平成十六年東京都議会会議録第九号

○副議長(中山秀雄君) 二十一番北城貞治君。
   〔二十一番北城貞治君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○二十一番(北城貞治君) まず最初に、東京の活力を創造するインフラ整備についてお伺いをします。
 申し上げるまでもなく、道路、公園、河川などの都市の基盤施設は、都市活動において重要な役割を担っております。膨大な交通や流通需要に対応するとともに、電気、ガス、上下水道などの施設を収容する空間などのさまざまな機能を有しており、また、災害の発生を抑止するとともに、災害時には避難、救援のルートや場として、日々の暮らしの中では憩いや潤いをはぐくむ公共スペースとして、都民に欠かすことのできない重要な施設であります。
 しかし、現状を見ると、例えば都内の道路は、交通量が全国平均の三倍、区部では五倍という状況で、混雑時の速度は、全国平均の時速三十五キロメートルに比べて二十キロメートルと遅く、経済効率の低下や環境負荷の増大などにより、東京の都市としての活力や魅力が大きく減退しております。公園についても、一人当たりの公園面積は五・四平米で、欧米先進国と比較し極めて低い水準であります。また、河川についても、一時間五〇ミリの降雨に対応できる護岸整備率は、ようやく五九%の状況です。
 東京の、日本の飛躍を導くために、厳しい財政状況ではありますが、その整備促進が求められているところであります。
 しかしながら、去る四月二十二日にあった圏央道に関する東京地裁の判決は、道路の供用開始で周辺住民に受忍限度を超える公害が生じる道路事業の認定は違法と判断し、圏央道の建設で都心部や周辺の交通渋滞が緩和するという当然の主張すら認められないなど、およそ都民感覚とかけ離れた判断があったわけであります。
 圏央道は、既に開通している区間でも周辺道路の交通量が一割減少し、生活道路の交通量は三五%減少するなど、その効果は歴然であります。また、三環状道路の整備効果は年間約四兆円とも試算されており、多摩地域を中心とした多くの住民からも、建設促進の声が上がっております。
 公共工事はむだであるという偏見に固執し、整備効果の低い地方の道路整備など、必要性に疑問の多い公共事業と同列に取り扱うこと自体がナンセンスであるといわざるを得ません。
 今、都政が真摯に考えなければならないことは、先進国の大都市と比べ圧倒的におくれているインフラ整備を進め、都市再生を強力に進めることにより、東京という首都がその本来の力を呼び戻し、日本再生を牽引するということではないでしょうか。また、それが環境負荷の減少にもなるわけであります。
 公共事業は大企業奉仕でむだという単純な図式で物事を考え、反対することだけを目的とする会派もありますが、都市にとって真に必要なものは何かを、今改めて考え直すべきであると確信いたします。知事のご見解をお伺いいたします。
 さて、東京を見渡したとき、災害に弱く、都市の空間も生かし切れない木造住宅の密集、あかずの踏切や道路のボトルネックによる渋滞、都市景観を損ない、安全面でも課題の多い電線類の存在など、雑然とした街並みが多く存在することも否定できない事実であります。
 こうした状況を改善するために、東京都は、まず事業の重点化で、骨格幹線の集中的整備により、十七年度に環状八号線が、十八年度に環状六号線が完成し、京王線調布駅の踏切すいすい事業は、仮橋設置の創意工夫により、完成を十年早めたわけであります。
 民間活力にも積極的で、汐留開発では地元に管理を任せ、成功しております。国費獲得にも総力を挙げ、道路整備費は、知事就任後四年間で百億円をふやし、国費増により、税負担は逆に二百億円減少されております。
 こうした東京都の努力について、私は高く評価するものでありますが、これからも、都民の暮らしと経済を支え、都市環境を守り、東京の、日本の活力を創造するインフラ整備はますます重要となってまいります。
 そこで、これまでの東京都の都市再生の中で重要な役割を担当されてこられた東京都技監に、都市におけるインフラ整備のあり方と、これからの都市再生の進むべき道筋についてのご見解をお伺いしたいと思います。
 今まで申し上げた視点に立ち、都市計画道路の整備についてお伺いします。
 本年三月に、区部における都市計画道路の整備方針、いわゆる第三次事業化計画が定められました。この第三次事業化計画は、都市計画道路の必要性の検証、緊急に改善すべき都市課題に対応した優先度、長期にわたり未着手となっている区間への対応方策等について検討し、策定されたものとお伺いしております。
 この計画は、首都東京を魅力と活力にあふれる都市へと再生させるために必要不可欠なものであり、その早期実現は都民の切なる願いでもあります。
 そこでまず、厳しい財政状況の中ではありますが、この計画のうち、都が実施すべき優先整備路線の実現に向けた東京都技監の決意をお伺いします。
 さて、この計画では、平成十六年度から平成二十七年度までの十二年間に優先的に整備する路線として二百八区間、延べ百三十キロメートルが選定されており、私の住む荒川区においては、補助九〇号線という路線が選定されております。
 この路線は、都電荒川線と並行し、通称都電通りと呼ばれる都道で、重要な幹線道路である明治通りのバイパスとしての機能が期待されております。現況は、九〇号線の中ほどの区間、尾久橋通りや尾竹橋通りにつながる部分は既に開通に向けた整備が進捗しているにもかかわらず、肝心の明治通りとの接続部分が両端ともいまだ開通していないため、バイパスの機能が発揮できないでおります。
 さらに、同路線の整備は、明治通りのバイパス道路としての機能のみならず、町中の渋滞解消に効果を発揮するとともに、まちづくりの推進においても重要な役割を果たす路線であり、整備の早期実現が切望されております。
 例えば、今回、緊急度が高いとして環境・建設委員会で趣旨採択された、荒川遊園以西のわずか九百メートルの部分を開通させることにより、明治通りとの接続が改善されるとともに、尾久橋通りや尾竹橋通りとのネットワークが構築され、明治通りへの負担が大幅に軽減され、渋滞の解消に大きく貢献し、経済効果及び環境への負荷軽減効果は極めて大きいものがあることは論をまたないわけであります。
 そこで、あとわずかな部分を整備すれば大幅な効果が期待できる、この補助九〇号線については、同じく重要路線を選定した第三次計画の中でも、とりわけ整備が急がれると考えますが、ご見解をお伺いしたいと思います。
 次に、都市の活力を発揮していくためには、インフラ整備とともに、生活基盤としての住宅の質の向上を図っていくことが重要であります。東京においては、マンションやアパートなどのいわゆる共同住宅が約七割を占め、都民の主要な居住形態となっております。
 こうした東京の住宅事情を踏まえ、都は、昨年十二月に制定したハートビル条例において、都独自に共同住宅の共用部分をバリアフリー化することを義務づけたわけであります。高齢者や障害者が安心して生活をしていくための画期的な取り組みとして評価するものであります。本年七月にはこの条例が施行されますが、これを契機に、住宅のバリアフリー化が一段と進むことを期待しております。
 ところで、都内の共同住宅の約六割を占める民間賃貸住宅の現状を見ますると、バリアフリー化された住戸が約二・二%と極端におくれていることから、こうした点に着目した取り組みもあわせて重要と考えます。
 そのためには、条例による義務づけに加えて、民間賃貸住宅を建設する事業者等を対象とした効果的な支援、誘導策が必要と考えますが、ご見解をお伺いいたします。
 次に、自動車税に関連し、何点かお伺いいたします。
 まず、都が今年度から開始した自動車税のコンビニ収納についてであります。
 従来、税金については、地方自治法により、コンビニなどに収納を委託することは認められておらず、都民は、自動車税一つ納めるのにも、銀行や郵便局などの金融機関の窓口に平日に出向かなければなりませんでした。このため、都を初め全国自治体は国に強く法改正を求めてまいりましたが、昨年ようやく改正が実現したことから、都では、全国都道府県の中でいち早く、今年度から自動車税のコンビニ収納を開始されたわけであります。
 自動車税の都における納税者は約二百五十万人おり、若年の納税者も多いなど、都民に最も身近な税の一つであり、その自動車税がいつでも近くのコンビニで納めることができるようになったわけで、都民には大変便利になったと考えております。
 そこでまず、都は自動車税のコンビニ収納の意義をどのように考えているのか、開始以来二カ月間の実績とあわせ、お伺いいたします。
 また、都民の利便性をより一層高めるため、コンビニ収納については、他税目への拡大を検討すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 次に、不合理な自動車関連税制についてであります。
 自動車については、自動車税のほか、取得時にかかる自動車取得税、車検時にかかる自動車重量税、ガソリンにかかる揮発油税、地方道路税など、いわゆる自動車関連税が数多くかかっており、税制が極めて複雑でわかりにくいものとなっております。
 また、揮発油税を初め自動車関連税の多くは道路特定財源とされており、その大半は国税ですが、例えば、都民が納めた揮発油税のうち約半分しか都内の道路整備に使われていないなど、地方への配分にもゆがみが生じております。
 このため、投資効果の高い大都市の道路整備促進に加えて、私は、不合理な現行の自動車関連税制そのものを、納税者、都民の視点から、簡素化を含め大幅に見直していくことが必要であると考えております。
 自動車関連税制の抜本的な見直しについてのご所見をお伺いしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 北城貞治議員の一般質問にお答えいたします。
 都市再生に関してのインフラ整備についてでありますが、もう何年前になりましょうか、共産党、社会党が熱烈に支持してつくった美濃部知事の時代に、あの知事が公共事業をすべて否定しまして、妙な風潮になって、あのときの自民党政府の建設大臣、たしか根本龍太郎さんでしたが、個人的にはおもしろい人でしたけれども、威勢がいい割に、何かしなくてもいい凍結宣言をしましてね、自来、外環など三十年間眠ったままでいたわけです。このごろ女性が強くなって、扇国交大臣に都から持ちかけまして、ようやく現場にも来てくれて、これはおかしいわということで、凍結が解除になりましたが、そういうことで、都市が国家の活力と創造力の源泉という文明の原理というものを全く無視したああいう都政というものが、外環など幹線道路の整備をおくらせてしまって、非常に不幸な時代が続きました。それは、東京の停滞だけじゃなしに、日本の国力を阻害したうらみもございます。
 今必要なことは、三環状道路や国際空港などのインフラ整備を強力に進め、首都圏を初め我が国の経済活力を引き出すことであります。
 にもかかわらず、どこかにいる会派のように、こうした状況を認識することなく、やみくもに公共工事に反対するということは、熾烈な国際競争にさらされている日本経済の現実を正確に理解せずに、国益を損なうものであると私は思います。
 今後とも、活力と魅力のある首都東京をつくり、日本の再生を実現していくために、インフラ整備を積極的に推進してまいります。
 他の質問については、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) インフラ整備と都市計画道路整備についての三点の質問にお答えいたします。
 まず、インフラ整備と今後の都市再生についてでございますが、現在東京に求められておりますのは、世界の先進都市との厳しい競争に勝ち抜いていくよう、東京の持つ本来の力を発揮させるとともに、生活環境の質の向上を図り、活力と魅力ある首都東京に再生することでございます。
 そのため、国、八都県市等と協力し、環状高速道路など首都圏での広域的インフラ整備を促進しますとともに、都においては、都市の骨格を形成する幹線道路、安全で親しみのある河川、ゆとりと潤いを創出する公園などの整備を積極的に推進しております。
 今後とも、首都圏の県市との連携を強化するとともに、コスト縮減や民間活力の導入、先端技術の積極的な採用などにより、効率的、効果的なインフラ整備に努め、日本の経済活力を引き出す、豊かさと風格を兼ね備えた首都東京の再生に取り組んでまいります。
 次に、第三次事業化計画のうち、都が実施すべき優先整備路線についてでございますが、本年三月に策定した第三次事業化計画では、骨格幹線道路ネットワーク形成や渋滞解消、防災性の向上などに資する路線、百三区間、延長七十六キロを選定いたしました。
 これらの路線について、整備効果や進捗状況を踏まえ、計画的、効率的に事業化を図ってまいります。とりわけ道路ネットワークの早期完成に向け、幹線道路のつながっていない区間を着実に整備していくことが重要であると考えております。
 今後とも、首都東京の都市再生に向け、財源の確保に努め、道路整備に全力で取り組んでまいります。
 終わりに、補助第九〇号線の整備についてでございますが、本路線は、明治通りを補完し、荒川区内の道路交通の円滑化や防災性の向上などに資する重要な路線でございます。荒川遊園から明治通りまでの区間については、第三次事業化計画で新たに優先整備路線に位置づけ、地域住民からも早期整備の強い要望が出ております。
 当該区間の整備により、荒川区西部地域の道路ネットワークが形成され、明治通りの渋滞解消に寄与するとともに、生活道路の通過交通が排除され、歩行者等の安全性が向上いたします。
 今後、事業中の尾久橋通りから荒川遊園までの区間に引き続き、地元区と連携を図りながら事業化を進めてまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 民間賃貸住宅のバリアフリー化への支援、誘導策についてでございますが、おくれている民間賃貸住宅のバリアフリー化を促進していくことは、高齢者などが安心して居住していく上で重要と考えております。
 このため、民間事業者に対する支援、誘導策として、都が定めるバリアフリー基準を満たした住宅に対しまして住宅金融公庫が融資上の優遇を行う新たな仕組みについて、現在、公庫と協議を進めております。こうした仕組みは全国で初めてであり、本年七月一日のハートビル条例の施行にあわせて実施できるよう努めてまいります。
   〔主税局長川崎裕康君登壇〕

○主税局長(川崎裕康君) 自動車税に関します三点のご質問にお答えいたします。
 まず、自動車税のコンビニ収納の意義と実績についてでございますが、これまで金融機関等でしか納められなかった自動車税が、全国道府県に先駆けて、本年四月から、三百六十五日いつでもコンビニエンスストアから納められるようになり、納税者の利便性拡大とともに、一層の徴収率向上が図れるものと考えております。
 五月末までの二カ月間におけますコンビニ収納実績は約四十三万件で、収入額は約百六十四億円となっております。
 この間の自動車税収入の状況を前年度と比較しますと、件数、額ともに約一二%増加しており、コンビニ収納の導入が寄与していると考えております。
 次に、コンビニ収納の他税目への拡大についてでございますが、コンビニ収納の実施に当たりましては、納税者数が多いこと、都民に身近な税であること、一件当たりの金額が高額でないこと等を考慮し、今回、自動車税について導入をしたものであります。
 今後、自動車税におけるコンビニ利用率や徴収率などの実績を検証するとともに、現在進めております電子計算システムの再構築状況を踏まえ、他税目への拡大を積極的に検討してまいります。
 次に、自動車関連税制の見直しについてでございますが、自動車に係る税は、ご指摘のとおり、揮発油説、自動車税など、国税、地方税合わせて十種類もあり、複雑で大変わかりにくいものとなっております。
 また、自動車関連税制のうち道路特定財源の国と地方の税源配分を見ますと、その七割は国税でありますが、道路整備事業の過半は地方が実施しており、役割分担に見合った配分とはなっておりません。さらに、揮発油税にあっては、都内のガソリン売り上げの約半分しか都内の道路整備に使われていないなどの問題も多々ございます。
 このため、自動車関連税制のあり方について、東京都税制調査会を活用し、幅広い角度から検討を行い、国に対して改善の提言をしていこうと思っております。

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