平成十八年東京都議会会議録第七号

平成十八年六月六日(火曜日)
 出席議員(百二十五名)
一番遠藤  守君
二番伊藤 興一君
三番田中たけし君
四番鈴木 隆道君
五番宇田川聡史君
六番後藤 雄一君
七番福士 敬子君
八番伊沢けい子君
九番そなえ邦彦君
十番原田 恭子君
十二番伊藤 ゆう君
十三番原田  大君
十四番河野百合恵君
十五番小竹ひろ子君
十六番松葉多美子君
十七番大松  成君
十八番中山 信行君
十九番高倉 良生君
二十番早坂 義弘君
二十一番高木 けい君
二十二番崎山 知尚君
二十三番坂本たけし君
二十四番石森たかゆき君
二十五番高橋 信博君
二十六番村上 英子君
二十七番鈴木あきまさ君
二十八番山口 文江君
二十九番佐藤 広典君
三十番尾崎 大介君
三十一番山口  拓君
三十二番伊藤まさき君
三十三番松下 玲子君
三十四番たぞえ民夫君
三十五番村松みえ子君
三十六番橘  正剛君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番谷村 孝彦君
四十番矢島 千秋君
四十一番高橋かずみ君
四十二番山加 朱美君
四十三番串田 克巳君
四十四番吉原  修君
四十五番山田 忠昭君
四十六番臼井  孝君
四十七番野島 善司君
四十八番服部ゆくお君
四十九番大西由紀子君
五十番野上ゆきえ君
五十一番西岡真一郎君
五十二番吉田康一郎君
五十三番斉藤あつし君
五十四番泉谷つよし君
五十五番くまき美奈子君
五十六番大西さとる君
五十七番かち佳代子君
五十八番植木こうじ君
五十九番長橋 桂一君
六十番野上 純子君
六十一番東村 邦浩君
六十二番小磯 善彦君
六十三番東野 秀平君
六十四番松原 忠義君
六十五番田代ひろし君
六十六番神林  茂君
六十七番秋田 一郎君
六十八番林田  武君
六十九番きたしろ勝彦君
七十番近藤やよい君
七十一番高島なおき君
七十二番鈴木 一光君
七十三番増子 博樹君
七十四番いのつめまさみ君
七十五番門脇ふみよし君
七十六番小沢 昌也君
七十七番石毛しげる君
七十八番岡崎 幸夫君
七十九番山下 太郎君
八十番清水ひで子君
八十一番古館 和憲君
八十二番松村 友昭君
八十三番藤井  一君
八十四番ともとし春久君
八十五番木内 良明君
八十六番鈴木貫太郎君
八十七番こいそ 明君
八十八番遠藤  衛君
八十九番倉林 辰雄君
九十番川井しげお君
九十一番三宅 茂樹君
九十二番樺山たかし君
九十三番宮崎  章君
九十四番古賀 俊昭君
九十五番立石 晴康君
九十六番桜井  武君
九十七番初鹿 明博君
九十八番酒井 大史君
九十九番花輪ともふみ君
百番大沢  昇君
百一番大津 浩子君
百二番大塚たかあき君
百三番馬場 裕子君
百四番曽根はじめ君
百五番大山とも子君
百六番石川 芳昭君
百七番中嶋 義雄君
百八番石井 義修君
百十番比留間敏夫君
百十一番吉野 利明君
百十二番新藤 義彦君
百十三番野村 有信君
百十四番大西 英男君
百十五番山崎 孝明君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番相川  博君
百二十一番柿沢 未途君
百二十二番中村 明彦君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番田中  良君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番渡辺 康信君

 欠席議員(一名)
百九番 桜井良之助君
欠員
十一番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事横山 洋吉君
副知事大塚 俊郎君
副知事関谷 保夫君
出納長幸田 昭一君
教育長中村 正彦君
知事本局長山口 一久君
総務局長高橋  功君
財務局長谷川 健次君
警視総監伊藤 哲朗君
主税局長菅原 秀夫君
生活文化局長山内 隆夫君
都市整備局長柿堺  至君
環境局長大橋 久夫君
福祉保健局長平井 健一君
産業労働局長成田  浩君
建設局長岩永  勉君
港湾局長津島 隆一君
交通局長松澤 敏夫君
消防総監関口 和重君
水道局長御園 良彦君
下水道局長前田 正博君
青少年・治安対策本部長舟本  馨君
東京オリンピック招致本部長熊野 順祥君
病院経営本部長大塚 孝一君
中央卸売市場長森澤 正範君
選挙管理委員会事務局長渡辺日佐夫君
人事委員会事務局長佐藤  広君
労働委員会事務局長押元  洋君
監査事務局長高橋 道晴君
収用委員会事務局長嶋津 隆文君

六月六日議事日程第一号
第一 第百四十四号議案
特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第二 第百四十五号議案
市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三 第百四十六号議案
東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第四 第百四十七号議案
東京都非常勤職員の公務災害補償等に関する条例の一部を改正する条例
第五 第百四十八号議案
東京都都税条例の一部を改正する条例
第六 第百四十九号議案
学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第七 第百五十号議案
東京都教育委員会職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第八 第百五十一号議案
東京都心身障害者福祉センター条例の一部を改正する条例
第九 第百五十二号議案
東京都肢体不自由者自立ホーム条例の一部を改正する条例
第十 第百五十三号議案
東京都立し体不自由児施設条例の一部を改正する条例
第十一 第百五十四号議案
東京都立重症重度心身障害児者施設条例の一部を改正する条例
第十二 第百五十五号議案
東京都立総合精神保健福祉センター及び東京都立精神保健福祉センター条例の一部を改正する条例
第十三 第百五十六号議案
東京都養護老人ホーム条例の一部を改正する条例
第十四 第百五十七号議案
東京都女性福祉資金貸付条例の一部を改正する条例
第十五 第百五十八号議案
東京都立病院条例の一部を改正する条例
第十六 第百五十九号議案
東京都立精神病院条例の一部を改正する条例
第十七 第百六十号議案
警視庁の警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する条例の一部を改正する条例
第十八 第百六十一号議案
警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例
第十九 第百六十二号議案
警視庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第二十 第百六十三号議案
東京都消防関係手数料条例の一部を改正する条例
第二十一 第百六十四号議案
東京消防庁職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第二十二 第百六十五号議案
特別区の消防団員に係る退職報償金に関する条例の一部を改正する条例
第二十三 第百六十六号議案
特別区の消防団員等の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第二十四 第百六十七号議案
都立町田高等学校(H十八)改築及び改修工事請負契約
第二十五 第百六十八号議案
警視庁大崎警察署庁舎(H十八)改築工事請負契約
第二十六 第百六十九号議案
平成十八年度東京港臨海道路(Ⅱ期)南北水路横断橋(仮称)鋼けた製作・架設工事請負契約
第二十七 第百七十号議案
都有地の不法占拠者に対する工作物収去土地明渡等請求訴訟事件に関する和解について
第二十八 第百七十一号議案
地方自治法等の一部を改正する法律による改正前の地方自治法第二百四十二条の二第一項第四号の規定による訴訟に係る費用の負担について
第二十九
地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都都税条例の一部を改正する条例の報告及び承認について
第三十
地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都福祉保健局関係手数料条例の一部を改正する条例の報告及び承認について
第三十一
地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターが定めた料金の上限の認可の報告及び承認について
議事日程第一号追加の一
第一 議員提出議案第十号
地方税財政制度の確立に関する意見書
第二 議員提出議案第十一号
国・地方を通じた税財政制度の見直しに関する意見書

   午後一時開会・開議

○議長(川島忠一君) ただいまから平成十八年第二回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(川島忠一君) まず、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
五番   宇田川聡史君 及び
六十八番 林田 武君
を指名いたします。

○議長(川島忠一君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(松原恒美君) 平成十八年五月三十日付東京都告示第九百三十七号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、同日付で、本定例会に提出するため、議案二十八件の送付がありました。
 次に、地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した東京都都税条例の一部を改正する条例外二件の報告及び承認について、依頼がありました。
 次に、平成十八年第一回定例会の会議において同意を得た人事委員会委員、収用委員会委員、収用委員会予備委員、固定資産評価審査委員会委員及び公害審査会委員の任命について、発令したとの通知がありました。
 次に、先般の人事異動に伴う東京都議会説明員の変更について、地方自治法第百二十一条及び会議規則第四十二条の規定に基づき通知がありました。
 次に、平成十八年三月三十一日付で東京都国民保護計画の提出がありました。
 次に、平成十七年度東京都一般会計予算外三件の明許繰越について、平成十七年度東京都一般会計予算外二件の事故繰越について及び平成十七年度東京都中央卸売市場会計予算外六件の繰越しについて、それぞれ報告がありました。
 次に、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づき専決処分した訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告がありました。
 次に、監査委員より、例月出納検査の結果について報告がありました。
 また、監査結果に基づき知事等が講じた措置に関する報告がありました。
 次に、包括外部監査の結果に基づき知事が講じた措置の通知内容について、提出がありました。
(別冊参照)

○議長(川島忠一君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 第一回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
   〔文書質問趣意書及び答弁書は末尾に掲載〕

○議長(川島忠一君) 次に、先般の人事異動に伴い異動のありました説明員の方々をご紹介いたします。
都市整備局長柿堺至君、東京オリンピック招致本部長熊野順祥君。
   〔理事者あいさつ〕

○議長(川島忠一君) 以上をもって説明員の紹介は終わりました。

○議長(川島忠一君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第十号、地方税財政制度の確立に関する意見書外意見書一件が提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(川島忠一君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から六月二十一日までの十六日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君) ご異議なしと認めます。よって、会期は十六日間と決定いたしました。

○議長(川島忠一君) この際、知事より発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 平成十八年第二回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。
 先週、二〇一二年のオリンピック開催都市であるロンドンを視察してまいりました。明治から大正にかけて丸の内の赤れんが街を一丁ロンドンと呼びならわしたように、東京とロンドンの間には、国家間のつながりと同様、歴史的に深い関係があります。
 昨年のオリンピック最終選考において、ロンドンは、卓越した理念と国を挙げての活動が実を結び、パリなどのライバル都市を抑えて五輪開催の切符を手にいたしました。
 今回、ロンドン市やオリンピック組織委員会の関係者と議論を重ねる中で感じたのは、オリンピックを契機として成熟した都市を再生しようとする彼らの強い意欲でありました。ロンドンの招致活動は東京のよき手本であり、成熟を遂げてもなお新しい発展を模索するロンドンの姿勢から、東京も学ぶべき点が数多くあると思います。視察を通じて、東京への招致に強い手ごたえを得ることができました。
 視察の折、ケン・リビングストン市長と会談を行い、交通政策や環境問題、治安対策など大都市問題の解決を初め、スポーツ・観光振興さらには文化交流など、幅広い分野で世界を代表する東西の大都市が互いに政策を磨き合っていくことで合意いたしました。今回の政策協定により、五輪招致に弾みをつけるとともに、今後、世界を視野に入れた大都市間の新たな協力関係を築いていきたいと思います。
 アジア初のオリンピック開催から四十年、当時、奇跡の戦後復興をなし遂げ、その姿を世界に披瀝した東京は、今やアジアの躍進をリードする世界屈指の大都市に成長いたしました。日本の確固たる再生と世界の新たな繁栄のよすがとするため、今、再び、この東京にオリンピックを招致いたしたいと思います。
 都市の力が人類の未来を規定する今世紀にあって、オリンピックもまた、新しいあり方を求められております。成長する都市から成熟した都市へ、オリンピックの舞台は大きく転換しようとしております。
 二〇一六年の東京オリンピックでは、アスリートたちに最高の自己表現の場を提供し、これまでにない感動を世界じゅうの人々と分かち合うとともに、都市機能や最先端技術の集積など、東京が持つ都市の力を最大限に発揮し、成熟した都市の姿を世界に示してまいります。拡大、成長のステージを経て成熟しつつある東京が、数多くの難題を乗り越え、克服してきたありさまを明らかにし、世界の諸都市に範を示すことこそが、二十一世紀におけるオリンピック精神の具現化にほかなりません。
 これまで欧米諸国では、ロンドンを筆頭に、同一の国、同一の都市でオリンピックが繰り返し開催されてきました。東アジアの飛躍的に高まったプレゼンスを背景に、東京がここまで成熟を遂げてきたことの大いなるあかしとして、欧米の地域以外で初めてとなる二回目のオリンピック開催を目指してまいります。
 日本は、戦後六十年以上にわたり、他国との戦火を交えることも社会的な騒擾を起こすこともなく、徹底した平和を貫いてきました。その間、独自の技術革新を重ね、数多くの分野で人類の平和と繁栄に貢献してきた日本の姿は、私たちが考えている以上に国際社会で好感を持って受け入れられております。こうした日本の誇るべき点も含め、首都東京のさまざまな強み、特性をオリンピックに反映させていく必要があります。
 先月発表した基本方針で明らかにしたとおり、東京大会では、メーンスタジアムと選手村、プレスセンターの主要三施設を臨海部の都有地に集中的に配置いたします。用地を一切取得せず、かつ新たな埋め立ても行わずに、世界一コンパクトな大会を実現してまいります。
 また、近年のオリンピックでは環境が大きな柱に据えられておりまして、東京大会では、選手村など主要な施設のエネルギーを再生可能エネルギーで供給するなど、最先端の環境技術を駆使して、これまでのどの大会よりも環境最優先の大会としてまいります。
 日本の技術の底力は環境分野にとどまりません。ユビキタスやロボット、ITなど、日本が得意とする技術を大会運営や観光などに幅広く活用するため、先月から、専門家の英知を集め、検討を開始いたしました。
 オリンピックを舞台に肉体の限界に挑戦するアスリートたちの姿は、私たち大人のみならず、子どもたちにも、国家、民族の枠を超えた一個の人間としての輝きを見せてくれます。スポーツがもたらす純粋な感動や全身全霊を込めてスポーツに打ち込む喜びを次代を担う青少年が体験できるよう、大会後、オリンピックの関連施設を、アジアを初め世界各国の青少年のために積極的に開放してまいります。
 今後、八月末の国内選考、さらには世界の強豪都市との戦いを勝ち抜き、都市文明の英知と日本のわざが結集したオリンピックを東京で実現したいと思っております。来年二月に開催する東京大マラソン祭りを五輪のプレイベントとして位置づけ、全庁を挙げて取り組むとともに、オリンピックの三年前に予定されております多摩・島しょ地区を中心に行う東京国体を成功させ、オリンピックに向けた機運を段階的、継続的に盛り上げていきたいと思います。都議会の皆様、都民の皆様のご支持、ご協力を切望いたします。
 二〇一六年のオリンピック開催に向け、今後、十年後の将来を見据えた東京の都市像を明らかにするとともに、東京をさらに機能的で魅力的な都市につくりかえていく必要があります。
 中でも最優先で取り組むべきは、首都圏全体をにらんだ環状道路のネットワークの整備であります。
 先週、環状第八号線の最後の工事区間約四キロメートルが完成し、全線が開通いたしました。環状道路の開通は、昭和六十年の環状第七号線以来二十一年ぶりであり、完成区間の混雑時の通行時間が約半分に短縮されるほか、周辺の交通渋滞の緩和にも大いに貢献いたします。
 環状道路の整備が、東京のさらなる発展はいうに及ばず、日本全体のダイナミズムの発揮のために必要不可欠であることは、だれの目にも明らかであります。特に首都圏を結ぶ三環状道路は、膨大な経済効果はもとより、東京都全域への植林と同程度のCO2削減効果をもたらすなど、環境対策としても重要な役割を担っております。
 にもかかわらず、外環道の整備が三十年以上凍結されていたことは不可解としかいいようがありません。五年前、当時の扇国土交通大臣とともに現地を視察し、さびついた時計の針を動かし始めました。以後、地元との意見交換を約三百回以上実施するなど、整備再開に向けた取り組みを積み重ね、先週、大深度地下方式への都市計画変更に着手いたしました。
 今後、圏央道や中央環状品川線の整備とあわせ、早期完成に向け、国を動かし、事業を前進させてまいります。
 空のアクセスの充実も不可欠であります。
 先月、日米両政府は米軍再編成に関する行程表を発表し、その中で、横田基地の軍民共用化について、具体的な条件や態様の検討を十二カ月以内に終了することで合意いたしました。これにより、共用化が名実ともに実務的な段階に入ったことが日米共通の認識となったのであります。
 都は、実現に向けた動きを加速させるため、先月、首都大学東京と連携し、具体化のための検討組織を立ち上げるとともに、先般開かれた国と都の連絡会議において、直ちに日米の実務的な協議を開始し、一刻も早く結論を出すよう、国に強く申し入れました。
 羽田空港の再拡張・国際化も具体的な整備の段階に入っておりまして、一連の動きを重層的に進めることで、首都圏の航空事情が一気に改善されると期待しております。
 次に、オリンピックの主要な舞台となる臨海地域についてであります。
 東京港の国際競争力を向上させ、臨海地域のエリアマネジメント機能をさらに強化するため、この地域を活動基盤とする団体を監理団体改革の一環として経営統合し、持ち株会社を設立いたします。当面、ゆりかもめや東京ビッグサイトなどのほか、民営化する東京港埠頭公社を順次傘下におさめるとともに、先般、民事再生の申し立てを行った第三セクター三社については、統合した上で子会社化する予定であります。こうした取り組みがオリンピックの運営にも大きな効果をもたらすものと考えております。
 オリンピックの開催をにらみ、東京のまちを観光の視点から見直していく必要があります。
 東京には近代化の過程で生み出された風格のある建築物が数多く残っておりまして、貴重な観光資源にもなっております。こうした建物を中心に、周辺の眺望を一体的に保全するための新しい仕組みを創設いたしました。国会議事堂や迎賓館などを対象に、今後周辺で計画される建築物の高さや色彩などを規制、誘導し、美しく魅力あふれる景観を次代に引き継いでいきたいと思っております。
 あわせて、民有地を活用した民設公園や建物の屋上、壁面緑化など、民間がみずから緑を守りふやす仕組みを整え、緑豊かで潤いのある街並みを形成していきたいと思います。
 また、東京の鉄道網は、稠密に配置された駅の数では世界一を誇りますが、案内板や乗りかえルートがわかりづらいなど、利便性の面で改善の余地を残しております。都営地下鉄の案内板をホーム中央に統一的に設置するとともに、デザインについて東京メトロとの共通化を図るなど、より一層利用者の立場に立ったわかりやすいサインの整備を推進いたします。第一回の東京大マラソンが開催される来年二月までに都心部の駅で集中的に整備を進め、来年度以降、その他の駅においても順次実施してまいります。
 駅に限らず、まち全体の案内サインを観光の視点から総合的に検討するため、先月、全庁的な推進会議を立ち上げました。今後、東京を初めて訪れた人でもわかりやすいまちづくりを積極的に進めていきたいと思います。
 都はこれまで、ディーゼル車排出ガス規制だけではなく、先駆的な地球温暖化対策や全国初の屋上緑化の義務化など、我が国の環境政策を先導してまいりました。十年後のオリンピック開催を見据え、東京をさらに快適で安心して住み続けることのできる都市としていくために、環境基本計画を改定いたします。
 世界の大都市で最もきれいな大気環境の実現を目指し、最新鋭の環境対応車の普及や自動車交通量の総合的な抑制策などに取り組むとともに、世界最高水準の温暖化対策として、より厳しいCO2の排出抑制や再生可能エネルギーの飛躍的な利用拡大など、新たな方策を検討してまいります。
 二〇一六年の東京五輪では、選手たちが東京の澄んだ空気の中で最高のパフォーマンスを繰り広げることのできるようにしたいと思います。
 この春、産業技術研究所を全国で初めて地方独立行政法人化いたしました。平成二十三年度までに江東区青海地区に移転した上、区部の産業支援拠点を統合し、高度先端技術やデザイン分野等の支援機能を強化するとともに、多摩地域の拠点についても再編整備をいたします。大学や国などの研究機関とともに連携を図りながら、中小企業を技術、経営の両面からサポートしてまいります。
 日本の技術の生命線であるものづくりを再生するため、この四月、二つの教育機関を新たに開設いたしました。新しい産業技術高等専門学校では、本科五年の上に大学の三、四年に相当する専攻科を設け、ロボット工学や航空宇宙工学など、将来有望な分野のスペシャリストを養成してまいります。
 さらに、同じく新設した産業技術大学院大学への進学の道を確保することにより、ものづくり人材を九年間一貫して養成するシステムを全国で初めて構築いたしました。今後、高等専門学校や大学院大学を活用しながら、未来の日本を支える技術者を育ててまいりたいと思います。
 また、若者の社会的な自立を促すため、就労に向けた基礎訓練などを提供する支援プログラムや、若者が活動主体となるNPOからの企画、提案に対する助成制度を創設するとともに、来月、就業に関するあらゆる相談に対応する若者しごとホットラインを開設いたします。
 ことしは例年に比べて花粉の飛散量が少なかったとはいえ、花粉症はもはや一種の国民病であり、このまま放置すれば取り返しのつかない損失を国全体に及ぼしかねません。
 都は、この春から、本格的な発生源対策に取り組むため、花粉の少ない森づくり運動を開始いたしました。花粉症の撲滅には、息の長い継続した取り組みが不可欠であります。杉の伐採と花粉の少ない品種の植栽のため、千五百円で一本の杉を植えかえるスリーコイン・ワンツリー募金を始めるなど、都民の皆様と協力して、有効な手だてを多角的、重層的に講じてまいります。
 ことし三月、大江戸線都庁前駅で倒れた男性を、駅職員がAED、自動体外式除細動器を使って救助し、一命を取りとめることができました。心臓発作など体の異変は時と場所を選びません。来月までに都営地下鉄の全駅に設置するとともに、都バスの全営業所などにも八月中に配備いたします。
 既に、都庁や区市町村の本庁舎を初め、美術館や動物園など人が多く集まる場所に設置したほか、機械操作や応急手当ての講習にも積極的に取り組んでおります。今後とも、都民の不測の事態に万全を期してまいります。
 都民の四人に一人が高齢者という超高齢社会が十年後に迫っております。そのうちのおよそ一割の方々が何らかの認知症の症状を持つと推測されており、認知症高齢者対策は喫緊の課題であります。
 認知症高齢者を地域で支える対策を総合的に検討するため、支援の担い手である都民を初め、専門家や小売店、飲食店などの生活関連企業、公共交通機関など、高齢者の日常にかかわる関係機関が一堂に会する連絡会議を来月発足いたします。今後とも関係機関と連携を図り、高齢者が尊厳を保ち地域で自立して暮らせる社会の実現を目指してまいります。
 生徒一人一人の力を伸ばす都立高校改革が着実に成果を上げつつあります。五年前に初めて進学指導重点校に指定した日比谷高校など四校では、この春、難関国公立大学への現役合格者が指定前と比べて五割以上増加するなど、高い実績を上げてきました。
 生徒の力を引き出すには、教師個々人の力量はもとより、学校ごとの特色ある取り組みが不可欠であります。四月、中堅教師が若手に指導の技術を伝授する東京教師道場を開設するとともに、都内六カ所に学校経営支援センターとその支所を設置し、校長がリーダーシップを発揮して、より自律的な学校経営を行えるよう、機動的、総合的に支援してまいります。
 昨今の子どもたちに見られる行動や精神の乱れは、生活規範そのものの乱れにほかなりません。小さいころから朝食をろくにとらず、また、家族が食卓を囲んでの団らんをほとんど経験しないなど、ゆがんだ食習慣が蔓延しております。
 都は現在、子ども応援協議会を中心に、子どもの生活習慣の改善や青少年の心と体の健全育成に取り組んでおります。今後さらに食を通じての家族の大切さや自然への理解を深めるため、農業や食品加工、流通における現場体験を促進するなど、大都市の特性を生かした食育推進計画を策定し、食の持つ多様な機能を、家庭はもとより、学校や地域全体で取り戻す契機としていきたいと思います。
 区部と並び東京の活力を担う多摩地域は、時代の先端を行く企業や大学、研究機関などが数多く集積し、東京全体の一割強の工場で五割を超える製造品出荷額を産出するなど、東京の産業活性化に大きな役割を果たしております。今後、圏央道などのインフラ整備が進めば、そのポテンシャルがさらに高まるものと大いに期待しております。
 多摩地域の産業を支える中小企業を技術、経営の両面から支援するため、都立短大の跡地に、産学公交流センターの機能も含めた本格的な支援拠点を平成二十一年度を目途に再編整備いたします。産業特性に対応し、エレクトロニクスや情報通信の技術分野への支援を強化するなど、多摩の産業振興を一層推進してまいります。
 ロンドン視察の折に、アイリッシュ海に浮かぶマン島に立ち寄ってまいりました。淡路島ほどの面積の人口八万に満たないこの島は、百年前から続く公道を使った国際的オートバイレースで世界的に大変に有名であります。民家のすぐわきの公道を二百キロを超えるスピードで疾走するオートバイの迫力に圧倒されるとともに、住民の皆さん一人一人がモータースポーツを心から愛し、レースを島全体で盛り立てるさまを間近に見聞することができました。
 一時は観光客の低迷に悩んだマン島は、レースだけではなく、IT産業の誘致など独自の産業振興策により、今では一人当たりの国内総生産がイギリスを上回るに至っております。こうした先駆的な取り組みから東京の島々も大いに学ぶべきであり、同行した三宅、八丈の両島の首長さんも同じ思いであったと思います。
 今後、オートバイレースを観光の起爆剤に据え、島の皆様が一致協力して実現に向けた具体的な第一歩を踏み出すことを期待しております。都としても、地元の創意工夫を生かした島の新たな発展を積極的に支援してまいります。
 都はこれまで、アジア大都市ネットワークの活動を通じて、新興感染症対策のネットワークの構築や中小型ジェット機の開発促進など、国境を越えた都市連携の有効性を証明するとともに、国内では、八都県市を中心に首都圏FEMAを創設し、広域的な危機管理体制を整えるなど、国全体を見据えた施策を積極的に展開してまいりました。
 また、この四月から、全国に先駆けて複式簿記・発生主義の新しい公会計制度をスタートさせました。先般の八都県市首脳会議などでも、日本のスタンダードを目指し連携して取り組んでいくことを確認しましたが、これも、国家的なむだを省き、日本を変えるための取り組みの一つであります。
 他方、国は、日本全体の利益を考え、この国のグランドデザインを真剣に描こうとしているとは到底思えません。国が来月にもまとめる骨太の方針なるものでは、最大のテーマである我が国の歳出削減に絡めて、地方財政の圧縮が俎上に上がっております。中でも、最近とみに高まっているのが、東京の財源を地方に回し歳出削減に結びつけようとする考え方であり、背後には、税収の大きさや増加だけで一面的に物をとらえての、相も変わらぬ東京富裕論が見え隠れしております。
 しかし、先月明らかにした反論の書で示したとおり、東京の税収を地方へ再分配しようとするのは合理性を全く欠いた暴論であり、法人二税の配分基準の見直しに至っては、課税権の侵害以外の何物でもありません。政府の議論をひもとくと、都税は年間最大で一兆二千億円の減収に見舞われると危惧されますが、東京には、渋滞解消や犯罪対策など膨大な財政需要があります。また、羽田空港の再拡張や三環状道路の整備は、国全体の利益に直結する事業にほかなりません。
 こうした文明工学的な見識を欠いたまま、やみくもに東京の財源をねらい撃ちしようとする動きに対しては、組織の総力を挙げて、また、都議会の皆様とスクラムを組んで、断固反対の姿勢を貫いてまいります。
 現在、国では道州制の検討が進められていますが、国と地方の役割分担を何ら議論することなく、上辺だけで区割り論に終始しております。都では、地方自治のあるべき姿を見据え、東京発自治論の議論を進めており、都と区の関係についても大きな視点に立って見直す必要があります。これまでの発想にとらわれずに、東京の力が日本全体の発展を大きく左右するという共通認識を持って、都と区の新しい関係を構築するため、先週、新たな検討の場を都区共同で設置し、今後、根本的で発展的な議論を進めてまいります。
 真の地方自治の確立を目指し、都議会の皆様と力を合わせて取り組んでいきたいと思います。
 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例案二十三件、契約案三件など、合わせて三十一件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。
 以上をもちまして所信表明を終わります。ありがとうございました。(拍手)

○議長(川島忠一君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○六十七番(秋田一郎君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日は、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更し、追加日程第一及び第二を先議されることを望みます。

○議長(川島忠一君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君) ご異議なしと認めます。よって、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更し、追加日程第一及び第二を先議することに決定いたしました。

○議長(川島忠一君) 追加日程第一、議員提出議案第十号、地方税財政制度の確立に関する意見書を議題といたします。
 案文は、お手元に配布いたしてあります。
 朗読は省略いたします。

議員提出議案第十号
   地方税財政制度の確立に関する意見書
 右の議案を別紙のとおり東京都議会会議規則第十二条の規定により提出します。
  平成十八年六月六日
(提出者)
河野百合恵 小竹ひろ子 たぞえ民夫
村松みえ子 かち佳代子 植木こうじ
清水ひで子 古館 和憲 松村 友昭
曽根はじめ 大山とも子 吉田 信夫
渡辺 康信
東京都議会議長 川島忠一殿

地方税財政制度の確立に関する意見書
 国は、地方行財政の改革を柱の一つに掲げた、「歳出・歳入一体改革」を、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」に盛り込むとして、検討を進めている。
 既に国は、「三位一体改革」で、概ね三兆円の税源移譲と引換えに四兆円規模の補助金や地方交付税の削減を行い、地方財政に甚大な影響を及ぼしてきた。加えて、新たな歳出削減が行われることになれば、地方自治体の行財政を圧迫し、国民生活に深刻な被害をもたらすことは明白である。
 今日、地方財政の困難の原因は、住民のための仕事を地方が六割も受け持っているのに対し、そのための財源が四割しか保障されていないことにある。したがって、今、行うべきことは、このような逆転を解消し、地方自治体が自主的・自立的に行財政運営を行うための権限移譲とそれを裏付ける税財源の移譲を一体的に進めることである。また、憲法が保障する国民の生存権、基本的人権にかかわるナショナル・ミニマムを財政的に保障することが、国の責務であることも論をまたない。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、次の事項を実現するよう強く要請する。
一 抜本的な税財源の移譲を進め、国と地方自治体間の仕事量と財源の逆転の解消に努めること。
二 福祉・教育などの国庫補助負担金制度の基本及び地方交付税の財源保障機能を堅持すること。
三 削減した補助金や地方交付税に見合う税財源の移譲を行うこと。
四 国の減税策に対応する地方特例交付金は継続し、減収に見合う財源補てんを行うこと。
 以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
  平成十八年六月六日
東京都議会議長 川島忠一
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣
経済産業大臣
経済財政政策担当大臣 あて

○議長(川島忠一君) 本案は、起立により採決いたします。
 本案は、原案のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

○議長(川島忠一君) 起立少数と認めます。よって、本案は否決されました。

○議長(川島忠一君) 追加日程第二、議員提出議案第十一号、国・地方を通じた税財政制度の見直しに関する意見書を議題といたします。
 案文は、お手元に配布いたしてあります。
 朗読は省略いたします。

議員提出議案第十一号
国・地方を通じた税財政制度の見直しに関する意見書
 右の議案を別紙のとおり東京都議会会議規則第十二条の規定により提出します。
  平成十八年六月六日
(提出者)
遠藤 守    伊藤 興一  田中たけし
鈴木 隆道   宇田川聡史  そなえ邦彦
伊藤 ゆう   原田 大   松葉多美子
大松 成    中山 信行  高倉 良生
早坂 義弘   高木 けい  崎山 知尚
坂本たけし   石森たかゆき 高橋 信博
村上 英子   鈴木あきまさ 佐藤 広典
尾崎 大介   山口 拓   伊藤まさき
松下 玲子   橘  正剛  上野 和彦
吉倉 正美   谷村 孝彦  矢島 千秋
高橋かずみ   山加 朱美  串田 克巳
吉原 修    山田 忠昭  臼井  孝
野島 善司   服部ゆくお  野上ゆきえ
西岡真一郎   吉田康一郎  斉藤あつし
泉谷つよし   くまき美奈子 大西さとる
長橋 桂一   野上 純子  東村 邦浩
小磯 善彦   東野 秀平  松原 忠義
田代ひろし   神林 茂   秋田 一郎
林田 武    きたしろ勝彦 近藤やよい
高島なおき   鈴木 一光  増子 博樹
いのつめまさみ 門脇ふみよし 小沢 昌也
石毛しげる   岡崎 幸夫  山下 太郎
藤井 一    ともとし春久 木内 良明
鈴木貫太郎   こいそ 明  遠藤  衛
倉林 辰雄   川井しげお  三宅 茂樹
樺山たかし   宮崎 章   古賀 俊昭
立石 晴康   桜井 武   初鹿 明博
酒井 大史   花輪ともふみ 大沢  昇
大津 浩子   大塚たかあき 馬場 裕子
石川 芳昭   中嶋 義雄  石井 義修
桜井良之助   比留間敏夫  吉野 利明
新藤 義彦   野村 有信  大西 英男
山崎 孝明   佐藤 裕彦  川島 忠一
内田 茂    三田 敏哉  相川  博
柿沢 未途   中村 明彦  土屋たかゆき
田中 良    名取 憲彦
東京都議会議長 川島忠一殿

国・地方を通じた税財政制度の見直しに関する意見書
 政府が近く策定する「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」では、我が国の歳出削減に向けた具体策を明らかにすることが最大の課題であり、地方交付税を中心とする地方財政の圧縮も焦点の一つとなっている。
 その中で、いわゆる「東京富裕論」を背景に、東京の財源を吸い上げ、地方に再配分することで、最終的に国の歳出削減に結び付けるという動きが浮上している。
 これまで東京は、日本の「機関車」として成長の原動力となってきた。合理的な理由なく、東京の財源が吸い上げられれば、東京の活力が削がれるばかりでなく、我が国全体の活性化にも悪影響を及ぼすことが強く懸念される。
 国家としての長期的な戦略もなく、ましてや国の責任を、いち早く財政再建に取り組んできた都に押し付けるような見直しは、到底、容認できるものではない。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、東京都に対する不合理な税財政制度の見直しを行うことのないよう強く要請する。
 以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
  平成十八年六月六日
東京都議会議長 川島忠一
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣
経済産業大臣
経済財政政策担当大臣 あて

○議長(川島忠一君) 本案は、起立により採決いたします。
 本案は、原案のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

○議長(川島忠一君) 起立多数と認めます。よって、本案は、原案のとおり可決されました。

○六十七番(秋田一郎君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明七日から十二日まで六日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(川島忠一君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明七日から十二日まで六日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、六月十三日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後一時三十三分散会


文書質問趣意書及び答弁書

一八財主議第五〇号
平成十八年五月二十九日
         東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 川島忠一殿
   文書質問に対する答弁書の送付について
 平成十八年第一回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。
     記
   そなえ邦彦議員
   河野百合恵議員
   小竹ひろ子議員
   高橋かずみ議員
   古館和憲議員
   松村友昭議員
   大山とも子議員
   田中良議員

平成18年第一回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  そなえ邦彦

質問事項
 一 これからの高齢者福祉(特に介護予防)について
 二 動物(犬、猫)の保護について

 一 これからの高齢者福祉(特に介護予防)について
   人生、80歳から85歳にならんとする現代において、年金、医療、介護保険も必ずしも十分でない今日、高齢者(65歳以上)の人口比率は、現在19.5%で、10年後には4人に一人、35年後には3人に一人が高齢者という時代を迎えると予想されております。
   都も厳しい財政の中で、福祉面にウエイトを置いておりますが、これからは、介護保険もそうですが、介護予防にいかに重点を置くかに視点を置くべきだと考えます。認知症、寝たきり高齢者にさせない施策に方向転換すべき時だと思います。
   そこで、これからの高齢者福祉、特に介護予防に関連して、何点かお伺いいたします。
  1 介護保険対象外の高齢者に対する市町村の高齢者福祉サービス事業に対する補助の実態は、どうなっていますか。
  2 地域では老人クラブが核となって、行政でカバー出来ない様々な催しを行っておりますが、老人クラブ運営補助金の実態と、今後増額の考えは無いか、お伺い致します。
  3 府中市では「シルバー人材センター」と言う地域の高齢者就業の活動拠点があります。会員も1,680人居り、生き生きと働き、社会に貢献しております。そこで、これらの団体に対する補助金の実態及び見直しについてお伺い致します。
  4 地域で暮らす高齢者の介護予防につなげる為の食事や運動などの、生活習慣について助言したりする「介護予防サポーター」的なもの又は、自主的なボランティア組織の育成が必要だと考えるが、それらに対する支援はどうなっていますか。
  5 府中市では、3月に介護予防推進事業や地域デイサービスを、国に先駆けて実施をするために「介護予防推進センター」を設立させました。都としての補助の実態と、今後この種の施設への財政的支援はどうなりますか。
 二 動物(犬、猫)の保護について
   都では、動物愛護精神の高揚のため「東京都動物愛護及び管理に関する条例」を制定しております。しかし近年、動物を飼っている人のモラルの低下、住居事情等により、動物を手放さざるを得ない人が増えている状況もあると思います。それらの動物を引き取って、ただ、殺処分するのではなく、動物愛護の観点から共生していく必要があるのではないでしょうか。
   そこで、いくつかの点についてお伺い致します。
  1 都内のそれぞれの動物愛護センターで引き受けた、犬、猫、それぞれ年間どれくらいの件数か伺います。
  2 それらの動物は、どのように処置されているのか、伺います。
  3 引き取られて行く件数はどれくらいか、伺います。
  4 都民に引き取ってもらう為に、どの様な努力がなされているか、伺います。
  5 環境省が、インターネットを使った「仲介」を始めるという事であります。犬や猫の写真や性格などをネットに登録、情報を見て、好きな動物を引き取ってもらう仕組みであります。
    都では、この様な譲渡情報の公開をどう検討されているのか、伺います。
  6 府中市で、猫の避妊、去勢手術に(過去には犬にも)助成金を出しているが、都ではどうですか。

平成18年第一回都議会定例会
そなえ邦彦議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 これからの高齢者福祉(特に介護予防)について
  1 介護保険対象外の高齢者に対する市町村の高齢者福祉サービス事業に対する補助の実態を伺う。

回答
  介護保険対象外の高齢者福祉サービスについては、これまで「介護予防・地域支え合い事業」により、区市町村に対し補助を行ってきました。
  介護保険制度改正により、平成18年度からは、新たに「地域支援事業」が創設され、介護予防事業や介護家族支援事業、地域での自立生活を支援する事業などについては、「地域支援事業交付金」により区市町村を支援していくことになりました。
  また、区市町村が地域の実情に応じて独自に実施する各種の福祉サービスについては、引き続き「福祉改革推進事業」により支援していきます。

質問事項
 一の2 地域では老人クラブが核となり、行政でカバー出来ない様々な催しを行っている。老人クラブ運営補助金の実態と、今後増額の考えは無いか伺う。

回答
  老人クラブは、地域の高齢者が老後の生活を健全で明るいものにするため、自主的に組織し活動しているもので、いきがい活動や健康づくり活動、ボランティア活動を行っています。
  これらの活動に対し、都は区市町村を通じて補助を行っていますが、既に国基準を大幅に上回る財政措置を講じており、現時点で増額することは考えていません。

質問事項
 一の3 シルバー人材センターに対する補助金の実態及び見直しについて伺う。

回答
  東京都では、身近な地域での高齢者就業機会の確保・提供を推進するため、シルバー人材センター事業の育成・援助を行っています。
  現在、区市町村ごとに設置されている58のシルバー人材センターに対し、区市町村を通じて管理運営費と事業費の一部を補助しており、平成17年度は、総額約7億円の交付を決定しています。
  このうち事業費補助については、組織規模に応じた従来の交付方法を見直し、平成16年度から、各シルバー人材センター自らが提案し、就業分野の拡大等につながる、自主的かつ意欲的な事業を補助する制度としており、平成17年度は29件の取組に対して補助を行っています。
  都としては、引き続きシルバー人材センター事業を支援していきます。

質問事項
 一の4 高齢者に対し、生活習慣について助言したりする介護予防サポーター的なもの、又は、自主的なボランティア組織を育成すべきだが、それらに対する支援はどうなっているか伺う。

回答
  都は、これまで講演会や「介護予防読本」の作成などにより、介護予防の普及・啓発に努めてきました。
  平成18年度からは、区市町村が「地域支援事業」の一環として、介護予防に関するボランティア等の養成や地域の活動組織の育成・支援について、地域の実情に応じて実施することになります。
  そのため、「介護予防区市町村サポートセンター」を設置し、東京都老人総合研究所に蓄積されたノウハウの活用による技術的な支援を行うとともに、自主的なボランティア活動の啓発などにより、介護予防の取組を支援していきます。

質問事項
 一の5 府中市は、3月に介護予防推進事業や地域デイサービスを実施するため、介護予防推進センターを設立した。都としての補助の実態と、今後この種の施設への財政的支援はどうなるか伺う。

回答
  都は、府中市の介護予防推進センターの設置に当たり、その整備費について「福祉改革推進事業」により補助を実施しました。
  平成18年度以降も、こうした介護予防拠点の整備については、「福祉改革推進事業」の選択事業の一つとして引き続き支援していきます。
  さらに、これらの拠点において区市町村が実施する介護予防事業についても「地域支援事業交付金」により支援していきます。

質問事項
 二 動物(犬、猫)の保護について
  1 都内のそれぞれの動物愛護センターで引き受けた、犬、猫、それぞれ年間どれくらいの件数か伺う。

回答
  都では、狂犬病予防法、動物の愛護及び管理に関する法律、東京都動物の愛護及び管理に関する条例により、飼い主や拾得者からの犬・猫の引取り、放し飼いの犬の捕獲、負傷動物の収容を行っています。
  平成16年度の取扱い数は、犬3,174頭、猫8,689頭です。
  その内訳は、動物愛護相談センターでは、犬1,337頭、猫5,314頭、動物愛護相談センター多摩支所では、犬1,837頭、猫3,375頭です。

質問事項
 二の2 それらの動物は、どのように処置されているのか伺う。

回答
  動物愛護相談センターが取り扱った犬・猫は、飼い主が見つかった場合は返還し、見つからなかった場合は、飼養希望者に対して譲渡を行います。高齢や疾病、離乳前で飼養管理が不可能であることなどにより譲渡できなかった場合は、致死処分となります。

質問事項
 二の3 引き取られていく件数はどれくらいか伺う。

回答
  平成16年度の実績では、飼い主へ返還したものは、犬1,949頭、猫14頭で、飼養希望者に譲渡を行ったものは、犬486頭、猫172頭です。

質問事項
 二の4 都民に引き取ってもらう為に、どのような努力がなされているか伺う。

回答
  飼い主のわからない動物については、動物愛護相談センターで7日間飼養管理します。その間、飼い主を探すため、区市町村が収容等の日時、場所、動物の特徴などを公示するとともに、東京都ホームページの収容動物情報に動物の写真や特徴を掲載して、飼い主への返還に努めています。
  飼い主が見つからなかった場合は、新たな飼い主を探します。その際、譲渡希望者に対し、事前に、動物の習性、しつけや関連法令等に関する講習会を実施し、譲渡対象者として登録しています。
  また、ボランティア団体とも連携し、新たな飼い主探しに努めています。

質問事項
 二の5 環境省が、犬や猫の写真や性格などをインターネットに登録し、好きな動物を引き取ってもらう「仲介」を始める。都ではこのような譲渡情報の公開をどう検討しているのか伺う。

回答
  環境省は飼い主発見及び譲渡を推進するため、都道府県で引取り又は収容された犬・猫等の情報について、平成18年4月からホームページで「迷子動物検索」・「譲渡動物検索」システムの運用を始めました。
  「迷子動物検索」システムについては、東京都ホームページの収容動物情報を提供することにより、開始時から参加しています。
  譲渡は、事前に講習会を受講した譲渡対象者が、直接、動物を確認した上で実施しているため、「譲渡動物検索」システムについては、今後の運用状況を見守っていきます。

質問事項
 二の6 府中市は、猫の避妊、去勢手術に(過去には犬にも)助成金を出しているが、都ではどうか伺う。

回答
  都は、飼い猫の不妊、去勢手術については、飼い主の責任として、パンフレットや講習会などにより、普及啓発に努めています。
  また、飼い主のいない猫の不妊、去勢手術については、地域で主体的に取り組めるよう、地域での取組事例を紹介したガイドブックを作成し、普及啓発に努めるとともに、区市町村と連携して、専門的・技術的な支援を実施しています。

平成18年第一回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  河野百合恵

質問事項
 一 不妊治療の充実について

 一 不妊治療の充実について
   東京都の合計特殊出生率は、2003年度に0.9987人と過去最低を記録しました。2004年度は、1.01人とわずかに増加しましたが、全国最低という憂うべき状況がつづいています。2005年4月に策定された「次世代育成支援東京都行動計画」には、「東京についてみると、全国より2年ほど早く、平成7年に高齢人口が年少人口を上回りました。東京は全国に先駆けて少子・高齢社会を迎えたといえます。」と記されています。少子化は、社会保障や社会構造にも影響することから、国をあげての対策を強めることが急がれると同時に東京都独自の対策も喫緊の課題です。
   これまでも少子化克服のために必要な種々の子育て支援策が求められてきました。その一つに不妊治療充実の強い要望があります。
   子どもの出生を望んでも願いがかなわない人たちは、「子どもを産むことが少子化克服の大事な問題なのだから、不妊治療対策にも力を入れてほしい」と切実に訴えています。
   こうした要望の高まりのなかで、国が2004年度から体外受精や顕微授精を対象にした「特定不妊治療費助成事業」をスタートさせ、東京都も国の事業に合わせて不妊治療対策を実施し、2004年度は、約2億円の予算が執行され、2000件余の申請を受けています。
   2005年度、国は、「母子保健医療対策等総合支援事業」として、不妊治療に対する支援事業を盛り込み、都は約4億円を予算化しました。また、国は、2006年度から、これまで2年間だった助成期間を5年に延期するなどの改善も予定しており、少しずつ、不妊治療対策が若い世代の人たちの声を受け止める方向で改善されてきています。
   しかしながら、不妊治療対策は、まだ不十分な問題が多く残されており、更なる改善が必要です。希望するする人たちが安心して受けられる不妊治療制度になることを求め、以下、質問します。
  1 不妊治療は、多額の費用がかかります。経済的なことが原因で、せっかく始めた治療を途中で諦めざるを得ない人が少なくありません。不妊治療が保険適用になれば、経済的な負担は軽くなります。現在、特定不妊治療費助成事業の対象である体外受精や顕微授精は保険が適用されません。これらの治療が保険適用になるよう、都として国に積極的に求めていただきたいと考えます。ご見解をお示しください。
  2 現在の制度は、1年度あたり上限10万円の助成です。医療機関によって、いくらかの違いはあるものの不妊治療代は高額で、特定不妊治療は平均40万から50万円位かかり、場合によっては70万円余ということもあります。子どもをほしい人は、何年間も治療を受け続けますから、経済的負担は、想像以上に重いものがあります。
    練馬区は、経済負担軽減のために2006年度から1年度あたり5万円の助成を実施、品川区も同じように3万円の助成を実施する方針を明らかにしています。また、大分市は、国の制度の2倍の20万円を助成しています。せっかく治療を決意したのに、経済的理由で諦めてしまう、こうした人を少しでも少なくするために、都も独自に助成額の引き上げを検討すべきではないでしょうか。お答えください。
  3 品川区は、2006年度から区独自の助成制度創設を予定しています。保険が適用になるタイミング法や排卵誘発法、また、保険適用外の人工授精の自己負担分の2分の1、を助成するという制度です。大分県は、九州で合計特殊出生率が下から2番目ということを重く受けとめ、「次世代育成支援行動計画」の「おおいた子ども・子育て応援プラン」に不妊治療対策を明記し、人工授精や男性不妊への助成を行なっています。
    東京都は、全国一の少子化進行という問題を抱えているのですから、国の制度よりも施策を充実させているこうした先駆的な自治体に学ぶべきではないでしょうか。
    国の特定不妊治療で定められている体外受精、顕微授精にとどまらず、助成対象を拡大することを求めるものですが、いかがですか。
  4 現行の制度は、前年の夫婦合算所得が650万との所得制限があります。全国的には、大分県、富山県などでは所得制限を設けていません。国よりも早く平成15年に助成を実施した富山県では、半年間で299組の申請があり、所得制限をなくしたことで利用者が増える傾向を示したことが報道されています。東京都も所得制限をなくすなど、できるだけ多くの人が利用できるようにすることが必要と考えます。所得制限の撤廃、あるいは緩和についてお考えをお示しください。
  5 不妊治療費助成を受けるには、多くの書類を提出しなくてはなりません。手続が難しいとの声が出ています。助成申請書、指定医療機関の受診等証明書、婚姻関係を証明するもの、夫婦それぞれの前年所得の証明書、住民票、医療機関発行の領収書等等、などが必要とされ、この煩雑さを改善してもらいたい、と要望されています。申請書類は必要最小限のものに見直すなどのことを検討していただくよう求めます。答弁をお願いします。
  6 私の知人は、江戸川区に住んでいますが、千葉県市川市の医療機関で治療を受けています。しかし、千葉県で治療を受けても都内に住所があれば助成を受けられることを知らなかったそうです。都が実施している不妊治療費助成事業のPRをもっと積極的に行なうべきではないでしょうか。
    また、江戸川区には、都指定の医療機関がありません。不妊治療は麻酔をかけるなど、身体的にも大きな負担がかかります。治療を身近なところで受けられるよう指定医療機関を増やしてほしい、との要望があります。医療の水準を十分に確保することに努めながら、都は指定医療機関を増やすことを求める都民要望に積極的に応えるべきと考えます。合わせて、ご見解をお聞かせください。
  7 不妊治療は羞恥心や苦痛を伴い、精神的にも身体的にも負担がかかります。ホルモン剤の影響で心身のバランスがとれなくなる場合もあります。治療が成功して妊娠した後も、出産までのフォロー体制が大切です。カウンセリング、相談窓口の設置など区市町村や医療機関と連携した取り組みを進めていただきたいと考えます。また、患者会などへの支援についても、検討する必要があると考えるものですが、お考えをお示しください。

平成18年第一回都議会定例会
河野百合恵議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 不妊治療の充実について
  1 現在、特定不妊治療費助成事業の対象である体外受精や顕微授精は保険が適用されない。これらの治療が保険適用になるよう、都として国に求めるべきだが、見解を伺う。

回答
  体外受精や顕微授精の医療保険適用については、平成17年第三回定例会で答弁したとおり、従来から大都市衛生主管局長会等を通じて国に要望しており、引き続き他の自治体と連携を図りながら働きかけていくこととしています。

質問事項
 一の2 現在の制度は年度あたり上限10万円の助成だが、不妊治療代は高額であり、経済的負担は重い。練馬区などでは助成を実施するが、都も独自に助成額の引き上げを検討すべきである。答弁を求める。

回答
  特定不妊治療費助成制度は、子どもを欲しいと望んでいるにもかかわらず恵まれない方々が不妊治療を行う場合に、その治療費の一部を助成する事業であり、平成16年度に国が開始したものです。
  都としては、単独の措置については、慎重に対応していくべきと考えています。

質問事項
 一の3 品川区や大分県では国制度よりも施策を充実させている。国の特定不妊治療で定められている体外受精、顕微授精にとどまらず、助成対象を拡大することを求めるが、いかがか。

回答
  不妊治療は、治療が長期間となる場合が多く、また、流産の確率や低出生体重児の出生頻度が高いなど、身体的、精神的負担や治療の安全性等について様々な意見があり、都単独の措置については慎重に対応していくべきと考えています。

質問事項
 一の4 大分県や富山県では所得制限を設けていない。都も所得制限をなくすなど、できるだけ多くの人が利用できるようにすべきだが、所得制限の撤廃、あるいは緩和について見解を伺う。

回答
  特定不妊治療費助成制度に関する都単独の措置については、慎重に対応していくべきと考えています。

質問事項
 一の5 不妊治療費助成を受けるには、多くの書類の提出が必要であり、手続きが難しい。申請書類は必要最低限のものに見直すなど検討すべきである。答弁を求める。

回答
  現行の提出書類は、助成の要件を確認するために必要最低限のものと考えています。

質問事項
 一の6 都が実施している不妊治療費助成事業のPRをもっと積極的に行うべきである。また、医療水準の確保に努めながら、指定医療機関を増やすべきである。合わせて見解を伺う。

回答
  特定不妊治療費助成制度の普及啓発については、区市町村、保健所、指定医療機関でのパンフレットの配布やホームページへの掲載などを通じて、不妊に悩む方々をはじめ、広く都民に対し積極的に取り組んでいます。
  また、助成の対象となる医療機関については、治療の安全性の確保に十分配慮しながら、一定の医療水準を満たす病院・診療所を指定し、その拡充に努めています。

質問事項
 一の7 不妊治療は精神的にも、身体的にも負担がかかる。カウンセリング、相談窓口の設置など区市町村や医療機関と連携した取組を進めるべきである。また患者会などへの支援も検討すべきだが、所見を伺う。

回答
  都は、平成8年度に設置した不妊ホットラインにおいて、不妊で悩んだ経験を持つカウンセラーが、不妊治療中の方をはじめ都民の不妊に関する悩みや不安に対し、電話相談に応じています。

平成18年第一回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  小竹ひろ子

質問事項
 一 がん対策と都立駒込病院の拡充について

 一 がん対策と都立駒込病院の拡充について
   わが国の死亡原因の第一位を占めているがんは、早期発見から終末期のターミナルケアにいたる一貫した体制の整備が必要であると考えます。
   私の所に最近相談に来られたAさんは、2002年末に都立大塚病院に入院、翌年手術腹膜のがんが摘出できずに手術を終わり、その後腸閉塞や後遺症で駒込病院に転院し治療を受け退院、その後入退院を繰り返し駒込病院で抗がん剤治療を行ってきました。そのため最近では副作用も強くなり、他の病気を併発、黄疸、胆管閉塞を起こし、手術し管を入れて点滴をしている状態で、即退院と言われたとの事です。
   看護に当たっているAさんの夫は「ここまでなる前に抗がん剤の副作用がひどくなったとき、医師からどうするかと聞かれ自分は中止して様子を見てほしいと言ったが、本人は治療をやめる不安から治療の継続を願い、治療をつづけたため、副作用が一層強まった。患者を色々な分野から総合的に診てアドバイスする体制にならないか」と訴えられていました。
   老夫婦二人のため看護の困難から入院の継続を求めましたが、治療の方法がないこと、ベットはもう次が決まっているとのことで退院せざるをえなくなったとのことです。
   緩和ケア病床として、聖路加と都立豊島病院を紹介され、家族が電話したところ、聖路加病院は5万円といわれ、とても払えないと思ったとのことです。もう一方の豊島病院も「1万6千円の部屋代を払うなら、2週間先に診察予約を入れます」といわれ、入院までの間なにかあったらと不安だったそうです。差額ベット代は年金生活では厳しいけれど、体には変えられないので豊島病院を選んだそうです。豊島病院も医療費1割負担と食費を合わせると一日2万円をこすので負担は大変だと訴えています。
   このようなケースはほかにも数多くあります。
   一人の患者を総合的に見てどういう治療をするのか、特に抗がん剤等の副作用がある場合どうするのがべーターなのか、患者の副作用が少ない治療はどうあるべきか等、集団で検討するチーム医療が求められているのではないでしょうか。
  1 駒込病院で、手術による外科治療、抗がん剤による治療、放射線治療などの集学的がん医療を推進すると同時に、全人的医療をめざした医師、看護師、臨床心理士、理学・作業・言語などの療法士(セラピスト)、医療ソーシャルワーカーなどによるチーム医療体制を充実する必要があると思いますが、見解を伺います。
  2 抗がん剤の効果的に組み合わせて使用することや、副作用を抑えることは、患者の治療を促進するとともに、QOL(生活の質)を高める上で重要です。都として、抗がん剤治療の専門医を育成し、駒込病院をはじめとした都立病院や公社病院に配置していくことを提案するものです。答弁を求めます。
  3 カテーテル挿入をはじめ医療機器を装着したような状態での退院は、患者・家族にとっては大きな不安、負担となります。平均在院日数短縮の経営指標を最優先にして早期退院をすすめるのでなく、患者・家族ひとり一人の実態に応じて、きめ細かい対応を行う必要があると思いますが、いかがですか。
  4 Aさんのように医療的処置を必要としながら、在宅に戻らなければならない場合、地域の医療機関との連携や訪問看護ステーション・介護事業所などとの連携による治療・処置の継続が求められています。こうした関係づくりをすすめる地域連携室のようなセクションが駒込病院に必要だと考えますがどうか伺います。
  5 がん患者には、診断・治療、医療者との関係、副作用や後遺症、再発や転移、病状悪化への不安など心の問題、生き方・生きがい、経済的負担、就労、家族との関係をはじめ、さまざまな相談支援が必要です。静岡県立静岡がんセンターは、こうした要望にこたえるため、「よろず相談」窓口を開設しています。この相談窓口は、専任の医療ソーシャルワーカー、看護師が配置されており、対面・電話、さらには出張による相談を行い、歓迎されています。駒込病院においても、患者・家族に対する相談支援体制を充実・強化することが求められていると思いますが、見解を伺います。
   豊島病院の緩和ケア病棟は大きな役割を果たしています。しかし、20床しかないうち10床は有料で、1万6千円の部屋代に治療費等合わせると最低でも2万円を越します。
   緩和ケアは診療報酬でも治療の性格から高い点数が認められています。静岡県立がんセンターは50床の緩和ケア病棟すべてを部屋代無料にするとしています。
  6 駒込病院に整備する緩和ケア病棟は、長期にわたる治療を要するがん患者の負担を減らすために、差額ベット料なしの無料の病床をできる限り増やしていただきたいと思いますがどうですか。
  7 民間病院もふくめ、東京におけるホスピス・緩和ケア病棟(病床)の増設が必要です。お答え下さい。
   私は広島県立病院の緩和ケア支援センターを視察してきました。ここには大きく二つの部門があり、一つは緩和ケア科を中心とした診療部門で、20床の緩和ケア病棟の運用と外来診療を通じ、地域との連携で緩和ケアを進めています。もう一つは緩和ケア支援室の部門です。この部門は在宅の緩和ケアを全県的に広げていくための拠点として、情報の収集・提供、総合相談、専門研修及び「デイホスピス・モデル事業」の地域連携支援事業を行っています。
   緩和ケアに関する国内外の情報を集め県内に発信、提供するとともに、相談事業では患者・家族はもちろんのこと医療機関等からの相談にも応えられる体制を敷いています。医師や看護師・福祉関係者等の専門研修で養成し、県内どこでも緩和ケアが受けられるようにする事業を計画的にやっています。
   地域連携事業では、デイホスピスと共に緩和ケアを推進している団体に専任スタッフによるアドバイザー派遣をするなど、いつでもどこでも誰もが緩和ケアサービスが受けられる「地域における緩和ケア・ネットワークづくり」を目的に活動しています。
   私が、特に驚いたのはデイホスピスです。在宅医療をしているがん患者にとってデイホスピスは生きる支えになっており、デイホスピスに参加することで、専門家から定期的にアドバイスやマッサージなどを受け不安や苦痛をやわらげ、できるだけ長く在宅医療できる支援がなされていることを知りました。家に引きこもっていた患者がデイホスピスに参加して、自分一人でなかったと同じ仲間と経験を交流、専門家のアドバイスを受けたりする中で楽しみながら、自分の身体的機能を維持し、生きる力を得て生命を全うされています。身体的苦痛をなくすためのリンパマッサージなどの看護セラピーや音楽療法、趣味など、その人に合ったコントロールとケアがなされています。これらは看護師を中心に多くの講習を受けたボランティアの協力の下で行われています。また看護師は来所する患者・家族のサポートのみでなく、地域の看護職へのサポートやアドバイスもされ、地域との連携の核になっています。
   がんと宣告された患者の不安、痛みを和らげるための地域の体制は欠かせません。いくら緩和ケア病棟をつくっても全ての人をサポートすることはできません。地域で支える体制を全県的に作る役割を果たしている広島県の経験は学ぶべきと考えます。
  8 在宅がん患者にとって、患者同士で交流し、励ましあいつつ、リンパマッサージやリラクゼーションなどの看護セラピー、音楽療法・レクレーションなどのクリエイティブセラピーをおこなうデイホスピスは、生きる意欲、QOLを高めるうえで大事なものだと思いますが、その効果、役割の重要性について、都の認識を伺います。
  9 また、地域で支える緩和ケア体制のモデル事業として、駒込病院の緩和ケア病棟といっしょにデイホスピスを併設するよう提案するものですが、いかがですか。答弁を求めます。
   これまでホスピスや緩和ケアは、終末期医療に焦点を当てたケアとして、位置づけられてきました。しかし現在では、がんと診断された時から必要とされ、早期から適応できるケアであるとの認識が広まっています。
   広島県立病院の緩和ケア支援センターでも、緩和ケアは末期になってからでなく、がんと告知された直後から始まるという考え方が徹底されていました。
  10 緩和ケアは、末期になってからでなく、がんと診断された直後から始まるという、WHOも認めている最新の知見を、民間も含めた緩和ケア施設など医療機関、医師、看護師をはじめとした医療・福祉関係者に普及することが重要です。都の認識を伺いがいます。
   都は、駒込病院を、「がん・感染症センター」として整備していく計画です。高度専門医療を充実することは重要ですが、センター化にともない、どの診療科もがん患者に限定していくという方向がつよまるなら、自治体病院のあり方を、ゆがめるものと言わねばなりません。
   全国自治体病院協議会は、自治体病院は、「住民の意向に沿って運営がおこなわれるべきもので、一律に政策医療のみをおこなう等医療の範囲を限定することは適当ではない」、「高度・特殊・先駆的医療その他政策的医療は、一般医療が整っていてこそ成り立つものであり、地域住民のほとんどが一般医療の実施を強く望んでいるのである」と述べています(全国自治体病院協議会定時総会、2000年5月)。
  11 都立駒込病院は、その総合的診療基盤を活用して、今後も幅広い地域医療の要求にこたえる必要があると考えますが、答弁を求めます。
  12 駒込病院の感染症医療は、いまはHIV(エイズ)などが中心ですが、今後、非常に感染力がつよく、危険性の高い第一種指定の感染症もふくめた対応を駒込病院でおこなう計画です。体力・免疫力が低下したがん患者やHIV感染患者の多い病院に、第一種感染症病棟を併設することの是非について、どのように検討したのか、お答え下さい。
   駒込病院の改築とその後の運営を、民間企業主導のPFI方式でおこなうとしていることも、大きな問題があります。
   民間企業に銀行からお金を借りてもらって、その資金で駒込病院を改築する。利益の追及を使命とする民間企業がただで借金をするはずがないから、医師、看護師の業務以外はほとんどすべて、患者の給食やベッドメイク、清掃、医療事務などたくさんの業務がありますが、同じ企業にまかせて収益をあげる仕組みをつくる、というものです。
   私は、こういうやり方は、都立病院の営利化につながるものだと思います。
   財界団体の日本産業プロジェクト協議会(JAPIC)は、自治体病院のPFIについて、「大きなビジネスチャンス」だと位置づけて研究会をつくり、報告書をまとめています。そのなかでは、病院は大きな収益を生む事業ではないし、医療制度の変更などリスクが大きいことを指摘し、PFIを引き受けた企業が病院経営に関する意思決定に関与できる仕組みを導入すること、民間企業にたいするインセンティブを提供する必要があるとしています。
   実際に、駒込病院より先に進んでいる、府中の小児総合医療センターのPFIでは、民間企業が、経営委員会や医事委員会への出席および資料の提供、必要に応じた病院の運営に関する会議への出席等を認める方向です。また、経営支援報酬として、病院経営支援業務の対価との位置づけで、委託費の固定費分に加えて病院全体収支の一定割合をインセンティブとして加算するとされています。
  13 駒込病院の改築・運営を、民間企業主導のPFI方式でおこなうことはやめ、患者と家族、職員、関係医療機関・医療関係者の意見をはばひろく聞いて、都民共有の財産である都立駒込病院の拡充をすすめるべきです。答弁を求め、質問を終わります。

平成18年第一回都議会定例会
小竹ひろ子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 がん対策と都立駒込病院の拡充について
  1 駒込病院で、手術による外科治療、抗がん剤治療、放射線治療などの集学的がん医療を推進すると同時に、全人的医療をめざした医師、看護師、臨床心理士などによるチーム医療体制を充実すべきだが、見解を伺う。

回答
  駒込病院では、外科医、内科医、放射線科医などが一同に集まり、1つの症例に対する最適な治療法を選択する「キャンサーボード」という取組を行っています。
  また、医師に加えて、がん看護専門看護師や臨床心理士、MSW(メディカルソーシャルワーカー)なども参加して全人的な医療の提供にも努めています。

質問事項
 一の2 抗がん剤の効果的な組み合わせや副作用を抑えることは、患者の治療促進とともに、QOLを高めるうえで重要である。都として、抗がん剤治療の専門医を育成し、駒込病院など都立病院や公社病院に配置すべきだが、答弁を求める。

回答
  都立病院では、各種専門医の育成や資格取得を支援しており、今後とも、各分野における専門医の育成を図っていきます。

質問事項
 一の3 平均在院日数短縮の経営指標を最優先にして早期退院をすすめるのではなく、患者・家族ひとり1人の実態に応じて、きめ細かい対応を行うべきだが、いかがか。

回答
  駒込病院では、これまでも医師や看護師のほか、MSW(メディカルソーシャルワーカー)など多くの職種が相互に連携し、患者の疾病や病状に応じたきめ細かな治療を行ってきました。今後も、適切な医療を提供していきます。

質問事項
 一の4 医療的措置を必要としながら在宅に戻る場合、地域医療機関や訪問看護ステーションなどとの連携による治療・処置の継続が求められる。こうした関係づくりを進める地域連携室のようなセクションが駒込病院に必要だが、どうか。

回答
  駒込病院では、既に「医療連携室」を設置しており、地域の医療機関や訪問看護ステーションなどと連携を行うことで、外来から入院、在宅に至る継続性のある医療を提供しています。

質問事項
 一の5 がん患者には、診療・治療、医療者との関係などさまざまな相談支援が必要である。駒込病院でも、患者・家族に対する相談支援体制を充実・強化すべきだが、見解を伺う。

回答
  駒込病院では、現在、医療相談係、看護相談室等が連携をとりながら、患者・家族との様々な相談に応じています。
  さらに、平成18年2月には、「医療情報・相談室」を新たに設置し、患者・家族に対する相談支援体制を充実・強化しています。

質問事項
 一の6 駒込病院に整備する緩和ケア病棟は、長期にわたる治療を要するがん患者の負担を減らすために、差額ベッド料なしの無料の病床をできる限りふやすべきだが、どうか。

回答
  緩和ケア病棟の整備については、診療報酬上の施設基準により、有料個室は5割以下とされています。
  「がん・感染症医療センター」に整備する緩和ケア病棟の運営方法については、今後検討していきます。

質問事項
 一の7 民間病院も含め、東京におけるホスピス・緩和ケア病棟(病床)の増設が必要である。答弁を求める。

回答
  都は、平成5年度から緩和ケア病棟の整備を行う民間病院に対して、独自に整備費の補助を実施しています。
  平成17年度末現在の都内における緩和ケア病棟整備状況は、17施設331床となっています。

質問事項
 一の8 在宅がん患者にとって、患者同士で交流し、励ましあいつつ、看護セラピーなどを行うデイホスピスは、生きる意欲、QOLを高める上でも大事である。その効果、役割の重要性について、都の認識を伺う。

回答
  在宅のがん患者が、生活の質を向上させ、心豊かに生活を送ることができるようにするためには、在宅療養を支える基盤整備が大切です。平成18年度の介護保険制度改正や診療報酬改定においても、65歳未満の末期がん患者に対する介護保険の適用拡大、医療機関や訪問看護ステーションと連携して行う通所サービスや在宅療養支援診療所の創設など、制度の充実が図られています。
  都としては、在宅患者を支援する要となる人材育成のため、診療所の医師や訪問看護ステーションの看護師に対する研修会、ボランティアに関心のある都民を対象とした講習会を実施しています。

質問事項
 一の9 地域で支える緩和ケア体制のモデル事業として、駒込病院の緩和ケア病棟といっしょにデイホスピスを併設するよう提案するが、いがかか。

回答
  平成17年11月に策定した「がん・感染症医療センター」整備計画では、緩和ケア医療を重点医療課題としており、緩和ケア医療に必要な医療サービスの具体的な内容については、専門病棟の整備と併せて今後検討します。

質問事項
 一の10 緩和ケアは、末期になってからではなく、がんと診断された直後から始まるという最新の知見を、民間も含めた緩和ケア施設など医療機関、医師など医療・福祉関係者に普及すべきだが、都の認識を伺う。

回答
  都は、病院や診療所に勤務する医師・看護師などを対象に、緩和ケアに関する最新の知識の普及を図るための研修会を開催しています。既にこの中で、WHO(世界保健機関)の提唱する早い段階からの緩和ケアに関しても情報提供しています。

質問事項
 一の11 都立駒込病院は、その総合的診療基盤を活用して、今後も幅広い地域医療の要求にこたえるべきだが、答弁を求める。

回答
  駒込病院は、現在の総合診療基盤の機能を活用し、より専門性を高めた、がんと感染症のセンター機能を有する病院として整備するとともに、引き続き、地域医療連携にも努めていきます。

質問事項
 一の12 駒込病院では今後、危険性の高い第一種指定の感染症を含めた対応を行う。体力・免疫力が低下したがん患者やHIV感染患者の多い病院に、第一種感染症病棟を併設する是非について、どう検討したのか伺う。

回答
  「がん・感染症医療センター」の整備に当たっては、感染症医療の専門性を一層高めたセンター機能を有する病院として、第一種感染症病床を整備することとしています。施設整備に当たっては、感染症医療施設として適切な整備を行っていきます。

質問事項
 一の13 駒込病院の改築・運営を、民間企業主導のPFI方式でおこなうことはやめ、患者と家族、職員、関係医療機関・医療関係者の意見を幅広く聞いて、都立駒込病院の拡充をすすめるべきである。答弁を求める。

回答
  病院のPFI事業は、都が決定した運営方針の下に、施設建設や診療周辺業務等を対象業務として、コスト削減、業務の効率化、サービス水準の向上等を目指して実施するものです。
  がん・感染症医療センターの整備に当たっては、平成17年11月に整備計画を公表するなど、広く都民に計画内容を周知するとともに、都議会に報告し、その議論や意見を踏まえた上で、今後PFI手法で事業を実施していくものです。

平成18年第一回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  高橋かずみ

質問事項
 一 河川改修の計画や方法について
  1 中小河川の整備状況について
  2 石神井川の水害対策について
  3 白子川上流の水害対策としての調節池について
  4 石神井川での緩傾斜型護岸の整備について
 二 アニメ産業の振興策について
  1 東京国際アニメフェアの成果について
  2 アニメフェアと各地域での取組みの連携について
 三 都市農業の振興について
  1 地域の実情に即した農業振興の戦略について
  2 東京農業の問題点と農業振興について

 一 河川改修の計画や方法について
   長く厳しかった今年の冬も過ぎ去り、春の息吹が感じられるようになって来ました。温かくなると、やがて、雨の季節が到来します。春先や梅雨時の雨は、水稲や野菜などの作物の育成に欠かせず、夏の夕立は、ほてった地面を冷やし、盛夏に一服の清涼感を与えてくれます。過っての東京でも、こうした自然サイクルの中で「雨」の恵みを十分に実感することができました。
   しかしながら、東京の都市化が進み、いつごろからか、「梅雨」や「夕立」といった季節を象徴する「雨」本来の語感が薄れてきたように感じられます。そのかわり、「集中豪雨」などという味気なく、被災者にとっては忌まわしい言葉が目立つようになりました。世界的にも、極端な豪雨と旱魃が繰り返され、異常気象による大規模な自然災害に襲われています。わが国も例外ではなく、東京でも毎年のように集中豪雨に見舞われ、浸水被害が頻発しております。
   私は、昨年二度にわたり浸水の被害者となりました。一度目は、練馬区を中心とした集中豪雨で8月15日。二度目は、都内で大規模に浸水被害が生じた9月4日から5日未明にかけての区部西部を中心とした集中豪雨でありました。ちょうど、一度目の被害の片付けの最中で、最初に水に浸かった判読しがたい資料を整理し部屋に区分していたところへ再度の浸水被害で、土のう積みやバケツによる排水に追われ、今後の備えとして、土のうの買い増しや揚水ポンプを慌てて購入した次第であります。もちろん、二度も水に浸かった資料などを再整理する気持ちなど失せてしまいました。
   これまで、営々として積み重ねてきた足跡をつづった貴重な資料や記録がつまった写真集などを処分しなければならない理不尽さを理解していただけるでしょうか。少し大げさかもしれませんが、大切に保管していた資料である軌跡を失うことは、誕生から今日までの時間を白紙にされたような気にさえなります。これは、私だけの感傷ではありません。これまで水害に遭った数万人の都民も同じと思います。いつになったら、日本の首都東京の都民は水害から解放されるのでしょうか。
   このような想いのなか、私は、昨年末、被災された方や町会役員並びに我が党の地元練馬区議会議員とともに、都市整備局長と建設局長に水害の早期解消について要請をさせていただいた次第でもあります。
   そこで、昨年水害に遭われた多くの都民を代表して、水害対策を推進すべく河川改修の計画や方法について、何点か質問をさせていただきます。
  1 中小河川の整備状況について
    まず、最初に、都内における河川改修の計画についてお尋ねいたします。
    昨年の水害時には、東京西部の広い範囲で、100ミリ前後の雨が約3時間続き、総雨量が250ミリにも達しています。このため、マスコミなどから「50ミリではなく100ミリ対策にすべき」という声が多く寄せられました。こうした声に対して、都議会で建設局長は「1時間50ミリの降雨に対応する護岸や調節池が整備された箇所では、比較的被害が少なく、減災効果が発揮されている。」と答弁し、引き続き50ミリ対策を進める旨明言しています。溢水被害の状況図を見ると、確かに、そうした傾向を読み取ることができますが、それならば、一刻も早く、50ミリ改修を完了させることが必要であると思います。
    しかしながら、50ミリ改修の完成率は未だ60%にすぎなく、未改修区間は約130キロメートルも残っています。聞くところによりますと、50ミリ改修が開始されたのは昭和41年(1966年)で、40年を経てようやく60%となったそうであります。単純に比例計算をしますと100%までに要する時間はあと27年もということになります。いったい、いつ、河川の改修が終わるのでしょうか。
    もっとも、改修に要する年数を確認するだけでは、水害の軽減策には何の役にも立ちません。水害の常襲地域もあるようですし、特定な地域に集中豪雨が偏っている傾向もあるように思われます。こうした地域について集中的に整備促進を図るなど効率的な取組みを欠かすことはできないのです。また、整備に際しては、区間ごとの完成目途を発表し、事業費を集中させ前倒しに努めることも大切であります。
    残る未改修区間約130キロメートルについて、こうした点も含めどのように取組んでいくのか、都としての見解をお伺いいたします。
  2 石神井川の水害対策について
    次に、石神井川上流部の溢水箇所への取組みについてお尋ねいたします。
    昨年の9月4日から5日未明にかけての区部西部を中心とした集中豪雨では、私の地元の練馬区でも大規模な水害が発生しました。マスコミの話題が中野・杉並両区に集中したため、大きな話題にはなりませんでしたが、700戸に近い浸水被害が発生しました。
    特に、石神井川の西武新宿線武蔵関駅付近では河川から洪水が溢れ、約5haの範囲で80戸以上の浸水被害が発生しています。同地域では毎年のように浸水被害が発生していますが、地元の人々の話ではこのような大規模な被害はおよそ30年振りだそうで、被災者の方々は今も不安な毎日を送っております。
    地元では以前から、石神井川の日之出橋から西豊城橋の間にあるS字状の狭隘部分が原因ではないかと言われています。現地を見ると確かに、S字状のうえ上流の河川幅より狭くなっており、早急な河川改修が必要と思われます。しかし、聞くところによると、河川改修は下流から順次進められており、この区間に到達するまでにはあと十数年を要するとのことであります。原因が明らかなのに、それまでの長い間、この地域の方々は集中豪雨のたびに不安に怯えなければならないのでしょうか。
    被災者の方々の切実な思いに接し、同じ水害の被災者としてさまざまな検討をしましたが、この被災地の上流約1.5キロメートルに武蔵関公園の池を利用した富士見池調節池があります。この公園の広場を利用するなど、敷地全体を有効に活用して調節池の規模を拡大することは、有効な水害対策になるものと考え、前段申し上げましたように昨年末に幾つかの提案を含め、関係局長に要請したところであります。そこで、都としての今後の対応についてお伺いいたします。
  3 白子川上流の水害対策としての調節池について
    第三に、白子川最上流部の調節池の役割と整備の目途についてお尋ねいたします。
    私は、地元練馬区議として昭和58年の初登庁以来、区内を流れる石神井川も含め白子川の親水化、多自然化といった環境政策に粘り強く力を注いでまいりました。その結実した一つとして、白子川の上流端に大泉井頭公園があります。この大泉井頭公園は、川のそばまで降りられ、多くの住民が集まり賑わう地域のシンボル的な場所となっております。また、この上流端より西側は、遊歩道として整備されておりますが、昔は川が流れていました。大泉という地名からも分かるとおり、この地域には、昔、湧水地や池が数多く点在し、自然豊な情景を醸し出していました。その湧水が集まって形成された白子川の清流で、私も子供のころ遊んでいた記憶があります。近年、湧水地も少なくなり湧水量も減っているため、現在のような暗渠化が図られたかと思います。
    白子川沿いの住民の一人として、同地域での治水の安全性を向上させることが第一かと思いますが、湧水地を再生するなど、本来の自然豊な姿を取り戻してくことも今後取り組んでいく課題であると考えております。
    さて、冒頭紹介しました二回目の9月4日の夜は、被災地の範囲は広く、とくに白子川の旧河川沿いで浸水被害が起こりました。被災中は、桝から水が逆流してきたり、道路排水がうまくいっていない状況を目の当たりにしました。側聞したところによりますと、こうした内水被害は桝のつまりや下水道の異常や能力不足などから発生する場合もありますが、今回は想定以上の大雨が降ったため十分排水ができないという不可避な現象だったとのことでありました。ただ、下水道の放流先である白子川の上流部は未改修のため、下水道が整備されても川への放流量を調整するため抑制せざるを得ず、結果的に下水管の能力を十分発揮できないのが現況だそうであります。
    現在、白子川の改修は、比丘尼橋上流調節池から上流にある御園橋までの間を事業中で、最上流まで未だ2キロメートルほどあります。今までのペースですと20年以上かかってしまいそうです。何か緊急的に対処できる方策はないのでしょうか。
    そこで、白子川最上流部の東側にある大規模な農地のところに、私が区議会に初登庁した昭和58年頃に都が計画した調節池の予定地があると聞いております。そこに比丘尼橋上流調節池のようなオープン形式の調節池ができれば、白子川上流域の緊急的な水害軽減策のみならず平時には公園として子供や高齢者に一般開放できるものと考えております。しかし、その土地の端から戸建の家が建ち始めており、早急に用地の取得を始めるなど手当てをすべきものと考えております。
    その調節池の役割と整備の目途について、都としての見解をお伺いいたします。
  4 石神井川での緩傾斜型護岸の整備について
    最後に、都営団地の敷地を有効に活用した石神井川の整備についてお尋ねいたします。
    現在事業中区間の直近の上流に、都営上石神井団地があります。団地敷地内のほぼ中央部に石神井川が東西方向に横断し、川沿い両側に長さ500メートル、幅20~30メートルの敷地があり、主に通路や駐車場、地域の人々に親しまれている桜並木をはじめとする植栽帯などに利用されております。
    この区間の河川改修時に、下流の南田中団地で既に実施されたと同じように、河川の両側にある団地敷地も有効に活用し、護岸を緩傾斜型や多自然型にできるのではないかと考えています。この実現によって、石神井川の親水化はもとより都民の皆様が自然とふれあうことのできる緑あふれる水辺空間が確保できます。加えて、緩傾斜で行うことにより、広い河道が洪水対策にもなり、周辺の都民の皆様に多大な利益をもたらすものと考えております。
    緩傾斜型護岸による緑あふれる水辺空間の創出は、練馬区の環境基本計画や水辺ふれあい計画の方針とも合致していることから、この実現に向け、地元の区長をはじめ、区民の皆さんにも理解を求めているところであります。
    聞くところによりますと、上石神井団地の建物は長期間をかけ順次建築されており、古いものは昭和30年代後半に建てられているそうです。今後、建替え計画が検討されることと思いますが、検討に際しては、こうした河川の改修計画を組み込んだ整合性のある21世紀に相応しい建替え計画とするべきと考えております。
    さて、このような壮大な案を実現していく場合、桜並木の保存方法や親水空間のあり方など具体的な内容まで検討していくと地元関係者や関係各部署との調整に長期間かかると思われます。今から調整を開始し、改修時期に速やかに着手できるように備えるべきと考えますが、都としての今後の取組みをお伺いいたします。
    以上、河川改修の計画や方法について質問しましたが、水害には下水道から溢れるいわゆる「内水」被害もあります。また、まちづくりの観点から流域対策としての取組みや、河川と下水道の連携を強化するといった都としての総合的な取組みも欠かせません。いわば、全庁的な取組みが求められていますが、整合性のある水害対策を実施していくよう強く要望いたします。
    さらに、都は昨年の大規模水害を踏まえ、18年度の重点施策として、豪雨対策の推進を図ることとしています。是非とも、都民の水害に対する不安が払拭されるものとなるよう期待し、この点に対しても積極的な取組みを重ねて要望いたします。
 二 アニメ産業の振興策について
  1 東京国際アニメフェアの成果について
    次に、アニメ産業の振興策についてお尋ねいたします。
    日本のアニメは、世界から高い注目を集めております。現在、世界で放映されているアニメの約6割が日本のアニメであると言われておりますが、そうした量的な面だけではなく、一昨年のベネチア国際映画祭で宮崎駿監督のアニメ映画「ハウルの動く城」がオゼッラ賞(技術貢献賞)を受賞し、さらに昨年の同映画祭で宮崎監督が栄誉金獅子賞を受賞するなど、作品や制作者の質・技量という面でも、世界的に非常に高い評価を受けていると聞いております。
    このように世界から注目されている日本のアニメですが、去る3月23日から26日まで、第5回の東京国際アニメフェアが開催され、私も会場に足を運んだところであります。海外からのビジネス来場者を多数迎えた会場で、多くの中小制作会社や個人のアニメ制作者が、劇場作品を手がけるような大手のアニメ制作会社と、まさに同じ土俵の上で、国際ビジネスに果敢に挑戦する、熱気あふれる現場を目の当たりにし、我が国のアニメ産業の活力を実感することができました。
    そこで、今回のアニメフェアの成果について、都としての見解をお伺いいたします。
  2 アニメフェアと各地域での取組みの連携について
    また、我が国が世界に誇る文化であり、リーディング産業の一つとなっているアニメでありますが、その制作を担っているアニメ制作会社の約8割が東京に立地しており、まさにアニメは東京の地場産業であります。
    中でも私の地元練馬区は、我が国アニメ産業の黎明期から、数多くのアニメ制作会社が集まり、現在に至るまで都内で最も多くの制作会社が存する地域となっております。こうした背景のもと、一昨年の7月には、商工会議所が中心となり、区内の制作会社が集まって「練馬アニメーション協議会」が設立されるなど、アニメ産業が集積する地域特性を活かした振興策に、積極的に取り組んでおります。
    先の東京国際アニメフェアにも、練馬地域から、練馬アニメーション協議会や多くの制作会社が参加し、バイヤーとの商談やファンへのアピールを、活発に行ったところであります。
    我が国のアニメ産業が、今後とも国際競争をリードしながら、将来にわたって発展を続けていくためには、東京国際アニメフェアのように、地場の制作会社に国際的な商談の機会を提供するとともに、アニメ産業の将来を担う若い才能を発掘し育成することが、不可欠であると考えます。
    そこで、今後の東京国際アニメフェアを通じたアニメ産業の振興と、各地域での取組みとの連携について、都としてどのように考えているのかお伺いいたします。
 三 都市農業の振興について
  1 地域の実情に即した農業振興の戦略について
    次に都市農業の振興についてお尋ねいたします。
    東京の農業は、大消費地の中で生産者の顔が見える生産が行われ、都民の食卓に新鮮で安全な農産物を供給しております。最近では、意欲的な農業経営者が、付加価値の高い農畜産加工品の製造や、サービスを含めた農業経営への取り組みを進めるなど、新たな農業を展開しております。
    従来からわが党は、東京農業の振興には、「経営として成り立つ農業」「担い手の確保」「農地の保全」という3つの主軸が重要であるとし、その充実を求めてまいりました。
    「経営として成り立つ農業」という視点からは、例えば、私の住む練馬区では、より高度な農業体験を望む都民を対象に農業者が栽培技術を教える体験農園や、都市の身近な果樹園として人気の高いブルーベリーの摘み取り農園などが行われております。これらの取り組みは、農業経営の安定に資するばかりでなく、農園に集まる多くの人々が地域の商店街で買い物をするなど、地域全体の活性化といった相乗的な効果ももたらしております。
    また、江戸川区などでは、農地を最大限に活用して高い収益をあげるため、パイプハウスなどの施設によりコマツナの周年栽培を行っております。
    さらに、稲城市や日野市などでは、梨やブドウの直売で「果樹の里づくり」を目指しております。
    都は、こうしたそれぞれの地域に適した特色ある農業経営を支援し、地域地域の実情に、より即した農業振興の戦略を策定するとのことでありますが、新たに策定する地域戦略がどのような内容になるのか、都としての考えをお伺いいたします。
  2 東京農業の問題点と農業振興について
    次に「担い手の確保」と「農地保全」の視点からは、東京の農業は、地域の活性化に大きく寄与している一方、東京の農地は、都民に貴重な緑地空間を提供するなど、多面的な機能を有しております。
    こうした農業・農地が都市に与える影響に着目し、多くの区や市でも、担い手を確保し、農業・農地を残そうとする努力がされております。
    しかし、東京の市街化区域内農地は、毎年約100ヘクタール強が減少しているという事実もあります。この減少の原因は幾つか考えられますが、ひとつには、収益性の高い農業経営となっていない場合の後継者不足と、農地を管理する担い手の高齢化であります。東京都において主に農業に従事している人のうち65歳以上の人の割合は53%にも達しており、今後更に増加することにより、耕作が行き届かない農地も増えることが予想され、こうした農地の新たな活用方法も求められます。これらのことから、地域農業をリードする経営意欲あふれる担い手の確保・育成が東京農業の発展のための重要な課題であります。
    加えて、東京には農業者や区・市の努力だけでは解決できない税制度や農地制度など、地価が高い市街化区域内の農地問題があります。例えば、高額な相続税の支払のために農地を売り、農業経営が縮小してしまったという話もたびたび耳にしております。
    そこで、都は、このような、東京農業が直面する問題点を解決しながら、農業振興を図っていくべきと考えますが、都としての見解をお伺いいたします。

平成18年第一回都議会定例会
高橋かずみ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 河川改修の計画や方法について
  1 中小河川の整備状況について
    河川の50ミリ改修の完成率は60%にすぎない。水害軽減のため、常襲地域などの集中的整備促進や区間ごとの完成目途の発表、事業前倒しも大切である。残る未改修区間についてどのように取り組むのか、見解を伺う。

回答
  都では、46河川、324キロメートルを対象に、一時間50ミリメートルの降雨に対応する河川整備を進めています。
  なかでも、神田川や石神井川、白子川など浸水被害が多く、流域の市街化が著しい13河川を重点河川と位置付け、整備しています。
  昨年の水害で被害を受けた妙正寺川などにおいては、河川激甚災害対策特別緊急事業を着実に進めるとともに、今後の河川整備については、近年の降雨状況を踏まえ、これまでの被害状況や整備効果などの検証を行い、護岸や調節池など50ミリメートル対策を効果的に進めるための整備方針を検討しています。
  今後とも、都民の生命と財産を守るため、国費などの財源確保に努め、中小河川整備のより一層の促進に向け、積極的に取り組んでいきます。

質問事項
 一の2 石神井川の水害対策について
     石神井川の武蔵関駅付近は、毎年のように浸水被害が発生している。上流の武蔵関公園にある富士見池調節池の規模拡大は有効な水害対策となるが、今後の対応を伺う。

回答
  石神井川については、下流から順次護岸の整備を進めており、現在、武蔵関駅の約2キロメートル下流である螢橋から山下橋間で工事を実施しています。
  整備の進捗状況を踏まえると、武蔵関駅付近のいっ水した箇所の護岸工事に着手するまでには、相当の期間を要します。
  水害の軽減を図るため、武蔵関公園の敷地を活用した調節池について、現在、その規模や効果などについて地元練馬区と連携して検討を進めています。
  今後とも、護岸の整備を着実に進めるなど、水害の早期軽減に努めていきます。

質問事項
 一の3 白子川上流の水害対策としての調節池について
     白子川上流の大規模農地に都が計画した調節池予定地があるが、戸建の家が建ち始めており、早急に用地取得など手当てをすべきである。その調節池の役割と整備の目途について、見解を伺う。

回答
  白子川では、現在、比丘尼橋上流調節池の上流約0.7キロメートルにある月見橋付近で護岸整備を行っており、順次上流に向け整備を進めています。
  白子川上流端付近右岸の調節池は、流入する洪水を一時貯留し、下流域のいっ水被害の軽減を目的として計画したものです。
  今後、水害の発生状況や財政状況を踏まえ、適切に対応していきます。

質問事項
 一の4 石神井川での緩傾斜型護岸の整備について
     石神井川の都営上石神井アパート付近の整備については、桜並木の保存方法や親水空間のあり方の検討などには長期間を要する。今から調整を開始し、改修時期に速やかに着手できるよう備えるべきだが、今後の取組を伺う。

回答
  石神井川の整備に当たっては、これまでも治水安全性の向上とともに、周辺の環境にも配慮した整備を進めてきました。
  都営上石神井アパート付近については、河川緑地と一体的に整備し、親水化を図ることができることから、平成18年3月に策定した石神井川の河川整備計画においても、親水性を確保する候補地としています。
  整備に当たっては、桜並木の保存方法や親水空間の整備手法などの様々な課題があり、今後、地元練馬区や関係機関と十分な調整を行っていきます。

質問事項
 二 アニメ産業の振興策について
  1 東京国際アニメフェアの成果について
    3月に第5回東京国際アニメフェアが開催されたが、我が国のアニメ産業の活力を実感できた。今回のアニメフェアの成果について、見解を伺う。

回答
  平成13年度から実施されている東京国際アニメフェアは、平成18年3月に第5回が開催され、
 ・ アニメビジネスの商談の場「見本市」
 ・ 若手クリエーターのビジネス支援を図る「クリエーターズ・ワールド」
 ・ 海外作品が半数を占め国際的な賞として定着してきた若手の登竜門「東京アニメアワード」
 のほか、一般のファンにもアニメの楽しさを知っていただく各種イベント等が実施されました。
  今回のフェアは、会場を前回の1.5倍に拡大し、出展企業・団体数は256で前回比3割増、そのうち海外出展は73で同7割強の増、また来場者総数も約10万人に達し、いずれも過去最高となっています。今回のフェアにより、国際的商談の機会の提供、人材の発掘・育成を図るとともに、アニメの最新情報の発信等を通じて東京の魅力を世界にアピールすることができたと考えています。

質問事項
 二の2 アニメフェアと各地域での取組みの連携について
     アニメ産業発展には、地場制作会社への国際的な商談機会の提供とともに若い才能の発掘育成が不可欠である。今後の東京国際アニメフェアを通じたアニメ産業の振興と、各地域での取組との連携について伺う。

回答
  東京国際アニメフェアは、各地域の制作会社や事業者団体が作品や事業内容を発表し、商談やファンへのアピールを行う場として活用されています。また、フェアの実行委員会には練馬区をはじめとする2区2市も実行委員として参画しているとともに、フェアとこれらの区市を含めた各地域のアニメ関連イベント等とで広報協力や情報交換等の連携を図っています。
  今後とも、アニメ関連業界の創意工夫や専門性を生かしてビジネス環境や集客力のさらなる向上を図るとともに、パイロット版映像の制作支援スキームなども活用し、将来を担う人材の発掘・育成やビジネスチャンスの拡大を図ることにより、各地域のアニメ産業が発展し、それが東京全体の魅力の向上につながるよう、都として引き続き東京国際アニメフェアの運営を支援していきます。

質問事項
 三 都市農業の振興について
  1 地域の実情に即した農業振興の戦略について
    都は、体験農園や摘み取り農園など地域に適した特色ある農業経営を支援し、地域の実情により即した農業振興の戦略を策定する。新たに策定する地域戦略がどのような内容になるのか、所見を伺う。

回答
  農業経営を取り巻く環境は、輸入農産物の増加や他産地との競合による価格の低迷など、厳しい状況にあります。
  一方で、こうした状況に対応して、ご指摘のとおり例えば練馬区では、安定した収入が確保できる「体験農園」の開設、収穫作業等の省力化が可能となる「ブルーベリー摘み取り農園」など、新たな農業経営の取組が各地で芽生え始めています。
  都は、こうした取組を踏まえて、都内を8地域に区分し、産地育成や多様な担い手の確保などの各地域の課題や地場流通の推進等の具体的な振興方向を明らかにした地域戦略を策定したところです。
  本戦略では、新たに主要作物を選定し、指標として生産目標額、認定農業者数や保全農地の面積等の数値目標を掲げました。

質問事項
 三の2 東京農業の問題点と農業振興について
     東京の市街化区域農地は減少している。地域農業をリードする担い手の確保・育成、税制度など地価が高い市街化区域内の農地問題など、東京農業が直面する問題点を解決しながら、農業振興を図っていくべきだが、見解を伺う。

回答
  経営意欲あふれる担い手の確保・育成と都市の貴重な緑地空間である農地の保全は、東京農業における重要な課題です。
  このため、高齢化等により管理の行き届かなくなった農地と都民などの多様な担い手を取り持つ「農地と担い手のマッチング」を開始しました。また、担い手確保のため、自ら耕作できる人材を育成する「都民のための実践農業セミナー」や都市に合った高度な農業技術・経営を学ぶための研修会を実施していきます。
  さらに、市街化区域内の農業経営で重い負担となっている税制度や農地制度については、東京農業を将来にわたって持続可能とするための課題を整理し、国に対して引き続き制度の改正を要望していきます。

平成18年第一回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  古館和憲

質問事項
 一 都立産業技術研究所は現行のまま直営で存続し拡充を

 一 都立産業技術研究所は現行のまま直営で存続し拡充を
   都立産業技術研究所は、東京の産業活性化への貢献と都内の中小企業における持続的発展への貢献を目的に設立され、地域産業の活性化などにとって欠かすことのできない大きな貢献をしています。
   ところが、昨年12月、知事本局が発表した「重要施策及び平成18年度重点事業」のなかで、産業技術研究所(西が丘、駒沢、八王子の各庁舎)及び暫定施設である多摩中小企業振興センターを整理統合し、区部(臨海部)および多摩地域に、あらたな産業支援拠点を整備することを明らかにしました。これに対して、区をはじめ、産技研をよりどころとしている起業家や関係者から、存続を求める声が大きく広がっています。
   いうまでもなく、都立産業技術研究所墨田庁舎では、繊維関係を中心に繊維関連の依頼試験・開放機器利用を増やすことなどで存在感をたかめており、八王子庁舎では多摩地域全体の独立系製造業の工業集積地域の中心としての役割を発揮し、駒沢庁舎では、放射線応用技術による試験研究機関として、食品検査のなかの残量有害物質の検査などに役割をはたし、西が丘庁舎では、材料技術、加工技術、機械・装置技術、ナノテクノロジー、電子・電気、光・音響技術、情報・エレクトロニクス、資源環境福祉、ユニバーサルデザインなど幅広い分野で、私の地元板橋区や北区の製造業などの振興をはじめ、全都的にも大きな役割を発揮しています。
   ところが、今回「重点事業」では、「産業支援のあり方を見なおし、企業経営や技術開発をより効果的に支援するため、産業支援拠点の再整備をすすめるとともに、産学公連携や製品開発の支援等により支援体制の再構築を図る」との考え方を示しました。その最大のねらいが、都立産業技術研究所の「再整備」においていることです。すなわち、〔1〕06年度から産業技術研究所を独立行政法人化する、〔2〕その後に、産業技術研究所を統廃合して研究所そのものを減らす。〔3〕産技研の役割を、これまでの「都内の中小企業における持続的発展への貢献」という根本目的を、「国際的に通用する」「将来有望な分野に重点を置いた支援をする」など、文字通り「企業との共同研究や人材交流」など、財界が求める研究所への変質がねらわれています。
   すでに2001年に独立法人化された国の技術研究所などでは、中期目標に効率化目標が据えられ、効率化係数として、運営費交付金が年率1%削減されることにより、外部資金などの獲得に力を注ぎ、基礎研究がおろそかになったり、短期的成果が期待できる研究しかやらなくなる。外部資金による民間企業とのより大きな一体化ということで、公的研究機関としての役割がゆがめられていることなどが指摘されてもいます。
   こうした問題点などを考えた場合、まず「独法化ありき」の都の姿勢は拙速としかいいようがありません。大阪府や神奈川県などでは、産技研などの研究機関についての独法化はより慎重な対応をしています。
   産業技術研究所に通いながら、ものづくりに光明をみいだしている起業家が「都立産業技術研究所のよいところは、勝ち組にも負け組みにも門戸を開放してくれていることだ」「零細だからこそ近くにあるのが救いだ」と語ってくれました。独立行政法人化になったら、「国際的に通用する」などの尺度のもとではじかれ、そのうえ「近くの産技研がなくなって遠距離にでもなったらいけなくなる」―いま都がやろうとしている計画は、中小企業にとっては文字通り、やっと芽吹いてきている芽を摘み取るようなものです。
   まだ、計画の段階であり再考する機会は十分にあります。
  1 いまこそ、産業技術研究所の独立行政法人化も研究所の削減計画も中止すべきです。見解を求めます。
   だいたい02年8月と04年5月の2回にわたってだされた「中小企業審議会答申」は、中小企業家などが加わって作成したもので、「独法化」について言及していないばかりか、「区部や多摩の地域資源、強みを産業活性化に活用する」ことなど、試験研究機関の改善・充実要求が提案されており、注目に値いします。
   実際に、「産業支援施設の現状と産業支援ニーズに関する調査」では〔1〕最新技術情報を提供してほしい〔2〕異業種交流や他企業等とのコーディネートを支援してほしい〔3〕研究開発、試作・評価、販売の各段階における支援をして欲しいなど、中小企業者の要求も多様にだされていたのです。
   都の責務は、こうした中小企業者の声に応えることこそ、何よりも求められています。
  2 その要は、産技研の予算を増やすこと。とりわけ研究費を増やすことが急務です。現在の予算の6割が建物の維持管理費に支出されており、中小企業からの依頼試験などに十分にこたえられ、さらには研究所の生命である経常研究、基礎研究がしっかりと保障されるように増額する必要があると考えるが、どうか。
   私はこれまで都議会で、数回にわたって、産業技術研究所を核とした地域産業の振興などを提案してきました。今回のこの独法化の方向や、産技研を減らすなどの方針に対して強い憤りを覚えています。
   地元板橋区に隣接する北区西が丘にある都立産業技術研究所では、先述した八つの技術分野を有する研究機関として、年間のべ4万5千件近くにのぼる業者や企業からの依頼試験に対応しているなど、特色を生かした頼もしい存在となっています。
   その共通の特徴は、相談者とのコミュニケーションのなかで、研究員の能力と経験が十分に発揮され、中小企業者のニーズに応えるなど、多くの重要な研究成果に結びついていることです。
   しかし、今回、都がしめした、産業技術研究所西が丘支庁と駒沢支庁を廃止して、臨海部に新設の産業技術研究所をつくるとする構想は、当該区の北区では「都立産業技術研究所の存続についての要望」が知事宛に提出され、板橋区でも、重点事業で都が「西が丘支庁の移転可能性」をふれたことに懸念を表明するなど、歓迎されてはいないのです。北区も板橋区も、中小企業のまちとして、技術相談や依頼試験を始め多くの支援がおこなわれるなど、区内産業にとって不可欠で、身近な産業支援施設として根づいているからです。
   板橋、北両区には精密機器技術の集積があり、この高度な技術を持つ企業や研究機関、人材など地域資源を活用して健康・医療・福祉関連産業の活性化を図ることをめざして、東京都、北区、板橋区が共同で、KICCプロジェクトが推進されていますが、これも産技研がお膝元にあってのことです。
   しかも、城北地区は製造業をはじめとする中小企業の街でありながら、産業支援施設は産業技術研究所一つだけであり、この研究所がなくなることは、東京都の産業支援施設がまったくなくなってしまうことになります。
   板橋区が毎年開いている「産業展」で受賞している、ある製造業者は、西が丘に産業技術研究所があることで、新製品へのヒントと挑戦しようというやる気を与えてもらっている。また、産技研の役割は、異業種交流の拠点としての大きな役割を担っていること。城北地域など、地域ごとにあるからこそ何度も足を運べること――これこそが都の大きなサービスだと語ってくれました。
   また、私と話をした中小企業者の多くが「なぜ、臨海部に産業技術研究所なのか。中小企業があるわけでもない。ニーズもないのに…」「これだけ精密機器技術など製造業が集積しているところからは撤退して、臨海部に統合だなんてどう考えても納得できない」などの声があがっています。
  3 都は、この疑問にたいして、きちんと答える義務があります。なぜ臨海部に産技研をもっていく計画なのか、お答えください。
  4 歴史もあり、中小企業や地元自治体からもその役割を評価され、中小企業も息づいてきた、それが地域の雇用創出にも役立っている。こうしたなかから、世界に通用する機器の開発がされている企業も生まれています。その機軸に産業技術研究所西が丘庁舎がある。これはどこでも共通した特徴です。今ある産技研を存続させ、拡充することこそ都の役割ではありませんか。西が丘庁舎の建て替えがせまっていることなどが、廃止の理由などにはならないことは役割の大きさからみて自明のことであり、存続を強く求めます。

平成18年第一回都議会定例会
古館和憲議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 都立産業技術研究所は現行のまま直営で存続し拡充を
  1 すでに独立行政法人化された国の技術研究所などでは、公的研究機関としての役割がゆがめられているなどの指摘がある。いまこそ、産業技術研究所の独立行政法人化も研究所の削減計画も中止すべきだが、見解を求める。

回答
  平成18年4月に、産業技術研究所を地方独立行政法人としたことにより、法人自らの判断による弾力的な事業執行が可能になりました。また、外部資金を自らの収入として活用できることや、組織・人員管理を自らの判断で行えることなどにより、中小企業ニーズ等に応じた、効率的で効果的な運営が可能となるため、今後も地方独立行政法人として運営していきます。
  一方、産業技術研究センターの西が丘、駒沢、八王子の各庁舎は、施設や設備の老朽化により維持管理費が増大するなど、早急な建替えや新たな設備の整備が必要となっています。また、中小企業のニーズに的確に対応するためには、各庁舎の重複機能などを整理統合し、より高度な技術支援体制を構築することが喫緊の課題となっています。以上のことから、産業支援拠点の再編整備を中止する考えはありません。

質問事項
 一の2 産技研の予算、とりわけ研究費を増やすことが急務である。中小企業からの依頼試験に十分にこたえ、経常研究、基礎研究が保障されるように増額すべきだが、どうか。

回答
  地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターに対する平成18年度の運営費交付金等については、中小企業のニーズや最新の技術動向等を踏まえ、最新の試験研究に必要な機器整備費を大幅に増額いたしました。これにより依頼試験や研究事業の充実が図られます。
  なお、地方独立行政法人は都の予算制度等の制約を受けることがなくなることから、外部研究資金を容易に受け入れることが可能となり、中小企業ニーズに応じた、よりスピーディーで活発な研究活動ができるようになります。

質問事項
 一の3 精密機器技術など製造業が集積しているところから撤退して、臨海部に統合とは納得できない、との声がある。なぜ臨海部に産技研をもっていく計画なのか伺う。

回答
  区部の新たな産業支援拠点の整備については、中小企業の経営者や中小企業団体の役員、大学や研究機関の研究者などからなる検討委員会を設置し、現地での建替えを含め、複数の候補地について慎重に検討していただき、江東区青海地区が適しているとの報告をいただきました。
  この報告に基づき、都として検討した結果、区部の新たな産業支援拠点の立地場所として、江東区青海地区が最も優れているものと判断しました。

質問事項
 一の4 今ある産技研を存続させ、拡充することが都の役割である。西が丘庁舎の建て替えが迫っていることなどは廃止の理由にならず、存続を強く求める。答弁を求める。

回答
  高度、多様化する中小企業の支援ニーズに対応するためには、新たな産業支援拠点の整備による技術支援機能の向上が必要不可欠であり、そのあり方に関して、検討委員会において検討していただきましたが、現地での建替えには長期間を要することや改修中の試験・研究に支障があるなどの問題点があり、新たな産業支援拠点の立地場所としてはふさわしくないとの報告を検討委員会からいただきました。
  この検討委員会の報告を踏まえ、都として検討した結果、中小企業への技術支援を早期かつ円滑に高度化していくためには、江東区青海地区での産業支援拠点の整備が最も優れていると判断しました。

平成18年第一回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  松村友昭

質問事項
 一 東京のみどりと水について

 一 東京のみどりと水について
   戦後の高度成長期を経て、今日にいたる都市開発のもとで、東京のみどりと水環境はおおきく後退し、年間平均温度の上昇、熱帯夜の増加などヒートアイランド現象や、集中豪雨をはじめとする異常気象をもたらしています。地球温暖化をふせぎ、都民が快適に生活を営む上で、みどりと水環境の回復は待ったなしの課題となっています。
   東京都におけるみどりは、東京一極集中のもとで都市化と周辺部の宅地化がすすめられるもとで、急激に減少しました。このため、東京都は、1972年に「東京における自然の保護と回復に関する条例」を制定し、その2年後には、「東京における自然の保護と回復の計画と「みどりのネットワーク構想」などを策定することで、みどりと自然の回復にとりくみはじめました。その後、1981年には20年間の長期計画として「東京都緑のマスタープラン」を策定しました。そのなかでは、「東京の街づくりに当たって緑地を都市の構造として位置づけ」ること、「区部を含め市街地化のすでに進出した地域では、公園の絶対量の不足が問題であり、配置の理想より計画量の確保が急務である。このため、工場跡地、筑波研究学園都市移転跡地、基地跡地等の大規模跡地、また企業厚生施設等で緑地的価値の高い施設を積極的に、公園・緑地として位置づけ、将来に備える必要がある。」などと、都として公園や緑地の確保に取り組むことがうちだされています。さらに、1984年には、緑の量の倍増をめざす、「東京都緑の倍増計画」が策定され、公園を2倍にすることを目標に、都民一人あたりの公園面積を6平方メートルとするよう公園整備をすすめることが明らかにされました。
   また、水環境についても、「水系沿いを緑化することにより、河川の親水化や湧水機能の向上を図る」「都民の日常的な生活圏や広域の生活圏に応じたさまざまな公園・緑地を体系的に整備し、水と緑のネットワークづくりをすすめる」など、戦略をたてて取り組むこととされたのです。丘陵地の自然環境の保全と活用をはかる「みどりのフィンガープラン」や「崖線保全計画」も立てられました。
   これら計画は、公園面積が欧米と比べて低い水準の6平方メートルとされたり、開発を規制する視点が欠けているなどがありますが、それでもみどりと水環境を保全する行政の姿勢を示すものとなっていました。
   このような方向が転換を迎えたのは、1985年のプラザ合意以後の、規制緩和と都市開発優先の政策によるもので、これ以降、みどり行政はおおきく後退させられ、東京からみどりがどんどん失われていくことになったのです。
   その後、石原都政のもとで「緑の東京計画」がたてられましたが、その内容は、都が緑の計画をもってその確保と保全を推進していこうという立場を後退させ、「都、都民、企業、区市町村がそれぞれの役割分担」が強調され、みどりの位置づけについても、これまでの緑地・公園から、街路樹や河川、水路の面積を加えた、「みどり率」を政策指標に用いて設定するとされました。結果、都の役割は、幹線道路などの広域的な骨格となる緑の保全、創出していくこと、緑の達成に必要な仕組みづくりや働きかけ、誘導策などを講じることなど、消極的なものにされることになったのです。
   こうしたもとで、都内では、葛飾区の三菱製紙跡地、杉並区の三井のグランドなど大規模な工場跡地やグランドなどの土地が、あいついで大規模商業施設やマンション等の用地として転換され、開発がすすめられています。さらに私の地元、練馬区石神井公園に隣接する日本銀行石神井グランド、住友銀行グランドなどの周辺の開発計画がすすんでおり、この保全がいそがれています。
  1 都は、「都市計画公園・緑地の整備方針」で、工場跡地や企業の厚生施設等を積極的に、公園・緑地として位置づけ、将来に備える必要があると方針を出していますが、この立場に立ち返って、これらの貴重な土地空間を、都市計画公園として整備していくことを求めるものですが、見解を伺います。
   都は、本年1月に「みどりの新戦略ガイドライン」が策定しましたが、石原知事は、この計画について、施政方針で、「東京が都市として存続し続けるための新しい戦略プラン」とし、「これまでの公園整備の手法に加え、企業のグランドや屋敷林などの民有地を活用した『民設公園』制度を創設し、公共と民間のみどりが一体となったネットワークに広がりと厚みを増していきたい」と説明しています。これは石原知事がすすめる「都市再生」の名のもとに、規制緩和をはかり、これまでのみどり行政をさらに後退させるようとするもの言わざるを得ないものです。
   知事が提案している「民設公園」は、工場跡地や学校グランドなど大規模な土地を活用して、ビル開発をすすめるものと一体、むしろこれらの土地を民間活用することを促進することが目的として考えられたものです。本来、都市計画公園は都民誰もが利用し、憩うことが出来る空間でなければならず、民設公園はなじみません。
  2 都市計画公園は、公共が土地を確保して整備することが不可欠であると考えますが、見解を伺います。
   東京の水の再生をはかる上で、近年首都高速で覆われた河川の再生が話題になっていますが、莫大な財政をかけずにもまず手がけることができる、東京の水路の復活などを積極的に手がけるべきではないでしょうか。
   練馬区は、かって湧水が湧き、それを源流として、多くの水路が流れていました。時代の流れの中で、その多くが暗渠化されています。
   東京の水の再生にあたっては、暗渠化された水路を復元し、流水を復活させて、身近なところでの水の再生にこそ取り組むべきと考えます。
  3 そこで、都として、練馬区のみならず、東京の水路の復活のための調査を行い、水路と流水を復活して、身近なところでの水の再生をすすめること、さらに、すでに、調査がおこなわれ、その再生が可能とされている、千川上水の青梅街道から東側の復活に早急に着手することを強く求めるものですが、それぞれ見解を求めます。
   多摩地域には、オオタカが棲息する里山や都民の憩いの場としての自然公園、生産緑地などなど、貴重な自然とみどりがまだ多く残されています。
   これらのみどりは、都民が健康で文化的な生活を営むうえでも、持続可能な都市づくりをすすめるうえでも欠かせないものでありますが、その自然とみどりが、宅地開発や市街地化の圧力のもとで、次々と失われていることは、重大です。
   例えば、日野市にある多摩丘陵公園などの自然公園が宅地化の嵐に巻き込まれ、貴重な緑地がつぎつぎと剥ぎ取られていくことは、本当に心を痛めずに入られません。自然公園は、いったん開発の手が入ると、その自然を取り戻すことは、非常に困難です。
  4 都立多摩丘陵公園などの緑地の開発を抑制するため、自然保護条例の強化など、都として何らかのシステムをつくることを提案するものですが、見解を求めます。
   都は、かってJRが、宅地開発を計画していた奥多摩の横沢入り地域について、本年1月、里山地域に指定いたしました。同地域が、たくさんの都民に利用されることを願うものです。同時に、多摩地域には、横沢入り以外にも、オオタカが棲息する稲城の南山地区、八王子の川口など、里山がまだまだ残されています。これらの地域も開発の危険に直面しており、いま、手立てを打たないと取り返しのつかないことになりかねません。
  5 こうした里山や屋敷林などを保全を進めるために、保全緑地の公有化予算を抜本的に拡充することを求めるものですが、見解を伺います。

平成18年第一回都議会定例会
松村友昭議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 東京のみどりと水について
  1 都は都市計画公園・緑地の整備方針で、工場跡地などを公園・緑地として位置づけ、将来に備える必要があるとした。これらの貴重な土地空間を都市計画公園として整備していくべきだが、見解を伺う。

回答
  都市計画公園・緑地は、将来にわたり、良好な都市環境を確保するために必要な施設として都市計画決定されています。
  新規の都市計画公園の配置については、「みどりの新戦略ガイドライン」の「みどりの拠点と軸」の形成のあり方を踏まえ、地域状況や土地状況などを考慮していきます。

質問事項
 一の2 本来、都市計画公園は都民誰もが利用し、憩うことが出来る空間でなければならず、民設公園はなじまない。都市計画公園は、公共が土地を確保して整備することが不可欠だが、見解を伺う。

回答
  事業化を必要とする都市計画公園・緑地は、約2,600ヘクタールにも及び、その整備には、相当の期間と多大な費用を要することから、公共による計画的な整備だけでなく、民間の活力を活用した整備が必要です。
  そのため、これまでの公共が主体となった公園整備の手法に加え、企業グラウンド等の民有地を活用した民設公園制度を創設し、公園の整備促進を図ることとしました。

質問事項
 一の3 東京の水路復活の調査を行い、水路と流水を復活して水の再生を進めること、さらに調査の結果再生が可能とされている千川上水の青梅街道から東側の復活に早急に着手すべきである。それぞれ見解を求める。

回答
  水路については、原則的に区、市が管理しており、水路の復活などその形状を変更する場合は、管理者がその現状や影響などを踏まえて検討すべきものです。
  千川上水の青梅街道から東側の暗きょ部については、都が特例的に管理しており、その上部は地域の主要な幹線道路である都道椎名町上石神井線(通称千川通り)等として利用されているため、水路としての復元は困難です。

質問事項
 一の4 自然公園は、いったん開発の手が入ると、その自然を取り戻すことは困難である。都立多摩丘陵公園などの緑地の開発を抑制するため、自然保護条例の強化など、都として何らかのシステムをつくるべきだが、見解を求める。

回答
  都は、自然公園内の開発行為について、東京における自然の保護と回復に関する条例に基づき、市街化調整区域と同様の規制を課すなどし、緑地を適切に確保するよう指導しています。
  今後も、開発を行う事業者に対しては、自然環境に配慮をするよう指導を徹底していきます。

質問事項
 一の5 多摩地域には里山がまだ残されているが、開発の危険に直面している。里山や屋敷林などの保全を進めるために、保全緑地の公有化予算を抜本的に拡充すべきだが、見解を伺う。

回答
  平成17年度、東京における自然の保護と回復に関する条例に基づき、あきる野市の横沢入を初めて里山保全地域として指定し、丘陵部の貴重な自然を保全することとしました。
  今後とも、保全地域内の民有地については、予算の効率的な執行に努めながら、適切に公有化を進めていきます。

平成18年第一回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  大山とも子

質問事項
 一 児童養護施設、グループホームの増設とサービス推進費の改善拡充を求める

 一 児童養護施設、グループホームの増設とサービス推進費の改善拡充を求める
   今、児童養護施設は、子どもが次から次と入ってきて、出たらすぐ入る、と言うのが実感だといわれています。東京都は、児童養護施設に対し、要養護児童の増加で、04年度までは都立施設に対し、また05年度以降は民間児童養護施設に対しても、定員を超えて児童を受け入れてほしいという依頼文書を出しました。一時保護所の入所率も2000年度平均は89.5%でしたが、2004年度は98.0%ですから、増加傾向で一時保護所も満杯状態です。養護を必要としている子どもたちに比べて一時保護所も児童養護施設も圧倒的に不足しているということは明らかです。
  1 児童養護施設や一時保護所の不足について、どう認識しているのですか。
  2 児童養護施設とグループホームを増設していくことが切実に求められていますがどうですか。
  3 立川児童相談所一時保護所の廃止計画は中止され存続する予算が提案されました。わが党がつよく求めてきたことであり、歓迎するものです。墨田児童相談所一時保護所についても廃止せず、存続するべきです。見解を伺います。
   私が訪問した児童養護施設の施設長さんは、常にほとんど定員が満杯であるため、虐待のケースなど、生命に危険があるような、優先順位が高い大変な子しか入れないのが実情だと、その深刻な現状をつよく訴えています。
   児童養護施設は、さまざまなケースの子がいて、成り立ってきました。精神科への通院、入退院している子も増えていて、現在クリニックに3人通院、1人は入退院繰り返している、とのことでした。被虐待児は、職員をこれでもかこれでもかと、職員の弱いところを突いてきたり、いらだたせることなどで試してきます。心身ともに傷つき、大人が信頼できなくなってるのですからこれは仕方がないことだと言えます。
   信頼関係ができて初めて子どもは心を開きます。それだけに、適切に対応できる職員が必要です。さらに、一人が落ち着いたころ、また被虐待児が措置され、落ち着いた子も動揺することもあります。被虐待児で、かっとすると、殴ったり、壁やドアを蹴っ飛ばしたりという状況の子もいます。訪問した時も通常は6人一部屋ですが、措置されてきた年長の子が、かっとすると危険なので、小さい子4人は、他の部屋に避難しているとのことでした。
   その施設は、家庭的養護ということで、20年程前からグループホームを設置し現在は4ヶ所のグループホームがあります。集団的に大きいと、子どもは甘えなどの行動をあまり出せないので、大きな規模の収容的な施設から現在の生活施設にかえてきました。これは、子どもたちにとっては良いのですが、分散すればするほど、職員は多く必要となります。職員配置の不十分さが、グループホームを増やすうえでの障害になっています。
  4 グループホームの職員配置体制の強化に向け、都の支援をつよめる必要があると思いますが、いかがですか。
  5 児童養護施設にたいする国の職員配置基準は、3歳児で児童4人に職員1人、小学生以上では児童6人に職員1人というもので、実際にはこの人数で24時間365日の勤務体制をくむのですから、あまりにも低すぎます。職員配置の国基準の改善を、国につよく働きかけることが必要です。お答え下さい。
   児童養護施設が満杯状態になり、職員体制の強化も緊急課題になっているなかで、都がサービス推進費補助を、職員の経験年数を加味しない方式に変えたうえ、削減をすすめていることは、矛盾をいっそうひろげ、事態をいっそう深刻なものとしています。
   訪問した施設では、2004年、2005年とも420万円程度の削減で、とうとう職員を減らさざるを得なくなりました。2005年度には非常勤を含んで35人いた職員を2006年度は32人と夜間当直のための大学生アルバイトを配置することしか手段がないということになりました。予算的には2.5人分減らさなければならないからです。結局、グループホームは、現在は3人配置ですが2.5人の配置しかできません。
   サービス推進費の最大の問題は、昇給財源がないことです。児童養護施設に入所してくる子どもたちは、さまざまな問題を抱えてきます。家庭崩壊、父母の精神障害、破産、それに加えて虐待を受けているケースが多くなっています。荒れて、職員に暴力を振るう、学校で暴れる。入所している子どもも、すんなりと成長するわけではありません。良いときも荒れるときもあります。すごくがんばっているという年があったかと思ったら、次の年には沈んだり、不安定さを受け止めながら成長していくことを助ける、高い専門性の求められる仕事です。職員には経験と学習と職員集団としての力量の向上が求められています。そのためには、職員が継続して働けることが最低の条件ですが、継続して働くための昇給財源がないのですから重大な問題です。
  6 サービス推進費の改悪で、昇給財源がないことについて、どう認識しているのですか。
  7 また、措置される子ども、親の状況はますます難しくなっているにもかかわらず、サービス推進費削減で、人員を減らさなければならない現実をどう認識しているのですか。
   児童福祉法が昨年改定され、退所後のアフターケアが養護施設の仕事になりました。このため、施設を出た後のケアについて国は、ファミリーソーシャルワーカーとして1人を増員しました。つまり、児童養護施設の職員は、ケアワークとソーシャルワークの両方ができなければならないことになりました。
   虐待した親は、対人関係がもてない人が多く、「そうじゃなくて、こうしたほうがいいよ」などと言われても攻撃されたと受け止めてしまうケースも多いと言われています。また、親が孤立していて、1日に2回も3回も施設に電話をかけてくるケースも少なくありません。
   このようななか施設の現場では、経験があり、専門性が高い熟練した職員の必要性が、施設の現場では高まっているのです。
   ところが、いまのサービス推進費は実績払いなので、3歳児が1人いるかいないかで額が大きく変わってくるような不安定なものとなっています。
   児童養護施設の施設長も職員も、児童が自立するときは1人当たり10万7400円、家庭に戻るときには6万5540円の加算というような、「出来高払い」ということ自体、全くおかしい。働きかけの過程が重要であり、それを保障できる人員配置と年数が必要だと訴えています。私が話を聞いた施設長さんは、「アフターケアまで含めると、15年ぐらいの経験がないと児童養護に求められる仕事はできない」と語っていました。
  8 サービス推進費補助は、実績払いといった不安定な算定方法ではなく、職員の経験年数や必要な処遇が十分におこなえる職員配置を確保できるように改善することが、現場の切実な要求です。ぜひ、この要求にこたえていただきたい。
  9 サービス推進費補助のこれ以上の削減はやめ、拡充・増額することを求めるものです。見解を伺います。

平成18年第一回都議会定例会
大山とも子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 児童養護施設、グループホームの増設とサービス推進費の改善拡充を求める
  1 養護を必要としている子どもたちに比べて一時保護所も児童養護施設も圧倒的に不足している。児童養護施設や一時保護所の不足について、どう認識しているのか伺う。

回答
  都は、社会的養護の需要を踏まえ、グループホームの設置促進を図るとともに、平成18年2月に新たな一時保護所を開設するなど、一時保護や措置が必要な児童について適切に対応しています。

質問事項
 一の2 児童養護施設とグループホームを増設していくことが切実に求められているがどうか。

回答
  都は、国に先駆けてグループホーム制度を創設し、これまでも家賃補助による支援を行うなど、積極的に設置を促進してきました。
  こうした取組により、平成18年度には新たに20か所のグループホームの設置を見込んでおり、着実に基盤整備を図っています。

質問事項
 一の3 立川児童相談所一時保護所の廃止計画は中止された。墨田児童相談所一時保護所も廃止せず、存続すべきである。見解を伺う。

回答
  一時保護所については、保護需要を適切に踏まえ、都内の一時保護所の配置状況等を考慮した上で、児童相談センター西部一時保護所を開設し、墨田児童相談所一時保護所を休止するとともに、立川児童相談所一時保護所の継続を決定しました。

質問事項
 一の4 職員配置の不十分さが、グループホームを増やすうえでの障害となっている。グループホームの職員配置体制の強化に向け、都の支援をつよめるべきだが、いかがか。

回答
  都はこれまでも、グループホームの拡充に向け、独自の支援策を講じるなど、積極的な取組を進めてきました。
  グループホームの職員配置体制については、平成18年予算特別委員会における議論などを踏まえた上で、更なる実態把握に努めながら十分検討していきます。

質問事項
 一の5 児童養護施設にたいする国の職員配置基準は、あまりにも低すぎる。職員配置の国基準の改善を、国につよく働きかけるべきである。答弁を求める。

回答
  都は、児童養護施設の望ましい処遇水準を確保するため、施設職員の配置について、従来から国基準を上回る措置を講じてきました。
  国基準の改善については、平成18年予算特別委員会における議論などを踏まえ、入所児童の状況に応じたきめ細かな対応が可能となるよう、国に働きかけていくこととしています。

質問事項
 一の6 職員の力量の向上には、継続して働けることが最低条件だが、昇給財源がないのは問題である。サービス推進費の改悪で、昇給財源がないことについて、どう認識しているのか伺う。

回答
  民間社会福祉施設サービス推進費補助は、利用者サービスの向上を目的としたものであり、施設職員の処遇を第一義的な目的としたものではありません。
  なお、基本的な運営に要する経費については、措置費の中で確保されています。

質問事項
 一の7 措置される子ども、親の状況はますます難しくなっているにもかかわらず、サービス推進費削減で、人員を減らさなければならない現実をどう認識しているのか伺う。

回答
  児童養護施設やグループホームの運営は、基本的には措置費により必要な水準が確保されているものです。
  民間社会福祉施設サービス推進費補助は、利用者サービスの向上に向けた施設の努力に応じて補助額が増加するものであり、また、再構築に当たっては経過措置を設けており、施設運営に支障がないと考えています。

質問事項
 一の8 サービス推進費補助は、実績払いといった不安定な算定方法ではなく、職員の経験年数や必要な措置が十分おこなえる職員配置を確保できるよう改善すべきだが、見解を伺う。

回答
  民間社会福祉施設サービス推進費補助の再構築は、施設の定員、利用者数、職員の経験年数等に基づく画一的な仕組みを改め、施設における実際のサービス内容やサービス向上に向けた努力に連動したものとなるよう実施したものです。
  再構築後の施設運営は、決算状況や運営指導等により把握に努めていますが、利用者サービスの向上に向けた取組が着実に進むなど、おおむね順調に推移しています。

質問事項
 一の9 サービス推進費補助のこれ以上の削減はやめ、拡充・増額することを求める。見解を伺う。

回答
  民間社会福祉施設サービス推進費補助の再構築は、サービスの質の向上を目指して、施設代表者との合意を得た上で実施したものです。
  今後とも、社会状況や都民ニーズの変化を的確にとらえた、より効率的・効果的な施設運営に資する仕組みとなるよう適切に対応していきます。

平成18年第一回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  田中良

質問事項
 一 東京外かく環状道路整備について

 一 東京外かく環状道路整備について
   東京外かく環状道路(関越道~東名高速)の整備は、昭和45年10月の建設大臣による「地元と話し得る条件の整うまでは強行すべきではない」旨の答弁以来、事実上凍結状態にあったが、平成11年12月、石原都知事が「自動車専用部の地下化案を基本として計画の具体化に取り組む」ことを表明したことにより、計画の実現に向けた動きが再開され、今日に至っている。
  1 東京外かく環状道路計画の最大の目的は、都内通過交通排除のための高速道路交通ネットワークの早期完成にあり、沿線住民に対する利便性の供与などは付随的事項であると理解しているが、外環整備計画の目的について、改めて所見を伺う。
   外環の検討にあたっては、国と都がPI方式で進めており、このことは、計画の凍結から再開に至った経緯、近年の公共事業の進め方に対する国民の一般的な見方などを鑑みれば、当然のことと考える。
   平成15年、国と都は「インターチェンジについてはインターチェンジなしを検討の基本とするが、その設置については地元の意向等を踏まえる」、「インターチェンジについては、今後、地元の意向等を踏まえながら、設置の有無について検討する」、「ジャンクション構造の一体的活用について検討する」との方針を公表した。
   この方針に基づき、平成17年1月より、インターチェンジの設置に関する地元住民の意見収集を実施、9月には「東京外かく環状道路(関越道~東名高速間)についての考え方-計画の具体化に向けて-」が公表された。
  2 青梅街道インターチェンジについては、練馬区と杉並区の境界に位置するため、「考え方」が公表される以前において、両区の行政・住民からフルインターを設置するのか、しないのかの2案についての意見を収集したように聞いているが、具体的にはどのような意見が上がってきているのか、伺う。
  3 青梅街道インターチェンジについて、フルインターを設置するか、しないかの意見収集段階においては、練馬区側の住民は設置に賛成の意向が強く、杉並区側は反対の意向が強いようであると認識している。
   その後「考え方」で示されたハーフインター設置案は、両者の相反する意見を中途半端に満足させるための安易な妥協案ではないのか。ハーフインター設置案には、50年、100年といったスパンで考える都市計画的な理念が欠落しているように思われる。
   青梅街道インターチェンジを設置するのであるならば、フルインターとして設置するべきであり、フルインターを設置するか、しないかの二者択一の判断を行うべきであると考えるが、所見を伺う。
  4 また、「考え方」を公表する前にハーフインターとする案を地元住民に示し、その意見を聞いた事実はあるのかどうか、伺う。
  5 インターチェンジの設置について、地元住民の意見がまとまらない場合に、外環道整備の延期を回避するため、建設工事にあたり、インターチェンジを設置せずに先に大震度地下のトンネル部分だけを先行して施工し、まずは高速道路ネットワークの完成を急ぎ、地元の合意を得た段階で後からインターチェンジの設置工事を行うという手法が考えられる。このようなことは技術的に可能なのかどうか、また、その実現性について、所見を伺う。
  6 仮に、青梅街道インターチェンジとしてハーフインターが最適であるという判断をするならば、インターチェンジを設置しない、フルインターを設置する、ハーフインターを設置する、の3案を再度地元住民に示して意見の集約を行い、比較検討すべきと考える。
   ハーフインターとする「考え方」が示された後、平成17年10月には「計画概念図」が公表されているわけであるが、その後約5カ月が経過した。この間、練馬並びに杉並両区の行政・住民からはハーフインター案を含む3案を示して比較検討してもらった上で意見収集を行っているのか、具体的にはどのような手法で意見収集を行ってきたか、また、ハーフインター案に対して具体的にはどのような声(特に、フルインター設置案とインターチェンジ無設置案との比較において)が上がってきているのか、伺う。
  7 外環道計画が大深度地下化で進められることとなった経緯、沿道住民の感情などを踏まえれば、地上部分の道路の拡幅整備はおそらく望まれないであろうし、仮に現行計画を前提に地上部分の道路整備を進めようとしても、地元の合意を得ることは非常に困難であろうと予想される。
   従って、地下部分の外環道計画と、地上部分の道路計画とは、切り離して考えざるを得ないのではないかと考える。
   そこで、今後、外環道計画の変更を都市計画決定する場合、インターチェンジ周辺地域を除く地上部分の現行の都市計画は白紙になると考えてよいのかどうか、外環道となる地下部分と、インターチェンジ部分を除く地上部分とは切り離して都市計画決定されると考えてよいのかどうか、所見を伺う。
  8 外環道計画の変更が正式に都市計画決定されるまでの当面のスケジュール(目標)、並びに外環道完成までの概略スケジュール(目標)について、伺う。

平成18年第一回都議会定例会
田中良議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 東京外かく環状道路整備について
  1 東京外かく環状道路計画の最大の目的は、都内通過交通排除のための高速道路ネットワークの早期完成にあり、沿線住民への利便性供与は付随的事項と理解しているが、外環整備計画の目的について所見を伺う。

回答
  外環道は、東名高速や中央道など放射方向の高速道路を相互に連絡して、都心方向に集中する交通を円滑に分散導入し、都心に起終点を持たない通過交通をバイパスさせ、首都圏の交通混雑緩和と環境の改善を図るとともに、都市再生に不可欠な道路です。
  併せて、沿線地域からインターチェンジまでのアクセス時間や旅行時間の短縮など、利便性の向上に資する道路です。

質問事項
 一の2 青梅街道インターチェンジに関し、練馬区、杉並区の行政・住民からフルインターを設置するか、しないかの二案についての意見収集をしたが、具体的にどのような意見が上がってきているのか伺う。

回答
  青梅街道インターチェンジに関しては、設置する場合としない場合の両方について、交通の変化や利便性、周辺に対する影響を平成17年7月に取りまとめ、その後8月まで、「意見を聴く会」や「外環オープンハウス」を開催し、幅広く意見を聴いてきました。
  その中で、練馬会場では「インターチェンジは必要」、「環境悪化、交通量増加の懸念から反対」という意見が、杉並会場では「一部に反対意見があるが、区民アンケートでは大多数が賛成している、判断して欲しい」、「インターチェンジによる自然破壊が心配」などの意見がありました。
  一方、練馬区からは「外環本来の機能を発揮するためには、インターチェンジは必要」、杉並区からは「善福寺地区への影響を考えてインターチェンジには反対」などの意見がありました。

質問事項
 一の3 ハーフインター設置案は都市計画的理念が欠落している。青梅街道インターチェンジを設置するのであれば、フルインターとすべきであり、設置するか、しないかの二者択一の判断をすべきだが、所見を伺う。

回答
  インターチェンジの形式は、周辺道路や利用圏域などの地域の状況を踏まえて選定するものです。
  青梅街道インターチェンジの交通量を推計したところ、東名高速方向に比べ、関越道方向への交通量が卓越しています。
  このため、地元区や住民意見なども踏まえ、周辺の道路整備の状況や隣接する目白通りインターチェンジの利用圏域などを勘案し、平成17年9月に公表した「外かく環状道路に関する国と都の考え方」において、ハーフインターチェンジとしました。

質問事項
 一の4 「考え方」を公表する前にハーフインターとする案を地元住民に示し、その意見を聞いた事実はあるのかどうか伺う。

回答
  平成17年9月に「外かく環状道路に関する国と都の考え方」を公表する以前に、練馬区及び杉並区で開催した「意見を聴く会」では、青梅街道インターチェンジをフルインターチェンジで設置する場合と、しない場合の交通の変化や効果、影響などについて示し、意見を聴きました。
  また、9月からは、ハーフインターチェンジとする考え方について意見を聴きました。

質問事項
 一の5 大深度地下のトンネル部分だけを先行して施工し、地元の合意を得た段階で後からインターチェンジ設置工事を行う手法が考えられるが、技術的に可能なのか、またその現実性について所見を伺う。

回答
  大深度地下の施工方法で本線トンネル開通後にインターチェンジを設置することは、将来の技術開発によっては可能であると考えますが、交通運用面や建設コスト面など新たな課題が生じることから、都市計画として定めるインターチェンジについては、本線と同時に整備することが現実的であると考えます。

質問事項
 一の6 練馬区、杉並区の行政・住民から、ハーフインターを含む三案を示し意見収集を行っているのか、具体的にどのような手法か、ハーフインター案に対しどのような声が上がっているのか伺う。

回答
  平成17年9月に「外かく環状道路に関する国と都の考え方」の公表以降、改めて練馬区及び杉並区において「意見を聴く会」や「外環オープンハウス」を開催し、ハーフインターチェンジ案について説明し、意見を聴きました。
  練馬会場では「高速道を計画する以上、インターチェンジは必要」、「人や環境に配慮したインターチェンジにして欲しい」「利便性やコスト面で問題がある」という意見が、杉並会場では「練馬区側への設置は現実的である」、「利便性がより高いフルインターチェンジにすべき」、「環境への影響が心配なので反対」などの意見がありました。
  一方、平成18年4月に開催した、区・市長意見交換会において、練馬区からは「フルインターチェンジによる整備が必要」、「インターチェンジを設置する地域については、緑豊かな環境の創出に配慮するなど、十分な対策が必要」、杉並区からは「インターチェンジ設置の必要性は低い」、「仮に、練馬区側にインターチェンジを設置するとしても、交通問題や善福寺池、地下水脈への影響と対策を明らかにすべき」などの意見がありました。

質問事項
 一の7 外環道計画の変更を都市計画決定する場合、インターチェンジ周辺地域を除く地上部分の都市計画は白紙になるのか、外環道となる地下部分と、インターチェンジ部分を除く地上部分とは切り離して決定されるのか、所見を伺う。

回答
  昭和41年7月に、「東京都市計画道路都市高速道路東京外郭環状線」、「東京都市計画道路幹線街路外郭環状線の2」並びに関連する「東京都市計画道路都市高速道路附属街路」がそれぞれ都市計画決定されています。
  外環道本線の都市計画を地下式に変更した場合の地上部の街路である外環ノ2については、「現在の計画を活かして緑豊かな道路とする。」、「幅員を縮小して整備する。」、「代替機能を確保して計画を廃止する。」の三つの考え方を示し、意見を聴いている段階です。

質問事項
 一の8 外環道計画の変更が正式に都市計画決定されるまでの当面のスケジュール(目標)、並びに外環道完成までの概略スケジュール(目標)について伺う。

回答
  外環道の都市計画変更に当たっては、環境影響評価法に基づく環境アセスメントを併せて行う必要があります。
  また、都市計画の変更後、事業者が測量、詳細設計などを行い、用地買収を実施し、工事に着手します。
  外環道は、東京の交通混雑を緩和し、環境を改善するとともに、都市再生に不可欠な道路であるため、早期事業化に向け、国に対して整備を加速するよう働きかけていきます。

ページ先頭に戻る