平成十七年東京都議会会議録第十八号

平成十七年十二月八日(木曜日)
 出席議員(百二十五名)
一番遠藤  守君
二番伊藤 興一君
三番田中たけし君
四番鈴木 隆道君
五番宇田川聡史君
六番後藤 雄一君
七番福士 敬子君
八番伊沢けい子君
九番そなえ邦彦君
十番原田 恭子君
十一番花輪ともふみ君
十二番伊藤 ゆう君
十三番原田  大君
十四番河野百合恵君
十五番小竹ひろ子君
十六番松葉多美子君
十七番大松  成君
十八番中山 信行君
十九番高倉 良生君
二十番早坂 義弘君
二十一番高木 けい君
二十二番崎山 知尚君
二十三番坂本たけし君
二十四番石森たかゆき君
二十五番高橋 信博君
二十六番村上 英子君
二十七番鈴木あきまさ君
二十八番山口 文江君
二十九番佐藤 広典君
三十番尾崎 大介君
三十一番山口  拓君
三十二番伊藤まさき君
三十三番松下 玲子君
三十四番たぞえ民夫君
三十五番村松みえ子君
三十六番橘  正剛君
三十七番上野 和彦君
三十八番吉倉 正美君
三十九番谷村 孝彦君
四十番矢島 千秋君
四十一番高橋かずみ君
四十二番山加 朱美君
四十三番串田 克巳君
四十四番吉原  修君
四十五番山田 忠昭君
四十六番臼井  孝君
四十八番服部ゆくお君
四十九番大西由紀子君
五十番野上ゆきえ君
五十一番西岡真一郎君
五十二番吉田康一郎君
五十三番斉藤あつし君
五十四番泉谷つよし君
五十五番くまき美奈子君
五十六番大西さとる君
五十七番かち佳代子君
五十八番植木こうじ君
五十九番長橋 桂一君
六十番野上 純子君
六十一番東村 邦浩君
六十二番小磯 善彦君
六十三番東野 秀平君
六十四番松原 忠義君
六十五番田代ひろし君
六十六番神林  茂君
六十七番秋田 一郎君
六十八番林田  武君
六十九番きたしろ勝彦君
七十一番高島なおき君
七十二番鈴木 一光君
七十三番増子 博樹君
七十四番いのつめまさみ君
七十五番門脇ふみよし君
七十六番小沢 昌也君
七十七番石毛しげる君
七十八番岡崎 幸夫君
七十九番山下 太郎君
八十番清水ひで子君
八十一番古館 和憲君
八十二番松村 友昭君
八十三番藤井  一君
八十四番ともとし春久君
八十五番木内 良明君
八十六番鈴木貫太郎君
八十七番こいそ 明君
八十八番遠藤  衛君
八十九番倉林 辰雄君
九十番川井しげお君
九十一番三宅 茂樹君
九十二番樺山たかし君
九十三番宮崎  章君
九十四番古賀 俊昭君
九十五番立石 晴康君
九十六番桜井  武君
九十七番初鹿 明博君
九十八番酒井 大史君
九十九番大沢  昇君
百番真木  茂君
百一番大津 浩子君
百二番大塚たかあき君
百三番馬場 裕子君
百四番曽根はじめ君
百五番大山とも子君
百六番石川 芳昭君
百七番中嶋 義雄君
百八番石井 義修君
百九番桜井良之助君
百十番比留間敏夫君
百十一番吉野 利明君
百十二番新藤 義彦君
百十三番野村 有信君
百十四番大西 英男君
百十五番山崎 孝明君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番相川  博君
百二十一番柿沢 未途君
百二十二番中村 明彦君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番田中  良君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番渡辺 康信君

 欠席議員(二名)
四十七番 野島 善司君
七十番  近藤やよい君

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事横山 洋吉君
副知事大塚 俊郎君
副知事関谷 保夫君
出納長幸田 昭一君
教育長中村 正彦君
知事本局長山口 一久君
総務局長高橋  功君
財務局長谷川 健次君
警視総監奥村萬壽雄君
主税局長菅原 秀夫君
生活文化局長山内 隆夫君
都市整備局長梶山  修君
環境局長大橋 久夫君
福祉保健局長平井 健一君
産業労働局長成田  浩君
建設局長岩永  勉君
港湾局長津島 隆一君
交通局長松澤 敏夫君
消防総監関口 和重君
水道局長御園 良彦君
下水道局長前田 正博君
青少年・治安対策本部長舟本  馨君
病院経営本部長大塚 孝一君
中央卸売市場長森澤 正範君
選挙管理委員会事務局長渡辺日佐夫君
人事委員会事務局長佐藤  広君
労働委員会事務局長押元  洋君
監査事務局長高橋 道晴君
収用委員会事務局長嶋津 隆文君

十二月八日議事日程第三号
第一 第百八十七号議案
  市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第二 第百八十八号議案
  職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第三 第百八十九号議案
  東京都の一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四 第百九十号議案
  東京都の一般職の任期付研究員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第五 第百九十一号議案
  職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第六 第百九十二号議案
  職員の旅費に関する条例の一部を改正する条例
第七 第百九十三号議案
  東京都公営企業の管理者の給料等に関する条例の一部を改正する条例
第八 第百九十四号議案
  東京都公債条例の一部を改正する条例
第九 第百九十五号議案
  東京都都税条例の一部を改正する条例
第十 第百九十六号議案
  旅券法関係手数料条例の一部を改正する条例
第十一 第百九十七号議案
  東京都学校経営支援センター設置条例
第十二 第百九十八号議案
  東京都教職員研修センター設置条例の一部を改正する条例
第十三 第百九十九号議案
  学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
第十四 第二百号議案
  東京都教育委員会教育長の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第十五 第二百一号議案
  学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第十六 第二百二号議案
  都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例の一部を改正する条例
第十七 第二百三号議案
  学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第十八 第二百四号議案
  東京都教育委員会職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第十九 第二百五号議案
  都立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例
第二十 第二百六号議案
  東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第二十一 第二百七号議案
  東京都立高等学校の寄宿舎使用料徴収条例の一部を改正する条例
第二十二 第二百八号議案
  東京都立学校校外教育施設設置条例の一部を改正する条例
第二十三 第二百九号議案
  東京都市計画事業晴海四・五丁目土地区画整理事業施行規程
第二十四 第二百十号議案
  東京都国土利用開発審議会条例の一部を改正する条例
第二十五 第二百十一号議案
  多摩都市計画多摩土地区画整理事業施行規程等の一部を改正する条例
第二十六 第二百十二号議案
  東京都日影による中高層建築物の高さの制限に関する条例の一部を改正する条例
第二十七 第二百十三号議案
  東京都建築安全条例の一部を改正する条例
第二十八 第二百十四号議案
  東京都国民健康保険調整交付金条例
第二十九 第二百十五号議案
  東京都立病院条例の一部を改正する条例
第三十 第二百十六号議案
  地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターに係る地方独立行政法人法第四十四条第一項の条例で定める重要な財産を定める条例
第三十一 第二百十七号議案
  地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターに係る地方独立行政法人法第五十九条第二項に規定する条例で定める内部組織を定める条例
第三十二 第二百十八号議案
  東京都立産業技術研究所条例を廃止する条例
第三十三 第二百十九号議案
  東京都地域中小企業振興センター条例を廃止する条例
第三十四 第二百二十号議案
  東京都立食品技術センター条例の一部を改正する条例
第三十五 第二百二十一号議案
  東京都中央卸売市場条例の一部を改正する条例
第三十六 第二百二十二号議案
  東京都地方卸売市場条例の一部を改正する条例
第三十七 第二百二十三号議案
  東京都自然公園条例の一部を改正する条例
第三十八 第二百二十四号議案
  東京都浄化槽保守点検業者の登録に関する条例の一部を改正する条例
第三十九 第二百二十五号議案
  東京都葬儀所条例の一部を改正する条例
第四十 第二百二十六号議案
  東京都公営企業職員の給与の種類及び基準に関する条例の一部を改正する条例
第四十一 第二百二十七号議案
  警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第四十二 第二百二十八号議案
  警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例
第四十三 第二百二十九号議案
  性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例の一部を改正する条例
第四十四 第二百三十号議案
  東京都デートクラブ営業等の規制に関する条例の一部を改正する条例
第四十五 第二百三十一号議案
  地下車路出路築造工事(十七汐留―四)請負契約
第四十六 第二百三十二号議案
  都立板橋地区単位制高等学校(仮称)(H十七)体育館改築及び校舎改修工事請負契約
第四十七 第二百三十三号議案
  平成十七年度新海面処分場Gブロック西側護岸建設工事(その一)請負契約
第四十八 第二百三十四号議案
  平成十七年度新海面処分場Gブロック西側護岸建設工事(その二)請負契約
第四十九 第二百三十五号議案
  神田川・環状七号線地下調節池(第二期)善福寺川取水施設設備工事(その六―二)請負契約
第五十 第二百三十六号議案
  公立大学法人首都大学東京が徴収する料金の上限の認可について
第五十一 第二百三十七号議案
  東京都人権プラザの指定管理者の指定について
第五十二 第二百三十八号議案
  交通信号機等工事に係る損害賠償請求に関する民事訴訟の提起について
第五十三 第二百三十九号議案
  神宮前一丁目民活再生プロジェクト事業契約の締結について
第五十四 第二百四十号議案
  当せん金付証票の発売について
第五十五 第二百四十一号議案
  東京都江戸東京博物館外五施設の指定管理者の指定について
第五十六 第二百四十二号議案
  東京都立大島セミナーハウスの指定管理者の指定について
第五十七 第二百四十三号議案
  東京都立埋蔵文化財調査センターの指定管理者の指定について
第五十八 第二百四十四号議案
  東京体育館の指定管理者の指定について
第五十九 第二百四十五号議案
  駒沢オリンピック公園総合運動場の指定管理者の指定について
第六十 第二百四十六号議案
  東京武道館の指定管理者の指定について
第六十一 第二百四十七号議案
  東京辰巳国際水泳場の指定管理者の指定について
第六十二 第二百四十八号議案
  東京都営住宅、東京都福祉住宅、東京都特定公共賃貸住宅、東京都地域特別賃貸住宅等の指定管理者の指定について
第六十三 第二百四十九号議案
  東京都営住宅、東京都特定公共賃貸住宅、東京都地域特別賃貸住宅等の指定管理者の指定について
第六十四 第二百五十号議案
  東京都営住宅、東京都福祉住宅、東京都特定公共賃貸住宅、東京都地域特別賃貸住宅、東京都引揚者住宅等の指定管理者の指定について
第六十五 第二百五十一号議案
  東京都リハビリテーション病院の指定管理者の指定について
第六十六 第二百五十二号議案
  東京都立心身障害者口腔保健センターの指定管理者の指定について
第六十七 第二百五十三号議案
  東京都網代ホームきずなの指定管理者の指定について
第六十八 第二百五十四号議案
  東京都品川景徳学園外七施設の指定管理者の指定について
第六十九 第二百五十五号議案
  東京都伊豆長岡学園の指定管理者の指定について
第七十 第二百五十六号議案
  東京都新生寮の指定管理者の指定について
第七十一 第二百五十七号議案
  東京都障害者総合スポーツセンター外一施設の指定管理者の指定について
第七十二 第二百五十八号議案
  東京都八王子自立ホームの指定管理者の指定について
第七十三 第二百五十九号議案
  東京都視覚障害者生活支援センターの指定管理者の指定について
第七十四 第二百六十号議案
  東京都聴覚障害者生活支援センターの指定管理者の指定について
第七十五 第二百六十一号議案
  東京都清瀬園の指定管理者の指定について
第七十六 第二百六十二号議案
  東京都多摩療護園の指定管理者の指定について
第七十七 第二百六十三号議案
  東京都清瀬療護園の指定管理者の指定について
第七十八 第二百六十四号議案
  東京都日野療護園の指定管理者の指定について
第七十九 第二百六十五号議案
  東京都練馬就労支援ホーム外一施設の指定管理者の指定について
第八十 第二百六十六号議案
  東京都清瀬喜望園の指定管理者の指定について
第八十一 第二百六十七号議案
  東京都七生福祉園外四施設の指定管理者の指定について
第八十二 第二百六十八号議案
  東京都日の出福祉園の指定管理者の指定について
第八十三 第二百六十九号議案
  東京都江東通勤寮の指定管理者の指定について
第八十四 第二百七十号議案
  東京都大田通勤寮の指定管理者の指定について
第八十五 第二百七十一号議案
  東京都葛飾通勤寮の指定管理者の指定について
第八十六 第二百七十二号議案
  東京都豊島通勤寮の指定管理者の指定について
第八十七 第二百七十三号議案
  東京都立川通勤寮の指定管理者の指定について
第八十八 第二百七十四号議案
  東京都町田通勤寮の指定管理者の指定について
第八十九 第二百七十五号議案
  東京都立東大和療育センターの指定管理者の指定について
第九十 第二百七十六号議案
  地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター(仮称)に承継させる権利を定めることについて
第九十一 第二百七十七号議案
  地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター定款について
第九十二 第二百七十八号議案
  東京都立産業貿易センターの指定管理者の指定について
第九十三 第二百七十九号議案
  東京都立食品技術センターの指定管理者の指定について
第九十四 第二百八十号議案
  東京都しごとセンターの指定管理者の指定について
第九十五 第二百八十一号議案
  晴海客船ターミナル外二施設の指定管理者の指定について
第九十六 第二百八十二号議案
  竹芝客船ターミナルの指定管理者の指定について
第九十七 第二百八十三号議案
  竹芝ふ頭船舶給水施設外六施設の指定管理者の指定について
第九十八 第二百八十四号議案
  東京都立東京港野鳥公園の指定管理者の指定について
第九十九 第二百八十五号議案
  東京都立若洲海浜公園の指定管理者の指定について
第百 第二百八十六号議案
  東京都立有明テニスの森公園の指定管理者の指定について
第百一 第二百八十七号議案
  東京都立お台場海浜公園外十七公園の指定管理者の指定について
第百二 第二百八十八号議案
  東京都立大井ふ頭中央海浜公園外十七公園の指定管理者の指定について
第百三 第二百八十九号議案
  東京都立葛西海浜公園の指定管理者の指定について
第百四 第二百九十号議案
  二見漁港岸壁(公用岸壁)外九施設の指定管理者の指定について
第百五 第二百九十一号議案
  東京都立奥多摩湖畔公園山のふるさと村の指定管理者の指定について
第百六 第二百九十二号議案
  東京都立大島公園海のふるさと村の指定管理者の指定について
第百七 第二百九十三号議案
  東京都立多幸湾公園の指定管理者の指定について
第百八 第二百九十四号議案
  東京都檜原都民の森の指定管理者の指定について
第百九 第二百九十五号議案
  東京都奥多摩都民の森の指定管理者の指定について
第百十 第二百九十六号議案
  東京都立木場公園外七公園の指定管理者の指定について
第百十一 第二百九十七号議案
  東京都立芝公園外十九公園の指定管理者の指定について
第百十二 第二百九十八号議案
  東京都立狭山公園外三公園の指定管理者の指定について
第百十三 第二百九十九号議案
  東京都立長沼公園外四公園の指定管理者の指定について
第百十四 第三百号議案
  東京都立陵南公園外十六公園の指定管理者の指定について
第百十五 第三百一号議案
  東京都立浜離宮恩賜庭園外八公園の指定管理者の指定について
第百十六 第三百二号議案
  東京都立夢の島公園外一施設の指定管理者の指定について
第百十七 第三百三号議案
  日比谷公会堂外一施設の指定管理者の指定について
第百十八 第三百四号議案
  東京都立潮風公園外一公園の指定管理者の指定について
第百十九 第三百五号議案
  東京都立駒沢オリンピック公園の指定管理者の指定について
第百二十 第三百六号議案
  恩賜上野動物園外三施設の指定管理者の指定について
第百二十一 第三百七号議案
  東京都多磨霊園外七霊園の指定管理者の指定について
第百二十二 第三百八号議案
  東京都青山葬儀所の指定管理者の指定について
第百二十三 第三百九号議案
  東京都瑞江葬儀所の指定管理者の指定について
第百二十四 第三百十号議案
  東京都中野駐車場の指定管理者の指定について
第百二十五 第三百十一号議案
  東京都三田駐車場の指定管理者の指定について
第百二十六 第三百十二号議案
  東京都八重洲駐車場外四施設の指定管理者の指定について
第百二十七 第三百十三号議案
  東京都水道事業の事務の委託の廃止及び府中市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第百二十八 第三百十四号議案
  東京都水道事業の事務の委託の廃止及び小平市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第百二十九 第三百十五号議案
  東京都水道事業の事務の委託の廃止及び東大和市公共下水道使用料徴収事務の受託について
第百三十 第三百十六号議案
  東京都水道事業の事務の委託の廃止及び東久留米市公共下水道使用料徴収事務の受託について
議事日程第三号追加の一
第一 議員提出議案第二十二号
  庶民大増税に反対し、大企業への適正な課税を求めることに関する意見書
第二 議員提出議案第二十三号
  税財政制度の見直しに関する意見書

   午後一時一分開議

○議長(川島忠一君)これより本日の会議を開きます。

○議長(川島忠一君)この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(川島忠一君)次に、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第二十二号、庶民大増税に反対し、大企業への適正な課税を求めることに関する意見書外意見書一件が提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(川島忠一君)昨日に引き続き質問を行います。
 二十三番坂本たけし君。
   〔二十三番坂本たけし君登壇〕

○二十三番(坂本たけし君)私は、現在大きな社会問題となっている姉歯建築設計事務所による耐震強度偽装問題に焦点を絞って質問をいたします。
 十一月十七日に国土交通省がこの問題を発表して以来、十二月六日までに姉歯建築設計事務所が構造計算書を偽造したことが明らかになった建築物は、マンション、ホテルなど六十二件に達し、社会を震撼させております。
 今回の問題は、一級建築士が構造計算書という都民の生命と財産にかかわる重要な書類を偽造した、職業人として著しくモラルを欠く行為であり、その行為が招いた結果の重大性を考えますと、その責任は厳しく追及されなければならないと思います。私は、十数年間の間、建築設計の世界に身を置き、いわば同業の身であった者としまして、今回の事件はまことに残念であり、怒りを覚えるものであります。
 しかし、一方で、建築士の偽装を見抜けぬまま多くのマンション等が完成し、入居に至っていることを考えますと、今回の問題で、単に建築士だけでなく、指定確認検査機関、建設会社、販売会社、そして特定行政庁といったそれぞれの役割の中で、制度や運用面でのさまざまな課題が露呈したといえるのではないかと思います。
 一例をご紹介いたしましょう。ことし六月に、最高裁判所は、指定確認検査機関による確認に関する事務は地方公共団体の事務であると判決を示しております。この判決は、単に地方公共団体が訴訟の対象になり得ることを示しただけのものであり、具体的に地方公共団体の賠償責任を認めたものではありませんが、その可能性を示唆するものであります。
 一方、実態においては、特定行政庁である地方自治体は、国の指定確認検査機関による確認に関与できない仕組みとなっております。つまり、現行の国の建築確認制度とこの最高裁判所の判決に従うならば、地方自治体は権限がないままに責任だけを負わされることになっているわけであります。こんな理不尽な制度をこのまま許しておいてよいのでしょうか。私は、このような、責任の所在が不明確な現行制度について強い問題意識を持っております。そして、東京都が、自治体のリーダーとしての気概を持って、国家賠償請求も辞さない強い姿勢で国に対し制度の見直しを迫っていくことが必要であると考えております。
 このような認識と立場に立ち、次の六つのポイントにわたり、質問をいたします。
 初めに、建築確認における構造審査についてであります。
 構造審査は、構造の専門的知識を有する審査員が、構造計算書の構造審査用チェックマニュアルを活用しながら審査していく必要があります。そうでなければ、今回のような構造計算書の偽造があった場合、あるいは偽造でなくても、構造計算に誤りがあった場合、見抜くことができるのか、おぼつきません。
 そこで、都の構造審査における構造のチェック方法、構造設計図及び構造計算書のチェックはどのようにして行われているのでしょうか。
 また、構造審査に当たる職員の数は、審査物件数に見合って適正に配置されているのか、伺いたいと思います。
 次に、建築工事中の中間検査についてであります。
 中間検査は、建築物の配置や接道状況などの確認とあわせて、建築物の施工が適正に行われているかを検査するものであり、建築物の耐震強度をチェックする上で重要な検査であります。阪神・淡路大震災では施工の不備が原因と考えられる被害が多く見られ、施工段階での検査の重要性が改めて認識されたところであります。
 都におきましては、検査を実施する時期や検査の対象など、中間検査制度はどのようになっているでしょうか、伺います。
 次に、都が指定する指定確認検査機関についてであります。
 指定確認検査機関制度は、阪神・淡路大震災を契機としまして、行政の違反取り締まりや検査の実効性を確保するために、平成十年六月に、建築基準法の改正により、従来特定行政庁が行っていた建築確認検査業務を民間に開放し、国土交通大臣や都道府県知事が指定した民間機関においても行えるようにしたものであります。数多くの指定確認検査機関が設立され、既に相当な割合で建築確認を担う状況になるなど、実績を上げてきております。
 しかしながら、今回の事件を見ますと、その審査業務などで改善すべき点があるのかと思います。大きな役割を担うに至っている指定確認検査機関の業務の公正性、また中立性を確保するとともに、審査業務の適正な実施が図られるようにするためには、指定を行う国あるいは都道府県が、指定に当たり、また指定後においても、適切な指導あるいはチェックをすることが重要であるかと思います。
 都が指定しました指定確認検査機関には、現在、財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターと財団法人世田谷区都市整備公社の二つの機関があります。指定する際の基準はどのようになっているのか、また、指定後の指導やチェックはどのように行われているのか、伺いたいと思います。
 さて、都民は、耐震強度が不足している危険な建築物はほかにもあるのではないかということを不安に感じていることと思います。こうした都民の不安を解消し、また建築行政への信頼を回復する取り組みが求められるところであります。
 そこで、都内の既存建築物が構造上安全であるかどうかを再確認するために、到底すべての建築物に実施することはできないかもしれませんが、構造の再チェックとしましての耐震診断を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
 また、耐震改修促進法にのっとり、耐震強度が不足している建物の改修を積極的に推進するよう、見解を伺いたいと思います。
 現在、最優先に考えなければならないのは、問題となっているマンションに入居している方々の安全であります。地震の恐怖におびえながら生活をしている方々の不安はいかがかと、本当に心が痛む思いであります。改めて事の重大さに愕然とするところであります。
 都は、さきに緊急措置として五百戸程度の都営住宅などの受け入れ先を用意したところでありますが、こうした対策と並んで、これからの生活を支援していくことが不可欠であります。ふなれで新しい環境での転居先での生活もかなり長期にわたると考えられます。また、マンション売り主の瑕疵担保責任を追及することも困難が伴うことが予想されます。
 こうした中、行政の立場でできる限りの手だてを講じていく必要があるかと考えます。マンションに入居されている方々に対して、既に決定している都営住宅等のあっせんを円滑に実施していくことはもとより、住民の方々の住まいに関する不安を軽減するための方策に取り組んでいくべきと思いますが、知事に所見を伺いたいと思います。
 また同時に、問題のマンションの周辺に居住されている方々に対して目を向けていくことも大変重要であります。
 今回問題となりましたマンションは、地上十階程度の高層のものが多く、周辺の方々は、一日も早く問題が解決され、安心できる暮らしが戻ってくることを望んでおるわけであります。こうした観点からも、マンションに居住されている方々が少しでも早く住居を確保されて、転居ができる条件を整えていくことが大変重要になってまいります。
 政府は、一昨日、十二月六日に、耐震強度偽装問題に係る総合対策を打ち出しましたが、これを踏まえた建築行政、住宅行政一体となった東京都の取り組みの強化を強く要望しておきたいと思います。
 次に、再発防止策についてお伺いします。
 今回の事件は、これまでの常識では考えられない、悪意に満ちた大規模な事件であります。特別なものであると思われます。たとえ制度を変えたとしましても、それだけでは防げるものとは思われません。しかし、今回のような事件が今後決して起こらないように、現行制度の問題点を徹底的に洗い出し、有効な再発防止策を講じていかなければ、都民の不安を解消することはできないばかりか、社会的、経済的に深刻な影響を広げかねない憂慮すべき状況にあります。
 再発の防止には、建築士を初め建築関係者に高い倫理感を持たせる社会システムを確立をするなど、現行制度の大枠の中で実現できることと、議論を重ねながら、制度の改正も含めて、長期的に検討を進めていくことの両方を着実に進めていくことが必要であると考えております。
 特に、構造設計者を制度的、法的にきちんと位置づけをし、権限と責任を明確化するなどの検討が図られるべきと考えます。建築基準法第一条に定められている、国民の生命、健康及び財産の保護を図る使命が、下請である建築構造の専門家の手のみにゆだねられていることが問題かと思われます。この改善には、例えば、建築確認申請時に構造設計者の氏名、住所、電話番号を記入させ、現場の看板に表示させることが有効だと思われます。
 さらに、米国カリフォルニア州におきましては、複数の異なる構造技術者が構造に関するチェックを行う、ピアチェックと呼ばれるシステムを実施されておりますが、こうしたシステムを導入することも十分検討に値すると思います。
 専門家の知見なども活用しながら、検査、確認業務を初め、有効な再発防止策を多角的に打ち出していくべきだと考えますが、見解を伺いたいと思います。
 最後に、一言申し述べたいと思います。
 私はかねがね、まちづくりは人づくりであり、信頼関係によって結ばれた社会基盤が整って初めて、生まれて育ち、働き、住んでよかったと思われるようなまちが実現すると確信し、これまで行動してまいりました。
 かつて東京は、世界で最も安全で清潔な都市といわれておりました。それは、お互いの顔が見え、みずから地域のために貢献しようとする人々の気概と倫理観によって実現されたものであります。ところが現在、こうした我がまち東京のよき伝統が危機に瀕しております。今回の事件は、こうした東京が直面している危機が如実にあらわれたもので、看過することはできません。今後は私も、安心・安全なまち東京の実現のために全力で地域の方々と行動していく所存であります。
 東京都が一丸となり、都民の生命と財産の安全を確保するために、事件の再発防止に向け全力を挙げて取り組みを行いますように改めてお願いをし、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君)坂本たけし議員の一般質問にお答えいたします。
 構造計算書偽造問題にかかわる住民の住まいの不安を軽減するための方策についてでありますが、該当の物件の居住者だけでなく、地震の際に崩落のおそれのある高層ビルの周辺に住んでいる人たちの不安を勘案しますと、これはなかなか一括して行うにかたい方策だと思いますが、いずれにしろ非常に多岐にわたる手当てが必要だと思います。
 今回の問題の背景には、国が指定した民間確認検査機関の審査に自治体が実質的に関与できない仕組みとなっていること、国による確認検査機関への指導、監督が不十分であったこと、こうした中で起きた事件でありまして、国の責任は極めて重大だと思います。
 繰り返して申しますが、偽造の当事者や瑕疵担保責任を有する売り主、設計事務所、国の指定確認検査機関など、関係者の責任の追及も当然必要であります。しかしながら、都としては、何よりも都民の安全を確保する必要から、緊急措置として、都民住宅等の活用を決定いたしました。
 事件発生直後から、国に対して、どうも国の行政機関の中の意見がばらばらなようでして、支援に対する統一の見解を一刻も早く出すように求めてまいりましたが、一昨日、ようやく国は公的な支援方策を発表いたしました。
 しかし、これは、前にも申しましたが、地域住宅交付金制度の適用という枠の中でありまして、これそのものが地方自治体にとって非常に不公平な枠組みだと思います、この際。これはしかし生命にかかわることですから、甘んじてこれを受諾いたしましたが、国や区市と連携を図りながら、居住者の速やかな退去と円滑な生活再建に向けて必要な対策を講じていきますが、今後、こういう形が仮に反復されたとき、また同じ枠組みの中で地方自治体が余計な負担を負うというのは、これは許せないことでありまして、この事件の解決の推移の中で、被害者を抱えた、東京だけではなくて、隣の神奈川県、千葉県、埼玉県などと、首都圏の首脳の間で協議しまして、国に対して何らかの、報復ではありませんが、しかし、抗議といいましょうか、自治体がこうむる犠牲についての賠償といいましょうか、そういった問題についても協議して、訴えていきたいと思っております。
 その他の質問については、都市整備局長から答弁いたします。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君)耐震強度偽装問題に関する五点のご質問にお答えいたします。
 まず、構造審査のチェック方法や職員の配置についてでございますが、都では、建築物の安全を確保するため、建築物の荷重に対する柱、はり、壁などのフレーム強度や、大地震に対する建築物の耐震性について、東京都審査要領等により、構造設計図、構造計算書のチェックを行っております。
 また、構造審査に当たりましては、建築構造を専門とする管理職を初め、構造計算に関する知識のある職員を適正に配置し、対応しております。
 今後とも、職員の計画的な育成を図り、構造審査の業務を適正に執行し、安全なまちづくりに努めてまいります。
 次に、中間検査制度についてでございますが、この制度は、建築基準法の改正を受け、建築物の施工段階での適法性を検査することにより建築物の安全性等を確認するものであり、都内では平成十一年から実施しているところでございます。中間検査は三階建て以上の建築物を対象としており、例えば鉄筋コンクリートづくりの場合には、二階のはり及び床の配筋工事が終了した段階で実施しております。これに加えまして、延べ面積が一万平方メートルを超える建築物につきましては、基礎の配筋工事が終了した時点でも同様に中間検査を実施しております。
 次に、都が指定いたしました確認検査機関についての指定基準及び指定後の指導、チェックについてでございますが、この機関の指定に当たりましては、公正、中立性の確保や業務の的確な実施が図られることが重要であります。このため、都は、国の指定準則等にのっとり、建設業など制限業種に従事する役職員の割合が一定数以下であること、確認検査を行う件数に応じ、国家資格を有する職員を初め、適正な職員数が確保されていることなどについて審査を行っております。
 また、都は、都の指定した確認検査機関との連絡調整会を定期的に開催し、業務の執行状況等の報告を受けるとともに、必要に応じて立入検査を実施するなど、適宜適切な指導を行っております。
 次に、既存建築物の耐震診断と改修についてでございますが、地震による建築物の倒壊等の被害から都民の生命を守るためには、建築物の耐震診断、耐震改修を促進することが重要であると考えます。このため、都は、平成十二年に耐震改修促進実施計画を策定し、これに基づき、建築物の所有者に対して、耐震診断の必要性の周知や診断機関を紹介するなど、耐震化の促進に取り組んでまいりました。今回の耐震改修促進法の改正を踏まえ、耐震化の目標や、優先的に指導を行う建築物等を明らかにし、平成十八年度の早期に耐震改修促進計画として策定する予定でございます。
 今後とも、区市等と連携を図りながら、地震に強いまちづくりを着実に推進してまいります。
 最後に、建築確認制度全般にかかわる再発防止策についてでございますが、今回の構造設計にかかわる不正について、その再発を防止することは、建築物の安全性の確保を図る上で当然のことでございます。確認制度につきましては、国に対し、現場を熟知している建築士の資格を持つ都職員や顧問弁護士等を十分活用しながら提案を行い、制度の検証と見直しを強く国に求めてまいります。
 都においては、都が指定した確認検査機関に対する定期的な立入検査の実施、構造計算書の審査マニュアルの作成など、区市と連携をとりながら、実効性のある再発防止策を、国の制度改正に先んじて実施してまいります。
 これらの取り組みを推進し、信頼される建築行政の確立を図ってまいります。

○議長(川島忠一君)百番真木茂君。
   〔百番真木茂君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○百番(真木茂君)まず最初に、治安対策についてお尋ねをいたします。
 東京都内には約九百四十カ所もの交番があり、この交番の存在が我が国における治安の確保に大きく貢献をしていることは、だれもが認めるところであります。
 治安の悪化が叫ばれる中で、交番の新設を求める声が続出し、私の住む町田市においても、交番の設置要望箇所は、正式要望だけでも八カ所にも及びます。警視庁は、町田市のこうした切実な声にこたえ、忠生地区に大型交番という形で準備をしていただいていることに感謝を申し上げますとともに、まだまだ不十分との声にも適宜適切におこたえをいただきますことを、まずもって要望をさせていただきます。
 しかし、交番の設置には大変な費用がかかることも事実であります。交番を一つ新設いたしますと、建設費用のみならず、警察官が新たに必要となり、交番の新設が容易でないことも理解できるものであります。
 そこで、厳しい財政状況の中、警視庁が地元自治体と協力し、既存の交番を適正に配置し直すことで、この交番問題に一定の前進を図ることができるのではないかと考えます。
 例えば、新しい駅前には交番がないけれども、近くの街道沿いには交番があり、駅前への交番の設置を住民が求めているなど、必ずしもまちの変化に対応しているとはいえないところがございます。こうした問題に対処するために、行政や地域住民も交えて協議する場というものが必要ではないかと考えます。つまり、既存の交番や駐在所の数をふやさなくても、新たに交番や駐在所を適正に配置し直すことで住民のニーズを満たすことができるのではないか。そして、その交番の適正な配置については、住民と最も近いところで地域の利害を調整することも可能な地元自治体が警視庁と協議することが、地域の主体的な治安対策として有効ではないかと考えるところであります。
 そのような考えのもと、交番の適正な配置について警視総監の見解を伺うものであります。
 また、私の地元の町田市では、治安の悪化が叫ばれて久しくなりました。その内実を分析してみますと、その多くは窃盗犯であり、凶悪犯がふえているわけではありません。そして、その窃盗犯が多い原因として、町田市は三方を神奈川県に囲まれていて、窃盗犯が警視庁の権限の及ばない神奈川県に逃げやすいから、プロの集団にねらわれやすいなどということがいわれています。
 私は、この問題を二〇〇三年二月、この本会議質問で取り上げ、警視総監に神奈川県警との連携の強化を求めたところ、その一カ月後の三月二十六日には、大がかりな警視庁と神奈川県警本部との合同の都県境対策会議が開催され、以降、合同検問の範囲拡大のための協定の見直し、合同訓練、一斉補導、さらにはJR町田駅南口の非合法ピンクゾーンの取り締まりなど、神奈川県警との協力体制が飛躍的に前進し、町田市内の犯罪認知件数が大幅に減少していることは、大いに感謝するものであります。
 しかしながら、町田市におけるプロの犯罪集団の、町田は逃げやすいという認識を改めさせるには、さらに徹底した、町田は逃げられないとするための対策を神奈川県警と協力して構築し、さらにその事実を市民一般、さらにはプロの犯罪集団に示していくことが重要だと考えます。さらなる神奈川県警との連携の強化、そしてそのことの周知について、警視総監の見解を伺うものであります。
 続いて、ペット斎場についてお伺いいたします。
 ペットブームといわれて久しい今日、都内の犬の登録数は毎年約二万頭ずつ増加しています。飼われるペットがふえれば、息を引き取るペットも当然増加してきており、そのため、ペット専用の火葬場や墓地が全国的にも増加してきています。確認しているだけでも、都内にそのような施設が既に二十カ所ほどあるようでございます。
 しかし、東京都が正式に把握しているのは、環境確保条例に基づく届け出だけであります。その届け出は、焼却炉一基につき一時間当たり五十キログラム以上の焼却能力のある焼却炉にとどまっており、一時間当たり五十キログラム未満の焼却炉は届け出の必要もなく、都も国も全体の状況は把握できてはおりません。これ以外で東京都の持つ武器としては悪臭防止法だけであり、これはペット斎場から悪臭が発生していない限り、東京都としては指導する権限もございません。
 本来、ペットの死体は廃棄物であり、一般廃棄物として処理されてきました。ところが、昭和五十四年の旧厚生省の通知により、愛玩動物の死体を埋葬、供養する場合は廃棄物には該当しないという判断を受け、ペットの火葬については廃棄物処理法の適用も受けない状態となり、現在では法規のエアポケットといわざるを得ない状況となっています。
 現在、町田市でも、ペット斎場の建設をめぐって地域住民との紛争が続いているところでありますが、たとえ動物とはいえ、火葬や埋葬が行われる施設が近所に設置されることに対し、多少なりとも抵抗があるのは普通の感覚だと存じます。ペット斎場のニーズがますます高くなる時代を前にして、行政としての一定の指導が必要だと考えます。
 しかしながら、このペット斎場の規制、指導をめぐっては、国の仕事なのか、都道府県の仕事なのか、それとも市区町村の仕事なのか、判断の分かれるところでございます。東京都として、ペット斎場の問題についてどう認識しているのか、仮に地方自治体の仕事だとするならば、東京都の仕事なのか、基礎自治体の仕事なのか、まだ東京都の考えは一切表明されたことはございません。基礎自治体としてもペット斎場規制はどこの仕事なのかを様子を見ている状態であり、都としてのコメントが必要だと考えます。東京都として地元自治体との役割分担をどう考えるのか、見解を求めるものであります。
 続いて、保育園の待機児童対策について伺います。
 保育園の待機児童は、東京都全体で八千七百三十三人も存在し、幾ら保育園を新設しても追いつかない状態にあります。しかし、その待機児童の実態を年齢別に分析をすると、ゼロ、一、二歳が大半であり、三歳では一千百十四人、四歳以上になると三百三十八人と本当にわずかであり、全体で見れば定員割れをしているのが実態であります。
 このようになる原因として何よりも大きいのは、厚生労働省の基準による保育士一人で見ることができる子どもの数が、ゼロ歳児では三人、一歳児では六人、二歳児では六人なのが、三歳児では二十人になり、四歳児、五歳児では三十人と急激にふえていくことによります。
 このことから、例えば東京都の平均的な保育園である定員百名の保育園の場合、ゼロ歳児の定員が九名、一歳児の定員が十二名、二歳児の定員が十六名なのに対し、三歳児からは二十名となり、四歳児と五歳児では四十四名と大きく差が生じてきているのであります。このことによって、ほとんどの区市では、二歳までは待機児童がいっぱいなのに四歳以上になると定員割れがたくさんあるということにつながるのであります。
 私は、この問題の解決策として、保育園を次から次に新設するのではなく、既存の保育園のゼロ、一、二歳のクラスを二クラス化していくことで、ほとんどの待機児童を解消することができると考えるものであります。実際に、私の地元の町田市においても、ゼロ、一歳児の定員の総数は、四十四の保育園で九百二十八名、これに対し待機児童は三百八名、つまり、約半分の保育園がゼロ、一歳児クラスを一つずつつくることで町田市の待機児童は解消するのであります。
 このゼロ、一、二歳だけを二クラス化することは、新しく保育園をつくるのと比べた場合、普通の保育園を新設すると建設費が約七千万円なのに対し、三つの教室を増築するのは約二千万円と三割弱、運営費については、事務員なども要らないことから、新設では約一億一千万円なのに対し、三クラスの増設では約三千万円と三割弱で済むのであります。
 これで、待機児童対策としては全く同じ効果を生むものであるとともに、将来子どもが少なくなったときにも保育園が廃園になる必要もなく、柔軟に対応できるのであります。
 待機児童対策を、保育園の新設を中心に進めるのではなく、ゼロ、一、二歳の二クラス化で対応することが極めて現実的で即効性のある対策であります。
 保育園の補助金制度が大きく変わり、保育園の施設整備の役割が基本的に国と市区町村の仕事となった中で、引き続き東京都として保育行政にしっかりと取り組んでいく決意を、まず知事にお伺いをいたします。
 同時に、市区町村がこうした工夫により待機児童解消に取り組んでいくことに対し、助成のあり方を検討すべきだと考えますが、福祉保健局長の見解を問うものであります。
 続いて、災害対策と水の備えについてお伺いいたします。
 東京都では、震災時に対する水の備えとして、総務局予算の中で応急給水槽の設置を続け、全都で半径二キロメートルに一つの考え方に基づき、応急給水槽の設置を平成十六年度で終了をいたしました。つまり、今年度の十七年度、来年度の十八年度予算要求の中では、水の備えを増強するための予算は存在せず、東京都としての水を蓄える努力は、総務局、水道局ともに終了したことになっております。
 しかし、この終了したというのは、一人一日三リットルの飲み水を三日分確保するという考え方に基づくものであります。しかし、震災時に本当に必要な水は、飲み水とともにトイレの水であったりします。また、応急給水槽は、法律上、消防水利としても使うことができることとなっています。最近整備された応急給水槽は百トン槽が多いのでございますが、これは消防車のポンプが約二十分で送水してしまう水量であります。
 これらのことを考え合わせたとき、水を蓄える行政としての努力はまだまだ継続すべき重要な課題であり、理論上は成り立つ一日一人三リットルの飲み水を三日分確保したという理屈は、実際の災害時には机上の空論だったということになりかねないのであります。
 私は、かねてから、この応急給水槽の設置を一般会計の総務局予算で賄っていることに強い不満を持っておりました。というのも、東京電力にしろ、東京ガスにしろ、NTTにしろ、民間企業は災害対策を、一円も税金を入れることなく、企業の社会的使命として企業努力の中で対応していただいております。それなのに、なぜ東京都水道局だけは税金で賄うんだと憤っているところでありますが、確かに電気や電話よりも直接に命にかかわる水の問題を企業努力に任せておくというのは、行政の怠慢といわれても否定できません。
 水道局には、水をとめない、災害時も水を流し続ける、その努力を引き続きしてもらうこととして、水を蓄えておく、水を備える備水の仕事は税金でやってもいいだろう、ただし、その権限は、従来どおり総務局が権限を持つのではなく、世界一の水道会社である東京都水道局の技術と責任で、もち屋もち屋の主体性を発揮し、応急給水槽だけでなく、いろいろな新しい工夫を凝らしながら水の計画的備蓄を図るようにすべきではないかと考えるものであります。
 このままでは、東京都としての水の蓄えは前進いたしません。しかし、これで十分なわけではないと考えます。ついては、十八年度は無理だとしても、十九年度以降、総務局予算の中で、水道局への委託事業として、水道局のノウハウを生かした震災時の水の備蓄についての調査研究予算を計上し、新しい技術、手法が完成し次第、総務局予算ながらも水道局の責任で水の備蓄をしていくというようなシステムを構築すべきだと考えるものでありますが、総務局の見解を問うものであります。
 以上、最後の質問をさせていただきました。
 本日ご清聴いただきましたこと、そして、四年半、石原知事を初め、理事者の皆様、そして議員各位には、さまざまなご指導、ご鞭撻を賜りましたことに心より御礼を申し上げ、万感の思いを込め、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君)真木茂議員の一般質問にお答えいたします。
 保育行政についてでありますが、次代を担う子どもを健全に育成することは、親だけではなく、社会全体の責務であると思っております。安心して子どもを育てられる環境を整備するためには、都民の多様な保育ニーズにこたえることが重要であると思います。
 このため、都は、大都市特有の保育ニーズに対応した認証保育所制度を、JR東日本など、駅周辺の資産保有者の協力も得まして創設し、都民からの広範な支持を得て、既に三百カ所を数えるまでに整備が進んでおります。
 今後とも、区市町村とも連携して、地域の子育て環境の整備に積極的に取り組んでまいります。
 その他の質問については、警視総監及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監奥村萬壽雄君登壇〕

○警視総監(奥村萬壽雄君)交番の適正配置と、神奈川県警との連携強化についてお答えをいたします。
 初めに、交番の適正配置についてでありますが、従来から、交番、駐在所の配置につきましては、その地域における事件、事故の発生状況や人口の増減、用地の確保などを総合的に勘案し、治安対策上適正で住民のニーズにこたえるものとなるよう行っているところであります。
 ご指摘の交番、駐在所の移転につきましても、こうした観点に立ちまして、かつ地元自治体や地域住民のご意見を十分にしんしゃくをしながら、まちの変化に応じたものとなるよう行っているところであり、平成十五年度から現在までの三カ年におきましては、二十四カ所の交番、駐在所の移転を行っております。
 一方、交番の新設要望が、町田市内におきましても、お話のとおり八カ所あり、都内全体では約九十カ所に及んでいることも踏まえまして、ただいま申し上げた点に十分配意しながら、引き続き交番、駐在所の適正配置に努めてまいります。
 次に、神奈川県警との連携についてでありますが、当庁と神奈川県警では、平成十五年三月に両警察のトップが出席する都県境合同会議を開催しまして以来、都県境で事案が発生した場合には、東京、神奈川双方の隣接する地域で広域初動捜査を相互に協力して実施する仕組みを整えてきており、毎年、合同訓練や事件検討会を行っているところであります。
 町田署におきましても、神奈川県の隣接八署との間で、緊急配備訓練を初め、不法滞在外国人の取り締まりや補導活動などを合同で頻繁に行っており、また、事案の発生時には、都県の境界にとらわれることなく、町田署と神奈川県側の各署とが一体となりまして緊急配備等の警察活動を展開しているところであり、犯罪者にとりまして町田は逃げやすいという状況には現在ございません。
 こうした施策、また町田署の地道な取り組みによりまして、町田管内の現在の刑法犯認知件数は、都県境合同会議開催前年の平成十四年と比べまして二三%の減少、とりわけ窃盗につきましては三二%減少するなど、町田の治安は着実によくなってきております。
 神奈川県警との連携につきましては、今後ともさらに強化をしてまいりますとともに、これまでの成果や今後の取り組みについて、市の広報誌への掲載等、自治体の協力もいただきながら効果的な広報を行ってまいりたいと考えております。
   〔環境局長大橋久夫君登壇〕

○環境局長(大橋久夫君)ペット斎場についてのご質問でございます。
 ペット飼育の増加に伴いまして、ペットの火葬場などが住宅地などに設置され、一部では周辺住民との間でトラブルが生じていることは承知しております。
 ご指摘のように、ペット斎場については、現行法令上の位置づけや行政の役割が必ずしも明確ではありませんけれども、地域住民に身近な施設であり、悪臭など地域の環境問題の観点とともに、近隣住民の理解を得ることが望ましいと考えております。
 こうしたことから、基本的には地元自治体による対応が重要であると認識しております。
 各区市においてペット火葬に関する条例等を設けているケースも増加しており、都といたしましては、地元自治体に対して情報提供や技術的な支援を行ってまいります。
   〔福祉保健局長平井健一君登壇〕

○福祉保健局長(平井健一君)保育所の待機児童対策についてのお尋ねでございますが、保育を必要とする人のため、保育サービスの供給体制を充実することは重要な課題でございまして、都は、現在、保育サービス基盤の整備を含めまして、地域の実情に応じた柔軟な取り組みを支援し、区市町村の裁量を高めた方策を検討しております。
 この制度の構築に当たりましては、ご指摘の保育所の定員増など、区市町村の創意工夫を促す仕組みとしてまいります。
   〔総務局長高橋功君登壇〕

○総務局長(高橋功君)震災時の水の備えについてでございますが、これまで都では、役割分担に基づきまして、総務局が応急給水槽の設置などにより応急給水体制を整備するとともに、水道局が隣接県市との送水管の接続による水の相互融通に取り組んでおります。さらに、区市町村におきましても、受水槽の活用などに努めております。
 震災時に都民の生命を守るためには、ご指摘のとおり、飲料水をより安定的に確保し、供給することが重要でございます。今後、震災で想定されるさまざまな場面に対応した給水体制のあり方につきまして、関係機関が連携し、調査研究を含め、検討してまいります。

〇副議長(木内良明君)九十四番古賀俊昭君。
   〔九十四番古賀俊昭君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○九十四番(古賀俊昭君)本日は、大東亜戦争開戦の大詔渙発より六十四周年に当たります。さらにことしは、日露戦勝から百年の節目であると同時に、日本文化史上最大級の事業である我が国最初の勅撰和歌集「古今和歌集」が成立して千百年になります。それまでの漢詩文偏重に終止符を打ち、和歌を日本文化のかなめにしたこの平安朝時代に編さんされた「古今集」の祝賀の歌の初めに、詠み人知らずとして、国歌君が代の原歌があります。本日は、そうした国史の意義を踏まえながら、一般質問を行います。
 初めに、学校式典における国旗・国歌の適正な取り扱いと、それに関連する特殊法人NHKの報道について問題点を指摘し、同時に所見を伺います。
 NHKは、番組「クローズアップ現代」で、ことし三月二十八日に国旗・国歌問題を、九月二十日に杉並区における教科書採択を特集しました。二つの特集は、どちらも、適正な教育行政を進める教育委員会等を批判した内容になっています。
 国旗・国歌問題については、あとで問題点を指摘しますが、杉並教科書採択特集では、教科書採択権は本来教育委員会にあるという法規上当然のことを暗に批判し、かつて教職員組合が教科書採択に不法に介入したときからいい続けている現場教師の声の反映をしきりに強調しています。
 さらに、教育委員会による平穏な教科書採択に反対する組織によって、過去、教育委員に対して陰湿な脅迫が行われ、また、反対派組織には過激派も含まれていることなど一切報道せず、強権を発動する側対市民派の争いといった印象が残る巧妙な構成になっています。
 NHK番組の偏向は、雑誌「正論」でNHK番組批判を連載している中村粲元獨協大学教授の指摘を待つまでもなく、何も今、始まったわけではありません。平成十三年一月二十九日から連続四回シリーズで報道された「ETV二〇〇一 戦争をどう裁くか」では、極めて政治的に偏った組織が企画した女性戦犯法廷を取り上げています。この法廷は、一方的に、一方的証言のみを取り上げて戦争犯罪をでっち上げ、先帝陛下と英霊を罪人扱いするなど、法廷とは名ばかりのゆがみ切ったものでした。一言でいえば、特殊な政治的思想を持った反日自虐活動家による政治茶番劇です。
 では、問題の、三月二十八日放送「クローズアップ現代」での、学校式典における国旗・国歌問題の番組について問題点を指摘します。
 当日放送された内容は、都教委と反対する教員双方の意見を取り上げる形式は一応とっていたものの、各所で反対する教員側に立った番組構成となっており、極めて悪らつ、偏向した内容になっています。
 例えば、番組の初めに、一方的な考えの押しつけと戸惑う学校現場を追う、とあります。なぜあえて適正化を図らなければならなかったかという原因究明は一切なく、特定の見方、すなわち、国旗・国歌は押しつけられたものであり、教育現場はそれにより混乱しているといった観点で番組が始まります。
 次に、深川高校八十周年記念式典の風景が映し出されますが、ここでも、先生に立つよう命じただけでなく、生徒への指導も求めたと解説があります。番組では適正実施のための通達が大写しになり、職務命令及び処分の図式が紹介されます。つまり、指導、命令ばかりが強調されます。
 ところが、学習指導要領で、例えば小学校から国旗・国歌に対し尊重する態度を育てるよう配慮することとあることや、指導要領解説では、入学式や卒業式等、必要なときはどこでも国歌を歌えるよう指導しておかなければならないとあることは、一切紹介されていません。つけ加えれば、高校においても入学式、卒業式では国旗を掲揚し、国歌を斉唱すると指導要領にはっきり書かれています。
 つまり、国旗の掲揚や国歌の斉唱、またそれらの尊重は、教育の指針である学習指導要領に定められたものであるという重要なことを、NHKの番組は紹介をしていないのです。
 さらに、教員への質問が流れます。ここでも職務命令に反発する教員の紹介が続きます。戦争と平和の歴史を教えているという教員は、これをしたら処分の対象となる、そういうことを考える自分が嫌じゃないですかと答え、それと無関係な生徒たちの爆笑する音声を効果的に入れて、こんなに人気のある先生が国旗・国歌に反対しているのだという印象を増幅させています。
 そこでお聞きしますが、平成十五年十月、入学式、卒業式等の学校式典における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施方法を定めた実施指針を出さなければならなかった教育現場の現状とはどういうものであったか、お答えください。
 稚拙としかいいようのない抵抗を繰り返してきた教育現場の荒廃を考えれば、一定の規律をつくり、各教員にその遵守を求める個別的職務命令の発出は不可欠なものであったのです。私のところに来た都立高校の現職校長からの情報によれば、個別的職務命令があるからこそ、やっと職員会議や式典が各学校で大きな混乱もなく実施できるようになった、そのような学校は全体の七割だといっています。つまり、さきの実施指針と個別的職務命令によって、やっと都立高校の秩序が保たれているとこの校長はいっています。
 そこで伺いますが、この実施指針、通達の趣旨をさらに周知徹底する必要があると思いますが、見解はいかがでしょうか。
 教職員組合は、この個別的職務命令をあいまいな包括的職務命令に変更するよう、あらゆる手段を尽くして都教委に働きかけています。私の調査によれば、驚くべきことに、それに迎合する勢力も都教委の一部にあると確認されています。実際、都立西高等学校、西高の前校長石川氏は、個別的職務命令を発出しなかった校長の一人ですが、この後任の柿添校長も、個別的職務命令を式典実施要綱に判をついただけ、それも欠席者には渡していないといったありさまで、実質的に職務命令を形骸化させています。さらに、都立新宿高校でも同様の事態が生じています。
 先ほど紹介した校長のように、学校秩序を必死になって守ろうとする管理職がいる一方で、残念ながらこうした敵前逃亡も一部にあるのです。とすると、職務命令を出す際の基準を都教委として示す必要があります。見解を求めます。
 また、別の教師からの告発によれば、都立高校では第二職員会議なるもの、あるいは第二職員会議的なものが設けられ、実質的な意思決定機関になっている例があるといわれます。職員会議の位置づけと、実際にその位置づけを逸脱した会議が行われた場合の対応について、見解を伺います。
 さらに、職員会議は校長の補助機関と管理運営規程に明記されていない学校があります。また、補助機関と書かれていても、実質的に校長の権限を侵害、侵すことになる規程が含まれている場合もあり、このような規程は早急に改めるべきです。いかがですか、見解を求めます。
 同時に、教育庁調査によれば、九十校近くで高校の職員会議に問題があるとされています。先ほど紹介した西校でも具体的問題がありますが、この問題は、学校管理の基本を揺るがすもので、放置できません。このことは、指導主事などによる学校訪問が効果を上げていないことの証明になります。学校訪問形式の見直しをすべきですが、いかがですか。
 さらに、重要問題が発生している高校には、即時、アドバイザーの派遣をすべきではないでしょうか。
 同時に、来年四月に発足する学校経営支援センターに、校長を支援するための専門の部署を設置すべきと考えます。
 現在でも職員組合は、国旗・国歌問題でも、実施指針には生徒に歌わない自由があることを教えてはいけないとは書いてないからこれを活用しようと、機関紙で反撃のポイントを示しています。生徒の不起立を促すなど生徒の政治的利用をさせないための通知が平成十六年三月十一日に出ていますが、こうした現状から、改めて生徒への適正指導を通達として出すべきだと考えます。いかがでしょうか。
 また、懲戒処分を受けた教員も後を絶たず、平成十六年度で九十三名に達しています。中には、人権侵害事件を起こし、処分を何度も受けている女性教員もいますが、この教員も反省することなく、処分した都教委を犯罪教育委員会と呼び、研修を受けている研修センターを東京都人権侵害常習センターと呼んでいるありさまです。
 もちろん、教育の現状を憂えている管理職、教員も多数います。都教委は、法令を破る教職員を甘やかすのではなく、使命感にあふれる管理職、そして教員が濶達に教育に従事できる教育環境の整備と正常化に一層努めるべきです。こうかつな情報操作を行う特殊法人、NHK報道を含めて、石原知事並びに教育長の見解を伺います。
 次に、都の地域振興支援策について伺います。
 日野市では、新選組のふるさととして、その歴史的素材を生かしたまちおこしを進めるため、現在、国道二〇号の立日橋入り口交差点から日野駅までの日野宿本陣を中心とした区間である日野宿通りに、幕末から明治にかけての街並みの再現を行う日野宿通り再生事業に取り組んでいます。この事業の舞台となる国道二〇号は、並行する日野バイパスの平成十八年度開通に伴い、一部区間が都へ移管されることになりますが、その時期はいつごろでしょうか。
 また、都は、日野市はもとより国とも連携しながら、当事業の効果が十分に発揮できるよう、街並みと調和した道路の修景のために道路整備について支援すべきと考えますが、いかがですか。
 日野市には、新選組ゆかりの土方歳三資料館、井上源三郎資料館、都内で現存する唯一の本陣である日野宿本陣、そして、古来関東三不動の一つとして親しまれている高幡不動尊があります。加えて、武蔵国の領主で、平家物語や吾妻鏡にも活写されるほどの勇将であった平山季重のふるさととして史跡も残っています。
 日野市は、こうした歴史を生かした観光行政の一環として平成十五年度から始めた新選組関連事業では、万願寺交流センター整備など、都の支援を受けながら積極的に取り組み、平成十六年は全国から約二十九万人が訪れるなど、大きな成果をおさめました。現在の日野市では日野宿通り周辺再生整備計画を策定中ですが、郷土の歴史や文化に根差した観光まちづくりに対する都の支援策について伺います。
 日野宿通り再生事業では、古い街並みを再現する場合、建築基準法の防火措置の規制緩和なども必要となりますけれども、こうした歴史的景観のまちづくりと法規制緩和を含めた都としての十分な支援を求める日野市の考えでありますが、都の見解はいかがですか。
 次に、JR中央線日野駅の整備について伺います。
 日野駅は、今エレベーターの設置や広場改良は完成をいたしましたけれども、上下線は兼用の島式のホームになっており、また狭い階段等、課題は残されています。高幡不動駅は、今、国の補助金を使って整備が行われています。こうした日野駅を整備するために、東京都として、JR八王子支社にも要請を行ってきていますが、日野宿再生にふさわしい駅の実現には都の支援が不可欠と考えますが、見解を伺います。
 以上で私の一般質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君)古賀俊昭議員の一般質問にお答えいたします。
 教育環境の整備についてでありますが、教育公務員、教育公務員です、としてその職責を果たさない教員の責任を問うことは当然でありまして、厳正に対処している都教育委員会の方針は極めて妥当であると思います。今後とも、都教育委員会には毅然とした態度で学校教育の正常化に取り組んでもらいたいと思います。
 さらに加えて、新聞、テレビといった報道機関が、非常に巧妙な、モンタージュなども使いまして、都民に誤解を与えるような報道を、いわば手抜きとかあるいは偏向した形で行うということは、決してあってはならないと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君)教育行政に関します十点の質問にお答え申し上げます。
 まず、教育現場の現状についてでございますが、都教育委員会は、平成元年度の学習指導要領改訂以降、入学式及び卒業式におきます国旗掲揚、国歌斉唱の指導について、毎年通知を発出するなどしまして、学習指導要領に基づき入学式、卒業式等を適正に実施するよう学校を指導してまいりました。その結果、全国的に見まして極めて低かった入学式、卒業式等の国旗・国歌の実施率は、平成十二年度卒業式からは、形式的には一〇〇%になりました。
 ただ、その内実では、国旗が参列者から確認できない位置に掲揚されたり、指導すべき立場の教員が国歌斉唱時に起立しなかったり、あるいは、その式典にふさわしくないTシャツや体育着、さらには国旗に斜線を入れたブラウスを着用して参列したりするなど、実に不適切な問題がありました。
 都教育委員会は、平成十五年十月二十三日に、こうした状況を改善し、入学式や卒業式などの儀式的な行事が適正に実施されるよう通達を発出し、実施指針を示したところでございます。
 次に、実施指針、通達の趣旨の周知徹底についてでありますが、個別的職務命令は、教職員にみずからの職務を明確に認識させ、教育公務員としての使命と職責を自覚させることができるとともに、すべての学校が統一した対応をとったことによって、学校経営上困難な課題を抱える校長にとって大きな支援となりました。また、ご指摘のように、校長からは、将来的にも個別的職務命令書は出していくべきだ、教職員の意識はまだまだ変わっていないなどの声が寄せられております。
 都教育委員会としましては、なお学校経営の安定化への途上にあることから、今後、学校運営が改善され、卒業式、入学式等におきます国旗掲揚、国歌斉唱の適正化が図られるまで、引き続き個別的職務命令を発出するよう指導し、通達及び実施指針の趣旨を周知徹底してまいります。
 次に、職務命令を出す際の基準についてでございますが、これまでも都教育委員会では、学習指導要領や通達に基づきまして卒業式及び入学式等を適正に実施するために、全校全教職員に対しまして、包括的職務命令に加え、個別的職務命令を発出するよう校長を指導してまいりました。
 職務命令は、あくまでも校長の権限と責任に基づいて発出されるものでありますが、今後は、職務命令として必要な要件を参考として通知するとともに、校長連絡会等におきまして周知を図るなど、卒業式、入学式等の適正な実施に向けて校長を支援してまいります。なお、職務命令の発出に課題のある学校につきましては、個別に指導の徹底を図ってまいります。
 次に、職員会議の位置づけについてでありますが、東京都立学校の管理運営に関する規則におきまして、「校長は、校務運営上必要と認めるときは、校長がつかさどる校務を補助させるため、職員会議を置くことができる。」と規定しております。職員会議は校長の職務を補助するための機関であることから、その位置づけを逸脱した職員会議を開催することは、管理運営に関する規則に反し、許されません。
 次に、都立学校の管理運営規程についてでございますが、平成十年十月の管理運営規程の策定についての通達におきまして、学校の管理運営規程について標準様式を定め、職員会議を置く場合には、校長の補助機関として設置することができるとされております。職員会議を開くかどうかは校長が決定すべきものでありまして、議題も、校長が必要と認めるものを取り扱うものであります。
 学校の規程の中で職員会議の位置づけが不明確であったり、あるいは校長が何らかの義務を負うかのような規程を定めているのは不適切であり、早急に改めてまいります。
 次に、学校訪問の形式の見直しについてでございますが、学務部、人事部、指導部の三部合同の学校訪問で、五月から六月にかけまして、都立学校全校を訪問しております。その後は、個別課題に応じまして指導訪問等を行っておりますが、対象校が二百五十校を超えることから、年間の訪問回数は限られ、残念ながら、日々の学校運営の状況を具体的に把握して対応できるまでには至っておりません。
 そこで、平成十八年四月から学校経営支援センターを設置しまして、随時学校訪問を行い、校長と密に情報交換等を行いながら、学校の課題解決を図ることができる体制を整えることによりまして、校長を支援してまいります。
 次に、アドバイザーの派遣についてでございます。企画調整会議や職員会議が適正に行われていない学校が存在することは、都教育委員会も把握しているところであります。改善に向けて、実効性のある方策を講じる必要がございます。学校経営支援センターが設置されるまでの間は、経験豊富な校長OB等の人材をアドバイザーとして指導、支援体制の中に組み入れ、個別の経営課題を抱える学校に対しまして訪問を行い、校長の意思決定が適正に行われるよう支援してまいります。
 次に、学校経営支援センターの校長支援についてでありますが、平成十八年度に設置します学校経営支援センターでは、校長、副校長などの管理職経験者や行政職員で構成します経営支援チームを十二チーム編成しまして、それぞれが二十二校程度を担当し、学校の状況を、学校経営や人事、予算面等からきめ細かく把握しまして、必要な支援を行ってまいります。
 その際、学校訪問や校長からの日々の相談業務などを通しまして、校長を初め副校長、主幹等から学校経営計画、学校運営の状況、人事管理などについて十分に聞き取るとともに、日常的な情報交換や意見交換を密にしまして、校長との信頼関係を築き、各学校の個別課題を解決できるよう、校長の学校経営を支援する体制を整備してまいります。
 次に、改めて通達を出すことについてでありますが、これまでも都教育委員会は、生徒に不起立を促すなどの不適切な指導を行わないことや、式典の妨げとなるような行動に生徒を巻き込まないことなど、卒業式、入学式等の適正な実施について各学校を指導してまいりました。しかしながら、一部の学校ではありますが、国旗・国歌反対のビラを校内で配布した生徒に対して教員がインターネット上で支援を呼びかけたり、ほとんどの生徒が卒業式の会場に入場しなかったりするなど、不適正な事態がありました。
 今後とも、かかる事態が起こらないようにするため、校長が教職員に対しまして学習指導要領に基づいて適正に生徒を指導するよう、校長連絡会等において一層周知徹底してまいります。
 また、卒業式等において学級の生徒の多くが起立しないという事態が起こった場合には、その後、他の学校の卒業式等において同様の事態が発生するのを防止するため、生徒を適正に指導する旨の通達を速やかに発出いたします。
 最後に、教育環境の整備についてでございますが、近年、教員の服務事故が後を絶たず、一部の者の行為とはいえ、教員全体に対する都民の信頼を損ないかねない結果となっていることはまことに遺憾であります。都教育委員会は、これまでも非違行為を行った教員につきまして厳正に対処してきたところであり、今後とも、服務規律の確保に向けて、事故者に対し毅然たる態度で対応してまいります。
 一方では、ご指摘のように学校運営の改善に意欲的な管理職や教員も多数いることから、今後は、学校経営支援センターによる支援を充実しますとともに、教員が校長の学校経営計画に基づきまして組織的に教育指導に取り組めるよう、学校運営の正常化に努めてまいります。
 なお、お話しのNHKの番組につきましては、こうした都教育委員会と学校との関係の実情とは異なりまして、教育委員会と学校現場の教員が対立しているかのような印象を与える番組としたことにつきましては極めて遺憾であり、ことしの四月六日、都教育委員会は日本放送協会に対して申し入れを行ったところであります。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君)道路に関する二点のご質問にお答えします。
 まず、国道二〇号の都への移管についてでございますが、お話しの日野地域には、国道二〇号、整備中の日野バイパス並びに圏央道へのアクセス道路として整備する日野バイパス延伸部がございまして、同一区間内に国道が三本並行することとなります。このため、国と協議し、国道二〇号の国立市谷保から八王子市高倉町までの区間につきましては、平成十九年度の移管を目途に、現在、国と調整を行っております。
 次に、日野宿通り再生事業への道路整備の支援についてでございますが、この事業は、地域振興策として日野市が重要な事業として位置づけておりますが、まちづくり事業にあわせた道路の修景は、都としても必要であると考えております。このため、都は、都道への移管に向けた協議の中で、街並みと一体となった道路整備について国に働きかけを行ってまいります。
 今後とも、日野市と十分に連携しながら、日野宿通り再生事業に協力してまいります。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君)観光まちづくりへの支援についてでございますが、都は、地域の歴史や文化などの観光資源を生かしまして、住む人が誇れるとともに、旅行者が何度でも訪れたくなるような活力あるまちを目指す観光まちづくりを推進しております。
 こうした中、日野市における歩行者用観光案内標識の設置や日野宿本陣跡の整備、新選組の小冊子作成などに対して助成を行ってまいりました。また、現在、観光まちづくりの担い手育成や観光振興に関する計画の策定を支援しているところであります。
 今後とも、日野市等における自主的な観光まちづくりの取り組みにつきまして、その状況を踏まえながら、効果的な支援について検討してまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君)日野駅周辺のまちづくりに関します二点のご質問にお答えいたします。
 まず、歴史的景観を生かしたまちづくりの支援についてでございますが、歴史的な街並みは地域の景観に風格と潤いを与えるものでありまして、まちづくりを通じてこれを生かし、地域の個性を発揮させていくことが重要でございます。
 お尋ねの日野宿の再生などにおきましては、現行の建築基準法の規定を一律に適用いたしますと、建造物の外観や意匠の再生、保存が困難になる場合も考えられます。都は、地域の良好な景観づくりを進めるため、景観法を活用した建築規制の緩和やまちづくり交付金の活用などにつきまして、地元市に対し、必要な技術的支援、助言を行ってまいります。
 次に、日野駅の改良についてでございますが、かねてから要望のありましたバリアフリー化に向けたエレベーターは、平成十六年三月に設置されたものの、いまだ課題を抱えた駅であることは承知しております。
 地元市におきましては、既に策定しております日野駅及び駅周辺地区整備計画に加え、今年度から、日野宿通り周辺再生に向け、地域にふさわしい駅の改善についても検討を始めております。都といたしましては、今後とも、日野駅改良に向け、技術的ノウハウの提供、国費の導入、関係機関との調整など、地元市の取り組みに対し支援を行ってまいります。

〇議長(川島忠一君)三十八番吉倉正美君。
   〔三十八番吉倉正美君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○三十八番(吉倉正美君)初めに、ユニバーサル社会の形成を目指す観点から、障害者の雇用と就労について伺います。
 東京は、今、グローバリゼーションや情報技術革命などが進展する中で、激化する都市間競争に挑み、日本経済を力強く牽引する国際都市としての発展を目指しております。今後、二〇一六年の東京オリンピック開催に照準を定め、少子高齢社会に対応する福祉先進都市東京を実現し、広く世界に都市再生のモデルを提示すべきであります。
 福祉先進都市としての東京の大きな課題は、障害者の自立と社会参画の推進であり、そのためには、雇用の拡大、つまり一般就労の拡大が欠かせません。働く意欲のある障害者が就労のチャンスを得て、積極的な社会参加を実現できる社会システムを今こそ東京に構築していくべきであります。
 しかしながら、都の障害者雇用率は一・三五%と、法定雇用率の一・八%に遠く及ばない状況であり、企業の取り組みも、社会全体から見ればまだ一部にとどまっております。したがって、都は、みずから先頭に立って企業の積極的な取り組みを促し、障害者の一般就労の場を都内全域に拡大していくべきと考えます。所見を伺います。
 都はこれまで、軽度の知的障害者の職業教育を三校の養護学校で行う計画を進めておりますが、職業教育の次に取り組むべきことは、障害者の働く場を提供することであります。例えば、都営地下鉄駅構内に設置されるパンの売店やコーヒーショップなどでも、一定の条件のもとで障害者団体の出店が可能となるよう検討すべきと考えます。所見を伺います。
 次に、児童虐待防止対策について伺います。
 児童虐待を根絶し、未来からの使者である子どもたちのために夢と希望を与える健全な環境を整えることは、社会の重大な責務であります。児童虐待防止法の三本柱は発見、保護、統合といわれますが、とりわけ早期の発見が重要であります。公明党は、この法の理念に基づき、これまで、学校での身体測定や健康診断などでの虐待の発見、また家庭訪問による早期発見など、いわゆる学校力の活用を提案してきました。
 今後は、こうした従来の施策に加え、活用できるすべての社会システムを駆使して、虐待の根絶を目指す防止対策を強化すべきであります。知事の所見を伺います。
 ところで、児童虐待防止法は、早期発見における医師の役割を重視しております。しかし、さきに発表された厚生労働省の調査では、残念な結果が出ております。それによると、病院の勤務医や開業医の半数以上が児童虐待の通告に抵抗を感じており、その理由として、虐待の判断に自信が持てない、家族とのトラブルを避けたいなどを挙げております。こうした医師の消極的な姿勢があるにしても、やはり病院が児童診療の場で虐待のわずかなサインをキャッチし、関係機関に速やかに通告することが極めて重要であります。
 そこで、医師個人に虐待の判断をゆだねるのではなく、病院全体として児童虐待の早期発見に取り組んでいくことが必要であります。そのためには、診療科を横断した医師間の連携や医療ソーシャルワーカーとの連携など、組織的な取り組みが不可欠であります。都では、既に小児病院においてこうした取り組みに着手しておりますが、すべての都立病院においても組織的な虐待の早期発見に向けた体制を整備すべきであります。所見を伺います。
 次に、自動体外式除細動器、AEDの導入について伺います。
 人は、呼吸が停止した場合、二分以内に救命処置を施せば九〇%の確率で命が助かるといわれており、逆に処置がおくれれば、一分経過するごとに一〇%から二〇%ずつ救命率は低くなると指摘されております。この救命処置の唯一の方法が、除細動、すなわち電気ショックを心臓に与えて正常な状態に戻すことであります。昨年七月、厚生労働省は、これまで医療従事者しか使用できなかったAEDを、一般の人でも一定の条件のもとで使用できるよう法制度を改めました。そこで、伺います。
 教育庁は、体育活動中に心臓疾患が原因で死亡した都立高校生は過去五年間で五名おり、また、心臓に何らかの障害を抱えている都立学校の児童生徒は千三百七十七名に上ると報告しております。こうした現状にもかかわらず、現在、都立学校にはAEDが一基も設置されておりません。一刻も早く、都民の安全・安心、健康を守る立場から、AEDを都立の全学校に設置すべきであります。所見を伺います。
 次に、体育館、屋内プール、劇場などの大規模空間を持つ建築物の耐震対策について伺います。
 ことし八月に発生した宮城県沖地震では、仙台市内のスポーツ施設で天井崩落事故が発生し、多数の負傷者が出ました。また、一昨年九月に発生した十勝沖地震では、空港ターミナルビルの天井が崩落する被害が起きております。
 こうした事故を受けて、国土交通省は先月、大規模空間を持つ建築物の天井の崩落対策の調査結果を発表し、問題のある施設が、公共施設を含め全国で約五千施設あると報告し、東京でも三百二十カ所と指摘しております。マンションなどの強度が偽装されていた問題で建物の安全性が問われている今こそ、都内のスポーツ施設や劇場、ホールなど、不特定多数の人々が利用する施設の安全対策が強く求められます。都民の不安にこたえるために緊急に対策を講ずるべきであります。所見を伺います。
 都内には、五百平米以上の大規模空間を持つ都立施設が数多く存在します。これらについては真っ先に調査し、必要なものは改修などの安全対策を講ずるべきであります。見解を伺います。
 次に、こうした大規模空間を持つつり天井型の建物の安全性については、いわゆる指導指針、ガイドラインしかありません。これでは、地震による崩落を回避するためには十分ではありません。都は、指導指針の見直しや条例化を図り、実効性あるものに改めるべきであります。見解を伺います。
 次に、地下鉄十三号線に関連する課題について伺います。
 東京メトロが建設する地下鉄十三号線は、池袋、新宿、渋谷の各駅で多くの鉄道路線を連結することにより、鉄道のネットワークを充実させ、利用者の利便性を高めるものであります。新宿、豊島、渋谷各区の住民からも、副都心への重要な足となるだけでなく、沿線の発展、まちの活性化に大きく寄与するものとして、大きな期待を寄せられております。
 そこで、十九年度開通時に新設される各駅の自転車駐輪場対策について伺います。
 都心の共通課題として各区が頭を痛めているのが放置自転車対策であります。豊島区では、独自に放置自転車等対策推進税を創設し、鉄道事業者に対して放置自転車対策費の一部負担を求める一方、駐輪場を整備する場合には税の減免制度を適用しています。
 十三号線駅周辺の自転車駐輪場の整備、放置自転車対策について、都は、指導性を持って、東京メトロと新宿、豊島、渋谷の各区との協議を進めるべきと考えます。見解を伺います。
 第二に、地下鉄十三号線に関連して、地上部を走る明治通りの整備について伺います。
 現在、道路拡幅工事が行われておりますが、この明治通りは、慢性的な道路交通渋滞と通行困難なほど狭い歩道幅について、地元から改善を要望する声が上がっております。歩道の拡幅を初め、歩道の段差、傾斜、勾配の改善を行い、高齢者、障害者等の安全を確保するバリアフリーの歩行空間とすべきであります。
 さらに、電線類の地中化を行い、景観にも配慮すべきであります。所見を伺います。
 第三に、地下鉄十三号線の開通に伴う地下歩行者道の延伸について伺います。
 十九年度に開通する十三号線新駅とサブナードを接続させ、さらに新宿大ガードから都営大江戸線新宿西口駅までの区間に延伸させることで、広範囲な地下歩行者ネットワークを創出することができます。これにより、新宿駅の東西を結び、駅周辺の回遊性を高め、加えて、歩行者の利便性を向上させるものとして、地元住民から大きく期待をされております。
 新宿駅周辺は都市再生緊急整備地域にも指定されており、新たな歩行者ネットワークを構築する絶好の機会であります。新宿サブナード、すなわち地下歩行者道を十三号線や大江戸線新宿西口駅に接続することについて、都は、積極的に国土交通省や東京メトロ、さらに新宿区、地元周辺事業者との協議を進め、新宿駅周辺の新たな歩行者ネットワークの構築を推進すべきであります。所見を伺います。
 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君)吉倉正美議員の一般質問にお答えいたします。
 児童虐待防止対策についてでありますが、子どもは、親や地域の人々の愛情に包まれて健やかに育つことが本来の姿であります。その子どもの心に深い傷を残し、かけがえのない生命を奪うことにもつながる児童虐待は、決して許されるものではございません。都は、これまでも、児童相談所における専門職員の充実を図るなど、児童虐待の早期発見、早期対応に努めてまいりました。
 今後とも、子どもを最優先に考え、あくまでも子どもを最優先に考え、関係機関相互の連携が十分に機能する総合的、専門的な体制整備を進めていくつもりでございます。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君)都立学校へのAEDの導入についてでございますが、都教育委員会では、今後、公共施設等にAEDが急速に普及することを踏まえまして、今年度から、教職員を対象としたAEDの実技講習会を開始したところであります。
 また、生命を尊重し、救命救急活動を行える人材育成のため、各学校におきまして、生徒を対象に、関係機関との連携を図りながら、救命実技講習会などを推進してまいります。
 さらに、都立学校へのAEDの配備につきましても、試験的な導入を含めまして、早急に検討してまいります。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君)障害者の一般就労の場の拡大についてでございますが、障害者の自立と社会参加を実現する上で、障害者が働くことを通じて能力を最大限発揮できるような環境の整備を進めることが重要でございます。
 都は、これまで、障害者雇用の促進のため、第三セクター方式による障害者雇用モデル企業の育成や職業訓練などを実施してまいりましたが、民間企業の多くは障害者の法定雇用率を達成しておらず、一般就労の場の確保に向けた改善が必要でございます。
 今後は、他の企業のモデルとなるような障害者雇用の取り組みを行う企業の支援や、その成果の普及など、障害者の一般就労の場を拡大する新たな方策を検討してまいります。
   〔交通局長松澤敏夫君登壇〕

○交通局長(松澤敏夫君)障害者団体の出店についてのご質問にお答えいたします。
 都営地下鉄駅構内への出店に当たりましては、現在、原則として、公募によりまして広く事業者から提案を募り、収益性や駅の立地等を総合的に判断して選定しているところでございます。しかし一方で、ご提案のように、地下鉄駅構内などにおきまして、障害者の働く場を提供することも公営交通の役割として必要であると考えております。
 今後、局の関連事業としての採算性などにも十分考慮しながら、障害者団体が出店する場合、どのような条件設定が必要かなどにつきまして検討してまいります。
   〔病院経営本部長大塚孝一君登壇〕

○病院経営本部長(大塚孝一君)児童虐待の早期発見に向けた都立病院の体制整備についてお答えいたします。
 現在、都立の小児病院におきましては、医師、看護師、医療ソーシャルワーカーなどで構成する専門の組織を設置いたしまして、虐待が疑われる症例について検討を行うなど、その早期発見に努めております。
 その他の都立病院におきましても、個別のケースごとに、各診療科や医療ソーシャルワーカーなどが連携し、対応しているところでございますが、今後は、ご提案を踏まえまして、院内に検討会を設置するなど、体制整備に取り組んでまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君)四点のご質問にお答えいたします。
 まず、大規模空間を持つ建築物の天井落下防止対策についてでございますが、震災時における大規模空間を持つ建築物の天井落下を防止することは、人命を守る上で重要でございます。
 都は、平成十七年八月の仙台市スポーツ施設における天井落下事故を踏まえ、調査を実施したところ、都内で三百二十棟の建築物について対策が必要であることが判明いたしました。
 このため、都及び区市は、所有者等に対して是正指導を行い、十一月末には、五十三棟が振れどめの設置などの落下防止対策に取り組んでおります。まだ対策がなされていないものにつきましては、区市と連携し、早急な是正に向け、所有者等を強く指導してまいります。
 次に、つり天井に関する技術指針の条例化についてでございますが、大規模空間を持つ建築物の天井落下を防止するため、都は、国土交通省の技術指針をもとに、建築主に対し、落下防止対策の実施を求めております。
 大規模空間を持つ建築物の天井落下防止対策は、人命にかかわる全国的な課題であり、今後の是正状況を踏まえ、より実効性のある方策を講じるよう、国に対し強く要請してまいります。
 次に、地下鉄十三号線整備に伴う駐輪場設置についてでございますが、駐輪場の設置に当たりましては、地元区が設置、管理を行い、都はその支援を行うといった役割分担のもと、区が主体的に取り組むべきものとなっております。これまで、大江戸線、半蔵門線など地下鉄整備に際しましては、こうした役割分担により駐輪場の設置を推進してまいりました。
 都といたしましては、地下鉄十三号線整備に伴う新駅周辺の駐輪場設置につきましても、設置主体である地元区の積極的な取り組みに対し、技術的支援や国費の導入、鉄道事業者との調整など、必要な支援を行ってまいります。
 最後に、新宿駅周辺の新たな地下歩行者道ネットワークの構築についてでございますが、靖国通り地下歩行者道の地下鉄十三号線や大江戸線への延伸は、歩行者の利便性や回遊性の向上に資するものと認識いたしております。
 大江戸線への地下歩行者道の延伸につきましては、西武新宿線地下駅の整備が具体化していないことや、新宿大ガードとの近接施工となることなど、多くの課題がございます。
 一方、十三号線への地下歩行者道の延伸は、周辺のまちづくりとの整合性を踏まえた上で、整備主体、事業スキームなどを検討することが不可欠でございます。
 都といたしましては、区のまちづくりへの支援や十三号線への延伸の検討会に参画するなど、地元区の取り組みに対し協力してまいります。
   〔財務局長谷川健次君登壇〕

○財務局長(谷川健次君)大規模空間を持つ都立施設の天井落下防止対策についてでございますが、仙台市のスポパーク松森における天井落下事故を受け、都立施設の管理者に対し、振れどめ、天井と壁との間隔、天井の段差などの状況につきまして技術的な点検基準を示し、大規模空間を持つ建築物の緊急調査を実施いたしました。
 今後、専門的な判断が求められる建築物につきましては、さらに詳細調査を実施した上で、必要に応じて安全対策を講じてまいります。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君)明治通りの拡幅整備についてでありますが、本路線は、副都心である渋谷、新宿、池袋を結ぶ重要な幹線道路でありまして、現在、新宿区の戸山地区や大久保地区など七カ所、四・三キロで事業中でございます。
 整備に当たりましては、歩道を四・五メートルに拡幅し、電線類の地中化を行うとともに、高木と低木による連続した植栽帯を設け、緑豊かで良好な景観の形成に努めてまいります。
 また、バリアフリー対策といたしましては、歩道の段差解消や視覚障害者誘導用ブロックを適正に配置するなど、だれもが安心して通行できる歩行空間を確保いたします。
 今後とも、地元の理解と協力を得ながら、着実に事業を推進してまいります。

〇副議長(木内良明君)五十五番くまき美奈子さん。
   〔五十五番くまき美奈子君登壇〕

○五十五番(くまき美奈子君)民主党のくまき美奈子でございます。定例会で初めて質問に立たせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 初めに、がん撲滅への取り組みについて伺います。
 ことし十月、乳がん月間のピンクリボン運動で、東京都でも乳がんの早期発見、診断、治療を呼びかけて、都庁がピンク色にライトアップされ、都営交通では記念乗車カードが発売されました。日本人女性の乳がん罹患率は二十二人に一人ともいわれ、私の周りにも乳がんにかかり、治療で大変な経験をされた方がいます。このピンクリボン運動がきちんと根づくことを願います。
 都の乳がんの状況について調べたところ、死亡率は全国一高い状況にあります。さらに、乳がん検診受診率は他府県に比べ低く、早期発見、早期治療に結びつかず、死亡率は増加の一途であり、乳がん対策は都の緊急の課題であるといえます。早急に乳がん検診の受診率を向上させるとともに、検診の質の管理など体制を整備していく必要があります。
 乳がん検診の受診率を向上させるためには、都民に対する普及啓発の強化とあわせ、検診の実施体制の拡充として、マンモグラフィーの整備や一定の能力を有する読影医師、撮影技師の確保など体制整備が必要であると考えますが、この体制整備について今後どのように展開していくのか、所見を伺います。
 国の指針では、乳がんの検診対象者が四十歳以上とされていることから、区市町村で実施されている検診も、ほとんどが四十歳以上を対象にしています。ところが、三十歳代について見ると、乳がんの罹患率が二十歳代の十四倍と爆発的に増加しています。この世代は子育ての時期でもあり、家庭の中で重要な役割を担い、家庭や社会を支える世代です。あるいはこれから結婚、出産を迎える世代でもあり、この世代の人たちを乳がんから守るためにも、四十歳以下への有効な検査方法の検証など取り組みが必要であると考えます。
 そこで、四十歳以下に対する乳がん対策として、都での今後の取り組みと事業転開について伺います。
 さらには、検診の結果、乳がんが発見され、病院で受診した際に、どのような手術や治療の方法があるのかなど、さまざまな悩みが出てくると思われます。患者がみずからの治療方針を判断するためには、主治医から十分な説明を受け、自分も納得して治療を受けるというインフォームド・コンセントが重要になります。
 患者にとって、がんはみずからの生死にかかわる問題であり、その医師の診断や提示された治療法を本当に受け入れてよいのかとの迷いは切実であります。このようなことから、治療方針について主治医以外の意見を聞くセカンドオピニオンを求めるニーズが高まっています。
 先日報道された新聞記事によると、東京都内のがん専門病院を初め、全国でセカンドオピニオンを実施する医療機関が急増しているとのことですが、料金に関してはかなりの差があるようです。平成十三年に設置した都の医療のより良い関係を考える会では、セカンドオピニオンについて検討し、主治医が患者に十分な説明を行い、それでも治療方針等の判断を迷っている場合には他の医師を紹介するということが原則であり、医師との信頼関係を強固なものとしつつ、患者の自己決定権を支えるものと定義づけています。
 患者が自分で納得できる治療が得られるよう、セカンドオピニオンを都内で定着させ、さらに普及させる必要があると考え、セカンドオピニオンの普及に関する都の取り組みについて伺います。
 都民が実際に治療を受ける場合には、身近な地域で質の高い治療を受けたいと思うものです。がん治療に関し、地域の中で中心的な役割を担う病院として地域がん診療拠点病院が指定されており、そのあり方については、現在国で検討していると聞いています。
 そこで、都としても、専門医の育成、検診設備の充実と病院の連携強化、がん治療成績のデータ収集、いわゆるがん登録など、地域がん診療拠点病院の機能の充実について積極的に取り組まれるよう要望いたします。
 医食同源といわれるように、健康の源である食事の素材として食品が安全であることは、都民生活の基礎となります。そこで、食品の安全確保について伺います。
 東京は、いうまでもなく世界有数の大都市としてさまざまな食品が豊富に流通し、全国のグルメにとっても魅力あふれる都市となっています。
 しかし、食品の流通がグローバル化し、日本の食糧自給率がカロリーベースで四割となる中で、海外で発生した食品の事件、事故が直ちに都民の食卓へ影響を及ぼす時代となりました。ここ数年でも、輸入農作物の残留農薬問題や、日本では使用を認められていない添加物が使用されていた問題など、輸入食品に関する事件が続々と報道されています。そして、つい最近では、アメリカ・カナダ産牛肉の輸入再開に向け、その是非が大きく取り上げられました。食品の安全というものは、国家的、国際的にも重要な課題です。
 こうした中で、首都東京には、今後もさまざまな国や地域から食品が集められ、流通が拡大していくに従って、都民の食に対する不安はますます高まることが予測されます。
 都は、こうした大消費地東京における食品の安全確保を図るため、危害の未然防止などを基本理念に掲げた食品安全条例を全国に先駆けて昨年制定していますが、最近の新たな状況を踏まえ、都民の食の安全をどのように確保していくのか、改めて知事のお考えを伺います。
 また、都は、都民や事業者にとって身近な自治体として、日々の課題へきめ細かく対応し、事業者への指導、支援や、都民への大切な情報提供などを初め、食品の安全確保対策を進めていくことが重要です。
 都民生活に直結する具体的な課題の一つに食中毒があります。ここ十年間における食中毒の発生状況を見ると、年間で約百件、約二千人の患者が発生しています。私たちの生活における衛生レベルは高いものであると考えてきましたが、こうした状況を見ると、決して油断できないと感じます。
 また、食中毒は主に夏場に発生するものと考えられがちですが、近年は主に冬場に発生するノロウイルス食中毒が増加し、昨年、都内では、この食中毒の件数及び患者数が最も多い状況です。ノロウイルス食中毒は二枚貝によるものがよく知られていますが、最近では、それ以外にもさまざまな原因による事例が見られます。そうした事例の中には、幼児や高齢者など、抵抗力の弱いハイリスクグループが利用する社会福祉施設においても発生しており、大きな問題になっています。
 これからノロウイルス食中毒の多発期を迎える中で、都は具体的にどのような防止対策を講じていくのか、お聞かせください。
 最後に、障害者への理解促進について伺います。
 障害、障害者という言葉は定着した言葉のようになっていますが、いわば行政用語が一般化したものです。障害という言葉の感じは、「障」も「害」も否定的な意味合いが強く、その言葉自体や漢字表記に差別感を持つ当事者もいます。
 先般、私の地元板橋区では、地域保健福祉計画の策定に当たり、障害の「害」の字を平仮名表記に改め、「障」は漢字としました。その理由は、障害者に対する差別や偏見をなくしていこうとする心のバリアフリーを推進するためです。
 これには、言葉だけをかえても、障害者の実態が変わらなければ意味がない。「害」を平仮名にしても、差別や偏見を持つ人の意識は変わらないという意見も確かにあります。また、産経新聞の社説には、国語という意味から、安易な表記の変更は好ましくないとの論調で取り上げられました。
 言葉が差別をするのではなく、人が言葉で差別するわけですから、「害」という漢字を用いることの是非自体が大きな問題とはいえないのかもしれません。ほとんどの人が障害者という言葉を知識として知っています。それなのに、自分自身をあらわす言葉に「害」という漢字が用いられる、それに対して違和感を持つという人のことや、日々生きづらいと感じながらも、克服しつつ、社会の中で生活する人の気持ちなど、その多くの人たちは考えたこともないのだと思います。
 「害」を平仮名で表記するという小さなアクションが一般紙の社説に取り上げられたこと自体が、決して無意味なことではありません。賛否は別にしても、私は、このことを契機として、私たちの社会の何が、障害のある人に「害」という漢字を使うべきでないと感じさせるに至ったのか、この一字の背後にある事情について考えさせられました。
 生きづらいと感じさせているのは、悪意ある偏見や差別だけでなく、多くの人の無理解や無関心が生んでいるバリアなのではないかと私は思います。それを取り除いていくために今何が必要なのか、関心を持って考えなければ何事も始まりません。
 障害のある子どもとない子どもが接点を持たずに育つことによって、障害のことをわからずに大人になってしまうということがあります。この社会はさまざまな人がいて成り立つということを小さいときから体験して成長すれば、互いの違いを認め合いながら生きていくことができるのではないでしょうか。
 今後、学校教育の中で、障害のある子どもたちへの理解を深めていくため、どのように取り組みを進めていくのか伺います。
 また、東京都では、障害があっても、地域で生き生きと暮らすことを支援するため、障害者地域生活支援緊急三カ年プランを実施してきました。地域でグループホームなどの整備が進みました。グループホームはニーズがまだまだあり、引き続き積極的に整備を進めていかなければなりません。しかし、いまだに計画段階で反対運動が起こることもあると聞きます。
 なお、自立支援法が成立し、障害者の経済的自立はますます重要になりますが、障害者雇用は進んでいないのが現実です。こうした現状を打開し、私たちの社会を障害のある人もない人もともに暮らせるものとしていかなければなりません。
 そのためには、障害に対する理解を促進し、差別、偏見をなくしていく取り組みを進めることにより、さまざまな施策の推進を図るべきと考えますが、見解を伺います。
 関連して、障害者の福祉的就労について申し述べます。
 自立支援法においては、従来の本人所得での負担額から世帯収入での負担額になり、作業所などへ通うことも、サービス利用として一割の負担が発生します。工賃を利用料負担が上回ることもあり、障害者にとっては、働きに行ってお金を払うという状況が生じます。
 福祉的就労とは、障害のある人が福祉的な支援のある環境で仕事を行うことによって働くことへの意欲や自信をはぐくむとともに、一般就労に進み、さらに自立した生活ができるように、継続的な支援を行うことです。
 ところが、施設に行けば出費がかさむので行きたくとも行けない、行きたくないということになり、働く意欲を育てるどころか、引きこもりがちな生活になってしまいかねません。自立支援法のもと、福祉的就労はこうしたことが危惧されるのです。
 先日、私ども都議会民主党の仲間が訪問した障害者施設において、つくった製品の価格や売れ行きに職員の方は頭を悩ませていました。せっかくつくった製品も販売先が限られており、余りお金にならないというのです。
 賃金を得ることが第一義ではありませんが、制度の目的自体を損なうようであれば、本末転倒といわざるを得ません。都として、福祉的就労においても障害者の工賃を少しでも上げていくために、経営的な視点からの取り組みを重視し、支援されることを要望して、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕  

○知事(石原慎太郎君)くまき美奈子議員の一般質問にお答えいたします。
 食品の安全確保についてでありますが、東京は、日本で最大の消費地かつ物流の拠点でありまして、食の安全の問題が日本じゅうで最も先鋭的にあらわれる地域であります。
 食の危機を回避するために、都が率先して食の安全への取り組みを進めることが重要でありまして、昨年三月、食品安全条例を制定いたしました。この条例に基づきまして、輸入食品に対する監視や健康食品による健康被害の未然防止など、重点課題に戦略的に取り組んでおります。
 都は、都民の食の安全と安心を将来にわたって確保するため、総合的な取り組みを推進していくつもりでございます。
 他の質問については、教育長及び福祉保健局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君)障害のある子どもたちへの理解についてでございますが、子どもたちが、障害のあるなしにかかわらず、互いのよさや違いを認め合い、尊重し合う態度を身につけていくことは重要でございます。
 現在、盲・ろう・養護学校と小中学校等では、運動会や学習発表会などを通しまして継続的に交流活動を実施しております。
 今後は、これらの交流活動に加えまして、子どもたちが一緒に学習する機会をふやすなどして、互いに理解を深める教育を一層推進してまいります。
   〔福祉保健局長平井健一君登壇〕 

○福祉保健局長(平井健一君)乳がん対策など五点のご質問にお答えいたします。
 まず、乳がん検診の実施体制整備についてでございますが、都では、昨年度から、区市町村の検診に従事するマンモグラフィー読影医師、撮影技師の養成研修を実施しており、また今年度からは、検診を実施する医療機関等に対し、マンモグラフィー機器の整備費を補助し、検診体制の拡充を図っております。
 今後とも区市町村や関係機関と十分な調整を行いながら、施策の推進を図ってまいります。
 次に、乳がん対策に関する都の取り組みについてでございますが、乳がん検診の対象は、罹患率の状況やマンモグラフィーの有効性などから、国の指針において四十歳以上とされております。
 一方、乳がんに関する正しい知識を持つことは、年齢にかかわらず重要であるため、都はこれまでも広く普及啓発に努めてまいりました。今年度は、大学や短期大学等へのリーフレットの配布や、大学の学園祭での講演会を実施するなど、よりきめ細かな取り組みを行っているところでございます。
 今後とも、若年世代を含めたすべての女性を対象に、乳がん対策に一層取り組んでまいります。
 次に、セカンドオピニオンの普及についてでございますが、患者さんが自分自身の治療方針を決定するため、主治医以外の専門家の意見を求めるセカンドオピニオンが普及することは、患者中心の医療を実現する上で望ましいことと考えております。このため、都では、特定機能病院の協議会におきまして検討を行うとともに、各病院に働きかけ、現在、九病院でセカンドオピニオン外来が実施されております。
 しかしながら、現時点では法制度上の位置づけが明確でないため、具体的な実施方法や患者さんの費用負担などが病院によってさまざまな実態がございます。こうしたことから、都は、セカンドオピニオンの仕組みの確立や診療報酬の見直しについて、国に対し提案要求を行っているところでございます。
 次に、ノロウイルス食中毒の対策についてでございますが、ノロウイルス食中毒は、調理の過程で汚染された食品により発生することから、食品を提供する事業者の自主的な安全管理が最も重要であり、都は、予防対策の標準マニュアルやリーフレットを作成して、普及啓発を行っております。
 特に、乳幼児や高齢者が利用しております社会福祉施設については、大規模な食中毒の発生を未然に防止することが特に大切であるため、昨年度から、衛生講習会の開催や施設への立入指導を積極的に行っているところでございます。
 今後とも、各施設への重点的な指導を実施し、予防対策を徹底してまいります。
 最後に、障害者への理解促進についてでございますが、地域の中で障害者施策を着実に進めていくためには、障害に対する都民や企業の理解が不可欠でございます。このため、都は、グループホームの整備に当たって、事業者に対し、近隣住民への説明会の実施を指導するとともに、障害者の雇用促進につきましては、企業に対し、地域における就労支援ネットワークへの参加を求めているところでございます。
 今後とも、さまざまな機会を通じて、障害に対する都民や企業等の理解を深めていくことにより、グループホームの整備や就労支援の強化など、障害者の自立を支援する施策を推進してまいります。

○副議長(木内良明君)この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後二時五十九分休憩

   午後三時二十二分開議

○議長(川島忠一君)休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行します。
 六十八番林田武君。
   〔六十八番林田武君登壇〕

○六十八番(林田武君)在日米軍再編の中間報告が発表されました。米軍横田基地が新しい局面を迎える中、周辺自治体や住民たちは困惑し、さまざまな反応を示しております。
 横田が存在する東京都においても重要な問題だと思います。どのように東京都として受けとめているのか伺います。
 在日米軍再編の中間報告がなされたのは、ことしの十月二十九日であります。横田基地については、自衛隊を統合運用体制に変革するとの日本国政府の意思を認識しつつ、在日米軍司令部は横田飛行場に共同統合運用調整所を設置する、この調整所の共同使用により、自衛隊と在日米軍の間の連接性、調整及び相互運用性が不断に確保されるとしております。現在、府中市にある日本航空自衛隊航空総隊司令部及び関連部隊は、横田飛行場において米第五空軍司令部と併置される、要するに横田基地の軍軍共用化であります。
 この中間報告に対して、知事は、十月二十八日の定例会見等で、航空自衛隊は横田を使う気はなかったのに、こうなるのは日本の外交力がいかに乏しいかということだ、と申されました。
 新しい局面を迎え、横田基地はどうなるのか。府中市にある航空自衛隊航空総隊司令部は日本空域の防衛のかなめであり、これが横田基地へ移転するということは、戦後の航空自衛隊の歴史の中でも大変な出来事であるといわれていながら、まことに情報不足であり、横田周辺自治体は東京防衛局の職員が説明に歩いたと伺いますが、とても納得するような説明とはいえず、地元の自治体は不満と不信感でいっぱいであります。
 ある自治体の担当者によると、航空自衛隊との共用化や航空管制業務の返還について説明がありましたが、国側は、今回の説明については非公式なものと強調し、自治体に秘密を守るように口どめしたと聞いております。
 現在でも米空軍の騒音で苦しんでいる地元では、軍軍共用でさらに軍用機の騒音がふえるのではないかという不安が高まっております。
 知事は、今回の中間報告に盛り込まれた、横田基地におけるいわゆる軍軍共用の方向についてどのように受けとめられているのか、今四定の所信表明の中でも触れられておりますが、見解を伺います。
 また、知事が大きな施策とされている横田の軍民共用化について、どのような状況認識を持ち、どのように対処しようとしているのか伺います。
 そして、何よりも、地元の不安が増大する中で、地元への理解、協力を得る努力や情報提供が必要と考えますが、お伺いいたします。
 次に、東京の森林再生計画を進める中で、花粉症対策、シカの食害対策、東京の木材として多摩産材の活用について、そして川プランについて伺います。
 昨日、我が党新藤政調会長の代表質問に知事がご答弁なされ、その中で、今こそ木の文化を思い出し、林業の再生による木材の活用と森林整備の調和を取り戻すべく、花粉発生源対策に臨むと強く申されました。
 そこで花粉症対策ですが、西多摩の森を選挙区に持つ私といたしましては、多摩の森林再生という大目標を掲げる中で、どのような今後の施策を進めていただけるのか、幾つか質問させていただきます。
 都内では、今春、花粉飛散量が昨年春の何と四十一・九倍、観測史上最大といわれるようになってしまいました。知事自身も、ことしの三月、圏央道あきる野インター開通式にご出席なされたときに、ついに花粉症になってしまったと伺います。
 申し上げるまでもなく、花粉症になる原因は、杉から大量に花粉が飛び、車の排気ガスやコンクリート化した都市が増幅させる複合汚染の状況であるといわれています。しかし、根本は、戦後六十年、国が林業施策に何も手を打ってこなかったことが最大の原因であります。
 森林の再生が今問われているわけですが、森林は、きれいな空気をつくり、雨水を吸収し、私たちの水源を与えてくれます。多摩の森林も、戦後、杉やヒノキの苗木を植え、育て、成長した材木をいざ活用していくという時代になって、安い外材を大量に輸入し、杉やヒノキを、日本材は高いということで手をつけずにほうっておいた結果であります。いわゆる森林の大切な循環システムが全く作用しなくなったからであります。
 東京都では、石原都政になって、平成十二年十二月、緑の東京計画を発表され、平成十四年には東京の森林プロジェクトをさらに策定いたしました。西多摩には五万二千ヘクタールの森林があり、人工林三万ヘクタールのうち、民有林一万八千ヘクタールを対象に、都と所有者が管理契約をして、林業関係者に委託して間伐をしていく、五十年かけて二百四十億かけてやるんだということで、間伐作業が進んでいると思います。
 そんなとき、マスコミの言葉をかりれば、知事のツルの一声で、東京都は十一月十四日、都花粉症対策本部を関谷副知事を本部長として設置していただきました。関谷副知事は前産労局長、全く適任だと思います。
 もとを断たなければだめということで、多摩地区で発生するスギ花粉の量を十年で二割削減する。具体的に道路や市街地に近い一万二千ヘクタールの杉林について、百年かけて花粉の少ない杉に植えかえる。来年度予算に杉の伐採や植林に二十七億円を盛り込む。まことにありがたいことだと思います。
 しかし、何度も申し上げますが、戦後、手をつけずのまま放置されていた杉主伐は大変な作業だと思います。大事なことは、杉やヒノキを主伐し、木材として使用され、森林所有者や林業者が伐採時期を過ぎた杉林を伐採し、搬出していかなければなりません。そのための支援や、さらに伐採した杉やヒノキを、東京材、多摩産材として需要拡大なくしてはなし得ないことだと思います。
 いかに森林をよみがえらせるかが花粉症対策の近道であると思いますが、花粉症発生源対策をどのように進めていくつもりなのか伺います。
 次に、奥多摩町のシカの食害対策について伺います。
 この問題も花粉症問題と原因は一つ、私たちの生命の源である森林を大切に守ってこなかったことであります。石原知事が「国家なる幻影」という著書の中に、環境問題は、経済成長という国家の絶対に近いテーゼに対してアンチテーゼの問題とおっしゃっております。多摩の森林の荒廃、花粉症、シカの食害、まさにそのとおりだと思います。
 東京都では、シカの食害対策に、平成十六年、十七年と、環境局、産労局を中心に重点施策を進められ、感謝申し上げます。
 奥多摩町のシカの食害問題は、昭和五十一年、東京都が奥多摩を都内で唯一、雄ジカ狩猟禁止区域に指定し、雄ジカを過保護した結果、シカがふえ続け、平成五年に五百頭、今や二千頭を超える数になってしまったわけであります。平成六年、奥多摩町では既にこのことを危惧し、東京都、当時の鈴木知事にシカ食害対策の陳情を出しておりました。
 都はその後も何ら対策を講じず、昨年、平成十六年七月十一日に発生した集中豪雨により、シカの食害で裸山になっていた川乗谷支流逆川地域の山から大量の土砂が流出し、本流である多摩川に濁流が流れ込んで、飲料水、漁業組合、水生生物に甚大な被害を与えました。
 石原知事は、この現状を見て、直ちに四つの緊急対策を打ち出し、各局連携して、それぞれの局で取り組んできました。シカの捕獲の実施、モノレールの整備、治山復旧、裸山への造林等の実施状況と、今後どのように進めていくのか伺います。
 次に、森林の再生対策で重要なことの一つ、林業の再建であります多摩産材の活用について伺います。
 多摩産材を東京都の大きな資源として積極的に公民問わず利用してもらいたいという地元自治体や森林組合の声をもっと真剣に受けとめて、施策の中に生かしていただきたいと思います。
 先般、都市センターで第五回都道府県議会研究交流大会が開催され、参加いたしました。その中で、三重県議会において、三重のもりづくり条例が議員提案で出され、九月二十七日に条例が制定されたと伺いました。内容を簡略に申し上げますと、三重県産材をもっと三重県で活用しようということです。三重県は、公共施設、公共事業等へ三重県材の積極的な利用を促進するため、必要な措置を講ずるよう努めなければならないとし、三重の森林を守るとともに、林業経営者に県を挙げて取り組むというものであります。
 そのとき私は、多摩産材の今の現状も同じだと思いました。多摩産材はまさに東京産材であり、都民の財産であり、都民全体で森の恩恵を強く持ち、多摩産材の活用を考えるべきだと思いますが、知事のご所見を伺います。
 都では、公共事業として、建設局で道路のガードフェンス、産労局でシカの防護さくなど活用してもらっておりますが、教育庁で都立学校における内装木質化の整備ということで、都立学校において内装の仕上げ材に多摩産材を活用することにより、室内の温かみと潤いある環境づくりの実現を目指す、さらに、多摩の森林、産業の活性化を図るとともに、森の健全化による地球温暖化に配慮した施策に寄与するということで、本年度の改修事業の中で、都立両国高校、小石川高校、中野養護学校の三校を、多摩の杉、ヒノキを使って内装工事を進めていただきました。着眼点に感心するとともに、今後も予算枠をふやして、積極的に木質化教室の実現に努めていただきたいと思いますが、決意を伺います。
 また、教育庁のみならず、各局とも、東京の杉、ヒノキをみずから活用している奥多摩町や檜原村を視察してもらいたいと思います。このたび完成した奥多摩町福祉会館は、杉、ヒノキを活用したすばらしい施設であります。
 最後に、都が進める川プランについて伺います。
 豊かな川づくりは豊かな森づくりからといわれます。豊かな森づくりを進めることは、一方では、川に生きる生物にとってすみやすい豊かな河川をはぐくむことにつながります。産業労働局では、ここで河川を舞台とした水産業振興プランの中間のまとめを発表いたしましたが、まず、このプランの趣旨について伺います。
 都市化の進展によって河川環境の悪化が進み、天然の川魚が減少の一途をたどっていましたが、最近、いわゆる江戸前アユが多摩川の下流域まで遡上したという報道がありました。多摩川はかつてアユの川として全国でも有数な河川の一つでした。プランでは、江戸前アユの復活に向けた施策を掲げています。実現できたら、こんなすばらしいことはありませんが、具体的な取り組みはどのようなものか伺います。
 東京に多くの人が住むようになって以来、多摩川の水は、魚よりもむしろ都民の飲み水、農業用水、工業用水といった都民の生活や都市機能を支えるため活用され続けてきました。このことは、必要な役割には違いありませんが、川本来の姿、潤いや憩いをもたらす役割も重要であります。
 東京の河川が直面する課題を克服し、内水面水産業の新たな発展を図ることを目的に策定される水産業振興プランに期待するわけでありますが、このプランに基づき、関係各局が連携し、事業を着実に推進させていただくことを強く要望し、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君)林田武議員の一般質問にお答えいたします。
 横田基地の軍民共用化についてでありますが、そもそもこの横田基地の軍民共用化なるものは、一昨年、テキサスのクロフォードでの小泉・ブッシュ会談で、総理は日本の外務省を飛び越してじかに持ち出してくれまして、極めて妥当な提案であると、これから両政府間の問題として検討しようという答えが返りまして、事態は一挙に進むと思いました。
 それまで外務省と国務省の懸案事項だったんですが、にわかにこれは国防省マターになりまして、軍の当局者からもじかにアプローチがありまして、東京の意向をただすところまでいったんですが、それにおくれて、米軍の世界戦略の展開のための合理化ということで、いわゆるトランスフォーメーション、再編という動きが起こりまして、結果として、日本の外交が拙劣だったせいか、米軍の流れに巻き込まれてしまいまして、軍軍民共用化という、要らぬ回り道といいましょうか、余計な事態になったと思いますが、いずれにしろ、先日、ワシントンで、トランスフォーメーションの最高責任者ローレス副次官でしょうか、と会いました。彼は間もなくホワイトハウスへ入りますけれども、彼がそのとき、中間報告は中間報告でない、この問題については、詳細を昨日ラムズフェルドに報告したら、国防長官はザット・イズ・イット、つまりそれでいいといったので、これが実質的に最終報告ですよということでありまして、その中には、軍軍民共用を具体的にこれから協議するとありましたので、あとは、私は、具体的にこれをどう進めていくかという問題だと思っております。
 我が国を取り巻く国際情勢からすれば、防衛力の強化という観点からも、アメリカの意向で自衛隊がそれに従って、移したくもない人員を横田に移すというのもやむを得ないといいましょうか、その本意がわかりませんが、いずれにしろ彼らは、自衛隊を、人員は移しても、機材は一台も移さないといっています。その必要も全くないんだということをいっておりますから、あそこにいわば、何というんでしょうか、恐らく警備体制の一つのセンターのようなものができるのかなと思っておりますけれども、いずれにしろ、機材は持ち込めるつもりはありませんし、そのつもりも防衛庁にもありません。
 ということで、あの利用性の高い、日本で一番長い横田の滑走路を、いずれにしろ共用で活用していくことは、国益を考えれば当然のことでありまして、いささか国といいましょうか、外務省にこうした認識が足りなかったという気がいたしますが、いずれにしろ、この最終報告に等しい中間報告で、これからこれを協議していくということであります。
 この協議の内容は、実は解釈はいろいろあるかもしれませんけれども、私はローレスなどと話した内容からして、それまでの経緯の中でも、アメリカの当局は、先に日本から依頼して、ハドソン研究所に横田の実態を調べさせて、国務省、国防省へ報告をしてもらいました。あわせて、それを踏まえて、杉山一橋大学の学長、交通経済の専門家でありますから、杉山さんをチェアマンにした杉山委員会が設置されまして、さらに具体的に、一日何便飛ばしてどれだけの経済効果があるかという報告を待っておりますが、これもアメリカ側も非常に期待して、自分たちはこれからの具体的な協議で、この二つの報告を踏まえて具体的な話し合いにしたいといっております。
 いずれにしろ、私たちは、これから先、具体的に一日何便飛ばすか、これは既に日本の飛行機会社の当事者とも話を進めておりますけれども、そしてそれがいかなる経済効果があるかということを世間に披瀝して、このプロジェクトを進めていきたいと思っています。
 現に、米軍の方から、それを踏まえて、予測でありますけれども、実現されていく過程で、あの敷地の中のどこにターミナルをつくってほしいなどという申し出もありまして、これからの協議では、事はさらに具体的に進められていくものと思っております。
 次いで、森林の恩恵と多摩産材の活用についてでありますけれども、森林は、木材供給のみならず、水源の涵養や大気の浄化など多面的な機能を持ったかけがえのない財産でありまして、日本は世界有数の森林国であり、我々は森林の持つ豊かな恩恵に浴してまいりました。
 しかし、戦後の国の拡大造林政策の失敗と木材の輸入自由化による海外依存の結果、多摩の森林は長年にわたり放置され、非常に荒廃することになりました。今日改めて森の恵みを顧みて、かつての豊かな多摩の森林を取り戻し、次の世代に継承していかなければならないと思っております。
 食の世界では、地産地消、つまり土地でとれたものをその土地で消化するということでありますけれども、その土地でつくられた作物には愛着もありまして、地域ではぐくまれた産物は、またその気象に合った、気候に合った形で、手にする人たちの体にも非常に好ましいことでありますが、これは食のみならず住にも通じるものでありまして、東京の風土にはぐくまれた多摩の材木を用いた住まいに暮らすことが、体にも、また環境にも好ましいと確信しております。
 なお、他の質問については教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君)都立学校におきます多摩産材の活用についてでございますが、お話のとおり、都教育委員会では、都立学校におきまして、内装の仕上げ材に多摩産材を活用することによりまして、室内の温かみや潤いのある環境づくりを目指し、あわせて多摩の森林産業の活性化に寄与するよう、内装木質化の整備を進めているところでございます。
 これによりまして、潤いや安らぎなど精神的なゆとりによりまして教育効果を高め、木材使用による室内化学物質の低減化を図るなど、学習環境の向上が期待できることから、今後とも、さらに各局と連携を図りながら、木質化による整備を進めてまいります。
   〔知事本局長山口一久君登壇〕

○知事本局長(山口一久君)横田基地に関する地元への対応についてでございますが、基地機能の変更は地元に大きな影響を及ぼすものであり、今回の在日米軍再編協議の中間報告の内容や今後の最終報告に向けた交渉の状況などについて、地元に対して十分な説明責任を果たすよう、今後とも国に求めてまいります。
 軍民共用化については、都はこれまでも地元自治体への説明に努力を重ねてまいりました。今後、周辺の基盤整備や騒音対策など、地元とより密接にかかわりのある課題への対応が重要となることから、引き続き地元の理解と協力を得るように努めながら、軍民共用化の早期実現を目指してまいります。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君)森林再生等、四点のご質問にお答えいたします。
 まず、花粉発生源対策についてでございますが、先月、花粉症対策本部を設置し、都を挙げて総合的な花粉症対策に取り組むことといたしました。花粉症の原因であるスギ花粉を確実に削減するためには、杉林を本格的に伐採し、花粉の少ない樹種への転換を図るとともに、杉と広葉樹の入りまじった森づくりを進める必要がございます。
 そのためにも、伐採された木材を有効に活用するための木材需要の確保、拡大が課題となってまいります。こうした取り組みを、都民や森林所有者の理解と協力を得て、一歩一歩着実に進めてまいります。
 次に、シカ被害対策事業の実施状況と今後の計画についてでございますが、現在、シカ被害対策事業としては、シカ捕獲に加え、裸山への治山工事や造林などの事業を実施しております。シカ捕獲につきましては、シカ保護管理計画に基づき、今年度は約七百頭の捕獲を計画しており、十一月末現在、二百四十五頭を捕獲いたしました。
 また、シカ被害により土砂崩壊が発生した奥多摩町逆川地区での治山工事や、緊急に対応が必要な裸山十一カ所、二十ヘクタールでの防護さくの工事に着手しているところでございます。
 今後も、関係市町村や隣接県との連携を図りながら、森林の再生に積極的に取り組んでまいります。
 次に、水産業振興プランの趣旨についてでございます。
 東京の河川は、都市化の進展などに伴い、水生生物の生息環境の悪化や親水機能の低下など、さまざまな問題が生じております。こうした状況は、川魚の減少や養殖業の低迷など、内水面水産業に大きな影響を与えております。
 このため、本プランは、内水面水産業の振興に主眼を置きながら、魅力ある河川の復活を目指して、江戸前アユなどの川魚の復活、奥多摩やまめを主体とした養殖業の活性化、水質の改善など魚をはぐくむ環境づくりの三つを柱とする、総合的な振興プランとして策定するものでございます。
 最後に、江戸前アユに関する取り組みについてでございます。
 多摩川へ遡上する天然アユの数は、調査を開始した昭和五十八年以降、一時、二万尾まで減少しましたが、その後、河川環境の改善に伴って、百万尾以上遡上した年も認められております。しかし、年ごとの変動が大きいことから、安定した遡上量の確保が課題となっております。
 本プランでは、安定的に百万尾以上のアユが遡上することを目指して、人工的な産卵場の造成や遡上を助ける魚道の一体的な管理体制の構築などに取り組むこととしております。
 さらに、香り高い本来のアユの復活に向けて、多摩産材を活用した木炭などによる臭気改善の調査研究に取り組んでまいります。

〇議長(川島忠一君)十五番小竹ひろ子さん。
   〔十五番小竹ひろ子君登壇〕

○十五番(小竹ひろ子君)最近は、景気回復傾向が伝えられていますが、その中心は空前の利益を上げている大企業の話であって、中小零細企業の状況は大変厳しいものがあります。また、これに追い打ちをかけるように、原油高や鋼材価格の高騰が中小企業の経営を圧迫しています。
 そこで、知事に伺います。東京の経済活力を再生するためには、中小企業の活性化が不可欠の課題ですが、都の中小企業予算を見ると、減少の一途です。これでは中小企業の活力は望めません。今こそ中小企業予算を充実させるべきと考えますが、所見を伺います。
 中小企業支援では、ものづくり支援と同時に、商店街の支援が喫緊の課題となっています。また、新・元気出せ商店街事業、この事業は、生き残りをかけたイベントなど、大いに役立っており、喜ばれています。最近は、商店街のイベントだけでなく、地域団体も参加した町を挙げたイベントとして、親子、若い世代など、たくさんの人が集う地域住民の交流の場ともなっています。しかも、若い人たちが運営に手伝いとして参加するなど、うれしい変化も報告されています。
 その一方、さまざまな理由で制度を活用できない商店街も残されています。東京都が実施した商店街実態調査では、事業を利用できない理由として、四五%の人が自己負担分の確保の困難を挙げています。また、補助金の増額や補助率の引き上げ、使途の緩和などを強く要望しています。
 新・元気出せ商店街事業については、基金を設け、年度ごとの予算に左右されることなく、また、利用者がいつでも申請できるようにすることは喜ばれると思いますが、どうか。
 また、区によっては認められている、イベントの際の商店街関係者のアルバイト代の支給、財政力の弱い商店街に対する地元負担の軽減など、さらに使い勝手のよいものに改善することを提案するものですが、どうでしょうか。
 商店街を活性化し、大型店やチェーン店と競争していく上で、店舗のリニューアルは欠かせません。文京区では、こうした要望にこたえるために、商店街加入奨励金をつくり、一千二百万円を限度に、利率〇・二%の融資を実施したところ、二カ月で五十件の申請がありました。
 しかし、店舗改装の申し込みについては、都の信用保証協会が保証を渋る例が少なくありません。そこで、個別商店が活力を取り戻すために店舗をリニューアルする場合の資金融資の要望にこたえた、低利の、例えば元気出せ商店街融資を創設することが必要と考えますが、答弁を求めます。
 観光に着目した商店街支援に、新しいアプローチで、文京区では、七十万人が訪れるつつじ祭りを初め、梅、桜、アジサイ、菊の五大花祭り、朝顔、ほおずき市など、観光協会と商店街、町会など町ぐるみ、地域ぐるみの取り組みが年間を通して開催され、商店街の振興にも生かされています。
 これらの祭りは区の補助を受けていますが、花をきれいに咲かせるための年間の維持費など、補助金が足りず、企業や地域の協賛金を集めてしのいでいます。地域の観光協会が商店街と共同して開催する事業について、地域の観光行事として位置づけ、支援することを提案するものですが、いかがでしょうか。
 今、商店街では空き店舗がふえ、組合員が減少するもとで、街路灯の電気代や維持補修に苦労しています。街路灯は商店街に役立つものであるとともに、夜道を照らし、町の防犯、安全に大きな役割を果たしています。だからこそ、多くの商店街が、地域の明かりを消すわけにいかないと頑張っているのです。
 商店街の街路灯は、商店街の照明としてだけでなく、防犯や地域の安全など、地域の明かりの役割を果たしていると思いますが、そうは思いませんか。行政が果たすべき仕事の一部を商店街が担っているわけですから、都として電気代、維持管理への補助を行ってもおかしくないと考えますが、見解を求めます。
 最近、消費税の免税点の引き下げに伴い、非営利の商店街の事業活動にまで課税されることが問題になっています。私が相談を受けたケースでは、年末年始などの商店街の売り出し事業、旅行会、さらには臨時会費、積立金などが新たな課税対象とされています。また、専任の経理担当者を置けず、簡易課税した場合に、サービス業扱いとなり、五〇%という重い税金を負担することになります。これでは振興事業はやれないとの悲鳴が上がっています。
 また、文京区商店街連合会が行っているポイントカードも、カードを加盟商店が購入する形をとっているため、新たな消費税の課税対象とされ、二〇〇〇年度分として、百五十万七千三百円を支払わされたのです。これに対して、スーパーやチェーン店など大手の企業の場合、ポイントカードの費用は経費扱いとされ、売り上げから控除され、消費税もかかりません。余りにひどいという怒りの声は当然です。加えて法人税も、延滞税を合わせ、八万一千八百六十三円課税されました。
 商店街に対する消費税の課税の実態を調査すること、商店街が共同して行うポイントカードや振興事業に消費税を課税しないこと、営利を目的としない団体を課税対象から外すよう国に求めることを提案するものです。
 アメリカの規制緩和圧力のもとで、大型店、それも超大型のショッピングセンターの出店が相次いでいます。先日、NHKテレビで全国のショッピングセンターの出店について報道していましたが、都内でも、葛飾区や多摩地域など、工場跡地など進出計画がメジロ押しです。中でも日の出町のイオンのショッピングセンターの場合には、建築面積十五万八千平方メートル、映画館が十もあるシネマコンプレックスや四千台の駐車場を持つ巨大施設です。商圏は自動車で三十分とされていますが、圏央道に隣接していることから、多摩地域にとどまらず、埼玉、山梨、神奈川など幅広い地域に深刻な影響を及ぼすことが予想されます。
 このような超大型店の出店を放置すれば、既存店の撤退による地域の生活破壊やさらなる商店街の衰退を招くことは必至です。来年に迫ったまちづくり三法の改正について、地方自治体への規制権限の移譲、商圏が複数県にまたがるショッピングセンターの規制のシステム、地域経済への影響の遮断など、実際に役立つ法律に改正するよう国に求めることを提案するものですが、見解を伺います。
 次に、若者の雇用ですが、他の世代の二倍の失業率、派遣、パートなど非正規雇用が半分近くを占める若者たちに東京都が手を差し伸べることは急務です。しかも、見過ごせないのは、月収十万円程度の低賃金や平均十一時間を超える長時間労働、さらに一方的な解雇や雇いどめ、短期契約の雇用を反復するなど、無法状態が広がっています。その上、抗議をすれば、嫌ならやめろ、文句をいったら更新はしないなどの人権無視が若者を深く傷つけています。
 こうした異常な事態は、何よりも財界、大企業が利潤優先の立場から雇用のルールを無視し、破壊してきたこと、さらに、小泉内閣が労働法の規制緩和を進め、非正規化政策をとって財界の横暴勝手を支援してきたことにもたらされます。
 このような事態は少子化や社会保障制度にも深刻な影響を及ぼし、技術や仕事の伝承を困難にするなど、日本社会にとっても見過ごせない問題です。若者の雇用をめぐるこうした深刻な事態をどう認識しているのか、見解を伺います。
 都はこの間、労働行政を大きく後退させてきました。今求められているのは、若者が安定した仕事につき、人間らしく働くことができるよう手だてを尽くすことではありませんか。都として、こうした非正規労働に対する違法行為の防止やトラブル未然防止の労働相談の対応強化、労働者派遣法や労働基準法などの関係法令の周知徹底を図るべきと考えますが、どうか、伺います。
 すべての働く若者に労働者の権利と企業の義務について知らせることは急務です。労働基準法を初めとした労働法規についてわかりやすく解説したポケット労働法の普及など、あらゆる機会をとらえ、労働法などに関する基礎的な知識の普及啓発の充実強化を図るべきと考えます。
 また、若者の雇用と労働条件などあらゆる相談に応じられ、解決を図るワンストップ窓口を設けることが必要だと考えます。それぞれ答弁を求めます。
 非正規雇用の現場では、健康診断もまともに受けることが困難です。千代田区では二十歳から健康診断を行っていますが、働く若者の健康診断を都が率先して多摩地域の保健所で行うとともに、区市町村も取り組むよう支援を行うことを提案します。答弁を求めます。
 最後に、小中学生のアトピーやアレルギーの疾患がふえています。ある小学生のお母さんは、子どもがアトピーで全身をかきむしり、病院を転々として、医療費も本当に大変だと訴えています。せめて子どもが病気になったとき、心配なく治療ができるようにしてくださいという声がたくさん寄せられています。
 小学生、中学生の医療費無料化を願う都民の声をどう受けとめているのですか。実施に踏み出すことを求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君)小竹ひろ子議員の一般質問にお答えいたします。
 中小企業対策予算についてでありますが、東京の経済を活性化させていくためには、新たな時代に対応した産業力の強化を着実に推進していくことが不可欠であります。これまでも、厳しい財政状況の中、債券市場や新銀行の創設、新・元気を出せ商店街事業、さらには中小企業再生支援など、都独自の施策を全国に先駆けて実施してきました。
 最初の知事選で私が提唱した、アメリカのジャンクボンドのマーケットに似たCLO、CBO、これはハイリスク・ハイリターンな債券ともいわれておりますけれども、各党間の討論であれしましたときに、共産党の候補者は非常にヒステリックに反対しておりましたな。しかし、これは非常にデフォルトの確率も少なくて、結果としてこの四年間に四十二社がわずかな融資をするだけで立ち直って、上場までこぎつけました事実もございます。
 さらに、これから先も、都独自の政策を全国に先駆けて実施していくつもりです。
 加えて、来年度から産業技術研究所を全国の公設試験研究機関で初めて独立行政法人化し、技術支援機能のさらなる向上を図ってまいります。
 あなたのおっしゃった予算額の減少は、制度融資の預託金の減少によるものでありまして、制度融資目標額については逆に大幅に増加し、一兆七千五百億円となっております。単なる予算額の推移のみで評価することは正確性を欠いた評論だと思います。
 今後も、都は、先進性と独自性を持った取り組みを講じ、中小企業の振興に努めてまいります。
 他の質問については関係局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君)商店街支援等、九点のご質問にお答えいたします。
 まず、新・元気を出せ商店街事業についてでございますが、この事業は、区市町村の予算措置を前提として、都が区市町村とともに商店街を支援する事業でありまして、また、成果や実績に応じて、毎年度予算措置を講ずべきものであることから、基金を設置することは考えておりません。
 また、本事業は地域に密着した事業であり、区市町村との予算の適切な分担のもとに円滑な事業を図っていくべきと考えております。
 なお、イベントの主催者である商店街関係者に対するアルバイト代などの報酬は、補助対象としておりません。
 次に、個別店舗のリニューアル等への融資制度についてでございますが、既存の都の制度融資のうち、小規模企業融資や個人事業者向け無担保無保証人融資などが利用できるなど、既に低利な優遇金利による金融支援を実施しているところでございます。
 次に、商店街が実施する観光行事支援についてでございますが、都は既に新・元気を出せ商店街事業により、商店街が地域の観光協会などと共同でイベントや祭りなどの観光行事を行う場合についても補助しているほか、観光まちづくり東京プランナー塾による人材育成やホームページによるイベント情報の発信などにより、こうした取り組みを支援しております。
 次に、商店街に対する消費税についてでございますが、消費税は、営利を目的としない団体も含め、事業者が有償で商品などの販売、資産の貸し付け、サービスの提供を行う場合に、その取引に対して課税するものでございます。そのため、こうした取引に該当すれば、事業者が納税義務を負うことになります。したがって、商店街に対する課税の実態調査や国への提案は考えておりません。
 次に、いわゆるまちづくり三法の改正についてでございます。
 現在、国の審議会において、ゾーニング手法による郊外開発の規制強化や個別市町村による規制を都道府県が広域的観点から調整する仕組みの導入、さらに、都市機能全般の中心市街地への集約化などについて議論されていると聞いております。都といたしましては、こうしたまちづくり三法の見直しの動向を引き続き注視してまいります。
 次に、若年者の雇用実態についてでございます。
 社会経済環境の変化などさまざまな要因を背景として、雇用形態の多様化が進み、多くの若年者がパート、アルバイト、派遣等で働いております。労働相談情報センターにおきましては、こうした労働者からのさまざまな相談事例もあり、常日ごろ労働環境の整備促進を図る必要があると認識しておりますので、企業等へ労働関係法令の周知を従来から実施しているところでございます。
 次に、労働相談等についてでございますが、都は、従来から、労働相談情報センターにおきまして労働相談を行うとともに、さまざまな機会をとらえ、関係法令の周知徹底を図るなど、雇用形態の多様化に対応した施策を展開しております。
 次に、労働関係法令に関する基礎的な知識の普及啓発についてでございますが、都では、各種普及啓発資料を作成し、街頭労働相談などで幅広く配布するとともに、インターネットを通じて公開するなど、さまざまな機会を通じて都民への労働関係法令の普及啓発に引き続き努めてまいります。
 最後に、若年者の雇用をめぐるあらゆる問題に応じられる相談窓口の設置についてでございますが、東京しごとセンターにおきましては、若年者を含むあらゆる年齢層を対象に、雇用就業や労働相談など、各種相談にワンストップで対応しているところでございます。
   〔青少年・治安対策本部長舟本馨君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(舟本馨君)商店街の街路灯の維持管理に対する補助についてでありますが、商店街を初めとした地域団体が防犯に係る街路灯、すなわち防犯灯を設置するに当たり、申請があった場合には、都はその設置に係る経費の三分の一を区市町村を通じて補助することとしています。
 防犯に係る街路灯の維持管理費については、その設置者が負担すべきものと考えます。
   〔福祉保健局長平井健一君登壇〕

○福祉保健局長(平井健一君)まず、若年世代に対する健康診断についてでございますが、区市町村では、老人保健法に基づき、主として生活習慣病予防を目的として、四十歳以上の方を対象に健診を実施しており、四十歳未満については、区市町村が地域の実情に応じて独自の判断で行っているものでございます。都としては、お話しのような健康診断の実施や支援は考えておりません。
 次に、乳幼児医療費助成制度についてでございますが、本制度は、子育てを支援する福祉施策の一環として、区市町村に対し都が補助を行っているものでございます。現在、都議会での議論を初め、さまざまなご意見、ご要望があることは十分承知しております。
 また、乳幼児医療費助成制度の対象年齢の拡大については、対象年齢を義務教育就学前までとする現行の制度は適切なものと考えており、対象年齢を小中学生まで拡大することは考えておりません。

〇議長(川島忠一君)四十五番山田忠昭君。
   〔四十五番山田忠昭君登壇〕

○四十五番(山田忠昭君)初めに、都財政の現状と課題について伺います。
 都と議会が一丸となって懸命に取り組んできた財政再建は、都民の理解を得て、着実に成果を上げてきております。
 また、そうした都の取り組みを後押しするかのように、日本経済は原油高など先行き不透明な要因を抱えながらも、堅調に推移しており、今年度の実質経済成長率が政府見通しを上回る見込みである中、上半期の都税収入も、法人二税の順調な伸びが大きく影響し、前年度同期より約二千億円の増加となっています。こうした状況は、体力回復が喫緊の課題である都財政にとって喜ばしいことではありますが、しかし、将来の日本、そしてこれから東京が直面するだろう社会状況を考えると、決して油断はできません。
 先月、財務局長の諮問機関である、最近の都財政に関する研究会が「人口減少社会における都財政運営のあり方」という報告書を発表し、今後二十年間の財政収支の見通しを初めて明らかにいたしました。
 いうまでもなく、今後の日本は、少子化によって総人口が減少する中で高齢化が急激に進展するという、これまで経験したことのない大きな社会変化を迎えます。こうした社会構造の大幅な変化が、経済活動の停滞や国際競争力の低下など、社会全体に大きなマイナスの影響を与えることが懸念されているときに、このような報告、提言がなされたとき、まことに時宜を得たものであると評価いたしたいと思います。
 そして、この中では、財政構造改革への取り組みを怠った場合には、人口減少に伴って、都税収入が落ち込み、歳出構造の見直しも進まないため、年間で一兆円もの財源不足になるという非常にショッキングな試算が提示されております。
 私は、この報告を遠い先の話として軽んじてはならないと思います。都財政のかじ取りを一歩誤れば、十年後、二十年後にいかに莫大なツケを払うことになるかを十二分に認識しなければならないと思います。
 我々は、こうした有識者の声に率直に耳を傾け、景気が回復基調にある今こそ、これからのあるべき財政運営の姿について真剣に考えていく必要があると思います。そうしなければ取り返しのつかない事態を招き、子どもたち、孫たちの世代に、その世代には負い切れない負担を先送りする結果となってしまいます。
 そこで伺いますが、予想される大きな社会構造の変化に対応するためには、今後どのような財政運営を行っていくべきであるのか、知事の所見をお伺いいたします。
 次に、学校における部活動について伺います。
 子どもたちが、部活動を通して、将来に夢と希望を持ってスポーツ・文化活動にチャレンジすることは、保護者や都民の願いであると同時に、それらに対して真剣に取り組む子どもたちの姿は、私たちに勇気と感動をもたらします。また、部活動は、子どもたちのよさや可能性を十分に伸ばすとともに、友人との人間関係をはぐくむなど、多くの教育的な効果をもたらすといわれております。中学校や高校を選ぶ段階においても、学校を選ぶ重要な要因の一つに部活動があると聞いております。
 このように、子どもや保護者にとっては極めて期待の大きい部活動でありますが、部活動については、顧問の指導力を確保することや、教員の異動や少子化、学校の小規模化などにより、入部したい部活動がないなど、さまざまな問題があると聞いております。
 このような中で、本年十月、都教育委員会は、部活動を学校における重要な教育活動として振興するという内容の部活動基本問題検討委員会報告書を出していますが、その報告書の内容を実現していくために、今後、都教育委員会はさまざまな取り組みをしていく必要があると考えます。
 そこでお尋ねいたしますが、今回の報告書を受け、今後、都教育委員会ではどのような取り組みを推進し、部活動を振興していくのか、また、部活動指導者の確保や部活動を指導する顧問の勤務の扱いなどについてどのように取り組んでいくのか、さらに、少子化、学校の小規模化などにより、部員が不足して部活動が成立しない、入部したい部活動がないなどの課題についてはどのように認識しているのか、見解を伺います。
 次に、多摩振興について伺います。
 初めに、多摩地域の幹線道路の整備について伺います。
 私は、この十一月、まさに計画を具体化する段階の区部と多摩の境界付近を通過する東京外かく環状道路について、ヘリコプターにより上空からつぶさに視察いたしました。ここで、供用している埼玉区間や、用地買収を既に八五%終えた千葉区間と連結して、環状道路の機能を発揮する東京区間の整備の必要性を改めて実感したところであります。
 首都圏の交通圏の交通問題を抜本的に解決するには、いわゆる首都圏三環状道路の整備が不可欠であり、外かく環状道路の関越から東名間の早期事業化を強く要望するところであります。そして、この外かく環状道路の整備効果を生かすためには、外かく環状道路のみならず、これと有機的にネットワークを形成する骨格となる幹線道路の整備が重要であります。
 私の地元であります西東京市では、現在、南北方向では調布保谷線の整備が進められ、また、東西方向では放射七号線と接続する西東京三・三・一四号線が一部着手されるなど、着実に前進されつつありますが、まだまだ不十分な状態にあるといえます。加えて、隣の埼玉県と接する部分では、埼玉県内の計画と相まって、初めてネットワークとして機能するものもあります。
 都では、多摩地域における都市計画道路を計画的に整備すべく第三次事業化計画を柱とする整備方針を策定中であり、この八月末には中間のまとめが公表されております。
 そこで、まず、整備方針の策定に向けて、どのような点に重点的に取り組んでいくのか、伺います。
 また、最終の取りまとめに向け、作業を進めていくと思いますけれども、現在の状況と今後の進め方について伺います。
 次に、市町村に対する財政支援について伺います。
 これまで申し上げたとおり、多摩地域の都市基盤整備を進めていく上で、幹線道路の整備については、国や都が積極的に事業を進めていくべきでありますが、一方、生活道路の整備などの面では、市町村のより積極的な取り組みが不可欠です。都内の市町村は、極めて厳しい財政状況の中、創意工夫を凝らしながら、地域特性を生かしたまちづくりに取り組んでおります。
 我が党はかねてから、多摩・島しょ地域の振興を図っていくためには、市町村の行財政の基盤を強固なものにする必要があり、市町村に対する都の支援を一層強化していくべきと主張してまいりました。こうした中、都は、市町村に対する包括的な財源補完制度として重要な役割を担ってきた市町村振興交付金、調整交付金の統合を検討しているとのことであります。この件に関しては、東京都市長会や町村会も賛同していると聞いております。
 そこで改めて、両交付金を統合し、新しい交付金を創設するねらいについて、都の考え方を伺います。
 次に、都市農業の振興について伺います。
 先月三十日に発表されました東京の農業に関する都政モニターアンケートによれば、都民の八一%が東京に農業、農地を残したいと思っているとの調査結果が出されておりました。こうした都民の意向からもわかるとおり、都市農業は、地域の消費者に新鮮で安全な農作物を供給しているばかりでなく、都民の安らぎやレクリエーションの場を提供するなど、多くの役割を果たしております。
 しかしながら、昭和四十五年の市街化区域の線引き以降、市街化区域内の農業は、国の支援策がない困難な状況の中で、農業者の自助努力と、東京都や区市の支援により今日まで引き継がれてまいりました。
 東京都では現在、農業振興プランを策定し、都市農業の理念や目標、施策を掲げ、農地の確保や担い手の育成、生産・流通支援など各種事業を展開しております。この農業振興プランの実効性を確保するためには、国より、他県より、一歩も二歩も踏み込んだ施策展開をすべきだと思います。
 先日、都議会自民党・都市農政を考える議員連盟は、青壮年農業者との懇談会を開催し、直接意見を伺いました。農業者の方々はそれぞれの地元で、都市で農業を営む難しさを抱えながらも、さまざまな創意工夫を重ね、力強く農業経営に取り組んでおられます。例えば西東京市は、キャベツ等の市場出荷に加え、新たな販路を開拓すべく、都心への産直販売に取り組んだり、ナシやブドウの品質向上のための施設整備に取り組んでいます。また練馬区では、住民の農作業体験ニーズにこたえた体験農園を開設しているほか、八王子市では、牛舎の臭気対策を行いつつ、独自に手づくりヨーグルトを開発して販売するなど、それぞれの地域の特性を生かした取り組みが展開されております。
 都は、こうしたアイデアあふれる農業者の取り組みを参考に、都内各地域の状況に即した課題と目標を明らかにし、きめ細やかな都市農業の振興施策を推進していくべきと思いますが、その考え方を伺います。
 ところで、農業振興プランでは、地産地消や食の安全・安心の確保に向けた取り組みを推進することになっていますが、昨年来、幾つかの自治体では、遺伝子組みかえ作物の栽培に関して条例や指針などを策定して、無用な混乱を生じないようにしております。
 都でもこのたび遺伝子組みかえ作物の栽培にかかわる対応指針を策定する予定とのことですが、都が進めている安全・安心な農作物の生産施策との関連はどうなっているのか、その基本的な考え方をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君)山田忠昭議員の一般質問にお答えいたします。
 今後の財政運営についてでありますが、ご指摘のとおり、我が国は今、社会構造の大きな変化に直面しております。少子高齢社会というかつて経験したことのない状況を迎える中で、これからは、これまで以上に施策を峻別していくことが必要だと思います。あれもこれもではなくて、複合的な視点で将来を見通す確かな目を持って、めり張りをつけて、必要な施策を選択していかなければならないと思います。
 今後とも、財政構造改革を不断に継続するとともに、東京の発展のために、不可欠な施策というものを選択し、重点的に財源を投入し、東京の活力を高めていくことが重要と考えております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君)学校教育に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、部活動振興のための取り組みについてでございますが、部活動は生徒の個性や豊かな人間関係をはぐくむ上で、極めて重要な教育活動でございます。
 都教育委員会はこれまでも総合体育大会や総合文化祭の開催、運動部活動推進重点校の指定、外部指導員の学校への派遣など、部活動の振興に努めてまいりました。
 今後は、こうした取り組みに加えまして、学校や地域の関係者等を委員とした課外活動振興協議会を平成十八年度に設置し、魅力ある部活動づくりに向けた意識調査や実態調査を行いまして、生徒のニーズや時代の変化に応じた新たな部活動のあり方等を総合的に検討してまいります。
 次に、部活動指導員についてでありますが、指導者の確保や、顧問教諭にかかわる勤務条件の検討は、部活動の振興を図る上で重要な課題であります。このため、資格を有するスポーツ指導者を登録したスポーツリーダーバンクを一層充実するとともに、学校外の人材への顧問委嘱などについて検討し、指導者の確保に努めてまいります。
 また、週休日等における勤務の扱いなど、顧問教諭の勤務条件につきましては、今後、学校、区市町村教育委員会及び教育庁関係者から成る専門委員会を設置して検討してまいります。
 次に、学校の小規模化などによります課題についてでございますが、少子化や小規模化によりまして、部活動には、部員数の不足や、あるいは入部したい部活動がないことなど、生徒の期待にこたえられていないという現状があることについては十分承知しております。
 これらの課題に対しましては、複数校によります合同部活動の実施によって、部員数の不足を補ったり、顧問教諭が複数の部活動を担当することによりまして、部活動の数の減少を防いだりするなど、さまざまな工夫をしてきております。
 ただ、学校だけで問題を解決することには限界があります。今後とも、部員数の少ない学校が合同部活動の形で大会に参加できるよう、関係団体に働きかけたり、部活動と地域のスポーツ・文化クラブとの連携を一層深めるよう、区市町村と意見交換するなどして、少子化や学校の小規模化などによって生ずる部活動の課題の解決を図ってまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君)多摩地域における都市計画道路の整備に関する二点のご質問にお答えいたします。
 都市計画道路の整備方針の取り組みについてでございますが、多摩地域は、首都圏の発展を牽引する大きな潜在力を秘めているとともに、自然に恵まれた良好な居住環境を備えた地域でございます。こうした多摩の地域特性を踏まえ、整備方針では、交通の円滑化や防災性の向上などに加え、新たに都県境を越えた広域的な道路ネットワークの拡充、幹線道路の沿道を含めた広がりと厚みを持った緑を創出する環境軸の構築などの実現に向けて、重点的に取り組んでまいります。
 次に、整備方針の策定についてでございますが、都と関係市町は、本年八月末に基本的な考え方などを中間のまとめとして公表いたしました。
 現在、中間のまとめに寄せられました都民などの意見を参考にしながら、平成十八年度から十年間で優先的に整備すべき路線を選定するための評価項目などについて検証を行っております。
 今後、その評価項目に基づき、具体的な路線を選定し、年度内に整備方針案を公表した上で、横田基地の軍民共用化も視野に入れながら、最終的な取りまとめを行ってまいります。
   〔総務局長高橋功君登壇〕

○総務局長(高橋功君)市町村に対する交付金につきましてお答えをいたします。
 ご指摘のとおり、多摩・島しょの市町村は極めて厳しい財政状況にあり、市町村の行財政基盤の強化を図ることが重要でございます。このため、現行の振興交付金、調整交付金を、より一層柔軟で、市町村にとって使い勝手のよい、効果的な財源補完制度とするため、平成十八年度から、両交付金を統合し、市町村総合交付金としてさらに充実をさせていきたいと考えております。
 この総合交付金を活用し、投資的経費、経常経費の区別なく、市町村の行財政を総合的に支援することによりまして、市町村の自主性、自立性のさらなる向上を図るとともに、多摩・島しょ地域の振興を一層促進していきたいと考えております。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君)都市農業の振興についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、地域の実情に即した農業振興施策についてでございますが、例えば江戸川区や葛飾区では、施設栽培されたコマツナが通年出荷されております。一方、日野市や稲城市では、果樹の里づくりを目指してナシやブドウを農家が直売するなど、地域ごとに特色ある農業が営まれております。また、経営革新の観点から、西東京市では、これまでの特産キャベツの生産を施設栽培によるホウレンソウなどの高収益栽培へと転換しております。
 都は、こうした事例を踏まえまして、消費者ニーズに合った農作物の選定や、より高い収益目標の設定など、各地域の実情に即した農業振興の地域戦略を策定しまして、農業者を支援するきめ細やかな取り組みを展開してまいります。
 次に、遺伝子組みかえ作物の栽培に係る対応指針の策定についてでございますが、都は従来から、農薬の使用量の低減など農産物の安全・安心の確保に努めてまいりました。このような中、国は、大豆やトウモロコシなど、一定の遺伝子組みかえ作物の栽培を承認いたしました。そこで都は、遺伝子組みかえ作物を都内で栽培する場合に、一般農作物への交雑、混入を防止する観点から、栽培計画書の事前提出を求めるなどを内容とする対応指針を策定中でございます。
 現在、都民の声を取りまとめておりまして、年度内にこの指針を公表する予定でございます。これによりまして、都内地区農産物に対する信頼を引き続き確保できるものと考えております。

〇議長(川島忠一君)五十二番吉田康一郎君。
   〔五十二番吉田康一郎君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○五十二番(吉田康一郎君)まず初めに、少子化対策・子育て支援について伺います。
 我が国の合計特殊出生率の低下は歯どめがかからず、昨年も一・二九と戦後最低であり、東京も一・〇一と全国で最低の値となっています。
 国立社会保障・人口問題研究所による我が国の総人口の推計、中位推計は常に外れて下方修正されますが、低位推計、すなわち最も悲観的な場合には、このままいけば、二一〇〇年には、我が国人口は現在の三分の一の四千六百四十五万人、そしてそこで人口減少がとまると勘違いをしている人もいるようですが、そんな生半可なことではありません。その後も人口は、高齢者ばかりの逆ピラミッドのまま、四分の一、八分の一と減っていくことになります。
 現在、我が国の借金は、国、地方合わせて一千兆円に及びます。この借金が、人口が三分の一になったときに一緒に三分の一に棒引きになるのかといえば、そのようなことはありません。生まれたばかりの赤ん坊から介護を受けている高齢者まで、一人当たり、今の三倍の三千万円近い借金を背負うことになる。しかし、そんなことは不可能です。経済は破綻し、財政も年金も破綻し、国民の生活も破壊される、介護の人手すらなくなる、そういうまさに国家存亡の瀬戸際にある、こういう危機感を為政者は持たなければいけないと考えております。
 そして、その中で迫ってくる大変な問題の一つとして、経済あるいは労働力の担い手としての膨大な外国人の流入と、これへの依存の構造化ということがあります。
 言論も政治も、国外からの軍事的圧力や経済依存のみならず、国内においても外国人居住者が巨大な社会的勢力となる中で、外国による不当な圧力や暴挙に対して、ノーということすら不可能になる。そういう悲惨な将来の姿が絵そらごとではないわけであります。
 我々は、この我々の時代に、先祖から受け継いできた遺産を食いつぶすのではなく、この国のよき文化と伝統を将来にわたって受け継ぎ、誇りある日本人が国際社会の中で、次の世紀も、その次の世紀も活躍し続けられる、そういう国のあり方、そのための制度をつくり、残す責務があります。
 少子化対策・子育て支援はまさに日本の将来の根幹にかかわる課題であり、現在、政治が取り組むべき最重要の課題であると考えます。
 知事は、少子化対策について、フランスの事例などを参考にしたい旨を本会議で表明されました。まさしく炯眼であります。私が少し調べた範囲でも、フランスを初め欧州の先進国では、日本と同じように少子化に悩んだ末、子育てへの手厚い経済的支援を行っています。フランス、イギリス、ドイツ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークなどでは、それぞれ子ども一人につき月額約一万四千円あるいは二万一千円の家族手当を十五歳あるいは十九歳まで出しており、その多くの国で、子どもの数がふえると手当の額をふやしています。例えばスウェーデンでは、第五子以降は約二万九千円の手当が出ます。
 これにあわせて税負担の軽減を実施することにより、多くの国で出生率の低下に歯どめがかかり、あるいは出生率回復に効果を上げています。フランスでは、出生率は一・九二まで回復しています。
 平成十七年版国民生活白書によれば、我が国においては、大卒の女性が定年まで就業を中断せずに働き続けた場合に比べ、二十八歳で退職して第一子を産み、三十一歳で第二子を産んで、一年後にパート・アルバイトとして再就職した場合、生涯所得の格差は総額二億二千百万円に上ります。この経済的損失は、無意識に認識が広がって、多くの若い女性にとって出産、育児を選択する制約になっていると考えられます。二人の子どもが生涯で仮に三億円ずつ、計六億円稼ぐとして、子育てによる機会費用を個人に押しつけていることで、社会全体としてはより多くの損失を招いている、こういうことになります。
 また、出生動向基本調査によれば、夫婦にとっての理想の子どもの数より実際の子どもの数が少ない最大の理由として、六三%の女性が子育てや教育にお金がかかり過ぎると答えています。
 さらに、少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査によれば、二十代前半は現金給付の拡大、二十代後半は医療費の無料化、同じ二十代後半から三十代後半は保育、教育費の軽減といった、子どもの成長に合わせた経済的支援を求める姿が明確です。まさに我が国では、子育ては損だ、報われないと感じて、子育てという選択をしづらくなる、あるいは三人目、四人目は無理だと思う、実際に育てている人は大きな負担を感じている、こういう現状にあります。
 出産は、個人にとっては個人的な問題ですが、政治にとっては社会の仕組みをどうつくるかという問題です。子育てをする人の経済的な損失を縮小し、選択の幅をふやすことが重要であり、次の社会を担う次の世代を産み育てている人たちが不利にならないよう、社会全体として仕組みを整えていくことは当然のことだと考えます。
 我が国においては、子育てへの現金給付のみならず、保育サービスを初めとする現物給付をあわせた子育て分野全体に対する国の予算が余りに少ない状況があります。OECDの基準による家族分野の社会支出の国際比較調査二〇〇一年によれば、我が国の家族分野への支出は、対GDP比で〇・六%しかないのに対し、フランスは二・八一%、スウェーデンは二・九二%、イギリスで二・二三%と、約四倍の格差があります。
 我が国の児童手当については、去る五日の新聞報道によれば、自公与党が十二歳まで支給を拡大することで合意したとのことであり、私は歓迎いたします。
 十一月二十九日、政府・与党は、三位一体の改革について、児童手当、児童扶養手当の国の負担をそれぞれ三分の一に引き下げました。理念なき数字合わせに終始したもので、国として責任を負うべき子育て支援をほうり出そうとしているものだと思います。
 しかし、都としては、これを奇禍として前向きに取り組むべきだと考えます。都は、国に先駆けて、これまでさまざまな取り組みを実施してきました。児童手当制度も、歴史をひもとけば、一九七〇年代に都が先行実施したものを国が後追いで制度化したものです。知事も、認証保育所制度の創設を初め、区市町村の子ども家庭支援センターの設置促進など、時代に即応した施策を次々に講じてこられました。
 今、我が国で、借金漬けで無責任かつ理念なき政府にかわって子育て支援に取り組めるのは、都しかないと考えます。幸い、各党の公約を拝見しますに、子育てへの経済的支援の抜本的拡充に前向きだと認識しております。国を愛し、国民を思うすべての人が協力し、この実現に取り組むことを念願するものであります。
 知事がフランスに視察されるときは、ぜひ我々も同行させていただきたい。明治の岩倉遣欧使節団のように、欧州諸国のよい制度をすべて学びとり、国の形を変えるような改革を行う。あれをやるからこれをやらないということではなくて、有効な施策はすべて打つ。これは人への投資であります。人への投資が、この国の命運を握ります。国ができないのであれば、国に追随して滅びるのではなく、都がリードすべきであります。子育て東京革命、そういう意気込みが必要だと考えます。
 それでは、この議場で議員として初めての質問をさせていただきます。
 当代一級の政治家であり、透徹した視座と直感を持つ文化人でもある知事に、ぜひお伺いをしたい。この国の次の時代を担う次の世代を産み育てている人たちの経済的な負担感を初めとするさまざまな負担感を取り除くために、抜本的な施策の充実が急務と考えますが、いかがでしょうか、ご所見を伺います。
 そして、その中で、いわゆる現物給付、すなわち保育サービスを初めとする多様なニーズへの対応が大変重要です。地域の実情に応じて子育てをサポートする多様な仕組みを整備していく必要があります。特に保育所においては、地域の子育て拠点として、一時保育や病後時保育、子育てひろばなど、多様なサービス提供も求められています。そのための東京都の支援の方法として、各自治体の創意工夫が十分生かせるような仕組みへと変えていく必要があります。
 折しも、都は来年度、これまでの子育てに関する補助金を再構築し、新たに子育て支援の交付金制度を創設する方向と伺っています。また、子育てサービスの基盤整備のための包括補助制度を立ち上げようとしています。そこで、これに至った背景、またその基本的な考え方について伺います。
 さらに、仕事と子育ての両立へ、支援が大変重要です。次世代育成支援対策推進法の施行に伴い、従業員三百一人以上の企業には行動計画の策定が義務づけられ、さまざまな取り組みが始まっています。しかし、全体の約八割の人が働く中小企業においては、依然として、長時間就労に加え、育児休業制度自体の定着も不十分です。
 ことしの予算特別委員会での民主党の質問に対し、都は、仕事と子育ての両立支援を充実するため、中小企業に対する丁寧な働きかけが必要と答弁しました。都として、特にこうした中小企業に関する子育て支援について、国や中小企業に対する働きかけも重要と考えます。取り組み状況をお伺いします。
 次に、木造住宅密集地域の整備促進について伺います。
 政府の中央防災会議の被害想定によると、首都直下で地震が起きた場合、首都圏で最悪一万三千人の死者が出るといわれています。火災が発生し、火災による多数の犠牲者が予想されています。
 一方、東京都は、防災都市づくり推進計画において、木密地域の中で震災時に甚大な被害が想定される地域を整備地域として六千五百ヘクタール指定しています。このように、都内における木密地域は、震災時に火災が発生する非常に危険な地域であり、震災時の被害を減らすためには、木密地域における火災の発生や延焼を最小限に食いとめることが重要です。
 そのためには、古い木造住宅の不燃化への建てかえや、消防車など緊急車両が進入できるよう、道路などの基盤整備を行うことが必要と考えます。木密地域においてこのような整備を効果的に行うためには、地域の中でこれまで形成されてきたコミュニティを活性化させ、まちづくりを推進する原動力として生かしていくことが大切です。地域の人々が住み続けながら整備を円滑に進めるには、自助、共助、公助の原則により、都、区、住民が連携し、協力することが重要であると考えます。
 そこで、何点かお伺いします。まず、都の役割についてですが、木密地域の改善を図るためには、都が主体的に取り組んでいかなければならないと考えます。そこで、都がみずから事業の主体となって、現在どのような取り組みを行っているかを伺います。
 次に、区に対する支援、指導についてですが、区は、木造住宅密集地域整備促進事業の主体として事業を実施しており、都は、区が行う整備に対し支援をしていると聞いています。改善が必要な地域の整備を効果的に進めるため、都は区に対し、より一層支援、指導を強めていくべきだと考えますが、都としてのお考えをお聞かせください。
 一方、整備を進めるためには、地元住民の合意や協力も重要です。被害が大きいと想定される地域の住民が、自分自身に切迫した問題であると認識し、防災まちづくりへの意識を高めていかなければ整備はなかなか進みません。
 民主党は、十七年第二回定例会で、都民に対する動機づけとして、地域危険度の周知について取り組むべきと指摘しました。そこで、さらに一層、住民の防災意識の高揚を図るため、効果的な方策について検討すべきと考えますが、所見を伺います。
 最後に、被害の大きさだけでなく、首都直下地震の切迫性が指摘されている中、木密地域の改善を早期に進めることは、都の災害対策として最優先であると考えます。都が今後、この課題にどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 以上で質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君)吉田康一郎議員の一般質問にお答えいたします。
 少子化対策についてでありますが、少子化は、ある程度社会が豊かになり、高齢化が進んだ先進国においては、一つの歴史的なパターンとして、長期的に見ますと、一つのパターンとして例外なく進行しております。その背景は、それぞれの国家の成り立ちや社会経済システムなどによって異なりますけれども、いずれにしろ、これはもう本当に国家社会の安危にかかわる問題でありまして、少子化対策は社会全体で取り組むべき課題でありますが、経済的支援については、税制のあり方なども含めまして、国民的コンセンサスを得て、国の制度としてまず行うべきものであると思います。
 都はこれまでも、認証保育所制度などの創設など、さまざまな施策を展開してきましたが、今後とも、すべての子育て世帯を対象とした支援策を積極的に推進していきたいと思っております。
 ただし、これは非常に国家の安危にかかわる問題でありますから、金で済むことならやすいことでありますけれども、やはり行政による財政も含めての支援もさりながら、子どもの散財というものをどういうふうに価値的にとらえるか、親である自分自身の人生というものを、子どもとのかかわりでどうとらえるかという、一種の価値観の修正というものがそろそろ必要なんじゃないか。修正し、さらにそれを正しく造成していくことが必要であると思っております。
 その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔福祉保健局長平井健一君登壇〕

○福祉保健局長(平井健一君)子育て施策に関する区市町村支援策についてのお尋ねでございます。
 安心して子どもを産み育てられる環境を整備するためには、区市町村がそれぞれの地域の実情に応じて主体的に行う多様な取り組みを支援していくことが重要であります。しかし、既存の補助制度は、対象者や使途が細かく限定されているなど、必ずしも創意工夫を促す仕組みとなっていない面もあり、東京都児童福祉審議会からも、区市町村に対する補助制度については、子育て支援全般の充実に活用できる包括的なものとするよう意見具申をいただいているところでございます。
 こうしたことから、区市町村の主体的かつ柔軟な取り組みに対して支援する仕組みを新たに構築しようとするものでございます。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君)子育てしやすい労働環境の整備に関する国や中小企業への働きかけについてでございますが、急速な少子化の進行は、今後の東京の活力を維持する上で深刻な影響が懸念されることから、子育てしやすい労働環境の整備は重要であると認識しております。
 このため、本年六月、都は国に対して、都内の多くの労働者が働く中小企業における行動計画の策定、実施の支援などを新規に要望したところでございます。
 また、従来の労働相談や普及啓発に加えまして、新たな取り組みとして、中小企業の事業主を対象とした次世代育成支援のためのセミナー、相談会を来年二月に実施するなど、今後も支援を強化してまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君)木造住宅密集地域の整備に関する四点のご質問にお答えいたします。
 まず、都の木密地域における取り組みについてでございますが、いつ起こるとも知れない大地震に備え、東京を災害に強い都市としていく上で、木密地域の改善は喫緊の課題であり、都が地元自治体や地域住民と一体となってその解決に取り組むことは重要でございます。
 都はこれまでも、延焼遮断帯となる主要な幹線道路の整備を進めるとともに、都市改造型区画整理事業や防災拠点型再開発事業などによる安全な市街地の創出に努めてまいりました。また、都市計画道路の整備にあわせ、沿道のまちづくりを進めることで、地域の防災性の早期向上を図る取り組みを始めたところでございます。
 今後、こうした取り組みを通じて、木密地域の改善に努めてまいります。
 次に、木造住宅密集地域整備促進事業に対する支援、指導についてでございますが、この事業は現在、十九区、六十地区で実施されており、都は事業主体である区に対し、財政的支援を行うとともに、まちづくりの規制、誘導策などに関する技術的支援を行っております。
 また、建物の共同化を推進するための仕組みの構築や、国に対する補助メニューの拡充要望などの制度改善にも取り組んでおります。
 今後とも、区が積極的に施策を展開できるよう、支援、指導を行ってまいります。
 次に、住民の防災意識の高揚についてでございますが、木密地域の整備を着実に進めていくためには、住民が災害に対するまちの実態を正しく把握し、自分のまちは自分で守る心構えを持って防災まちづくりに参画し、防災意識の高揚を高めることが何よりも大切でございます。
 そこで、防災に関する的確な情報を都民に周知するため、都は、五年ごとに地域危険度調査を実施し、インターネットや広報媒体などを活用し、広く情報提供をしております。さらに、地元住民に事業の説明をする際には、震災時に火災が発生した場合の燃え広がる状況を、現在と整備後とで視覚的に対比できる延焼シミュレーションを用いるなどの工夫を凝らしてまいります。
 こうしたさまざまな機会、手法を活用して、住民の防災まちづくりへの意識を高めてまいります。
 最後に、木密地域の早期改善についてでございますが、首都直下地震の切迫性が指摘され、また中央防災会議においても甚大な被害が想定されていることもありまして、木密地域の早期改善を図ることは重要な課題であると認識しております。
 都は、防災都市づくりの施策の指針と整備方策などを取りまとめた防災都市づくり推進計画を策定し、整備すべき地域の重点化を図るとともに、街路事業や木密事業などの各種事業を重層的に展開しております。
 今後も、この推進計画に基づき、都と区が連携し、住民の理解と協力を得ながら木密地域の改善に取り組んでまいります。

〇副議長(木内良明君)十六番松葉多美子さん。
   〔十六番松葉多美子君登壇〕

○十六番(松葉多美子君)私は、子ども最優先、いわゆるチルドレンファーストの社会を目指す立場から質問させていただきます。
 初めに、文化芸術振興策について伺います。
 都は、平成十六年度から子ども向け舞台芸術参加・体験プログラム事業を始めました。これは、次世代を担う子どもたちが芸術と直接触れ合うことによって、文化を創造する心をはぐくむことを目的としています。舞台芸術の鑑賞だけでなく、学校や児童館など、子どもたちの身近な施設に芸術家が出向くアウトリーチも行っています。
 先日、私も、江戸東京博物館で行われた狂言の体験プログラムを拝見させていただきました。江戸東京博物館に展示されている芝居小屋中村座の前という江戸情緒あふれた場所に即席の舞台をつくり、狂言師が子どもたちにわかりやすく解説を加えながら狂言を演じていました。その後、子どもたちも直接指導を受けて、謡や立ち居振る舞いなどを体験していました。子どもたちが目を生き生きと輝かせて大きな声で演じている姿は、とても印象的でした。
 また、能楽師の大倉正之助先生にもお会いしてまいりました。大倉先生は、子どもたちの真剣さや日々変わっていく姿に、むしろ自分たちの方が感動するんですと語ってくださいました。文化芸術振興のすそ野を広げる大変重要な事業であると実感しました。
 石原知事も大変お忙しいとは思いますが、ぜひ一度、子どもたちの様子をごらんいただく機会をつくっていただければと思います。
 現在、子ども向け舞台芸術参加・体験プログラム事業は、芸術劇場と江戸東京博物館の二カ所で実施されておりますが、区や市の施設も利用して、都内全域の子どもたちが参加できるよう事業を拡大すべきであると考えます。所見を伺います。
 あわせて、この事業の予算は、年間三千五百万円しかありません。予算の大幅アップが多くの文化芸術団体等からも求められております。強く要望をしておきます。
 一方、国の事業には、子どもたちがすぐれた舞台芸術を鑑賞する本物の舞台芸術体験事業や学校への芸術家等派遣事業などがあります。ある芸術家の方は、東京の子どもたちにこそ、もっと触れさせたいとおっしゃっていました。しかし、実施回数の制約から、東京ではどうしても子どもたちが参加する機会が少なくなってしまいます。
 都は、この事業の回数増加を国に要望するとともに、区市町村と連携し、都内の芸術家が子どもたちと直接触れ合う機会をさらに拡充していくべきだと思います。所見を伺います。
 先月発刊された石原知事の著書「息子たちと私」には、知事が青年期に出会った画家である美術教師の奥野肇氏から大きな影響を受けたことが書かれてあり、印象深く読ませていただきました。幼少期や青年期にさまざまな芸術家や芸術文化に触れることは、心を豊かにし、人格形成にとても重要です。私は、東京の子どもたちに、ありとあらゆるを機会を利用して、本物の文化芸術に触れさせたいと考えています。そうした機会の拡大について、石原知事の思い、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、都立総合芸術高校について伺います。
 文化芸術の先進都市東京の構築を進めるに当たり、都が進めている都立総合芸術高校の構想は極めて重要です。
 私は、初当選直後に、日本バレエ協会から切実なご要望を受けました。私自身、中学生までバレエを習っていた経験があり、現在は娘をバレエ教室に通わせておりますが、バレエなど身体表現の美は、日本舞踊なども含めて、人の心を打つ表現芸術の原点といえます。
 バレエ教室は、現在、全国で一万五千、東京では二千教室あるといわれております。バレエダンサーを目指す若者は続々と続いておりますが、その反面、日本には本格的にバレエを学ぶ国立、公立の学校がありません。諸外国には、それぞれ国立または公立のバレエ学校があり、フランスのパリ・オペラ座附属バレエ学校、イギリスのロイヤルバレエ学校などが有名ですが、それぞれバレエ舞踊の総合教育を行っております。個々のバレエ教室の努力の結果、優秀なバレエ人材が輩出されておりますが、その多くが海外のバレエ学校に流出してしまっている実態を、日本バレエ協会の永江専務理事から伺いました。
 文化芸術先進都市を目指す東京こそ、国に先駆けて世界に通用する専門性の高い文化芸術の教育機関を創設すべきです。その意味で、さきに述べた都立総合芸術高校構想に注目したいと思います。私は、そこに、バレエなど舞踊専門の勉強ができる舞踊科あるいは舞台芸術科の設置を提案したいと思います。所見を伺います。
 次に、雇用対策について伺います。
 私は、労働省職員として雇用対策の現場で働いた経験があり、また二人の子どもを育てている立場から、以下、質問をさせていただきます。
 まず、女性の仕事と子育ての両立支援策について伺います。
 先般、育児・介護休業法が改正され、パートタイム労働者や契約社員も、一定の条件のもとに育児休業の対象になり、大きな前進が図られました。しかし、社内制度の整備が十分でなかったり、同僚への遠慮などから、実際には活用しにくいとの声も聞いています。法律の整備とともに、各企業でどのように運用されるかが重要であります。
 そこで、都としても、各企業における育児・介護休業制度の運用の実態を調査し、女性が働き続けることができるよう、調査結果を都の施策に反映すべきです。所見を伺います。
 次に、女性の再就職支援策についてです。
 国立社会保障・人口問題研究所の結婚と出産に関する全国調査によれば、専業主婦や育児中も仕事を継続することよりも、子育て後に再就職というコースを選ぶ女性が多くなっています。一方、女性の雇用の現状を見ると、再就職を望んでも、子育て中という制約から希望の仕事につけないことや、仕事と家庭を両立させることに不安を感じている女性も少なくありません。
 そこで、女性の再就職支援に関する都の見解を伺うとともに、第一回定例会で公明党が質問した、しごとセンターにおける両立支援の取り組みについて伺います。
 また、日本労働政策研究・研修機構が行った育児や介護と仕事の両立に関する調査では、再就職のために必要な支援策として、一時保育の充実が上位になっています。就職活動中に子どもを預けられなければ、再就職を目指すこと自体が困難です。
 そこで、都民の就職を支援するしごとセンターにおいて、相談時の託児サービスなどの新たなサービスを提供し、子育て中の女性がより利用しやすくなることが必要であると考えますが、所見を伺います。
 次に、都立病院におけるアスベスト専門外来について伺います。
 公明党は、去る七月、アスベスト対策に関する緊急要請を行い、その中で、都立病院における診断、治療体制の整備を求めました。また、十月の厚生委員会において、私は、都立病院にアスベスト専門外来の設置を強く求めたところであります。その結果、この十一月一日から、都立広尾病院にアスベスト専門外来が設置されました。
 既に診療開始から一カ月がたちますが、広尾病院におけるアスベスト専門外来の状況を明らかにしていただきたいと思います。
 また、今後、受診状況を見きわめながら、必要に応じてアスベスト専門外来を拡充することを要望いたします。
 次に、水害対策について伺います。
 本年九月四日、私の住む杉並区で一時間一一二ミリ、総雨量二六三ミリという記録的な集中豪雨があり、善福寺川や妙正寺川を中心に大規模な浸水被害がありました。私もすぐに現場に直行し、腰まで水につかりながら救援活動をさせていただき、もう二度とこのような被害は起こしたくないと心の底から実感いたしました。
 第三回定例会で知事は、公明党の質問に対し、被害の大きかった妙正寺川、善福寺川の未整備区間の早期整備を指示したと答弁され、さらに十一月十八日には河川激甚災害対策特別緊急事業の指定を受け、ことしから善福寺川及び妙正寺川の緊急整備に着手できることになりました。まず、その事業の内容について伺います。
 今回の被害区域は極めて広範囲に及びました。河川激甚災害対策特別緊急事業、いわゆる激特事業の対象より上流域の地域についても早期に対策を講じるべきと考えます。都の所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君)松葉多美子議員の一般質問にお答えいたします。
 子どもと芸術文化についてでありますが、子どもは、柔軟な感受性、奔放な想像力を有しておりまして、その子どもの想像力を伸ばすには、大人の常識で縛らないことが大切だと思います。
 今日では、子どもが生まれる前、お母さんの胎内にいる間でも胎教が可能である。特に音楽、あるいはすばらしい絵を見るというだけでも、その母親の感性の感動が胎内の子どもに伝わって、非常に生まれてくる子どもの感性の育成が可能であると証明されております。まして、生まれてから幼乳児の時代からでも芸術文化に接して自由奔放に表現することは、子どもの情操や情念を啓発することに非常に効果があると思います。
 芸術家や芸術文化に触れることで豊かな心を育成することは、その子どもの人生だけではなしに、社会全体にとっても、人間の可能性を広めていく上で非常に大切だと思います。
 今おっしゃった大倉正之助さんのプログラムだけではなくて、夏休みには、東京文化会館の音楽監督である大友さんのトークとフルオーケストラの迫力を体験するような場も講じておりますし、また、新設しましたトーキョーワンダーサイトでは、各国から来る、本当に先端を行っているコンテンポラリーなアーチストたちが子どものためのワークショップも開いておりまして、非常に好評を博しておりますが、これからもやっぱり、何といってもいろんな集積、集中のある東京でありますから、我々の後世を託す子どもたちの感性の上での育成のために、そういう努力を多角的に広げていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君)都立総合芸術高校、これは仮称でございますけれども、舞踊科の設置についてでございます。
 総合芸術高校は、都立高校改革推進計画・新たな実施計画におきまして、都立芸術高校を母体として、既存の音楽科、美術科に、演劇、映像などの新たな芸術分野を加えまして、平成二十二年度の開校を予定しているものでございます。
 現在、学科構成などの枠組み、教育課程の基本方針など基本計画につきまして、外部の有識者も委員として入っていただきまして、検討委員会において検討しているところでございます。
 ご指摘の舞踊につきましては、芸術分野の重要な位置を占めているというふうに認識しておりまして、クラシックバレエを初め、日本舞踊、モダンダンスなど、総合的に学べる学科についても基本計画の中に取り入れられるよう、検討を進めてまいります。
   〔生活文化局長山内隆夫君登壇〕

○生活文化局長(山内隆夫君)文化振興に関する二つのご質問にお答えいたします。
 まず、子ども向け舞台芸術参加・体験プログラム事業についてでございます。
 この事業は、芸術家が学校や児童館などに出向きまして実技指導等を行い、その成果発表や鑑賞を都立文化施設で実施するものでございます。子どもたちが身近な施設で本物の舞台芸術を体験することによりまして、創造の楽しさや喜びを感じ、芸術に対する理解が深まるものと考えております。
 都としては、厳しい財政状況ではありますが、創意工夫を凝らし、区市町村の協力を得ながら、多摩地域を含めたできるだけ多くの地域でこの事業を実施してまいります。
 次に、芸術家が子どもたちと触れ合う機会の拡充についてでございます。
 都内では多くの芸術家が活動しておりまして、区市町村が中心となって、子どもたちが芸術家等と直接触れ合う機会をさらに増していくことが重要と考えております。都としても、区市町村が学校への芸術家等派遣事業などの国の補助制度を活用しまして、これらの取り組みを一層展開できるよう、国に要望してまいります。
 さらに、アーチスト支援のホームページでございますアートインデックスを活用しまして、子どもたちのための活動を行っている芸術家等の情報を広く提供するなど、区市町村を支援してまいります。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君)女性支援、雇用についての三点のご質問にお答えいたします。
 まず、育児・介護休業制度の実態調査についてでございますが、都では、雇用の分野の男女平等を確保し、女性が能力を発揮して働き続けることができる雇用環境の整備を図っていくため、毎年、男女雇用平等参画状況調査を実施しております。今年度の調査におきましては、育児・介護休業法改正後の社内制度の整備状況と、従業員の育児・介護休業の利用状況など、運用の実態を把握し、企業現場における課題を明らかにする予定でございます。
 調査結果につきましては、年度内に取りまとめ、育児・介護休業制度を職場に定着させ、従業員が利用しやすいものとなるよう、普及啓発など両立支援を推進するための今後の都の施策に反映させてまいります。
 次に、女性の再就職支援についてでございます。
 出産、育児等のために離職した女性の再就職支援は、女性の就労や能力発揮の機会確保に加え、東京の活力の維持向上という観点からも極めて重要であると認識しております。このため、しごとセンターでは、本年三月、仕事と家庭の両立支援コーナーを設置し、両立支援に関する各種制度の資料や保育施設など子育てに関するさまざまな情報を提供するとともに、女性向け再就職支援セミナーや在宅ワークセミナーを新たに実施しております。
 今後、情報の収集、提供を強化し、スキルアップも視野に入れてセミナーの拡充を図るなど、両立支援策の一層の充実に努め、女性の再就職を支援してまいります。
 最後に、子育て中の女性がしごとセンターを利用しやすくするための取り組みについてでございます。
 女性の再就職を支援するためには、子育て中であっても安心して就職に向けた活動が行える環境を整備していくことが必要と認識しております。しごとセンターでは、これまでも、女性が多いセミナーでの託児サービスの実施やベビーベッドを配置したコーナーの設置など、子ども連れでもセンターが利用できるよう、来所者の利便性の向上に努めてきたところでございます。
 今後、新たにカウンセリング等での来所者に対しましても託児サービスの検討を行い、しごとセンターを子育て中の女性がより一層利用しやすい施設にしてまいります。
   〔病院経営本部長大塚孝一君登壇〕

○病院経営本部長(大塚孝一君)広尾病院におけるアスベスト専門外来についてお答えいたします。
 アスベスト専門外来につきましては、毎週一回、呼吸器の専門医師が診察し、アスベスト関連疾患の可能性について判定しております。開設後一カ月の受診者は、延べ二十九名、一日平均六名程度でございます。そのうちの約五割がアスベスト関連業務に従事した経験がある患者さんでございます。
 今後とも、都民のアスベストによる呼吸器疾患に対する不安が解消されるよう、実際の受診状況等を踏まえながら、適切に対応してまいります。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君)水害対策に関する二点の質問にお答えします。
 まず、河川激甚災害対策特別緊急事業についてでございますが、この事業は、甚大な被害があった河川について、再び災害が起こらないよう、五カ年で緊急に河川整備を行い、治水安全度を向上させるものでございます。
 妙正寺川では、環七下流の約三・九キロの事業区間で、護岸の整備や河床掘削、環七地下調節池への取水施設の整備を行います。
 また、善福寺川では、環七上流の約二キロの事業区間で、洪水流を阻害する橋梁のかけかえや護岸整備を実施するほか、和田堀公園内にあります調節池の貯留能力の増大を図ってまいります。現在、工事着手の準備を進めておりまして、地元区や関係住民の理解と協力を得ながら、全力で取り組んでまいります。
 次に、激特事業区間より上流域の対策についてでございますが、浸水被害の発生状況から、当然のことながら上流域の対策も必要であると考えております。
 今回の激特事業によりまして、事業区間の治水安全度が短期間に向上するとともに、その上流域の早期整備が可能となります。このため、妙正寺川の環七地下調整池上流や善福寺川の和田堀公園から上流につきましても、激特事業の進捗状況を踏まえ、着実に整備を進めてまいります。
 さらに、こうしたハード対策に加え、関係区と連携し、ハザードマップの見直しなど、ソフト対策もあわせて進め、流域の水害軽減を図ってまいります。

○副議長(木内良明君)この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後五時十五分休憩

   午後五時三十一分開議

○議長(川島忠一君)休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 二十七番鈴木あきまさ君。
   〔二十七番鈴木あきまさ君登壇〕

○二十七番(鈴木あきまさ君)まず最初に、中小企業金融支援について伺います。
 我が国経済には、景気回復に向けた明るい兆しが見え始めています。しかしながら、中小企業の経営状況に目を移しますと、原油高や鋼材価格の高騰が暗い影を落としており、業況改善に向けた動きはまだまだ弱いというのが実態です。
 このように依然として厳しい経営環境に置かれている都内中小企業を支援するため、都が我が党の申し入れに迅速にこたえ、制度融資の年末年始特別対策を実施したことを評価します。中でも、小規模企業融資の要件緩和により、優遇金利による融資対象が約十万事業所も増加するなど、大きな効果が期待されます。
 今何よりも重要なことは、景気回復の動きを都内産業の大部分を占める中小企業に広げ、都内経済、そして我が国経済を本格的に回復の流れに乗せることが重要です。そのためにも、金融支援充実の取り組みを一過性のものに終わらせることなく、来年度に向けて、制度融資を中小企業にとって一層利用しやすいものとしていく努力が必要と考えますが、所見を伺います。
 一方、我が党は、中小企業を守る立場から、国の信用補完制度について代表質問を行いました。この制度は、中小企業への資金供給の円滑化を図る上で非常に重要なものと認識しておりますが、その中で私は、保証料率の弾力化について、中小企業に与える影響と都の対応について改めて伺います。
 次に、中小企業への支援策について伺います。
 今年度、経済産業省は、新産業創造戦略二〇〇五を策定しました。そこには、燃料電池、ロボット等の戦略七分野や地域再生施策などに加えて、高度部材、基盤技術産業への施策の重点化、人材、技術等の蓄積、進化、知的財産重視の経営の促進などに力を入れることになっています。特に、東京都が推進しているナノテクノロジーなど最先端新産業分野などの競争力の源となる高度部材産業集積と、それを支える多様な技術を担うたくみの中小企業を強化するためのプログラムを今年度中に定め、重点的に支援していくとしています。
 世界の頂点を行く最先端技術の発展の陰には、それを支える優秀な基盤技術が欠かせません。このサポーティングインダストリーに、最先端産業と同じレベルで光を当てることが重要であります。基盤技術を担う中小企業の、つまりサポーティングインダストリーの集積こそ、大田区は日本の代表であり、東京の誇りであります。
 町工場が約五千に減少したとはいえ、日本を代表する機械金属系を中心とする産業集積地であることには変わりありません。さらには、現在ある町工場は、近年の社会経済活動の低迷化と仕事の海外流出という大きな荒波を乗り越えてきた実績があり、各工場には中核となる技術、技能が存在し、単なる下請を脱し、基盤技術産業としての地位を築いている中小企業、また、単なる加工業から進化し、独自の製品を有する中小企業など、新たな地位を築いているものもあります。
 そこでまず、こうした東京のものづくり産業を支えている基盤技術産業に、最先端技術産業と同様に、今こそ東京都も支援をする必要があると考えますが、知事はどのようにお考えか伺います。
 また、基盤技術産業は、先端的産業との関係で重要な存在であるばかりでなく、企業数が多い上に、技術分野別でもそのすそ野が広いという特徴があり、まさに今日の東京のものづくり産業の基盤となっています。このようなことから、その支援に当たっては、各企業の状況に合ったきめ細かな対応が求められます。
 都として、このような多種多様な企業ニーズにこたえるため、支援策の充実を今後どのように図ろうとしているのか伺います。
 しかし、この工場群にさらなる荒波が押し寄せているのが現状です。大企業の業績の回復に合わせ、基盤技術を担う中小企業への発注もふえてきていますが、同時に、発注に合わせた生産量を上げようにも、工場の拡大が思うようにできない状況となっているのであります。それは、工場の集積密度の低下に伴い、これまでも問題となってきた住工混在の問題も顕著化し、操業環境が産業側にとって大変厳しい状況となっているためであります。そのため、優秀な中小企業が、動きたくなくても、地方や川崎、横浜などに転出を余儀なくされている状況も見られます。
 現在、大田区では、工場アパートなど新たな用地を購入し建設を進めていますが、区レベルの取り組みでは、財源的にはおのずと限界があります。優良企業の流出は、それとネットワークを張ってともに技術を磨いてきた企業にとってもダメージとなり、ひいては技術力の空洞化を招きます。また、雇用の面から大きな損失となります。
 都はこれまでに、特別工業地区建築条例を廃止して、工場立地法上の規制を緩和するなど、ものづくり産業の立地環境面の整備を進めてきましたが、中小企業が老朽化した工場を建て直そうとしても、こうした施設整備への助成制度は、現在、東京都にはありません。これでは、企業誘致に力を入れている近隣県などへの流出を食いとめることはできません。
 都として、基盤技術を担う中小企業へのハード面の支援策の充実を図るよう、強く要望します。よみがえれ町工場、知事に中小企業へのさらなる支援策を望みます。
 また、日本の労働力を考えるとき、団塊の世代の退職に伴う二〇〇七年問題も重要な課題であります。基盤産業を支え、その競争力を支えているのは人であります。最先端の高度技術の分野だけではなく、基盤産業の幅広い技術、技能の分野においても、有能な人材をいかに育成し、確保していくのか、これが重要であります。また、ものづくりを支えている人たちの持っている力をいかに継承し、未来に向けて発展させていくか、これも重要な問題であります。
 そこで、人材の育成、確保と技術、技能の継承について、都はどのような取り組みをする必要があると考えているのか伺います。今、たくみと呼ばれ、基盤産業の雄とも呼ばれる方々の技術、技能を次の世代に引き継いでいかなければなりません。
 次に、大田、品川など、東京港臨海部における道路、特に臨港道路の交通対策について伺います。
 例えば、大田区城南島地区などでは、主要交差点で通過車両を円滑にさばくことができず、大型トラックなどで慢性的な渋滞を来しており、企業衰退の大きな原因ともなっております。このため、最寄りの駅とをつなぐバス輸送もおくれがちとなり、もともと日中の運行便数が少ないことも相まって、公共交通サービスの面で立ちおくれた状況になっているといえます。臨海部に立地している企業の中には、このような公共交通の過疎地という悪条件の中、社員の出勤や新規採用にも苦慮し、移転を検討している企業もあります。
 基盤産業の集積地として、この地域が今後とも大きな役割を担っていくためには、まさにそこで加工された製品や部品類を迅速に効率的に輸送できる道路交通機能の充実が何よりも重要な要素となることは自明の理であります。
 羽田空港の国際化を二〇〇九年に控え、また国際貿易港である東京港において、今後ますます外貿コンテナ貨物の取り扱いが増加していくという見通しの中、その足元の大田、品川の東京港臨海部、特に大井ふ頭や城南島地区の道路交通がこのような状況のままであっていいのか、産業振興の視点はもとより、港湾物流の効率化の観点からも大きな問題です。
 そこでお伺いをします。港湾物流の円滑化に向け、東京港臨海部、特に大井ふ頭や城南島地区における臨港道路の渋滞改善対策に都はどのように取り組んでいくのか、お答えください。
 次に、中小企業への支援で忘れてならない課題として、商店街振興について伺います。
 都は先月、第一回東京商店街グランプリを開催しましたが、その成果と、その波及効果を高めるための今後の都の取り組みについて伺います。
 さて、最近の商店街の新しい動きとして、商店会の会員や地元有志などで株式会社やNPOを設立し、テナント誘致や収益事業を展開する例が見られます。また、東京商工会議所などの広域団体が商店街と連携して、活性化事業に取り組む例も出てきております。
 商店街を活性化するためには、こうした活動主体による取り組みに対しても柔軟に支援できる新たな仕組みをつくる必要があると考えますが、所見を伺います。
 次に、都立食品技術センター条例の改正に当たって、食品産業の振興と食育について伺います。
 現在、都内には約二千の食品製造業者があり、歴史と伝統ある産業として都民に豊かな食材を提供するとともに、地域の経済を支えています。さらに、食品関連産業は、販売業や飲食店等を加えると、事業所数が十万を超える重要な産業分野でもあります。
 食品技術センターは、長年にわたる業界の要望にこたえ、平成二年に秋葉原に設立され、以来、新たな加工食品の開発、技術の普及など、関連業界を技術面で支援しています。センターを先日見学をし、年間千二百件に上る相談や研修会の開催など、都内の食品製造業者にとってなくてはならない存在である、大きな期待が寄せられているということを実感してまいりました。こうした期待に今後ともこたえていくのは当然のことですが、条例改正を機に、さらに業界へのサービスを質、量ともに高め、食品産業の振興を図っていく必要があると考えます。
 そこでまず、どのような考えに基づいて食品技術センターの設置条例を改正し、食品産業の振興や食の安全確保に取り組んでいくのか伺います。
 明治時代、今の大田区で育成された馬込半白胡瓜は、久しく市場から遠ざかっていましたが、センターの支援によって東京特産の漬物に加工され、羽田空港などで販売されています。未利用食材の加工利用や伝統野菜の復活など、食品工業技術と農林水産技術を活用した一層の業界支援策を期待するところであります。
 さて、「広報東京都」最新号の第一面は食育の記事です。食の問題は、都民にとって産業振興や健康づくりだけの問題ではありません。うざい、むかつく、すぐキレるといった今の子どもたち、対人関係をつくれず、感情を抑制する力がなく、創造性の欠如した子どもたちが急増している原因は、まさに食にあると思います。食事の前のいただきますという言葉には、食べ物となった生き物に対する、命をいただきますという意味があります。いただきますから始まる温かい家庭、美しい家庭を再生しなくてはなりません。
 小学校の校庭の一角で米や野菜を栽培し、大地の恵みや害虫駆除など育てる苦労をみずから体験して、でき上がった米やサツマイモを食べることで好き嫌いがなくなり、給食を残す子がいなくなるともいいます。このように教育の場から食を見直すことが重要であり、そのためには、積極的に地元の食材を学校給食に利用したり、学童農園の設置、運営の支援を拡大する必要があると考えますが、所見を伺います。
 こうした体験は、子どもだけではなく、その親の世代が取り組むことが大事です。そのためには、体験の場の整備や情報発信の仕組みづくりはもちろん、指導する人、サポートする人などの人材の育成が大切です。団塊の世代が定年を迎え、これまでの経験を生かして地域活動に参加したいと考える人も多いのではないでしょうか。今後、都の食育を総合的に推進する上で、人材の育成とそのネットワーク化が最も重要であり、栄養士や教育関係者や食品製造業者、医師、関係者などの食育ボランティアが人材の核となって進められることが理想と考えます。
 第三回定例会で我が党の代表質問に答えて、石原知事は、総合的な食育の推進計画を策定すると述べられましたが、その計画づくりでは、人材の育成についてどのように考えられているでしょうか。
 この食育を都民大運動として展開し、国よりも早く都がイニシアチブをとって、東京発の食育を推進すべきと考えますが、知事の所見をお伺いをして、私の全質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君)鈴木あきまさ議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、基盤技術産業への支援についてでありますが、これは残念ながら、いわば日本の産業の盲点となっているうらみがあります。プレスだとかシャーリングとか、とにかく職人さんの手先を使っての、物をつくるという大事な産業ですけれども、これはまさに先端技術を駆使して立派なものをつくっていく、そのさらに前提として日本の産業を支えているわけでありまして、鈴木議員の選挙区であります、私のかつて選挙区でもありましたが、大田区の南蒲田には、物を削る日本の超名人とされている岩井さんのような方がおられて、この人も、ご夫婦二人でとにかく工場をしている。しかも、やっているのが原子炉の軸であるとか、致命的な部分をこの人の技術でつくっているわけですけれども、さらに、国際的なものとしては、ロケットの先端部分の製作、これはアメリカが新しい宇宙船、あるいはロケットをつくるとき、設計図どおりのものをつくれないから、日本に依頼してくる。これは、へら絞りという技術で、遠心力を使って鉄板を絞り出していって、注文どおりの非常に複雑な形をつくるわけですけれども、そういった先端産業の製品化の前提としてさまざまな基盤技術が利用されているわけであり、日本の先端技術製品が世界マーケットでの競争に勝っていくためには、この先端産業の基礎を支えている基盤技術がまさに必要不可欠であります。
 東京には、こうした基盤技術を担う中小企業が、先端技術企業とともに高度に集積しておりますが、率直にいって余り恵まれておりません。都は、今後とも、基盤技術に対する支援を行いまして、何よりもこの技術を継承する後継者の養成というものを心がけていきたいと思っておりますが、世界に誇る技術力を有する東京の製造業の持続的な発展のためにも不可欠な努力だと思っております。
 しかし、これはどこかに国レベルで集中した基盤産業のセンターのようなものでつくるべきだと私は思っております。例えば、まだまだスペースのある三多摩であるとか、そういうところにいろんな基盤技術というものを、もうちょっと恵まれた条件で発揮していく、それほど大きなものにならずに済みますけれども、そういう工場の施設というものを国の努力でつくっていくべきではないかと思っております。
 次いで、食育の推進についてでありますが、自然の恵みへの感謝の念や正しい食生活は、世代を超えて、日々家族の団らんの食事の中で自然としつけられ、生活の知恵として受け継がれてまいりました。しかし、今日、東京では、こうした一家団らんが希薄になりまして、小中学生の個食や、あるいは欠食の増加が指摘されるように、家庭での基本的な食生活が失われております。
 ある学校で先生が、親の情愛を味わうために、週日のある日、子どもたちにお母さんのつくるお弁当を持ってくるようにということにしましたら、ある家庭では、これは何も一人ではないし、数件例があったようですけど、お母さんが子どもにカロリーメイトなるものを持たせて昼食にしたと。これは本当に暗然とした思いを私いたしましたが、これは家族のきずなを脅かすとともに、青少年の健全な育成にもかかわる深刻な問題であると思います。
 ご指摘のように、食育は、健全な食生活習慣や食への感謝の心を養うとともに、健康的な心身と豊かな人間性をはぐくみ、生きる力の礎を形づくる全人格的な取り組みであると思います。
 今後、食育の場である家庭や学校、そして地域社会が一体となって、知育、徳育、体育の基本となる食育に取り組んでいかなければならないと思っております。都は、率先して食育に関する情報発信や人材育成に取り組み、都民とともに都市生活での食育を東京から発信していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君)中小企業金融等、九点のご質問にお答えいたします。
 まず、制度融資の充実についてでございます。
 中小企業の年末年始の資金需要にこたえるため、本年十一月より、小規模企業融資の要件緩和とともに、緊急の資金繰りに対応するクイック融資の限度額引き上げなどの特別対策を実施しております。このうち小規模企業融資の十一月一カ月間の実績は、前月比二一%増の二百十二億円と、利用が大幅に拡大しております。
 今後も厳しい経営環境にある中小企業を資金面から支援し、東京の産業活力を強化して、景気回復の動きを本格的なものにすることが重要であると考えております。このため、中小企業のニーズをきめ細かく把握し、創意工夫により制度融資を一層利用しやすいものとしていくよう努めてまいります。
 次に、信用保証料率の弾力化についてでございます。
 これは、現在一律とされている保証料率を、個々の中小企業の経営状況に応じた料率とするものでございます。これにより、経営改善の努力が保証料の引き下げという形で報われることや、経営実績に欠けるなどリスクが高く保証が困難であった層への保証を可能にし、資金供給の促進を図るメリットが期待できるとされております。
 しかし一方で、業況によっては保証料負担が増加する場合も考えられます。このため、この見直しにより経営基盤が脆弱な中小企業に悪影響が生じないよう、国に強く求めているところでございます。また、都といたしましても、信用保証協会と連携しながら、鋭意適切な対応に努めてまいります。
 次に、基盤技術を担う中小企業への支援についてでございます。
 基盤技術産業は、ご指摘のとおり、先端技術を駆使した製品化を支えている重要な産業分野であり、東京のものづくり産業にとって不可欠の存在でございます。都は、これまで各支援機関を通じて製品開発、資金調達、販路対策等の分野で中小企業が抱える多様な課題にこたえるさまざまな施策を実施してまいりました。
 今後は、来年四月に独立行政法人化する産業技術研究所におきまして、評価測定の精度向上やデザイン支援の充実などを目指すとともに、中小企業振興公社での販路開拓支援事業の強化を検討するなど、基盤技術産業の多様な企業ニーズにより幅広く対応できるよう努めてまいります。
 次に、基盤技術産業における人材育成などの取り組みについてでございますが、団塊世代の大量退職が見込まれる中、すぐれた技術、技能の継承や人材の育成確保は、産業の活力を維持する上で重要な課題であると認識しております。
 都はこれまでも技術専門校におきまして高度熟練技能の継承を図るため、東京ものづくり名工塾を実施してまいりました。また、すぐれた技術者を育成した中小企業の中から、城南や多摩地域の企業を表彰するなど、人材育成の機運醸成にも努めております。
 今後は、中小企業が取り組む人材育成確保への支援を一層強化していくため、積極的なPRを行うとともに、名工塾の規模拡大や内容の充実を検討してまいります。
 次に、東京商店街グランプリについてでございます。
 グランプリには、区市の推薦を受け八十六事業もの応募があり、レトロな街並みを生かしたイベントや地元芸術家と連携したまちづくりなど、すぐれた取り組みが見られたところでございます。商店街からは、よりよい事業にしていく励みになった、今後の参考にしたいなどの声が多く聞かれました。
 都は今後、応募全事業の事例集を配布し、ホームページにも掲載するほか、都提供テレビ番組など、各広報媒体で紹介し、広く都内商店街や都民に普及いたしたいと考えております。
 さらに、若手商人の研修会で受賞者に講師として協力いただくなど、先進的な事業の仕組みや手法を共有化し、商店街の活性化につなげていくよう支援してまいります。
 次に、商店街を活性化する取り組みへの支援についてでございます。
 現在、商店街が会社やNPO法人を設立し、独自の戦略を持って商店街全体の再生を進めることや、高齢化に対応したコミュニティビジネスに取り組むなど、自由な発想で多様な活動を行う例がふえております。こうした取り組みは、商店街に新たな人材や資金を呼び込み、これまでにない事業展開をもたらすことから、商店街の活性化に有効であると考えております。また、商工会議所などの団体が商店街と連携して広域的な活性化事業を実施することも、商店街振興を幅広く展開する上で重要でございます。
 都は今後、商店街の活性化に寄与するこうした新たな取り組みを促進するよう、効果的な支援策を検討してまいります。
 次に、食品産業振興や食の安全確保への取り組みについてでございます。
 現在、食品技術センターでは食品の加工に関する研究を、また農林総合研究センターでは農畜産物の生産に関する研究をそれぞれ実施しております。来年度から両センターの運営を統合し、相互の人材、情報、ノウハウ等を活用して試験研究を一体的に進め、食品加工業及び農林水産業の振興と食の安全・安心を追求していく考えでございます。
 今後、食品技術センターでは、特産農産物を利用した食品開発など、業界のニーズを踏まえた試験研究課題に取り組み、サービスの向上を図ってまいります。
 次に、地元食材の学校給食での利用や学童農園の拡大についてでございます。
 今日、自然の恵みである食や生産の労苦に対する感謝の気持ちが薄れつつありますので、これをはぐくむために身近な地元の食材を活用することや、学童みずからの農業体験など、さまざまな取り組みが求められております。そこで、今年度から、農地がない都心部の学校で都内産農産物の給食への利用を始めるとともに、生産者をお招きし、さまざまなご苦労についてお話をいただいております。また、学童農園につきましても都内全域に拡大しているところでありまして、今後とも、生産者と学校との相互理解と協力のもと、こうした取り組みを積極的に進めてまいります。
 最後に、食育の推進計画における人材の育成についてでございますが、食育を着実に推進するためには、家庭での取り組みに加え、学校や地域での食育を担う人材を育成するとともに、その輪を広げ、ネットワークを形成することが不可欠でございます。
 都では、食育推進計画の策定に向けて、本年十一月、関係六局による食育推進検討会議を設置したところでありますが、この中で、食育の推進の中心的な役割を担うことが期待される教員、栄養士、農業生産者等をリーダーとして養成することを検討してまいります。
   〔港湾局長津島隆一君登壇〕

○港湾局長(津島隆一君)東京港の臨港道路の渋滞改善対策についてのお尋ねでございます。
 近年、東京港の取扱貨物量の増加等に伴い、大型車両の交通量が増大し、ご指摘のとおり、大井ふ頭や隣接する城南島で道路の渋滞が発生しております。このため、道路交通の改善対策を進め、港湾物流の効率化を図ることが喫緊の重要課題であると認識しております。
 そこで、これまでこの地域の二カ所の交差点改良を実施いたしますとともに、現在、大井ふ頭におきまして、一般車両とコンテナ車両等を分離して交通の円滑化を図る道路改修工事を実施中でございます。さらに今後、国道三五七号線に接続する交差点の改良を行うとともに、ふ頭を利用する関係事業者と連携した路上放置車両対策等にも取り組み、港湾物流の効率化を推進してまいります。

〇議長(川島忠一君)十二番伊藤ゆう君。
   〔十二番伊藤ゆう君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕    

○十二番(伊藤ゆう君)私からは、団塊世代の大量退職者が発生するいわゆる〇七年問題と、それに伴って行われなくてはならない教育改革について質問をさせていただきます。
 かくいう私の父親も、大学時代は石を投げていた団塊世代で、私、伊藤ゆうがオギャーと生まれたその年は、ロッキード事件が発生した昭和の五十一年であります。そう聞けば、団塊ジュニアがついに都議会にも出てくるようになったかと驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし、その時代の変化とは裏腹に、若い世代が必ずしも楽観できない日本の未来が今ございます。
 バブルの絶頂期で育った昭和五十年代生まれは、好景気という名のこうこうと照らされる白熱灯のもとで育った余り、ある日突然やってきた不景気という名の停電には全く対応できない幼さと貧弱さを露呈してしまいました。その結果がニートやフリーターの発生であると思います。
 一方で、日本は既に三万一千人の人口減少が報告され、人口が減る、高齢者がふえるにもかかわらず、働かない若者がふえる傾向が顕著になってきております。
 二〇四〇年には、六十五歳を超える高齢者が日本の人口の三三%を超える試算もございます。二〇四〇年は、今を生きる者からすれば遠い未来のことかもしれません。しかし、少なくとも私や、あるいはまた知事のお孫さんにとっては、この日本で生きていかなければならない現実的な未来でございます。
 このブレーカーの落ちた暗い未来に対し明るい光をともすことができるのは、教育であると思います。
 二十世紀はものづくりと輸出の時代でありました。その意味では、記憶と反復の習熟を求めるこれまでのドリル式教育方針は、二十世紀の時代に合った企業戦士の育成に役立ったといえます。
 しかし、二十一世紀はいかなる時代でありましょうか。ものづくりは周辺国に奪われ、労働力は、押し寄せる外国人労働者に移っていく時代が容易に想像できます。二十一世紀、日本が生き抜いていくためには、ビル・ゲイツ氏がたった一人で世界のコンピューターを支配してしまったように、他国の追随を許さぬ高いインテリジェンスと発想力が求められるのではないかと思います。
 そこで、平成十四年から、子どもの創造力の育成を目指して、小中高校の学校現場に週一時間から二時間程度の教科外授業として導入が決まった総合的な学習の時間の意義は大きいと思います。二十一世紀に求められる創造力、判断力、コミュニケーション能力をはぐくむ総合学習は、暗い未来に光をともすものであり、今はその充電期間であると思います。
 ところが、一部の学校では総合学習の意義を理解せずに、音楽コンクールの準備時間に消化したり、あるいは算数の補講の時間に当てるなど、不足時間の草刈り場になってしまっています。また、OECDやIEAの学力調査結果で学力低下が出るたびに総合学習の見直し議論が出たりしているのは、充電中に発光しないといって発電機をけり倒すような行為であります。今こそ、二〇四〇年に備え、ぶれる国の教育理念をよそに、都は教育の確固たる理念を打ち立てなくてはなりません。
 そこでまず、都として教育における総合的な学習の時間をどのように位置づけておられるか、お伺いをいたします。
 また、総合学習の時間を、それぞれの教師がみずからの都合で、およそ総合学習とは呼べないような時間に勝手に消化することがないよう、この時間を適切に指導し、学習に当たらせる必要があると考えます。総合学習指導主任のようなものを新たに設けるなどしてはいかがでしょうか。見解をお伺いいたします。
 私は、決して詰め込み教育を否定するものではありません。大阪大学名誉教授の水越敏行氏によれば、学力とは三層の立体的な構造を持つといわれています。立体の底辺に位置するのは基礎的な学力、その上に見方、考え方、調べ方の学力、そして最上階に創造的な学力が位置し、記憶と反復から成る基礎的な学力なくして、上位二層の学力は成り立たないとしております。ですから、私も記憶型教育を否定するものではありません。しかし、これまでの教育が余りに基礎的な学力に偏ったのではないでしょうか。
 そしてもう一点、氏の解説を引用すれば、それぞれが学力育成の仕方も異なれば、その評価の仕方も異なるということでございます。ところが、二十一世紀型の総合学習に、二十世紀型の前時代的な育成方法を持ち込もうとする教師が少なくありません。なぜなら、その教師自身が二十世紀型でこそ教育を受け、創造的な学力をはぐくむ総合学習を受けていないからであります。
 こうした実態を踏まえ、都教育委員会は総合学習の教育内容向上に向けた対策をどのようにお考えでしょうか。
 本来、各学校の独自性にゆだねられ、それぞれで特色ある授業がなされることは理想の姿であります。しかし、国の発表から導入までわずか二年でスタートした総合学習は、授業を行う教師によって授業内容の格差が年々広がり、お手上げになってしまっている学校もあります。
 総合学習の成功事例としては、杉並区の民間人校長である藤原先生の「よのなか科」が有名でありますが、藤原先生いわく、その成否は、教科書がないだけにマンパワーによるところが大きいそうでございます。
 そこで、東京都教育委員会として、総合学習の授業内容を専門に行う教師の育成や、総合学習専門の教員ユニットをつくり、お手上げ校に派遣するなどの方策がとれないか、お伺いをいたします。
 また、学校によっては、民間会社開発の貿易体験型授業、トレーディングゲームの導入など、新たな試みも出てきました。しかし、そうした画期的な試みが一部の地域に限定されており、区をまたがる他校に十分に伝達されていない現状もございます。そこで、すぐれた総合学習の授業を行う学校、または教師を都として表彰し、この授業内容を広く周知させるような方法はとれないか、お伺いをいたします。
 冒頭申し上げたとおり、もう一つ大きな問題がございます。それは、教師の大量退職でございます。〇七年以降は、大量退職とともに大量採用をしなくてはなりません。ある民間の調査結果によれば、採用試験の倍率が七倍を切ると、人材の質的低下が著しくなるそうでございます。今、取り組まなくてはならないのは、これまで以上に厳正な教師の採用です。倍率が落ち込む中で、人材の質をいかにして担保していくか、東京都教育委員会としてのお考えをお聞かせください。
 現在、品川区の立会小学校など幾つかの学校では、大学生のインターン生を受け入れ、総合学習や放課後授業を手伝ってもらうなどの新しい試みが始まり、学校現場に大学生が登場し始めています。ある校長によれば、こうして一カ月間でもインターン生の活動を見れば、その学生が教師に向いているかどうかがわかるそうでございます。また、優秀な教師の卵を思わぬ形で発見することもあるそうです。しかしながら、そうした学生が必ずしも公立校への就職を望まなかったり、あるいはまた都の行う採用試験で合格するとは限らず、口惜しい思いをすることがあるそうであります。
 そこで、こうしたインターン生を採用している学校長が採用試験時に優秀な学生に対して意見を添え、これを採用試験で参考にするような制度はできないか、お伺いしたいと思います。そうした試みにより、大学生が学校現場に参加する意欲が高まり、ひいては学校現場の活性化につながるものと考えます。
 また、採用された教員の育成についてもお伺いいたします。
 いうまでもなく、小中学校の現場を預かるのは区市町村教育委員会であります。目黒区議会議員時代に、私は区教委に対し、区の特色ある総合学習を目指すため、教員の育成に予算を講じて行うべきだと申し上げました。ところが、その答えは、せっかく予算をつけても、育成した教師が都教委の人事でいつ他区へ持っていかれてしまうかわからない。お金をかけるだけばからしいというものでございました。
 また、教師の側も、地域コミュニティとのかかわりを強め、町会と生徒で行う学校バザーの開催などに前向きでも、いつ他区へ転出することになるかわからず、地域活動が根づかない環境にあるといっておりました。例えていうなら、目黒区で立候補した区議会議員がいつ大田区で立候補するかわからない環境で、果たして地域との結びつきを強められるかということだろうと思います。
 これまで以上に児童虐待の早期発見や子どもの安全を守る必要が高まっている今日、教員が地域に根づくことは重要でございます。教員育成の観点からも、また、地域コミュニティとの連携強化の観点からも、この際、教員の人事権を一部でも区市町村教委に移譲してはいかがでしょうか。この点についての都教委のお考えをお伺いいたします。
 そして、大事な問題提起をもう一点。それは今、学校現場、とりわけ副校長の机が紙の山になってしまっているということでございます。和田中学校の藤原校長先生によれば、年に二百枚もの各種調査用紙が文科省や都及び区市町村教委から送られ、事務処理のノイローゼになりかねない現状だそうであります。都教委は、こうした調査票の問題をどのようにお考えか、お聞かせください。
 次に、東京都の魅力を引き出す文化振興策についてお伺いいたします。
 これまでにも申し上げてきたとおり、日本の人口が減り、周辺国の人口と産業力は飛躍的に向上することが予想されています。この小さな国が人口面でも小さくなっていくその未来で、失われる国力を補うものがあるとすれば、教育とともに東京という都市の魅力ではなかろうかと思います。今現在、アジア周辺諸国の都市と比較すれば、圧倒的な規模と地位を誇る東京ですが、近年、周辺国の都市開発もまた飛躍的に進んでいるように思います。
 かつて新宿に浄水場があるころ、丸の内の住民は、まさか新宿という後発都市に肩を並べられるとは予想だにしていなかったはずであります。ところが、気づけば高層ビルが建ち、都庁舎まで移転する始末となりました。東京もまた丸の内に陥るおそれがないとはいえません。最近、改めて丸の内に人が集まり始めたのは、再開発とともに、潜在的にあった地理的、空間的魅力、そして何より新宿西口にはなかなかない文化的魅力があったからではないかと思います。
 その意味で、東京は今こそ、文明的魅力と同時に文化的魅力を引き出し、広く世界の旅行客が行ってみたい東京づくりを行うべきだと考えます。その一環として、ショートショート・フィルムフェスティバル・アジアや、あるいは東京国際アニメフェア、東京国際映画祭など、日本の映像分野は世界に対しても集客力を持っていると思います。都は、こうした映像文化振興を今後どのように位置づけておられるのか、お伺いをいたします。
 同時に、日本の映像分野は、世界の先駆けとして産業面でも注目されているところであります。都は今後、映像産業を産業育成の観点からもどのように位置づけておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
 先日、私も東京国際映画祭に出席をさせていただき、後日、関係者の方々からお話を伺いました。多くの方が都に対し、一層の支援を口にされておりました。事実、東京国際映画祭においては、都の支援が年々縮小され、予算規模は当初の三分の一になってきています。都として、東京都の魅力を引き出すこうしたイベントに対しては一層の支援を図られるべきと考えますが、ご見解をお聞かせください。
 同時に、日本が誇る映像産業を文化振興の視点とともに、世界への売り出しの観点で打ち出していくべきだと考えますが、現在、映画祭は生活文化局、アニメフェアは産業労働局と縦割りになっています。両イベントを有機的に結びつけ、より効果的な映像産業の育成を行うためにも、各局の連携強化を図るべきと思います。
 さらに、日本の先進技術に、ゲーム、CG、ロボット、ITなどが挙げられると思いますが、現状は、それぞれの業界がそれぞれの形でイベントを行い、十分な相乗効果を引き出すに至っていません。既にこれらの産業は融合し始めているところですが、この融合は必ず加速度的に進み、近い将来、これらの融合産業は日本の強みとなって、他の都市を圧倒できる存在に育つものと思います。
 車産業を盛り上げた東京モーターショー同様に、先見の明を持って、東京近未来ショーのような、次世代社会を体験でき、近未来の融合産業を促すようなイベントの開催を今後の検討課題として要望を申し上げたいと思います。
 以上、少子高齢化社会の到来が不可避な東京にあって、数十年後にも活力ある都市を形成するための教育面、文化面での一案を申し上げさせていただきました。
 種々の提案に対するご検討を要望し、答弁のほどよろしくお願い申し上げ、私、伊藤ゆうからの一般質問を終わらせていただきます。(拍手)
   〔教育長中村正彦君登壇〕

○教育長(中村正彦君)伊藤ゆう議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、教育改革について九点の質問にお答えいたします。
 初めに、総合的な学習の時間の位置づけについてでございますが、総合的な学習の時間は、生きる力の育成という、学習指導要領の基本的なねらいを実現するために創設されたものでございます。
 都教育委員会は、この時間が、児童生徒がみずから課題を見つけ、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てる上で重要な教育活動であるというふうに認識しております。
 次に、総合学習指導主任の新設についてであります。
 各学校においては、教育課程の実施に当たりまして、校長の学校経営方針に基づきまして、年間指導計画及び週ごとの指導計画、これを週案と申しますが、これを、さらに総合的な学習の時間の実施につきましては全体計画を作成しまして、教員が協働して組織的に取り組むよう、校長が管理を行っております。
 学校内の組織におきましては、教育課程の実施について、教務主任、学年主任が中心的役割を担っているところでありまして、新たに主任を設置する必要性はないものというふうに考えております。
 今後とも、校長によります教育課程の管理がより適切に行われるよう指導してまいります。
 次に、教育内容の向上についてでございますが、都教育委員会は、指導資料集などを作成するとともに、教職員研修センターなどにおきまして、指導、評価方法についての研究を行い、その成果を普及するなど、授業内容の改善に取り組んでまいりました。
 今後、都内公立学校のすぐれた実績をまとめ、各学校に普及啓発するなど、総合的な学習の時間の教育内容の向上に向けまして取り組んでまいります。
 次に、教員の養成や学校への支援についてでございます。
 総合的な学習の時間は、教科の枠を超えて横断的、総合的な学習や、児童生徒の興味、関心等に基づく学習など、創意工夫を生かした教育活動を行うものでありまして、特定の教員のみが担当するのではなく、すべての教員が指導に当たることとなっております。
 都教育委員会は、教員の指導力向上のため、教職員研修センターにおきまして、総合的な学習の時間の指導内容、方法、評価等についての研修を実施しております。
 今後とも、すぐれた実践事例に関する情報提供、外部の連携機関の紹介、指導主事の学校への派遣など、区市町村教育委員会と連携を図りまして、総合的な学習の時間を充実してまいります。
 次に、表彰についてであります。
 都教育委員会では、教育の発展、学術文化の振興に貢献した教職員や、すぐれた教育実践活動、研究活動を行っている学校、グループを年一回表彰しております。学校、グループの受賞者につきましては、その功績をまとめた実践記録の概要を作成しまして、全区市町村、全都立学校に配布しております。
 総合的な学習の時間を含めまして、すぐれた教育実践活動が行われている場合には、積極的に推薦を行うよう、今後とも周知してまいります。
 次に、優秀な人材の確保についてであります。
 都教育委員会では、これまでも、豊かな人間性や実践的な指導力を見きわめるために、人物本位の選考を重視し、個人面接や集団活動による面接を実施するとともに、東京教師養成塾の塾生を対象とした特別選考や、豊かな社会経験を持つ社会人特別選考の拡大など、さまざまな改善を行ってまいりました。
 今後とも、教育に対する使命感や熱意あふれる教員を確保するために、選考方法の改善に一層の工夫をしてまいります。さらに、大学や地方に出向き、直接学生を対象に実施する説明会や、インターネットによります広報活動の充実などを通しまして、幅広く人材の確保を図ってまいります。
 次に、教員採用選考におきまして、校長の意見等を参考にする制度についてであります。
 教員を目指す者にとりまして、学校現場において子どもたちと直接接するさまざまな体験は非常に貴重なものであるというふうに考えております。
 今後は、採用選考の面接試験におきまして、受験生が持参します面接票に、このような学校現場でのさまざまな体験活動について記入することをさらに周知徹底し、その内容を考慮して面接に当たるなど、採用に当たっての参考としてまいります。
 次に、教員の人事権の区市町村教育委員会への移譲についてであります。
 本年十月の中央教育審議会答申では、教員の人事権については区市町村に移譲する方向で見直すこととし、当面、中核市など一定の自治体に移譲し、その状況等を踏まえ、その他の区市町村への移譲について検討することが適当であるとされております。
 都教育委員会といたしましては、島しょなど小規模な市町村を含めた広域人事の必要性、事務処理体制の整備、さらには人材育成や給与負担のあり方など、解決すべき課題が大きいと認識しておりまして、国の動向を注視して適切に対処してまいります。
 最後に、学校に対する調査についてでありますが、都教育委員会では、都立学校における調査事務の負担を軽減するために、TAIMSを活用しまして、学校の基本的な調査情報をデータベース化するとともに、庁内各課で収集します調査情報を共有化することによりまして、調査の簡素化あるいは重複調査の解消を図ってまいりました。
 今後とも、調査に関する学校や区市町村教育委員会の事務負担の軽減に配慮するとともに、国や区市町村教育委員会に対しましても、調査の簡素化等について要望してまいります。
   〔生活文化局長山内隆夫君登壇〕

○生活文化局長(山内隆夫君)映像文化の振興に関する二つの質問にお答えいたします。
 まず、映像文化振興の位置づけについてでございます。
 東京都は、映像文化の振興を図るため、東京国際映画祭などへの支援のほか、東京都写真美術館において、作品の上映や、撮影許可等の総合窓口であります東京ロケーションボックスの運営などを行っております。
 映像文化の振興は、東京の文化発信力を高めるとともに、東京の魅力を世界に広める上で極めて効果的なものであると認識しております。今後とも、観光や産業振興に関する施策とも連携を図りつつ、将来の活躍が期待される若手映像制作者を重点的に支援するなど、映像文化の振興に努めてまいります。
 次に、東京国際映画祭への支援についてでございますが、東京国際映画祭は、映画業界を中心に設立された財団法人が主催しておりまして、ことしで十八回目となりましたが、民間主導による映画祭でございます。
 近年、釜山や上海などの国際映画祭が台頭してきまして、競争が大変厳しくなっております。東京国際映画祭は、アジアを重視する新たな企画に取り組むなど、関係者の努力と工夫によって事業規模は拡大し、さらに昨年度からはマーケット部門も強化されております。
 東京都は、映画祭の中心企画である、応募作品が競い合うコンペティション部門を共催するとともに、グランプリ作品に都知事賞を授与するなど、引き続き支援してまいります。
   〔産業労働局長成田浩君登壇〕

○産業労働局長(成田浩君)映像産業の育成についてでございますが、都内のアニメ等の映像産業は、市場規模や成長力、作品の優位性から、東京が世界に誇る産業であると考えております。
 一方、映像制作会社の多くは、経営基盤が弱い中小企業であり、自主制作力や事業展開力が不十分な状況にございます。また、韓国等の諸外国の追い上げもあり、経営力や競争力の強化に向けた支援が求められております。
 都はこれまで、国際アニメフェアの開催、著作権に関する相談等を実施しておりまして、現在は制作資金支援の仕組みづくりやアニメデータベースの構築を進めているところでございます。
 今後とも、中小映像制作会社の支援を強め、都内映像産業の振興を図っていきたいと考えております。

〇副議長(木内良明君)二十一番高木けい君。
   〔二十一番高木けい君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○二十一番(高木けい君)私は、知事並びに関係局長に、首都東京の都市機能の一層の整備と向上を目指して、以下大きく三点の質問をいたします。
 まず、駅周辺等の放置自転車対策についてお伺いいたします。
 放置自転車問題は、今や我が国大都市特有の社会問題の一つとなりました。生活文化局の調べによると、本年四月現在、都内の放置自転車台数は約十三万四千台、都内の主要駅周辺を中心に、例外なく地域の深刻な課題となっております。
 東京都は、今後、東京大マラソンや東京オリンピックの招致など、東京を世界に発信していくことに力を入れていかなければならない中で、放置自転車問題による駅周辺の都市機能の低下、歩行者の危険度の増大、まちの景観、美観の悪化などは大きなマイナス要因と思われます。
 千客万来の観光都市を目指し、万人にとって暮らしやすい、安心・安全な首都東京を築いていくためには、この問題に対する今後一層の努力と、東京都の大きな視点での方針や姿勢が必要であると考えます。
 そこで、まず知事にお伺いいたします。特に都内主要駅周辺の放置自転車対策について、今後、都はどのような姿勢で臨む決意があるのか、お尋ねいたします。
 さて、そもそも放置自転車問題は、自転車利用者のモラルに負うところが大きいのですが、しかし、物理的に駐輪場が確保されていなければ、幾らモラルの向上を訴えても、全く意味をなさないものでもあります。したがって、ソフト、ハード両面の対策があって初めて、この問題の解決に向けて一定の成果が上がることになるでしょう。
 そこで、駐輪場の整備ですが、これはだれの責任において行われるべきなのでしょうか。ここに自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律、いわゆる通称自転車法という法律があります。この法律は、第五条で、駐輪を発生させている原因者が責任を持って駐輪場を確保、整備するなど、その原因者の責任を明確にし、対策を講じる努力義務を規定しています。
 つまり、例えばスーパーマーケットのお客さんの駐輪対策は、そのスーパーマーケットが行うことであり、行政の施設であれば行政が、同じように、駅周辺であれば鉄道事業者がその対策を行う義務があるということを明確に規定したものであります。
 しかし、生活文化局の調査でも明らかなように、駅周辺の放置自転車は、全体としてここ数年減少傾向にあるものの、例えば、都内で最も放置台数の多い池袋駅で二千二百十七台、第二位の大塚駅で千九百五十一台、私の地元である北区の赤羽駅は第九位で千四百七十三台と、依然として深刻な状況を露呈しているところも多く見られます。
 この間、放置自転車台数が全体として減少傾向にあるのは、駐輪場を積極的に設置してきた市区町村の独自の努力によるところが大きく、鉄道事業者の姿勢はまことに消極的といわざるを得ませんでした。
 豊島区が法定外目的税として放置自転車対策推進税を導入しようとした背景も、鉄道事業者の非協力的な対応に業を煮やして、このような考えに至ったといわれています。法定外目的税という方法に対して賛否両論はありますが、しかし、まことに深刻なこの問題の解決のためには、このような手法もあって当然であります。
 駅周辺の放置自転車問題が深刻なのは豊島区だけではありません。例えば私の地元のあるJR駅では、公道的な役割を持つJR敷地内に放置された乗客の自転車を、JRの職員が区道上に移動し、移動された自転車を区の嘱託職員が整理し撤去している光景が日常的に見られます。自転車法の趣旨を全く遵守しないこのような鉄道事業者の行為は、社会的責任を放棄しているといわざるを得ません。法定外目的税によって協力を促そうという考え方は、こういう事情からやむなく出てきたものだと思うのです。
 さてそこで、鉄道事業者はJRだけではありませんので、JRを初め、多くの私鉄にこの問題の解決に向けた協力を促していくために、私は東京都交通局の姿勢が最も大切であると思います。なぜならば、すべての鉄道事業者がこの問題に消極的である中で、都営地下鉄、都電荒川線など、東京都独自の公共的交通機関を持っている交通局が、自転車法の趣旨を遵守し、放置自転車問題の解決に向けて率先してその姿勢を示し、具体的な対策に乗り出していくことになれば、JRを初めとする私鉄各社にも大きな影響を与えることになると思うからであります。
 今や大都市特有の社会問題となった放置自転車対策について、首都東京の役割を踏まえた東京都交通局の積極的な姿勢と対策についてご答弁願いたいと思います。
 次の質問に移ります。
 東京都の防災都市づくり推進計画において、災害に強いまちづくりを進めるための重点整備地域に指定されている十条地区まちづくりについてお伺いいたします。
 北区では、本年八月、行政と地域住民が一体となった十条地区まちづくり協議会を発足させ、それを受けて十月には、十条地区まちづくり基本構想を発表いたしました。当該地区は、木造住宅が密集するいわゆる木密地域で、震災時の危険度が高い上に、埼京線十条駅付近立体化などの課題を抱えた、防災性の向上を主眼とした新たなまちづくりの必要性の極めて高い地域であります。
 この基本構想で、北区は、十条地区約九十五ヘクタールの将来像を、魅力ある安全で安心して住める、にぎわいと安らぎを奏でるまちと定め、今後精力的にまちづくりを進めていく決意を示しました。そして、当該地域九十五ヘクタールを、十条駅周辺エリア、補助八三号線沿道エリア、木造住宅密集エリアの三ブロックに分け、それぞれの地域特性に合わせたまちづくりを展開することとしています。
 そこで、まずお伺いいたしますが、今後、東京都として、当該地区全体のまちづくりについてどのように関与、援助、推進していくつもりなのか、その方針を示していただきたいと思います。
 次に、エリアごとに幾つかお伺いいたします。
 まず、十条駅周辺エリアについてですが、駅西口では市街地再開発事業が予定されており、地域住民も入ったまちづくりが進められています。この進捗状況はいかがでしょうか。
 また、東口側は、駅に接するように木造住宅が密集しており、駅前広場もなく、にぎわいに乏しい状況にあります。過日は、上りホームのすぐ裏手で五棟を焼く火災が発生したところでもあり、防災上の観点からも、早急な空地の確保、駅前広場の設置など、まちづくりへの取り組みが求められます。そこで、東京都は、北区と連携して今後どのように取り組みを進めていくのか、見解をお伺いいたします。
 次に、補助八三号線沿道エリアについてお伺いいたします。
 都道補助八三号線、通称岩槻街道の整備は、北区においては喫緊の課題といわれています。この都市計画道路は、昭和二十一年に拡幅の計画がなされたまま現在に至っており、北区内でも危険な道路の一つといわれています。
 交通量に比して道幅が極端に狭いため、歩道が十分にとれず、電柱が左右に林立し、歩行者は電柱の陰に隠れるようにして車をよけている状況です。沿道には北区立十条台小学校、荒川小学校という二つの小学校があるため、児童の通学路にもなっており、日常的に事故が起こっても何ら不思議ではありません。
 また、この道路は木造住宅密集地域を貫き、その沿道には小規模で老朽化した住宅が立ち並んでいることから、防災性の向上という観点からも、道路整備と一体となった沿道整備の早急な取り組みが必要です。北区としては、十条まちづくりのきっかけとしても、この道路の早期事業化を進めたい意向であり、今後この道路の事業化に対する都の見解を伺います。
 最後に、木造住宅密集エリアですが、北区では、環状七号線の外側部分に位置する上十条五丁目、十条仲原三、四丁目地区を新たにこのエリアに位置づけ、エリアの拡大を図りました。
 従前は、環状七号線が延焼遮断帯であるという理由からか、防災都市づくりの指定から外れていましたが、この地域は今まで指定されている地域と同じか、それ以上に住宅密集率が高く、地形的にも災害に弱いといわれています。
 地域のつながり、まちの形成の歴史、地形や地域住民の活動範囲などを総合的に考えると、この地域も都の防災都市づくり推進計画でいうところの整備地域に指定すべきであると考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、大きく三つ目の質問に移ります。
 北区内都市計画道路の整備促進と田端二丁目付近土地区画整理事業に伴う諸課題についてであります。
 現在、北区内都市計画道路整備率は五六%であります。この整備率を上げるためには、第三次事業化計画に位置づけられている各路線の整備を着実に進め、活力、安全、環境、暮らしの四つの基本目標実現に向けて、東京都が精力的に努力すべきであると考えます。
 現在、東京都では、放射線、環状線など、首都東京の骨格となる幹線道路ネットワークの整備に努めており、ここに多くの予算を必要とすることは理解できます。しかし一方で、先ほど取り上げた八三号線のような、道幅の狭い、歩道が十分に確保できない地域の生活道路の整備にも目を向ける必要があると思います。例えば北区内では、既に事業化されている補助七三号線赤羽駅西口から清水坂まで、また、八八号線豊島二丁目から五丁目交差点までの区間などがこれに当たります。
 これらの事業を推進するためには、まず用地の確保がかぎとなりますが、早期整備を期待する地元の目からは、事業用地の買収が着実に進んでいないようにも見受けられます。事業に協力する意向で、すぐにでも用地買収に応じるつもりの地権者に対して、東京都として積極的な対応が望まれます。
 そこで、お伺いいたしますが、補助七三号線及び八八号線における用地取得の現状と今後の取り組みについてお答え願います。
 次に、田端二丁目付近土地区画整理事業の中心を走る補助九二号線については、今後事業化が予定されている街路整備と、既に事業中の区画整理という二つの事業によって一本の道路が整備されることになっています。
 そこで、まず田端二丁目付近土地区画整理事業の見通しについてお答えください。また、第三次事業化計画にも位置づけられている北区中里三丁目から補助九三号線までの区間の街路事業整備方針について、今後の見通しをお答えください。
 次に、区画整理区域内には、都道補助九三号線沿いに田端駅前通り商店街があります。昭和二十一年の都市計画決定以来、何度となく計画がとんざする中で、商店街の中に区画整理の買収済み用地が点在し、その空き地が長期間放置されています。その結果、商店街の一体感がなくなり、商業集積という商店街の機能は著しく低下しています。現在進められている区画整理事業に伴って商店街としての活力を取り戻すために、都としてどのような対応を考えているのか、お答えください。
 以上で私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君)高木けい議員の一般質問にお答えいたします。
 駅周辺の放置自転車対策についてでありますが、自転車は、渋滞がなかなか解決しない大都市にあって、大変効用性の高い移動手段であると思います。何しろ都心部での渋滞時に、車の平均時速が十五キロ云々のときに、自転車はもうそれを軽く追い抜いていくていたらくでありますから。
 その自転車が無秩序に駅前を占拠している状況は、確かに都市機能の低下をもたらすだけでなく、景観を損なう要因ともなり、早急に解決すべき課題と認識しております。
 放置自転車対策は、区市町村が中心となって取り組んでおりますが、やはり鉄道事業者等の関係者も協力して進めることが重要であると思います。都としては、今後とも区市町村や関係機関と連携しながら、効果的な対策の推進に努めていくつもりでございます。
 他の質問については、関係局長が答弁いたします。
   〔交通局長松澤敏夫君登壇〕

○交通局長(松澤敏夫君)放置自転車問題に対するご質問にお答えいたします。
 交通局では、鉄道事業者として、自転車法の趣旨を踏まえまして、区などが駐輪場を設置する場合、積極的に協力することとしております。
 このため、これまで交通局が所管いたします高架下などの用地の提供や、駅の上部空間を利用した地下駐輪場設置のための建設支援、また、駅前放置自転車クリーンキャンペーンへの参加など、各種の対策に取り組んできたところでございます。
 今後とも、公営交通としての立場から、区などとさらに密接な連携を図りながら、引き続き放置自転車対策を進めてまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君)六点のご質問にお答えいたします。
 まず、十条地区におけるまちづくりについてでございますが、当地区は、老朽木造住宅が密集し、都市基盤が脆弱であるなど、防災面での課題が多いため、都の防災都市づくり推進計画におきまして重点整備地域に位置づけております。
 都は、昨年六月に都区連絡会を設置し、これらの課題の解決に向け、木密地域の整備方策などの検討を地元区とともに進めております。また、本年八月に設立された住民主体のまちづくり全体協議会に都も参画するなど、基本構想実現に向けた区の取り組みに対し、積極的に支援してまいります。
 次に、十条駅周辺エリアにおけるまちづくりの進捗状況と今後の取り組みについてでございますが、現在、駅西口では、組合施行による再開発の事業化に向け、相談所の開設や地権者による協議会の発足など、具体的な動きが出てきております。また、東口周辺では、防災性の向上や地域の活性化を図るため、木密事業の導入による主要生活道路や防災広場の整備方策などについて、区とともに検討しております。
 都は今後、区との連携をさらに強化し、駅周辺のにぎわいのある拠点の形成に向けた地元のまちづくりを支援してまいります。
 次に、補助第八三号線の事業化についてでございますが、十条地区を貫く本路線、通称岩槻街道は、道幅も狭く、沿道には小規模で老朽化した住宅が連檐していることから、防災面からも拡幅整備が強く求められており、第三次事業化計画に位置づけられております。
 このため、道路整備に当たりましては、沿道に残る小規模な土地を有効活用し、建物の不燃化や共同化を促進するなど、まちづくりと一体となった取り組みが極めて効果的でございます。今後、地元区と沿道のまちづくりの取り組み方針などの検討を進めるとともに、来年度から地元住民との話し合いに入り、本路線の早期事業化に向け取り組んでまいります。
 次に、上十条五丁目地区等の整備地域の指定についてでございますが、木密地域の改善を効果的に進めていくためには、優先的に整備する地域を定め、事業を集中的かつ重層的に実施することが重要と考えております。このため都は、地元区とも協議の上、昨年三月、整備地域の見直しを行い、防災都市づくり推進計画を改定したところでございます。
 ご指摘の地区の指定につきましては、今後の改定の際に、地震に関する地域危険度や周辺市街地の整備状況等を勘案し、地元区の意見も踏まえ検討してまいります。
 次に、田端二丁目付近土地区画整理事業についてでございますが、当地区は、かつて戦災復興事業として組合施行による区画整理事業に着手いたしましたが、組合設立認可について争いがあり、裁判の結果、認可が取り消された経緯がございます。その後、長期間の事業中断を経て、都が事業を引き継ぐこととなったものでございます。
 都は、土地の複雑な権利関係を整理するため、精力的に地権者と折衝を重ね、ようやく今年度から建物移転に着手する段階に至りました。今後、早期整備を望む地元の要請にこたえられるよう、積極的に移転及び工事を進め、平成二十五年度までに事業を完成させる予定でございます。
 最後に、区画整理区域内における商店街への対応についてでございますが、ご指摘の土地は、地権者からの申し出により、事業化に先立って取得した都有地であり、区画整理事業により区域内の地権者の土地と交換することで、商業用地として再び活用される予定でございます。
 したがいまして、この商店街には点在する空き地がなくなり、連続性が確保できることから、地域にふさわしいまちが再生するものと考えております。
 今後、区画整理事業を進める中で、当該商店街の方々とも十分話し合いながら、新たな活力あるまちづくりの実現に向けて努めてまいります。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君)道路整備に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、補助第七三号線などの用地取得についてでございますが、地域生活を支える基幹的な道路の整備は、防災性の向上や交通の円滑化を図る上で大変重要でございます。お話の補助第七三号線は、今年度末までに五五%、補助第八八号線は四〇%の用地を取得する予定でございます。
 今後とも、関係権利者の意向に配慮しつつ、歩行者空間やバスベイの確保など、事業効果の早期発現につながる用地取得を進め、地元住民の理解と協力を得ながら事業の推進に努めてまいります。
 次に、補助第九二号線の整備方針についてでございますが、本路線は、京浜東北線に沿って北区と台東区を結ぶ幹線道路でございます。このうち、北区中里三丁目から補助第九三号線までの区間につきましては、田端二丁目付近土地区画整理事業の区域に隣接する区間と山手線交差部の区間、合わせて二百九十メートルが第三次事業化計画の優先整備路線に位置づけられております。
 今後、土地区画整理区域に隣接する区間につきましては、区画整理事業の進捗状況に合わせ、街路事業による整備を計画的に行ってまいります。また、橋梁構造となる山手線交差部につきましては、鉄道交差部における空間の確保など、整備に向けた課題の整理を進めてまいります。

〇議長(川島忠一君)四十九番大西由紀子さん。
   〔四十九番大西由紀子君登壇〕

○四十九番(大西由紀子君)生活者ネットワークを代表して質問いたします。
 初めに、パブリックコメント制度について伺います。
 行政手続の透明化を図るとともに、市民のまちづくりへの参画を進める一環として導入されたパブリックコメント制度ですが、東京都は平成十二年、提案型広報マニュアルを作成し、それに基づいて、今まで各局がそれぞれの施策を決定する段階で意見を求めてきました。そこで、まず提案型広報マニュアルに基づいて今までどのような取り組みを進めてきたのか、具体的な各局の取り組みの例を示してお答えください。
 全国の都道府県の大半は、パブリックコメント制度を要綱や指針でしっかり位置づけているのに比べ、私たちが調べたところ、東京都には現在これを所管する部署が見当たらず、受け付け期間もまちまちで、結果の公表や最終的な決定過程が不透明な場合があり、市民参画の保障としては十分とはいえません。
 都議会としても、前期の行財政改革基本問題特別委員会の調査報告書に、住民自治の活性化の方法として、パブリックインボルブメントやパブリックコメントの手法をより広範囲に活用することを明記しております。さらに、国では二〇〇五年六月、行政手続法の一部を改正し、政省令などの命令等を定める際に、広く一般の意見や情報を求める手続を定めたところです。
 そこで、提案型広報マニュアル策定から五年が過ぎた今、現状を分析するとともに、他の自治体や国及び都議会特別委員会の動きを踏まえて、次のステップへつなげていくべきと考えますが、東京都は、今後パブリックコメントをどのように進めるのか、伺います。
 次に、まちづくりについて伺います。
 東京都は、平成九年に景観条例を制定し、多くの自治体が景観条例をつくっているにもかかわらず、十分その効果を上げているとはいえない状況にあります。特に都心部においては、都市再生の名のもとに、規制緩和により建物の高層化、巨大化が進められており、景観がないがしろにされているように思えます。
 先月、景観審議会の中間のまとめが発表され、今後の景観施策のあり方が示されております。昨日も知事は景観について述べておられましたが、改めて知事に都市再生と景観に対する認識を伺います。
 先日、私は、手をつなごう景観市民運動ネットワークの設立集会に出席しました。この会は、大規模開発やマンション建設の反対運動から始まった市民の活動が景観や環境からまちづくりを考える市民運動として手をつなぎ、大きな力となることを目指したものです。こうした市民の関心の高まりを受け、昨年六月、景観法が制定されました。今こそ建築行政や都市計画制度と景観施策を連携させていくことが必要です。
 よい景観は記念碑的な建物にのみ存在するのではありません。日常生活の中でなれ親しんでいる景観を守ることも重要な景観保全です。地域住民の景観に対する合意を高め、地域の特性に合った景観づくりを進めていくために、地元の各自治体が責任を持って担っていくべきと考えます。こうしたことから、景観法の景観行政団体は区市町村が主体的になっていくべきと考えますが、見解を伺います。
 法に裏打ちされて都の景観行政が推進されることを期待する一方、違法行為によって住民生活が脅かされる状況が発生していることは大変遺憾です。耐震データ偽装マンション問題は、被害者救済とあわせて、違法行為を見逃さないため、あらゆる方面からの見直しが必要です。今、表面化している事例は氷山の一角にすぎず、建築基準を満たしていない違法建築はもっとあるのではないかという不信感が広がっていますが、都はどのように対処していくのか。また、こうした都民の不安に対し、相談窓口の設置が必要と思いますが、あわせてご所見を伺います。
 委員会質疑で明らかになったように、都の建築確認行政は年々縮小されていますが、今必要なことは、建築確認制度への信頼の回復です。東京都における建築確認行政の体制の強化及び専門人材の育成が求められていると考えますが、見解を伺います。
 次に、障害者施策について伺います。
 ことし十月に成立した障害者自立支援法については、障害者が自立して暮らせるまちづくりという理念は評価しますが、来年四月施行は余りにも未確定要素が多く、当事者及び関係者に不安が高まっています。特に、障害者の多くが利用する小規模作業所等は都内に約四百カ所あり、約八千人の障害者がさまざまな授産活動を行っています。その多くが法律に基づかない法定外事業であり、親の会などの努力でここまで築き上げてきたものです。障害者自立支援法では、運営主体や施設基準等について規制緩和を行った上で新たな事業を行うとされ、存続が危ぶまれています。今後、小規模作業所についても可能な限り新しいサービス体系に移行させ、法内施設として事業に取り組むことを促進する必要があり、見解を伺います。
 また、障害者雇用促進法の一部が改正され、来年度から障害者雇用率に精神障害者も含まれることになります。精神障害者については、適切な医療が継続的に行われる中で就労を考える必要があり、病状を踏まえた働き方への理解を深めるなど、生活全般にわたって多くの配慮が望まれます。
 今後は、当事者と地域生活をつなぐケアマネジメントが非常に重要な位置を占めていくと考えますが、都はどのように進めていくのか伺います。
 障害者自立支援法の施行を契機に、障害者基本法がその目的とする自立と社会参加を実効性あるものにするためには、社会に根強く残る差別と偏見を払拭することです。今こそ、都に障害者差別禁止条例を制定するべきということを改めて申し上げておきます。
 最後に、食の安全について伺います。
 輸入が停止されていたアメリカ産牛肉について、食品安全委員会の答申を受けて、国はこの十二月に正式に輸入再開を決定するという報道がありました。しかし、食品安全委員会の委員ですら疑問を抱いている結論の出し方や、アメリカにおける牛の飼育方法を考えると、消費者の不安は少しも解消されていないどころか増すばかりです。
 特に、飼料の不透明さや危険部位の除去の不徹底など、日本の厳しい対策とはかけ離れたものです。さらに、二十カ月齢以下としている条件を早くも三十カ月齢に緩和したいというアメリカの本音も聞こえてくる中で、東京都は、食品安全条例を持つ自治体として、都民の食の安全を確保するためにアメリカ産輸入牛肉に対しても責任を持って対応すべきと考えますが、見解を伺います。
 一方、都においては、国産牛の全頭検査を堅持すべきと考えますが、見解を伺います。
 消費者の七五%はアメリカ産牛肉を食べたくないという世論調査も出ております。もし輸入が再開された場合には、消費者の選ぶ権利を保障するために、現地の対策の監視状況などの情報公開の徹底や、現在は義務化されていない加工食品や外食産業などにおいても、原産国表示の義務づけを国に求めていくべきです。
 過日、知事は、東京大マラソンの開催に向けてニューヨークシティーマラソンを視察されました。今回のアメリカ産牛肉の輸入再開に際しては、大消費地東京のトップリーダーとして消費者の不安にこたえるためにアメリカ牛の実態を視察されることを要望し、質問を終わります。
 以上です。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君)大西由紀子議員の一般質問にお答えいたします。
 都市再生と景観に対する認識についてでありますが、国際競争力を備えた魅力とにぎわいのある東京を実現するためには、都市再生を推進する中で良好な景観を形成していくことが不可欠であります。
 アメリカの建築家のフランク・ロイド・ライトや、あるいは社会学者のスーザン・ハンレーが絶賛しておりました幕末の江戸の景観と比べて、今日の東京は個々の建築物の色彩、形態がばらばらでありまして、町並みの統一感がなく、都市全体の景観に対する配慮がいかにも欠けていると思います。
 ちなみに、大西さんがお住まいの国立ですね、あそこに建ったマンション、高層だということで反対で、裁判で上半分削れというむちゃなことになって、どうなるかわかりませんが、しかしそれは、私は眺めて、そうミスマッチじゃないと思いますけど、確かに今までなかった高さでありますが、あの後、国立の目抜きの通りにできた中華料理のチェーン店、何ですか、あれ。数十メートルの真っ黄色な壁で、あれこそ、私、やっぱり景観を損なうミスマッチだと思いますがね。ああいったものは何で許容されるのか。
 これはやっぱり鎌倉などは、早稲田の名誉教授、武さんですか、あの人をオンブズマンに置きまして、ある容積以上の、例えば物置なども審査の対象にしてきたんです。ですから、鎌倉は日本の都市の中で昔の雰囲気を保って、本当にいい、いかにも三大古都の一つでたたずまいを保っておりますけれども、そういった努力を東京全体、あるいは国立でもなさったらいかがかという気がいたしますが。
 他の質問については関係局長から答弁いたします。
   〔生活文化局長山内隆夫君登壇〕

○生活文化局長(山内隆夫君)提案型広報マニュアルによるこれまでの取り組みについてお答えいたします。
 東京都は、従来から開かれた都政への取り組みといたしまして、提案型広報の実施を掲げまして、政策形成過程の情報の積極的な提供に努めてまいりました。平成十二年に作成いたしました提案型広報マニュアルは、各局が提案型広報に取り組むに当たっての参考として、広報広聴手段の活用方法や具体的な取り組み事例などをまとめたものでございます。
 各局においては、計画や施策を策定する際に中間段階の案を公表し、都民の意見を求める提案型広報の手法が定着しておりまして、都民からは多くの意見が寄せられております。
 最近の提案型広報の事例でございますが、具体的な事例といたしまして、情報公開・個人情報保護審議会の中間報告、あるいは次世代育成支援東京都行動計画などについて、報道発表や「広報東京都」、ホームページへの掲載などによりまして、都民への情報提供と意見募集を行い、最終のまとめに反映しているところでございます。
   〔総務局長高橋功君登壇〕

○総務局長(高橋功君)いわゆるパブリックコメントについてでございますが、平成十七年六月、パブリックコメントに関連して意見公募手続を定めた行政手続法の一部を改正する法律が公布されましたが、施行日が示されないなど、いまだ改正内容の詳細は明らかになっておりません。
 都におきましては、これまでも各局で事業の中間段階の公表などを行ってまいりましたが、今回の法改正を踏まえた意見公募手続につきましては、今後検討していくべき課題であると認識をしております。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君)三点のご質問にお答えいたします。
 景観法に定める景観行政団体についてでございますが、法では、一つの行政区域において、都または区市町村のいずれか一方が景観団体となり、景観法に基づく施策を行うこととしております。
 一方、景観には、身近な地域から眺望など広域に及ぶものまで、さまざまな対象がございます。また、東京の町並みは、道路などの行政界を越えて連続しております。都市全体として良好な景観を形成していくためには、施策の対象範囲と目的等に応じて都と区市町村が適切に役割分担を行う必要がございます。
 都は、景観施策を効果的に実施できるよう、大都市東京のこうした実態を踏まえ、区市町村と十分調整し、対応してまいります。
 次に、違反建築物への対応と相談窓口の設置についてでございますが、建築物の安全性を確保するためには、建築確認制度の適正な運用とともに、違反建築対策を強化し、建築規制の実効性を担保することが重要でございます。
 都はこれまで、建築物安全安心実施計画を策定し、警察や消防との連携強化を図るなど、違反建築物の総合的対策を推進してまいりました。また、区や市と連携し、毎年違反建築防止週間を設け、重点的な違反建築物の取り締まりを行ってきたところであります。
 今回の問題を真摯に受けとめ、工事途中のパトロールを充実するなど、違反建築対策に積極的に取り組み、建築物の安全性の確保を図ってまいります。
 また、相談窓口の設置につきましては、現在、都及び多くの区市並びに建築関係団体等において専門の窓口を設置し、都民からの建物に関する相談に当たっております。
 今後とも、都民が安心できるよう適切に対応してまいります。
 最後に、都の建築確認行政における執行体制の強化と人材の育成についてでございますが、建築確認と検査を適切に行うことは、建築物の安全確保の上で重要でございます。都は、建築法規や建築構造に関する知識のある職員を適正に配置し、確認等の業務を行っております。
 今後とも職員の計画的な育成を図り、確認等の業務を適正に執行し、安全なまちづくりに努めてまいります。
   〔福祉保健局長平井健一君登壇〕

○福祉保健局長(平井健一君)四点のお尋ねでございます。
 まず、小規模作業所の法内事業への移行についてでございますが、多くの障害者が利用の小規模作業所は、地域で障害者の福祉的就労を支える大切な役割を果たしておりますが、現在は法律に基づかない事業であるため、運営の安定性の確保が課題となっております。このため、障害者自立支援法に対する国会での附帯決議において、小規模作業所について、新たな施設体系への移行がスムーズに行えるよう必要な措置を講ずることとされております。良質なサービスを提供する小規模作業所が法内事業へスムーズに移行することは重要と考えておりまして、制度の実施に向けた国の動向を見きわめながら、都として適切に対処してまいります。
 次に、精神障害者と地域生活をつなぐケアマネジメントについてでございますが、障害者自立支援法におきましては、障害者の状況やニーズに応じた適切なサービス利用を支援するため、ケアマネジメントが制度化されましたが、継続的な医療を必要とする精神障害者に適切な支援を行うためには、その特性を踏まえたケアマネジメントを担う人材を確保することが重要であります。
 このため、都においては、ケアマネジメント従事者養成研修を再編強化いたしまして、精神障害者の地域生活を支援する人材の養成確保を図ってまいります。
 次に、米国産輸入牛肉についてでございますが、国の食品安全委員会は、米国産牛肉のBSEのリスクについて検討してきましたが、先般、二十カ月齢以下の牛であること及び特定危険部位を除去することなどの前提が遵守されれば、国産牛肉とのリスクの差は非常に小さいとする答申案を示しまして、本日、先ほど答申が出されたと聞いております。
 輸入再開につきましては、今後国が判断することでございますが、食品安全委員会が求める輸入条件が確実に遵守されることが重要であると考えておりまして、都としては国の動向を注視するとともに、今後とも輸入食品の安全確保に万全を期してまいります。
 最後に、国産牛の全頭検査については、厚生労働省令の改正によりまして、本年八月一日から二十カ月齢以下の牛はBSE検査の対象から除外されましたが、都は、都民や事業所の不安解消のため、継続して検査を実施することとしたところでございます。国産牛の全頭検査につきましては引き続き実施してまいります。

○議長(川島忠一君)以上をもって質問は終わりました。

○議長(川島忠一君)これより日程に入ります。
 日程第一から第百三十まで、第百八十七号議案、市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例外議案百二十九件を一括議題といたします。
 本案に関し、提案理由の説明を求めます。
 副知事横山洋吉君。
   〔副知事横山洋吉君登壇〕

○副知事(横山洋吉君)ただいま上程になりました百三十議案についてご説明申し上げます。
 初めに、第百八十七号議案から第二百三十号議案までが条例案でございまして、新設する条例が五件、一部を改正する条例が三十七件、廃止する条例が二件でございます。
 まず、新設する条例についてご説明申し上げます。
 第百九十七号議案の東京都学校経営支援センター設置条例は、都立学校の自律的な学校経営を支援し、教育の充実を図るため、学校経営支援センターを設置いたすことに伴いまして、名称、位置、事業等を規定する条例を新設するものでございます。
 第二百九号議案の東京都市計画事業晴海四・五丁目土地区画整理事業施行規程は、都施行による土地区画整理事業を中央区晴海四丁目付近で実施いたしますので、土地区画整理法の定めに従い、施行規程を定めるものでございます。
 第二百十四号議案の東京都国民健康保険調整交付金条例は、国民健康保険法の一部改正により区市町村に対する交付金制度が新設されますので、同法の規定に基づき条例を新設いたすものでございます。
 このほか、都立産業技術研究所の地方独立行政法人化に伴いまして、所要の手続を規定する条例二件を新設いたします。
 次に、一部を改正する条例についてご説明申し上げます。
 第百八十八号議案の職員の給与に関する条例の一部を改正する条例から第百九十三号議案までの六議案のほか、第百九十九号議案から第二百四号議案までの六議案及び第二百二十六号議案は、東京都人事委員会の勧告に従いまして、今年度の公民較差に基づき職員給与を改正いたしますほか、給与の構造及び制度を職責、能力、業績に応じたものへと見直すことを内容といたしまして改正を行うものでございます。
 第百九十五号議案の東京都都税条例の一部を改正する条例は、自動車保有手続のワンストップサービスの運用開始に伴いまして、自動車税の徴収手続等について規定を整備するものでございます。
 第二百六号議案の東京都立学校設置条例の一部を改正する条例及び第二百七号議案は、都立大島海洋国際高等学校の新設に伴いまして規定を整備するものでございます。
 第二百二十九号議案の性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例の一部を改正する条例は、都民生活の平穏及び清浄な風俗環境の保持を図るため、営業禁止区域等における性風俗営業等への場所の提供の規制を強化いたすものでございます。
 このほかに法令の改正等に伴いまして規定を整備いたすものなど二十件ございます。
 次に、廃止する条例でございます。
 二件でございまして、第二百十八号議案の東京都立産業技術研究所条例を廃止する条例外一件でございます。
 次に、第二百三十一号議案から第二百三十五号議案までが契約案でございます。
 第二百三十三号議案の新海面処分場Gブロック西側護岸建設工事(その一)請負契約など五件、契約金額は総額約七十二億円でございます。
 次に、第二百三十六号議案から第三百十六号議案までの八十一件が事件案でございます。このうち第二百三十七号議案の東京都人権プラザの指定管理者の指定についてを初めといたしまして、七十一件が指定管理者の指定に関するものでございます。それぞれの施設について選定いたしました候補者等につきまして、地方自治法の定めに従い、議決をお願いいたすものでございます。
 このほかの主な事件案でございますが、第二百三十九号議案の神宮前一丁目民活再生プロジェクト事業契約の締結については、同事業を実施するに当たりまして、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に基づき、議決をお願いいたすものでございます。
 第二百七十六号議案及び第二百七十七号議案は、いずれも地方独立行政法人都立産業技術研究センターに関するものでございまして、都から同センターへの権利の承継及び定款について地方独立行政法人法に基づき議決をお願いいたすものでございます。
 以上で説明を終わらせていただきます。よろしくご審議のほどお願い申し上げます。
(議案の部参照)

○議長(川島忠一君)以上をもって提案理由の説明は終わりました。
 なお、本案中、地方公務員法第五条第二項の規定に該当する議案については、あらかじめ人事委員会の意見を徴しておきました。
 議事部長をして報告いたさせます。

○議事部長(松原恒美君)人事委員会の回答は、第百八十八号議案から第百九十二号議案、第百九十九号議案から第二百一号議案、第二百三号議案及び第二百四号議案について、いずれも異議はないとの意見であります。

一七人委任第八八号
平成十七年十一月三十日
 東京都人事委員会委員長 内田 公三
 東京都議会議長 川島 忠一殿
「職員に関する条例」に対する人事委員会の意見聴取について(回答)
 平成十七年十一月二十四日付一七議事第二六三号をもって照会があった議案に係る人事委員会の意見は、左記のとおりです。
       記
   提出議案
一 第百八十八号議案
職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
二 第百八十九号議案
東京都の一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
三 第百九十号議案
東京都の一般職の任期付研究員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
四 第百九十一号議案
職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
五 第百九十二号議案
職員の旅費に関する条例の一部を改正する条例
六 第百九十九号議案
学校職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例
七 第二百号議案
東京都教育委員会教育長の給与等に関する条例の一部を改正する条例
八 第二百一号議案
学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
九 第二百三号議案
学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
十 第二百四号議案
東京都教育委員会職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
   意見
  異議ありません。

○議長(川島忠一君)お諮りいたします。
 ただいま議題となっております日程第一から第百三十までは、お手元に配布の議案付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君)ご異議なしと認めます。よって、日程第一から第百三十までは議案付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託することに決定いたしました。
(別冊参照)

○議長(川島忠一君)これより追加日程に入ります。
 追加日程第一、議員提出議案第二十二号、庶民大増税に反対し、大企業への適正な課税を求めることに関する意見書を議題といたします。
 案文は、お手元に配布いたしてあります。
 朗読は省略いたします。

議員提出議案第二十二号
   庶民大増税に反対し、大企業への適正な課税を求めることに関する意見書
 右の議案を別紙のとおり東京都議会会議規則第十二条の規定により提出します。
  平成十七年十二月八日
(提出者)
河野百合恵 小竹ひろ子 たぞえ民夫
村松みえ子 かち佳代子 植木こうじ
清水ひで子 古館 和憲 松村 友昭
曽根はじめ 大山とも子 吉田 信夫
渡辺 康信
東京都議会議長 川島 忠一殿

   庶民大増税に反対し、大企業への適正な課税を求めることに関する意見書
 小泉首相の諮問機関である政府税制調査会が提出した平成十八年度の税制改正に関する答申は、平成十九年度からの所得税・住民税の定率減税廃止による三兆三千億円もの負担増を始め、住民税のフラット化、公的年金からの住民税天引きの早期実施など庶民に更なる負担を押し付ける方向を打ち出した。
 また、答申は世論に押されて、三年の期限とされた大企業のための研究開発減税上乗せ分とIT投資促進減税の打ち切りを打ち出したが、平成十一年度税制改正による法人税の恒久減税については不問に付し、加えて「競争力向上等の構造改革や経済社会の活性化」のための新たな減税の導入を示唆するなど、これまでの大企業優遇税制を継続し、拡大する立場を明らかにしている。
 答申どおりに定率減税が全廃されることになれば、年収五百万円の四人家族の場合で、年間約三万五千円の増税となる。既に国民は、歴代政府が進めてきた消費税増税、社会保障や医療制度の連続改悪に苦しめられており、答申の方向へ押し進められた場合、庶民の家計を更に冷え込ませ、日本経済を悪化させることは避けられない。
 今、国が行うべきことは、大型公共事業や軍事費などの浪費と無駄遣いにメスを入れるとともに、バブル期を上回る史上空前の利益を上げている大企業に応分の負担を求め、国民のくらしと経済を立て直すことである。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、次の事項を実現するよう強く要請する。
一 定率減税の廃止、住民税のフラット化など庶民増税を行わないこと。
二 消費税の増税を行わないこと。
三 法人税率の引き上げ、各種大企業優遇税制の改善等大企業に適正な負担を求めること。
四 国の減税に対応する地方特例交付金は継続し、減収に見合う財源補てんを行うこと。
 以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
  平成十七年十二月八日
東京都議会議長 川島 忠一
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣 あて

○議長(川島忠一君)本案は、起立により採決いたします。
 本案は、原案のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

○議長(川島忠一君)起立少数と認めます。よって、本案は否決されました。

○議長(川島忠一君)追加日程第二、議員提出議案第二十三号、税財政制度の見直しに関する意見書を議題といたします。
 案文は、お手元に配布いたしてあります。
 朗読は省略いたします。

議員提出議案第二十三号
   税財政制度の見直しに関する意見書
 右の議案を別紙のとおり東京都議会会議規則第十二条の規定により提出します。
  平成十七年十二月八日
(提出者)
遠藤  守  伊藤 興一   田中たけし
鈴木 隆道  宇田川聡史   そなえ邦彦
花輪ともふみ 伊藤 ゆう   原田  大
松葉多美子  大松  成   中山 信行
高倉 良生  早坂 義弘   高木 けい
崎山 知尚  坂本たけし   石森たかゆき
高橋 信博  村上 英子   鈴木あきまさ
佐藤 広典  尾崎 大介   山口  拓
伊藤まさき  松下 玲子   橘  正剛
上野 和彦  吉倉 正美   谷村 孝彦
矢島 千秋  高橋かずみ   山加 朱美
串田 克巳  吉原  修   山田 忠昭
臼井  孝  野島 善司   服部ゆくお
野上ゆきえ  西岡真一郎   吉田康一郎
斉藤あつし  泉谷つよし   くまき美奈子
大西さとる  長橋 桂一   野上 純子
東村 邦浩  小磯 善彦   東野 秀平
松原 忠義  田代ひろし   神林  茂
秋田 一郎  林田  武   きたしろ勝彦
近藤やよい  高島なおき   鈴木 一光
増子 博樹  いのつめまさみ 門脇ふみよし
小沢 昌也  石毛しげる   岡崎 幸夫
山下 太郎  藤井  一   ともとし春久
木内 良明  鈴木貫太郎   こいそ 明
遠藤  衛  倉林 辰雄   川井しげお
三宅 茂樹  樺山たかし   宮崎  章
古賀 俊昭  立石 晴康   桜井  武
初鹿 明博  酒井 大史   大沢  昇
真木  茂  大津 浩子   大塚たかあき
馬場 裕子  石川 芳昭   中嶋 義雄
石井 義修  桜井良之助   比留間敏夫
吉野 利明  新藤 義彦   野村 有信
大西 英男  山崎 孝明   佐藤 裕彦
川島 忠一  内田  茂   三田 敏哉
相川  博  柿沢 未途   中村 明彦
土屋たかゆき 田中  良   名取 憲彦
東京都議会議長 川島 忠一殿

  税財政制度の見直しに関する意見書
 都はこれまで、国から、繰り返し不合理な税財政措置を受けてきた。法人事業税の分割基準見直しを例に取れば、平成十七年度の税制改正により、都は来年度から新たに六百億円もの減収が見込まれ、これまでの措置と合わせると、これだけで一千百億円にも上る減収を強いられることとなる。
 さらに、国の新たな動きとして、全く理屈のない法人住民税の分割基準見直しや、地方特例交付金制度の廃止などが実施される可能性が浮上している。
 これらの見直しが実施されれば、都は貴重な財源を更に失うことになるばかりでなく、東京の活力が失われ、ひいては、我が国全体の活力も低下の一途をたどるという悪循環に陥ることは明らかである。
 根拠のない「東京独り勝ち論」に基づき、都から更に財源を吸い上げて活力を削ぐような見直しは、首都東京の役割を無視した暴挙であり、決して行うべきではない。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、現在、都が被っている不利益を速やかに是正するとともに、今後新たに不合理な税財政措置を行うことのないよう強く要請する。
 以上、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
  平成十七年十二月八日
    東京都議会議長 川島 忠一
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣 あて

○議長(川島忠一君)本案は、起立により採決いたします。
 本案は、原案のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

○議長(川島忠一君)起立多数と認めます。よって、本案は、原案のとおり可決されました。

○議長(川島忠一君)請願及び陳情の付託について申し上げます。
 受理いたしました請願十八件及び陳情十八件は、お手元に配布の請願・陳情付託事項表のとおり、それぞれ所管の常任委員会及び議会運営委員会に付託いたします。
(別冊参照)

○議長(川島忠一君)お諮りいたします。
 明九日から十四日まで六日間、委員会審査のため休会したいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川島忠一君)ご異議なしと認めます。よって、明九日から十四日まで六日間、委員会審査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、十二月十五日午後一時に開きます。
 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後七時十七分散会

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