平成十七年東京都議会会議録第一号

平成十七年二月二十三日(水曜日)
 出席議員(百十七名)
一番谷村 孝彦君
二番東村 邦浩君
三番村上 英子君
四番秋田 一郎君
五番矢島 千秋君
六番鳩山 太郎君
七番後藤 雄一君
八番福士 敬子君
九番林  知二君
十番伊沢けい子君
十二番相川  博君
十三番山下 太郎君
十五番河野百合恵君
十六番長橋 桂一君
十七番小磯 善彦君
十八番野上じゅん子君
二十一番高橋かずみ君
二十二番山加 朱美君
二十三番小美濃安弘君
二十四番吉原  修君
二十五番山田 忠昭君
二十六番臼井  孝君
二十七番林田  武君
二十九番山口 文江君
三十番柿沢 未途君
三十一番初鹿 明博君
三十二番酒井 大史君
三十三番清水ひで子君
三十四番かち佳代子君
三十五番小松 恭子君
三十六番東野 秀平君
三十七番藤井  一君
三十八番ともとし春久君
四十一番野島 善司君
四十二番真鍋よしゆき君
四十三番松原 忠義君
四十四番田代ひろし君
四十五番三宅 茂樹君
四十六番川井しげお君
四十七番鈴木 一光君
四十八番吉野 利明君
四十九番こいそ 明君
五十番執印真智子君
五十一番花輪ともふみ君
五十二番真木  茂君
五十三番大津 浩子君
五十四番大塚 隆朗君
五十六番古館 和憲君
五十七番松村 友昭君
五十八番丸茂 勇夫君
五十九番木内 良明君
六十番鈴木貫太郎君
六十一番森田 安孝君
六十二番石川 芳昭君
六十三番土持 正豊君
六十四番倉林 辰雄君
六十五番遠藤  衛君
六十六番鈴木あきまさ君
六十七番近藤やよい君
六十八番串田 克巳君
六十九番中屋 文孝君
七十番三原 將嗣君
七十一番樺山たかし君
七十二番田島 和明君
七十三番宮崎  章君
七十四番大西由紀子君
七十五番樋口ゆうこ君
七十六番中村 明彦君
七十七番馬場 裕子君
七十八番和田 宗春君
八十番大山とも子君
八十一番東ひろたか君
八十二番池田 梅夫君
八十三番中山 秀雄君
八十四番大木田 守君
八十五番前島信次郎君
八十六番桜井良之助君
八十七番新藤 義彦君
八十八番星野 篤功君
八十九番いなば真一君
九十番高島なおき君
九十一番服部ゆくお君
九十二番古賀 俊昭君
九十三番山本賢太郎君
九十四番立石 晴康君
九十五番清原錬太郎君
九十六番小山 敏雄君
九十七番大山  均君
九十八番大河原雅子君
九十九番田中  良君
百番小林 正則君
百一番藤川 隆則君
百三番曽根はじめ君
百四番渡辺 康信君
百五番秋田かくお君
百六番中嶋 義雄君
百七番石井 義修君
百八番橋本辰二郎君
百九番藤井 富雄君
百十番桜井  武君
百十一番野田 和男君
百十二番野村 有信君
百十三番比留間敏夫君
百十四番大西 英男君
百十五番山崎 孝明君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番田中 晃三君
百二十一番藤田 愛子君
百二十二番尾崎 正一君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番富田 俊正君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番木村 陽治君

 欠席議員(一名)
十一番 新井美沙子君
 欠員
十四番  十九番  二十番
二十八番 三十九番 四十番
五十五番 七十九番 百二番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事福永 正通君
副知事濱渦 武生君
副知事大塚 俊郎君
副知事竹花  豊君
出納長櫻井  巖君
教育長横山 洋吉君
知事本局長前川 燿男君
総務局長赤星 經昭君
財務局長松澤 敏夫君
警視総監奥村萬壽雄君
主税局長山口 一久君
生活文化局長山内 隆夫君
都市整備局長梶山  修君
環境局長平井 健一君
産業労働局長関谷 保夫君
建設局長岩永  勉君
港湾局長成田  浩君
交通局長松尾  均君
水道局長高橋  功君
消防総監白谷 祐二君
福祉保健局長幸田 昭一君
下水道局長二村 保宏君
大学管理本部長村山 寛司君
病院経営本部長押元  洋君
中央卸売市場長森澤 正範君
新銀行設立本部長津島 隆一君
選挙管理委員会事務局長高橋 和志君
人事委員会事務局長佐藤  広君
労働委員会事務局長久保田経三君
監査事務局長高橋 道晴君
収用委員会事務局長嶋津 隆文君
包括外部監査人守屋 俊晴君

二月二十三日議事日程第一号
第一 第一号議案
平成十七年度東京都一般会計予算
第二 第二号議案
平成十七年度東京都特別区財政調整会計予算
第三 第三号議案
平成十七年度東京都地方消費税清算会計予算
第四 第四号議案
平成十七年度東京都小笠原諸島生活再建資金会計予算
第五 第五号議案
平成十七年度東京都母子福祉貸付資金会計予算
第六 第六号議案
平成十七年度東京都心身障害者扶養年金会計予算
第七 第七号議案
平成十七年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
第八 第八号議案
平成十七年度東京都農業改良資金助成会計予算
第九 第九号議案
平成十七年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
第十 第十号議案
平成十七年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
第十一 第十一号議案
平成十七年度東京都と場会計予算
第十二 第十二号議案
平成十七年度東京都都営住宅等事業会計予算
第十三 第十三号議案
平成十七年度東京都都営住宅等保証金会計予算
第十四 第十四号議案
平成十七年度東京都都市開発資金会計予算
第十五 第十五号議案
平成十七年度東京都用地会計予算
第十六 第十六号議案
平成十七年度東京都公債費会計予算
第十七 第十七号議案
平成十七年度東京都多摩ニュータウン事業会計予算
第十八 第十八号議案
平成十七年度東京都市街地再開発事業会計予算
第十九 第十九号議案
平成十七年度東京都臨海都市基盤整備事業会計予算
第二十 第二十号議案
平成十七年度東京都病院会計予算
第二十一 第二十一号議案
平成十七年度東京都中央卸売市場会計予算
第二十二 第二十二号議案
平成十七年度東京都都市再開発事業会計予算
第二十三 第二十三号議案
平成十七年度東京都臨海地域開発事業会計予算
第二十四 第二十四号議案
平成十七年度東京都港湾事業会計予算
第二十五 第二十五号議案
平成十七年度東京都交通事業会計予算
第二十六 第二十六号議案
平成十七年度東京都高速電車事業会計予算
第二十七 第二十七号議案
平成十七年度東京都電気事業会計予算
第二十八 第二十八号議案
平成十七年度東京都水道事業会計予算
第二十九 第二十九号議案
平成十七年度東京都工業用水道事業会計予算
第三十 第三十号議案
平成十七年度東京都下水道事業会計予算
第三十一 第三十一号議案
平成十六年度分の都と特別区及び特別区相互間の財政調整の特例に関する条例
第三十二 第三十二号議案
都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例
第三十三 第三十三号議案
特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十四 第三十四号議案
東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例
第三十五 第三十五号議案
東京都人事行政の運営等の状況の公表に関する条例
第三十六 第三十六号議案
東京都職員定数条例の一部を改正する条例
第三十七 第三十七号議案
職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第三十八 第三十八号議案
東京都の一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十九 第三十九号議案
東京都の一般職の任期付研究員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四十 第四十号議案
東京都知事の給料等の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四十一 第四十一号議案
東京都職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十二 第四十二号議案
職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例
第四十三 第四十三号議案
東京都非常勤職員の公務災害補償等に関する条例の一部を改正する条例
第四十四 第四十四号議案
災害派遣手当の支給に関する条例の一部を改正する条例
第四十五 第四十五号議案
東京都国民保護対策本部及び緊急対処事態対策本部条例
第四十六 第四十六号議案
東京都国民保護協議会条例
第四十七 第四十七号議案
東京都統計調査条例の一部を改正する条例
第四十八 第四十八号議案
東京都人権プラザ条例の一部を改正する条例
第四十九 第四十九号議案
審理、喚問、聴聞等に出頭した者及び公聴会に参加した者の費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第五十 第五十号議案
東京都都税条例の一部を改正する条例
第五十一 第五十一号議案
東京都収入証紙条例の一部を改正する条例
第五十二 第五十二号議案
東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例
第五十三 第五十三号議案
東京都江戸東京博物館条例の一部を改正する条例
第五十四 第五十四号議案
東京都写真美術館条例の一部を改正する条例
第五十五 第五十五号議案
東京都現代美術館条例の一部を改正する条例
第五十六 第五十六号議案
東京都美術館条例の一部を改正する条例
第五十七 第五十七号議案
東京文化会館及び東京芸術劇場条例の一部を改正する条例
第五十八 第五十八号議案
東京都育英資金条例
第五十九 第五十九号議案
学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
第六十 第六十号議案
学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第六十一 第六十一号議案
都立学校等に勤務する講師の報酬等に関する条例の一部を改正する条例
第六十二 第六十二号議案
東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第六十三 第六十三号議案
東京都立学校の授業料等徴収条例の一部を改正する条例
第六十四 第六十四号議案
東京都立学校校外教育施設設置条例の一部を改正する条例
第六十五 第六十五号議案
東京都体育施設条例の一部を改正する条例
第六十六 第六十六号議案
東京都文化財保護条例の一部を改正する条例
第六十七 第六十七号議案
東京都立埋蔵文化財調査センター設置条例の一部を改正する条例
第六十八 第六十八号議案
東京都屋外広告物条例の一部を改正する条例
第六十九 第六十九号議案
東京都都市整備局関係手数料条例の一部を改正する条例
第七十 第七十号議案
東京都営住宅条例の一部を改正する条例
第七十一 第七十一号議案
東京都福祉住宅条例の一部を改正する条例
第七十二 第七十二号議案
東京都引揚者住宅条例の一部を改正する条例
第七十三 第七十三号議案
東京都特定公共賃貸住宅条例の一部を改正する条例
第七十四 第七十四号議案
東京都地域特別賃貸住宅条例の一部を改正する条例
第七十五 第七十五号議案
東京都小笠原住宅条例の一部を改正する条例
第七十六 第七十六号議案
東京都リハビリテーション病院条例の一部を改正する条例
第七十七 第七十七号議案
東京都立心身障害者口腔保健センター条例の一部を改正する条例
第七十八 第七十八号議案
東京都児童福祉施設条例の一部を改正する条例
第七十九 第七十九号議案
東京都婦人保護施設条例の一部を改正する条例
第八十 第八十号議案
東京都障害者スポーツセンター条例の一部を改正する条例
第八十一 第八十一号議案
東京都肢体不自由者自立ホーム条例の一部を改正する条例
第八十二 第八十二号議案
東京都身体障害者更生援護施設条例の一部を改正する条例
第八十三 第八十三号議案
東京都知的障害者援護施設条例の一部を改正する条例
第八十四 第八十四号議案
東京都児童相談所条例の一部を改正する条例
第八十五 第八十五号議案
東京都障害者施策推進協議会条例の一部を改正する条例
第八十六 第八十六号議案
公衆浴場の設置場所の配置及び衛生措置等の基準に関する条例の一部を改正する条例
第八十七 第八十七号議案
東京都薬事審議会条例の一部を改正する条例
第八十八 第八十八号議案
旅館業法施行条例の一部を改正する条例
第八十九 第八十九号議案
食品衛生法施行条例の一部を改正する条例
第九十 第九十号議案
食品製造業等取締条例の一部を改正する条例
第九十一 第九十一号議案
東京都立看護専門学校条例の一部を改正する条例
第九十二 第九十二号議案
東京都軽費老人ホーム条例を廃止する条例
第九十三 第九十三号議案
東京都心身障害者福祉作業所条例の一部を改正する条例
第九十四 第九十四号議案
東京都薬物の濫用防止に関する条例
第九十五 第九十五号議案
東京都しごとセンター条例の一部を改正する条例
第九十六 第九十六号議案
東京都立食品技術センター条例の一部を改正する条例
第九十七 第九十七号議案
東京都立産業貿易センター条例の一部を改正する条例
第九十八 第九十八号議案
東京都工場立地法地域準則条例
第九十九 第九十九号議案
東京都農業関係試験等手数料条例
第百 第百号議案
改良普及員の資格試験に関する条例を廃止する条例
第百一 第百一号議案
東京都農業振興事務所設置条例の一部を改正する条例
第百二 第百二号議案
東京都立技術専門校条例の一部を改正する条例
第百三 第百三号議案
東京都労政会館設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例
第百四 第百四号議案
東京都中央卸売市場条例の一部を改正する条例
第百五 第百五号議案
東京都地方卸売市場条例の一部を改正する条例
第百六 第百六号議案
東京都立芝浦屠場条例の一部を改正する条例
第百七 第百七号議案
東京都港湾管理条例の一部を改正する条例
第百八 第百八号議案
東京都漁港管理条例の一部を改正する条例
第百九 第百九号議案
東京都海上公園条例の一部を改正する条例
第百十 第百十号議案
東京都港湾区域及び港湾隣接地域占用料等徴収条例の一部を改正する条例
第百十一 第百十一号議案
東京都海岸占用料等徴収条例の一部を改正する条例
第百十二 第百十二号議案
都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例
第百十三 第百十三号議案
東京都都民の森条例の一部を改正する条例
第百十四 第百十四号議案
東京都自然公園条例の一部を改正する条例
第百十五 第百十五号議案
東京都廃棄物条例の一部を改正する条例
第百十六 第百十六号議案
東京都浄化槽保守点検業者の登録に関する条例の一部を改正する条例
第百十七 第百十七号議案
東京都駐車場条例の一部を改正する条例
第百十八 第百十八号議案
東京都特殊車両通行許可申請手数料徴収条例の一部を改正する条例
第百十九 第百十九号議案
東京都立公園条例の一部を改正する条例
第百二十 第百二十号議案
東京都葬儀所条例の一部を改正する条例
第百二十一 第百二十一号議案
東京都霊園条例の一部を改正する条例
第百二十二 第百二十二号議案
警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第百二十三 第百二十三号議案
警視庁関係手数料条例の一部を改正する条例
第百二十四 第百二十四号議案
東京消防庁職員定数条例の一部を改正する条例
第百二十五 第百二十五号議案
火災予防条例の一部を改正する条例
第百二十六 第百二十六号議案
都営住宅十六H―一〇七東(百人町四丁目第四)工事請負契約
第百二十七 第百二十七号議案
都営住宅十六H―一〇三東(板橋清水町)工事請負契約
第百二十八 第百二十八号議案
警視庁小岩警察署庁舎(H十六)改築工事(その二)請負契約
第百二十九 第百二十九号議案
警視庁三田警察署庁舎(H十六)改築工事(その二)請負契約
第百三十 第百三十号議案
警視庁有家族待機宿舎三田住宅(仮称)(H十六)新築工事(その二)請負契約
第百三十一 第百三十一号議案
平成十六年度新海面処分場Gブロック西側護岸(二重鋼管矢板式)建設工事(その一)請負契約
第百三十二 第百三十二号議案
平成十六年度新海面処分場Gブロック西側護岸(二重鋼管矢板式)建設工事(その二)請負契約
第百三十三 第百三十三号議案
包括外部監査契約の締結について
第百三十四 第百三十四号議案
全国自治宝くじ事務協議会への静岡市の加入及びこれに伴う全国自治宝くじ事務協議会規約の一部の変更について
第百三十五 第百三十五号議案
平成十六年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担の変更について
第百三十六 第百三十六号議案
平成十七年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担について
第百三十七 第百三十七号議案
平成十六年度東京都一般会計補正予算(第二号)
第百三十八 第百三十八号議案
平成十六年度東京都特別区財政調整会計補正予算(第一号)
第百三十九 第百三十九号議案
平成十六年度東京都地方消費税清算会計補正予算(第一号)
第百四十 第百四十号議案
平成十六年度東京都都営住宅等事業会計補正予算(第一号)
第百四十一 第百四十一号議案
平成十六年度東京都都市開発資金会計補正予算(第一号)
第百四十二 第百四十二号議案
平成十六年度東京都公債費会計補正予算(第一号)
第百四十三 第百四十三号議案
平成十六年度東京都都市再開発事業会計補正予算(第一号)
第百四十四 第百四十四号議案
平成十六年度東京都高速電車事業会計補正予算(第一号)
第百四十五 第百四十五号議案
平成十六年度東京都下水道事業会計補正予算(第一号)
第百四十六 諮問第一号
地方自治法第二百四十四条の四の規定に基づく審査請求に関する諮問について
第百四十七 地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した平成十六年度東京都一般会計補正予算(第一号)の報告及び承認について

   午後一時一分開会・開議

○議長(内田茂君) ただいまから平成十七年第一回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(内田茂君) まず、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
十二番  相川  博君 及び
七十二番 田島 和明君
を指名いたします。

○議長(内田茂君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(谷村隆君) 平成十七年二月十六日付東京都告示第百九十五号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、同日付で、本定例会に提出するため、議案百四十六件の送付がありました。
 次に、地方自治法第百七十九条第一項の規定に基づき専決処分した平成十六年度東京都一般会計補正予算第一号の報告及び承認について依頼がありました。
 次に、知事及び監査委員並びに各行政委員会より、平成十七年中における東京都議会説明員及び説明員の委任について、地方自治法第百二十一条及び会議規則第四十二条の規定に基づき、それぞれ通知がありました。
 次に、知事より、平成十六年第四回定例会の会議において同意を得た教育委員会委員の任命について、発令したとの通知がありました。
 次に、包括外部監査人より、平成十七年二月二十三日付で、平成十六年度包括外部監査報告書の提出がありました。
 次に、知事より、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づく専決処分について、報告が三件ありました。
 内容は、警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例外一件の報告について、訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告について、及び東京都高等学校・大学等進学奨励事業に係る貸付金の償還免除に関する報告についてであります。
 次に、監査委員より、平成十六年行政監査、平成十六年工事監査及び例月出納検査の結果について、それぞれ報告がありました。
(別冊参照)

○議長(内田茂君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 平成十六年第四回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
   〔文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾(一七ページ)に掲載〕

○議長(内田茂君) 次に、閉会中の議員の辞職について申し上げます。
 去る一月二十四日付をもって、西東京市選出坂口こうじ君より、議員を辞職したい旨届け出がありました。
 本件は、地方自治法第百二十六条ただし書きの規定により、議長において、同日付をもって辞職を許可いたしました。

○議長(内田茂君) 次に、閉会中の常任委員の所属変更について申し上げます。
 去る二月七日付をもって、樋口ゆうこさんより、都市整備委員から総務委員へ常任委員の所属変更の申し出がありましたので、委員会条例第五条第三項ただし書きの規定により、議長において同日付をもってこれを許可いたしました。
 お諮りいたします。
 本件は、議長の許可のとおり承認することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、議長許可のとおり承認することに決定いたしました。

○議長(内田茂君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から三月三十日までの三十六日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認めます。よって、会期は三十六日間と決定いたしました。

○六十七番(近藤やよい君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 平成十六年度包括外部監査結果の報告について、地方自治法第二百五十二条の三十四第一項の規定に基づき、包括外部監査人の説明を求めることを望みます。

○議長(内田茂君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認めます。よって、平成十六年度包括外部監査結果の報告について、包括外部監査人の説明を求めることに決定いたしました。
 ここで、守屋俊晴包括外部監査人の出席を求めます。
   〔包括外部監査人守屋俊晴君入場、着席〕

○議長(内田茂君) ただいまご出席いただきました包括外部監査人をご紹介いたします。
 守屋俊晴さんでございます。
   〔包括外部監査人あいさつ〕

○議長(内田茂君) 本日は、ご多忙のところ、監査結果報告の説明のためご出席いただき、まことにありがとうございます。

○議長(内田茂君) この際、知事より、平成十七年度施政方針について発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 平成十七年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。
 戦後六十年、日本は焦土からの復興と産業経済の飛躍的な発展を経て、欧米へのキャッチアップという明治以来の国家目標を短期間で達成はいたしました。過去に我が国が経験したことのない豊かな社会が実現したのであります。
 その過程で日本は大きく変化いたしました。昭和二十五年に就業人口の二分の一を占めていた農業などへの従事者は、今日ではわずか五%に減少し、製造業やサービス業の従事者が圧倒的な多数を占めるようになりました。いわゆるサラリーマンの割合も倍増し、八割以上となったのであります。
 家族や地域のあり方も大きく変容いたしました。合計特殊出生率は一・二九にまで落ち込み、少子化が急速に進んでおります。六十年前に五%にすぎなかった高齢者の割合が、現在では二〇%に迫り、高齢化が先進国の中でも最も早く進行しております。戦後長く続いた右肩上がりの時代が終わり、私たちは本格的な少子高齢社会を迎えようとしているのであります。
 また、東西冷戦が終結し、経済のグローバル化が進む中、我が国は主体的に考え行動し、国際的な責任を果たすことを迫られております。
 私たちは、かつて中世においては何世紀もかけて獲得されたであろう変化を一世代の中で経験させられている、これが偽らざる実感であります。
 日本は、憲法も含め、国家のあり方そのものを根本から見直すことを求められております。
 こうした中、政府は、構造改革を提唱し、民営化・規制改革、社会保障の見直し、地方分権の確立、財政改革などに曲がりなりにも取り組もうとしてはきました。
 しかし、いずれも、議論をすればするほど利害関係の網の目に絡めとられ、改革は本質から遠ざかる一方であります。いわゆる三位一体改革はその典型であり、改革とは名ばかりの数字合わせ、その場しのぎのつじつま合わせでしかありません。
 国と地方を合わせた長期債務は、数年後には一千兆円という天文学的な額に膨れ上がろうとしており、もはや現状を維持できないことは明白であります。にもかかわらず、国の政治にも行政にも一向に危機感が感じられません。
 今、政治と行政に求められるのは、正当な歴史観のもとに、現実を直視してリアリティーを行政に取り戻すことであります。国家全体の利益という視点に立って、地方の営みの総和が国を支える新しいシステムへと、この国の形を変えていかなければなりません。
 都は、この六年間、日本のダイナモである東京の再生を目指して、都政の新たな展開に取り組んでまいりました。今後、その成果を踏まえ、さらに踏み込んだ自己改革に取り組んでまいります。
 これまでの行政サービスの限界を克服する効率化の実現を目標に、新しい公のあり方を探っていきたいと思います。民間が行えることは思い切って民間に委ねるとともに、真に行政が担うべきことは何かという視点から、サービスのあり方を徹底して見直し、民間に負けない効率性の実現を目指します。
 都議会の行財政改革基本問題特別委員会でも、行財政改革大綱の策定を求めております。力を合わせて新しい発想により東京の再生を実現することが、首都東京の活力と魅力を向上させ、ひいては日本再生にもつながるものと確信しております。
 初めに、三宅島について申し上げます。
 今月一日、四年五カ月に及ぶ避難指示が解除され、帰島が始まりました。長期間の避難生活のご苦労に耐え、島に帰る日を待ち望んでいた村民の皆様の気持ちを思うと、胸に迫るものを禁じ得ません。火山ガスの中での生活再建にはさまざまな困難がまだあることと思いますが、全島一丸となって、ふるさと三宅島を再建されるよう願っております。
 都は、村民の皆様が一日も早く安定した生活を送れるよう、独自の住宅整備費の補助や事業再開のための融資などに取り組むとともに、砂防施設などの整備を着実に進めてまいります。
 避難期間中、都内の区市町村を初め、全国の自治体、関係機関の方々から心温まるご支援をいただきました。多くのボランティアの皆さんにもお力添えをいただいております。
今後とも、三宅島へのご支援を心よりお願いいたします。
 昨年は、集中豪雨や相次ぐ台風の上陸、新潟県中越地震、インド洋大津波など、大規模な自然災害が頻発し、日ごろからの備えの大切さを改めて痛感いたしました。東京でも、直下型地震など大規模災害がいつ起きてもおかしくない状況であります。
 都では、来年度、河川の護岸や防潮堤などを緊急に補修するとともに、東池袋地区と鐘ケ淵地区において、道路整備と一体で木造住宅密集地域の不燃化を進めるなど、災害に強い都市基盤の整備に取り組んでまいります。
 新潟県中越地震の教訓を踏まえ、多摩地域の山間部における集落の孤立化を防ぐ対策を進めてまいります。情報連絡や救助活動などを円滑に行うため、具体的な計画を今年度中に作成するほか、代替道路の整備や土石流、がけ崩れ対策などを実施してまいります。
 大規模地震発生時の物流を確保するため、東京港の岸壁の耐震強化を引き続き進めるとともに、隣の横浜港、川崎港と岸壁を相互に利用できるよう協定を結び、輸送ルートの確保を図ってまいります。
 都市部での災害、事故に対応する東京DMATについては、来年度、隊員数を四倍に拡充するほか、NBC災害にも対処できるよう装備を充実いたします。
 また、最前線での消火・救助活動を強化するため、平成十八年度までに、全消防署に必要な資機材と人材を備えた特別消火中隊を配備してまいります。
 武力攻撃や大規模テロなどに対しても、万全の備えが必要であります。緊急時に都民の避難、救援などを適切に行うため、都としての保護計画を来年度策定いたします。今定例会に、計画案を審議する協議会の設置条例などを提案しております。
 近年のSARSや鳥インフルエンザの発生に見られるように、新たな感染症への対応が喫緊の課題となっております。アジア大都市の医療機関などが、新興感染症の感染経路や治療方法などの情報をいち早く共有し、拡大防止や早期制圧に取り組んでいくため、来年度、各都市を直接結ぶネットワークを構築いたします。
 都では、昨年十二月、新興感染症対策会議を設置し、予防・医療と大規模発生時対策の両面から、行動計画の策定に向け取り組みを進めております。現行の法体系では、基本的人権などが制約となる場合が想定されますが、都民、国民の生命を守るため、迅速で的確な対応がとれるよう検討してまいります。
 都は、緊急治安対策本部を設置し、安全・安心のまちづくりや子どもを犯罪に巻き込まない取り組み、外国人組織犯罪の抑止対策に全力を挙げて取り組んでまいりました。
 地域住民による自主的な防犯活動の活発化もあり、強盗やひったくりが大幅に減少するなど、治安回復の兆しも見え始めております。
 しかし、振り込め詐欺が急増するなど、依然として都民の不安は解消されず、今年度の都政への要望では、治安対策が初めて第一位になっております。引き続き、手綱を緩めることなく取り組みを強化してまいります。
 来年度、治安対策推進担当の理事を設置するとともに、警察官を三百人、交番相談員等を三百九十人増員し、都職員の派遣を継続してまいります。平成十九年度、臨海地区に警察署を新設し、二十年度には、原宿署を移転改築して三百人規模の留置場を併設するほか、八王子署等の管轄区域を分割し、多摩西警察署を新設いたします。
 また、繁華街での犯罪を防止し、被害を未然に防止するため、街頭防犯カメラを歌舞伎町で増設するとともに、新たに上野地区でも設置をいたします。
 IT化の進展に伴って急増しているインターネット取引での詐欺、電子メールによる架空請求、カードの偽造など新しい犯罪についても、商取引などの実態解明を進め、被害の防止に取り組んでまいります。
 留学生、就学生対策では、新宿、渋谷、豊島の三区と合同で実施した調査により、専門学校の一部について、長期欠席者やアルバイトの実態把握をしていないなどの問題が明らかになりました。
 今後、調査、指導の対象を都内全域に拡大するとともに、近く、留学生、就学生の適正管理のための指針を策定し、これに違反した学校名を公表するなど、厳正に対処してまいります。
 次に、青少年の健全育成についてであります。
 都はこれまで、若年者の就労支援など自立の促進や、子ども家庭支援センターの拡充など、地域の子育て支援、有害な情報、環境から子どもを守る取り組みなど、青少年の健全育成を総合的に推進してまいりました。
 昨年十一月、青少年問題協議会に、青少年健全育成条例のあり方について検討するよう諮問しました。十数回に及ぶ活発な議論をもとに、いただいた答申を踏まえ、条例を改正いたします。
 インターネットによる有害情報から子どもを守るための努力をプロバイダーに義務づけてまいります。また、保護者を含め関係者には、青少年に対して安易な性行動を戒め、慎重な行動を促すよう求めてまいります。青少年に対するみだらな性行動を禁止し、違反した大人には罰則を課すことといたします。
 脱法ドラッグの健康被害が十代、二十代の若者を中心に広がり、犯罪に結びつくケースも生じております。国もようやく事の重大さに気づいて検討を始めましたが、都は、独自の条例を制定し、この四月から脱法ドラッグの規制に着手いたします。規制対象となる薬物を都が指定し、製造、販売、使用等の行為を禁止するとともに、罰則を設け、厳しく対応してまいります。
 この二年間の取り組みを通じて痛感するのは、治安の問題を掘り下げていきますと、青少年の問題に必ず突き当たるということであります。次代を担う青少年を育てるのは、都民の皆さん一人一人であります。それぞれの地域で健全育成の取り組みをこれからも深めていただきたいと思います。
 次に、東京の産業力の強化について申し上げます。
 新銀行東京については、これまで精力的に開業準備を進めてまいりましたが、いよいよ本年四月一日から本店で主要業務を開始し、その後、段階的に店舗を開設し、七月中には全面的に業務を展開する予定であります。
 新銀行の開業は、多くの中小企業の潜在的力を十分に発揮させ、東京の地域経済を本格的に再生させる画期的な第一歩となるものであります。今後、都民や中小企業にとって、信頼性の高い真に役立つ金融機関として新銀行東京が着実に成長していくことを強く期待しております。
 東京の中小企業は、優秀な技術やノウハウを有し、日本の産業を支える重要な役割を担っております。一昨日開設したナノテクノロジーセンターにおいて、ナノテク機器の開放や共同研究、技術相談などを行い、中小企業の技術力強化を支援してまいります。
 制度融資の目標額については、過去最大の規模である一兆七千五百億円を維持するとともに、会計処理の水準を高め、情報を積極的に公開する企業への迅速な融資、第三者による事業承継を対象とする融資など新たなメニューを創設し、資金調達の円滑化を図ってまいります。
 また、事業の再生、承継、廃業などの問題を抱えた中小企業を対象に、中小企業振興公社に専門家による相談窓口を設置して、再生ファンドも活用しながら金融支援や経営相談などを行ってまいります。
 商店街は、住民の生活の場、地域コミュニティの核として大きな役割を果たしております。来年度、先進的な取り組みへの表彰制度の創設や、地域との連携事業への支援など、施策を拡充してまいります。
 東京を千客万来の都市としていくため、観光振興策を総合的に推進してまいります。
 平成十四年度から開設したシティセールス・ミッションは、今月の派遣で六回目となりました。今回は、ハリウッドとヒューストンを訪れ、東京が世界に誇るアニメ、ものづくり産業を観光資源としてアピールいたしました。これからも、東京の魅力を広くPRし、海外からの来訪者増加につなげていきたいと思います。
 隅田川や運河などの水辺空間には新旧の魅力のあるスポットが点在しております。こうした貴重な観光資源をネットワーク化し、水辺空間の魅力を向上させるため、来年度、全体構想を策定いたします。
 また、地域の観光まちづくりの核となるリーダーの養成を引き続き進めるとともに、平成十八年度には、首都大学東京で公開講座を開設し、二十年度の観光・ツーリズムコースの開設につなげていきたいと思います。
 伊豆諸島、小笠原諸島にとって、観光は島を支える最も重要な産業であり、それぞれの島の特性を生かしながら観光を振興してまいります。
 先日、小笠原の南島と周辺海域の沈水カルスト地形を東京都の天然記念物に指定いたしました。貴重な自然景観の保全と観光の両立を図ってまいります。三宅島については、五月から観光客の受け入れを予定しており、村と力を合わせ取り組んでまいります。
 少子化の進行は、東京において最も顕著にあらわれております。結婚や出産は、個人の価値観、人生設計に深くかかわる問題でありますが、安心して子育てができる環境を整備することが求められております。
 本来、子どもの育成については、区市町村の果たす役割が重要であります。来年度、総合的な補助制度を都独自に創設し、区市町村への支援を拡充いたします。学童クラブの安全対策や保育所の一時預かりサービスを充実するなど、幅広い用途に活用できる制度としてまいります。
 また、引き続き、子ども家庭支援センターへの支援や児童相談所の専門機能の充実などを通じて、地域における子育てを支援してまいります。
 若い親にとって、子どもの突然の病気ほど不安なものはありません。都はこれまで、母と子の電話健康相談の充実やインターネットによる子ども医療ガイドの開設など、対策に努めてまいりました。
 平成十八年度までに、都全域で平日の深夜まで初期救急診療が受けられるようにするとともに、来年度、小児の重篤な患者に迅速に対応できる三次救急機関のネットワークづくりに着手いたします。
 高齢者が健康で自立した生活ができる社会を目指して、来年度から都内全域で、介護予防健診を基本健康診査にあわせて実施し、一人一人に応じた介護予防プランを策定いたします。また、デイサービスセンターなどを身近な介護予防拠点として充実し、筋力トレーニングなどの運動指導や栄養指導を行ってまいります。
 認知症高齢者のグループホームについては、補助金の交付金化など、国の姿勢の後退が懸念されますが、都は、これに左右されることなく区市町村を支援してまいります。また、来年度、区市町村が主体的にグループホームの整備に取り組めるよう、補助制度を充実いたします。
 認知症や知的障害などで判断能力が十分でない人にとって、成年後見制度は、その権利、財産を守る上で重要な意義がありますが、制度自体が余り知られておりません。来年度、後見人の紹介などを行う推進機関の立ち上げに向けて区市町村を支援するとともに、都としても後見人の育成などに取り組んでまいります。
 障害者の自立支援の取り組みについては、引き続き知的障害者や重度身体障害者のグループホームの整備を進めるとともに、障害者の就労を促進するため、通所施設に在籍しながら企業が提供する場で働けるよう、都独自の支援事業を創設いたします。
 都はこれまで、二十一世紀の東京の創造的発展を担う若者を育成するという視点に立ち、独自の教育改革を推進してきました。
 この四月、首都大学東京が開学いたします。単位バンク制の導入や語学教育の改革など、既存の大学にない全く新しい教育を実践し、旧態依然とした日本の大学教育を根底から変えていきたいと思っております。西澤潤一学長、高橋宏理事長のリーダーシップのもと、次代を担う有為な人材を育成し、大都市の抱える課題解決に役立てていきたいと思います。
 いわゆるゆとり教育の弊害に国もようやく気づき始めたようでありますが、まさに遅きに失したとしかいいようがありません。
 都では、昨年度から開始した一斉学力調査の結果をもとに、各小中学校で授業改善推進プランを策定し、学力向上策を実施してまいります。あわせて、教員の教える力を高めるため、全公立学校を対象に、来年度から採用二、三年目の教員に授業力強化の研修を行うとともに、平成十八年度、優秀な先輩が中堅教員に指導技術を伝授する東京教師道場を開設いたします。
 四月に開校する都立初の中高一貫教育校、白鴎高校附属中学校の応募倍率が十四倍を超えました。都民の期待の大きさのあらわれであると思います。平成十八年度には、新たに小石川など三校の中高一貫校を開設する予定であります。
 障害のある児童生徒については、子ども一人一人のニーズに応じた教育を拡充してまいります。近年課題となっている学習障害などにも対象を広げ、特別支援教育への転換を進めるとともに、盲・ろう・養護学校において、社会参加と自立に向けた職業教育や、大学などへの進学を視野に入れた教育の充実を図ってまいります。
 都はこの六年間、公共空間の開放、若い才能への支援、民間の有能な人材の登用など、文化芸術振興の新たな試みを進めてまいりました。
 一昨日、東京都の文化施策を語る会が発足いたしました。都が重点的に支援すべき分野や、指定管理者制度の発足を踏まえた都立文化施設の運営のあり方などについて、今後一年程度をかけて専門家による徹底的な議論を行ってまいります。
 次に、環境の問題への対応についてであります。
 一都三県が共同で取り組んでいるディーゼル車排出ガス規制により、東京にきれいな空気が何とか戻ってきました。最新の調査によれば、規制前と比べ、気象の影響を受けない井荻トンネルでは、浮遊粒子状物質を構成するカーボンが六八%、発がん物質が最大で八四%減少し、都内三十四カ所の道路沿いの測定地点でも、浮遊粒子状物質の年平均濃度が二九%低下しております。
 先月から、石油連盟の協力によりサルファーフリー燃料の供給が開始されました。来年度は、残された課題であるVOC排出量削減の取り組みに着手いたします。また、NO・PM法の施行に伴い、中小零細企業の車両の買いかえを支援するため、新たな都独自の特別融資制度を創設いたします。
 大気汚染の元凶の一つである不正軽油を根絶するには、製造基地への硫酸の供給を断ち切る必要があります。都は昨年十二月、全国に先駆けて、税務、廃棄物、毒劇物を所管する部門が連携して、製造業者と運送業者への立入調査を行い、現在、その追跡調査を実施しております。今後、首都圏の自治体と連携して共同調査を行うなど、不正軽油撲滅の取り組みを一層強化してまいります。
 DPF申請データを偽造した三井物産に対しては、不正行為の責任を徹底して追及するため、昨年十二月に刑事告発及び告訴を行いましたが、本日、補助金相当額等の返還を求め、制裁的加算金を含め損害賠償請求を行いました。今後、データ偽造によって被害を受けた事業者が不利益をこうむることのないよう、補償策の実施を厳しく監視してまいります。
 都会に蔓延する花粉症は、大気汚染がもたらした複合汚染の所産にほかなりません。ことしは、スギ花粉の飛散量が平年の倍以上、過去最大と予測されており、国は、大気汚染花粉症などにも関連した重大な健康問題であることを認識して、対策に真剣に取り組むべきであると思います。
 先日、京都議定書が発効しました。国が実効性ある温暖化対策を十分に打ち出せない中、都は、オフィスなどの大規模事業者に具体的な取り組みについて計画の作成を義務づけるとともに、省エネ型の家電製品の普及を促進するなど、独自の対策を講じてきました。
 今回、条例を改正し、これまでの取り組みをさらに強化いたします。大規模事業者から取り組み状況を報告させ、都が評価、公表する仕組みを新設するなど、誘導策を拡充いたします。加えて、都内にエネルギーを供給している事業者に対して、計画の策定と公表を新たに義務づけてまいります。また、この夏から、消費電力の少ない家庭製品が一目でわかるラベルの表示を販売店に義務づけ、家庭部門での省エネを促進いたします。
 都はこれまで、モデル事業に取り組むなど、都独自のヒートアイランド対策を進めてきました。都の働きかけにより、国もようやくヒートアイランド対策の重大さを認識し、昨年末、都市再生の取り組みに位置づけました。ことし春にもモデル地域を決定する予定であります。
 来年度、保水性舗装の拡大、区部の公立学校の校庭芝生化、都立施設における壁面緑化などに取り組むとともに、国と緊密に連携をとりながら、実効性あるヒートアイランド対策を集中的に推進してまいります。
 大規模工場の緑化について、新たな条例を提案しております。壁面緑化の意義を正当に評価し、緑化面積を全体にカウントできるようにいたします。これによって、工場の建てかえを促し、東京の産業力の向上を目指すとともに、これまで進んでこなかった大規模工場の緑化を促進してまいります。
 都内では、一年間に約一千百万トンの産業廃棄物が発生しておりますが、その一部が不法投棄されるなど、社会問題となっています。
 適正な処理を事業者に促すため、新たな報告、公表制度を導入いたします。大規模な排出事業者等には、処理業者の選定や履行確認など、処理業者には処分受託量など、それぞれの実態を報告させ、ホームページなどで広く公開をいたします。
 平成十四年度から都市再生の一環として進めてきたスーパーエコタウンについては、今年度稼働した情報機器、建設廃棄物のリサイクル施設に続き、来年度には、PCB処理施設、食品廃棄物リサイクル施設などが相次いで完成いたします。また、十八年度には、ガス化溶融等発電施設の稼働が予定されており、スーパーエコタウンの完成に向けて着実に整備を進めてまいります。
 次に、東京のまちづくりについて申し上げます。
 まず、羽田空港の再拡張についてであります。
 先月末、国と新滑走路の建設に総額一千億円の無利子貸付を行う協定を締結しました。来月には、施工者、工法が決定され、平成二十一年末の供用開始に向けていよいよ事業が動き出します。羽田空港の再拡張、国際化が一日も早く実現するよう、引き続き、国、関係自治体と協力して取り組んでまいります。
 横田基地の軍民共用化については、これまで米国側の状況も探りながら、政府に早期実現を強く求めてきました。米軍再編の動きが進む中、昨年秋以降、具体的な協議の段階に入ってきたように思われます。機は熟しつつあります。早期実現に向け、国とともに積極的に取り組んでまいります。
 東京の公共交通網の整備がさらに前進いたします。本年八月二十四日、常磐新線が開業し、秋葉原とつくばが最短四十五分で結ばれるほか、来年度末には、「ゆりかもめ」の延伸部、有明―豊洲間が開業する予定であります。さらに、平成十九年度には、日暮里・舎人線と地下鉄十三号線の開業も見込まれます。今後とも、関係機関と協力し、着実に整備を続けてまいります。
 東京の潜在力を発揮するためには、物流の基盤である道路ネットワークの整備が不可欠であります。
 環状八号線などの区部環状道路、調布保谷線などの多摩南北道路の建設を進めるとともに、三環状道路の整備を促進してまいります。中央環状品川線については、有料道路事業に先駆けて、来年度、都が街路整備事業として先行着手をいたします。来月、日の出―あきる野インターチェンジ間が開通する圏央道については、残る区間の早期完成を国に強く働きかけてまいります。
 臨海部の道路交通の円滑化を図るため、国と連携して、東京港臨海道路と新木場若洲線の整備を進めるとともに、大井コンテナふ頭周辺の渋滞緩和策として、交差点の改良やコンテナ車の専用レーンの設置に取り組んでまいります。
 いわゆる開かずの踏切の半数以上がこの東京に集中し、踏切渋滞の解消が大きな課題となっております。来年度も引き続き、JR中央線や京浜急行線などで連続立体交差事業を着実に進めてまいります。
 都民が生活の豊かさを実感できない大きな要因の一つに、狭くて高価格な戸建て住宅の問題があります。こうした状況を変えるための第一歩として、東村山市本町地区において、低価格で高品質な戸建て住宅の実証実験に着手いたしました。
 先月末事業者を決定し、ことし夏ごろには整備が始まる予定でありまして、市場価格よりは間違いなく三割安く高品質な住宅の提供を実現してまいります。これは、市場の分析をしますと必ずできること、やらなかったのは大手のエゴであります。
 この実証実験で得られる成果を生かして、設計の標準化や流通経路の短縮など、生産システムの合理化に関する指針を作成し、安くて質のよい戸建て住宅の普及に都の責任において取り組んでまいります。
 地域の個性を生かした魅力的な都市景観を創出するため、屋外広告物条例の改正を提案しております。
 通り全体でイメージを統一するなど、地域ごとに屋外広告物のルールを設定できるようにするとともに、違法広告物対策を強化し、新たに広告業者の登録制度を導入します。悪質な違反者に対しては行政罰を課すことで迅速な対応ができるようにしてまいります。
 次に、多摩地域と島しょの振興について申し上げます。
 東京の三分の一の人口を擁する多摩地域は、最先端技術が集積し、製造品出荷額では区部を上回るとともに、豊かな自然環境にも恵まれております。都心へのアクセスのよさも加わって、首都圏を牽引する大きな可能性を秘めた地域であります。
 こうしたポテンシャルを十全に開花させていくため、先月、多摩リーディングプロジェクトを策定いたしました。多摩の固有資源の活用、横田基地の軍民共用化、都市間の連携を施策展開の基軸として、都が率先して取り組む二十の重点推進事業を中心に、多摩振興に力を注いでまいります。
 小笠原諸島及び沖ノ鳥島周辺の海域は、貴重な海洋資源に恵まれ、国益を維持する上で枢要な位置を占めております。
 最近、この海域を含む我が国の排他的経済水域で、中国による違法な海洋調査が執拗に繰り返されております。これは、我が国の主権に深くかかわる重大な問題であり、政府は責任を持って毅然とした対応をすべきであります。
 都は来年度、沖ノ鳥島と周辺海域で漁場調査や魚礁の設置に着手いたします。先月末、小泉総理大臣にこうした方針や、海洋の温度差を利用した発電所の設置について直接申し入れを行いました。中国は気違いじみたプロジェクトであるといっておりますけれども、これは、まともなまともな、ごくまともな国益を反映したプロジェクトだと思います。私自身現地を訪れ、我が国固有の領土であり、東京都の区域である沖ノ鳥島の実情をこの目で確かめたいと思います。
 冒頭で申し述べたように、日本が歴史的に大きな転換点に差しかかり、東京の役割がますます重要性を増していることの認識に立って、平成十七年度の予算、職員定数、組織改正案を取りまとめました。
 まず、予算についてであります。
 都財政は、一時の危機的状況は脱したものの、たび重なる財源対策により基金残高が底をつくなど、その再建はいまだ道半ばにあります。一方、治安回復や都市再生など解決を迫られている課題が数多くあります。そのため、来年度予算は、東京の新たな発展を目指しつつ、財政構造改革を一層推進する予算と位置づけ編成しました。
 三宅島の帰島支援や治安対策、ディーゼル車対策など、緊急課題に重点的に財源を投入するとともに、羽田空港の再拡張、中央環状品川線の新規着工、子育て支援など、東京の将来を見据えた施策にも知恵を絞りました。
 財政再建については、手を緩めることなく取り組み、歳入の四割を借金に依存している国と比べ、起債依存度を六%に抑えるなど、着実に成果を挙げております。景気の回復による都税収入の大幅な伸びを活用し、いわゆる隠れ借金の圧縮や基金への積み立てを行うなど、都財政の体力回復にも努めました。
 しかし、残念ながら、税収増が今後継続する保証はどこにもなく、景気動向に大きく影響される財政の不安定さには本質変わりはございません。
 今回の予算で、七年ぶりに臨時的財源対策を施すことなく財源の確保ができたとはいえ、法人事業税分割基準の理由もない見直しなど、都に対する理不尽な国の圧力も強まっております。引き続き、気を引き締めて財政構造改革を推進していく必要があります。
 職員定数については、新たな施策展開に必要な人員を措置する一方、全体で二千二百二十三名の定数削減を行いました。少数精鋭による一層効果的な都政運営を目指してまいります。
 また、知事本局に治安対策推進担当の理事を新たに設置するほか、試験研究機関の地方独立行政法人化や財団化に取り組むなど、執行体制を整備いたします。公の施設に対する指定管理者制度について、平成十八年度からの本格導入に向け、関連条例の改正を提案しております。
 区部の商業地等の固定資産税、都市計画税について、負担水準の上限を引き下げ、税負担の不均衡を是正してまいります。また、既に実施している小規模住宅用地を初めとする都独自の三つの減税措置について、来年度も継続することといたします。
 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、予算案三十九件、条例案九十五件など、合わせて百四十七件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。
 以上をもちまして施政方針を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(内田茂君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○議長(内田茂君) 次に、警視総監より、都内の治安状況について発言の申し出がありますので、これを許します。
 警視総監奥村萬壽雄君。
   〔警視総監奥村萬壽雄君登壇〕

○警視総監(奥村萬壽雄君) 都内の治安状況についてご報告をいたします。
 昨年は、一昨年に引き続きまして、犯罪の抑止を警視庁の喫緊かつ最重要の課題としてこれに取り組んでまいりましたが、その結果、二年連続して都内の犯罪発生は着実に減少するとともに、他方、検挙は増加し、治安回復は一応軌道に乗せることができたものと考えております。
 しかしながら、犯罪の発生は、十年前、二十年前と比べますと、まだまだ多い状況でありますし、また、いわゆる振り込め詐欺を初めとする新手の犯罪も多発するなど、犯罪情勢は依然として厳しい状況にあるといわざるを得ないところであります。
 警視庁といたしましては、こうした犯罪抑止を初め、国際テロ対策や大規模災害対策の推進、あるいは交通安全対策や地域安全活動の強化など、さまざまな課題に鋭意取り組んでいるところでありますが、以下、その状況についてご説明し、都議会の皆様や都民の方々のご理解とご協力をいただきながら、全力を挙げて首都東京の治安維持と都民生活の安全確保に努めてまいりたいと思います。
 まず、当庁最大の課題であります犯罪抑止総合対策につきましては、一昨年の平成十五年を治安回復元年と位置づけて開始いたしましたが、犯罪の中でも都民の方々に大きな不安感を与える強盗、侵入窃盗、ひったくり、性犯罪の四つを重点犯罪として指定し、これらの犯罪の発生総数を本年末までの三年間で十年前の水準に戻すことを目標に、検挙と防犯両面の対策に取り組んでまいりました。
 その結果、昨年の重点犯罪の認知総件数は約三万二千五百件で、一昨年に比べて一八%減少し、目標とする十年前の水準に近づきつつあり、検挙率も十一ポイントプラスの六四%に上昇したところであります。
 これを犯罪ごとに見ますと、発生の減少率では、強盗が二七%、侵入窃盗が一八%、ひったくりが二一%、性犯罪はやや少なくて三%と、いずれも減少しておりますが、性犯罪を除き、それぞれ全国平均あるいは主要道府県を相当上回った減少率であり、特に強盗につきましては、全国ではわずか五%の減少に対し、都内では二七%の減少となっております。
 一方、検挙率で見ましても、強盗は、全国が五〇%に対し都内は六四%、侵入窃盗は、同じく全国が三六%に対し都内は六六%、ひったくりも、全国が三四%に対し都内は五六%などとなっております。
 申し上げるまでもなく、首都東京の治安は我が国の治安そのものであり、東京における治安回復は、全国における治安回復に直結する課題であります。こうした観点から、当庁では、犯罪抑止における昨年の成果を踏まえ、本年は、治安水準を三年間で十年前に戻す集大成の年として、あらゆる部門が常に犯罪抑止を念頭に置いてそれぞれの仕事を進め、この目標を何としても達成するとの強い決意のもと、警視庁の総力を結集した諸対策をさらに強力に推進してまいります。
 全国的に多発し、社会問題にも発展している振り込め詐欺の都内における昨年の発生状況は約二千件で、被害総額は約四十億円、一件当たりの最高被害額も三千八百万円に及んでいることから、警視庁では捜査を強化し、これまで全国の検挙人員の三分の一を占める約百九十人を検挙しております。
 また、この振り込め詐欺は、暴力団やヤミ金融関係者等の介在が認められるため、昨年十二月、庁内に身近な知能犯罪緊急対策本部を設置するとともに、年明けの先月には、被害が出ている全国の府県の捜査員を警視庁を中心に結集し、この犯罪に対する強力な全国的捜査体制を整えたところであります。
 こうした中、先般、警視庁では、指定暴力団住吉会系組員らのグループが少年らを使って組織的な振り込め詐欺を全国的に展開していた事件を検挙し、少年三人を含む十四人を逮捕いたしました。このグループによる事件の被害総額は百億円以上にも上るものと見られ、昨年一年間の全国での振り込め詐欺の被害総額が二百八十三億円であることを考えますと、本事件は極めて重要な事件であり、全容解明に向けて引き続き捜査を徹底してまいります。
 また、警視庁では、金融機関との連携により、約五千件の架空口座の凍結措置をとり、相当額の振り込め詐欺の引きおろしの防止や被害拡大の防止を行ってきておりますが、今後とも、金融機関に対して、不審な口座の通報や凍結についての協力を要請するなど、各種対策にも努めてまいります。
 このほか、当庁では、ゴルフ場のロッカーから利用者の銀行キャッシュカードを抜き取り、スキミングをして多額の預金を引きおろしていた事件を検挙し、先月、暴力団関係者や中国人らを逮捕いたしましたが、この事件を契機に、偽造キャッシュカードに係るセキュリティー対策の見直しを迫る世論が高まり、金融機関における偽造キャッシュカードの被害防止に向けた動きが加速しているところであります。
 また、こうした事案のほか、世間を騒がせている一万円札や五百円硬貨などの偽造通貨事件につきましても、関係機関との連携をとりながら、検挙と防犯両面の実効的な対応をしてまいります。
 外国人犯罪組織は、相互に対立あるいは暴力団などと連携しながら、殺人、強盗などの凶悪犯罪や偽造カード事犯、薬物事犯などの資金源犯罪あるいは密入国等、さまざまな悪質な犯罪を敢行し、我が国の治安を悪化させる大きな要因となっております。
 中でも、中国人犯罪グループらによる押し込み強盗や侵入窃盗は、体感治安を悪くする最大の要因となっておりますので、警視庁といたしましても、これらグループに対しては、特に重点を置いた取り締まりを行ってまいりました。
 その結果、一昨年の九月に施行された、いわゆる特殊開錠用具禁止法や不法滞在者の大量摘発による効果も相まって、昨年は、中国人等によると見られる都内での押し込み強盗は三割減少、ピッキングやサムターン回しによる侵入窃盗も四割減少したところであります。
 また、来日韓国人武装すりグループについては、昨年の六月、東横線田園調布駅構内において発生いたしました集団すり事件に見られるように、すぐにナイフを振り回すなど、その手口は一段と凶悪化しているほか、犯行地域も都心部から郊外へ拡散し、多発傾向にあります。このため、当庁の捜査幹部を昨年ソウル警察等に派遣し、情報交換や捜査協力などを活発に行いながら、これら武装すりグループの取り締まりを強化しているところであります。
 さらに、こうした中国人、韓国人等の外国人犯罪組織の取り締まりとあわせ、これら犯罪組織の人的、資金的供給源となっている不法入国者や不法残留者の恒常的な摘発や、これらの生活基盤を支える地下銀行、偽装結婚、不法就労等の取り締まりを進めた結果、昨年は、一昨年に比べ一三%増加の約九千百人の来日外国人を検挙したほか、不法滞在者の退去手続を早期かつ効果的に進めるため、刑事手続の特例として、検察庁に送致することなく、東京入国管理局に約四千人の不法滞在者を直接に引き渡し、来日外国人による犯罪の抑止に大きな効果を発揮しているところであります。引き続き、治安に大きな影響を与えている来日外国人犯罪については、取り締まりを徹底してまいります。
 ひったくりやオートバイ盗など、いわゆる街頭犯罪の検挙人員の約四割を少年が占めているという実態にかんがみますと、非行少年対策は、犯罪の総量を抑制するという当面の治安対策としてのみならず、次代を担う少年を健全に育成するという中長期的な観点からも、極めて重要な課題であります。
 警視庁では、昨年二月に、少年事件を担当する捜査員を大幅に増強するとともに、特に非行集団による街頭犯罪が多発している十地区を指定して、非行集団等検挙解体地区対策本部を開設し、地元警察署との連携を強化して、少年によるひったくりやオートバイ盗、路上強盗などに対する検挙活動を強化してまいりました。その結果、昨年は、非行少年約一万五千人を検挙、補導し、非行集団百九グループを解体したところであります。
 一方、昨年四月には、各警察署に学校の非行対策を支援する警察OBのスクールサポーターを配置し、学校や地域とのパイプ役として活動させているほか、昨年五月には、少年の非行事案について、学校と実質的な相互連絡を行う制度を構築するなど、学校、地域と連携した取り組みにより、少年の非行防止に相当な成果を上げているところであります。
 犯罪の発生を抑止するためには、地域の方々との連携、協力が不可欠でありますが、一昨年十月に施行された東京都安全・安心まちづくり条例に基づいて、自治体、事業者、地域住民と警視庁との連携がスムーズに進んでいるところであります。
 自治体との連携では、現在、各自治体で道路、公園、駐車場等における街路灯の設置などの防犯対策が活発に行われており、また、二十六の自治体で、当庁から派遣された職員が警察職員としての知識、経験を生かして自治体としての各種防犯対策に従事しているところであります。
 こうした中、防犯ボランティアにつきましては、昨年、千六百五十四団体、約九万七千人の方々に、それぞれの地域で防犯パトロールなどの自主防犯活動を積極的に展開していただいており、地域の犯罪抑止に大きな力となっております。
 また、警視庁では、都民の方々に、犯罪の被害に遭わないよう自主的に最低限の防犯対策を行っていただくことをお願いしておりますが、そのためには、犯罪情勢や防犯対策に関する情報や知識が必要でありますので、新聞折り込みで年数回配布する「広報けいしちょう」や、警視庁本部あるいは各警察署のホームページ、メールマガジン、各地域の交番・駐在所だよりなどの各種媒体を通じまして、身近で発生する犯罪や防犯対策等の情報提供に努めているところであります。
 今後とも、都民の方々の自主的な防犯対策につきましては、さまざまな形での支援をさらに充実しまして、実効あるものにしてまいります。
 ご案内のとおり、近年の盛り場環境は、怖い、危ない、どぎついと形容されるように極めて悪くなっておりまして、東京における体感治安の悪化の一つの要因ともなっております。
 このため、東京の代表的な盛り場である新宿歌舞伎町、池袋、六本木の三地区における盛り場環境の浄化を目的として、昨年の四月、庁内に三地区特別対策本部を設置し、違法風俗店、暴力団、不良外国人等に対する重点的かつ戦略的な対策を進めているところであります。
 その結果、例えば新宿歌舞伎町では、昨年約八割の違法個室マッサージ店を取り締まりによって廃業または休業に追い込むとともに、同種営業を再開させないよう、ビルオーナーへの指導を徹底しており、最近では、店名が消された白い看板が目につくようになっております。
 また、わいせつビデオ店にも集中的、波状的な取り締まりを行い、新宿歌舞伎町のこうした店のほとんどを廃休業させているほか、違法カジノ等を順次摘発して、現場で約一億五千万円の現金を押収するなど、これらを資金源にする暴力団にも相当の打撃を与えているところであります。
 加えて、主要繁華街における客引き、勧誘及びピンクビラの配布行為、あるいは暴力団の地回り行為などにつきましては、本年四月一日に施行されますいわゆる改正迷惑防止条例等を積極的に活用して、さらなる盛り場の環境浄化に努めてまいります。
 次に、暴力団対策についてでありますが、現在、都内に約六百六十の組織、約一万七千人の構成員等を把握しております。構成員等は、一番多かった昭和三十八年ころと比べますと、約半分に減っておりますが、暴力団は、東京進出が著しい山口組との対立抗争によるけん銃発砲事件を引き起こすなど、依然として都民に大きな不安と脅威を与えております。
 警視庁では昨年、都内の暴力団構成員等の約四割に当たる六千九百人を検挙するとともに、けん銃六十六丁を押収しておりますが、暴力団は、こうした取り締まりや地域、職域における暴力団排除活動等により、資金源の枯渇化が進んでいる中で、ヤミ金融や振り込め詐欺など新たな資金獲得活動を展開しており、引き続き取り締まりを徹底してまいります。
 また、都民、国民の健康をむしばむ薬物事犯では、昨年、税関、入管等の関係機関との連携のもと、水際での摘発やコントロールド・デリバリーを活用した捜査を推進し、二千九百人を検挙し、覚せい剤、大麻等百八十四キログラム、MDMA等の錠剤型合成麻薬七万五千錠をそれぞれ押収しております。これら薬物事犯につきましても、引き続き捜査を徹底し、需要の根絶と供給の遮断に努めてまいります。
 昨年開設した特別捜査本部事件は二十六件であり、地下鉄渋谷駅構内における駅員に対するけん銃使用強盗殺人未遂事件や、元社会保険庁年金保険課長らによる贈収賄事件を初め、前年以前に開設した事件を含め、二十件を検挙いたしました。
 しかしながら、世田谷の一家四人強盗殺人事件を初め、八王子のスーパー強盗殺人事件、東村山の警察官殺害事件など、幾つかの重要事件がいまだ検挙に至っておらず、これらについては引き続き捜査を精力的に展開し、一刻も早く犯人を検挙して、都民の皆様方の不安の解消に努めてまいります。
 昨年は、記録的な台風の上陸や全国各地での豪雨などによる大規模災害が相次いで発生いたしました。とりわけ震度七を記録した新潟県中越地震は、甚大な被害をもたらしましたが、警視庁では、地震発生直後、ヘリコプターによる被害状況の確認や情報収集に当たるとともに、広域緊急援助隊、自動車警ら隊、警備犬などを順次被災地に応援派遣し、被災者の救出救助や治安対策等の活動に従事したところであります。
 東京におきましても大地震の発生が危惧されており、首都直下地震が発生した場合には、死者が一万二千人にも及び、阪神・淡路大震災を上回る大惨事になると予測されております。
 警視庁では、こうした予測や阪神・淡路大震災など過去の貴重な教訓等を踏まえ、救出救助部隊を早期に必要な場所に投入するための被害情報の正確かつ迅速な収集・集約訓練や、危険箇所の見直しを含めた管内の実態把握を繰り返し行っております。
 また、全国警察に先駆けた試みとして、本部と全警察署を対象としたロールプレーイング方式による図上訓練や、発災直後から七十二時間以内の各警察署ごとの具体的なシミュレーション訓練を繰り返し行ってきておりますが、引き続き、有事に迅速、的確な対応を行い、被害を最小限に抑えることができるよう、実戦的な大規模災害対策の万全を期してまいります。
 次に、国際テロを初めとする警備情勢でありますが、まず国際テロについては、イラクを初め、世界各地においてイスラム過激派によるとされる大規模かつ無差別なテロが相次いで発生するなど、テロの脅威は依然として高い水準で推移しております。
 こうした中、昨年十月には、アルカイダのナンバーツーが海外メディアを通じて、米英などに加え、日本も攻撃対象とするようイスラム教徒に呼びかけるなど、我が国に対するテロ攻撃の脅威が高まっている情勢にあります。
 このため警視庁では、テロリストを国内に入れない、活動拠点をつくらせない、テロを起こさせないとの観点から、徹底した管内の実態把握やテロ関連情報の収集、分析を強化するとともに、政府関連施設や米国関連施設等の重要施設に加えまして、鉄道施設、地下街、繁華街等のいわゆるソフトターゲットの警戒をさらに強化し、この種事案の未然防止に万全を期してまいります。
 オウム真理教は、全国二十七カ所に主要施設と約千六百五十人の信者を擁し、そのうち都内には、主要活動拠点七カ所、約六百三十人の信者が居住しております。警視庁では昨年、薬事法違反や傷害致死事件等で信者ら二十二人を逮捕しておりますが、引き続き、平田信ら三人のオウム真理教関係特別手配被疑者の追跡捜査に努めるとともに、関係機関、自治体等と緊密な連携を図りつつ、厳正な事件捜査など総合的なオウム真理教対策を推進してまいります。
 極左暴力集団は、イラクへの自衛隊派遣などをめぐり、昨年、都内において防衛庁に対する飛しょう弾発射事件を敢行しており、また右翼は、国内外の情勢に敏感に反応し、街宣車による活発な抗議、要請行動を展開しておりますが、警視庁では昨年、極左暴力集団の活動家二十九人、右翼構成員ら百六十四人を検挙しております。引き続き、極左暴力集団、右翼によるテロ、ゲリラ事件等の防圧検挙を強力に推進してまいります。
 一方、「よど号」ハイジャック実行犯らによる日本人拉致容疑事件に関し、昨年、北朝鮮から帰国した実行犯の妻二人を旅券法違反で逮捕したほか、一人を国際手配しておりますが、引き続き、欧州における日本人拉致容疑事件等の解明に向け、厳正な捜査を推進してまいります。
 次に、交通対策でありますが、警視庁では昨年、「交通死亡事故連続減少 チャレンジ・アンダー三〇〇」をスローガンに掲げ、特に、死亡事故に占める割合が高い高齢者や二輪車の事故防止対策を中心とした各種交通対策を強力に推進いたしました。
 具体的には、警察官等が高齢者宅を直接訪問して行う交通安全教育や、交差点において警察官の姿を見せる街頭活動、あるいは二輪車の死亡、重傷事故が多発している路線区間を指定し、テレビ、ラジオなどのメディアと連携し、都民の心に響く広報活動を行ってまいりました。
 こうした諸対策の推進に加え、例年、死亡者が増加する十月から十二月にかけて徹底的な交通死亡事故抑止対策を実施した結果、この期間の死亡者数が七十三人と、一昨年に比べて三十三人も減少し、昨年一年間を通じての都内における死亡者数は、戦後三番目に少なかった一昨年に比べてさらに十七人減少の三百三人となったほか、発生件数、負傷者数についても、それぞれ四年連続の減少を見たところであります。
 一方、暴走族の取り締まりにつきましては、昨年十一月、深夜の首都高速道路において集団で暴走行為を繰り返しておりました暴走族横浜連合等のメンバー百三十五人に対し、成立間もない改正道路交通法を適用し、共同危険行為等の違反で、全国でもかつて例のない七十一人もの多数の現行犯逮捕をしたところであります。
 引き続き、交通人身事故の減少傾向の定着化に努め、あわせて交通の円滑化と交通公害の防止を推進するなど、安全で快適な交通社会の実現に努めてまいります。
 犯罪による被害者やその遺族は、犯罪行為による直接的な被害にとどまらず、その後も経済面、精神面等で大きな打撃を受ける場合が多く、特に、性犯罪の被害者や殺人等の遺族の抱える精神的な被害は深刻であります。
 警視庁では、都民の視点に立った警察活動という観点から、被害者支援活動を極めて重要な施策と考えており、被害者やその遺族の声に耳を傾け、きめ細かな支援活動や各種施策を推進しているところであります。
 具体的には、被害者等の精神的、経済的負担の軽減に資するため、被害認知直後から被害者等に寄り添って行う初期支援活動を初め、被害者連絡や各種被害相談業務など、昨年中、五千二百人余の被害者等に支援活動を推進し、これらの方々から多くの感謝の声が寄せられているところであります。引き続き、自治体を初め関係機関、団体との連携を一層強化しながら、官民一体となった被害者支援の充実に努めてまいります。
 以上、都内の治安状況について申し上げましたが、警視庁では昨年、警察官二百人の増員、さらには東京都職員百人の派遣をしていただき、多くの警察官を現場警察活動に充てることができました。また、おおよそ十年間にわたりまして、約三千五百人の定員を再配置するなどの内部努力を重ね、捜査部門、少年事件部門等を重点とした現場執行部門の体制強化を図ってまいりました。
 しかしながら、最大の課題であります犯罪抑止総合対策を初め、空き交番の問題を含めた交番機能の強化、盛り場対策など、厳しさを増す都内の治安情勢に対応して、都民が肌で感じる体感治安のよさを回復するためには、人的基盤のさらなる強化が重要であり、今定例会におきましても、警察官の増員に関する条例の改正をお願いしているところであります。
 警視庁といたしましては、今後とも、警察力の最大限効果的な運用に努め、世界で一番安心・安全なまち東京を実現するため、全力を尽くしてまいります。
 都議会議員の皆様方におかれましては、なお一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、治安状況報告といたします。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(内田茂君) 以上をもって警視総監の発言は終わりました。

○議長(内田茂君) 次に、監査委員より、監査結果の報告について発言の申し出がありますので、これを許します。
 監査委員新藤義彦君。
   〔八十七番新藤義彦君登壇〕

○八十七番(新藤義彦君) 監査委員を代表しまして、過去一年間に実施した監査の結果についてご報告申し上げます。
 ご承知のように、監査委員の役割は、都の行財政が公正かつ効率的に運営されるよう監査することにあります。この重責を果たすため、監査委員四人は、それぞれの立場や経験から活発に議論を行い、都政について考えてきました。昨年は、かつて初代の包括外部監査人を務められた筆谷委員が加わり、専門性も一層強化されたところでございます。
 監査の結果として、この一年間にわたって指摘等した件数は二百五件であり、不経済な支出などを指摘した金額は約十二億円に達しました。
 監査は、定例監査のほか、決算、工事、外郭団体の監査など多岐にわたっております。以下、順次報告いたします。
 まず、定例監査について申し上げます。
 今回は、本庁の部のすべてと事業所の約半数の、合計五百五カ所を対象としました。事務の処理がむだなく適正に行われているかを監査し、特に未収金については重点的に検証しました。
 債務不履行の結果である未収金は、放置すれば都民の負担の公平を損ない、都の収入確保の上でも問題です。監査を行ってみると、過去の台帳を紛失し、回収整理に手をつけていない事例もありました。金銭債権は本来貴重な資産であることをしっかりと認識して対処すべきです。
 また、育英資金貸付事業については、滞納者に対して、これまで違約金を徴収していませんでした。返還金の滞納が七億円を超えていることを踏まえ、滞納の発生を防止するためにも、違約金の徴収に向けた取り組みを求めました。
 次に、工事監査について申し上げます。
 今回は、都が行っている百万円以上の工事、約一万五千件のうち、一割強に当たる千五百六十六件について監査を実施しました。
 指摘内容は、工事費の積算を誤ったものが大半を占め、技術者として初歩的なミスが少なくありませんでした。積算事務の自動化や設計等の外注化に伴って、技術者の力量が低下をしているおそれがあります。このような現状を見過ごすことなく、技術力の確保やチェック体制の強化に、都庁の技術者全体で取り組むよう求めました。
 また、現在工事を請け負っている業者に別の工事も発注する場合、それぞれの局では、現場事務所などの経費を共通にすることによって全体の経費を節減しています。しかし、複数の局にまたがる工事については、こうした調整が不十分な事例がありました。このため、工事についての情報交換は局間においても密接に行い、共通する経費を節減するよう求めました。
 次に、行政監査について申し上げます。
 今回は、特命随意契約について監査を実施いたしました。特命随意契約は競争性を欠いているため、本来、例外的な契約方法でありますが、現実には都においても広く用いられています。
 監査の結果、機械設備の保守委託など、現在では競争入札が可能であるにもかかわらず、見直すことなく特命随意契約を続けている事例が見られました。
 また、積算に当たり、業者の見積額をそのまま採用するなど、精査を十分行っていない事例もありました。
 特命随意契約は、競争入札と異なり、価格の妥当性が検証されにくく、事務処理が安易になりやすいという問題があります。職員のコスト意識の醸成や組織的なチェック機能の確保が不可欠であり、改善を求めました。
 行政監査としては、都立図書館サービスについても対象といたしました。図書館に求められる役割が、近年の情報化の進展の中で大きく変化していることを踏まえ、サービスの向上と運営の効率化に取り組むよう要望いたしました。
 次に、決算審査について申し上げます。
 平成十五年度決算について、決算計数を確認するとともに、資金管理や財産管理の面からも検証いたしました。
 財産の記録については、毎年のように登載漏れや数量の誤りが出ております。このままでは、今後、新たな会計制度への移行に支障が生じることが危惧されるため、財産管理のチェック体制の確立を求めました。
 また、最近、医薬品について、特許期間満了後の技術を利用した低価格の後発医薬品が注目されています。都立病院では、この後発医薬品の採用がまだ十分でないため、患者の経済的負担を軽減する見地から、利用促進を求めました。
 これまで申し上げた都庁に対する監査のほか、都が補助金を交付している団体や都が出資している団体についても、二百三十四団体を対象とした監査を実施いたしました。
 今回監査を行った都の出資団体の多くは、道路、鉄道、大型ビルなどを運営しています。これらの中には、事業収入が予定を大幅に下回り、経営状況が厳しくなっているところがあります。こうした団体に対しては、これまで以上の内部努力に加えて、抜本的な経営改善を求めました。
 その他、首都高速道路公団に対しては、料金収受業務の委託について、競争入札の応募資格を緩和し、競争性を十分に確保するように求めました。この結果、新年度から、新規参入の条件が大幅に緩和されることになりました。
 最後に、住民監査請求について申し上げます。
 平成十六年は二十八件の住民監査請求がありました。このうち請求が法的要件を満たしている職員公舎に関する件と私学助成金に関する件の二件について、監査を実施いたしました。
 以上、この一年間の監査の実施状況について述べてまいりました。
 監査の結果、総じていえることは、安易に前例が踏襲されるなど、コスト意識を持って常に職務を見直すという姿勢がいまだ都庁の隅々まで行き渡っていないことです。組織内部のチェック機能が十分に働かず、初歩的なミスや不適切な支出が繰り返される例も少なくありません。執行機関におかれましては、このような現状をつぶさに把握され、職員の指導育成やチェック体制の整備などに努められるよう望みます。
 特に、複式簿記・発生主義会計の導入が間近に迫っている今、適正な会計処理を日常的に担保する内部統制の仕組みを早急に整備し、運用していくことが不可欠です。監査委員としても、ことしはこうした点に特に留意して監査を進めるつもりです。
 最後になりますが、我々監査委員の使命は、都政が公正かつ効率的に運営されるようバックアップすることにあります。これからもこの使命を全力で果たしていく決意であることを申し上げまして、報告を終わります。(拍手)

○議長(内田茂君) 以上をもって監査委員の発言は終わりました。

○議長(内田茂君) 次に、包括外部監査人より、平成十六年度包括外部監査結果の報告について説明を求めます。
 包括外部監査人守屋俊晴さん。
   〔包括外部監査人守屋俊晴君登壇〕

○包括外部監査人(守屋俊晴君) 平成十六年度包括外部監査人の守屋俊晴でございます。
 本日、貴重なお時間を割いてこのような機会を設けていただきましたことに心から感謝いたします。
 それでは、早速、平成十六年度に実施しました包括外部監査の概要につきまして説明させていただきます。
 本年度に監査対象としたテーマは、一、水道事業の経営管理について、二、社会福祉法人東京都社会福祉事業団の経営管理について、三、民間文化団体への補助金等についてでございます。
 監査の結果は、指摘が十一件、意見が六十四件、合計で七十五件になります。
 時間の制約もございますので、主な点をご説明申し上げます。
 第一は、水道事業の経営管理についてでございます。
 まず、事業全体の経営指標を見ました。都の水道事業は、巨大な市場を独占的に擁しており、規模の利が期待されております。しかし、収入となる水量一立米当たりの営業費用は、京都市や大阪市よりも高く、また、職員一人当たりの給水件数等では、福岡市よりも低い数値となっています。水道事業は、ダム、浄水場、配水・給水管といった大規模施設に支えられた一大装置産業であり、その中で事業の効率化を図っていくためには、人件費の軽減が改善のポイントとなります。
 水道事業では、検針から料金の徴収、さらに営業所、支所での夜間、休日待機の業務のために多くの職員が配置され、検針係と収納係等で約四十億円の人件費を要しております。しかし、これらの業務のうちには、外部委託の積極的活用、六カ月をかけている徴収サイクルの短縮化、滞納者の納付方法の改善、待機対象事業の精査などを行えば、経費節減が図れるものが多いと考えます。
 例えば、支所や営業所で給水待機、受け付け待機のために総勢百九人の待機体制をとって、年間十億円の待機手当を支給しています。事故等の対応のため一定の待機体制は必要なものの、水道料金滞納者の夜間納入や夜間開栓要請に対応するためにまで職員を過大に待機させていることは、その経費がすべて一般利用者の負担となることを考えると、見直していく必要があると考えます。
 特に申し上げたいのは、そうした検討に必要な業務実績に関する基礎的なデータの整理と分析がなされていないということです。民間企業であれば、経費節減に向けたデータの収集と分析、並びに改善に向けた必死の努力が行われています。水道局の業務効率化へ向けた意識は、民間企業に比べ低いことのあらわれと感じました。水道局では、ことしからお客様センターの設置を進めておりますが、この機会に、ぜひ、従来の業務体制を積極的に見直し、経費節減に努めるべきであるとの意見を述べさせていただきました。
 水道事業におけるもう一つの問題は、特命随意契約についてであります。
 平成十五年度の業務委託契約総件数一千百六十二件のうち、少額以外の理由による特命随意契約が五五%に当たる六百三十六件、金額ベースでは、業務委託総額二百六十六億円のうち八四%に当たる二百二十四億円を占めています。
 例えば検針業務委託では、五つの地域に分け、おのおの十八年から二十五年の長期にわたって同一の業者と継続して随意契約が行われています。事業を開始したころと比較して、現在では対応可能な民間企業がふえているなど、社会状況が大きく変化しております。都民のライフラインを預かっていることから、競争入札に慎重となる心情は理解できるにしても、他局では、公の施設の管理委託業務について指定管理者制度が導入されることになり、民間との厳しい競争が求められております。水道事業においても、事業の安定的運営に配慮しつつも、契約における競争性を増していく工夫をしていくべきものと思います。
 第二は、社会福祉法人東京都社会福祉事業団の経営管理についてです。
 福祉保健局は、利用者本位の新しい福祉システム構築に向けて福祉改革に取り組まれております。障害者施設では、措置制度から支援費制度への大きな転換期にあり、また、被虐待児童の増大等が社会問題化する中で、児童養護施設の充実策も求められております。監査中、各施設で熱心に働いている職員の姿にも触れさせていただきました。
 しかし、指定管理者制度の実施は平成十八年度です。まさに目前に迫っております。はっきり申し上げまして、現状では、事業団が民間社会福祉法人との競争に打ち勝つことは極めて困難と考えます。社会福祉施設における国基準、都基準、都立基準の違いについても説明をいただきました。これら基準の見直しも必要ですが、民間社会福祉法人においては、経費を抑制しながらサービスの維持や、新設されたサービス推進費補助制度を活用した新たなサービスの提供など、さまざまな工夫を重ねております。
 事業団においても、競争に勝ち抜くためには、職員配置の見直し、非常勤職員の積極的活用などによる効率的事業運営等を早急に進めていく必要があると考えます。
 なお、指定管理者制度導入の内容については、多くの都民が注目しております。公平な競争が行われるとともに、施設側の創意工夫を生かした柔軟な運営を可能とする管理代行方法がとられるよう期待しております。このことは、事業団の業務改革がより一層徹底されるために不可欠なことと考えます。
 次に、資産の活用について申し上げます。
 水道事業でも記しておりますが、資産の活用については、当該局だけでなく、都全体としても取り組まれた方が、結果的に有効に活用できると考えます。この資産は企業局の所管だからとか、これは事業団の所有に移されたものだからというような説明は、都民の目からすると、役所の中だけの議論のように見えます。ぜひ合理的な資産活用のシステムをつくるべきだと思います。
 第三のテーマとして、昨年度の農林水産事業の補助金等に引き続き、民間文化団体への補助金等の問題を取り上げました。
 文化事業にかかわる評価は難しい面もありますが、効果的な事業評価を行って、補助金のあり方を改善していくべきものと考えます。
 特に、昭和四十三年から開始された都民芸術フェスティバルは、既に三十五年を経過し、フェスティバルとしての一体性の希薄さ、参加団体の固定化、事業評価方法の未整備、事業のPR不足などの課題が大きいと考えました。文化事業は、都民の暮らしに豊かさと潤いをもたらす大切な事業であります。都は、都民芸術フェスティバル事業の活性化を図るために、事業を都民全体に浸透させ、事業効果が拡大されるよう、参加団体の公募制の導入やPR方法の改善など、抜本的な改革に取り組む必要があると考えます。
 以上、本年度の包括外部監査の概要について説明してまいりましたが、執行部局におかれましては、外部監査の結果に十分留意され、事業の改善に取り組まれることを心から望んでおります。
 最後に、三年間、東京都の包括外部監査をさせていただきました。この間、都議会を初め関係各機関からの多大なご協力をいただきましたことに深く感謝を申し上げ、平成十六年度包括外部監査結果の説明を終わります。(拍手)

○議長(内田茂君) 以上をもって包括外部監査人の説明は終わりました。

○六十七番(近藤やよい君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明二十四日から二十八日まで五日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(内田茂君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明二十四日から二十八日まで五日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は三月一日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後二時三十五分散会


文書質問趣意書及び答弁書

一六財主議第五六六号
平成十七年二月十五日
         東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 内田  茂殿
文書質問に対する答弁書の送付について
 平成十六年第四回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。
     記
後藤雄一議員
河野百合恵議員
清水ひで子議員
小松恭子議員
古館和憲議員
和田宗春議員
吉田信夫議員

平成16年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  後藤雄一

質問事項
一 事故報告書の開示について。
二 DPF装置の虚偽申請問題について。
三 1日理事・1日参事の制度に付いて。
四 水質検査の料金について。
五 行政財産使用許可/使用料免除の実態!について。
六 東京消防庁の制服について。
七 監理団体の情報公開。

一 事故報告書の開示について。
  都立府中病院検査科休憩室にウィスキー・ブランデー等がおかれ、職務終了後に病院休憩室内で飲酒を行っていた事件につき、「服務上の事故報告書」を情報公開請求したところ、知事(病院経営本部)は非公開処分にした。しかし、消防庁、警視庁、交通局において同様の「服務上の事故報告書」は一部公開処分とされている。
 1 同じ情報公開条例をつかっているのに、なぜ病院経営本部は非公開にするのか伺う。
 2 また、警視庁・消防庁の「職員の服務上の事故報告書」の作成に長い時間がかかっているものが多い。職員の服務事故報告書作成が遅いということは、都民から見れば「身内に甘い警視庁・消防庁」と言う事になり都民の信頼を失いかねない。職員の服務事故報告書の作成に関し「期間」を定めるべき、と考えるが、見解を伺う。
二 DPF装置の虚偽申請問題について。
  三井物産は、DPF装置(ディーゼル排気微粒子除去装置)のデータを改ざんして虚偽申請を行っていたことが判明した。
 1 なぜ、許可する時に、東京都が独自に検査しなかったのか伺う。
 2 また、平成15年1月に長崎で行われた三井物産DPF装置の性能確認実験では東京都環境局自動車公害対策部計画課排ガス技術係の職員2名が立会のために出張していた。この職員一名は検査当日、三井物産から「船釣り」の接待を受けていた事も判明した。
   自動車公害対策部計画課排ガス技術係担当職員に対しての研修・教育が行われていたと考える。研修・教育内容について伺う。
 3 三井物産DPF装置は2万台以上販売され使用されている。つまり、現在、環境確保条例に違反している車が2万台以上走っている事になる。都交通局でも現在都バス249台が条例違反を承知で走っている。環境局は事業者が不利益にならない措置を考えている、というが、条例違反を解消するために、都民の不利益解消を第一に考え、現実的な対応を早急に取るべき、と考えるが見解を伺う。
三 1日理事・1日参事の制度に付いて。
  『都庁に就職し、出世するため一生懸命仕事をし、やっと**部長に出世した。その後もモクモクと働いた。部下からの嫌みに耐え、都議からの嫌がらせにも我慢した。最後の目標「理事(局長)」まであと一歩。理事になれば天下り先が保障される。お父さん(お母さん)頑張って~!!家族からの声援!! ある日、上司から呼ばれ「後進にあとを譲ってくれないか?」と肩を叩かれた。これで出世は望めない、仕方なく勧奨退職をえらんだ。彼の退職日の辞令には、7月31日昇任とハナマルが書かれていた。』こんな話もあるだろう。
  事実、東京都では一部の勧奨退職者に対し、「1日理事昇任基準」「1日参事昇任基準」を規定し、退職した当日に出世する「一日参事・一日理事」という仕組みが石原知事のお膝元でつづいている。
  1日理事は「枢要な本庁部長に1年以上、又は、本庁部長暦に8年以上在職した職員で、知事が決める。
  1日参事は、統括課長を1年以上在職した職員で、局からの推薦で決める。となっている。
  勧奨退職する成績優秀?な課長?を「一日参事」、成績優秀?な部長?を「一日理事」に昇進させて、ご機嫌を取っている、と関係者は言う。給料・退職金での加算はない、というが、民間企業に再就職して「都庁の肩書きは?」と聞かれたら、箔を付けるために「参事でした!」・「理事でした」とでも言うのだろうか!?
  家で額に入れて飾っておくのだろうか?こんな馬鹿げた慣習は廃止すべきと考えるが、見解を伺う。
四 水質検査の料金について。
  東京都が行う井戸水の水質検査料金は、民間と比べると13倍も高い。
           民間(K事業団) 東京都
   10項目      4,620円    60,200円
   50項目(全項目)267,540円    418,400円
  東京都健康安全センターに問い合わせると、
  ○ 行政検体を対象に「正確・精密・敏速」な検査を行っており、効率性を重んじる民間とは違う。
  〇 検査の結果によっては「行政処分」を行うことになり、間違いは絶対に許されない。検査データが少しでも異常が見つかると、再検査を行う。
  ○ そこで、料金の基礎となる年間検査件数を「240件」(前年の基準に)とし、(人件費を1時間当たり4,000円)で原価計算をしているので、民間に比べ割高になる。と、担当者は説明する。
  都の福祉保健局担当者も、料金が民間と比べ高すぎるのを承知しており、都民からの問い合わせには、「民間の料金の方が安いので、・・・。」と説明し、民間の業者を紹介している、という。これでは、料金を高くして利用者を排除しているようなものだ。
  東京都の水質検査合格!という御墨付きがほしい、という利用者もいると担当者はいうが、世間で通用しない原価計算に基づき、都民から手数料を設定・徴収していては、都民から反感をかうだけだ。もっとも、都は水質検査業務をやりたくないので、こんな原価計算をしているかも知れない。世田谷区保健所に聞くと、民間業者との料金格差が広がり、3年前に水質検査業務は廃止し、民間業者を紹介するようにしている、という。
  一般の水質検査は民間に任せ、東京都は行政検体に特化し、都民からの水質検査を原則お断りすべきだ、と考えるが、見解を伺う。
  水質検査の料金は以下のとおり。
東京都健康安全研究センター関係手数料条例施行規則11
水質試験1
上水
(1) 化学的試験
ア 定性試験
(ア)複雑でないもの   1成分  2,700円
(イ)複雑なもの     1成分  7,200円
イ 定量試験
(ア)複雑でないもの   1成分  7,600円
(イ)複雑なもの     1成分  22,700円
(ウ)特に複雑なもの   1成分  31,000円
(エ)特殊なもの     1成分  42,900円
(2)水質基準項目試験
ア 省略不可試験
(ア)定期試験一      1件  29,400円
(イ)定期試験二      1件  85,000円
(ウ)細菌試験       1件  8,100円
イ 健康に関する項目試験
(ア)金属         1件  67,400円
(イ)無機物        1件  33,500円
(ウ)有機物        1件  99,900円
(エ)消毒副生成物     1件  81,700円
ウ 性状に関する項目試験
(ア)金属         1件  21,200円
(イ)無機物        1件  36,100円
(ウ)有機物        1件  83,200円
(3)食品衛生法に係る水質試験  1件  70,600円
(4)細菌及び生物試験
ア 複雑でないもの     1項目  4,900円
イ 複雑なもの       1項目 10,300円
ウ 特に複雑なもの     1項目 17,400円
エ 特殊なもの       1項目 75,200円
五 行政財産使用許可/使用料免除の実態!について。
  東京都は(財)東京都福利厚生事業団に対し、職員の福利厚生を理由に「食堂・旅行相談所・喫茶コーナー等」のスペースを、使用料免除(無償)で貸し付けている。
  都財務局に確認したところ、職員の福利厚生目的スペースは100%減免(無償)、都民も利用するスペースは50%減免(半額)としている、と言う。
  喫茶コーナー、旅行相談所について質問する。
 1 喫茶コーナーについて
   職務スペースの脇「第一本庁舎16階、25階。第二本庁舎10階、31階」に喫茶コーナーがある。(業者は・・UCC、キーコーヒー)
   各階には、職員用に自販機・タバコ集煙機が備え付けられたリフレッシュルーム設置されている。
   職員の福利厚生というのが使用料減免(無償)の理由なので、当然、利用対象は東京都職員である。職員の勤務時間は、午前8時30分から午後5時15分。昼の休憩は12時から13時、休息時間は午後に15分である。職員が喫茶コーナーを利用できるのは、昼の12時から13時、午後の15分間だけである。上記時間以外に利用するということは、職務時間中に喫茶店?を利用している、と言う事になる。
   喫茶コーナーの必要性を伺う。廃止すべき、と考えるが、見解を伺う。
 2 旅行相談所について。
 本庁舎には5ヶ所の旅行相談所がある。
   第一本庁舎16階(117.86平方メートル)、同16階(53.61平方メートル)、
   第二本庁舎1階 (26.96平方メートル)、同1階(24.56平方メートル)、同31階(41.91平方メートル)
   利用対象は、東京都職員である。近畿日本ツーリスト、小田急トラベル、はとバス、日本旅行、JTBの5社も必要なのだろうか?仕事時間中に旅行のパンフレットを眺めている職員を多く見かける。旅行相談所と言えば聞こえが良いが、旅行代理店が都庁の職務フロアーにあるようなものだ。
   旅行相談所が5ヶ所も必要な理由はなにか?説明を求める。旅行業者が5社も入居する必要性は何か?説明を求める。廃止すべき、と考えるが、見解を伺う。
 3 行政財産の使用料金に付いて。
   上記、喫茶コーナー、旅行相談所は(財)東京都福利厚生事業団に無償で貸し付けられている。しかし、福利厚生事業団は旅行代理店に対し、下記の料金を「売上管理手数料」として徴収している。
   第一本庁舎16階(117.86平方メートル)、近畿日本ツーリスト
1,113,777円/月・・9,450円/平方メートル
   同    16階(53.61平方メートル)、小田急トラベル
450,324円/月・・8,400円/平方メートル
   第二本庁舎1階(26.96平方メートル)、はとバス
193,410円/月・・7,173円/平方メートル
   同    1階(24.56平方メートル)、日本トラベル
226,464円/月・・9,220円/平方メートル
   同    31階(41.91平方メートル)、ジェイティービー
824,985円/月・・9,220円/平方メートル
   東京都は旅行相談所スペースを福利厚生事業団に無償で貸して、福利厚生事業団は売上管理手数料として1ヵ月、20,808,960円を売り上げる。
   現在、喫茶コーナー、旅行相談所も契約期間中であり契約を解除することは出来ない事は承知している。契約を解除するまで、都民の財産を有効に活用するためにも、福利厚生事業団から使用料を徴収すべき、と考えるが見解を伺う。
六 東京消防庁の制服について。
  (財)東京消防協会が発行している東京消防という雑誌がある。11月号に「冬服の表生地の変更と女性消防吏員冬服デザインの一新」という記事が載っている。
  『現行の冬服は昭和47年に制定後、伝統と格式を重んずる観点から大きな変更も行われませんでした。しかし、平成13年4月1日総務省消防庁から示された新基準は、男女ほぼ同一の制式であったため、男女統一可能な表生地をコンセンサスに、アクリレート系繊維を混用し現行に比べ10から15パーセント(サイズによって異なるため)の軽量化を図りました。また、吸汗調湿調温機能による快適性の維持やPHコントロールによる弱酸性維持等の大変優れた機能を有しています。』と書かれている。
  また、写真には、
  ネクタイ・・従来より15センチメートル短いSタイプを新設、どちらも選択可能にしました。
  スカート・・キュロットスカートから女性消防吏員の要望により、スカートタイプに変更しました。
  帽子(女性のアイテム)・・表生地は野うさぎの毛をアンテナロープ調仕上げにしたもので、耐水・耐久性に優れるとともに、ひさしに補強を施し持ちやすい構造としました。
  と説明がある。
  どのような理由で、この時期に制服を変える必要があったのか?マイナスシーリングの対象ではなかったのか?制服の軽量化にかかった費用はいくらか?震災が何時起っても不思議でない、と言われている。予算の使い方が違うのでは、と考えるが、見解を伺う。
七 監理団体の情報公開。
  行革110番に株式会社の形態を有する「監理団体の職員」から「都から派遣された管理職の私的タクシー利用、不適正な海外出張をしている」との内部告発が寄せられた。該当する監理団体に対し、タクシーの領収書、海外出張に関する文書を情報公開請求してみた。すると、タクシーに関して支払総額のみを一部公開、海外出張に関しては非公開との通知を受け取った。監理団体は都の情報公開条例に準じる、と努力義務が課せられている。都に対し同様の請求をすれば、公開される文書だ。
  そこで、株式会社形態の他の監理団体にも「タクシーの領収書、海外出張の文書」を情報公開請求してみた。すると、都に準じ公開した監理団体は株式会社国際フォーラム、東京臨海高速鉄道株式会社、多摩都市モノレール株式会社等であり、東京都下水道サービス株式会社、東京水道サービス株式会社、東京臨海熱供給株式会社は非公開であった。そして、非公開になった上記監理団体に対して、異議申立てをしたが、全て却下された。
  上記、非公開にした監理団体{東京都下水道サービス株式会社、東京水道サービス株式会社、東京臨海熱供給株式会社}に所管局は指導を行うべき、と考えるが、いかがか?

平成16年第四回都議会定例会
後藤雄一議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 事故報告書の開示について
  1 病院経営本部に「服務上の事故報告書」を情報公開請求したところ、知事(病院経営本部)は非公開処分とした。消防庁などでは一部公開処分とされているが、なぜ非公開にするのか伺う。

回答
  情報公開請求については、関係条例等の規定に従い、適切に対応しています。

質問事項
 一の2 警視庁・消防庁の「職員の服務上の事故報告書」は作成に時間がかかっているものが多い。職員の服務事故報告書の作成に関し「期間」を定めるべき、と考えるが、警視庁の見解を伺う。

回答(警視庁)
  警視庁においては、事実関係を正確に把握し、適正に対処するため、必要な事実調査を行っているところです。個々の事案は、その態様が千差万別であることから、その調査に要する期間にも違いが出てきます。
  したがって、報告書の作成に関し「期間」を定めることは、正確な事実確認に支障を来すものと考えています。

回答(東京消防庁)
  事故報告書の作成に当たっては、厳正な調査による正確な事実関係の把握と確認が前提となります。
  事故の事実調査は、個々の事案によってその態様が異なるものであり、一律に期間を定めることはできないものと考えています。

質問事項
 二 DPF装置の虚偽申請問題について
  1 三井物産は、DPF装置のデータを改ざんして虚偽申請を行っていたことが判明した。なぜ、許可する時に、都が独自に検査しなかったのか伺う。

回答
  DPF装置の指定に当たっては、装置の指定を申請する者に対し、公的機関等で実施された排出ガスの試験結果の提出を求め、粒子状物質減少装置指定審査会の審査を経て、指定することとしており、本件においても、この手続に従ったものです。
  都は、今回のような事件の再発を許さないため、DPF装置の新規指定に際しては、東京都環境科学研究所での測定を行うなど、効果的な対策を講じていきます。

質問事項
 二の2 平成15年1月の長崎での性能確認実験では、環境局職員2名が立会のため出張していたが、「船釣り」の接待を受けていたことが判明した。職員に対しての研修・教育が行われていたと考える。研修・教育内容について伺う。

回答
  職員に対する研修として、職員が公務の理念と公務員の基本姿勢を認識すること及び汚職等非行の根絶をめざすことを目的に汚職等防止研修を実施しています。
  その内容については、汚職及び非行の定義・実態・発生要因等についての知識を付与し、その根絶のための方法や心構えについて考え、公務員としての自覚をより強いものとすることとしています。
  また、職員に対して、服務規律の厳正を指導しているほか、夏季及び年末に職員全員に対し、改めて、服務規律の徹底を図っています。

質問事項
 二の3 現在、環境確保条例違反車が2万台以上走っている。環境局は、都民の不利益解消を第一に考え、現実的な対応を早急に取るべきであるが、見解を伺う。

回答
  都は、平成16年12月24日に三井物産株式会社製DPF装置の指定を取り消しましたが、ユーザー保護の観点や公共交通及び物流の確保の観点から、取消しの日までに装着された装置については、当分の間、取消しの効力は及ばないものとしました。
  都は、三井物産に対し、代替品との無償交換や、車両の買換えが必要なユーザーへの対応を早期かつ着実に進めるよう、強く求めています。

質問事項
 三 一日理事・一日参事の制度について
   都は一部の勧奨退職者に対し「一日理事昇任基準」「一日参事昇任基準」を規定しているが、このような慣習は廃止すべきである。見解を伺う。

回答
  一日理事及び一日参事という制度については、給与上の効果を伴うものではありませんが、重要かつ困難な職にあり成績顕著な職員の入都以来の長年の労に報いるものです。

質問事項
 四 水質検査の料金について
   都が行う井戸水の水質検査料金は、民間と比べ13倍も高い。一般の水質検査は民間に任せ、都は行政検体に特化し都民からの水質検査を断るべきであるが、見解を伺う。

回答
  都では、東京都健康安全研究センターにおいて、行政検体に係る各種試験検査を実施しています。
  ただし、井戸の所有者が井戸水の水質検査を行うに当たって、公的な機関での検査を希望する場合があるため、行政検体の検査業務に支障のない範囲内で対応しています。

質問事項
 五 行政財産使用許可、使用料免除の実態について
  1 本庁舎内には喫茶コーナーがあるが、職員が利用できるのは昼の休憩時間、午後の休息時間だけである。喫茶コーナーの必要性を伺う。また、廃止すべきであるが見解を伺う。

回答
  喫茶コーナーは職員のリフレッシュのための施設として設置しており、必要な福利厚生施設と考えています。

質問事項
 五の2 本庁舎内には旅行相談所が5ヶ所あり、旅行業者が5社入居しているが、その必要性を伺う。また、廃止すべきであるが見解を伺う。

回答
  旅行相談所については職員の旅行の態様に応じて適切に設置しており、必要な福利厚生施設と考えています。

質問事項
 五の3 喫茶コーナー、旅行相談所は?東京都福利厚生事業団に無償貸付されているが、福利厚生事業団は旅行代理店から売上手数料を徴収している。福利厚生事業団から使用料を徴収すべきであるが見解を伺う。

回答
  喫茶コーナー及び旅行相談所の使用料については、東京都行政財産使用料条例の規定に基づき、これまでも、職員の福利厚生を目的とする施設として免除しています。

質問事項
 六 東京消防庁の制服について
   東京消防庁の制服の変更に関して、その理由、マイナスシーリングの対象かどうか、制服軽量化の費用、について伺う。また、予算の使い方が違うと考えるが見解を伺う。

回答
  今回の制服の変更は、国の「消防吏員服制基準」が平成13年4月1日に改正されたことなどに伴い実施したものです。
  制服の作成に係る費用は、シーリングの対象であり、新しい制服の作成もこの範囲内で実施するため、従来の制服の更新時期が到来したものから順次切り替えています。
  また、予算の執行については、常に適正かつ効果的・効率的な執行に努めています。

質問事項
 七 監理団体の情報公開について
   情報公開請求に対し非公開とした東京都下水道サービス株式会社、東京水道サービス株式会社、東京臨海熱供給株式会社の所管局は、指導を行うべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  都は、東京都情報公開条例の趣旨を踏まえ、「東京都監理団体情報公開モデル要綱」を公益法人、株式会社別に提示し、監理団体が自主的・主体的に情報公開に取り組むよう指導してきました。
  これにより、各団体は、情報公開要綱を策定し、開示手続など必要な規程を整備しています。都では、今後とも、各団体の情報公開が要綱に沿って適正に行われるよう、指導していきます。

平成16年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  河野百合恵

質問事項
 一 東京都の男女平等参画施策について

一 東京都の男女平等参画施策について
  1975年の国際婦人年を契機に、男女差別撤廃、女性の地位向上のための気運が国際的に大きく高まりました。
  1976年から1985年は、平等、発展、平和の「国連婦人の10年」と位置付けられ、1976年、日本政府が「婦人問題に関する国内行動計画」を発表、1978年には東京都が「婦人問題解決のための東京都行動計画」を策定しました。
  1999年、国は「男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任を分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現は、緊急な課題となっている」として男女共同参画社会基本法を制定しました。東京都も2000年に、「東京都男女平等参画基本条例」を制定し、2002年には新たに「男女平等参画のための東京都行動計画、チャンス・アンド・サポート」が策定されました。
  「チャンス・アンド・サポート」は、基本理念として、〔1〕男女が、性別により差別されることなく、その人権が尊重される社会、〔2〕男女一人一人が、自立した個人としてその能力を十分に発揮し、多様な生き方を選択できる社会、〔3〕男女が家庭生活および社会活動に対等な立場で参画し、責任を分かち合う社会を掲げています。この理念は貴重なものでありますが、行動計画策定時に疑問が出されたのは、実効性の有無でした。
  1978年から1999年までに4回にわたり策定された都の行動計画は、都が取り組むべき各事業の実施時期や、重点推進事業について、いつまでにどれくらいやるという数値目標が示されていたのに比べて、「チャンス・アンド・サポート」には、明確な達成目標値があるのは、国が地方自治体に要請している「審議会等への女性委員の任用促進」だけです。具体的な男女平等達成のための目標値があいまいなままでは、実効性が保障されない、との意見が出されたのは当然です。
  今、男女平等参画の要求が高まっているなかで、都が行動計画に掲げた理念を尊重し、その実現へ努力しているかどうかが、問われています。残念ながら、石原知事が都知事に就任した後のこの数年は、東京都の男女平等参画施策の位置付けは後退の一途をたどっていると言わざるをえません。
  「チャンス・アンド・サポート」が策定された2002年の12月、都は長年にわたって男女平等参画社会実現の先進的役割を果たしてきた東京都女性財団を、広範な都民の反対を押し切って廃止してしまいました。また、2003年には、「男女平等推進基金」も廃止されました。
  都が調査している「区市町村の男女平等推進施策一覧」も、まとまった冊子として都民に提供されなくなり、平等を求めて女性が裁判を起こした場合に経済的な支援を行なう訴訟支援制度も打ち切られました。
  その上、石原知事は、性による差別をなくし男女の平等をめざしている「ジェンダーフリー」の考え方を曲解して「極端でグロテスクな主張」という発言を行ない、公式用語への使用を禁止することを決めるなど、強権的な対応をしています。2001年、知事が女性週刊誌の対談記事で行なった「文明がもたらした最も悪しき有害なものはババアなんだそうだ。女性が生殖能力を失っても生きているのは無駄で罪」との発言は女性達を傷つけ、怒りをよんでいます。不妊治療を受けても子どもに恵まれなかったある女性は「望んでも子どもを授からなかった悲しみが、知事の発言を聞いてさらに深くなった。自らの存在が否定された思いだ」と語っています。この問題では、447人の女性達が石原知事に公開質問状を提出しましたが、未だに知事からは何の回答もされていません。日本弁護士連合会の人権擁護委員会は、2003年12月、会長名で知事に対し「これらの発言は女性に対する暴力であり、人格的に侮辱し差別する発言であり、発言を撤回し謝罪することを求める」と警告をし、合わせて詳細な調査報告書を出しています。
  全国的には、男女平等社会の実現をめざすこれまでの取組みを妨げる「バックラッシュ」と呼ばれる流れが強まっていることが憂慮されています。このような流れの先頭に立つ役割を果たしている石原知事の、女性の尊厳を蹂躙する考え方は、性による差別をなくして、男女がお互いの人権を認め尊重しあう社会づくりをめざす国内および世界の流れに逆行するものです。
 1 そこで伺います。知事は「東京都男女平等参画基本条例」や都の行動計画「チャンス・アンド・サポート」の理念を遵守すべき立場にあります。知事の女性の人権をふみにじった発言は、条例の理念に明らかに反します。都民に対し、謝罪、撤回することをあらためて求めます。お答えください。
 2 この間に後退、廃止になった諸施策について復活を求める要望が寄せられています。特に、都が1999年に試行した訴訟支援制度は、資力のない女性達への支援策として活用され、大事な制度であったことから、復活について強く要望されています。東京都は「2000年から国の民事法律扶助制度に引き継がれたから、復活は考えていない」との態度に終始しています。DV被害など女性達の相談を受けている弁護士さんなど関係者からは、法律扶助協会の民事法律扶助制度だけでは女性達の救済が難しいと意見が寄せられ、都の制度が必要だと要望されています。こうした要望を踏まえて、男女平等に関連しての訴訟支援を都として設けるよう求めるものですが、お考えをお示しください。
 3 男女平等施策を推進するためには、調査や啓発の事業の充実も重要です。都民にむけての情報提供を、できるだけ多面的に十分に行なうことが都の責務でもあります。かつて都は、広く都民にむけて「区市町村の男女平等施策一覧」など多くの資料を発行し、啓発の面でも力を注いでいました。
   現在はインターネットの普及で、生活文化局のホームページには、「区市町村の男女平等施策一覧」も含め情報が公開されています。しかし、ホームページに載せただけでは、インターネットを使っていない人への情報提供は限られたものになってしまいます。
   都が継続的に調査してきた区市町村の男女平等推進施策など、大切な情報が都民に届けられるよう、冊子も含めた資料の発行を復活させるなどの努力を求めます。いかがでしょうか。
 4 内閣府の調査によると、東京都の審議会等における女性委員の比率はこの数年間、下がり続けています。知事が就任した1999年度は25.2%でしたが、2000年度・24.6%、2001年度・24.3%、2002年度・22.8%、2003年度・21.7%と毎年度、減少しています。東京都は、H16年度までに女性委員の比率を35%まで引き上げるという目標をもっているにもかかわらず、逆に減り続けているのは、看過できない問題です。
   全国では、掲げた目標にむけて女性委員の比率を高めています。鳥取県では、2005年・40%の目標でしたが、既に2002年度で40.7%に到達し、青森県は2000年・30%の目標を達成して2003年現在で、36.3%に到達しています。東京都の取り組みの弱さは歴然としています。
   東京都では、なぜ審議会等での女性委員の比率が下がってしまっているのでしょうか。目標値にむけての比率を高める努力はどのようにされているのでしょうか。また、今後、男女平等参画基本条例に基づき、女性委員の数を増やし、目標をひきあげていくことが重要だと考えます。いかがでしょうか。合わせてお答えください。
 5 女性が政策決定の場に参画する機会を拡大することが望まれています。東京都は幹部職員に占める女性の比率は全国でも高い位置にあるとされています。しかし、局長級の女性職員は、2003年度から一人もいなくなり、女性副知事の登用も実現していません。都政のあり方を定める政策決定の場に女性に力が生かせるよう、副知事や局長に女性の登用を進めることを提言します。お考えをお示しください。
 6 また、庁内における男女平等推進会議は、知事がトップになり、条例と行動計画に基づいて総合的な参画を推進していく役割を果たすことができるよう位置付けを高めることを求めるものですが、いかがでしょうか。
 7 働く場における男女格差是正は、この数年、賃金や昇進の男女格差を無くそうと立ち上がった女性たちによって、新しい歴史のページが開かれつつあります。芝信用金庫、住友電工、野村証券で働く女性たちが次々と差別撤廃の勝利判決を勝ち取ったことは大きく評価されているところです。
   しかし現実には、まだ多くの職場で、女性であるが故の差別が残されています。賃金や昇進の差別だけでなく、セクシュアルハラスメントなどの問題も女性たちを苦しめています。また、家庭や地域社会にも女性の尊厳を損なう差別が数多く残っています。そして、こうした問題を相談し救済する場を見つけることができないでいる女性たちが少なくありません。公的な機関による相談および救済が、女性たちの願いになっています。
   目黒区では、区の条例で「男女平等・共同参画オンブーズ」を設置し、区民から、男女平等・共同参画の社会づくりの推進を阻害する事項についての申し出や、人権侵害などについての救済の申し出があった場合、適切かつ迅速に処理するしくみがつくられています。オンブーズは、申し出に基づき、関係機関や関係者等に対して、資料の提出、事情の聴取、説明などの要請をすることができ、必要な是正の勧告や助言、指導、意見の表明などできる権限をもっています。また、独立して職務にあたることも定められています。
   都民からは、格差是正や人権擁護のために、労働基準監督署なみの勧告、指導権限をもった機関をつくってほしいとの意見が寄せられています。東京都の「男女共同参画基本条例」の第七条では、「都民などの申し出」について定められており、知事への申し出ができることになっています。条例が審議された当時、わが党は、申し出の規定だけでは不十分であることから、オンブズパーソン機能としての第三者機関の設置を求めました。条例ができて5年が経過しようとしていますが、都民からの申し出に対して公正な立場に立ち、専門性をもって救済にあたる第三者機関は、東京都ではいまだに設置されていません。目黒区のオンブーズは歓迎されています。
   東京都でも、条例や行動計画で定めた男女平等実現の実効性を高められる権限を有する第三者機関を速やかに設置するよう求めます。お答えください。
 8 国連の「女子差別撤廃条約」の選択議定書は、男女差別の実態と是正を求める個人が通報できる権利を保障し、国連としての調査団を派遣できることが定められています。「女子差別撤廃条約」の効力をより高められることから、現在、60を越える国が選択議定書の批准を済ませています。日本政府は、共同発議国になりましたが、批准はしないまま今日に至っています。
   選択議定書の批准については、参議院において国際婦人年連絡会の女性団体が提出した請願が採択されています。選択議定書が批准されれば、国連による救済の道が開かれ、各分野での男女格差是正が前進することは明らかです。
   東京都が国に対して、男女平等参画を推進する力となる選択議定書の批准を早期に行なうように、強く働きかけていただくことを求めるものですが、いかがでしょうか。

平成16年第四回都議会定例会
河野百合恵議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 東京都の男女平等参画施策について
  1 知事の女性の人権をふみにじった発言は、東京都男女平等参画基本条例の理念に明らかに反する。都民に対し、謝罪、撤回することを求める。答弁を求める。

回答
  ご指摘の件については、既に都議会の質疑において発言に至る経緯や趣旨を答弁したとおり、謝罪、撤回の必要はないと考えています。

質問事項
 一の2 廃止された訴訟支援制度は、復活要望が強い。また、民事法律扶助制度だけでは救済が難しいとの意見もある。男女平等に関連して訴訟支援を都として設けるべきであるが、見解を伺う。

回答
  都が平成11年度に試行した男女平等に関する訴訟支援制度は、平成12年の民事法律扶助法の制定に伴う国の民事法律扶助制度の充実等を踏まえ、本格実施を見送ったものです。
  また、平成16年5月に成立した総合法律支援法に基づき、民事法律扶助も含めた総合的な法律支援を行う日本司法支援センターの設立が予定されており、都として独自の制度を設ける必要はないと考えます。

質問事項
 一の3 男女平等施策を推進するには、調査啓発の充実が重要である。都が調査してきた区市町村の男女平等推進施策などの情報が都民に届けられるよう、資料発行の復活などを求める。所見を伺う。

回答
  都の男女平等参画施策については、区市町村の男女平等参画施策推進状況も含め、毎年度、継続して調査を実施し、その結果を東京都のホームページで公表しています。
  また、東京ウィメンズプラザニュースや啓発用パンフレットを発行するなど、必要に応じて都民への情報提供に努めています。

質問事項
 一の4 都の審議会等での女性委員の比率が下がっている理由、比率を高める努力について伺う。また今後、女性委員の数を増やし目標をひきあげていくことが重要である。所見を伺う。

回答
  審議会等における委員の選任に当たっては、それぞれの審議会等の設置目的に沿って、専門性、適格性などを総合的に勘案し、女性委員の任用に努めています。
  今後も、専門分野の人材発掘や関係団体への協力依頼などにより、審議会等の設置目的に沿った女性委員の任用促進に努めていきます。

質問事項
 一の5 都の政策決定に女性の力が生かせるよう、副知事や局長へ女性を登用すべきであるが見解を伺う。

回答
  副知事及び局長級職員については、重要な施策を実現するために、男女の別なく最も適した人材を選任しています。
  また、副知事については、議会の同意を得て任命しています。
  副知事及び局長級職員の選任については、今後とも、その職に最も適切な人選を行いたいと考えています。

質問事項
 一の6 庁内における男女平等推進会議は、知事がトップとなり、総合的な施策を推進していく役割を果たせるよう位置づけを高めるべきである。所見を伺う。

回答
  男女平等参画推進会議は、東京都の男女平等参画に関する施策を総合的かつ効果的に推進するために設置しているものです。
  この会議は、施策の推進に関わる課題等について具体的な検討が可能となるよう、それぞれの施策を直接に所管する各局の部長を委員とし、生活文化局長を座長として運営しています。
  今後とも、各局との連携を図り、施策の推進に努めていきます。

質問事項
 一の7 都でも、目黒区のように、条例や行動計画で定めた男女平等実現の実効性を高められる権限を有する第三者機関を速やかに設置すべきであるが、所見を伺う。

回答
  都民からの申出、苦情等に関しては、東京ウィメンズプラザや労働相談情報センターなど、都の各機関や相談窓口がそれぞれの専門分野に応じて相談を受け対応しています。
  今後とも関係機関の連携及び協力体制の確保により、適切な対応に努めていきます。

質問事項
 一の8 都は、国連の「女子差別撤廃条約」の選択議定書の批准を早期に行うよう、国に対し強く働きかけるべきであるが、所見を伺う。

回答
  女子差別撤廃条約の選択議定書については、平成16年7月、国の男女共同参画会議の専門調査会からも、批准の可能性について早期に検討する必要があるとの報告が行われ、現在、関係省庁において検討中であると聞いています。
  都としては、今後も国における検討を見守っていきます。

平成16年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  清水ひで子

質問事項
 一 子育て支援の充実について

一 子育て支援の充実について
 1 子育てネットワークについて
   核家族化の進行や地域コミュニティが希薄化するなかで、子育て家庭の育児の孤立化が指摘され、子育ての悩みや不安を気軽に話せるネットワークづくりが重要になっています。八王子市によせられた子育て相談件数は、1997年に767人だったものが、2003年には2,878人と、3.75倍に増加しています。
   在宅の子育てを支援するために、八王子市では、子ども家庭支援センターを拠点施設として整備し、親子ふれあい広場、子育て学習会、子育て相談室などの取り組みをすすめており、子育てネットワークづくりの貴重な場となっています。八王子市はさらに、地域に密着したきめ細かい子育て支援を展開するために、子ども家庭支援センターの分館1号を2004年度に整備し、2号、3号館を05年度、4号、5号館を06年度に整備していく予定です。
   2003年第2回定例会に提出した私の文書質問で、子ども家庭支援センターの整備促進を求めた質問に対し、都の回答は、「平成16年度までに全区市町村への設置を進める方針です」というものでした。しかし、平成16年(2004年)11月末現在の整備状況は、都内62区市町村のうち44区市町51か所にとどまっています。
  ア そこでまず、地域における子育てを支える総合的な拠点である子ども家庭支援センターを全区市町村に設置する目標を、いつまでに達成するのか明らかにしていただきたい。
  イ 子ども家庭支援センターの全区市町村設置の目標を早期に達成し、希望する自治体では2か所目、3か所目の整備をすすめること、さらに人口10万人に1か所、都内120か所ていどの新たな整備目標をつくり、整備促進をはかる必要があると思いますが、見解を伺います。
  ウ 子ども家庭支援センターを実施する区市町村に対する都の支援は、1か所につき補助基準額1700万円の2分の1の850万円を、常勤2名非常勤1名の配置のための運営費として補助をおこなうものです。これに対し、多摩市長会では毎年の予算要望で、「補助基準額が1700万円と定額となっているが、各センターの活動状況及び配置人員など実態が反映され、超過負担が生じないよう制度の見直しをはかられたい」と要望しています。
    市長会の、この要望をどううけとめているのですか。
  エ 整備を促進するとともに、子ども家庭支援センターの事業内容をさらに充実するために、都の支援の強化を求めるものです。
  オ また、八王子市が推進している分館型、サテライト型をはじめ小規模型への補助の創設が必要です。お答え下さい。
  カ 子育てサークルに対する支援も重要です。
    東京都は、児童館や保育所の機能を活用して、子育て相談、子育ての啓発等を実施する「子育てひろば」事業を、都内500か所に整備する計画ですすめてきましたが、現在、A型(都独自事業)300か所、B型(国事業名「地域子育て支援センター事業」)20か所の状況です。整備促進を求めるものです。
    同時に、私がとくに重視する必要があると思うのは、国が2002年度に創設した「つどいのひろば事業」です。これは、おもに0歳から3歳の乳幼児をもつ子育て中の親が気軽に交流できる機会を提供する子育てサークルなどに対し補助をおこなうものですが、都は1年遅れて03年度から「子育てひろばC型」として事業を開始しました。スタートの遅れもあり、全国76か所に対し、東京は港区、板橋区の2か所にとどまっています。04年度に7か所ふやす予算はついていますが、いまだ執行されていません。
    都として、児童館や保育所の活用を前提としない「子育てひろばC型」(国事業名「つどいのひろば事業」)の重要性を、どう認識しているのですか。
  キ 「子育てひろばC型」(つどいのひろば事業)に対し、多くの子育てサークルから熱い期待がよせられています。早期に全区市町村に広げていく必要があると考えますが、答弁を求めます。
  ク 同時に「子育てひろばC型」(つどいのひろば事業)の補助対象は、社会福祉法人とNPO法人にかぎられており、社会福祉法人、NPO法人以外の民間子育てサークルも対象にしてほしいとの切実な要望もよせられています。
    たとえば八王子市内のある子育てサークルは、生後3か月から1歳半までの赤ちゃん体操、親子リズムは1歳から幼稚園に入るまでの幼児が対象の親子リズムに取り組んでいます。赤ちゃん体操では、ベビーマッサージをしながら、手足を動かしたり、音を聞いたり、無理のない乳児向けの体操をして、皮膚の刺激やお母さんの笑顔、優しい声が、赤ちゃんとお母さんの結びつきを深めていきます。親子リズムでは、リズム体操で親子のスキンシップを大切にし、さらに手遊び、集団遊び、絵本の読み聞かせ、工作、外遊びなど、多彩な活動を展開しています。こうした取り組みのなかで、子育ての情報交換や悩みの交流も自然なかたちですすんでいきます。お父さんの参加も歓迎しています。
    サークルに参加した母親は、つぎのように体験を語っています。
    --私は転勤族です。身内も知り合いも、頼る人もないまま各地を転々と引越ししてきました。寂しさと緊張でやりきれなくなっていたときに、このサークルに出会いました。幼い子どもを抱えていろいろと出かけたり、遊びにチャレンジする事は実はものすごく難しいことです。買い物に行くだけでも家出のような荷物になるし、人に迷惑をかけることのストレスも本当につらいことです。でもサークルはみなが子連れで気兼ねが不要。子どもたちが喜んだのはリズム体操。もう目をきらきらさせ汗をいっぱいかいてチャレンジする姿はすごいなーの一言でした。参加していくうちに私の肩の重みがスーと抜けていきました。笑顔が戻ってきました。「泣いたっていいんじゃない」「ケンカしたっていいよ」。子どもはそうやって大きくなるもの。当たり前なことを素直に受け止められたこのサークルとの出会いは神様からの贈り物だった。そう思って感謝しています。
    以上、紹介したのは、数多くの子育てサークルのほんの一例です。このほかにも、子育てサロンをはじめ、貴重な取り組みが、都内各地で展開されています。これらの子育てサークルは、市民センター、公民館、町会会館などを会場にしていますが、場所の確保や会場費の負担が、共通した悩みとなっています。
    こうした、法人格をもたない小規模な子育てサークルを支援するため、「つどいのひろば事業」の補助対象をひろげるよう国に要望するとともに、都独自に「子育てひろばC型」の補助対象をひろげることもふくめ、何らかのかたちで場所の提供、会場費等の補助などの支援をおこなうことを提案するものです。お答え下さい。
  ケ また、多摩市長会は、「子ども家庭在宅サービス事業補助として、子育てグループの育成・支援子育て講座等の開催など、在宅の子育て支援事業に対する補助制度を創設されたい」と要望しています。
    区市町村が取り組む子育てグループの育成・支援事業に対する都の経常的な補助制度を、ぜひ創設していただきたい。見解を伺います。
 2 学童クラブについて
   働く親たちが安心して働きつづけることができる、なくてはならない場所として学童クラブがつくられ、都は1965年に補助要綱にもとづく事業を開始しました。そして学童クラブは、多くの関係者のねばりづよい運動のなかで、1998年に放課後児童健全育成事業として法制化されました。しかし、核家族化や共働き家庭の増加などにより希望者は増えつづけているのに対し整備が追いついていないことや、国が設置・運営の最低基準をしめしていないうえ、国庫補助がきわめて貧弱なことなど、課題は山積しています。
   東京都は、国よりもはるかに先駆けて学童クラブの整備にとりくんできた先人たちの努力の結果、小学校数比の設置率は95%と全国最高ですが、依然として待機児童は増えつづけており、いっそうの整備促進が急務となっています。
  ア 都福祉局(当時)は2004年3月末に、「次世代育成支援行動計画」の子育て支援事業にかかわるガイドラインを区市町村にしめしたなかで、学童クラブについて「待機児童が平成15年には1590人に増加しており、早急に解決すべき課題である」と指摘し、「待機児の解消」に留意して計画を策定するよう求めています。区市町村に求めるのであれば、まず東京都として、学童クラブの待機児解消にむけ、増設をすすめる都の姿勢を明確にすべきと考えますが、答弁を求めます。
  イ また、策定をすすめている「東京都次世代育成支援行動計画」のなかで、学童クラブの待機児解消にむけた整備計画の数値目標、さらに年次計画と予算の裏づけを明確にしめす必要があると考えますが、見解を伺います。
  ウ 東京の学童クラブは、待機児が増えているだけでなく、大規模化していることも深刻な問題です。多摩地域では、1学童クラブの平均児童数が50人を超えている自治体が22自治体におよびます。小金井市には9つの学童保育所がありますが、40人から100人の定員で、半数近くの学童クラブで定員を超えて児童を受け入れている状態です。その結果こども一人あたりの面積が0.9平方メートルから1.0平方メートルという学童クラブも存在しています。これが、学童クラブにとって適正な状態だと考えますか。お答え下さい。
  エ このような問題が、なぜ生まれるのか。それは、国が設置・運営の最低基準をしめしていないだけでなく、東京都も補助要綱で、指導員を2人以上配置する、設備は衛生、安全、適切な遊び場を確保するとだけ定めているだけで、必要な床面積や、指導員1人に子ども何人という基準をしめしていないからにほかなりません。
    私は、全国ではじめて県として学童クラブの設置・運営基準をさだめた埼玉県に行き、話を直接聞いてきましたが、たとえば学童保育のスペースを生活(休息・遊び・学習など)する児童1人につき設備部分を除いて1.65平方メートル(畳1畳分)以上の広さを確保することをはじめ、運営内容、施設・設備、指導員の業務などの基準が具体的にしめされています。これは、市町村や学童クラブ当事者団体との検討を重ね、意見を十分に聞いて策定されたことも重要です。
    私は、学童クラブに全国に先駆けて取り組んできた東京都が、児童1人あたりの必要な床面積、適正規模、指導員1人あたりの児童数をはじめとした学童クラブの設置・運営基準を、明らかにすることを求めるものです。
  オ 都は、1965年に定めた補助要綱が、都としての設置・運営基準にあたるものとの見解を表明していますが、少なくともその内容を、充実・強化する必要があるのではありませんか。
  カ 学童クラブの当事者団体が、設置・運営基準の必要性をくりかえし訴えていることを、東京都はどううけとめているのですか。お答え下さい。
  キ また、国に対して、放課後健全育成事業の設置・運営の最低基準を明確にしめすよう求める必要があると思いますが、見解を伺います。
   内閣総理大臣主宰の「少子化への対応を考える有識者懇談会」が1998年だした提言では、「対象年齢の拡大、実施時間・期間の充実、実施箇所の増、生活空間の改善、指導員に係わる資格制度の創設」など学童保育の充実を図ることを、「早急に検討・実施すべき」事項としています。この内容を、国と自治体が、ただちに具体化すべきです。
   学童クラブの基準がないまま、指定管理者制度への移行や、全児童対策事業との統合などが次々推進されている事態に、都として歯止めをかけることをつよく求めて、質問を終わります。

平成16年第四回都議会定例会
清水ひで子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 子育て支援の充実について
  1 子育てネットワークについて
   ア 平成16年11月現在、子ども家庭支援センターの整備状況は、都内62区市町村のうち、44区市町にとどまっている。全区市町村に設置する目標をいつまでに達成するか、伺う。

回答
  区市町村が実施主体である子ども家庭支援センターは、地域の子育てを支える総合拠点であり、都としては全区市町村への設置を促進してきました。
  今後とも、全区市町村において早期に設置されるよう積極的に働きかけていきます。

質問事項
 一の1のイ 子ども家庭支援センターの全区市町村設置の目標を早期に達成し、二ヵ所目三ヵ所目の整備を進め、さらに新たな目標をつくり整備促進を図る必要があるが、見解を伺う。

回答
  子ども家庭支援センターは、子どもと家庭に関する総合相談窓口など、区市町村における子育て支援のネットワークの中核となる拠点であり、都は各区市町村に原則1か所整備されるよう支援していきます。

質問事項
 一の1のウ 子ども家庭支援センターを実施する区市町村への都の支援について、市長会から超過負担が生じないよう制度の見直しを求める要望がなされているが所見を伺う。

回答
  子ども家庭支援センターの補助基準額については、実施要綱で配置を定めている職員の人件費を基準として算定しています。
  地域の実情にあわせた事業展開については、実施主体である区市町村で対応するものと考えます。

質問事項
 一の1のエ 子ども家庭支援センターの整備を促進するとともに、事業内容を充実するため、都の支援を強化すべきだが、所見を伺う。

回答
  従来の子ども家庭支援センターの機能に児童虐待の予防的取組や地域における見守り機能を加えた先駆型子ども家庭支援センターを平成15年度に創設し、制度の充実を図っています。

質問事項
 一の1のオ 八王子市が推進している分館型、サテライト型をはじめ小規模型への補助の創設が必要であるが、所見を伺う。

回答
  八王子市が実施している分館型・サテライト型は、「子育てひろば事業B型」として補助を既に行っています。
  なお、平成17年度の重点事業として、町村における児童相談体制の整備を支援するため、新たに小規模型子ども家庭支援センターを創設することとしています。

質問事項
 一の1のカ 「子育てひろば事業」について、都は、児童館や保育所の活用を前提としない「子育てひろばC型」の重要性をどう認識しているのか、伺う。

回答
  親子が気軽に参加できるよう、保育所や児童館のほか、商店街の空き店舗・学校の余裕教室等、多様な場所で「子育てひろば事業」を展開することは、重要であると考えています。

質問事項
 一の1のキ 「子育てひろばC型」に対し多くの子育てサークルから期待が寄せられている。早期に全区市町村に広げていく必要があるが、所見を伺う。

回答
  子育てひろばについては、実施主体である区市町村が地域の実情にあわせて、設置を進めていくものであり、都としては、引き続き区市町村の取組を支援していきます。

質問事項
 一の1のク 法人格をもたない小規模子育てサークルを支援するため、補助対象拡大を国に求めるとともに、都独自に補助対象拡大を含め何らかの支援を行うべきであるが、所見を伺う。

回答
  法人格をもたない小規模子育てサークルヘの補助対象拡大は、考えていません。
  なお、子育てサークル支援については、区市町村の子ども家庭支援センターが行う「地域組織化活動事業」において、ボランティアの育成及び地域の子育てサークルや子どもに関わる活動グループ等に対しての支援を実施しています。

質問事項
 一の1のケ 区市町村が取り組む子育てグループの育成・支援事業に対する都の経常的な補助制度を創設すべきであるが、見解を伺う。

回答
  都は、区市町村が実施する子ども家庭支援センター事業において、子育てグループの育成や支援を行う「地域組織化活動」を補助の対象としています。

質問事項
 一の2 学童クラブについて
    ア 都は区市町村に対し、学童クラブの待機児解消に留意した計画策定を求めているが、まず都として、増設をすすめる姿勢を明確にすべきである。所見を伺う。

回答
  学童クラブ事業については、事業の実施主体である区市町村が地域の事情を的確に把握し、整備、運営を行っています。
  都は、これまで、運営費の補助を行うとともに、福祉改革推進事業の活用などにより、学童クラブの設置促進に努めています。

質問事項
 一の2のイ 策定を進めている東京都次世代育成支援行動計画では、学童クラブの待機児解消に向けた整備計画の数値目標などを明確に示す必要があるが、見解を伺う。

回答
  学童クラブ事業については、実施主体である区市町村において、ニ―ズ調査などに基づく目標事業量を設定するよう助言しています。
  こうしたことも踏まえながら、東京都次世代育成支援行動計画を策定し ます。

質問事項
 一の2のウ 多摩地域では、1学童クラブの平均児童数が50人を超えている自治体が22あり、子ども1人あたりの面積が1平方メートルというところもある。これが適正な状態だと考えるか、伺う。

回答
  学童クラブ事業については、国及び都の要綱を踏まえ、実施主体である区市町村が地域の実情に応じて実施しています。

質問事項
 一の2のエ 都は児童1人あたりに必要な床面積など、学童クラブの設置・運営基準を明らかにすべきであるが、所見を伺う。

回答
  都は、国に先駆けて昭和40年に「学童保育事業運営要綱」を定めています。

質問事項
 一の2のオ 都は1965年に示した補助要綱が設置・運営基準にあたるとしているが、その内容を充実・強化する必要がある。所見を伺う。

回答
  都は、昭和40年に「学童保育事業運営要綱」を制定し、その後児童福祉法の改正に伴い、平成10年に「学童クラブ事業実施要綱」に改めるなど、設置・運営基準については、適宜、適切に必要な改正を行っています。
  また、学童クラブ事業運営費補助要綱に基づき、登録児童数加算など、国の基準に上乗せをして補助を行っています。

質問事項
 一の2のカ 学童クラブの当事者団体が、設置・運営基準の必要性をくりかえし訴えていることを、都はどう受け止めているのか伺う。

回答
  東京都学童保育連絡協議会及び三多摩学童保育連絡協議会とは、定期的に意見交換を行っています。
  国及び都の要綱を踏まえ、実施主体である区市町村が地域の実情に応じて運営していくべきものと考えています。

質問事項
 一の2のキ 国に対して、放課後健全育成事業の設置・運営基準を明確に示すよう求める必要があるが、見解を伺う。

回答
  放課後児童健全育成事業については、国の要綱で基準が示されています。

平成16年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  小松恭子

質問事項
 一 東京都のハンセン病施策について
一 東京都のハンセン病施策について
  私は本年第2回定例会で、ハンセン病施策について一般質問を行いました。その後、議会局の協力も得ながら、全国47都道府県のハンセン病施策の取り組みや知事の訪問状況、議会質問など調査しました。
  今回の調査をもとに、前回の質問と今回の調査をふまえ、今後の都のハンセン病施策の拡充を求めるものです。
  あの2001年5月の「ハンセン病国家賠償請求訴訟」全面勝利によって、原告の方々は人間の尊厳を取り戻し、それぞれの幸せを求めて歩める権利を確保しました。
  しかし、隔離政策によって受けた心の疵は深く、療養所内で暮らす方も、退所して地域社会で生活する方々も、心の痛みに耐えて生きています。
  現在、全国の療養所には3800人弱の入所者がいて、平均年齢78歳を数え、入所期間は平均50年近くになるとのことです。そして療養所を退所して社会復帰している方々は、厚生労働省情報では、1300名ですが、その内、裁判勝利後の退所者は約200名です。
  しかし、そのほとんどの方は、ハンセン病回復者であることを公にせず、故郷から遠く離れた土地で暮らしているのです。それは、家族や親戚が結婚や就職に支障を来たし、家業にも影響するからだということです。退所者は言うに及ばず、元患者であったことを隠してずっと暮らしています。中には、肩身の狭い思いをさせたくないとの配慮と、家族の破綻を恐れるあまり、子どもにも、結婚相手にも病気を隠し、明かしていない方もおります。このように、現状は、判決によってもたらされた理想とはほど遠い状況です。
  元患者の方々が、社会統合を実現していくために果たすべき国と地方自治体の責任は重大です。
  1923年に病原菌発見50周年を記念し、フランスのストラスブールで開催された国際会議で「きわめて感染力の弱い感染症で、隔離乃至僻地の隔離妥当ならず」と世界各国へ患者の強制隔離を解くように勧告しましたが、日本では逆に、その8年後の1931年から法律を改定し、それまで家庭で療養していた患者の地域での治療を禁止し、全ての患者を療養所へ強制収容を開始したのです。全国の市町村役場に「らい病は恐ろしい伝染病」とデマを吹聴させ、パンフレットまで作って患者の密告を推奨したのです。
  「無らい県運動」の推進者は事実上地方自治体でした。
  その目的は、「らい」の存在を文明国の恥辱とし、「国辱病」を生む患者の絶滅を目的とした公衆衛生と無縁のものでした。このことに対し、熊本地裁の判決文は次のように述べています。
  「わが国の絶対隔離政策は、戦前に確立された。そこでは、公衆衛生という見地からではなく、ファッシズムと結びついた国辱論、民族浄化論を思想的背景として徹底した患者の収容取締りが行われた。即ち、強制隔離を定めた旧法を制定し、ハンセン病が恐ろしい伝染病であるとの徹底した恐怖宣伝をしつつ、無らい県運動を推進し、未収容患者を次々と収容し、しかも厳格に患者と社会との交通を絶ったのである。
  この政策遂行過程において、一般の人々にはハンセン病は恐ろしい伝染病であるという誤った認識を与え、これまでなかった感染の恐怖というハンセン病に対する新たな差別偏見を作出・増強した」(第3章第1節より)
  この判決文を見れば、国と地方自治体の果たした加害責任は明瞭で、その修復の責務を負っていることに異論を挟む余地はないと思います。その加害を自覚した全国の知事は、いち早く1996年「らい予防法」の廃止後即刻に、また2001年の熊本地裁判決後に療養所へ直接赴き謝罪をしています。
  今回の調査によれば、全国47道府県の中で、33府県知事が療養所を訪れ、そのほとんどが謝罪の表明を行っています。特に、県内に療養所のある県知事はくり返し訪問し、数回から、最も多い熊本県知事は13回も訪問しています。そしてこれら知事の多くが、当時の県議会の代表質問や一般質問に答えて、国家賠償訴訟の判決を高く評価し、地方自治体の最高責任者として、深い反省と謝罪の表明をしています。例えば、熊本県の潮谷知事は、「私たちは、この患者・元患者の方々へお詫びの気持ちを表すということ、これはもう本当に大事なことという風に、私も認識しております。」また、沖縄県の稲嶺知事は「患者・元患者のお気持ちを察するところに心のそこから本当に心で持ってお詫びを申し上げるものでございます」、兵庫県の井戸知事は「一国の機関委任事務として法律の施行に当たってきた知事の立場として、心からお詫び申し上げたいと存じます」と、それぞれ述べています。
  しかし、残念ながら石原知事は、一度も、療養所を訪ねることなく、前回の私の質問に「都の責任においてすべきことがあって急に訪問しなければならない状況とは考えていない」と、現時点での全生園訪問を拒否されました。そして、「入所者の皆さまに対して、都としてすべきことはしてまいっております」と明言されております。
  そこで、改めて伺います。
 1 石原知事としては、あの2001年の熊本判決をどう受け止め、どう認識されているのでしょうか。また、地方自治体のトップとしての責任、反省や謝罪を求めるものですが、所見を伺います。
 2 石原知事が知事として公式訪問することの重み、都職員の一般訪問との違いなど、どのように認識されているのでしょうか。また、都職員が訪問していれば、知事の訪問は必要ないというのでしょうか。
 3 確かに国の施策であり、国の法律によって隔離政策で著しい人権侵害が行われたわけですが、「無らい県運動」という名のもとに、国と一体となって、隔離政策を推し進めてきた東京都の責任も免れないではありませんか。だからこそ、全国の県知事が、特に療養所のある知事は熊本県知事のように13回も訪問しているのです。都内に療養所を有しながら、一度も訪問していないのは、東京の石原知事だけです。
   知事が、「都から国に取り次ぐべきことがあれば、その労を決していとうものではない」とおっしゃるなら、まずは、地元の全生園に足を運び、入所者の生の声をしっかり聞くことから始めるべきです。改めて、知事の訪問を心待ちにしている全生園への訪問を求めます。お答え下さい。
 4 第2回定例会の答弁で、都の職員が定期的に訪問して都としてすべきことはしているとのことでしたが、これですべきことはしていると言えるのでしょうか。
   今回の全国調査でも、全国46道府県は各々それぞれに様々な施策に取り組んでいる状況が明らかになっています。東京都も第2回定例会での回答や今回の調査回答にあるように、人権教育や講演会、啓発活動など、また都出身者の郷土訪問等取り組んでいますが、他県と比べても決して十分なものとは言えません。特に、入所者や退所者など元患者の方々への支援策に欠けます。
   都は、過去の責任を自覚し、快癒した入所者が退所を希望するときには、住宅、医療、介護、福祉的措置の速やかな対応を求めるものです。
   例えば、住宅問題では、最近起きている具体例として、私のところに相談に見えた「多磨全生園」入所者で70歳のご夫妻が退所を希望し、都営住宅を申し込みましたが、何回応募しても外れています。
   民間住宅は、どこでも高齢と重度障害のためことごとく断られ、社会復帰できずにいます。「住宅さえあれば、明日にでも退所できるのに‥」と悔しさをかみしめています。こうした壁に突き当たっている方々は、まだ他にも多くいらっしゃるとのことです。
   第2回定例会の答弁では、都営住宅の入居資格を50歳未満の単身者も可能としたとのことですが、具体的には50歳未満の入所者は存在していません。高齢者や障害者がほとんどの入所者の社会復帰に当たっての第一の支援は住宅提供支援です。全国では、熊本をはじめ何県かが、県営住宅の優先入居を実現、希望すればいつでも入居が認められています。東京都とはあまりにも異なります。「今後とも都営住宅への入居が適切に行われるよう努めてまいります」(同答弁)というなら、全生園退所者の都営住宅への優先入居制度を実施すべきです。答弁を求めます。
 5 東京都は、社会復帰された方々への医療も歴史的な経緯から国の責任において取り組むべきとしていますが、社会復帰した元患者への医療は、国にのみまかせるのでなく、せめて、都立病院ではどこでも、ハンセン病専門の医師を置き、元患者の方々が安心して医療が受けられるよう支援すべきです。
   ハンセン病治療経験のない民間医療機関ではなかなか治療してもらえない、結局は全生園まで来なくてはならないと嘆いておられます。この医療間題が解決しないと結果的には高齢化により療養所へ再入所する例が後を絶ちません。
   退所者への医療支援として都立病院への専門医の配置、民間医療機関への研修実施などにとりくむこと、医療費の無料化を実施すべきですが、所見を伺います。
 6 退所希望者は誰でも社会復帰できる生活全般の保障とともに、安定した社会生活が営める福祉制度の確立が求められています。国へ求めることとあわせ、都も独自の支援策を横断的に検討することを求めます。所見を伺います。
 7 その第一歩として熊本など他県がやっているようなハンセン病施策課などを設け、生活相談窓口の開設を求めます。所在地の東村山市とも相談し、市と一体となって気兼ねなく相談できる窓口の設置をおこない、M・S・WやS・W、時には弁護士など専門職の方々の派遣を求めるものですが、いかがですか。
 8 これまでのハンセン病の個人施策は東京都出身者に限って行われていましたが、全生園の方々は全て東京都民であり、出身地によって施策の対象から外すのは、重大な差別といわざるをえません。今後の支援策は、少なくとも全ての全生園在住者および元在住者を対象とすべきですが、答弁を求めます。
 9 大切なのは、国、自治体が過去の加害責任を自覚し、回復者の真の人権を取り戻すために力を尽くすことです。特に教育分野での取り組みが重要であり、都も、教育長が「学校教育におきましてさまざまな人権課題について認識させることは重要で」と答弁されていますが、実態は人権教育プログラムとしての学校教育編の中に、エイズなど一緒に2ページから3ページの量で、指導事例を掲載しているに過ぎません。他県、例えば熊本県などは、ハンセン病副読本として冊子があり、小中、高それぞれ学年目標をたて、授業時間を割いて人権教育として位置づけています。
   都も、これから先進的な県に学び、学校教育での人権教育の一環としてハンセン病問題をしっかり位置づけ、ハンセン病副読本をつくることを提起します。
 10 これらハンセン病施策を都施策の中に位置づけるには、その予算が都はあまりにも貧弱すぎます。今回の調査結果を見る限り、全国でも予算が突出しているのは、やはり県内に療養所を有する県です。16年度予算では、沖縄が3,477万2,000円、熊本が2,109万3,O00円、大阪が1,824万円、岡山が1,389万5,000円となっています。
   これに対し、東京都の16年度予算は、282万3,000円(啓発事業を除く)で決して十分とは言えません。大幅な増額をすべきです。
 11 今、地元では、入所者、自治会と市、市民が一体となって「人権の森」として残して欲しいと、大きな運動が広がっています。最初は大木一本なかったこの園に、患者の方々が金を出し合い、一本一本、木を植え育て、今や3万本にもなっているのです。青々とした緑は、入所者の方々が丹誠込めて育てあげた木々なのです。
   国が勝手にしなさいというのではなく、入所者や市などと話し合い、その声を国に要望していく都としての努力をすべきと思いますが、答弁を求めます。

平成16年第四回都議会定例会
小松恭子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 東京都のハンセン病施策について
1 知事は、2001年の「ハンセン病国家賠償請求訴訟」判決をどう受け止め、認識しているのか伺う。また、地方自治体のトップとしての責任、反省や謝罪を求めるが所見を伺う。

回答
  ハンセン病患者の強制隔離や外出制限などを定めていた、らい予防法の存在自体が、差別、偏見を生み出したことから、基本的には国の責任において対応すべきものと考えています。

質問事項
一の2 知事として全生園を公式訪問することの重み、都職員の一般訪問との違いをどう認識しているのか、都職員が訪問していれば知事の訪問は必要ないというのか、伺う。

回答
  現在、都職員が年3回程度定期的に訪問するなど、都としてすべきことはしています。

質問事項
 一の3 知事の訪問を心待ちにしている全生園への訪問を求める。所見を伺う。

回答
  熊本地裁の判決があった際には、知事の名代として副知事が療養所を訪問し、入所者の労苦をねぎらい、亡くなられた方々の冥福を祈る言葉をお伝えしています。
  現在、都の責任において緊急に訪問しなければならない状況とは考えていません。

質問事項
 一の4 全生園退所者の都営住宅への優先入居制度を実施すべきである。所見を伺う。

回答
  「全生園退所者」の都営住宅への入居についてでありますが、「ハンセン病療養所入所者等」の入居資格については、既に、50歳未満の者でも単身で都営住宅に入居できることとしたほか、収入基準も心身障害者や高齢者と同じ水準まで引上げを行ったところです。
  今後とも、都営住宅への入居が、適切に行われるよう努めていきます。

質問事項
 一の5 療養所退所者への医療支援として、都立病院への専門医の配置、民間医療機関への研修実施、医療費の無料化を実施すべきであるが、所見を伺う。

回答
  都は、これまでも、医療機関へのハンセン病に関する啓発に努めています。
  医療費助成等の対策は、歴史的な経緯から国の責任において取り組むべきものと考えています。

質問事項
 一の6 退所希望者が安定した社会生活を営める福祉制度の確立が求められている。国へ求めることとあわせ、都も独自の支援策を横断的に検討すべきであるが、所見を伺う。

回答
  都は、療養所退所者の方々への施策の拡充について、国へ働きかけを継続するとともに、療養所からの退所を希望される方々からの生活に関する相談に応じています。

質問事項
 一の7 療養所所在地の東村山市と一体となり、生活相談窓口の設置、専門職の派遣を求めるが、所見を伺う。

回答
  都は、既に、療養所入所者及び退所者の方々への相談窓口を設置し、市町村や保健所と連携をとりながら生活相談を行っています。

質問事項
 一の8 これまでのハンセン病の個人施策は東京都出身者に限られていたが、今後の支援策は、全ての全生園在住者および元在住者を対象とすべきである。所見を伺う。

回答
  ハンセン病対策は、過去の歴史的経緯から、基本的には国が対応すべき問題と考えています。都は、全国の療養所に入所している都出身者の方々に対して、郷土訪問等社会交流事業を行うなど、引き続き支援を行っていきます。

質問事項
 一の9 学校教育での人権教育の一環としてハンセン病問題を位置付け、熊本県のようにハンセン病副読本をつくることを提起するが、所見を伺う。

回答
  学校教育において、児童・生徒に人権尊重の理念を正しく理解させ、様々な人権課題について認識させることは重要であると考えています。
  都教育委員会は、東京都人権施策推進指針に基づき、人権教育プログラム(学校教育編)の中に、ハンセン病患者等への理解を図るための指導事例を掲載し、今後の学習指導に継続して活用できるよう、都内公立学校の全教員に配布してきました。
  今後とも、この指導事例を活用し、研修会や学校訪問等を通して、ハンセン病患者等への理解について啓発を図り、人権教育の一層の推進に努めていきます。

質問事項
 一の10 都のハンセン病施策の予算額は、療養所を有する他県の予算額に比べ、決して十分な予算額とは言えない。大幅に増額すべきだが所見を伺う。

回答
  予算額の多寡については、療養所入所者家族援護費の対象者の有無、出身入所者数等、各県の置かれた個別の状況によるものであり、単純に比較することは適当でないと考えます。

質問事項
 一の11 入所者や市などと話し合い、「人権の森」として残して欲しいという声を国に要望していく都としての努力をすべきであるが、所見を伺う。

回答
  多磨全生園は国立の施設であり、今後のあり方につきましては、国が適切に対処すべきものと考えています。

平成16年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  古館和憲

質問事項
 一 マンションの震災対策について

一 マンションの震災対策について
  大震災に備えて、被害を最小限に防ぐマンション対策について質問します。
  首都直下地震について「いまは静穏期から活動期の段階に入った」といわれています。東京の直下型地震は、文字通り「政治・経済の中枢をおそうスーパー都市災害」となることが予測され、直接、間接の被害あわせてその被害額が百兆円にも達するとされています。
  まもなく、阪神大震災が10年をむかえますが、その大震災での特徴の一つが、マンションにたいする大きな被害でした。被災地神戸などで多くの建物の震災復旧に関わってきた建築家などの専門家は、阪神・淡路大震災の教訓の一つが、被害を受けたマンションについて、「事前にほんの少し補強されていたならば、どれほど被害が少なくてすんだだろうか」とのべ、「耐震補強によってマンションの耐震性は大幅に改善できる」ことを強調しています。
  首都直下の大地震が「活動期に入った」といわれているなかで、いまこそ阪神・淡路大震災での、マンション被害から教訓を学び、「減災」の立場から早急に対策を講じることがきわめて重要となっています。
  また、都心部を中心に超高層マンションの建設も急増しており、直下型地震にくわえ、先の新潟県中越地区大地震でも発生した長周期波振動や液状化への備えも急がれています。
  都内には100万戸を超すマンションがあると言われ、都の報告でも約70万戸あるとされ、このうち建築後30年以上たつマンションが20万戸を超えているとされています。
 1 そこで、第一に、中央防災会議が発表した「首都直下型地震」の予測などをふまえて、東京を最大級の大地震が襲った場合の、マンションの被害の想定をおこなう必要があると考えます。見解をもとめます。また、その際、これらのマンションの悉皆調査をおこない、都として都内マンションの状況を正確に掌握することがかかせませんが、あわせて答弁をもとめます。
 2 先日、私は横浜市におもむいて、マンション対策の事業を調査してきました。同市では、阪神・淡路の被害の教訓から、木造個人住宅だけでなく、震災に強いマンションを目標に、昭和56年以前のマンションを対象に、耐震診断支援事業を実施しています。地震に強いマンションにするためのメニューが、耐震補強を促進するためには「まず耐震診断」だとして、本診断(精密診断)の一つ前の診断として、本診断の必要性の判定を行う予備診断を行っています。すでに対象マンションの七割で予備診断を終えているとのことですが、予備診断がすすんでいる理由として、マンション管理にあたっている理事会の合意(総会ではない)で、理事長が申請することで開始すること。また、マンション居住者に負担はなく、国の補助を利用して国・市それぞれ折半で支出しているとのことです。このことによって、みずからのマンションの健康状態が大まかにつかめ、かつ、震災対策にも関心が集まるとのことでした。
   これにたいして、東京都では耐震診断も耐震補強もおおきく立ちおくれているのが現状です。それは、東京都の場合、維持管理や修繕・建替えは「管理組合や区分所有者が主体となって行なうことが基本」だとして、都の支援策の中心を「ガイドブック」の作成や、「分譲マンション相談マニュアル」の作成などにとどめ、相談業務についても、区や市の仕事だとして、都民の相談を直接受けることをせず、区市から寄せられるものに限定しているからです。しかも、耐震補強に関する問題などは、都の施策としてもまったく視野に入っていないというのが実態です。これでは、耐震の備えがすすまないのが当然です。
   そこで、東京都として耐震診断制度を創設すること、横浜市などが行っているマンションの耐震補強支援事業を独自に行なうことを求めますが、どうでしょうか。
 3 また、これらのとりくみを実効あるものにしていくためには、耐震補助とあわせて融資など資金面での支援との組み合わせが大事です。横浜市の場合、耐震改修を実施するマンションのために、「マンション共用部分リフォーム融資」として、融資限度額100万円に戸数分を掛けた額で、5000万円を限度とし、無利子で10年返済、無担保でしかも単独融資というものです。都としても同様かそれ以上の融資制度が、いまこそ強く求められています。
   横浜市のような、マンションの耐震補強のための長期、無利子、無担保、単独融資などの創設をおこなう必要があると考えますが。それぞれ答弁をもとめます。
 4 神戸などでは、マンションの被害で、「中破」以上の被害をうけた多くが、老朽化や保守管理の問題もありますが、とりわけ、1971年の「構造規定」の改正前の建物で被害が目立っているのが特徴とされています。このうち、一般建築のマンションでは10数パーセントの被害率ですが、ピロティ形式の建物では、実に三分の一以上が倒壊をふくむ大被害をうけました。しかも、このピロティ形式の建物被害は、その建築年代に限らず一般のマンションの2倍から3倍も被害をうけていることが指摘され、耐震上のリスクがきわめて大きいことが明らかにされています。
   震災対策の専門家からは「被害の軽減こそ首都の危機管理だ」として「減災」対策にこそ力をいれるべきだとの声が広がっているなかで、都が、ピロティ形式のマンションが、どこにどのくらいあるかなどが正確にわからないなどは、心もとない限りです。
   そこで、まず、ピロティ形式のマンションの実態を掌握するとともに、その対策を早急に講じることが必要と考えますが、見解を伺います。
 5 超高層マンションなどが急増するもとで、地震による家具の転倒、飛来の被害の増大が予想されています。
   とりわけマンションにおける家具転倒などによる被害のおそれとその対策の必要についての啓発、必要な転倒防止器具の開発などが急がれていると考えます。家具の転倒防止については、消防庁が新たなとりくみをはじめていますが、その概要を伺います。
 6 都が2001年まで開設していた飯田橋不動産相談窓口では、不動産とりわけ、分譲マンションにかかわる相談をうけ、マンション居住者にとって頼りがいのある相談室として、また気軽に相談ができると相談室として好評でした。当時、私も直接当所をおとずれ、相談業務の状況を見聞させていただきましたが、話を聞く暇もないくらいのひっきりなしの電話で、忙しく応対していました。ところが、いまは区や市からの紹介で、しかも、専門家の対応が必要と判断されたものだけ受け付けるものへと様変わりし、気軽に相談できるものではなくなっています。
   今日のマンションの急増、老朽マンションの増大のもとで、耐震診断や維持・管理、補強・修理などの相談、管理組合がかかえる問題は急増し、深刻さを増しています。いまこそ都として「いつでも、どこからでも」対応できる相談窓口が待たれています。都民や管理組合などが気軽に相談できる相談室を、都としてあらためて設置することを求めるものです。答弁をもとめます。

平成16年第四回都議会定例会
古館和憲議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 マンションの震災対策について
  1 中央防災会議が発表した「首都直下型地震」の予測などをふまえて、東京を最大級の地震が襲った場合のマンションの被害想定をおこなう必要があるが、見解を伺う。
    被害を想定する際、マンションの悉皆調査をおこない、都として都内マンションの状況を正確に掌握することがかかせないが、見解を伺う。

回答
  都が平成9年8月に公表した被害想定では、建物については、構造、建築年代、階数別に区分し、500mメッシュごとに整理した建物棟数データに、ゆれと液状化の要素を加え、被害を想定しています。
  今回、国の「首都直下地震対策専門調査会」が公表した被害想定は、都の被害想定と比べ、地震の規模、風速などの設定条件が異なるため、一概に比較は難しいが、総体としては大きな相違はありません。
  専門調査会は平成16年度内に残された経済被害などの想定を公表する予定であり、都としては、これらも踏まえて被害想定の見直しについて検討していきます。
  こうしたことから、マンションに限った被害想定及び悉皆調査については、行う考えはありません。

質問事項
 一の2 都として、マンションの耐震診断制度を創設すること、横浜市など行っているマンションの耐震補強支援事業を行うことを求める。所見を伺う。

回答
  マンションの耐震補強については、既に、共用部分を対象とするマンション改良工事助成制度において支援しています。
  なお、耐震改修工事を行うために耐震診断を実施する場合には、その費用についても対象としています。

質問事項
 一の3 横浜市のような、マンション耐震補強のための融資制度を創設する必要があるが、所見を伺う。

回答
  マンションの耐震補強については、既に、マンション改良工事助成制度において支援しています。

質問事項
 一の4 ピロティ形式の建物は耐震上のリスクが大きいことが明らかにされている。ピロティ形式のマンションの実態を掌握するとともに、対策を早急に講じるべきであるが、見解を伺う。

回答
  昭和56年以前に建築された建物や1階がピロティの建物などについては、進んで耐震診断を受けるよう、パンフレットや窓口において普及啓発しています。
  今後とも、耐震診断・耐震改修が適切に行われるよう普及啓発に努めていきます。

質問事項
 一の5 マンションでの家具転倒などによる被害のおそれと対策の啓発、転倒防止器具の開発などが急がれている。家具の転倒防止について消防庁が新たなとりくみをはじめているが、その概要を伺う。

回答
  東京消防庁では、新たな取組として、平成16年10月18日に学識経験者と家具の業界団体等で構成する「家具類の転倒・落下防止対策推進委員会」を設置し、家具転倒防止対策の普及・推進のあり方や転倒防止器具の有効性などの検討を行っています。

質問事項
 一の6 マンションの耐震診断などの相談や、管理組合がかかえる問題は急増している。都民や管理組合などが気軽に相談できる相談室を、都として設置すべきであるが、所見を伺う。

回答
  マンションの維持管理に関する相談については、都が相談マニュアルや維持管理ガイドブック等を作成し、それに基づいて地域に身近な区市町村が具体的な対応を行っています。
  また、都は、分譲マンション管理アドバイザー制度を創設し、「(財)東京都防災・建築まちづくりセンター」において専門家の派遣を行っているほか、区市町村から依頼があった場合には、都が、弁護士や建築士による専門相談も行っています。

平成16年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  和田宗春

質問事項
 一 新型インフルエンザと都立病院の今冬期のインフルエンザ対策について

一 新型インフルエンザと都立病院の今冬期のインフルエンザ対策について
 1 新型インフルエンザ対策について
   今年、鳥インフルエンザで死亡した人はタイ、ベトナムで32人になる。
   WHOの発表によると、鳥インフルエンザにより処分された家禽は昨年末から1億2千万羽にのぼるとされている。
   このウィルスはH5N1という型で発症者は、日常的に鶏などに接触していて大量にウィルスを浴びたことが原因といわれている。
   人から人への感染が疑われる例もあるという。H5N1が変異して人に感染するようになると恐ろしい結果になる。これがいわゆる新型インフルエンザである。
  ア その有力なシナリオは「遺伝子再集合」であるといわれているが、このメカニズムはどのようなものなのか。
  イ 新型ウィルスに対してわれわれ人間は免疫を持っていない。
    そこでWHOは流行が始まれば6ヵ月以内にまん延、最悪の場合世界人口の3割、約18億人が感染、700万人が死亡する可能性があると試算している。
    厚生労働省の専門委員会が今年8月にまとめた報告書によると、日本国内の患者数は最大2,500万人にのぼるとしている。
    都の人口は全国の約1割であるから、この10分の1の250万人の都民が罹患することになる。
    新型インフルエンザについて都福祉保健局ではどのような研究と対策を考えているのか。
 2 都立病院の今冬期のインフルエンザ対策について
   12月に入りインフルエンザの流行が危険視されつつある。厚生労働省の調査では、20都道府県のうち少なくとも911医療機関で予防接種のワクチンが在庫切れとなっていることが判明した。12月8日には昨シーズン医療機関が買い占めした結果、品不足になった教訓から製薬会社に100万本は出荷せず備蓄しておくように指導していたものを解禁している。
   100万本のワクチンのうち89万本を出荷させた。
   福祉保健局は今冬、都内ではA香港型が主に流行し、平均的規模で例年より早い時期からの流行が予想されると公表している。
  ア 都立病院ではここ数年の経験から、ワクチンの需要をどう予想しているのか。またその確保は確実になされているのか。
  イ インフルエンザによる高齢者の死亡率が高くなってきているといわれる。
    それも短期間に衰弱していく例が多いといわれている。
    年代別の死亡率の変遷はどのようになっているのか。
  ウ とくに都立病院として高齢者にはどのような配慮をしているのか。
  エ インフルエンザ対策の広報をどのように実施してきているのか。

平成16年第四回都議会定例会
和田宗春議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 新型インフルエンザと都立病院の今冬期のインフルエンザ対策について
  1 新型インフルエンザ対策について
   ア 鳥インフルエンザウィルスは「遺伝子再集合」という現象により人から人へと感染するウィルスに変異するといわれているが、このメカニズムはどのようなものか伺う。

回答
  インフルエンザウイルスは増殖する際に、遺伝子がいったん分裂し、再び集合します。このため、豚や人間が鳥インフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスに同時感染した場合、体内で両ウイルスの遺伝子が混合され、ヒトインフルエンザウイルスの人間への強い感染力と鳥インフルエンザウイルスの高病原性を併せ持つ、新型インフルエンザが出現する可能性があると考えられています。

質問事項
 一の1のイ 新型インフルエンザについて、福祉保健局ではどのような研究と対策を考えているのか伺う。

回答
  都は、従来から都内医療機関等の協力を得て、インフルエンザウイルス性疾患の発生動向や都民の抗体保有状況の把握を行うとともに、鳥インフルエンザについても発生を厳重に監視しています。これにより、新型インフルエンザの発生を迅速に捉えるよう常に警戒しています。
  平成16年9月には、新型インフルエンザを含む新興感染症対策に係る予防計画を策定しました。今後、平成16年12月に設置した新興感染症対策会議において、新型インフルエンザに係る具体的な行動計画を策定する予定です。

質問事項
 一の2 都立病院の今冬期のインフルエンザ対策について
    ア 都立病院では、ここ数年の経験から、インフルエンザワクチンの需要をどのように予想しているのか、また、その確保は確実になされているのか伺う。

回答
  厚生労働省では、毎年2月中旬にWHOが発表している「北半球次シーズンに対するワクチン推奨株」を参考にわが国の事情を総合的に検討し、今冬におけるインフルエンザワクチンの確保を図っています。
  都立病院におけるインフルエンザワクチンについては、厚生労働省の需要予測や近年の流行の状況とそれ以前の実績を踏まえ、ワクチンの必要量を的確に確保しています。

質問事項
 一の2のイ インフルエンザによる年代別の死亡率の変遷はどのようになっているのか伺う。

回答
  東京都人口動態統計によると別表のとおりです。

質問事項
 一の2のウ インフルエンザ対策について、都立病院として、高齢者にはどのような配慮をしているのか伺う。

回答
  高齢者は、インフルエンザに罹患した場合には重症化することが多いので、十分注意する必要があります。このため、都立病院では、特に高齢の患者さんに対して、個々の症状や希望を踏まえ、うがい、手洗いなど予防措置の励行を指導するとともにインフルエンザワクチンの予防接種を受けることを勧めています。

質問事項
 一の2のエ インフルエンザ対策の広報をどのように実施してきているのか伺う。

回答
  都は、毎年、流行期前にインフルエンザ流行予測を公表するとともに、予防接種を勧奨するなど都民に対して注意喚起を行っています。
  さらに、流行期間中には、定期的に「東京都インフルエンザ情報」を発行し、保健所、医療機関の窓口やホームページを通じて、広く都民に流行状況等をお知らせしています。

平成16年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者  吉田信夫

質問事項
 一 米軍再編計画と米軍基地撤去について
 二 警察大学校跡地の広域防災拠点としての整備について

一 米軍再編計画と米軍基地撤去について
  東京都には、戦後60年が終えようとしながら、いまだに米軍横田基地、赤坂プレスセンター、多摩サービス補助施設をはじめ8箇所の米軍基地がおかれ、約1603ヘクタールが基地として占有され、米兵は軍属を含め約4200名が駐留するという状態がつづいています。世界の首都で、このような外国軍隊の基地が多数おかれるという事態は他にありません。
  こうした米軍基地は、沖縄県、神奈川県をはじめ、他県に存在する米軍基地と一体となって、アメリカによるイラクヘの無法な侵略戦争への出撃、物資輸送の拠点となるなど、平和を求める都民の願いに逆行する役割を果たしおり、都民の安全を脅かす存在ともなっています。
  重大なことは、米軍基地が、最近のアメリカの米軍基地再編計画によって、アジアにとっても、都民にとっても、ますます危険な存在となろうとしていることです。
  ブッシュ大統領発言や米国防報告などでも、米軍再編計画の基本的ねらいが、在日米軍基地を、司令部機能の強化をはじめ、地球規模での戦力投入の拠点としての機動的役割と作戦地域をいっそう拡大すること、さらに日米共同での海外での軍事作戦を視野において、米軍と自衛隊との一体化をすすめようとしていることは明白です。
 1 知事は、米軍再編計画をどのように認識していますか。
 2 沖縄、神奈川県など基地をかかえる他県と共同し、米軍再編計画による在日米軍基地機能の強化に反対し、米軍基地の撤去の声を政府および米政府にあげるべきではありませんか。
 3 世界の米軍基地のなかで、欧州や韓国では駐留米軍の削減・縮小が具体化されるなかで、逆に日本は削減計画がないばかりか、基地機能が強化されようとしています。その背景には、日本政府が一貫してアメリカに追随し日米軍事同盟強化の路線をとっていることにあります。知事は、こうした日本政府の態度を当然視するのですか。
 4 米軍再編計画では、横田基地に関しても、横田基地にある米第5空軍司令部とグアムの第13空軍司令部との統合や、さらに府中にある航空自衛隊の司令部の横田基地への移転による、米軍と自衛隊との共同使用計画がとりざたされ、自衛隊との一体化による横田基地の機能強化がはかられる危険性も新たに生まれています。
   知事は、横田基地の返還への「過程」の課題として、民間機による横田基地の使用を提案し、政府との協議や米軍への働きかけを行っていますが、返還それ自体について、政府及び米政府からなんらかの言明を得ているのですか。
 5 軍民共有化は、基地返還への「過程」どころか、米軍再編と連動し横田基地の固定化につながるものです。
   しかも横田基地の軍民共有化という計画自体、昭島市、瑞穂町など隣接する自治体からは同意できないとの態度が示されており、周辺自治体の一致した要求は米軍横田基地の返還です。この一致した1点で自治体、都民をあげた共同の力で返還を迫るべきではないですか。
 6 返還後の利用については、民間空港の可否も含め、あくまでも地元自治体との合意が前提であり、都民的な合意が必要と考えますが、いかがですか。
 7 また、約200ヘクタールの広さをもつ多摩サービス補助施設の返還も急務です。返還にむけたはたらきかけの経過及び返還の見通しはどのようになっているのですか。
 8 米軍基地再編という新たな事態への対応とともに、アメリカによるイラクヘの侵略戦争の長期化、泥沼化にともなって、整備不良などによる米軍機の墜落事故や緊急着陸などの事件は、沖縄県だけでなく東京都内及び周辺でも急増しており、都民の安全を確保するうえからも、首都の米軍基地による事故の危険にどう対応するかが、知事にあらためて問われています。
   米軍機による事故は、杉並区内の中学校に横田基地から赤坂プレスセンターに向うヘリコプターが不時着するという事件をはじめ、これまでも繰り返えされてきました。しかし、今年4月以降でも、最近11月の調布飛行場への米軍ヘリ緊急着陸事件などヘリの緊急着陸3件、艦載機の都内無人島への墜落による米兵4人の死亡事故など、東京周辺の米軍機事故は6件と急増しています。
   今年4月以降の東京周辺における米軍機事故6件について、その概要と原因、及び事件にたいし都としてとった態度と米軍の対応について明らかにしてください。
 9 こうした事故の急増は、イラク戦争への米軍の対応など、最近の米軍をめぐる事態の変化と無関係とは考えられません。事故急増という事態とその背景をどのように認識しているのですか。
 10 米軍機事故の危険性に関連して、あらためて考えなければならない問題が、都心部にある米軍基地赤坂プレスセンターです。
   赤坂プレスセンターのヘリポートは、横田基地からの米軍ヘリが頻繁に離着陸をしており、都内で発生した米軍ヘリ緊急着陸事故のほとんども横田基地と赤坂プレスセンターとの移動の過程でおきています。
   赤坂プレスセンターは、都心の中心地であり、最近の都市開発によって周辺に六本木ヒルズをはじめ超高層ビルが乱立し、基地に接して政策大学院大学、新国立美術館が建設されつつあります。離着陸の失敗がおきれば、多数の人命を奪う大惨事になりかねません。こうした赤坂プレスセンター・ヘリポート基地の危険性についてどのように認識していますか。
 11 米軍基地の設置及び構造的基準は国内法の対象外となっているが、国内用である航空法を適用した場合、安全上認めがたいヘリポートではないですか。
 12 最近の事故多発の状況からみて、赤坂プレスセンターの早期返還を求めるとともに、まず緊急優先課題として米軍ヘリの飛行停止を政府及び米軍に求めるべきではないですか。
 13 赤坂プレスセンターの返還以前にも緊急に解決すべき課題として、米軍が不法にも占有を継続している都立公園用地の返還の課題があります。1983年の都と東京防衛施設局及び米軍との3者協定では、基地の敷地ないでの環状3号線赤坂トンネル工事中にかぎって臨時ヘリポート用地として提供した土地は、工事完了後には現状回復をはかることが合意されていますが、1993年の工事完了から10年以上経過しながらも、いまだに米軍が占有を続けています。
   協定をふみにじって平然としている米軍の横暴な態度への、都の対応が問われています。対米従属といえる事態を放置することなく、協定違反の不法占拠として法的手段も含めた断固とした対応をとるべきと考えます。とれないというならその理由を明らかにすべきです。
  以上お答えください。
二 警察大学校跡地の広域防災拠点としての整備について
  中野区及び杉並区にかかる警察大学校跡地は、13.7ヘクタールと広く、区部の市街地に残された貴重な大規模用地です。この大規模用地がどのように利用されるかは、中野区民にとどまらず、杉並区をはじめ周辺都民にも大きな影響を及ぼすものです。
  国は、跡地利用に関して「基本方針」で、「公用、公共用優先の原則」をかかげ、「区部の都市環境及び生活環境の改善に資するよう利用することを基本」とし、配慮する用途の第1として「防災性や快適性を高めるまちづくり」をあげています。
  東京都が、中野区、杉並区とともに、2001年にまとめ、財務大臣あてに提出した「警察大学校等移転跡地の土地利用転換計画案」では、こうした「基本方針」にもとづき、「広域避難場所としての防災機能の充実を図る」ことを目標の第1にかかげ、有効避難地面積を9.8ヘクタールから15.2ヘクタールに拡大することがもりこまれています。
  中越大地震の結果は、あらためて震災対策の抜本的強化を求めており、警察大学校跡地のような広大なオープンスペースはまさに、広域避難場所であるとともに、防災時には有効に活用することのできる広域的な防災公園として整備することの必要性、緊急性を浮き彫りにしています。
  それはまた、周辺住民の願いでもあります。住民団体が実施した杉並区高円寺地域住民へのアンケート調査でも、「既存樹林の保存」「できるだけ広い防災公園の確保」が多数の区民の声でした。
  ところが、中野区では、清掃工場計画が中止となったことを理由に、民間参加による業務、商業、住宅など複合的な都市づくりにむけた検討をはじめ、防災機能は大きく後退させられようとしています。
  しかし、清掃工場の設置計画は中止となりましたが、「土地利用転換計画案」にもられた防災拠点としての「避難地等の整備」という基本方針は、今日でもますます重要と考えます。
 1 区部に残された貴重な大規模用地である警察大学校跡地が、広域的観点からも、防災公園など区部における重要な防災拠点として整備されるよう、東京都として努力していくべきと考えます。
 2 「警察大学校等移転跡地の土地利用転換計画案」では、震災時の総合的な防災拠点として位置付ける必要があるとしており、そのための避難地等の整備方針が示されています。
   この計画案の実現にむけ、地元区が防災公園の整備をおこなう場合の財政的支援など、都としても広域的な観点から責任を果たすべきです。
 3 跡地利用計画の検討、具体化にあたっては、周辺住民に大きな影響をもたらすものであり、中野区、杉並区民の参加が保障されなければなりません。また、東京都、中野区、杉並区との十分な協議がはかられるべきです。
  以上、質問します。

平成16年第四回都議会定例会
吉田信夫議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 米軍再編計画と米軍基地撤去について
  1 知事は、米軍再編計画をどのように認識しているのか伺う。

回答
  昨年8月のブッシュ米大統領の演説によれば、米軍再編の必要性について、「現在の米軍は、ヨーロッパやアジアにおいて、旧ソ連の侵攻から同盟国を守るために配備されたままであるが、新たな脅威に対抗する形で米軍の配備を変える。」としています。
  冷戦終結後、ヨーロッパとは異なり、アジア・太平洋地域には、依然として不確実・不安定な情勢が継続し、日米安保体制が果たす役割がますます重要となっています。米軍に戦略上重要な基地を提供している日本としては、この機を捉え、在日米軍の再編にあたって、我が国の意見を米側に堂々と主張すべきであると考えます。

質問事項
 一の2 基地をかかえる他県と共同し、米軍再編計画による在日米軍基地機能の強化に反対し、米軍基地撤去の声を政府および米政府にあげるべきであるが、所見を伺う。

回答
  冷戦終結後の世界情勢の変化を踏まえ、新たな脅威に対抗するため、世界的な米軍再編が進められており、日米の協力関係がますます重要であるとの認識のもと、日米両政府間で、在日米軍の再編について協議が行われています。我が国の安全保障を図る観点に立てば、単に米軍基地の撤去を求めるべきとの主張は極めて非現実的と言わざるを得ません。

質問事項
 一の3 欧州などでは在留米軍削減が具体化されているが、日本では基地機能が強化されようとしている。その背景には、政府の日米軍事同盟強化がある。知事はこうした日本政府の態度を当然視するのか伺う。

回答
  冷戦終結後の安全保障をめぐる情勢については、欧州とアジアでは大きく異なっていることを認識することが必要です。
  そのうえで、在日米軍の再編については、日本の安全保障上の必要性及び基地が所在する地域の負担軽減の観点から、国の安全保障政策の問題として日米の政府間で協議されるべきものです。

質問事項
 一の4 知事は、横田基地返還の過程として民間機の使用を提案し、政府との協議や米軍への働きかけを行っているが、返還自体についてなんらかの言明を得ているのか伺う。

回答
  横田基地の軍民共用化については、返還までの対策として都から国等に強く求めているものであり、協議の内容については、日米両国政府にかかわる事項でもあり、申し上げることはできません。

質問事項
 一の5 軍民共用化は基地の固定化につながる。隣接自治体から同意できないとされており、周辺自治体の一致した要求は基地の返還である。自治体、都民あげた共同の力で返還を迫るべきであるが、所見を伺う。

回答
  横田基地の軍民共用化は、返還に向けた第一歩であり、国と自治体が連携して、早期に実現すべきものと考えています。

質問事項
 一の6 返還後の利用については、民間空港の可否も含め、地元自治体との合意が前提であり、都民的な合意が必要であるが、所見を伺う。

回答
  現在、返還に向けた第一歩として、横田基地の軍民共用化の実現に向け、地元自治体の理解と協力を求めながら取り組んでいます。

質問事項
 一の7 約200ヘクタールの多摩サービス補助施設の返還も急務である。返還に向けた働きかけの経過及び返還の見通しについて伺う。

回答
  都は国への提案要求において、米軍基地対策の推進を最重点事項のひとつに掲げ、多摩サービス補助施設については、特に具体的な施設名を挙げて、即時返還されるよう必要な措置をとることを、国に強く求めています。
  なお、都は川崎街道の拡幅のために、同施設の土地の一部返還を求め、平成12年12月、約23,000平方メートルの土地が日本側に返還された経緯があります。

質問事項
 一の8 平成16年4月以降の東京周辺における米軍機事故6件について、その概要と原因、及び事件に対する都の態度と米軍の対応について伺う。

回答
  事故については、輸送機の部品落下及びヘルメット落下事故、艦載機の訓練中の墜落事故の計3件が発生しています。原因は、機体の一部損傷等であり、米軍から、必要な部品交換を行うなど事故防止の徹底を図ることが報告されています。
  また、横田基地所属ヘリコプターの緊急着陸が8月から11月までに3件発生しています。米軍からは、機器の故障や誤作動により、事故予防のために着陸したものであり、今後、個々の原因への対応はもとより、安全対策を徹底する観点から、改めて整備手順の見直しを行うとの報告がなされています。
  都では、横田基地の周辺市町と連携して、米軍に対して事故等の原因究明と安全対策の徹底を強く要請してきました。

質問事項
 一の9 米軍機事故の急増は、イラク戦争への米軍の対応など最近の米軍をめぐる事態の変化と無関係とは考えられない。事故急増という事態とその背景をどのように認識しているのか伺う。

回答
  最近の米軍をめぐる状況と米軍機の事故等とが関連するものとは承知していませんが、都としては、事故等が発生した場合には、その都度、原因の究明と安全対策の徹底を米軍に強く要請してきました。

質問事項
 一の10 赤坂プレスセンターは都心の中心地であり、離着陸の失敗がおきれば大惨事になりかねない。赤坂プレスセンター・ヘリポート基地の危険性についての認識を伺う。

回答
  航空機が市街地上空を飛行する場合は、当然、事故防止のための対応が求められることから、米軍に対しては、赤坂プレスセンターのヘリポートの運用を含め、安全対策の徹底を従来から強く求めています。

質問事項
 一の11 米軍基地の設置及び構造的基準は国内法の対象外であるが、赤坂プレスセンターに航空法を適用した場合、安全上認めがたいヘリポートではないのか。所見を伺う。

回答
  航空法の適用のある飛行場については、その設置にあたって国土交通大臣が許可することとなっていますが、航空法が適用されない米軍施設である飛行場について、国土交通省においては、仮に航空法を適用した場合との前提に立っての評価はできないとしています。
  なお、米軍施設の飛行場周辺での建造物の建設にあたっては、安全確保の観点から、必要に応じ、防衛施設庁が米軍と建築主との調整を行うなどの措置が取られています。

質問事項
 一の12 赤坂プレスセンターの早期返還を求めるとともに、緊急優先課題として米軍ヘリの飛行停止を政府及び米軍に求めるべきであるが、所見を伺う。

回答
  都は国への提案要求において、最重点事項として都内米軍基地の整理・縮小・返還の促進を掲げており、赤坂プレスセンターについても、引き続き粘り強く国に働きかけていきます。

質問事項
 一の13 米軍に提供した臨時ヘリポート用地については、三者協定違反の不法占拠として法的手段を含めた対応をとるべきである。とれないならその理由を明らかにすべきであるが、所見を伺う。

回答
  当該用地は国有地であり、米軍への用地の提供は、日米地位協定及び同協定に基づく日米合同委員会での手続きを経て行われています。
  平成10年7月、東京地裁は、同用地に関する都の返還請求権の有無が争点となった裁判において、三者協定を根拠として都に直ちに返還請求権があるとは言えない旨の判断を示しています。
  都としては、三者協定のとおり原状回復の実現が図られるべきとの立場であり、引き続き粘り強く国に働きかけていきます。

質問事項
 二 警察大学校跡地の広域防災拠点としての整備について
  1 警察大学校跡地が、防災公園など区部における重要な防災拠点として整備されるよう、都として努力していくべきであるが、所見を伺う。

回答
  現在、中野区は、警察大学校跡地を含む中野駅周辺地域を対象に、まちづくり計画の策定に向けた検討を行っています。
  都は、当該検討地域のうち中野区役所一帯を、東京都震災対策条例の規定に基づき避難場所として指定しており、今後とも、現在定めている避難場所としての機能が、引き続き確保されるよう努めていきます。

質問事項
 二の2 「警察大学校等移転跡地土地利用転換計画案」では、避難地等の整備方針が示されている。この計画案の実現にむけ、地元区が防災公園の整備を行う場合の財政的支援など、都としても広域的な観点から責任を果たすべきだが、所見を伺う。

回答
  ご指摘の「警察大学校等移転跡地土地利用転換計画案」は、東京都、中野区及び杉並区の共同の案として、平成13年6月に策定したものですが、その後、跡地内に予定されていた清掃工場建設計画の中止等の状況変化が生じており、計画案の見直しが必要となっています。
  このため、現在、地元中野区において、当該跡地を含む区域を対象として、まちづくり計画の策定に向けた検討が進められており、都としては、その状況を踏まえ、必要な都市計画を定めるなど、適切な対応をしていきます。
  なお、区が2ヘクタール以上の都市計画公園を整備する場合には、都市計画交付金の対象となります。

質問事項
 二の3 跡地利用計画の検討、具体化にあたっては、中野区、杉並区民の参加が保障されなければならない。また、都、中野区、杉並区との十分な協議が図られるべきだが、所見を伺う。

回答
  現在、地元中野区が、当該跡地を含む区域を対象として、まちづくり計画の策定に向けた検討を行っていますが、その検討に当たっては、区民検討会、区長との対話集会、隣接する杉並区民を対象とした説明会の開催など、区民参加の手法が取られています。
  今後、都としても、地元区と十分連携しながら、跡地利用を含む計画づくりを支援していきます。

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