平成十六年東京都議会会議録第十一号

平成十六年九月二十一日(火曜日)
 出席議員(百十八名)
一番谷村 孝彦君
二番東村 邦浩君
三番村上 英子君
四番秋田 一郎君
五番矢島 千秋君
六番鳩山 太郎君
七番後藤 雄一君
八番福士 敬子君
九番林  知二君
十番伊沢けい子君
十一番新井美沙子君
十二番相川  博君
十五番河野百合恵君
十六番長橋 桂一君
十七番小磯 善彦君
十八番野上じゅん子君
二十番北城 貞治君
二十一番高橋かずみ君
二十二番山加 朱美君
二十三番小美濃安弘君
二十四番吉原  修君
二十五番山田 忠昭君
二十六番臼井  孝君
二十七番林田  武君
二十九番山口 文江君
三十番柿沢 未途君
三十一番初鹿 明博君
三十二番酒井 大史君
三十三番清水ひで子君
三十四番かち佳代子君
三十五番小松 恭子君
三十六番東野 秀平君
三十七番藤井  一君
三十八番ともとし春久君
四十一番野島 善司君
四十二番真鍋よしゆき君
四十三番松原 忠義君
四十四番田代ひろし君
四十五番三宅 茂樹君
四十六番川井しげお君
四十七番鈴木 一光君
四十八番吉野 利明君
四十九番こいそ 明君
五十番執印真智子君
五十一番花輪ともふみ君
五十二番真木  茂君
五十三番大津 浩子君
五十四番大塚 隆朗君
五十六番古館 和憲君
五十七番松村 友昭君
五十八番丸茂 勇夫君
五十九番木内 良明君
六十番鈴木貫太郎君
六十一番森田 安孝君
六十二番石川 芳昭君
六十三番土持 正豊君
六十四番倉林 辰雄君
六十五番遠藤  衛君
六十六番鈴木あきまさ君
六十七番近藤やよい君
六十八番串田 克巳君
六十九番中屋 文孝君
七十番三原 將嗣君
七十一番樺山たかし君
七十二番田島 和明君
七十三番宮崎  章君
七十四番大西由紀子君
七十五番樋口ゆうこ君
七十六番中村 明彦君
七十七番馬場 裕子君
七十八番和田 宗春君
八十番大山とも子君
八十一番東ひろたか君
八十二番池田 梅夫君
八十三番中山 秀雄君
八十四番大木田 守君
八十五番前島信次郎君
八十六番桜井良之助君
八十七番新藤 義彦君
八十八番星野 篤功君
八十九番いなば真一君
九十一番服部ゆくお君
九十二番古賀 俊昭君
九十三番山本賢太郎君
九十四番立石 晴康君
九十五番清原錬太郎君
九十六番小山 敏雄君
九十七番大山  均君
九十八番大河原雅子君
九十九番田中  良君
百番小林 正則君
百一番藤川 隆則君
百二番坂口こうじ君
百三番曽根はじめ君
百四番渡辺 康信君
百五番秋田かくお君
百六番中嶋 義雄君
百七番石井 義修君
百八番橋本辰二郎君
百九番藤井 富雄君
百十番桜井  武君
百十一番野田 和男君
百十二番野村 有信君
百十三番比留間敏夫君
百十四番大西 英男君
百十五番山崎 孝明君
百十六番佐藤 裕彦君
百十七番川島 忠一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番田中 晃三君
百二十一番藤田 愛子君
百二十二番尾崎 正一君
百二十三番土屋たかゆき君
百二十四番富田 俊正君
百二十五番名取 憲彦君
百二十六番吉田 信夫君
百二十七番木村 陽治君

 欠席議員(二名)
十三番  山下 太郎君
九十番  高島なおき君
 欠員
十四番  十九番  二十八番
三十九番 四十番  五十五番
七十九番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事福永 正通君
副知事濱渦 武生君
副知事大塚 俊郎君
副知事竹花  豊君
出納長櫻井  巖君
教育長横山 洋吉君
知事本局長前川 燿男君
総務局長赤星 經昭君
財務局長松澤 敏夫君
警視総監奥村萬壽雄君
主税局長山口 一久君
生活文化局長山内 隆夫君
都市整備局長梶山  修君
環境局長平井 健一君
産業労働局長関谷 保夫君
建設局長岩永  勉君
港湾局長成田  浩君
交通局長松尾  均君
水道局長高橋  功君
消防総監白谷 祐二君
福祉保健局長幸田 昭一君
下水道局長二村 保宏君
大学管理本部長村山 寛司君
病院経営本部長押元  洋君
中央卸売市場長森澤 正範君
新銀行設立本部長津島 隆一君
選挙管理委員会事務局長高橋 和志君
人事委員会事務局長佐藤  広君
地方労働委員会事務局長久保田経三君
監査事務局長高橋 道晴君
収用委員会事務局長嶋津 隆文君

九月二十一日議事日程第一号
第一 第百八十九号議案
  平成十六年度東京都水道事業会計補正予算(第一号)
第二 第百九十号議案
  特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三 第百九十一号議案
  東京都職員定数条例の一部を改正する条例
第四 第百九十二号議案
  学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第五 第百九十三号議案
  学校職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第六 第百九十四号議案
  東京都教育委員会職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第七 第百九十五号議案
  東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第八 第百九十六号議案
  東京都立学校の授業料等徴収条例の一部を改正する条例
第九 第百九十七号議案
  東京都建築安全条例の一部を改正する条例
第十 第百九十八号議案
  東京都海区漁業調整委員会委員及び東京都内水面漁場管理委員会委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第十一 第百九十九号議案
  東京における自然の保護と回復に関する条例の一部を改正する条例
第十二 第二百号議案
  東京都給水条例の一部を改正する条例
第十三 第二百一号議案
  火災予防条例の一部を改正する条例
第十四 第二百二号議案
  救急業務等に関する条例の一部を改正する条例
第十五 第二百三号議案
  都立葛飾地区総合学科高等学校(仮称)(H十六)改修工事請負契約
第十六 第二百四号議案
  都営住宅十六H─一〇一北(村山)工事請負契約
第十七 第二百五号議案
  多摩大橋鋼けた製作・架設工事(その二)請負契約
第十八 第二百六号議案
  日暮里・舎人線鋼けた製作・架設工事(その二十八)請負契約
第十九 第二百七号議案
  日暮里・舎人線鋼けた及び鋼支柱製作・架設工事(その二十九)請負契約
第二十 第二百八号議案
  地方自治法等の一部を改正する法律による改正前の地方自治法第二百四十二条の二第一項第四号の規定による訴訟に係る費用の負担について
第二十一 第二百九号議案
  工作物収去土地明渡等の請求に関する民事訴訟の提起について
第二十二 第二百十号議案
  多摩川流域下水道野川処理区の建設に要する費用の関係市の負担について
議事日程第一号追加の一
第一 東京都名誉都民の選定の同意について(一六財主議第二八一号)
第二 東京都名誉都民の選定の同意について(一六財主議第二八二号)
第三 東京都名誉都民の選定の同意について(一六財主議第二八三号)

   午後一時開会・開議

○議長(内田茂君) ただいまから平成十六年第三回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(内田茂君) まず、議席の変更を行います。
 議席変更の申し出がありますので、会議規則第二条第三項の規定により、お手元配布の議席変更表のとおり、議席の一部を変更いたします。
(別冊参照)

○議長(内田茂君) 次に、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   十番   伊沢けい子さん 及び
   六十七番 近藤やよいさん
を指名いたします。

○議長(内田茂君) この際、議会局の局長に異動がありましたので、紹介いたします。
 議会局長大橋久夫君。
   〔局長あいさつ〕

○議長(内田茂君) 以上で紹介を終わります。

○議長(内田茂君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(谷村隆君) 平成十六年九月十四日付東京都告示第千四百四号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、同日付で、本定例会に提出するため、議案二十二件の送付がありました。
 次に、平成十六年第二回定例会の会議において同意を得た副知事、出納長、教育委員会委員、監査委員、収用委員会委員及び収用委員会予備委員の任命について、発令したとの通知がありました。
 次に、知事及び監査委員外三行政委員会より、先般の人事異動に伴う東京都議会説明員の変更及び説明員の委任の変更について、地方自治法第百二十一条及び会議規則第四十二条の規定に基づき、それぞれ通知がありました。
 次に、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づき専決処分した訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告がありました。
 次に、監査委員より、例月出納検査の結果について報告がありました。
 また、平成十六年各会計定例監査、平成十五年度執行分の結果について報告がありました。
(別冊参照)

○議長(内田茂君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 第二回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
   〔文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾(一一ページ)に掲載〕

○議長(内田茂君) 次に、先般、副知事、出納長及び教育長に就任されました方々をご紹介いたします。
 副知事濱渦武生君。
   〔副知事濱渦武生君登壇〕

○副知事(濱渦武生君) 副知事再任に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。
 去る六月九日、第二回定例会にて選任の同意をいただき、七月十三日、副知事を拝命いたしました濱渦武生でございます。
 これからも一層都民に喜ばれますよう、石原知事のもと、改革都政実現に尽力してまいります。ご同意をいただきました都議会の皆様のご理解とご支援を期待申し上げまして、ごあいさつといたします。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(内田茂君) 副知事大塚俊郎君。
   〔副知事大塚俊郎君登壇〕

○副知事(大塚俊郎君) 先般の都議会第二回定例会におきまして選任のご同意をいただき、副知事を拝命いたしました大塚俊郎であります。
 もとより微力ではございますけれども、誠心誠意全力を尽くして職責を遂行する決意であります。何とぞご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いを申し上げます。(拍手)

○議長(内田茂君) 出納長櫻井巖君。
   〔出納長櫻井巖君登壇〕

○出納長(櫻井巖君) さきの第二回定例会におきまして選任のご同意をいただき、七月十三日付で出納長を拝命いたしました櫻井巖でございます。
 刻々と変化する社会経済状況の中で、都民ニーズを的確にとらえながら、都政の直面する多くの困難な課題を迅速に解決するために全力を尽くして職務を全うしてまいる所存でございます。都議会の先生方のご指導、ご鞭撻のほどをよろしくお願い申し上げます。(拍手)

○議長(内田茂君) 教育長横山洋吉君。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) さきの第二回定例都議会におきまして教育委員の選任にご同意をいただき、去る七月十三日の教育委員会において教育長に選任され、引き続き教育長の職を務めることになりました横山洋吉でございます。
 これまでの四年間、学校教育の正常化を中心に、東京の教育改革に取り組んでまいりましたが、いまだ道半ばの感がございます。今後とも教育改革に全力で取り組んでまいりますので、都議会の皆様方のご指導、ご鞭撻をいただきますよう、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)

○議長(内田茂君) 以上をもって紹介は終わりました。

○議長(内田茂君) 次に、先般の人事異動に伴い異動のありました説明員の方々をご紹介いたします。
 財務局長松澤敏夫君、主税局長山口一久君、生活文化局長山内隆夫君、環境局長平井健一君、産業労働局長関谷保夫君、建設局長岩永勉君、水道局長高橋功君、福祉保健局長幸田昭一君、大学管理本部長村山寛司君、病院経営本部長押元洋君、新銀行設立本部長津島隆一君、選挙管理委員会事務局長高橋和志君、人事委員会事務局長佐藤広君、監査事務局長高橋道晴君、収用委員会事務局長嶋津隆文君。
   〔理事者あいさつ〕

○議長(内田茂君) 以上をもって説明員の紹介は終わりました。

○議長(内田茂君) 次に、閉会中の議会運営委員の辞任及び選任について申し上げます。
 お手元配布の名簿のとおり、各委員よりそれぞれ辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長においてそれぞれこれを許可いたしましたので、ご報告いたします。
 なお、ただいまご報告いたしました委員の辞任に伴い、欠員を補充する必要が生じましたので、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、お手元配布の名簿のとおり指名いたしました。
 お諮りいたします。
 本件は、それぞれ議長の指名のとおり承認することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、それぞれ議長指名のとおり承認することに決定いたしました。

   議会運営委員辞任・選任名簿

○辞任
大西 英男君(自)  樺山たかし君(自)
古賀 俊昭君(自)  遠藤  衛君(自)
松原 忠義君(自)  田代ひろし君(自)
吉野 利明君(自)  川井しげお君(自)
矢島 千秋君(自)  小美濃安弘君(自)
木内 良明君(公)  森田 安孝君(公)
〔以上 平成十六年八月二日付〕
 中村 明彦君(民)  樋口ゆうこ君(民)
〔以上 平成十六年八月四日付〕

○選任
比留間敏夫君(自)  野村 有信君(自)
野田 和男君(自)  服部ゆくお君(自)
高島なおき君(自)  いなば真一君(自)
近藤やよい君(自)  串田 克巳君(自)
中屋 文孝君(自)  鈴木あきまさ君(自)
藤井  一君(公)  ともとし春久君(公)
〔以上 平成十六年八月二日付〕
 土屋たかゆき君(民)  大塚 隆朗君(民)
〔以上 平成十六年八月四日付〕

○議長(内田茂君) この際、日程の追加について申し上げます。
 知事より、東京都名誉都民の選定の同意について三件が提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(内田茂君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から十月七日までの十七日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認めます。よって、会期は十七日間と決定いたしました。

○議長(内田茂君) この際、知事より発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 平成十六年第三回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様と都民の皆様のご理解、ご協力を得たいと思います。
 初めに、名誉都民について申し上げます。
 このたび、名誉都民の候補者として、緒方貞子さん、篠原儀治さん、宮城まり子さんの三名の方々を選ばせていただきました。
 緒方貞子さんは、ユニセフ執行理事会議長や国連難民高等弁務官を歴任し、児童や難民の救援に取り組むなど、国際的な人道支援活動に力を尽くしておられます。篠原儀治さんは、伝統工芸であるガラス製の風鈴づくりに長年携わるとともに、世界各地に赴き、江戸時代中期から伝わる技能を披露されております。宮城まり子さんは、個性派女優として活躍する傍ら、我が国初の肢体不自由児養護施設ねむの木学園を創設し、心身に障害を持つ子どもたちの育成に半生をささげてこられました。
 お三方は、多くの都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方々であります。都議会の皆様のご同意をいただき、来月一日、都民の日に名誉都民として顕彰したいと考えております。よろしくお願いいたします。
 さて、古代オリンピックの発祥の地アテネで開かれたスポーツの祭典から一カ月、青春の情熱を傾けたアスリートたちの挑戦は、日本のスポーツの歴史に輝かしい一ページを加えました。中でも、競泳の北島康介さんを初めとする東京都在住選手の活躍は目覚ましく、柔道、体操合わせて六名の選手が金メダルを獲得しました。国民に希望と活力を与えてくれた若者たちを顕彰するため、新たに創設した東京都栄誉賞を贈呈したいと思います。
 アテネはかつて古代ギリシャで隆盛を誇った都市国家の一つであります。さらにさかのぼって、メソポタミアや黄河文明の時代から、都市は豊かさの源であり、人類の文明を生みはぐくんでまいりました。都市の誕生から数千年を経た今日、経済のグローバル化と高度情報化によって、集中と集積はさらに加速し、都市文明が地球全体を覆うまでになりました。私たちは今、大都市圏の集積のメリットが国境を越えて経済発展をリードするという二十一世紀の都市文明の歴史的必然に直面しております。
 東京は三千三百万の人口を擁する首都圏のかなめの位置にあり、政治、経済、文化など、諸機能が世界的に見ても類のないほど高度に集積しております。しかしその一方で、都民一人一人の生活は必ずしも豊かであるとはいえず、環境の悪化や慢性的な交通渋滞、治安や青少年問題の深刻化など、都市の病理ともいうべきさまざまな問題を生じております。 都市の持つ文明工学的な功罪が象徴的にあらわれているのが東京であり、繁栄とゆがみの複合が東京の今の姿であります。都市の病理を克服し、集積のメリットを最大限に生かして、都民生活を向上させるとともに、国際競争に勝ち抜いていかなくてはなりません。歴史が私たちに課した使命を果たし、東京の未来、そして日本の未来を切り開いていきたいと思います。
 大都市東京の将来を担うのは子どもたちであります。青少年であります。しかし今、彼らは、かつてない豊かさを享受している反面、これまでになかったさまざまな問題に直面しております。家族の孤立化や地域社会の衰弱が、子どもを育てる力を低下させ、児童虐待や不登校、ひきこもりなどを引き起こしています。また、フリーターの増加に加え、働く意欲も学ぶ意欲も持たないニートと呼ばれる──このニートとは、ノット・イン・エンプロイメント・エデュケーション・オア・トレーニングの頭文字をとったものであるそうで、要するに何もしないということでありますが、これが社会問題となっております。佐世保の同級生殺害事件や新宿の幼児突き落とし事件など異形な事件が相次ぎ、少年の凶悪事件による検挙人数はこの十年で倍増しております。
 こうした状況について、我々大人は無知であるだけではなく、積極的に知ろうともしておりません。都では現在、青少年の実態を記録した映像資料を作成しております。都民の皆様に実態を直視していただき、若者の危機は日本社会そのものの危機であることを正しく認識していただきたいと思います。
 これまでのように関係行政機関が個別に取り組んでいるだけでは、有効な手だてを講ずることは困難であり、先月、青少年育成総合対策推進本部を設置いたしました。庁内の力を結集し、区市町村、関係機関と協力して、青少年の健全育成に複合的、重層的に取り組んでまいります。
 若い世代の性へのかかわり方は大きな社会問題となっており、専門家や現場に詳しい学校の教師などの参加を得て、議論する場を設け、現状の把握と対応策の検討を進めていきます。
 現在生じているさまざまな問題を解決するには、これまで以上に広範囲な連携が不可欠であり、親や学校ばかりでなく、PTA、おやじの会、地域の方々などにも役割を担っていただく必要があります。あすの東京のため、私たちの子孫のため、ぜひ力をおかしいただきたいと思います。
 次に、学校教育についてであります。
 公教育の根幹である義務教育の全国的な水準の確保は、国の責任で行われるべきであり、教職員の人件費に充てられる国庫負担金を廃止しても、分権化には結びつかないばかりか、地方の財政状況によっては教育水準の低下すら懸念されます。本来、義務教育のあり方について、国と地方の役割分担など本質的な議論を尽くすべきであるにもかかわらず、文部科学省を初め国において何ら議論がなされてこなかったことは、不可解としかいいようがありません。
 こうした基本認識に立ち、先月開催された全国知事会議では、義務教育費国庫負担金の廃止、一般財源化に反対の意を表明しましたが、結果として、国庫補助負担金三兆円削減の数字合わせの一環として、廃止の対象にされてしまいました。国家百年の大計を誤らぬために、国の主導で今後真摯な議論を行うよう強く求めたいと思います。
 都はかねてから、二十一世紀の東京を担う人材を育成するため、独自の高校改革を進めてまいりました。来春、新たに都立で初の中高一貫教育校を設置するほか、不登校経験者や高校中退の生徒を受け入れるチャレンジスクールなど、七つの高校を開校いたします。
 盲・ろう・養護学校については、知的障害を持ち養護学校に在籍する児童生徒の数がこの十年で約三割増加しており、その重要性が増しております。知的障害の軽い生徒を対象とした高等部を新設するほか、大学進学を視野に入れた中高一貫のろう学校を全国で初めて設置するなど、生徒一人一人の個性に応じた教育を展開していきたいと思います。
 また、これまで心身障害教育の対象外であった学習障害に関しても、特別支援教室のモデル事業を実施するなど、新たな教育支援体制を構築してまいります。
 都立の四大学の改革に着手することを表明してから四年、この間、大学関係者や有識者などとの議論を積極的にやってまいりましたが、このたび、首都大学東京が設置認可される運びとなりました。既に理事長に高橋宏氏、学長に西澤潤一氏を迎えることを決定し、来年四月の開学に向けて準備を精力的に進めております。単位バンクの導入や学生サポートセンターの設置など、独自の工夫を取り入れた新しい大学をつくり上げていきたいと思います。
 新大学の研究成果を、都市環境の向上や産業の活性化、福祉サービスの充実など、大都市が抱える問題の解決に還元するには、大学と行政、産業との連携を強固なものにする必要があります。連携のための推進会議を庁内に設置して、具体的な検討に入っており、新しい大学を東京のシンクタンクとして機能させてまいります。
 次に、雇用と福祉・保健についてであります。
 雇用のミスマッチを解消するため、この七月、東京しごとセンターを開設いたしました。若者から中高年、高齢者まで、連日予想を上回る約三百人の利用者が詰めかけており、親切、丁寧、確実で満足したとの声が寄せられております。今後、センターの特色である雇用に関するワンストップサービス機能を存分に発揮して、都民の多様な就業ニーズにこたえてまいります。
 少子高齢化社会に的確に対応し、都民に総合的なサービスを提供するため、先月、福祉局と健康局を統合し、新たに福祉保健局を設置いたしました。統合のメリットを十分に生かし、高齢者の健康づくりと介護予防の一体的な推進や、子どもに関する保健、医療、福祉サービスの総合的な展開など、新たな取り組みを進めてまいります。
 ホームレス問題については、今年度から区と共同で、公園のテント生活からの脱却を目指した新しい自立支援策を実施しています。六月から戸山公園と新宿中央公園で説明会や個別面接を段階的に実施しており、先般、借り上げ住宅への入居を開始いたしました。
 今後、対象の公園を順次拡大し、ホームレスの地域生活への移行を促すとともに、公園本来の機能を都民のためにも回復を目指してまいります。
 また、都立病院の改革の一環として、府中病院を多摩地域の医療拠点となる多摩広域基幹病院として再整備いたします。同時に、清瀬、八王子、梅ケ丘の三つの小児病院を移転統合した小児総合医療センターを一体的に整備いたします。民間の活力や資金を活用するPFI手法を取り入れ、平成二十一年度の開設を目指してまいります。
 次に、環境問題についてであります。
 この夏、東京は、真夏日の連続記録が過去の最長の記録を達成するなど、記録的な猛暑に見舞われました。これは、ことしの世界的な異常気象の影響ばかりでなく、ヒートアイランド現象によるところのものが多いと思います。
 この現象は、昼夜間人口や業務機能が高度に集積した大都市特有の問題であり、都市再生の一環として、国が責任を持って対応すべきであります。都は既に、昨年度から独自の取り組みを開始しました。保水性の高い建材や壁面緑化、反射率の高い塗料などの技術開発を進めているほか、丸の内や汐留など四カ所で、保水性舗装や再生水の散水、屋上緑化などの対策を集中的に実施するモデル事業に取り組んでおります。
 都民の間でもこの問題に対する関心が高まっており、先月、伝統的な生活の知恵を生かした打ち水大作戦が、東京を初め全国各地で繰り広げられました。都民や地元自治体、民間事業者とも連携を図りながら国を動かし、ヒートアイランド現象への取り組みを充実してまいります。
 一都三県が協力して実施してまいりましたディーゼル車排出ガス規制の開始から、早くも一年がたとうとしております。運送事業者を初め多くの関係者の方々の協力を得て、都民が実感できる大きな成果を上げることができました。昨年度、浮遊粒子状物質が環境基準を超えた日数は前年度に比べて約六割減少し、都内で最高の濃度を観測している松原橋交差点では、年平均濃度が約二五%減少いたしました。
 都は、これまで国と石油業界に対して、軽油、ガソリンの超低硫黄化を強く求めてまいりましたが、このたび、石油連盟から、都の要請に応じて、国の目標を前倒しし、来年一月から一○ppm以下の超低硫黄燃料を全面供給するとの報告がありました。ありがたいことです。石油連盟の英断により最高水準の供給体制が整い、世界一厳しい規制の実現に向けて最も重要な前提条件がクリアされることになります。国は、これにこたえて、一刻も早く徹底した対策を講じるべきでありましょう。
 去る六月、アメリカのグランドキャニオンとレッドウッドの二つの国立公園を視察し、改めて我が国との違いを痛感いたしました。自然公園の管理に従事する職員数に圧倒的な差があるのはもとより、公園管理や制度のあり方そのものが決定的に異なっております。
日本では当事者である国に、こうした問題意識自体が欠落していたのであります。
 都は、独自の取り組みとしてレンジャー制度を創設し、七月から一期生が多摩地域と小笠原諸島で活動を開始しております。国も、都の取り組みを受けてようやく重い腰を上げようとしているようであります。国に対して、自然公園の管理のあり方を抜本的に見直すよう求めるとともに、引き続き、レンジャーの育成に取り組んでまいります。
 レンジャーの活躍が期待される小笠原では、世界自然遺産への登録を目指してまいります。貴重な固有種や独特の生態系の保全に努める一方、自然環境、景観を守るため、環境共生型公共事業の小笠原モデルを構築していきたいと思います。また、来年には、東京─父島間を約十七時間で結ぶ高速船テクノスーパーライナーの就航が予定されておりまして、自然環境の保全と一体となった新たな観光振興に取り組んでまいります。
 次に、中小企業への支援についてであります。
 企業収益の改善の影響が個人消費に波及し始めるなど、緩やかながらも景気回復の動きが続いておりますが、中小企業をめぐる状況にはいまだ厳しいものがあります。そうした中、すぐれた人材や技術を持ちながら既存の金融機関から融資を受けられない中小企業に、生きた資金を注ぎ込むことが強く求められております。
 この四月に発足した新銀行東京は、先月末、大手町に移転し、来年四月以降の開業を目指して精力的に準備を進めております。都も先月、新銀行設立本部を設置しており、新しい体制のもと、開業準備を積極的に支援してまいります。
 今月中に、神奈川県、横浜市、川崎市と共同で広域CLOを発行する運びともなりました。今年度末までには二十の自治体が東京にならってCLOを発行する見込みであり、国もようやく同様の取り組みを始めました。都がこの制度を創設して実績を積み上げてきた東京発の金融改革は、今や大きなうねりとなりつつあります。
 今後の成長が期待されながら過剰債務などで危機に瀕している中小企業の再生を図るため、来月、地域の金融機関などとの共同出資によりファンドを創設いたします。中小企業振興公社を活用しながら、企業再生に関する相談体制を充実し、ファンドの機能を十分に発揮させてまいります。
 次に、都市機能の拡充についてであります。
 三環状道路は、日本全体の交通ネットワークの充実のために不可欠であり、着実にその整備を進めてまいります。中央環状については十一月、品川線の都市計画決定を行う予定であり、外環道では環境影響評価に入り、現在、現地調査を実施しております。また、圏央道では、このほど八王子ジャンクションの土地収用が終了し、整備を進めております。
 三環状道路の整備効果は四兆円に上り、日本の高コスト構造を大幅に是正し、国全体を活性化するために不可欠であります。国は、道路特定財源を一般財源化することなく堅持し、都市再生に資する道路を重点的かつ速やかに整備すべきであります。
 広域輸送網の拡大や情報化により流通経路の多元化が進むなど、市場をめぐる環境は大きく変化しておりますが、依然として生鮮食品の約七割は市場を経由しており、卸売市場は都民の食生活を支える上で重要な役割を担っております。
 この七月、豊洲新市場の基本計画を策定いたしました。新市場においては、築地市場の約一・六倍の広さの敷地に、新しい時代に見合った施設、機能を整備していきたいと考えております。首都圏の流通におけるハブ機能を十分に発揮するため、他市場への転配送センターを新設するほか、自動搬送装置やICタグの活用による効率的な場内管理システムの構築などに取り組んでまいります。また、一般の都民、観光客が買い物や食事を通じて食文化を現場で楽しめるよう、東京の新しい観光拠点となる千客万来のにぎわいゾーンを創出いたします。平成二十四年度の開場を目指し、早期着工に向けて準備を進めてまいります。
 国の地震調査委員会の発表によれば、南関東で三十年以内にマグニチュード七クラスの大地震が発生する確率は七○%であり、東京は大地震がいつ起きてもおかしくない状況に置かれております。
 今月一日、台東区、墨田区、荒川区と合同で実施した総合防災訓練では、隅田川、荒川の周辺地域で多数の住民の参加を得て実践的な訓練を行いました。船による傷病者、帰宅困難者の避難訓練や、中高生による地域住民の避難支援の訓練などを実施したほか、災害医療派遣チーム・東京DMATの活動を都民の皆様に初めてご披露いたしました。極めて効果的なものであると認識を新たにいたしました。
 自動回転ドアでの事故など、都会の死角に潜む身近な危険が大きな問題となっております。
 都は、六本木ヒルズでの事故を契機に、約八十万件に上る昨年度の救急事故データを緊急に調査しました。その結果、エスカレーターでの事故が多発していることが明らかになり、現在、この問題をめぐってさまざまな議論が行われております。今後とも救急業務で得られた情報を収集、分析し、ふだん気づきにくい身近な危険の実態を都民に広く周知し、事故の未然防止につなげていきたいと思っております。
 自動回転ドアについては、全国の約四割が東京に集中し、事故の約七割が高齢者、幼児というのが実態であります。六本木ヒルズで起こったような痛ましい事故が繰り返されないよう、建築安全条例の改正を本定例会に提案いたしました。回転速度の上限を設定するなど、安全対策の強化を設置者に義務づけてまいります。
 また、鉄道の地下駅における防火安全対策を強化するため、火災予防条例の改正を提案しております。駅の地下階層すべてでスプリンクラーの設置を義務化するとともに、避難経路を確保するために二段降下式シャッターや、停電になっても光り続ける避難誘導板の設置を義務づけるなど対策を拡充し、都民の安全を確保してまいります。
 次に、三宅島についてであります。
 この七月、三宅村は、来年二月に避難指示を解除して、帰島を実施する方針を決定いたしました。火山ガスの状況や村民の方々の意向、今後の安全対策などを総合的に判断されたものであり、都は村の決定を尊重することといたしました。
 しかし、火山ガスの放出は依然として続いており、その影響については専門家も一○○%の保障はできないという状況にあります。したがって、帰島については、こうしたことを十分に踏まえて、自己責任の考え方のもとに、村民の方々がご自身で決断し選択されるべきものと思います。
 都はこれまで港湾や道路、砂防ダム、ライフラインの復旧、整備に努め、インフラ整備はほぼ完了いたしました。帰島を控え、漁港、村営住宅、学校など、生活に密着した公共施設等の復旧、整備を早急に進めることとし、このたび緊急の支援策を取りまとめました。引き続き、国と連携しながら、帰島に向けた取り組みを全力で支援してまいります。
 行政サービスを支えているのは都民の皆様が納める税金であり、その公平な徴収は都政運営の根幹をなすものであります。
 都はこれまで、創意工夫を重ね、都税徴収率の向上に取り組んでまいりました。その結果、昨年度の徴収率は過去最高の九六%を記録し、滞納繰越額もピーク時のおよそ四分の一にまで圧縮されました。また、かつて全国最下位だった自動車税の徴収率も全国八位にまで改善するなど、努力の成果が目に見える形であらわれてきております。
 先月、全国初の試みとして、インターネットによる公売オークションを実施いたしました。三千人近い参加者がございました。売却総額は当初の見積額の約七倍になりました。今回の試行で明らかになった問題点を早急に改善して、来月にも第二弾を実施いたします。また、不動産も対象に加えることを検討しており、早期に実施したいと思います。
 都税以外の使用料、手数料、貸付金などの滞納債権の総額は約二百億円にも上っております。八月に設置した都債権特別回収班を核として、都税徴収で培ったノウハウを活用し、差し押さえや民事訴訟などの手続を駆使して回収に取り組んでまいります。
 最後に、地方分権について申し上げます。
 都は五月、地方分権改革に関する基本的見解を明らかにしましたが、六月に入り、国は全体の方向性も示さぬまま、国庫補助負担金三兆円削減リストの作成を地方に委ねてしまいました。全国知事会は、それをそのまま受け入れたばかりか、税源移譲の獲得に目を奪われ、本質的な議論を行うことなく、数字合わせのリストを作成しました。何のための改革かという視点を持ち得ぬまま、財源の保障を交付税に委ねていては、国による地方の支配がただ続くだけであります。私はこの点を強く主張しましたが、衆寡敵せず、結果として議論の対象とさえならなかったのが実情であります。
 現在、このリストをめぐって、既得権益を死守しようとする国と地方を通じた政官財、各界からのさまざまな反対の声が上がっております。地方分権改革は、日本全体の発展のためという大義を見失い、空中分解の危機に瀕しております。
 しかも、分権改革を東京問題に意図的にすりかえ、税源を東京から地方に移転すれば事足れりとする議論さえ横行しかねない状況です。日本が二十一世紀の熾烈な国際競争に勝ち抜くためには、東京を初め国の発展を牽引する大都市に重点的な投資を行い、そのポテンシャルを十二分に引き出す必要があります。また、冒頭でも述べたとおり、都民一人一人に着目すると、その生活の質は決して豊かとはいえません。このほど、都が、住宅の広さや公園面積、環境などのデータをもとに都道府県別の生活の豊かさについて指数化を試みたところ、東京は下位グループに属し、大都市圏の自治体は軒並みに低位にランクされる結果となりました。
 ためにする東京バッシングにうつつを抜かし、目先の利害にとらわれているときではありません。今必要なことは、これまで都が一貫して主張してきたとおり、大都市と地方が共存共栄し、地方の自主自立の営みの総和が国を支える新しい日本の形をつくり出すことであります。都は、引き続き、真の地方分権改革につながる考え方を具体的に示しながら世論に訴え、国に働きかけていきたいと思います。都議会の皆様と力を合わせて取り組んでまいります。
 なお、本定例会には、給水条例の改正を提案しております。水道事業を取り巻く環境が大きく変化する中、現行の水道料金の体系は、全使用者の半数近くが画一料金になるなど、水利用の実態にそぐわないものとなってきております。企業努力をさらに徹底するとともに、都民生活への影響に配慮しながら、その見直しを実施するものであります。
 ただいま申し上げた給水条例を含め、条例案十三件、予算案一件、契約案五件など、合わせて二十二件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。
 以上をもちまして所信表明を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(内田茂君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○六十七番(近藤やよい君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日は、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更し、追加日程第一から第三までを先議されることを望みます。

○議長(内田茂君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認めます。よって、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更し、追加日程第一から第三までを先議することに決定いたしました。

○議長(内田茂君) 追加日程第一から第三まで、東京都名誉都民の選定の同意について三件を一括して議題といたします。
   〔谷村議事部長朗読〕
一、東京都名誉都民の選定の同意について三  件

一六財主議第二八一号
平成十六年九月二十一日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 内田  茂殿
   東京都名誉都民の選定の同意について
 このことについて、左記の者を東京都名誉都民に選定いたしたいので、東京都名誉都民条例第三条の規定により、東京都議会の同意についてよろしくお取り計らい願います。
  記
     緒方 貞子

      略歴
現住所 東京都大田区
緒方 貞子
昭和二年九月十六日生
昭和二年   東京市麻布区(現東京都港区)に生まれる。
昭和二十六年 聖心女子大学を卒業
昭和二十八年 米国ジョージタウン大学にて国際関係論修士号を取得
昭和三十八年 米国カリフォルニア大学バークレー校にて政治学博士号を取得
昭和 四十年 国際基督教大学非常勤講師
昭和四十三年 国際連合総会に日本政府代表として出席
昭和四十九年 国際基督教大学準教授
昭和五十一年 国連日本国政府代表部公使に就任
昭和五十三年 国連日本国政府代表部特命全権公使に就任(翌年までユニセフ執行理事会議長を務める。)
昭和五十四年 カンボジア難民救済実情視察団団長としての期間大使
昭和五十五年 上智大学国際関係研究所教授
昭和五十六年 婦人問題企画推進会議委員
昭和五十七年 国連人権委員会政府代表
昭和五十八年 国際人道問題独立委員会委員
昭和六十二年 上智大学国際関係研究所長
平成元年   上智大学外国語学部長
平成三年   第八代国連難民高等弁務官
平成六年   東京都文化賞、読売国際協力賞を受賞
平成八年   ユネスコ・ウフェ・ボワニエ平和賞を受賞
平成九年   マグサイサイ賞(国際理解部門)を受賞
平成十二年  フィラデルフィア自由賞、朝日賞、ソウル平和賞を受賞
平成十三年  人間の安全保障委員会共同議長、アフガニスタン支援日本政府特別代表に就任
同年     文化功労者となり、フランスレジオンドヌールコマンドール勲章、スウェーデン北極星勲章コマンデール第一等級章、ロシア友好勲章、ドイツ功労勲章大功労十字章、イタリアカバリエーレ大十字勲章を受章
平成十四年  インディラ・ガンジー賞を受賞
平成十五年  独立行政法人国際協力機構理事長、国連有識者ハイレベル委員会委員、人間の安全保障諮問委員会委員長に就任
    同年 文化勲章を受章

      事績
緒方 貞子氏
 昭和二年九月十六日、東京市麻布区(現東京都港区)に生まれる。
 昭和二十六年、聖心女子大学を卒業する。
 昭和二十八年、米国ジョージタウン大学にて国際関係論修士号を取得する。
 昭和三十八年、米国カリフォルニア大学バークレー校にて政治学博士号を取得する。
 昭和四十年、国際基督教大学非常勤講師となる。
 昭和四十三年、国際連合総会に日本政府代表として出席する。
 昭和四十九年、国際基督教大学準教授となる。
 昭和五十一年、国連日本国政府代表部公使に就任する。
 昭和五十三年、国連日本国政府代表部特命全権公使に就任する。翌年までユニセフ執行理事会議長を務める。
 昭和五十四年、日本政府派遣のカンボジア難民救済実情視察団団長としてタイ・カンボジア国境地帯を視察する。
 昭和五十五年、上智大学国際関係研究所教授となる。
 昭和五十六年、婦人問題企画推進会議委員となる。
 昭和五十七年、国連人権委員会政府代表に就任する。
 昭和五十八年、国際人道問題独立委員会委員に就任する。
 昭和六十二年、上智大学国際関係研究所長となる。
 平成元年、上智大学外国語学部長となる。
 平成三年、第八代国連難民高等弁務官に就任する。
 平成五年、難民問題への取り組みでイタリアのゴールデン・ダブ(金の鳩)賞を受賞する。
 平成六年、東京都文化賞、読売国際協力賞を受賞する。
 平成八年、ユネスコ・ウフェ・ボワニエ平和賞を受賞する。
 平成九年、マグサイサイ賞(国際理解部門)を受賞する。
 平成十二年、フィラデルフィア自由賞、朝日賞、ソウル平和賞を受賞する。
 平成十三年、人間の安全保障委員会共同議長、アフガニスタン支援日本政府特別代表に就任する。同年、文化功労者となり、フランスレジオンドヌールコマンドール勲章、スウェーデン北極星勲章コマンデール第一等級章、ロシア友好勲章、ドイツ功労勲章大功労十字章、イタリアカバリエーレ大十字勲章を受章する。
 平成十四年、インディラ・ガンジー賞を受賞する。
 平成十五年、独立行政法人国際協力機構理事長、国連有識者ハイレベル委員会委員、人間の安全保障諮問委員会委員長に就任する。同年、文化勲章を受章する。
 氏は、国際政治学者として研究を続ける一方、人権・人道問題に深い関心を持ち、ユニセフ執行理事会議長として児童福祉の向上に取り組み、のちに国連難民高等弁務官として、積極果敢に現地の難民の窮状を視察し、国際社会の理解と協力を訴えてきた。国際社会を舞台に、世界の平和と社会貢献活動に尽力してきた。以上のような功績は広く都民が敬愛し、誇りとするところである。

一六財主議第二八二号
平成十六年九月二十一日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 内田  茂殿
   東京都名誉都民の選定の同意について
 このことについて、左記の者を東京都名誉都民に選定いたしたいので、東京都名誉都民条例第三条の規定により、東京都議会の同意についてよろしくお取り計らい願います。
       記
     篠原 儀治
     (本名 篠原謹一)

      略歴
現住所 東京都江戸川区
篠原 儀治
(本名:篠原謹一)
大正十三年十一月十四日生
大正十三年  東京府南葛飾郡請地村(現東京都墨田区)に生まれる。
昭和十二年  父又平に師事
昭和十八年  向島商業学校を卒業
昭和十九年  召集される。
昭和二十年  復員する。
昭和四十年代 テレビ、ラジオ等に出演し始める。
昭和五十七年 江戸川区登録無形文化財・工芸技術の技術保持者に認定される。
昭和五十八年 江戸川区伝統工芸会会長となる。
昭和五十九年 NHK朝の連続テレビ小説「ロマンス」にてガラス工芸の指導をする。
同年     アメリカのシアトル・シカゴ、オランダのロッテルダムにおいて職人芸を披露する。
昭和六十年  大東京祭功績賞を受賞
同年     中国にて職人芸を披露する。
昭和六十一年 アメリカのシアトルにおいて再び職人芸を披露する。
昭和六十二年 アメリカのシカゴにおいて再び職人芸を披露する。
昭和六十三年 江戸川区文化功績賞を受賞
平成元年   江戸風鈴資料館を自宅に開設する。
同年     東京都優秀技能者表彰を受賞
平成二年   アメリカのロサンゼルス・ニューヨーク、オーストリアのウィーンにて職人芸を披露する。
平成四年   江戸川区産業賞(優良事業)を受賞
平成五年   ドイツのデュッセルドルフにおいて職人芸を披露する。
平成六年   アメリカのデンバーにおいて職人芸を披露する。
平成七年   アメリカのアトランタにおいて職人芸を披露する。
平成九年   「音の匠」に選定される。
平成十三年  シンガポールにおいて職人芸を披露する。
平成十五年  第二十回江戸川伝統工芸展において教育委員会賞を受賞

      事績
篠原 儀治氏
(本名:篠原謹一)
 大正十三年十一月十四日、東京府南葛飾郡請地村(現東京都墨田区)に生まれる。
 昭和十二年、父又平に師事する。
 昭和十八年、向島商業学校を卒業する。
 昭和十九年、召集される。
 昭和二十年、復員後、風鈴作りに再び取りかかる。
 昭和四十年代よりテレビ、ラジオ等に出演する。
 昭和五十七年、江戸川区登録無形文化財・工芸技術の技術保持者に認定される。
 昭和五十八年、江戸川区伝統工芸会会長となる。
 昭和五十九年、NHK朝の連続テレビ小説「ロマンス」にてガラス工芸の指導をする。
 昭和五十九年、アメリカのシアトル・シカゴ、オランダのロッテルダムにおいて職人芸を披露する。
 昭和六十年、大東京祭功績賞を受賞する。同年、中国にて職人芸を披露する。
 昭和六十一年、アメリカのシアトルにおいて再び職人芸を披露する。
 昭和六十二年、アメリカのシカゴにおいて再び職人芸を披露する。
 昭和六十三年、江戸川区文化功績賞を受賞する。
 平成元年、江戸風鈴資料館を自宅に開設する。同年、東京都優秀技能者表彰を受賞する。
 平成二年、アメリカのロサンゼルス・ニューヨーク、オーストリアのウィーンにて職人芸を披露する。
 平成四年、江戸川区産業賞(優良事業)を受賞する。
 平成五年、ドイツのデュッセルドルフにおいて職人芸を披露する。
 平成六年、アメリカのデンバーにおいて職人芸を披露する。
 平成七年、アメリカのアトランタにおいて職人芸を披露する。
 平成九年、「音の匠」に選定される。
 平成十三年、シンガポールにおいて職人芸を披露する。
 平成十五年、第二十回江戸川伝統工芸展において教育委員会賞を受賞する。
 氏は、江戸時代中期から伝わるガラス風鈴を製造し、江戸の文化を伝承する一方、旺盛な探求心を持ち、伝統の中にも新たな創作に取り組んできた。また、世界各地に出向き、日本の文化、江戸の情緒を広めることに尽力してきた。
 風鈴職人としてだけではなく、様々な伝統工芸を次の世代に伝える活動も積極的に行っている姿は、広く都民が敬愛し、誇りとするところである。

一六財主議第二八三号
平成十六年九月二十一日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 内田  茂殿
   東京都名誉都民の選定の同意について
 このことについて、左記の者を東京都名誉都民に選定いたしたいので、東京都名誉都民条例第三条の規定により、東京都議会の同意についてよろしくお取り計らい願います。
       記
     宮城まり子
     (本名 本目真理子)

      略歴
現住所 東京都世田谷区
宮城まり子
(本名:本目真理子)
昭和二年三月二十一日生
昭和二年   東京府荏原郡蒲田町(現東京都大田区)に生まれる。
昭和二十七年 日本ビクターに入社
昭和三十年  「ガード下の靴みがき」がヒット。菊田一夫作、「まり子自叙伝」で初のロングラン公演を行う。
昭和三十三年 バラード「十二月のあいつ」で第十三回芸術祭賞受賞
昭和三十四年 第四回テアトロン賞を受賞
昭和四十三年 肢体不自由児養護施設「ねむの木学園」を設立
昭和四十八年 吉川英治文化賞を受賞
昭和四十九年 第一回映画監督作品「ねむの木の詩」を製作
同年     同作品で文化庁最優秀映画賞、国際赤十字映画祭銀賞を受賞
昭和五十一年 「ねむの木のこどもたちとまり子美術展」を開催(現在までに八十七回開催)
昭和五十二年 映画「ねむの木の詩がきこえる」を製作監督する。同作品で、文化庁最優秀映画賞、国際赤十字映画祭最優秀作品特別大賞を受賞
同年     「ねむの木のこどもたちとまり子美術展」を初めてニューヨークで開催
昭和五十三年 日本映画ペンクラブ賞、第十九回毎日芸術賞、第二十回ブルーリボン特別賞、厚生大臣賞を受賞
昭和五十四年 肢体不自由児の「ねむの木養護学校」を設立
同年     児童の福祉向上の功績により内閣総理大臣賞を受賞
昭和五十五年 アデライデ=リストリー賞を受賞
同年     映画「虹をかける子どもたち」を製作監督する。
昭和五十六年 同作品で国際赤十字映画祭シダラック賞を受賞
昭和六十二年 「ハローキッズ!」で国際赤十字映画祭特別功績賞を受賞
昭和六十三年 ヘレンケラー教育賞を受賞
平成四年   ペスタロッチー教育賞を受賞
平成五年   東京都文化賞を受賞
平成九年   静岡県浜岡町より掛川市に「ねむの木学園」を移転する。
同年     身体障害者療護施設「ねむの木のどかな家」を設立
平成十一年  「吉行淳之介文学館」及び「ねむの木子供美術館」を開館
平成十二年  児童文化功労者賞、第五回咢賞を受賞
平成十六年  第十三回石井十次賞を受賞

      事績
宮城まり子氏
(本名:本目真理子)
昭和二年三月二十一日、東京府荏原郡蒲田町(現東京都大田区)に生まれる。
昭和二十七年、日本ビクターに入社する。
昭和三十年、「ガード下の靴みがき」がヒット。菊田一夫作、「まり子自叙伝」を芸術座にて初のロングラン公演を行う。
昭和三十三年、バラード「十二月のあいつ」で第十三回芸術祭賞を受賞する。
昭和三十四年、年間の舞台成果に対して第四回テアトロン賞を受賞する。
昭和四十三年、肢体不自由児養護施設「ねむの木学園」を設立する。
昭和四十八年、吉川英治文化賞を受賞する。
昭和四十九年、映画「ねむの木の詩」を製作監督する。同作品が、文化庁最優秀映画賞、国際赤十字映画祭銀賞を受賞する。
昭和五十一年、「ねむの木のこどもたちとまり子美術展」を開催する。以後、開催を重ね、これまでに八十七回開催する。
昭和五十二年、映画「ねむの木の詩がきこえる」を製作監督する。同作品が、再び文化庁最優秀映画賞、国際赤十字映画祭最優秀作品特別大賞を受賞する。同年「ねむの木のこどもたちとまり子美術展」を初めてニューヨークで開催する。以後、海外各地で同美術展を開催し、好評を博す。
昭和五十三年、日本映画ペンクラブ賞、第十九回毎日芸術賞、第二十回ブルーリボン特別賞、厚生大臣賞を受賞する。
昭和五十四年、肢体不自由児の「ねむの木養護学校」を設立、自由な教育を始める。同年、児童の福祉向上の功績により内閣総理大臣賞を受賞する。
昭和五十五年、イタリアのアデライデ=リストリー賞を受賞する。同年、映画「虹をかける子どもたち」を製作監督する。
昭和五十六年、「虹をかける子どもたち」で国際赤十字映画祭シダラック賞を受賞する。
昭和六十二年、「ハローキッズ!」が国際赤十字映画祭特別功績賞を受賞する。
昭和六十三年、ヘレンケラー教育賞を受賞する。
平成四年、ペスタロッチー教育賞を受賞する。
平成五年、東京都文化賞を受賞する。
平成九年、静岡県浜岡町より掛川市に「ねむの木学園」を移転する。同年、身体障害者療護施設「ねむの木のどかな家」を設立する。
平成十一年、「吉行淳之介文学館」及び「ねむの木子供美術館」を開館する。
平成十二年、児童文化功労者賞、第五回咢堂賞を受賞する。
平成十六年、第十三回石井十次賞を受賞する。
 氏は、個性派俳優として活躍するとともに、障害児教育に熱心に取り組んできた。我が国初の肢体不自由児養護施設「ねむの木学園」を創設し、障害児教育の実践に尽力し、社会の関心を高めた。心身に障害を持つ児童の育成に半生を捧げ、障害を持つ児童の可能性を引き出すことに力を尽くしてきた。
 以上のような功績は、広く都民が敬愛し、誇りとするところである。

○議長(内田茂君) お諮りいたします。
 本件は、いずれも知事の選定に同意することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、いずれも知事の選定に同意することに決定いたしました。

○六十七番(近藤やよい君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明二十二日から二十七日まで六日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(内田茂君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(内田茂君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明二十二日から二十七日まで六日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、九月二十八日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後一時四十分散会


文書質問趣意書及び答弁書

一六財主議第二八七号
平成十六年九月十日
東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 内田  茂殿
   文書質問に対する答弁書の送付について
 平成十六年第二回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。
     記
   後藤雄一議員
   河野百合恵議員
   かち佳代子議員
   古館和憲議員
   松村友昭議員
   丸茂勇夫議員
   大河原雅子議員
   和田宗春議員
   木村陽治議員

平成16年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 後藤雄一

質問事項
 一 警視庁の情報等の管理について
 二 都立施設への殺虫剤の粉霧について
 三 東京消防庁幹部職員のたるみについて
 四 東京消防庁方面本部について
 五 病院経営本部の体質について
 六 交通局の組合幹部への優遇について
 七 交通局電車部の業務研修について

一 警視庁の情報等の管理について
 警視庁交通部には、交通規制に関する「交通規制実務」と題する本があり、各警察署に置かれている。本の表紙には「取扱注意」と書かれている。
 行革110番が警視庁に「交通規制実務」を情報公開請求したところ、全部開示で公開された。
1 交通規制実務は1冊の本であり、全部開示と言うのであれば、情報公開ルームに備え付けるべき情報と考える。見解を伺う。出来ないなら、理由を伺う。
2 都民に身近な警視庁をアピールする為にも、公開できる文書は、警視庁情報ルームで閲覧できるようすべき、と考えるが、見解を伺う。
二 都立施設への殺虫剤の粉霧について
 都本庁舎は、ゴキブリ・ネズミ・カ・ハエ・ダニ等の害虫の駆除を専門業者に委託しスミチオン乳剤・スミスリン乳剤を散布し、ベイト剤等を配置している。
 平成15年のデータから、議会棟(地下一階から7階)に粉霧したスミチオン乳剤の量を調べると、10倍に希釈したものを180リットル、つまり、スミチオン原液で石油缶1本を粉霧した事になる。
 近年、薬剤を防除に使用することへの批判が強まっている。このような中、建築物におけるねずみ等の防除においては、IPM(総合防除)という考え方が注目されている。IPMは、「害虫等による被害が許容できないレベルになることを避けるため、最も経済的な手段によって、人や財産、環境に対する影響が最も少なくなるような方法で、害虫等と環境の情報をうまく調和させて行うこと」と定義されており、生息状況調査を重視した防除体系である。
 このため、ねずみ等の発生場所、生息場所などについて、6ヶ月以内ごとに1回、定期的かつ統一的に調査を実施し、調査結果に基づき、ねずみ等の発生を防止するための措置を講ずることとされた。
 都も、年2回定期的に殺虫剤の粉霧を行っていたが、目視による調査を重視、殺虫剤粉霧を減らす方向と聞く。
1 そこで、ビル管理法の対象になる都立施設での、害虫駆除委託について、以下の点を質問する。(一般施設と都立高校と分けて、回答を求める。対象は15年度とする。)
 ・対象施設の数
 ・薬剤の種類と使用量
 ・業者数と契約金額
 ・今後の方針
2 また、都立公園等の樹木等に対しても殺虫剤の散布が行われているが、上記同様、以下の点を質問する。(公園、一般施設、都立高校の樹木等に分けて、回答を求める。対象は15年度とする。
 ・対象施設の数
 ・薬剤の種類と使用量
 ・業者数と契約金額
 ・今後の方針
3 また、殺虫剤等の散布は極力控えるべきであるが、関係局の考えを伺う。
三 東京消防庁幹部職員のたるみについて
 最近の東京消防庁の不祥事を見ていると、幹部職員の多くは、階級制度にあぐらをかいて「のほほん」とし、出世ばかり気にしているのではないか、と考えてしまう。
1 東京消防庁職員は、一般都民と比べ防災・防火には注意をはらっていると、と想像する。しかし、平成9年の板橋消防署小茂根出張所内の仮眠室の火災、昨年は志村消防署内で火災が発生している。原因究明には時間がかかり、そして、内部の放火説までささやかれている。内部の放火?という言葉が出る事だけでも、幹部職員が現場職員を掌握していないことを物語っている。
 ア 上記消防署内の火災を教訓に、幹部職員に対しどのような指導を行っているか、伺う。
 イ 又、幹部職員の自宅が、失火・放火を含め、火災に遭遇した事があるか?伺う。
2 方面本部副本部長の窃盗事件、消防署長の私的公用車使用事件と幹部職員による事件が続いて起きている。
  消防署長の私的公用車使用事件は、消防署内からの内部告発で発覚したもので、消防署長の傲慢さ、そして、東京消防庁の隠ぺい体質を露呈した事件だ。
  消防総監は本件に関し、消防署長本人の当該部分の給与返還と、訓戒という極めて軽い処分で落着させている。しかし、行革110番が本件運転手の人件費・ガソリン代・諸経費を支払えと監査請求したところ、署長本人が全て返還している。
 ア 本人の給与を返還した時点では「訓戒」を認めたとしても、運転手の人件費、ガソリン代、公用車の諸経費、つまり、公金を返還したと言う事は、より重い処分を課す事が相当と考える、公金に返還に関する事実に対し、追加の処分を行う考えはないか?見解を伺う。
 イ また、東京消防庁の組織図には、消防署を統括して方面本部がある。消防署長のこれだけの不祥事であるにもかかわらず、管理をしているはずの方面本部・本庁の責任者の責任が問われていない。処分する考えはあるか?見解を伺う。
 ウ 事件をうけ、幹部職員へどのような研修を行ったか?伺う。
 エ 又、東京消防庁の幹部職員に対する教育方針を伺う。
3 平成16年5月20日、午後6時から8時、大田区西蒲田8-3-5、プラザ「アペア」にて東京消防退職公務員会(退公会)が開かれた。大田管内の消防署長も上記会合に出席した。
 ア 上記退公会の懇親会に、消防署長が出席したのは公務か?否か?見解を伺う。
 イ 退公会は退職者の会と聞くが、東京消防庁との現在の関わりを伺う。
 ウ 退公会に対し、各消防署、方面本部、そして、本庁のどのセクションが担当しているのか?又は、一切関与していないのか?伺う。
 エ 関与していたとしたら、関与する事が出来る条例・規則等の根拠を求める。
四 東京消防庁方面本部について
 東京消防庁には、10の方面本部が存在する。自衛隊のように全国組織なら管区方面本部が存在しても理解できるが、東京都という地域に10のブロックに分けて消防署を管理する必要があるのか、理解に苦しむ。幹部職員の職場(ポスト)作りでは!と疑ってしまう。そこで以下、伺う。
 1 平成15年度、方面本部長通達か何件だされているか。
 2 本面本部長の権限には、どのようなものがあるか。
 3 東京消防庁で10ブロックに分ける必要性があるのか。
 4 今後、方面本部を統合するつもりはあるか。
五 病院経営本部の体質について
 都立病院は都民が頼りにしている病院の一つである。そして、知事も都立病院立て直しを行っているところである。しかし、都立病院内の職員休憩室に公然とウイスキー・ブランデー・焼酎・ワイン・ビールが置かれていた事実がある。
1 行革110番が事実確認した「都立府中病院検査科休憩室飲酒事件」で、病院経営本部の管理職が、「都立府中病院内で、飲酒が禁止との規定がないもので!」とコメントしたが、当時、都立府中病院内で職務時間外に「職員の飲酒」は認められていたか?禁止されていたか?伺う。
2 都立病院内で職員の酒・ビール、ウイスキー等のアルコールの所持及び飲酒を厳禁とすべき、と考えるがいかがか。
3 病院経営本部長が、使用者の氏名欄に「碇山幸夫」と書いたタクシーチケットを「賓客との会合後の送迎」に使用したとして、10月3日30,000円、10月8日19,090円が支払われている。以下、伺う。
 ・病院経営本部では、タクシーチケットを本人以外に使用させる事を認めているのか。
・上記タクシーチケットを渡していた賓客と病院経営本部長は、同じ会合に同席していたのか。
 ・賓客とは誰か。
 ・他にも、このような他人にタクシーチケットを渡すケースがあったか。
 ・タクシーチケットの譲渡は不適正な事と考えるが、知事の見解を伺う。
 ・仮に、不適正と考えたら、知事は返還請求権を行使するお考えがあるか。
六 交通局の組合幹部への優遇について
 交通局の業務を見ると、電車・バスに乗務する職員と、事務職員に分けられる。
 組合支部長・組合役員等は乗務員であるにかかわらず、交通局と「乗務しない」との約束が取られている。にもかかわらず、組合支部長等に残業代が支払われている。
 そこで、交通局組合の幹部の超過勤務の状況を調べると、1カ月8時間と記載されている職員が多くいる。また、複数の職員は1年を通し毎月8時間との記載がある。
 また、行革110番に寄せられた情報には、出退勤の管理がいい加減になっていると聞く。
1 乗務しない職員には、出勤簿を改めタイムカードを導入するべき、と考える。が、見解を伺う。
2 現在、出勤簿への捺印は適正に行われているか?伺う。
3 また、残業内容を調べると、「サービス推進運動」が多くあると聞く。「サービス推進運動」は平成4年からはじめられた事業と聞くが、現在まで大した改善も行われなく続けている。サービス推進運動を見直すべき、と考えるが、見解を伺う。
七 交通局電車部の業務研修について
 交通局電車部では、事故事例・非常時事対応・機器取扱・安全意識等の業務研修を行っている。
 研修時間は、ツーマン3時間(個別研修1時間+集合研修2時間)、ワンマン2時間(個別研修40分+集合研修1時間40分)である。
 以前、業務研修が時間通り行われていない、と行革110番が指摘したところ、交通局は「助役が全時間立会い、受講確認を行う」と言っていたが、未だに改善されていないとの情報がある。
 研修内容を精査すると、3時間も研修を要しないと思われる内容が多く見られる。
 そこで、毎回3時間という業務研修を根本的に改め、メリハリのある研修に改善すべき、と考えるが、見解を伺う。

平成16年第二回都議会定例会
後藤雄一議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 警視庁の情報等の管理について
1 警視庁に「交通規制実務」を情報公開請求したところ、全部開示で公開された。交通規制実務は1冊の本であり、全部開示と言うのであれば、警視庁情報ルームに備えるべき情報と考える。見解を伺う。出来ないなら、理由を伺う。

回答
  「交通規制実務改訂版」は、警視庁情報公開センター窓口に備え付けております。

質問事項
 一の2 都民に身近な警視庁をアピールする為にも、公開できる文書は、警視庁情報ルームで閲覧できるようすべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  警視庁では、東京都情報公開条例の趣旨を踏まえ、「警視庁の統計」、「東京の犯罪」、「少年育成活動の概要」等を警視庁情報公開センター窓口に備え付けております。
  今後も、都民生活の安全に密接に関係する情報等については、必要に応じ、公表・提供に努めていきます。

質問事項
二 都立施設への殺虫剤の粉霧について
1 都立施設での害虫駆除委託について
ア ビル管理法の対象となる都立一般施設での害虫駆除委託について、平成15年度の、対象施設の数、薬剤の種類と使用量、業者数と契約金額、今後の方針、を伺う。

回答
  建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管理法)では、対象となる建築物の所有者等は、ねずみ・衛生害虫等の生息、被害等の調査を定期に実施し、その結果に基づき、環境整備等を含む必要な防除措置を講ずることとしています。
 例えば、都庁舎(第一本庁舎、第二本庁舎及び都議会議事堂)では、平成15年度において使用した薬剤の種類と量は、MEP乳剤など合計5種類、液体のものが347リットル、ジェル状のものが2,300グラム、固形粒状のものが600グラム、固形板状のものが459枚です。
 受託業者は1社で、契約金額は害虫生息調査業務を含めて1,141万円です。
 平成15年度まで年2回実施していた一斉害虫駆除を、平成16年度は年1回に変更しました。今後とも、法に基づき、都庁舎における害虫駆除等の衛生環境確保に努めていきます。

質問事項
二の1のイ ビル管理法の対象となる都立高校での害虫駆除委託について、平成15年度の、対象施設の数、薬剤の種類と使用量、業者数と契約金額、今後の方針、を伺う。

回答
 平成15年度、建築物における衛生的環境の確保に関する法律の対象の都立高校121校のうち、害虫駆除委託をした学校は53校です。
 使用した薬剤の種類は、MEP乳剤など合計8種類です。使用量については、液体のものが144.3リットル、粉状のものが82.1キログラム、固体のものが12個です。
 業者数については28業者、契約金額は、492万円です。
 今後とも、薬剤による環境や健康への影響を防ぐため、薬剤の定期散布は中止するとともに、害虫等が発生した場合にも、薬剤散布以外の方法を優先する対応などにより防除に努めていきます。

質問事項
二の2 樹木等に対する殺虫剤の散布について
ア 都立公園の樹木等に対する殺虫剤の散布について、平成15年度の対象施設の数、薬剤の種類と使用量、業者数と契約金額、今後の方針、を伺う。

回答
 平成15年度に殺虫剤を散布した都立公園は、43公園です。
 使用した殺虫剤の種類は、MEP乳剤など合計30種類です。使用量については、液体のものが95リットル、粉状のものが89キログラムです。
 業者数については27業者、契約金額は1,159万円です。
 今後とも、公園樹木の害虫駆除については、総合防除の観点から、被害の発生を早期に発見し、使用薬剤の低減に努めていきます。

質問事項
二の2のイ 都立一般施設の樹木等に対する殺虫剤の散布について、平成15年度の、対象施設の数、薬剤の種類と使用量、業者数と契約金額、今後の方針、を伺う。

回答
 都立一般施設の樹木等に対する殺虫剤の散布については、各施設管理者の判断で必要に応じて行っています。
 このうち、例えば都庁舎(第一本庁舎、第二本庁舎及び都議会議事堂)では、平成15年度に使用した薬剤の種類と使用量は、MEP乳剤など8種類、合計22.3リットルです。
 受託業者は3社で、契約金額は樹木のせん定や除草等、植栽管理費を含めて、1,399万円です。
 今後とも、都庁舎における樹木等の病虫害駆除については、被害の発生を早期に発見し、使用薬剤の低減に努めていきます。

質問事項
二の2のウ 都立高校の樹木等に対する殺虫剤の散布について、平成15年度の、対象施設の数、薬剤の種類と使用量、業者数と契約金額、今後の方針、を伺う。

回答
 平成15年度対象校全207校のうち、殺虫剤を散布した都立高校は、113校です。
 使用した殺虫剤の種類は、DEP乳剤など合計4種類です。使用量については、液体のものが、204.7リットル、粉状のものが4.7キログラム、固体のものが10個です。
 業者数については59業者、契約金額は、1,315万円です。
 今後とも、都立高校の樹木等に対する薬剤散布については、定期散布を中止するとともに害虫等が発生した場合には、せん定等の物理的手段を優先し、最小限の薬剤の使用により防除に努めていきます。

質問事項
二の3 殺虫剤等の散布は極力控えるべきであるが、関係局の考えを伺う。

回答
 都立施設を含め、ビル管理法の対象となる建築物の所有者等は、ねずみ・衛生害虫等の生息、被害等の調査を定期に実施し、その調査結果に基づき、その生息や活動状況、建築物の構造、建築物の使用者又は利用者への影響等を総合的に検討した上で、殺虫剤等の使用を必須の前提とするのではなく、適切な防除措置を講ずるべきと考えております。都では、建築物の所有者や管理者に対し、適切な防除について講習会等で周知徹底を図っています。

質問事項
三 東京消防庁幹部職員のたるみについて
1 消防署内の火災について
ア 平成9年の板橋消防署小茂根出張所内の火災及び昨年の志村消防署内の火災を教訓に、幹部職員に対しどのような指導を行っているのか、伺う。

回答
 板橋消防署小茂根出張所及び志村消防署の火災後の対応については、発生後に開催した署長会議及び文書により、火災予防等の再徹底を図るとともに、消防庁舎としての高いセキュリティの確保と防護措置を厳しく指示しております。

質問事項
三の1のイ 幹部職員の自宅が、失火・放火を含め、火災に遭遇した事があるか、伺う。

回答
 現幹部職員の自宅出火及び火災に遭遇した記録はありません。

質問事項
三の2 消防署長の私的公用車使用について
ア 消防総監は、消防署長本人の当該部分の給与返還と、訓戒という処分を行い、署長本人が、運転手の人件費・ガソリン代・公用車の諸経費、を返還している。公金を返還したと言う事は、より重い処分を課すことが相当と考える。公金の返還に関する事実に対し、追加の処分を行う考えはないか、見解を伺う。

回答
 消防署長に対する処分は、勤務時間中に勤務とは認められない事由で勤務場所を離れたこと、勤務時間の割振りを不当に変更したこと、休暇等の届出を怠っていたこと及び指揮監察車を不適正に使用したことによる服務違反の事実が判明したことから、事例に照らし幹部職員として厳正に行ったものであり、処分の変更は考えておりません。

質問事項
三の2のイ 東京消防庁の組織図には、消防署を統括して方面本部がある。消防署長のこれだけの不祥事であるにもかかわらず、管理をしているはずの方面本部・本庁の責任者の責任が問われていない。処分する考えはあるか、見解を伺う。

回答
 服務規律の遵守については、教育及び指導の徹底を図っております。
 このたびの服務違反については、日頃の指導にもかかわらず、本人の自覚に起因していることから、方面本部の責任者などを処分する考えはありません。

質問事項
三の2のウ 事件をうけ、幹部職員へどのような研修を行ったか、伺う。

回答
 消防署長がじゃっ起した服務違反を重く受け止め、署長会議等の機会を通じて、幹部職員としての職責の自覚と服務規律の厳正な保持について再徹底しました。

質問事項
三の2のエ 東京消防庁の幹部職員に対する教育方針を伺う。

回答
 幹部職員として、厳正にして公明、公平な執務態度を堅持し、常に都民の視点に立った行政サービスの向上に努めるよう教育しております。

質問事項
三の3 東京消防退職公務員会(退公会)について
ア 平成16年5月20日に開かれた東京消防退職公務員会(退公会)の懇親会に、消防署長が出席したのは公務か否か、見解を伺う。

回答
 東京消防退職公務員会は、地域に居住する会員が、その知識、技術及び経験を生かして地域防災活動等を推進することを目的の一つとした任意団体です。
 消防署長は、この団体が主催する会合に、防災活動に関して支援・協力するため、公的立場で出席したものです。

質問事項
三の3のイ 退公会は退職者の会と聞くが、東京消防庁との現在の関わりを伺う。

回答
 東京消防退職公務員会は、地域防災活動等の推進を事業目的の一つとしていることから、東京消防庁では災害時支援ボランティアと同様、地域の防火防災活動に取り組んでいる団体の一つとして捉えています。

質問事項
三の3のウ 退公会に対し、各消防署、方面本部、そして、本庁のどのセクションが担当しているのか、又は、一切関与していないのか、伺う。

回答
 消防署、方面本部、本庁には、東京消防退職公務員会を担当するセクションはありません。

質問事項
三の3のエ 関与していたとしたら、関与する事が出来る条例・規則等の根拠を伺う。

回答
 東京都震災対策条例第4条(ボランティアに対する支援)及び第39条(ボランティアへの支援)の趣旨を踏まえ、東京消防退職公務員会の行う地域防災活動等の推進に対し支援及び協力を行っています。

質問事項
四 東京消防庁方面本部について
1 平成15年度、方面本部長通達が何件だされているか、伺う。

回答
 平成15年度に方面本部長が発信した文書は、1,487件です。

質問事項
四の2 方面本部長の権限には、どのようなものがあるか、伺う。

回答
 方面本部長は、所管区域内の拡大した火災や救助・救急事象等に出場し、自ら消防活動の指揮を行っています。さらに、消防署の活動範囲を越える震災・水災等の大規模災害発生時には、方面内の消防部隊に出場を命令し、出場部隊の指揮、統制を行う権限を有しているほか、本庁と消防署及び消防署相互間の消防事務執行についての連絡、調整等を行っています。
 また、施策に反映するため、消防活動の行動監査、効果評定、業績評価等を実施しているほか、救命効果の向上のため、医療機関と連携し、救急活動に対する事後検証等を行っています。

質問事項
四の3 東京消防庁で10ブロックに分ける必要性があるのか、伺う。

回答
 方面本部は、所管区域内で発生し拡大した災害等の指揮、統制を行っており、さらに、震災・水災等の大規模災害発生時には、消防署隊間の調整運用及び方面隊指揮運用を行い、方面内の消防部隊を集結させ、効果的な消防活動を実施します。
 これらのことから、方面本部の所管区域については、大規模災害発生時の効果的な部隊運用及び地域特性等を考慮し、東京消防庁管内を10のブロックに分けて所管させています。

質問事項
四の4 今後、方面本部を統合するつもりはあるか、伺う。

回答
 方面本部は拡大した火災や救助・救急事象の指揮、統制、さらには、震災・水災等の大規模災害発生時の部隊運用など効果的な消防活動を実施するために必要であることから、現在のところ統合の計画はありません。

質問事項
五 病院経営本部の体質について
1 行革110番が事実確認した都立府中病院検査科休憩室での飲酒について、病院経営本部の管理職が「都立府中病院内で、飲酒が禁止との規定がないもので」とコメントしたが、当時、都立府中病院内で職務時間外に「職員の飲酒」は認められていたか、禁止されていたか、伺う。

回答
 院内での飲酒について、これを禁ずる明文の規定はありません。

質問事項
五の2 都立病院内で職員の酒・ビール、ウイスキー等のアルコールの所持及び飲酒を厳禁とすべき、と考えるがいかがか、伺う。

回答
 都立病院は医療サービスを提供する場であり、都民に誤解を与えるような行為は慎むべきものであると考えております。

質問事項
五の3 使用者氏名欄に病院経営本部長名が書かれたタクシーチケットを「賓客の会合後の送迎」に使用したとしているが、病院経営本部では、タクシーチケットを本人以外に使用させることを認めているのか。賓客と病院経営本部長は、同じ会合に出席していたのか。賓客とは誰か。他にも、他人にタクシーチケットを渡すケースがあったか。タクシーチケットの譲渡は不適正な事と考えるが、見解を伺う。仮に不適正と考えたら、返還請求権を行使する考えがあるか、伺う。

回答
 タクシーチケットの使用については、従来より適正に行っております。
 今後とも、適正な使用に努めてまいります。

質問事項
六 交通局の組合幹部への優遇について
1 交通局組合支部長・組合役員等は乗務員であるにもかかわらず、交通局と「乗務しない」との約束が取られている。乗務しない職員には、出勤簿を改めタイムカードを導入するべき、と考えるが、見解を伺う。

回答
 事業所における職員の出勤については、東京都交通局職員服務規程により、出勤簿による整理を行うことを原則としております。
 バスに乗務する職員については、乗務記録等と合わせてカードによる出勤の整理を一体として行っており、乗務員の職にある組合役員の勤務の取扱いについては、円滑な事業運営の視点から、逐次、見直しをしています。

質問事項
六の2 現在、出勤簿への捺印は適正に行われているか、伺う。

回答
 出勤簿への押印については、「東京都交通局職員服務規程」に基づき、各事業所において適正に処理しております。

質問事項
六の3 残業内容を調べると、サービス推進運動が多くあると聞く。サービス推進運動は平成4年からはじめられた事業と聞くが、現在まで大した改善も行われなく続けている。サービス推進運動を見直すべき、と考えるが、見解を伺う。

回答
 交通局は、平成4年2月から本局にサービス推進本部を、各職場にサービス推進チームを設置し、CS(顧客満足)運動を展開しております。各サービス推進チームでは、ラッシュ時における案内整理、駅構内・バスターミナルの施設の清掃等の取組を続けてきました。
 今後とも、お客様満足の向上に向けて、サービス推進運動についてさらなる創意工夫を加えながら、展開してまいります。

質問事項
七 交通局電車部の業務研修について
 交通局電車部では、事故事例・非常時事対応・機器取扱・安全意識等の業務研修を行っている。研修内容を精査すると、3時間も研修を要しないと思われる内容が多く見られる。毎回3時間という業務研修を根本的に改め、メリハリのある研修に改善すべき、と考えるが、見解を伺う。

回答
 地下鉄職員に対する定期訓練、業務研修など教育訓練については、国土交通省の「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」に基づき、技能、知識の向上により、安全運行を確保し、お客様の安全を守ることを目的として実施しております。
 乗務員に対する業務研修は、事故・故障事例の研究、接遇などの机上研修、車両機器の習熟等を目的として、実際に車両を用いて行う機器操作訓練などの内容で実施しています。
 業務研修については、今後とも、研修内容、研修時間等を考慮しつつ、効果的、効率的に実施してまいります。

平成16年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 河野百合恵

質問事項
 一 DV防止法改正にあたっての都政における課題について

一 DV防止法改正にあたっての都政における課題について
  2001年に配偶者暴力防止法(DV法)が施行になり、東京ウィメンズプラザと東京都女性相談センターに寄せられた相談件数は、H13年度3334件に比べて、H15年度は9253件と約3倍に増加しています。DV被害者の多くが女性ですが、自分らしい生き方を求めての人権意識の高まりが示されています。法施行後3年経った今年5月27日に、改正DV法が国会で成立しました。
 改正法では、これまで配偶者が対象だった保護命令を元配偶者にも出せるようになり、子どもへの接近も禁止されます。住居からの退去命令は2ヶ月に拡大しました。被害者の要求を反映させながら、公営住宅への優先入居や就労支援、民間シェルターへの財政支援、被害者の住所情報の非開示など、実効ある施策を進めていく道筋ができました。しかし、課題も残っています。
 今年3月29日の東京都男女平等参画審議会「中間報告」にまとめられた生活文化局によるDV被害者への調査結果は、被害の深刻な実態を浮き彫りにしています。被害者の年代は20歳代、30歳代、40歳代が76.6%で、被害者の83.9%に子どもがいます。そのうち、就学前の乳幼児がいる被害者は40.3%を占めています。夫からの暴力が始まったのは結婚1年未満との回答が42.8%で、結婚当初から暴力を受けている人が多数です。暴力を受けたときに、77.2%が「怖い、恐怖、脅え」を感じており、40.0%が「相手と別れたい」思っているのです。被害者が受けている暴力は、「殴る」「蹴る」の身体的なものだけでなく、相手を貶める暴言や、生活費を渡さなかったり、働くことを妨害する経済的暴力、性的行為の強要など性的暴力、さらにこれらの暴力が重複してふるわれている状況があります。
 被害者たちは、長期間の暴力に対して、「相手に見切りをつけ、離れて自活の道を歩みたい」と希望しつつも、暴力から逃れることができないでいます。その理由として、もっとも多いのが「経済的な不安」で、43.9%に及んでいます。子どもがいる被害者の41.7%が「子どもをひとり親にしたくない」、21.2%が「転校・転園させたくない」という回答をしています。
 現在不安に思っていることは、「経済的不安なこと」が57.2%で最も多く、37.2%が加害者の追跡となっています。こうした実態に即した対策が急がれています。
 改正法は、国と自治体は「自立を支援する」責務を有すると明記し、配偶者の暴力の防止と被害者保護の施策に関して、国は基本方針を、都道府県は基本計画を策定することを義務付けました。区市町村に配偶者暴力相談支援センターの設置をすることも制定しました。国と合わせて、自治体としてもDV防止施策を強めることが明確になりました。
 また、DV被害者からは、行政機関に相談に行った際、事態を正確に受け止めてもらえないことも多く、そのことで逆に気持ちが落ち込んだり、傷ついたりすることがある、との相談が少なからず寄せられている現状があります。
 そこで、東京都として実施にうつすべきDV施策について提言をふくめ質問します。
1 第一は、都が策定する基本計画に関する問題です。まず、基本計画策定のスケジュールについてお示しください。合わせて、基本計画は都民参加で策定するよう求めます。見解を伺います。
2 第二に、基本計画に被害者支援のために次のような具体的施策を示していくとともに、必要な改善策を直ちに講じることが求められています。
 ア DV被害者が切迫した状況におかれた時にいつでも受け入れられるように相談体制をさらに拡充すること。また、都の職員を含めて、相談に携わる関係者への研修を充実させること。
イ DV法が施行になって急増している被害者の数に見合った緊急一時保護施設の増設を進めること。
ウ 一時保護施設は、従来の売春防止法を根拠法とする入所者と、DV法による入所者が一緒に生活しているのが現状です。DV被害者は、固有の問題を抱えて入所していることから、一律の処遇にならないような配慮が必要です。したがって、DV被害者の固有性に対応出来る施設整備や職員配置を行うこと。
エ 被害者の生活再建と経済的自立促進のための生活資金の貸付や都営住宅への優先入居制度を確立すること。また、就労がしやすくなるような支援体制づくりを行うこと。
オ 女性たちの自立支援と人道的立場に立って被害者救済に大きな役割を果たしている民間シェルター(避難施設)への財政援助の拡充を図ること。
カ 暴力によって傷ついたDV被害者の心のケア体制を充実させること。
キ 東京都の公式ホームページのトップには、「人権」という見出しはありますが、「DV」や「男女平等参画」という見出しはありません。ホームページの見出しから、検索しやすいような改善を行なうように求めます。
以上、7点についてお答えください。
3 第三に、子どもの保護の問題です。
 法務省の調査では、DV加害者の4割は子どもの前で暴力をふるっています。親同士の暴力を目撃している子どもは、強い恐怖感、暴力を止められない無力感など精神的ダメージを受けています。こうした行為は、先に成立した改正児童虐待防止法で「児童に著しい心理的外傷を与える言動」として「児童虐待」にあたるという新たな定義がされました。東京都の調査では、子どもがいる家庭の51.1%で、子どもも暴力をふるわれていることが明らかになっています。
 子どもの成長に不適切であると判断される場合、加害者の「監護権や面接交渉権の制限」などの検討も課題になっています。東京都がこの点で、対応を急ぐことを求めるとともに、子どもへの「ケアシステム」について検討されるよう提言するものですが、いかがでしょうか。
4 第四は、加害者更正についてです。
 東京都は、昨年、リーフレットを作成して、加害者更生への取り組みを一歩前進させました。しかし、用意したリーフレットはすでに配布しきってしまった、と聞いています。加害者に対し、DVは犯罪行為であることを認識させる啓発活動に力を注ぐことが重要です。
 今回の法改正で、保護命令の対象が元配偶者にも拡大され、家からの退去命令期間が2週間から2ヶ月間に延長されました。しかし、保護命令はあくまでも緊急の場合であり、期間が過ぎれば命令は解かれます。その間に、被害者の自立、生活再建の方向のめどがたたず、加害者の反省がないままであれば同じことが繰り返される可能性があります。DVの防止、被害者救済のためには、遅れた分野とも言える加害者への更生対策も行政の責任で位置付けることが重要です。東京都として、DV被害の悪循環を断つ実効ある加害者への啓発・更正策を講じるように求めます。お答えください。

平成16年第二回都議会定例会
河野百合恵議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 DV防止法改正にあたっての都政における課題について
1 都が策定する基本計画に関して、策定のスケジュールについて伺う。合わせて、基本計画は都民参加で策定するよう求める。見解を伺う。

回答
  配偶者暴力防止法の改正により都道府県が定めることとなった基本計画は、主務大臣が定める基本方針に即して作成することとされています。
 現時点では、国の基本方針の内容等が明らかになっていないため、都の基本計画の策定スケジュールについては未定です。
 今後、基本計画の策定に当たっては、国の基本方針の内容を踏まえて、適切に対応していきます。

質問事項
一の2 基本計画における具体的施策及び必要な改善策について
 ア DV被害者が切迫した状況におかれた時にいつでも受け入れられるように相談体制をさらに拡充すること、また、都の職員を含めて、相談に携わる関係者への研修を充実させることを求める。見解を伺う。

回答
  都では、東京ウィメンズプラザと東京都女性相談センターとが連携して、年末年始を除き夜9時まで相談を受ける体制を整備しています。また、深夜でも、緊急時については、女性相談センターにおいて適切に対応しています。
 今後とも区市町村や関係機関とも連携した相談体制の強化に努めてまいります。
 また、引き続き、都や区市町村の相談員をはじめ、関係機関の職員に対する研修を実施し、相談員の資質向上に努めていきます。

質問事項
一の2のイ DV法が施行になって急増している被害者の数に見合った緊急一時保護施設の増設を進めることを求める。見解を伺う。

回答
  配偶者暴力被害者の一時保護は、配偶者暴力防止法の施行に伴い、平成14年4月から厚生労働大臣が定める基準を満たす施設に委託して実施できるようになりました。
 都は、既に女性相談センターで実施している一時保護に加え、4か所の施設で一時保護委託を実施し、受入枠の確保に努めています。

質問事項
一の2のウ DV被害者の固有性に対応出来る施設整備や職員配置を行うことを求める。見解を伺う。

回答
  女性相談センターでは、配偶者暴力被害者の多くは心身ともに傷ついていることから、必要に応じ、他の一時保護所利用者と同室にならないように配慮するとともに、平成16年4月から心理職1名と婦人相談員2名を増配置し、支援の充実を図りました。
 また、子どもを同伴する配偶者暴力被害者のために、平成15年4月から保育士を2名配置しました。

質問事項
一の2のエ 被害者の生活再建と経済的自立促進のための生活資金の貸付や都営住宅への優先入居制度を確立すること、また、就労がしやすくなるような支援体制づくりを行うこと、を求める。見解を伺う。

回答
  配偶者暴力被害者に対する生活資金の貸付けについては、経済的自立と生活意欲の助長を図ることを目的とした女性福祉資金や母子福祉資金及び低所得者を対象とした生活福祉資金の貸付制度があり、これらの制度により対応しています。
 都営住宅への入居については、すでに、公営住宅法に基づき、母子世帯の優遇措置等で対応しています。
 被害者への就労支援については、しごとセンター事業において、広く都民を対象とした相談に応じる中で対応していきます。

質問事項
一の2のオ 女性たちの自立支援と人道的立場に立って被害者救済に大きな役割を果たしている民間シェルター(避難施設)への財政援助の拡充を図ることを求める。見解を伺う。

回答
 都は、緊急に保護を求める外国人女性への対応や、婦人保護施設利用者などの円滑な社会復帰を図るため、2つの民間団体に対して補助を実施しています。

質問事項
一の2のカ 暴力によって傷ついたDV被害者の心のケア体制を充実させることを求める。見解を伺う。

回答
  東京ウィメンズプラザでは、配偶者暴力被害者の心のケアを目的として、精神科医師による面接相談を実施しています。
 また、女性相談センターにおいても、一時保護所利用者に対する心理学的判定を行い、必要に応じてカウンセリング等を行っています。
 今後、東京都男女平等参画審議会の報告を踏まえ、継続的な心のケアを含めた総合的な被害者支援について検討していきます。

質問事項
一の2のキ 東京都の公式ホームページのトップには、「人権」という見出しはあるが、「DV」や「男女平等参画」という見出しはない。ホームページの見出しから、検索しやすいような改善を行なうよう求める。見解を伺う。

回答
  都の公式ホームページは、平成14年8月に、分かりやすさや使いやすさの視点でリニューアルを行いました。
 このホームページには、膨大な情報があり、項目も多岐にわたっています。これらをトップページですべて網羅しようとすると、多すぎて逆に目的の項目が探しにくくなるという問題があります。このため、トップページについては、見出しの項目数をできる限り絞り込み、トップページから分野別のインデックスページを経て、より詳細な項目のページに案内する構造を採用しています。

質問事項
一の3 子どもの成長に不適切であると判断される場合、加害者の「監護権や面接交渉権の制限」などの検討も課題になっている。都の対応を急ぐことを求めるとともに、子どもへの「ケアシステム」について検討するよう提言するがいかがか、伺う。

回答
  児童相談所においては、これまでも女性相談センターと連携し、配偶者暴力被害者とその児童に関する相談に対応しています。
 親権の一部一時停止制度の創設については、これまでも国に対し提案要求してきましたが、今後とも引き続き要請していきます。

質問事項
一の4 DVの防止、被害者救済のためには、加害者への更生対策も行政の責任で位置づけることが重要である。都として、DV被害の悪循環を断つ実効ある加害者への啓発・更生策を講じるよう求める。見解を伺う。

回答
  都においては、これまでも、加害者からの相談に応ずるとともに、配偶者暴力防止に向けた普及啓発に取り組んできました。
 被害者の安全確保とともに、更なる被害の発生を防止する視点から、加害者対策も重要な課題の一つとして、今後、その手法について検討していきます。

平成16年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 かち佳代子

質問事項
 一 介護保険について

一 介護保険について
1 いま、政府が2005年の介護保険制度見直しにむけて、検討している内容は、利用料負担の引き上げや、介護度が軽い人のサービス利用の制限、特別養護老人ホームの利用を重度の人に限定し、さらに家賃をとること、保険料を払う人を40歳以上から、20歳以上にひろげるなど、国民、都民の願いとはかけ離れたものです。
  日本共産党は、こういう方向ではなく、保険と福祉を統合し、負担の軽減とサービスの充実、特養ホームやグループホームの整備促進、リハビリや介護予防の拡充など、だれもが安心して利用できる改革をすすめるべきと考えます。
  この間、目減りする一方の年金制度の中で、介護保険料は都内8割りの自治体で値上げされ、医療費負担も、定率制へと高齢者の社会保障費の負担はますます重くなっています。こうした中で、介護保険の保険料・利用料の軽減対策を求める声が、一層高まっています。
  日本共産党都議団は、高齢者の介護状況調査をすすめており、183人からの聞き取りを行いました。ショートステイが必要な時につかえない、ヘルパーさんがころころ変わる。特養ホームに1日も早く入りたいなど、切実な要望が浮き彫りになりました。そのなかでも圧倒的多数の共通した声は、保険料、利用料のこれ以上の負担増だけは、やめてほしい、なんらかの経済的支援が必要だというものでした。
  7割に及ぶ人が、保険料が重いと答えています。「所得に応じた、もっときめ細かい制度にしてほしい」などの声がよせられました。月額わずか2万4千9百円の年金から、3千2百円の保険料を払っている人もいました。
  国が実施している保険料、利用料の低所得者対策では不充分だということは、全国市長会の一致した見解となっています。東京都も、政府に提出した介護保険制度の見なおしに向けた「提言」のなかで、「現行制度においては、住民税非課税者層に含まれる相当程度生計が困難な方に対する保険料を軽減するしくみがなく、…必ずしも充分とは言えない状況にある」を指摘しました。そして「保険料の第2段階に属する者のうち特に低所得である者について…第1段階に相当する額等へ軽減して賦課するしくみを導入すること」を提言しました。
ア ところが、今定例会のわが党の代表質問で、都独自の保険料軽減制度の創設を求めたことにたいし、福祉局長は「介護保険制度においては、低所得者に配慮した所得段階別の保険料設定・・・などをおこなっている」として「さらなる軽減措置を実施する考えはない」と答弁しました。この答弁は、東京都自身の政府にたいする「提案」の立場さえ否定するものではありませんか。
イ 国か都か、どちらが実施するかは別にして、少なくとも保険料の第2段階に属するもののうち特に低所得である者について、第1段階に相当する額等へ軽減する、さらなる軽減措置を実施する必要性があるのではないですか。
ウ 保険料の軽減措置について、国を動かすためにも都が率先して必要な軽減措置を実施することは意味がないと考えているのですか。
エ 保険料の第2段階に属する者のうち特に低所得である者について、第1段階に相当する額等へ軽減する等の措置について、都独自に実施するためにはどんな方法があるのかの検討ぐらいはすべきです。
 以上、4点についてお答えください。
2 私たちの介護状況調査では、利用料についても「食費や生活費をきりつめて利用料をはらっている」「これ以上の負担は絶対反対。生活していけない」「貯金を取り崩しながらなんとかやっているが、もう、底をつきそう」「お金のあるなしにかかわらず、サービスが利用できるようにしてほしい」など、切実な声がたくさんよせられました。
  都は生計困難者の利用料軽減制度を実施していますが、利用者がわずか2千人で、広がっていません。しかも、今年度末にやめる計画です。これに対し、都の議会局がまとめた区市町村アンケートによれば、圧倒的多数の自治体が、「所得要件、資産・貯蓄要件の緩和や、事業者負担をなくしてほしいなど」を都に要望しています。「現行制度ではあまり役にたたない。」など厳しい意見もだされています。
ア 都の生計困難者にたいする利用料軽減制度は、こうした都民と自治体の声をふまえて抜本的に拡充し、来年度以降も継続すること、さらに区市町村が独自におこなっている利用料軽減への支援をおこなうことが必要です。所見を求めます。
イ また、政府は、利用料負担の2割、3割への引き上げを検討していますが、そんなことは絶対にしないよう、きびしく要請すべきです。所見を伺います。
3 実態調査のなかでも、現在不足していると思われるサービスの第1位が特養ホームです。
  「4年前に申請しているが、いまだに入れない介護度5の女性」や対象者が介護度5であり、介護者の娘さんも障害一級という情況であっても、特養ホームにはいれず「もう限界です」とうったえている悲惨な例、「介護度4でずっとまっているが、ケアマネに介護度5になったらいれてやるといわれた。状態悪化を待つような、制度はおかしい」と怒りをあらわにする人もありました。いずれも、圧倒的な施設不足からの矛盾です。
  国は、介護保険の施設予算の縮減の中で、都における今年度17件の特養ホーム建設申請に対し、9件を不認可にしました。これでは都の「保健福祉計画」における、H19年度までの施設計画すら、おぼつかない状況です。
  利用者にとって、選べる介護というなら、その基盤設備をまず、行うべきです。
ア 東京都は特養ホームの充足状況をどのように認識されているのですか。
イ また、国の横暴な特養建設抑制に、きっぱりと意見をいうとともに、独自にも、整備促進の努力をすべきですが、見解を求めます。
ウ 昨年、東京都は特養ホームへの優先入居規準を示しました。区市町村でもそれをモデルに独自の規準を設定しましたが、これは、あくまで緊急性の高い人に対する共通の優先入居規準を決めたものであり、緊急性が相対的に低い結果が出た人を、はじめから待機者から除外するようなやり方は絶対してはならないと考えますが、見解を伺います。
エ また、都が示した優先入居規準は、経済的困難に対する配慮を盛り込むなど改善が必要です。お答えください。
オ 国は、これからの特養ホームは、「新型特養」「ユニットケア」で「ホテルコスト」を徴収することを強くうちだしています。個室のための補助金はなく、個室料金4~5万円/月の徴収で、借り入れ金の返済をせよというものです。利用者にとっては、利用料と個室料で月約10万円以上の負担です。高いところでは7万円のうわのせというところもあります。
   私は、先日、江戸川区にある社会福祉法人の改築中の、「新型特養とユニットケア」の特養ホームを尋ねました。
   理事長は「もし、ホテルコストを徴収すれば、ここにいられなくなる人がでてくる。これまでの信頼関係をこわすことはできない。社会福祉法人としての使命からしても、新たな負担を強いることはできない」と話されました。
   個人の尊厳やプライバシーを守る立場からしても、画一的なケアではなく、個室化や、きめ細かいケアができる「ユニットケア」は、これからの特養ホームにとって必要条件ではありますが、その負担を、収入のない利用者に求めることによって、低所得者は追い出されるという状況をうみだします。いま必要なのは、従来型も含め、絶対数を確保することです。
   埼玉県では、現状での特養不足の認識から、既存特養の増築においては、国の補助金がでないため、県単独での従来型特養ホームの整備助成に取り組んでいます。
   ホテルコストをとらなくても整備可能な、「新型特養ホーム」の建設補助を国に求めるとともに、都の補助金制度を創設すべきですが見解を求めます。

平成16年第二回都議会定例会
かち佳代子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 介護保険について
1 保険料について
ア 今定例会の共産党の代表質問で、都独自の保険料軽減制度の創設を求めたことに対し、福祉局長は「さらなる軽減措置を実施する考えはない。」と答弁した。この答弁は都自身の政府に対する「提案」の立場さえ否定するものではないか、所見を伺う。

回答
  低所得者に対する保険料の取扱いについては、社会保険としての介護保険制度の根幹にかかわるものであり、全国的に統一した制度の中で対応すべきとの考えから、介護保険制度の見直しに向けて、国に対して改善の提案を行ったものです。
 平成16年第二回東京都議会定例会における福祉局長答弁は、保険料及び利用料への都独自の軽減制度の実施に関する所見を述べたものであり、国への提案を否定するものではありません。

質問事項
一の1のイ 国か都か、どちらが実施するかは別にして、少なくとも保険料の第2段階に属するもののうち特に低所得である者について、第1段階に相当する額等へ軽減する、さらなる軽減措置を実施する必要性があるのではないか、所見を伺う。

回答
  現行の保険料の所得段階区分については、第2段階に該当する区市町村民税世帯非課税者の中に、相当程度生計が困難な方を含む幅広い所得状況の方々が属しており、負担能力をよりきめ細かく反映する仕組みとしていくことが課題となっています。
 このため、都としては、国に対し、介護保険制度の見直しの中で、第2段階に属する者のうち特に低所得である者の取扱いについて、既に提案を行っています。

質問事項
一の1のウ 保険料の軽減措置について、国を動かすためにも都が率先して必要な軽減措置を実施することは意味がないと考えているのか、所見を伺う。

回答
  保険料の軽減措置については、本来的に介護保険制度で対応すべきものと考えており、都が独自に実施する考えはありません。

質問事項
一の1のエ 保険料の第2段階に属する者のうち特に低所得である者について、第1段階に相当する額等へ軽減する等の措置について、都独自に実施するためにはどんな方法があるかの検討ぐらいはすべきだが、所見を伺う。

回答
  保険料の軽減措置については、本来的に介護保険制度で対応すべきものと考えており、都が独自に実施するための方法を検討する考えはありません。

質問事項
一の2 利用料について
ア 都の生計困難者に対する利用料軽減制度は、都民と自治体の声をふまえて抜本的に拡充し、来年度以降も継続すること、さらに区市町村が独自に行っている利用料軽減への支援を行うことが必要である。所見を伺う。

回答
  都の生計困難者に対する利用者負担額軽減措置は、国の特別対策をもとに、都独自に対象サービスの種類及びサービス提供主体を拡大して実施しているものであり、介護保険制度の見直しにおいて、全サービス・全事業者を対象とする恒久的な仕組みとして制度化を図るよう、国に提案しています。
 また、区市町村が独自に行っている利用者負担額軽減措置については、各区市町村が地域の実情を踏まえて、独自の判断により行っているものであり、都としてこれらに対する支援を行う考えはありません。

質問事項
一の2のイ 政府は、利用料負担の2割、3割への引き上げを検討しているが、そんなことは絶対にしないよう、きびしく要請すべきである。所見を伺う。

回答
  介護保険制度の見直しの中で、介護サービスを利用している者と利用していない者との公平性等の観点から、利用者負担割合のあり方についても検討することは必要と考えています。
 国に対しては、利用者負担割合の検討に当たって、低所得者に配慮するとともに、現行の医療保険制度における高齢者の負担割合が1割(一定以上所得者は2割)であることとの整合に留意するよう提案しています。

質問事項
一の3 特養ホームについて
ア 都は特養ホームの充足状況をどのように認識しているのか、伺う。

回答
  都内の特別養護老人ホームの設置数は、平成15年度末現在で、349か所、定員31,185人と、第2期介護保険事業支援計画の平成15年度目標数31,500人と比較して、99%の達成率となっています。
 今後とも、区市町村と協力しながら着実な整備に努めていきます。

質問事項
一の3のイ 国の横暴な特養建設抑制に、きっぱりと意見をいうとともに、独自にも、整備促進の努力をすべきだが、見解を伺う。

回答
  今般の、一方的な国庫補助基準の見直しは極めて遺憾な措置であり、都は、平成16年1月に見直しの撤回を求めて国に対して緊急要求を行うとともに、大都市民生主管局長会議においても同様の要求を行いました。
 さらに、同年3月及び同年6月にも、国に対して重ねて提案要求を行ったところです。
 また、都においては、特別養護老人ホームの整備を促進するため、既に独自の補助を実施しており、今後とも、区市町村と協力しながら着実な整備に努めていきます。

質問事項
一の3のウ 特養ホームへの優先入居基準に関して、緊急性が相対的に低い結果が出た人を、はじめから待機者から除外するようなやり方は絶対してはならないと考えるが、見解を伺う。

回答
  介護保険制度においては、要介護1以上であれば、誰でも施設サービスが受けられます。
 都、区市町村及び施設代表者により平成15年2月に取りまとめられた「特別養護老人ホームにおける優先入所に関するガイドライン」は、国の省令改正を踏まえ、指定介護福祉施設サービスを受ける必要性が高いと認められる入所申込者が優先的に入所できるよう指標等を示したものであり、入所の必要性が相対的に低い方を入所申込自体から除外するものではありません。

質問事項
一の3のエ 都が示した優先入居基準は、経済的困難に対する配慮を盛り込むなど改善が必要である。見解を伺う。

回答
  介護保険は、介護の必要の程度に応じて保険給付が行われる制度です。
 このため、「特別養護老人ホームにおける優先入所に関するガイドライン」においても、指定介護福祉施設サービスを受ける必要性の観点から優先度を判定する指標を定めており、この指標には、経済的要件を含めるべきではないと考えています。

質問事項
一の3のオ 埼玉県では、特養不足の認識から、既存特養の増築においては、県単独での整備助成に取り組んでいる。ホテルコストを取らなくても整備可能な「新型特養ホーム」の建設補助を国に求めるとともに、都の補助金制度を創設すべきだが、見解を伺う。

回答
  小規模生活単位型特別養護老人ホームは、施設であっても在宅の暮らしに近い日常の生活を通じたケアを行い、自律的な日常生活を営むことを支援する施設であることから、その施設で徴収する居住費は、家賃に相当するものであると考えます。
 在宅サービス利用者と施設サービス利用者との負担と給付の公平性の観点から、居住費の徴収は妥当なものであり、建設補助について国に提案要求することは考えていません。
 また、都として、新たな補助制度を創設することは考えていません。

平成16年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 古館和憲

質問事項
 一 地震発生時の応急対策の確立について
 二 都立老人医療センターと豊島病院について

一 地震発生時の応急対策の確立について
  1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災から9年、その後、宮城県沖地震、十勝沖地震など、大規模の地震が、つぎつぎと発生し、日本は「地震の再活動期」にはいったといわれています。首都圏においても、大地震の先触れといわれる地震が群発し、首都直下型地震、東海地震など、かつての関東大地震にならぶ規模の地震に、いつおそわれてもおかしくない状況といわれています。
 日本共産党は、この間、「地震は防げないが、災害は防ぐことができる」という立場から、地震被害を未然に防ぐための長周期波振動対策や、公立小中学校や個人木造住宅への耐震補助の実施などの予防対策について、提案をおこない東京都の対応を求めてきましたが、これに対して都は、積極的に応えようとせず、もっぱら国と区市町村の仕事だとしてないがしろにしようとしてきました。
 また、石原知事は、「東京都震災予防条例」を改定し、「東京における地震被害を未然防止し、被害を最小限にくいとめる」という考えをないがしろにし、地震に対する対応は、「自助、共助、公助」という考えのもとに、自分の命は自分でまもることを強調、東京都の役割はおおきく後退させられることになりました。実際の施策も、予防や応急対策から、震災後の「復興」に力点がおかれるようになりました。
 しかし、このような立場が、いかに間違ったものであるかは、阪神・淡路大震災の重要な教訓のひとつが、地震につよいまちづくりとともに、消火・救急など震災直後のすばやい対応であり、事前のそのための応急対策の確立であったこと、その後、こうした教訓をふまえ、静岡県や宮城県などが個人木造住宅や公立学校の耐震補強への助成や応急対策の強化にふみだしていることからも明らかです。
 国が最近発表した2004年度版の「防災白書」も、災害発生時の被害をどれだけ軽減するかという立場から、「減災」の必要をかかげたことにも注目する必要があります。「白書」は、事前の被害想定と照らし合わせて、どれだけ、実際の被害を軽減できるのかを行政の目的とする「減災」行政を提起するとともに、被害を詳細に想定して、救助のシステムを整備することの必要性などを強調しています。
1 そこで、まず被害想定についてです。
ア この問題は、昨年の第三回定例会でもわが党議員がただしましたが、東京は、「都市再生」の名のもとに、超高層ビルや地下施設などが急増し、長周期波振動による都市施設の被害などあらたな問題に直面していること、いまだに木造住宅密集地域がほとんど手つかずにのこされ、しかも建物の老朽化がすすんでいることなど、実際に地震に直面した場合に起こるであろう被害と、現在の都の被害想定とのあいだに乖離が生まれていることが指摘されています。
  そこで、こうした状況をふまえた、あらたな視点もふまえた地震被害の想定が必要なのではありませんか、見解を伺います。
イ また、当面、現在の地震被害想定にもとづく、避難や人命救助などのための、体制や施設、設備などの対策について、数値目標と達成年度の明確にしてとり組む必要があると、考えますが、答弁を求めます。
2 以下、応急対策にかかわって、いくつかの問題について、伺います。第一は、都民防災教育センターいわゆる防災館の問題です。
 都民防災教育センターは、立川および本所の防災センターと池袋消防署の3カ所に設置され、おおいときには年間9万人の来館者をかぞえ、震災や消防の学習や、体験コーナーなどでの実習など、都民の防災意識の向上や防災対策の向上などにおおきな役割を発揮しています。
 ところが、この都民防災教育センターの見直しが提起され、池袋の防災館の廃止が検討されていると聞き、驚いています。これは、知事本部(当時)がおこなった2003年度の行政評価の第二次評価で、「センター3館の役割の明確化を図る中で、各館の施設規模をふまえ、3館体制について精査をおこなう必要がある」として、「見直し」を求める評価をおこない、具体的には、池袋防災館を廃止する方向で検討がすすめられていることです。
 しかし、池袋の防災館は、昨年度6万1519人の来館者があり、地域の防災組織や学校の見学にとどまらず、都内の企業の防災担当者がおとづれ、消防ホースをつかった実体験をおこなうなど、地域に密着した施設として、今後もその役割が期待されているものです。実際に、この「行政評価」での第一次評価では、「入館者の87%が施設に満足している」、「94%が防災についても継続した学習を望んでいる」とし、防災センターがおおきな役割をはたしていることを明らかにしたうえで、「災害発生時におけるトータル的な被害軽減つながることから、今後も社会環境の変化や都民のニーズなどに的確に対応し、より、効果的な防災知識、技術の普及をおこなっていく」と、3館体制で施策を「積極推進」していくことの必要を評価しているのです。
 そこで、池袋防災館を存続するとともに、3館体制での施策の拡充をもとめるものですが、答弁を求めます。
3 つぎに、市民防災組織の支援についてです。
 あらためて言うまでもなく、阪神・淡路大地震の教訓のひとつは、あの未曾有の震災の中で、被害を最小限に食いとめるうえでおおきな役割を果たした地域住民の力です。なかでも、神戸市長田区の真野地区の住民組織は、日頃から、バケツリレーによる初期消火や、工場の消火水槽や消火設備を活用した消火活動の訓練などをつみかさね、地域のコミュニュティとチームワークづくりにつとめてきたことが力となり、震災の二次被害の拡大を防止するうえで、おおきな役割をはたしたといわれています。
 東京都の場合も、都の震災対策条例の第34条で、市民防災組織の組織化がうたわれており、都内の町会、自治体単位で文字どおり、網の目のように組織されています。条例はまた、都の責務について、市民防災組織の「育成に対し、支援及び協力を行い、充実が図られるように努めなければならない」と定めています。
 ところが、これだけ重要な組織であるにもかかわらず、実際に、東京都がおこなっているのは、住民防災組織の結成時に、資機材の支給などがおこなわれているに過ぎません。
 災害がおおきくなればなるほど、救援にまっさき駆けつけられるのは、消防団であり、市民防災組織です。また、この市民防災組織は、地域に根ざしているだけに、町のなり立ちと住民について知りつくしており、他に変えられないおおきな力を発揮するのです。
 市民防災組織に対して、都として、資機材の更新や拡充、さらには運営にあたっての恒常的な支援をおこなうことは、きわめて有意義なものと考えるが、見解を求めるものです。
4 帰宅困難者対策は、企業都市化した東京の固有の問題であり、広域行政としての東京都の責務が問われているものです。
 私は、千代田、中央、港、新宿などの都心の区の防災担当者をたずね、話を伺いましたが、共通して訴えられたのは、帰宅困難者対策をすすめているが、大型ビルの急増によって、昼間人口がふえ、帰宅困難者がどれほどに及ぶのか予測つかないほどとなっていると言うことです。
 東京都は現在、大地震が発生した場合の帰宅困難者について、371万人と想定していますが、これは、今日の「都市再生」による都心部での従業者の増加については、考慮していず、現実の帰宅困難者の数は、想定をおおはばにうわまわることは間違いありません。
 また、対応が求められる問題も、代替え交通手段の確保、宿泊施設の確保、通信手段の確保、応急の食料の確保など多岐にわたるものです。
 そこで、まず、「都市再生」の進展というあらたな事態のもとでの帰宅困難者の予測をあらためておこなうこと。また、都のイニシャチブで、関係自治体とのネットワーク化をすすめること。代替え交通手段の確保、宿泊施設の確保、通信手段の確保、応急の食料の確保などについて、目標をさだめ、計画的に対策をはかることを提案するものです。答弁を求めます。
二 都立老人医療センターと豊島病院について
 「都立病院改革マスタープラン」で、都が「板橋の老人医療センターと豊島病院を統合・民営化」の方針をうちだして以降、板橋ではこうした計画にたいして、住民はもちろん板橋区、区議会、区医師会などが、「老人医療センターは『今のままで存続を』」という声を一致してあげています。
 また、豊島病院についても、現在、区移管の可能性について協議がすすめられていますが、そのベースにあるのが区民、医療関係者の間から「都立での存続」の声の強さ、大きさです。実際に、街の声は都立のままでの運営を望んでおり、「区が引き受けて民間委託」をとの方向性を望んでいるものでは決してありません。
 04年度第一回定例会で、石原知事が「老人医療センターについては民営化する」との方針を明らかにしましたが、改めて豊島病院も老人医療センターも、これまでどおり都立都営での存続させることが、都民の期待にこたえるただ一つの道であると考えるものです。
1 都立老人医療センターは、130年の歴史をもつ「福祉の殿堂」である養育院の中核施設として、老人総合研究所、ナーシングホームなどの老人ホームと連携した三位一体の施設として、都民ばかりか全国的にも大きな役割を果たしてきました。
 都立老人医療センターの最大の特質は、高齢者一人一人に最適な医療を行うために、欧米ではすでに取り入れられ、老人医療の中核となっている「全人的包括的医療」である「チーム医療」に先駆的に取り組んできていることです。この「チーム医療」、いわゆる全人的包括的医療は、診療報酬ではほとんど評価されていないため、民間の医療機関では取り組まれていないのが実態です。しかし、「チーム医療」を積み重ねていくことによって患者さんの社会復帰が早まり、経営面でもメリットが生まれ、老人医療費の引き下げにも貢献することが都立老人医療センターの実践のなかで証明されています。
 こうした「チーム医療」は、一昨年「第二の老人医療センター」などと都がもちあげて開設された東京都江東高齢者医療センターでも行われなかったどころか、今年から、都が病院そのものから手を引き、順天堂病院にまるごと貸し付けるなど、老人医療センターで築いてきた高齢者医療の成果それ自体を継承するものではまったくないことがはっきりとしました。
 今年2月19日、私もふくめた共産党都義団は、愛知県大府市の国立療養所中部病院を調査視察してきましたが、国では高齢者医療の位置づけをさらに高めて、今年3月1日から、この中部病院を国立長寿医療センター・長寿医療研究センターとして、機能・規模をいっそうバージョンアップしてスタートさせました。
 この国立長寿医療センターというナショナルセンターを立ち上げるにあたって、01年8月に、国が「第一回長寿医療に関する基本計画検討会」をもちましたが、そこで折茂肇都老人医療センター院長(当時)が、「長寿医療」について基調報告的な発言をするなど、国立長寿医療センター・長寿研究センターが都立老人医療センター、都老人研究所の研究・実践成果などを取り入れられながらスタートしたことは、「包括医療部(チーム医療)」などが設けられたことなどからも明らかです。
 多忙のなか応対していただいた太田壽城長寿医療センター院長は、全国で「長寿医療機関」として単一なのは、「これまでは、東京の板橋老人医療センターと多摩老人医療センターしかない」と話され、さらに「ナショナルセンターとローカル医療との関りについて」の問いに対して、「長寿医療の対象者は、高齢者患者であり、広範囲には動けない。したがって、ある地域で完結できるモデルが必要」であること。「地域モデルをつくることが、結果として地域医療に貢献するとともに、他方で長寿医療の確立、臨床や基礎研究に生かしていける」「ナショナルセンターだからこそ、地域のなかでしっかりした仕組み、地域モデルをつくっていかなければならない」と、明確にのべられたことは私の強い印象でもあり確信ともなりました。
 国がようやく重い腰を上げて、国立の長寿医療・研究が連携したナショナルセンターを立ち上げたときに、都立老人医療センターを、民営化して、その成果を雲散霧消させては絶対になりません。老人医療センターを都立直営で存続し、老人総合研究所と老人ホームとの三位一体の連携を強化し、愛知県大府市の国立長寿医療センターとともに大きな役割をはたすことこそ、21世紀の高齢者の医療の進むべき方向であると確信します。
ア 昨年六月には、板橋区議会が議長、副議長、地元板橋の都議会議員とともに都議会議長にたいして、老人医療センターは都立として存続することを文書で申し入れました。「都立としての存続は」板橋区長をはじめ、文字通り超党派的な要求となっている。この板橋区長、板橋区議会の一致した意向を尊重すべきではないか。
イ 都立老人医療センターについては、老人総合研究所、ナーシングホームなど老人ホームとの三位一体の施設として、世界的にも注目され、国立長寿医療センター・研究所の設立にも大きな影響を与えている。都立老人医療センターの全国的役割、とりわけ高齢者医療にはたしている、都立としての役割がいよいよ重要になっていると考えるがどうか。
ウ 「当初の豊島病院との統合民営化」方針を、事実上修正せざるをえなくなったなかで、知事が一方的に「老人医療センターの民営化」を表明したが、「なぜ民営化なのか」「直営ではなぜだめなのか」の説明がない。なんらまともな検討もないままだされた民営化方針は撤回し、21世紀の高齢者医療、研究に都立老人医療センターがはたすべき役割について、都民と高齢者医療研究の専門家、地元板橋区と区医師会などの関係者が参加して、十分に検討すべきと考えるがどうか。それぞれ答弁を求める。
2 都立豊島病院については、都と板橋区との間で区移管についての協議会が設置され議論が始まっています。ところが、その協議の主たる内容が、区移管の時期、区移管後の病院の運営形態、土地・建物・医療機器などの資産の取り扱いなどとなっています。この検討にあたって基軸にすえなければならないのが、「公立の病院としてどのような医療を行うことが必要か」ということです。
 いうまでもなく、公立病院の役割は、第一にその地域で不足している医療分野に責任をもつ。第二に都民・区民とりわけ低所得者や障害者、難病患者などの患者に対して医療をうける権利を保証する。第三に民間ではなかなか担いきれない不採算医療に責任をもつ。第四に、医療僻地への医療の保証を行うことなどです。このことを抜きにして、区移管だけを先行させることは、決してあってはならないことです。
 いま、板橋での自治体運営の病院を考える際に念頭に置くべきものが、都内で一番病床数が多い地区が板橋区だということです。その病床数第一位の板橋区が、例えば、豊島病院で現在、一般小児ベッド数が30床あるのに、区の小児医療についての計画では、その2倍の60床に増床したうえで、病床利用率も95.1%とほぼ満床になることを見込んでいます。しかし、現在の都立豊島病院が年間通じてほぼ満床なのは周産期のNICU、GCUであって、一般小児ベッド30床の利用率が65%程度となっています。一般小児で、無理やり利用率を高めようとすると、区内民間医院等の小児科を直撃することになりかねません。
 板橋区内の地域医療連携が良好なのも、不採算医療といわれる行政的・重点的医療を都立豊島病院が行ってきたからです。
 豊島病院がおこなっている精神科救急は、都内4カ所でしかやられていない。感染症は城北ブロックでは唯一で、お産から新生児治療までの一貫した新生児治療・未熟児室を備えた周産期医療のセンター機能や、都内初の末期がん患者の緩和ケアなど、各界から注目されている医療を行っています。これは都立だからこそできるのではないでしょうか。
 「区立病院」構想について区側が、区議会でのわが党区議の質問に対して、「委託がいい」との意向をしめし、直営での運営を否定し、お金のかかる行政的、重点的医療については消極的な見解を表明していますが、これらは本来、都が責任をもってやるべきものであり、区が運営する病院では担いきれないものだからです。
 区が委託した病院が、行政的・重点的医療を行わないで、90%のベッド利用率(現豊島病院は86.9%)を実現しようとすれば板橋区内の民間病院、医院の診療と競合し、かえって地域医療連携を破壊することになりかねません。
 改築オープン直後の豊島病院は、「完全紹介予約制」の過度な宣伝で、改築前よりも都民が以前よりもかかりづらくなった事態に対しても、地域住民などとともに、「いつでも誰でもかかれる病院に」という方向へと、かなり是正され、現在に至っています。民間ではやりきれない不採算部門、行政的・重点的医療を率先して担っていくことにこそ公立病院が担う役割があります。
 都内一番のベッド数をもっている板橋で、都立病院が担っている行政的医療、重点的医療を、引き続き都民に保障することこそ、いまもっとも求められている物と確信します。そこで伺います。
ア 都立豊島病院の行政的医療・重点的医療こそ、都民・医療関係者、とりわけ板橋をはじめ城北地域において、なくてならない必須条件であり、今後とも必要不可欠なものだと考えるが、どうか。
イ 直営でこそ、こうした都民的な役割が発揮できるものであり、直営での存続を図るべきだと考えるがどうか。それぞれ、答弁を求める。

平成16年第二回都議会定例会
古館和憲議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 地震発生時の応急対策の確立について
1 被害想定について
ア 東京は、長周期波動による都市施設の被害など新たな問題や、木造住宅密集地域での建物の老朽化など、実際に起こるであろう被害と、現在の都の被害想定との乖離が指摘されている。こうした状況をふまえた、あらたな視点もふまえた地震被害の想定が必要ではないか、見解を伺う。

回答
  都は、地震に強いまちづくりを積極的に推進するとともに、都民・事業者及び行政が連携を図り、予防、応急復旧対策から復興対策に至るまで、総合的な震災対策に取り組んでいます。
  現在の被害想定は、阪神・淡路大震災の教訓をも踏まえて、東京に直下地震が発生した場合の被害を推計し、平成9年に公表したものであり、以来、都は、想定される被害に対し、様々な取組により、東京の防災性の向上を図ってきました。
  一方、近年、長周期地震動による高層建築物への影響などの新たな課題も指摘されています。
 こうしたことから、既に、前回想定以降の状況の変化や最新の知見をも踏まえた新たな被害想定について検討を始めています。

質問事項
一の1のイ 当面、現在の地震被害想定に基づく、避難や人命救助などのための体制や施設、設備などの対策について、数値目標と達成年度を明確にして取り組む必要があると考えるが、見解を伺う。

回答
  都は、東京都震災対策事業計画を策定し、都民が安心して住めるまちを実現するための取組を進めています。
 避難や人命救助などの対策については、避難場所の確保、医療体制の整備、消火・救助体制の整備など年次ごとに計画を定め、着実に推進しています。

質問事項
一の2 都民防災教育センターは、都民の防災意識の向上などに大きな役割をはたしているが、03年度行政評価の第二次評価で見直しを求める評価がなされ、池袋防災館を廃止する方向で検討が進められている。池袋防災館を存続するとともに、3館体制での施策の拡充を求めるものだが、見解を伺う。

回答
  都民防災教育センターについては、平成15年度行政評価結果では「現在の3館体制について精査を行う必要がある。」とされております。
 このため東京消防庁では、行政評価結果の主旨を踏まえ、より効率的な運営体制に努め、都民に対して効果的な防災教育を提供できるよう、検討を行っています。

質問事項
一の3 市民防災組織に対して、都として、資機材の更新や拡充、さらには運営にあたっての恒常的な支援を行うことは有意義なものと考えるが、見解を伺う。

回答
  防災市民組織の多くは、自治会など地域に根ざした組織を母体に、その地域の実情に合った防災活動を行っています。
 東京都震災対策条例において、都は、区市町村が行う地域の自主的な防災市民組織の育成に対し、支援及び協力を行うこととしており、リーダー養成講習会の実施や区市町村への情報提供を行うなど、防災市民組織の活性化に取り組んでいます。
 今後も、区市町村と連携し、活動環境の整備など必要な取組を進めていきます。

質問事項
一の4 帰宅困難者対策について、「都市再生」の進展というあらたな事態のもとでの帰宅困難者の予測をあらためておこなうこと、都のイニシアチブで、関係自治体とのネットワーク化をすすめること、代替え交通手段の確保、宿泊施設の確保、通信手段の確保、応急の食料の確保などについて、目標をさだめ、計画的に対策をはかることを提案する。見解を伺う。

回答
  帰宅困難者対策は、自助・共助の考え方に基づき、昼間都民や事業者自らの取組が重要です。
 このため、都は、八都県市共同による広域的な普及啓発に取り組んでいるほか、区市町村と連携し、支援のあり方、支援施設の拡充など支援のための仕組みづくりを行っています。
 また、個々の事業者に対し、帰宅困難者対策に取り組むよう指導するとともに、企業による地域防災組織とも連携しながら、帰宅困難者対策を進めています。

質問事項
二 都立老人医療センターと豊島病院について
1 都立老人医療センターについて
ア 「都立としての存続は」板橋区長をはじめ、文字通り超党派的な要求となっている。板橋区長、板橋区議会の一致した意向を尊重すべきでないか、所見を伺う。

回答
 今後の高齢化の急速な進展を踏まえ、都立病院改革マスタープランで示された高齢者医療の充実と普及拡大という理念に基づき、老人医療センターの民営化について検討していきます。

質問事項
二の1のイ 老人医療センターの全国的役割、とりわけ高齢者医療にはたしている、都立としての役割がいよいよ重要になっていると考えるがどうか、伺う。

回答
  老人医療センターは、高齢者の高度専門医療を行うモデル病院として、高齢者の生活の質の向上・維持を第一義とした医療を提供してきました。
 今後も、これまで取り組んできた高齢者医療の一層の充実と普及拡大を図っていくことが求められています。
 このため、質の高い医療サービスの提供及び普及、弾力的かつ効率的な自立的経営等が可能となるよう、民営化について検討していきます。

質問事項
二の1のウ まともな検討もないまま出された民営化方針は撤回し、都立老人医療センターがはたすべき役割について、都民と専門家、地元板橋区と区医師会などの関係者が参加して十分に検討すべきと考えるがどうか、伺う。

回答
 医療における各分野の専門家、医師会・民間病院など関係団体の代表、都民の代表などからなる「都立病院改革会議」の報告を受け、策定された「都立病院改革マスタープラン」において、老人医療センターについては、高齢者医療の一層の充実と普及拡大を図っていくため民営化するとの方向性が既に明らかにされています。

質問事項
二の2 都立豊島病院について
ア 都立豊島病院の行政的医療・重点的医療こそ、都民・医療関係者、とりわけ板橋をはじめ城北地域において、なくてはならない必須条件であり、今後とも必要不可欠なものだと考えるがどうか、伺う。

回答
 豊島病院が担っている精神科救急や感染症医療などの行政的医療については、都全体として確保していくという観点から、今後、関係局間で十分検討していきます。

質問事項
二の2のイ 直営でこそ、行政的・重点的医療を担う都民的な役割が発揮できるものであり、直営での存続を図るべきだと考えるがどうか、伺う。

回答
 都立豊島病院については、地元板橋区から区立病院としての運営を目指し積極的に取り組む旨の意思表示がなされており、都としては、この区立病院構想を地域医療の更なる充実につながる、意義ある取組と受け止め、現在、板橋区と協議を行っております。

平成16年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 松村友昭

質問事項
 一 30人学級について

一 30人学級について
1 わが党は30人学級について、これまでくり返し実施を求めてきました。
  この4月から全国の42道府県で、30人学級をふくむ少人数学級にふみ出し、どこでも父母、教員、子どもたちに大歓迎されています。
  東京の学校だけが全国の流れに取り残されている現状で、本当に良いのでしょうか。
  私の住む練馬区の小学校では、2004年4月の段階で、1学級の生徒数が31人から40人の学級編成になっているところが全体の6割、そのうち36人以上の学級でみても2割以上にものぼっています。中学校では、31人から40人の学級が8割、そのうち36人以上の学級は4割にもなります。しかもマンション建設による転入などにより、年度途中で生徒は増え、実際に昨年12月には、41人以上の学級が6学級も存在していました。
  いま40人かそれに近い学級では、教員が子どもの心理や行動をつかみきれない現状が広がっており、とりわけ新入生のクラスでは学級崩壊の原因ともなる「小一プロブレム」として対策の必要がいわれています。
  先日、山形県による少人数学級の報告研究会では、小学校低学年への少人数学級の導入で、子どもの欠席や保健室登校が大きく減ったことが報告されました。そこでは文科省の担当者も、小学校低学年では少人数学級を当然の方向とする発言を行なっていました。
  都は学習集団の少人数化の意義は認めながらも、「生活集団としての学級定数には定説がない」として、国の標準法の規定に従うと繰り返してきましたが、少人数学級の実現が、生活集団としてもプラスの方向となることが全国で日々、証明されてきているではありませんか。
  都民からはこの10年間、毎年100万人を大きく越える請願署名が寄せられているのです。
  この多くの都民要望に応えて30人学級にふみ出すには知事の決断が求められています。国に対して、30人学級への標準法の定数改善を迫るべきではありませんか。そして国の改善までの間、都独自に小学校低学年から計画的に30人学級にふみ出すよう求めます。知事の答弁を求めます。
2 文科省は、少人数指導向けに配置したきた教員定数を、今年度から少人数学級実施のために弾力的に運用することを認めましたが、来年度についても累計3万人の加配定数の限度いっぱい、少人数学級への振り替えを認める姿勢を表明しており、8月か9月には、そのための意向調査がおこなわれます。
  都は昨年末に、弾力的運用について「該当なし」と回答し、これは都の研究校指定の権限で行なったものだと説明しました。
  しかし少人数学級など学級定数の制度改善を実施してほしいと要望してきた26市や23区の教育長などから「知らせもしないのはおかしい」と声が出されたのは当然です。
  文科省は、加配定数を少人数指導と少人数学級のどちらに活用するかは、区市町村や学校の実情をふまえて指定すべきとの考え方を示しており、都が昨年のように、区市町村の意見も聞かずに「該当なし」の判断をすることは、地方分権の立場からも許されません。
  都は来年度に向けて、弾力的運用についての文科省の意向調査の通知が来たら、直ちに区市町村に知らせるとともに、区市町村の意向を尊重して対応すべきと考えますが、答弁を求めます。
 

平成16年第二回都議会定例会
松村友昭議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 30人学級について
1 この4月から42道府県で、30人学級を含む少人数学級にふみ出した。都民からは、この10年間、毎年100万人を超える請願署名が寄せられている。国に対して、30人学級への標準法の定数改善を迫るべきである。そして、国の改善までの間、都独自に小学校低学年から計画的に30人学級にふみ出すよう求める。見解を伺う。

回答
 都教育委員会では、学級編制基準とすべき生活集団である学級について、児童・生徒の社会性を養う観点から、学年を問わず、現行の国の標準である40人としています。
 一方、都教育委員会では、基礎学力などの向上に配慮し、きめ細やかな指導を行っていくために、国の定数改善計画を活用して、教科等の特性に応じた少人数による指導の充実に努めております。
 また、平成16年6月に発表された、国立教育政策研究所の「指導方法の工夫改善による教育効果に関する比較調査研究」においても、少人数指導による学力向上の効果が報告されており、今後とも、少人数指導を充実するための定数改善について国に要望してまいります。

質問事項
一の2 文科省は、加配定数を少人数指導と少人数学級のどちらに活用するかは、区市町村や学校の実情をふまえて指定すべきとの考え方を示しており、都が昨年のように区市町村の意見も聞かずに判断することは許されない。都は来年度に向けて、弾力的運用についての文科省の意向通知が来たら、直ちに区市町村に知らせるとともに、区市町村の意向を尊重して対応すべきと考えるが、見解を伺う。

回答
 文部科学省からの平成15年11月21日付事務連絡で述べられているとおり、今回の措置は、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律第15条第4号の「当該学校において教育指導の改善に関する特別な研究が行われていること」という規定に基づき、都道府県教育委員会が定める「少人数学級に関する研究指定校」に対し、少人数指導等の「指導方法工夫改善定数」の範囲内で、定数加配措置をするものです。
 研究指定校の設置については、都教育委員会が判断すべきものであり、区市町村の意向調査を義務付けているものではありません。
 都教育委員会としては、国の教職員定数改善計画を踏まえ、加配定数については少人数指導の充実に充てており、少人数学級の研究指定は行わないこととしました。
 このため、平成17年度に向け、区市町村の意向を調査する考えはありません。

平成16年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 丸茂勇夫

質問事項
 一 中小建設業の支援について

一 中小建設業の支援について
  都内中小建設業の支援について、今定例会の本会議一般質問で、業種別の振興プランや経営革新のための支援プログラムの策定をはじめとする提案をおこなったところですが、不況と下請けいじめ、ダンピング競争などに苦しむ建設業者からは、これらにとどまらず、多岐にわたる要望が寄せられています。
  そこで、中小建設業者の生きのこりと、その健全な育成のための具体的対策について、都の対応をもとめるものです。
 1 官公需法改定に対する都の見解について
  「官公需についての中小業者の受注の確保に関する法律」(官公需法)は、1966年に施行され、その目的を、国等が物件の買い入れ等の契約を締結する場合における中小企業の受注の機会を確保するための措置を講ずることにより、中小企業の発展に資すると定めています。
 いま、官公需法をめぐって、財界・大手建設業は、建設業に市場開放を求め、官公需法を見直し、市場競争に持ち込もうとしています。政府においても2003年7月の閣議決定で、官公需法の改定の検討をうちだし、この2004年3月には「規制改革・民間開放推進3カ年計画」を閣議決定し、3カ年かけて見直しに取り組むとしたことは重大です。
 これでは、中小建設企業を弱肉強食の社会にさらし、崩壊の道しかないと中小企業団体中央会、全国中小建設業協会などが見直しに反対しています。フランスでは、法律で、組合、職人等に関する規定をさだめ、入札書で中小業者に優先権が与えられる仕組みがあり、自由経済のアメリカでも中小企業法で、経済システムの本質は自由競争としながらも、中小企業の利益を可能な範囲で保護し、支援し、助言し、助成すべしと定めているのであります。
 中小建設業者は、長引く不況と過度の競争の狭間にあって、生きのこりのための必死のとりくみをすすめているところであり、中小建設業団体は、官公需法は中小企業にとってはなくてはならない政策であり、法の見直し・廃止は死活問題であり、到底認められないとしています。現在のところ、法の見直しを許さないという中小企業の声が押しとどめていますが予断は許されません。
 そこで、東京都として、官公需法の改悪をおこなわないよう、国に対して意見をあげる必要があると考えますが、見解を伺います。
2 都内中小建設業への優先発注について
ア バブル崩壊後の、長期にわたる不況のもとで、大手建設業者が中小建設の分野まで進出したり、東京に全国の建設業者が参入し、草刈り場の様相を呈するなど、都内中小業者の仕事がおおはばに減少する事態が生まれています。
 そこで、都として、分離分割発注にいっそうつとめるとともに、都の大規模工事において、中小建設業の受注機会をふやすために、中小企業同士のJVよる大規模工事への参入を認め、受注の機会をひろげるように改善することを求めるものですが、お答えください。
イ また、都は、他県からの参入にきわめて寛大だとの声が寄せられています。県によっては、受注希望型競争入札制度を条件として、競争が確保される範囲内で県内発注を原則としています。
 こうした取組を参考にし、都内中小建設業への地元発注、優先発注に努めるべきと考えますが、所見を伺います。
3 協同組合などの建設業の監理技術者について
  中小建設業者が、互いの仕事の確保や技術の交流などのために結成している協同組合から寄せられている要望のひとつが、監理技術者の規定の改善です。
  現在、建設工事の監理技術者は、3ヶ月以上の雇用関係を結んでいることなど恒常的に配置されていることが条件とされており、組合員企業の集合体である協同組合の場合にも、この規定を一律的に適用していることについて、改善をもとめているものです。それは、協同組合の性格上から、団体として監理技術者を常駐させることは困難であり、実際の工事は、組合員企業が施行にあたることから、その企業の監理技術者を出向させることで、協同組合受注の工事についても対応することが可能となるからです。この点について、国土交通省では、一定の要件を満たせば在籍出向を認めています。
 協同組合の受注工事については、転籍出向技術者の変更の特例を設けるなど柔軟な対応をもとめる要望は切実です。国と協議し改善すべきと考えますが、お答えください。
4 確認事務の支援について
 国の防災密集地域の整備方針を活用した木造住宅の耐震補強工事は、都と区市町村との連絡協議会の準備会がつくられるなど、とりくみがはじめられています。この問題で、事業執行にあたって必要とされる建築確認について、確認事務の権限を持たない自治体について、改善してほしいという要望が寄せられています。そこで、確認事務の支援策など事業をスムーズにすすめるための都としての対応が求められると考えますがどうか、伺います。
5 企業再生について
 経営上やむなく事業の縮小・撤退を余儀なくされた場合の対策・支援は急務です。
 第1に、経営者に対しては、アドバイザーの派遣により、情報収集と経営の分析、さらには円滑な事業継承などの対応について、相談体制を確立すること。
 第2に、雇用の確保と従業員の再就職の問題では、休業補償や職業訓練経費の一部助成などをおこなうこと。
 第3に、企業の分社化や共同子会社化、企業再生計画などとあわせた、設備・運転資金の融資策などの支援の仕組みづくりをおこなうこと。
 などが欠かせないと考えますが、どうか。見解を伺います。
6 公契約条例の創設について
 不況と下請けいじめ、さらには、業者間のダンピング競争などの激化のもとで、公共工事に従事する建設労働者の賃金未払いが深刻化しています。
 この問題では、ILO94号条約で、公契約における労働条件確保を定め、現在58カ国がその立場からの法制度を制定していますが、日本では法制定も条約の批准さえもおこなわれていません。
 こうしたもとで、劣悪な雇用関係と労働条件の改善をもとめる声が高まり、公契約条例の制定を求める運動が広がっています。すでに、函館市では要綱をつくり対応を開始し、都内では府中市が検討をはじめているとのことです。
 そこで、東京都も早期に公契約条例をつくり、建設産業に働く労働者の要求に応えるべきと考えますが所見を伺います。
 

平成16年第二回都議会定例会
丸茂勇夫議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 中小建設業の支援について
1 「官公需についての中小業者の受注の確保に関する法律」(官公需法)について、政府は3カ年かけて見直しに取り組むとしている。都として、官公需法の改悪を行わないよう、国に対して意見をあげる必要があると考えるが、見解を伺う。

回答
  今後の官公需施策のあり方については、国の「中小企業政策審議会基本政策部会・取引部会官公需施策に関する合同検討小委員会」において、意欲ある中小企業者の参入促進や分割発注のあり方など、競争性、公平性、透明性等、幅広い観点から検討されていると聞いています。
  都としては、国の論議を見守ってまいります。

質問事項
一の2 都内中小建設業への優先発注について
ア 都として、分離分割発注にいっそうつとめるとともに、中小企業同士のJVによる大規模工事への参入を認め、受注の機会をひろげるように改善することを求めるものだが、見解を伺う。

回答
  都は公共工事における中小企業者の受注機会の確保のため、建築工事、電気工事などのように、工事の種類ごとに分離して発注するとともに、適切な工事規模に分割し、可能な限り中小企業者が受注できるよう努めています。
 JVの取り扱いについては、すべて自主結成方式を採用して柔軟な対応を行っており、中小企業者の受注機会の一層の拡大を図るため、一定規模の工事に当たっては中小企業者同士のJV結成も採用しています。

質問事項
一の2のイ 県によっては、受注希望型競争入札を前提として、競争が確保される範囲内で県内発注を原則としている。こうした取組を参考にし、都内中小建設業への地元発注、優先発注に努めるべきと考えるが、所見を伺う。

回答
  都は、これまでも分離分割発注や中小企業を構成員とする共同企業体及び事業協同組合などを活用し、中小企業の受注機会の確保に努めてきました。
  その際、発注工事が行われる地域の中小企業については、発注規模に対応する企業がない場合等を除き、優先指名を行ってまいりました。
  今後とも、競争性の確保に努めつつ、地元中小企業への配慮に意を用いてまいります。

質問事項
一の3 監理技術者の規定に関し、協同組合の受注工事については、転籍出向技術者の変更の特例を設けるなど柔軟な対応を求める要望は切実である。国と協議し改善すべきと考えるが、所見を伺う。

回答
  建設業法では、建築工事の適正な施工を確保するため、元請業者に関しては、現場ごとに監理技術者等を設置すべきことを規定しています。これらの技術者については、所属する元請業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある者であることが必要とされています。
  この点については、事業協同組合の場合も同様に取り扱うこととされており、元請である事業協同組合の構成員の業者が、そこに在籍したまま当該組合に技術者を出向させる、いわゆる在籍出向の方法は、認められていません。
  在籍出向の特例は、経営基盤の強化や経営の合理化を支援する観点から、建設業者が営業譲渡又は会社分割を行った場合等に限定して認められているものであり、現行制度上、事業協同組合の受注工事に関して、こうした特例を適用することはできないこととなっています。

質問事項
一の4 木造住宅の耐震補強工事に関し、事業執行にあたって必要とされる建築確認事務の権限を持たない自治体について、改善要望が寄せられている。確認事務の支援策など事業をスムーズにすすめるための都としての対応が求められると考えるがどうか、伺う。

回答
  木造住宅に関する国の耐震改修補助事業においては、特定行政庁が地震に対して安全な構造とするよう勧告を行った住宅が対象となります。
  現在、都内の特定行政庁は全区市町村のうち23区8市で、それ以外の市町村の区域については、都が特定行政庁の事務を行うこととなります。

質問事項
一の5 企業再生について、アドバイザーの派遣により相談体制を確立すること、休業補償や職業訓練経費の一部助成等を行うこと、企業再生計画などとあわせた設備・運転資金の融資策などの支援の仕組みづくり、などが欠かせないと考えるが、見解を伺う。

回答
  縮小・撤退を余儀なくされた経営者に対する相談体制については、財団法人東京都中小企業振興公社に総合相談窓口を既に設置しており、中小企業診断士等、さまざまな分野の専門家による経営相談を行うほか、企業の要請に応じて専門家を派遣しています。
  休業補償や職業訓練費の一部助成等については、景気の変動、産業構造の変化等の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、休業又は職業訓練を行った事業主に対しては、既に国の雇用調整助成金制度により、休業手当又は賃金の一部が助成されることとなっています。都は、労働者の雇用確保等を図るため、この国の制度の周知に努めています。
  金融支援については、分社化や共同子会社化を行う中小企業に対しては、制度融資の中の「創業支援」により既に金融支援を実施しています。また、企業再生のための支援策としては、今後設立する中小企業再生ファンドにより、業種を問わず、再生の見込みのある企業を対象に金融支援や経営支援を行っていきます。

質問事項
一の6 公共工事に従事する建設労働者の賃金未払いについて、ILO94号条約で、公契約における労働条件確保が定められているが、日本は条約を批准していない。公契約条例制定を求める運動が広がるなか、都内では府中市が検討をはじめている。都も早期に公契約条例をつくり、建設産業に働く労働者の要求に応えるべきと考えるが、所見を伺う。

回答
  現在、日本における労働者の労働条件については労働基準法や最低賃金法などの労働関係法規に基づき、関係労使間によって決定されることとなっています。
  ILO94号条約によるいわゆる「公契約条例」については、建設労働者等の労働条件の確保を上記の既存の法制度で対応していること及び条約を国が批准していないこと等から、都が「公契約条例」を制定する必要はないと考えております。

平成16年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 大河原雅子

質問事項
 一 東京都の水源開発と水道事業について

一 東京都の水源開発と水道事業について
1 水道水源としての地下水について
 ア 認可水源と予備水源
 東京都は国の指導を受けて多摩地域の水道水源である地下水を認可水源として申請し、本年3月30日付けで認可されている。これにより、多摩地域の地下水は従前の予備水源から認可水源に変ったが、この予備水源と認可水源のそれぞれの意味、両者の違いを明らかにされたい。
 イ 予備水源3万立法メートル/日への減少について
 上記の変更に伴って、多摩地域の水道水源である地下水は38万立法メートル/日から35万立法メートル/日に減少したが、予備水源3万立法メートル/日への減少に対応する井戸の内訳およびそれらの井戸を認可水源として申請しなかった理由を明らかにされたい。また、それらの井戸を認可水源とするためにはどのような改善策を講じればよいかも明らかにされたい。
 ウ 変更申請としての28万立法メートル/日
 上記の認可申請において現況では35万立法メートル/日の地下水が将来的には28万立法メートル/日に変更されている。35万立法メートル/日を28万立法メートル/日に減らす理由を明らかにされたい。また、35万立法メートル/日の地下水源を維持するためにはどのような改善策を講じればよいかも明らかにされたい。
 エ 東京都公害対策審議会の答申
 昭和56年10月の公害対策審議会の答申以降は、昨年まで多摩地域の水道水源としての地下水を予備水源として申請してきたとのことであるが、この地下水に関する答申は決して地下水の全面転換を求めたものではないと聞く。この答申の詳細な内容を明らかにされたい。
 オ 昭和40年代から現在までの経過
 上記の答申が出た昭和56年頃は、40年代には急速に進行していた都内の地盤沈下が激減して沈静化の方向に向かっている時期であり、そのような時期に多摩地域の水道水源としての地下水を認可水源から予備水源に変えるのは不可解である。昭和40年代から東京都は水道の水需給計画において多摩地域の水道水源としての地下水をどのように位置付けてきたのか、その詳細な経過を明らかにされたい。その中で、地下水の水源転換計画がいつ、どのように策定されてきたかも明らかにされたい。
 カ 平成元年の地下水転換問題シンポジウム
 平成元年11月18日に開かれた地下水転換問題シンポジウムにおいて水道局の当時の松田奉康計画課長は「地下水は貴重な水源であるから、水源開発の状況を見ながら、地下水を使っていきたい。何年度までに地下水を転換する計画はなくなっている。」と答弁しており、この時期から、多摩地域の水道水源としての地下水の削減が行われなくなった。この時期に多摩地域の水道水源としての地下水の位置付けがどのように変ったかを明らかにされたい。
 キ 調布・三鷹市の水源井戸
 平成12年に調布市水道、14年に三鷹市水道が東京都に一元される前は、二市の水源井戸は認可水源であったはずである。これらの井戸を一元化の際に予備水源に変えた理由を明らかにされたい。
2 課題水源と暫定水利権について
 ア 課題水源
 東京都は既得水源のうち、中江戸緊急暫定44万立法メートル/日、砧上・下18.45万立法メートル/日、相模分水20万立法メートル/日を課題水源とし、安定水源として扱っていない。これらの三つの水源を安定水源とするためには、どのような改善策を講じればよいかを明らかにされたい。
 イ 水源振替措置未了の暫定水利権
 国土交通省の資料(国土交通省が本年3月19日に衆議院佐藤謙一郎議員に提出した資料)によれば、利根川水系にある東京都の水利権のうち、朝霞浄水場の水利権の大半と、工業用水道の水利権が水源振替措置未了という理由で暫定水利権となっている。これらの暫定水利権は草木ダムや渡良瀬貯水池の水利権であるが、これらを安定水利権とするためにはどのような改善策を講じればよいかを明らかにされたい。
3 水源の再評価について
 ア 再評価の意味
 東京都は既得水源と配分確定済み水源について利水安全度1/10にて評価を行った数字を示しているが、この再評価を行う理由を明らかにされたい。また、この再評価値が水需給計画において実際にどのような意味が持つかを明らかにされたい。
  イ 再評価の方法
 上記の水源の再評価の計算手法とその根拠を明らかにされたい。
 ウ 貯水池運用計算
 利水安全度1/10で水源の再評価を行うためには1/10の渇水年において各ダムの貯水池運用計算を行うことが必要である。各ダムについて貯水池運用計算を行った結果を示されたい。
4 渇水時の状況について
 ア 取水制限時の措置
 最近20年間の利根川・荒川の取水制限に対して東京都水道局がとった措置とその期間を明らかにされたい。
 イ 生活等への影響
 上記の東京都水道局がとった措置によって実際に生活や事業所活動に影響があったかどうか、もしあったならば、その具体的な内容を渇水年ごとに明らかにされたい。
5 用途別料金徴収水量について
 ア 毎年の用途別料金徴収水量を公表しない理由
 給水量の動向を判断するためには、家庭用、公衆浴場用など、詳しい用途別料金徴収水量の毎年の数字が必要である。横浜市や川崎市など、多くの都市は用途別料金徴収水量を毎年の事業年報で公表しているが、東京都は用途別料金徴収水量を公表していない。公表してこなかった理由を明らかにされたい。
 イ 毎年の用途別料金徴収水量
 東京都水道の詳しい用途別料金徴収水量を過去20年間について明らかにされたい。
6 利用量率について
 ア 各浄水場の利用量率
 各水道浄水場の利用量率(給水量/取水量)を過去5年間について明らかにされたい。
 イ 東京都の水源623万立法メートル/日を算定する際に用いた利用量率
 東京都は水道の既得水源を給水量換算で623万立法メートル/日としているが、この623万立法メートル/日の算出に用いた各水源の利用量率とその根拠を明らかにされたい。
 ウ 実績値と異なる利用料率を使う理由
 イの値がアの各浄水場の利用量率実績値と異なる場合は実績値と異なる数字を用いる理由を明らかにされたい。
7 負荷率について
 ア 負荷率の上昇傾向の理由
 東京の水道の負荷率(一日平均給水量/一日最大給水量)の傾向をみると、概ね上昇傾向にある。負荷率が概ね上昇傾向にある理由を明らかにされたい。
 イ 水需要予測に用いた負荷率
 東京都が水需要予測に用いた負荷率とその根拠を明らかにされたい。
 ウ 最近の実績値と異なる負荷率を使う理由
 イの値が近年の負荷率実績値と異なる場合は異なる数字を用いる理由を明らかにされたい。また、将来とも現状程度の値の負荷率を維持するためにどのような改善策を講じればよいかを明らかにされたい。

平成16年第二回都議会定例会
大河原雅子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 東京都の水源開発と水道事業について
1 水道水源としての地下水について
ア 都は国の指導を受けて多摩地域の水道水源である地下水を認可水源として申請し、本年3月30日付けで認可されている。これにより、多摩地域の地下水は従前の予備水源から認可水源に変ったが、この予備水源と認可水源のそれぞれの意味、両者の違いを伺う。

回答
  水道事業認可における予備水源とは、厚生労働省によると、認可水源の水量不足等の事態に対処しようとするものであり、その使用は原則として、地震、渇水、水質事故等事業計画上考慮しえない事象の発生時にのみ一時的に行われるものとされています。
  これに対し、多摩地区の地下水は、地盤沈下や水質の面から長期的に見ると、将来における安定性に欠けるため、予備的な水源としておりますが、常時取水している水源は、認可の対象となります。

質問事項
 一の1のイ 多摩地域の水道水源である地下水は38万立法メートル/日から35万立法メートル/日に減少したが、予備水源3万立法メートル/日の減少に対応する井戸の内訳およびそれらの井戸を認可水源として申請しなかった理由を伺う。また、それらの井戸を認可水源とするためにはどのような改善策を講じればよいかも伺う。

回答
  平成15年度の水道事業の認可における予備水源約3万立法メートル/日として、地盤沈下、揚砂や揚水量の減少、水質悪化等により取水を停止している29本の井戸があります。今回の水道事業認可では、水道水として現在供給している実態がある井戸を認可の対象として整理しています。
  なお、予備水源を認可対象とするには、水道水としての供給を再開できる状況となる必要があります。しかし、地盤沈下や水質問題などから、取水再開は難しい状況にあると考えます。

質問事項
 一の1のウ 認可申請において、現況では35万立法メートル/日の地下水が将来的には28万立法メートル/日に変更されている理由を伺う。また、35万立法メートル/日の地下水源を維持するためにはどのような改善策を講じればよいかも伺う。

回答
  水道事業認可においては、目標年度における計画取水量を示すこととなっています。このため、今回の水道事業認可では、目標年度における地下水の計画取水量を過去10年間の取水量実績の傾向から推定しました。
  多摩地区の地下水については、今後とも身近にある貴重な水源として井戸の維持保全に努め、可能な範囲で活用を図っていきますが、地盤沈下、水質問題などから、将来にわたり安定的に取水できると考えることは困難です。

質問事項
 一の1のエ 昭和56年10月の公害対策審議会の答申以降は、昨年まで多摩地域の水道水源としての地下水を予備水源として申請してきたとのことであるが、この地下水に関する答申は決して地下水の全面転換を求めたものではないと聞く。この答申の詳細な内容を伺う。

回答
  本答申では、今後の地盤沈下対策について、「東京の地盤沈下を抑止するためには、地下水の揚水量をさらに削減するとともに、地下水のかん養量の増大を図る必要がある。」としています。
  これを踏まえて、今後講ずべき方策として、多摩地域等における水道用地下水揚水量の削減については、「昭和55年の多摩地域の水道用地下水揚水量は44万立法メートル/日で、都内における地下水総揚水量は84万立法メートル/日の50%を超えており、この揚水量を削減することが地盤沈下対策上重要である。しかし、昭和51年に閣議決定された『利根川水系及び荒川水系における水資源開発基本計画』による水資源開発は、大幅に遅れており、早急に多摩地域の水源として表流水源を求めることは期待できない。したがって、暫定的な措置として、既得の表流水源をよりきめ細かく運用することにより、地下水揚水量の削減を図るべきである。」としています。

質問事項
 一の1のオ 昭和40年代から都は水道の水需給計画において多摩地域の水道水源としての地下水をどのように位置付けてきたのか、その詳細な経過を伺う。その中で、地下水の水源転換計画がいつ、どのように策定されてきたかも伺う。

回答
  昭和48年に、当時の公害局から、東京の地盤沈下を抑止するため水道用地下水の速やかな表流水への転換を求められました。
  水道需給計画においては、昭和51年から多摩地区の地下水源について、年次を示して漸次減量していく旨を記述しています。
  その後、昭和56年に、公害対策審議会の答申により、水源開発の大幅な遅れを踏まえた地下水の揚水量の削減にかかる方策が示されました。
  昭和57年の水道需給計画においては、多摩地区水道用地下水日量約50万立法メートルについては、地盤沈下防止のため、漸次表流水に転換する旨を記述しています。
  なお、平成2年度以降では、水道需給計画における地下水の記述はありません。

質問事項
 一の1のカ 平成元年11月に開かれた地下水転換問題シンポジウムの時期から、多摩地域の水道水源としての地下水の削減が行われなくなった。この時期に多摩地域の水道水源としての地下水の位置付けがどのように変ったかを伺う。

回答
  当時、水源開発が大幅に遅れている実情から、計画目標を定めて地下水を河川水に転換していくことが困難な状況であり、水道局では、水道用地下水について、当面は水源の不足を補うものとして利用し、さらに、今後とも貴重な予備的水源として平常時はもとより渇水時や震災時などにも有効に利用できるように日頃から井戸施設の維持保全に努めていくとの考え方を示しています。
  しかし、多摩地区の地下水については、長期的に見ると、地盤沈下や水質の面から、将来にわたる安定的な水源として位置づけることは困難と考えており、この点については、従来から考え方が変わるものではありません。

質問事項
 一の1のキ 調布市水道、三鷹市水道が都に一元化される前は、2市の水源井戸は認可水源であったはずである。これらの井戸を一元化の際に予備水源に変えた理由を伺う。

回答
  多摩地区の地下水については、長期的に見ると、地盤沈下や水質の面から、将来にわたる安定的な水源として位置づけることは困難であると考えています。
  このため、調布市水道や三鷹市水道を都営水道に一元化する際、2市の地下水は、他の多摩地区の地下水と同様に予備水源の扱いとし、水道事業認可を受けました。

質問事項
 一の2 課題水源と暫定水利権について
    ア 都は既得水源のうち、中江戸緊急暫定44万立法メートル/日、砧上・下18.45万立法メートル/日、相模分水20万立法メートル/日を課題水源とし、安定水源として扱っていない。これらの三つの水源を安定水源とするためには、どのような改善策を講じればよいかを伺う。

回答
  中川・江戸川緊急暫定は、慢性的な渇水状況にあった昭和30年代後半に、緊急措置として暫定的に取水の許可を受けた水源であり、多摩川の伏流水を取水する砧・砧下は、河床の低下により計画どおりの取水が困難となっています。いずれも安定水源とすることは難しい状況です。
  また、相模分水については、神奈川県及び川崎市から、有償で原水の分譲を受けているもので、その分水協定の更新は1年毎に行われています。この水源は神奈川県及び川崎市が保有するものであり、東京都の安定水源とすることは難しい状況です。

質問事項
 一の2のイ 国交省の資料によれば、利根川水系にある都の水利権のうち、朝霞浄水場の水利権の大半と、工業用水道の水利権が水源振替措置未了という理由で暫定水利権となっている。これらの暫定水利権は草木ダムや渡良瀬貯水池の水利権であるが、これらを安定水利権とするためにはどのような改善策を講じればよいかを伺う。

回答
  草木ダム及び渡良瀬貯水池の水源については、開発地点である渡良瀬川と利根川の合流地点より上流に位置する利根大堰で取水していることから、暫定水利権として許可されています。
  浄水場の配置及び能力から、水源の振替措置は困難です。

質問事項
 一の3 水源の再評価について
   ア 都は既得水源と配分確定済み水源について利水安全度1/10にて評価を行った数字を示しているが、この再評価を行う理由を伺う。また、この再評価値が水需給計画において実際にどのような意味が持つかを伺う。

回答
  都の水源の約8割を占める利根川水系は、利水安全度1/5で計画されていますが、一般的に水源開発は利水安全度1/10の計画となっています。さらに、国土交通省によれば、近年の少雨傾向等の影響もあって、利根川の実際の供給能力が、計画より2割程度低下してきているとされています。このため、利水安全度1/10と少雨傾向を考慮して水源の再評価を行いました。
  再評価の結果、将来安定的に供給可能な量は、課題を抱える水源を含めても将来需要を下回る状況にあります。このため、10年に1回程度発生する規模の渇水への対応を図り、長期的な視点に立って、ダム等の安定した水源の確保に努めていくとともに、多摩地区の地下水の活用や節水施策の推進など、安定給水の確保に向けた総合的な取組が必要と考えます。

質問事項
 一の3のイ 水源の再評価の計算手法とその根拠を伺う。

回答
  国土交通省では、利根川水系のダムから安定的に供給できる水量についての近年20年間の河川流量に基づく計算結果は、当初計画策定時の基準年である昭和35年における河川流量に基づく計算結果と比較して、2割程度減少するとしています。

質問事項
 一の3のウ 利水安全度1/10で水源の再評価を行うためには1/10の渇水年において各ダムの貯水池運用計算を行うことが必要である。各ダムについて貯水池運用計算を行った結果を伺う。

回答
  国土交通省によると、少雨傾向による利根川の供給能力の低下について、複数ダムの統合運用を前提として利水計算を行った上で検討しているとのことです。

質問事項
 一の4 渇水時の状況について
   ア 最近20年間の利根川・荒川の取水制限に対して都水道局がとった措置とその期間を伺う。

回答
  過去20年間における利根川・荒川の取水制限に対する都水道局がとった措置と期間は、下記のとおりです。
・ 昭和60年8月28日から、同年9月13日まで取水制限、節水PRを強化
・ 昭和62年6月11日から、同年8月25日まで取水制限、節水PRを強化、最大で15%の給水制限を実施
・ 平成2年7月3日から、同年9月5日まで取水制限、節水PRを強化、最大で10%の給水制限を実施
・ 平成6年7月15日から、同年9月19日まで取水制限、節水PRを強化、最大で15%の給水制限を実施
・ 平成8年2月21日から、同年3月27日まで取水制限、節水PRを強化
・ 平成8年8月13日から、同年9月25日まで取水制限、節水PRを強化、最大で15%の給水制限を実施
・ 平成9年2月1日から、同年3月25日まで取水制限、節水PRを強化
・ 平成13年8月10日から同月27日まで取水制限、節水PRを強化

質問事項
 一の4のイ 都水道局がとった措置によって実際に生活や事業所活動に影響があったかどうか、もしあったならば、その具体的な内容を渇水年ごとに伺う。

回答
  東京では、広域的な断減水の発生により大きな社会問題となった昭和39年のオリンピック渇水以降も、度々渇水が発生しています。
・ 昭和62年度 43万世帯で出水不良、プールの中止等を実施、問い合わせ等2,782件
・ 平成2年度 15万世帯で出水不良、噴水の使用を中止、問い合わせ等584件
・ 平成6年度 24万世帯で出水不良、噴水等の停止やプールの中止等を実施、問い合わせ等1,944件
・ 平成8年度 9万世帯で出水不良、ビール工場で一部の生産ラインが停止、噴水等の停止やプールの中止等を実施、問い合わせ等4,112件
・ 平成13年度 街路樹への散水や噴水の停止等を実施、一部のプールでは水深を浅くした。問い合わせ等2,719件

質問事項
 一の5 用途別料金徴収水量について
ア 給水量の動向を判断するためには、家庭用、公衆浴場用など、詳しい用途別料金徴収水量の毎年の数字が必要である。横浜市や川崎市など、多くの都市は用途別料金徴収水量を毎年の事業年報で公表しているが、都は用途別料金徴収水量を公表していない。公表してこなかった理由を伺う。

回答
  当局では、口径別料金体系を採用しており、料金徴収水量については、口径別料金適用のもの、共同住宅扱い及び公衆浴場営業に区分して事業年報に公表しています。
  横浜市や川崎市については、当局の料金体系と異なり、用途区分に応じて徴収するものとなっています。
  なお、将来水道需要の予測に当たっては、生活用途、都市活動用途及び工場用途の3用途の使用水量を基に行っていることから、それぞれの実績について集計しています。その集計方法は、各個メータに用途種別を設定しており、それぞれ把握しています。

質問事項
 一の5のイ 都水道の詳しい用途別料金徴収水量を過去20年間について、伺う。

回答
  前述のとおり、当局では用途別料金体系を採用していないことから、用途別料金徴収水量としては、集計しておりません。
  なお、前述の集計方法により、把握している用途別使用水量は、表のとおりです。

用途別使用水量(過去20年間)
用途別一日平均使用水量(単位:千立法メートル/日)
年度生活用途都市活動用途工場用途合計
582,4391,2641263,829
592,5091,2881253,922
602,5381,2761193,933
612,5871,2741183,979
622,6061,2661153,987
632,6751,2891154,079
2,7511,3461154,212
22,8091,3711144,294
32,8471,3741144,335
42,9071,3721144,393
52,9101,3291124,351
62,9161,3141124,342
72,8961,2881094,293
82,9101,2561044,270
92,9291,2501004,279
102,9461,227954,268
112,9581,218904,266
122,9791,211864,276
132,9841,191784,253
142,9961,176714,243
(注1)数値は、区部及び多摩28市町を対象としたものである。
(注2)この値は、各個メータに用途種別を設定し、集計したものである。

質問事項
 一の6 利用量率について
  ア 各水道浄水場の利用量率(給水量/取水量)を過去5年間について、伺う。

回答
  各浄水場における利用量率の実績は、表のとおりです。

各浄水場における利用量率(過去5年間)
各浄水場の利用量率(年配水量/年原水量)(単位:%)
年度東村山小作杉並朝霞三園金町三郷長沢砧・砧下
1199.095.798.5100.094.697.398.099.899.394.6
1298.695.497.8100.099.396.395.599.199.095.9
1399.594.792.8100.096.496.497.597.698.794.6
1499.195.593.8100.096.897.497.397.499.297.4
1599.495.395.7100.096.397.397.297.199.195.7

質問事項
 一の6のイ 都は水道の既得水源を給水量換算で623万立法メートル/日としているが、この算出に用いた各水源の利用量率とその根拠を伺う。

回答
  各水源の水利権量を給水量に換算する際の計画上の利用量率については、利根川・荒川水系95%、多摩川水系の羽村、小作堰87%、砧・砧下90%、相模川水系87%としています。
  計画上の利用量率は、各施設の取水・導水の実態や漏水、原水水質等を考慮した上で設定しています。

質問事項
 一の6のウ 既得水源の算出に用いた各水源の利用量率と、各浄水場の利用量率実績値と異なる場合は、実績値と異なる数字を用いる理由を伺う。

回答
  前述のとおり、計画上の利用量率は、各施設の取水・導水の実態や漏水、原水水質等を考慮した上で設定しています。

質問事項
 一の7 負荷率について
  ア 東京の水道の負荷率(一日平均給水量/一日最大給水量)の傾向をみると、概ね上昇傾向にある。負荷率が概ね上昇傾向にある理由を伺う。

回答
  負荷率は、天気、気温等の気象条件及び渇水、生活様式、企業活動等の社会条件等の様々な要因が複合的に影響して変動します。最近では、長期にわたる景気の低迷等の影響も受け一日最大配水量は減少傾向にあり、それに伴い負荷率が上昇していると考えられます。

質問事項
 一の7のイ 都が水需要予測に用いた負荷率とその根拠を伺う。

回答
  水道需要予測に用いた負荷率については、81%と設定しました。
これは水道需要予測の基準年である平成12年度から過去15年間の実績値を踏まえ、気象、景気などの変動や給水の安定性の確保等を総合的に勘案し、過去15年間の最低値としました。

質問事項
 一の7のウ 水需要予測に用いた負荷率の値が近年の負荷率実績値と異なる場合は、異なる数字を用いる理由を伺う。また、将来とも現状程度の値の負荷率を維持するためにどのような改善策を講じればよいかを伺う。

回答
  負荷率の過去の実績は、増加と減少を繰り返しており、近年が増加傾向であるとしても、将来もこの傾向が継続するとは言えません。
 負荷率については、過去の実績値を踏まえ、気象、景気などの変動や給水の安定性の確保等を総合的に勘案し設定しました。
 なお、負荷率は様々な要因により変動するものであり、特定の対策によりそれをコントロールすることは困難です。

平成16年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 和田宗春

質問事項
 一 特別支援教育のモデル事業について

一 特別支援教育のモデル事業について
 東京都はこれまで学校教育法にもとづいた「特殊教育」としての、盲・ろう・養護学校や小・中学校の心身障害学級等の整備を行なってきている。
 とくに昭和49年の養護学校への希望者全員就学など都独自の施策を推進してきたことは、高く評価できる。
 しかし近年、児童・生徒等の障害の重度、重複化や多様化の伸展、小・中学校の通常の学級に在籍するLD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)、高機能自閉症の児童・生徒などへの対応などが今までの心身障害教育とは異なる新しい側面として把えられなければならなくなってきている。
 このような現況から平成15年3月には国の調査研究協力者会議から発表された「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」では「特殊教育」から「特別支援教育」への転換の方向が示されている。
 これをうけて都教育委員会は平成15年12月に「これからの東京都の特別支援教育の在り方について(最終報告)」をまとめている。
 平成16年度から特別支援教育体制・副籍モデル事業として北区、八王子市、調布市、あきるの市で指定地域として事業を委託している。実施期間は3ヵ年である。
 現在、事業は進行中であるが、ここで数点にわたり都教育庁の考えを確認しておきたい。
1 質問1、都教育庁は区市長村教育委員会との連携、協力を上下関係にとらわれずに進めていくべきであるが、どのように考えているのか。
2 質問2、北区の例をあげれば赤羽小学校などを中心に既存の施設を活用しようとしているが、王子・北養護学校のような地域資源との関係をどのようにしようとしているのか。
3 質問3、後期中等教育における職業など社会参加・自立をはかるための技術、技能を養うための環境整備が必要である。
  北区におけるスワンベーカリーの例をみるまでもなく、知的障害児の職場経験などのためにインターンシップの活用などを図るべきではないかと考えるがどうか。
4 質問4、国の関係法令の改正もいわれている時である。国の変化に対応できるような情報の収集と現在進行中のモデル事業との適応をはかるような準備をしておくべきであるが、どう考えるか。

平成16年第二回都議会定例会
和田宗春議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 特別支援教育のモデル事業について
1 平成16年度から特別支援教育体制・副籍モデル事業として、北区、八王子市、調布市、あきる野市で指定地域として事業を委託している。都教育庁は区市町村教育委員会との連携、協力を上下関係にとらわれずに進めていくべきであるが、どのように考えているのか、伺う。

回答
  本モデル事業は、〔1〕小・中学校における特別支援教育体制の整備、〔2〕特別支援教室の設置、〔3〕都立盲・ろう・養護学校に在籍する児童・生徒の副籍の実施、を試行することにより、今後の特別支援教育を円滑に推進させることなどを目的として、都が4つの区市に委託している事業です。
 都教育委員会では、各自治体の意見を十分に反映し、積極的な連携、協力体制の構築を図るため、実施区市の参画も得た、「特別支援教育体制・副籍モデル事業運営連絡会」を設置しました。
 今後も、運営連絡会をはじめ、様々な機会を通じて実施区市と密接な連携体制をとり、モデル事業の成果を最大限にいかしていくことができるよう、努めてまいります。

質問事項
一の2 北区の例をあげれば、赤羽小学校などを中心に既存の施設を活用しようとしているが、王子・北養護学校のような地域資源との関係をどのようにしようとしているのか、伺う。

回答
  今後の特別支援教育を推進していくうえでは、小・中学校と盲・ろう・養護学校の連携、協力はもとより、地域の人材や、保健・福祉などの関係機関との連携が不可欠です。
 北区のモデル事業では、モデル地域内の小・中学校と都立養護学校との合同研修の実施や、交流の充実を図るとともに、大学や地域の専門家との連携や関係機関とのネットワークの構築等により、今後の特別支援教育の推進に向けての体制整備を進めているところです。
 都教育委員会としては、他の3市についても、モデル地域内の都立盲・ろう・養護学校および関係機関との十分な連携体制の整備や、地域の人材等を活用していくよう、運営連絡会などを通じて支援してまいります。

質問事項
一の3 後期中等教育における職業など社会参加・自立をはかるための技術、技能を養うための環境整備が必要である。北区におけるスワンベーカリーの例をみるまでもなく、知的障害児の職場経験などのために、インターンシップの活用などを図るべきではないかと考えるがどうか、伺う。

回答
  知的障害のある児童・生徒の社会参加・自立に向け、一人ひとりの望ましい職業観や勤労観を育成していくためには、地域の企業等と連携したインターンシップを計画的に行っていくことが重要です。
 現在、都立知的障害養護学校では、ファーストフード店、ファミリーレストラン、スーパーマーケット、特別養護老人ホーム等でのインターンシップを実施しています。
 今後とも、都教育委員会では、生徒一人ひとりが学校から社会へスムーズに移行できるために、個別移行支援計画をすべての知的障害養護学校で作成するよう指導するとともに、企業等と連携したインターンシップの充実に努めてまいります。

質問事項
一の4 国の関係法令の改正もいわれている時である。国の変化に対応できるような情報の収集と現在進行中のモデル事業との適応をはかるような準備をしておくべきであるが、どう考えるか、伺う。

回答
 国においては、今後の特別支援教育の実現に向けて、学校教育法等の改正を視野に中央教育審議会に特別委員会を設置し、審議を進めているところです。
 都としては、国の動向についても積極的に情報収集を行い、運営連絡会等を通じて各実施区市に対して情報を提供していくとともに、国の動向やモデル事業の評価などを踏まえて事業の見直しを図るなど、柔軟な対応をとることができるよう、努めていきます。

平成16年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 木村陽治

質問事項
 一 文化行政について

一 文化行政について
 文化行政のあり方について伺います。
 1958年に策定された東京都文化振興条例は、都の責務として文化振興のための施策を総合的かつ効果的に推進するとのべ、区市町村への支援、伝統的文化の保存、継承、自主的文化活動の促進、場の提供、文化施設の体系的整備などをうたっています。1999年に発表された21世紀への提案―文化都市ビジョンでは、東京の「文化都市」づくりを目指して、従来の文化行政の枠組みを超えて総合的な都市政策として取り組んでいく、と文化行政に高い位置づけを与え、芸術には公的財政支援が必要であると、アメリカ政府が全米芸術基金を設立した根拠となったとされる著作をひいて、都民の創造活動への支援などを施策にかかげています。
 さらに2001年に成立した文化芸術振興基本法では、国民が等しく文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することができるような環境の整備、地域の人々により主体的に文化芸術活動が行われるための配慮などが、文化振興の基本理念としてあげられています。
 いずれも、文化芸術が心豊な活力ある社会を形成するうえでもつ重要性と、その振興についての国および地方自治体の責務が強調されています。
 さて、石原都政になって5年、都の文化行政はどのように進められてきたでしょうか。
 最初に行われたのは、当時、まだ試行の段階であった行政評価制度の対象に、「東京都庭園美術館の運営」など、都市文化づくり関連の事務事業13事業があてられたことでした。そしてこれらの事業が、市街地再開発事業や不動産相談事業などと同列に、同じ手法で効率性、費用対効果などを比較され「評価」がくだされました。その結果、対象とされた13事業はすべて、見直し、抜本的な見直し、廃止と評価され、「拡大して実施」はもとより「現行水準で維持」という評価をうけたものも全くありませんでした。
 特に13事業のうち、9つを占めた美術館、博物館などの都立文化施設の運営については、いずれも経営感覚をもつことが強調され、入場料収入を念頭においた入館者数の目標を設定し、施設の管理運営から施設経営への転換を図るとされました。
 さらに、「東京構想2000」「都庁改革アクションプラン」「監理団体改革計画」などで、それまで生活文化局と都教育委員会にわかれて所管されていた都立文化施設の管理運営主体を一元化して、施設運営経費を減少させることのできるメリットを最大限生かすとともに、都の委託費を削減するために料金収入を受託団体の収入とすることによって、委託費交付と組み合わせて料金設定も可能な利用料金制度を導入し、文化施設経営のインセンティブを発揮させようとする方向が打ち出されました。
 そして2002年度にこの方針によって文化行政の一元化が行われました。
 このように石原都政下の文化行政は、採算性と効率性の重視を軸に推移し、文化行政のもつ多様性、独自性が軽視されてきたのではないでしょうか。
 その結果、近代文学博物館、高尾自然科学博物館が廃止され、いくつかの文化振興事業が打ち切られたことは重大です。
1 東京芸術劇場のオープンを期に、1991年から毎年1月に東京芸術劇場小ホールで行われてきたトーキョー・リージョナル・シアター・フェスティバル=東京地域劇団演劇祭は、文化行政一本化による影響で、打ち切りとなった文化振興事業のひとつです。
 この演劇祭は、都内各区市町村で地域に根ざして活動している非営利の都民参加型の地域劇団を中心とするもので、日頃はそれぞれの地域で活動している演劇集団が年1回、芸術劇場小ホールを借りてフェスティバルを行うことで交流し、競い合うことによって水準を高め、都内の文化的ネットワークをひろげるという、まさに、自治体がとりくむべき文化振興事業として意義あるものです。芸術劇場には小ホールが2つあり、展示室も使うことができ、これまでは3回土曜日、日曜日をはさんで17日から18日間借りることができておりました。これが文化行政の一元化という名による都教委の文化振興事業からの撤退によって打ち切りとなったものです。
 しかし、都は文化行政の一元化をあくまで文化行政事務の拡大強化を図るためだといってきましたし、生活文化局も「あなたの芸術活動を支援します」とのリーフレットを発行し、築地市場など都施設の空きスペースを演劇練習場として解放する事業を始めたことを大いに宣伝しているのですから、昨年度打ち切られたトーキョー・リージョナル・シアター・フェスティバルへの助成は復活すべきではありませんか。お答えください。
2 また、都は文化行政の課題と施策についての基本指針を年内に策定するとのことですが、どのような視点にたって基本指針を策定するのかが問われます。すでに述べてきたように、文化行政のもつ独自の多様性を抜きに行政評価が行われ、経営効率の視点から文化施設の管理一元化が行われた結果、文化芸術活動を行う者の意見も聞かずに、事業が打ち切りになるという事態が生まれています。
 これまで多少なりとも都の文化行政に対する都民意見の反映の場となっていた各財団の評議委員会も、文化行政の一元化の名のもとに、東京都文化振興会、江戸東京歴史財団、生涯学習文化財団がそれぞれなくなり、東京都歴史文化財団に一元化されました。その歴史文化財団の評議委員会には、財団の予算、決算が諮られる程度で、東京の文化行政のあり方を論じ合う機会はほとんどないといっても過言ではありません。
 なにより教育庁から文化振興事業がなくなり、知事部局である生活文化局に文化行政が一元化されたことにより、知事の恣意的な文化への好みが入り込みやすい条件が強まったことが懸念されます。さらに文化施設の運営には、これから指定管理者制度の導入という課題がひかえていることを考えると、いっそう都民からかけ離れた、採算性、効率性偏重の文化行政にむかうことが危惧されます。
 基本指針の策定にあたっては、基本法を生かす立場で、広く都民参加による論議がつくせるようにすべきと考えますが、見解を伺います。

平成16年第二回都議会定例会
木村陽治議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 文化行政ついて
1 文化行政の一元化による都教委の文化振興事業からの撤退により、昨年度打ち切られたトーキョー・リージョナル・シアター・フェスティバルへの助成を復活すべきではないか、所見を伺う。

回答
 TOKYO・リージョナル・シアター・フェスティバルは、地域で活動する演劇団体が年1回東京芸術劇場に集まって発表する演劇祭で、従来、東京都教育委員会が共催という立場で支援してきました。
 しかし、一元化に当たり文化事業を見直した結果、当演劇祭は、千を超える都内の演劇団体の中で13団体程度と参加数が限られていること、毎回参加する団体が固定化していること、活動自体の地域性が強いので基礎的自治体が支援の中心になるべきこと等の理由から、従来のような都の立場からの共催は行わないこととしました。
 一元化後においても、アマチュア団体による活動は東京の文化振興を下支えする活動として大切であると考えており、都立文化施設の施設利用料金の25%減額、都のホームページによる各種支援情報の提供、都の空き施設を活用した練習場の提供などの支援策を開始したところです。
 都のほか、国や区市町村、民間等においても多様な支援策が用意されているので、そうした中から自分たちの活動に合った支援策を選択して、活動の活性化を図るべきと考えます。

質問事項
一の2 都は文化行政の課題と施策についての基本指針を策定するとのことだが、策定にあたっては基本法を生かす立場で、広く都民参加による議論がつくせるようにすべきと考えるが、見解を伺う。

回答
 都は現在、「既存の文化事業を根本から改革する」「東京の魅力を世界に向けて発信する」「新進アーティストの創造活動を支援する」の観点から、都立美術館の改革、舞台芸術施策の再構築、文化活動への支援等に取り組んでいます。
 今回の指針の策定に当たっては、こうした成果を踏まえるとともに、検討過程では、都民や実際に文化芸術活動を行っているアーティスト等から具体的な提案や意見を聞くことが必要であると考えます。

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