平成十八年東京都議会会議録第九号

平成十八年六月十四日(水曜日)
 出席議員(百二十四名)
一番遠藤  守君
二番伊藤 興一君
三番田中たけし君
四番鈴木 隆道君
五番宇田川聡史君
六番後藤 雄一君
七番福士 敬子君
八番伊沢けい子君
九番そなえ邦彦君
十番原田 恭子君
十二番伊藤 ゆう君
十三番原田  大君
十四番河野百合恵君
十五番小竹ひろ子君
十六番松葉多美子君
十七番大松  成君
十八番中山 信行君
十九番高倉 良生君
二十番早坂 義弘君
二十一番高木 けい君
二十二番崎山 知尚君
二十三番坂本たけし君
二十四番石森たかゆき君
二十五番高橋 信博君
二十六番村上 英子君
二十七番鈴木あきまさ君
二十八番山口 文江君
二十九番佐藤 広典君
三十番尾崎 大介君
三十一番山口  拓君
三十二番伊藤まさき君
三十三番松下 玲子君
三十四番たぞえ民夫君
三十五番村松みえ子君
三十六番橘  正剛君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番谷村 孝彦君
四十番矢島 千秋君
四十一番高橋かずみ君
四十二番山加 朱美君
四十三番串田 克巳君
四十四番吉原  修君
四十五番山田 忠昭君
四十六番臼井  孝君
四十七番野島 善司君
四十八番服部ゆくお君
四十九番大西由紀子君
五十番野上ゆきえ君
五十一番西岡真一郎君
五十二番吉田康一郎君
五十三番斉藤あつし君
五十四番泉谷つよし君
五十五番くまき美奈子君
五十六番大西さとる君
五十七番かち佳代子君
五十八番植木こうじ君
五十九番長橋 桂一君
六十番野上 純子君
六十一番東村 邦浩君
六十二番小磯 善彦君
六十三番東野 秀平君
六十四番松原 忠義君
六十五番田代ひろし君
六十六番神林  茂君
六十七番秋田 一郎君
六十八番林田  武君
六十九番きたしろ勝彦君
七十番近藤やよい君
七十一番高島なおき君
七十二番鈴木 一光君
七十三番増子 博樹君
七十四番いのつめまさみ君
七十五番門脇ふみよし君
七十六番小沢 昌也君
七十七番石毛しげる君
七十八番岡崎 幸夫君
七十九番山下 太郎君
八十番清水ひで子君
八十一番古館 和憲君
八十二番松村 友昭君
八十三番藤井  一君
八十四番ともとし春久君
八十五番木内 良明君
八十六番鈴木貫太郎君
八十七番こいそ 明君
八十八番遠藤  衛君
九十番川井しげお君
九十一番三宅 茂樹君
九十二番樺山たかし君
九十三番宮崎  章君
九十四番古賀 俊昭君
九十五番立石 晴康君
九十六番桜井  武君
九十七番初鹿 明博君
九十八番酒井 大史君
九十九番花輪ともふみ君
百番大沢  昇君
百一番大津 浩子君
百二番大塚たかあき君
百三番馬場 裕子君
百四番曽根はじめ君
百五番大山とも子君
百六番石川 芳昭君
百七番中嶋 義雄君
百八番石井 義修君
百十番比留間敏夫君
百十一番吉野 利明君
百十二番新藤 義彦君
百十三番野村 有信君
百十四番大西 英男君
百十五番山崎 孝明君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番相川  博君
百二十一番柿沢 未途君
百二十二番中村 明彦君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番田中  良君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番渡辺 康信君

 欠席議員(二名)
八十九番 倉林 辰雄君
 百九番 桜井良之助君
 欠員
十一番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事横山 洋吉君
副知事大塚 俊郎君
副知事関谷 保夫君
出納長幸田 昭一君
教育長中村 正彦君
知事本局長山口 一久君
総務局長高橋  功君
財務局長谷川 健次君
警視総監伊藤 哲朗君
主税局長菅原 秀夫君
生活文化局長山内 隆夫君
都市整備局長柿堺  至君
環境局長大橋 久夫君
福祉保健局長平井 健一君
産業労働局長成田  浩君
建設局長岩永  勉君
港湾局長津島 隆一君
交通局長松澤 敏夫君
消防総監関口 和重君
水道局長御園 良彦君
下水道局長前田 正博君
青少年・治安対策本部長舟本  馨君
東京オリンピック招致本部長熊野 順祥君
病院経営本部長大塚 孝一君
中央卸売市場長森澤 正範君
選挙管理委員会事務局長渡辺日佐夫君
人事委員会事務局長佐藤  広君
労働委員会事務局長押元  洋君
監査事務局長高橋 道晴君
収用委員会事務局長嶋津 隆文君

六月十四日議事日程第三号
第一 第百四十四号議案
特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第二 第百四十五号議案
市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三 第百四十六号議案
東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第四 第百四十七号議案
東京都非常勤職員の公務災害補償等に関する条例の一部を改正する条例
第五 第百四十八号議案
東京都都税条例の一部を改正する条例
第六 第百四十九号議案
学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第七 第百五十号議案
東京都教育委員会職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第八 第百五十一号議案
東京都心身障害者福祉センター条例の一部を改正する条例
第九 第百五十二号議案
東京都肢体不自由者自立ホーム条例の一部を改正する条例
第十 第百五十三号議案
東京都立し体不自由児施設条例の一部を改正する条例
第十一 第百五十四号議案
東京都立重症重度心身障害児者施設条例の一部を改正する条例
第十二 第百五十五号議案
東京都立総合精神保健福祉センター及び東京都立精神保健福祉センター条例の一部を改正する条例
第十三 第百五十六号議案
東京都養護老人ホーム条例の一部を改正する条例
第十四 第百五十七号議案
東京都女性福祉資金貸付条例の一部を改正する条例
第十五 第百五十八号議案
東京都立病院条例の一部を改正する条例
第十六 第百五十九号議案
東京都立精神病院条例の一部を改正する条例
第十七 第百六十号議案
警視庁の警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する条例の一部を改正する条例
第十八 第百六十一号議案
警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例
第十九 第百六十二号議案
警視庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第二十 第百六十三号議案
東京都消防関係手数料条例の一部を改正する条例
第二十一 第百六十四号議案
東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第二十二 第百六十五号議案
特別区の消防団員に係る退職報償金に関する条例の一部を改正する条例
第二十三 第百六十六号議案
特別区の消防団員等の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第二十四 第百六十七号議案
都立町田高等学校(H十八)改築及び改修工事請負契約
第二十五 第百六十八号議案
警視庁大崎警察署庁舎(H十八)改築工事請負契約
第二十六 第百六十九号議案
平成十八年度東京港臨海道路(Ⅱ期)南北水路横断橋(仮称)鋼けた製作・架設工事請負契約
第二十七 第百七十号議案
都有地の不法占拠者に対する工作物収去土地明渡等請求訴訟事件に関する和解について
第二十八 第百七十一号議案
地方自治法等の一部を改正する法律による改正前の地方自治法第二百四十二条の二第一項第四号の規定による訴訟に係る費用の負担について
第二十九
地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都都税条例の一部を改正する条例の報告及び承認について
第三十
地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例の報告及び承認について
第三十一
地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターが定めた料金の上限の認可の報告及び承認について
議事日程第三号追加の一
第一
東京都人事委員会委員の選任の同意について(一八財主議第五七号)

   午後一時開議

○議長(川島忠一君) これより本日の会議を開きます。

○議長(川島忠一君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(川島忠一君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 知事より、東京都人事委員会委員の選任の同意についてが提出されました。
 これを本日の日程に追加いたします。

○議長(川島忠一君) 昨日に引き続き質問を行います。
 七十番近藤やよいさん。
   〔七十番近藤やよい君登壇〕

○七十番(近藤やよい君) アジアやアフリカの途上国といわれる国々では、毎日約一万五千人の子どもたちが、食べ物がないために死んでいることが知られています。
 一方、現在の東京都では、公立小学校と中学校の給食の食べ残しが年間合計して約七千トンを超え、その大部分はごみとして処理されています。単純に、七千トンの食べ物があれば、約一万九千人もの子どもたちの命が救えるという計算もできます。つまり、世界じゅうの飢えに苦しむ子どもたちの命が救えるというこの七千トンの給食の食べ残しが、都ではごみとして年間処理されているという事実に、強い憤りを感じます。
 そこで、現在都は、給食から生じる残菜の発生抑制のために何らかの対策を講じているのかどうか、また、教育現場で、食べ物は好き嫌いなく、バランスよく食べるというごくごく基本的な指導がきちんと行われているのかどうかという二点の観点から質問を行います。
 子どもたちの食事に、好きなものだけしか食べない傾向が目立ち始め、バランスのよくない食事により、運動能力が低下し、子どもの糖尿病患者が二十年で二・七倍、脳梗塞や心筋梗塞にかかりやすい高脂血症の小学生は十人に一人、その数は、十五年で一・五倍に増加していることが明らかになっています。好きなものばかり食べることを許す環境のもとで、このままでは、ごみとして処理される食べ物の量がますますふえることが懸念されます。
 都は、平成九年度に、事業系生ごみに係る使用量、廃棄量及び内容物その他の調査を行い、最も生ごみの発生量が多いのは、ホテルでもなくレストランでもなく、公立中学校の給食の残菜であることを明らかにしました。また、十二年度には、ああ、もったいないというタイトルで生活を振り返り、物を大切にしてごみを少なくするための冊子を作成し、学校や家庭に配布されました。
 ノーベル賞受賞者のマータイさんや我が国の大臣がふろしきを振りかざし、もったいない運動を展開するずっと以前から、学校給食の残菜の多さに着目し、ごみの発生抑制に対して、もったいないという視点から啓発活動を展開されたことは、当を得ていたと評価します。しかしながら、せっかくの先見性ある取り組みが途中で立ち消えた感があり、残念でなりません。
 一般廃棄物の処理が二十三区に移管された今も、廃棄物の減量に関する都民への意識啓発は、あくまでも知事の基本的な責務であることは、条例上でも明らかです。現在教育庁では、くらしと環境学習の小学生向けウエブページの中で、皆さんの学校やクラスで給食の残菜調査をしてみましょう、調べた結果をグラフにまとめ、わかったことや考えたことを発表してみましょうと、子どもたちには問題意識を強く植えつけていますが、自分たちは、給食の食べ残しの発生抑制を促す積極的な対策を講じてはいません。子どもたちに対する啓発活動を強化することはもちろんですが、都自身も、もっと積極的な施策を展開していただきたいものです。
 給食の残菜の量は、自治体や学校の取り組み次第で大きく左右されるとの報告もあります。環境局においても、当初の先駆的な視点を大切に、いま一度実態を正確に把握し、その上で発生抑制に係る啓発活動に努めるべきと考えますが、ご所見を伺います。
 教育の現場に目を向けてみますと、無理に給食を全部食べろというと登校拒否になる危険があり、その方が怖い、家庭でも好き嫌いを容認している風潮があり、学校で食べ残さないよう教えると、その親から抗議の電話が入ったりして指導しづらいという先生方のお話を伺いました。正直、腰が引けているな、弱腰だなという印象を受けましたが、うちの何々ちゃんの嫌いなピーマンを無理に食べるようにいうなんて、なんてひどい先生なのと(笑声)、文句をいってくるような保護者を相手にしなければならないのが現場の先生方です。
 そこで、いま一度、都の基本的な食に対する方針を明らかにして、子どもばかりでなく保護者も再教育するとともに、ケースに応じた具体的な指導方法を示すことで、子どもの個性に応じたきめ細かい対応を可能とし、好き嫌いをせず、バランスよく、残さず食べるというごくごく基本的な指導を現場できちんと行える環境づくりが必要と考えますが、ご所見を伺います。
 現在、食に関する指導研修は、学校栄養職員など一部の関係者だけを対象として行われていますが、管理職はもとより、子どもと実際に食をともにする教員全体にまでその対象を広げ、意識の向上を図る必要があると考えますが、ご所見を伺います。
 今回、質問を通じて、食に対する自治体の取り組みにかなりの温度差があることを知りました。区によっては、学校ごとに給食の残菜の量を明らかにして順位づけ、食に対する取り組みの指標としているところもあるそうです。
 都も、今回初めて、そのような取り組みをしている自治体があることを認識したとのことですが、食の問題を教育の立場から広域的に取りまとめるべき都教委としては、少々取り組みが甘いのではないでしょうか。自治体や学校別の取り組み方法などを把握し、それが食べ残しの量にどのような影響を与えるかなどを分析し、その内容を明らかにすれば、対応に消極的な自治体や学校への一つの警鐘となるはずです。
 また、一方で、モデル地区やモデル校を選定し、あらゆる場面で食に対するさまざまな試みを行うなど、都の積極的な方向性を明らかにすべきと考えます。ご所見を伺います。
 あふれ返る物に囲まれ、ダイエットと称して給食を残したり、好き嫌いが激しく、嫌いなものには一切手もつけないなどの子どもたちの食生活の実態を、知事はどのように感じていらっしゃるのでしょうか。
 また、今後都は、家庭と学校が等しい認識のもと、密接に連携しながら、子どもたちの心と体の健康を守るため、または取り戻すために、食に対する教育に取り組んでいかなければならないと考えますが、知事のご所見を伺います。
 以前に、ある定時制高校の授業の様子を伺う機会がありました。入学したばかりの生徒の数学の授業では、長方形の面積の求め方、分数の計算から指導するとのことでしたし、中学においても、小学校で当然身につけているはずの掛け算九九ができない生徒が相当入学し、困難な指導を余儀なくされているというお話もありました。
 また、ある都立高校の校長先生は、入学試験では自分の名前を漢字で書かせるからいいものの、もしローマ字で書かせるとするならば、自分の名前すら書けない高校生が大勢いるとおっしゃっていました。
 こうした現場の深刻なお声を聞くと、都教委による小中学校の学力調査の結果はおおむね良好であるとの分析に、素直にうなずくことはできません。中学生、高校生になっても、小学校で身につけるべき学習が身についていない子どもたちが相当数いるという現実を、都はどのように認識していらっしゃるのでしょうか、まず伺います。
 勉強すればだれでも自分の将来に一定の希望を持てることを信じられた時代は終わり、自分の努力が報われることを見出して努力できる子と、そうでない子との二極化、いわゆる希望格差の問題が指摘されていますが、私は、いわゆる読み書きそろばんは、凡人が生きていく上で、自分を守る最低限必要な力であると考えておりますので、ごく基本である掛け算九九を確実に身につけさせないまま、見て見ぬふりで中学校への進学を許す現場教師や都教委の姿勢は、将来の希望が持てる持てない以前に、子どもの可能性を奪ってしまうという意味において、見逃すことはできません。
 そこで、都教委は、中学生になっても小学校で学習すべき内容を理解できないような成績低位層の子どもたちの実態と課題をどのように把握していらっしゃるのでしょうか。また、もし把握していないとするならば、その原因も含めて、早急に調査すべきと考えますが、ご所見を伺います。
 学習指導要領には、教師が当然指導するべき内容が明らかにされてはおりますが、それは決して、すべての子どもたちが必ず到達しなければならない目標として教員を縛れるものではありません。だからこそ、中には、教員の義務は指導要領に書かれていることをとりあえず教えることであり、子どもがその内容をどの程度理解して身につけているかどうかは責任外と考える教員もおり、現場で報告されているような、小学校で当然身につけていかなければならない内容が欠落している中学生や高校生が生まれてしまうのです。
 そこで、このような無責任な教員の態度を今後一切許さないために、都は独自に、小学生が生きていく上で最低限これだけは確実に身につけて卒業しなければならないという到達目標を取りまとめ、すべての子どもたちが確実に身につけられるまで徹底して指導しなければならない内容として教員に示し、教員の責任範囲を明確にするべきです。ご所見を伺います。
 動物保護のボランティアの方々から話を伺ってあ然としました。あるペットショップから、皮膚はぼろぼろで毛が半分抜け落ちている犬、手の先の毛がはげて骨が見えているウサギなどを店主の了解を得て保護し、獣医師の診断を仰いだところ、極端にやせていて、きちんとえさも与えられておらず、死ぬ一歩手前の状態と診断され、水もなかったり、あっても汚れていたりと、極端に不衛生な環境で数年間過ごしてきたことが明らかになりましたが、このペットショップが、都による一定の指導は受けてはいるものの、現在も都内で大手を振って営業を続けているというのですから、驚きです。
 動物をともに生きる人生のパートナーと扱う人がふえている今、ペットショップなどの動物販売業者が衛生的な環境のもとで病気のない健康な動物を取り扱うよう、都が指導や監視体制を強化し、悪質な業者をのさばらせない体制づくりをすべきと考えます。
 そこで、改正動物愛護管理法の施行の今を好機として、繰り返し指導を受けているような悪質なペットショップに対しては、目先の一時的な改善でよしとせず、抜本的な解決がなされぬうちは安易に登録に応じないよう、慎重の上にも慎重を期した対応をすべきと考えますが、ご所見を伺います。
 二十三区内の千百三十九軒のペットショップに対して、指導などに当たる都の職員はわずか七人です。それでも厳正を期する努力をされている姿勢は認めますが、決して十分とはいえません。
 そこで、地元から直接ペットショップのにおいや鳴き声などの苦情を受けることの多い区市町村の職員との連携を密にして、よりきめの細かい指導監視体制を構築するべきと考えますが、ご所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 近藤やよい議員の一般質問にお答えいたします。
 子どもたちの食をめぐる状況についてでありますが、子どもたちの偏食や朝ご飯を食べられない、食べさせてもらえない、あるいは家族全員が食卓を囲んでの団らんがほとんど経験されていないなどのゆがんだ食に関する習慣は、生活規範そのものの乱れであると思います。世の中随分ぜいたくに豊かになってきましたが、一方では、こういう肝心の食に関してゆがんだ現象があらわれているわけでありまして、食育の基本は家庭でありますが、現在は、核家族化などによりまして、子どもたちに必要な食に関する伝統・文化が家庭においても継承されにくくなっております。
 昔は、お母さんのつくったお弁当をみんな持ってきて学校で食べたものですけれども、給食の時代になりましたが、あるとき、ある学校で、たまにはお母さんの愛情をお弁当で感じさせるために、日を決めて、お母さんにつくってもらった弁当を持ち寄るようにと先生が子どもたちに命じましたら、ある家庭では、お母さんが弁当をつくるのが面倒くさくて、カロリーメイトを二本、要するに箱に入れて持たせたそうでありまして、こうなってくると、一体、親子の食を通じての関係はどうなったかという暗たんたる気持ちになります。
 今後は、たくましく生きていく子どもたちをはぐくむためにも、学校においても、ご指摘のように先生たちが腰を引かずに、食育を充実させていくことが大切であると思います。
 学校と家庭が共通の認識を持ちまして、食育の推進を図っていく必要があると思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 六点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、基本的な食に対する方針についてでありますが、近年、偏食や朝食欠食など、子どもの食生活に乱れが目立つようになっており、生涯にわたる健康づくりの基礎を培うためにも、学齢期におけます望ましい食習慣の確立が大変重要になっております。
 食育の基本はもちろん家庭でございます。学校給食におきましても、食べ残しを単に注意するような画一的な指導ではなく、個々の児童生徒の実態に即した、きめ細かい給食指導が必要となっております。
 そのため、都教育委員会では、区市教育委員会や校長などによります公立学校における食育に関する検討委員会を設置し、食育の目標や食育推進の基本方針などについて、本年七月を目途に検討を進めており、その中で、給食指導の内容につきましても議論を深めてまいります。
 今後、この検討結果を指針としてまとめ、各学校に周知し、学校、家庭が連携した取り組みを推進してまいります。
 次に、食に関する指導の研修についてでありますが、食育を推進するためには、各学校において、すべての教職員がその重要性を認識し、給食指導や教科などで食に関する指導に取り組むことが必要であります。現在、食育に関する検討委員会におきまして、食に関する教員研修の実施方法を検討しているところであります。
 今後、検討結果を踏まえ、都教育委員会では、区市町村教育委員会と連携し、教員研修の充実を図ってまいります。
 また、野菜を栽培するなど、生産体験を通しまして偏食を克服した取り組みなど、食に関する指導の実践事例の情報を、新たにホームページなどを通じて広く提供していくことなどによりまして、教職員の資質の向上に努めてまいります。
 次に、残菜量の実態把握やモデル校などについてであります。
 現在、学校給食における残菜量につきましては、文部科学省の委託により調査しているところでありますが、今後その結果を料理別、校種別等で比較できるよう集計いたしまして、区市町村教育委員会へ情報提供してまいります。
 また、小中学校や区市町村教育委員会においては、残菜量を調査し、献立作成の工夫や給食指導に生かす取り組みで成果を上げている事例もあることから、都教育委員会として、こうした取り組み事例を教職員を対象とした研修会において紹介するなど、すべての学校で食育の推進が図られるよう、普及啓発に取り組んでまいります。
 なお、食育を推進するに当たりましては、ご提案の食育推進モデル校の指定は大変有効な手法だと認識しております。食育に関する検討委員会において議論してまいります。
 次に、学力の定着が不十分な児童生徒の受けとめについてでございます。
 国際的な学力調査の結果では、日本の子どもの場合、読解力を問う問題や数学の得点分布から、中位層が減り下位層がふえているという指摘がございます。また、東京都の学力向上を図るための調査の結果から、全体的にはおおむね良好ではございますが、個々の学習状況では、基礎的な漢字や計算につまずいている児童生徒がいることが明らかになっております。
 都教育委員会は、こうした状況は、児童生徒がその後の学校生活や社会生活を送る上で見過ごすことができない問題であると認識しております。
 次に、学力の定着が不十分な児童生徒の実態把握についてであります。
 都教育委員会は、これまでの調査におきまして、各教科の全体的な傾向や問題ごとのつまずきなどを明らかにすることによりまして、児童生徒の学力の現状と課題を把握してきたところでございます。
 学力の定着が不十分な児童生徒の学力向上を図るためには、ご指摘のとおり、一人一人に焦点を当て、理解や習熟の程度を把握することが必要であるというふうに認識しております。
 今後、都教育委員会は、こうした児童生徒の実態をより具体的に把握するために、新たな調査の実施に向けて、その内容や方法を早急に検討してまいります。
 最後に、学力を着実に身につけさせる方策についてでございます。
 学力の定着が不十分な児童生徒に確かな学力を定着させるためには、確実に身につけさせる内容について、教師が指導の到達目標を明確にして指導に当たることが重要でございます。
 今後、都教育委員会は、こうした児童生徒の実態を踏まえ、ご指摘のとおり、漢字や掛け算九九など、小中学校の各段階で最低限だれでもが確実に身につけるべき学習内容を学校に明らかにして、教師が指導の到達目標を設定する際に活用できるよう、区市町村教育委員会と連携して、児童生徒の学力向上に努めてまいります。
   〔環境局長大橋久夫君登壇〕

○環境局長(大橋久夫君) 学校でのごみの発生抑制についてのご質問にお答えします。
 学校給食などでの食べ残しをなくすことは、ごみの発生抑制の観点からも大変重要であると認識しており、さらなる取り組みを進める必要があると思います。
 このため都は、広域的自治体として区市町村を支援する立場から、今後、ホームページに小中学生向けのページを新たに設け、食べ物を大切にすることなどを含め、ごみの発生抑制の重要性を訴えてまいります。
 また、教育現場でのごみの発生抑制の指導に活用できるよう、各区市町村の学校のごみ排出状況を調査し、そのデータを関係局などを通じて積極的に提供してまいります。
   〔福祉保健局長平井健一君登壇〕

○福祉保健局長(平井健一君) いわゆるペットショップの指導について、二点のご質問でございます。
 まず、動物販売業の登録時の指導についてでございますが、改正動物愛護管理法の施行によりまして、これまでの登録業者も、一年以内に新たな登録が必要となりました。この登録に当たりましては、申請書類の審査のみでなく、動物監視員が店舗に赴きまして、施設の構造設備や動物の管理方法等についても審査することとしております。
 現在、改善指導中の事業者につきましては、法の基準に照らして、勧告等も視野に入れた厳格な対応を行いまして、改善が見られない場合は、登録を拒否することとなります。
 今後とも、動物の愛護及び都民の健康確保の観点から、動物取扱業者の指導を徹底してまいります。
 次に、監視指導体制の充実についてでございますが、ペットショップのにおいや鳴き声などにつきましては、身近な区市町村にも多くの苦情が寄せられており、こうした動物販売業に関する問題を解決するためには、都の監視指導とあわせまして、地域の実情を把握している区市町村が生活環境にかかわる日常的な指導を行うことが非常に有効であると考えております。
 都は、新たに苦情対応事例集の作成や実務研修の実施など、区市町村の取り組みを積極的に支援するとともに、動物販売業に関する苦情やその改善の状況について、区市町村との情報交換を密にいたしまして、監視指導を強化してまいります。

○議長(川島忠一君) 七十七番石毛しげる君。
   〔七十七番石毛しげる君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○七十七番(石毛しげる君) 観光振興についてお伺いいたします。
 石原知事は、就任以来、観光を新たな産業ととらえ、国に先駆けてさまざまな施策を展開してこられました。世界最大の東京国際アニメフェアの開催など、都が打ち出す斬新な取り組みは、目をみはるものがあります。
 私は四年前、日中国交正常化三十周年記念訪中事業、東京の翼での中国訪問を含め、今まで世界九十カ国を回ってまいりました。個々の国にはすばらしいところがたくさんありました。また、習慣や考え方、価値観の違いもありました。
 私の印象に残っている一つに、ケニアのマサイ族があります。彼らの生活は、大自然の中でのんびり生活し、一夫多妻でした。男性が女性を口説くときの文句は、君は牛のうんちのようだというそうです。なぜ、すてきな女性が牛のふんに例えられるか。聞けば、牛のふんは家の壁にもなり、燃料にもなる、なくてはならないものということです。また、マサイの男性が女性と結婚する条件として、生活力のあかしとして、生きたライオンを一頭、やりでしとめるという習慣があるそうで、最近はライオンも少なくなって、東京のように少子化になるのではないかと心配しているところであります。
 このように、考え方や価値観の違いを体験することも、国際観光の大きな目的の一つでしょう。
 さて、東京を訪れる外国人観光客が平成十二年には二百七十七万人でしたが、四年後の平成十六年には五〇%を超える伸びを示し、今後さらに増加を期待するところであります。外国人観光客を一過性のものに終わらせず、リピーターとして何度も訪れてもらうようにするには、旅行者が日常生活の一端に触れることのできる都市にしていく必要があると考えます。
 そこで、提案ですが、テーマごとにスタンプラリーをやってみてはいかがでしょうか。例えば自然のテーマでは高尾山、伊豆七島、エンターテインメントでは後楽園、豊島園、アニメでは秋葉原、三鷹の森ジブリ美術館などが挙げられます。芸術では浮世絵、歌舞伎など、スポーツでは大相撲や剣道、柔道、弓道などが挙げられるでしょう。
 伝統・歴史のテーマでは、例えば佃島に観光スポットを当ててみましょう。葛飾北斎の「富嶽三十六景」の一つに、この佃島の絵があります。一六四五年、徳川家康が摂津の国の佃村の人々を連れてきたことから、佃島と呼ばれるようになりました。ここはつくだ煮の発祥の地であり、現在でも老舗が三軒あります。歴史がある住吉神社は有名ですし、また、隅田川沿いには、三百二十年間地元の人々の大切な交通手段であった佃島渡し船の碑があります。
 少し足を伸ばせば、もんじゃ焼きで有名な月島もあります。対岸には東京水辺ラインの船着き場、明石町・聖路加ガーデン前があります。浅草から乗船して、ここで下船し、佃大橋を渡ると、古い歴史と並んで、映画やテレビのロケで使われている美しい水辺があらわれます。都の政策に東京の水辺空間の魅力向上に関する全体構想がありますが、こんなコースも観光の視点を含めて期待するところであります。
 生活というテーマでは、例えば銭湯に観光スポットを当ててみてはいかがでしょうか。今月一日に三十円値上げし、四百三十円になりましたが、何といってもまだこの料金で体験できるのが魅力的です。
 それは、式亭三馬の「浮世風呂」に見られるように、銭湯は江戸庶民の生活の一部でありました。現在でも、日本人の素顔に触れることのできる格好の場といえるのではないでしょうか。しかし、銭湯は入り方やマナーがあります。こうした情報も、観光客が利用しやすいように、事前に知ってもらうことも肝要でしょう。
 さて、グルメのテーマでは、てんぷらやすしはもとより、日本古来の発酵食品や、日本酒の蔵元や地ビールの工場などを訪ねるコースもよいのではないでしょうか。平成十七年第三回定例会の一般質問でも、我が会派の岡崎議員が食文化に触れる質問をしているほか、ことし三月の予算委員会では、メニューの国際化にも言及があり、大変参考になったところであります。
 このようにテーマごとにスタンプを集めていくと、東京の素顔が少しは見えてくるのではないでしょうか。また、新たな観光スポットとなった地域では、その取り組みを通して地元の価値を再認識したり、誇りを持ったりいたしますし、一方、観光客に対して、商店街、地域、学校などにもてなしの精神が広がるのではないでしょうか。
 最初は限定された狭いエリアでも、年を重ねるごとにそれは面になり、いつしかは東京全体に広がり、知事が憂えている現代人のマナーやモラルといった精神面、教育面にもよい影響が期待されます。
 また、毎年テーマと場所を変えることによって、東京にいつ来ても違った楽しみに出会えます。そして、集まったスタンプを近くの役所に持っていくと、例えば、地元の物産や都知事の似顔絵入りの携帯ストラップとか、世界に誇る都の水道局の「東京水」をもらえるなど、そういった楽しみがあってもよいのではないでしょうか。
 観光と名のつくセクションが置かれていない自治体は存在します。区市町村によって、観光振興の推進体制に差が見られるのも現状であります。地域ならではの観光資源を掘り起こすとともに、区市町村の枠にとらわれず、有機的に結びつける取り組みを都としても積極的に支援すべきと考えますが、ご所見を伺います。
 次に、外国人は東京の物価が高いとの印象を抱いているといわれております。交通費、宿泊費などの一部を除けばそれほどではなさそうです。
 交通費については、一例ですが、東京メトロ、JR、都営交通など、一日乗り放題になるチケットなどをそれぞれ利用することによって、交通費を抑えられます。
 宿泊では、今、労働者のまち山谷が世界に注目されつつあります。それは、労働者がいっときの三分の一に減り、ホテルにも影響が出て、その活路を外国人に向けたホテルがあらわれたことです。私も、先日、そのホテルに一泊二千五百円で泊まってまいりました。必ずしも快適とはいえません。それでも安く宿泊しようと思ったら十分でしょう。このような情報もわかりやすい案内をしてはいかがでしょうか。
 そのほか、どうすれば落語を聞けるのか、どこに行けば茶の湯を体験できるのかといった情報を得るのも難しそうです。
 そこで、外国人観光客が東京の観光を入手するために最も有効な手段の一つがインターネットです。都では、観光情報を提供する専門のウエブサイトを立ち上げ、現在七言語による観光情報の提供を行うなど、利便性の向上に努めてきています。今後も引き続き、旅行者のニーズに応じた観光情報の提供を一層推進するなど、ウエブサイトのさらなる充実を図るべきと考えますが、今後の取り組みについてお伺いいたします。
 我が国の観光行政において、徳川幕府が初めて海外渡航を許可した年が慶応元年でした。明治四十五年、それはジャパン・トラベル・ビューローが鉄道院の外局として設置された年であります。また平成十四年、この年は、都において観光を目的とした宿泊税が導入され、翌年の国会で観光立国宣言を小泉総理大臣が施政方針で述べるに至った年であります。その後の韓国、台湾からの旅行者に対する観光ビザの免除などは、国をも動かす原動力となった年であります。つまり、これらの年は観光立国を導いた年といえましょう。
 さて、都は、二〇一六年の東京オリンピック実現に向け、本格的な誘致活動を開始しました。また、来年二月には、世界レベルの大会である東京マラソンが開催されます。
 先日発表された二〇一六年東京オリンピック基本指針には、大会の基本コンセプトの一つに、もてなしの精神にあふれ、日本文化を堪能する大会が掲げられています。都民一人一人がおもてなしの心を持つことが重要です。もてなししたいと思っても、言葉が通じないということがあります。しかし、仏教では和顔愛語という言葉があります。仮に言葉が通じなくとも、笑顔が何よりももてなしになるでしょう。
 前回のワールドカップサッカー大会で、カメルーン国の選手を受け入れた旧中津江村の坂本休元村長と最近お話しする機会がございました。人口わずか千三百六十二人、言葉の問題もありましたが、カメルーン選手が一日でも長く快く過ごせるよう、村民が一丸となって頑張りましたとの言葉が印象的でした。
 さて、都知事は今、政治家と執筆家としての二刀流の達人でありますが、やはり二刀流で有名なのが宮本武蔵、宮本武蔵といえば「五輪書」があります。その真髄は真心であり、思いやりともいわれております。
 スポーツ全体にいえることですが、メダルの色や数がとかく話題になりがちです。もちろんそれは大切です。しかし、大会が終わって、選手や関係者、観光客が自宅に戻ったとき、本当によかった、また東京に行ってみたいといわしめたとき、成功をおさめたといえるのではないでしょうか。
 知事はこのたび、ロンドンとマン島を視察してこられました。都としても参考とすべき点が多かったのではないでしょうか。東京オリンピックを見据えたプレイベントとしての東京マラソンの開催に当たって、東京ならではのおもてなしの精神が随所で遺憾なく発揮され、東京の魅力の一つとして、世界に広く発信されることを期待します。
 そこで、改めて、もてなしの精神を理論から応用、実践へと、都民に対してどのように具現化されるのか、お聞かせください。
 観光という字は「光」を「観」ると書きます。光輝く東京を世界に見せられるのか、一千二百万人の頂点に立つコンダクター、それは石原都知事であります。
 ご所見をお伺いしまして、私の一般質問を終わりにさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 石毛しげる議員のなかなかユニークな一般質問にお答えいたします。
 東京オリンピックや東京大マラソンにおけるホスピタリティーについてでありますが、先般、マン島の公道を利用したオートバイレースを視察して、いろいろ得るところがございました。感心しましたのは、マーシャルと呼ばれるボランティアの方々が、実にたくさん綿密に会場整理から大会全体の運営までを支えていたことでございまして、これは、日本でも元気な、既にリタイアされた高齢者がたくさんいるわけですから、人材の供給という点では十分に可能だと思っております。
 特に、モータースポーツを心から愛する島の年齢者の方々が非常にたくさん参加しておられまして、いかにもその姿勢が、我が島、我がまちを愛するという心遣いが如実にあらわれておりまして、オリンピックやマラソンなどの国際的なビッグイベントを東京で開催する場合にも、アスリートたちが実力を遺憾なく発揮して、観客も含めてそのスポーツを楽しむためには、これを単に見守るだけではなくて、都民一人一人が催し物に参加しようという意識で、ホスピタリティーの精神を発揮しながら、自発的かつ積極的に参加することが不可欠であるということを痛感いたしました。
 例えば、東京マラソンの応援についても、コースの沿路の方々にお願いしまして、それぞれのまちの情緒などを、特性を反映した心の温まる応援を地域ごとに展開していくことが必要であると思います。
 そういう点では、商店街の方々あるいは青年会議所の方々、特に日本の神社は、宮司さんがいなくても非常に氏子さんたちがきれいに整備しておりますが、こういう心遣いを人間対人間ではもっと如実に発揮できるわけでありまして、そういう方々にご協力を願いながら、東京大マラソンはもとより、オリンピックについても、東京ならではのホスピタリティーを存分に発揮して、これを盛り上げ、成功に導いていきたいと思っております。
 他の質問については、産業労働局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君) 観光まちづくりについての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、広域的な観光資源の活用への支援についてでございます。
 観光振興に当たっては、点在する観光資源を掘り起こし、それらを有機的に結びつける観光まちづくりが重要でございます。
 このため、都は、浅草・両国や青梅・奥多摩の地区におきまして、近接する観光地の連携を図り、観光メニューの充実や回遊性の向上を目指す広域的な観光まちづくりの支援を行っております。今後とも、区市町村の枠を超えた地域の主体的な取り組みを支援してまいります。
 なお、お話しのテーマ別スタンプラリーにつきましては、観光資源を有機的に結びつける手法の一つとして研究してまいります。
 次に、ウエブサイトの充実についてでございます。
 多くの外国人旅行者に東京を訪問してもらうためには、海外に東京の魅力を積極的に伝えることが必要でございます。
 このため、ウエブサイト「東京の観光」におきまして、東京の暮らしや気候、交通等に関する基本情報などを、英語やドイツ語など七言語で提供しておりまして、外国語版へのアクセス数も、現在年間八百万件を超えております。
 今後は、このウエブサイトについて、言語の追加を図るとともに、他の観光関連サイトとの効果的なリンクや情報内容の充実などに努めてまいります。

○副議長(木内良明君) 二十六番村上英子さん。
   〔二十六番村上英子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○二十六番(村上英子君) 都議会自民党の立場から、石原知事並びに関係局長に簡潔にご質問いたしますので、適切なお答えをお願いいたします。
 まず、教育についてお伺いいたします。
 かつて、学校、家庭、地域社会において、人と出会ったらお互いにあいさつをすることが当然のことと教えられておりました。おはよう、こんにちはと気持ちよくあいさつすることで人間関係がつくられ、地域を愛する気持ちも自然とはぐくまれたのです。
 ところが、最近は、登下校中に子どもたちの命が奪われるという痛ましい事件が全国各地で相次いで発生し、つい先日も、秋田県の豪憲君が殺害されたことは、全く常識では考えられない犯行であり、これを阻止することは大変難しいことだと思います。保護者や学校の先生方は、知らない大人から声をかけられたら大声を上げて逃げましょうと教えなければならないような状況になっております。
 確かに、子どもたちのとうとい命が奪われることは絶対にあってはなりません。けれども、地域の大人、例えば腕章をつけている安全ボランティアの方々があいさつをしても、子どもたちは返事もしないで通り過ぎてしまう。これは行き過ぎではないでしょうか。
 こうした問題を解決するためには、何よりも、子どもたち自身が地域の方々の顔と名前を知る機会を多くすることが必要です。よく知っている大人たちから声をかけられれば、子どもたちも自然とあいさつをするようになるでしょうし、地域の方々が好きになり、ひいては地域に強い愛着を持つようになると思います。
 そのためには、これまで以上に地域の多くの方々に学校に来てもらい、先生方と一緒になって子どもたちの教育にかかわっていただくことが大切ではないでしょうか。例えば、学校で行う行事に子ども一一〇番の家の方々に参加してもらうなど、学校においては、子どもたちと地域の方々とがともに過ごし、顔の見える関係づくりを推進することが大変重要であると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 私は、石原知事が推進する心の東京革命で提案している「心の東京ルール・七つの呼びかけ」を地元の方々に訴え続けております。都があいさつ運動を推進することは、心の東京ルールの一番目にある、子どもに毎日あいさつをさせように特化して取り組むという意味で評価しております。けれども、学校での、知らない大人から声をかけられたら逃げましょうという指導と、地域の方々のあいさつ、声かけがすり合わない中で、その溝をどのように埋めていくのかが問題です。
 子どもたちを見守り、はぐくんでいくのは、保護者はもちろんのこと、地域の方々なのです。核家族化が進み、おじいちゃん、おばあちゃんとのかかわりが少なくなった現在、地域の役割が大きくなっているのです。
 そこで、あいさつ運動に具体的にどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
 知事は、著書の中で、あいさつは人間関係の入り口だと教えようと書かれておりますが、あいさつをどのように考えているのか、知事の思いをお伺いいたします。
 ところで、警察庁の発表資料によれば、平成十七年度中の自殺者は、全国で三万人を超えています。思い余っての行為とはいえ、みずからの命を絶つ行為に救いの手を差し伸べることができなかったのかと思うと、心が痛みます。あいさつが自然に交わされ、心の通い合う地域社会をつくることによって、そういう不幸な事態を少なくすることにつながると思います。
 今、国会では自殺対策基本法案が審議されており、国を挙げた自殺対策が講じられようとしています。都においても、自殺予防対策をより一層強化していただくよう、あわせて強く要望をいたします。
 次に、渋谷地区などの盛り場対策について質問いたします。
 盛り場は、都民の方々が安心して楽しめ、くつろぐことのできる空間であるべきです。そのためには、自治体が中心となって、どのようなまちにしていくのかという将来ビジョンを示した上で、そこに住む人、商う人、働く人、訪れる人たちと、行政、警察が協力して安全対策を講ずるべきであることは論をまちません。
 渋谷区では、ラブホテルの性的産業進出を規制する条例を今の区議会定例会で審議中であります。地元の渋谷センター街では、商店会役員がパトロール隊を結成して既に三年を経過しております。自分のまちは自分たちで守ろうという意気が伝わり、路上での不法物品販売や置き看板なども少なくなってきております。また、たむろしていた不良外国人もいなくなったといわれております。
 私も、先日来の商店会パトロールに数回参加をし、そのご苦労を知りました。繁華街の地元商店会、町会などの対応策には限界もあります。
 昨今、新しい形態の業種として、風俗案内所が目立ち始め、著しく環境を損なう現象が見られます。少年犯罪発生の危険性が懸念されるところです。渋谷地区は、昨年十二月に、警視庁において環境浄化の特別対策地区に指定されたと伺っております。
 そこで、現在までの渋谷地区における警視庁の取り組み状況と今後の対策について、警視総監のご所見をお伺いいたします。
 次に、児童の健全育成事業に係る児童会館の運営と今後の対応についてお伺いいたします。
 児童に健全な遊びを与え、健康を増進し、豊かな情操をはぐくむために、さきの東京オリンピック開催に合わせるように、昭和三十九年に大型の東京都児童会館が天皇陛下のご台臨を仰いで開設いたしました。
 その後、区市にあっても、着実に地区児童館が整備され、今日では六百二十二館に達していると伺っております。まさに、東京都児童会館の果たした役割の成果であると敬意を表するものです。
 そこで、これまでの東京都児童会館の役割についてお尋ねをいたします。
 さらに、当時の厚生省児童家庭局が力を入れて設置した青山にあるこどもの城も、運営も含め、内容、用途についても大転換を図っております。
 そこで、東京都児童会館にあって、これからの改革、役割についてご所見をお伺いいたします。
 次に、地下鉄十三号線平成十九年度開業に伴う都営バス路線の見直しについてお伺いいたします。
 バスは、地下鉄に比べ停留所の間隔が短く、窓からまちの景観が見え、地域をきめ細かく回り、また、乗りおりが楽で便利な公共交通機関です。地下鉄十三号線と並行する都営バスが今後廃止されるのではとの大きな不安の声が上がっております。
 これからの高齢社会と障害を持つ方々に対応するための優しい環境づくりなど、都営バスの利便性について堅持していただけるようご配慮をと思いますが、ご所見をお伺いいたします。
 次に、都営地下鉄の地震災害時の対応についてご質問いたします。
 昨日、都電荒川線で追突事故が発生し、多数の負傷者が出ました。私は、さきの予算特別委員会で地下鉄の安全対策についてお伺いをしたところですが、都営交通の安全運行の確保について、より一層厳しく取り組むよう強く求めておきます。
 さて、昨今、国内外で大きな地震が起きております。輸送の安全確認を厳格に行うことはもちろん必要でありますが、運転再開をするために、長時間かけて全線を徒歩により点検をしなければならないというやり方については、見直すことも必要ではと思いますが、今後どのように取り組む方針をお持ちになっているのか、ご所見をお伺いいたします。
 次に、地方法人課税を見直す動きについてお伺いいたします。
 今後、少子高齢社会の推進に伴い、地方自治体が地域住民に果たす役割はますます重要なものとなっております。地方自治体みずからの意思と責任において、地域住民の求めに応じた施策を推し進めていくためには、財政的な裏づけとなるさらなる地方税源の充実確保が必要不可欠です。
 こうした状況にもかかわらず、昨日、我が党の吉野総務会長の代表質問でも指摘したように、国などにおいては、人口割合で単純に法人二税の徴収を配分しようとする乱暴な議論や、単に企業の税負担の軽減のために、地方法人所得課税を撤廃しようとする動きすらあります。
 このような地方法人課税の意義を全く無視した国などの動きについては、全国の地方自治体と連携するなどして、反対の意見を明確に表明していくべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 最後に、東京オリンピック及びパラリンピック誘致実現と競技施設づくりについてお伺いいたします。
 まずは、八月にJOCの決定があり、IOCの決定は二〇〇九年といわれておりますが、これに対し、都民総意の東京招致の大運動、デモンストレーションを進めるべきと思います。
 そこで、今からでも東京都の施設や電車、バスなどに、横断幕や下げビラなど効果的なPR活動を積極的に展開し、都民の中に招致に向けた機運の種を醸成させていくことが重要と考えます。それらの取り組み、方策についてお伺いいたします。
 さらに、競技施設づくりについてですが、さきの昭和三十九年の東京オリンピック競技場が、今日なお国際的な競技大会や市民スポーツの会場として使用され、多くの国民に愛され親しまれているのです。
 そこで、二〇一六年の東京オリンピック及びパラリンピックを開催するに当たっては、現在のオリンピック基準に対応するよう、またバリアフリーをしっかりと視野に入れ、これらの競技施設の改修、改築をすることで大いに活用するべきと考えますが、ご所見をお伺いし、私の質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 村上英子議員の一般質問にお答えいたします。
 あいさつについてでございますが、あいさつは、他人に対する思いやりや心遣いの表現でありまして、自分と他者を結ぶ第一のきずなであると思っております。
 日本は、もともと非常に礼節の国でありまして、非常に、あいさつを含めた礼儀正しい国家社会というものを築いてまいりましたが、大分それも変わってきたような気がいたします。地域社会の変容や自己中心主義の蔓延などによりまして、地域の人間関係や家族のきずなが希薄化する中で、あいさつの大切さがだんだん見失われているような感じがいたしまして、非常に残念であります。
 ただ、日本に長くおりますある外国人がこの間書いておりましたが、それでもなお、西欧の社会に比べると、言葉でなくて、あいさつというかボディーランゲージで、日本人は電車の中とか何かで、エレベーターの中で、先を譲り合うときにどうぞといったり、自分が先に行きますときは、空手チョップといいましたかね、片手でこうやってお先にというあいさつをする、これはやはり西欧にない一つの美風だと思いますが、いずれにしろ、そういったものを私たちはまだ残しているわけでありまして、親や地域の大人たち自身が、あいさつを身をもって子どもたちに示すとともに、子どもに対して、そういうしつけをしていく責任があると思います。
 都は、今年度、心の東京革命推進協議会とともに、あいさつ運動を全都的に展開するつもりでございます。
 なお、他の質問については、警視総監、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監伊藤哲朗君登壇〕

○警視総監(伊藤哲朗君) 渋谷地区におきます盛り場対策の取り組み状況と今後の対策についてお答え申し上げます。
 警視庁では、昨年の十二月二十日から、渋谷地区を、新宿歌舞伎町地区、池袋地区及び六本木地区の三地区に加え、新たに特別対策地区として盛り場環境の浄化に努めているところであります。
 これまでの取り組みについてでございますけれども、取り組みの重点を、悪質な客引きや違法風俗店などの迷惑違法行為に対する防圧検挙、暴力団、国際犯罪組織の資金源の取り締まり、それに青少年の健全育成を阻害する有害環境の浄化として掲げまして、本部捜査員を投入した一斉摘発や周辺警察署との共同捜査、あるいは入管との合同摘発などを、集中的かつ波状的に推進しているところであります。
 この結果、これまでに、違法個室マッサージ店、わいせつビデオ店などの違法風俗店四十五店舗、約百七十人を、また、暴力団員などを賭博、覚せい剤等で約百二十人、不法滞在等の不良外国人を約百七十人検挙したほか、迷惑防止条例や改正風適法を適用しました強力な取り締まりによりまして、これまで相当数徘回しておりました客引きが減少している状況にあります。
 加えて、新たに制定していただきました風俗案内所条例による取り締まりや、不良行為少年に対する補導活動を実施するとともに、地元商店街等と協働しまして、立て看板、置き看板のたぐいの排除等にも努めた結果、状況は着実に改善されているものと考えております。
 警視庁といたしましても、引き続き強力に取り締まりを推進するとともに、東京都を初め関係機関、団体及び地元商店街等との連携を図りながら、まちぐるみの環境浄化活動や効果的な違法駐車、駐輪対策の推進など、より安全で安心なまちづくりにも積極的に参画してまいりたいと考えております。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 子どもたちと地域の大人との人間関係づくりについてでございます。
 学校が教育活動に地域の人々の参加を呼びかけ、子どもたちと触れ合う機会を設けることは、子どもの人間形成、地域における人間関係づくりを進める上で極めて重要でございます。
 現在、多くの小学校では、本の読み聞かせや地域安全マップづくり、生活科におきます昔遊びやものづくりなどに保護者や地域の人々が参加し、子どもとともに活動する機会を数多く設けております。
 今後とも、こうした機会を通して地域の大人と子どもが顔見知りになり、互いに安心してあいさつができる人間関係が一層形成されますよう、区市町村教育委員会と連携を図り、学校に指導助言してまいります。
   〔青少年・治安対策本部長舟本馨君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(舟本馨君) あいさつ運動への具体的な取り組みについてでございますが、地域社会の人間関係が希薄化しつつある中で、多くの人があいさつの大切さを再び実感できるような機運を醸成することが重要と考えております。
 そのため、都としましては、心の東京革命推進会議のもとに、先般、あいさつ運動推進委員会を設置いたしました。そして、心の東京革命推進協議会とともに、七月には、多くの都民の方々の参加を呼びかけて第一回あいさつフェスタを開催するほか、十一月に推進月間を設定しまして、あいさつ運動のキャンペーンを全都的に展開したいと考えております。
 また、各地域におきまして、町会、自治会、商店街、学校などが行うあいさつ運動を支援するため、先進的な事例を積極的に紹介しますとともに、区市町村に対しまして、あいさつ運動に係る事業の補助を行ってまいりたいと考えております。
   〔福祉保健局長平井健一君登壇〕

○福祉保健局長(平井健一君) 東京都児童会館について、二点のご質問をいただきました。
 まず、会館が果たしてきた役割についてでございますが、東京都児童会館は、児童の健全な育成及び地区児童館の設置促進を目的といたしまして、昭和三十九年に開設されたものでございますが、同会館では、体験型の遊びを通じて創造力をはぐくむ機会を児童に提供するとともに、児童館運営などに関する技術的援助や指導員研修を実施するなど、地区児童館を総合的に支援してまいりました。
 現在、お話のように、都内全域で地区児童館の整備が進みまして、二つの小学校区に一つという設置目標はおおむね達成しております。こうしたことから、東京都児童会館は、地区児童館の設置を促進するという役割を十分に果たし、児童の健全育成に貢献してきたものと考えております。
 次に、東京都児童会館のこれからの役割についてでございますが、地区児童館の増加によりまして、遊びを通じて児童の健全な育成を図る場はおおむね整備された一方で、自然と触れ合う機会や世代間の交流が減少した今日、地区児童館には、学校や家庭では体験できない、遊びを通じて豊かな感性や社会性をはぐくむための工夫がこれまで以上に求められていると考えております。
 このため、都といたしましては、これまでの成果を踏まえ、新たな遊びの開発などに関する情報発信や指導員の人材の育成など、センター的な機能に重点化を図り、地区児童館の支援を強化してまいる考えでございます。
   〔交通局長松澤敏夫君登壇〕

○交通局長(松澤敏夫君) ご質問にお答えする前に、一言申し上げさせていただきます。
 昨日の午前九時三十七分、都電荒川線におきまして列車の追突事故が発生いたしました。この事故によりましておけがをされた方、そのご家族の方を初め、ご利用のお客様、都民の皆様に対しまして深くおわびを申し上げます。今後このような事故が二度と起こらぬよう、早急に原因の究明と再発防止に取り組んでまいります。
 それでは、都営交通に関する二点のご質問についてお答えをいたします。
 まず、地下鉄十三号線開業に伴う都営バス路線の見直しについてでございますが、渋谷と池袋を結ぶ地下鉄十三号線の開業に伴い、これと並行、交差しております現行の都営バス路線につきましては、乗客数の減少によりまして、採算面で大きな影響を受けることが予想されるところでございます。
 しかしながら、都営バスは、地下鉄が整備された場合におきましても、鉄道駅や公共施設等をきめ細かく結び、だれもが利用しやすい身近な公共交通機関としての役割を果たしていく必要があると考えております。
 したがいまして、バス路線の見直しに当たりましては、地下鉄十三号線開業時の乗客需要も見据えながら、ご指摘のとおり、高齢者や障害者など、利用者の方々の利便性に十分配慮して検討してまいります。
 次に、都営地下鉄の地震災害時の対応についてでございますが、現在、都営地下鉄では、地震が発生した際、震度五強以上を検知しますと直ちに運転を中止し、全線で徒歩点検による安全確認を行うこととしておりまして、こうした方式は、ご指摘のとおり、運転再開まで長時間を要し、お客様への影響が大きいものになっております。
 このため、地震計を大幅に増設いたしまして、地域ごとの震度を的確に把握し、徒歩点検が必要な区間を絞り込むとともに、点検後は試運転列車による安全走行の確認を行う方式に今後改めていくことが必要と考えております。
 こうした取り組みを行うことによりまして、震度五強レベルでの地震発生時には、これまで以上に安全性を十分に確保しつつ、点検時間の短縮が図られ、早期運転再開が可能となりますので、できるだけ早急に実施してまいります。
   〔主税局長菅原秀夫君登壇〕

○主税局長(菅原秀夫君) 地方法人課税の見直しにつきまして、お答えを申し上げます。
 法人は、事業活動を行うために地方自治体からさまざまな行政サービスを受けておりまして、個人と同様、地域の構成員として応分の負担をすべきものというふうに考えております。
 法人二税の課税の根拠を無視して、人口による配分を求めたり、諸外国との制度の違いを無視して、代替財源を示すことなくその撤廃を求めることなどは、無責任きわまりない主張でございます。
 また、地方の独立税源の充実確保が不可欠な中で、こうした動きは地方分権の流れに逆行するものでございます。
 都といたしましては、都議会並びに都選出国会議員の皆様方のご協力をいただきながら、全国の地方自治体とも連携して、こうした不合理な動きを断固阻止する覚悟でございます。
   〔東京オリンピック招致本部長熊野順祥君登壇〕

○東京オリンピック招致本部長(熊野順祥君) オリンピックに関します二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、PRの取り組み方法についてでございますが、オリンピック及びパラリンピックの招致機運を盛り上げていくには、都民、国民の幅広い支持が必要でございまして、適宜適切に広報、PRを行っていくことが重要だと考えております。
 当面、国内立候補都市の選定に向けましては、大会計画を記載したリーフレットの配布や各種団体への働きかけなどを行うとともに、七月二十日には、多くの都民の参加を得まして、二〇一六年東京オリンピック都民集会を開催いたします。
 また、東京が日本の立候補都市に決まった後には、ご提案いただきましたように、都立施設はもとより、バスや地下鉄などの公共機関を広報媒体といたしまして効果的に活用するなど、幅広くPRを行い、広く都民、国民の招致機運を盛り上げていきたいと考えております。
 次に、既存の競技施設の活用についてでございます。
 二〇一六年の東京大会では、東京に集積する既存の競技施設、コンベンション施設を必要に応じて改修、改築して最大限活用するとともに、施設の新築を極力抑え、経費の抑制や環境負荷の低減を図る方針でございます。
 一九六四年の東京オリンピックで使用した国立代々木競技場あるいは日本武道館等につきましても、この方針に基づきまして有効に活用してまいります。

○議長(川島忠一君) 六十番野上純子さん。
   〔六十番野上純子君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○六十番(野上純子君) 初めに、学校現場において勤労観、職業観を育てるキャリア教育の充実について伺います。
 都立高校の中途退学者は毎年五千人、また、卒業時に進学もしない就職もしない生徒もおよそ五千人、合わせて一万人に上ります。こうした状況を放置してはいけません。ニート、フリーター問題を持ち出すまでもなく、公的な学校教育で、勉学とともに職業に生きがいを見出せる若者を育てることは喫緊の課題であります。
 そこで、第一の提案は、職場体験やインターンシップを通して、働くことの意義や仕事を通しての自己実現を学ぶキャリア教育の体制を早急に整備し、あわせて、その重要性を、学校はもとより広く都民に周知するべきであります。見解を伺います。
 第二に、キャリア教育の充実は、単に学校関係者だけの努力でなし遂げられるものではありません。たとえ都教委が多種多様な取り組みをメニューとして用意したとしても、そのために必要な地元の商店街、中小企業などとの連携がなければ、キャリア教育は実施できません。
 そこで、都教委は、キャリア教育に必要な地域のネットワークを各学校が地域の特色を生かして構築できるような具体的な方策を指し示すべきと考えます。所見を伺います。
 第三に、卒業生に対する就労支援への取り組みです。高校の卒業後も、就労の歩みはなかなか容易ではありません。卒業して初めて本格的に進路を悩み始めたり、就職してもすぐにやめてしまったり、大学を卒業しても就職できないケースなど、さまざまです。
 身近に悩みを相談できる大人の知り合いが少ない現代の若者にとって、高校時代の恩師や友人の励ましは、貴重な立ち直りのきっかけとなります。その意味で、担任の教師や同窓会による卒業生への就労支援に着目すべきです。私も、いまだに教員時代の卒業生とのつながりを大事にしております。
 任意の団体である同窓会に行政がかかわることには、当然、一定の制限がありますが、積極的に同窓会活動を支援している学校については、都立高校の特色の一つとして評価する制度を取り入れるべきです。所見を伺います。
 次に、食育について伺います。
 運動能力の低下、糖尿病や高脂血症、骨粗鬆症の兆候など、最近では、大人だけでなく子どもたちまで生活習慣病にむしばまれています。したがって、子どものころから健康な食習慣を身につけることが何よりも重要です。
 知事は、所信表明において、大都市の特性を生かした食育推進計画を策定し、食の持つ多様な機能を、家庭はもとより学校や地域全体で取り戻すと述べられました。大変に心強く感じました。
 知事がリーダーシップをとって、子ども時代からの食育を推進すべきであります。改めて知事の所見を伺います。
 第二に、家庭における食育の推進です。
 健康の土台づくりとなる幼児期こそ、健全な食生活を身につける絶好の時期であり、その舞台は家庭であります。
 そこで、子育て世代を対象にし、バランスのよい食事を親子で学ぶことができる教材の作成や、食育のための講座、教室の開催などを実施すべきです。所見を伺います。
 第三に、学校における食育です。
 かつて学校給食では残さず食べることも教えておりましたが、それをやめた結果、今では好きなものばかり食べる、ばかり食べや、食べ残しの増加などが課題として指摘されています。
 しかし、現在の学校では、食の指導に関する明確な方針や体制が整備されておらず、地域や学校によってまちまちな取り組みを行っています。
 今後、効果的な食育を実施していくためには、校長のリーダーシップのもと、学校栄養職員や養護教諭を含め、関係する教職員が連携し、協力すべきであります。そしてそのためには、食育推進の中核となる食育リーダーを設置すべきです。見解を伺います。
 次に、特別支援教育について伺います。
 都では、小中学校における特別支援教育体制の整備について、公明党の提案を受け、平成十六年度から三年間にわたり、四つの区市を対象としてモデル事業に取り組んでいます。
 今後、都内全域で特別支援教育を推進していくためには、モデル事業において効果のあった事例の普及に努めるべきです。先月視察した八王子市内の小学校では、大学生を活用した支援が行われており、好評を博しておりました。こうした効果的な取り組みを紹介し、実施するためのノウハウを伝授するなど、各区市の特別支援教育に対する支援を行うべきでありますが、所見を伺います。
 また同じく、モデル事業として取り組んでいる副籍制度は重要です。
 障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流を進め、その相互理解を促すために、都は独自に副籍制度を導入するため、現在、四区市でモデル事業を進めています。この副籍制度を都内全域で展開すべきであり、そのための促進策が不可欠であります。都の所見を伺います。
 次に、学童クラブについて伺います。
 学童クラブ事業は、国による設置運営基準が定められておらず、区市町村によりさまざまな形態があります。そのため、子どもの安全確保や健全育成の観点から、統一的な設置運営基準を求める声があります。
 しかし、今になって統一的な設置運営基準を設けることは、区市町村の創意工夫を凝らした取り組みの足かせとなり、事業を後退させることになりかねません。その一方で、学童クラブのサービス向上が求められていることも事実であります。
 そこで、学童クラブにおいて提供されているサービスを標準化して、ガイドラインの形で区市町村に提示し、サービス向上につなげていくことが効果的と考えますが、所見を伺います。
 次に、水道事業の震災対策について伺います。
 都の最新の被害想定によれば、直下地震の被害は、特に区部東部において甚大であることが明らかになりました。そこで、ライフラインの根幹を担う水道局は、老朽化した水道管の更新に合わせ、改めて耐震化対策を急ぐべきであります。とりわけ被害が集中すると想定されている地域では、計画を前倒ししても対策を実施すべきであります。
 また、特に医療機関、災害拠点病院への水供給を守ることが重要です。所見を伺います。
 次に、小笠原観光支援について伺います。
 私も、都議会公明党の視察団の一人として、東京から小笠原まで片道二十五時間半という長い船旅を経験してまいりました。ここで提案をしたいのは、船旅自体を楽しめるよう工夫すべきであるということです。数百万円の費用をかける長期クルージングは無理でも、小笠原までのクルージングを楽しんでみたいと思う人は少なくないはずです。
 小笠原の観光振興を図るためには、快適な船旅を含め、観光支援策の充実を検討すべきです。所見を伺います。
 次に、小笠原の情報格差の解消についてです。
 現在、八丈島まで光ファイバーが敷設されていますが、小笠原には届いておりません。インターネットの高速通信化を初め、近く予定されるテレビ放映の完全デジタル化に備えるためにも、現地では光ケーブルの敷設に大きな期待が寄せられています。
 都は、小笠原の情報格差の抜本的な解消を図るため、積極的な支援に取り組むべきです。今後の取り組みを伺います。
 次に、島しょ部における救急医療について伺います。
 現在、八丈島や大島、小笠原など東京の島しょ部では、救急患者が発生した場合、東京消防庁のヘリコプターや自衛隊のジェット機等により、都内の病院への救急搬送を行っています。その際、ヘリコプターに同乗する医師の確保などに手間取り、その搬送時間は、平均約五時間となっています。万一同乗する医師が見つからなければ、救える命も救えなくなります。
 そこで伺います。
 第一に、都は、島しょ部における救急患者を迅速に搬送するため、専用のドクターヘリを配置すべきです。
 第二に、当面の措置として、救急患者、特に重症患者を一刻も早く搬送できるよう、スピードアップを図るべきです。
 そして第三には、画像伝送システムの整備であります。現在、都立広尾病院と島しょの医療機関を専用回線で結び、エックス線フィルムやCTの画像を送受信するシステムが運用されています。
 昨年十月、この画像伝送システムが更新され、画像処理速度や精密度が向上しました。また、ネットワークカメラが設置され、都立病院と島にいる医師が双方向で相談、打ち合わせができるようになりました。そこで、さらにこのネットワークカメラを活用して、それぞれの島の医師同士で情報交換やテレビ会議ができるようになれば、島しょの診療体制が大幅に向上すると考えます。所見を伺います。
 最後に、地元葛飾区における災害に強いまちづくりについて伺います。
 都の被害想定では、私の住む葛飾区は、地震による死者が七百二十六人に上り、都内最悪の被害になると想定されています。特に、地盤が軟弱で市街化が早く進んだ荒川沿岸地域では、都市基盤が未整備で、木造住宅が密集するなど防災上の課題を抱えています。
 そこで、震災時の被害拡大を防ぐために防災都市づくり推進計画が策定され、立石、四つ木、堀切地域が整備地域として位置づけられました。これらの地域のうち、東四つ木三、四丁目や四つ木一、二丁目地区では、区が木造住宅密集地域整備事業を活用し、一定の成果を上げています。同様に、防災上脆弱な地域である東立石四丁目地区でも、区は木密事業の推進を図りたい意向です。
 災害に強く、安心、快適に居住できるまちづくりを実現するために、ぜひとも都は葛飾区を支援すべきです。
 所見を伺い、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 野上純子議員の一般質問にお答えいたします。
 食育の推進についてでありますが、食には、人間本来の機能である栄養の摂取とともに、季節季節、しゅんの食べ物を食べたりしながら、季節感を味わい、自然の恩恵に対する感謝の心の醸成や、さらには文化の継承など、重要な役割がございます。
 今日、こうした食の役割が軽視されまして、食生活の乱れが都民の健康をむしばみ、ひいては医療費の増大も招いております。
 当節はやりのいわゆるジャンクフードを食べ過ぎますと、肉体的にとどまらず、精神的、情緒的にも悪い影響があるということはもう証明されておりますし、子どもの時代から健康的な食習慣の確立は、生活習慣病を予防し、生涯にわたる都民の健康を支える重要なかぎでありまして、こうした観点から食育の推進に取り組んでいきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 六点の質問にお答え申し上げます。
 まず、キャリア教育の充実と周知を図るための方策についてでございます。
 児童生徒が将来社会で自立して生きていくためには、働くことの意義を理解し、望ましい勤労観、職業観を身につけていくことが重要でございます。
 現在、公立小中高等学校では、発達段階に応じ、職場体験やインターンシップなどを通しまして、キャリア教育を実施しております。
 都教育委員会は、このような学校での取り組みを推進するため、指導資料集の作成や研修会等の実施によります普及啓発を行うとともに、インターンシップの受け入れ先を開拓するために、地域の産業団体に対しまして協力要請を行っております。
 今後、学校におけるキャリア教育をさらに充実させていくために、新たに東京都キャリア教育推進協議会を設置しまして、小中高等学校が連携した系統的なキャリア教育のあり方や具体的な方策を検討していくとともに、広く都民を対象といたしましたフォーラムを開催するなどして、キャリア教育の重要性の理解を得るための広報活動を行ってまいります。
 次に、高校と地域とのネットワークについてであります。
 現在、多くの都立高校では、企業の人事担当者や卒業生等を講師といたします進路講演会の開催や、商工会議所等地域の団体と連携いたしましたインターンシップの実施など、学校や地域の特色を生かしたキャリア教育に取り組んでおります。
 キャリア教育を今後さらに充実させていくためには、教育課程への明確な位置づけを図るとともに、連携先の確保や地域との協力体制の構築などを一層進めていく必要がございます。
 そのため、都教育委員会は、今後、各校の担当教員を対象といたしましたキャリア教育実施連絡会を開催し、すぐれた実践事例の紹介や外部機関との連携のあり方等の研究協議を行い、各学校が生徒の実態を踏まえ、地域とのネットワークを構築し、キャリア教育を一層充実できるよう支援してまいります。
 次に、学校と同窓会との連携に対する評価についてでございます。
 現在、都教育委員会では、都立学校の教育活動を評価、検証し、その結果をもとに、適切な支援、指導を行うため、学校経営診断を実施したり、全都立学校に学校運営連絡協議会を設置し、保護者等によります外部評価を行うなど、学校評価の充実に取り組んでいるところでございます。
 母校の教育活動を充実させる同窓会活動につきましては、大変意義があるというふうに考えておりまして、学校現場の多様な教育活動を充実していくため、現在の学校評価の仕組みの中で、どのような評価の手法があるか検討してまいりたいと考えております。
 次に、食育リーダーの設置についてでありますが、食育の推進は、児童生徒が生涯にわたり健康的な生活を送る上で重要でございまして、これまでも学校では、給食の時間を初めとして、家庭科や総合的な学習の時間等で食に関する指導に取り組んでまいりました。
 都教育委員会では、食育のより一層の充実を目指すため、区市教育委員会も参加しました公立学校における食育に関する検討委員会を設置し、食育推進のための校内体制の整備や、ご指摘の食育リーダーを含めた人材の育成及び研修体制などについて、本年七月を目途に検討を進めております。
 今後、検討委員会の結果を踏まえまして、区市教育委員会とも連携しつつ、学校における食育推進のための体制の整備に努めてまいります。
 次に、各区市の特別支援教育に対する支援についてであります。
 都教育委員会は、現在、四区市をモデル地域といたしまして、小中学校におきます校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名を初め、専門家と連携いたしました支援のあり方などについて実践的な研究を行う特別支援教育体制モデル事業を、平成十六年度から取り組んでいるところでございます。
 今後、モデル区市以外の自治体が特別支援教育に取り組む上で参考となるように、三年間のモデル事業の成果と課題、特にモデル区市での効果的な取り組みなどを紹介する資料作成や報告会の実施など、情報提供をきめ細かく行うとともに、国の動向を踏まえながら、都全域での特別支援教育体制整備を支援してまいります。
 最後に、副籍制度を都全域で展開するための促進策についてであります。
 副籍制度導入に当たりまして、特別支援教育体制モデル事業と同様に、四区市において、都立盲・ろう・養護学校に在籍する児童生徒が居住する地域の小中学校の児童生徒と、手紙の交換や学校行事等における交流を行うなどによりまして、地域とのつながりを維持、継続するための実践的な研究を進めているところでございます。
 都教育委員会では、今後、都全域での展開を促進するために、区市町村教育委員会などに制度の意義や概要を周知するとともに、実施に当たっての標準的な内容、手続等を示しましたガイドラインの作成や児童生徒の交流事例の紹介などを行い、副籍制度の円滑な導入に向けた取り組みを推進してまいります。
   〔福祉保健局長平井健一君登壇〕

○福祉保健局長(平井健一君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、家庭における食育についてでございますが、保護者と子どもがともに食事に関する知識を正しく身につけるため、都では、国の食事バランスガイドをもとに、子どもでも楽しく学べる模型による指導教材を作成いたします。
 今後は、区市町村と連携を図り、幼稚園や保育所の職員に向けて、この指導教材の効果的な活用方法についての講習会を実施するとともに、親子食育教室などの実施を働きかけるなど、幼児期からの健康的な食習慣の定着を進めてまいります。
 次に、学童クラブ事業についてでございますが、学童クラブ事業は、地域の実情に応じてさまざまな形で運営されておりますが、さらなるサービスの向上のためには、実施主体でございます区市町村がそれぞれの創意工夫を凝らして取り組んでいくことが必要であると考えております。
 都として、こうした取り組みを促進するため、現在、区市町村の協力を得まして、望ましいサービス水準を示すガイドラインの策定を進めております。
 今後、区市町村がこのガイドラインを活用して学童クラブの自己点検を行うことによりサービス向上に努めていきますように、都としても働きかけてまいります。
 次に、島しょ部における救急患者の搬送についてでございますが、都は、島しょの医療機関において対応が困難な救急患者が発生した場合、適切な医療を迅速に受けられるように、東京消防庁などと連携いたしまして、ヘリコプターで本土へ搬送する仕組みを構築しているところでございます。このヘリには、現地もしくは本土から医師が搭乗し、搬送中も救急患者に必要な医療処置を行っております。
 今後とも、搬送システムが円滑に機能しますように、関係機関と密接に連携してまいります。
 次に、救急患者の搬送時間の短縮についてでございますが、島しょにおける救急患者の搬送に当たりましては、現地及び受け入れ先の医療機関、東京消防庁、地元町村など、多くの関係者が密接に連携協力して、時間短縮を図っているところでございます。特に緊急の対応を要する重症患者につきましては、患者搬送や医師添乗のため、受け入れの病院に直接ヘリコプターを着陸させることに加えまして、現地の関係者に患者搬送の手順を改めて周知するなど、搬送のさらなる迅速化に取り組んでまいります。
 最後に、画像伝送システムを活用した診療支援についてでございますが、平成十七年十月に新たな画像伝送システムを導入したことによりまして、エックス線写真などの送信時間が五分程度と大幅な短縮が図られました。また、導入後の使用実績も、前年に比べて約二割増となっているところでございます。
 ご提案のネットワークカメラを活用した情報交換等は、島しょで勤務する医師の医療技術の向上に効果的と考えられますので、本年七月に遠隔診療に関する支援策についての委員会を設置いたしまして、具体的に検討を行ってまいります。
   〔水道局長御園良彦君登壇〕

○水道局長(御園良彦君) 水道事業の震災対策についてでございますが、特に甚大な被害が想定されております区部東部におきましては、断水時に影響が広範囲に及ぶ基幹管路につきまして、耐震性が低い初期のダクタイル管を、阪神・淡路大震災でも被害のなかった耐震性の高い管路へ、ご指摘のとおり計画を前倒しいたしまして、取りかえてまいります。
 一方、都内全域におきましては、これまで実施してまいりました管路の耐震化を引き続き推進していきますとともに、三次医療機関など災害拠点病院や首都中枢機関等につきましては、これらの施設に至るまでの給水ルートの耐震化に直ちに着手し、早期の完了を目指してまいります。
 今後とも、震災時にも強く、一層信頼性の高い水道システムの構築を目指し、優先性、重要性を踏まえた施設の耐震化を進めてまいります。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君) 船旅の魅力向上などによる観光支援についてのご質問にお答えいたします。
 小笠原への観光客数の増加や観光の振興を図るには、島内で楽しめる観光メニューの開発だけではなく、東京と小笠原の間の二十五時間半という船旅自体の魅力向上も重要であると考えております。
 これまで都は、船上におけるホエールウオッチングや鯨の生態学習など、鯨イベントの実施を支援してきたところでございます。
 今後は、村と連携した観光客のニーズ調査や観光協会、商工会、海運事業者などの民間事業者を含めた検討会の設置を通じて、船旅の充実など課題の解決を図ってまいります。
   〔総務局長高橋功君登壇〕

○総務局長(高橋功君) 小笠原の情報格差の解消につきましてお答えをいたします。
 今年度、平成十八年度に、小笠原村全世帯に光ファイバーケーブルを接続することによりまして、島内におきますブロードバンド化は完了することとなります。
 しかしながら、本土と小笠原間につきましては、地理的な条件や経済性などの問題から、ブロードバンド化が進んでいない状況にございます。このため、国は先般、都、村、通信事業等関係者による検討会を設置いたしました。
 今後、住民等のニーズ、衛星回線と海底光ファイバーケーブルとの比較、整備、管理に当たっての問題点などにつきまして、調査検討を進めることにしております。
 都は、小笠原の情報格差の解消を重要な課題と認識をしておりまして、国の検討会に参加をいたしますとともに、活用方法を含めまして、具体的な対応策について検討してまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 災害に強いまちづくりのご質問にお答えをいたします。
 東立石地区における災害に強いまちづくりについてでございますが、当地区は老朽木造住宅が密集しており、防災都市づくり推進計画におきまして、優先的に整備すべき地域と位置づけられております。
 この地区では、中川に面して防災機能を有した公園整備が進められておりまして、現在、この公園への避難路となる道路の整備や老朽木造住宅の不燃化、共同化など、防災まちづくりの推進方策について、区とともに検討を行っているところでございます。
 今後、地域の防災性の向上に向けた検討をさらに進め、区の取り組みを支援してまいります。

○副議長(木内良明君) 三十番尾崎大介君。
   〔三十番尾崎大介君登壇〕

○三十番(尾崎大介君) 多摩産材の活用、取り組みについてお伺いいたします。
 まず都としては、本年四月から始まった花粉の少ない森づくり運動において、向こう十年間で百八十万本の杉、ヒノキの伐採が計画されているわけですが、その中から材木として利用できる多摩産材の需要拡大及び市場流通の仕組みなどの整備が不可欠であります。
 そこで、多摩産材の住宅建築の材としての使用や、さらに公園や学校など公共施設等における他の活用方法が検討されているのか、所見を伺います。
 次に、具体的な施策として、多摩産材認証制度と東京の木・いえづくり協議会というものがございます。こうした施策により、多摩産材が市場において割安に供給をされ、一般に普及していけば、現在進行中の東村山本町プロジェクトという、知事の良質な住宅を安価に提供したいという思いから始まった重点プロジェクトの視点から見ても、非常に意義ある施策と思われますが、その内容、仕組み等については少しわかりにくい部分があります。
 まず、多摩産材認証制度については、本制度のかなめの認証機関である多摩産材認証協議会の構成及び仕組みがいま一つ明確ではありません。社団法人全国林業改良普及協会の資料によると、京都府や群馬県などはそれぞれ府と県が直接認証団体にかかわっておりますし、愛知県の例では、認証機関として第三者のNPOが担っております。本協議会の場合、その構成メンバー及び認証の仕組み、都のかかわり方はどうなっているのか、また、今後の当制度への事業体などの積極的な参加の可能性について、所見をお伺いいたします。
 次に、もう一つの施策である東京の木・いえづくり協議会についてですが、昨年十二月の都の報道資料によれば、優遇融資制度「とうきょうの森のいえ」を創設されていますが、融資条件として、本協議会会員が建築にかかわり、使用する木材の五〇%以上を多摩産材とすることとなっております。消費者である都民にとっても、多摩産材の知識や経験のある協議会の会員に希望に沿う住宅を建設してもらうことは非常に安心でき、さらに融資制度が受けられるとなれば、よりありがたい制度です。
 現在協議会メンバーである工務店は十九社ということですが、融資条件が協議会の会員に限るということであれば、多摩産材に関する知識や経験を有するなどの条件のもとで、今後協議会の会員をふやしていく必要があると考えます。
 また、この制度により、花粉の少ない森づくり運動で切り出される予定の多摩産材が有効に活用されることは、産業振興のみならず、環境面にも貢献することにもなります。
 かような背景も踏まえ、この協議会の現状がどうなっているのか、また、今後より一層の組織の拡大が不可欠と考えますが、所見を伺います。
 次に、多摩産材に関連し、木質バイオマスの活用についてお伺いいたします。
 先ほど申し上げた花粉の少ない森づくり運動においての樹木伐採計画では、当然ながら利用できない木の量もかなりの量になると思われます。一方知事は、東京の温暖化対策として再生可能エネルギーの活用をうたっており、また国においても、本年三月三十一日付で、バイオマス・ニッポン総合戦略の改定も閣議決定されております。
 木質バイオマスは生物の光合成によって生成した有機物ですが、環境にも優しい、非常にすぐれた持続可能な資源であります。先ほど述べた利用できない木とともに、多摩産材の材木製造工程における端材等も含め、これらを現在民間業者において生産がなされている木質ペレットストーブやボイラーなど、木質バイオマスエネルギーとして利用することも可能と考えます。
 平成十四年に東京都農林水産振興財団においては、木質バイオマスエネルギー事業化調査を行っておりますが、調査後の現状はどうなっているか、またエネルギー利用のみでなく、木質チップを利用したバイオマストイレなどへの活用など、今後の木質バイオマスに対する都としての取り組みについて、所見をお伺いいたします。
 以上、多摩産材、木質バイオマスの件に関して、もう少し大所高所からの東京における森林産業の総合的なグランドデザインを描き、特に、先般申し上げた多摩産材の商品としての需要拡大及び市場流通の仕組みの整備は重要であることから、そのための調査や横断的なビジョン策定へ向けての取り組みなども検討してみてはいかがという意見をつけ加えさせていただき、次の質問に移ります。
 二〇〇七年には、全国で約七百万人、首都圏でも百八十三万人の団塊世代の退職が始まると予想されています。これらの定年退職者に対して、意義ある第二の人生を送っていただく方策が必要かと思います。
 最近では、定年退職者のレクリエーションのあり方や地域活動へのかかわり方など、さまざまな議論がなされています。その一つとして、森林や農地を活用して豊かなスローライフを実現するために、多摩地域の森林や農地で、多くの退職者が利用できるクラインガルテンのような滞在型農園の整備が必要だと考えます。クラインガルテンにおいて、退職者と地域住民やNPO等との活発な交流が生まれれば、社会とのかかわりが切れることなく、意義ある第二の人生を送ることができると思います。
 また、こうしたクラインガルテンで炭焼きや竹林の手入れ、杉、ヒノキの伐採、広葉樹の植樹体験などと組み合わせれば、副次的効果として先刻の花粉の少ない森づくり運動の一環にもなり、ひいては森林環境の保全にもつながっていくと考えます。
 現在、檜原村において、共同村星の見える丘プロジェクトという試みが、都内の団塊世代を中心にしたNPOや個人のグループなどで始まっております。具体的には、クラインガルテンなどを自分たちの手でつくり、高齢化して手入れが行き届かない山林を借りて植樹や炭焼きを行うなど、共同村で週末を過ごして、地元住民との交流を深める人も出てきています。
 このような活動は現在個人のレベルによって行われていますが、最近の活動の広がりやその社会的な役割を考えれば、地元自治体や都が積極的にかかわることにより、より多くの団塊世代の方々が今後森林再生、環境保全活動などさまざまな社会貢献の機会を得ることが可能になるのではないかと考えます。
 そこで、多摩地域におけるクラインガルテンについて、その現状と今後の都の支援についてお伺いいたします。
 次に、地球温暖化対策についてお伺いいたします。
 東京の深刻な大気汚染については、近年大きく改善が進む一方、自動車から排出されるCO2は、都内の総排出量の約二割を占め、依然として増加傾向にあり、自動車部門のCO2排出抑制対策は、今後も取り組みを強化すべき課題となっています。
 都は今年二月に新戦略プログラムを発表し、自動車からの地球温暖化阻止を掲げ、新自動車環境管理計画書制度については、これまでの計画書制度を改正し、四月から導入されたもので、運送事業者などのCO2削減の取り組みを促すものと伺っております。既存の制度を活用することにより、早期に効果があらわれることを大いに期待しておりますが、今回の新しい計画書制度の内容とそのねらいについて所見をお伺いいたします。
 また、この計画書制度によって、運送事業者などの積極的な取り組みを引き出していくためには、まじめに取り組む事業者に対して何らかのインセンティブが働くことが重要と考えますが、所見をお伺いいたします。
 こうした対策のほかにも、自動車からのCO2排出削減を進めていくために、天然ガス車などの導入を進めるためには、インフラとしての天然ガススタンドなどの設置も必要であります。国や都は、天然ガススタンドの設置に対して補助を行うなど、支援策を講じてはいますが、私の地元でもある調布圏内のように、まだスタンドのない空白地域もあることから、天然ガス車の導入、普及を進めるため、そうした空白地域の解消に向けて一層努力されることをあわせて要望し、最後の質問に移ります。
 昨今において、ロハスという言葉がよく聞かれます。それはビジネスライセンスとして使われておりますが、その本質は、現在社会問題化している格差社会、勝ち組負け組という価値観とは異なり、地球環境保護と人間の健康を最優先し、持続可能な社会のあり方を志向するという考え方であります。
 さて、このような考え方は、これまで私が質問してきた多摩産材、地球温暖化問題等をも包含する概念ではないかと思います。本定例会冒頭における知事の所信表明の中の、環境基本計画の改定での快適で安心して住み続けられることのできる都市を目指すことや、「東京都環境白書二〇〇六」での持続可能な都市づくりは、このライフスタイルに通ずるものであると考えます。
 また、先ほど触れた二〇〇七年問題で、退職される団塊の世代の方々の第二の人生において、このようなライフスタイルが可能となるようにしていくことは重要なことです。それを実現、実践できるところが多摩地域ではないかと私は確信をしております。
 現在、多摩地域においては、地元住民やNPOなど、さまざまな方たちが、環境、健康、持続社会を意識した活動を行っております。それらの活動は、多摩地域にとどまらず、都心の人々も巻き込んだ、ドングリなどの広葉樹の植樹や炭焼きなどの活動、中央区と檜原村との連携した森林保全活動と、広がりを見せております。
 本年二月に発表した緊急三カ年プラン、新戦略プログラムの中で、水源涵養、生物多様性保全など、森林の公益機能を回復させることを目的とした「四季彩(しきさい)の道」づくりの推進、広葉樹の植樹や炭焼きなどの農林業体験の場での自然との触れ合いを進めていくことも提案されています。
 このようにさまざまな活動を展開する東京都においては、より多くの都民がかかわれるようにしていくことを考えていくべきではないかと思います。ぜひ、都民が緑に触れ、緑地保全活動へ参加できる取り組みを一層促進していただきたいと考えますが、知事の所見をお伺いし、私の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 尾崎大介議員の一般質問にお答えいたします。
 多摩地域での緑地保全活動についてでありますが、緑はなぜか非常に、とても人の心に安らぎを与えるものであります。印象的だったのは、東京の自然保護レンジャーのリーダーを務めてもらっています野口健君が、念願のエベレストの登頂を果たして戻ったときに、あの年は非常に風が強くて、雪が少なくて、あちこちに死体が散乱していたそうでありますけれども、アイスホールをおり切ってベースキャンプに着いて、初めてそこで土の上に生えている小っちゃな草を見たときに、しみじみ自分が生きて帰ったという実感を味わったといっていますが、いずれにしろ、緑というのは、人間にとって、人間の感性にとっても非常に大事な存在だと思います。
 都民が自然の保護のための活動に参加することは、環境に対する理解や健康増進の観点からも非常に意義があると思います。都においては、多摩の森林を広葉樹の森へ転換することや、里山を再生する試みなど、さまざまな緑地の保全、回復の事業を展開してまいっております。
 これらの活動には、団塊の世代を初め幅の広い都民あるいは企業やボランティアなどの参加が見られますが、今後とも緑地保全活動に都民が積極的に参加できる仕組みを幅広く推進していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君) 多摩産材の活用についてなど、四点のご質問にお答えいたします。
 まず、多摩産材の活用についてでございます。
 住宅建築においては、現在、民間の製材所、工務店等が多摩産材を使った家づくりに取り組んでおりまして、都としても、現地見学会の開催を支援するなど、需要の拡大を図ってまいります。
 また、公共施設におきましては、昨年十一月に設置した花粉症対策本部のもと、全庁的に多摩産材の利用を進めておりまして、保育園の木製遊具、道路の木製ガードフェンス、河川の流れを安定させる木工沈床等で活用しております。
 さらに、本年度からは、多摩産材を使用した都立学校什器の標準規格を設定し、その活用を進めるなど、需要拡大に取り組んでまいります。
 次に、多摩産材認証協議会及び認証制度についてでございます。
 本協議会は、多摩地域の森林所有者、伐採業者、製材業者等民間の方々で構成されておりまして、登録事業者が取り扱う多摩産材に対して証明書を発行し、認証することにより、多摩産材の流通の拡大に努めているところでございます。
 都は、多摩の林業振興の立場から、その設立過程から支援してきておりまして、今後は、認証制度を関係業界に広く周知することにより、事業者の一層の参加を促してまいります。
 次に、木質バイオマスエネルギー事業化調査実施後の取り組みについてでございます。
 本調査は、製材等の過程で発生する端材等の有効活用に向けて、平成十四年に東京都農林水産振興財団が調査、検討したものであります。その後、本調査をもとに民間事業者が、端材を利用したストーブ用の粒状固形燃料─ペレットと申しますが─の製造を開始し、現在、年間約八十トンを製造しておりますが、都は、ペレットストーブの普及に努めてきたところでございます。今後とも、ご指摘のバイオマストイレなどを含め、木質バイオマスの有効活用について、普及、PRに努めてまいります。
 最後に、クラインガルテンの現状と支援についてでございます。
 クラインガルテンは、宿泊施設を備えた滞在型市民農園でありまして、都市住民が農山村の自然や生活文化に触れながら農業体験できる場であり、ドイツの市民農園が原型とされております。
 都では、農山村活性化の観点から、かねてよりこのような体験交流施設の整備を支援してまいりました。平成五年にはあきる野市で開設されたほか、来春には奥多摩町でも開設予定であります。
 この施設は、お話しの団塊の世代の受け皿としてばかりでなく、生産体験、食育の場としての機能を持つため、整備に取り組む農山村の市町村等を引き続き支援してまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 多摩産材を用いた東京の木・いえづくり協議会についてのご質問でございますが、協議会は、多摩産材を活用する住宅の供給促進を目的として、平成十三年に、木材供給者や工務店等の住宅生産事業者により設立され、毎年、その普及に向け、セミナーやイベントを開催しております。
 昨年末には、新たな取り組みとして、一定割合の多摩産材を使用した家づくりに対し、民間金融機関と連携した優遇融資制度を創設しております。今後、花粉の少ない森づくり運動などにより供給の増加も見込まれることから、協議会の趣旨に賛同し、多摩産材に関する知識を有する工務店がより多くこの活動に参加することが期待されます。
 今後とも都は、多摩産材を活用した家づくりの普及に向け、協議会活動を支援してまいります。
   〔環境局長大橋久夫君登壇〕

○環境局長(大橋久夫君) 地球温暖化対策に伴う自動車環境管理計画書制度についてのご質問でございます。
 まず、この制度は、都内で三十台以上の自動車を有する事業者に対し、ディーゼル車規制への対応などの計画と実績の報告を義務づけたものでございます。今回の改正は、従来の内容に加え、自動車の燃料消費量や共同配送、エコドライブなど二酸化炭素削減対策について報告を求めているものでございます。これは、事業者みずからが二酸化炭素の排出量を把握することにより、自動車部門における自主的、積極的な二酸化炭素排出削減の取り組みを促すものでございます。
 次に、事業者の積極的な取り組みを引き出す工夫についてでございます。
 新たな制度では、事業者から実績報告を求めるだけでなく、二酸化炭素削減対策の取り組み状況についての評価結果を事業者本人に通知し、これを次年度以降の削減対策に活用できるような仕組みにしております。さらに、特にすぐれた取り組み内容や、その事業実施者を公表するなど、積極的な取り組みが社会的にも評価されるような制度運営を行ってまいります。

○副議長(木内良明君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時二分休憩
   午後三時二十六分開議

○議長(川島忠一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十四番吉原修君。
   〔四十四番吉原修君登壇〕

○四十四番(吉原修君) まず初めに、アジア大都市ネットワーク21についてお伺いいたします。
 昨日の我が党の代表質問でも触れましたが、四月の台北総会に時期を合わせて、台湾にゆかりの深い樺山たかし議連会長とともに、我が党の有志が日台友好議員連盟訪台団として台湾を訪問いたしました。私もその一員として参加し、石原知事が提唱して設立されたアジア大都市ネットワークの取り組みが着実に進んでいることを実感いたしました。
 我が国は、終戦後の厳しい時代から比べ、短期間のうちに世界では類を見ないほどの高度成長国に発展いたしました。そして、アジアの国々に大きな貢献をしてまいりました。しかし、その後のバブル崩壊からようやく景気の回復が本格化し始めたとはいえ、今後の少子高齢化、人口減少などを考えると、先行きは不透明であるといわざるを得ません。
 ヨーロッパは、EUとして連携することにより国際的な発言力を増し、加盟各国の発展を目指しています。東京、そして日本が発展を続けていくためには、アジア地域と連携し、相互に発展していくことが不可欠だと思います。アジアの各都市は国の役割に匹敵する大きな重みを持ち、さらに重要な役割を果たしていくことになると思います。そうした都市が連携して、東京のリーダーシップのもとに、アジア大都市ネットワークが一層の成果を上げていくことを期待しております。
 アジア地域が国際社会において確固たる地位を築くために、アジアの大都市がどのような役割を果たしていくべきか、知事にお伺いいたします。
 スポーツへのジュニア選手強化、育成について伺います。
 昭和三十九年の東京オリンピックを肌で感じた世代は、あの入場行進での堂々とした日本選手団の勇姿と、敗戦以来ひたすらあすに向かって果敢に挑んできた日本人の姿勢をダブらせて、日本が世界に向けた国際社会に参加する第一歩と感じたと思います。
 今再び東京オリンピック開催が実現するかもしれないと感じられるようになってきた都民に加えて、JOCでもオリンピック日本開催に向けて選手や指導者の育成、強化に強い意思を示しております。
 多摩・島しょを中心とする東京国体や東京オリンピックに備えて、才能ある人材をジュニア期の早い段階から発掘し、そして支援するジュニア育成地域推進事業が今年度からスタートいたしました。各地域の体育協会には好評で、既にさらなる拡大、拡充を望む声が寄せられております。
 子どもたちの夢や希望、そして自信へとつなげる意義あるジュニア育成事業を実りあるものとしていくために、事業の一層の予算拡充を図っていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、科学技術への育成について伺います。
 戦後、日本人として初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹氏を初め、小柴昌俊氏、田中耕一氏など、八人の物理学賞、化学賞を受賞した科学者が誕生し、私も日本人の一人として大変誇りに感じております。
 名誉都民でもあります小柴博士のお話によりますと、陸軍幼年学校受験の一カ月前に不運にも小児麻痺にかかり、その後の後遺症から、音楽の道も軍人の道もあきらめざるを得なかった。その病床にあったとき物理学と出会ったのは、当時の担任、金子秀雄先生の影響が大きかったといわれております。勉強が好きになるには幾つもの要因があると思いますが、その一つに、すぐれた先生との出会いが大きいと思います。
 我が国は資源の少ない国です。その分、将来においても国際社会をリードする人材を育てていかなければなりません。オリンピック出場やプロスポーツ選手など夢見る子どもたちを支援しているように、頭の柔軟な小学校段階から、将来、科学技術の分野にすぐれた能力を発揮できる理科好きの子どもたちを育てることが必要であり、そのためにも、子どもの豊かな発想や創造力を伸ばす施策が大事であると考えます。将来は多くのノーベル賞受賞者や、あるいは国際社会に通ずる科学者の輩出を願ってやみません。
 そこで、小学校において、例えば五年、六年生の高学年の理科授業を専門性の高い教員が教えられるようになればいい、そういうふうに思っているわけでありますけれども、そうした体制ができるように、ご見解をお伺いいたします。
 続いて、知事にお伺いいたします。
 知事は、ビッグトークにおいて、都政の課題を中心に都民と議論し、信頼関係を築いてこられたことは、大変評価されております。しかしながら、これまでのほとんどは、当然かもしれませんが、大人中心の場でありました。時にはオリンピック選手や国際社会で活躍しているゲストを招いて、東京のリーダーである知事自身とのトークに子どもたちが参加をして、意見交換のできる場があってもよいのではないかと考えます。
 オリンピックやプロスポーツに自分の夢や希望を託している子どもたちや、発明、発見を夢見る子どもたちなど多くの子どもたちにとって、きっと知事との一言一言が心に残り、意欲の向上や自信へとつながっていくものと思いますが、ご所見をお願いいたします。
 子どもの安全確保について伺います。
 昨年の広島、栃木に続いて、つい最近では秋田での子どもの痛ましい事件が相次ぎました。弱く、幼い子どもの生命を奪った卑劣な犯行は、学校、保護者、地域に大きな衝撃となり、さまざまな取り組みが行われております。東京都は、子どもの安全確保のために緊急対策を積極的に講じていますが、特に二点についてお伺いいたします。
 最近、都内を走るバスなどに張られている歌舞伎のくま取りをイメージした防犯ステッカーが目にとまります。犯罪を見逃さないという印象の個性的なデザインは、犯罪から子どもを守る上で大変効果的なものと考えます。しかし、地域を走る車にはまだまだ足りないように思われますが、普及の現状について伺います。
 また、小中学校への不法侵入対策として、また犯罪防止の効果としても高い防犯カメラは、都内小中学校全校に早期に設置すべきと考えておりますが、導入の進捗状況について伺います。
 次に、食育について伺います。
 国際連合食糧農業機関によりますと、世界人口の約六十五億人のうち約八億人が日々の食糧に事欠き、常に栄養不足の状態に置かれているといわれております。日本は食糧の多くを海外に依存しているにもかかわらず、輸入されている量のおよそ半分に当たる量を廃棄しております。そして、金額にすると、何と約十一兆円にも及び、この金額で約七億人の人が必要とする小麦を賄うことができるそうであります。東京の予算が約十二兆四千億円強でございますから、実に莫大な金額を毎年どぶに捨てていることになります。
 グルメとかダイエットを否定するものではありませんが、私たちの周りには食べ物があふれています。途上国といわれる国々では、普通に食事をとりさえすれば治る病気でも、多くの子どもたちが命を落としている現状もあります。
 今、日本人一人一人が、世界の食糧事情や、あるいは健康面など、食の大切さをきちんと理解することが重要であります。都は、食育の中で、食を大切にする心をどのように養おうとしているのか、伺います。
 また、外食産業など食品関連事業者に食育の意義を十分に理解してもらい、食育の一翼を担ってもらうことも大変重要だと思いますが、具体的なお考えを伺います。
 次に、報告団体について伺います。
 東京都は、これまで、行財政改革の一環として監理団体改革についても積極的に取り組み、成果を上げてきました。東京都が財政支出などを行う団体には、監理団体のほかに、基本的に運営状況の報告を受けるのみにとどまる報告団体があります。
 しかし、報告団体には多種多様な団体があり、例えば出資に関して、当初は公益上の必要性があったと思いますけれども、社会情勢の変化等によって公益性が薄れてきている団体もあります。私は、こうした団体については、株式の公開や、それを踏まえた都の出資の引き揚げなど、競争原理に基づいて、完全に自立させることも検討していくべきだと考えます。
 また一方で、その経営が財政面で東京都に大きく依存している報告団体もあります。現在、東京都が報告を求めている情報は、すべての団体で一律の内容となっております。そして、必ずしも適切な関与とはいえないのではないでしょうか。
 そこで、東京都が団体から求める報告内容に関し、団体の特性等を踏まえて見直すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、発電事業について伺います。
 多摩川第一水力発電所は、運転を開始して以来、既に五十年になろうとしており、下流にある二つの水力発電所も含めて、行政としてかかわる役割は大きく変わってきました。加えて、現在は既に法整備もなされ、電力自由化がますます本格化しているなど、電気事業を取り巻く状況は大きく変化しています。
 官から民へ、この社会情勢の大きなうねりの中で、民でできるものは民に任せる時代が到来しています。電気事業は公益性の高い事業ではありますが、事業者は民間会社が主体であり、電力の安定供給においても十分な信頼性があります。
 こうした状況の中で、地下鉄事業やバス事業が本業である交通局が、どのような役割を持って電気事業を行っているのか、そして、今後も経営していく意味があるのか、疑問を感じざるを得ません。
 これまでの検討を踏まえて、交通局として今後電気事業の方向性をどのように考えているのか、伺います。
 水道事業について伺います。
 東京の水道事業は、東京を訪れる外国人の方々からも世界に誇り得るレベルの高さと称賛され、私たち都民の生活と経済活動になくてはならない大きな役割を担っています。水道局では、現在おおむね四半世紀を見据えた施設整備長期構想を検討していると聞いていますが、東京の特性を踏まえた上で、給水所の能力の充実など、首都東京の都民生活と都市活動を支えていくための実効性の高い施策を盛り込んだ基本構想とする必要があると考えます。
 そこで、東京にふさわしい水道を構築していく上で、基本認識と長期構想の方向性について伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 吉原修議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、アジアの大都市が果たすべき役割についてでありますが、アジア地域は世界の人口の約六割を占めるとともに、近年の著しい成長によりまして、世界のGDPに占めるシェアが二〇%を超えるなど、欧米を凌駕し得るポテンシャルを開花させ、今や世界の中で一つの大きな極を形成しようとしております。
 アジアの大都市では急速な都市化が進んでおりまして、情報や人材の集積が進み、それぞれの国を牽引する英知が集積されております。アジアがさらに今後発展し、国際社会で重要性を高めるためには、アジアの頭脳部、心臓部であるそれぞれの国の大都市が先導役となって連帯と協力を強化することが不可欠であると思います。こうした共同作業というものは、残念ながらアフリカではまだあり得ないことであります。そういう点で、アジアが世界に刮目されるゆえんの一つだと思います。
 これまで、アジア大都市ネットワークの活動を通じて、新興感染症対策のネットワークの構築や、中小型ジェット機の開発促進など、国境を越えた都市連携の有効性を証明してまいりました。
 今後も、アジア地域の大都市が強固に連携することにより、世界に対してアジアのプレゼンスを高め、二十一世紀がアジアの時代であることを鮮明に示していきたいと思っております。
 次いで、ビッグトークを活用して子どもたちとの意見交換についてでありますが、大変結構なご提言だと思います。子どもたちが夢と希望を持ってスポーツや科学に打ち込んでいくことは、日本の将来にとっても大変重要なことでありまして、親や学校、地域、行政が一体となって支えていく必要がございます。
 今まで、いわゆるビッグトークは、いろんな問題について私の考えも述べ、それぞれの専門家が提案をし、市民の皆さん、都民の皆さんとも意見を交換してまいりましたが、これを子どもたちのために開放するのも結構でありますが、むしろもっと広範囲に、子どもたちを刺激していくために、やっぱり都が主催して、例えばイチロー選手が子どものころどんな努力をしたとか、あるいは小柴さんがどんな努力をしたとか、今日、日本を代表するそういったプロミネントな人材に、その人たちが子ども時代に何をしたか、そういう経験をわかりやすく、いいインタビュアーを通じて幾つかのケースをお話しいただいて、それをフィルムにして、あるいはビデオにして子どもたちに伝えるということも、あなたの質問を聞きながら、一つの方策として、もっと有効にあるんじゃないかということを考えました。これは早速、着手してみたいと思います。
 なお、他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、ジュニア育成地域推進事業についてでございます。
 東京国体やオリンピックにおきます東京都選手の活躍は、都民に夢や希望を与え、東京のスポーツ振興に大きく寄与するものと認識しております。
 都教育委員会は、ジュニア期からの一貫した指導体制の確立が競技力向上の喫緊の課題となっていることから、その基盤となりますジュニア育成地域推進事業を今年度より開始いたしました。
 今後、本事業の成果や課題を十分把握するとともに、各地区の体育協会と学校、地域スポーツクラブなどとの連携や指導体制の強化を支援するなど、一層の充実を目指してまいります。
 次に、科学技術教育についてであります。
 将来の日本を担う科学技術分野にすぐれた人材を育成するためには、小学校の段階から自然現象に興味や関心を抱かせ、科学的な見方や考え方ができるような指導を行っていくことが重要であります。
 そのため、都教育委員会では、理科の好きな子どもを育てる授業の工夫に取り組んでいる学校を、研究機関等と連携して支援しております。
 また、国語、算数だけでなく、理科をも含めて少人数指導等指導方法工夫改善の加配を措置し、基礎学力の向上ときめ細かな指導を行うために、少人数指導の充実を図ってきたところです。
 引き続き、区市町村教育委員会と連携いたしまして、理科の観察、実験の充実に向けた研修を実施し、教員の専門性を高めるとともに、既存定数の再配置や非常勤講師の活用など、創意工夫を図りながら、少人数指導の充実に努めてまいります。
   〔青少年・治安対策本部長舟本馨君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(舟本馨君) 子どもの安全確保についての二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、地域を走る車両の防犯ステッカー活動の普及の現状についてでございますが、動く防犯の眼として、歌舞伎のくま取りをイメージした防犯ステッカーを貼付した車両は、既に都内で四万台走っております。そして、現在も各地域の企業や団体などから、この動く防犯の眼の活動にぜひ参加をしたい旨の申し出が私どもの本部に来ておりまして、そうした申し出に対しましては、速やかにステッカーを提供しております。
 これからも各方面に参加を呼びかけまして、ステッカーの提供やデザインの提供を行い、地域を走る車両による動く防犯の眼の活動をさらに広げていきたいと考えております。
 次に、都内の小中学校の防犯カメラ導入の進捗状況についてでございます。
 未整備の学校が多かった公立小中学校や養護学校、幼稚園につきまして、一気に防犯カメラを設置することを目指しまして、今年度の小中学校等防犯設備補助事業を積極的に今、推進しております。既に、早期の着工を希望してきました区及び市には、事業計画を承認いたしました。
 今後とも、防犯カメラの設置についての区市町村の要望に速やかにこたえてまいります。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君) 食育についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、食を大切にする心の涵養についてでございます。
 ご指摘のとおり、現在、世界じゅうで多くの人々が飢餓や栄養不足で苦しんでおりますが、その一方で、海外から多くの食料を輸入する日本では、食料の廃棄が大量に発生していることが報告されております。このことは、食を大切にする心をはぐくむ上で大きな課題となると考えております。このような世界の食料事情を理解し、食を大切にする適切な行動をとれるようにすることが重要でございます。
 また、農作業の体験や生産者との交流は、生産の苦労を実感し、農作物への愛着を生む機会ともなります。このため、現在策定中の食育推進計画におきましては、食物を取り巻く世界の状況への理解を深めていくことや、食の生産現場との交流や体験を通じて、食を大切にする心を養ってまいりたいと考えております。
 次に、食品関連事業者の食育への理解と協力についてでございます。
 東京にはレストランなど外食の店が多く、また、総菜など調理済み食品を扱うコンビニ店等もふえております。最近では、食育の重要性に着目し、健康メニューの提供やカロリー表示、親子料理教室の開催などに主体的に取り組む事業者も見られるところでございます。
 都は、こうした活動に取り組む事業者を初め、さまざまな食のサービスの担い手の理解と協力により、だれもが身近に食の情報を得られる環境を整え、広く食育を展開してまいります。
   〔交通局長松澤敏夫君登壇〕

○交通局長(松澤敏夫君) 電気事業の役割と今後の方向性についてのご質問にお答えいたします。
 交通局の電気事業につきましては、旧東京市電気局の時代に始まりまして、昭和三十二年からは、多摩川の流水を利用し水力発電事業を行い、西多摩地域の電力の安定供給に寄与してきたところでございます。
 しかしながら、近年、公営での電気事業につきましては、ご指摘のとおり、発電部門への新規参入が拡大されるなど、電力の自由化が進展する中、行財政改革の流れのもとで、経営効率化の推進や官民の役割分担の見直しなどが求められるなど、転換期を迎えております。
 こうしたことから、交通局内にこれまで検討委員会を設置しまして、経営のあり方の検討を進めてきたところでございますが、今後、年度内に策定を予定しております次期経営計画の中で、民間への事業譲渡などを視野に入れながら、その方向性を明らかにしていく考えでございます。
   〔総務局長高橋功君登壇〕

○総務局長(高橋功君) 報告団体から求める情報の内容についてのご質問にお答えをいたします。
 報告団体は、みずからの経営責任と判断のもと、自主的な経営を行う団体でございまして、監理団体のような特別な関与を行わず、運営状況の報告を受ける団体でございます。
 この報告団体の中には、都の出資割合が低く、人的支援がないものの、委託料など都からの財政支出が多い団体もあるなど、ご指摘のとおり、都とのかかわりは必ずしも一様ではない状況にございます。
 今後は、報告団体の事業における都財政支出の程度に応じまして、関連する財務情報など、より詳細な運営状況報告を求めるよう、報告団体に対する都の関与のあり方を見直してまいります。
   〔水道局長御園良彦君登壇〕

○水道局長(御園良彦君) 首都東京にふさわしい水道を構築していく上での基本認識と長期構想の方向性についてのご質問にお答えいたします。
 東京は、一千二百万人が生活の場としているとともに、昼間人口が一千五百万人にも上る我が国における政治、経済の中心であり、安定給水に支障が生じた場合には、国内のみならず世界の社会経済活動に大きな影響を及ぼすことになります。
 こうしたことから、水道は、都民生活と首都機能を支える上で、東京における最も重要なライフラインの一つであると認識をしております。
 施設整備の長期構想の策定に当たりましては、断水に強い高水準な水道、次世代につながる水道などを目指しまして、中央防災会議の報告を踏まえた耐震性の強化、地域給水の拠点となる給水所の拡充、施設の劣化状況を的確に把握した施設更新などの施策を盛り込み、今年度中の策定に向け全力で取り組んでまいります。

○議長(川島忠一君) 八十一番古館和憲君。
   〔八十一番古館和憲君登壇〕

○八十一番(古館和憲君) 初めに、障害者自立支援法への対応について伺います。
 自立支援法は、国会審議のときから、障害者と家族に重い負担を強いるなど、厳しい批判が寄せられていました。施行から二カ月ですが、我が党は、実施後の影響調査を都内四百十カ所の通所施設に対し行い、百を超える施設から回答がありました。利用者総数三千五百人を超えています。その結果、利用者負担では、これほどの負担になるとは思っていなかった、施設運営では、減収によって施設の存廃にかかわる大変な事態など、想像を超える深刻な実態が浮き彫りとなりました。
 そもそも障害者は収入を得ることが困難で、障害二級年金の場合月六万六千円、それに加えて一万五千円の都の福祉手当と一万円前後の作業所の工賃に頼らざるを得ないのが実態であります。
 政府は、負担上限額を設けるなど低所得者に配慮したといいますが、現実はどうでしょうか。我が党のアンケート調査では、施設利用者の九七%が負担増となっており、これまで無料だったのが月額二万円以上の負担となった人が約四割に及んでいます。その結果、十五人が通所を断念し、退所を検討中の人が六十七人もおります。
 私自身、本当にひどいと痛感したのは、障害者が作業所で得る工賃よりも施設の利用者負担が上回る事態が起きているということです。作業所で働いていた工賃が月一万円ぐらいなのに、二万円を超える定率負担が生じています。自立どころか就労への意欲を失わせる、何のために働いているのかわからないなど、怒りの声が寄せられています。これでどうして自立支援といえるのでしょうか。
 施設の運営も深刻です。これまでも多くの施設は、収入が少ない中でも、職員の献身的な努力によって支えられてきました。ところが、自立支援法によって運営費の単価は下がり、その上、利用者が休んだ日は運営費から減額される、そういう日払い方式に変えられました。その結果、どうなったでしょうか。我が党のアンケートでは、施設の七二%が減収となり、それも約半数の施設が一割から二割も減収となりました。年間三千万円以上も減収する施設もあるのです。
 政府や都は、定員の拡大や開所日をふやすことで減収は補てんできるといいますけれども、定員をふやし、土曜、日曜も開所するなど対策を講じても減額が生じる、抜本的な見直しを図ってほしい、人員削減や賃金カットはもうできない、既にぎりぎりです、これが施設からの訴えなんです。
 知事、自立支援法施行後の現状をどのように認識していますか。障害者の皆さんの切実な声に耳を傾けて、負担増の状況や施設運営への影響について、都として実態把握に努める必要があると考えますが、どうでしょうか。
 また、政府に対し、制度の改善と再検討を行うよう強く要請していただきたいと考えます。答弁を求めます。
 十月の自立支援法全面施行に向け、都として緊急の対策が必要です。
 第一に、利用者負担の軽減です。
 都のホームヘルプサービスに限定して一〇%の定率負担を三%に軽減する措置では不十分です。多くの障害者は、グループホームに住んで、昼間は作業所に通うとか、在宅で作業所、ホームヘルパー、ショートステイを利用するなど、多くのサービスを組み合わせて使うことで何とか生活を支えています。その一つ一つに定率負担がかかります。お金のない人はサービスを使えない、そんな事態は許されません。
 だからこそ横浜市では、すべての在宅サービスを対象に、住民税非課税世帯は自己負担なしの無料を継続しているのです。予算的には、人口三百六十万人の横浜市で七億円です。東京ができないはずはありません。
 都が実施している三%軽減の対象サービスを、通所施設やグループホーム等にも広げるなど、都の利用者負担軽減策の拡大を提案するものですが、見解を伺います。
 第二に、施設運営及び区市町村への支援です。
 東京都は、福祉水準を引き上げるため、障害者施設に対し、都加算やサービス推進費などの都独自補助を行ってきました。施設運営は既に大幅減収となっていますが、十月からの全面施行により、一層の減収が見込まれています。それだけに、我が党のアンケートでも、都独自補助は命綱、仮に削減されれば施設を休止せざるを得ないとの切実な声がたくさん寄せられています。
 グループホームなど施設は、十月から自立支援法に基づく新体系に移行します。移行後も都加算補助やサービス推進費を維持し、今までの運営水準が低下することのないよう手だてを講じていただきたい。
 また、小規模作業所、ガイドヘルパー、手話通訳派遣などは、区市町村の地域生活支援事業に移行しますが、国の補助金はわずかで、現行の都加算補助と同様の都独自補助なしにサービス水準を維持できません。利用者、施設関係者、区市町村からも不安の声が上がっています。都はこの問題をどのように認識し対応するのか、答弁を求めます。
 第三に、精神障害者福祉の拡充です。
 精神障害者施策は、知的障害や身体障害者の分野に比べ十分ではないことは、東京都自身も認めてきました。三障害一元化という自立支援法の理念に基づき、おくれている精神障害者福祉サービスの格差是正は急務だと思いますが、認識と対応を伺います。
 中でも、心身障害者福祉手当やサービス推進費補助について、身体、知的障害のみ対象という枠を広げ、精神障害者も対象に入れることを求めておきます。
 精神障害者が除外されている民営バスの半額乗車制度も、実現に向けて努力を求めるものです。所見を伺います。
 都内の製造業の復活の取り組みが始まっています。私の地元板橋区では、先端産業に応用されている医療分野、精密加工分野などで新たな事業が取り組まれ、製造出荷額や従業者数で二十三区中二位の地位を占めるに至っています。
 こうした取り組みを支えているのが町工場と大学、研究機関によるネットワークであり、板橋の町工場の技術力を含めた潜在能力は高く、その底力は強いと評価されるほどです。この先進的経験を普及し、都内製造業の活性化に結びつけることが緊急の課題となっています。
 そこでまず、二十一世紀を展望した場合、重要な分野となるナノテクやITなど、高度な先端・基盤産業の進展から立ちおくれることのないよう、都が積極的に支援していくことが求められていると思いますが、知事の見解をお伺いします。
 私は、大阪府の取り組みを調査してきましたけれども、九カ所の地域中小企業センターを初め、直営の産業技術研究所、クリエイション・コア東大阪などの支援施設に加え、国、府、市町村、産技研、商工会議所などが参加して、地域中小企業支援機関連携会議をつくって、府の産業政策づくりに反映させています。
 都としても同様の会議を立ち上げ、官民共同での産業振興施策の拡充に努めることが欠かせないと思いますが、いかがでしょうか。
 また、大阪のクリエイション・コアは、国のインキュベーター機能に加え、府独自に販路拡大に役立つ常設展示場、産学公連携、創業支援、海外との取引のためのホームページづくり、金融相談など、ものづくりに役立つあらゆるシステムを集約したワンストップサービス施設として大変役立っています。
 都としても、こうしたワンストップサービスのものづくり支援センターを早急に検討すること、新たな起業を支援するインキュベーションマネジャーを拡充することを求めます。
 さらに、城北のものづくりを支えている産業技術研究所、現在地に直営で存続させることを重ねて求めるものです。それぞれお答えください。
 国際競争に打ち勝つ上で、企業イメージの向上が欠かせません。愛知県では、すぐれた理念を持ち、環境に配慮したり、すぐれた製品をつくっている企業を愛知ブランド企業と認定し、ロゴマークの使用を認めるなど、企業ブランドを戦略的に位置づけています。
 東京でも、すぐれた技術を持っている企業を推奨する東京ブランドの創設を提案するものですが、どうでしょうか。
 ナノテクや先端技術に果たすメッキの役割が再注目されています。東京には全国の三分の一のメッキ業が集中しており、東京のフルセット型のものづくりに欠かせないメッキ産業の支援を抜本的に強めることを求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 古館和憲議員の一般質問にお答えいたします。
 障害者自立支援法についてでありますが、障害者自立支援法は、自己決定と自己選択及び利用者本位の理念のもとに、障害者施策の一元化や制度運営の安定化を目指し、新たな障害福祉体系を構築するものであります。
 この自立支援法の改革の理念は、これまでも都が全国に先駆けて実施してきた、利用者本位の新しい福祉を目指す福祉改革の考え方や取り組みと合致するものであると思います。
 今後、この理念の定着を図るとともに、都の先導的取り組みをさらに前進させ、区市町村とともに連携しながら、障害者が地域の中で自立し、安心して暮らせる社会を実現していきたいと思っております。
 次いで、先端技術への支援についてでありますが、東京の産業の活性化、経済の発展のために、先端技術分野への重点的支援が重要であることは論をまちません。
 都はこれまでも、平成十七年二月に、最先端の超微細加工機を備えたナノテクノロジーセンターを開設するとともに、ベンチャー技術大賞などにより、先進的で高度な技術を有する企業を積極的に支援してまいりました。
 さらに、世界に発信するIT拠点としての秋葉原の整備を進めるなど、都は既に全国に先駆けて先端産業の支援を行っております。
 他の質問については関係局長から答弁いたします。
   〔福祉保健局長平井健一君登壇〕

○福祉保健局長(平井健一君) 障害者自立支援法につきまして七点のご質問をいただきました。
 まず、障害者の負担や施設運営についてでございますが、都は、さまざまな機会をとらえて、障害者関係団体や施設運営者等から意見を伺っておりまして、既に実態把握は行っているところでございます。
 次に、国に対する要請についてでございますが、都では、障害者自立支援法が真に障害者の自立を支援するものとなるよう、法の成立以前から、ホームヘルプサービスにつきまして低所得者への配慮など、制度の円滑な運営に資するため、必要な国への提案要求を繰り返し行ってまいりました。
 なお、法の附則第三条では、法施行後三年または五年後に、施行の状況等について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずることと定められているところでございます。
 次に、利用者負担軽減策の拡大についてでございますが、障害者自立支援法では、低所得者に対するさまざまな配慮がなされておりますが、これらに加え、既に都としてはホームヘルプサービス利用者に対する定率負担導入の激変緩和、障害児施設等入所者への医療費助成制度の対象拡大、精神障害者の通院医療費自己負担分の無料化など独自の負担軽減措置を実施しており、これ以上の拡大は考えておりません。
 また、横浜市はすべての在宅サービスを対象に無料を継続している、都の軽減措置では不十分とのお話でございますが、障害者自立支援法における定率負担の導入は、サービスの利用者も応分の費用を負担し、みんなで支える仕組みを構築するものでございます。その上で、月額負担上限額の設定や個別減免の実施など、低所得者の方に配慮した軽減策が講じられているものでございます。
 都としましては、ホームヘルプサービスが最も基幹的な在宅サービスであることから、法を円滑に施行するため、定率負担導入に係る激変緩和措置を講ずるものでございます。
 次に、障害福祉サービスの運営水準についてでございますが、現行の居宅サービスは本年十月から、また施設サービスは五年間の経過措置期間を設けた上で、障害者自立支援法に規定する新体系のサービスに移行しまして、移行後は、提供するサービス内容や利用者の障害程度区分に応じまして報酬額の設定がされていることとなっております。
 お尋ねのグループホームに対する都加算補助や民間社会福祉施設に対するサービス推進費助成につきましては、今後、障害者自立支援法の施行状況や報酬体系など国の動向を踏まえ、予算の範囲内で適切に実施してまいります。
 次に、区市町村で実施する地域生活支援事業についてでございますが、地域生活支援事業に係る経費は、国の統合補助金により充当されることとなっております。この補助金は、個別事業の所要額に基づく配分は行われず、事業実績割合、人口割合で配分されることとなっておりまして、都としては、これまでも国に対し必要な財源措置を講ずるよう要求してきたところでございます。
 地域生活支援事業につきましては、現在、各区市町村において地域の実情に応じた実施方法を検討しておりまして、都としては、区市町村の主体的な取り組みを促進してまいります。
 次に、精神障害者福祉サービスについてでございますが、都では、いわゆる社会的入院患者の退院促進や低所得者に対する通院医療費についての独自の助成など精神障害者の特性を踏まえた継続的な支援を行ってまいりました。これらに加えて、障害者自立支援法による新たなサービス体系のもとで、精神障害者に対する福祉サービスの基盤整備を初めとした多様な施策を強力に進めていく必要がございます。
 このため、本年一月に策定した障害者地域生活・就労促進三か年プランにおいては、精神障害者のグループホームや通所施設などの基盤整備について計画化し、今年度既に実施しているところでございます。
 最後に、精神障害者への民営バス割引制度の適用についてでございますが、障害者の運賃割引制度につきましては、鉄道、バス等のそれぞれの事業者の判断と負担により行われているものでございます。
 都としては、民営の交通事業者に対し、運賃割引制度の精神障害者への適用を毎年要望しているほか、従前から国に対しましても、精神障害者の運賃割引について関係機関に働きかけを行うよう提言しているところでございます。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君) 都内製造業の活性化についての五点のご質問にお答えいたします。
 まず、官民共同での産業振興施策の拡充についてでございます。
 都では既に、区市町村や商工会議所、商工会との連携を日常的に図っておりますとともに、産業技術研究センターでは、業種別交流会や技術研究会を常設し、業界や中小企業者との意見、情報交換を進めているところでございます。
 次に、ワンストップでのものづくり支援等についてでございます。
 都では、中小企業のさまざまな経営相談に専門家が対応するワンストップ総合相談窓口を中小企業振興公社に設置するとともに、地域中小企業振興センターにおいては、技術、経営の両面からの支援サービスをワンストップで提供できる体制を整備しております。
 また、インキュベートマネジャーにつきましては、中小企業振興公社や産業技術研究センターの各種支援事業と連携し、充実した支援機能を果たしているところでございます。
 次に、産業技術研究センターについてでございます。
 地方独立行政法人としたことにより、中小企業のニーズに弾力的かつスピーディーにこたえることが可能となりましたことから、今後とも、このメリットを最大限生かしながら、地方独立行政法人として運営してまいります。
 また、現在地での建てかえについてでございますが、事業を継続しながらの工事となり、工期が長期間にわたることに加え、振動や騒音により試験研究に支障が出るなどの問題があるため、現在地での建てかえは考えておりません。
 次に、東京ブランドについてでございます。
 都では、平成十二年度に東京都ベンチャー技術大賞を創設し、世界に通じるようなすぐれた技術、製品を開発した中小企業を顕彰してまいりました。これまで五十二の企業が同賞を受賞しておりますが、その多くが信用度を増し、事業の拡大を実現しておりまして、同賞はまさに企業のブランド力を創出する機能を果たしていると考えております。
 最後に、メッキ産業の支援についてでございます。
 産業技術研究センターでは、メッキの専門研究員を配置し、日常的な技術支援を行うとともに、メッキ技術に関する研究開発に取り組んでおります。こうした中、クエン酸を利用し、新たな環境基準をクリアしたメッキ液の開発が実現し、メッキ産業の環境対策に貢献することが期待されているところでございます。

○議長(川島忠一君) 五番宇田川聡史君。
   〔五番宇田川聡史君登壇〕

○五番(宇田川聡史君) 最初に、防災及び災害対策という観点から質問をさせていただきます。
 今回、首都直下地震による東京の被害想定が取りまとめられ、今後は各自治体との連携により震災対策が講じられることと思います。震災への対応は重要なことでありますが、私の印象として、水害への対応という点において、まだまだ不足している感が否めません。
 近年は異常気象が叫ばれており、多大なる被害をもたらす水害が地球規模で多発していることは紛れもない事実です。平成十六年には、七月に福井における豪雨による大きな被害があり、十月には台風二十三号の影響によって被災が各地に及びました。京都府内でバスの屋根で救助を待つという報道は印象に残るものだと思います。
 昨年九月の杉並、中野における一時間一一〇ミリを超える集中豪雨や、ニューオーリンズでのハリケーン・カトリーナによる大災害などは、特に記憶に新しいものです。
 今月二日には、小泉首相が会長を務める国の中央防災会議においても、首都圏が被災した場合の総合対策を整備することが決定されたことを初めとして、水害への関心は非常に高まっているところであります。
 私の地元江戸川区では、河川の堤防などは十分な高さを確保しているといわれておりますが、国土交通省の被害想定では、荒川などの大河川の堤防決壊等により発生する被害は、百万人を超える被災者が予想され、その被害総額は三十兆円を優に超えるという試算が出されております。地球規模の温暖化が進行している中での海面水位上昇等の危惧も払拭できない今日、高潮なども含めたあらゆる災害に対し、心配は募る一方です。
 一たび水害に見舞われますと、地盤が低いことから被害は面的な広がりを見せ、極めて広範囲に及び、人命にかかわることはもちろんのこと、冠水、地下施設への浸水、IT化が進んだ中での電子機器の被害による都市機能の停止など、震災と変わらぬ規模での損害は免れることができないと考えます。このような大水害のおそれがある東部低地帯に対しての知事のご所見をまずお伺いさせていただきます。
 現在、白鬚西地区やいわゆる亀・大・小などにおいて防災再開発という名のもとに、防災拠点の整備を進めていただいております。各地区においても自治体の協力を得て、公園や公共施設の広場等を利用して被災後の避難場所等を確保しているところです。
 都民のかけがえのない生命と財産を守るためには、もちろんそうしたハード面の整備に加えて、ソフト面での対策も重要です。もしもの災害発生時には、住民への迅速なる情報提供から始まり、避難路誘導や被災者支援など総合的な災害対策をする必要があると思います。
 また、浸水被害が広域に及んだ際には、住民の殺到等により避難所として機能し切れない場面も出てくることが予想されます。都内隣接区や他県へ避難せざるを得ない状況になれば、近隣の各自治体としっかり連携がとれた体制ができていなければなりません。今後、都は、どういった対応、取り組みをしていくのか、お伺いさせていただきます。
 避難場所について申し上げます。
 現在整備されつつある避難場所は、基本的には地震による災害を前提にしたものであります。水害に対応するべき拠点は皆無といっても過言ではありません。したがって、水による被害を受ける可能性が高い地域、特に区部東部地域にはそういった意味合いを含んだ避難所が必要であると考えます。
 繰り返し申し上げますが、江戸川区は、江東区などとともに、水害に対する危機感が大変に募っている地域です。台風などによる高潮、集中豪雨等による河川上流部の決壊などの際には、ゼロメートル地帯という地域性もあわせ持ち、高台部分が皆無である上、昨年区部西部で起きた浸水被害とは全く異なり、河川流域にとどまらず、広域での冠水被害となること必至です。加えて、荒川、江戸川といった大河川に挟まれた環境は都内では他に類を見ない特異性であります。したがって、住民の多くが避難できる場所を切望してやみません。
 現在、東京都により都立篠崎公園の整備を進めているところでございますが、最終的な完成までは、まだまだほど遠いと聞いております。災害時の拠点としての位置づけが大きなウエートを占めている公園でありますから、着実に進めていただきたいことはもちろん、先ほど申し上げた水害避難場所としての意義をあわせ持つ整備をしていくよう強く要望しておきます。
 次に、現在都が進めている東京の水辺空間の魅力向上に関する全体構想を受けて、幾つかお尋ねいたします。
 隅田川や江東内部河川及び臨海運河地域において、緑化、景観形成、コミュニティの提供などのために親水テラス整備などを計画していることは、未来に向かって潤いのある東京を創造するに大変意義のあることと受けとめており、積極的に取り組んでいただきたいと思っております。
 五月には、我が党におきまして河川並びに運河を視察した上で、「水の都東京」再生議員連盟を立ち上げ、将来構想をより膨らませた中で全面的に協力をしてまいります。さまざまな水辺を実際に見てきた中で、私からは、特に河川についてのお尋ねをいたします。
 まず、小名木川整備について伺います。
 小名木川周辺は観光資源となり得るものが豊富であり、江戸情緒をいまだにあわせ持つ、外国人観光客に対しても大変魅力的な地域だと認識しております。せっかくの既存資源を有効に活用し、万人が水に親しめる空間をつくり上げるためにも、早期に耐震護岸整備とともに、修景の整備を進めるべきだと思います。今後の整備計画をお伺いいたします。
 この小名木川は航路として利用されているため、当然に船舶が航行しておりました。視察した際に、航行する船が護岸に向かって大きく波をかぶせる場面を何度も目にしてきましたが、完成後のテラス利用者の安全確保といった点についても十分に配慮すべきと考えます。所見をお伺いいたします。
 次に、新川についてお尋ねいたします。
 新川は、かつて小名木川とともに、塩の道と呼ばれた、江戸期には行徳から塩を運ぶための水運用に掘削された河川の一つであります。既に中川から新渡橋までの約一・五キロメートルは都の親水護岸整備や区の修景整備が行われ、親水テラス化も完了しております。地域住民の憩いの場として定着をしており、季節ごとに花が咲き、夏場はハゼ釣りを楽しむ人々が多数おり、朝夕には犬の散歩道として、また子どもから高齢者までが集うコミュニティの場として活用されています。
 しかし、護岸整備が本年度予算で三角橋上流まで整備が予定されているにとどまり、旧江戸川までの約一・三キロメートルについては整備が進んでおりません。水辺の観光資源の一つとして区も位置づけをしており、護岸整備を早急かつ着実に進めていただきたいと思っております。今後の整備予定を具体的にお示しください。
 今申し上げたように、地域内では十分に認知された親水である上に、地元としては一観光資源として活用すべく進めていこうとしているところでございます。駅からのアクセスなどを整備し、沿岸に緑をふやし、環境を整え、地域特産物の販売等も視野に入れながら、一大観光地としてアピールしていきたいという思いが強くございます。
 近隣遊休地も有効に利用しつつ、今以上ににぎわいのある交流の場とするためには、早期整備とともに、観光資源としての取り組みに対しても、都として積極的に支援すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 最後に、商店街の振興についてお伺いいたします。
 東京の商店街は、地域住民やまちを訪れる人々のニーズにこたえ、魅力ある品ぞろえをし、潤いや安らぎを提供できるよう、創意工夫を凝らしたさまざまな取り組みを行っております。商店街がこうした取り組みを通じてコミュニティの核として地域の活性化に十分な役割を果たせるよう、我が党はこれまで全力で支援をしてまいりました。その結果、空き店舗を活用した新たな取り組みが生まれるなど地域の方々に喜ばれている例も数多く見受けられます。
 しかし、残念ながら一方では、経営者の高齢化や後継者不足などさまざまな課題を抱え、社会構造の変化や地域の特性に応じた特色ある取り組みができない商店街が少なくないことも事実です。
 こうした中での我が党の主張を受け、東京都はこれまでの施策に加え、商店街パワーアップ基金を新設し、NPOや株式会社等の活用による商店街組織の枠を越えた新たな支援策を実施することとしています。この支援策は、これまでにない画期的な取り組みであり、商店街を活性化する上で大きな効果をもたらすものと大いに期待しているところであります。
 そこで、この事業のねらいと商店街活性化に向けた都としての取り組みに対する決意をお伺いいたします。
 以上で私からの質問を終了いたします。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 宇田川聡史議員の一般質問にお答えいたします。
 東部の低地帯の水害対策についてでありますが、東京の東部低地帯は、明治以降の日本の近代化の過程で地下水を非常に多量にくみ上げたことによりまして、広範囲に地盤が沈下した地域であります。この地域には多くの人口と資産が集積しておりまして、中でも満潮面以下の区域に百五十万人の都民が生活しております。
 このため、高潮などに対する水害対策が極めて重要でありまして、都は、これまで長年にわたり防潮堤や水門の整備に力を注いでまいりました。その結果、例のルイジアナですか、ハリケーン・カトリーナの被害の際、あのハリケーンに匹敵する伊勢湾台風級の高潮に対する安全性を確保しております。
 しかしながら、自然現象には人知の及ばぬところがありまして、自助、共助、公助の精神にのっとった避難などのソフト対策も必要であります。
 加えて、先日、私の友人の治安対策の専門家から指摘を受けましたが、ご当地の水門は一カ所にコンピューター管理されていまして、これが満潮時や台風襲来の際に、もしテロのターゲットになったとき、水門が、管理が集約されているために、すべての水門が機能しなくなるおそれもあるので、これは新たな問題として、都は、治安対策というものをああいう施設に対して施さなくちゃいけないと思っております。
 今後も、防潮堤などの老朽化対策や耐震強化を一層推進するとともに、地元区と連携し、浸水予想区域図の活用を図るなど都民生活の安全確保に万全を期してまいります。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔総務局長高橋功君登壇〕

○総務局長(高橋功君) 大規模な水害発生時の避難体制についてでございますが、想定を超える巨大な台風などによりまして、区部東部の低地帯に大規模な水害が発生した場合には、行政区域を越えた広域的な避難が必要となります。
 災害対策基本法におきましては、隣接区市に応援を求めることができることとされておりまして、これを円滑、迅速に行うため、特別区におきましては、相互応援協定が結ばれております。
 一方、都県境を越えた避難につきましては、区市間の協定がなく、新たな仕組みが必要となっております。このため、都は、首都圏の県市と連携いたしまして、広域避難の受け入れ体制などを定める八都県市広域防災プラン・風水害編を本年十一月までに策定することとしております。このプランが実効性あるものとなるよう鋭意検討を進めまして、水害に対する都民の安全確保に万全を期してまいります。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君) 河川に関する三点の質問にお答えいたします。
 まず、小名木川の整備計画についてでありますが、小名木川はかつて行徳から江戸まで塩を運ぶために使われた歴史ある河川でありまして、護岸の耐震化とともに、観光振興の観点からも、江戸情緒を醸し出す修景を行う必要があると考えております。
 護岸の耐震化は、平成十四年度から進めておりまして、計画延長三キロのうち、番所橋から丸八橋までの一キロが今年度末までに完成いたします。
 また、この区間は、護岸の耐震化に引き続き、今年度から重点事業として修景整備を実施し、二十年度までに順次完成させる予定でございます。残る二キロにつきましても、国費等の財源確保に努め、着実に整備を進めてまいります。
 次に、小名木川におけるテラス利用者の安全確保についてでございますが、河川の魅力を高め、水辺のにぎわいを創出していくには、船舶の航行に伴う引き波対策など安全確保が必要であります。
 このため、都は、昨年十月に江東内部河川の船舶通航ルールを施行し、引き波の発生を防止するため小名木川を減速区域に指定しております。
 また、護岸整備に当たりましては、転落防止さくや波返しを設置するなど利用者の安全を確保してまいります。
 今後、より一層通航ルールの周知を図るとともに、都民が安全で利用しやすい水辺空間の創出に努めてまいります。
 最後に、新川の整備についてでございますが、新川は流域の地盤が低く、かつ軟弱であり、地震による水害の危険性が高いことから、昭和五十一年に平常時の水位を低下させた結果、安全性が飛躍的に向上いたしました。
 さらに、平成五年からは、親水性や自然環境にも配慮した、耐震護岸の整備を進めております。
 これまで中川合流点から順次整備を進めておりまして、今年度三角橋付近を整備することによりまして、計画延長二・九キロのうち、一・六キロが完成いたします。引き続き、残る一・三キロについて早期完成を目指し、整備を進めてまいります。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、水辺を活用したにぎわいの創出についてでございます。
 都は、東京の水辺空間の魅力向上に関する全体構想において、観光まちづくりの推進を掲げ、人材の育成や、浅草・両国が一体となった推進組織設立などの地域の取り組みに対しましての支援を実施してまいりました。
 また、今年度は、水辺を活用した観光まちづくりの機運を醸成するために、シンポジウムの開催や水辺活用マニュアルの作成などを行っていく予定でございます。
 お話の新川周辺につきましては、今後、地域における取り組みを待ちまして、その状況を踏まえながら効果的な支援について検討してまいります。
 次に、新たな商店街振興策についてでございます。
 都内の商店街は、地域のニーズにこたえ、創意を凝らした活動を展開しております。例えば、江戸川区では複数の商店街の若手有志が集まり、楽市を開催するなど意欲的な取り組みが行われていると聞いております。
 商店街のこのような活動をより安定的かつ持続的なものにするためには、会社等の組織の活用が有効であると認識しております。このため、新たに商店街パワーアップ基金事業を創設し、商店街による会社、NPOの設立など商店街をサポートする取り組みを支援してまいります。
 その際、複数年にわたる支援も可能とするなど、商店街の取り組みを強力に支援し、商店街の一層の活性化を図ってまいります。

○議長(川島忠一君) 三十六番橘正剛君。
   〔三十六番橘正剛君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○三十六番(橘正剛君) 初めに、二〇一六年の東京オリンピック招致への取り組みについて伺います。
 今定例会の所信表明で石原知事は、二〇一二年の招致をかち取ったロンドンの視察を踏まえ、東京への招致に強い手ごたえを得たとの感想を述べ、強い自信を示されました。非常に頼もしく思うとともに、私自身、招致議連の一員として、さらに積極的に取り組むとの決意を新たにいたしました。
 過日、招致議連の一員として、メーンスタジアム、選手村、メディアセンターなどの建設予定地を視察しましたが、現地に立ってみると、交通アクセス、周辺の緑の整備、エネルギーの確保など、今後取り組むべき課題を現実味を持って実感いたしました。しかし、その取り組みも、誘致が実現しての話であります。
 いうまでもなく、招致活動はこれからが本番であり、八月のJOCにおける国内候補地の選考、二〇〇九年七月のIOC総会での開催都市決定という大きなハードルを越えなければなりません。
 そこで、東京が今後の選考に勝ち抜くための施策について、以下具体的に伺います。
 一点目は、施設整備などに要する財政の一助として、主な競技施設などに、いわゆるネーミングライツ・ビジネス方式の導入を検討すべきであります。
 既に、各地の自治体ではネーミングライツが導入されております。横浜国際総合競技場の日産スタジアム、宮城県営競技場のフルキャストスタジアム宮城などが定着し、国も国立競技場、レインボーブリッジ、明石海峡大橋などへの導入を検討していると聞いております。
 オリンピックにおける企業広告については、IOC、JOCの規定がありますが、ネーミングライツを導入した東京都の第三セクターである味の素スタジアムがサッカーの試合会場候補地となっていることから、同じ手法で導入することは十分可能と考えます。
 これまでの多くの大会が、大会終了後、大きな赤字に悩まされてきたことを考えると、こうした手法で民間資金を効果的に活用して財政負担を抑制するとの方針は、招致への大きなインセンティブになると思います。都の見解を伺います。
 二点目は、もう一つのオリンピックといわれるパラリンピックに焦点を当て、その概念を大きく転換させる大会方針を打ち出し、誘致への推進力とすべきであります。
 一九六四年の東京大会は、オリンピックとパラリンピックが同じ都市、同じ施設で開催された最初の大会であると同時に、パラリンピックと呼ばれるようになったのも東京大会が最初でありました。
 同様に、二〇一六年の東京大会において、新たな理念に基づいたパラリンピックを開催すると宣言することは、東京大会の大きな特徴づけとなります。
 そこで第一に、二〇一六年までを、例えば二十一世紀におけるノーマライゼーション十年と定めるなど、都が先頭を切ってハード、ソフト両面にわたる都市のバリアフリー化に取り組むべきであります。知事の所見を伺います。
 第二に、これまでのパラリンピックにおける取り組みは、競技会場のバリアフリー化やボランティアによる支援など、どちらかといえば競技、運営に的を絞った内容が中心でありました。
 しかし、今回招致を目指す東京大会では、従来からの取り組みの強化はもとより、大会後、住宅として活用される予定の選手村の構造の工夫、あるいはすべての施設やアクセスへのユニバーサルデザインの導入など、社会全体のノーマライゼーションにつながる取り組みを行うべきであります。所見を伺います。
 次に、文化芸術振興策について伺います。
 このほど公表された東京都文化振興指針は、文化芸術振興の基本的な方針を定めるべきであるとの平成十六年第二回定例会での公明党の主張を受けて策定されたものであります。
 特に、今回の指針では、創造的な文化を生み出す都市の実現を目指し、若手・新進アーチストへの新たな支援策としてアートヴィレッジIN東京を開設し、国内外のアーチストの発掘、育成を本格的に進めたいとしております。
 そこで、新たな振興策と従来の事業をよく組み合わせ、またトーキョーワンダーサイトなどの施設とも連携して、新進・若手アーチストの支援策を総合化、体系化すべきです。見解を伺います。
 また、本指針では、美術館、博物館による芸術作品や資料の収集について、文化遺産を次世代に継承していく未来社会への投資と位置づけ、今年度は七年ぶりに美術作品等の購入が再開されることになりました。
 芸術作品の収集は、収蔵、保管、展示などとともに、文化施設の重要な機能であります。今後は、長期的な視点を持って、計画的な作品の購入を行っていくべきであります。見解を伺います。
 さらに、本指針で触れている子どもたちの感性の育成について伺います。
 子どもの時代からさまざまな文化、芸術に触れることが、豊かな心と感性をはぐくみ、将来、数多くのすぐれた芸術家や鑑賞者、支援者を生み出す土壌になります。
 都はこれまでも、子ども向け舞台芸術参加・体験プログラムなどを実施して、子どもたちに身近な施設で本物の舞台芸術に触れる機会を提供しております。今後も子どもたちの豊かな感性の育成のために、さらに多様な子ども向けの事業を推進すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、都営住宅の安全対策として、住宅用火災警報器の設置について伺います。
 六月一日の改正消防法の施行により、新築住宅への住宅用火災警報器設置が義務化されました。一方、既存住宅については自治体の条例で定めることになっており、東京都はことし三月に改正した火災予防条例によって、平成二十二年三月末までと期限を定めて、居室、台所及び内階段への設置を義務づけました。
 都火災予防条例は、当然、都営住宅も対象となります。都営住宅には、ひとり暮らしの高齢者や障害者が大勢居住しております。災害に弱い入居者を火災被害から守るために、都営住宅全世帯に住宅用火災警報器を設置すべきと考えます。見解を伺います。
 さらに、設置を進めるに当たっては、不公平感のないように十分配慮した年次整備計画を定め、老朽化した団地、高齢者占有率の高い団地を優先するよう要望しておきます。
 次に、都営交通のサービス向上のため、都営バスの内部障害者への配慮について伺います。
 人工透析のため週三回通院している知人から、通院に都営バスを利用しているが、透析が終わった後は全身がだるく、バスの中で立っているのがつらい、運転手さんが車内放送で席を譲るよう呼びかけていただければありがたいのだがという切実な声を聞きました。
 内部障害は、外見からはわかりにくいのが特徴です。心臓、呼吸器、膀胱、腸の機能障害などを持つ方も、同じような悩みを抱えております。
 現在、都営バスでは、内部障害などで体調が悪くなったときに、その旨を乗務員に伝えれば、他の乗客に呼びかけるようにしているとのことですが、乗務員のこうした対応を知らない人が圧倒的多数であると思います。
 申し出があれば乗務員が対応することを、内部障害を持つ人だけでなく、都営交通を利用する一般の人たちにも広く周知を図っていくべきであります。今後の具体的な対応を伺います。
 また、他のバス会社にもこうした配慮が広がるよう、共同歩調での取り組みを呼びかけるべきでありますが、所見を伺います。
 次に、都立豊島病院について伺います。
 豊島病院に関しては、板橋区への移管を目指して都と区が一年半にわたり協議を重ねてきましたが、昨年十月に都区双方が移管を断念しました。
 そこで、さきの第一回定例会本会議で公明党が豊島病院に関する質問を行ったところ、病院経営を取り巻く環境の変化なども踏まえ、幅広く検討しているとの答弁がありました。以来、三カ月以上が経過しておりますが、いまだに豊島病院の今後の方向性が伝わってきません。地元板橋区民や利用者から、豊島病院はどうなるのか、従来どおり診察してもらえるのかといった不安の声が寄せられております。
 さらに、豊島病院と良好な連携関係を築き上げている地域の医療機関も、今後の行方について不安を抱いております。
 これまで長年にわたって培われてきた豊島病院に対する地域の信頼にこたえていくことが重要です。そのためには、住民、利用者の不安感を早期に解消し、引き続き地域医療の充実に努めていくべきです。豊島病院が地域医療の中で果たしてきた役割を尊重し、今後のあり方を早期に明らかにすべきであります。改めて所見を伺います。
 また、板橋区は、豊島病院の区立病院化を断念した後、豊島病院のあり方に関して都に要望書を提出しております。そこでは、地域のニーズが高い小児医療やリハビリテーション医療のほかに、女性専門外来など専門外来の充実なども求めております。こうした地元の要望を十分考慮し、病院の医療機能の充実について明示すべきであります。見解を伺います。
 次に、卸売市場の効率化について伺います。
 現在の卸売市場の荷さばき場や保管施設は、近年の流通の変化に対応できない旧式なものが多く、また多様なニーズに迅速に対応できる情報システムなどの整備が立ちおくれております。
 そこで、板橋市場では、青果物に関して、業者が商品調達から顧客への配送まで一貫して行うことができる物流システム、つまりロジスティクスの構築に取り組むとしておりますが、それによって期待される効果を明らかにするとともに、都の支援について所見を伺います。
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 橘正剛議員の一般質問にお答えいたします。
 都市のバリアフリーについてでありますが、東京は非常に正確な公共交通網、世界一安全で清潔な都市空間など、他の都市にない魅力を有しております。
 また、数千年に及ぶ歴史の中で培われてきた日本独自の文化を背景に、江戸しぐさという言葉にもあらわれておりますが、他人を思いやる伝統、もてなしの精神に満ち満ちております。
 オリンピック、そしてパラリンピックの開催に向けた十年を、障害者とともに生きる社会を実現するための好機ととらえ、世界じゅうから集う人々が快適かつ有意義に過ごせるよう、お話のバリアフリーの観点も含めて、ホスピタリティーに満ちた都市としていきたいと思っております。
 先般、ITも含めた先端技術の専門家たちに会合願いまして、そういう技術をオリンピックにいかに活用できるかという話が出ましたが、ある専門家から、私たちの認識の不足か、ロボットを使えば非常に思いがけない多岐にわたるサービス活動ができると聞きまして、ロボットというと無機的な感じがいたしますけれども、これを日本で初めてパラリンピックなど、人間的に使うことで、一つの日本のプレゼンテーションも行えたらと、また思っているわけであります。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔東京オリンピック招致本部長熊野順祥君登壇〕

○東京オリンピック招致本部長(熊野順祥君) オリンピック及びパラリンピックに関する二点の御質問にお答え申し上げます。
 まず、ネーミングライツでございますが、オリンピックの招致、開催に当たりましては、民間の活力、資金等を積極的に導入する方針でございます。ネーミングライツもその一つの手法であると考えております。
 しかしながら、オリンピック大会におけます競技施設へのネーミングライツの導入に当たりましては、個々の施設の特性、経営主体、経営状況等を十分に勘案する必要があることから、今後その可能性について検討をさせていただきます。
 次に、パラリンピックにおける取り組みについてでございます。
 二〇一六年の東京大会では、パラリンピック村を、さまざまな障害を持った方が支障なく生活できるよう、すべての施設、設備をユニバーサルデザインに基づき整備したモデル都市として建設する予定でございます。
 また、各競技会場では、最新の福祉機器を陳列し、ガイドの案内により来場者に体験してもらうなど、障害者への理解を深め、技術開発を促していく機会としたいと考えております。
 こうした取り組みを通じまして、東京大会を社会全体のノーマライゼーションを進める契機としてまいります。
   〔生活文化局長山内隆夫君登壇〕

○生活文化局長(山内隆夫君) 文化芸術振興に関する三点の質問にお答えいたします。
 まず、新進・若手アーチストの支援についてでございますが、都はこれまで、現代美術館やトーキョーワンダーサイトにおきまして、若手作家を中心とした展覧会を開催するなど、発表の機会を提供してまいりました。
 これに加え、この秋には、才能あふれる新進・若手アーチストが集い、創造活動を行うための滞在、交流、制作の拠点として、青山にアートヴィレッジIN東京、これは仮称でございますが、を開設する予定でございます。
 この拠点を中心に、トーキョーワンダーサイトや内外のアーチスト支援施設などとも連携しながら、作品の発表、各種セミナーや交流イベントなどを行うことによりまして、総合的に新進・若手アーチストへの支援を図ってまいります。
 次に、都立文化施設における美術作品等の購入についてでございます。
 都立の美術館や博物館が、人類の文化遺産である芸術作品や歴史的価値のある資料の収集、保存、展示を行い、文化の継承と発展に努めていくことは、公立の文化施設の基本的な役割であると考えております。
 今後とも明確な収蔵方針のもと、美術作品等の計画的、継続的な購入に努め、次世代へ着実に継承してまいります。
 最後に、子どもたちを対象とした文化事業の推進についてでございます。
 子どもたちが文化芸術に直接触れ、感動や共感を覚えることは、創造力、コミュニケーション能力などを向上させ、豊かな感性の育成に大きな役割を果たすと考えております。このため、都は、ご指摘の子ども向け舞台芸術参加・体験プログラムのほか、東京文化会館における夏休み子ども音楽会など、さまざまな事業を実施しております。
 今後は、東京都交響楽団による小学校への音楽アーチスト交流教室を拡充するとともに、参加・体験プログラムの多摩地域への展開など、子どもたちに身近な場所で本物の芸術文化に触れる機会を拡充してまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 既存都営住宅の住宅用火災警報器の設置についてでございますが、住宅は都民が日々の生活を営むための基盤であり、火災から生命や財産を守るための安全対策を進めることは重要でございます。
 これまで、都営住宅におきましては、建設に際して、法令に基づき必要な消防設備等を設置してまいりました。
 本年三月の火災予防条例の改正に伴い、平成二十二年度から既存住宅にも火災警報器の設置が義務づけられるため、設置方法や維持管理のあり方などについて幅広く検討してまいります。
   〔交通局長松澤敏夫君登壇〕

○交通局長(松澤敏夫君) 都営バスでの内部障害者に対する配慮についてのご質問にお答えいたします。
 都営バスでは、外見からは障害の状況がわかりにくい内部障害者の方からお申し出があった場合には、他社に先駆けまして車内放送により座席をお譲りいただく呼びかけを徹底しているところでございます。
 こうした取り組みにつきまして、さらに実効性を上げるためには、ご指摘のように内部障害者の方々を初め、広くお客様に周知し、ご理解、ご協力をいただくことが不可欠であると考えております。
 このため、今後、交通局のホームページやポスターなど、さまざまな媒体を活用しまして幅広く広報活動を行っていくとともに、こうした都営バスの取り組みが他のバス事業者にも広がっていくよう、東京バス協会を通じて積極的に働きかけてまいります。
   〔病院経営本部長大塚孝一君登壇〕

○病院経営本部長(大塚孝一君) 豊島病院関係の二点のご質問にお答えいたします。
 まず、豊島病院の今後のあり方についてでございますが、豊島病院は、地元板橋区の患者比率が入院、外来ともに半数を超え、地域の医療機関からの紹介率も約六割に達するなど、地域医療における拠点として大きな役割を果たしております。
 こうした豊島病院が現在現実に果たしている役割や機能を踏まえました上で、地域住民が引き続き安心して医療を受けられるよう関係局と検討し、今後のあり方について早急に結論を出してまいります。
 次に、豊島病院の医療機能の充実についてでございますが、平成十七年十一月、板橋区から提出された要望書では、地域医療の充実に向けた区の姿勢を明らかにするとともに、区民の視点からの具体的な医療ニーズへの対応を求めてきております。
 今後の豊島病院の医療機能につきましては、これからのあり方も見据えた上で、リハビリテーション医療や女性専用外来など、地域の要望にも配慮しながら検討してまいります。
   〔中央卸売市場長森澤正範君登壇〕

○中央卸売市場長(森澤正範君) 卸売市場の効率化についてでございますが、板橋市場のロジスティクス構築は、情報技術を活用し、卸売業者が市場に隣接する自社地に整備いたします物流センターと市場施設との連携を図り、立地やアクセスのよさを生かして、物流の効率化、高度化を目指すものでございます。
 これによりまして、輸送時間の短縮、コスト低減、加工、パッケージへの対応のほか、入荷、出荷情報、顧客の販売動向などの生産、消費に関するデータを、卸、仲卸業者双方がリアルタイムで情報交換ができるようになり、小売店等に対する的確な販売支援が可能となります。
 このため、都としては、場内の情報基盤となるLAN回線の整備や場内動線の改善などを進め、ロジスティクスの機能が十分に発揮できるよう支援をしてまいります。

○副議長(木内良明君) 三十二番伊藤まさき君。
   〔三十二番伊藤まさき君登壇〕

○三十二番(伊藤まさき君) まず、交通安全対策について伺います。
 交通事故は、いうまでもなく、加害者、被害者双方にとって大変深刻な被害をもたらします。一瞬の失敗で一生を棒に振ることさえある不幸な交通事故を一件でも少なくしていくことは、都民の生命と財産を守るために大変重要なことであります。
 都の対策としては、東京都交通安全対策会議で、国や他の機関とともに五年ごとに東京都交通安全計画を作成し、交通安全施策を進めております。
 昨年まで、第七次交通安全計画のもとで、年間の道路交通事故死者数を三百五十人以下とするという目標を立て、平成十五年に三百二十名、十六年に三百三名、十七年には昭和五十四年以来の二百人台である二百八十九人となり、目標を達成しているなど、一定の成果は上げております。
 しかし、昨年の交通事故数は全国で約九十三万件、死者数は六千八百七十一人、負傷者数は約百十五万人であります。内閣府の総合科学技術会議の試算によりますと、医療費、休業損失、慰謝料などの人身損失は一兆七千二百六十九億円、車両や構造物などの修理修繕費などの物的損失は一兆八千四十一億円、被害者の休業による付加価値額の低下による事業主体の損失は七百七十二億円、救急搬送費や警察の事故処理費用など公的機関等の損失は六千七百六十九億円、以上、経済的損失は計四兆二千八百五十億円に上るとされております。
 毎年毎年、これだけ多額の損失と、何より大切な人命が数多く失われております。一九七〇年代、事故死者数が一万人をはるかに超えていた交通戦争といわれた時代に比べ、格段に改善はされているとはいえ、これからも不断の努力と対策をしていかなければなりません。
 ことし四月に作成された平成二十二年度までの第八次計画で、人命尊重の理念に基づき、また交通事故がもたらす大きな社会的、経済的損失をも勘案して、究極的には交通事故のない社会を目指すべきであるとの高い理念を掲げ、年間の事故死者数を二百五十人以下とすることと、高齢者の事故死者数を約一割削減するという目標が設定されております。このような目標が設定された基本的な考え方をお示しください。
 さらに、この目標を達成するために、どのような具体策を展開しようとしているのか、所見を伺います。
 事故死者数は確実に減少している一方で、負傷者数は依然として高い水準にあります。平成十二年以来減少傾向にあるものの、昨年は約九万一千人と、交通戦争時とほぼ同水準にあり、対策の強化が必要と考えますが、所見を伺います。
 交通渋滞の緩和は、交通安全対策上欠かすことができません。そのハード面の対策の一環として、都では、スムーズ東京21拡大作戦等を実施しております。既に実施を行った路線では具体的にどのような成果が上がっているのか、所見を伺います。
 また、究極的に事故をゼロにするには、今までの施策の延長だけでなく、新たな視点が必要だと思います。例えば航空事故であれば、国土交通省内に一九七四年以来設置されております航空事故調査委員会が、たとえどんな小さな事故でも即座に現場に急行し、原因究明と再発防止のために調査を行いますし、鉄道事故の場合にも重大事故が発生したときは、その都度調査委員会が設置をされることになっており、調査体制が整ってございます。交通事故の方が、被害の大きさからいっても、社会的な影響からいっても圧倒的に大きいにもかかわらず、その原因の究明と再発防止策が余りに貧弱といわざるを得ません。
 海外では、交通事故に関しても強力な調査権限を有する常設の独立機関があり、再発防止のために、客観的な立場から法的拘束力を持つ勧告を行う仕組みになっております。
 このように、事故捜査から事故調査へと大きくシフトチェンジしていく必要があると考えます。
 交通事故の調査のあり方、安全対策の基本としては、万一不幸にして起こってしまった事故を教訓として、再び同様の事故を発生させないための調査、分析に重点が置かれるべきであります。関係者の努力にもかかわらず、各種事故が相変わらず発生しており、再発防止のための事故調査の重要性が社会的にも認識をされていると思います。
 しかしながら、我が国においては、ほとんどの場合、警察による捜査が主体となっており、捜査結果は、裁判の証拠として用いられる場合を除き公開されることは一般にはないため、捜査結果を事故対策に利用することは困難となっているのではないかと考えます。
 警視庁が保有する交通事故の豊富な情報について、広く一般に公開すべきと考えますが、警視総監の所見を伺います。
 さらに、調査体制の強化のために、現在、各機関が個別に実施している事故防止に関する調査研究を統合し、安全対策をより科学的に推進すべきと考えるが、所見を伺います。
 次に、消防団についてお伺いします。
 消防団員は、消防、防災に関する知識や技術を習得し、火災発生時における消火活動、地震や風水害といった大規模災害発災時における救助、救出活動などに従事し、地域住民の生命や財産を守るために活躍しております。地域における消防力、防災力の向上において重要な役割を担っておりますし、今後も大いに活躍することが期待をされております。
 私も、消防団員の一員として誇りを持って活動しておりますけれども、消防団が今以上、都民のために活動できるよう、環境をさらに整備すべく、何点か質問させていただきます。
 現在、各区の消防団運営委員会で、武力攻撃事態等において地域に密着した消防団が行う活動はいかにあるべきかが審議をされております。区市町村において、平成十八年度中を目途に国民保護計画を作成することとなっており、武力攻撃事態等における国民保護に関し、関係機関との連携体制の整備、自主防災組織等の支援、避難所の運営等について定め、国民保護法上重要な位置づけとなる消防団の役割についても定めるとされております。
 しかし、着上陸侵攻やゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイルによる攻撃など、武力攻撃事態に対応しろといわれても、普通に日常生活を送っている我々にしてみれば、想像の範囲をはるかに超えることであります。武力攻撃事態が起きたからといって、いきなり消防団として活動しろといわれても、戸惑ってしまうのが現状でしょうし、現に多くの団員からも心配の声が上がっております。
 武力攻撃事態における消防団の任務はどのようなものになるのか、その安全の確保はどのようになるのか、所見を伺います。
 現在、団員の減少が危惧されておりますけれども、このことにより、現役団員だけでなく、これから入団しようと考えている人たちにも不安が広がり、今以上に団員の確保が難しくなるおそれもあります。団員の確保策と、消防団としての任務を徹底するための教育体制はどうなっているのか、所見を伺います。
 先ほど、多くの団員から心配の声が上がっていることに触れましたが、さらに深刻なのは、この件について全く知らない方が関係者の間にすらいることであります。消防団運営会議にも、都がさきに作成した保護計画すら見たことのない人もいますし、十分な情報が提供されておりません。このままでは、十分な議論すらなく保護計画が作成されてしまいます。来年四月まで、まだ時間はあります。十分に情報提供し、しっかり議論できるよう都がきちんと対応し、都民の不安の声にこたえることを強く求めて、次の質問に移ります。
 一昨年に起きました新潟県中越地震の直後、私は現地に行って、避難所の手伝いをしながら数日間活動してまいりました。そのときに感じたのは、大変な状況にもかかわらず、弱音を吐かない新潟の人々の我慢強さと、救援物資とボランティアの多さでした。日本もまだまだ捨てたものではないなと思いました。
 しかし、せっかくの物資が山積みとなっていたり、多くのボランティアが役割もなく避難所で時間をもてあましていたりと、いかに物資を配り、いかにボランティアの方々に役割を割り振るかといったマネジメントに問題があったように感じました。
 大震災の発生時に訓練された消防団員がもっといれば、より多くの方々に救いの手を差し伸べることができると思います。消防団員の意識と資質の向上、訓練にもなりますし、全国規模での消防団の連携強化にもつながると思います。大規模災害発生時に消防団員の派遣を検討すべきと考えますが、所見を伺います。
 消防団の士気を高めるためには、現場の意見を団の運営に生かさなければなりません。現在、団幹部会議を初め、分団会議等を開催しておりますけれども、そこで意見を出しても、なかなかその意見が反映されないとの現場の声があります。現場の団員の意見を受け消防庁が取り組んだものが、実際どのようなものがあるのか、所見を伺います。
 現在、各分団施設には、さまざまな災害に対応すべく、可搬ポンプを初め数々の装備資器材が配置されております。しかし、緊急時の電源の不足、防火水利の不足、水害時の装備不足、震災時の本部との連絡用として配備された無線機器も、電波が弱い関係で使いにくく、実際には個人の持っている携帯電話を使わなくてはならないなど、大震災などに十分に対応するには、今後もさらなる装備の充実が必要と考えますが、所見を伺います。
 以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔警視総監伊藤哲朗君登壇〕

○警視総監(伊藤哲朗君) 伊藤まさき議員の一般質問にお答えいたします。
 警視庁が保有する交通事故に関する情報の一般への公開についてでありますけれども、交通事故を抑止するため、当庁においては、交通事故が発生した場合は交通事故捜査を行い、その原因や態様など、さまざまな角度から調査、分析を行っているところであります。
 こうして得られた情報につきましては、道路管理者を初め、関係機関、団体と共有しながら、交差点改良、交通安全施設の整備、車両の安全性の向上等の交通事故防止対策に活用しているところであります。
 また、警視庁ホームページ上の交通事故発生マップにおいては、地域別、時間帯別の発生状況や死亡事故の具体的な状況等について幅広く公開しております。
 さらに、新聞折り込みによる「広報けいしちょう」、地域住民に対する「交番だより」等、各種広報誌におきましても広く情報を発信しております。
 加えて、東京都や区市町村などに対しましても、交通事故の発生状況等について情報提供を行うなど、連携を図りつつ交通事故防止に努めております。
 今後とも引き続き、時宜に応じた適切な内容の情報を提供してまいりたいと考えております。
   〔青少年・治安対策本部長舟本馨君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(舟本馨君) 交通安全対策に関する五点の質問にお答えをいたします。
 まず、第八次東京都交通安全計画についてでありますが、この計画は、東京が世界一安全な都市となることを目指し、それを大前提とした上で平成二十二年までに達成すべき目標を設定したものであります。年間の交通事故死者数につきましては、一層の減少を図るため、第七次計画と比べ、マイナス百人の二百五十人以下を目指すこととしました。
 また、今後、高齢化が急速に進むことを踏まえ、今回初めて、高齢者の交通事故死者数について、平成十七年と比較して約一割の削減を目指すとしたものであります。
 次に、目標達成のための具体策についてでありますが、高齢者の交通安全の確保を最重点施策とし、シミュレーターを活用した体験・実践型講習会や、反射材を活用した夜間・薄暮時対策の実施などを進めてまいります。
 また、二輪車事故の防止を重点施策としまして、交差点やカーブ地点の改良、事故多発路線の取り締まり強化、地域、職域などでの実技講習会や高校生向け交通安全教育などを実施してまいります。
 また、自転車の安全利用の促進についても重点施策としまして、歩道上の暴走運転等に対する交通ルール、マナーの向上対策や、幼児用ヘルメットの着用促進などに取り組んでまいります。
 次に、交通事故の負傷者対策についてであります。
 都内の負傷者数につきましては、この五年間で約一万二千人減少はしたものの、ご指摘のように、平成十七年においても依然として九万一千人に上っており、重大な課題であります。
 このため、歩道の整備など安全な道路環境の確保や標識類の整備などのハード面の対策をさらに進めていきます。
 また、交通違反への取り締まりを強化するとともに、学校や地域における交通安全教育の推進などのソフト面からの対策強化を進めてまいります。
 次に、スムーズ東京21拡大作戦の事業効果についてであります。
 平成十六年度に交差点改良などの対策を実施しました新大橋通りなど八路線十七交差点につきましての効果の検証を本年二月に行いました。その結果、最大渋滞距離は、各箇所平均で、対策前百三十三メートルから対策後五十九メートルと、五六%縮小しました。また渋滞発生時間は、各箇所平均で、対策前三・七時間から対策後一・七時間と、五四%縮小しております。
 最後に、交通事故に関する調査研究についてでありますが、これまでも、東京都、関東地方整備局、首都高速道路株式会社などは、東京都交通安全対策会議のメンバーとして科学的に調査研究を実施してきております。
 今後、交通事故防止対策の強化に向け、東京都交通安全対策会議のもとで調査研究がさらに一体的に推進されるよう、各機関の一層の連携強化に意を用いてまいります。
   〔消防総監関口和重君登壇〕

○消防総監(関口和重君) 特別区消防団に関する五点の質問にお答えいたします。
 まず、国民保護法の制定に伴う消防団の任務についてですが、同法第九十七条に「消防は、その施設及び人員を活用して、国民の生命、身体及び財産を武力攻撃による火災から保護するとともに、武力攻撃災害を防除し、及び軽減しなければならない。」とされておりますことから、特別区消防団員は、安全が確保された上で消火活動等を行いますとともに、同法第三十四条に基づき作成されました東京都国民保護計画によりまして、現有装備を有効活用し、区長に協力いたしまして、住民等への警報の伝達、避難住民の誘導を行うこととされております。
 次に、消防団員の確保対策と教育体制についてですが、消防団員の確保対策につきましては、大学生等や女性を重点に、広く地域住民や企業に対しましても働きかけを行いますとともに、各種メディアの活用や区等の関係機関の協力を得ながら、積極的に消防団員の確保に努めております。
 また、教育体制につきましては、各消防署及び各消防団におきまして、実務教育及び実科訓練を行いますとともに、消防学校における幹部及び専科教育、さらに資格取得講習を実施しております。
 次に、消防団員の国内派遣についてですが、消防団は、消防組織法第十八条第三項により「消防長又は消防署長の命令があるときは、その区域外においても行動することができる。」とされておりますが、消防団は、生業の傍ら、みずからの地域はみずからで守るという精神に基づき組織されており、主として自己消防団区域で活動することとしております。
 次に、消防団員の意見を受けての東京消防庁の取り組みについてですが、消防団と消防署がより緊密なコミュニケーションを図るため、消防団幹部会議や分団会議等に各消防署の職員が出席いたしまして意見交換を行い、分団施設の充実、可搬ポンプ積載車の導入、個人装備品の改善などにその意見を反映させております。
 最後に、装備の充実についてですが、震災時等における消防団活動が発災初期の段階から迅速かつ効率的に行われますことは、被害を最小限にとどめる上で極めて重要でありますことから、今後とも必要な資器材の整備を図ってまいります。

○副議長(木内良明君) 四番鈴木隆道君。
   〔四番鈴木隆道君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○四番(鈴木隆道君) 最初に、都区のあり方についてお伺いをいたします。
 昨今の国の動きでは、地方制度調査会が道州制の導入を答申し、その議論の中で、都心部の国による直轄統治といった、地方自治を否定しかねない主張も出されております。こうした国の動きを踏まえ、都と特別区は、都区制度の抜本的な見直しに向けた議論を行っていくことが必要であります。
 平成十二年の都区制度改革以降、各区においては、地域に密着した施策を展開してきておりますが、東京が抱える各区の区域を超えた広域的な行政課題には必ずしも十分に対応できていない現状を指摘せざるを得ません。
 大幅な市町村合併が進展し、都道府県から市町村への権限移譲が行われるなど、地方分権が進められている現在、特別区もその権限を拡張することが必要であります。例えば市の事務である水道事業、下水道事業など公営企業についても、特別区に対する権限移譲の対象になると考えるべきであります。
 権限移譲に伴って財源も確保することが必要であり、その場合には、現在の区割りを前提にすることなく、再編を進め、特別区の規模の拡大と能力の強化を図り、責任ある自治の担い手になっていくことが必要であります。
 また、都区財政調整制度を見直すことは当然であり、各区の独自性が反映されやすいような新たな都区財政調整制度も含め、税財政制度についても根本的に議論をしていただきたいと考えております。
 先般、都の三副知事と区長会の正副会長を中心とした検討組織が設置され、今申し述べました重要な論点を含んだ検討が開始されたと聞いております。一朝一夕では結論を出せないと思いますが、今後、都区共同の検討を具体的にどのように進めていくのかをお伺いいたします。
 次に、踏切対策について伺います。
 都内にはいまだ千二百カ所の踏切が残されており、交通渋滞や踏切事故など、都民生活に多大な迷惑を与えています。踏切は、東京におけるまさに社会問題であり、この問題の解決には、都内に残る踏切約千二百カ所の全廃を目指すべきと私は考えます。
 こうした中で、国は、本年一月より、全国約三万六千カ所すべての踏切を総点検し、対策に本格的に取り組むと聞いております。
 知事は二〇一六年のオリンピック招致を表明していますが、私は、オリンピック及びパラリンピックの開催に向け、首都東京の再生を踏切対策から進めていくことがぜひ必要であると考えます。
 これまでも、都は、道路と鉄道の立体化や踏切の拡幅など、対策を着実に行ってきましたが、安全で安心なまちづくりを強力に推進し、首都東京の魅力向上や国際競争力の強化を図るためには、踏切対策を一層加速させていくことが重要であると考えます。
 そこで、踏切対策の推進に向けた今後の都の取り組みについて伺います。
 また、踏切対策の推進を図るためには、数多くの踏切を同時に除去し、踏切の遮断による交通渋滞や踏切事故の解消を一気に実現する連続立体交差事業を一層促進していくべきと認識していますが、その実施に当たっては多額の事業費が必要であります。安定的な財源の確保が何より不可欠であります。
 しかし、現在、政府・与党内では、道路特定財源の一般財源化に向けてさまざまな議論があり、予断を許さない状況が続いております。道路特定財源は、受益者負担原則に基づく合理的かつ安定的な財源として、道路関係の施策に重点的に投入されるべきものであり、一般財源化は国民との約束違反、暴論以外の何物でもなく、到底容認できません。
 首都東京において、道路整備はもちろん、連続立体交差事業の推進を図るためには、道路特定財源を一般財源化せず、これらの事業に重点的に投入することが必要不可欠であると考えますが、財源確保に向けた都の断固たる姿勢と今後の取り組みについて伺います。
 次に、民設公園について伺います。
 東京都は先ごろ、みどりの新戦略の一環として、東京都独自の工夫を伴う新しい公園整備の仕組みである民設公園制度を導入することを公表し、要綱を策定いたしました。
 オリンピック誘致に向け、成熟都市として国際的なアピールをするためにも、緑豊かな都市東京を形成し、引き継いでいくことは重要であると考えています。
 しかし、東京は未整備の都市計画公園を二千六百ヘクタールも抱え、近年の整備ペースからいくと、今後五百年以上も整備に要すると試算される一方、未整備区域内のグラウンド等企業所有地が、用地買収を待たず、戸建て開発等により次々と細分化し、公共による公園整備はますます困難な状況となっていると考えられます。
 このような状況において、昨日の我が党の代表質問に対し、知事から、民設公園の整備を促進していくために税の減免措置を講じていくとの力強い答弁をいただきました。私も、民設公園制度を早急に実施していくことが必要であると考えます。
 そこで、東京都独自の制度である民設公園の実現に向けた取り組みについてお伺いいたします。
 民設公園制度については、十八年度重点事業にも位置づけられておりますが、私は、成熟都市東京にふさわしい緑の民間による創出を促すためには、都市計画公園のみならず、例えば代官山のような沿道開発における連続した緑の確保を誘導するよう、対象を広げることも重要と考えます。
 今後、民設公園の仕組みの拡大についての検討も要望いたしておきます。
 続きまして、次に、義務教育について伺います。
 幼いころから世界の舞台に立ちたいという夢を持ち、今、ドイツのピッチに立っているワールドカップ日本代表の若者たちには感動を覚えます。それは、代表に選ばれるまでの努力はもとより、自分の夢や希望は必ずかなえられるということを教えてくれているからであります。
 一方、将来やりたいこと、自分の生き方が見つからず、何もしようとしない若者が急増しております。平成十七年三月に内閣府が行った調査によりますと、ニートは、平成十四年に八十五万人という数字をはじき出しています。
 このような中で、高校への進学率が九〇%を超えている現在、高校を義務教育化し、そこで個々の生徒に応じたキャリア教育を行い、将来に向けた生き方を教えることが望ましいと考えられます。
 しかし、現状からいって、高校義務化は難しい面もあります。そこで、高校に進学する前の義務教育におけるキャリア教育のあり方を根本的に見直す必要があるのではないでしょうか。
 今、小中学校では、学力向上へ向けての対応が積極的に行われていますが、それも大事なことですが、将来の夢や希望を持たせる指導があってこそ、基礎、基本を学ぶ意義が児童生徒にわかるわけであります。まずしっかりと個性をはぐくみ、自分の生き方や職業観を育てることこそ義務教育の役割ではないかと考えています。
 そこで、義務教育の段階で子どもたちの将来の生き方や職業観を育てる教育を推進すべきと考えますが、見解を伺います。
 また、国際化の進展の中で、国家戦略であるともいわれる義務教育のあり方を見直す時期にあります。国際社会の中で自分の考えを正確に相手に伝え、相手の思いを正しく理解するコミュニケーション能力を育てることは重要であり、人間関係の基礎となるのです。日本語は、我が国の長い伝統や文化を背景として、日本人としての心をあらわした表現の結晶だからであります。真に誇れる国際人としての日本人を育てるためには、まず第一に、自国を愛し、自国の歴史、文化や伝統を正しく理解し、その心を学ばせることこそ重要ではないかと考えます。
 そこで、日本の伝統・文化を学ぶ教育についてどのように推進していくのか、所見を伺います。
 次に、人事権の移譲について伺います。
 現在、区市町村立小中学校の教職員の給与負担と人事権は、市町村立学校職員給与負担法等により都道府県にあります。これは、地方の主体性により義務教育の質の向上を図るためには、その基盤となる財源保障が安定的で確実であることが重要であるとの理由に基づくものであります。
 一方で、地方や学校の創意工夫の発揮を妨げ、特色ある教育活動の実施などを阻害しているなどの問題もあります。
 こうした現状を踏まえ、昨年十月に出された中央教育審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」によると、県費負担教職員は、市区町村教職員でありながら、給与負担と人事権が都道府県にあり、地域に根差す意識を持ちにくくなっているという指摘とともに、教職員の人事権については区市町村に移譲する方向で見直すことが必要であるとされています。
 例えば、現場にいますと、いじめや不登校などの問題で地域やPTAの話し合いの場、地域と学校での連携の場に参加するのは校長、副校長という管理職だけで、教員の参加がないという現状があります。
 こうした教員の意識を改革し、個性豊かな子どもたちを育成する教育を行うためにも、地域に根差す意識の高い教員を区市町村ごとに採用、配置できるようにすることが有効であり、今後、全面的に教職員の人事権を区市町村に移譲すべきと考えますが、人事権の移譲について都教育委員会の検討状況を伺います。
 最後に、オリンピック及びパラリンピックについて伺います。
 オリンピック及びパラリンピックは、全世界の人類に感動を与える偉大な祭典であります。とりわけ若者たちに与える影響には、はかり知れないものがあります。
 一九六四年の東京オリンピックのとき、私はまだ中学生でありました。国の威信をかけて戦うアスリートたちのひたむきな姿に感動しない人はいないと思います。試合後に生まれる国境を越えた友情など、私の人生観に大きな足跡を残す一大イベントでもありました。
 翻って、現在の日本の若者たちはどうでありましょう。フリーターやニートなど将来展望が描けない若者が存在する一方で、拝金主義が横行し、お金がすべてと考える若者も多いように思えます。
 私は、このような若者たちに、オリンピック及びパラリンピックを通して、人生の本当の価値とは何か、生きる喜びとは何かを伝えてあげたいと思います。人間は、アスリート同様努力し、いろいろな人たちと交流し、時にはぶつかり合い、そしてともに生きていく、そのような夢と希望の持てる、また、思いやりの心を持ち、生きがいの見出せる人生こそが本当の人生というものではないでしょうか。
 そこで、今こそ、石原知事が提案した二〇一六年の東京オリンピック及びパラリンピックにおいて、知事から世界の若者たちに夢と感動を、心に残るメッセージを発信すべきと考えますが、いかがでありましょうか。
 知事の考えをお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 鈴木隆道議員の一般質問にお答えいたします。
 オリンピックと若者たちについてでありますが、東京五輪の開催を目指す二〇一六年には、今世紀の初めに生まれた子どもたちが十代の前半の青少年に成長しているわけでありまして、ちょうど感性が芽生え、情念が馥郁としてはぐくまれていく、まさに青春の入り口にあるわけでありますが、こういった年代も、やがてはこの二十一世紀の主役となっていく子どもたちの中で、発展途上にあるアジアの多くの子どもたちにもスポーツの感動と喜びを広めていくことは、日本で主催されるオリンピックに課せられた大きな使命であると思っております。
 オリンピックを契機としてスポーツに接するさまざまな機会を提供するなど、次代を担う青少年が全身全霊を込めてスポーツに打ち込む喜びを体験できるようにしていきたい、そういう形で、オリンピックに関係する施設も、その前後、世界に向かって、アジアに向かって開いて、受け入れていきたいと思っております。
 いずれにしろ、肉体を鍛えることで培った精神、健全な精神が、人間の肉体というのはやがて衰えていくわけでありますけれども、その時期になって、逆に今度は精神が肉体を支えるわけでありまして、それがやっぱり人生の一つの原理、公理だと思います。
 それにしても、ご指摘のように、このごろの若い世代の無気力さといいましょうか、フリーターとかニートもそうでありますけれども、もっとひどい例は、名乗りもしないし、見知らぬ同士がネットで交流し合って、名乗り合うこともなく集団で炭酸ガスをかいで、密室の中で死んでいくという、ああいう青春の無残な姿というものは、何とかやっぱり克服をしなくちゃいけないと思います。オリンピックこそがやっぱりそれを取り戻し、また青年たち、少年たちに、人生というのは本当に生きがいのあるものだ、そしてまた、すばらしいアスリートたちの活躍を目にすることで多くの刺激を受けて、何も競技に限らず、自分の個性を生かした、特性を生かした生き方の中で生きがいを感じ、期待を持って自分の人生を迎えていく、そういうよすがになればと願っております。
 いずれにしろ、その前にオリンピックを招致しなくちゃなりませんが、とにかく実現できれば、特に日本の荒廃した青春のためには、それを蘇生させる大きなよすがになると思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 三つのご質問にお答え申し上げます。
 まず、義務教育における将来の生き方や職業観を育てる教育の推進についてでございます。
 児童生徒が将来、社会で自立して生きていくために、義務教育の段階から自己の個性や適性を理解し、主体的に進路を選択する能力や態度を育て、キャリア教育を推進していくことは極めて重要でございます。
 現在、小中学校では、道徳の時間で自分のよさや可能性に気づかせるとともに、特別活動や総合的な学習の時間で、ボランティア活動や職場体験などを通して児童生徒に豊かな社会性や望ましい勤労観、職業観を育成しております。
 今後、都教育委員会は、キャリア教育を組織的、計画的に展開している学校の実践事例の紹介や中学生の五日間の職場体験の拡充などを通しまして、子どもたちが夢や希望を持ってみずからの人生を切り開いていく意欲や態度をはぐくむ教育が行われるよう、区市町村教育委員会と連携して各学校を支援してまいります。
 次に、日本の伝統・文化を学ぶ教育についてでございますが、世界の人々から信頼され、尊敬される人間を育成するためには、児童生徒に日本の伝統・文化を理解させ、郷土や国に対する愛着や誇りを持たせる教育を推進することが大切であります。
 そのため、都教育委員会では、平成十七年度から、小中学校や都立学校など六十校を日本の伝統・文化理解教育推進校として指定するとともに、実践発表会を開催したり、リーフレットを全公立学校に配布するなどして、日本の伝統・文化理解教育の振興を図っているところでございます。
 今後、平成十九年度から都立学校で実施します学校設定科目・教科「日本の伝統・文化」に関する教材の開発や、生徒が使用するテキストの作成を行うとともに、小中学校を対象とした指導事例集を発行するなどして、日本の伝統・文化理解教育を推進してまいります。
 最後に、区市町村立学校教職員の人事権移譲に関する検討状況についてでございます。
 現在、国では、都道府県から中核市を初めとする一定の自治体への人事権移譲について検討を進めておりまして、各都道府県に対してその課題と方策などについて見解を求めてきております。
 都道府県が教職員の人事権を持つ現行の制度では、広域的に採用や異動を行うことによりまして優秀な人材を確保するとともに、東京都全体の教育水準の維持向上を図っている一方で、お話しのように、教職員が地域に根差す意識を持ちにくくなっており、地方や学校の創意工夫が妨げられているといった指摘もございます。こうしたことから、区市町村におきましても、人事権移譲についての考えは分かれております。
 都教育委員会は、区市町村においてより自主的、自立的な教育活動が可能となり、ひいては義務教育全体の充実発展が図られる人事権のあり方について、現在、鋭意検討しているところでございます。
 ご指摘いただいた点は、貴重なご意見として受けとめてまいります。
   〔総務局長高橋功君登壇〕

○総務局長(高橋功君) 今後の都区のあり方の検討についてでございますが、現行の都区制度の枠にとらわれることなく、東京の将来を見据えて、都と特別区が主体的に国を支える自治の原点から議論をしていくことが重要でございます。
 こうした観点から、新たな検討の場を都区共同で設置し、去る五月三十日に第一回の会議を開催いたしました。
 今後、国の動きを踏まえた地方自治制度改革と東京の自治、都区の事務配分、再編を含めた特別区の区域のあり方、都区財政調整制度を含む税財政制度などにつきまして、根本的かつ発展的に議論をしてまいります。
 この議論を進めるに当たりまして、まず、月一回程度のペースで精力的に議論を重ね、十月を目途に、それぞれの項目につきまして検討のための基本的な方向をまとめてまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 都市整備に関します二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、踏切対策の推進についてでございますが、交通渋滞や地域分断を解消し、都民生活の安全性、利便性の向上を図るためには、踏切対策の推進が必要でございます。
 このため、都は平成十六年に踏切対策基本方針を策定し、効率的、効果的に踏切対策を推進していくことといたしました。
 この方針では、連続立体交差事業などによる対策について、踏切遮断時間、自動車交通量などの状況やまちづくりの熟度、財政状況を勘案して事業化を図ることとしております。
 また、早期対策といたしましても、踏切道の拡幅、歩道橋の設置、踏切システムの改善などをあわせて実施してまいります。
 今後とも、区市町、鉄道事業者など関係者間の連携を一層強化し、計画的な踏切対策に積極的に取り組んでまいります。
 次に、民設公園の実現に向けた取り組みについてでございますが、緑豊かなまちづくりを進めるためには、都市計画公園、緑地の公共による整備に加え、民間の活力を活用した整備が必要であり、民設公園制度を創設いたしました。
 民設公園の実現のためには、民間の積極的な参入を促すことが必要でございまして、税制面からの支援のほか、都市計画公園の区域内においてマンションなどの建築を可能とするよう、建築制限の緩和を講じてまいります。
 さらに、こうした制度について土地所有者や民間事業者へ十分周知するとともに、地元区市町と連携し、民設公園の実現を図ってまいります。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君) 連続立体交差事業の財源確保に向けた都の姿勢についてでありますが、連立事業は、交通渋滞や地域分断を解消するなど、極めて効果の高い事業であります。
 現在、都は、JR中央線や東急目黒線など七路線九カ所で重点的に整備を進めております。
 連立事業は完成までに長い年月と膨大な事業費を要することから、今後とも安定した財源の確保が不可欠でありまして、道路や連立事業に必要な道路特定財源を一般財源化し、他へ流用する余裕はないと考えております。
 都は、引き続き道路特定財源の必要性、重要性を訴え、東京への配分の拡大が図られるよう、国に対し積極的に働きかけてまいります。

○議長(川島忠一君) この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後五時四十九分休憩
   午後六時五分開議

○副議長(木内良明君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 五十四番泉谷つよし君。
   〔五十四番泉谷つよし君登壇〕

○五十四番(泉谷つよし君) 制度開始から六年目を迎えた介護保険制度について、制度の理念を踏まえながら、利用者支援の立場から質問いたします。
 まず、介護保険制度の理念が揺らいでいる危惧を感じている点についてですが、国は制度当初、介護が必要な人に必要なサービスの享受を保障し、あくまでも自己決定、自己負担の明確性をPRし、家族の介護負担の軽減を解消できる方策として制度を進めてきたように思います。このことは、公が決定するのではなく民が決定できる、まさに官から民への仕組みと多くの国民は理解し、多少の混乱はあったにしても、比較的スムーズな流れで制度が進んでいくものと確信していたように思います。
 平成十二年度以降から現在までの間、さまざまな改正が行われ、制度が大きく変化して、制度の理念、利用者本位のうたい文句の効力はなくなり、利用を必要とする人を除外していくようになるのではないかと危惧しております。
 厚生労働省が五月二十六日に発表した社会保障費の給付と負担の見込みによると、二〇二五年の給付費は、二〇〇六年度の一・五七倍で百四十一兆円、一方、負担は一・七三倍の百四十三兆円で、特に公費負担が大きくなる見込みであります。
 さらに、介護保険では、本年四月から目玉に介護予防を掲げ、給付財源の縮減を図ろうとしています。
 ここで懸念されるのは、さらに給付抑制、負担増の構図がまかり通ることにならないのかと危惧しているところであります。
 介護が必要な人にサービスが届かないことがあってはならないと思いますが、いかがお考えでしょうか。
 次に、本年四月の制度見直しから数カ月が経過し、利用実態がどのように変わっているのか、このままでよいのかの検証についてです。
 このほど、都内在宅サービス事業者三百五十カ所で構成する東京都社会福祉協議会介護保険居宅事業者協議会が、四月一日以前からのサービスを利用している要支援一から要介護二までの高齢者三千三人を対象にアンケートを実施し、六百五十九人の回答結果から、最近あった不都合、不便を尋ねたところ、今まで利用していた時間や回数を減らさざるを得なかったとする人が約半数の四九%、訪問介護の利用者に限った場合、約六〇%の人が同様の不都合、不便があると答えています。
 中には、今まで二時間でやってもらっていたことが一時間半に変更になり、調理の途中で帰るヘルパーもいると答えています。
 また、認知症で定期的にヘルパーが来ることで生活が維持できていたのが、週一回になり、ごみ屋敷の中で寝ている等の実態も明らかになりました。
 さらに、通所介護の利用者から、今まで二カ所に通っていたのが一カ所しか通えなくなった、具合が悪いときは休むのに、月額定額制の仕組みが納得いかず、利用をやめた等の回答もありました。
 また、介護予防の利用者からは、筋肉強化は八十五歳の私には無理、うつ病予防のためにも通所介護を制限しないでほしい、今までも努力しているのに、もっと自分でやらなくてはならないといわれた、無理して体の具合が悪くなったらどうするのかなど、さまざまな批判的な訴えが目立っています。
 さらに、地域からの生の声を聞いたところ、二世帯住宅が理由でヘルパーに断られたため、介護放棄している家族の中で入浴や食事もままならないなど、さまざまな問題も浮き彫りになっています。
 都は、利用者の立場を踏まえた観点から、広域自治体として区市町村を支援していくのか、確認したいと思います。
 続いて、介護療養型病床についてお聞きします。
 療養型病床に入院する利用者の実態ですが、もともとは国が社会的入院数を減らそうという見かけの数の減員をねらった社会的入院解消策であると考えられますが、社会的入院患者のほとんどが医療が必要な状況にあって、単なる入院医療は必要がないだけであり、決して、医療の必要がないのに入院しているという誤った理解であってはならないと思うのです。
 社会的入院解消は、医療保険の矛盾を介護保険の矛盾にかえるだけで、真の解決につながらないと思います。問題の解決を透明化するには、医療と介護を別のものとして、必要な高齢者にそれぞれの保険から給付する当たり前の方式へ転化していく必要があると考えます。
 過去、老人病院の薬漬け医療が定額制の診療システムによって解決されたことが、介護医療型施設での定額制診療システムの導入につながらないと思います。
 介護老人保健施設において酸素吸入程度のことさえ簡単にできないという制度的欠陥など、定額医療では解決できない長期の要介護者の医療問題が現存し、在宅医療に過度の負担が生じていることに対し、どのようにお考えであるか、ご所見をお聞かせいただきます。
 次に、新予防給付についてですが、先ほど述べたような現場の実態からも明らかなように、疫病や外傷により心身の状態が安定していない状態、認知症や思考、感情等の障害により十分な説明を行ってもなお新予防給付の利用にかかわる適切な理解が困難である状態、認知症高齢者の日常生活自立度がおおむねⅡ以上で、一定の介護が必要な程度の認知症がある、精神神経疾患の病状の程度や病態により、新予防給付の利用に係る適切な理解が困難である、このような利用者に対する予防給付は不可能となる制度に対して、どのような解決策をお持ちでしょうか。
 また、要介護高齢者やその家族が地域生活を送る上での生活課題と社会資源とを結びつける介護予防支援を行う地域包括支援センターですが、もともと国が示す人口二、三万人に一カ所設置で三人配置、この壮大な構想が実施できるのか、疑問に思うところでもあるのですが、国は、予防給付ケアマネジメントは市町村が行うべきものとして位置づけていますが、利用者実態を把握した上で居宅介護支援事業所への業務委託可能な制度でもあります。
 地域包括支援センターは、予防プランの収入だけではなく、地域包括支援センター職員は区市町村職員であるため、交付金として人件費が充当されていますが、再受託された居宅介護支援事業は、報酬が九割にしかならないため、現在、居宅介護支援事業所において予防プラン受託拒否が広がっていると聞いていますが、その実態をどのようにお考えでしょうか。このようなねじれ現象に対し、対策をお持ちかどうか伺います。
 地域包括支援センターは、決して多くない人材で過大な課題を果たし得るのか。地域包括支援センターでやり切れず、居宅介護支援事業所も拒否、ケアマネ難民は出ないか、疑問を生じざるを得ないと思いますが、東京都は、広域自治体の取り組みとして独自の政策を構築し、本来の地域包括ケアの創設を目指すことを強く願うものです。
 最後に、第一線の現場から、支援の必要な方々に密接に向かい合っている立場から申し上げますと、介護が必要な人や家族が、制度が定着する間もなく、揺れが強いために不安を抱えながら進んでいる状況であることを認識いただきながら、今回の改正が改悪にならないことを希望し、利用者本位の原理原則を踏まえた包括支援を切望して、質問といたします。(拍手)
   〔福祉保健局長平井健一君登壇〕

○福祉保健局長(平井健一君) 泉谷つよし議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、介護保険制度改正によるサービス提供についてでございますが、今回の制度改正におきましては、高齢者の自立を支援する観点から予防重視の仕組みへの転換が図られるとともに、制度を将来にわたり健全かつ安定的に運営していく観点から、給付の効率化と重点化が図られました。
 改正後の介護保険制度でも、要介護認定における公正な審査判定や専門的見地からのケアマネジメントの実施によりまして、利用者の心身の状態に応じて必要なサービスが適切に提供される仕組みとなっておりまして、お話のような問題はないものと考えております。
 次に、介護保険制度改正に伴う区市町村への支援についてでございますが、今回の制度改正では、利用者の心身の状態に応じて真に必要なサービスが提供されるよう、軽度者への給付について、生活機能の維持向上を図り、でき得る限り自立した生活を送れるように支援する観点から、サービスの内容や提供方法を見直したものでございます。
 都は、本年三月に策定いたしました東京都高齢者保健福祉計画に基づきまして、介護保険制度が利用者本位の仕組みとして円滑に運営されるよう、保険者である区市町村を支援してまいります。
 次に、介護療養病床の見直しについてでございますが、本日午前、国会において可決成立したとのことでございます。医療制度改革関連法における療養病床の見直しに関しましては、その目的である、いわゆる社会的入院の解消は必要なことと考えております。
 しかしながら、その実現のためには、福祉施設などにおける医療提供体制の確保や在宅医療基盤の整備など多くの課題がございまして、今後十分な検討が必要と考えているところでもございます。
 次に、新たな予防給付の対象者についてでございますが、予防給付は、状態が軽度であって改善可能性のある方が対象でございまして、中重度の方や、軽度であっても状態の改善が見込まれない方は、従来の介護給付の対象とされております。
 お話の、心身の状態が安定していない方や、認知症等により理解が困難な方などにつきましては、予防給付ではなく、介護給付により必要なサービスが提供される仕組みとなっております。
 最後に、介護予防ケアマネジメントについてでございますが、予防給付のケアマネジメントは、区市町村が設置する地域包括支援センターにおいて実施することが原則であり、契約により、適切と認められる居宅介護支援事業所に業務の一部を委託できることとされております。
 また、都は、制度発足に先立ちまして、国に対して必要な提案要求を行うとともに、地域包括支援センターにおける実施体制を整備するため、センターの保健師等を対象とする研修を実施するなど、予防給付のかなめとなる介護予防ケアマネジメントの円滑な実施に努めてきたところでございます。

○副議長(木内良明君) 三番田中たけし君。
   〔三番田中たけし君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○三番(田中たけし君) 初めに、都市基盤整備についてお伺いいたします。
 今後の十年を見据え、都市基盤整備を行うに当たり、昭和三十九年の東京オリンピック開催の際、日本橋の上に首都高速道路の橋をかけるような道路整備をすることなく、東京のあるべき姿を描き、その目標に対し、予算確保と着実なる事業執行が必要であると考えます。また、その整備には、地域の地権者の協力が必要であると同時に、公共の福祉の向上の観点から私権を制限する必要があると考えます。
 そこで、これまでの都市計画道路の進捗状況に対する評価と、今後必要とされる都市計画道路の計画的早期完成に向け、都の取り組みについてご所見をお伺いいたします。
 オリンピック招致に向け道路網の整備が必要であり、中でも都心と臨海部のオリンピック施設をつなぐ環状二号線の整備が急務であります。環状二号線のうち、新橋─虎ノ門間のいわゆるマッカーサー道路は、長期間事業化がなされず残されておりましたが、平成元年に創設された立体道路制度の活用により、道路整備が進むこととなりました。
 道路と再開発ビルを一体で整備する虎ノ門街区は、機能別に四棟のビルをつくる計画でありますが、これらビルを一棟に集約することにより、都心部における公共空間の確保や、風の道など環境への配慮がなされると考えます。このような観点を含め、この事業全体の施設計画の見直しが必要と考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 政府は、一般財源化を前提に道路特定財源を見直すこととしておりますが、東京の交通問題、環境問題等の解決のためには、放射、環状、多摩南北などの骨格幹線道路の早期整備が必要であり、そのための財源である道路特定財源が必要であります。
 道路整備を目的として徴収した道路特定財源を道路整備以外に使う場合、少なくとも暫定税率を撤廃すべきと考えます。また、道路特定財源の一つである軽油引取税は、道路を走らないために課税免除となっていた漁船などの燃料も課税対象になり得るなど、新たな問題が生じるおそれがあります。
 知事は、東京圏の交通問題、環境問題の解消を初め、日本全体のダイナミズムの発揮には、首都圏三環状道路などの早期整備が不可欠であり、そのための財源である道路特定財源が今後も必要であると発言されておりますが、私も同感であります。
 一方、今の政府の方針を生み出す根底では、これまで都心出身国会議員が主張してきた、東京で集めた税金を、地方のほとんど車の通らない道路に使うのは許さないという考えを標的にしていることも認識しております。
 しかし、混雑時の走行速度、全国平均の時速三十五キロに対し、東京都区部では時速十七・五キロという事実を目の当たりにすると、道路特定財源を守り、首都東京の道路整備を推進すべきであり、国に対し、より説得力のある主張が必要であると考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。
 次に、住宅政策についてお伺いいたします。
 行政には都民福祉の向上に努める責務があり、広く公平に都民へその施策が行き渡るようにしなくてはならないと認識しております。
 一方、所得の低い方々へ住宅を提供していく公営住宅施策の必要性も理解しております。しかし、一度その利益を受けると、あたかも個人の当然の権利のごとく受けとめている誤った考えの方々がいるのも事実であります。都民全体の共有財産である都営住宅を、都民のごく一部のみがその利益を享受するのではなく、広く都民福祉の向上につなげていく観点から質問いたします。
 現在の都営住宅入居者のうち、収入超過者、高額所得者の状況はどのようになっているのでしょうか。また、その方々への対応は今まで以上に厳格に対処すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 現在行われている使用承継制度は、対象が、配偶者以外は三親等から一親等になったとはいえ、親から子へ受け継ぐことのできる制度であり、まさに特定の都民の、あたかも個人の当然の権利として受けとめさせてしまう制度であると感じます。広く公平な公営住宅施策を行うためにも、子どもへの使用承継は廃止すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 公営住宅などからの転居先の一つとして、中古住宅の活用も重要と考えます。平成十六年度に東京で取引された中古住宅総数は約一万五千戸で、持ち家数の〇・六%でしかなく、中古住宅の流通活性化が不可欠であります。
 都は、我が党が主張してきた中古住宅の流通促進に向け、東京都中古住宅流通促進連絡会を開催いたしました。そこで、中古住宅の流通促進に向けた都の基本的認識と、この連絡会の位置づけについてお伺いいたします。
 また、連絡会では、戸建て中古住宅の流通促進に向けたガイドブックの検討を行うとのことですが、そのねらいと内容についてお伺いいたします。
 次に、水辺事業についてお伺いいたします。
 近年、ウオーターフロントや臨海地域の開発が進み、水と親しむ要素を取り入れたまちづくりが行われております。我が党は、こうした状況を踏まえ、水辺環境の向上に努め、東京の誇るべき魅力を世界へ発信することを目的とする「水の都東京」再生議員連盟を発足させました。そこで、水の都東京の再生の観点から、水辺事業について質問いたします。
 運河ルネッサンスは、水辺に関する規制を緩和し、多くのポテンシャルを引き出し、さまざまな事業展開を図ろうとするもので、その第一号として、品川区の天王洲地区に水上レストランが開業いたしました。都は、水域占用の規制緩和を行いましたが、船舶安全法や建築基準法など法規制が依然としてあり、開業までに、法手続上ご苦労があったと伺っております。
 そこで、今後、にぎわいを創出する施設整備が円滑に進むよう、今回の事例を生かし、水域占用許可以外に、必要とする法手続のマニュアルを策定すべきと考えますが、ご見解をお伺いいたします。
 運河ルネッサンスのすそ野を広げ、より発展させるために、地域団体などにも活用できる環境づくりをすべきと考えます。品川区では、商店街や地域団体などが、カヌーや手こぎボートなどを用いたイベント事業を勝島運河などで実施しており、さらなる事業拡大を検討しております。
 そこで、運河にある防災用の船着き場を地域でのさまざまな取り組みに活用するほか、地元で船着き場を整備する場合には、護岸を利用しやすい構造にするなど支援策を検討すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 歴史的観光資源の多い隅田川は、テラス整備など親水性にも配慮した河川整備が進んだことから、既ににぎわいの場となっております。今後、河川でこのテラスや防災船着き場を活用したソフト面での施策を進めるべきと考えますが、具体的な取り組みをお伺いいたします。
 品川区を流れる目黒川では、川沿いに桜並木などの整備がなされ、五反田や大崎では地元団体が水に親しむ活動に取り組んでいる一方、この地域では、目黒川との一体となったまちづくりも計画されております。
 そこで、川沿いのまちづくりを絶好の機会ととらえ、より都民に親しまれる水辺空間の創出を図るべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 現在、河川の水質は一定の基準を満たしておりますが、水に親しむ事業を展開していく上では、さらなる水質浄化が必要と考えます。
 河川の水質浄化に対する都の対応は、水質悪化の原因により異なり、下水道排水は下水道局が、運河から逆流する汚れた海水は港湾局が、堆積した汚泥は建設局が対応し、環境局は水質の測定だけであります。水質浄化に関し多くの局が関係しているがゆえに、主体的に取り組む局がなく、さらなる水質浄化が進まないと考えます。
 縦割り組織の弊害をなくし、各局が連携し効果的な水質浄化を進めるため、全庁的視点から水環境に関する総合的計画の立案が必要であると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 次に、スポーツ振興の視点から、東京マラソン、東京オリンピックに関しお伺いいたします。
 東京マラソンは、都民のスポーツへの関心を高める絶好の機会と考えます。マラソン経験者の参加を促すことはもちろんのこと、多くの初心者にも参加しやすい工夫や配慮をすべきと考えます。東京マラソンのすばらしさを経験してもらうため、大会に先立ち、マラソンの楽しさ、練習方法、練習コースなど、初心者を初め多くの都民に情報提供すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 マラソンは長距離レースのため、途中苦しい思いをする人も多く出てまいります。そのようなランナーも、沿道からの応援があれば頑張ろうという励みになる一方、多くの声援を送る都民も東京マラソンへの参加意識を持つことができます。
 東京マラソンの開催に向け、みずからの体験を生かすため、二月に開催された青梅マラソンに参加いたしましたが、無事時間内に完走できたのも、沿道の方々の声援のおかげと感じました。
 初めての大会でもあり、沿道での応援を自主性に任せるだけでなく、都としても積極的に支援すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 オリンピック及びパラリンピック開催に向け、招致運動が展開されますが、私は、招致運動がスポーツ振興につながり、スポーツ振興がオリンピック招致につながるものと確信しております。スポーツ振興を図るに当たり、大切なのはスポーツ競技施設であり、オリンピック及びパラリンピックの試合が行われる競技施設を中心に地域の招致運動が盛り上がり、地域のスポーツ振興が図られるものと考えます。
 都は、オリンピック開催会場を半径十キロ圏内に集中させ、コンパクトな運営を実施いたしますが、一方で、競技施設のコンパクトな配置により、スポーツ施設を中心とした招致運動の盛り上がりやスポーツ振興が限定的になることを懸念いたします。
 オリンピック及びパラリンピック開催を契機としたスポーツ振興を幅広く推進していくため、競技会場だけではなく、練習会場などオリンピック関連施設をできるだけ多く配置し、施設の利用機会をふやすべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 いずれにいたしましても、オリンピック招致に向け、都議会自民党の一員として努力してまいる決意であり、また石原知事には、東京オリンピック開催時に、開催都市東京の代表としてそのときを迎えることを強く願い、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 田中たけし議員の一般質問にお答えいたします。
 首都東京の重点的な道路整備の推進に向けた財源の確保についてでありますが、首都圏の三環状道路を初め幹線道路ネットワークの整備はいまだに不十分でありまして、その整備を進めるためには、安定した財源である道路特定財源が必要不可欠であると思います。
 にもかかわらず、昨年来、道路特定財源について、これは財務省がいうのも無理はなくて、つくらなくてもいいような道路を随分つくったわけでありますが、いずれにしろ、一般財源化などの議論が続いております。
 しかし、東京は、繰り返して申しますけれども、幹線道路がまことに不整備でありまして、その財源の確保は、これは本当に必須のことだと思います。
 私自身、街路事業促進協議会の会長をしておりますが、先般もその大会でも申しましたけれども、この段に至って道路特定財源を一般財源化するというのは、これは本当に東京をねらい撃ちにした例の法人二税の分割基準の見直しと同じように、まさに小手先の論でしかないと思います。
 先般の全国大会でも申しましたが、こういったものを一般財源化するならば、今、原油の価格の高騰で油のユーザーというのは困っているわけでありますから、一般財源化するなら、その分を油の価格、ガソリンスタンドで売っているガソリンあるいは軽油の価格を引き下げることの手だてにしたらどうかと思うぐらいでありまして、いずれしろ首都圏における道路整備の需要は非常に大きく、道路特定財源は道路整備など本来の目的に充当すべきでありまして、一般財源化は絶対にやるべきでないと思います。
 今後は、三環状道路の交通分散効果や、先月開通した環状八号線の整備効果などをより具体的に示しながら、真に必要な首都圏の道路整備の重要性、緊急性をつまびらかにして、引き続き財源の確保に努めるつもりでございます。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君) 道路と河川に関する三点の質問にお答えいたします。
 まず、都市計画道路の進捗状況に対する評価と早期完成に向けた取り組みについてでございますが、都市計画道路は、都市活動や都民生活を支えるとともに、防災性の向上や良好な都市空間の形成を図る上で重要な社会基盤でございます。
 これまで鋭意その整備を進めてきておりますが、区部の環状道路、多摩の南北道路などは整備の途上にありまして、道路ネットワークは、いまだ十分にその機能を発揮できない状況にあります。
 このため、この十年を東京の道路整備の正念場としてとらえ、事業の重点化を図るとともに、関係権利者の理解を得つつ、収用制度の活用なども視野に入れ、事業効果の早期発現を目指してまいります。
 次に、水辺空間の活用に向けた取り組みについてでございますが、水辺の魅力向上を図るには、これまで整備を進めてまいりましたテラスなどを利用しまして、都民が川に親しみ、にぎわいが生まれるような施策を進めていくことが重要でございます。
 都はこれまで、隅田川において、回遊性の向上のため、テラスの連続化や案内サインの設置などを行ってまいりました。今年度は、防災船着き場を平常時に利用する仕組みづくりに向けて、今月から越中島の船着き場で試行を開始しております。また、両国地区では、防潮堤の壁面を地元と連携してギャラリーとして活用するとともに、新川・箱崎地区などではオープンカフェテラスを実施してまいります。
 今後とも、都民や観光客でにぎわう魅力ある水辺空間の創出を図ってまいります。
 最後に、まちづくりに合わせた水辺空間の創出についてでございますが、市街化の進んだ地域において川と一体となったまちづくりは、都市の魅力を高める上で大変重要でございます。
 お話の目黒川の五反田駅付近におきましては、民間の再開発の中で、護岸を緩傾斜化するなど親水性の向上を図る計画があり、その実施に関して現在協議を進めております。
 今後は、この目黒川を一つのモデルとして、再開発などの計画がある場合には、地元区などと連携し、川の魅力を活用したまちづくりの誘導に努めてまいります。
   〔都市整備局長柿堺至君登壇〕

○都市整備局長(柿堺至君) 都市基盤整備及び住宅政策に関する五点のご質問にお答えをいたします。
 まず、環状二号線新橋・虎ノ門地区における再開発事業についてでございますが、この事業は、立体道路制度を活用し、道路と建物の整備を一体的に行うところに特徴がございます。
 このたび、環状二号線本線をトンネル構造に変更したことに伴い、地上部に幅員四十メートル、延長約一キロメートルの空間が創出されることになりました。地元からは、これを緑豊かな道路として整備するとともに、虎ノ門街区の建物についても、この空間にふさわしい計画とするよう見直しの要望が出されております。こうした要望も踏まえ、現在計画されている四棟の建物を一棟に集約し、地上部の道路と一体となって都市環境の改善にも寄与する施設計画となるよう見直しを進めてまいります。
 次に、都営住宅の収入超過者、高額所得者への対応についてでございますが、都営住宅は、真に住宅に困窮する低所得の都民に対して、低廉な家賃で賃貸する公共住宅でございます。このため、収入が入居の基準を超える収入超過者に対しては、毎年、文書により明け渡しを促しております。また、高額所得者に対しましては、直接明け渡しを請求するとともに、応じない場合には明け渡し訴訟を提起しております。
 このようなことから、この五年間に収入超過者は三万一千名から一万八千名に、高額所得者は七百名から二百名に減少しております。
 今後とも、都営住宅を公平、的確に供給するため、来年度からは収入超過者の家賃を漸次市場並み家賃に引き上げるなど、収入超過者及び高額所得者への厳正な対応に努めてまいります。
 次に、都営住宅の使用承継についてでございますが、都営住宅への入居者の選定は公募を原則としており、名義人が死亡した場合などに、例外として配偶者及び子どもなど一親等親族に使用承継を認めております。
 先日の東京都住宅政策審議会の答申では、都営住宅の利用機会の公平性を確保する観点から、使用承継のさらなる厳格化を図るべきであると提言がなされました。都としては、これを踏まえ、高齢者などの居住の継続に配慮しつつ、使用承継を配偶者に限る方向で見直しを進めてまいります。
 次に、中古住宅の流通促進についてでございますが、既存ストックの有効活用やライフステージに合わせた住宅選択の幅を広げる上で、中古住宅の流通を促進していくことは重要な課題でございます。
 中古住宅は、新築住宅に比べて、同じ規模の住宅をより低廉な価格で取得できるメリットがございます。しかし、構造や設備等の状態についての客観的な情報が少なく、不安を感じる消費者も多いことなどから、その流通量は新築住宅の約六分の一にとどまっております。
 都は先月、中古住宅の流通促進に向け、不動産流通関係団体等との意見交換などを行う場として、東京都中古住宅流通促進連絡会を設立いたしました。今後この連絡会を活用し、都民が安心して住宅を売買できる市場環境の整備に取り組んでまいります。
 最後に、戸建て中古住宅の流通促進に向けたガイドブックについてでございますが、このガイドブックは、都民が安心して中古住宅を売買できることを目的として作成するものでございます。
 具体的には、建物の構造や設備の状態など、売買に当たって確認すべき事項や確認することが望ましい事項、その確認に必要な検査方法等について、わかりやすく示すこととしております。また、こうした住宅本体の性能に加え、住環境や権利関係なども含めたチェックリストもあわせて作成する予定でございます。
 策定に当たっては、関係団体等と十分連携し、中古住宅の売買の手引として都民が利用しやすいものとしてまいります。
   〔港湾局長津島隆一君登壇〕

○港湾局長(津島隆一君) 運河ルネッサンスにつきまして、二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、運河ルネッサンスに関する法手続のマニュアルの策定についてでございますが、水上レストランのようなにぎわい創出施設を運河に設ける場合には、ご指摘のように、水域占用許可のほかに、建築基準法や船舶安全法など安全確保などに関するさまざまな法令の適用を受けることとなります。お話の天王洲の場合は初めてのケースであったこともあり、事業者は、構造審査など関係法令の適用について、各方面との協議、調整に時間を要したと聞いております。
 都は、こうした協議、調整について、事業者へ支援を行ってまいりましたが、今後は、手続がより円滑に進むよう、関係法令や協議先などを取りまとめた手続マニュアルを早急に策定し、運河ルネッサンスのさらなる展開を図ってまいります。
 次に、運河ルネッサンスにおける地元支援策についてでございますが、都はこれまで、運河まつりなどのイベントの際には、防災用の船着き場を地域に開放するなどの支援を行ってまいりました。
 現在、地元では、運河水域を利用したカヌー教室や環境学習を目的とした水生生物調査など、さまざまな活動が企画されております。こうした取り組みは、運河とその周辺地域のにぎわいを創出する運河ルネッサンスの趣旨にふさわしいものと考えておりまして、都としては、今後船着き場の一層の利用を図り、支援を拡大してまいります。
 また、地元協議会が策定する運河ルネッサンス計画に基づいて、船着き場を地元主体で整備しようとする場合には、都がその背後の護岸を安全で利用しやすい構造に改良するなど、新たなハード面の支援策についても検討を進めてまいります。
   〔環境局長大橋久夫君登壇〕

○環境局長(大橋久夫君) 河川の水質浄化についてのご質問でございます。
 河川の水質浄化を進め、都民が親しめる河川にするためには、庁内各局が緊密に連携し、効果的な事業を進めることが重要でございます。都は今後、環境面での総合的な計画として東京都環境基本計画の改定を予定しており、その中で水質の保全、水辺環境の再生などを目指す施策のあり方について検討を行ってまいります。
   〔東京オリンピック招致本部長熊野順祥君登壇〕

○東京オリンピック招致本部長(熊野順祥君) マラソン及びオリンピックに関する三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、マラソンの初心者などへの情報提供についてでございます。
 東京マラソンは、これまでマラソン大会には参加できなかった方々にも幅広く参加していただくため、制限時間を七時間と最大限確保したところでございます。マラソンランナーの拡大にとっては非常によい機会になったと考えております。今後は、著名なアスリートを招きセミナーを実施するなど、より多くの初心者の方々にも参加いただけるよう検討してまいります。
 次に、マラソンコースの沿道での応援についてでございますが、お話のように、コース沿道における応援は、ランナーにとって大きな力になるものであり、また、都民が一体となって大会を応援していくことは、東京マラソンを盛り上げていくためにも重要なことでございます。このため、コース沿道に適当な場所を確保し、地元の住民やボランティアなどの協力によりまして、さまざまな応援を展開していけるようにするなど、東京大マラソン祭りを全体として盛り上げてまいります。
 最後に、オリンピック関連施設についてでございます。
 競技施設や練習会場のほか選手強化施設など、オリンピック及びパラリンピック開催までには多くの施設が必要となります。練習会場につきましては、当然競技会場よりも多くの会場が必要となることから、多摩地域も含め半径十キロメートル圏を超える地域にも配置してまいります。
 また、ナショナルトレーニングセンターのほか、公共スポーツ施設、民間トレーニング施設、大学体育施設などと協定を結び、選手強化施設を確保することなどにより、オリンピックを契機としたスポーツ振興が全国の関連施設において幅広く推進されるものと期待しております。

○議長(川島忠一君) 六十五番田代ひろし君。
   〔六十五番田代ひろし君登壇〕

○六十五番(田代ひろし君) 足立十六中事件とは、平成九年六月に起きた増田都子教員による人権侵害事件です。
 増田教員は、紙上討論なる授業形式を導入しており、これは、生徒たちが先生に与えられたテーマについて意見を書き、それを次の授業で先生が紹介をしながら討論形式で授業を行うものであります。増田教員が取り上げるテーマは、在日米軍、従軍慰安婦、南京虐殺、天皇の戦争責任などで、一部の沖縄反戦地主の主張や「赤旗」の記事を教材として引用するなど、特定の政治的方向に生徒を誘導しようとするものでした。
 当時、この教員の担当クラスにアメリカ人を父親に持つ女生徒がおり、在日米軍基地問題を取り上げた授業の中で、執拗に繰り返される感情的ともいえる一方的反米授業について、女生徒の母親が区教育委員会に相談をしました。それを知った増田教員は、その母親を激しく攻撃するビラを、授業中、何と教材として配布したわけであります。
 配布されたビラは、あなたたちの親の一人が、増田先生はけしからぬ教育をしているというような内容の電話を教育委員会にしたそうですという文章で始まり、事実をきちんと教えている私を偏っているというのは、この親が偏っている証拠だと決めつけ、さらに、教師の教育内容に介入しようなど笑止千万な、余りにも浅はかな思い上がりと、母親を罵倒いたしました。教材における母親への攻撃はさらに続き、区教委に相談したことは密告、つまりチクリであって、この母親の思想は偏狭であるといい切ったわけであります。
 この教材は全クラスに配布され、読み上げられたそうですが、自分の母親のことを罵倒され非難された女生徒は、想像を絶する強迫感のため神経衰弱となり、登校拒否にまで陥り、転校せざるを得ない状況にまで追い込まれました。
 保護者を一方的に誹謗し、生徒の人権をじゅうりんする者が教員として教壇に立ち続けていたこの事件は、足立区議会で公明、民主の区議が、また都議会でも取り上げられ、さらに国会で江本猛紀議員も追及したほど問題となりました。
 その後、この教員は、この事件で減俸十分の一、一カ月を二回、研修命令を三回受けております。しかしながら、この教員は、自分の行った人権侵害について反省するどころか、都教委を相手に処分取り消し訴訟を五度起こし、産経新聞を相手にも名誉毀損訴訟を起こしましたが、そのすべてに増田元教員は敗訴しております。また、この事件を市民の視点から追及した市民運動家や土屋都議を訴えましたが、裁判では、逆に、偏向教育であること、人権侵害事件を起こしたことなどが認定されました。
 この事件を明らかにした古賀、土屋両都議と私の共著も訴えられておりますが、議会活動や言論を封じることを目的に、いまだに乱発される不当な訴訟癖や、無知ゆえに本末転倒な愚見を振りかざす都議会議員に対して、良識的な都民の皆さんとともに、教育正常化を進めるためにも堂々と闘ってまいります。(発言する者あり)ありがとうございます。
 反省心のないこの増田教員は、研修終了後配属された千代田区の中学校で、古賀俊昭都議の、光輝ある我が国の歴史を再認識すべしと主張した文教委員会での発言をとらえて、古賀都議は歴史偽造主義と教材の中で批判をしたのです。都教委は即時懲戒処分を行い、続いて研修命令を発令しました。
 ところが、増田教員や支援者は、ビラやホームページなどで、増田教員の偏向授業を指摘した保護者をまたもや誹謗し、さらに東京都教育委員会を犯罪都教委と呼び、みずから研修を受けている研修センターのことを人権侵害常習センターと呼んで誹謗中傷いたしました。ここに至り、ようやく都教委は、三月三十一日、彼女を分限免職にしましたが、私は、遅きに失した処分だと思っております。
 そこでお尋ねしますが、増田元教員が受けた分限処分とは、一般的にどのような処分なのでしょうか。また、従前から文教委員会などでも問題になっている指導力不足等の教員は、東京都にこの五年間何人いたのか。また、その教員に支払われている給与総額は幾らか。また、不良行為で処分される教員の数は、この五年間で総計何名に及ぶのか、お答えいただきたいと思います。
 先日の報道で、埼玉県では、職務遂行能力を十分に発揮できない職員に対して、具体的処置をして、それでも改善が見られない場合は早期に退職を勧告することになったとあります。良質な都職員のためにも、まず教育公務員に対して、至急埼玉県と同様な措置をとるべきと考えます。制度の検証などに時間がかかると承知しておりますが、教員の綱紀粛正を図るべきは必要不可欠なことと確信します。知事並びに教育長のご見解を伺います。
 同時に、増田元教員が保護者を誹謗した教材をお読みになっての感想、そして驚くべき人権侵害教育について、知事並びに教育長のご見解、ご感想を伺います。
 東京都の男女平等参画行動計画の改定を前提に、このたび新しい審議会が招集されました。しかしながら、審議会に招集されたメンバーを見ると、その著作の中で、家庭はリスクである、専業主婦はリスクであると主張し、神奈川県教職員組合の講演の中で、離婚の仕方を教科書に記載する必要があると力説している人物も含まれており、恣意的に偏向して選出されるなど、担当職員の見識を疑わざるを得ません。
 知事の目指す男女共生理念とは全く離反した審議会構成のあり方について、多くの良識的都民は憂慮しております。今後の審議会運営については、都民と議会の確かな監視が必要であると警告をいたします。
 次に、特別養護老人ホームがついの住みかといわれていた時代は過ぎ去り、中重度のケアと在宅復帰、在宅支援に取り組む施設として、機能が見直されております。そのために、介護職が必要な知識を習得するとともに、他の施設ではどのような介護が行われているのか認識するために、介護という共通の現場で介護実習が必要となります。
 そこで、都が、スキルアップの研修参加のための代替職員の確保や、特養ホーム間での実習生の受け入れなどの仕組みを構築するなど、具体的な支援が必要と考えますが、ご所見を伺います。
 次に、介護職マイスター制度の導入を提案いたします。
 実習生や介護職を指導できる職員を特別にマイスターと位置づければ、専門職としての目標になり、やる気を引き出す効果が期待できます。指導者、マイスターとなる職員は、介護の実習試験と指導者としての適性の認定や、職場責任者からの推薦状などを条件として、介護職マイスターとして認められる制度はいかがでしょうか。
 また、介護職マイスターが、子どもの教育現場で高齢者に対する配慮や接し方などを実体験に即して教えれば、より効果が期待できると考えます。
 次に、認知症高齢者グループホームのスプリンクラー設置について質問します。
 グループホームは、新たな施設建設ばかりではなく、住宅を改修する設備促進も必要です。グループホームは新しい概念であるため、建築基準法上は、寄宿舎や共同住宅として取り扱いを受け、厳しい制約があるため、古い家を利用して使う場合など改造に時間や費用がかかります。都民の安全を守るという立場から、既存施設に対してもスプリンクラー設置などの消防設備や安全対策のための費用の助成はぜひとも必要です。ご所見を伺います。
 長年にわたり都職員の福利厚生施設として使用されてきた大原会館が、このたび老朽化のために取り壊されることになりましたが、その跡地である水道局用地については、高齢社会を視野に入れ、真に都民の役に立つ利活用を図るべきと考えますが、ご所見を伺い、次に移ります。
 本年四月、障害者施策における戦後最大の改革ともいうべき障害者自立支援法が施行されました。同法では、障害者の就労を自立のための重要課題と位置づけておりますが、今後、障害者就労を大きく伸ばしていくためには、民間企業の協力が欠かせません。そのためには、福祉部門だけではなく、労働、教育行政などが幅広く連携して、例えば報奨制度を創設するなど、企業に障害者雇用のインセンティブを与えるような制度を都独自に検討していくべきと考え、ご所見を伺います。
 もう一方で、東京障害者職業能力開発校を初めとする学校や施設における就労支援の充実も大切です。現在、同校ではさまざまな障害を持った方々が学んでおられますが、支援法の施行を契機として、雇用、就業を希望する障害者に対して、求人ニーズに即した訓練カリキュラムを提供するとともに、地域において訓練が受けられるよう機会の確保に取り組むべきと思い、お考えを伺います。
 また、都立養護学校の教育課程の中でも一般就労への取り組みを行っておりますが、親御さんの意識改革をも含め、卒業後の就労を見据えた取り組みの強化や就労後のフォローアップ体制の確立など、さらに多様な取り組みが必要です。そのためには、都庁みずからが率先して知的障害者の方などのインターンシップ制に取り組むことも有効な施策と考え、ご所見を伺います。
 障害者自立支援法施行に当たり、今までどおり事業が継続されるのかどうか、不安を抱いている障害者の方や事業者がたくさんいます。新たな事業体系への移行に当たり、市区町村とどのように調整を図っていくのか、都の考え方を伺います。
 次に、仮称医師登録バンクの設置について提案いたします。
 全国的に小児科、産科、麻酔科などの医師不足が懸念される今、将来の東京で十分な医療体制を確保するために、例えば都立病院や公社病院の医師が中心となって人材登録を行い、必要な病院で必要な期間、自由な交流ができるような制度の構築を検討すべきと考えますが、ご所見を伺います。
 さきの予算特別委員会において、視覚障害の方々のための音声案内について警視庁に要望いたしましたところ、素早く対応していただいたことに対しまして、衷心より御礼申し上げます。
 最後に、私の友人であります全盲の大竹博君が苦労して作成いたしました災害時区民行動マニュアル点字版を知事にごらんいただき、その普及にご尽力賜りますようにお願い申し上げ、質問を終わります。(拍手)
   〔田代ひろし議員、知事に資料を渡す〕
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 田代ひろし議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、生徒の母親を誹謗した教材等についてでありますが、市民全体の奉仕者であるべき公務員、ましてや生徒の教育をつかさどる教員が、保護者を誹謗するという不適切な教材を生徒に配布したということは、本当に驚きを禁じ得ません。
 ヤスパースがいったように、歴史というものはすべて重層的なものでありまして、現に行われている在日の米軍の存在にしろ、あるいは過去の戦争にしろ、いずれにしろそういったものに対する価値というものは人によって違いまして、あくまでも価値というのは相対的なものだと思いますが、自分の思い込みを絶対化して教材として生徒に押しつけるというのは、これはまあ愚かというか、まさに愚かだと思いますけれども、教師としての資格が全くないと思います。
 聞くところ、その生徒は学校にいづらくなって転校したということでありますが、これは本当に痛ましい話だと思います。教育公務員としての適格性に欠ける教員に対しては、都教育委員会において厳正に対応していると認識しております。
 それから、教員の綱紀粛正についてでありますけれども、非違行為を行う教員や指導力が不足する教員などが存在することは、このごろ日常茶飯になってきまして、これは本当に遺憾なことでありまして、児童生徒の教育をつかさどる教員の綱紀粛正及び資質、能力の向上については、都教育委員会において適切に処置していると認識しております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) まず、分限処分の意味合いについてでありますけれども、分限処分とは、公務の能率の維持等の目的から、職員がその職責を果たし得ない場合に、任命権者が本人の意に反して行う処分でございます。
 地方公務員法上、分限免職することができるのは、勤務実績不良、心身の故障、職の適格性を欠く場合等でございまして、適格性を欠くとは、端的に申し上げれば、教員として不適格であるということでございます。
 次に、指導力不足教員についてでありますけれども、平成十三年度から十七年度までの間に、指導力不足等教員として決定した者は五十二名でございます。
 次に、給与の総額ですけれども、指導力不足等教員の研修決定期間は一年間であり、教員の平均年間給与額から計算いたしますと、五年間で支払われた給与総額はおおむね九億四千万円余りになります。
 次に、懲戒処分を受けた教員の数についてですが、平成十三年度から平成十七年度までの間に戒告以上の懲戒処分を受けた者は七百六十名でございます。
 次に、教員の綱紀粛正についてでありますが、非違行為を行う教員や指導力が不足する教員等の存在につきましては、大変大きな課題であると認識しております。都教育委員会といたしましては、これらの教員に対して、研修等によりまして資質、能力の向上を図るとともに、非違行為を行った教員については、懲戒処分を含め厳正に対処しているところでございます。
 研修を経ても成果の見られない指導力不足等の教員につきましては、退職の勧告及び分限処分等、必要な措置を講じております。今後とも、非違行為を行う教員や指導力が不足する教員等につきましては、より厳正に対処し、都民の公立学校に対する期待にこたえてまいります。
 次に、お話の生徒の母親を誹謗した教材等の配布についてですが、教育をつかさどる教員が保護者を誹謗する教材を生徒に配布したことに対しましては、実に不適切でありまして、東京都教育委員会は厳正に対処してまいりました。
 最後に、都庁におけるインターンシップについてでありますが、障害のある生徒の企業等での一般就労を促進するために、実際に企業等で就労を体験し、望ましい勤労観、職業観を身につけていくことは、ご指摘のとおり極めて重要でございます。
 都教育委員会では、企業向けセミナーの開催や、今年度より就労サポーターを導入いたしまして、学校と連携した実習先や雇用先の確保に努めているところです。今後は、より多くの実習先の確保をしていくため、ご提案のように、都教育委員会みずからも知的障害養護学校生徒のインターンシップ受け入れの実施を検討してまいります。
   〔福祉保健局長平井健一君登壇〕

○福祉保健局長(平井健一君) 介護施策の充実など六点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、特別養護老人ホームの人材育成についてでございますが、ご指摘のとおり、新しい介護ニーズに対応するため、専門的人材の養成確保に取り組むことが大変重要でございます。
 こうした取り組みの一つとして、都は、従来の画一的な集団ケアから少人数の生活単位による個別ケアへの移行を図るため、平成十五年度からユニットリーダーなどを養成する研修を実施しているところでございます。この研修の実施に当たりましては、先進的にユニットケアを実践している施設への実習生の派遣を行い、効果を上げているところでございます。今後とも、効果的な福祉人材政策のあり方を検討してまいります。
 次に、介護職マイスター制度の導入についてでございますが、今日の介護従事者は、高齢者の認知症のケアや在宅復帰支援など、都民によりよい介護サービスを提供するため、高い専門性が求められているものでございます。
 現在、国におきましては、介護サービスの中核を担う介護福祉士制度のあり方及び質の向上に関する検討が行われております。都におきましても、ただいまの議員のご意見も参考とさせていただきまして、国の検討の方向を見定めながら、熟練者の育成など、介護従事者のさらなる資質の向上について、鋭意検討してまいります。
 次に、グループホームへのスプリンクラーの設置等についてでございますが、都は、平成十六年度から実施している認知症高齢者グループホーム緊急整備支援事業によりまして、新設のほか既存の建物の改修も整備費補助の対象としておりまして、その中で、スプリンクラーなどの防火設備の設置についても支援しているところでございます。
 本年一月の長崎県でのグループホーム火災により、とうとい命が失われたことは大変重く受けとめておりまして、ご指摘のとおり、都民の安全・安心を守ることは極めて重要でございますから、さらに他制度の活用も含めまして、区市町村とも協力し対応を検討してまいります。
 次に、都庁におけるインターンシップについてでございますが、障害者の企業等での一般就労を促進するためには、ご指摘のとおり、障害者が企業や官公庁での就労を実際に体験するインターンシップ制を導入することなどにより、一般就労に向けた不安を解消することや、企業側の障害者に対する理解の促進を図ることが大切でございます。
 都は従来から、企業等への通所による授産事業を実施するなど、障害者の企業実習の場の拡大を図ってまいりましたが、今後は、障害者を対象としたインターンシップ制導入についての企業等への働きかけや、都庁内における職場体験実習の機会の拡大等を検討してまいります。
 次に、新事業体系への移行に係る区市町村との調整についてでございますが、障害福祉サービスにつきましては、障害者自立支援法に基づき、本年十月から新しいサービス体系が導入されまして、既存施設の事業者は平成二十三年度までに新体系への移行を求められております。
 都や各区市町村では、利用者の状況や地域のニーズを踏まえ、今後のサービス基盤整備の目標数値を盛り込んだ障害福祉計画を今年度中に策定する予定となってございます。
 都は、サービス提供事業者に対し、新事業体系への移行希望調査を実施する一方、区市町村の計画策定に当たって相談、助言を行うなど、各事業者や区市町村と調整を図り、新事業体系への円滑な移行を進めてまいります。
 最後に、都における医療提供体制の確保についてでございますが、全国的に医師不足が叫ばれる中、都内においても小児科、産科等において医師の確保が困難となっている医療機関がございます。このような状況におきまして、将来にわたって都民の期待にこたえられる医療提供体制を維持していくためには、地域に必要な医師の確保が不可欠でございます。
 都としては、医療機関が連携しながら、限られた人材を有効に活用できますように、お話のような制度も含めまして、さまざまな視点から対策を検討し、都民が安心して医療を受けられる医療提供体制の確保に努めてまいります。
   〔水道局長御園良彦君登壇〕

○水道局長(御園良彦君) 大原会館の跡地の利活用に関するご質問にお答えいたします。
 水道事業は、独立採算により事業運営を行っており、常に経済性の発揮が求められております。このため、事業用として利用計画がない土地につきましては、貴重な経営資源として積極的な利活用を図っております。
 老朽化や防災上の見地から、取り壊し予定の大原会館の跡地につきましても、局事業による利用計画がなく、都市計画道路予定地であることから、道路事業が実施されるまでの間、暫定的な利活用について検討してまいります。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君) 障害者施策についての二点のご質問にお答えします。
 まず、障害者雇用の促進のための制度についてでございます。
 障害者就労の促進は重要な課題でありまして、これまで雇用ハンドブックの配布や第三セクター方式による重度障害者雇用企業の設立を通じての普及啓発に努めてきたところでございます。
 また、雇用の促進には、企業みずからが取り組む意欲を喚起していただくことが重要でございます。本年度から、都独自に障害者職域開拓支援事業を創設いたしまして、他の企業にとってもモデルとなるような取り組みを行う企業等に対しまして支援を行ってまいります。
 ご指摘のように、今後はさらに、モデル企業として認定した企業につきまして、企業名も含め、その先進的な取り組みを広く周知することにより、障害者の職域と就業機会の拡大に向けた取り組みを奨励してまいります。
 次に、障害者の職業訓練機会の確保についてでございます。
 ご指摘のとおり、障害者が自立していくための職業訓練の充実は大変重要であると認識しております。都はこれまでも、東京障害者職業能力開発校などでの職業訓練の実施とともに、企業や民間教育機関等を活用した委託訓練など、訓練機会の拡大に努めてきたところでございます。
 今後も、障害者自立支援法の施行を踏まえ、求人ニーズに応じた知識技能が習得できるよう、カリキュラムを工夫するなど、訓練内容の充実に努めてまいります。
 また、障害者が身近な地域で職業訓練を受講できるよう、施設等の状況を勘案しながら、新たな取り組みといたしまして、都立の他の技術専門校での訓練科目の展開を検討してまいります。

○議長(川島忠一君) 十番原田恭子さん。
   〔十番原田恭子君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○十番(原田恭子君) 昨年合意に至った日米安全保障協議での最終文書がことしの五月一日に発表されました。横田基地の管制空域の一部返還と共用化が進められていますが、生活者ネットワークは、あくまでも全面返還に向けての知事の強い姿勢を示すことが必要と考えております。
 さて、多摩市、稲城市にまたがる豊かな自然が残る多摩サービス補助施設は、米軍のレクリエーション施設であり、軍事的な目的がないにもかかわらず、今回の合意の中でも返還については何も言及されていません。
 多摩サービス補助施設の全面返還に向けて、改めて知事の決意をお聞かせください。
 また、返還までの期間にあっては、都民が活用できるよう開放を強く願うものです。自然観察、バードウオッチング、弾薬庫跡地見学など、一定の目的を持った団体への開放を積極的に進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、森林事業について伺います。
 東京都の総面積の約三分の一は森林が占めています。平成十四年度に都が行った河川・森林に関する世論調査では、五〇%以上の都民が、森林が持つ大気の浄化作用、山崩れ・洪水の防止効果、水資源を蓄える役割、温暖化防止への貢献などに期待感を示しています。
 さらに今年度は、花粉症対策の取り組みが開始されたことで、森林行政が大きく注目され、一層の展開が期待されています。
 ところで、奥多摩の杉林の杉を広葉樹や花粉の少ない杉に植えかえる際に伐採される年間百二十ヘクタールの木材は、全部利用できるわけではなく、相当の端材や樹皮が生じます。こうした端材は、十分に利用していくことで資源循環型社会への転換の一助となり、地球温暖化防止の有効な一歩になるはずです。
 そもそも木材は再生可能な資源であり、またエネルギーとして利用しても、化石燃料とは違い、大気中の二酸化炭素を一方的に増加させることのない、環境に優しい資源です。今回の対策を契機として木材利用を進めるとともに、端材や樹皮の利用拡大を図ってほしいと考えています。
 今回の花粉症対策の杉伐採に伴って発生する端材、樹皮について、発生量の見込みと今後の活用についてお伺いします。
 東京都には約五万ヘクタールの豊かな森林資源が存在します。片や、大消費都市として大量の生ごみや下水汚泥なども抱えています。持続可能なエネルギー政策を考えるとき、使われていないバイオマスに着目し、その活用を進めていくことがこれからの課題と考えますが、東京都のお考えをお聞かせください。
 次に、障害者の就労について伺います。
 障害者の地域における自立した生活を支援する体制づくりを進めるとして、障害者自立支援法がスタートし、身体、知的、精神障害という三障害に対応するサービス体系が一元化されました。同時に、改正障害者雇用促進法が施行になり、障害者雇用率の算定に精神障害者が加えられるとともに、在宅就業の促進と福祉施策との連携が盛り込まれました。ノーマライゼーションの進展を踏まえ、地域でともに学び、ともに働く社会の実現のための施策を早急に展開しなければなりません。
 従来の福祉的就労にとどめない障害者の一般就労に向けて、東京都はどのような取り組みを行っているのか、福祉保健局並びに産業労働局にお伺いします。
 ところで、事業者として都における障害者の雇用は、平成七年、都における身体障害者に関する基本方針を策定し、身体障害者を対象に雇用率の目標を三%として実践してきました。
 この基本方針には、採用試験、選考方法について、点字試験の範囲拡大、ワープロ試験及び拡大文字試験の導入などが明記されていますが、一部の実施にとどまっています。なぜすべてに点字対応できないのか、お伺いします。
 東京都は、一つの事業体として、民間に先駆け、積極的に障害者の職員雇用を進める立場にあると考えます。しかし、東京都が雇用する障害者は身体障害者のみに限定されています。知的障害者は、就労の機会を提供するに努めるとのみ記載され、精神障害者とともに雇用の対象になっていません。
 都は、今議会で、都庁内の障害者のインターンシップ導入に積極的に取り組むことを明言しております。障害者の一般就労を推進する自治体として、パートや嘱託など雇用形態にも創意工夫し、職域を広げることを検討すべきときと考えますが、見解を伺います。
 最後に、臨海副都心開発について伺います。
 五月連休明け、東京都は、臨海三セクの民事再生手続の開始申し立てを発表しました。昨年、ファッションタウンとタイム二十四の民事再生手続が開始され、ことし三月にビッグサイトによる吸収合併が成立した直後の出来事に、やはりという思いです。
 この時点で、東京都の債務免除と出資金の減資を合わせて八十四億円を負担していますが、今回は合わせて三百八十億円というさらに莫大な損失を出した上に、民事再生法申請による法的処理という事態を招いたことは、当然、経営責任が問われるものと考えます。
 これまでに至る臨海三セクへの対応とその総括を伺います。
 もともと臨海副都心は、スタート時からさまざまな問題指摘がありました。生活者ネットワークは、都民不在のまま、おおよそ事業費八兆円といわれた副都心開発において、一挙に資金を投資し、一挙に開発するという手法が問題と指摘してきました。
 しかし、この十八年間、都はその課題に本質的に取り組むこともせず、大丈夫ですを議会答弁で繰り返し、関連会計の統合で七千億近くの現物出資をするなど、都民の財産を浪費して、危機を隠して問題をわかりにくくしてきました。そこにこの臨海三セクの破綻処理です。
 都は、これは臨海副都心事業と関係なく、単なる三セクの問題であるとしていますが、到底納得できるものではありません。今こそ謙虚に臨海副都心開発事業の収支と開発計画全体を根本的に総括し、今後の十年に向けてのスタートにすべきと考えますが、見解を伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 原田恭子議員の一般質問にお答えします。
 多摩サービス補助施設の返還についてでありますけども、これは外交の駆け引きの問題でして、やはりカードの出し方なんですよ。これは任せておいていただきたい。
 私、就任早々、こいそ明議員と二人であの施設を視察しました。あのクラブハウスの前の山頂に立ったとき、僕は本当に苦々しく、何だ、大したものじゃないかといったら、何か、要するに言葉の気配に向こうの司令官が気にしまして、くっついてきた通訳に、石原は何といった、何といったと聞いた。そうしたら通訳はばかだから、ヒー・セッド・マーベラス─すばらしいといったんじゃない。これはツー・マッチといわなくちゃいけないんだよ。
 結局、私もその後いろいろ内々交渉して、サウンディングしましたが、やっと横田がめどがついてきましたので、大事なことは、あの緑を取り戻す前に、日本で一番長い滑走路が使われていないんです、これを国力の維持のために使うことです。これが要するに発足したら、あの土地は返ってきます。
 ただ、彼らの意向は、これも彼らの勝手なわがままですけれども、陸海空三軍がそれぞれ自分のゴルフ場を持ちたいんですよ。ですから、あのあたりにはゴルフ場がたくさんありますから、別にあそこを返してもらわなくて、勝手に使わせておきゃいいんで、ゴルフ場以外のものは必ず返ってきます、横田が動き出したら。
 そういうことでひとつご期待願いたいし、また議会としてもせっかくの土地ですから、あなたがおっしゃったみたいにいろんな形であの緑を使えますので、大いに活用していこうと思いますが、その前にやっぱりあの滑走路を取り戻して使うことなんです。
 他の質問については関係局長から。
   〔知事本局長山口一久君登壇〕

○知事本局長(山口一久君) 多摩サービス補助施設の都民開放についてでございますが、現在、地元市民のため、市主催事業など一部に開放されていることは承知しておりますが、この施設は、本来、直ちに返還され、全面的に都民の利用に供すべきものでございます。
 このため、都はこれまでも、渉外知事会や国への提案要求を通じまして、即時返還を国に求めておりますが、今後とも都民への全面開放の実現に向けまして粘り強く働きかけてまいります。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、花粉症対策による伐採に伴って発生する端材、樹皮の活用についてでございますが、花粉症対策では、向こう十年間の平均で年間十八万本の杉を伐採する予定であります。これは現行の約八倍の伐採量に当たりまして、概算ですが、端材は年間四千二百トン、樹皮は千六百トン程度と、発生量の増大が見込まれます。
 端材等につきましては、製紙原料としての利用のほか、製材所の木材乾燥機の燃料や、粒状に加工しましてペレットとしてストーブ等で利用されておりますが、製紙原料等につきましては、さらに十分な需要が見込まれますので、その供給を拡大するなど、利用促進に努めてまいります。
 次に、障害者の一般就労への取り組みについてでございます。
 都はこれまで、障害者雇用ハンドブックの配布や、第三セクター方式による重度障害者雇用モデル企業の設立を通じて普及啓発に努めるとともに、東京障害者職業能力開発校等における職業訓練や、企業や民間教育機関等を活用した委託訓練を実施してきたところでございます。
 また、本年度からは、他の企業のモデルとなるような障害者雇用の取り組みを行う企業等を支援する障害者職域開拓支援事業を開始いたしましたが、今後とも障害者の一般就労の拡大に向けた取り組みを行ってまいります。
   〔環境局長大橋久夫君登壇〕

○環境局長(大橋久夫君) 未利用のバイオマスの活用についてのお尋ねでございます。
 都はこれまで、廃棄物埋立処分場や下水処理の過程で発生するメタンガスを活用した発電を行うなど、未利用バイオマスの有効活用に率先して取り組んでまいりました。
 また、スーパーエコタウン事業において、食品廃棄物を利用したバイオガス発電が行われるなど、民間事業者による取り組みも積極的に進められております。
 東京には、こうした下水汚泥や食品廃棄物、さらには樹木の枝葉など、多様なバイオマス資源が存在しており、今後ともこれらの活用方策について検討してまいります。
   〔福祉保健局長平井健一君登壇〕

○福祉保健局長(平井健一君) 障害者の一般就労に向けた取り組みについてのお尋ねでございます。
 都では、身体、知的及び精神障害者の就労機会の拡大を目指し、平成十五年度から、身近な地域で就労面と生活面の支援を行います区市町村障害者就労支援事業を実施してまいりましたが、昨年度は二十八の区市において事業を実施いたしまして、七百人を超える障害者の就労を実現することができました。
 今後は、新たに策定した障害者地域生活支援・就労促進三か年プランによりまして、この就労支援事業をすべての区市で実施するとともに、企業内通所授産事業を大幅に拡大するなど、希望する障害者が一般就労へ移行することができますように、積極的に支援してまいります。
   〔総務局長高橋功君登壇〕

○総務局長(高橋功君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、東京都職員の採用試験等におきます点字対応についてでございますが、現在、都におきましては、視力に重度の障害がありましても従事可能な業務といたしまして、相談業務、指導業務などがございます。これらの業務につく職員を採用するための試験区分といたしましては、事務のⅠ類、Ⅱ類、また社会福祉施設におきます相談業務に従事する福祉Cなどがございます。こうした従事可能なすべての試験区分につきまして、点字受験を導入しているところでございます。
 次に、都におきます知的障害者等の雇用についてでございますが、都職員の職務は多様な業務が複合的に組み合わさっておりまして、その中から知的障害者等に適する業務だけを抜き出して、一つの新たな職として成立させることはなかなか困難な状況にございます。
 都といたしましては、都の関連団体を通じた知的障害者等の雇用や作業所等への業務委託を進めることなどによりまして、引き続き障害者の就労促進に取り組んでまいります。
   〔港湾局長津島隆一君登壇〕

○港湾局長(津島隆一君) 臨海副都心開発につきまして二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、臨海三セクへのこれまでの対策とその総括についてのお尋ねでございますが、臨海三セクは、平成十年に策定した経営安定化策に沿って経営改善に着実に取り組んでまいりました。その結果、平成十七年度では七年連続の営業黒字を達成し、借入金残高も減少するなど、一定の成果を上げてまいりました。しかし、臨海三セクは借入金の完済に五十年以上を要することから、金融情勢の変化が今後の経営に与える影響等を勘案し、民事再生により早期に債務を圧縮して、経営基盤の強化を図ることとしたものでございます。
 都といたしましては、この開発を着実に推進するため、引き続き臨海三セクを活用する必要があることから、民事再生を選択することが現時点では最善の方策と考えております。
 次に、臨海副都心開発事業の収支と計画全般の総括についてでございますが、臨海副都心はこれまで、バブル崩壊という試練に直面しながらも、現在では交通アクセスも充実し、来訪者が年間四千万人を超えるまちとして着実に成長しており、今年度からまちづくり総仕上げの十年という重要な段階に入ったところでございます。
 こうした中で、本年三月、都は臨海副都心の開発を着実に進めるため、今後のまちづくりと財政基盤強化のための取り組みに関する考え方をまとめた臨海副都心開発の今後の取り組みとして公表したところでございます。
 具体的には、職・住・学・遊の均衡のとれた複合的なまちづくりの考え方に加えまして、新たに観光と交流の視点を取り入れるとともに、財政基盤の強化に向けて収支両面からのさらなる取り組みを行うこととしております。
 都としては、この中で示したさまざまな増収増益策や経費縮減策を引き続き着実に進めることにより、開発の一層の進展を図りたいと考えております。

○副議長(木内良明君) 八番伊沢けい子さん。
   〔八番伊沢けい子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○八番(伊沢けい子君) 私は、東京都教育委員会がこの数年にわたって行ってきた教育現場、教育内容に対するさまざまな不当な介入、支配に対し、強い危機感を抱いており、今のままでは都民及び教員が東京都の教育に明るい展望を持つことができないのではないかと危惧をしています。
 国旗・国歌の強制、七生養護学園への性教育への介入など、教育委員会が行っていることは、思想信条の自由を踏みにじり、生徒たちから真実を学ぶ権利を奪っています。また、教育における自主性、創造性を大きく損ねるものとなっています。
 これらの出来事は、教育基本法十条「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」との条項に明らかに違反をしています。
 国会でも教育基本法が論議されている最中ですけれども、教育を通して、この国の未来が私たちに大きく今問われています。教育は、憲法にうたわれている民主主義を実現するために大変重要な役割を果たしており、教育基本法の理念に「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成」とあることは、世界にも通用する普遍性を持った内容だと思います。子どもたちが国際社会の中で誇りを持って生きるために、こうした理念の教育実践が今こそ必要です。
 しかし、この理念を大きく揺るがし否定する動きが今東京都に次々と起こっています。
 第一に、去る四月十三日、教育委員会は、都立学校に対し、職員会議において挙手による採決を行ってはいけないという趣旨を含む通知を出しました。また、職員会議を中心とした学校運営から脱却することが不可欠とも書いてあります。これはまさに民主主義の否定であり、教員の教育現場での自主決定権を奪い、活気を奪うものであると思います。どこの会社、組織でも挙手採決の禁止などということは聞いたことがありません。少なくとも、この都議会においても挙手採決を行っているのではないでしょうか。まさに学校で、子どもたちにどうやって民主主義を教えていくのでしょうか。
 学校教育法二十八条では、校長は校務をつかさどるとあります。教育行政機関である教育委員会が、教育機関である学校の校長の校務である職員会議のやり方について通知を出すなどは、校務をつかさどる校長への干渉であり、学校教育法違反ではないのでしょうか。この通知の目的は一体何なのでしょうか。
 第二に、教育内容への不当な支配を象徴するようなことが起こっておりますので、今、取り上げたいと思います。
 この三月、都教委は、中学校の社会科教員として三十三年間勤めてきました増田都子教諭を、免職処分、つまり解雇することを行いました。増田教諭は、日本の侵略戦争の歴史の反省や平和と民主主義を教えることに努力し、授業の中で紙上討論という方法を取り入れ、教育効果を上げてきました。紙上討論というのは、紙の上で討論をするということです。生徒同士、先生も交えて、戦争責任や原爆問題などのテーマを設けて、生徒たちに口頭ではなく必ず紙に意見を書かせて議論を深めさせてきたのです。中学生たちの意見を読むと、驚くほどしっかりとした意見を皆書いております。
 昨年、増田教諭は、公民の授業で日本によるアジアへの侵略戦争と植民地支配について考えさせようと、韓国で盧武鉉大統領が行った三・一演説を生徒たちと読み、大統領に手紙を書くということを生徒たちと行いました。増田教諭自身も手紙を書きました。その手紙の中で、都議会で、二〇〇四年、古賀俊昭都議が、日本は侵略などしていない、どこを、いつ、どの国を侵略したか聞いてみたいという発言を批判したということ、そして、東京都が採用している扶桑社の教科書を、歴史事実をつくりかえる歴史偽造主義と批判したことを不適切として、都教委は増田教諭を戒告処分にし、昨年九月、教壇から外したのです。そして、ことし三月までの半年間、都の研修センターに送り込み、三月に免職にしたのです。
 そこでお尋ねいたします。古賀都議が都議会で行った、日本はどこも侵略したことがないという趣旨の発言を増田教諭が批判したことを都教委が不適切とし、処分理由にしたということは、この発言を都教委は正しいと認識しているのでしょうか。
 少なくとも、日本政府を代表して村山首相、小泉首相など歴代の首相も過去の侵略の事実を認め、政府として謝罪を行っています。また、日本が侵略を行ったことは紛れもない歴史的事実として世界的に知られていることですが、見解を伺います。
 また、扶桑社の教科書はアジアへの侵略戦争を自存自衛の戦争としておりますが、このような歴史観を東京都は正しいと認識しているのでしょうか。
 このような歴史認識は事実と明らかに異なっていると私は思いますが、百歩譲って事の真偽を一たん横に置いたとしても、授業の中で批判をすることさえ許されないのでしょうか。増田教諭が受けた研修の中で、教育庁の園田法務監察課長が、検定済み教科書はすべて正しいので、扶桑社教科書批判を子どもに教えることは公務員は許されないと指導したというのは本当でしょうか。
 明らかに歴史的事実と異なることを批判したことをもって教壇から突然外し、研修を半年間も受けさせ、あげくの果て免職にするというのは異常ではないのでしょうか。つまり、都教委の考えに合わない教員はやめさせてよいということを意味し、その前例をつくろうとしているのではないでしょうか。これこそ権力の乱用というほかありません。
 また、昨年から半年間にわたって都の研究所で行われていたことは、侵略戦争について教えていたことの反省を繰り返し迫るようなレポートを増田教諭に書かせるもので、これこそ教育基本法十条が禁止している行政による不当な支配、介入に相当するのではないでしょうか。
 さらに、半年間にもわたり研修所という密室で行われていたことは、行政による教育内容への不当な介入であるほか、毎日、トイレに行った時間や携帯電話で話した時間、内容まで都職員が日誌に記録していたというのは事実でしょうか。その目的は何ですか。これは明らかに人権侵害ではないのでしょうか。
 教員には教育基本法にのっとって真実を教える義務があるのであり、歴史的事実を具体性を持ってわかりやすく教えることがなぜ問題視されるのでしょうか。
 また、今ほど日本にとって、アジア近隣諸国はもとより、世界じゅうのすべての国々と友好関係を築けるのかどうかということが問われているときはありません。そのようなときに、日本による侵略戦争を含む近現代史の事実を子どもたちに教えることはどうしても必要なことではないのでしょうか。そして、第一次世界大戦、第二次世界大戦の原因とその結末を、二度と戦争の過ちを犯さないためにも、子どもたちに教えることは非常に重要だと思いますが、見解を伺います。
 既に免職処分は、今、国際的にも大変問題視されており、韓国のメディアでも大きく取り上げられました。また、盧武鉉大統領の側近の薛東根氏を通じて、増田教諭への支援のメッセージが寄せられているほか、五月に増田教諭は、釜山市で教員六百人、市民三百人を前に講演を行い、広く韓国の人たちの関心を集め、国際的にも注目を集めることとなっています。
 最後に、米長教育委員についてお伺いします。
 米長氏は、最近、「週刊現代」などの雑誌上でさまざまなスキャンダルが報じられております。都教委はこれらの事実関係について調査をしていますでしょうか。これらの疑惑の真相を今都民の前に明らかにすべきではないでしょうか。もし事実だとすれば、教育委員として都民の信頼を裏切るものであり、辞任を求めるべきと思いますが、見解を伺います。
 私が申し上げたいのは、都民にとっての教育の観点、国際的な観点からも、都教委は現在の不当な教育への介入、支配をやめなければ、教育現場における閉塞状況はますます強まり、国際的にも他国の人たちから不信を買うことになるということです。
 職員会議での挙手採決を禁止した四・一三通知の撤回、そして増田教諭への免職処分の撤回を強く求めます。
 教育長の答弁を求め、再質問を留保いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
   〔傍聴席にて発言する者、その他発言する者多し〕

○議長(川島忠一君) ご静粛に願います。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) お答え申し上げます。
 順序は幾分違っているとは思いますけれども、まず、通知の目的でございますけれども、学校経営の適正化の通知を出した目的でございます。
 学校内で教職員が活発な議論をすることは有意義でございます。ただし、一部の都立学校では、職員会議での採決によりまして校長の意思決定が制約されるという事態がございます。このような学校運営を改めまして、校務運営が校長のリーダーシップのもとで適正に行われるよう、今回の通知を出したところでございます。
 次に、政府見解がありますけれども、政府見解については、都教育委員会はコメントする立場にはございません。
 それから、教員の教科書批判についてでありますが、教科用図書は国の教科書検定を経たものでございまして、教育委員会がその権限と責任において採択するものであります。
 教科用図書を主たる教材として使用しなければならない立場にある教員が、授業中に特定の会社名を挙げて誹謗することは不適切であります。
 教職員センターにおける講師の発言でございますが、教育公務員が授業中に法令に基づく手続を経た検定教科書を批判することは、公教育に対する信頼を損なうものでございまして、とりわけ中等教育初期段階にあります中学生に対する授業中の発言としては不適切でありますといった趣旨の発言をしたというふうに聞いております。
 次に、教員の処分についてであります。
 公立学校教員の懲戒及び分限処分につきましては、地方公務員法に規定された処分事由に該当する場合に限り行われるものでございます。
 都教育委員会は、客観的に認定された職員の具体的な行為が、法令に照らして、懲戒または分限事由に該当するかどうかを慎重に判断した上で処分を行っております。
 それから、教職員センターでの研修についてでありますが、研修は、学習指導法の改善に関すること、教育公務員としての資質向上に関すること、その他都教育委員会が必要と認める課題について行ったものでございます。
 研修において、受講者の課題について、レポートの作成を含めて適切に指導したところでございます。したがって、このことは不当な支配には当たりません。
 それから、研修において人権侵害があったかのようなご指摘がございましたが、当該研修は、内容、場所、時間を指定して行う勤務としての研修でございます。個人が勝手に研修場所を離れることはあってはならないことであります。
 したがって、研修の開始や終了の時刻、離室状況、研修の中断等を記録することは、当該教員の研修状況を把握するため必要なことでございます。
 それから、近現代史の指導についてでありますが、中学校学習指導要領には、昭和初期から第二次世界大戦の終結までの我が国の政治、外交の動き、中国などアジア諸国との関係、欧米諸国の動きに着目させて、経済の混乱と社会問題の発生、軍部の台頭から戦争までの経緯を理解させるというふうに示されております。近現代史の指導は、学習指導要領に基づき、計画的に指導すべきものでございます。
 最後に、米長委員の件でございますけれども、ご指摘の事柄につきましては、一部の週刊誌によります報道にすぎませんでして、事実確認をする考えはございません。
   〔八番伊沢けい子君登壇〕

○八番(伊沢けい子君) まず、職員会議の件ですけれども、適切な学校運営のために、職員会議が阻害していると。そのために校長の決定権が弱まっているというのはおかしいんじゃないでしょうか。
 それでは、例えばここの都議会におきましても、都議会が阻害要因になって、そして知事にすべてを決めてもらう、これと同じことを今学校で行おうとしているといえないでしょうか。それじゃ、まるで私たちの都議会自体も否定していることになると私は思いますが、いかがでしょうか。
 次に政府見解についてでございますけれども、これについてコメントしないというお返事でしたけれども、コメントしないということは見解がないということで、侵略についてもコメントしないということは、逆にいえば増田先生が行った批判について不適切ということもできないのではないかと私は思います。おかしいんじゃないでしょうか。
 本当は都教委は……
   〔傍聴席にて拍手する者あり〕

○議長(川島忠一君) 傍聴人に申し上げます。ご静粛に願います。
 傍聴人に申し上げます。ご静粛に願います。

○八番(伊沢けい子君) 都教委は、本当のところ、明らかなる意図を持っていながら、こういうふうに聞きますとコメントしないというのは非常におかしなことだと思います。こんなことが通用するのでしょうか。
 それから、米長教育委員については事実確認をしないといいますけれども、今の報道によって多くの都民の不信感を買っていることは事実であります。こういったことを、少なくとも疑惑がある以上はそれを明らかにするのは当然のことではないのでしょうか。
 以上質問いたします。ぜひお答えください。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君) 伊沢けい子議員の再質問にお答え申し上げます。
 まず、政府見解に対してですけれども、教科書によりまして、歴史的な事実の記述につきましては、占領、侵略などさまざまあることは承知しております。いずれも国の教科書検定を受けたものでございまして、教科書の内容、あるいは政府見解に対して東京都教育委員会はコメントする立場にはございません。
 それから、職員会議の件ですけれども、学校運営を学校の自主性に任せるというふうな趣旨だと思いますけれども、すべての都立学校が、校長の経営方針のもとに企画調整会議等で教職員の意思把握を行うとともに、そこで議論を深め、最終的に校長が決定するという手続を確立することが重要でございます。
 東京都教育委員会は、校長のリーダーシップのもと、適正な学校運営が行われるよう支援していく責務がございます。
 それから、米長委員の件でございますけれども、重ねて一部の週刊誌による報道にすぎませず、事実関係について確認する考えはございません。

○議長(川島忠一君) 以上をもって質問は終わりました。

○議長(川島忠一君) これより日程に入ります。
 日程第一から第三十一まで、第百四十四号議案、特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例外議案二十七件、専決三件を一括議題といたします。
 本案に関し、提案理由の説明を求めます。
 副知事横山洋吉君。
   〔副知事横山洋吉君登壇〕

○副知事(横山洋吉君) ただいま上程になりました三十一議案についてご説明申し上げます。
 第百四十四号議案から第百六十六議案までは条例案でございまして、二十三件すべてが一部を改正する条例でございます。
 まず、第百四十六号議案、東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例は、社会経済状況の変化等を踏まえ、支給の根拠となっております勤務の特殊性が薄れていないかなどの観点から、特殊勤務手当の種類、支給範囲及び支給額を改めるものでございます。
 また、同様の趣旨から、学校職員、東京都教育委員会職員、警視庁職員、東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部改正、四件を提案いたしております。
 次に、第百四十八号議案、東京都都税条例の一部を改正する条例は、地方税法等の一部を改正する法律の施行に伴い、個人都民税及び都たばこ税の税率を改めるとともに、自動車税の税率の特例措置の適用期限を延長するなどの改正を行うものでございます。
 次に、第百五十三号議案、東京都立し体不自由児施設条例の一部を改正する条例は、障害者自立支援法の施行により、障害児施設に利用契約制度が導入されることに伴いまして、使用料等に係る規定を整備するものでございます。
 また、同様の趣旨から、東京都立重症重度心身障害児者施設条例及び東京都立精神病院条例の一部改正を提案いたしております。
 次に、第百五十六号議案、東京都養護老人ホーム条例の一部を改正する条例は、潮見老人ホームの施設を普通財産に切りかえ、社会福祉法人に貸し付けるため、関連規定の削除等を行うものでございます。
 次に、第百五十七号議案、東京都女性福祉資金貸付条例の一部を改正する条例は、女性福祉資金貸付事業の充実を図るため、生活資金の貸付要件を緩和するものでございます。
 次に、第百六十一号議案、警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例は、高齢者に対する運転者教育の充実と利便性の向上を図るため、シニア運転者講習を実施することに伴い、その手数料を定めるものでございます。
 このほかに十一件ございますが、いずれも法令等の改正に伴い、所要の改正を行うものでございます。
 次に、第百六十七号議案から百六十九号議案までが契約案でございます。
 都立町田高等学校(H十八)改築及び改修工事など三件を予定しております。契約金額は、総額約四十九億九千万円でございます。
 次に、第百七十号議案及び第百七十一号議案が事件案でございます。
 都有地の不法占拠者に対する工作物収去土地明渡等請求訴訟事件の和解など二件につきまして議決をお願いいたすものでございます。
 次に、専決でございます。
 東京都都税条例の一部改正など、施行までの間に時間的余裕がなく、議会を招集するいとまがなかったため、専決処分を行ったもの三件でございます。
 上程になりました三十一議案の説明は以上でございますが、このほか人事案を送付いたしております。
 東京都人事委員会委員でございます。八月二十九日に任期満了となります岡田良雄氏を再任いたしたいと存じます。
 同意につきましてよろしくお願い申し上げます。
 以上で説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。
(議案の部参照)

○議長(川島忠一君) 以上をもって提案理由の説明は終わりました。
 なお、本案中、地方公務員法第五条第二項の規定に該当する議案については、あらかじめ人事委員会の意見を徴しておきました。
 議事部長をして報告いたさせます。

○議事部長(松原恒美君) 人事委員会の回答は、第百四十六号議案、第百四十九号議案、第百五十号議案、第百六十二号議案及び第百六十四号議案について、いずれも異議はないとの意見であります。

一八人委任第二〇号
平成十八年六月六日
   東京都人事委員会委員長 内田公三
 東京都議会議長 川島忠一殿
「職員に関する条例」に対する人事委員会の意見聴取について(回答)
 平成十八年五月三十日付一八議事第五四号をもって照会があった議案に係る人事委員会の意見は、左記のとおりです。

  提出議案
一 第百四十六号議案
  東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
二 第百四十九号議案
  学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
三 第百五十号議案
  東京都教育委員会職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
四 第百六十二号議案
  警視庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
五 第百六十四号議案
  東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
    意見
異議ありません

○議長(川島忠一君) お諮りいたします。
 ただいま議題となっております日程第一から第三十一までは、お手元に配布の議案付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君) ご異議なしと認めます。よって、日程第一から第三十一までは、議案付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託することに決定いたしました。
(別冊参照)

○議長(川島忠一君) これより追加日程に入ります。
 追加日程第一、東京都人事委員会委員の選任の同意についてを議題といたします。
   〔松原議事部長朗読〕
一、東京都人事委員会委員の選任の同意について一件

一八財主議第五七号
平成十八年六月六日
 東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 川島忠一殿
東京都人事委員会委員の選任の同意について(依頼)
 このことについて、左記の者は平成十八年八月二十九日任期満了となるため、再び選任したいので、地方公務員法第九条の二第二項の規定により、東京都議会の同意についてよろしくお願いします。

     岡田良雄

略歴
現住所 神奈川県川崎市
岡田 良雄
昭和十年八月十三日生(七十歳)
昭和三十四年三月 京都大学法学部卒
昭和三十六年四月 東京地方裁判所 判事補
昭和四十六年四月 東京地方裁判所 判事
昭和五十年四月  最高裁判所事務総局刑事局第二課長
昭和六十三年三月 裁判所書記官研修所所長
平成二年九月   新潟地方裁判所所長
平成四年十二月  東京高等裁判所 部総括判事
平成九年一月   司法研修所所長
平成十一年四月  大阪高等裁判所長官
平成十二年八月  定年退官
平成十三年一月  帝京大学法学部教授
平成十五年四月  青山学院大学法学部教授
平成十六年四月  青山学院大学大学院法務研究科教授
現在       弁護士、青山学院大学大学院法務研究科教授

○議長(川島忠一君) お諮りいたします。
 本件は、知事の選任に同意することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、知事の選任に同意することに決定いたしました。

○議長(川島忠一君) 請願及び陳情の付託について申し上げます。
 受理いたしました請願四件及び陳情十二件は、お手元に配布の請願・陳情付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会及び議会運営委員会に付託いたします。
(別冊参照)

○議長(川島忠一君) お諮りいたします。
 明十五日から二十日まで六日間、委員会審査のため休会いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君) ご異議なしと認めます。よって、明十五日から二十まで六日間、委員会審査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、六月二十一日午後一時に開きます。
 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後八時五分散会

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