平成十六年東京都議会会議録第九号

○議長(内田茂君) 五十二番真木茂君。
   〔五十二番真木茂君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○五十二番(真木茂君) 初めに、議員の仕事は、行政をチェックすることのみならず、従来の行政機構では対処し得ない新しい問題に対し、適切に問題提起をすることも重要な議員の仕事であるとの認識に基づき、決して行政の怠慢や欠陥ではないけれども、今までの東京都政では取り組まれてなかった問題について、未来に向かって提案をさせていただきます。
 まず、学校における保護者と学校の災害時の連絡体制についてであります。
 私は現在、公立小学校の三年生の父親であります。妻も働いており、学童保育に通わせながら、育児と仕事に四苦八苦している共働きの家庭であります。そうした私たち家族にとって、災害時にどうやって連絡をとって、どこに子どもを迎えにいけばいいのかというのは大変に重要な課題であります。
 しかしながら、現在の公立小学校のシステムでは、保護者は学校に迎えに来てくださいというだけで、災害時にいつまで学校で預かってくれるのか、一般の電話回線が不通になった際にどうやって連絡をとるのかについてのルールが全くできておりません。
 それは、現在の学校のルールが、保護者の一方が働いていないということを前提とした運営となっており、保護者全員が遠隔地にいるということを一切想定していない学校運営になっていることに起因しています。
 学校は、災害対策として、申しわけのように九月一日前後に災害訓練をするだけであり、私たち共働きの保護者は、災害時には実際には来ることができないのに、訓練のために仕事を休んで学校に行き、一瞬サインだけをして帰ってくるというのが実態であります。それで学校は災害対策をした気分になっているというのでは、災害時に第二の悲劇を招くことは明らかであります。
 共働きの家庭がふえている今日、例えば町田市の小学校でも、親が双方ともに山手線の中にいる、学校に子どもを迎えに行けるまで十時間以上はかかってしまうということを想定した対応が必要であります。
 私は、こうした事態に備え、学校と保護者の災害時の連絡手段の共通のルールとして、NTTの災害伝言ダイヤル一七一を確認しておくことが極めて有効であると考えます。
 東京都教育庁が各区市の教育委員会に、遠隔地にいる保護者との連絡手段とそのルールについて徹底すること、その際には、災害伝言ダイヤル一七一が有効であり、それを使うように周知していいという通知を一枚出すだけでいいのであります。
 そのことによって、子どもをいつまで学校で預かってくれるのか、何時まではどこに迎えに行けばいいのか、何時以降はどこに行けばいいのか、親は無事なのか、子どもは無事なのか、このことが一般回線が不通になっても連絡がとり合えるのであります。
 同時に、東京都総務局が都民に災害時の伝言ダイヤルの使用を呼びかけていますが、この一枚の通知が出ることによって、都民全体に飛躍的に伝言ダイヤルの使用方法が普及するのであります。
 親と子の安心と安全にとって、教職員の負担軽減にとって、そして都民全体の災害対策にとって、この一枚の通知が極めて有効な手段となると考えます。
 災害時の学校と保護者の連絡方法についての指導を徹底することを求めるものでありますが、教育長の所見を問うものであります。
 続きまして、花粉症対策について伺います。
 現在、東京都では、花粉症対策として、健康局が、あしたの花粉の飛散状況の予測をし、都民に自衛を呼びかける仕事をしております。しかし、そのほかは、平成十三年、十四年の二年にわたり、環境局がディーゼル車と花粉症の因果関係について調査をいたしましたが、その調査も終了してしまいました。産業労働局も、マレイン酸を注入することによって花粉の飛散を抑制するという実験を行いましたが、それも発がん性物質が発覚し、とんざしました。
 ということは、現在、東京都における花粉症対策予算は、健康局の飛散予想九百四万円だけとなっております。何とも少ない額であります。
 花粉症はつとめて東京プロブレムであります。私は国会議員の秘書をしておりましたが、地方の国会議員が、杉がたくさんある地元にいるときはどうもないのに、杉の見えない東京に来た途端に花粉症になるといっていたものであります。これは、ディーゼルとの関係や都市のストレス、コンクリートジャングルなど、いろいろなことが複合的に作用をしているものでありましょう。
 東京都民の二〇%が花粉症といわれ、経済的損失は年に二千八百六十億円に上るという国のデータも出ています。私は、花粉症対策は、東京都政における最重要課題の一つだと考えます。知事も、ディーゼル車対策を徹底し、ディーゼル車対策を論じる中で花粉症対策についても言及いただいておりますけれども、本会議の場で花粉症対策だけで言及されたことはないようでございます。ぜひ改めて、知事における花粉症対策の重要性のご認識、とりわけ東京プロブレムとしてのご認識についてお答えをいただきたいと存じます。
 その上で重要なことは、花粉の発生源についてであります。
 昨年十二月二十六日に、国の文部科学省の委託調査の結果が発表されました。そこでは、花粉を出す花芽の量に着目をし、今後の花粉の飛散する能力を予想した、我が国初の花粉飛散の長期予想といえます。
 その報告書では、もし杉の伐採が一切されなくなると、二〇一五年には一九九五年の一・五倍になると予想をしています。そして、もし一九七〇年代のペースで伐採することができるならば現状と同程度と予測しておりますが、東京都だけで見てみますと、現在の伐採量は一九七〇年代の五分の一にまで大減少しています。このままでは、十年後の花粉は、一・五倍とまでいかなくても、現在よりもずっとずっとずっと花粉の飛散が多いことが容易に想像されます。
 この結果を信じるならば、発生源対策を放置していいわけがないというのは簡単であります。しかし、一概に発生源対策といっても簡単にできるものではありません。国の調査によれば、都民が吸う花粉の発生源は、多いところだけでも、静岡、神奈川、群馬、栃木、千葉、埼玉などに及び、東京都だけで解決できる問題ではないでしょう。
 とはいうものの、花粉症の症状と花粉の飛散量は、当然のこととして明確な因果関係があり、その花粉が今よりも五〇%近くふえるかもしれないという国の調査がある中で、難しいから手をつけられない、他県から来る花粉だからしようがないよねとしているだけでは、都民に対する責任を果たしているとはいえません。
 今すぐ何かに着手しろというのではありません。私が問題提起したいのは、東京都として、いや、国を初めとする行政として、花粉の増加に手をこまねいていていいのかどうかの調査を東京都として開始すべきではないかということであります。このまま花粉がふえ続けても人体は大丈夫なのかどうか、花粉の発生源対策が必要だということになったとしても、そのためには何が有効なのかどうか、もしくは、必要だけれども何もやりようがないのかどうか、真剣に検討すべきではないかと考えるのであります。
 確かに花粉症は花粉の量だけの問題ではありません。でも、花粉症は花粉だけの問題ではない、総合的、複合的に分析や対策をする必要があるという建前のもと、発生源対策の必要性の有無がいまだに検討されていないのであります。
 ことしの春が、多くの花粉症患者にとって極めて症状が軽かったことからも、花粉の量が症状を決定的に左右していることは間違いない事実なのであります。だから、花粉がこのままふえ続けてもいいのかどうかを検討すべきだといっているのであります。
 花粉症対策は、従来は健康局だけの仕事でありました。一昨年、私は、農林漁業振興対策審議会に配属となりました。そのときには、既に中間答申が取りまとめられた後の最終段階の議論をしておりました。恐らく一〇〇ページを超えるその中間答申には、花粉という言葉は一カ所も用いられておりませんでした。
 私は、林業振興のために税金を投入するといっても都民は納得しないかもしれないが、花粉症対策として林業に税金を投入することに反対する都民は少ない、東京の林業に花粉症対策の視点を置くべきだと発言し、最終答申の中に花粉症対策という一項が加えられました。結果、今では産業労働局の林業政策の中に、花粉症対策という仕事が昨年より初めて正式に位置づけられました。
 また、都庁の中で横の連携がとれていなかった花粉症対策について、一昨年の決算委員会総括質疑の一カ月前から、私は、花粉症の東京都としての窓口部局を明確にすることを求め、健康局、環境局、そして産業労働局の協議の結果、環境局が窓口部局となることを決定し、現在では、東京都のホームページの中に統一した花粉のページも開設されました。こうした前進をさらに生かし、多面的な検討を環境局が中心となって、局を乗り越えて取り組むことが必要だと考えます。
 このままでは、困ったねえのまま、花粉症のもとである発生源対策は検討されないまま、十年も二十年も時間を費やすことになりそうであります。後世の市民から、不作為による作為を非難されることになるかもしれません。本日の答弁は、花粉症の歴史にとって極めて重要な答弁となります。花粉症史を変える歴史的答弁を三局がばらばらに答えるのではなく、花粉症対策の取りまとめ局である環境局長より、三局共管のご答弁をいただきたいと思います。
 繰り返します。私が求めているのは、発生源対策の実行ではありません。発生源対策が必要なのかどうか、必要だとしたら何ができるのか、できないのか、その研究のために、三局が英知を絞る場を設定してもらいたいというだけであります。
 発生源対策については、今のまま思考停止を続けるのか、それとも一歩踏み出して思考を開始するのか、それだけであります。明確なご答弁をお願い申し上げます。
 続きまして、契約関係についてお尋ねします。
 先月、私のもとに建設会社の社長さんからお電話をいただきました。真木さん、都営住宅に入るにはどうしたらいいんだというお問い合わせでありました。てっきりお知り合いの方のご紹介かと思ったところ、会社を畳んだ、ゼロからやり直すしかないということでありました。さらに同じころ、建設会社の社長さんがみずから命を絶たれました。うわさでは、三億円の生命保険に入っていて、みずからの命と引きかえに返済を試みたとのことであります。
 我が国の経済は緩やかな回復傾向にあるとはいわれておりますが、中小企業において全く実感できるものとはなっておりません。特に、中小建設業は公共工事の減少と、それに伴う激しい低価格競争にさらされており、これまで東京の地域経済の発展を支えてきた多くの企業が疲弊した状況に置かれています。
 こうした状況のもと、東京都発注の受注状況を見ておりますと、都外の企業が指名を受けて落札しているケースが存在するようでございます。一方で、報道等によれば、埼玉県を筆頭に多くの県で地元企業育成の視点を明確に打ち出しており、入札の指名においてもその傾向は強いといわれております。
 他県において、地元優先、東京企業の排除が進む中で、東京都がひとり門戸を開放し続けることができるほど、東京の企業に余裕はありません。
 これまでも、東京都は、地元中小企業の受注機会の確保に努力されてきたと思われますが、現在の厳しい経済状況を考えると、大型のJV案件を除き、指名に当たっては、他県企業を指名しないこととするとともに、都内同士でも地元優先の姿勢をより徹底させるべきと考えますが、財務局長の見解を問うものであります。
 以上、知事及び関係局長の熱意あふれる、危機感に燃えたご答弁をお願い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 真木茂議員の一般質問にお答えいたします。
 花粉症対策の重要性についてでありますが、花粉症は、近年、都市部において患者が増加し、とりわけ、大気汚染との複合的な関連が指摘されておりまして、重要な都市問題と認識しております。
 国に依頼しておりましたが、一向に調査が進まないので、都の研究所に依頼しまして、ある時間をかけて調査しました結果、マウスを使っての実験でありましたけれども、明らかに、ディーゼル車の排出ガスが花粉症の一種の複合汚染としての要因であることが科学的に裏づけられまして、この結果、かなり恐ろしいもので、胎児として母親のおなかの中にいるマウスでも、母体が長く暴露されますと非常に花粉症になりやすい。それから、花粉症にかかっているマウスは、ほかの普通に生まれてきた子どもに比べて非常に運動能力がない。これは、つまり、都会で花粉症に毎年かかっている子どもさんは、長じても田舎の花粉症のない地域の子どもに比べて、競争力が劣るということにもなりかねないわけでありまして、暗然といたしましたが、これは、明らかに国家の規模で考えなくちゃいけない、つまり県境というものを無視して、またいだ大きな問題であると思います。
 この国民的な課題である花粉症対策は、本来国が取り組むべきものでありますけれども、どうも国の動きが甚だ遅くて、国民、都民の切実な願いにこたえていない節がございます。
 都としても、引き続き、ディーゼル規制や森林の再生に努力しまして、この問題の淘汰に努力していきたいと思っております。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 災害時の学校と保護者との連絡体制についてのお尋ねでございますが、火災、地震などの災害発生時における連絡体制を確立しますことは、児童生徒の安全を確保する上で極めて重要なことでございます。
 都教育委員会では、平成八年に学校防災マニュアルを作成しまして、各学校ごとに防災計画を整備するよう指導しますとともに、副読本としまして、「地震と安全」を都内公立学校の児童生徒に配布をしまして、災害が起きたときに適切な行動がとれるよう、安全指導の徹底を求めてきたところでございます。
 今後は、お話しのような保護者のさまざまな事情を勘案しまして、災害伝言ダイヤルの活用なども含めて、学校と保護者の連絡方法がより確実になるよう、各区市町村教育委員会に通知を出すなどして、児童生徒の安全確保に一層努めてまいります。
   〔環境局長小池正臣君登壇〕

○環境局長(小池正臣君) 花粉症の発生源対策の総合的研究についてのお尋ねでございますが、都は、これまでも、ディーゼル車規制による大気汚染の改善、森林再生事業等による間伐や花粉の少ない品種研究など、関係局が連携して取り組んでまいりました。
 花粉の飛散量を抑制する方策につきましては、これまでにもさまざまな研究が行われてきておりますが、いまだ有効な方策が見出されておらず、花粉そのものを減少させることは、現段階では極めて難しい状況にございます。
 今後とも、関係局が連携し、花粉症対策の一環として、ディーゼル車規制の一層の徹底や森林再生事業などに取り組みますとともに、ご指摘の、花粉の飛散量を抑制する方策につきましても研究してまいります。
   〔財務局長櫻井巖君登壇〕

○財務局長(櫻井巖君) 入札参加業者の指名に当たっての地元企業への配慮について、お答えいたします。
 都は、これまで、分離分割発注、中小企業を構成員とする共同企業体及び事業協同組合などを活用し、中小企業の受注機会の確保に努めてまいりました。
 その際、発注工事が行われる地域の中小企業につきましては、発注規模に対応する企業がない場合等を除きまして、優先指名を行ってきたところであります。
 今後とも、競争性の確保に努めつつ、さらに地元中小企業への配慮に留意してまいります。

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