービスを東京オリンピックにはぜひ実用化できるように取り組むべきであります。所見を伺います。
 第三に、世界には民族、宗教によって異なる多様な食文化があり、また、ベジタリアンの方々も数多くおられます。こうした方々にも安心して食事を楽しんでいただくためのシステムが不可欠です。さらに、生鮮食料品のトレーサビリティーシステムを確立して、生産、流通、小売の履歴情報を示し、日本の多様で味わい深い食材に親しんでいただくことも重要です。所見を伺います。
 次に、公営企業改革、特に水道事業について伺います。
 都がこの七月策定した行財政改革実行プログラムには、経営資源の集中と周辺業務のアウトソーシングを基本とした公営企業改革が示されております。
 水道局がこれまで徹底した事業の見直しを進め、民間にゆだねる分野は民間へと、常にコスト意識を持って不断の経営努力を行ってきたことは評価するものであります。
 首都東京を支えるライフラインとして、安全でおいしい水を提供する東京水道の果たす役割と存在は極めて重要であります。特に水道は、飲み水として直接人命にかかわる公共性の高い事業であり、責任ある事業運営が求められております。
 今後、水道事業の改革に当たって最も重要なことは、都民の命を守る責任体制の構築であり、効率性だけを優先して都民の安全を犠牲にしてはならないという点であります。強固な責任体制を築くためには、水道局の適切な指導監督が不可欠であり、都民のだれもが納得できるようなスキームを早急に提示すべきであります。見解を伺います。
 さらに、公営企業として、効率化を追求しながらも、公共性の立場から、将来にわたって安全でおいしい水を確実に都民に供給できる運営体制を確立すべきであります。所見を伺います。
 次に、震災発生時の帰宅支援について伺います。
 都は、首都直下型地震の被害想定の最終報告において、震度五強の場合には、鉄道などほとんどの交通機関が停止し、都全体で、外出者約千百四十四万人のうち、約三百九十二万人の帰宅困難者が発生するとしております。一方、帰宅距離が二十キロメートル以内の帰宅可能者は、都全体で約七百五十二万人と想定されています。これまで帰宅困難者に焦点が当てられておりましたが、徒歩による帰宅者対策も極めて重要であります。
 都は、支援を必要とする徒歩帰宅者に対して、水、トイレ、休息の場の提供、沿道情報の提供を行うため、平成十二年に都立学校、平成十六年にガソリンスタンド、平成十七年にコンビニをそれぞれ帰宅支援ステーションとして指定しました。
 しかし、指定はしたものの、果たして現実的な対応が可能になっているのかどうか疑問があります。中には、帰宅支援ステーションの指定を受けたことすら知らなかった施設もあると報道されております。特に都立学校においては、近隣住民の避難所としての機能を担う学校も多く、都と区市町村の指定の重複による混乱も懸念されます。
 そこで、コンビニ、ガソリンスタンド、都立学校が帰宅支援ステーションとしての実質的な機能を果たすために、水、資材の備蓄に加え、マニュアルを策定し、それに基づいた訓練を行う必要があります。また、ラジオやインターネットを活用したきめ細かな災害情報、交通情報を提供する体制を早急に構築すべきであります。所見を伺います。
 次に、地震情報を迅速にキャッチすることで被害を大幅に軽減できると期待されている緊急地震速報システムについて伺います。
 気象庁は先月から、地震の揺れが到達する前に感知できるP波を利用して、揺れの予測到達時間や到達予測震度などの情報を提供する緊急地震速報システムの試行を開始しました。現在、建設現場、病院、鉄道事業者などの分野の希望者に情報を提供しています。この情報に基づいてスムーズな避難や事前の対応が可能となるシステムであります。
 気象庁では、試行期間の分析を踏まえ、十九年度中にも一般に提供する予定であると聞いております。今後、都管理の施設やエレベーター、学校、都営地下鉄等に早期にこの緊急地震速報システムを導入し、人的、物的被害の軽減に努めるべきであります。見解を伺います。
 最後に、新宿駅周辺の基盤整備について伺います。
 新宿駅周辺は、現在、鉄道敷地による東西の分断により、歩行者の通行に大きな不便を生じ、魅力ある都市空間の形成に支障を来しております。
 そこで、新たに東西自由通路を建設し、新宿駅周辺の人の回遊性を確保し、にぎわいの創出と地域の活性化を図ろうという構想が持ち上がり、大きく期待を集めています。
 この東西自由通路の開設については、新宿区長を整備促進同盟の会長として、区と区民はもとより、周辺企業も一体となってその実現を目指しております。
 八月には、北側一雄前国土交通大臣が新宿駅東西自由通路の予定地を視察し、国土交通省としても応援をしていきたいと述べております。さらに、東西自由通路の幅員についても、青梅通路の空間等を活用し、幅員二十五メートルで整備していくことで関係者間の調整が進んでいると聞いております。
 そこで、都は、こうした状況を踏まえて、新宿区、JR東日本と積極的に協議し、計画の実現に向けて指導力を発揮すべきであります。所見を伺います。
 関連して、新宿靖国通り地下歩行者空間の整備について伺います。
 都及び東京メトロが建設している地下鉄十三号線は、平成二十年六月の開業が決定し、地元区民からも大きく期待されております。ところが、この十三号線新駅と新宿駅地下サブナードは全く接続されておりません。新宿駅周辺の回遊性を高め、歩行者の利便性を向上させるために、地下サブナードを明治通り方面へ延伸させ、地下鉄十三号線新駅との接続を図るべきであります。
 都は、今後、積極的に新宿区及び関係者と連携をとり、計画策定に向けた取り組みを行い、調査費等も計上すべきであります。所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 吉倉正美議員の一般質問にお答えいたします。
 先端技術の活用によるオリンピック招致戦略についてでありますが、全世界の注目を集めるオリンピックにおいて先端技術を活用することは、日本の技術力の飛躍的な進歩に資するとともに、その成果を世界全体に波及させる効果もあると思っております。
 現在、オリンピックにおける先端技術の積極的な活用方策について、専門家などの意見も聞き、折々会合を開いておりますが、立ち会って聞きますと、我々素人からすると、想像を超えた奇想天外というような案も出てまいりまして、大変心強く思っております。
 これから、オリンピックの成功のために、付随した観光も含めて、こうした技術の多角的な活用に努力していきたいと思っております。
   〔東京オリンピック招致本部長熊野順祥君登壇〕

○東京オリンピック招致本部長(熊野順祥君) 三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、東京オリンピックにおきますユビキタス技術の活用についてでございますが、ユビキタス技術は、人、場所、時間を問わず情報アクセスを可能とするものでございます。
 オリンピックの競技会場の周辺では、障害者や高齢者、外国人も含め、多くの集客が見込まれておりますので、この技術は、こうした方々の快適性、利便性をサポートする上で有効なものと認識してございます。
 今後、お話のあったサービスを含めまして、東京オリンピックにおけるユビキタス技術の活用について幅広く検討をしてまいります。
 次に、東京オリンピックにおきます多言語での情報提供サービスの実用化についてでございますが、現在、国等で研究開発が進められております多言語自動翻訳システムは、大会期間中に東京を訪れる大勢の外国人に対しまして、きめ細かな情報提供を行う上で有効な手段であると考えてございます。
 今後とも、実証実験の推移等を見守りつつ、先端技術を活用した多言語での情報提供サービスについて検討を進めてまいります。
 最後に、異なる多様な食文化を持つ方々に安心して食事を楽しんでいただくためのシステムについてでございますが、オリンピックにおいて、食事は快適な滞在の重要な要素でございます。海外から来訪する選手や観客は、それぞれ異なる文化や風習を持ってございます。
 こうした点につきましても、きめ細かい配慮を行いまして、日本食はもとより、世界各国の料理を本国と同じクオリティーで味わっていただける東京の利点を生かしまして、選手や観客に味覚の面でも最高の満足を提供していく所存でございます。
   〔中央卸売市場長比留間英人君登壇〕

○中央卸売市場長(比留間英人君) 生鮮食料品のトレーサビリティーシステムについてでございます。
 トレーサビリティーシステムは、生産流通履歴の管理が可能であり、商品の信頼性向上や食の安全性を確保し、さまざまな食文化を持つ方々にも適切な情報が提供できるほか、物流の効率化を図るためにも有効な方法と認識してございます。
 現在、国においてICタグ等の新たな技術を活用した実証実験を行っている段階であり、都では、築地市場や大田市場などで協力をしているところでございます。
 このシステムの開発導入に当たりましては、生産から消費までを全国的に一貫して構築することが必要であり、今後とも、国の実証実験に積極的に参画し、その実現に向け取り組んでまいります。
   〔水道局長御園良彦君登壇〕

○水道局長(御園良彦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、水道事業運営における責任体制の確保についてでございますが、水道局ではこれまで、経営の効率化を図るため、さまざまな企業努力に努めてまいりましたが、本年七月に公表されました行財政改革実行プログラムに沿いまして、一層の効率化に向け、監理団体を活用した新しい事業運営体制を構築していくことといたしました。
 監理団体につきましては、今後、公共性の高い業務を担わせていくことから、ご指摘のとおり、指導監督を的確に行い、責任ある体制を確保していくことが極めて重要であると認識しております。
 このため、監理団体が策定する中期経営計画の進捗管理や総合的な評価を行うとともに、今般の会社法改正に伴い創設されました会計参与制度を導入いたしまして、一層の透明性を高めていくよう指導してまいります。
 さらに、新たに当局に設置する外部委員会から専門的見地による評価、助言を得まして、監理団体の指導監督に反映させてまいります。
 これらの仕組みにつきましては、監理団体への出資比率を引き上げる時期との整合を図りながら、ご指摘の点を踏まえまして早急に実施してまいります。
 次に、今後の事業運営体制についてでございますが、水道事業は、都民生活と首都東京の都市活動を支える重要なライフラインであり、極めて公共性が高く、効率経営のもと、責任をもって安定給水を確保することが重要であると認識しております。
 このため、民間にゆだねられている業務は民間事業者に委託するとともに、基幹的業務につきましては、コア業務を当局、準コア業務を監理団体が担うといった一体的な事業運営体制によりまして責任を担保し、公共性と効率性を両立させた事業運営を行ってまいります。
 今後とも、東京水道の未来をしっかり見据え、将来にわたって安全でおいしい水を安定的に供給する体制を構築してまいります。
   〔総務局長大原正行君登壇〕

○総務局長(大原正行君) 二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、帰宅支援ステーションについてでございます。
 都はこれまで、都立学校やガソリンスタンド、コンビニエンスストアを帰宅支援ステーションに指定いたしまして、八都県市の連携による徒歩帰宅訓練の実施等を通じまして支援の有効性を検証してまいりました。
 この結果、こうした施設における徒歩帰宅者への支援の重要性が改めて確認される一方、帰宅支援ステーションとしての役割の理解が十分でない施設もございました。
 このため、今後、徒歩帰宅者への支援や情報提供の方法などをルール化した運営マニュアルを整備いたしまして、施設管理者への周知徹底を図りますとともに、マニュアルに基づいた訓練を実施することにより、帰宅支援ステーションとしての実効性を高めてまいります。
 次に、緊急地震速報システムの導入についてでございます。
 本システムにより提供される地震情報を活用し、大きな揺れが到達する前に、緊急避難や鉄道の運行制御など危険回避行動をとることで、被害の軽減が期待できるものでございます。
 一方、本格運用に向けましては、直下型地震には対応できないことに加えまして、予測震度の信頼性の向上や、都民の混乱を引き起こさないような情報の提供方法といった課題がございます。
 こうした点を踏まえまして、地震動による事故や人身への被害を防止し、都民の安全を確保する視点から、都施設のそれぞれの機能に応じた効果的な活用について具体的に検討してまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 新宿駅周辺整備に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、新宿駅の東西自由通路についてでございますが、自由通路は、駅周辺の回遊性を向上させ、にぎわいと活力あふれるまちの形成に必要な施設でございます。
 都はこれまで、地元区が設置した新宿駅周辺整備計画検討委員会に、JRなど関係者とともに参画してまいりました。検討委員会では、駅構内の通路や駅改修のための工事用通路を有効に活用することなど、整備の方策について検討を進めております。
 都といたしましては、今後とも、東西自由通路の早期実現に向けて、国やJRとの協議、調整や技術的支援を行うなど、区の取り組みに対し積極的に協力してまいります。
 次に、サブナードの延伸についてでございますが、靖国通り地下歩行者道の地下鉄十三号線への延伸は、歩行者の利便性や回遊性の向上に資するものと認識しております。
 その実現には、周辺のまちづくりとの整合を図った上で、整備主体や事業スキームなどを検討することが不可欠でございます。
 都としては、区が取り組むまちづくりへの支援を行うとともに、延伸の課題解決に向けた調査検討に参画するなど、必要な協力を行ってまいります。