平成十七年東京都議会会議録第三号

平成十七年三月二日(水曜日)
 出席議員(百十六名)
一番谷村 孝彦君
二番東村 邦浩君
三番村上 英子君
四番秋田 一郎君
五番矢島 千秋君
六番鳩山 太郎君
七番後藤 雄一君
八番福士 敬子君
九番林  知二君
十番伊沢けい子君
十三番山下 太郎君
十五番河野百合恵君
十六番長橋 桂一君
十七番小磯 善彦君
十八番野上じゅん子君
二十一番高橋かずみ君
二十二番山加 朱美君
二十三番小美濃安弘君
二十四番吉原  修君
二十五番山田 忠昭君
二十六番臼井  孝君
二十七番林田  武君
二十九番山口 文江君
三十番柿沢 未途君
三十一番初鹿 明博君
三十二番酒井 大史君
三十三番清水ひで子君
三十四番かち佳代子君
三十五番小松 恭子君
三十六番東野 秀平君
三十七番藤井  一君
三十八番ともとし春久君
四十一番野島 善司君
四十二番真鍋よしゆき君
四十三番松原 忠義君
四十四番田代ひろし君
四十五番三宅 茂樹君
四十六番川井しげお君
四十七番鈴木 一光君
四十八番吉野 利明君
四十九番こいそ 明君
五十番執印真智子君
五十一番花輪ともふみ君
五十二番真木  茂君
五十三番大津 浩子君
五十四番大塚 隆朗君
五十六番古館 和憲君
五十七番松村 友昭君
五十八番丸茂 勇夫君
五十九番木内 良明君
六十番鈴木貫太郎君
六十一番森田 安孝君
六十二番石川 芳昭君
六十三番土持 正豊君
六十四番倉林 辰雄君
六十五番遠藤  衛君
六十六番鈴木あきまさ君
六十七番近藤やよい君
六十八番串田 克巳君
六十九番中屋 文孝君
七十番三原 將嗣君
七十一番樺山たかし君
七十二番田島 和明君
七十三番宮崎  章君
七十四番大西由紀子君
七十五番樋口ゆうこ君
七十六番中村 明彦君
七十七番馬場 裕子君
七十八番和田 宗春君
八十番大山とも子君
八十一番東ひろたか君
八十二番池田 梅夫君
八十三番中山 秀雄君
八十四番大木田 守君
八十五番前島信次郎君
八十六番桜井良之助君
八十七番新藤 義彦君
八十八番星野 篤功君
八十九番いなば真一君
九十番高島なおき君
九十一番服部ゆくお君
九十二番古賀 俊昭君
九十三番山本賢太郎君
九十四番立石 晴康君
九十五番清原錬太郎君
九十六番小山 敏雄君
九十七番大山  均君
九十八番大河原雅子君
九十九番田中  良君
百番小林 正則君
百一番藤川 隆則君
百三番曽根はじめ君
百四番渡辺 康信君
百五番秋田かくお君
百六番中嶋 義雄君
百七番石井 義修君
百八番橋本辰二郎君
百九番藤井 富雄君
百十番桜井  武君
百十一番野田 和男君
百十二番野村 有信君
百十三番比留間敏夫君
百十四番大西 英男君
百十五番山崎 孝明君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番田中 晃三君
百二十一番藤田 愛子君
百二十二番尾崎 正一君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番富田 俊正君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番木村 陽治君

 欠席議員(二名)
十一番 新井美沙子君
十二番 相川  博君
 欠員
十四番  十九番  二十番
二十八番 三十九番 四十番
五十五番 七十九番 百二番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事福永 正通君
副知事濱渦 武生君
副知事大塚 俊郎君
副知事竹花  豊君
出納長櫻井  巖君
教育長横山 洋吉君
知事本局長前川 燿男君
総務局長赤星 經昭君
財務局長松澤 敏夫君
警視総監奥村萬壽雄君
主税局長山口 一久君
生活文化局長山内 隆夫君
都市整備局長梶山  修君
環境局長平井 健一君
産業労働局長関谷 保夫君
建設局長岩永  勉君
港湾局長成田  浩君
交通局長松尾  均君
水道局長高橋  功君
消防総監白谷 祐二君
福祉保健局長幸田 昭一君
下水道局長二村 保宏君
大学管理本部長村山 寛司君
病院経営本部長押元  洋君
中央卸売市場長森澤 正範君
新銀行設立本部長津島 隆一君
選挙管理委員会事務局長高橋 和志君
人事委員会事務局長佐藤  広君
労働委員会事務局長久保田経三君
監査事務局長高橋 道晴君
収用委員会事務局長嶋津 隆文君

三月二日議事日程第三号
第一 第一号議案
平成十七年度東京都一般会計予算
第二 第二号議案
平成十七年度東京都特別区財政調整会計予算
第三 第三号議案
平成十七年度東京都地方消費税清算会計予算
第四 第四号議案
平成十七年度東京都小笠原諸島生活再建資金会計予算
第五 第五号議案
平成十七年度東京都母子福祉貸付資金会計予算
第六 第六号議案
平成十七年度東京都心身障害者扶養年金会計予算
第七 第七号議案
平成十七年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
第八 第八号議案
平成十七年度東京都農業改良資金助成会計予算
第九 第九号議案
平成十七年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
第十 第十号議案
平成十七年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
第十一 第十一号議案
平成十七年度東京都と場会計予算
第十二 第十二号議案
平成十七年度東京都都営住宅等事業会計予算
第十三 第十三号議案
平成十七年度東京都都営住宅等保証金会計予算
第十四 第十四号議案
平成十七年度東京都都市開発資金会計予算
第十五 第十五号議案
平成十七年度東京都用地会計予算
第十六 第十六号議案
平成十七年度東京都公債費会計予算
第十七 第十七号議案
平成十七年度東京都多摩ニュータウン事業会計予算
第十八 第十八号議案
平成十七年度東京都市街地再開発事業会計予算
第十九 第十九号議案
平成十七年度東京都臨海都市基盤整備事業会計予算
第二十 第二十号議案
平成十七年度東京都病院会計予算
第二十一 第二十一号議案
平成十七年度東京都中央卸売市場会計予算
第二十二 第二十二号議案
平成十七年度東京都都市再開発事業会計予算
第二十三 第二十三号議案
平成十七年度東京都臨海地域開発事業会計予算
第二十四 第二十四号議案
平成十七年度東京都港湾事業会計予算
第二十五 第二十五号議案
平成十七年度東京都交通事業会計予算
第二十六 第二十六号議案
平成十七年度東京都高速電車事業会計予算
第二十七 第二十七号議案
平成十七年度東京都電気事業会計予算
第二十八 第二十八号議案
平成十七年度東京都水道事業会計予算
第二十九 第二十九号議案
平成十七年度東京都工業用水道事業会計予算
第三十 第三十号議案
平成十七年度東京都下水道事業会計予算
第三十一 第三十一号議案
平成十六年度分の都と特別区及び特別区相互間の財政調整の特例に関する条例
第三十二 第三十二号議案
都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例
第三十三 第三十三号議案
特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十四 第三十四号議案
東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例
第三十五 第三十五号議案
東京都人事行政の運営等の状況の公表に関する条例
第三十六 第三十六号議案
東京都職員定数条例の一部を改正する条例
第三十七 第三十七号議案
職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第三十八 第三十八号議案
東京都の一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十九 第三十九号議案
東京都の一般職の任期付研究員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四十 第四十号議案
東京都知事の給料等の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四十一 第四十一号議案
東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十二 第四十二号議案
職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十三 第四十三号議案
東京都非常勤職員の公務災害補償等に関する条例の一部を改正する条例
第四十四 第四十四号議案
災害派遣手当の支給に関する条例の一部を改正する条例
第四十五 第四十五号議案
東京都国民保護対策本部及び緊急対処事態対策本部条例
第四十六 第四十六号議案
東京都国民保護協議会条例
第四十七 第四十七号議案
東京都統計調査条例の一部を改正する条例
第四十八 第四十八号議案
東京都人権プラザ条例の一部を改正する条例
第四十九 第四十九号議案
審理、喚問、聴聞等に出頭した者及び公聴会に参加した者の費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第五十 第五十号議案
東京都都税条例の一部を改正する条例
第五十一 第五十一号議案
東京都収入証紙条例の一部を改正する条例
第五十二 第五十二号議案
東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例
第五十三 第五十三号議案
東京都江戸東京博物館条例の一部を改正する条例
第五十四 第五十四号議案
東京都写真美術館条例の一部を改正する条例
第五十五 第五十五号議案
東京都現代美術館条例の一部を改正する条例
第五十六 第五十六号議案
東京都美術館条例の一部を改正する条例
第五十七 第五十七号議案
東京文化会館及び東京芸術劇場条例の一部を改正する条例
第五十八 第五十八号議案
東京都育英資金条例
第五十九 第五十九号議案
学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
第六十 第六十号議案
学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第六十一 第六十一号議案
都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例の一部を改正する条例
第六十二 第六十二号議案
東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第六十三 第六十三号議案
東京都立学校の授業料等徴収条例の一部を改正する条例
第六十四 第六十四号議案
東京都立学校校外教育施設設置条例の一部を改正する条例
第六十五 第六十五号議案
東京都体育施設条例の一部を改正する条例
第六十六 第六十六号議案
東京都文化財保護条例の一部を改正する条例
第六十七 第六十七号議案
東京都立埋蔵文化財調査センター設置条例の一部を改正する条例
第六十八 第六十八号議案
東京都屋外広告物条例の一部を改正する条例
第六十九 第六十九号議案
東京都都市整備局関係手数料条例の一部を改正する条例
第七十 第七十号議案
東京都営住宅条例の一部を改正する条例
第七十一 第七十一号議案
東京都福祉住宅条例の一部を改正する条例
第七十二 第七十二号議案
東京都引揚者住宅条例の一部を改正する条例
第七十三 第七十三号議案
東京都特定公共賃貸住宅条例の一部を改正する条例
第七十四 第七十四号議案
東京都地域特別賃貸住宅条例の一部を改正する条例
第七十五 第七十五号議案
東京都小笠原住宅条例の一部を改正する条例
第七十六 第七十六号議案
東京都リハビリテーション病院条例の一部を改正する条例
第七十七 第七十七号議案
東京都立心身障害者口腔保健センター条例の一部を改正する条例
第七十八 第七十八号議案
東京都児童福祉施設条例の一部を改正する条例
第七十九 第七十九号議案
東京都婦人保護施設条例の一部を改正する条例
第八十 第八十号議案
東京都障害者スポーツセンター条例の一部を改正する条例
第八十一 第八十一号議案
東京都肢体不自由者自立ホーム条例の一部を改正する条例
第八十二 第八十二号議案
東京都身体障害者更生援護施設条例の一部を改正する条例
第八十三 第八十三号議案
東京都知的障害者援護施設条例の一部を改正する条例
第八十四 第八十四号議案
東京都児童相談所条例の一部を改正する条例
第八十五 第八十五号議案
東京都障害者施策推進協議会条例の一部を改正する条例
第八十六 第八十六号議案
公衆浴場の設置場所の配置及び衛生措置等の基準に関する条例の一部を改正する条例
第八十七 第八十七号議案
東京都薬事審議会条例の一部を改正する条例
第八十八 第八十八号議案
旅館業法施行条例の一部を改正する条例
第八十九 第八十九号議案
食品衛生法施行条例の一部を改正する条例
第九十 第九十号議案
食品製造業等取締条例の一部を改正する条例
第九十一 第九十一号議案
東京都立看護専門学校条例の一部を改正する条例
第九十二 第九十二号議案
東京都軽費老人ホーム条例を廃止する条例
第九十三 第九十三号議案
東京都心身障害者福祉作業所条例の一部を改正する条例
第九十四 第九十四号議案
東京都薬物の濫用防止に関する条例
第九十五 第九十五号議案
東京都しごとセンター条例の一部を改正する条例
第九十六 第九十六号議案
東京都立食品技術センター条例の一部を改正する条例
第九十七 第九十七号議案
東京都立産業貿易センター条例の一部を改正する条例
第九十八 第九十八号議案
東京都工場立地法地域準則条例
第九十九 第九十九号議案
東京都農業関係試験等手数料条例
第百 第百号議案
改良普及員の資格試験に関する条例を廃止する条例
第百一 第百一号議案
東京都農業振興事務所設置条例の一部を改正する条例
第百二 第百二号議案
東京都立技術専門校条例の一部を改正する条例
第百三 第百三号議案
東京都労政会館設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例
第百四 第百四号議案
東京都中央卸売市場条例の一部を改正する条例
第百五 第百五号議案
東京都地方卸売市場条例の一部を改正する条例
第百六 第百六号議案
東京都立芝浦屠場条例の一部を改正する条例
第百七 第百七号議案
東京都港湾管理条例の一部を改正する条例
第百八 第百八号議案
東京都漁港管理条例の一部を改正する条例
第百九 第百九号議案
東京都海上公園条例の一部を改正する条例
第百十 第百十号議案
東京都港湾区域及び港湾隣接地域占用料等徴収条例の一部を改正する条例
第百十一 第百十一号議案
東京都海岸占用料等徴収条例の一部を改正する条例
第百十二 第百十二号議案
都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例
第百十三 第百十三号議案
東京都都民の森条例の一部を改正する条例
第百十四 第百十四号議案
東京都自然公園条例の一部を改正する条例
第百十五 第百十五号議案
東京都廃棄物条例の一部を改正する条例
第百十六 第百十六号議案
東京都浄化槽保守点検業者の登録に関する条例の一部を改正する条例
第百十七 第百十七号議案
東京都駐車場条例の一部を改正する条例
第百十八 第百十八号議案
東京都特殊車両通行許可申請手数料徴収条例の一部を改正する条例
第百十九 第百十九号議案
東京都立公園条例の一部を改正する条例
第百二十 第百二十号議案
東京都葬儀所条例の一部を改正する条例
第百二十一 第百二十一号議案
東京都霊園条例の一部を改正する条例
第百二十二 第百二十二号議案
警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第百二十三 第百二十三号議案
警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例
第百二十四 第百二十四号議案
東京消防庁職員定数条例の一部を改正する条例
第百二十五 第百二十五号議案
火災予防条例の一部を改正する条例
第百二十六 第百二十六号議案
都営住宅十六H―一〇七東(百人町四丁目第四)工事請負契約
第百二十七 第百二十七号議案
都営住宅十六H―一〇三東(板橋清水町)工事請負契約
第百二十八 第百二十八号議案
警視庁小岩警察署庁舎(H十六)改築工事(その二)請負契約
第百二十九 第百二十九号議案
警視庁三田警察署庁舎(H十六)改築工事(その二)請負契約
第百三十 第百三十号議案
警視庁有家族待機宿舎三田住宅(仮称)(H十六)新築工事(その二)請負契約
第百三十一 第百三十一号議案
平成十六年度新海面処分場Gブロック西側護岸(二重鋼管矢板式)建設工事(その一)請負契約
第百三十二 第百三十二号議案
平成十六年度新海面処分場Gブロック西側護岸(二重鋼管矢板式)建設工事(その二)請負契約
第百三十三 第百三十三号議案
包括外部監査契約の締結について
第百三十四 第百三十四号議案
全国自治宝くじ事務協議会への静岡市の加入及びこれに伴う全国自治宝くじ事務協議会規約の一部の変更について
第百三十五 第百三十五号議案
平成十六年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担の変更について
第百三十六 第百三十六号議案
平成十七年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担について
第百三十七 第百三十七号議案
平成十六年度東京都一般会計補正予算(第二号)
第百三十八 第百三十八号議案
平成十六年度東京都特別区財政調整会計補正予算(第一号)
第百三十九 第百三十九号議案
平成十六年度東京都地方消費税清算会計補正予算(第一号)
第百四十 第百四十号議案
平成十六年度東京都都営住宅等事業会計補正予算(第一号)
第百四十一 第百四十一号議案
平成十六年度東京都都市開発資金会計補正予算(第一号)
第百四十二 第百四十二号議案
平成十六年度東京都公債費会計補正予算(第一号)
第百四十三 第百四十三号議案
平成十六年度東京都都市再開発事業会計補正予算(第一号)
第百四十四 第百四十四号議案
平成十六年度東京都高速電車事業会計補正予算(第一号)
第百四十五 第百四十五号議案
平成十六年度東京都下水道事業会計補正予算(第一号)
第百四十六 諮問第一号
地方自治法第二百四十四条の四の規定に基づく審査請求に関する諮問について
第百四十七 地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した平成十六年度東京都一般会計補正予算(第一号)の報告及び承認について

   午後一時一分開議

○議長(内田茂君) これより本日の会議を開きます。

○議長(内田茂君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(内田茂君) この際、会議録署名議員の変更について申し上げます。
 今回の定例会の会議録署名議員には、相川博君外一名を議長において指名いたしてありますが、本日の会議に限り、相川博君から十三番山下太郎君に変更いたします。ご了承願います。

○議長(内田茂君) 昨日に引き続き質問を行います。
 七十番三原將嗣君。
   〔七十番三原將嗣君登壇〕

○七十番(三原將嗣君) 最初に、いわゆる脱法ドラッグの取り締まり条例について質問をいたします。
 この案件は、私がここ数年、最も情熱を傾けてきた問題でありますので、幾らか経過を振り返りながら質問をいたしたいと思います。
 平成十四年六月の本会議で石原知事に、脱法ドラッグという違法性のある麻薬類似品が販売されているので、取り締まり条例をつくるべきではと初めて質問をいたしました。そのとき知事は、質問をいただくまで残念ながら不明にして存じませんでしたと答弁されたぐらいですから、政治や行政の中では脱法ドラッグの重大性が認識されておりませんでした。しかし、国に先んじて東京都が条例でそれを規制するということは必要ではないかと知事から答弁をいただき、日本で初めて条例化への動きが始まりました。
 私も提案者として、脱法ドラッグ売買の現場を視察したり、専門家の意見も聞いて関係当局を督励してまいりました。しかし、行政の動きは鈍く、昨年の三月、あえて私は予算特別委員を希望して、再び知事に直接、事の重大性を訴えたわけであります。その席で知事は、一年以内にやるよ、こう約束をされました。その後、脱法ドラッグの服用者が殺人事件を起こしたり、新聞の社説で脱法ドラッグ取り締まりを論ずるまでに、世論も関心を持ってまいりました。そして、十一月に、東京都薬事審議会の答申を得て、薬物の乱用に対し的確かつ迅速に対応するため、東京都薬物の濫用防止に関する条例としてこの定例会に提案されたわけであります。
 こうした都の動きに刺激されたのか、厚生労働省も昨年の秋ごろから脱法ドラッグの規制をしたいと発言をし始め、先日は検討会の初会合を開いたそうであります。これは石原知事の、国がやらなければ東京が先にやるという姿勢に対する意趣返しのような気がしますが、知事はどう思われますでしょうか。
 また、この条例は、青少年初め都民の健康と安全を守るに当たって大いに成果が期待されると思いますが、所見を伺います。
 また、八都県市などに知事から呼びかけられて同一歩調をとられると、もっと効果が上がると思いますが、いかがでしょうか。
 さて、条例の内容について局長に伺います。この条例では、知事指定薬物を規制の対象にするわけですが、指定のための意見具申をする東京都薬物情報評価委員会が効果的、機動的に開催されなければ、取り締まりのタイミングを失いますが、その運用方法を伺います。
 また、薬物の乱用防止を図るため、必要な体制を整備し、監視、指導の効果を上げるためにも体制を整備するとしていますが、おのおのいかなる体制を整えるのか、お答えください。
 次に、条例では、知事指定薬物の製造、栽培、販売、授与、またはその目的での所持、広告、使用の場所提供またはあっせんが禁止されていますが、知事が警告を発し、従わない者に命令を発するとなっています。しかし、警告、命令と手順を踏んでいては、取り締まりの成果が上がらないのではないかと思いますが、いかがでしょう。
 また、インターネット等による広告、販売をどう取り締まることができるのかも、あわせて伺います。
 また、販売のための場所提供や授与の中で、友人への無償提供のような場合は、条例に明文化されていませんが、どう解釈して取り締まるのか、伺います。
 一方、私はこの条例ができたことで、脱法ドラッグに対する取り締まりが容易になり、効果が出てくると思いますが、取り締まりの現場を監督される警視総監に所見を伺って、次に移ります。
 去る二月十日の夕方、北区浮間の温泉掘削現場で地中から天然ガスが噴き出して火災が発生するという事故があったことは記憶に新しいと思います。
 そこで、東京都心における温泉掘削について質問いたします。関東南部には、南関東ガス田地域があるそうで、地下約二千メートルまで掘ると、天然ガスが溶けた地下水が噴き出てくるそうであります。そこで、市街地での温泉掘削の安全対策に万全を期すべきは当然であります。先日の事故から、東京都では早速専門家による検討委員会が設置され、抜本的な安全対策を考えるとのことでありますが、少なくとも隣接住宅より五十メートル以上離すことや、天然ガスへの引火を完全に防止するため火気厳禁策を明確にすべきですが、見解を伺います。
 次に、温泉掘削そのものの制限とくみ上げ量の制限をすべきだと思います。実は、私は、平成十年三月の本会議で、地盤沈下につながるような都心での温泉掘削に何らかの対応をすべきであるとの質問をいたしました。その結果、平成十年七月より、くみ出し動力装置の吐出部の口径制限と一日のくみ上げ量の制限を初めて決定しました。しかし、平成十三年から温泉掘削の申請が急に三倍ぐらいにふえまして、年間十件前後となっています。現在、区部での源泉数は五十九件です。そして、その温泉の用途は、一般の銭湯からレジャー施設へと移って、最近は温泉つきマンションの建築へと移っています。こうなりますと、次々と都心で温泉が掘削され、温泉つきマンションが乱立することは目に見えておりますので、私は、今こそ温泉掘削の制限を再び加える時期に来ていると思います。
 幸いにして、東京都は昨年、専門家の研究会報告に基づいて、去る一月に東京都自然環境保全審議会から答申を得ています。それによれば、新たに温泉を掘削する場合は、既存源泉との間に一定以上の距離をとる、あるいは、個人利用の場合は、くみ上げ温泉量の上限を設定するというふうに書いてありますが、この答申に基づく行政指導を早急に実施すべきですが、決意を伺います。
 しかし、幾ら一定の制限がされるとはいえ、地球の表面に次々と穴をあけて、科学的に未確定の地下資源をまさに湯水のごとく浪費してよいものでしょうか。やがて地盤沈下や地殻変動を起こし、地球環境を損なうことは明白であります。地球の限りある資源を守るという観点から、環境局長の所見を伺います。
 そこで、知事にお尋ねしますが、今温泉掘削の許可は福祉保健局で処理しています。これは温泉を公衆衛生の観点から見てのことですが、実際に温泉として利用するときは保健所の許可なのです。現実には、土地の掘削許可と、くみ上げ動力設置の許可は、いずれも環境局所管の自然環境保全審議会が実権を持っています。ちなみに、国でも温泉法は環境省が所管しています。よって、東京都は許可事務を速やかに福祉保健局から環境局に所管がえすべきだと思いますが、知事の決断をお聞かせください。
 次に、豊洲新市場についてお尋ねをします。
 昨年の七月、現在の築地から豊洲に市場を移す基本計画が決定されました。この計画の中で、新市場の果たすべき機能についていろいろ書いてありますが、これには効率的な流通システムと安全・安心の市場という大きな柱があると思います。
 豊洲新市場の建設には、新しい時代に向かった柔軟な発想による対応が必要だと思いますが、特に新市場の建設に当たっては、旧来のような役所丸抱えの施設ではなく、公共と民間の役割分担を考える必要があると思います。例えば加工施設などは、付加価値施設として、民間活力導入という立場から、市場業者が整備するといわれていますが、市場業者の体質も大変厳しい現況から、東京都が十分な指導、援助を行わなければならないと思いますので、その所見を伺います。
 同時に、今から最も重要視して検討しなければならないのが、豊洲新市場の開設に伴う周辺市場への影響であります。築地市場は面積二十三ヘクタール、年間約六千億円の取引といわれていますが、豊洲新市場は面積ももっと広く、売り上げも築地市場を上回ることが予想されます。そうなりますと、周辺の、葛西、足立、大田といった市場が大きなダメージを受けると思います。したがって、新市場が開業してからその影響を判断するのは遅過ぎますので、今の段階から科学的に影響を予測し、周辺市場への対策を十分実施して、市場の開場と同時にその対策効果が出るようにすべきだと思いますが、中央卸売市場長の見解を伺います。
 最後に、最近マスコミ報道を見て気になることをお尋ねしますが、それは臓器移植のことであります。
 幼い子どもが生まれながらにして難病で、臓器移植以外に救う道がないとなると、海外で手術を受けるために一億円余のお金が必要といわれています。そこで、家族や友人は募金を募ります。それをマスコミの方がうまく報道でもしてくださればよいのですが、それもかなわないと、一億円は夢のような大金で、この子どもの命は救えなくなります。あえて、一億円の献金を忘れたり、マネーゲームに明け暮れするような人に聞かせてやりたい話であります。
 十五歳未満の子どもさんの臓器提供は、法律の改正を待つしかありませんけれども、実は大人の臓器提供もなかなか普及しません。平成九年の移植法施行以来、脳死判定者はわずか三十五例ですが、移植待機の患者は約一万三千人おられます。人の死につきましては、医学上の問題とか、臓器の提供には倫理観、宗教観といった個人的な理由、あるいは本人と家族の意思疎通といった問題もあります。しかし、何はともあれ、都民が臓器移植で人の命を救うということに関心を持ち、臓器提供意思表示カードをみずから持つことだと私は思います。これらの普及推進月間もありますが、東京都は具体的にどう対応しておられるか、伺います。
 私は、あえて、知事を初め、議員諸君、そして都庁の職員、警察、消防、学校の先生、合計約十七万人の東京都の公務員がこのカードを持つ運動をしたらよいのではないか、こう思います。実は私も、六年前からこの臓器提供意思表示カードを身辺離さずこのように持っています。知事にも今見本を差し上げましたが、知事とか局長さん等がこのカードを持っていただいて、都庁挙げて人の命の大切さを思う気風を養うことも重要ではないか、こう思いますが、知事の所見を伺って、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 三原將嗣議員の一般質問にお答えいたします。
 いわゆる脱法ドラッグ条例についてでありますが、かねがねいっておりますように、東京という首都は、日本の社会のいいところ、悪いところ、非常に先鋭にあらわれてくるところでありまして、脱法ドラッグもまたそのあしき典型的な例だと思います。これに対する関心、さらに取り締まりは、本来は国がやるべきことだと私は思いますが、それに先駆けて都の条例化に促されまして、国もようやく事の重大さに気がついて検討を始めたようであります。これは都から国を動かしたという点で大きな成果だと思いますが、何といっても、提案者の三原議員の功績だと私は思います。
 条例の目的に示したとおり、今後、脱法ドラッグを厳格に取り締まることによりまして、薬物の乱用から青少年の健康と安全を守ることができると思いますし、健全育成の観点からも有効であると認識しております。いずれにしろ、脱法ドラッグ──どうもこの脱法ドラッグという呼称そのものが非常に紛らわしくて、つまり、脱法ということなら合法なのか、そういう錯覚を招きかねませんが、いずれにしろ、この問題の解決のためには、広域的な対応が重要でありまして、近隣自治体に対して都の取り組み状況などの情報提供に努めております。先般も、隣県の神奈川県、埼玉県──千葉県はおられませんでしたが、この両者と、あることで会いましたときにも、ぜひこれは首都圏の広域行政としてやろうということで、二人とも同意をしてくれました。恐らく千葉県も異存ないと思いますが、やはり広域行政の一つのパターンというものをつくっていきたいと思います。
 次いで、温泉掘削等の許可事務の所管についてでありますが、とにかく日本人は温泉が好きですし、また日本のどこを掘っても実は温泉が出る。特に技術が進みまして、掘削の価格も安くなったせいで、私の聞き知るところでも、八王子の駅前の土地の所有者が再開発するために掘ったら、これが温泉が出た。あるいは、昔住んでおりました逗子でも、マンションのために地下水を掘ろうと思ったら温泉が出てしまって、市長が慌てて、それが宣伝されると、小さな町ですから、いたずらに混雑するので、ふたをしてほしいというようなこともあったようでありますが、いずれにしろ、温泉は地球の恵みでありまして、限りある資源だと思います。
 こうした状況の中で、当然地下水というものの活用というものは、都市において有効な手段の一つだと思いますけれども、地下水のつもりが実は温泉出たという、喜ぶべきか皮肉というか、そういう現象も多々ございまして、いずれにしろ、その組織についてもそうした観点から一般的に対応できる体制を検討しなくてはならないと思います。
 私、運輸大臣のときに提唱しまして、やっと知事になってから最近、実現になりました深度の地下権の放棄、つまり、深度に鉄道を通す云々の事業も当然考えられますが、そのときにまた温泉のボーリングというものとの抵触も考えられますし、非常に多角的、複合的な要因があると思いますので、東京都においてどの局が担当するか、あるいは局をまたいだそういう総括的な部署というものを設けるべきか、これから鋭意検討をしたいと思っております。
 次いで、臓器移植についてでありますが、私もこれ、非常に関心ございまして、日本で最初に、阪大の緊急病棟の教授の杉本君が初めて脳死の私案というものを発表して、ちょっと問題になりました。そのとき私も、興味がありましたので、初めて阪大に行って杉本さんからいろいろ意見を聞きましたが、彼も、つまり、脳死を前提とした臓器の提供というものはこれから大きな大きな問題になってくるので、そのためにもまず脳死というものの規定をする必要があると思って、自分はこういう私案を出したといっておりましたが、いずれにせよ、だれでも人は死ぬわけであります。そのときみずからの臓器を提供するか否かは、個人の倫理観、宗教観にも根差すところがあるでしょうが、しかし、昔から、死んで花実があるものかといいますけれども、死んだ後、自分の遺体というものが他人の生命というものを再生させるためにつながるということは、これは本当に好ましいことだと私は思います。
 今、いただきました。私も早速、これ、アプライしようと思いますけれども、一、二、三とあって、三番目は、私は臓器提供しませんとあるんですな。こんな項目は削ってカードをつくったらどうなんでしょうか。
 いずれにせよ、都は、都として、こういったものが敷衍し、失われるはずの人命が保たれるということのために行政としてもいろんなお力添えをしたいと思っております。都は臓器移植を望む患者さんたちのためにも、今後ともこのカードの普及を推進してまいります。
 他の質問については警視総監及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監奥村萬壽雄君登壇〕

○警視総監(奥村萬壽雄君) 薬物濫用防止条例の施行に伴う取り締まりについてお答えをいたします。
 いわゆる脱法ドラッグにつきましては、ご案内のとおり、覚せい剤や麻薬と同じ作用がありながら、化学構造がちょっと違っているということなので、これまで現行の法令では取り締まることができなかったのでありますが、この条例が施行されますと、知事指定薬物に指定することによりまして、その製造、販売などを取り締まることが可能となるわけであります。合法ドラッグなどと称しましてこうしたものを売っておりますアダルトショップ等の業者につきましては、この条例を積極的に適用いたしまして、取り締まりを行いまして、青少年を初めとする薬物乱用防止に資してまいりたいと思っております。
   〔福祉保健局長幸田昭一君登壇〕

○福祉保健局長(幸田昭一君) 脱法ドラッグほか福祉、保健、医療に関します七点のご質問にお答えいたします。
 まず、薬物情報評価委員会の運用についてでありますが、脱法ドラッグの危険性を判断するためには、専門的な知識や見識が必要であります。このため、薬物に関する学識経験者から成る委員会を設置し、知事指定薬物の指定に当たって委員会の意見を聞くこととしたものであります。具体的な運用としては、指定対象となる脱法ドラッグに関する科学的な情報などを速やかに収集、整理した上で、委員会を随時開催し、迅速に知事指定薬物を指定できるように努めてまいります。
 次に、薬物の乱用防止のための体制整備についてでありますが、薬物の乱用防止に当たっては、現在設置されている東京都薬物乱用対策推進本部を中心に、庁内及び関係機関の連携、協力を強化し、普及啓発や取り締まりなどの対策を総合的かつ計画的に推進してまいります。また、脱法ドラッグに対する監視、指導に当たりましては、薬事監視員が中心となりまして、立入調査権を積極的に活用するなど、条例の規定を最大限に活用して、効果的な取り締まりを実施してまいります。
 次に、知事指定薬物の取り締まりについてでありますが、薬物の乱用から都民の健康と安全を守るため緊急を要する場合などは、違反者に対して、警告を行うことなく、製造、販売などの中止を命令いたします。また、悪質な違反行為については、直ちに警察に告発するなど、条例に基づき、厳正かつ迅速に対処していきます。さらに、インターネット広告や販売に対しても、随時に監視をし、都内で営業している場合は、直ちに立入調査を行うなど、脱法ドラッグの取り締まりを強力に実施してまいります。
 次に、販売場所の提供などの取り締まりについてでありますが、販売場所を提供する行為や無償で譲渡する行為についても、条例で取り締まりの対象となります。
 次に、温泉掘削における安全対策についてでありますが、今回の火災を契機といたしまして、市街地における安全性を担保するため、地質学や土木技術、消防など幅広い分野の専門家で構成する安全対策検討委員会を直ちに設置いたしました。今後、この委員会において、ご提案を含め、多様な観点からの検討を行い、温泉掘削に当たっての安全基準のガイドラインを作成し、掘削事業者に対し周知徹底を図ることにより、事故の再発防止はもとより、安全対策に万全を期してまいります。
 次に、自然環境保全審議会答申についてでありますが、答申では、温泉資源の保全等の観点から、新たに温泉を掘削する場合、掘削深度に応じた源泉間の距離制限を設けること、また、温泉の個人利用に当たっては適正な使用量を設定することなどの提言がなされました。今後、この提言につきましては、まちづくりや都市整備事業などとの調整を図り、地下資源の保全に配慮しつつ、具体化に努めてまいります。
 最後に、臓器提供意思表示カードについてでありますが、都では、平成九年の臓器移植法施行時より、毎年十月の臓器移植普及推進月間を中心として、関係機関への呼びかけや、患者団体などと協力し、臓器提供意思表示カードの都民への普及啓発を行っております。平成十年からは、都民に周知するため、十月の「広報東京都」に同カードを刷り込み、都内全戸に配布しているほか、区市町村及び運転免許試験場などにおいて、同カードを現在までに約八十二万枚配布したところでございます。今後とも、臓器移植について、より多くの都民の理解が得られるよう、同カードの普及啓発を推進してまいります。
   〔環境局長平井健一君登壇〕

○環境局長(平井健一君) 温泉のくみ上げについてのご質問でございますが、都は、平成十年に、地盤沈下防止の観点から、温泉法に基づく、動力装置の許可に係る審査基準を定めまして、温泉のくみ上げ量を制限しております。また、環境確保条例では、井戸の設置者に対しまして、温泉を含む地下水のくみ上げ量の報告を義務づけております。現在、地盤沈下は沈静化している状況にございますが、今後、温泉も含めた地下水の適正管理のあり方について検討する必要があると考えております。
   〔中央卸売市場長森澤正範君登壇〕

○中央卸売市場長(森澤正範君) 豊洲新市場に関するご質問にお答えいたします。
 まず、市場業者による施設整備についてでありますが、加工、パッケージ施設などの付加価値施設を市場業者が主体となって整備することは、これまでの経験を生かした創意工夫が発揮できることや、将来の経営を見通した施設づくりが可能となるなど、利点が多いものと考えております。しかしながら、これらの施設も、新しい基幹市場に求められる機能や、食の安全・安心の確保、市場施設としての一体性などの観点から整備される必要があります。このため、都としても、円滑に市場建設が行えるよう指導、調整を行うとともに、より利用しやすい市場用地貸付制度の検討や、整備手法のノウハウの提供などの支援にも積極的に取り組んでまいります。
 次に、新市場建設に伴う他市場への影響と対策であります。豊洲新市場の取扱数量の設定は、現在の築地市場とほぼ同程度でありますが、新たな流通環境の変化に対応する拠点市場として整備いたしますので、比較的近い距離にある市場に影響を与えることが十分考えられます。このため、影響を受けると思われる市場については、引き続き取扱量の予測、小売業者等の動向などについて調査をしてまいります。さらに、それぞれの市場が果たしている役割や機能などについて、総合的に勘案し、各市場の機能強化または再編・統合など、必要な対応策について、新市場建設の進捗に合わせて検討してまいります。

〇議長(内田茂君) 二十一番高橋かずみ君。
   〔二十一番高橋かずみ君登壇〕

○二十一番(高橋かずみ君) 当面する都政の課題について質問をいたします。
 都知事並びに教育長、消防総監及び関係局長の誠意あるご答弁をお願いいたします。
 最初に、行政改革についてお尋ねいたします。
 社会の変化に対応して、行政も不断の改革に取り組まなければならないことはいうまでもありません。平成十七年度予算案において、都税収入の増加を見込んでおりますが、税収の増減に一喜一憂することなく、着実に改革を進めていくことが重要と考えます。
 現在、都は、平成十五年十一月に策定いたしました第二次都庁改革アクションプランに基づいて行政改革を進めているところでありますが、そこでは二百八十九の実施施策を掲げており、この計画期間は平成十五年度から十八年度であり、今年度末にその半ばが過ぎようとしております。
 そこでまず、その進捗状況を伺います。
 また、このアクションプランの中では、平成十八年四月までに指定管理者制度を導入することとしており、そのため、本定例会に三十三件の条例改正が提案されております。
 しかし、今回の改正は、既に管理委託を行っている公の施設に関するものであり、直営の施設は今回の導入の対象外であると仄聞しております。行政改革の視点に立てば、現在直営である施設についても運営の見直しを行い、指定管理者制度の活用を積極的に検討すべきではないかと考えますが、所見を伺います。
 石原知事は、平成十一年に就任以来、一万七千五百三十六人の定数削減を達成し、また、都市整備局や福祉保健局のように、組織の統廃合にも取り組んでおります。行政改革には、こうした人や経費の削減も大切でありますが、仕事のやり方そのものの見直しも重要な要素であると考えます。
 その面からすれば、民間活力の活用は大きな柱の一つであり、今述べた指定管理者制度も、民間の創意工夫を公の施設管理に生かしていこうとするものであります。公の施設の管理でさえ民間に門戸が開かれたわけでありますから、ほかの行政分野でも民間開放をさらに進めていくべきと考えますが、石原知事の見解を伺います。
 次に、教育問題についてお尋ねいたします。
 子どもは社会の宝、国の宝であり、学校や家庭、地域など、社会全体で、新しい時代を切り開く、心豊かでたくましい人材を育てることが、教育に課せられた責務であると考えております。
 昨年十二月には、相次いで二つの国際機関により、世界の児童生徒の学力に関する調査結果が公表され、我が国の児童生徒の学力が低下傾向にあることが判明いたしました。
 また、過日、読売新聞が実施した世論調査結果が報道され、子どもたちの学力低下について不安に感じるとした人が八割、ゆとり教育を評価しない人が七割を超えていることもわかりました。
 これまで、都教育委員会は、ゆとりの中で子どもたちに確かな学力を身につけさせるため、学力調査のほか、習熟の程度に応じた少人数指導を実施しております。
 我が党としては、少人数指導が極めて有効であり、今後さらに充実を図り、学力低下の不安を払拭すべきであると考えますが、見解を伺います。
 現在、国においては、総合的な学習の時間の意義を認めた上で、時間数などを検討する動きがあると聞いております。そこで、総合的な学習の時間の実施状況と成果についてどのように認識しているのか、見解を伺います。
 平成十四年度には、完全学校週五日制を実施しておりますが、当初から、授業時間数が削減され、子どもたちの学力低下に対する不安が大きかったと認識しております。国の審議会では、学校週五日制のもとでの土曜日や長期休業期間中の活用方法に関して審議を開始すると聞いております。このような中、一部の都立高校では既に土曜授業を実施しております。
 そこで、生徒の学力向上のためには、都立高校において積極的に土曜授業を行うべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、震災対策と消防団についてお尋ねいたします。
 昨年末、国の中央防災会議は、今後三十年以内に、マグニチュード七クラスの首都直下地震が発生する確率は七〇%とし、都心西部を震源とする地震が発生した場合には、最悪で一万三千人の死者が出るという被害想定を発表しております。このような震災のときに最も頼りになるのは、地域に密着している消防団であると考えております。
 私も、消防団員として、ことしで二十五年目になりました。その経験を踏まえ、生の消防団員の声として質問させていただきます。
 消防団員は、生業の傍ら、いざ災害が発生すると、一人でも多くの都民の生命、身体、財産を守るため、昼夜を問わず出場しております。こうした活動を支える施設が、災害が起きたときに活用する可搬ポンプなど資機材が収納されている分団施設であります。分団施設は、災害以外にも、訓練や警戒あるいは会合などの活動拠点となっており、消防団員にとってなくてはならない重要な施設であります。
 私は、平成十四年第三回定例会で、分団施設の整備について質問したところ、消防総監から、老朽、狭隘等を考慮し、給排水設備等を備えた施設として改築していくという前向きな答弁をいただきました。
 また、分団格納庫には電源すら備えておらず、夜間の出場の際には懐中電灯で対応しなければならない状況であったため、昨年末、東京消防庁にその対応をお願いしたところであります。
 二十三区内には四百三十九の分団があり、消防団員の活動の拠点となる分団本部は、会議のできるスペースを持つ施設として整備されてきております。ここ数年は、財政状況等によるものと思いますが、年にたった二棟分の予算しかつかない状況でありましたが、我が党の強い要望で、平成十七年度の予算案では、十棟分と大幅に増加されると聞いております。
 しかし、古くて狭い分団本部の施設はまだまだ数多く、すべての分団に会議スペースのある分団本部が設置されるまでには、あと何十年かかるかわからない状況にあり、さらに施設の整備を強力に推し進めていく必要があると考えます。
 そこで、さきの定例会における私の質問以降の分団施設の整備状況について伺います。
 また、消防団員は、災害時に役立つ多くの情報を持ち、火災や水災時にはもちろんのこと、訓練、各種行事の警戒など、日ごろから大変な努力を重ねており、その活動は、今後、いつ発生するかわからない首都直下地震が発生したとき、大きな力となると考えます。
 そこで、東京消防庁は震災時に消防団にどのような活動を期待しているのか、伺います。
 次に、都市農業振興施策についてお尋ねいたします。
 東京の農業は、一千二百万都民の目の前で生産活動を行う、食料生産の最前線として、重要な役割を果たしてきております。
 また、生産の基盤である農地は、ヒートアイランド現象の緩和、都市環境の保全、都民の農業との触れ合い、特に、子どもたちに食べ物の大切さを教え、豊かな情操をはぐくむ場となるなど、多面的な機能を持っており、このような農地を後々の代までも後継者に引き継げるような方策が必要と考えております。
 都市農業の主な生産基盤である生産緑地は、高い税負担に悩む農家を救う極めて重要なものでありますが、東京都は約三千七百五十ヘクタールを有し、全国の四分の一を占めております。
 国は、食料・農業・農村基本法に初めて都市農業の振興を明記したものの、振興施策は極めて限定されたものにとどまっていると聞いております。
 私は、都市農業については、東京都が全国をリードするという気概を持って、振興施策を積極的に実施していくべきであると考え、一昨年、我が党の同志とともに、都市農政を考える議員連盟を立ち上げ、農業者との意見交換を行いながら、課題の解決に力を注いでまいりました。
 そこで、伺います。都はこれまでも独自の振興施策を実施していますが、今後の事業展開の基本的な考え方についてお聞かせください。
 私の地元である練馬区では、活力ある農業経営育成事業を活用して、地域で生産された農産物を地域で消費する、地産地消の拠点となる共同直売所の整備が進んでおります。
 さらに、農地を効率的に活用する栽培ハウスの整備など、施設園芸が進展してきております。現在は、イチゴを地元の新たな特産物にしようと頑張っている後継者、ブルーベリーの摘み取り園を開設しようと計画している意欲的な農業者がおります。まさに、活力ある農業経営育成事業は、こうした農業者を支援し、東京の特性を踏まえた農業を実現する上で重要な施策であり、ぜひとも充実、拡充させる必要があると考えます。
 そこで、都では本事業の見直しを行っていると聞いておりますが、どのように再構築していくのか、伺います。
 さて、多くの農家が厳しい経営を強いられている東京の農家の収益拡大、経営安定のためには、限られた農地での生産性の向上を初め、ブランド農産物や都民ニーズにこたえる安全で安心な生産技術の継続的な開発が求められます。このため、農業試験場を初めとする試験研究機関の役割が今後一層重要になると考えております。
 都では、試験研究機関の抜本的な改革に取り組んでいるとのことでありますが、これらの試験場をどのように改革し、都民の役に立つ試験研究を実現しようとしているのか、伺います。
 次に、水道事業についてお尋ねいたします。
 水道局では、平成九年に東京水道新世紀構想という、今後四半世紀を見据えた長期施設整備構想を策定しております。この間、国では、重点課題を明示した水道ビジョンを策定するとともに、水道サービス全体を指標化していく動きがあると聞いております。また、首都直下地震の切迫性が指摘される中、防災対策を強化していく必要があります。
 このように、水道事業を取り巻く環境は大きく変化してきております。
 そこで、都民にもわかりやすい新たな指標を盛り込んだ上で、長期的な施設整備に係る考えを改めて明らかにしていく必要があると思いますが、見解を伺います。
 また、今後の水道施設の整備を考えますと、昭和三十年代から四十年代に建設された施設が多くを占めているため、施設の更新が集中し、膨大な資金の需要が想定されます。こうした負担を将来の世代に押しつけるような構想になってはいけないと思います。
 そこで、提案いたしますが、これまで水道局では、都財政の厳しい状況にあった昭和五十四年から、水源地域の整備に要する資金を新規水源開発引当金として積み立ててきております。都は、戸倉ダム建設からの撤退を表明しておりますが、今後手続が進めば、包括外部監査でも指摘されているとおり、引当金の扱いについて検討が必要になると考えます。将来の更新需要を考えた場合、こうした資金をそのための財源として積み立てておくことも有効な手段と考えられますが、見解を伺います。
 最後に、まちづくりについてお尋ねいたします。
 まず、都市計画道路の整備についてでありますが、私の地元練馬区は、都市計画道路の完成率が四二%と、区部平均五七%と比べ著しく低く、限られた幹線道路に自動車交通が集中し混雑しているため、幹線道路の早期整備が求められております。
 そこで、練馬インターチェンジ付近の渋滞解消に寄与する重要な骨格幹線道路である放射七号線の今後の取り組みについて伺います。
 あわせて、目白通りや川越街道との間に位置し、区部北西部の道路ネットワークを強化する放射三五、三六号線の今後の取り組みについて伺います。
 また、こうした事業の実施に当たっては、地域の特性に配慮して進めることが重要であります。環状八号線では、平成十七年度末の開通に向けて着実に工事が進んでおりますが、地元には、既存道路が分断されることや騒音の影響などを心配する声があります。
 そこで、練馬区内の環状八号線の整備に当たってはどのように沿道に配慮しているのか、伺います。
 また、外環については、広域的な観点から、練馬区内の交通問題を改善する上で大きな役割を果たすことが期待されておりますが、どのような取り組みが行われているのか、伺います。
 次に、都営地下鉄大江戸線の大泉学園町方面への延伸については、練馬区北西部の交通不便地域の解消や沿線まちづくりの起爆剤としての役割が期待されております。
 地元練馬区では、地下鉄の導入空間ともなる補助第二三〇号線のうち、土支田中央地区で、今月中にも事業認可を得て、土地区画整理事業を進める予定と聞いております。そこで、この区画整理事業とあわせて、笹目通りから土支田通りまでの間の補助第二三〇号線で、新たな事業手法である、いわゆる沿道一体整備が進められておりますが、これまでの取り組みと今後の見通しを伺います。
 また、区画整理事業や沿道一体整備と連動して、交通局は、大江戸線の延伸が早期に事業化できるよう、必要な準備を急ぐべきと考えますが、所見を伺います。
 一方、西武池袋線の連続立体交差事業は、都の努力により、桜台駅から練馬高野台駅間が既に完成し、踏切除却による交通渋滞の緩和と沿線でのまちづくりが進み、地元住民も大変喜んでおります。
 それに続く練馬高野台駅から大泉学園駅間については、平成十五年四月に国の新規着工準備箇所として採択され、都においても都市計画手続が進められておりますが、これまでの取り組み状況と、早期の事業実施に向けた今後の取り組みについて、また、今回の事業による効果について伺います。
 これで、私の一般質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕 

○知事(石原慎太郎君) 高橋かずみ議員の一般質問にお答えいたします。
 行政分野におけるさらなる民間開放についてでありますが、都はこれまでも、都民サービスの充実と東京の再生という都民からの負託にこたえるため、事業のあり方にまで踏み込んで行政改革を積極的に進めてまいりました。
 例えば、もとの都庁舎である、その跡にできました国際フォーラム、これは、私の就任前の六年間、何と一銭の償却もせずに、ほとんど何の宣伝、事業展開もせずに、座っているだけで、まあ、ああいう一等地でありますから、貸し小屋するだけで、ある程度の収益があって、三千万の法人税を年間払ってた。これは私の目の届かぬところでありますが、やはり外部監査を入れてみて、指摘されて、愕然として、結局、民営化し、丸紅の前の会長であります鳥海氏に委託しまして、都からも幹部を派遣して、立派に収益を上げて、税金も払い、償却もし、運営されておりますが、今後さらに行政サービスの効率化を進めるためには、民間の知恵やノウハウをより積極的に活用することが重要だと思っております。
 公民の役割分担を再点検し、民間が行えることは民間にゆだねるとともに、真に行政が
担うべきことは何かという視点から、徹底して改革を進めていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、少人数指導の充実についてでございますが、少人数指導は、習熟の程度等に応じまして学習集団を適宜編成し、児童生徒一人一人にわかる授業を行うものでございまして、確かな学力を身につけさせるためには極めて有効な指導方法とされております。
 昨年六月に発表されました国の少人数学級と少人数指導との比較調査では、小中学校ともに、学力の形成において少人数指導が極めて有効であると報告をされておりますし、また、本年一月に発表された国の学力向上に関する意識調査におきましても、学習内容がよくわかるようになった、先生の話をよく聞くようになったなど、児童生徒や教員から、少人数指導を評価する回答が大半を占めており、少人数指導が効果的な指導方法として広く受け入れられていることが明らかになりました。
 今後とも、小中学校における少人数指導を一層充実させるための指導事例集を作成するなど、区市町村教育委員会と連携して、児童生徒の確かな学力の向上を図ってまいります。
 次に、総合的な学習の時間の実施状況とその成果についてでございますが、総合的な学習の時間は、児童生徒がみずから課題を見つけ、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てる上で重要な教育活動でございます。
 平成十五年度に都教育委員会が実施をした調査では、総合的な学習の時間において、国際理解、環境、進路等の学習が地域や学校の実態に応じて実施されており、児童生徒が周囲の事象に関心を持ち、意欲的に学習するようになったこと、主体的に情報を集める力がついたことなどの成果が明らかになっております。
 しかしながら、一部の学校におきましては、指導方法、指導体制、学習評価などが十分ではない事例も見られますことから、今後、都教育委員会としましては、各学校における総合的な学習の時間を、教科と関連をさせながら、組織的、計画的に実施するよう指導してまいります。
 最後に、都立高校における土曜授業についてでございますが、現在、保護者や生徒の意向など、地域の実態を踏まえまして、校長が必要と判断した五校の都立高校におきまして、月二回程度、土曜日の授業を試行し、生徒の学力向上や進路実現に向けた特色ある教育活動を実施いたしております。
 また、多くの都立高校では、学力向上のための補習や講習、部活動やボランティア活動などを土曜日にも行っております。
 こうした実態がありますので、今後、学校週五日制の趣旨を踏まえつつも、土曜授業試行校等の成果と課題を検証しまして、国の動向を見据えながら、土曜日の授業のあり方について具体的に検討してまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 行政改革についての二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、アクションプランの進捗状況でございますが、十五年度末の時点では、総施策数二百八十九のうち、東京国際フォーラムにおけるネーミングライツの導入や都債発行制度の改革など五十六施策を実施いたしました。残る二百三十三施策につきまして、昨年十一月に中間調査を行いましたが、その結果では、おおむね順調に取り組みが進んでおります。
 都庁改革を確実に実施していくため、引き続き各局に働きかけ、施策を着実に進めてまいります。
 次に、直営の公の施設への指定管理者制度の活用についてでございますが、現在、管理委託を行っております施設につきましては、地方自治法に定めます経過措置期間中に指定管理者制度へ移行させることが必要であり、今回、そのための条例改正を提案しております。
 今後、直営で運営しております施設につきましても、各施設の性格や目的を踏まえながら、指定管理者制度の活用が効果的なものについては、制度の導入を検討してまいります。
   〔消防総監白谷祐二君登壇〕

○消防総監(白谷祐二君) 消防団に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、消防団の分団施設の整備状況についてでありますが、平成十四年第三回定例会以降におきまする特別区消防団の分団施設の整備につきましては、平成十六年度末までに、分団本部施設十五棟、防災資機材格納庫十六棟、プレハブ格納庫三十二棟の改築等を行い、四十七の消防署所の会議室を分団本部施設として整備してまいりました。さらに、機能改善として、二十八棟に衛生設備を設置してまいりました。
 平成十七年度は、分団本部施設につきまして、老朽化したものから優先し、関係機関の協力を得ながら、これまで以上により一層の整備に努めてまいります。
 次に、震災時の消防団活動への期待についてでありますが、消防団は、地域の実情に精通し、発災後即時に対応できますことから、震災時におきましては、発災直後における被害情報等の収集、地域住民への出火防止の呼びかけや初期消火、さらには、延焼拡大を阻止する消火活動や倒壊建物からの救助、救護活動など、幅広い震災活動を期待しております。
 このように、消防団は、地域防災の担い手として必要不可欠な存在であると強く認識しております。
 当庁といたしましては、今後も消防団との連携を強化し、震災時におきまする被害の軽減を図るよう一層努力してまいります。
   〔産業労働局長関谷保夫君登壇〕

○産業労働局長(関谷保夫君) 都市農業振興施策に関する三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、都市農業振興の今後の事業展開についてでございますが、都内の農地が減少を続ける中、農地の保全が重要な課題となっており、遊休農地の活用や生産緑地への追加指定などを進めてまいります。
 同時に、農地の保全のためには、経営として成り立つ農業の確立と担い手の確保が必要となります。そのため、農家の経営改善への意欲にこたえ、生産性の向上や流通コストの低減など、収益性の高い農業経営の取り組みを支援してまいります。
 また、後継者育成や新たな担い手を確保する視点から、研修の充実にとどまらず、農業分野への参入がスムーズに行われるような仕組みづくりに取り組んでまいります。
 次に、活力ある農業経営育成事業の再構築についてでございますが、都市農業の活性化に向けた農業者による意欲的な取り組みや、将来を見据えた持続可能な農業の確立への取り組みを柔軟に支援する観点から見直しを行いました。
 具体的には、原則、複数の農家によるグループを補助対象としておりましたが、これを改め、一戸の農家であっても、革新的な技術など先駆的な取り組みは支援することにし、農業者の使い勝手がよくなるよう配慮をいたしました。
 また、未利用資源の堆肥化など、環境面での積極的な対応について新たに支援の対象とするなど、メニューを充実いたしました。
 さらに、事業規模を拡充し、多くの要望にこたえ得る新たな事業、魅力ある都市農業育成対策事業として再構築し、実施していく考えでございます。
 最後に、試験場の改革による役に立つ試験研究の実現についてでございますが、現在、東京の農林水産業は、輸入農畜産物等の増加による価格の低迷などを背景に、経営の危機に立たされております。
 こうした中、農業試験場等に対する生産現場の要求は切実であり、これまで以上に現場の声を重視し、生産性向上や収益拡大のための後継品種の開発等、真に都民の役に立つ成果を的確かつ迅速に示す必要がございます。
 このため、研究課題を抜本的に見直し、農業、畜産、林業の三試験場を統合して、研究力の総合的な向上を図るとともに、東京都農林水産振興財団に運営委託し、外部の人材や資金の機動的確保による研究の高度化を目指してまいります。
   〔水道局長高橋功君登壇〕

○水道局長(高橋功君) 水道施設の整備に関する二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、長期的な施設整備についてでございます。
 水道局では、平成九年に策定しました東京水道新世紀構想に基づきまして、高度浄水処理の導入や送配水管ネットワークの整備など、施設整備を積極的に進めてきており、これらの諸事業は着実に進捗しております。
 今後は、大規模浄水場等の更新が集中的に到来する時期を迎えることへの対応や、震災、危機管理対策の一層の充実などが求められております。
 こうした状況を踏まえまして、この構想のさらなる進捗を図るため、長期的な施設整備方針を早期に策定する必要があると考えております。その際、ご指摘のわかりやすい新たな指標を盛り込むなど、今後とも広く都民の理解を得ながら、必要な事業を着実に実施してまいります。
 次に、将来の施設更新需要の財源についてでございます。
 浄水場等の大規模施設の更新需要は、今後増加を続け、平成三十年代にピークを迎える見込みであり、そのために多額の財源が必要となります。
 そこで、施設の更新を実施するに当たりましては、その優先順位を明確にするとともに、事業の年度間の平準化を図った上で、更新に必要な財源については、企業債などを基本に確保していくことになります。
 ご提案の新規水源開発引当金の活用につきましては、将来の財政負担を軽減するための有効な方策として、今後積極的に検討していきたいと考えております。こうしたさまざまな方策を講ずることによりまして、将来の水道施設の更新需要に的確に対応してまいります。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君) 道路に関する三点の質問にお答えします。
 まず、放射七号線の今後の取り組みについてでございますが、本路線は、千代田区九段下から練馬区を経て多摩北部地域に至る路線でございます。このうち、唯一現道のない、練馬区の北園交差点から西東京市境までの二キロを整備することで、練馬インターチェンジ付近の渋滞は大幅に緩和されます。そのため、早期事業化に向け、今年度実施した現況測量に引き続き、事業の進め方や用地補償などに関する個別相談会を今月開催いたします。
 十七年度には用地測量などを実施し、地元の理解と協力を得ながら、引き続き積極的に取り組んでまいります。
 次に、放射三五号線及び三六号線の取り組みについてでございますが、これらの路線は、練馬区北部と池袋を結び、都市の骨格を形成する幹線道路として、道路交通の円滑化はもとより、地域の発展に寄与する重要な路線でございます。
 このうち、放射三五号線の川越街道から有楽町線平和台駅までの一・四キロにつきましては、昨年十二月、事業認可を取得し、本年二月、用地説明会を開催いたしました。今後、早期完成を目指し、東京都道路整備保全公社を活用するなど、用地取得を集中的に進めてまいります。
 また、放射三六号線の未整備区間は、三五号線に接続する道路として早期整備が必要であり、三五号線の進捗状況も踏まえ、事業化に努めてまいります。
 最後に、環状第八号線の沿道への配慮についてでございますが、整備に当たっては、南田中に設置したインフォメーションセンターなどを活用し、情報提供や意見交換を行うとともに、地元区やPTAと連携を密にし、地域の方々に親しまれる道路づくりを進めてまいりました。
 具体的には、騒音対策として、全線にわたり低騒音舗装を採用いたします。また、高松地区では、緑豊かな環境施設帯の整備や遮音壁を設置いたします。さらに、南田中地区では、地元の意向を踏まえ、小学校の通学路となる二カ所で歩道橋を設置いたします。今後とも全力を挙げて、十七年度の全線開通に向け整備を進めてまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) まちづくりに関する四点のご質問にお答えいたします。
 まず、外かく環状道路の取り組みについてでございますが、外環は、首都圏の渋滞解消や環境改善はもとより、沿線地域の交通問題の解決にも大きく寄与する路線であり、早期整備が不可欠であると認識しております。
 外環の計画づくりに当たりましては、都民の理解と協力を得ることが重要であり、地元での説明会を順次行い、意向把握に努めているところであります。今後、インターチェンジの設置箇所や形状などについて、外環の基本的な方針を取りまとめ、広く都民の理解と協力を得て、計画の具体化を図ってまいります。
 次に、補助第二三〇号線の整備と沿道のまちづくりについてでございますが、この都市計画道路は、練馬区北西部の道路ネットワークを形成するとともに、地下鉄大江戸線の導入空間ともなる幹線道路であります。
 この路線のうち、笹目通りから土支田通りまでの間は、区施行の区画整理事業による区間を除き、平成十六年度内に現況測量を完了する予定でございます。また、都と区が連携してまちづくり懇談会を開催し、沿道の土地利用や民間開発の誘導などを、関係権利者とともに検討しているところでございます。
 平成十七年度は、区画整理事業などと整合を図りながら、引き続き道路整備と沿道のまちづくりを一体的に進めてまいります。
 次に、西武池袋線連続立体交差化の取り組みについてでございますが、練馬高野台駅から大泉学園駅までの連続立体交差化は、昨年一月に都市計画素案の説明会、九月には都市計画案・環境影響評価書案の説明会を行うなど、都市計画及び環境影響評価の手続を進めてきております。
 今後の取り組みにつきましては、本年五月の都市計画審議会の議を経て、都市計画決定の告示の後、速やかに必要な手続を進め、平成十九年度の事業着手を目指してまいります。
 最後に、今回の事業による効果についてでございますが、本事業は、練馬高野台駅から大泉学園駅までの連続立体交差化と、練馬高野台駅から石神井公園駅までの複々線化を行うものであります。
 本事業による効果としては、まず、富士街道を初め、都道第四四四号線などの踏切による交通渋滞が解消されること。また、西武池袋線により分断されている市街地の一体化が図られること。さらには、ラッシュ時に四割程度の増発が可能となり、混雑緩和など輸送サービスの向上が図られること等々でございます。
   〔交通局長松尾均君登壇〕

○交通局長(松尾均君) 大江戸線の大泉学園町方面への延伸についてでございますが、これまで地質調査などを実施するとともに、補助第二三〇号線の地下利用について国の地下空間利用計画に位置づけるなど、許可取得のための諸準備を進めてまいりました。
 今後も、区画整理事業や沿道まちづくりと一体となった街路整備などによる導入空間確保の状況等を踏まえ、地元区や関係局と連携して、事業化についての検討を引き続き進めてまいります。

〇議長(内田茂君) 五十九番木内良明君。
   〔五十九番木内良明君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○五十九番(木内良明君) 初めに、災害要援護者、いわゆる災害弱者への支援についてであります。
 災害発生時に、高齢者、障害者、乳幼児、病人など、いわゆる災害弱者の方々のこうむる犠牲と被害の実態は、一般の人々よりも極めて深刻であります。
 例えば、昨年七月の新潟・福島豪雨あるいは福井豪雨では、亡くなられた方々の八五%が六十五歳以上の高齢者であり、中でも七十五歳以上の被災が多かったとの調査結果が出ています。また、十年前の阪神・淡路大震災では、犠牲者の半数以上が六十歳以上の方であり、障害者の死亡割合も健常者の数倍ともいわれております。
 そこでまず、こうした災害時における弱者対策の重要性について知事の所見を伺います。
 都においては、平成五年度に東京都災害弱者防災行動マニュアルを策定し、また平成十二年度には、このマニュアルの改訂版として、災害弱者や援助者にとっての行動指針となる災害要援護者防災行動マニュアルへの指針を作成しています。
 しかし残念なことに、この指針は地震対応を基本としたものであって、集中豪雨下での避難方法の記述がないなど、それぞれの災害の特性に対応した実践的なものにはなっていないのであります。作成から既に五年が経過し、新潟中越地震において高齢者に多く見られた余震の多発によるショック死、あるいは自家用車での長期避難が原因となったエコノミークラス症候群など、激しい揺れや避難方法が心身に与える影響やその対策についても触れられてはいません。
 そこで、平成十二年の行動マニュアルへの指針を改定して、災害の特性に応じた記述や新たな知見に基づく対応を盛り込み、より実践的な指針にする必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 区市町村の取り組みとして、マニュアルに基づいて災害要援護者登録制度や防災市民組織の結成などを実施するものとしています。しかし、こうした実施は義務化されていません。さらに、この登録制度は、災害弱者がみずから名簿への登録を希望して行われるものであって、これでは災害弱者の全体像が把握できないなど、制度としての限界があるといわざるを得ないのであります。どういう地域に高齢者、障害者が住んでおられるかなど、日ごろからの正確な情報の掌握が万全な対策につながります。
 そこで、災害時における援護活動が十分に進められるために、防災関係機関と福祉関係機関などとの間で情報を共有するなど、災害弱者に対する情報を把握する仕組みを至急構築すべきであると考えますが、所見を伺います。
 さらに、見過ごすことのできない課題は、二次的災害弱者が生み出される過程であります。病院が被災者でパンク状態であったため透析できなかった透析患者の方々、あるいは避難所が二階に設置されたため避難所に入れなかった足の不自由な方、放送が聞き取れずに救援物資が受け取れなかった聴覚障害者の方など、多くの事例が報告されているのであります。
 都では既に、緊急時の東京消防庁への通報システムを初め、高齢者、障害者の二次避難所への移送体制を整備しております。また、通常の避難所の管理運営についても、医療救護所の設置、居室水準やプライバシーの確保などが規定された避難所管理運営の指針を策定しています。しかし、仮に規定が十分に整備されたとしても、実際の災害現場における運用の実効性は、すぐれて救護活動に当たる関係者の適切な対応いかんにかかっております。
 そこで、今後は、新たな知見に基づくマニュアルの整備に加えて、災害弱者に対する訪問支援の充実や、手話通訳者などの専門的な人材を育成し、災害弱者を十分ケアできる体制を整備するなど、保健、医療、福祉の面でより一層きめ細やかな対応策を講ずるべきと考えます。方針を明らかにされたいと思います。
 次に、港湾物流における電子化の推進と保安対策の両立についてであります。
 今、世界の港湾情勢を俯瞰すると、長年トップ集団を形成してきた香港、シンガポール港に対して、中国の上海港、深港が年率三〇%もの成長で猛追するなど、いわば戦国時代に突入しているのであります。
 我が国港湾が国際競争の荒波の中で生き抜いていくためには、コスト低減や貨物通過時間の短縮化はもとより、流通、在庫管理の合理化など、世界規模で進む物流改革の動向に的確に対応していくことが不可欠でありますし、とりわけ今や国際標準となりつつある物流情報の電子化の推進は、喫緊の課題といえます。
 しかしながら、例えば港湾手続の電子化の指標とされるEDI化率が依然として三〇%弱にとどまるなど、我が国港湾における電子化は遅々として進んでいないのが実態です。この背景には、韓国などでは政府が主導して強力にシステム統一を行ってきたのに対して、我が国ではシステム統一を促すリーダーシップが不足してきた経過があります。
 このままでは、我が国は港湾物流分野の後進国になりかねません。この意味から、今こそ危機感を持って、全国主要港湾が一致協力して電子化、標準化の取り組みを行うべきであり、また同時に、この対応は待ったなしの局面を迎えているといっても過言ではないと思います。もとより、日本のトップ港湾である東京港が、この港湾物流の電子化の分野においても先導的役割を果たすべきであると私は強く訴えるものであります。所見を伺います。
 また、港湾物流におけるIT化への取り組みは、単に物流の効率化にとどまらず、水際で進められている保安対策の強化にも資するものでなければなりません。昨年七月に発効した改正SOLAS条約に基づいて、東京港においても延長十二キロのフェンスが設置されるなど、ハード整備が完了した今、ソフト面でのセキュリティー対策の充実が求められています。
 都は昨年秋に、円滑な物流と保安対策の確立に向けて全国主要港湾と連携し、車両の出入管理の標準化に着手していますが、さらに充実したふ頭のゲートシステムの構築など、国及び主要港湾管理者とも連携して、IT活用による物流の効率化と保安対策の両面での施策を推進すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、都営住宅の事業再建者向け定期使用住宅について伺います。
 これは、長期不況により中小企業の倒産が続いている現状を踏まえ、事業の破綻により住宅を失うことになった経営者で、再建に向けて意欲的に取り組む方々を居住面から支援する制度でありまして、平成十四年の予算特別委員会におきまして、私の強い主張に対する知事の英断で実現を見たものであります。再チャレンジの意欲があれば社会がこれを応援するという、いわば敗者復活への制度であり、全国的な注目を集めて、昨年二月の募集からスタートいたしました。
 まず、経済活性化に資する敗者復活、再チャレンジの可能な社会システムづくりに対する知事の所見を改めて伺います。
 この制度は、第一回の募集に際しては、問い合わせ件数は実に九十件を数え、関係者の大きな関心の高さが示されましたが、実際の入居者はゼロでありました。その後、昨年八月、そして本年二月の募集でもゼロ実績が続いてきております。
 希望者が多いにもかかわらず入居実績に反映されない理由として、経営する企業が民亊再生法による再生計画の認可決定を受けていることという申込資格のハードルの高さを指摘する声が、零細事業を中心とする商工関係者から寄せられています。倒産の概念を構成する銀行取引停止処分や破産などの事実経過を申込資格とすべきだという意見も多くあります。
 私はこの際、資格要件の緩和を行い、制度の改善を図るべきことを強く主張するものであります。例えば、国の委託事業である中小企業再生支援協議会での再生計画策定支援の対象事業者を申込資格とすることなどを検討すべきと考えます。都の所見を伺います。
 次に、江東区内に、きのう三月一日開院の運びとなりました癌研有明病院について伺います。
 平成九年第三回定例会の本会議のこの場で、私は、江東区を含む区東部保健医療圏では、人口一万人当たりの医療施設数が他に比較して著しく少ないことなどを踏まえて、この地への大規模な総合病院誘致の主張を初めて行い、その後、再三にわたって本議会でこのことを訴え続けてまいりました。何と八年の歳月を要しましたが、今、しょうしゃな色彩の十二階建て、病床数七百規模の同病院の斬新、広大なたたずまいを目の当たりにして、私は、誤解を恐れずにいえば、生みの親としての感慨を深くしているのであります。
 まず、改めて有明病院の規模と概要並びに傾斜開設計画のスケジュールについて伺います。
 平成十年の誘致への公募に際しては、用地は当時地価の半額による土地処分方式が示されるとともに、地域医療を支援する機能、災害時の後方医療活動を行う機能が求められ、そのため病床数は七百床程度とし、内科、小児科、外科、整形外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科など、おおむねすべての疾患に対応できる診療科目の整備が条件として当時要求をされているのであります。
 したがって、私は、地域医療への支援という点からいえば、有明病院はこれまでのがんの専門病院としての顕著な実績に加えて、総合的な診療基盤を整備し、地域中核病院としての役割を果たしてもらえるものと心から期待をしているのであります。
 このため、病院が、地元地域に不足していた急性期医療やがんの高度専門医療という特色ある医療を効果的に提供していくためにも、かかりつけ医や地域の医療機関との緊密な連携が重要になると考えますが、いかがでしょうか。
 さらに顧慮しますのは、公募の条件ともなっており、また、平成十一年時点の同病院の事業計画に明示されていた小児科が、開院時の診療科目に含まれていないという点であります。広域的な視点からはもとより、臨海副都心に隣接する豊洲、東雲あるいは辰巳といった地域では、昨今の都心回帰、都心居住の流れの中、大規模マンションが建設ラッシュであり、子どもを持つ家庭が急増している実態があります。
 こうした状況の中、いわゆる大規模な総合病院である癌研有明病院に児童を専門的に診察する小児科が設置されないのは、総合内科や一般外科では対応されるとはいえ、若い母親の皆さんにとっては危惧を抱くところとなっております。小児医療は社会的課題ともなっている今、地域医療の充実という視点からも、当初の計画どおり小児科を設置するよう、東京都として事業者に強く働きかけを行っていくべきと考えます。明快な所見を求めます。
 最後に、この病院は、災害時医療活動の拠点病院として、大量の被災者の受け入れなどに対応できる機能が要求されるわけでありますけれども、整備される概要について報告を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 木内良明議員の一般質問にお答えいたします。
 災害要援護者対策、つまりご老人に対する対策についてでありますが、障害者や寝たきりの高齢者など災害要援護者のための防災対策は極めて重要だと思います。
 災害要援護者は、災害時にとにかく自分自身で自分を守ることも、また身を動かして指定された避難所に移ることもなかなか困難な方が多うございまして、そういうものにかんがみて、やはりきめ細かな支援が必要だと思います。
 昨年の九月一日の災害対策に、主に荒川沿いの何区かに私は伺いましたが、どこかの区で非常にユニークな、高校生にノルマを課して、自分の担当する地域のお年寄りを自分の責任で指定されている学校のグラウンドまで連れてくるという演習をしておりました。これなどは非常に大事な着想だと思っております。
 一部の区市町村においては、字幕や手話を活用した情報発信の取り組みを展開しております。また、都としても防災行動マニュアルの策定などを区市町村に働きかけ、障害者団体や民生・児童委員を通じての周知を図ってまいりました。防災対策には十分ということは決してありません。今後とも強化に努めていくつもりでございます。
 次いで、敗者復活、再チャレンジ可能な社会システムづくりでありますが、これはまことに大事なご指摘で、アメリカにはフェールセーフ、つまり失敗した人間に非常に温かい手を差し伸べて、もう一回頑張ってやれと、そういう主にメンタルなバックグランドがあって、それを踏まえてのいろいろ具体的な施策も講じられておりますが、日本の場合には、何か要するに失敗した人に、だからいったじゃないかとか、余計なことをするからいかんのだという、そういう扱いが多くて、その辺がやはり風土の違いといいましょうか、これから日本の産業の進展のためにも、やはりフェールセーフという、まさに敗者復活というもののいろんな手だてを、メンタルも含めて講じていく必要があると思います。
 とにかく新しい試みにはさまざまなリスクがありまして、必ずしもすべてが成功するわけではございません。しかし、そういう新しいチャレンジがなければ世の中は進歩しないわけでありまして、一たん挫折しても、さらなる洞察力と情熱を持って、失敗にめげずに立ち上がっていくことが必要でありまして、そのための再チャレンジできる環境整備が必要だと思っております。
 このため、都は、中小企業再生ファンドの創設など、中小企業の再生や経営者の新たな再起に向けた支援を実施してまいっております。今後も、いろいろ手だてを講じて再起を促していく努力を続けたいと思います。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔福祉保健局長幸田昭一君登壇〕

○福祉保健局長(幸田昭一君) 災害弱者に対する支援並びに医療行政に関します六点のご質問にお答えいたします。
 まず、行動マニュアルへの指針改訂についてでありますが、お話の指針は、平成五年に策定いたしました東京都災害弱者防災行動マニュアルをもとに、阪神・淡路大震災から得られた教訓を踏まえ、平成十二年に改訂したものであります。新たな課題や知見に基づき、行動マニュアル指針は不断に見直すことが必要であります。
 現在の指針の内容は、風水害等の自然災害にも応用できるものではありますが、昨年の豪雨災害の教訓や新潟県中越地震から得られた新たな課題などに基づき、地震や風水害などの災害の特性にも対応できる、より実践的な内容とするため見直しをし、本年九月を目途に改訂を行ってまいります。
 次に、災害要援護者の情報を把握する仕組みの構築についてでありますが、都は平成十二年、区市町村向けに策定した災害要援護者への災害対策推進のための指針において、災害要援護者の所在の把握方法を具体的に示し、計画の策定を促してまいりました。その結果、都内の半数近くの区市町村で災害要援護者の所在が把握されておりますが、ご指摘のとおり、防災機関との情報の共有などが不十分でございます。
 今後は、未実施の区市町村も含めたすべての区市町村において、プライバシーにも配慮しつつ、災害要援護者の情報が的確に把握され、発災時に十分活用できるよう、区市町村へ働きかけてまいります。
 次に、災害対策の充実についてでありますが、さきの新潟県中越地震において、保健所や都内の病院などの協力も得まして、多くの専門家を支援のため派遣いたしました。この支援活動を通じて、実際の災害現場や避難所において、災害要援護者に対する、発災直後から専門家による心身両面にわたるきめ細かい支援の重要性を改めて認識いたしました。
 都の指針では、ホームヘルパーによる生活支援や保健師等による巡回訪問、手話通訳者の派遣など、総合的なケア体制を整備していくこととしておりますが、さらに課題が残されていることも事実でございます。
 都は今後とも、こうした観点から、区市町村の取り組みが推進されるよう、震災時における人材確保など支援体制の整備に努めてまいります。
 次に、有明病院についてでありますが、財団法人癌研究会が江東区の有明の丘に開設した有明病院は、計画病床数が七百床で、高度ながん医療を特徴とする病院であります。診療科目としては、内科、外科、産婦人科などを標榜するほか、化学療法、緩和ケアなどを行う組織を整備して、二十四の診療部門を設置したと聞いております。
 本年三月一日に三百五床で診療を開始いたしましたが、本年四月には四百五十六床、七月には五百六十二床と段階的に稼働病床をふやし、平成十八年四月に七百床すべてを稼働させるという開設計画でございます。
 次に、地域の医療機関との連携についてでありますが、有明病院が、がんを中心とした高度専門医療などを効率的に提供していくためには、お話のとおり、地域の医療機関との連携が重要であります。
 有明病院の前身である癌研究会附属病院は、平成十三年度から、区西北部保健医療圏における地域がん診療拠点病院として、地域の医療従事者の研修などを実施してまいりました。新病院についても、引き続き区東部保健医療圏における拠点病院として、地域のがん診療支援を行うほか、病院の持つ総合診療基盤を活用して、急性期医療などにおいて、地域の医療機関との緊密な連携を推進していくものと期待しております。
 最後に、災害時医療救護活動の拠点としての機能についてでありますが、有明病院は災害時には、医療救護が必要な被災者のトリアージの実施及び二百人程度の患者の受け入れが可能なスペースを確保しております。病院の建物には免震構造を採用しているほか、自家発電装置、受水槽、非常用資器材の備蓄倉庫など、災害時の拠点病院として機能するために必要な設備も整備しております。さらに、災害時における重症患者の医療を迅速に行えるよう、屋上にヘリコプターの緊急離発着場を整備しており、今後、都の災害医療の拠点としての役割を担っていただけるよう働きかけてまいります。
   〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) 港湾物流と保安対策についてなど三点のご質問にお答えいたします。
 まず、港湾物流の電子化についてでございますが、我が国港湾が国際競争を勝ち抜くためには、電子化の推進が喫緊の課題であることはご指摘のとおりでございます。
 このため、国や国内の主要港湾管理者との連携のもと、都が主導して、港湾物流情報の全国統一システムであるJCLネット──これは日本コンテナ物流情報ネットワークの通称でございますが──の開発を進めてきたところでございます。そして、その実用化の第一弾といたしまして、この三月から、ふ頭から輸入コンテナを引き出す際に、必要な情報をリアルタイムで提供するサービスを開始するなど、ゲート通過時間の短縮を図ってまいります。
 今後とも、都が中心的な役割を果たしながら、関係事業者間の業務手続の電子化によりペーパーレス化を進めるなど、順次この統一システムの機能拡充を図り、物流改革を推進してまいります。
 次に、IT活用による物流効率化と保安対策の推進でございますが、改正SOLAS条約に対応して、今年度内に必要な施設整備や監視体制の構築を完了いたします。
 ご指摘のとおり、今後は、この保安対策と物流効率化を両立させていくことが重要な課題であると認識しております。
 このため、国や国内の主要港湾管理者とも連携して、ふ頭の出入り管理に係るゲートシステムの構築を進めてまいります。来年度には、JCLネットを利用し、ふ頭に出入りする車両のチェックを合理的に行うシステムを導入するとともに、このシステムを活用して、電子タグ等により、ETCのようにゲート通過を円滑化するための実証実験を実施するなど、効率と保安が両立する安全で使いやすい港づくりを進めてまいります。
 最後に、癌研究会有明病院の小児科開設についてでございますが、有明病院は、臨海副都心を安心して住めるまち、働けるまちにするために必要不可欠な施設でございます。全国的に小児医療の専門医が不足している中、有明病院においても、その確保や地域医療機関との連携が課題となっており、開設がおくれていると聞いておりますが、既に小児科のための待合室や診療室といった施設は整備されておりますし、強い地元要望もありますので、癌研究会に、一日も早い小児科開設を強く働きかけてまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 都営住宅における事業再建者向け定期使用住宅の資格要件についてでございますが、本制度は、事業が破綻したものの再建途上にあり、住宅に困窮する者に対しまして、都営住宅を一時的に提供するものであります。このため、対象者は、事業再建の見込みがあることが客観的に認められる必要がございます。
 資格要件の設定に当たっては、倒産や債務整理の専門の弁護士や商工会議所などの専門家から意見を伺い、民亊再生計画の認可決定を要件の一つといたしました。
 本制度の資格要件の緩和につきましては、今後、制度の目的やご提案の趣旨も踏まえ、検討してまいります。

〇副議長(中山秀雄君) 九十九番田中良君。
   〔九十九番田中良君登壇〕

○九十九番(田中良君) この予算審議に際し改めて思うことは、いかにこの国が深刻な状況にあるかということであります。一般会計ベースで都と国を比較してみると、大ざっぱないい方ですが、東京都は税収四兆円に対して借金は八兆円、つまり税収の二倍であります。一方、政府は税収四十兆円に対して借金は五百四十兆円で、何と税収の十三倍であります。この五百四十兆円という数字は国のGDPを上回るもので、いかに国が大きな重荷を背負っているかは明らかであります。通常の経営感覚からいえば、国は既に破綻しているといっても過言ではないでしょう。
 さて、それでは、この国を再建するために一体何をしたらいいのか。私はこう考えます。国の仕事を抜本的に減らし、国の歳出規模を大幅に削減する改革が必要であります。つまり小さな政府であります。それには、国の仕事を地方に移すという地方分権が不可欠なのであります。もちろん民間に移すことも必要でありますが、国からいきなり移すというよりも、むしろ国から地方へ仕事、権限を移し、地方の手によって民営化するということの方が現実的ではないかと考えます。なぜなら、自治体の行政の方がはるかに国より透明性が高く、個々のサービスの内容について住民の声が届きやすいからであります。要するに、地方分権は自治体のエゴではなく、国家再生のための最も重要な政策の柱なのであります。
 昨年、三位一体の改革が論議されましたが、中身のない国の政策に対して、全国知事会初め地方六団体の中にも相当の異論、反論があり、その中には、法定受託事務をボイコットしてでも国と戦うべきだという激しい議論もあったと伝えられています。今後ますます国と地方の対立は具体化、尖鋭化すると思います。その壁を地方自治の力で打破できるかが重要であり、その戦い方の研究も当然戦略的になされなければなりません。
 そこで、何点か問題を提起し、知事の所見を伺いたいと思います。
 まず一つ、法定受託事務についてであります。
 国と戦う方法として法定受託事務をボイコットしようという発想は、心情的には理解できますが、逆に地方が法定受託事務を取り込んでいくということも、国と戦う手段の一つになり得るのではないでしょうか。国でやるよりも効率よく低コストでやれるということがあれば、積極的に手を挙げて取り込んでいく。法改正や制度改革、予算措置が必要であれば、地方から積極的に提案していけばいいのではないでしょうか。今まで国がやっていたことを地方自治体がやることで、国民の利便性が明らかに高まれば、分権の必要性に対する国民の理解が広まり、やがては国を動かす大きな力となるでありましょう。そして、いずれ法定受託事務から自治事務に転換するものが出てくるのではないでしょうか。
 第二に、徴税事務についてであります。
 法定受託事務の積極的な活用を考えたとき、私がまず第一にターゲットにするべきものは徴税事務ではないかと思うのであります。権力行使の最たるものである徴税を広く地方自治体が実施していくということは、中央集権の象徴である、税の取り立てと分配という財務省による税の一元管理体制にくさびを打つこととなります。
 現在、国税庁、つまり税務署で扱っている税目の中で、都税事務所あるいは区市町村で扱えるものはないのか。または、国家公務員である税務署の職員が持つ調査ノウハウを地方自治体が共有できる方法はないか。また、税務署の機能そのものを、仮に法や制度改革によって地方自治体の仕事に移した場合、国よりも効率よく低コストで徴税事務を行える体制をつくれたならば、国民は利便性を感じ、身近に分権の効果を実感できるようになるでしょう。そして、それは将来の道州制や連邦制という国家像に具体的に近づいていくことになるのではないでしょうか。
 第三に、年金保険料の徴収事務であります。
 かつて、国民年金保険料収納事務は、機関委任事務として区市町村の窓口において行われておりました。しかし、地方分権推進委員会の第三次勧告を受けて、原則として国が直接行うものとして整理され、地方分権一括法の施行に伴い、平成十四年四月より国に移管されたものであります。
 昨年、年金が大きな政治問題として注目を集めました。この間、社会保険庁の放漫経営が厳しく批判の対象になってまいりましたが、その背景には納付率の低下がありました。平成十三年度七四・九%であった納付率が、国に移管した初年度である十四年度には六六・四%、何と八・五ポイントの急激な低下をしたわけであります。これは、保険料収納事務を地方から国へ移管したことの影響であることは明らかであります。
 年金が、全国民がひとしく一律に受けるべきサービスであるという理由で、国の所管となっていることに異論はありませんが、事務のすべてを国が担うのが適当であるか否かは別問題だと思います。
 社会保険庁を廃止して、年金徴収事務を国税庁に移すといった意見もあるようですが、私は反対であります。国の仕事を減らしていかなければならない時代に、何ゆえ地方にて実績のあった仕事を国がやらなければならないのか。さらにいえば、国民年金の加入者の八割は、保険料収納事務を区市町村でやっている国民健康保険の加入者なのであります。したがって、今こそ、年金保険料徴収事務を法定受託事務として地方自治体が取り込む好機だと考えるのであります。
 また、今述べてきた徴税事務や年金保険料の収納事務も含めて、国の現在やっている仕事を国から引きはがし、地方分権を実現させるための戦略という観点から、広域連合の活用について調査研究を進めるべきではないでしょうか。
 静岡県では、県民の利便性向上等の観点から、平成二十年代初頭を目途に、県及び県内市町村の地方税の徴収事務を、広域連合により一元化する方向で検討を進めていると聞いております。
 以上申し上げてきたことは、現実的に考えればさまざまな課題があることは十分承知をしておりますが、どのような可能性があるのかを研究する価値は十分あると思います。地方分権を実現させるための戦略という観点から、既存の枠にとらわれず、国が現在実施している事務を地方自治体が効率的に実施していく可能性について戦略的に研究していくべきだと考えますが、知事の見解を伺います。
 ことしに入り、各地で多数のにせ札が発見されました。にせ札は、古くて新しい犯罪であります。我が国最初の貨幣といわれている和同開珎も、発行後多くのにせものが出回り、発行者である大和朝廷の弱体化を招いたといわれているのであります。
 急増するにせ札事件は、大きく二つに分けることができます。一つは、市販のパソコンやプリンター、スキャナーなどを利用したもので、だれでも簡単につくれますが、すぐににせ札と判別できます。
 もう一つは、非常に精巧につくられたもので、専門家でも判別することが難しいものであります。平成十四年の年明けに、東京、大阪、静岡などで合計一千枚を超える大量のにせ一万円札が見つかりましたが、この事件はまさにこのパターンに該当します。この際発見されたにせ一万円札は、いずれも透かしの入った精巧なもので、これを使ったのは、中国、台湾出身者であったそうであります。これらの中には、ATMをかいくぐるものまで出てきているとのことであります。
 実は、この後者のパターンこそ深刻に受けとめるべき問題なのであります。このような精巧なにせ札を製作するには、軽く数千万円はかかると見られており、逮捕されるリスクを踏まえると、とても個人として採算の合う仕事とはいえないのであります。したがって、事件の背後には、外国人を含む大規模な偽造組織があると疑われるのであります。
 警察当局がまず問題意識として認識すべきことは、他国の機関の関与の疑いも視野に入れて、この偽造組織の徹底的解明を期すことであります。
 実は、我が国は、国家機関が大量の偽造紙幣をつくっていたことがありました。現在の明治大学生田校舎には、かつて、陸軍の諜報謀略拠点として、通称登戸研究所といわれる機関がありました。そこでは中国のにせ札を製造し、大量の軍事物資を調達し、終戦を境にそれらを売却し、得た多額の資金が戦後の保守政界に還流したという説もあるようであります。真偽のほどは歴史の研究にゆだねるしかありません。
 また、十数年前には、スーパーKと呼ばれた、にせ百ドル札が世界的に大量に流通するという事件が起こりました。CIAの推計によれば、全世界で十億ドル以上が印刷されたのではないかといわれております。このスーパーKは極めて精巧につくられており、一般市民はもとより、ほとんどの市中銀行でも真偽の判定が難しく、大きな銀行の本店や米国連邦準備銀行等に持ち込まれて初めて偽造紙幣と判定されたのであります。
 我が国においても、外国、特に北朝鮮経由で持ち込まれ、市中銀行ではそのまま通過し、連邦準備銀行の在日代理店の特殊な高速識別装置で初めてにせ札と判定されることが多かったそうであります。
 スーパーKの製造元は、北朝鮮説あるいはイランが北朝鮮から武器購入した際ににせ札で支払ったものが還流したなど、諸説がいわれておりますが、いずれも確証は得られていないということであります。
 アメリカは、これらの偽造紙幣対策に早速乗り出し、平成八年、新しい紙幣を発行いたしました。ところが、この新ドル紙幣もわずか三、四年で、ウルトラスーパーノートと呼ばれるにせ札が大量に出回り、それに対する新たな対抗措置として、平成十五年秋の二十ドル紙幣を皮切りに、ほとんどすべての券種で新しい世代の券種に切りかえ始めているのであります。
 さて、にせ札のはんらんは一体どのような影響を社会に及ぼすのでしょうか。専門家の試算によれば、にせ札がはんらんすることになれば、小売業や飲食店、ホテル等の宿泊施設など、現金取引が多い業種では、にせ札の鑑別機を常備せねばならず、導入率が全体の一〇%の場合でマイナス〇・四四ポイント、五〇%の場合でマイナス二・二〇ポイント、一〇〇%の場合はマイナス四・四〇ポイント、非製造業の経常利益を押し下げる要因となり、企業のにせ札対策費は最大一兆円を超えるまでになり、マクロベースの企業収益に無視できないほどの悪影響を与えてしまうとのことであります。
 また、にせ札の流通量が全体の紙幣流通量の〇・〇一%を超えると、インフレ危険域に入り、さらに〇・〇二%を超えると、ハイパーインフレーションに見舞われる可能性が一気に高まるとのことであります。そして、為替レートも急激に円安に向かい、五〇%以上も価値が減ずると試算をされています。
 さて、我が国の平成十六年末の紙幣流通量は百三十五・五億枚、金額にすると七十八兆円とのことですが、この試算によりますと、インフレ危険域に達するのは百三十五・五万枚、ハイパーインフレ危険域に達するのは二百七十一万枚であります。昨年のにせ札発見枚数は二万五千八百五十八枚でありましたが、過去五年間のにせ札の前年比増加率の平均値は一六一・一%であります。
 そこで、過去五年間の平均増加率で試算した場合、八年後の平成二十五年には、にせ札は百八十九万枚となり、インフレ危険域に達し、九年後の平成二十六年には三百四・五万枚となり、ハイパーインフレ危険域に達することになるのであります。
 これらからもいえることは、この問題を軽く見ているととんでもないことになるということであります。アメリカやユーロが流通するヨーロッパにおいては、次々ににせ札への対抗措置が図られており、その分、我が国が今後ねらわれると警戒すべきなのであります。
 さらに、我が国は欧米に比べ、圧倒的に現金取引が多いことも念頭に置かねばなりません。にせ札はいってみれば経済テロであり、国家の主権侵害という安全保障上の問題でもあるのであります。
 その他、近年では、道路公団発行の高速道路チケットの大量偽造品が出回り、ついに公団は発行を取りやめることに決めたということや、先日も大量のにせビール券が中国から運び込まれる寸前に摘発されたという報道もありましたが、これなども、偽造犯人の逮捕もさることながら、印刷機の特定と、その印刷機の流通経路の解明を中国当局に断固として求めていくなど、強い姿勢が必要であります。
 将来の分権社会においては、自治体独自の政策として、さまざまな地域通貨の発行も考えられ、偽造犯を野放しにすると、政策遂行の大きな障害になりかねません。
 したがって、今から、これらの偽造犯は絶対にはびこらせない、我が国においては割の合わない犯罪だということを認識させる徹底した取り組みを求めるものであります。
 そこで警視総監に伺います。
 昨今のにせ札事件等に対する認識とその後の捜査状況について、また、今後の事件解明への取り組みの決意をお聞かせください。
 以上で終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 田中良議員の一般質問にお答えいたします。
 地方分権改革についてでありますが、我が国は今、財政的にも破綻に瀕し、地方分権を含め抜本的な改革を必要としているというのは、政治家として同じ思いであります。
 小渕内閣のときに地方分権一括法なるものが制定されまして、五年たってようやく、税財源の分与ということが具体的に俎上に上って、いきなり義務教育の国庫負担を削除するという問題が出て、金目の問題が出ましたので、たちまち全国知事会が支離滅裂、四分五裂しまして、結局ああいうていたらくに終わったわけでありますが、ともかく本気になってこれを推し進めていくことが地方自治体の首長たちの責任だとも思います。
 しかし、現実には、国は縦割りで省益がばっこしまして、全国知事会でだれかがいみじくもいっておりましたが、まさに中央分権のていたらくで、しかも、国民健康保険への都道府県負担導入で明らかなように、国の各省は負担を地方に押しつけることしか考えていないていたらくであります。
 昨年の全国知事会にも、東京は東京の試案を提出しましたが、もう千載一遇のチャンスで、一銭でも、とにかく国からお金をもぎ取ろうというていたらくで、これは俎上にも上らずに無視されました。
 しかし、結果としては、梶原さん自身の発言では六十点というんで、私は個人的に彼と会ったときにその話をしましたら、これは限りなくゼロに近い六十点である、そういうレトリックもあるんでしょうか。
 いずれにしろ、本質的な議論が全く行われずに終わったわけでありまして、都があのときに提出しました試案のようなものが実現されれば、少なくとも幾つかの県なり幾つかの政令都市は不交付団体になり得るんですけれども、それが俎上にも上らないというのが実態でありました。
 先ほどご指摘の法定受託事務の返上ということも、例えば神奈川県の知事なんかからもそういう問題が提出されましたが、これは、あの全国知事会の雰囲気では、とても論議の対象になるようなものではございませんで、ただ、やはり私たちは、例えば首都圏の広域行政の一つとして、首都圏というものの利益を守り、その再生というものを図るためにも、場合によっては、一種の有効なストライキとして、法定受託事務の返上も含めて、何か有効な手だてで国に対抗するということを具体的に考えなくちゃいけないんじゃないか、そういう合意は形成されつつあります。
 いずれにしろ、今求められているのは、確固とした歴史観にのっとっての議論でありまして、肝心の総理大臣が、自分の出番をなるたけつくるなというていたらくでは、これはやっぱり、全国知事会なるものが、国と場合によっては対立もしながら、本質的な議論をしていく場にはなかなかなり得ないんじゃないかという気がいたします。
 いずれにしろ、我が国の全体の発展につながる改革を実現することでありまして、そのためには、まず、根本に立ち返って、国と地方の役割分担を徹底的に見直すことから始めることが必要だと思っております。
 他の質問については警視総監から答弁します。
   〔警視総監奥村萬壽雄君登壇〕

○警視総監(奥村萬壽雄君) 偽造通貨行使事件の現状と今後の対策についてお答えをいたします。
 本年一月と二月の二カ月間で都内で発見されました偽造の紙幣は約七百枚で、その内訳は、一万円が約三百枚、五千円が十五枚、千円が約四百枚であります。その大半がカラープリンターを使用して偽造されたものでありまして、商店、売店、タクシー、デパート等で使われております。
 また、偽造の貨幣につきましては、すべて五百円通貨であり、約一万枚発見されておりますが、その大半は、郵便局の窓口で入金をされまして、別の場所のATMで同じ額が引き出されるという手口であります。
 通貨偽造は、いうまでもなく、通貨秩序を乱し、国民経済を混乱させる大変重大な犯罪でありますので、これらにつきましては、現在、徹底した取り締まりを推進しております。
 これまで、浅草寺における偽造一万円札の行使事件を初めといたしまして、暴力団組長等の被疑者十七名を検挙しておりますが、引き続き、さらに捜査を進めまして、全容解明を図ってまいりたいと考えております。

〇副議長(中山秀雄君) 百二十番田中晃三君。
   〔百二十番田中晃三君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○百二十番(田中晃三君) このたび、二つの温暖化の阻止に向けて環境確保条例の改正案が提案されたことは、地球温暖化防止京都議定書の発効により温暖化ガスの削減が待ったなしとなったこの時期に、まことに適切なものと高く評価するものであります。
 改正案では、オフィスなどの大規模事業所に、より高いCO2排出削減の誘導と、新築建築物に対し、ヒートアイランド対策の強化をうたっておりますが、再生可能エネルギーへの利用転換を促進するその見地からも、小型の風力発電及び太陽光発電の設置の促進を図るべきと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。
 地球温暖化、ヒートアイランド対策として、区立小中学校三十校に運動場の芝生化の予算が計上されました。ヒートアイランド対策としては、屋上緑化以上に効果があるものとして期待されております。
 この際、区立小中学校はもとより、都立の教育施設に小型の風力発電及び太陽光発電を設置すべきと考えます。日々の天候に基づいた発電量、CO2の削減量がリモートコントローラーによりその都度表示され、児童生徒の環境への関心は一層深まり、これに勝る環境教育はないと思うので、要望いたしておきます。
 平成十一年三月に発表された東京エネルギービジョンでは、東京における新エネルギーの導入目標を、平成二十二年度の達成目標として、太陽光発電、風力発電等八種類について示していました。
 日本の太陽光発電技術は世界的にも最も高い水準にあり、二〇〇二年の生産量は世界のシェアの四八・九%、価格も年々下がり、太陽光発電システムを取り入れた建築物の数が急増しております。
 風力発電については、NEDOの風況マップから、関東では大型タイプの設置は極めて限られ、余り期待できません。都立大学横山隆一教授は、都内に林立するビルの屋上やビル風の活用を小型の風力発電を適用して行うことを提案しております。そのために、地勢的、技術的に検討しなければならない課題解決のため、例えば小型風力発電推進プロジェクトをつくるべきとしております。都市型の小型風力発電を積極的に普及するこの方策のご所見をお伺いいたします。
 最近のNEDO海外レポートは、韓国における環境技術開発の現状を特集しております。韓国政府は、次世代核心環境技術開発事業十カ年計画を策定し、二〇〇三年の事業内容を確定しています。
 それによりますと、環境技術のパワーは国家競争力の核心要素であるとして、核心環境技術を集中的に開発して懸案の環境問題を解決し、環境産業技術を育成して、環境と経済が共生する環境福祉国家を確立するとしています。新たに選定、支援された主要技術課題の中に、水を電気分解して発生した水素と酸素の混合ガス、いわゆるブラウンガスをそのまま直接燃料として利用する水の燃料化が国家プロジェクトとして採用されていることに、私は重大な関心を抱くとともに、私の知る限り、日本では、大学、企業、研究機関などがこの種の研究に携わっていないことを不可解に思っております。
 新エネルギーの導入促進はもとより、視野を世界に広げて、新エネルギーの開発に、首都大学東京と東京都が共通課題として積極的に取り組むべきと考えます。
 次に、都立大学三上岳彦教授は、都市温暖化に対して、緑、水、風の三つのキーワードを挙げております。都内では、多くの中小河川が暗渠化され、改修されて、水面の占める割合が大きく減っていることから、水面からの蒸発による気化熱の効果も弱まっております。三上教授の調査によると、荒川周辺及び都心部の夏季の気温変化では、明らかに河川周辺の方が低く、その差は日中に大きくなっています。
 宮城のお堀の水面は五万台のクーラーの冷却効果があるといわれております。しかし、東京の水空間面積は、明治十三年、一八八〇年の測量で四百四十三ヘクタール、一九八七年当時では二百五十四ヘクタールと、百八十九ヘクタールも減少しています。東京では、オリンピック開催に当たり、下水道の普及促進を図るため、水源が顔を出していない都市内河川を下水幹線とすることが決定され、多くの河川が暗渠化されたのであります。
 こうした河川等の再生を含め、今改めて、水面を活用した都市づくりや、東京湾からの冷風を都心に呼び込む風の道の構築など、ヒートアイランド対策を織り込んだダイナミックな都市改造を計画的に行う必要性があろうかと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 ソウル特別市では清渓川の壮大な復元事業を、市の予算の三・七%、三百六十億円を費やして実施しております。長さ約六キロ、往復八車線の道路のコンクリートのふたや、その上を走る往復四車線の高架道路を撤去して自然河川を本来の姿に戻す復元事業は、三年の歳月を経て、この九月末に完成いたします。私は、昨年暮れ、完成近い工事現場を見学して、深い感銘を覚えた次第であります。
 さて、省エネ、環境改善を進める上で、港湾物流を初めとする交通流の円滑化は欠かすことができません。そこで、次に、東京港の物流改革について伺います。
 東京港は昨年七月、隣接する横浜港とともに、国のスーパー中枢港湾の指定を受けたところですが、これはまさに、東京港の物流改革をより一層進める格好の機会であります。もちろん、東京港では、この指定に先立って先進的な取り組みを進めており、中でも、昨年三月には、東京港の関係者が結集した東京港振興促進協議会において、国際競争力強化に向けた行動計画である新アクションプランが策定されましたが、策定後、現在までの成果と今後の取り組みについてお伺いいたします。
 一方、首都圏における輸出入貨物の東京港に依存する割合は六割に達し、特に埼玉県や北関東では七割を東京港が占める状況になっております。東京港と首都圏内陸部を結ぶ物流の効率化の必要性が、省エネ、環境改善の観点からも高まっております。
 首都圏経済における東京港の役割の大きさを考えれば、海上貨物輸送について、内陸部を含めた物流の総合的な効率化を行うことが港湾物流改革を進める上で不可欠であると考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 次に、知事のリーダーシップのもと、四年間の準備期間を経て、いよいよ首都大学東京の開学が目前に迫りました。社会が求める人材を育成するという教育に対する期待は大きく、教育の着地点としての大学を改革することにより、東京から日本の教育全体を抜本的に改革し、首都大学東京が、日本の首都東京にふさわしい、東京をよくするための大学として、大都市の複合的な課題解決に貢献できる大学を創造することは、まさに時宜にかなうものとして高く評価するものであります。
 既に首都大学東京に対する期待は大きく、二月十六日に公表された国公立大二次試験の確定志願倍率では、少子化の影響を受けて、国公立大学の倍率が過去最低の五・〇倍になったにもかかわらず、首都大学東京では平均で七・八倍となり、関係者を喜ばせておりました。
 少子化が進み、文部科学省の調査によれば、二〇〇七年には大学全入時代になるといわれております。大学間の競争が急速に進み、学生のとり合いも激しくなることは間違いありません。そうした状況になっても、首都大学東京は、入学を希望する学生が十分集まるような魅力と個性を備えた大学になってほしいと心より願っております。
 大学の運営面では、公立大学法人として、東京都から独立し、自主的、自立的な運営が行われることになります。その上、法人化に当たって東京都は、学長と理事長を別々に置くという方式を選択しました。これまでの総長、学長をトップとする大学組織に経営の視点を導入し、効率的で機動的な運営を求めるものであります。
 このようなドラスチックな変化に対し、一部の関係者からは批判の声もあるようであります。しかし、社会情勢が激しく変化してきている現在、大学といえども、経営感覚を持って運営していかなければ、生き残りすら危うい時代に入ってきているのであります。
 公立大学法人首都大学東京の理事長は、企業で経営手腕を振るわれた高橋宏氏に、学長は、半導体研究の第一人者であり、東北大学の学長を務められ、大学改革を推進したことで有名な西澤潤一氏であります。経営と大学を熟知したお二人は、必ずや法人化のメリットを生かして大学運営を大いに活性化させ、社会に貢献する大学となるものと確信しております。
 こうした大学改革を実現するため、東京都は中期目標を策定し、新大学は公立大学法人として発足いたします。中期目標は六年間にわたるものであり、都が示した目標を踏まえ、法人は、中長期的な視点に立ち、自主的、自立的な運営を行い、六年後に、十分な成果を上げたかどうか厳しく問われます。
 そこで、まず、公立大学法人首都大学東京の中期目標策定に当たって、都は公立大学法人に対し何を求めようとしているのか、その基本的な考え方を知事にお伺いいたします。
 次に、法人の財務運営についてお尋ねいたします。
 所要額が予算措置される都立の大学と異なり、法人化では、法人の自己責任で財務運営を行わなければなりません。しかも、運営財源の大部分を占めるのは、東京都から交付される運営費交付金であります。
 さて、本定例会に提案された平成十七年度の東京都予算案の中では、公立大学法人に関し、今後六年間の中期目標期間において、効率化係数を設定し、標準運営費交付金を毎年二・五%ずつ削減していくことが明記してあります。他方、国立大学法人の効率化係数は一%と聞いております。この数字と比べると、かなり厳しい数字とも見受けられますが、今回の二・五%の効率化係数についての認識についてご所見をお伺いいたします。
 次に、研究費についてお尋ねいたします。
 首都大学東京の使命実現に、大学の柱の一つともいえる研究活動を推進していくことは重要な課題であります。
 国は、平成十三年に策定した科学技術基本計画において、科学技術創造立国を目指し、科学研究費などの競争的資金を五年間で倍増させるという目標を立てています。実際、平成十七年度の国の予算案においても、競争的研究資金は、平成十六年度比約三〇%増の四千六百七十二億円の予算がついております。このように、所属する大学にかかわりなく、意欲のある教員が外部から研究資金を獲得してくる仕組みは、近年急速に拡充されてきているのであります。
 翻って、都立の大学における研究費は、ここ数年、東京都の予算のもと、マイナスシーリングの対象となり、毎年度削減されてきました。新大学は、法人化に伴い、東京都に細かに使用使途を指定されることなく、法人独自の考えで財務運営あるいは予算編成を行っていくことが可能となりますが、研究費の確保についてどのように考えているのか、お伺いいたします。
 終わりに、首都大学東京における研究は、首都大学東京の目指す都市環境の向上など三つのキーワードを主要テーマに、東京をよりよくするため、都と首都大学東京がタイアップして研究を推進していくべきと考えます。二十一世紀の科学技術化社会に向け、東京都としても、国の総合科学技術会議に相当する会議を構成して、長期的視点のもとに東京都の科学技術施策に取り組んでいくことを強く要望いたします。
 次に、東京には、かつて愛唱歌として親しく市民の間で歌われた、「紫にほひし武蔵の野邊に」で始まる、大正十五年制定の東京市歌がありました。
 東京都歌については、昭和二十二年に制定され、全国公募で六千件を超える作品の中から選定されました。「あさみどり すみたるそらに とぶはとの しろきつばさも」で始まり、敗戦直後の世相を背景に、都民の願いを如実に表現したものとして時宜にかなったものでありました。
 しかし、この都歌は、一方で、当時GHQの検閲を受け、パスした、無難な歌詞の内容でありまして、選考委員長小宮豊隆氏は、発表に当たり、コメントの中で余り評価しておりません。この都歌が今日、都民の間で、長野県歌「信濃の国」のように親しく歌われ、都の行事やさまざまのイベントに使われたことを耳にしたことはありません。
 東京は今や首都として、世界都市として、経済的にも目覚ましい発展を遂げ、歌詞制定当時とは隔世の感があることは否めません。今回、戦後六十年という節目の年を迎え、憲法改正の動き、教育基本法の改正など、我々を取り巻く環境が大きく変化してきており、今の若い世代も含めた都民に本当に親しまれる歌かどうか、検証が必要な時期に来ていると思います。
 東京都政は、石原知事のすぐれたリーダーシップにより、都民が安心して生活できる東京、だれもが創造力を発揮できる希望の持てる東京の実現が確実に進みつつあるこのとき、都民が、東京に住んでよかったとともに喜び、あすの希望に向かって羽ばたく東京賛歌、東京大好きと共感を持って歌える都民の愛唱歌、公式行事を初め、東京国体などさまざまのイベントに愛唱される東京都歌を、作家でもある石原知事の主導のもとでぜひつくってほしいと思います。知事のご所見を伺います。
 以上で質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 田中晃三議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、再生可能エネルギーの利用促進についてありますが、東京を持続可能な都市に変革するためには、省エネルギー対策の推進に加えて、太陽光や風力発電など、再生可能エネルギーの導入を進めることが極めて重要だと思います。
 現に、東京湾の埋立地に三基、風力発電を設置しまして、私も操業のときに出席いたしましたが、思ったほど風がないんですね、東京湾というのは。あそこにあれを建てても余り効果が上がっていないんですが、しかし同時に、ご指摘のように、小ぶりの風力発電というのは、例えば、ビル風が高層ビルが建つ中で強く吹くわけでありまして、むしろビルの屋上よりも側面に幾つか備えるということで、ビルとビルの間はヘリコプターが飛ぶこともございませんから、そういう工夫を技術屋さんに注文として出して、やってみることは必要じゃないかと思います。
 各国の再生可能エネルギーの導入目標を見ますと、フランスやドイツなどEUの諸国の積極的な姿勢に比べて、日本はやや消極的な感じがいたします。現に、再生可能エネルギーの導入目標、二〇一〇年の目標値でありますけれども、日本が七%に対して、EUが一二%、フランスが二一、ドイツが一二・五、イギリスが一〇ということで、どうも、エネルギーに関する危機感といいましょうか、そういった発想がまだまだ及んでいないといううらみがございます。
 都は、環境確保条例の改正案において、都内に電気を供給している事業者に対して、再生可能エネルギーの導入計画の策定と公表を新たに義務づけることといたしました。
 都みずからも、昨年、浄水場における太陽光発電の設置、さらに、水再生センターでの下水汚泥によるバイオマス発電事業なども開始いたしました。
 今後とも、再生可能エネルギーの利用拡大を幅広く検討していきたいと思いますし、東京にはいろんな技術も集中しておりますから、そういう技術の開発の主導というものをやはり東京都こそがすべきだと思っております。
 次いで、首都大学東京の中期目標についてでありますが、目標策定に当たっての基本的な考え方は、ともかくまず大学における教育改革を実行し、学生たちが、来てよかった、楽しい、学校に行きたい、行ったらおもしろい、そういう大学というものをつくりたい。既存の教育システムを根底的に変革していくことにあると思います。
 教育のターミナルである大学が旧態依然としている限り、小中高等学校という過程の教育の内容もなかなか変わりません。日本全体の教育を変えるためにも、小学校は小学校、中学校は中学校、現に中高の一貫教育を始めましたし、それぞれの過程で努力をする必要があるのではないかと思っております。
 また、首都東京の大学にふさわしい人材育成や研究を行うこと、これにより、大都市が抱えるさまざまな問題の解決に貢献していきたいと思っております。
 それからまた、ご指摘のように、これまで欠けていました経営感覚を取り入れまして、戦略的に大学を運営していく、そういう施策も講じたいと思っております。
 現に、新しい理事長の発案で、それぞれ経済人がおられますけれども、出身校は違いますが、東京のこういう試みに対して、各企業から、大学の支援者、サポーターとしての協力を仰ぐリーグもつくりましたし、また、企業に応じては、研究に対する注文を受けて、産学協同というものをもっともっと幅広い、分厚い形で、新しい大学でやっていきたいと思っております。
 中期目標ではこれらの考え方を明確に示して、首都大学を、日本の大学改革のモデルにふさわしく、全く新しい大学としてつくり上げていきたいと思います。
 特に、西澤先生が、日本の教育の過程で、義務教育と高等学校からの教育が実質的に逆転していて、感性のできる高等学校のプロセスで詰め込みをしている、小中学校で本当は詰め込みをしなくちゃいかぬと。つまり、今の日本の教育の過程ではもう感性というのは育ってこないということで、まさに鋭い指摘だと思いますが、経営感覚だけではなしに、そういう合理的な運営によって学生たちの感性というものを育てていく。
 そして、具体的に例を挙げますれば、例えばドイツのバウハウスのように、こういう学園から、工業も含めて、さまざまなデザインあるいは製品の着想というものが生まれてくるような、そういう性格を付与した大学にしたいと思っております。
 次いで、新しい都歌についてでありますが、率直に申し上げて、私が今まで東京に関する歌で一番好きだったのは「東京音頭」でありまして、あれはどこで歌ってもいいんですけど、このごろ、どこかのプロ野球にとられてしまいまして、さながらその球団の応援歌みたいになってしまいましたが。
 正式に決める都歌も結構でございますけれども、よほどうまくつくりませんと、高等学校の校歌がせいぜい甲子園、六大学の校歌も神宮球場でしか歌われないというのでは(「知事がつくれば大丈夫だよ」と呼ぶ者あり)いえいえ、だめだめ。(笑声)
 私は今まで東京に関する歌を幾つか覚えておりますけれども、これは本当に有名な作曲家または作詞家によったもので、例えば服部良一さんの「東京ブギウギ」とか、それから「ウナ・セラ・ディ東京」とか、これは宮川君が今でも元気で頑張っています。それから「東京の屋根の下」とか、あるいは「東京ラプソディー」とか、時代時代に応じた、作詞家という専門家がその世相にマッチした歌詞をつくっていまして、限られた期間でも歌われましたし、それがカラオケにも残っている。そういう歌を都歌として構えないと、何でこんな歌をつくったんだというので、そしりを受けてもあれですから。
 これは、しかし、私も含めて候補者が何人もいるでしょうから、大いに公募しまして、それで、今の時代に合った新しい東京の歌を歌うことで日本じゅうから人がやってくる、そういう試みを、少なくとも前向きに、積極的に検討したいと思います。
 他の質問に関しましては、関係局長から答弁いたします。
   〔環境局長平井健一君登壇〕

○環境局長(平井健一君) 都市型風力発電の普及についてのご質問にお答えいたします。
 都は率先事業といたしまして、臨海部に大型風力発電施設を平成十五年に民間と共同で設置いたしました。風力発電をさらに普及させるためには、都民や事業者による設置を進めていくことが必要でございますが、ビルの屋上等に設置する小型風力発電は、都市型風力発電として注目されているところですが、安全性、騒音振動対策及び発電効率等の課題が指摘されてもおります。
 今後、都は課題の検討に必要な風速データを大気測定局で収集いたしまして、発電機器メーカーや大学などに情報提供することを通じて、検討の促進を図ってまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) ヒートアイランド対策と都市改造についてでございますが、水や緑などの空間は、都市に潤いや快適さをもたらすだけでなく、ヒートアイランド対策にも資する貴重な資源であります。このため、都といたしましても、都市開発に合わせた緑やオープンスペースの確保、親水空間の整備など、都市の環境改善にも努めるほか、風の道の確保についても、より効果の高い手法等の検討を進めているところであります。
 お話にありました水面の再生などを織り込んだ大規模な都市改造の提言につきましては、今後の都市再生を進めていく中で、その効果や実効性を検討しつつ、積極的に取り組んでまいります。
   〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) 港湾物流改革についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、新アクションプランの成果と今後の取り組みについてでございます。
 東京港関係者が一体となって策定した新アクションプランに掲げる港湾物流改革は、ご指摘のとおり、省エネ、環境改善を進める上でも重要であると認識しております。
 現在までに青海公共ふ頭ゲートシステムの統一や植物検疫の日曜開庁等が実現し、この官民共同した取り組みにより、ふ頭運営効率の向上やゲート前渋滞の緩和など、多くの成果があらわれているところでございます。
 今後も、大井ふ頭背後へのコンテナ専用レーン設置による交通円滑化や、ふ頭運営事業者の連携による公共、公社バースの枠を超えた相互融通など、プランを着実に推進し、東京港の国際競争力向上に取り組んでまいります。
 次に、内陸部を含めた港湾物流の効率化についてでございます。
 首都圏経済における東京港の役割が高まりつつある現在、港湾物流の効率化を総合的に進めるためには、東京港を利用する貨物の生産地であり、消費地でもある内陸部を含めた施策が必要であることはご指摘のとおりでございます。
 このため、陸上輸送の効率化に向け、東京港と首都圏各県を結ぶ幹線道路のボトルネック等の実態把握や内陸部の保管、流通拠点であるインランドデポを活用した片荷輸送削減の可能性の検討などを行っております。
 今後、これらの課題への取り組みを進め、環境面も視野に置きながら、関係各局とも連携を図り、港湾貨物輸送の効率化に総合的に取り組んでまいります。
   〔大学管理本部長村山寛司君登壇〕

○大学管理本部長(村山寛司君) 首都大学東京に関する二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、大学運営を行う公立大学法人の財務運営についてでございますが、都が法人に交付いたします標準運営費交付金は、使い道を法人自身が定める法人の一般財源でございまして、法人がみずから経営努力を行えば、国立大学法人などに比べ、財源を確保し、これにより新たな事業展開を図ることがより一層可能となる仕組みとしております。
 したがいまして、法人はこの制度の趣旨を生かして、効率的な財務運営を行うことにより、自律的でかつ安定的な経営を確立し、それを基礎として、戦略的な大学運営を実現していくことが必要であると考えております。
 標準運営費交付金について、二・五%の効率化係数を設けることとしておりますが、これは、以上のような考え方に基づきまして、法人が中長期的視点に立って、継続的に自主的努力を行っていくことを促すための措置でございます。
 次に、大学の研究費についてでございますが、首都大学東京の使命を実現するためには、それにふさわしい研究活動に対し、必要な研究費を確保していくことが重要であると考えております。
 こうした観点から、十七年度の公立大学法人の予算におきましては、厳しい中ではございますが、一般財源を投入する研究費を、総額で十六年度水準を確保することといたしまして、その上で、首都大学東京にふさわしい研究テーマに対して重点的に研究費を配分し、意欲ある教員を励まし、研究の活性化を図っていく方針でございます。
 あわせまして、外部資金を活用する研究につきましても、支援体制を整備し、国の競争的資金の積極的獲得や民間企業との共同研究の拡大を通しまして、これまで以上に研究活動を活性化してまいります。

〇議長(内田茂君) 三十四番かち佳代子さん。
   〔三十四番かち佳代子君登壇〕

○三十四番(かち佳代子君) 初めに、石原知事の女性べっ視発言について質問いたします。
 知事が週刊誌で、これは松井孝典がいっているんだけれども、文明がもたらした最もあしき有害なものはばばあなんだそうだ。女性が生殖能力を失って生きているというのはむだで罪ですって、などと発言したことについて、女性たちが発言の撤回と謝罪、損害賠償などを求めていました。
 先月二十四日、この問題に関する東京地裁の判決がありました。判決は、発言は女性一般についての見解の表明であって、原告個々人の名誉を傷つけたとはいえないと、請求を棄却いたしましたが、これは知事を免責するものではありません。判決は、むしろ知事の発言がいかに不適切であるかを厳しく批判しているのです。
 まず、知事はこれまで、大学教授である松井さんの言葉を要約して人に伝えただけと居直ってきました。しかし、判決は、松井教授の話と知事の発言は内容的に一致していないことなどから、被告、知事個人の見解ないし意見を表明したと認めるのが相当と断定しています。
 また、判決は、知事の発言は、女性の存在価値を生殖能力のみに着目して評価する見解が、個人の尊重、法のもとの平等について規定する憲法、男女共同参画社会基本法、その他法令や国際人権B条約、女子差別撤廃条約、その他国際社会における取り組みの基本理念と相入れないと明確に述べています。知事はこれを謙虚に受けとめるべきです。
 さらに、判決は、東京都知事という要職にある者の発言としては不用意であったと認めています。知事の発言は、知事という立場上許されないものであることは明白です。にもかかわらず、知事は判決の翌日の記者会見でも、私ではなく大学教授がいったなどと、いまだに責任逃れを繰り返しています。もはやそのような逃げは通用しません。潔く発言を撤回し、謝罪することを求めます。お答えください。
 次に、都立病院のあり方について伺います。
 石原知事は、十六あった都立病院を八カ所に縮小、削減する計画を改革だといって進めてきました。その結果、どうなっているでしょうか。世田谷区の母子保健院は存続を願う十万を超える署名が寄せられましたが、国立成育医療センターができるから大丈夫だといって、廃止されました。ところが、成育医療センターは救急患者がふえ、高度専門病院の機能に支障を来すとして、昨年四月、救急患者から四千二百円の特定療養費の徴収を始めました。
 救急車で意識がない乳児が運ばれてきても、窓口で四千二百円必要ですといわれています。赤ちゃんをおんぶしたお母さんが、真っ青な顔をして氷嚢で頭を冷やしている女の子の手を引いてきましたが、やはり四千二百円必要ですといわれ、財布をのぞいて、足りなかったのでしょう。帰っていくという事態が起きています。
 成育医療センターは、救急患者を減らすために徴収を開始した、おかげさまで効果がありましたと回答しています。これは厚生労働省の通知で、緊急の患者から徴収してはならないとされているものです。救急患者から四千二百円も特定療養費を徴収するのをやめるよう、国立成育医療センターに申し入れるべきです。答弁を求めます。
 今、世田谷区では、次に廃止が計画されている小児精神医療の全国唯一の専門病院である梅ケ丘病院を存続し、小児科を設置して、夜間休日の入院にも対応できる小児救急を実施してほしいという声が広がっています。この願いにこたえることを強く求めておきます。
 清瀬小児病院、八王子小児病院は、存続を求める住民の切実な声により、廃止計画は二年延期になりました。地元自治体は引き続き存続を求めています。
 老人医療センターと豊島病院の統合民営化計画は、地元板橋区や区議会の要請で、統合については撤回されました。その後、豊島病院のあり方について、都と区の協議が続いていますが、昨年夏までに結論を出すといっていたのが、今になっても平行線のまま、協議は完全に行き詰まっています。地域の医療水準を維持するためには、老人医療センターも豊島病院も都立として存続することこそ必要であることがいよいよはっきりしてきました。
 このように、石原知事のいう都立病院改革の失敗が各地で浮き彫りになっているのは、都民と地元自治体、医療関係者とのまともな相談も合意もなしに計画をつくり、押しつけるというやり方が間違っているのと同時に、東京都の財政支出削減最優先で、都立病院が地域医療から手を引いていくという計画の中身が間違っているからです。現時点に立って、計画を抜本的に再検討することを求めるものですが、知事、お答えください。
 大田区にある都立荏原病院は、二〇〇六年度に都の監理団体である保健医療公社の病院として移管される計画です。
 公社病院の現状はどうでしょうか。大久保病院は昨年公社移管されましたが、一昨年の病院の事業概要には、各医師の士気の低下が見られる。公社化に向けて、医師が生きがいを持って診療に打ち込めるような新たな体制をつくることが当面の課題ですと書いてあります。しかし、具体策をとらないまま公社化されたため、医長、部長級の医師が次々退職し、患者も減って、業績が伸び悩み、公社に対し十億円もの補助金の追加投入が必要になりました。医師を初め職員の皆さんは医療水準を維持するため必死に努力をしており、患者数が若干上向きですが、医師の欠員は改善されておらず、リハビリの強化のため、言語聴覚士を常勤配置に戻すことなどが切実に求められています。
 東部地域病院の事業概要には、麻酔事故の防止、患者の安全の確保、円滑な手術室運営に対し、早急に手術室をふやすこととスタッフの増員が必要不可欠、また呼吸器系医師の定数増が強く望まれる、心臓疾患の救急治療を行うCCU病床をふやさなければ今後の需要にこたえられないなど、充実を求める職場の声が多数記述されています。公社病院の現場から上がっているこうした要求に直ちにこたえることを求めるものです。
 財政支出削減のために都立病院を公社に移管し、公社病院に対する都の財政支援は切り詰めるというやり方は間違いです。都立病院は都立として存続、充実し、公社病院は準都立病院として位置づけて、都の支援を強化し、医療水準をさらに充実させることこそ必要ではありませんか。知事、お答えください。
 都立荏原病院は、城南地域における高度専門医療を担う中核病院としての役割を果たすと同時に、地域のかかりつけ医としての位置づけを持ち、紹介状なしでかかれる病院として、住民の大きな信頼を受けています。高度専門医療と地域医療の両方を大事にするという都立病院ならではの役割を果たしているのです。例えばSARSなどの新興感染症に対応できる都内有数の病院です。歯科口腔外科は、地域の診療所では対応困難な障害者や寝たきり高齢者などの治療と在宅訪問歯科診療への支援を行っています。小児救急医療で二十四時間対応できるのは、区内では東邦医大病院と荏原病院だけです。
 少子化の中、荏原病院で扱う分娩数は毎年ふえており、出産前の両親学級や母乳外来に取り組んでいます。精神科救急においても、開放病棟を持つ荏原病院の存在は、近隣四区の中でもかけがえのないものとなっています。
 中でも、荏原病院の脳卒中医療は、MRIやCTなどの検査が二十四時間即応できる体制を持ち、脳卒中専用病床SUを設置し、チーム医療を行うなど、全国的にも高い水準を持っています。
 しかし、東京全体の脳卒中対策はおくれています。講談社が発行した医療書では、脳卒中対策において、日本じゅうで一番見劣りするのは東京だ。大学病院が群雄割拠して足並みがそろわない。だから、長く東京砂漠といわれてきたなどと指摘し、その中で、都立荏原病院が都内ナンバーワンと紹介しています。
 脳卒中対策は、高齢社会に向け、ますます重要になっています。詰まった血管を開通させる新薬tPAは欧米で既に普及しており、発症してから三時間以内に注射をすれば、後遺症を残さず社会復帰できる可能性が飛躍的に高まります。日本でも発売は時間の問題であり、倒れてから三十分以内に搬入し、直ちにMRIを撮って治療ができる脳卒中の救急システムと専門的対応ができる脳卒中センターを東京全域につくり上げることが急務となっています。
 救命救急センターで対応すればよいというこれまでの都の対応では時代おくれです。都立荏原病院と東京都が都内の大学病院、医療機関に働きかけて、直ちに脳卒中の医療救急システムの確立に向けた検討を開始すること、そのために、まず荏原病院を中心に、城南地域での体制整備を行うことを提案するものです。お答えください。
 荏原病院の現場では、今の水準をさらに発展させて、脳卒中診療部を確立することや、脳卒中専用病床SUをさらにレベルアップしたSCUを開設すること、専門医の育成、地域住民の予防医療に取り組むことを目指しています。こうしたことはコスト最優先でできることではありません。何よりも人材の裏づけが必要です。都立病院でこそできることです。脳卒中専用病床SUやSCUの整備、専門医の育成、予防医学の取り組みなど、都立病院における脳卒中医療の拡充が必要です。お答えください。
 今、荏原病院を都立として継続、充実を願う「アイ・ラブ・荏原」のポスターが町じゅうに広がっています。この熱い期待にこたえるべきではありませんか。都立荏原病院の医療は一朝一夕にできたものではありません。長年にわたってつくり上げてきた都民のかけがえのない財産です。高度専門医療と地域医療の提供を兼ね備えた荏原病院は都立として継続し、さらに充実させることこそ都民の願いです。公社化の再検討を求めるものですが、お答えください。
 最後に、救急事業についてです。
 東京都は、昨年十月から、民間救急コールセンターを試行し、緊急を要しない医療機関の転院搬送は民間搬送事業者を使うようにという対応を強化しています。現場では、透析中に腹痛が出現し、医師が緊急と判断し、救急車を要請したのに、医師が同乗できないなら民間救急でといわれたなどのトラブルが起きています。
 民間救急は赤色灯は使えず、信号や速度制限など交通規則遵守です。しかも有料で、一時間七千円ほどかかります。第二次財政再建推進プランの見直し事業に救急搬送が例示され、転院搬送の一部有料化なども視野に入れると書かれています。救急車を要請しても、民間救急でとの対応が広がれば、事実上の有料化につながります。救急車に医師が同乗するかしないかは医師の判断であることを改めて確認したいと思いますが、答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) かち佳代子議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、裁判の判決についてでありますが、あなたのご提言は大変ありがた迷惑でありまして、私もお互いに選挙を体験している人間ですから、あんなことは口が裂けてもいえるわけがない、私だっておば様たちの票をいただいているので。
 しかし、私は、あの裁判はちょっとおかしいと思いますね。どうして人の言葉を引用したものが私の発言になるんですか。余計な前文だと思いますよ。
 とにかく繰り返して申しますけれども、あれは私と松井さんとの対談で、松井さんが人間の文明が進むことで非常に不自然な循環、悪い循環が地球を覆うようになって、そして、いろんな結果が出ているということで、例えばどういうことですかといったら、あの人がそういったので、私はちょっとたまげまして、理は通っているようかもしれないけれども、それは大変な発言で、まあせいぜいあなたがいってくださいよといって、笑ったんですけれども、それはある会合で、環境問題の会合でしたので、中に共産党のシンパもいたんでしょう。右から左へあなた方に伝わって、いつかその発言になったようですけれどもね。いわないものはいわない。いったものはいう。いわないものをいったとし、いったものをいわないとして粛清されたり、逮捕されるというのは共産社会だけでありまして、私はやっぱり非常にあなた方のやり方というのはデマゴーグで、共産的の典型的なやり口だと思いましたな。
 次いで、都立病院改革についてでありますが、都立病院改革は、都と地元自治体、地域の医療機関などがそれぞれの役割を担い、密接に連携しながら、都民に対する総体としての医療サービスを充実し、強化しようとしているものであります。都民全体の医療ニーズを視野に入れた改革であります。
 都は今後とも、都民の安全・安心を支える質の高い患者中心の医療を提供するため、都立病院改革を積極的に推進してまいります。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔福祉保健局長幸田昭一君登壇〕

○福祉保健局長(幸田昭一君) 特定療養費初め、福祉、保健、医療に関します四点のご質問にお答えいたします。
 まず、特定療養費の徴収についてでありますが、お話の特定療養費制度は健康保険法に基づくものであり、病院と診療所の機能分担の推進を図るため、他の医療機関の紹介なしに受診した患者から、初診時に費用を徴収できるものであります。
 ただし、他からの紹介がない場合でも、緊急その他やむを得ない事情により来院した場合には、徴収しないこととされております。
 特定療養費を徴収するか否かの判断は、病院において、個別の患者ごとに行うものとされていますが、仮に徴収に当たって不適切な取り扱いがあった場合には、国との連携のもとで是正指導を行うこととなります。
 次に、公社病院の現場の要求についてでありますが、ご質問で挙げられた現場の声のほとんどは公社病院の各診療科ごとの個別的な要望であり、組織として提出されたものではございません。
 都は、保健医療公社とともに公社病院の運営状況を踏まえ、地域ニーズ等に即した適切な医療を提供するための効率的な体制整備に努めております。
 次に、公社病院に対する都の支援についてでありますが、公社の地域病院は、地域医療連携を通じて二次医療を提供するとともに、地域に不足する救急やがん医療などを提供することにより、地域医療の充実を図ることを目的として運営されております。こうした観点から、都は公社に対しまして、人的、財政的な支援を行っております。
 次に、脳卒中の医療救急システムについてでありますが、脳卒中は発症直後の迅速な医療対応が重要であります。このため、都は、高度かつ総合的な診療基盤を有し、生命危機を伴う重篤な救急患者の治療を行う救命救急センター二十一カ所を中心に、救急医療体制を整備し、対応しております。
 また、救命処置後の後遺症を予防、軽減させるためのリハビリテーションも重要であり、専門病床や地域リハビリテーション支援センターの整備などにより、体制の充実に努めております。
 最後に、城南地域での脳卒中の体制整備についてでありますが、区南部保健医療圏には、既に二つの大学病院に救命救急センターが整備されており、脳卒中の救急医療については、これらの救命センターを中心に救急医療体制を整備することにより、対応しております。また、地域の医療機関との連携のもと、救命処置後の患者さんへの適切な医療提供に努めております。
 脳血管疾患医療を重点医療としている荏原病院についても、こうした体制の中で、その機能が活用されているものと考えます。
   〔病院経営本部長押元洋君登壇〕

○病院経営本部長(押元洋君) 都立病院についての二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、都立病院における脳血管疾患医療についてでございますが、都立病院改革マスタープランでは、救命救急センターを有します広尾、墨東、府中の三病院で、脳血管疾患を重点医療と位置づけまして、さまざまな症状に的確に対応をしております。
 今後とも、この三病院を中心に、脳血管疾患に対する適切な医療提供に努めてまいります。
 次に、荏原病院の保健医療公社への移管についてでございますが、荏原病院は、地域の医療機関との連携を通じまして、継続性のある一貫した医療を提供する地域の中核的病院として、公社に運営を移管するものでございます。地域全体の医療サービスの向上を図るため、医療ニーズを十分に踏まえつつ、引き続き荏原病院の公社への移管を着実に推進してまいります。
   〔消防総監白谷祐二君登壇〕

○消防総監(白谷祐二君) 転院搬送に当たりまして、救急車に医師が同乗する場合の判断についてでありますが、救急業務等に関する条例におきましては、転院搬送とは、医療上の理由により、医師の病状管理のもとに、緊急に他の医療機関等に移送する必要がある傷病者を迅速に搬送するための適当な手段がない場合に、救急隊によって搬送することと規定されております。
 したがいまして、転院搬送の場合、医師の病状管理のもとに行われることが前提となっております。この医師の病状管理とは、救急車に医師が同乗して、転院先の医療機関に到着するまでの間、傷病者を管理することであります。ただし、医師が同乗する必要がないと認め、かつ搬送中における相当な処置が講じられた場合には、医師の病状管理があるものとみなしまして、転院搬送の対象としております。
 医師が救急車に同乗するかどうかは医師の判断によることとなりますが、転院搬送で医師が同乗しない場合は、一例を挙げますと、看護師等を同乗させるなど、搬送中における相当な処置が講じられなければなりません。そのため、当庁では、転院搬送の要請があった際には、緊急性を初め、医師の同乗や搬送中の相当な処置につきまして確認しております。

○議長(内田茂君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時四十九分休憩

   午後四時十二分開議

○議長(内田茂君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 六十八番串田克巳君。
   〔六十八番串田克巳君登壇〕

○六十八番(串田克巳君) 初めに、多摩振興策について幾つかお伺いいたします。
 去る一月、都は、多摩リーディングプロジェクトを策定しましたが、多摩振興については、長い間、三多摩格差の解消を目指し、振興策が展開されてきました。
 区部のベッドタウンとしての役割を担った多摩地域は、急速な人口増加に比べて都市基盤等の整備が追いつかず、区部との格差問題が提起され、昭和五十年に、義務教育施設、道路、下水道など、三多摩格差八課題を設定しました。以降、多摩都民が区部と同等の生活上の便益が享受できるよう、都と市町村が協力して格差是正に取り組んできた結果、この八課題については、道路の平均幅員にはまだ差があるものの、随分と改善されてきています。
 しかし、そもそも区部との格差を解消していくこと自体は必要なことですが、格差のみを追っていくのでは、多摩の将来を展望することは難しいものがあります。私が住む八王子市は、先端技術産業が集積する中、市を挙げてベンチャー企業への支援に取り組んでいます。他方、八王子市の周辺部は山に囲まれ、自然豊かな環境を有し、仕事も住まいもという都民には喜ばれる都市であります。
 こうした産業集積などの固有資源を生かした都市づくりを進めていくことこそが大切であると考えます。多摩で生活する四百万人都民がいつまでも多摩に住み続けたいと思うよう、夢があふれる多摩の施策を、都は広域的自治体の立場から、市町村は基礎的自治体の立場から展開していく必要があります。
 今後は、格差是正のみにとらわれることなく、多摩の固有資源を生かして魅力ある都市づくりを推進すべきと考えますが、知事の所見をお伺いします。
 次に、多摩地域の道路について伺います。
 多摩在住の都民が高速道路を利用して都内に行く場合、中央自動車道と首都高速道路の料金をそれぞれ払っております。
 この件に関し、私の地元八王子市議会では、昨年六月に、中央道の料金撤廃に関する意見書を国に提出し、本年二月には、中央自動車道高井戸─八王子間の料金撤廃を求める八王子市議会の会を設立したところであり、民営化のタイミングをとらえ、活発に活動をしております。また、多摩の多くの議会においても、中央道の料金問題に関し、同様の意見書が次々と採決されております。この件は多摩都民の悲願であり、我が党も過去幾度となく要請をしております。
 そこで、中央道の無料化に至る道筋の一つとして、料金体系の見直しを国へ働きかけていく必要があると考えますが、所見を伺います。
 一方、多摩地域は、先端技術産業等の集積、利用可能な大規模空間、恵まれた自然、豊かな人材など、都心部と異なる特色を持っています。多摩地域の持つこうしたさまざまな特色を生かしながら、首都圏の中核をなす多摩を実現していくためには、他県との連携も含めた、広域的な都市間連携を強化していくことが必要です。
 首都圏の広域的な道路である圏央道は、現在、埼玉県側より日の出インターまで開通しておりますが、今月下旬にはあきる野インターまで開通する予定であり、さらに十七年度中には中央道とつながると聞いております。このように圏央道の整備が進むことで、多摩を中心とした首都圏の人と物の交流が一層活発になると見込まれることから、これを支える道路を充実していくことが不可欠ではないかと考えます。
 そこで、多摩地域の道路ネットワークの現状に対する都の認識についてお伺いいたします。
 都では、都市計画道路の整備を計画的に進めるため、多摩地域における都市計画道路の整備方針を策定中であり、その中で優先整備路線の選定を行っていくと聞いておりますが、この内容についてお伺いします。
 次に、東京都高尾自然科学博物館跡地の地元市への移管について伺います。
 八王子市は、四季の変化に富んだ高尾、陣馬の山並みや、清らかな源流を集めて流れる浅川などの自然に恵まれた、先人の築き上げてきた歴史、文化の色濃く残るまちであり、これらの市民共有の財産を生かした新たな時代のまちづくりを進めるため、八王子市では、「人とひと・人と自然が共生し、だれもが活き活き生きるまち」を基本理念とする八王子ゆめおりプランを策定しました。都としても、地域の取り組みに対して支援をお願いしたいと思います。
 特に、生まれ変わる高尾山をできるだけ多くの方に見ていただくことは、観光産業の振興につながるばかりではなく、市民の郷土を愛する気持ちを高める上でも重要と考えております。
 このように、多摩地域には多くの観光資源がありますが、都としてどのような観光振興施策を展開しようと考えているのか、所見をお伺いします。
 高尾山のふもとにあった旧東京都高尾自然科学博物館の跡地が、平成十七年の四月に八王子市に移管されます。移管に当たっては、旧博物館の博物館機能の継承が盛り込まれ、旧博物館で収蔵していた資料を活用し、自然への理解を進めることは、自然との共生を推進していく上でも意義のあることで、また、エコツーリズムの理念にもつながる新たな観光の拠点をつくる意味でも重要と考えます。
 自然に触れ、理解することは、八王子市民のみならず、広く都民にとっても重要であり、自然学習などの視点から、都としても積極的に協力すべきと考えますが、教育長の見解を伺います。
 旧博物館の跡地は、高尾山のふもとに立地し、今後の八王子市の施策を推進する上で絶好の拠点となり得る場所でありますが、車での利用に際しては、薬王院の参道からしか入れず、今後の利用計画策定に当たり、跡地と甲州街道を結ぶ専用の進入路が必要であります。
 しかし、現地に高尾新橋という壊れかけた使用不能となった橋が残っていて、八王子市の利用計画策定の阻害要因になっていると聞いております。この橋については、設置当初から権限が明確でなく、河川の占用許可も得られてないということですが、責任の所在が明確でないからと、だれも補修等をせず老朽化し、道路管理者から危険であるとの指摘を受け、施設側の出入り口を封鎖したと聞いています。
 実態として、薬王院の参拝客や、この橋を都も利用していたことは明らかであり、既に使用中止の状態になった以上、都としても現状を適切に把握し、住民の安全確保ができるよう細心の注意を払っていただきたい。また、今後、市が利用計画を策定するに当たり支障のないように、適切な配慮をしていただくことを強く要望しておきます。
 次に、多摩地域における浄化槽整備についてお伺いいたします。
 多摩川の河川など公共用水域では、家庭からの生活排水が一部地域で未処理のまま流入しているため、浅川など一部の河川において、BODが環境基準値を依然として上回っています。
 この状況を改善していくための下水道の整備には、完成まで時間がかかり、また、整備計画の対象外の地域もあり、生活排水対策としては、下水道の整備はもちろん、合併処理浄化槽の整備が重要と考えますが、多摩地域における合併処理浄化槽の整備の現状についてお伺いいたします。
 これまで多摩地域の市町村は、住民による合併処理浄化槽の設置を支援し、整備を進めてきました。今後、合併処理浄化槽の整備を効率的に進めていくためには、住民が設置する手法と市町村が設置する手法を適切に活用していくことが必要であり、都もこれを支援すべきと考えるが、見解をお伺いいたします。
 次に、去る二月一日に避難解除を受けて、四年五カ月の避難生活を経て今回帰島された三宅村の皆さんは、これからの島における生活再建に向けて、これまで以上にご苦労されて、心理的、経済的な負担も増大することが予想され、また、二月の帰島を見送り、今後の帰島を目指す島民の方々としても、その準備に多くの負担を強いられるものと推測されます。
 こうした中、東京都教育委員会は、都立三宅高校の四月からの島の校舎での授業再開にあわせて、帰島できない生徒のための分教場を設置することを決め、今後三宅島帰島を円滑に進めていくためには、極めて意味のあることと考えますが、具体的な内容をお伺いいたします。
 村民の皆さんの心理的、経済的負担の軽減を図るため、引き続き平成十七年度については授業料の減免措置を実施すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、水道事業について伺います。
 先ごろ、国の中央防災会議は、首都直下地震が発生した場合の被害想定を発表いたしました。幾つかのケースが示されていますが、ある程度切迫性が高いとされている東京港北部を震源とするマグニチュード七・三、震度六強の地震が発生した場合、発生一日目の断水人口が総人口の三分の一にも及ぶという、非常にショッキングな内容となっております。
 水道局では、貯水池の堤体強化、送配水管の耐震対策化、ネットワーク化などに取り組んでいることは高く評価しております。
 しかしながら、私の地元である八王子市も含め、多摩地区の水道は、その成り立ちにおいて区部水道とは異なる状況にあり、多摩地区では、広域的な施設の連絡が不十分な状況にあります。震災時の水道施設の信頼性を確保するため、バックアップ機能を強化できる管路のネットワーク化の取り組みについてお伺いいたします。
 また、昨年十月の新潟中越地震では、山間部における被害が注目されました。多摩地域も山間部を抱えており、そうした地域への対策としてどのように取り組みを進めているのか、あわせてお伺いいたします。
 多摩地域の水道は、市町から都への経営統合後、都から市町の水道部局に事務委託するという特異な運営方法を採用してきましたが、各市町から都へ順次事務の移行を行っており、その際、施設の運転、維持管理など業務の引き継ぎに万全を期すことは当然であります。
 そこで、今後の多摩地区の水道の安定給水確保に向けた水道局の取り組みについてお伺いし、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 串田克巳議員の一般質問にお答えいたします。
 多摩振興についてでありますが、東京の三分の一の人口を擁する多摩地域は、最先端技術が集積し、製造品の出荷額では区部を上回るとともに、非常に豊かな自然環境に恵まれておりまして、都心へのアクセスのよさも加わってまいりまして、首都圏を牽引する大きな可能性を秘めた地域だと思っております。
 区部との格差是正論は前からありましたが、もうそれを既に脱却して、多摩のポテンシャルを十分に開花させていくために、多摩リーディングプロジェクトを策定いたしました。多摩発展の大きな引き金ともなる横田基地の軍民共用化に積極的に取り組むとともに、先端技術に豊かな自然を最大限活用した、首都圏の中核をなす多摩の実現に力を尽くしていきたいと思っております。
 ついでにこれはお願いですけれども、私、環境庁におりますときに、たしか高尾山を起点とした自然遊歩東海道というのを奈良までつくったんですけれども、余り使われないんです。これは、要するに尾根伝いに行ってなかなかの道なんですけれども、日が暮れて宿泊するところがないものだから、一々山からおりなければならない。あれはやっぱり二つか三つ目の宿場と神奈川県のどこかと提携して、簡易な宿泊所などをつくって、二、三日の行程で山を楽しむようなことをしますと、私は、八王子は有力な観光の出発点になると思いますので、ひとつぜひご一考いただきたいと思います。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、旧東京都高尾自然科学博物館の移管後の協力についてでございますが、旧東京都高尾自然科学博物館の移管に当たりましては、博物館機能を継承していくことで八王子市と合意しておりまして、そのため、収蔵していた資料類を一括しまして八王子市に譲渡し、資料の有効活用を図ることとしております。
 都教育委員会としましては、今後、八王子市が高尾の豊かな自然を背景にした、博物館資料等の利活用計画を策定するに当たりまして、技術的な支援や助言等を積極的に行ってまいります。
 次に、都立三宅高校の分教場の具体的な内容についてでございますが、三宅島では今なお火山ガスが放出される状況が続いておりまして、生徒の中には、健康上の理由や家族の健康上の不安などにより、直ちに帰島することが困難な生徒もおります。
 このため、即時帰島が困難な都立三宅高校の生徒の継続的な就学機会を確保するため、これらの生徒が卒業します平成十九年三月三十一日までの二年間、旧都立秋川高校の校舎等を活用して、分教場を設置いたすものでございます。
 また、帰島が困難であり、保護者との同居が難しい状況が生じた場合には、その生徒の生活のために、旧都立秋川高校寄宿舎の一部を宿舎として提供してまいります。
 最後に、三宅高校生徒にかかわる授業料等の減免措置の実施についてでございますが、現在の授業料、入学料等の減免措置につきましては、三宅島帰島の準備が具体化する中で、被災者の心理的、経済的負担の軽減を図ることを目的としまして、生活保護世帯等の経済的理由に基づく通常の減免措置を拡充する形で、平成十六年四月から実施したものでございます。
 お話しのとおり、本格帰島期から生活再建期に当たる平成十七年度につきましては、なお引き続く心理的、経済的負担を軽減する必要がございますことから、減免措置を継続し、村民の皆さんが円滑に帰島し、少しでも早く安定した生活ができるよう支援をしてまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 多摩地域の道路に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、中央道の高井戸から八王子間の料金体系の見直しについてでございますが、中央道の料金体系は、利用距離に応じた料金徴収を原則としておりますが、高井戸から八王子間につきましては、料金所の渋滞を避けるため、均一料金制度となっております。
 このような中、民営化に向けたコスト削減等の成果を幅広く利用者に還元するものとして、ETCを活用した割引制度を導入し、本年一月には、最大五割引きするなど料金体系の見直しが行われております。
 都といたしましては、今後とも、高速道路の料金体系について、利用者等の視点に立った適切な見直しが行われるよう、引き続き国に働きかけてまいります。
 次に、多摩の道路ネットワークの現状認識についてでございますが、多摩地域は、圏央道の整備が着実に進展している一方で、都市計画道路の整備率がいまだ五割程度であることなどから、道路ネットワークの形成が不十分であると認識いたしております。このため交通渋滞が慢性化し、移動に多大な時間と労力を要するなど、市民生活や経済活動にも多大な支障が生じております。
 こうした問題を解決し、多摩を魅力と活力あふれる圏域とするため、調布保谷線を初めとする南北道路などの整備を促進し、道路ネットワークの早期形成に努めてまいります。
 最後に、多摩地域での優先整備路線の選定についてでございますが、選定に際しましては、まず、道路の基本的な機能である交通の円滑化、防災性の向上、さらには地域環境の保全という視点を基本といたします。
 これに加え、横田基地の軍民共用化を視野に入れるとともに、多摩の地域特性を踏まえた視点についても重視してまいります。具体的には、埼玉や神奈川との連絡強化や、緑に彩られた沿道の街並み景観の創出などでございます。
 今後とも、関係市町と連携し、多摩地域の発展に資する道路整備を推進してまいります。
   〔産業労働局長関谷保夫君登壇〕

○産業労働局長(関谷保夫君) 多摩地域の観光振興施策の展開についてのご質問にお答え申し上げます。
 多摩地域には、季節ごとに豊かな自然の魅力や歴史的な見どころ、特色のある地場産業等、多彩な観光資源がございます。こうした中で、多摩の各市町村が観光プランを策定して、地域の特性を生かした観光資源の発掘、情報発信、観光客の受け入れ体制の整備を図ることは重要でございます。
 現在都は、市町村の観光マップの作成や観光案内標識の整備などに対する助成のほか、ウェブサイト「東京の観光」によるPRなどにより、それぞれの地域の取り組みを積極的に支援しております。
 さらに、十七年度は、それらを組み合わせ、広域的な連携を図ることにより周遊性をより高め、観光地としての一層の魅力向上に努めてまいります。
   〔環境局長平井健一君登壇〕

○環境局長(平井健一君) 多摩地域における浄化槽整備についてのご質問にお答えいたします。
 まず、合併処理浄化槽整備の現状についてでございますが、この浄化槽は、し尿と生活雑排水とをあわせて効果的に処理するものでございまして、河川など公共用水域の水質改善に有効な手段でございます。
 平成十五年度末現在、多摩地域におきましては約一万三千基が整備されており、下水道の整備状況を勘案しつつ、さらにその整備促進を図ることが必要と考えております。
 次に、合併処理浄化槽の今後の整備に当たりましては、住民が設置する方法と市町村みずからが設置する方法とを市町村が実情に応じて選択し、効率的に整備していくことが重要でございます。
 今後とも、市町村の合併処理浄化槽の整備促進に向けて、必要な支援を行ってまいります。
   〔水道局長高橋功君登壇〕

○水道局長(高橋功君) 多摩地区の水道事業に関する三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、管路の広域的ネットワーク化の取り組みについてでございます。
 水道局では、平成十五年六月に多摩地区水道経営改善基本計画を策定し、広域的な施設整備を推進するなど、バックアップ機能の強化を図っております。これまで南北方向へ枝状に、主要な幹線である送水管の整備を進めてまいりました。
 現在、こうした送水管をネットワーク化するため、多摩南部地域におきまして、平成二十二年度末の完成を目途に、多摩市の聖ヶ丘と昭島市の拝島を東西に結ぶ多摩丘陵幹線を整備しております。本年夏には、このうち、第一次整備区間である聖ヶ丘給水所と八王子市の鑓水小山給水所の間の十三キロメートルが通水できる見通しでございます。
 次に、山間部における水道施設の震災対策についてでございます。
 ご指摘のとおり、新潟県中越地震の例を見ましても、山間部での震災時における水の供給は、水道事業者にとって極めて重要な課題の一つであると認識をしております。
 しかしながら、こうした地域では、管路を布設するための道路が限られていることなどから、バックアップ機能を有する管路をネットワーク化することは困難な状況となっております。
 このため、震災などの際、給水の拠点となります配水池の整備を進めるとともに、停電時にも給水を確保できるよう、浄水所等に自家発電設備を順次整備しております。こうした取り組みを着実に推進しまして、山間部における震災時の給水の確保に努めてまいります。
 最後に、多摩地区の安定給水の確保についてでございます。
 災害時を含め、多摩地区の安定給水を確保していくことは、水道事業の基本的な使命であると認識をしております。
 しかし、多摩地区では、これまで市町ごとの施設整備が行われてきましたことから、市町の区域を越えた配水管網が必ずしも十分に整備されていないなど、災害時や施設更新時における給水の安定性に課題を残しております。
 このため、平成十七年度中に主要な配水管の整備計画を策定することとし、鋭意検討を進めるとともに、広域的な施設運用の実施や危機管理の一層の充実を図り、事故時等への備えも強化してまいります。このような施策を総合的に推進していくことにより、多摩地区の給水安定性の一層の向上に全力を尽くしてまいります。

〇議長(内田茂君) 六十一番森田安孝君。
   〔六十一番森田安孝君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○六十一番(森田安孝君) 地球温暖化防止のための国際条約、京都議定書が二月十六日に発効しました。この国際公約を実現するために、都の役割も大変大きいものがあります。
 このような中で、都は、省エネルギーと光熱水費の削減を目的としたESCO事業を事業化したことは、時宜に合った施策であると評価します。
 まず、先行的に都立広尾病院でESCO事業を行うと聞いています。都が事前に実施した都立広尾病院の省エネ診断によりますと、一年間の電気、水道などの光熱水費が、現状、年間三億三千九百万円のところ、年間六千六百万円以上の削減、省エネ率二五・四%以上という大変に大きな効果が期待されるという結果が出ました。事業が具体的になるのは十八年度のことですが、省エネの面からも経費の削減という面からも、大きな成果が期待されています。
 そこで、伺います。
 第一に、ESCO事業の事業化は、エネルギー削減効果の高い施設を選定し、試行を行っていますが、幾つの施設で、どのような試算結果が出たのか、伺います。
 第二に、すべての都施設で、二十四時間稼働している広尾病院のような二五%もの劇的な削減効果が出るとは思いませんが、都立広尾病院だけではなく、ESCO事業を早急に他の施設にも広げるべきです。今後の計画をお示しください。
 第三に、都立広尾病院だけで六千六百万円の削減効果が期待できることは、都施設全体で取り組めば、財政再建の面からも大変に大きな成果が期待できます。外郭団体も含めた全施設のESCO事業推進のため、知事主導で全庁的なプロジェクトチームを発足すべきです。見解を伺います。
 省エネ、経費節減のもう一つの視点は、共通に使用できる資産については、できる限り共通で使用するということです。今定例会の包括外部監査人説明にも、資産活用について都全体として取り組むべきだ、企業局や事業団の所有だからという説明は、都民の目からすると役所の中だけの議論のように見えると厳しく指摘しています。私も全くそのとおりだと思います。ところが、都庁のように大きく、しかも縦割りの組織になると、横の連携がとりにくく、同じような資産を、それぞれの局でたくさんの経費をかけて開発、運用しているケースが多く見られます。
 その一つがGIS、いわゆる地理情報システムです。このシステムの基本は、東京都の地図情報です。それに、地図上に施設や都市計画、道路、水道、下水、防災などの情報を記入する、行政を運営していくためには必要不可欠なシステムです。このシステムを開発、運用、維持していくためには多くの費用がかかります。東京のまちは刻々変化していきますから、データの更新だけでも大変な費用がかかります。
 例えばGISを利用したシステムの平成十六年度の運営経費は、東京消防庁も含め、十七システムで三十八億四千八百万円の経費がかかっています。例えば、水道局の水道マッピングシステムに七億円、下水道局の下水道台帳情報システムに二億五千万円、総務局の災害情報システムに七千万円などが主なものです。そして現状は、それぞれ個別に維持、更新に毎年同様の費用をかけています。これを都庁共通の統合型データベースにして各局、各部署が活用すれば大変大きな経費削減になります。
 GISの専門家は、三点にわたって提案をしています。その第一は、都に現有するGIS地図資産としては、主なものは都市整備局、水道局、下水道局のものです。これら既存の資産を活用することで、共通地図の早期整備が低コストで可能です。二番目に、この共通地図を全庁GISとして構築し、各部局の業務データを組み合わせてGISの活用を図ります。第三に、以上の形で利用を続ける中で、データ項目の追加や整理を行い、総務省モデルの内容に段階的に近づけていくという提案です。まさに資源活用に対する具体的、建設的な提案だと思います。
 そこで伺います。
 第一に、この提案に対して所見を伺います。また、都は、統合型GISの構築に向け検討していると聞いていますが、なかなか取り組みは進んでいません。その理由をお聞かせください。
 第二に、統合型への移行は、総論としてはよいのだが、各局の思惑があり、なかなか進まないとも仄聞しています。包括外部監査人報告でも、局を超えて都全体の財産の有効活用を提案しています。都民サービスも向上し、経費節減もできる統合型GISを早急に実現すべきです。所見を伺います。
 第三に、このGISのように、複数の局がかかわる、仕事がなかなか進まない事例が都の中にはまだ存在しています。こうした縦割りの悪弊を排除するためは、一層、行政改革を進めていく必要があると考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、防災対策について伺います。
 かつて環状七号線以東の神田川、善福寺川流域は都市型水害の多発地帯で、台風が来たり、強い集中豪雨があると、川の水があふれたり、下水が逆流したりして水害が発生し、流域の住民は心配でなりませんでした。出水するとその被害は大変で、床下浸水でも、消毒、乾燥などで、少なくとも一カ月間はその部屋を使用することはできません。ましてや床上浸水や地下室の被害は、その比ではありません。
 ところが、平成九年に、環七の地下五十メートルに直径十二・五メートルの環七地下調節池の一期工事が完成しました。集中豪雨で河川の流量が増加すると、一時的にあふれる水をのみ込み、雨がやんだら放流します。
 調節池の供用開始以前の平成五年の集中豪雨では、杉並、中野、新宿などで三千世帯を超える都民が洪水で大被害に遭いました。ところが、昨年の二十二号台風は、総雨量も時間当たり雨量も、平成五年の豪雨を超えていたにもかかわらず、下流域の浸水はわずか七世帯でした。このような成果はなかなか報道はされませんが、私は喝采を送りたいと思います。この事業は防災対策の見本ではないかと思います。
 現在着工している第二期工事が完成しますと、さらに安全性が増すことは間違いありません。一期、二期工事を合わせて、事業費は約一千億円を費やしましたが、防災対策に大変大きな成果があったと思います。防災対策は、事後ではなく事前に行うべきという見本であります。
 そこで伺います。
 第一に、環七地下調節池一期工事完成後、台風や集中豪雨で増水した河川の水を取り入れた回数は何回ありますか。そのうち、もし調節池がなければ川の水があふれるおそれがある警戒水位を超えたのは何回ありましたか。
 第二に、第二期工事の供用開始と完成の予定はいつごろですか。また、完成後どのような効果が期待できますか。
 第三に、環七の上流部分は、いまだ出水危険地帯が存在します。二期工事が完成すると、神田川、善福寺川の上流の整備が可能になります。早急に取り組んでいただきたい。所見を伺います。
 防災対策に関連し、我が党の代表質問でも取り上げました震災対策について伺います。
 中越地震で自宅が破壊された方には、三百万円の助成が国、自治体から支給されました。
 今後三十年の間に、七割の確率で南関東直下地震が来るといわれています。政府中央防災会議でも、百十二兆円、一万三千人の死者という被害想定を発表しました。特に杉並、中野、世田谷などの木造住宅密集地域は壊滅的な被害が生じると予測されています。
 地震後に再建のために助成するのではなく、事前に備えを固めて被害を最小にするよう耐震施策をとるべきです。その方が公的な支出も少なく、効果ははるかに大きいのです。
 そこで伺います。
 緊急車両も入れない木密地域の危険性については、都も、これまでにも何度となく指摘してきました。しかし、いまだ何ら解決の方向性も見えていません。
 中央防災会議の伊藤座長も、死者を減らすには火災の初期消火能力を高めることだ、古い木造家屋の建てかえを促進することも重要、自助努力のほかに公的支援も必要と訴えています。
 仮に、水害対策と同様、一千億円投入すると、十万世帯の危険住宅に改修費として百万円の助成ができます。一挙に解決の方向へ進展すると思います。このような思い切った対策を早急に講ずるべきです。所見を伺います。
 最後に、文化政策について伺います。
 東京のさらなる発展には、観光産業の振興とともに文化振興が不可欠です。都の行っているヘブンアーチスト事業やストリートペインティングも好評で、さらなる広がりが期待されます。
 また、昨年は、我が党の提案により、文化振興の都民の窓口、いわゆるワンストップサービスを設置し、一歩前進したことは評価したいと思います。しかし、東京の文化の広がりはまだまだ十分とはいえません。改めて、東京の文化振興の今後の取り組みについて伺います。
 都民が文化に親しむ機会を広げるために、文化に関するボランティア活動を支援することも大切です。例えば京都市には、河合文化庁長官を初めとする地元の文化人がアドバイザーとなった文化ボランティア制度があります。伝統文化の紹介や文化事業のサポートなど、文化芸術活動全般に及ぶ幅広い活動をしていると聞いています。
 東京で、外国人や地方からの観光客などの施設案内や観光案内にとどまらず、広く文化に関するボランティア活動を活発化させることが必要だと考えます。所見を伺います。
 先日、東京都の文化施策を語る会が発足し、各分野のアーチストや有識者による議論が行われていると聞いています。専門家の意見も参考に、文化がもっと都民に身近なものとなり、文化都市東京がさらに進むことを大いに期待し、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 森田安孝議員の一般質問にお答えいたします。
 縦割りを排除する行政改革の推進についてでありますが、私は今でも鮮明に覚えていますけれども、就任しましてすぐ、都庁担当の東京問題の専門家の東京新聞の論説委員もしていました塚田さんというベテランの記者と会食しまして、そのときに、石原さん、基本的なことを確かめたいけども、あなたは東京都でどういう行政をするのか、今のライン化のままでいいのか、それともそれをまたぐんですかといわれまして、当然のことでありますけど、私も国の政治で体験してきましたから、ライン化はやっぱりよくないと。つまり、非常に硬直した行政になるので、そんなことは毛頭考えていませんし、やっぱりそれを超える行政のシステムをつくっていきたいと申しました。そういうことで仕事を進めていくことも指示をしてきました。都庁全体が改革の目標と危機意識を共有し、行政の効率化を図っていくことが重要であると思っております。
 今後とも、都民からの負託にこたえ、都民サービスの充実と東京の再生という目的を達成するために、とにかくラインを超えて、局をまたいで、徹底した都庁改革に取り組んでいきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔財務局長松澤敏夫君登壇〕

○財務局長(松澤敏夫君) ESCO事業についての三点のご質問にお答えいたします。
 まず、ESCO事業の事業化に向けた試算についてでございますが、ESCO事業は、ESCO事業者の提案により施設の光熱水費とエネルギーの削減を保証するものであり、コストの縮減のほか、環境面からも有効な施策でございます。
 このため、都においては、平成十五年度に、各局が所管するエネルギー消費量の大きな施設のうち、都立病院など削減効果が高いと見込まれる十五の施設について事業化に向けた試算を行ったところでございます。
 その結果、この十五施設に対し、ESCO事業により約三十四億円の設備投資を行った場合、全体で光熱水費を十年間で約七十億円削減できるとともに、CO2を平均で一〇・六%程度削減できることが明らかになったところでございます。
 次に、都におけるESCO事業の今後の計画についてでございますが、ただいま申し上げました十五の施設のうち、既に実施している都立病院以外の施設については、省エネルギー効果や設備機器の更新時期、施設の運営計画などを総合的に勘案し、優先順位をつけながら計画的に実施していくこととしております。
 また、それ以外の大規模な施設についても、現在、導入可能性の調査を行っておりまして、今後、調査結果を十分見きわめながら対象施設を選定していく予定でございます。
 最後に、全庁的なプロジェクトチームの設置についてでございますが、ご指摘のとおり、ESCO事業を推進していくためには、施設ごとに費用対効果を検証しつつ、全庁的に取り組むことが重要でございます。
 都では現在、コストの縮減をさまざまな角度から推進していくため、東京都公共施設等コスト管理委員会を設置しておりまして、その中で、省エネルギー施策の一環としてESCO事業を計画的に推進していくこととしております。
 ご提案のESCO事業推進のためのプロジェクトチームの設置につきましては、当委員会の中で体制を強化し、対応してまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 地理情報システムに関する二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、都が保有いたします地図情報の活用についてでございますが、地理情報システム、いわゆるGISの統合は、資産の有効活用やシステム経費の削減などの点においての有効性は認識しております。
 統合に向けた取り組みについてでございますが、都市計画地理情報は、既に都市整備局を含む四局において共同利用を行い、また、広域防災電子地図も、既存のデータや市販のデータを活用いたしまして、八都県市が共同で作成し共有化するなど、資産の有効活用やシステムの経費削減に努めております。
 しかし、GISの統合には一時的に多額の経費を必要とすることや、セキュリティー、技術面、運用面など解決すべき課題も多く、引き続き調査検討を行ってまいります。
 次に、統合型GISの実現についてでございますが、システム構築に当たりましては、安定稼働の確保やセキュリティー、費用対効果等に留意しながら、再構築の時期をとらえ、必要性に応じて段階的に統合していくことが望ましいと考えております。
 今後は、最新の技術動向を踏まえまして、地図情報の共有化やシステムの共同利用を順次拡大しながら、東京都全体で地図情報の有効活用に努めてまいります。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君) 神田川環七地下調節池に関する三点の質問にお答えします。
 まず地下調節池の取水実績についてでありますが、この調節池は、神田川中流部の水害の軽減に効果的な施設であり、既に貯留量二十四万立方メートルの第一期事業につきましては平成九年四月から供用を開始しております。これまでに豪雨時に洪水を取水した回数は十七回でございます。
 また、洪水を監視する水位計の記録によりますと、警戒水位を超えた洪水の回数は十六回であり、そのうち、降雨状況などから推測して、調節池で取水しなければ河川から溢水のおそれがあったと考えられる洪水は七回でございます。
 次に、第二期事業の完成時期と効果についてでありますが、第二期事業は平成七年に着工し、十六年十一月にトンネルの掘進が完了いたしました。現在、第一期区間との接続工事を進めており、本年秋には善福寺川からも取水を開始いたします。引き続き、残る排水ポンプなどの施設整備を行い、十九年度の完成を目指してまいります。
 この取水により、善福寺川の洪水三十万立方メートルの貯留が可能となり、善福寺川の治水安全度が大幅に向上いたします。
 また、第一期及び第二期事業を合わせ、貯留量五十四万立方メートルの調節池が機能することから、神田川中流部の安全性がさらに高まるものと考えております。
 最後に、神田川などの今後の整備についてでありますが、神田川及び善福寺川の洪水を調節池に貯留することにより、下流への流量の負担を軽減できることから、調節池上流の改修が可能となります。
 神田川につきましては、平成十七年度より、取水施設付近から上流の未整備区間の護岸整備に着手いたします。また、善福寺川につきましても、環七通りの和田堀橋から上流の整備に向け、調査設計を行ってまいります。
 今後とも、安全で親しみのある河川の整備を着実に進めてまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 木造住宅密集地域における住宅の耐震改修への助成についてでございますが、震災時に倒壊のおそれのある住宅の耐震化を図ることは、市街地の安全性を高める観点からも重要なことと認識しております。
 都としては、災害に強い都市を目指し、これまでも木密地域などの整備、改善を進めるとともに、住宅の耐震改修を促進するため、住宅耐震診断講習会の実施、耐震フォーラムの開催、簡易な自己診断方法の周知を行うなど、普及啓発に取り組んでまいりました。
 今後とも、区市町村と連携して木造住宅の耐震化を促し、木密地域の安全性の向上に努めてまいります。
   〔生活文化局長山内隆夫君登壇〕

○生活文化局長(山内隆夫君) 文化芸術振興に関する二つの質問にお答えいたします。
 まず、今後の文化振興の取り組みについてでありますが、東京都では、都立施設を初めとする公共空間をアーチストの活動や発表の場として開放するなど、都民が文化と触れ合う場を広げてまいりました。
 ヘブンアーチスト事業は、年々その規模を拡大し、本年八月には、東京の代表として愛知万博にも参加いたします。
 また、現在、駒沢オリンピック公園でストリートペインティングの第二弾を制作中でありまして、さらに代々木公園にも拡大していく予定であります。
 今後、東京都の文化施策を語る会において、自由に議論、提言していただき、今後の文化施策のあり方をまとめていくこととしております。
 次に、文化に関するボランティア活動についてでありますが、ご指摘のように、都民がボランティアとして文化活動に参加し、文化を支えていくことは、大変意義のあることであります。
 現在、都立の文化施設では、五百人を超えるボランティアが展示作品を解説したり、子どもたちの作品づくりを手助けするなど、多彩な活動を行っており、利用者からも好評を得ております。
 また、文化に関するホームページである「東京アートインデックス」におきまして、民間の文化事業を含めたボランティアの募集情報を提供しております。
 今後とも、情報の充実に努めるなど、文化に関心のある都民がさまざまなボランティア活動に参加できるよう、環境整備に努めてまいりたいと考えております。

〇副議長(中山秀雄君) 四十三番松原忠義君。
   〔四十三番松原忠義君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○四十三番(松原忠義君) 都の産業振興について順次質問をいたします。
 最初に、技能検定場について質問をいたします。
 私は、日ごろから、職人の技能というものの大切さを痛感しています。製造業の分野だけでなく、一千万都民の住環境を支える建築業においても、職人の技能は重要なものであります。家一軒建てるにしても、大工、左官、内装仕上げなど職人のわざを結集しなければ、質の高い住宅は望むべくもありません。
 高齢化や後継者不足が進む中、職人の技能が失われていくことは、都内産業全体の衰退にもつながりかねないと思っております。
 製造業や建築業における熟練技能を客観的に評価する仕組みとして、技能検定制度があります。この制度は、製造業や建築業に必要不可欠な技能の継承、維持向上を図る上で大変重要な仕組みであると考えますが、都の認識について伺います。
 この技能検定の実施に当たっては、都内に適当な施設が少なく、不便を強いられたり、他県にある施設を利用せざるを得ない職種もあると聞いております。このため、東京都管工事工業協同組合を初め、都内三十九の業界団体から、技能検定場建設の請願が提出され、平成十四年の第二回定例会で趣旨採択されたところであります。
 これまで都においては、さまざまな検討が行われてきたことと思いますが、請願の趣旨を踏まえて、技能検定施設を早急に整備すべきと考えますが、その対応とあわせて、整備するに当たっては、技能検定の会場として使うだけでなく、さまざまな活用ができる施設にするべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 ところで、東京都では、戸建て住宅の三割価格引き下げの実証実験に取り組んでいるところであります。この実証実験では、合理的な生産システムを使って住宅を建設するとしているとのことですが、都内の中小工務店からは、どのようにしたら安くて質のよい住宅がつくれるのか、とても強い関心が寄せられています。
 今後、どのようにして合理的な生産システムについて普及をしていくのか、対応についてお伺いいたします。
 次に、ものづくり産業の振興について伺います。
 企業が国際競争力を高めるには、最先端技術の活用が有用であり、中でもナノテクノロジーは技術の汎用性が高く、加工技術を行う上で活用が大いに期待される分野であります。
 私も先日、ナノテクセンターの開設式典へ行ってまいりましたが、先端技術への支援と同時に、忘れてならないのは基盤技術への支援であります。企業にとって技術トレンドへの早期対応は至上命令であり、技術支援には弾力的でスピーディーな対応が求められています。その意味で、産業技術研究所の地方独立行政法人化は、まことに時宜にかなったものと認識しております。
 そこで、産業技術研究所が地方独立行政法人になることにより何が変わるのか、とりわけ、中小企業の技術支援にどのような改革を期待できるのか、お伺いをいたします。
 地方公設試験研究機関の独立行政法人化は、我が国初の取り組みであり、さきの第三回定例会でも我が会派が指摘したように、施設等のハード面の整備も含め、全国の範たる立派な法人づくりに努めていただきたいと思います。
 ものづくりの中小企業が地域の中でこれからも発展していくためには、技術や技能を磨き、オンリーワン企業になっていくか、グループを形成して互いの経営資源を補い合いながら、新しいビジネスを開拓するなどの取り組みが必要となっています。
 昨年の中小企業振興対策審議会答申では、今後のものづくりの集積施策として、企業間の柔軟で機動的なネットワークを構築し、個々の企業の力と集積の力を結びつけて伸ばしていくことが重要と指摘しています。
 こうした指摘を踏まえ、都は来年度、どのようにものづくりの産業集積施策を展開していくのか、お伺いいたします。
 次に、再生支援についてお伺いいたします。
 中小企業の中には、再生の見込みがありながら、倒産の危機に直面している企業も数多くあり、このままでは技術やノウハウ、人材などの貴重な経営資源が失われてしまうおそれがあります。都は来年度、中小企業の再生支援に取り組むこととしていますが、その基本的な考え方及び施策の概要をお尋ねいたします。
 事業実施に当たっては、再生に取り組む中小企業を金融面から支援するため、四月以降に営業を開始する新銀行東京と連携すべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、商店街の振興について伺います。
 商店街が大型店との厳しい競争の中で、商店街が生き残っていくためには、社会経済の変化を的確にとらえ、効果的な対応策をとっていくことが不可欠であります。そのために、商店街は、商圏や消費者の購買動向、住民構成、みずからの強みと弱みなどを調査し、その上で、今後どのようなコンセプトを持って商店街活動をしていくのか、戦略を立てることが必要であります。
 そこで、都は、商店街ごとに特色ある活性化戦略やプランが立てられるように支援すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、新銀行について伺います。
 いよいよ四月一日より業務を開始するわけですが、新銀行は、地域経済を支える中小企業に対する円滑な資金供給を最大の目的としています。そのためには、さまざまなネットワークを活用して、中小企業が融資を受けやすい仕組みを整えることが必要であります。既に発表された商工会議所等の公的団体や提携企業との連携にとどまることなく、地域の中小企業の多くが所属し、相互に支援するなど、さまざまな役割を果たしている各業界の事業協同組合との連携についても積極的に進めるべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 また、新銀行が中小企業支援の実効性をより高めるためには、資金面での支援のほか、中小企業経営者が自社の財務状況等を正しく認識し、経営の安定化を図るための知識や、新たな事業展開を推進するために必要な情報等を得ることが可能になるような仕組みを設けるなど、多面的な支援を行うことが重要と考えますが、所見をお伺いいたします。
 次に、羽田空港の一層の活用に大きな影響のある在日米軍の再編問題と横田空域の返還問題について伺います。
 在日米軍の再編については、これまで日米両国の間で協議が進められております。報道によりますと、米国・ワシントン州にある陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間への移転、グアムと横田の空軍司令部の統合、自衛隊と米軍による基地の共同利用などについて話し合いが行われているとされています。
 先月、外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2が開催され、在日米軍の再編に関し、今後数カ月間の間、集中的な協議を行うことが合意されました。
 横田基地については、府中の航空自衛隊航空総隊司令部を移駐させ、基地の管理権を自衛隊に移し、米軍と共同使用することや、知事の提唱してきた軍民共用化について、協議が進められるとされています。
 基地の問題は、国防をつかさどる国の問題であるだけではなく、基地を有する自治体にも密接にかかわる問題でもあり、都としても在日米軍の再編協議の行方を注視していることと思います。
 在日米軍の再編は、知事の提唱してきた横田基地の軍民共用化のあり方にも大きく影響すると考えますが、知事はどのように認識しているのか、お伺いをいたします。
 また、米軍再編の論議がなされる中、忘れてならないものとして、横田空域問題があります。
 横田空域は、東京都を初めとした一都八県に及び、高いところでは約七千メートルもの高さに及び、富士山をも覆う広大な空域であります。この空域の航空管制は米軍が管理しており、民間航空機はこの空域を避けて飛行するため、不自然な飛行を余儀なくされているとともに、航空路が過密化するなど、我が国の航空ネットワークの運用上、大きな支障となっています。
 そのような中、平成二十一年末には、再拡張事業により、羽田空港に四本目の滑走路が完成し、空港容量が一・四倍に増加します。
 こうした状況を踏まえれば、横田空域の返還を早期に実現すべきと考えますが、知事の基本的な取り組み姿勢についてお伺いいたします。
 次に、東急多摩川線と京急空港線を短絡する路線、通称蒲蒲線について伺いたいと思います。
 短絡線の整備などを目的とした都市鉄道等利便増進法案が今国会において審議されております。国の来年度予算においては、横浜市内での相鉄線とJR線とを短絡する路線が候補となっているようですが、蒲蒲線についてもこの制度を活用して整備すべきと思います。
 現在、地元の大田区では、本路線の具体化に向けて五千万円の調査費を計上し、調査を実施しているところであります。
 羽田空港の再拡張や国際化を踏まえ、国際都市の玄関口としてふさわしい基盤整備を積極的に取り組むべきと考えます。そこで、本路線の整備に関する都としての取り組みについて所見をお伺いいたします。
 次に、運河ルネッサンスの推進についてお伺いします。
 平成十七年度の重点事業に、東京の水辺空間の魅力向上に関する全体構想の策定が位置づけられています。その取り組みの一つ、運河ルネッサンスは、運河を舞台にして地域特性に応じたにぎわいづくりを行う新しい取り組みであります。そこで、都は、どのような仕組みにより運河ルネッサンスを推進していくのか、所見を伺います。
 次に、水辺空間の魅力向上のためには、都民が運河の魅力を実感できる新たな試みが必要であると考えます。例えば、水上レストランなどは運河のイメージを一新し、運河ルネッサンスの取り組みとしてふさわしいものであります。そこで、水上レストランなどの新たな水域利用について、具体的にはどのように実現していくのか、所見を伺います。
 ところで、大田区には十キロを超える運河が存在し、平和島運河の大森ふるさとの浜辺や城南島の公園、大田市場など、ポテンシャルを秘めた観光スポットが点在しております。さらに、首都圏の玄関である羽田空港は、国際化に向け、その重要性が一層増してきています。
 こうした観光スポットや空港を観覧船で相互に結ぶことにより、面的な広がりが期待されます。さらに、臨海副都心など他の魅力ある地区とも連携することで、水辺の魅力が一層向上するものと考えます。
 そこで、東京港の運河全域における運河ルネッサンスの今後の展開について、所見をお伺いいたします。
 次に、防災対策についてお尋ねいたします。
 都が平成十五年度に行ったeモニターアンケートの調査結果では、大地震が起きるかもしれないと不安を感じる人が九三%に達しています。新潟県中越地震やスマトラ沖地震などの発生により、さらに都民の危機意識はこれまでになく高まっています。都の防災対策として、今何をやらなければならないかという観点から、ポイントを絞って質問をいたします。
 まず第一に、都ではこれまで、災害時における自助、共助の取り組みが重要であると説明してきました。しかしながら、自助といった場合、ただ自分の命は自分で守るというだけでは、都民は具体的に何を守ればいいかよくわからず、いたずらに不安を招くだけであります。都は、自助の取り組みのための具体策を示すべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、自助、共助を進めるに当たり、共助としての町会、自治会を主とする防災市民組織に対する積極的な支援が必要と考えますが、区市町村が行う防災市民組織に対する育成に対して、今後、都はどのように支援していくのか、お伺いをいたします。
 第三として、中央防災会議・首都直下地震対策専門調査会は、今回、新たな被害想定を公表しました。都の被害想定は平成九年度のもので、既に七年余が経過し、状況も大きく変化しています。石井議員から昨日、同趣旨の質問がありましたが、私は、速やかに改定し、区市町村にも情報提供すべきと考えますが、重ねて見解をお伺いいたします。
 第四として、二十三区における瓦れき処理は、清掃事業の移管により、区が主体的に取り組むこととなりました。しかし、都と各区や市町村が連携してこそ、円滑に瓦れき処理が進むと考えます。都は、広域自治体としての立場から、積極的に各区市町村の瓦れき処理に対して支援すべきと考えますが、見解をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 松原忠義議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、在日米軍の再編についてでありますが、この一年間、トランスフォーメーションという、いってみれば米軍の編成の合理化というもののあおりで、日米協議が持たれてきたわけですけれども、どうも日本側はアメリカ側の動きに対していつもいつも受け身で、国家の存立の基盤となる安全保障問題についても、主体的な意思表示を欠くという姿勢しか見られない感じが否めません。
 本来、我が国は、日米安保体制の中で、米軍にとっては不可欠な戦略上の基地を提供しているのであります。つまり、米軍の世界戦略のハワイ以西、ケープタウンまで、しかも、ニュージーランド、オーストラリアを含める南半球をカバーするためには、日本の戦略基地が不可欠なんでありますから、そういうアメリカにとっての意味合いというものもちゃんと踏まえて、堂々と日本側の主張をしたらいいのに、どうもそういう姿勢が見られませんで、やきもきしている感じです。
 平時における横田の軍事的な比重は、当然、明らかに低下しておりまして、これが一番使われたのはベトナム戦争のときで、一番多く搬入された物資は死体です。あそこで日本の医学生を使って死体を接ぎ直して棺に入れて送り戻したと。それ以後、ほとんど使われていないわけであります。
 この機をとらえて米側の軍民共用化の実現を迫ることは、我が国の、特に航空路という国力を象徴する文明工学的にも自明な要因というものを充足するためにも、当然のことだと思います。
 いろいろ紆余曲折がございましたけれども、軍民共用化は、先日開催されました日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2で具体的な協議が行われる段階になりました。
 これは注目しなくちゃいけないのは、今までは2プラス1だったんです。残念ながら、日本の防衛庁はいまだに防衛省になり得ず、内閣の官房下にあるものですから、外国との交渉権というものを持っているようで持っていないんで、結局全部、日本の基地に関する交渉というのは外務省を経ませんと進まなかったんですが、今度、アメリカ側もやきもきして、どうも話が遅いということで、既に小泉・ブッシュ会談で横田の問題が俎上になりまして、アメリカも非常に動きが速くて、国務省マターだったものが、すぐ国防省マターになりまして、向こうの司令官からも東京の知事に対していろいろ申し込みがあったんですけれども、今度ようやく、日本の国防省、つまり、防衛庁を入れて、二対二の会議になったということは、非常に好ましいことだと思います。
 そこで、防衛庁が防衛庁の、要するに、主張をする。どうも今まで、外務省が取り次ぐアメリカ側の反応を見ますと、全部紆余曲折がありまして、アメリカ側の当事者のいうことと随分食い違っている点がありましたが、今度はそれが幾らか是正されていくと思います。
 これまでの、ややむだな時間を浪費したわけでありますから、今後は一刻も早く軍民共用化の実現を図ることが国の責務だと思いますし、都は、国に対して一層強く働きかけていくつもりでおります。
 次いで、何であろうととにかく、あの広大な空域の管制権を取り戻す、これは全くおっしゃるとおりでありまして、あそこに何台飛行機を飛ばすか飛ばさないかの前に、自衛隊の一部があそこに移っても、主に通信業務だと思いますけれども、あそこを管理することで、管制は、要するに、日米共同といいますか、実質的に自衛隊が行うことになるでありましょう。それは大変結構なことで、ということは、すなわち、自衛隊の航空管制のもとに、三沢もそうでありますし、これは日本の飛行機があの広大な空域を自由に飛べるということになるはずであります。
 さらに、あの滑走路が使えるようになりますと、多くのメリットが見込まれるわけで、このため、都はこれまでも、国に対して、ともかく空域の早期返還について早く話せということをいってまいりましたが、やっと事が動き出したような感じがいたします。
 これからも、機会あるごとに、その実現を強く要求していくつもりであります。
 他の質問については関係局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長関谷保夫君登壇〕

○産業労働局長(関谷保夫君) 産業振興に関します七点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、技能検定制度に対する認識でございますが、本制度は、一定の基準により技能を評価する国家検定制度であり、働く人たちの技能習得の意欲を増進させるとともに、技能に対する社会一般の評価を高めることにより、技能水準や技能者の地位の向上を図るものでございます。
 熟練技能を次世代に伝えていくことは、東京の産業基盤の維持強化を図るために大切なことであり、技能検定はそのための重要な役割を担っていると認識しております。
 次に、技能検定施設の整備についてでございますが、来年度、都立府中技術専門校において、実習場などの既存の施設を技能検定施設として活用できるよう整備してまいります。
 また、本施設については、技能検定の実技試験会場として利用することに加え、さまざまな業界団体、企業が行う技能の研修、実習会場とするなど、人材開発の拠点として有効に活用してまいります。
 次に、産業技術研究所の独立行政法人化についてでございますが、地方独立行政法人化により、透明で自律的、弾力的な運営を行い、適切な事業評価と見直しを通じて、業務の効率性や質の向上を図ってまいります。具体的には、技術課題へのスピーディーかつ柔軟な対応、企業会計の導入による機動的、効率的な運営、産業構造の変化に即応できる人材の確保などを図り、必要なサービスを提供できるよう準備を進めてまいります。
 また、今後、産業支援システムの再整備について検討を進めてまいりますが、その中で、産業技術研究所の技術支援機能の整備を図ってまいります。
 次に、ものづくり産業の振興についてでございますが、近年、都内のものづくり産業では、中小企業が連携し、多様な経営資源を生かして事業展開を図ろうとするグループが生まれております。このような企業間連携の動きを活発化させるため、都は来年度、高付加価値製品の開発や幅広い受注等を目的として共同事業に取り組む中小企業グループに対し、経営と技術の両面にわたる総合的な支援を開始いたします。
 こうしたグループへの支援を通じて、中小企業によるネットワークを活用した新事業や新分野への展開を促進し、地域に元気な中小企業群を創出してまいります。
 次に、中小企業の再生支援についてでございますが、多くの中小企業が、すぐれた技術や人材を持ちながらも、過剰債務や後継者問題を抱えるなど、中小企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続いております。
 都は、より多くの中小企業が早期に事業再生や事業承継等に取り組めるよう、来年度より中小企業リバイバル支援事業を実施いたします。
 本事業では、公認会計士等の専門家を配置し、個々の企業に適した対応策を提示いたします。さらに、販路開拓や再生ファンドなど、都の支援施策を総合的に活用し、中小企業がみずから取り組む事業再生等を支援してまいります。
 次に、新銀行東京との連携についてでございますが、事業再生に当たりましては、既往債務に係る返済条件の緩和、新たな資金調達等に向けて、金融機関等との連携が不可欠でございます。
 新銀行は、ポートフォリオ型融資を中心に、既存金融機関が十分提供できていないリスクの高い分野への資金供給や、地域金融機関の中小企業向け融資に対する保証等を一定の条件のもとに行うこととしております。
 リバイバル支援事業の実施に当たっては、こうした新銀行の取り組みとも連携し、中小企業の事業再生等を支援してまいります。
 最後に、商店街の活性化計画への支援についてでございますが、商店街が消費者ニーズや地域の実情などを十分に把握して、今後の商店街活動に向けた計画策定を行うことは、商店街の活性化を図る上で有意義でございます。このため、新・元気を出せ商店街事業において活性化計画策定を支援しており、商店街では、コミュニティ施設を活用したにぎわいづくりや、統一景観によるイメージアップなど、地域特性を生かした計画を策定しております。
 都は、今後とも、商店街が効果的な活性化計画を策定できるよう、地域ニーズや先進地の調査等の経費を補助するとともに、必要に応じて専門家を派遣するなど、積極的に支援をしてまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、合理的な住宅生産システムの普及についてでございますが、戸建て住宅価格三割引き下げの実証実験で得られた成果を、中小工務店などに普及していくことは重要でございます。
 実証実験では、合理的な生産システムを用いて百戸の住宅建設を行いますが、都は、この成果を生かして、設計の標準化、資材流通経路の短縮、さらには手戻りのない工程管理など、安くて質の良い住宅をつくる方法を明確にし、生産システム合理化の指針を策定してまいります。
 この指針につきましては、ホームページで公開するとともに、中小工務店などに対する講習会を開催し、広く一般に普及いたします。こうした取り組みによりまして、大手メーカーも含めた価格競争は活発化し、戸建て住宅市場の構造改革を進めてまいります。
 次に、東急多摩川線と京急空港線とを接続する路線、いわゆる蒲蒲線についてでございますが、本路線は、運輸政策審議会答申第十八号において、鉄道整備にかかわる熟度、投資能力などの解決すべき基本的な課題があり、開業時期は特定できないが、平成二十七年までに整備着手することが適当である路線として位置づけられております。
 これを受け、地元大田区は、本路線の実現に向け、調査を実施していると聞いております。
 都といたしましては、事業採算性のほか、空港アクセス機能としての必要性、東急線と京急線の線路幅が異なることなど、解決すべき課題があると認識いたしております。
 こうしたことから、これらの課題も踏まえながら、必要な対応を図ってまいります。
   〔新銀行設立本部長津島隆一君登壇〕

○新銀行設立本部長(津島隆一君) 新銀行に関する二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、地域の業界団体等との提携についてでございますが、新銀行は、さまざまな分野で企業や団体等と幅広く連携することとしており、例えば融資先の紹介などについても、四月の開業時までに、十一の企業・団体と具体的な業務提携を行う予定でございます。
 さらに、中小企業融資をより一層効果的に行うためには、ご指摘のように、地域において企業の経営実態や技術力等について精通している事業協同組合等の団体と連携し、その貴重な情報等を十分活用することが極めて重要であると考えております。
 このため、新銀行東京では現在、各種の業種別事業協同組合等から意見聴取を行っており、今後、多数の会員を擁し、意欲と実績のある団体と、業務提携に向けた具体的な協議を進めてまいります。
 次に、中小企業に対する多面的な支援の実施についてでございますが、新銀行東京では、融資だけでなく、提携企業や団体等の専門的能力を十分生かし、セミナー等の啓発事業などに積極的に取り組むことで、中小企業の総合的な支援を行っていくこととしております。
 具体的には、技術力・将来性等重視型融資において、融資の承認を受けた企業に認定書を交付することで会員とし、中小企業診断士や税理士等の専門家による経営、財務のコンサルティングやセミナーなどを受けられるようにいたします。
 また、中小企業振興公社のワンストップ総合相談事業など、都のさまざまな中小企業支援策とも十分連携を図りながら、多面的な支援の充実に努めてまいります。
   〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) 運河ルネッサンスの推進についての三点のご質問にお答えいたします。
 まず、運河ルネッサンスを推進する仕組みについてでございますが、にぎわいのある運河づくりには、何よりも運河周辺の住民や地元団体等が中心となって活動していただくことが重要であると考えております。こうした地元での取り組みが円滑に進むよう、手引きとなるガイドラインを早急に作成し、支援してまいります。
 具体的には、地元での推進母体となる協議会の設置や、運河のにぎわいづくりを実施していく運河ルネッサンス推進地区の指定に関する事項などを定めてまいります。
 このガイドラインにより指定された推進地区におきましては、規制緩和等の支援を行い、水辺の集客施設や遊歩道の整備など、地域に根差した魅力豊かな運河づくりを実現してまいります。
 次に、新たな水域利用の実現方策についてでございます。
 これまで、運河における水域占用の対象は、はしけや工事作業船等港湾関係業務に使用される船舶の係留や、公共性の高い橋梁の設置等に限定されてきたところでございます。
 今回、運河空間を活用したにぎわいの創出や地域活性化という新たなニーズにこたえ、運河ルネッサンス推進地区においては、水上レストランや観光桟橋の設置が可能となるよう、水域占用基準を改正いたします。
 また、こうしたにぎわい創出等のため、長期の占用が必要となる施設につきましては、占用期間の延長を図ってまいります。
 このように、魅力ある水辺空間を実現するために、運河利用における規制緩和を進めてまいります。
 最後に、運河ルネッサンスの今後の展開でございます。
 大田区を初め、東京港には、ご指摘のようにポテンシャルの高い観光スポットを抱えた多くの水域がございます。これら特色のあるエリアを相互にネットワーク化することにより、運河全域の魅力が向上していくと考えております。
 このため、来年度に策定いたします東京の水辺空間の魅力向上に関する全体構想の取り組みの一環といたしまして、機運や塾度の高い地区から順次推進地区に指定してまいります。
 具体的には、現在、運河利用の検討が進められております天王洲や芝浦地区における取り組みを他の地区に反映させるなど、にぎわいづくりを点から線へと広げ、これにより東京の水辺空間全体の活性化につなげていきたいと考えております。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 防災対策についての三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、自助の取り組みについてでございますが、震災時には、第一に、みずからの命はみずからが守るという自助が重要でございます。
 このため、都はこれまでも、地震の心得十カ条を作成するほか、家の耐震性、耐火性の確保や、家庭における飲料水、食糧の備蓄など、具体的な自助の取り組みについて、各種パンフレットやホームページで普及啓発に努めてまいりました。
 今後とも、区市町村と連携し、自助の取り組みの重要性と具体的な行動について普及啓発に努め、都民の理解を促進してまいります。
 次に、防災市民組織の育成に対する支援についてでございますが、震災に強い社会づくりを進めていくためには、区市町村が主体となって育成しております防災市民組織の活動が不可欠でございます。
 都といたしましても、防災市民組織のリーダー養成研修を実施いたしますとともに、防災展等におきまして活動を紹介するなど、区市町村が行う防災市民組織の育成に対する支援を行っております。
 今後は、さらに、ホームページですぐれた活動を紹介いたしますとともに、区市町村間の情報交換の場を設けるなど、区市町村に対する一層の支援に取り組んでまいります。
 最後に、地震による被害想定についてでございますが、国の中央防災会議が公表いたしました被害想定は、首都圏全域を対象としております。
 また、中高層ビル、地下街、ターミナル駅の被災、災害時要援護者、自力脱出困難者など、都の被害想定にはない、新たな課題を提示しております。
 都は、平成十七年度に防災会議を開催いたしまして、国の想定内容を踏まえました被害想定の見直しに着手し、必要な情報を区市町村へ提供してまいります。
   〔環境局長平井健一君登壇〕

○環境局長(平井健一君) 震災時の瓦れき処理に関する区市町村への支援についてでございますが、都は、清掃事業の特別区への移管に際しまして、各区が行うこととなります瓦れき処理の手順などを周知するとともに、移管後も、区市町村に対して必要な情報提供を行っております。
 また、震災が発生した場合におきましては、都は、地域防災計画に基づき、区市町村との緊密な連携のもと、速やかに具体的計画を策定するなどにより、円滑な処理に向け、広域的な調整や支援を積極的に行ってまいります。

〇議長(内田茂君) 七十七番馬場裕子さん。
   〔七十七番馬場裕子君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○七十七番(馬場裕子君) まず、食育と栄養教諭制度について伺います。
 近年、ライフスタイルの変化を背景として、特に子どもたちへの食生活の影響が深刻になっています。そのため、心身の健康の基本となる食生活に関するさまざまな教育、いわゆる食育を学校教育の中で組織的、体系的に行っていくことが求められております。
 中でも、給食に関しては、学校栄養職員が栄養や衛生の管理を主な仕事として配置されておりますが、都費職員、区市町村費職員あるいは常勤、非常勤など、自治体や各学校での位置づけや取り組みはさまざまです。
 そこで私は、学校において食に関する指導を推進していくためにも、学校現場の指導体制の充実整備を図っていく必要があるものと考えますが、ご見解を伺います。
 学校教育法の一部改正により、ことし四月から栄養教諭の職務を定めるとともに、小学校等に置くことができる職員として栄養教諭が位置づけられました。また、附帯決議では、学校給食未実施校や自校調理でない学校での食に関する指導が充実することや、現行の定数改善計画を進めることなど、栄養教諭制度の確立に向けた取り組みが盛り込まれました。
 しかし、現在のカリキュラムにはない食育を進めるためには、他の教諭と連携した指導は欠かせず、そのためには、栄養職員を教諭制度としてきちんと位置づけていくことが必要と考えます。
 私は、東京都においても、現職の学校栄養職員に必要な資格を取得させ、栄養教諭として任用するなど、食に関する指導を充実させるために、栄養教諭を学校に配置すべきと考えますが、ご見解を伺います。
 次に、年間を通した教育環境の確保と都立高校の冷房化について伺います。
 昨年は春から気温が高い日が続き、特に夏季は暑さの厳しい年でした。七月の二十日には足立区内で四十二・七度を記録するなど、連続夏日、熱帯夜の記録をつくりました。
 東京都が二〇〇二年七月から九月まで全学区を対象に実施した都立学校における室温等実態調査、夏期の室温についてでも、夏季の室温は気温と連動しており、外気温が三十度以上となる真夏日は、室温も三十度を超えることが多いと報告されています。
 生徒が快適に授業を受けるためには、学校の環境整備が重要です。文部科学省は、学校保健法の規定に基づき、学校環境衛生の基準を通知し、教室の温度や湿度の検査を義務づけております。
 しかし、冬季の暖房の措置についての記述はありますが、夏季で三十度を超える対策はありません。クーラーの普及率に比べ、都立高校二百三校のうち普通教室に空調設備があるのは、わずか五十七校、二五%ですが、温暖化の中、都立高校の環境衛生に関する認識と、来年度における暑さ対策について、ご見解を伺います。
 昨年十月に、私は、足立区中島根小学校のエコ校舎、緑のカーテンを拝見してまいりました。環境教育の一環としては、ヘチマ等なっていてとてもよかったのですが、やはり根本的な解決にはなりません。
 大阪府では二〇〇二年に全校一斉に冷房化を導入し、経費の負担方法を工夫するなどして、一括で委託する事業手法を採用し、昨年からサービスを提供しております。
 私は、大阪府の事例を参考に、都立高校の普通教室にもクーラー等空気調和設備を早期に導入すべきと考えますが、ご見解を伺います。
 少子高齢社会となる二十一世紀を支える教育への期待は大きく、教育施策の多様化が求められていることを受けて、カリキュラムの見直しを初め、二学期制の導入、学級や学年編成、授業時間や補習時間の持ち方などの工夫に、それぞれの学校が積極的に取り組みを始めています。
 そのためには、年間を通した教育環境の整備、特に夏季休業中における学習活動が活発に行えるよう、夏場を中心とする教育環境の改善を求めます。
 最低気温三十度の熱帯夜が続く夜間の環境も同様です。定時制高校では、三年間で卒業を可能にする三修制の整備や、専用教室の確保を望むとともに、食堂を整備し、多目的ホールとして年間有効利用ができますよう、施設整備の改善拡充を強く要望いたします。
 次に、就学前の教育、保育の総合施設について伺います。
 就学前の子どもの教育、保育については、従来より、文部科学省所管の幼稚園と厚生労働省所管の保育園の二つの制度があり、地域の課題や親の幼児教育、保育のニーズが多様化する中で、その見直しが求められております。
 幼・保の連携施設としては、地元品川区の区立二葉すこやか園や、ぷりすくーる西五反田を初め数施設がありますが、現行制度のもとで、幼稚園、保育園の両方について制度的な要件を満たしながら教育と保育を連携させた、全国でも先進的な取り組みを進めているのですが、両方の制度を見ながら運営していくためには、諸課題があると聞いております。
 このような制度の現状を踏まえ、幼稚園と保育所との連携について、文部科学省の中央教育審議会幼児教育部会と、厚生労働省の社会保障審議会児童部会の合同の検討会議が、昨年十二月に、就学前の教育、保育を一体として捉えた一貫した総合施設についての審議のまとめを公表し、いわゆる総合施設の制度化の方向を示しました。
 そこで、この審議のまとめの方向性について、どのように受けとめておられるのか、教育庁並びに福祉保健局にそれぞれ伺います。
 従来より、就学前の子どもの教育・保育について、公立幼稚園は教育庁、私立幼稚園は生活文化局、保育園は福祉保健局と担当部署が分かれており、ややもすると縦割りの弊害も見られます。国においても文部科学省と厚生労働省が合同検討会議を設け、今後、総合施設の制度化が見込まれる中で、区市町村を含め、幼稚園に関する行政と保育園に関する行政の一層の連携が求められていると思います。
 総合施設の制度化も踏まえ、就学前の子どもの教育、保育に関し、局にまたがり横断的に検討すべきと考えますが、ご見解を伺います。
 次に、伝統文化教育について伺います。
 十七年度の重点事業では、日本の豊かな文化を学ぶカリキュラムの創設を打ち出し、その中で、都立高校において、古典芸能や武道、茶道などの実技や歴史的な意義を学ばせることなどを挙げておられます。
 私は、こうした伝統文化への取り組みの重要性は認識しつつも、一方で、それにかこつけた偏狭な愛国心の強制には大きな疑問を抱くものです。
 特に、来年度開校する都立白鴎高校附属中学校では、教科書採択の一件もあり、危倶を抱いている都民も少なくありません。
 私自身は、琴を学び、箏曲の師範として音楽を愛し、日本の文化を愛する者の一人ですが、琴や琵琶、太鼓は雅楽の楽器の一つとして中国より日本に伝来されたもの。中国の、その好き嫌いに関係なく、そのルーツから伝承過程と音楽の歴史を正しく伝え、正しく理解することが、真に日本の伝統文化を知ることになり、伝統文化を正しく理解することが、他国の文化や伝統を尊重することにつながるのではないでしょうか。
 東京都教育庁は、来年度に、都立白鴎高校を母体校とした、都立白鴎高校附属中学校を開校します。この新しい中高一貫教育校では伝統文化教育を取り入れるとのことですが、具体的にどのような特色ある教育を実践していかれるのか、ご見解を伺います。
 次に、認知症高齢者グループホームにおける人材の確保策について伺います。
 認知症高齢者グループホームでは、少人数で家庭的な環境のもと、顔なじみの介護スタッフの支援を受けながら入居者が安心して生活できる場として注目されており、介護保険制度開始後、全国的にも急増しています。
 しかし、認知症の方を適切に介護するには、高い専門性が求められるにもかかわらず、現場からはそうした職員の確保がなかなか容易ではないという話を聞きます。先日も、石川県のグループホームで、職員による入所者の殺害という痛ましい事件がありました。
 グループホームへの国の介護者の配置基準では、夜間一人でよく、しかも資格要件はありません。今回の事件は極端な例であるとしても、入居者の尊厳と生命を守る介護現場で起きてはならないことであり、質の高い人材の確保が大変重要であることを改めて認識させられる出来事でした。
 認知症高齢者グループホームにおける人材の確保策について、資格者の配置や職員の育成による質の確保など、都としても積極的に取り組む必要があると考えますが、ご所見を伺います。
 次に、都市高速道路中央環状品川線について伺います。
 昨年十一月の都市計画決定により、中央環状品川線の整備がいよいよ始まります。首都圏三環状道路の一つが完成することで、都内の渋滞解消に大きく寄与することと考えます。
 しかし一方で、品川線沿道地域の生活環境が犠牲になってしまうのでは、都民生活の向上の観点から本末転倒となってしまいます。
 私の住む品川区では、山手通りや目黒川の地下を品川線が通る計画となっていますが、この品川区の中だけでも三カ所の換気施設の設置が予定されています。
 このうち、五反田駅の近くに予定されている換気塔は、道路の真ん中に建ち、高さ四十五メートル、幅七メートル、長さ二十六メートルの巨大な構築物です。
 パネルをつくってまいりました。ごらんください。
 まず、これは概要説明パンフレットの中、との公団の説明の図です。
 次は、地元近隣十一町会で設立された高速品川線問題近隣町会合同連絡会が作成したものです。これを見ていただければ、だれでも景観上の違和感を覚えるのではないでしょうか。
 同時に、道路沿線に暮らす人たちが、換気塔がトンネル内の排気ガスの排出口であることと、品川線の中で唯一の出入り口もこの五反田に予定をされていることに、生活環境を脅かされるのではないかと強い拒絶感を抱いていることも、ご理解いただけると思います。
 そこで、品川線の整備に関して、沿線地域の生活環境の維持について伺います。
 都は都市計画の決定や環境アセスメント評価に際して、これまで地元とどのような対応をされてきたか、伺います。
 五反田地域は、窪地に国道一号線や首都高二号線、山手通り、桜田通りと主要な幹線道路が交わり、昔から大気汚染に悩まされている地域です。
 都は、換気塔からの排気ガスを浄化するなど、沿線環境を悪化させることのないよう、必要な措置を講じるべきと考えますが、見解を伺います。
 最後に、トンネル構造である以上、換気施設の必要性は理解しますが、だからといって道路の真ん中に巨大な建造物を設置することは、景観上からも許容範囲を超えています。換気塔設置に当たり、どのような対策を講じていくのか、都のお考えを伺います。
 加えて、工事期間が十年という長期にわたります。トンネルの掘削残土の搬出は、一日ダンプ往復一千八百台と説明されています。
 地域への十分な配慮を持って計画が進められますよう、住民とともに声を大きくして申し入れ、質問を終わります。
 ありがとうございました。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 馬場裕子議員の一般質問にお答え申し上げます。
 まず、教育に関します七点の質問にお答え申し上げます。
 まず、食に関する指導体制の充実整備についてでございますが、都教育委員会としましては、食に関する指導の充実を図るため、従来から、学校栄養職員を対象に、指導内容や方法等についての研修を実施しております。
 さらに、指導の一層の充実を図るため、食に関する指導資料集を本年一月に作成をしまして、各公立学校へ配布したところでございます。
 今後、この指導資料集の説明会や、保健主任を含めた研修会を実施するなどしまして、食に関する指導力の向上が図れるよう、学校を支援してまいります。
 次に、食に関する指導を充実させるための栄養教諭の配置についてでございますが、小中学校における食に関する指導につきましては、栄養職員や教員が給食指導やチームティーチングなどさまざまな形で連携協力をし、その充実に努めております。
 栄養教諭の任用につきましては、配置基準や給与負担などさまざまな課題がありますことから、現在、慎重に検討しているところでございます。
 お話しの栄養職員に必要な資格を取得させる点につきましては、平成十七年度から文部科学省は、現職の学校栄養職員が栄養教諭免許状を取得できるよう、栄養教諭育成講習事業の創設を予定しておりますので、都教育委員会としましても、その事業の活用を検討してまいります。
 次に、都立高校の環境衛生の認識及び暑さ対策についてでございますが、生徒が健康で安全に学習する上で、適切な教育環境の確保は重要なことと考えておりますし、教室の暑さ対策につきましては、冷房化の導入の検討とともに、地球温暖化対策の面から、環境に配慮した壁面緑化などの取り組みによる温熱環境の改善など、さまざまな方策をもって学習環境の整備に取り組んでいく必要があると認識をいたしております。
 このため、平成十七年度におきましては、ヒートアイランド対策の一環として、校庭等の芝生化や壁面緑化をモデル的に実施をしまして、教室内の室温に対する体感温度の緩和など、教育環境の改善効果等について検証を行ってまいります。
 次に、都立高校の普通教室への空気調和設備の早期導入についてでございますが、都立高校におきましては、音楽室やバソコン教室など一部の特別教室に全校で冷房装置を設置しております。また、騒音対策として、一部の学校の普通教室へも整備をいたしているところでございます。
 全校への普通教室の冷房化につきましては、財政負担の問題のみならず、ただいま申し上げましたように、温暖化防止への取り組みが求められる中での環境に対する影響などの課題があると考えておりますので、今後、お話しの大阪方式の検討を含め、これらの課題について総合的に検討してまいります。
 次に、就学前の教育と保育の総合施設の制度化についてでございますが、幼児期における教育は、生涯における人格形成の基礎を培うものでございまして、東京都教育ビジョンにおきましても、幼稚園、保育所の制度を超えた取り組みの重要性を指摘しているところでございます。
 今回、文部科学省と厚生労働省の合同検討会議の審議のまとめにおいて示されました新しい総合施設制度の構想や、幼稚園と保育所との連携という考え方につきましては、このような東京都の就学前教育の考え方と軌を一にするものと受けとめております。
 国におきましては、今後モデル事業を実施しながら、具体的な制度を検討していくと聞いておりますので、都教育委員会としましては、制度化に向けた国の動向を注視しながら、総合施設の導入に向けた準備や関係者への情報提供に努めてまいります。
 次に、就学前の教育や保育に関する局間の横断的検討についてでございますが、核家族化や都市化の進行など、子どもたちを取り巻く環境が大きく変化する中で、幼児期における子どもの教育や保育の重要性はますます高まっております。
 こうした中で、ご指摘のように、就学前の教育や保育を担当する関係局が一層連携を図る必要があると考えておりまして、総合施設の導入も含め、幼児期におけるさまざまな課題解決のため、密接な連携を図ってまいります。
 最後に、都立白鴎高校附属中学校における特色ある教育の実践についてでございますが、都立白鴎高校附属中学校では、都立の中高一貫教育校として、六年間を通した教養教育に重点を置きますとともに、日本の伝統文化に関する教育を新たな学校の特色としているところでございます。
 その特色としましては、日本文化を広い視野から総合的に学ぶ日本文化概論や、音楽の教科に邦楽を取り入れること、部活動では、茶道、華道、和太鼓など日本文化に関する活動を奨励することなどが挙げられております。こうした教育活動を通して、生徒が日本文化を尊重し、みずから誇りを持って語ることができるような教育に取り組んでまいります。
 なお、質問の中で、偏狭な愛国心の強制や採択教科書についてのご懸念が示されましたが、ただいま申し上げましたような理念に基づいて教育を行ってまいりますので、ご安心をいただきたいと思います。
   〔福祉保健局長幸田昭一君登壇〕

○福祉保健局長(幸田昭一君) 総合施設、グループホームに関します三点のご質問にお答えいたします。
 まず、総合施設についてでありますが、国の検討会議での審議のまとめでは、総合施設について、親の就労形態などで区別しないこと及び利用形態については利用者と施設の直接契約が望ましいことなどの考え方が示されています。
 こうした考え方は、これまで都が国に提案してきた保育所制度の抜本的改革の内容と軌を一にするものと受けとめておりますが、具体的な職員配置や施設整備などの内容については、来年度に実施するモデル事業の中で検討するとされております。
 都は今後とも、総合施設が保育所制度の改革に資するよう国に働きかけてまいります。
 次に、幼保一元化に関し、関係局の横断的検討についてでありますが、核家族化の進行や家庭、地域の養育力が低下する中、子育てを社会全体で支えていく仕組みづくりが重要となっております。
 こうした中で、保育と幼児教育の関係機関がこれまで以上に連携を強化することは、次代を担う子どもたちの健全な育成を図る次世代育成支援の観点からも重要であると認識しており、今後とも、関係局と一層緊密に連携を図ってまいります。
 最後に、認知症高齢者グループホームについてでありますが、グループホームにおいて良好なサービスを提供するためには、質の高い人材の確保が重要であります。国の定めた人員基準では、介護職員の一定数の配置を求めるとともに、管理者についても専門的知識、一定年数の経験、研修の受講などを要件としており、都としても、こうした基準に基づき事業者を指導しております。
 また、人材を育成するために、これまでも一般介護職員を対象とする基礎的研修やリーダー養成のための専門的研修を実施してまいりました。さらに、来年度からは、新たに管理者の施設運営能力の向上を図るための研修を開始するなど、グループホームの質の向上に努めてまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 首都高速品川線に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中央環状品川線の都市計画決定や環境影響評価における地元対応についてでございますが、品川線の整備に当たりましては、沿道地域の方々の理解と協力を得ることは重要であると考えております。
 これまで地元説明会を十回開催したほか、四カ所、相談コーナーを設置し、意見や相談を受けてまいりました。このほか、地元住民の要請に応じて二十回を超える意見交換会などを実施してきたところでございます。
 この中で出されました整備の必要性と道路構造、周辺環境への影響など、さまざまな意見について十分に説明するなど、きめ細かな対応を行ってきております。
 また、先ほど、ここでご提示のありました換気塔につきましては、景観への配慮を行うことで考えているところでございます。
 今後とも、品川線の早期整備に向けて、地元の理解と協力を得て進めてまいります。
 次に、換気塔に対する必要な措置についてでございますが、品川線の整備に当たりましては、沿道環境への影響が最も小さい地下構造を採用しているため、換気所の設置が不可欠でございます。
 品川線の開通時点では、自動車などの発生源対策が進み、首都圏の大気質が大幅に改善すると見込まれていることに加え、換気所において排出ガスは除塵処理され、さらに上空で拡散されることから、大気質への影響は極めて小さくなると考えております。
 お尋ねの必要な対策につきましては、大気質の改善状況や技術開発の動向などを踏まえ、既に検討してきているところでございます。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君) 中央環状品川線の換気塔の設置についてでありますけれども、品川線では、全長九・四キロのうち、目黒区内に一カ所、品川区内に三カ所の換気塔を建設する計画であります。
 換気塔の設置に当たりましては、景観と調和し、地域に受け入れられるデザインとすることが重要と考えております。
 このため、今後、地元の意見や新宿線で培ってきた経験も踏まえ、周辺地域の景観と調和した換気塔の形状や色彩などを検討してまいります。

○副議長(中山秀雄君) この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後六時六分休憩

   午後六時三十六分開議

○議長(内田茂君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 二十七番林田武君。
   〔二十七番林田武君登壇〕

○二十七番(林田武君) 今、急速に進む地球の温暖化は、まさに人類の存亡にかかわる問題です。そこで、今回は、米軍横田基地における現状を申し上げ、米軍基地においても地球温暖化対策に協力し、対応すべきであるという観点から質問いたします。
 米軍基地だから仕方がないでは済まされない問題であります。平成九年に京都で開催された気候変動枠組条約第三回締約国会議において採択されました京都議定書が、昨年秋にロシアが批准したことにより、去る二月二十六日、ようやく発効いたしました。
 昨年の夏は異常な暑さを体験し、地球温暖化は確実に我々の生活を脅かしているという実感を肌で感じました。また、世界各地においても異常気象が頻発するなど、地球温暖化対策は待ったなしの状況であります。
 地球温暖化対策は、全世界で取り組むべき課題であるにもかかわらず、いまだにアメリカは京都議定書を批准しておりません。
 地球温暖化対策については、東京都は今回、環境確保条例を改正し、大規模事業所などの二酸化炭素削減対策など具体的な取り組みをさらに進めようとしております。
 石原知事がディーゼル車排ガス規制や今回の条例改正など、果敢に地球温暖化対策に取り組まれていることに賛同するとともに、今現に東京都に存在する米軍横田基地も決して治外法権であってはならないという強い姿勢を願うものです。基地公害の中でも、地球温暖化対策はほうっておけない重要課題であるということを認識していただきたいと思います。
 そこで、米軍施設における環境問題としての地球温暖化対策について、知事にお考えを伺います。
 米軍横田基地のCO2、二酸化炭素の排出量は驚くばかりであります。横田基地は、年間およそ三万キロリットル、ドラム缶にして十五万本のオイルをボイラー燃料として消費しているエネルギー大消費事業所であります。この量は、地球温暖化対策計画書制度の対象となる千五百キロリットルの実に二十倍という膨大な量であります。とても許せる範囲のものではありません。
 実は、横田基地のボイラー五基は、老朽化したことにより、平成十四年から基地内の中央地区、西地区、東地区と三地区に分け、大型新規のボイラー三基に取りかえる作業が現在進んでいます。既に中央地区のボイラーは完成し、昨年から運転を開始しております。西が十七年、東が十八年に完成予定と聞いております。依然としてオイルを使用して大量のCO2を排出しております。
 ちなみに、横田基地のCO2排出量を削減するために、仮にオイル燃料を天然ガスに転換したとすると、CO2の発生を一万八千百三十三トン、およそ二五%削減できるということです。一万八千百三十三トンは、林野庁の試算によると、五十年生杉で一年に十四キロのCO2を吸収するので、約百三十万本の杉に換算することになります。
 平成十四年、横田基地のCO2公害対策に関して、基地を囲む市民から請願が出され、都議会で採択されております。その後、都としては、直接、米軍に対して情報提供を要望するなど、関係機関への働きかけを行っていることは承知しております。しかし、今、東京都は、本定例会で条例改正を行い、来年度より実効ある地球温暖化対策をより強力に推進しようとしている中で、横田基地に対して具体的に地球温暖化対策の実施を求める必要があると考えますが、所見を伺います。
 次に、西多摩の振興について何点か伺います。
 まず、シカの食害対策について伺います。
 十数年前から奥多摩町ではニホンジカの生息数が急増し、東京都の調査によると、平成五年に三百頭、平成十一年に千頭、平成十四年には二千五百頭と、驚くほどの増加であります。奥多摩町では、シカの数が三百頭にふえた時点で、平成六年五月二十三日、当時の鈴木俊一知事に、シカ食害に対する抜本施策を講ぜられたいという陳情を出していたにもかかわらず、東京都は有効な対策を行ってきませんでした。
 シカの食害、森林被害のすごさは、今さら申し上げるまでもありませんが、特に被害の大きい川乗谷支流逆川地域の山林で、まさに裸山状態であります。この影響で、逆川流域においては、昨年七月十一日に発生した集中豪雨により、逆川源流上部森林が崩壊し、大量の土砂が流失いたしました。本流である多摩川に土砂を含んだ濁流が流れ込み、飲料水、漁業協同組合、水生生物などに甚大な被害を与えました。
 こうした中で、昨年七月二十一日、奥多摩町河村町長から東京都に対して、シカの食害、森林被害に対する要望書が出されました。要望書が出された後、八月三日、都議会自民党を代表して、宮崎都議、倉林都議、そして私の三人で現地視察をいたしました。
 昨年の第三回定例会においてこの問題を取り上げ、我が党の比留間幹事長が代表質問の中で、シカの食害による深刻な森林被害に対する取り組みについて質問をいたしました。これに対し、石原知事は直ちに四つの緊急対策を打ち出し、各局連携して事業を開始されたことに対し、地元の議員として謝意を表するところであります。
 この四つの緊急対策のうちでも最も急がれることは、六百頭のシカの捕獲です。一般狩猟による百頭及び農林業被害防止を目的として市町村が実施する有害捕獲による三百頭、計四百頭に加え、都が東京都猟友会に委託している二百頭の特別捕獲を実施するものですが、特別捕獲についてはなかなか苦戦しているとのことであります。
 捕獲は困難をきわめる作業であることは十分承知していますが、シカの被害から森林を守るためには、早急に適正頭数へ削減することが不可欠です。可能な限り手段を講じて、目的頭数の捕獲に尽力していただきたいと思います。
 そこで、伺います。有害捕獲及び特別捕獲による捕獲の現状と、捕獲頭数向上のために具体的にどのような方策を講じているか、お聞かせください。
 また、来年度の重点事業の中で、シカ被害対策は、荒廃した東京の森の再生に向けた東京の豊かな森づくり事業の一環として位置づけられております。来年度の重点事業で実施するシカ捕獲及び裸山化している森林の復旧に向けた具体的な取り組みについてお聞かせください。
 次に、過疎町村における下水道対策について伺います。
 多摩地域の中でも、西多摩格差といわれるように、都市基盤においてまだまだ格差があり、行政として取り組まなければならない課題が山積しています。過疎町村における下水道整備促進が必要であるにもかかわらず、なかなか日の目の当たらない課題であります。
 多摩地域の下水道の普及率は、平成十五年末で九五%となっておりますが、奥多摩町や檜原村の二町村における下水道の普及率は、檜原村が二一%、奥多摩町に至ってはわずか五%であります。このような過疎町村の下水道整備は、住民の強い要望があるにもかかわらず、大きくおくれております。
 申し上げるまでもなく、この地域は秩父多摩甲斐公園の一部であり、緑豊かな都民の憩いの場所として定着し、多くの観光客が訪れます。生活環境の改善を図るため、さらには都民にとって貴重な水源である多摩川、秋川の水質保全のためにも、奥多摩町、檜原村の下水道整備は必要不可欠なものであります。
 そこでまず、過疎町村における下水道整備の課題について伺います。
 奥多摩町では、奥多摩湖周辺の下水道整備は完了しておりますが、氷川、大沢、川井、海沢など四地区については、まだ未整備の状態となっております。
 また、檜原村については、平成十八年度に一部供用開始をする予定で元郷地区の下水道整備を進めていますが、人里、数馬地区は、依然として取り残されています。
 下水道整備の重要性を考えると、過疎町村の下水道普及率を早急に向上させていく必要があります。過疎町村における下水道の整備促進に向けた都の取り組みについて伺います。
 次に、多摩川南岸道路、秋川南岸道路の整備状況と今後の取り組みについて伺います。
 平成十六年十月二十三日に起こった新潟県中越地震のすさまじい惨状は、多くの犠牲者を出し、地震の恐ろしさを嫌というほど思い知らされました。平成七年の阪神・淡路大震災の教訓を得、東京都においても区市町村においても地震対策に真剣に取り組んでいるさなか、新潟中越地震という大地震が起こりました。新潟中越地震では、山間部の被害、山古志村に見られるように、土砂崩れなどによる道路の寸断が多発し、何と七市町村五十八地区が孤立状態となりました。
 奥多摩町や檜原村においても、現在、幹線道路は一路線しかなく、万一道路が寸断されたら山古志村と同じ状況になるわけで、災害時の避難や救急活動などに大きな支障を来すことが懸念されます。代替道路が一日も早く整備されることが何よりも望まれております。
 本年一月に、東京都では、多摩振興に取り組む都の基本施策として、多摩リーディングプロジェクトが発表されました。この中で、山間部の震災対策が安心を高め、未来をはぐくむ施策の中に位置づけられております。
 西多摩地域には、都民の森や奥多摩湖など緑豊かな自然があり、多摩振興にとって重要な観光資源となっております。観光シーズンや休日には多くの観光客が訪れ、交通渋滞が発生しております。
 東京都では、青梅街道に並行する形で多摩川南岸道路、また、五日市街道、檜原街道に並行する形で秋川南岸道路を整備していますが、地震等災害対策、観光対策などあらゆる面でその早期完成が必要であり、これは地域住民の長年の願いであります。
 そこで、現在整備を進めている多摩川南岸道路と秋川南岸道路の整備状況と今後の取り組みについて伺います。
 以上で一般質問を終わります。明快なご答弁をお願いいたします。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 林田議員の一般質問にお答えいたします。
 米軍施設における地球温暖化対策についてでありますが、これは非常に大事な、いろいろな可能性を含むご提案だと私は思います。
 横田も含めて日本にある米軍の基地は、まさに治外法権です。つまりアメリカの領土です。私が初めて横田に行ったときに、日本人入るべからず云々の看板が出ていましたが、そこの横に、この基地の本籍はカリフォルニアのバンデンバーク基地であるという標示が出ていました。それはさすがにちょっと私は問題にして、あんまり露骨なので取り払いましたけれども、まさにあそこはアメリカの領土なんです。
 しかし、そこで彼らが、つまり本国自身が京都議定書に参入せずに、勝手に油をたいて、日本の環境というのをいかに汚染しているかということの認識がないままに、あそこが限られたアメリカの領土であるということで、そういう日本の総意に反した行為というのが許されるかどうか。これは私は、やっぱりこれからの、近々またちょっと外務次官にも会いますが、日本とアメリカの安保における地位協定に関する大きな一つの要因になってくると思います。
 ただ、これが、もし自衛隊があそこに参入して、先ほど質問にありましたが、管制権というものを、イニシアチブをとって運営するようになれば、違った性格を帯びてくると思います。しかし、なお、基地は基地でありまして、これはとても小さな問題で大きな問題だと思いますし、アメリカに温暖化に対する覚せいを促す一つの大きな引き金になると私は思いますし、また、そのつもりで国にやってもらわぬと、これはだめだと思います。東京が幾ら頑張っても、東京の真ん中で油たいて、空気を幾ら濁しても構わぬということで済むものじゃございませんから。
 いずれにしろ、米国は最大な二酸化炭素排出国でありながら、とにかく京都議定書を批准していませんし、温暖化対策に真摯に取り組む姿勢というのは、なぜかとにかく全く持ってない。
 都は今回、環境確保条例を改正して先駆的な制度を導入し、都民及び都内事業者に対して、つまり我々の負担で、東京において地球温暖化対策の取り組みの強化を求めておりますが、都内の米軍施設が、東京都にありながら、その東京都の姿勢と逆行するみたいなことをあえて行って許されるわけはないので、これはよほど日本の外務省に腰を据えて、この問題だけはきちっとしろということを説得させようと思いますし、非常に大事な問題提起をいただいたと思います。
 とにかくそういう姿勢で、これから、東京都も横田の問題の協議会に入っておりますが、その姿勢で米国に強い要請をしていき、結果とすれば、それが引き金になって、アメリカが京都の議定書に参入するということが、私は当然だし、望ましいと思いますけれども、せめてその小さな引き金になればと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔環境局長平井健一君登壇〕

○環境局長(平井健一君) 横田基地における地球温暖化対策についてでございますが、都は米軍に対しまして、エネルギー使用量の現状及び温室効果ガス排出抑制に係る対応状況について情報提供を求めてまいりました。
 米軍からは、横田基地では、飛行によるものを除き、一カ月に約二千七百キロリットルの軽油を消費しており、これを天然ガスに転換した場合には、二酸化炭素排出量の大幅な削減が行い得ることが示されております。
 今後とも、基地の施設整備を担当している東京防衛施設局などに対しまして、米軍との具体的な調整を進め、地球温暖化対策を進めていくように求めてまいります。
   〔産業労働局長関谷保夫君登壇〕

○産業労働局長(関谷保夫君) シカの食害対策に関します二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、平成十六年度のシカの捕獲状況でございますが、奥多摩町、青梅市の有害捕獲につきましては、目標数三百頭に対しまして、通年での実施により、既に二百八十五頭を捕獲しております。
 都の特別捕獲につきましては、昨年十一月からの開始であり、短期間であることや、一般狩猟との競合を避けるため捕獲区域を高山地域に限定していたことから、目標数二百頭に対し、二月末日現在、百五頭の捕獲にとどまってございます。
 しかし、一般の狩猟期間が終了した二月十五日以降は、捕獲区域を拡大するとともに、捕獲従事者の追加やわなによる捕獲などの措置を講じ、一回当たりの捕獲頭数が増加してきている状況にございます。
 今後とも、捕獲目標の達成に向け、努力を続けてまいります。
 次に、平成十七年度のシカの捕獲及び森林の復旧でございますが、捕獲につきましては、現在策定中のシカ保護管理計画に基づき、地元の市町村と連携して有害捕獲及び緊急捕獲に取り組んでまいります。
 森林の復旧につきましては、川乗谷逆川流域や峰入川支流の被害が著しい箇所につきまして、平成十六年度の土砂流出防止のための緊急の治山・砂防事業に引き続き、平成十七年度は、この荒廃地の復旧に向けた事業を実施してまいります。
 また、食害により森林の再生が困難な裸山の解消を図るため、苗木の食害防止措置を伴った新たな造林事業により、二十ヘクタールの裸山に約五万本の苗木の植樹を予定しております。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 過疎地域の下水道対策に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、過疎地域における下水道整備の課題についてでございますが、下水道の整備には、市町村が単独で下水を処理する公共下水道と、市町村の行政区域を超え、広域的に処理する流域下水道がございます。
 過疎地域につきましては、市町村が単独で処理する公共下水道を基本に整備することとして進めてまいりました。このため、過疎地域である奥多摩町や檜原村では、集落が点在し、整備効率が低いこと、山間部であるため下水処理場の用地確保が難しいこと、さらには、財政力が低い中で下水道整備による財政負担が増大することなどが課題となり、下水道整備がおくれてきております。
 次に、過疎地域の下水道整備における都の取り組みについてでございますが、奥多摩町や檜原村での下水道の整備促進を図るためには、集落が点在し、整備効率の低い地域において、下水道から合併処理浄化槽に変更して個別に処理するとともに、処理場用地の確保が困難な地域につきましては流域下水道への編入など、地域特性を踏まえた下水道計画の変更が必要でございます。
 都といたしましては、町村が策定する下水道計画の技術的指導を行うとともに、都費補助金の充当や国庫補助金の確保など、必要な支援に努めてまいります。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君) 多摩川及び秋川の南岸道路についてでございますが、これらの道路は、防災性の向上とともに地域の生活を支え、観光振興にも寄与する重要な道路であります。
 多摩川南岸道路は、愛宕大橋から海沢大橋までの二キロが既に開通し、残る〇・七キロのうち神庭東橋が今月中に完成いたします。
 また、秋川南岸道路は、山田大橋から五日市トンネルまでの二キロが既に開通し、残る秋川街道までの〇・四キロでは、十七年度から橋梁工事などに着手いたします。
 今後とも、財政状況を踏まえ、地元関係者の理解と協力を得て、事業中区間の早期整備に積極的に取り組んでまいります。

〇議長(内田茂君) 十五番河野百合恵さん。
   〔十五番河野百合恵君登壇〕

○十五番(河野百合恵君) 阪神・淡路大震災から十年、昨年からことしにかけては、新潟県中越地震、インドネシア・スマトラ沖の巨大地震、イラン地震などが連続して発生し、巨大地震の被害の恐ろしさを目の当たりにさせられるとともに、改めて減災の立場からの対策が待ったなしの課題となっていることを実感させられました。
 私は、いつ起きてもおかしくないといわれる首都直下型地震及び東海沖地震、東南海沖地震から都民の生命と財産を守る立場から質問を行います。
 まず、最近のこれらの巨大地震から何を学ぶのかという問題です。
 十年前の阪神・淡路大震災は、それまでの予想を大きく上回る力、すなわち地球の重力の二倍の二千ガルの力が加わり、それまでの建築基準を満たしていたビルや建築物が大きな被害を受けました。
 ところが、今回の中越地震は、気象庁の観測でも二千五百十五ガル、場所によっては阪神・淡路大震災を大きく上回る五千ガルの重力が加わったといわれています。これは宇宙ロケットが発射されるときの重力に匹敵する破壊力を持ったものです。このため、阪神・淡路大震災の後、耐震補強を行った上越新幹線や関越道の橋脚が破壊されるなど、予想をはるかに超えた被害がもたらされました。専門家は、現在の安全基準では被害を防ぐことができない地震だと指摘しています。
 そこで、阪神・淡路大震災をはるかに上回る重力がかかった中越地震の教訓に学び、東京における大規模地震の被害想定と防災計画、建築物の安全基準などを抜本的に見直すことが必要と考えますが、今後の震災対策について知事の答弁を求めます。
 昨年末、中央防災会議が首都直下型地震の被害想定を発表しましたが、地震の規模は、例えば東京湾北部地震の場合、マグニチュード七・三という大きなものと予測されています。その被害想定は、死者数が建物の倒壊による死亡のみしか想定していないなど、不十分な部分もあります。しかし、想定した規模の地震が発生すれば、我が党が指摘してきたように、政治経済の中枢を直撃するスーパー都市災害となることは避けられません。このことを直視するならば、東京都の被害想定は大幅に修正をしなければなりません。被害想定を全面的なものにするとともに、減災対策を急ぐ必要があります。
 例えば、都は、首都高速道路の橋脚の耐震補強は一〇〇%完了したといっていますが、それは橋脚の上部だけであり、地中部分の耐震補強を行う必要があります。
 また、先送りされている老朽化した都道の橋梁のかけかえなどが急がれていると思いますが、これらの交通インフラの緊急調査を行い、必要となった耐震補強施設の改修のための予算を確保することを提案するものですが、答弁を求めます。
 中越地震では、液状化によって上越新幹線や関越道の橋脚が破損し、下水道のマンホールが至るところで浮き上がるなどの被害が発生しました。
 私も昨年十一月に、救援ボランティアとして新潟県長岡市に行きましたが、そこで見たものは、液状化によって道の両側が大きく陥没したり、マンホールが一メートル近くも浮き上がるなどのすさまじい被害でした。
 私が住んでいる江戸川区では、小岩や篠崎、葛西南部地域などが液状化しやすい地域とされています。そこで、江戸川区などの危険地域について、液状化ハザードマップを作成し、交通機関や下水道などのライフラインの安全確保のための計画を策定することが欠かせないと考えます。関係局長の答弁を求めます。
 首都直下型地震だけでなく、東海沖、東南海沖地震も東京に甚大な被害をもたらすことが予想されています。とりわけ離れた地域での地震は、長周期の震動として伝わることから、超高層ビルや長大橋梁、石油タンク、原子力発電所などに、これまで予想してこなかった被害を与える危険が指摘されています。ある専門家は、今、建設されている超高層ビルは制震構造となっているので長周期波動に対応しているが、この西新宿などの以前に建てられた超高層ビルは長周期波震動に対応しておらず、また、免震構造のビルは、これまでの常識を覆して大きな被害を受ける可能性が高いことを警告しています。
 長周期波震動について、超高層ビルや原子力発電所など、安全神話にしがみつくのではなく、今日の研究成果を踏まえ、必要な対策を早急に講じるよう国に求めるとともに、都として対策室を設け、専門家を交えて対応を図ることが必要です。見解を求めます。
 倒壊被害を防ぐ上で、木造個人住宅の耐震補強が極めて重要です。昨年十二月、読売新聞が行った全国世論調査では、大地震が起きたときに最も心配されることとして、家屋の倒壊を挙げた人が六八%、自宅がかなりの被害を受けると思うと答えた人は三四%、三人に一人という結果が示されました。
 阪神・淡路大震災では、多くの木造住宅が倒壊、その倒壊した住宅から発生した火災が被害を拡大しました。このような住宅の倒壊、焼失によって失われる財産は、はかり知れないものがあります。それだけに、倒壊を防ぐための耐震補強のもたらす経済効果は大きなものがあります。
 一橋大学のある先生は、阪神・淡路大震災の際の被災住宅への公費の投入は、被災住宅の解体費、仮設住宅や復興住宅の建設費などで一戸当たり総額三千七百万近くかかり、全体では、仮設住宅に千四百億円、復興住宅に四千六百億円という公費投入を迫られたと述べています。
 しかし、あらかじめ耐震補強を済ませておけば、家屋の倒壊は免れ、巨額の公費を投入しなくてもよくなります。全国では、静岡、宮城、高知など七県、都内では中野区や墨田区、葛飾区などが、予算化を含め、独自に耐震補強工事の助成に踏み出しています。
 都は、三宅島村民の救済のために住宅再建の補助を実施しました。ですから、個人の資産だから補助はできないという理由は、もう通りません。家屋の倒壊による莫大な経済的損失を考えるならば、予防にお金を使う方が理屈に合っているのではありませんか。全国の先進の取り組みに学び、都として補助を実施すべきです。答弁を求めます。
 学校の耐震化は一刻の放置も許されない問題です。都内の公立学校の耐震診断の比率が約七四%、改修された学校は五五%にとどまっています。江戸川区の場合、十六校が耐震補強未実施で残されています。
 公立学校は、子どもたちの学習と生活の場であるだけでなく、非常時の避難生活場所とされており、その改修は待ったなしです。ところが、財政難が続く区市町村では、予算が確保できず、小中学校の耐震補強や老朽化した校舎の建てかえ、改修は思うように進んでいないのが現実です。
 今後、急激にふえる建てかえ需要を都区間の財政調整で適正に評価するとともに、時限的に補助を行うこと、少なくとも耐震補強についての区市町村の超過負担分だけでも、当面、支援することを求めるものです。
 災害時における消防の役割は大きなものがあります。中越地震で東京のハイパーレスキュー隊が懸命の活動で幼い子どもの命を救い、一躍脚光を浴びました。現在、都には、ハイパーレスキュー隊は二隊しかなく、来年度さらに一隊の増設が予算化されていますが、大規模地震を考えると、まだまだ足りません。
 また、老朽化した消防署の建てかえや出張所、消防団本部などの施設の改修も立ちおくれたままです。応急の対策の強化として、中越地震でも活躍したハイパーレスキュー隊を各方面ごとに配置するとともに、都は、老朽化した消防施設の建てかえや大規模改修などについて、先送りせず、事態を直視し、早急に建てかえ、改修のための財政措置を行うことを求めるものですが、それぞれ見解を求めます。
 この問題の最後に、家具の転倒、落下被害について伺います。
 家具転倒・落下防止対策委員会での検討はどのように進められているのでしょうか。当面、都としてキャンペーンの実施、低価格の器具の普及、アドバイザーや高齢世帯のための援助者の派遣、区市町村の助成などに取り組むことを求めるものです。お答えください。
 次に、子どもたちの安全について伺います。
 二月十四日に起きた大阪・寝屋川市での、十七歳の卒業生が母校を訪れ、教職員を殺傷するという事件は、改めて今日の社会と教育の抱えている矛盾の深刻さを突きつけるもので、都民に深い衝撃を与えました。同様の事件は、四年前にも大阪の池田小学校で発生し、その後、各学校での監視カメラの設置や防犯用具の配置などの対策が講じられてきましたが、今回の事件は、学校の安全の確保が引き続き緊急の課題となっているとともに、より根本的には、今日の子どもに大きな影響を及ぼしている競争教育の問題や大人社会のゆがみ、暴力的、退廃的な情報のはんらんなどの社会的問題の解決が避けて通れないことを示しています。
 中でも解決が急がれているのが、多くの子どもたちが巻き込まれている小学校から大学までの競争教育です。それは、小さいときから差別と選別の教育に追われ、友達を競争相手としか見られなくなったり、詰め込み授業に追いつけずに落ちこぼれたり、強度のストレスに多くの子どもたちがさらされていることの問題です。国連でさえ過度な競争と指摘している競争教育を見直すべきときが来ていると思いますが、知事の見解を伺います。
 強度のストレスにさらされている子どもたちの心のケアが急がれています。そこで、学校でのスクールカウンセラーや養護教員の増配置、地域に孤立して置かれている子どもたちのケアのシステムなど急がれていると思いますが、答弁を求めます。
 学校の防犯体制については、池田小事件以後、文部科学省が危機管理マニュアルを策定するなど、その対策が叫ばれてきたにもかかわらず、残念ながらおくれています。都内の小学校では、マニュアルで定められている整備状況は、入り口のインターホンが五九%、教室から職員室への非常通報ベルが二三%という水準です。
 今、区市町村は、厳しい財政状況のもとで学校安全対策の緊急対応に迫られています。そこで、インターホンや非常ベル、防犯用具など緊急に整備できるように支援することが、これらの整備を大きく促進することにつながると思いますが、いかがでしょうか。お答えください。
 マンパワーの配置も重要です。各学校に防犯用の監視カメラが設置されているとはいえ、人手がなく、実際に役立っていないことは、横浜市の小学校長会が行った調査で、一日平均十五・七分しかチェックできていないことでも明らかです。
 子どもたちを大切にする教育や校内安全確保の上からも、先生の増配置が求められているのに、都は積極的に対応しようとしてきませんでした。
 また、最近は、習熟度別学習やチームティーチングの導入で職員室はいつも空っぽという学校も少なくありません。専門に警備に当たる警備員や用務員、学童擁護員なども、行政改革の名のもとに定員削減の対象とされ、ほとんどの学校からいなくなってしまいました。
 このような学校の実態を無視した安易な人員削減は、学校の安全を損ないかねません。都として、まず先生の増配置をすること、学校警備員などマンパワーの配置への支援など、できる限りの手だてを尽くすべきではありませんか。
 見解を求めまして、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 河野百合恵議員の一般質問にお答えいたします。
 震災対策についてでありますが、日本は世界最大の火山脈の上にある世界有数の地震国でありまして、東京においても大地震が発生する可能性が極めて高く、自助、共助、公助に基づく備えを講じていくことが重要であると思っております。
 都は、全庁的な体制を強化するために、これまでも都以外の力を仰ぎ、総力を挙げて実践的な訓練を積み重ね、防災力を高めてまいりました。
 その一つの例が、私、就任以来始めました陸海空三軍を使っての防災対策ですけれども、共産党から終始反対でしたな。あなた方、選挙の前に、ことしも九月一日にやりますけど、それに賛成するか反対するか、はっきりいいなさい、はっきり。(発言する者多し)聞いてないんじゃないんだよ。大事なことだから、あなた方の意見を聞きたいんです。ことしも反対なんですか。(発言する者あり)それはしてないよ。都民の前であなたがはっきり答えなさい、それを。
 また、八都県市が連携し……(発言する者多し)具合の悪いことをいわれて、きゃあきゃあきゃあきゃあ泣くなよ、本当に、もう。また、八都県市が連携し、首都圏の震災対策を強化してまいりました。現に、首都を構成する四県によって、首都圏FEMAもつくってまいりました。
 国の被害想定が出されたことも踏まえ、あるいは、本当にいつ起こるかわからない、ことし起こるかもしれない大震災に備えて、ことしも九月一日に大演習を展開いたしますが、共産党は賛成するのかしないのか──国の被害想定が出されたことも踏まえまして、平成十七年度には、都内被害想定や地域防災計画の見直しに着手をいたします。
 どうかひとつ、三軍挙げての協力に皆様の協力を、共産党の協力も熱願するわけであります。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します四点の質問にお答え申し上げます。
 まず、公立小中学校の耐震補強や老朽校舎の改築等への区市町村に対する支援についてでございますが、公立小中学校の耐震補強や老朽校舎の改築等につきましては、設置者である区市町村が国の助成制度を活用して対応しているところでございまして、都として独自の補助を行うことは困難ですが、小中学校の耐震対策が一層促進されるよう、引き続き国に対して助成制度の拡充を強く働きかけてまいります。
 次に、教育における競争についてでございますが、昨年四月に、これからの都の教育の指針として策定した東京都教育ビジョンにおきましても、子どもたちが切磋琢磨することや競い合うことまでも過剰に避ける傾向が見られた結果、個性や能力を十分に伸ばすことができなかった面があると指摘しておりますが、学校におきましては、行き過ぎた平等主義や画一主義を改め、子どもたちが適度な競争の中で互いに競い合い、高め合う教育を行う必要があると考えております。
 次に、子どもたちのケアについてでございますが、都教育委員会では、スクールカウンセラーを、国の計画を二年前倒ししまして、平成十五年度よりすべての公立中学校に配置しますとともに、高等学校においても現在四十校に配置をし、児童生徒の相談活動の充実を図っておりますし、養護教諭につきましても、国の教職員定数改善計画を踏まえまして、配置をしているところでございます。
 今後とも、各学校において、スクールカウンセラーや養護教諭が児童生徒の心身の健全育成に積極的にかかわっていけるよう、区市町村教育委員会とも連携して支援してまいります。
 最後に、公立小中学校の安全対策のための区市町村への支援についてでございますが、学校の安全を確保しますことは、設置者である区市町村の重要な責務でございまして、各区市町村におきましては、今回の寝屋川市立中央小学校の事件を受けまして、警備員の配置や防犯設備の配備など、それぞれの実態に応じ、さまざまな安全対策に努めているところでございます。
 都教育委員会としましては、今回の事件を受けまして、緊急に区市教育委員会の担当者連絡会を開催し、学校の安全管理の総点検を行うよう指導したところでございます。
 また、学校安全管理につきまして、リーフレットの作成や、小中学校を対象とした防犯指導者講習会の実施などを進めておりますが、今後とも区市町村教育委員会と連携をしまして、学校の安全確保に努めてまいります。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君) 橋梁の点検と耐震補強についてでありますが、都と首都高速道路公団は、阪神・淡路大震災級の地震に対する総点検を既に実施しており、必要な耐震対策を進めております。この耐震対策の有効性は、新潟県中越地震においての類似した橋梁の被災状況からも確認されております。
 都では、既に防災上優先度の高い一次緊急交通路百六十五橋すべての対策を完了し、二次緊急交通路につきましては、百十七橋のうち二十九橋を今年度末に完了いたします。
 また、首都高速道路公団では、必要な橋梁の耐震補強を完了しており、現在、落橋防止対策を実施しております。
 今後とも、工期短縮とコスト縮減を図り、着実に橋梁の耐震対策を推進してまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 震災対策に関します三点のご質問にお答えいたします。
 まず、地下鉄の液状化対策についてでございますが、地下鉄構造物につきましては、構造物の上にある土砂により浮き上がりが抑制されることから、一般的に液状化の影響を受けにくいとされております。
 一方、地下鉄構造物が地下部から地上部に移行する区間などにつきましては、液状化による浮き上がりのおそれがあることから、周辺地盤を改良するなどの対策を鉄道事業者が実施してきております。
 都営及び東京メトロの地下鉄につきましては、既に液状化対策を完了しており、安全性は確保されております。したがいまして、新たな計画を策定する予定はございません。
 次に、長周期地震動に対する超高層ビルなどの対策についてでございますが、超高層建築物は、構造安全性について国土交通大臣の認定が必要であり、一般の建築物を上回る構造上の高い安全基準が適用されております。新たな問題である長周期地震動につきましては、現在、土木学会及び建築学会が合同で検討を進めております。都といたしましては、これまでの安全対策に加え、この検討結果を初め、国の動向を注目しつつ、適切に対処してまいります。
 最後に、木造住宅の耐震補強への助成についてでございますが、震災対策は、自助、共助、公助の原則により進めるべきものと考えております。都といたしましては、災害に強い都市を目指し、これまでも、木造住宅密集地域などの整備、改善を進めるとともに、住宅の耐震改修につきましても、耐震フォーラムの開催や簡易な自己診断方法の周知を行うなど、普及啓発に取り組んでまいりました。
 今後とも、区市町村と連携し、木造住宅の安全性の向上に努めてまいります。
   〔下水道局長二村保宏君登壇〕

○下水道局長(二村保宏君) 下水道施設の液状化対策についてでありますが、下水道管の埋め戻しに強度や密度などを高めた改良土を使用するほか、避難所の排水を受け入れる下水道管については、マンホールと管との接続部を柔軟な構造に取りかえるなど、計画的に対策を進めているところでございます。
   〔消防総監白谷祐二君登壇〕

○消防総監(白谷祐二君) 震災対策に関しまする二点のご質問にお答えいたします。
 まず、消防救助機動部隊の配置についてでありますが、東京消防庁では、阪神・淡路大震災の教訓などを踏まえまして、消防救助機動部隊、通称ハイパーレスキュー隊を現在までに三部隊整備してまいりました。
 今後、救助活動体制を一層強化するため、ハイパーレスキュー隊や各種装備資機材の充実強化に努めてまいります。
 次に、家具類の転倒、落下防止についてでありますが、東京消防庁では、先般、学識経験者と家具の業界団体等から成る、家具類の転倒・落下防止対策推進委員会を設置し、転倒防止器具の有効性や性能評価の方法を初め、効果的な取りつけ方法の周知、関係業界等と連携した普及方策などを検討しているところであります。
 今後、本委員会の検討結果を踏まえまして、都の関係部局、区市町村と連携し、キャンペーンの実施など、効果的な家具の転倒、落下防止対策の推進に努めてまいります。

〇議長(内田茂君) 百十番桜井武君。
   〔百十番桜井武君登壇〕

○百十番(桜井武君) 私は、都財政を取り巻く今後の状況について質問いたします。
 まず、三位一体改革について伺います。
 地方分権が声高に叫ばれてから既に相当な年月が経過いたしました。ちなみに、都議会自由民主党の控室の入り口のところには、地方分権確立推進本部という看板がかかっておりますが、この看板は、今、議長になっておられます内田茂先生がまだ若くて理想に燃えているときに、仲間として、つけたものでありますから、大分前のことでございますが、相当の年月が経過しているわけでございます。
 平成十二年に地方分権一括法が制定され、国と地方は、対等、協力の関係へと大きく転換したわけでございますが、肝心の国と地方の税財政制度については、抜本的な見直しは全く一向に進んでおりません。こうした事態を打開するために、国庫補助負担金改革、税源移譲、地方交付税の見直しをセットで行う、いわゆる三位一体改革が国において進められ、その理念は実に美しいといえます。大体、この三位一体改革という言葉自体が本当はおかしいのでございますが、とりあえず申し上げておきます。
 しかし、その現実はというと、地方分権改革の理念からは余りにもかけ離れたものとしかいいようがありません。国は、昨年六月に定めた、いわゆる骨太の方針二〇〇四において、小泉首相の政治判断により、三兆円規模の税源移譲を行う旨明記し、あわせて、税源移譲の前提となる国庫補助負担金改革の具体案の作成を地方に依頼いたしました。
 これを受け取った地方の側は、地方分権をとにもかくにも進めようという強い思いから、改革案の取りまとめに懸命に努力したわけであります。実際、全国知事会においては、昨年八月、石原知事を初め全国の知事が新潟に集結しまして、実に二日間にわたり深夜にまで及ぶ真摯な議論を展開しました。その結果、地方の案が取りまとめられ、国に対して改革を直談判した姿は、同じ地方の自立を目指してきた者といたしまして、胸に迫るものがありました。
 こうして地方が投げ返したボールを受け取って、秋からは、国による議論がスタートしたわけでありますが、国の各省は、省益を優先する余り、地方の提出した補助負担金の削減案に一斉に反発するなど、国の議論は当初から混乱をきわめたものとなりました。この間、国と地方の協議の場も、約四カ月の間に計八回開かれましたが、開催を重ねるほど、国の後ろ向きの改革姿勢が鮮明となるばかりでありました。
 結局、最後は閣僚による政治決着に持ち込まれ、昨年十一月、政府・与党合意による、いわゆる三位一体改革の全体像が取りまとめられましたが、その結果は、三兆円の国庫補助負担金の削減だけが優先されたため、大いに不満の残る内容となりましたことは、皆様方ご承知のとおりであります。
 このような性急かつ一方的な決定が行われたのは、もちろん国の各省による消極的な姿勢によるところが大きいわけでありますが、果たして地方の側にも問題がなかったでしょうか。分権改革の議論が、いつの間にか財源獲得の手段と化してしまい、こうした弱みにつけ込まれ、国に丸め込まれてしまったのではないかと思われます。
 まず、三位一体改革の全体像で示された内容で、どのような点が問題か、また、今後どう対応していくのか、知事の所見をまず伺います。
 国の全体像では、義務教育や生活保護などが国庫負担金の削減対象とされ、また、これまで全く議論の対象にすらなっていなかった国民健康保険への都道府県負担の導入が唐突にも盛り込まれてまいりました。余りにも唐突過ぎます。しかも、しかもです、国民健康保険制度を今後どうするのかという将来像が全く不明瞭なまま、財政負担の問題だけを切り離して地方への負担転嫁を行うことは、全く不合理であるといわざるを得ません。
 義務教育は、憲法で保障され、本来、国が責任を果たすべきものだと考えられます。しかし、国庫負担金を廃止対象とすることについては、都を含めた複数の自治体は反対しましたが、結局は国の全体像に盛り込まれてしまいました。
 今回の三位一体改革の全体像において、義務教育費国庫負担金の取り扱いはどうなっているのか、また、義務教育費国庫負担金の削減の東京都への影響額はどのくらいかを伺います。
 そもそも義務教育費国庫負担金は、教職員の人件費の半分を国が負担する制度であります。義務教育の水準を維持するには、まず教職員の確保がきちっと行われるべきであることから、国庫負担制度は、義務教育水準を実質的に担保する重要なものであるといえます。過去には、この制度を一時的に廃止しましたが、教育水準の地域格差が生じたことから、その後復活したという事実もあると聞いております。
 今回の改革の問題は、税源移譲の獲得を急ぐ余り、義務教育のあるべき姿という根本の議論がないままに、負担金の削減だけが先行したことです。
 知事は常々、公教育の根幹である義務教育の水準確保は国の責任であり、教育に関する根本議論が行われないまま義務教育費国庫負担金だけを廃止、一般財源化することに反対されておりますが、私も全く同感であり、我が国の将来を左右する義務教育のあり方についてきちんと議論することこそ先決であり、それが行われずに、ただ財源確保のために国庫負担金を廃止することに断固反対します。
 次に、法人事業税の分割基準について伺います。
 法人事業税の分割基準が、平成元年度以来十六年ぶりに見直されます。分割基準は、今回を含め実に六回の見直しがされています。私も、都議会議員として前回の見直しを経験していますが、実に苦々しい思いをしたのを覚えております。これまでもおかしかったものが、今回またまたさらにおかしくなってしまったと強く感じます。
 そこで、分割基準とは一体何のための制度なのか、また、本来あるべき法人事業税の分割基準とはどのようなものなのか、改めて所見を伺います。
 今回の見直しでは、都は六百億円もの減収になるとのことです。国はもっともらしい理由を並べ立てていますが、私は、今回の見直しは、分割基準制度を悪用し、東京都から財源を奪うものにほかならないと考えます。
 今回の見直しで最も不合理な点はどういうところなのでしょうか、所見を伺います。
 続きまして、都財政の今後の懸念材料について幾つか伺います。
 東京都はこれまでも、地方交付税の不交付等を理由とした不合理な財源調整を受けてきました。平成十七年度予算ベースでは、百八十億円もの影響になります。都は、こうした不合理な措置の是正を国に対して何度も強く働きかけてきましたが、国はその是正を実現するどころか、先ほどから申し上げているように、さらに不合理な財政負担を押しつけてきました。
 国の役人の発言には、東京問題というのがある、税源移譲すれば東京のひとり勝ちになると、東京バッシングをあおっているものがあります。本来あるべき地方分権という視点が欠如した改革や、不合理な地方税財政制度の見直しが繰り返し繰り返し行われる根底には、東京都は富裕団体であるという誤解があります。あるいは、わざと誤解しているのではないかと思います。
 東京は、人口、経済、産業、情報、消費活動が集積する、我が国を代表する大都市圏の中心地であります。あらゆるものが身近にあり、東京に住んでいる一千二百万人以上の都民は、さぞかし豊かな生活を送っていると考えられているのではないでしょうか。
 石原知事がいっていた、都道府県別豊かさランキングでは東京都は二十九位であり、平均以下の順位であります。住宅平均面積や混雑時旅行速度など、全国最下位のものもあります。都民が豊かさを実感できるよう、阻害要因を取り除くのが都の責務であります。そのためには、都は、他の地域にはない財政需要にこたえなければなりません。国が都の実態を考慮せず全国一律の基準で算定している地方交付税の不交付団体であるとしても、東京都は決して富裕団体ではございません。
 このことについて、都は、より積極的に、より詳しく説明していく責任があります。例えば、財政当局は、戦後六十年、東京オリンピックから四十年が経過した社会資本ストックの更新に膨大な経費がかかっていくという懸念を訴えています。規模にもよりますが、一つの橋をかけかえるのに約三十億円が必要との試算もあります。今後の更新経費が具体的にどのような状況にあるのか、伺います。
 都はこれまでも、厳しい財政運営を強いられる中、限られた財源を重点的、効率的に配分し、都民の負託にこたえてきました。平成十七年度予算においても、都市機能の拡充や福祉・医療の充実など、都政が直面する緊急課題に積極的に取り組んでいます。健全な財政運営と都民施策の充実は車の両輪、まさに知事と都議会自民党とが、ともにこれまで追求してきたものであります。
 そして、平成十年度以来七年ぶりに、臨時的な財源対策を行うことなく予算を編成し、財政再建と施策の充実との両立という非常に難しい問題に対し、これまでの血のにじむような努力を成果で示しております。
 また、東京都は、財政再建と同時に、将来を見据えて、財政の体力回復にも取り組んでいます。機を逸せず、しっかりとした中期的展望に立った財政運営は、その場しのぎの財政運営を繰り返す国とは異なり、非常に評価できるものです。
 しかし、都が着実に努力をし続けても、国におけるこれまでの議論や、他の自治体の東京への無理解ぶりを見れば、先ほど申し上げたような国の一方的な負担の押しつけや、都をねらい撃ちにした財源調整などは今後も続くでありましょう。
 国に対して、するべき主張をきちんとしながら、さらに歯を食いしばって、国に比べはるかに健全な財政運営を継続していかなければなりませんが、最後に、財政構造改革に取り組む知事の決意を伺い、私の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 桜井武議員の一般質問にお答えいたします。
 大変力強いご質問と、ご建言をいただきまして、ありがとうございました。
 いわゆる国の三位一体改革についてでありますが、何回も繰り返して申しましたけれども、今回の改革の全体像なるものは、ただ国の支出を地方につけかえただけでありまして、何ら分権に結びつかない結果となりました。国の権限を温存する交付金化に至っては、改革の本旨に逆行するものといわざるを得ません。
 いわゆる三位一体の三要因であります、その一つである交付税制度などというものは、百二十兆の赤字を来しているのに、これについて全く国と地方との間の議論もございませんでしたし、税財源の配分にしても、いきなり三兆円というえさを総務省が投げ込めば、みんな金魚みたいにそれに飛びついて、千載一遇、千載一遇といって、結局本論が全くないままに終わったのが、前回の知事の総会の実態だと私は思います。
 やめた人のことをいいたくありませんが、梶原君は親しい仲ですけれども、二人で思い切って話をしましたら、君、本気で六十点というのかといったら、いや、限りなくゼロに近い六十というの、こんなものはやっぱり語るに落ちる話でありまして、ともかく、あそこで東京は東京なりの主張をすべき問題がたくさんありましたが、何か東京ひとり勝ち論が横行しているんで、できるだけ私は言葉を慎みましたけれども、しかし、他県、他の特別区も含めて、特別市ですか、政令指定都市ですか、それにためになる建言もしたんだけど、全くそれが議論の対象にもならない形でありました。
 東京はいい分がいっぱいありまして、田中角栄がつくったあの石油揮発油税にしたって、東京が日本で最大の売り上げをしているのに、もともとそれはもう高速道路の建築という目的税でありましたが、その分割なるものは非常にでたらめで、東京は売り上げには協力しているけれども、もらうべきものをもらっていないという、そういう非常に矛盾した実態があちこちにありますが、ここでそれをくどくど申しませんけれども、いずれにしろ、最初からやはり国は何までするか、ならば地方がどこまで受け持つかという、そういうきちっとした両手をついた仕切りというものをせずに、いきなり立ち上がって、何か知らぬけど、金の話に終始したという感じで、これからは、あるべき、全国知事会も含めまして、国と地方自治体の話し合いというものは、やはり最高責任者の総理が出てきて、自分の、日本の歴史の中での地方分権という必然性、蓋然性というものを要するに披瀝し、それに知事たちがこたえていくという形でなければ、書生論のようですけど、本当の改革にはつながらないと思っております。
 そういうことで、都は、これからも機に応じて東京の主張をしていくつもりでございます。
 次いで、財政構造改革に取り組む決意についてでございますが、知事に就任した当時、都財政はまさに危機的状況にありましたが、組合職員の協力も得て、財政再建に懸命に取り組んできた結果、放漫財政を続ける国とはいささか異なり、着実に成果も上げてきたと思います。
 例えば一般歳出の伸びで見ますと、十四年度以降四年連続のマイナスとしている中で、昭和六十三年度を一〇〇とした指数では、国の一四三と対比して都は九八と、十七年前の水準まで抑制してきております。
 しかし、今後は、税収を左右する景気の動向が不透明なことに加え、三位一体改革などの動きで、都財政を圧迫する懸念材料が山積しております。
 先ほどご指摘にもありましたが、担当の局長がお答えしますけど、そもそも全く根拠がなしに決められた、二対一という本社と支社の法人事業税の分割基準なるものを、今度は、IT化の時代だから、本社の業務が要するに軽くなったという全く根拠のない、わけのわからない文明論で、またその基準を変えて、東京から収奪する。
 これは、本当に無念ながら、抵抗のしようがないですね。一方的に決められて、反論の機会もないままに国が物を決める。私はやっぱり、そういう運営そのものを、私たちは全国知事会で総理を相手に議論すべきときに来ていると思うんですが、総理は、なるたけ自分の出番をつくるなということのようでありまして、これでは議論が議論にならないうらみがございます。
 依然として、これを一つの参考にして申しますけれども、国は、東京特有の大都市需要というものを一向に理解せず、相変わらず一方的な負担の押しつけや理不尽な財源調整を繰り返してくるでありましょう。こうしたことから、国に対しては、やはり対峙すべきときは対峙して、引き続き気を引き締めて、東京の将来を見据えた財政構造改革に全力で取り組んでいく決意でございます。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔知事本局長前川燿男君登壇〕

○知事本局長(前川燿男君) いわゆる三位一体改革における義務教育費国庫負担金についてでございますが、昨年十一月の国の改革の全体像では、平成十八年度までの二年間で、暫定措置として八千五百億円程度削減するといたしております。その一方、同じ全体像において、中央教育審議会で教育内容、国と地方の役割、費用負担のあり方などを検討し、この秋までに結論を得るとしております。
 矛盾した話でありまして、本来国が財政責任を負うべき義務教育の負担金を、本質的な議論もないまま削減対象としながら、一方で中央教育審議会において幅広く検討するとしているわけであります。
 また、削減による来年度の都への影響額についてのお尋ねでありますが、全体予定額四千二百五十億円のうち三百三億円と想定をいたしております。これにつきましては、特例交付金により同額の財源措置が行われる予定であります。
 なお、一言付言いたしますと、お尋ねの法人事業税の分割基準の問題を初め、いわゆる東京問題であるとか、あるいは東京ひとり勝ちであるとか、東京を初めとする大都市圏への集積が日本の発展を支えている現実を無視して、東京と地方を殊さらに対立するかのようにとらえ、東京から税財源を取り上げれば問題が解決するかのような議論が一部で行われておりますが、私ども、こうした議論を決して許してはならないと考えております。
   〔主税局長山口一久君登壇〕

○主税局長(山口一久君) 法人事業税の分割基準についての二つの質問にお答えします。
 分割基準は、複数の都道府県で事業活動を行っている法人の事業税を関係都道府県間で配分するための基準でございます。法人が確定申告等を行う際には、この分割基準を用いて都道府県ごとの事業税を算定し、それぞれの都道府県に申告納付する仕組みとなっております。
 また、分割基準は、応益税としての事業税の性格から、企業の都道府県ごとの事業活動規模を的確に反映したものとすべきとされており、都としましては、従業者数が最も簡便かつ適切な指標であると考えております。
 次に、国による分割基準見直しについてでありますが、国は、アウトソーシングやIT化の進展等を踏まえ、サービス産業の分割基準について、これまでの従業者数に加え、事務所数を併用することにしております。
 しかしながら、都の調査では、本社には支店の二十倍近い従業者数がいるにもかかわらず、いずれも一つの事業所として算定する改正案は、企業の事業活動規模を無視した不合理な措置であると考えております。
 また、国は、税源移譲に伴い、都だけを見れば大幅な減収となる見込みであるにもかかわらず、区市町村を含めた東京の地域で約六百億円の増収になるため、地方団体間の財政力格差の是正を図るとしております。
 都としては、これは、東京をねらい撃ちした財源調整措置にほかならないと考えております。
   〔財務局長松澤敏夫君登壇〕

○財務局長(松澤敏夫君) 社会資本ストックの更新経費についてのご質問にお答えいたします。
 東京の既存の社会資本は、急激な都市化に対応するため、昭和三十年代後半から四十年代の高度成長期に整備されたものが多くなっております。例えば、都が管理する橋梁は、現在約半数が整備後四十年以上を経過しておりまして、また、都営住宅二十六万戸の約半数についても、昭和四十年代までに建設されたものとなっております。加えて、都庁舎なども、機能の更新などの大規模な修繕の時期をこれから迎えることになるわけでございます。
 こうしたことから、今後、既存ストックの老朽化に対する維持管理コストが増加するとともに、多額の更新経費が必要となると見込まれており、このことが都財政にとって大きな負担要因となることが予測されるところでございます。

〇議長(内田茂君) 一番谷村孝彦君。
   〔一番谷村孝彦君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○一番(谷村孝彦君) 第十六期都議会の最初の定例会である平成十三年第三回定例会の直前、米国同時多発テロが発生しました。当時、石原都知事はワシントンDCに滞在中で、そのご経験から、直後の所信表明では、都市行政における危機管理の重要性を提起されました。それに応じて、我が党から、首都圏全体で機能できる危機管理組織、いわゆる首都圏FEMAの提案をいたしました。
 これを受け、石原都知事の英断とリーダーシップにより、都に危機管理監の配置、八都県市に情報連絡体制の確立がなされたことは、テロの対応にとどまらず、国の中央防災会議が指摘する首都直下地震へ立ち向かう態勢の基盤が既に整っているといっても過言ではないと思います。
 この九・一一を境に、国際社会における安全保障のあり方も大きく変わり、アフガン、イラクにおけるテロとの戦いなどを経て、今世界的な米軍の再編、いわゆるトランスフォーメーションが具体的に進行し、在日米軍の再編についてもさまざまな議論が行われております。こうした中で、横田基地の軍民共用化の実現が目前に迫りつつあります。そこで、横田基地の軍民共用化について伺います。
 国が取り組むべき騒音問題への対応などの課題も残っておりますが、多くの旅客や貨物が横田空港を利用することにより、多摩を中心に、埼玉、神奈川、山梨、長野なども含め、大きな経済波及効果が期待されております。平成十一年度に都が実施した調査によれば、横田空港の民間航空需要は、二〇一五年度で国内線二百六十万人、国際線二百三十万人と予測され、その経済波及効果は一千三百八十億円、雇用創出効果は八千三百人と推計されております。
 しかしながら、平成十一年度当時と共用化の骨格が具体的に見え始めた現在では、算出条件も大きく異なりつつあります。そこで、軍民共用化による経済波及効果や需要予測について、現段階で改めて実施する必要があると思いますが、知事の見解を伺います。
 今後、共用化を進めるに当たっては、あくまで経済効果や雇用創出効果を拡大できる方向を目指すべきであります。地元への経済波及効果は、旅客ターミナルビルなど空港関連施設の建設段階から発生をします。私の地元である武蔵村山市には、横田基地に隣接した場所に広大なスペースが存在し、旅客ターミナルビルなどの立地に適していると、地元にはひそかで熱い待望論があります。
 軍民共用化を進めるに当たっては、こうした空港関連施設の建設を初め、周辺基盤整備や騒音対策など、地元に密接に関係する課題も多くあります。しかし、最近の新聞報道によれば、横田基地の軍民共用化について、都の頭越しで日米両政府の議論がなされているようであります。地元自治体の意見、とりわけ選挙公約にも掲げて推進してこられた石原都知事の声、つまり東京の要望も十分担保されるべきであります。
 国に対して地元の十分な意見の反映を求めながら、軍民共用化を進めるべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 なお、これは要望ですが、横田基地の軍民共用化が実現すれば、周辺の基盤整備の必要性が急速に高まります。特に道路、鉄道などの交通ネットワークの整備は不可欠であり、そこに愛知万博で運行されるリニアモーターカーなどによる新しい交通システムの導入を検討すべきであります。近い将来の課題として提案しておきます。
 次に、多摩都市モノレールについて伺います。
 多摩都市モノレールは、平成十二年一月に、多摩センターから上北台までの約十六キロ区間で開業以来、乗客数が年々増加し、今では一日当たり十万人を超える人が通勤や通学に利用しております。多摩都市モノレールは、この地域の南北交通を確保するとともに、沿線のまちづくりや地域の活性化促進機能をあわせ持ち、多摩の振興になくてはならない存在であります。
 全国の多くの鉄道会社は、乗客数が伸び悩み、特に第三セクターによる鉄道、軌道は、どこも大変厳しい経営環境に置かれております。しかし、多摩都市モノレールは、都や沿線五市による経営支援もさることながら、多摩都市モノレール株式会社みずからも、開業時から惜しまぬ経営努力を続け、着実な成果を上げつつあります。
 そこで伺いますが、多摩都市モノレール株式会社の経営努力と、これに対する都の評価、また、最近の利用状況や経営状況、及び上半期の営業損益が初めて黒字となった平成十六年度決算の見込みと乗客数の見込みについて伺います。
 昭和四十七年以来、多摩都市モノレール構想を推進してきた萩谷勝彦前議員の後継者として、私は、関係各位の皆様とともに、まずは上北台から箱根ケ崎までの延伸に全力で取り組んでいく決意を改めて表明しておきます。
 次に、多摩の観光振興策について伺います。
 都立東大和南公園の一角に、第二次世界大戦における米軍機の機銃掃射の傷跡が残る旧日立航空機株式会社変電所があります。東大和市文化財に指定され、市が管理を行い、都も建物周辺の敷地を同様のモニュメントで整備するなど、訪れる人たちに平和のとうとさを訴える貴重なエリアとなっております。
 先月、東大和市から都に要望が出されましたが、東大和南公園のこの一角を、例えば平和の広場などと名づけて、案内表示板の設置、及びパンフレットやホームページで紹介できるよう強く要望しておきます。
 さて、その旧変電所の建物で、先月、「多摩の戦跡」と題した多摩地域の戦争の傷跡を写真で紹介するパネル展が開催されました。多摩地域には、この旧変電所と同様の戦災建造物などが四十カ所以上ありますが、余り知られることのないまま、その存在は風化しつつあります。こうした貴重な史跡を保存し、多くの都民に紹介できるように、案内標識や解説板などを整備するとともに、マップなどを作成するなどして、隠れた史跡に手を加えれば、観光資源として生まれ変わります。
 多摩には、史跡、歴史遺産、あるいは公園や豊かな自然、文化施設、さらには地域の産業祭りも含めて、各種のイベントも実施されております。近隣市町村が連携し、一体的な観光資源として売り出すため、広域的な観光振興の取り組みを進めていくべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、臨海副都心の観光まちづくりについて伺います。
 臨海副都心は、さまざまな観光資源を有し、常に新たな情報を発信するなど、未来性が感じられるエリアであり、水と緑の豊かな多摩地域からも数多くの都民が訪れております。
 都は、昨年三月、臨海地区観光まちづくり基本構想の中で、十六年度行動計画を取りまとめておりますが、その実施状況と成果について、まず伺います。
 臨海副都心には個性的な施設が多数集積し、多くの観光客でにぎわっておりますが、それぞれの施設は非常に魅力的ではあるものの、臨海副都心全体として見ると、一体感に欠ける印象が否めません。
 平成十七年度には、まち開き十周年を迎えます。六本木ヒルズや汐留などとの地域間競争に打ち勝つために、このまち開き十周年の佳節に、域内企業と施設が連携してイベントを行い、臨海副都心全体を一つのエリアとして有機的にPRしていくことが必要と考えますが、所見を伺います。
 次に、小学校の教員配置について伺います。
 小学校への不審者の侵入、殺傷事件が後を絶ちませんが、去る二月十五日には、大阪寝屋川市の小学校で三人もの教員が殺傷されるという、大変に痛ましい事件が発生しました。子どもたちが学び、生活する学校は、本来、最も安全なところでなければならないという当たり前の常識を一日も早く取り戻さなければなりません。
 東京都では、学校の安全を守るために、学校一一〇番や、昨年度からはスクールサポーター制度を始めるとともに、区市町村教育委員会や各学校現場においてもさまざまな工夫を凝らした取り組みが進められております。
 先日、小学校の校長先生方と懇談する機会がありましたが、その折、ある校長先生は、学校現場において男性教員が極端に少ないということも、小学校への侵入、殺傷事件が後を絶たない遠因になっているのではないかと指摘しておりました。
 寝屋川市の事件の後、埼玉県のある小学校で警察の協力を得て行った、本番さながらの侵入者対策訓練の模様をテレビニュースで放映しておりましたが、人質役になった女性教員は、訓練だとわかっていても、どうしようもなくおびえてしまったと語っておりましたが、先ほどの校長先生の指摘もあながち間違いではないとの感を深くしました。
 確かに、ここ数年来、小学校教員の男女比率はおおむね三対七となっております。学校現場では女性教員が圧倒的に多く、学校によっては、二対八という極端にバランスを欠いた例もあると聞いております。一学年に四クラスある、ある小学校では、一年から四年までの十六人の担任の中で、男性教員は二人しかおりません。高学年の五、六年でそれぞれ二人、この学校全体の担任教員の男女の比率は二五対七五という状態となっております。
 また、公立学校統計調査によると、平成十六年五月一日の時点で、教員の男女比率が三対七を超える学校は、一千三百四十一校一分校の都内全公立小学校のうち三百九十五校に上り、全体の二九・四%を占めております。この中で男女比率の最も大きい例は一五対八五で、二校も存在すると聞いております。このような極端な不均衡は是正すべきであります。
 先ほど例に挙げた小学校で、五、六年生の高学年に数の少ない男性教員を配置している理由として、修学旅行や林間学校、移動教室などの宿泊を伴う学校行事で、ふろやトイレなどの対応に、どうしても男女の均衡が必要だからということでありました。さらに聞いてみると、低学年でも、例えばプールでの水泳指導や運動会、体育館での学校行事の設営、問題行動の多い児童の指導などで、数少ない男性教員に重い負担がのしかかっているとのことでありました。
 こうした学校現場の要請にこたえるために、人事上の配慮のほか、例えば、教職課程の学生の活用や大学生のプレーリーダー、有償ボランティアや学校補助員などの導入、あるいは安全確保のための常駐のスクールガードなどを導入すべきであると思います。
 都教育委員会は、教員の男女比率が極端に偏った学校における学校運営の状況をどう認識し、どう対応しようとしているのか、所見を伺います。
 これから数年は、団塊の世代の教員が大量に退職していく時期に当たります。教職員の構成が大きく変化する中で、学校運営が安全かつ円滑に行われるよう最大限の努力を払うべきであります。都教育委員会に強く要望いたします。
 最後に、制度融資について伺います。
 都は、十七年度制度融資の目標額を十六年度と同様の一兆七千五百億円とし、第三者による事業承継を対象とした新たなメニューの創設などでさらに充実を図るとしております。私は、このことを高く評価するとともに、中小企業が利用しやすい制度にするための運用面の改善が必要であると思います。
 まず大切なことは、保証人にかかわる中小企業の負担を軽減することであります。民間金融機関のいわゆるビジネスローンの多くは、第三者連帯保証人を既に不要としており、国においても包括根保証制度を見直す法改正が行われました。
 都の制度融資においても、中小企業ではなかなか引き受け手を見つけることのできない第三者連帯保証人について見直す必要があると思いますが、見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 谷村孝彦議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、横田基地の軍民共用化についてでありますが、これまで日米両政府に早期実現を求めてまいりましたけれども、先日、先ほど申しましたように、防衛庁もやっと一人前の扱いを受ける形で、2プラス2という日米安全保障協議会が開催されました。そこで具体的な協議が行われる段階に入りましたが、機はようやく熟しつつあると思っております。
 ご指摘のとおり、共用化が実現すれば、首都圏の逼迫した航空需要に対応することが可能となり、経済波及効果も、単に首都圏だけでなく、日本全体に大きな作用があると思います。
 共用化を実現する上での交通網の改善や騒音対策など、都や地元市町に関する多くの課題もございますが、これを先行してやるというのもなかなか難しいことでございまして、まずとにかく、私は、あそこからたくさん飛行機を飛ばすことだと思うんです。
 今、日本航空や全日空が何となく足踏みしているのがありますが、構わないからやっちまえと。それだったらほかの第三の空港、要するに航空会社に思い切ってシェアを渡すぞというと、うろうろしているんですけれども、いずれにしろ、あそこでお客がたくさん歩き出せば、国だって都だって、要するにインフラの整備をせざるを得ないんで、まずとにかく、あそこから飛行機をたくさん飛ばすということを私は先行してやるべきだと思っております。
 こうした課題に対して、国が、我々地元自治体の意見を踏まえて責任を持って対応することが必要でありますけれども、とにかく飛行機を飛ばすことで、あの飛行場のユーティリティーを示すことで、付随して経済効果が出てくるということだと私は思います。
 今後とも、地元の市町の理解と協力を得ながら、国に対米交渉の促進を強く働きかけ、軍民共用の早期実現を図ってまいります。
 次いで、軍民共用化の経済波及効果などについてでありますけれども、地元などの広範な理解を得て軍民共用化を推進する上で、航空需要や経済波及効果を正確に把握することが必要不可欠であるとは思います。しかし、これも、やってみればわかること、また、やってみなきゃわからないこともございますが、いずれにしろ、推計に当たっては、民間機の便数や使用する機種、ターミナルなどの施設規模等、共用化の具体的な形態が定まることが前提であります。
 何を狂ってか、アメリカに気兼ねして、ある会議で外務省が、十五機なんてばかなことをいいまして、そんなものなら返す必要ないじゃないかという反論がアメリカからありましたが、そういうところが日本の外交の、何を考えているか、本当に拙劣というか、おずおずおずおずした嫌な姿勢でありまして、それはこちらが責任で修正いたしました。
 今後も、軍民共用化の進捗状況を見ながら、交通経済の専門家であります、一橋大学の、今、学長になりました杉山武彦さんに調査の依頼を――この人は交通論の専門家だそうでありますけれども、これによって、首都圏西部の地域の産業、物流、交通などにいかなる構造的な影響を与えるかを考察し、必要な検討を進めていただきたいと思っておりまして、予算の措置もいたしました。
 その他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教員の男女比率が極端に偏った学校におきます学校運営の認識と対応についてのお尋ねでございますが、各学校におきましては、校長が、学校運営等が円滑に行われるよう校内組織を編成しまして、各学校の実情に即した運営を行っております。お話しの教員の男女比率が極端に偏った学校における宿泊を伴う行事等の指導につきましては、教員の役割分担や指導体制などを工夫して実施しているところでございますが、教員にはさまざまな役割がございますことから、男女比率が極端に偏らないことが望ましいと考えております。
 都教育委員会としましては、今後とも学校運営等が円滑に進むよう教員配置に努めますとともに、学校において、ご指摘の対応などの点も含めまして、男女の教員がそれぞれの特性を生かした指導を行うなど、実情に即した運営が一層充実するよう区市町村教育委員会に対しまして指導助言を行ってまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 多摩都市モノレールに関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、多摩都市モノレール株式会社の経営努力についてでございますが、収入の確保策として、初乗り運賃や通学定期の割引率を見直すなど需要喚起を図るとともに、沿線施設と提携した企画乗車券の発行、車体のラッピング広告の導入などにより増収を図ってまいりました。あわせて、支出の面では、人件費や経費を平成十二年度から十五年度までの四年間で約二十七億円削減してきたところであります。
 こうした経営努力により、平成十六年度で営業損益の黒字が見込まれておりますが、経常損益は依然として赤字であることから、今後も引き続き経営努力を進めていく必要がございます。
 次に、多摩都市モノレールの利用状況及び経営状況についてでございますが、多摩都市モノレールは、全線開業から五年余りがたち、多摩地区の重要な公共交通機関として、一日平均十万二千人が利用しております。経営状況は、平成十五年度決算で見ますと、営業損益は五億二千万円、経常損益は十九億一千万円と、それぞれ赤字となっておりますが、いずれも前期と比べて損失は減少してございます。
 最後に、平成十六年度における決算見込みについてでございますが、利用者の増加により営業収益は増加し、営業費用は経費の削減を進めることから、営業損益は約四千万円の黒字になると見込まれております。経常損益は引き続き約十二億五千万円の赤字になりますが、前期と比べて赤字額は約六億六千万円減少するものと見込んでおります。乗客数につきましては、前年度と比べて一・五%増加の一日平均十万四千人と見込んでございます。
   〔産業労働局長関谷保夫君登壇〕

○産業労働局長(関谷保夫君) 観光施策及び制度融資に関する二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、多摩地域における広域的な観光振興の取り組みについてでございますが、多摩の各地域が観光地として魅力を向上させるには、地域の特性を生かした観光資源の開発や利用の促進に加えて、広域的な連携が重要でございます。
 そこで、それぞれの地域の取り組みを生かし発展させるため、今年度、多摩地域の市町村を対象としてブロック会議を設け、相互に密接な情報交換を開始いたしました。また、十七年度からは、複数の市町村にまたがる観光まちづくりに関する推進組織の設立などを支援してまいります。こうした取り組みを通じまして、観光ルートの開発を初め広域的な観光の取り組みを促進してまいります。
 次に、制度融資の第三者連帯保証人についてでございますが、制度融資では、五千万円を超え八千万円までの無担保保証については、代表者の個人保証に加え、第三者連帯保証人を徴求することとなっておりますが、これまでも、借り受ける者が第三者に保証人を依頼することが困難であるなどの事情を考慮し、真にやむを得ない場合に限定するなどの運用を行ってまいりました。
 しかし、円滑な中小企業金融を行っていく上で、保証人にかかわる中小企業の負担を軽減することは非常に重要なことでございますので、制度融資におきましても、今日の第三者連帯保証をめぐる状況の変化等を踏まえまして、その徴求について一層の改善を図ってまいります。
   〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) 臨海副都心の観光まちづくりについての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、臨海地区観光まちづくり行動計画についてでございます。本年度は、これまで十六件の事業を実施してきたところでありまして、主なものといたしましては、りんかい線国際展示場駅からビッグサイトまでの屋根つき回廊の整備や、国内外の観光客向けのポータルサイトの立ち上げ、外国語併記の案内板設置等が挙げられます。
 こうした進出企業との連携による取り組みにより観光まちづくりの機運が高まり、地域の利便性や魅力が向上した結果、昨年の記録的な猛暑や台風の影響にもかかわらず、来訪者は、これまでと同等の年間四千万人を超えたところでございます。十七年度も、こうした成果を踏まえまして、地域で連携した取り組みを継続的に行うことにより、さらなる来訪者の増加とまちの活性化に努めてまいります。
 次に、臨海副都心の企業間連携によるPRについてでございます。臨海副都心では、これまで、企業の連携で地域全体を巡回する無料バスの運行や電子マネーの導入により、来訪者の利便性向上に取り組んでまいりました。
 十七年度はまち開き十年目に当たりますが、三周年、五周年という節目の年を迎える企業も多く、まち全体でタイアップいたしまして事業展開を行うまたとない機会でもございます。このため、企業等による協議会を立ち上げ、具体的な事業連携について企画するとともに実施してまいります。例えば、来年度開通十周年を迎えます「ゆりかもめ」を軸に、各駅で周辺企業と連携イベントを行うなど、まち全体のにぎわいを継続的につくり出し、来訪者の心が躍るようなさまざまな取り組みを進めてまいりたいと考えております。

〇副議長(中山秀雄君) 五十三番大津浩子さん。
   〔五十三番大津浩子君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○五十三番(大津浩子君) まず初めに、防犯・防災モデル都市東京を目指しまして、治安対策、防災対策について質問をいたします。
 本会議初日に、警視総監から、おととしを治安回復元年と位置づけ、本年末までの三年間で治安水準を十年前に戻すとする治安状況の報告がありました。強盗、侵入窃盗、ひったくり、性犯罪の四つの重点犯罪は、一年で一八%減少し、検挙率も一一ポイントプラスの六四%という上昇は、評価されるべき成果だと思います。
 さて、渋谷区では、センター街を中心としまして、少年の犯罪、非行並びに外国人らによる薬物犯罪などが多発しており、昨年も一般質問で渋谷地区の治安状況の悪化を取り上げました。その後、昨年三月末には、渋谷センター街を中心とした街頭防犯カメラが運用され、映った窃盗犯が即座に逮捕されました。本年は集大成の年として、さらに対策を強化されることを期待しています。
 渋谷地区における少年犯罪、少年非行並びに外国人らによる薬物犯罪等の実態と今後の対策について、一年の成果を含め、昨年もご答弁をいただきました警視総監からお願いをいたします。
 取り組みに敬意を表するとともに、防犯モデル都市の実現に向け、今後も警視庁の総力を結集した治安対策の推進を要請いたしておきます。
 次に、都市の外国人犯罪や脱法ドラッグ犯罪への対策としまして、密輸、密入国を水際で阻止すること、まずは入り口で阻止する、もとから断つことが重要です。港湾保安の水際対策の強化について伺います。
 今日の東京港は、世界じゅうから多数の船舶が寄港し、首都圏四千万人の消費生活と産業活動に欠かせない生命線の役割を果たす一方、人々の生活を脅かす密輸、密入国が発生しております。昨年七月、東京港では、東京税関の大型エックス線によるコンテナ検査で、大麻樹脂約六十五キログラム、末端価格約五億円相当を押収したことは記憶に新しいところです。
 港湾の保安対策は、昨年七月、改正SOLAS条約の発効により、新たな転換点を迎えています。立ち入り制限区域にフェンスゲートが新たに設置され、出入管理の強化が図られています。今後も水際の危機管理に取り組んでいただきたく、保安対策の取り組みについて所見を伺います。
 次に、学校の防犯対策についてもお伺いをいたします。
 せんだって、寝屋川市立中央小学校の事件が発生しました。平成九年の神戸連続児童殺傷事件以来、ほとぼりが冷めたころに繰り返して起きていますが、もう二度と発生することのないように、学校の防犯対策を向上させたいものです。東京都教育委員会としては、どのように対応し、今後取り組んでいかれるか。また、都立盲・ろう・養護学校についてはどのような防犯対策を施していくのか、所見をお伺いいたします。
 さて、昨年は、集中豪雨、台風、地震、津波、大規模災害が続発をいたしました。もし、日本の人口の四分の一が暮らす首都東京で直下地震や大規模災害が起きたら、一体どうなるのでしょうか。
 二月二十五日、政府の中央防災会議・首都直下地震対策専門調査会が、マグニチュード七・三の首都直下地震による被害想定の最終報告を取りまとめました。予想経済損失は百十二兆円。これは、阪神・淡路大震災の十倍、国家予算の一・四倍もの被害です。しかも、大震災の発生確率は、十年以内は三〇%、三十年以内だと七〇%、ほとんどの確率で来るということで発表されています。中越地震における余震と雨のように、要素が上乗せとなれば、被害も予想以上になります。
 首都には、まだまだ密集木造住宅地、江東デルタ地帯や臨海部の軟弱地盤、山間部の土砂崩れなど、危険地域が存在します。地震の際、密集市街地では、幅五・五メートル未満の細い道路に倒壊家屋や瓦れきが倒れ込み、救急車や消防車が通れなくなる細街路閉塞が発生すると指摘されています。
 そこで、一人でも多くの都民の命を救っていただけるには、防災体制の強化と、建物の耐震化や不燃化等の減災対策が最も効果的と考えますが、密集市街地における減災対策、防災対策を伺います。
 また、細街路閉塞になると、せっかくの小型ポンプ車や消防バイクなどの装備も入れなくなる可能性もあり、都民は不安でいっぱいであります。首都東京における震災時の消防活動について、改めてお伺いをいたします。
 災害は、いつ起こるとも限りません。万が一の場合には、安全な避難、火災を出さないなど、地域住民の取り組みが重要と考え、地域の防災力向上について伺います。
 さて、季節柄、年度末になりますと、工事渋滞でいらいらする季節でございますので、次に、路上工事に伴う渋滞対策についてお伺いをいたします。
 先ごろ国土交通省では、東京二十三区における路上工事の不人気投票を行い、その中間集計の発表を行いましたが、不満の内容として最も多く、全体の三九%を占めたのが、規制による渋滞という結果が出ています。このことからも、さらに工夫を行って、工事量を少なくする取り組みが必要といえます。
 これまでも、同じ道路や場所を何度も何度も掘り返しているのではないか、むだな公共工事ではないかなどの指摘がなされておりますが、東京都については、厳しい財政状況のもと、地下鉄や都市高速道路の整備を初め、水道、下水道、電気、ガス、通信など、都民生活を支えるインフラ整備を首都東京の再生にとって極めて重要な整備工事、維持管理工事と位置づけ、むだな工事は行われていないとは理解しております。しかし、渋滞による経済損失やいらいらなどの都民感情を考えますと、路上工事に伴う渋滞対策はさらに推進していかなければなりません。
 そこで、初めに、東京都がこれまでに取り組んできた工事渋滞対策とその成果についてお伺いをいたします。
 路上工事は、ライフラインだけでも電気、ガス、水道、下水道、通信線と多岐にわたっています。これらの工事が個々に行われるということになると、調整をしたとしても、工事期間の短縮はなかなか難しいのではないでしょうか。
 ライフラインの新設や、維持管理のための路上工事や、掘り返しをなくすための抜本的対策としては、共同溝などの大規模工事がさらに交通渋滞の要因となるため、現実的には実施しにくいことは理解できますが、都道における共同溝の整備は必ずしも進んでいないのが実情です。
 さきの公営企業委員会で、我が会派の富田政調会長が、水道局の配水管施設整備事業に伴う配水本管新設工事の工事契約案件で質疑を行いましたが、路上工事の調整会議、いわゆる道路管理者が主宰する道路調整会議の結果、水道局工事に関して他企業との共同施工について、わずかながら実施例があるとの答弁でした。このように場所や時期などが一致するところは少ないのが現状で、単独施工となるようです。
 そこで、お伺いいたします。今後、路上工事とこれに伴う交通渋滞について、都、国、警視庁、占用企業者など関係機関が連携して協議をすることが不可欠であると考えます。
ついては、路上工事の調整会議などの場を活用し、渋滞対策のさらなる充実を検討すべきと考えますが、ご見解をお伺いいたします。
 さて、次に、高層建築物紛争とまちづくりについて質問をさせてもらいます。
 近年、まちづくりを左右するのが増加する高層建築物。特にマンション等の高層建築により、閑静な住宅街の住民との紛争が都内全域で次々と起きています。東京都でできることは、建築紛争予防条例に基づく紛争の調整ですが、毎年申請件数は二十件を超え、うち半数は不調に終わるという状況が続いています。
 トラブルの一連の背景には、建築規制の緩和がありました。この数年、経済を活性化し、都市を活気あるものとするため、都市計画法、建築基準法を初め建築規制の緩和が進められた結果、事業者は、経済性を優先し、容積率を目いっぱいに活用した大規模建設をし、地域社会と摩擦を生むことになりました。規制緩和の最たる法律である都市再生特別措置法に指定されると、既存の規制の枠がきかなくなり、ますます高層化し、周辺とのあつれきも大きくなることが予想をされます。
 都市再生によるまちの活性化やイメージアップ効果が期待される一方で、規制緩和を起因とした建築紛争が数多く発生している状況では、住民同士の融和を阻害し、地域の活力を失わせるほか、一部強引な事業者は企業良識が問われ、企業評価の低下を引き起こすなど、マイナス面も出てきています。五十年後、百年後によかったと思えるまちづくりを長期的に行い、そこに住み、働く方々の安らぎの場を守っていくことも、行政の大切な使命と考えております。
 そこで、お尋ねをいたします。都市再生により地域の活性化が期待される一方、規制緩和による大型建築物の事業者が地域社会との間でもめている状況が発生していることを踏まえ、今後の都市再生はどうあるべきか、都市再生のまたロマンを、石原知事のご見解をお願いいたします。
 高層建築物をめぐる近隣とのトラブルを未然に防止するためには、十分な話し合いによる解決と、都内の幾つかの自治体ではもう始めましたが、絶対高さ制限の導入や建築紛争予防条例の規定です。住民感情を無視した建設は、その土地にうらみを残し、決していいまちづくりにはなりません。太陽を奪っても、今のままでは何の処罰もされないのです。都内全域の多くの紛争を、もうほうっておくわけにはいかない状況まで来ております。
 渋谷区では、昨年四月に、中高層建築物等に係る紛争の予防と調整に関する条例を改正したほか、小学校のPTA連合会が中心となって、保育園、幼稚園、小学校、中学校に日影を落とす中高層建築物の制限を求める動きが出ております。学校や地域のひなたや生活居住環境を守るために、まずは公共施設である学校から影を落とすなと、PTA連合会が立ち上がったのです。東京都全体に広げていく流れは、見直しに一石を投じることができるかもしれません。
 こうした情勢を踏まえ、東京都におきましても、ぜひ地域の状況を踏まえ、規制策の活用など何らかの対策を講じるべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 これで本日最後の質問を終わらせていただきます。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 大津浩子議員の一般質問にお答えいたします。
 今後の都市再生についてでありますが、都市再生が目指しているのは、交通インフラの整備や優良な民間プロジェクトの実施などによりまして、大都市東京の魅力と活力を高め、都民生活の質の向上を図ることであります。
 プロジェクトの過程において、ご指摘のような建築紛争が発生する場合も十分考えられる、これはとにかく、これほど狭い地域に密集して、かつ集積して、いろんな物事があるわけでありまして、この東京では避け得ないことだと思いますが、都市再生の意義も踏まえ、現場ごとの実情に応じた調整を重ねることが大切だと思います。
 都としては、今後とも、地域の活性化や魅力の向上につながるよう、都市再生を推進してまいります。
 他の質問については、警視総監、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監奥村萬壽雄君登壇〕

○警視総監(奥村萬壽雄君) 渋谷における一年間の治安対策の成果と今後の方策についてでありますが、渋谷では、かねてから、センター街を中心に、青少年を取り巻く環境が悪化し、少年少女がクラブと称する深夜ホールやカラオケボックスなどに出入りする、あるいは深夜までたむろし、徘回するといった状況に加えまして、不良イラン人等による薬物の密売が行われていたところであります。
 このために警視庁では、昨年の三月からセンター街等で街頭防犯カメラの運用を開始するとともに、風営法や、昨年改正されました青少年健全育成条例に基づきまして、クラブやカラオケボックス、あるいは漫画喫茶等への立ち入りを頻繁に行いました。また、同時に、少年たちに対する補導活動や不良イラン人等の取り締まりを集中的に推進してまいりました。
 その結果、街頭防犯カメラ設置後の去年の四月から十二月末までの九カ月間、路上犯罪は、おととしの同じ期間に比べまして二割減少いたしましたほか、昨年一年間で非行少年等千四百人を検挙、補導し、また、覚せい剤、大麻事犯等で不良イラン人等二百四十人を検挙いたしました。
 こうした取り組みによりまして、現在では、クラブ等へ出入りいたしましたり、あるいは深夜徘回したりなどする少年は激減しておりますほか、不良イラン人等による薬物密売につきましても、以前のような目立ったものは少なくなっているところでありますが、少年が深夜までたむろするといった状況は、依然散見されるところであります。また、薬物の密売も、携帯電話を利用するなど手口が大変巧妙化しておりますので、引き続き、渋谷における治安対策は強力に推進をしてまいります。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 学校の防犯対策についてのお尋ねでございますが、学校は本来、児童生徒が安心して学ぶ場所でございまして、生命が脅かされるようなことは絶対にあってはならないことから、学校における防犯対策に万全を期すことは極めて重要なことでございます。
 今回の寝屋川市立中央小学校の事件を受けまして、都教育委員会としましては、区市教育委員会の生活指導担当者連絡会を緊急に開催しまして、改めて各学校の安全管理の総点検の徹底を図りますとともに、平成十三年度にすべての公立小中学校及び都立盲・ろう・養護学校等に設置をしました緊急通報体制、学校一一〇番を活用した防犯訓練の実施などに取り組むよう指導してまいりました。
 今後とも、学校の安全管理についてのチェックリストを掲載したリーフレットを新たに作成しますとともに、平成十七年度からは、すべての小中学校及び盲・ろう・養護学校を対象に防犯教室指導者講習会を実施するなど、学校の防犯対策の一層の向上に取り組んでまいります。
   〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) 港湾における保安対策の取り組み強化についてでございますが、平成十五年二月には大井コンテナふ頭で密入国者十一人が検挙される事件もありまして、都は、昨年四月、港湾管理条例を改正し、都民生活の安全を脅かすおそれのある船舶の入港を規制することといたしました。
 また、昨年七月の改正SOLAS条約発効に対応し、ふ頭にフェンスや監視カメラを整備してきておりますが、四月には専任監視員を配置して、二十四時間の監視体制を構築いたします。
 平成十五年の事件以降、東京港での密入国事案は生じておりませんが、本年一月には四日市港と横浜港で密入国事件が連続して発生しており、東京港といたしましても、住民生活の安全を守るため、水際の保安対策を一層強化してまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、災害に強いまちにしていくための対策についてでございますが、震災時の被害を軽減し、都民の生命、財産を守るためには、日常から防災都市づくりに取り組むことが重要であります。
 このため、都は、震災時の被害拡大を防ぐため、三つの基本方針に基づいた取り組みを行っております。具体的には、第一に、災害に強い都市構造を確保するための延焼遮断帯の形成や避難場所の確保、第二に、地域の防災性の向上を図るための建物の不燃化や公共空間の確保、第三に、個々の建築物の耐震性、耐火性の向上を図ることでございます。
 今後とも、関係区と連携を図りながら、防災都市づくりの推進計画に定めた十一の重点整備地域で集中的に事業を実施し、災害に強いまちづくりに向けて積極的に取り組んでまいります。
 次に、学校等の周辺での中高層建築物の規制策についてでございますが、学校周辺などでの建築紛争を防止していくためには、建築紛争予防条例による当事者間の調整だけではなくて、教育面や安全面に配慮したまちづくりが重要でございます。
 こうしたまちづくりに当たりましては、区市町村が主体となって、地域住民の理解と協力を得ながら、建物の高さの限度を定める高度地区や地区計画などの都市計画制度を有効に活用していくことが考えられます。
 都は、よりよい地域づくりという観点から、今後も紛争の未然防止に努めるとともに、区市町村が主体となって進めるまちづくりに対して技術的支援を行ってまいります。
   〔消防総監白谷祐二君登壇〕

○消防総監(白谷祐二君) 震災時の消防活動についてでありますが、東京消防庁では、都内に震度五強以上の地震が発生した場合、全消防職員及び全消防団員を招集いたしまして、消防活動体制を強化いたしますとともに、道路警戒用重機などを有するハイパーレスキュー隊を初め、ヘリコプター、消防艇、ポンプ車、救助車、救急車、可搬ポンプに加えまして、非常用ポンプ車や非常用救急車などを投入し、総力を挙げて消火、救助、救急活動を実施いたします。
 また、必要により緊急消防援助隊を要請いたしまして、全国の消防機関からの応援を受けることとしております。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 地域防災力の向上を図るための対策についての質問にお答え申し上げます。
 震災時には、まず、みずからの命はみずからが守るという自助と、地域住民が相互に連携し、自分たちのまちは自分たちで守る共助の取り組みが不可欠でございます。
 都は、これまで、区市町村と連携し、防災知識の普及啓発や防災訓練の実施を通じまして、地域住民の防災行動力の向上を図ってまいりました。今後も、区市町村が行います防災市民組織の育成を引き続き支援いたしますとともに、住民、企業、ボランティアなどとの連携協力を促進し、地域防災力の向上に努めてまいります。
   〔建設局長岩永勉君登壇〕

○建設局長(岩永勉君) 路上工事に関する二点のご質問にお答えします。
 まず、路上工事に伴う渋滞対策の取り組みについてでありますが、都は、工事渋滞を緩和し、円滑な交通を確保するため、道路管理者、交通管理者及び占用企業者で構成する東京都道路工事調整協議会で、工事件数の縮減と平準化に取り組んでおります。
 協議会では、これまで、同一箇所で競合する工事の期間や施工方法の調整を図るとともに、年末や年度末工事の抑制を行ってまいりました。その結果、路上工事の件数は、平成五年と比較して半減しており、月別の件数を見ましても、年間を通じて平準化を達成しております。
 次に、渋滞対策のさらなる充実についてでありますが、都は、平成十五年度から取り組んでいる路上工事縮減五カ年計画で、工事時間の二割削減を進めております。
 渋滞対策の一層の充実に向けて、協議会などの場を活用し、新たな技術の開発や共同施工などの採用をこれまで以上に関係者に働きかけてまいります。
 また、都民の理解と協力を得るため、道路工事情報のホームページや工事看板の充実により、工事の必要性や交通規制内容等の情報をよりきめ細かく提供してまいります。
 今後とも路上工事に伴う交通規制時間の削減に努め、交通に与える影響を最小限とするよう関係機関と連携して取り組んでまいります。

○六十七番(近藤やよい君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会されることを望みます。

○議長(内田茂君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認め、さよう決定いたします。
 明日は、午後一時より会議を開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後八時四十五分散会

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