平成十六年東京都議会会議録第九号

   午後一時開議

○議長(内田茂君) これより本日の会議を開きます。

○議長(内田茂君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(内田茂君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 知事より、東京都副知事の選任の同意について外人事案件七件が提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(内田茂君) 昨日に引き続き質問を行います。
 九十五番立石晴康君。
   〔九十五番立石晴康君登壇〕

○九十五番(立石晴康君) 初めに、東京の景観についてお伺いいたします。
 銀座中央通りにかかる、古くなった二本の民間経営の高架橋を、景観の上からも塗りかえようと、カラーコンテストが昨年八月に開かれました。審査委員長はデザイナーの栄久庵憲司先生で、全国から九百三十七点の力作が応募され、選ばれた最優秀カラーは、十九世紀、広重の東海道五十三次シリーズ、浮世絵の中から、この地で当時の広重が見上げた江戸の空でした。白から藍へ、独特のぼかし上げによって表現されています。この空の色を二十一世紀の東京の空に再現したいとの思いを込めて選ばれました。制作者は、女性建築家と女性デザイナーの二人でした。
 そこで、以下、幾つか東京の景観について事例を挙げて、過去、現在、未来について質問いたします。
 東京は、戦後の焼け野原から復興して、大きな発展はしましたが、経済にやや力点を置き過ぎた嫌いがあります。
 初めに、水門です。町中にある一例を挙げれば、東西線茅場町の駅を出て百メートルほど歩いたところに日本橋水門があり、ビジネス街に巨大な鉄板の遮へい物をあらわしています。水害に大切な機能を果たすのはわかりますが、周辺の景観に余りにもそぐわない状況となっています。今後の改修に当たって、東京の水門と町並みとの調和をどのようにするか、所見をお伺いします。
 また、電線類の地中化も、東京の景観のみならず、治安、防災の上でも大切です。一日も早い目標達成を望みますが、幹線道路の国道、都道、区道、市道などではかなりでき上がっていますが、区市町村の枝線などではまだまだです。
 阪神・淡路の大震災でも、電柱電線類の倒壊で避難路をふさがれて被害が拡大しました。東京の治安、防災上からも地中化率を高める必要があります。推進への課題と都の対策について伺います。
 次に、東京の川の堤防が、かみそり型から水に親しめる空間になりつつあり、都民の皆さんが散策しながら楽しんでいます。しかし、その場所に最近、周辺にそぐわないネットフェンスで囲まれ、かぎをかけられ、閉鎖された防災船着き場ができました。そこは常時利用され、景観上も、ネットフェンスを水辺にマッチしたデザインに改めるべきです。所見を伺います。
 このように、まちの中にいわゆる土木構造物をつくるときには、構造や経済性を考えることはもちろんですが、東京を石原知事のいう千客万来の都市とするためには、その観光資源としての価値にも注目し、景観に十分配慮していくことが必要と考えます。知事のご所見を伺います。
 さて次に、環状二号線の問題です。
 今までせっかく地下化で都市計画決定されていたものが、晴海から築地までの区間をわざわざ地上化しようとの計画変更が都から説明されています。もちろん地元中央区や区議会は抗議の申し入れを行い、反対です。都心回帰で人口がやっと戻ってきたこの地域の住環境を大きく左右しかねない大問題です。景観上も既定の計画どおり地下化にすべきです。
 内外の事例を挙げれば、ボストンのローガン空港から市の中心に至る既存の高架の高速道路を地下化して、高架を撤去し、地面は公園とする事業が完成したと聞いています。四年ほど前、工事中だったこの現場を視察したとき、高架の道路を生かしたまま工事を進めている姿を目の当たりに見て、打つ手はいろいろあるものだと実感いたしました。環状二号線のこの区間の景観についても、勝鬨橋を初めとする東京の風景を生かしつつ、未来へのストーリーを描くべきだと考えます。所見を伺います。
 次に、昨日、我が党の古賀議員の格調高い代表質問で、知事から力強い答弁をいただいた海の森構想についてお伺いします。
 私は、この埋立地八十七・九ヘクタールのごみの島を、日本人がこれまで培ってきた技術力と知恵を結集して、水と緑あふれる二十一世紀の宝の島に変えていくことが我々に課せられた使命と考えています。この地は、空の玄関、羽田空港と、海の玄関、晴海客船ターミナルに入港する際、初めに大東京の林立する摩天楼の壮大な前庭として将来印象づける風景となって迫ってきます。
 そこで、この構想に当たって、東京のランドマークとなるような森づくりを進めていくべきだと考えます。また、都民の皆さんの参加や民間との協働をどのように考えているのか、あわせて見解を伺います。
 次に、築地市場問題についてお伺いいたします。
 ことしのゴールデンウイークに、築地市場では九年ぶりに水産仲卸売り場の店舗がえが行われました。市場の皆さんは、新たな気持ちで商売に励んでおります。私は、老朽、狭隘化が著しいとはいえ、日本一の魚河岸は健在なりとの意を強くしております。
 ところで、都は、本年第一回定例会における質問に答えて、豊洲市場の建設は必要であり、一刻も早く新市場を建設することが首都圏を構成する都民、国民のためになるとの見解を示されました。そして、平成十三年に築地の移転を決定して以後、昨年五月には基本構想を発表されました。
 そこで、現在、豊洲新市場の建設に関する事業の進みぐあいと、移転によって大きな影響を受ける地元中央区や場外市場の関係者などに今後どのように理解を求めていくのか、あわせて伺います。
 次に、築地市場移転後の跡地利用についてお伺いいたします。
 昭和十年に都の中央卸売市場として開場して以来、築地市場は約七十年にわたり、首都圏の台所として活気を呈して、食材の供給を行ってきました。さらに、築地市場はその名を海外にも知られた築地ブランドを確立し、大江戸線築地市場駅の開通とともに、外国人旅行者からも人気の高い国際的観光スポットになっており、独特のにぎわい空間を形成しています。また、南隣には浜離宮庭園があります。
 そこで、市場移転後の跡地利用に際しては、歴史的財産の保全、再生や、築地ブランドにはぐくまれたにぎわい、隅田川、築地川といった水辺環境に恵まれた景観と貴重な都市空間を有効活用していく新たなまちづくりが必要です。跡地利用に関する都の具体的な考え方を伺います。
 さて、地元では、築地市場が移転した後のまちづくりについて、都の築地市場移転整備の動きに対応するため、地元の方々を委員とする築地市場地区の活気とにぎわいビジョンづくり委員会を設置して、年内を目途にビジョンづくりに入りました。都は、こうした地元の動きに対して、築地市場跡地利用の計画を、地元区との協議を踏まえて、今後どのようにつくろうとしているのか、見解を伺います。
 次に、固定資産税問題についてお伺いいたします。
 長い景気低迷から脱して、少しずつ景気が回復しているとの経済報告がありますが、中小企業、零細企業にとっては、相変わらず景気は低迷し、景気上昇の実感はありません。私の地元は、日枝神社、神田明神、富岡八幡宮などの氏子の町でもあります。かつて、祭礼という町の祭事は活発に行われ、大きな社会的存在意義の場であったという一面もありました。例えば、老若男女がそれぞれにこの祭礼に参加する仕組みがあり、自分たちの住む町、働く場所で、お互いが顔見知りになる機会がありました。治安上からも、どこのだれだかわからない地域社会ではなく、知り合えるコミュニティができる機会でもありました。また、町の古老から子どもたちや若者が伝統、しきたりを学び、お年寄りは若者の感性とエネルギーを感じ、お互いに年齢を超えた社会教育の場でもありました。
 しかし、地域の皆さんがお祭りの寄附を出し合い、コミュニティを形成しようと努力しますが、祭りの寄附は激減しているとのことでした。個人商店が減り、大企業やチェーン店からは協力が得られないとのことです。
 今、このように地域社会を支えてくれる中小企業や商店街の方々は、存亡の危機ともいうべき厳しい状況に置かれています。私は、その要因の一つに、固定資産税の問題があると考えております。現在、固定資産税の評価は、主として不動産の売買事例に基づき行われています。このため、都心、商業地などでは、他の住宅地域と比べて評価額が高くなっており、税負担が町で地場産業を営む中小事業者に重くのしかかっています。相続税対策などから、ビルを新築し、例えば一階を店舗、二階以上を貸し事務所にして、最上階を自宅などに使っている例が数多くあります。しかしながら、空室率は高どまり、テナント料は下落の一途という状況です。それゆえ固定資産税だけが毎年重くのしかかっています。
 そこで、固定資産税の評価方法の見直しは中小事業者の切なる願いです。商業地の評価については、中小事業者が安心して事業を継承でき、住み続けられるような、土地の収益力に着目した、いわゆる収益還元法を導入すべきと考えますが、所見を伺って、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 立石晴康議員の一般質問にお答えいたします。
 土木構造物の景観への配慮についてでありますが、まさにご指摘のとおりだと思います。
 世界のいろいろな都市には、例えばローマの水道橋であるとか、サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジなど、各国から観光客がそれを目指して訪れる歴史的建造物が多々ございます。日本にも、それほど人は集まりませんが、南禅寺近くの京都のインクラインであるとか、東京においても、皇居や国会周辺、隅田川にかかる幾つかの橋は、パリのセーヌにかかる橋にも劣らない、非常に美しい、由緒のある歴史と文化を象徴する景観を醸し出しておりますが、このように土木構造物は、都市景観への吸引力、インパクトが非常に大きく、景観向上の牽引役となってまいりました。
 しかし、どうも東京の現況を眺めますと、運河も含めて、東京の川はほとんどもうコンクリートの三枚張りになって、川からどこへも上れない。まして、その川に面している大きなビルディングも全部背中を向けていて、裏口すら川に向かっていないというていたらくでありまして、こういったことをこれから考え直す必要があると切に思います。
 まさに、町並みとの調和に欠ける新しい施設がふえつつありますが、景観の向上は容易ではございませんけれども、今後とも、土木構造物のデザインに創意工夫を重ねて、東京を外国の美しい都市と比べても遜色のない風格のある都市としていきたいと思っております。
 なお、他の質問については、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 景観についての三点の質問にお答えいたします。
 まず、水門の景観についてでございますが、水門は高潮や津波から都民の生命と財産を守る重要な施設でございます。現在、都が管理している水門は、河川や港湾区域に三十三カ所あり、ほとんどが完成から三十年以上経過しております。このため、平成七年度から、計画的に水門の修繕を進めており、その際、周辺に調和した色彩などを採用しております。今後とも、水門の修繕や補強などに当たりましては、建物のデザインや色彩などについて、周辺の景観に十分配慮してまいります。
 次に、区市道等における電線類地中化についてでございますが、都市景観の向上、防災機能の強化等に不可欠な地中化は、区市道では道路管理者である区市が電線管理者と協働して実施しております。
 地中化の課題は、幅員の狭い道路での地中化技術の確立、経験やノウハウの蓄積、事業費負担の軽減などでございます。都といたしましては、今後とも、さらなる地中化技術の開発、区等との地中化促進会議を通じた情報提供や技術支援、国庫補助率引き上げの提案要求など、区市の地中化事業を積極的に支援してまいります。
 終わりに、防災船着き場についてでございますが、防災船着き場は、地震等災害時に、船による迅速な被災者の避難や救難物資の荷揚げなどを行うための施設でございます。現在、隅田川など船の航行が可能な河川において二十三カ所計画しており、十九カ所が完成しております。このうち九カ所の船着き場について、水上バスや、学校、地域の行事のための船の発着場として利用しておりますが、今後、区や屋形船の事業者団体などとの協議をし、平常時の利用拡大を図ってまいります。
 また、船着き場のフェンス等の外構の整備に当たりましては、水辺の景観との調和に十分配慮してまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、環状第二号線の整備に伴う景観についてでございますが、環二は、沿道とのアクセス機能を強化充実させるため、地下構造から平面構造に計画変更し、これに伴い、隅田川横断部は橋梁形式とするものでございます。これまでも、隅田川の橋梁群につきましては、時代を超える象徴となるよう設計、建設してまいりました。中でも、勝鬨橋は東洋一のはね橋として技術の粋を集めて建設され、歴史的建造物として下町の風景を彩る名橋となっております。今後、その下流に設置される環二の新たな橋梁についても、百年先を見据え、風格ある景観の創出に十分配慮してまいります。
 次に、築地市場の跡地利用に関する都の基本姿勢についてでございますが、当地域は、都心や銀座に隣接するとともに、日比谷線築地駅に加え、平成十二年には大江戸線が開業し、また、環状第二号線の整備が予定されているなど、極めて高いポテンシャルを有しております。一方、隅田川や浜離宮に接し、豊かな水辺や緑の環境にも恵まれております。
 跡地利用に当たりましては、こうした地域特性を十分に生かすとともに、この地域が長い年月にわたりはぐくんできた歴史と文化の、そういった継承などにも配慮することが重要であると認識しております。
 最後に、跡地の利用計画についてでございますが、具体の跡地利用計画については、豊洲新市場の開場時期を見据えて策定していくこととなると考えております。今後の取り組みといたしましては、跡地利用の基本的な方向性を検討していくことになりますが、その際には、地元中央区を初め、関係機関と十分協議していく必要があると認識しております。
   〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) 海の森構想についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京のランドマークとなるような森づくりについてでございますが、ご指摘のように、海の森の予定地は、東京の空と海の玄関口に位置し、日比谷公園の五倍を超える広大な面積を有しております。その立地特性を生かした豊かで美しい森づくりは、首都東京にふさわしい新たなランドマークを生み出すことにつながると考えております。現在、東京都港湾審議会のもとに専門部会を設置し、東京の新たなシンボルの形成、都民、企業等との協働による事業の進め方などを検討しております。
 今後、躍動する東京ベイエリアの一翼に、緑あふれる森とともに四季の変化を彩る樹林や水辺を配置いたしまして、広く都民に親しまれる海の森づくりを目指してまいります。
 次に、都民や民間との協働についてでございますが、ごみで埋め立てた土地を緑豊かな海の森としてよみがえらせる取り組みに多くの都民等が参加することは、森への愛着を深め、森を守り育てていくことにつながると認識しております。このため、小中学生が海上公園でドングリを拾い、それをまいて苗木をつくり育てていくことや、企業を初めとする民間の社会貢献活動と連携して植樹祭を催すなど、協働の進め方について専門部会で検討しているところでございます。
 今後、一人でも多く幅広い層の人々が参加する仕組みを整え、幾世代にもわたって利用され、親しまれる森づくりに取り組んでまいります。
   〔中央卸売市場長森澤正範君登壇〕

○中央卸売市場長(森澤正範君) 築地市場問題についての二点のご質問にお答えします。
 まず、豊洲新市場建設に関する事業の進捗状況についてでありますが、現在、施設計画や公共と民間の役割分担など、新市場建設の基本的な事項について、築地市場の関係業界と検討、協議を行っているところであり、本年七月には、都として取りまとめを行い、豊洲新市場基本計画として公表する予定であります。
 また、基盤整備については、引き続き護岸整備事業を行うほか、豊洲地区に用地の一部を初めて取得するなど、今年度、豊洲新市場建設事業は実現に向けて大きく進展することになります。
 次に、地元区などへ新市場建設の理解を求めていくことについてでありますが、これまで場外市場の関係者に対しては、計画の検討を進める中で説明や情報提供を行ってきており、おおむねご理解をいただいたと考えております。
 また、地元中央区に対しては、区から示されました新市場建設の疑問点について、文書で回答するほか、さまざまな機会を通じて説明を行ってまいりましたが、現段階でも移転反対の旗を掲げたままであるなど、十分な理解を得られていない状況にございます。
 今後とも、豊洲新市場建設の必要性や事業内容等について、理解と協力が得られるよう努めてまいります。
   〔主税局長川崎裕康君登壇〕

○主税局長(川崎裕康君) 固定資産税における土地の評価についてでございますが、いわゆる収益還元法は、現状においては評価の検証の手段として用いられておりますが、社会経済の変化に伴い、土地の利用価値や収益性が重視されてきており、より積極的に活用していくことが求められております。また、現行の評価方法は複雑かつ専門的で、納税者にわかりにくいものとなっており、簡素化が必要であると認識をしております。
収益還元法の一層の活用には、収益等の土地情報の整備が不可欠であり、こうした点も踏まえ、納税者の信頼を得られる評価の仕組みについて、東京都税制調査会を活用しながら検討し、国に対し改善を求めてまいります。

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