平成十六年東京都議会会議録第八号

   午後三時三十二分開議

○副議長(中山秀雄君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 七十六番中村明彦君。
   〔七十六番中村明彦君登壇〕

○七十六番(中村明彦君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について、知事並びに関係局長にお伺いいたします。
 まず、分権改革の推進についてお伺いいたします。
 去る六月三日、経済財政諮問会議は、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二○○四、いわゆる骨太の方針二○○四を取りまとめ、同四日、閣議決定されました。注目されていた三位一体改革については、税源移譲はおおむね三兆円規模を目指すとし、その前提として、地方公共団体に対して国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう要請し、これを踏まえ検討する、地方交付税の算定の見直しを検討することになりました。
 昨年六月の骨太の方針で基本的な方向を示し、一年を経ていながら、補助金改革の行程表、税源移譲の内容、交付税改革といった全体像は、この秋まで先送りされてしまいました。しかも、三兆円には十六年度移譲分も含まれるという解釈もあり、本定例会後に予定されている参議院議員選挙の前に思い切った三位一体改革案を示された方が小泉内閣の評価を高めることにつながるのでありましょうに、それができないところに小泉内閣の限界が示されているのではないでしょうか。
 具体案を先送りし、国民の審判を避けてまとめられるこの秋の三位一体改革案は、私たちが手をこまねいていては、結局は各省庁の権限、財源を温存する官僚主導のものとなることが予想されます。
 こうした状況について知事はどのように認識されておられるのか、まずお伺いいたします。
 東京都は、既に先月十四日、この骨太の方針二○○四に向けた対案として、当面必要な最低限の事項について緊急提言を行っています。二十一世紀臨調知事・市町村長連合会議も同十三日に、全国知事会も同二十五日に、同様の提言を行っております。
 当面する三兆円の補助金改革については、今回の骨太の方針によって、ある意味では自治体側にげたを預けられた形になっております。政府が全体像をまとめる前に、全国の自治体が合意する補助金改革案をまとめなければなりません。同時に、この分権改革が三兆円という第一段階にとどまることなく、真の改革とするための取り組みも求められております。
 東京都には、既に平成八年四月に、分権すべき権限と財源をまとめるなど、分権改革推進に向けた長い蓄積があります。さきの提言でも、この秋にも制度構築に向けた具体的な提案を行うとしておりますが、現行の地方税財政制度の問題点が、実際の自治体運営にどのような影響を与えているのかを具体的に示すとともに、移譲すべき税財源、廃止すべき国庫補助負担金、地方交付税の見直し案、目標年次の設定など、小泉首相の逃げを許すことのない、極めて具体的な提案を取りまとめる必要があると考えますが、見解をお伺いいたします。
 また、東京都は、さきの提言で、財源調整機能の確保を求める他自治体への配慮を示すとともに、全国知事会の提言に際しても、税源配分の調整措置や地方譲与税の配分調整、法人事業税、法人住民税の分割基準の見直しの削除を求めつつも、東京都の意見が附帯意見として付されることをもって、提言することそのものには反対しない姿勢を示しました。
 私は、今後も東京都が主張すべきは主張し、引き続き各自治体の理解を求めていく必要があると思いますが、同時に、今の小泉内閣のもとで税財源の移譲を獲得していくためには、全国の自治体との緊密な連携もまた重要であります。
 また、東京都は、既に先月の四都県知事懇談会や八都県市首脳会議において、秋に向けて集中的に検討し、連携して取り組んでいくことを確認しておりますが、今後、分権改革を推進するため、首都圏の各自治体とどのように取り組んでいくのか、そして全国の自治体との連携をどのように図っていこうとお考えか、大きな歴史的な視点を明確にし、より踏み込んだ抜本的な改革の実現を目指す、知事の決意をお伺いいたします。
 次に、地球温暖化対策についてお伺いいたします。
 京都議定書で約束した温室効果ガス削減目標の達成が困難との見通しが明らかになったことから、政府もようやく、環境税を含む抜本的な対策の検討に向け重い腰を上げようとしております。
 環境省は、東京都など自治体の制度を参考に、おくればせながらオフィスビルなどの温室効果ガス排出量の報告制度の検討を始めると聞いております。
 このように国の対応が極めて後手後手となっている中で、五月十日、東京都環境審議会は、東京都における実効性ある温暖化対策を答申いたしました。私たちは、温暖化対策を進めるためには、審議会で提案された施策を実施するとともに、排出削減が進まない家庭部門や運輸部門での対策の強化、そして何よりも石原知事が国に対して提案要求している温暖化対策税の創設など、実効性のある温暖化対策を直ちに実施することが必要であると考えております。
 そこで、環境審議会答申の今後の取り組みや昨今の国の取り組みなども踏まえ、温暖化対策に向けた石原知事の基本認識について、改めてお伺いいたします。
 環境審議会答申を受けて、東京都では、これから環境確保条例の改正に向けた具体的な検討がなされるものと思います。特に答申では、事業者のこれまでの取り組みや業務実態などが多様であることなどから、大規模事業所におけるCO2の削減については、一律の削減基準を義務化するという手法をとらず、これから東京都が策定する対策指針に基づいて、それぞれの事業者が自主的に削減目標を定めるとしております。
 したがって、指針の内容をどのようなものにするかは極めて重要であり、事業者の現状を追認するような基準では、制度の後退だといわれかねません。
 私は、指針の策定に当たっては、一九九○年比で六%削減という目標は最低限の原則とし、最新の知見や技術革新なども踏まえ、それぞれの事業者がより高いレベルでの削減目標を設定できるようにすべきと考えますが、指針策定に向けた基本的な考えについてお伺いいたします。
 私たちは、今年二月の代表質問でも、産業、業務部門のCO2排出量の約七割を占めている大規模事業所以外の事業所に対する取り組みを求めてまいりました。東京都も中小事業所に対する情報提供などの支援を約束しておりますが、私は、事業者の特色や事業の形態に応じて、より積極的な取り組みも可能ではないかと考えております。
 例えば、コンビニエンスストアやファストフード店などのように、一店舗だけを見れば制度の対象とはならないものの、これらの店舗の設備や実際の運用が一括で管理されている形態であったり、企業としては一つであるものもあります。私は、このように条例の対象外となる事業者などについても、より踏み込んだ具体的な対策を講じていく必要があるものと考えますが、見解をお伺いいたします。
 また、答申では、家庭部門への取り組みとして、家電製品の省エネラベル制度を提案しておりますが、東京都は、これに先駆けて、エアコン、冷蔵庫、ブラウン管型テレビについて、八都県市省エネ型家電拡大キャンペーンを実施して、省エネラベル制度を全国の道府県、政令指定都市に呼びかけていくとしております。
 私は、こうした素早い取り組みを率直に評価するとともに、今後は、テレビよりも使用電力量の多い照明器具を初め、電気製品以外のガス器具などについても対象品目を拡大するよう求めるものであります。また、家庭でのエネルギー消費の五割以上を占める暖房用、給湯用熱利用についても、高効率給湯器の普及を促進するような誘導策を検討すべきと考えております。
 家庭部門における温暖化対策をさらに充実させるために、省エネラベル制度の充実などに積極的に取り組むべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 また、都内のCO2排出量の三五%を占める、部門別では最も排出割合が大きい運輸部門については、具体的な対策を講じるまでには至っておりません。
 長期的には、環境基本計画でも提言されていた土地利用を含めた検討、あるいは公共交通機関の整備、ロードプライシングを含めたTDMの推進などが考えられますが、当面の課題として、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車といった低燃費車の普及拡大など、単体対策を充実するとともに、自動車使用の合理化やエコドライブなどの普及啓発についても積極的に取り組んでいくべきと考えております。
 運輸部門における温暖化対策について、見解をお伺いいたします。
 温暖化の最後に、東京都の率先した取り組みについてお伺いいたします。
 東京都は、平成十三年三月に、地球をまもる都庁プランを策定し、省資源、省エネルギー、有害物質等の削減に積極的に取り組んでまいりました。しかし、プランにおけるCO2の削減目標は、平成十六年度において、平成十一年度対比で二%でしかありません。
 今年度で計画期間が終了する地球をまもる都庁プランの改定に当たっては、東京都が民間事業者の模範となるように、高いレベルの削減に取り組んでいく必要があります。そのためにも、都庁の排出量の七四%を占める公営企業を含めた新たな削減目標を設定するとともに、ESCO事業を積極的に導入するなど、東京都自身における温暖化対策をさらに充実強化すべきと考えます。
 地球をまもる都庁プランの改定について、見解をお伺いいたします。
 次に、交通政策についてお伺いいたします。
 まず、去る四月十九日、横田基地共用化に関する国の関係省庁と東京都との連絡会の協議内容がマスコミにより報道されました。これに対して、地元自治体からは反発の声が上がっており、五月十七日には瑞穂町及び町議会、二十日には昭島市及び市議会から抗議文が提出されております。瑞穂町や昭島市は、情報提供もないまま共用化への既成事実を積み重ねられていくのではないかといった懸念を持っているとのことであります。
 こうした地元の声を真摯に受けとめ、知事の所信表明にありましたような、地元自治体の理解と協力を得ていくべきであると考えますが、見解をお伺いいたします。
 また、五月二十五日には、羽田空港の再拡張事業について千葉県が国土交通省の修正案を了承しました。このことによって着工に向け大きく前進したわけでありますが、私たちは、この修正案及び国土交通省の姿勢を評価するものであります。
 知事も、この修正案に関して、所信表明の中で、都の主張を踏まえ、検討、工夫された案と評価されているわけですが、この間、東京都はこの飛行ルート問題に関しどのように取り組んできたのか、また、今後どのように対応していくのか、お伺いいたします。
 交通は、私たち都民の日常生活や経済活動に欠かすことができません。交通政策は、バス、タクシーや自転車などを含む道路交通、鉄道、航空、海運といった多様な交通について、都市整備、環境、少子高齢化、国際化などといった多様な観点から、多角的、総合的に進める必要があると考えます。
 しかしながら現状では、交通政策の大部分は都市整備局が所管することとなっておりますが、都バス、都電荒川線、モノレール及び都営地下鉄に関する事項については交通局、海運に関する事項は港湾局、道路の整備と管理は建設局というように所管が分かれております。
 本年四月、より迅速で実効性のある市街地整備を推進するため、まちづくりの計画部門と実施部門を統合し、新たに都市整備局が設置されたところでございます。交通政策についても、関連する機関などの一元化した取り組みが必要と考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、観光振興についてお伺いたします。
 石原知事の観光振興に向けた取り組みは、国をリードし、各自治体や民間団体の観光に対する機運を大きく高めてまいりました。私の地元台東区のように観光課がある自治体は、かつてはまれでありました。都内の区市町村においても観光振興の重要性が認識され、正面から取り組む自治体もふえてまいりました。
 東京都は現在、地域の観光資源を有機的に結びつけ、観光まちづくりを推進するために、昨年六月に観光まちづくり推進協議会を設立し、上野、臨海の二つのモデル地区を設けました。そして今年度は、この観光まちづくりを全都的に展開しようとしております。私は、こうした取り組みに大いに期待するものであります。
 一方で、東京には、特色ある地域が豊富にあり、それぞれ多様性に富んでおります。それがまた東京の魅力でもあり、観光まちづくりを全都的に展開するに当たっては、画一的な対応ではなく、地域の実情に応じた取り組みが必要であると考えます。
 東京都は、どのようにしてまちの個性を生かしながら、まちづくりに取り組み、広めようとしているのか、見解をお伺いいたします。
 東京都は、三月三十一日、観光まちづくり基本指針並びに上野地区観光まちづくり基本構想を発表しました。
 上野公園を中心とする上野地区は、東叡山寛永寺に代表される歴史遺産、さらには東京国立博物館や上野動物園など国内一級の文化施設があり、豊富で質の高い観光資源に恵まれた地域といえます。また、隣接してアメ横など都内有数の商業空間、さらには近隣には浅草など強い吸引力、誘導力を持つ地区があります。
 基本構想では、これら豊富な観光資源を生かし、地域の回遊性を高めるための手段として、いわゆるパークトレインの導入が検討されております。私も、イタリアのピサの斜塔近くで、機関車型の電気自動車が走行し、観光ポイントを結ぶのを見てまいりました。こうした取り組みは、上野における長年の課題を解決するものとして、大いに期待するものであります。
 そこで、上野地区における観光まちづくりについて、現在の取り組み状況や東京都の対応について、お伺いいたします。
 また、現在、東京都が建設を進めている上野と御徒町を結ぶ地下歩行者専用道路については、地下駐車場の供用が開始される平成十八年度を目指し、早期実現を強く求めるものであります。
 上野地区の魅力を高めていくためには、まず、地元自治体が主体となった取り組みが求められます。しかし、東京都美術館や東京文化会館、そして上野公園などの施設は、いうまでもなく東京都の施設であり、東京都の率先した取り組みが可能であります。
 上野公園では、ホームレスのブルーテントも多く、今後、東京都が打ち出した地域生活移行支援事業の取り組みのためにも、民間団体と連携したホームレスとの話し合いも期待されます。また、改修が予定されている東京都美術館についても、上野公園のメーンの広場から奥まっていて見えにくいとの指摘もあります。
 私は、緑のロケーションや植栽を工夫することで、都民が快適に文化や歴史を体感できる上野公園を実現していくべきと考えますが、東京都はどのように取り組んでいくのか、見解をお伺いいたします。
 東京文化会館を拠点として活躍している東京都交響楽団は、会館の屋外のテラスで平成十四年度から、アンサンブルなど小編成によるコンサートを無料で行うティータイムコンサートを実施しております。
 しかし、このコンサートは月に一回しか開催されておらず、文化会館から出てきて、たくさんの都民が訪れる上野の森などで、もっと積極的に展開するべきであります。
 また、文化会館でティータイムコンサートが行われる場合には、テラスの位置や植栽などの関係で、通行人からは、中でコンサートをやっていることがわからないとの指摘もありました。
 私は、上野地区を文化のまちとしてさらに盛り上げていくためにも、ティータイムコンサートの公演をふやすなど積極的な取り組みをするとともに、通行される都民からもコンサートが行われていることがわかりやすいようにするべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 東京都交響楽団については、ホールや劇場だけではなく、公立施設やオープンスペースなどでもボランティアで演奏するなど、今まで以上により積極的に活動し、都民の交響楽団として、その存在をアピールしていく必要があります。
 そこで、今後、福祉施設などへ出前のコンサートを実施するとか、小中学校で音楽のワークショップを実施するなど、都民の身近な交響楽団として公共的な役割を大きく打ち出していくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 観光振興を図る上で、都市景観の向上が欠かせませんが、この都市景観を阻害している都市施設の一つに、電柱があります。東京都は、四月二十六日に無電柱化推進計画を策定し、平成二十年度までに、都道における地中化率を区部で五三%、多摩部で二三%にまで向上させることを目標にしております。
 今回の整備方針では、これまでの都道主体の整備に加え、都心部など主要な顔となる地区での面的な整備が打ち出されておりますが、区道や市道など幅員の狭い道路では、無電柱化にも限界があり、地元自治体と連動した取り組みが重要と考えます。
 また、無電柱化を進めるためには、財源の確保が大きな課題になると考えますが、限りある財源を有効に使うためには、都内全域で事業を展開するのではなく、優先順位をつけながら戦略的に進めていくことが必要です。
 無電柱化の推進に向けて、これらの課題に対する認識と今後の取り組みについて、見解をお伺いいたします。
 次に、農林水産業対策についてお伺いいたします。
 生産から流通に至る生産履歴情報をさかのぼることができるトレーサビリティーは、食の安全・安心やリスク管理の観点から重要であり、EUを初め世界的な動きとなっております。
 こうした中で、東京都が本年四月、食の安全・安心確保に向けた都独自の仕組みとして、生産情報を記録、提供する食品事業者の登録制度を開始し、去る三日には、百五十五事業者、二百三品目の登録を公表しました。食への不安を解消するための大きな一歩であると評価しますが、いまだ課題も抱えております。
 特に、近年の我が国の食料自給率は、カロリーベースで四〇%と低く、輸入食品に対する安全・安心対策が重要な課題となっております。
 しかしながら、食品事業者と消費者を結ぶ食品の情報の記録、保存に関しては、現行法では違反食品等を速やかに排除するための制度はあっても、生産履歴を継続する制度は不十分であり、輸入原材料の生産情報は流通の過程で途絶えるおそれがあります。
 また、輸入原材料の表示制度でも、現在、ウナギ加工品など八品目の一次加工品だけに義務づけられており、大部分の加工食品には表示義務がありません。
 輸入牛肉のカルビを例にとれば、国内で単に一次加工として味つけをし、味つけカルビとされた段階から、原料の原産地の表示義務がなくなります。今後、味つけカルビなどにも対象が拡大されると聞いておりますが、その場合でも、二次加工以降は対象となりません。つまり、対象拡大後は、味つけカルビの段階までは原料の原産地表示が残りますが、次の加工でカルビ弁当になると原産地表示がなくなるのであります。
 また、拡大予定になっていない小麦の場合は、国内で製粉されただけで原産地表示がなくなります。
 このような法体制の中では、たとえトレーサビリティーの情報を持つ輸入食品でも、これらの情報管理は加工業者等にゆだねられており、小分けや加工等の複雑な流通過程で継続されないことが考えられます。
 今日、都民は、食の安全・安心に対する関心は極めて高く、牛肉や小麦粉のように、原材料の輸入後に日本で加工製造された食品であっても、その主な原材料の原産国や生産方法などの情報を求めております。
 そこで、食品の輸入原料の原産国や生産方法などの生産情報の記録等の継続性について、東京都はどのように考え、対応しようとしているのか、お伺いいたします。
 さて、東京の海や山を顧みますと、例えば海では、伊豆・小笠原諸島を中心に、日本の経済水域の四割に及ぶ水域を擁し、豊かな海洋資源を抱えております。
 また、多摩の山間部に目を転じれば、都の面積の約三割を占める森林面積を擁しており、杉、ヒノキの人工林やキノコなど山の幸にも恵まれております。
 先ごろ策定された水産業振興プランと森づくり推進プランでは、こうした事実とともに、水産資源の減少や多摩の森の荒廃、水産業や林業の後継者不足など、産業としての存立を危ぶむような実態もつまびらかにされております。
 まず海では、水産資源の枯渇が将来にわたる問題であり、漁業経営そのものに大きな影響を与える深刻な危機となっております。最近、漁業関係者から、海の魚が減ってきた、えさとなる海藻が減ってきた、サメによる食害もひどいという声が聞こえております。確かに、漁獲量を見てみると、平成十四年では、五年前と比べて三〇%以上落ち込んでおります。水産資源の減少は、乱獲や密漁などの違反操業の影響もあると思いますが、漁場の海藻が減少する磯焼けや、何らかの原因による海そのものの環境変化も大きな原因の一つではないでしょうか。
 そこで、今回のプランでも、違反操業の取り締まりや漁場回復のための環境調査を行い、水産資源の増殖を図るとしておりますが、具体的にどのように進めようとしているのか、お伺いいたします。
 一方、山においては、安価な輸入材の増加に伴う木材価格の下落や林業の低迷などにより、従来からの木の循環が失われております。多摩の森にあっても、十分な間伐が行えないなど管理が行き届かなくなっており、結果として、水源の涵養、地球温暖化や土砂流出の防止といった森本来の働きが著しく低下しております。
 今回のプランでは、こうした東京の森の危機を克服するため、東京の森を、木材の持続的生産、木の循環を重視する生産型の森と、自然環境や景観を重視する保全型の森とに区分した上で、それぞれの役割に応じた森づくりを推進することとしております。
 従来の木材生産を主体にした林業だけで森林を守ることは困難であり、環境にも配慮した本プランの指摘は評価するものであります。
 一方、生産型の森は、木の循環の過程でCO2を吸収する力が強いだけでなく、雇用の創出、地域の活性化など多様な可能性を秘めています。そのため、プランでは、林業の振興と森林の可能性を生かした新たな産業の創出を目指すとしておりますが、今後、多摩産材の活用を進め、林業の持続的経営を実現するため、どのように具体的な政策を進めようとしているのか、お伺いいたします。
 次に、福祉政策についてお伺いいたします。
 国の規制改革会議では、官製市場の民間開放のための三カ年計画で、ある規制を行う場合に、社会的影響を含めた利点と、かかるコストを数値化し公表するという、規制影響分析の導入を示しております。これは、省庁の仕事づくり、既得権保護のための安易な規制でがんじがらめで市場の活力が奪われ、国民の利益が損なわれている現状を改善するため、責任の所在を明確にすることで、安易な規制に歯どめをかけることが目的であります。
 他方、五月に発表された国民生活白書において、地方自治体が民間活動のきっかけづくりや側面支援に回る新しい公共の創造について、具体的な事例など紹介しながら推奨をしております。
 こうした官製市場の民間開放、地域活動の活性化などは、一向に実質的な進展を見ておりませんが、自治体は、法的制約の中で苦慮しながらも、着実に対応を進めています。
 例えば、痴呆性高齢者のグループホームの設置を完全に市場にゆだねることは、住みなれた地域で生活するという前提が崩れ、より地価の安い地域に偏在し、サービス拠点と関連した設置がされず、孤立した住まいとなるといった危険性をはらんでおります。
 しかし、一方では、グループホームの設置や運営、関連サービスに民間事業者の参入を促すことで、ニーズを的確、迅速にキャッチし、きめの細かい対応ができる、住民の流動性の高い都市部では、福祉活動を通じて、自然な形でのコミュニティの再生、形成が期待できるなどメリットが大きいことは、たびたび申し上げてきたところであります。
 私たちは、こうした課題とメリットを踏まえた上で、痴呆性高齢者グループホームの設置促進に、民間事業者やNPO等を活用していくことが重要と考えております。
 介護保険制度の見直しを控え、この点について見解をお伺いいたします。
 また、東京都はさきに介護予防効果の実証実験を行うとして、モデル地区を選定いたしました。確かに、介護保険の状況を見ますと、要支援、要介護1の軽い人、介護保険制度の入り口付近にいる人がふえております。一人当たりのサービス給付は減っており、比較的元気な方が多いようであります。今回の事業は、こうした方々に有効な介護予防システムを構築することで、より長い間、健康で活動的に過ごし、介護状態にならない、悪化しないためのものと受けとめています。
 介護予防については、全国の自治体で事業が行われてきたものの、効果が見えないことが指摘されています。今後は、東京都老人総合研究所が開発した科学的な根拠に基づくプログラムにより、一人一人の心身の状態に合った事業が実施され、目に見える効果が上がってくるのではないでしょうか。今後の取り組みについて、所見をお伺いいたします。
 リハビリテーションや介護予防については、地域で継続的に実施できるようにしていくことが必要であり、提供体制の構築が急がれるところであります。また、将来的には、介護予防の周辺サービスについても地域資源を活用するための取り組みを進めていただきたいと思います。
 次に、知的障害者の地域生活を支援する取り組みについてお伺いいたします。
 この四月に東京都は、グループホーム設置促進事業本部を立ち上げ、知的障害者グループホームの設置促進に向けての取り組みを開始いたしました。スタートして二カ月です。既にこの間、制度をつくって待つのではなく、攻めの姿勢で打って出るという基本方針のもと、サービス提供事業者や区市町村などへのセールス活動を始められたと聞いております。
 整備目標達成のために、どのような取り組みを考えているのか、お伺いいたします。
 次に、知的障害者が地域で積極的に社会参加を果たしたり、文化活動やスポーツといった生活の楽しみ、生活の質の向上を支援する取り組みについてであります。
 スポーツは、心身の健全な育成やコミュニティ形成、生きがいなど幅広い効果がありますが、障害のある人にとっては、さらにノーマライゼーション推進という意味を持ちます。既に平成十四年六月、障害者スポーツに関する検討会から提言が出されており、これに基づき、今後、障害者の生活がより豊かになるよう環境づくりが進むことが期待されております。
 施設生活では、こうした余暇活動にも施設職員のサポートがありますが、地域生活では、家賃などの経済的負担もある中で、自主的に取り組まなければなりません。
 知的障害者の余暇活動や社会参加活動支援についてどのように考えるのか、所見をお伺いいたします。
 さて来年二月、スペシャルオリンピックス冬季世界大会がアジアで初めて、長野で開催されます。スペシャルオリンピックスの世界大会とは、知的障害を持つアスリートが集まり、日ごろの成果を発揮する、いわば知的障害者のオリンピックでございます。世界八十カ国、二千五百人のアスリートが集まり、アルペンスキーやスピードスケートなどの競技を繰り広げることになっております。これまでの世界大会では、勝たせてください、もし勝てないとしても、頑張る勇気を持たせてくださいという誓いの言葉を胸に、みずからの可能性に挑戦するアスリートたちのひたむきな姿が、世界じゅうの人々の感動を呼んでまいりました。
 日本においても、知的障害者に対する社会全体の理解を進めていく上で、来年の世界大会が大きなきっかけになるものと期待されておりますが、スペシャルオリンピックスという言葉さえ、余り知られていないのが現状であります。
 そこで、スペシャルオリンピックス冬季世界大会実行委員会は、PRのため、今年秋から来年の大会直前にかけて、日本列島を縦断する五百万人トーチランという聖火リレーを繰り広げます。ボランティアの協力のもと、障害のある人も、また障害のない人もともに走って、来年の大会をPRするものであります。日本の顔である首都東京のトーチランも、多くの人々の参加を得て成功することを願うところであります。
 スペシャルオリンピックスの活動は、知的障害者の自立充実した生活の実現に大いに寄与するものと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、青少年の健全育成についてお伺いいたします。
 先日、長崎県佐世保市で小学六年生が、ホームページの掲示板への書き込みがおもしろくなかったことを理由に、同級生にカッターナイフで切りつけ、死亡させるという事件が起きました。この事件は、私に非常に深いことを考えさせる事件でございました。
 一つには、現在の情報機器やネットワークの発達に、私たち親も含めて、社会が十分に対応できていない。そのために、子どもが生々しい情報に接しても、受けとめて吟味ができるようにするメディアリテラシーの教育がほとんど行われていないのであります。
 私たちは、青少年健全育成条例の改正などにおいて、たびたびメディアリテラシーの重要性を述べてまいりましたが、今回の事件を受けて改めて、規制だけでは根本的な解決にならないことを感じました。
 今後、メディアリテラシーの育成にどのように取り組んでいくのか、見解をお伺いいたします。
 もう一つは、極めて抽象的な課題ですが、私たちが当たり前に持っている命というものの実感、痛みについての理解を持ち合わせないと、子どもも一体何ができるのだろうかということであります。
 青少年健全育成条例の改正で、バタフライナイフなどの刃物類を青少年が購入することは規制されました。しかし、カッターナイフを初め鉛筆や定規など鋭利なものは学校内には幾らでもあります。規制だけでは追いつかないばかりか、肝心の、刃物を欲しがる、人に切りつける衝動を抑えられない、そうした子どもたちをどうするかが置き去りにされたままであります。
 私は、我が国で唯一ともいえる少年法の権威、森田明氏がいうように、子どもが最も必要としているのは関係であり、私たち大人自身が、断片化された人間関係を紡ぎ直し、コミュニティの再生をしていくことしかないと考えます。
 子どもたちを取り巻く状況についてどのようにお考えか、知事の見解をお伺いし、都議会民主党を代表しての質問を終わります。
 知事並びに関係局長の誠意ある答弁を求めます。
ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 中村明彦議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、国の分権改革の取り組みについてでありますが、骨太の方針なるものに地方分権改革が取り上げられるのは、ことしで三度目でありますけれども、この間、一体何が進んだのかということを思い直しますと、非常に寒心にたえません。地方への影響力を守ろうとする総務省と、国家財政の負担軽減に固執する、つまりみずからが抱える金目の問題に固執する財務省との対立に終始している感じがいたしまして、選挙対策など政治的な思惑も加わっているようで、時間だけが空費されている感じが非常に強くいたします。
 五年前に、小渕内閣のころ、地方分権一括法なる法律ができまして、繰り返して申しますけれども、珍しく付記がついておりまして、その付記には、税財源の分与の問題は中長期の問題であると。私も長く国会にいましたが、国会で中期といいますと、どんなに早くても五年、長期になれば半世紀たっても解決しない問題がありまして、それが如実に昨今の三位一体、地方分権の問題に象徴されているという気がしますが、分権改革の行方は、これは国家の体質をこれからどう変えるかという致命的な問題でありまして、まさに国の命運がかかっております。
これを直接にハンドルする国の政治家たちは、官僚のいうことを聞くだけではなくて、それぞれ選ばれた者として、国政を左右する責任において、どうか冷静に日本の歴史を振り返り、この問題がいかに歴史的必然性、蓋然性があるかという正しい認識の上に国家というものを考えた発言をし、討論をしてもらいたいと思っております。
 次いで、この問題に関して他の自治体との連携についてでありますけれども、総理も先般、地方のいうことをよく聞くようにということをいったようでありますが、この地方なるものがまことに多々ございまして、例えば全国の知事会というのがありますけれども、これも県によって財政事情、その他の事情がことごとく違います。
今、梶原さんという岐阜県の知事が、みずから名乗って全国会の会長になりました。その前は埼玉県の土屋さんが会長を務めておられまして、これは非常に公平に運営されていて、例えば首都圏の問題を、東京、埼玉、神奈川、千葉が集まって一種の広域行政をやろうと、実際にやってきましたが、その問題を全国知事会に持ち出すときにも、自分は全国の会長の立場があるから、これは自分からいい出さない、だれかほかの人がやってほしいという、非常に冷静、公平な立場をとっておられたんですが、あえて申しますと、今度の会長は、就任、立候補する前、私にも問い合わせがありましたが、私はとても忙しくてそんなのをやっている暇はないとお答え申し上げて、梶原さんが自薦他薦、なられましたが、ああいう組織で多数決というものは、全く物事の判定としてはなじまない方法ですけれども、どうもそういうものを強引にとられている節がありまして、私も強く異議を申し立てしました。
 ゆえに、総理がいう、地方の声を聞こうといっても、これは決して全国知事会の声にはなり得ないと思うし、また、なってはならないと思いますし、同じ県の中でも、そこにある政令都市だって、かなり立場も意見も違うでしょう。こういったものを地方の声という形でどう束ねるか、どう選択、収れんするかというのは、これはやっぱりまさに国の責任だと思いますが、非常に難しい問題が複合的に絡み合っております。
 いずれにしろ、現行の議論を眺めておりますと、だんだん東京を初めとする大都市対地方という対立の構図が殊さら描き出されておりまして、自治体間を分断しようとする動きが露骨に見られます。これは、問題を歪曲して、根本かつ本質的な改革というものを阻害する意図ともとりかねない。これは許すわけにはいかないと思っております。
 こうした動きを打破し、日本の再生のためにも抜本的な改革を実現するには、全国の自治体と力を合わせるというのは非常に妙ないい方になりますが、それぞれ意見を率直に出し合って、それをとにかく収れんし、最大公約数をとっていくということ。しかも、それは、決して各自治体、セクターの利益をそれぞれ踏まえるということではなくて、国家全体を見晴るかした歴史意識の上で、いうべきことをいい、討論するということだと思います。
 例えば地方分権、確かに必要であります、徹底した形で。しかし、同時に、国は一体この時代に何と何をすべきかということも、国がわからないなら、地方からいうべきだと私は思う。田中角栄時代に列島改造論というものを持ち出されて、つまりわかりやすくいいますと、飛行場を各県に一つずつつくるなどという、非常に高密度な社会構造というものが望ましいというふうな論が横行し、実際にそれは着手されましたが、それが依然としていまだに続いているわけです。私は、これは非常にロスの多い、国家の計を基本的に間違う戦略だと思いまして、こういったものをこの機会に打破し、修正する。
 しかし、やはり国家としての仕事は、外交とか防衛とか司法など、歴然としてあるわけであるし、また同時に、国家の戦略に基づいた投資、これは例えば科学分野にもそうでありますし、また、日本の中のある地域に集中的に投資をするということも、その地域のメリットではなしに、国家全体の利益のためにしんしゃくされるべき問題だと思います。
 また、これは当然のことでありますけれども、国が国民に対して行う基本的な行政サービス、生活保護であるとか義務教育など、これは全面的に国がナショナルミニマムとして責任を持って行う仕事だと思いますが、それまでが何かあやふやになってきているうらみがございます。
 いずれにしろ、今後、大都市圏としての意見を集約して、大都市の立場を表示しながら、この地方分権の問題、結果として非常に五十年、百年の日本を合理的に左右する、そういう決着を今から図っていきたいと思っております。
 次いで、温暖化対策に向けての基本認識でありますけれども、つい最近の新聞で、何かスウェーデンで学者たちの寄り合いがありまして、いろいろ国際援助をやっているけれども、非常に効率のいい物事の順位を決めないと、非常にむだに金が使われているという議論があって、その結論として、国際的な経済援助も含めて対処すべき、非常にグローバルなやっかいな問題のトップがエイズであります。残念ながら、この地球温暖化の問題は、はるかにはるかに低いランクでして、余り問題になっていなかった。つまり、当面の問題としては危険が少ないというような結論でした。
 これはちょっと私は心外でして、これはこのまま放置しますと、そのうちにとんでもない規模の災害というものを招致しかねない、そういう認識というものが、どういう専門の学者の寄り合いか知りませんが、欠けているなという感じがいたしました。
 今日のエネルギー大量消費型の社会は、これをこのまま放置しますと、地球温暖化に歯どめをかけることはできません。再三申しておりますけれども、マーシャル群島の一部の標高が高いところで五メートルしかないような砂州でできている国家はまさに沈没するわけで、そのときの避難先はオーストラリアに決めているようですけれども、こういったものが頻発しますし、ヒマラヤの氷河が決壊しますと、自然にできている湖がさらに決壊して、とんでもない災害が起こる。
 こういう現実が迫っていながら、世界全体の動きは、京都議定書の発効の見通しすら立っていないわけでありまして、こういう状況の中で、都は独自に、年内を目途に、大都市の特性を踏まえた実効性のある温暖化対策の制度構築を進めていくつもりでございます。この夏には率先して、八都県市で共同して取り組む省エネ家電拡大キャンペーンを全国的に展開するなど、持続可能な社会の構築に向けて、大都市圏から国を動かしていきたいと思っております。
 最後に、今日の子どもたちを取り巻く状況についてでありますけれども、先般、カッターナイフで六年生の子どもが同僚を切って殺してしまった。ショックな事件でありましたが、それを聞いた文部大臣が、ショックを受けた、あらわす言葉もないと。肝心の文部大臣が、こういう事件を前にして言葉がないといわれたのじゃ困っちゃうので、やはりもっともっと本質的な反省というものを文部省もすべきだと思いますが、私はこういう事件が起こるたびに同じことを考えますけれども、不幸な事件が起こって、今裁判で収監されておりますが、戸塚ヨットスクール、これは戸塚君の決して創意ではなくて、ノーベル賞をもらったコンラッド・ローレンツという非常に秀でた動物行動学者が、人間を含めた動物というものの成長の過程で、それが一人前の動物、一人前の人間になるために何が必要かということをいっております。
 それはまさに人間の脳の一番大事な脳幹、脳の幹を鍛えることであって、これは鍛えようと思えば十分に鍛えられる、また鍛えなくてはならない。それは結果として何をもたらすかというと、トレランス、こらえ性。つまり、他者とのかかわりの中で必ず摩擦が起きますが、その摩擦をいかにこらえて対処するか。人間が、動物が生きていく限り、他者とのかかわりは不可欠でありまして、その中でいかに自分を強く保つか、自分を主張しながら保つかということのためには、つまりこらえ性が必要である。そのこらえ性は、脳幹の能力の問題でありまして、寒いからといってすぐ暖房、暑いからといってすぐ冷房、おなかがすいたといえばすぐ間食を許す、その他この他、やはりこの社会そのものに、つまり禁欲といいましょうか、そういう習慣がだんだんだんだん淘汰されてきて、大人も子どももこらえ性がなくなってきた。
 だから、今回の事件一つにしても、たかだかホームページ、インターネットの書き込みで、わずか数行の文章で激高して自分が抑えられなくなる。これはやはり社会全体の責任であると同時に、親の責任でもありまして、最終的に最大の教育の責任者である親こそが、私はPCができないからということで済む問題じゃないし、プライバシーの問題もあるでしょうけれども、子どもの監督といいましょうか、しつけといいましょうか、そういった現代的なIT機器を通じても、子どもとのコミュニケーションが全く阻害されていて、早い話が、渋谷に行きますと、うろうろしている若い女の子、その親に電話をかけて聞いてみると、携帯買ってあるから大丈夫だと。そんなもので親と子どもが本当につながるわけがない。
 こういった文明のあしき発展の中での私たちがすべき文明に対する反省というものが行われないと、こうした問題というのは後を絶たないのじゃないかと非常に危惧する次第でございます。
 なお、他の質問については、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 東京都交響楽団に関します二点の質問にお答えします。
 まず、ティータイムコンサートについてですが、ティータイムコンサートは、都民に身近な場所で演奏することによりまして、都民に顔の見える交響楽団として親しまれる楽団となるため、平成十四年度から、東京都交響楽団が東京文化会館と共催で実施をしているわけでございます。
 平成十五年度は五回開催をしまして、都民の方々から好評を得たところでございまして、平成十六年度は十一回と回数をふやして実施する予定で、今後も回数をふやすことを検討すると報告を受けております。
 会場でございます東京文化会館のテラスは、ご指摘のとおり、通行人から見えにくいという状況もございまして、演奏風景や来客状況が会場の外側からもわかるよう、施設の改修も含めた対応について関係機関と調整をしてまいります。
 次に、東京都交響楽団の公共的役割についてですが、東京都交響楽団は、その設立趣旨におきまして、都民に親しまれること、青少年の情操教育に役立てることなどを目標としておりまして、都が出捐し設立した交響楽団でございまして、公共的性格を示す事業としましては、これまで小中学生を対象としたジョイントコンサートや三宅島支援チャリティーコンサート、福祉施設、病院や養護学校等での出前コンサートなどを実施してきたところでございます。
 今後とも、東京都交響楽団の経営改善の柱でございます、都民に顔の見える交響楽団として、ご提案の趣旨も踏まえまして、より一層公共的な役割を担うよう指導してまいります。
   〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 観光振興についての二点の質問にお答えいたします。
 まず、上野恩賜公園の整備のあり方についてでございますが、上野恩賜公園は、明治六年に日本で初めてできた公園の一つで、東京国立博物館や上野動物園など多くの文化施設が集積する、我が国を代表する公園でございます。
 都は、公園の魅力を高めるため、再生整備計画を策定し、平成九年度から、博物館や美術館の改修に合わせた施設周辺のアクセス改善や、広場、植え込み地の整備に努めてまいりました。
 今後も引き続き、上野恩賜公園の観光資源としての価値がより一層高まるよう、地元区や関係団体と連携し、歴史と文化の杜にふさわしい公園整備に取り組んでまいります。
 次に、無電柱化の推進についてでございますが、無電柱化は、都市景観の向上、防災機能の強化、安全で快適な歩行空間の確保等に不可欠な事業でございます。このため、都は、平成十六年度から、新たな無電柱化推進計画に基づき、センター・コア・エリア内の幹線道路、災害時の緊急輸送路、都市再生緊急整備地域、都心部の主要な地区などで優先的、重点的に整備してまいります。
 今後とも、電線管理者、地元関係者との協働を図るとともに、コスト縮減や財源の確保に努め、無電柱化を推進するなど、欧米先進都市に比肩し得る首都東京の建設に努めてまいります。
   〔知事本局長前川燿男君登壇〕

○知事本局長(前川燿男君) 二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、地方分権改革についてでありますが、この秋には経済財政諮問会議の集中審議が予定されておりまして、都はこれに向けて改革案を策定する方針であります。
 国庫補助負担金の削減、抜本的な税源移譲、新たな財政調整の仕組みの創設など、具体的な内容を盛り込んだものとしていきたいと考えております。東京都が膨大な財政需要を抱えた大都市であるという立場は踏まえながら、同時に、広く全国自治体のプラスとなる案を策定することが必要と考えております。
 都は、四十七都道府県の中で唯一の地方交付税不交付団体という立場にありまして、大変難しい課題ではありますが、庁内一丸となって取り組んでまいります。
 次に、横田基地の軍民共用化についてでありますが、共用化を実現するためには、関係する地元自治体の理解と協力を得ることが極めて重要であると考えております。
 現在、都と国の関係省庁による連絡会におきまして実務的な検討を進めておりますが、その内容は外交交渉にかかわってくるものでございます。そのため一定の制約はありますが、都はこれまでも地元自治体への説明に努力を重ねてまいりました。
 今後、周辺の基盤整備や騒音対策など、地元と密接にかかわりのある課題への対応が重要となってまいります。引き続き、地元の理解と協力を得るように努めながら、共用化の早期実現を目指してまいります。
   〔環境局長小池正臣君登壇〕

○環境局長(小池正臣君) 地球温暖化対策についての五点のご質問にお答えいたします。
 まず、対策指針の策定に向けた基本的な考え方についてでございますが、地球温暖化対策指針は、事業者の積極的な取り組みを引き出し、高いCO2削減率を達成するよう誘導していくことを目的といたしまして策定するものでございます。そのため、指針においては、総量削減率を原則とした評価基準を定めるとともに、運用対策や設備改修等の具体的な削減メニュー等を記載した削減対策ガイドラインなどを提示いたします。
 また、指針の策定に当たりましては、事業所の実態調査を行い、その結果を踏まえつつ、最新の知見や技術開発の動向も考慮して、より高いCO2の総量削減が達成されるように配慮してまいります。
 次に、今回の地球温暖化対策制度の対象外となる事業者への対策についてでございますが、都市活動に伴って発生するCO2の総量削減を確実に進めていくためには、制度の対象とならない多くの中小事業者についても積極的な取り組みを促すことが重要であると認識しております。しかしながら、中小の事業者は、規模が小さいため、省エネルギー対策を講じる体制が組みにくいことや、対策に関する情報が少ないなど、対応が難しい状況にあります。
 今後、中小規模の事業者にも具体的な削減メニュー等を記載した削減ガイドラインを示し、多様な省エネ技術やエネルギー管理システムなどの事例を広く情報提供して、計画的な排出削減の努力を促してまいります。
 次に、家庭部門対策についてでございますが、家庭部門のCO2排出量は、世帯数の増加や家電製品の大型化等により増加していることから、省エネルギー型のライフスタイルへ誘導することが必要でございます。省エネラベル制度は、この有力な手段として位置づけられるものであり、家庭での消費電力の多いエアコン、冷蔵庫、テレビから導入を図り、その定着を目指します。
 今後、省エネ製品の開発の進展や国の省エネ基準の動向等を見ながら、対象品目の拡大を鋭意検討してまいります。
 また、区市町村とも連携し、環境学習、教育の充実など、都民一人一人のライフスタイルを省エネ型に転換していくための意識啓発にも努めてまいります。
 次に、運輸部門対策についてでございますが、運輸部門は東京のCO2排出量の約三割以上を占めていることから、その対策の具体化は重要であります。運輸部門のCO2削減策として最も実効性があるのは、自動車の燃費性能を高めることであることから、燃費基準の一層の強化や、大型トラックの燃費基準の設定を国に引き続き強く求めてまいります。
 あわせて、都といたしましては、公共交通機関の利用促進や貨物の共同配送化など、交通需要マネジメント施策による自動車交通量の抑制や、アイドリングストップ指導を徹底するとともに、渋滞解消を目指した道路等の基盤整備を進めてまいります。
 最後に、地球をまもる都庁プランについてでございますが、このプランは、全庁を挙げて地球温暖化対策を推進していくため策定した実行計画であり、都庁の事務事業活動に伴う温室効果ガスの排出削減に向けた具体的な取り組みを定めております。
 現プランの削減目標は知事部局のみを対象としておりますが、今年度のプランの改定に当たりましては、公営企業局も含め、民間事業者にとって十分参考となるような高い目標を設定していきたいと考えております。さらに、その目標を達成するため、ESCO事業や再生可能エネルギーの導入など、さまざまな削減対策を具体的に示し、全庁を挙げて地球温暖化対策を推進してまいります。
   〔都市整備局長梶山修君登壇〕

○都市整備局長(梶山修君) 交通政策に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、羽田空港再拡張後の飛行ルート問題に関する都の取り組みについてでございますが、都は、海上を最大限活用すること、横田空域を活用すること、及び新たな管制方式を導入することにより、首都圏全体としての騒音影響を可能な限り軽減するよう主張してまいりました。今回国が示しました修正案は、この主張を踏まえ、検討を工夫されたものと評価しております。
 なお、再拡張事業が完成する平成二十一年に向け、管制技術の進展等も踏まえ、引き続き検討を続けるよう国に働きかけてまいります。
 次に、交通政策の一元化についてでございますが、これまでも都は、JRや旧営団、私鉄各社などと調整を図り、相互直通運転の実現を初め、乗り継ぎ運賃制度の拡充、パスネットの導入など、公共交通の充実に努めてまいりました。また、道路ネットワークの形成や港湾機能の拡充を図るとともに、羽田や成田空港とのアクセス改善のため、京急蒲田駅、日暮里駅の改良など、交通結節点整備をあわせて進めてきております。
 今後とも、国や各種交通事業者、庁内関連部局などとの連携を図り、陸海空の総合的な交通ネットワークの構築に努めてまいります。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 観光、農林水産業振興に関する五点のご質問にお答えいたします。
 まず、観光まちづくりを広める取り組みについてでございますが、東京には江戸四百年の歴史と文化、先端技術と伝統工芸、多摩や島しょの豊かな自然など、多様性に富んだ魅力があり、人材も豊富でございます。観光まちづくりは、そこに住む人々が歴史や文化、自然など、それぞれの地域特性や観光資源を生かしながら、住む人がみずからのまちを誇れて、また、旅行者が何度でも訪れたくなるような元気で活力あるまちの形成を目指すものでございます。
 都は、このような地域主体の積極的な観光まちづくりを全都的に推し進めるため、説明会やシンポジウムを通じて地域ごとの展開イメージを明らかにするほか、まちづくりに欠かせないリーダーを育成し、地域ぐるみで取り組めるように支援してまいります。
 次に、上野地区の観光まちづくりについてでございます。
 これまで、お話にございましたような文化施設や寺社、商店街など、魅力ある資源が孤立しておりましたが、地域が力を合わせ、上野の観光まちづくりに取り組むという関係者間の共通認識が形成されました。このことは大変重要なことであると認識しております。
 この共通認識のもと、本年四月に、地元が主体となり、都も参画した観光まちづくり推進会議が立ち上がったところでございます。現在、基本構想に掲げました事業の実施に向け、お話のパークトレインの運行など回遊性向上を目指した部会を初め、受け入れ体制、ナイトライフ、イベントの充実をテーマとした四つの作業部会が設置され、具体的な検討に取り組んでおります。都としても、このような上野の前向きな取り組みが地域ぐるみの観光振興の参考例となるよう推進してまいります。
 次に、食品の輸入原材料などの情報の継続性についてでございます。
 ご指摘のとおり、現行法での情報の記録、保存の制度は違反食品の排除などを目的としており、原料原産国などの情報を伝達できる仕組みにはなっていないなど、制度上の大きな不備がございます。この解決には、新たな法の制定や情報処理技術の整備が必要であり、国の責務として積極的に対応するよう、要望してまいります。
 このような中、都は本年四月に情報の記録、提供に自主的に取り組む食品事業者を登録する独自の制度を創設いたしました。この制度は、輸入食品を含む都内で流通するすべての食品を対象としており、原産国などの生産履歴情報の継続性を確保することも可能でございます。
 今後、積極的に都の登録制度の普及拡大を図り、都民の食の安心に積極的に取り組んでまいります。
 次に、水産資源の減少に対する取り組みについてでございます。
 まず、違反操業やサメなどによる水産資源の被害の増加は、緊急に対応すべき課題でございます。このため、都は航空機による取り締まりにより、違反操業に対する三件の行政処分を行っており、今後とも、取り締まりの強化を図っていく考えでございます。
 また、サメなどによる食害についても、都の調査船を活用するなど、漁業者と協力して、とり得る対策を講じてまいります。
 一方、貴重な水産物の将来にわたる確保の観点から、水産資源の減少や磯やけなどの環境変化につきましては、解決しなければならない重要な課題と認識しております。
 国や近県の研究機関、並びに都立大学等との連携による調査研究プロジェクトチームを今後速やかに設置し、漁場環境悪化の要因等の解明に努め、水産資源の回復につなげてまいります。
 最後に、林業振興の新たな取り組みについてでございます。
 多摩の林業の課題といたしましては、第一に、安価な外材、輸入建材等の広範な普及により、多摩産材が圧迫されていること、第二に、林業者の山離れ、サラリーマン化など、林業者自身の意欲が減退していることが挙げられます。
 その一方で、化学物質を使った建材によるシックハウスなどの健康被害が問題化しておりまして、日本古来の安全・安心な無垢の国産材、木材への期待が高まりを見せております。
 こうしたことから、林業者の希望にこたえ、意欲を高める取り組みといたしまして、生活道路が過半を占める区道、市道への木製ガードフェンスの導入や、小中学校教室、あるいは各家庭の寝室の木質化など、都民の身近な生活空間への多摩産材の活用を促進する積極的な販路開拓のキャンペーンを、地元市町村と、あるいは林業関係者とともに積極的に展開してまいりたいと考えております。
 さらに、観光と連携したサービス提供など、多摩の森を都民の新たな健康といやしの場として、豊かな都民生活と地域の活性化につなげてまいりたいと考えております。都議会のご支援をお願いいたします。
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) 福祉施策に関します五点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、痴呆性高齢者グループホームについてでございますが、東京には民間企業やNPOなどの多様なサービスの担い手が集中しており、その設置促進には、こうした大都市特性に応じた取り組みが必要となりますが、国は、整備費補助の対象や運営規模を制限するなど、全国一律の規制を行っています。
 これに対し、都は、地域特性を考慮した柔軟な対応が図られるよう、国へ規制緩和を提案、要求し、一方では、都独自に民間企業などに対する整備費補助を行うなど、グループホームの設置促進を図ってまいりました。
 今年度からは、こうした取り組みをより一層強化し、地域的な偏在を解消するため、指定地域における民間企業などへの補助率を引き上げ、重点的に整備を推進してまいります。
 次に、介護予防の今後の取り組みについてでありますが、高齢者が生涯を通じ、できる限り自立した生活を送れるようにするためには、一人一人の心身の状態を的確に把握し、科学的な根拠に基づく効果的な介護予防プログラムを実施していくことが重要であります。
 今年度から新たに実施する介護予防推進モデル地区重点支援事業は、検診から個別プログラムの実施、評価までを総合的に行う介護予防システムの効果を、千代田区と稲城市をモデル地区として、自治体規模で実証するものでございます。
 今後、本事業の成果を踏まえ、介護予防の取り組みを全区市町村に普及させてまいります。
 次に、知的障害者グループホームについてでございますが、都は、障害者地域生活支援緊急三カ年プランに基づく特別助成などによりその設置を促進しており、昨年度は当初計画を上回る、定員二百八十二人分が整備されました。
 こうした取り組みを一層推進するため、本年四月にグループホーム設置促進事業本部を設置し、区市町村や運営事業者を初め、不動産取引業団体、土地建物オーナーなどに対する個別訪問を精力的に行いまして、補助制度などの周知と事業への参入、不動産物件の提供などを働きかけております。
 また、都有地活用による整備につきましても、昨年度に引き続き事業者の公募を行うなど、今後とも福祉局の総力を挙げまして、グループホームの増設に努めてまいります。
 次に、知的障害者の余暇活動などの支援についてでございますが、障害者が充実した地域生活を送るためには、スポーツ活動や文化活動に気軽に参加できる環境づくりが重要であります。
 都は、区部、市部それぞれに障害者スポーツセンターを設置、運営しておりますが、その利用者は年々増加しており、また社会参加活動をサポートするホームヘルパーの利用も、支援費制度に移行した平成十五年度は前年度の三倍以上に伸びております。
 今後とも、区市町村や東京都障害者スポーツ協会などさまざまな民間団体と連携しながら、障害者の余暇活動や社会参加活動を支援する取り組みをさらに進めてまいります。
 最後に、スペシャルオリンピックスについてでありますが、スポーツは、国境を越え、性別や障害の有無を問わず、だれもが楽しむことができる共通のすばらしい文化であります。
 このたび、スペシャルオリンピックス冬季世界大会が我が国で開催され、世界約八十カ国・地域から参加する知的障害者や、大会を支えるボランティアなどがスポーツを通じて交流を深めることは、障害者の自立と社会参加に大きな意義があるとともに、障害者に対する理解を深める契機にもなると考えます。
 都としても、都民、区市町村や関係機関に対し、さまざまな機会をとらえまして、積極的に大会の周知に努めてまいります。
   〔生活文化局長三宅広人君登壇〕

○生活文化局長(三宅広人君) 青少年の情報活用能力の育成についてのご質問にお答えいたします。
 インターネットや携帯電話など、新たなメディアが急速に普及する中で、青少年が危険な情報にさらされる機会が増大しております。
 青少年を危険から守るために、大人社会に対する規制の強化を図ってまいりましたが、さらに、青少年がインターネット上の不健全情報に接することのないような工夫や、青少年自身がはんらんする情報を取捨選択する能力を身につけることも必要になっております。
 都は、これまで、メディアリテラシー育成講座やITを活用した教育を行ってきておりまして、今後とも教育庁と連携しつつ、青少年の情報活用能力の育成等に取り組んでまいります。

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