平成十六年東京都議会会議録第四号

○議長(内田茂君) 八番福士敬子さん。
   〔八番福士敬子君登壇〕

○八番(福士敬子君) このところ、都の教育に関する姿勢の押しつけは、目に余ることが多くなりました。日の丸・君が代では、政府の方針に反した通達、実施指針を出し、現場には指導室職員がチェックに入るという異常さです。
 教育は、有無をいわせずねじ伏せることで成り立つほど短絡的なものではないはずです。そして、このような教育は、自分の考えもなく、心を空洞にして、単に従うだけの教師や子どもをつくるだけに終わることも目に見えています。これで、知事のいわれるような、ノーといえる自立した日本人が育つとは考えられません。
 同様に、障害者教育においても、どれだけ自立した大人に育てるか、そのためには、通常学級の子どもたちへの教育以上に、工夫を凝らす教育が求められるはずです。その一つが七生養護学校の性教育だったと思います。
 人形を使っての性教育は、抽象論では理解困難な子どもたちにとって必要性の高いものです。そして、性交まで教育しなければ、レイプされても意味もわからず、子どもを産まざるを得ないことになる問題性をはらんでいます。
 自閉症の場合は、体の発育に伴う変化がパニックの原因になったりすると聞けば、微細な指導が重要であることも納得できます。
 宝島社における訴訟の意見補遺で、医学博士の福島章上智大名誉教授が、知事の著作「真実の性教育 学校では教えない人間の性」を取り上げ、評価されていますが、知事はその著作で、ネパールの寺院にある群像の性交をお子さんに見せ、性教育のよい機会だったととらえておられます。また、同じく、料理の本はよいが、性に関する本はよくないとは考えないとおっしゃるように、食事も性交も人間の自然な営みの一つであるという考え方も、全くそのとおりだと思います。いつもは知事のお考えに納得しかねることの多い私ですが、わいせつとは、性そのものではなく、人間のわいせつさであると述べられていることも含め、性に関する知事のご意見にくみするものです。さきの知事のお考えが家庭内のものとしても、学校教育にも当てはまります。
 今や、一人一人の障害に合わせた教育が求められています。指導要領という枠の中で教育を考えることが重要なのではなく、障害のある子どもたちに性の問題と自己形成をどこまで理解させられるか、これが最大の課題となるはずです。
 その意味で、今回の養護学校の、人形を用いた性交をも含めた性教育を不適切とする教育庁の考えは、知事のお考えとは乖離があると思われます。知事のお考えをお聞かせください。
 大学改革について。
 八月一日の改変以来、都立大との対立に、大学管理本部の対応は、これが教育をつかさどるかなめの部署かと思うばかりのかたくなさが目につきます。責任の所在はどうあれ、対話や情報公開を拒否する理由もないと思われますが、大学管理本部は、都立大とは学生、教職員ともかかわりを持とうとしていません。
 ところが先般、高橋理事長予定者は都立大に赴き、話し合いを行い、今後も続けるという新聞報道がありました。また、学長予定者の西澤氏も、都立大問題についての知事発言には誤解があり、穴埋めに奮戦するという記事がありました。
 また、強制を求めた意思確認書は、文部科学省の意見としてというお上の威光を盾にしてみたものの、文部科学省から訂正要求があり、かえって馬脚をあらわした形になりました。
 この意思確認書提出は、当初は二月十六日締め切り、その時点で提出した教員にのみ実際の就任承諾書を送るとのことでしたが、この件に関しては、知事も含め、皆さん、幅を持たせた発言をしておられるようです。意思確認書及び就任承諾書の提出にしても、大学管理本部から教員に判断材料を示し、疑問に答える必要があります。
 大学改革を進めるに当たり、意思確認書の取り扱いその他について、冷静な協議による関係者間の接点の模索が必要と思われますが、見解を伺います。
 時間の関係で、予算のつけ方についてのみ伺います。
 第二次財政再建プランで少額補助金の見直しがうたわれています。補助金の見直し自体は必要なことですが、特に福祉や教育関係では、少額でありながらも、その補助金が関係者にとって非常に重要な場合が数多くあります。
 また、都市基盤整備については十億円単位の復活予算が上乗せされる一方、来年度は、都内の夜間中学のうち五校にしかない日本語学級の教員を新年度直前に減らしたり、図書館の視覚障害者向けの対策など、ごくわずかですが、関係者にとっては重要な予算を切り詰めています。
 そして、例えば、夜間中学の日本語学級においては、教師数の数倍、時間軸も考えれば数十倍の受益者がいます。少額な予算が有効に生きるのであれば、それこそが効率的活用といえるのではないでしょうか。受益者の状況を十分に把握し、受益者など関係者の多くが納得する形で予算を考えていくべきです。
 マイナスシーリングの考え方も、一律減に従った作業による弊害があらわれ始めているのも見受けられます。補助金を初めとした少額予算の見直しは、即切り捨てに結びつけられる危険性も含んで、さきに挙げた例のような状況が起きていると思われます。第二次再建プランでうたわれているのは、少額だからこその工夫をということだと思いますが、そのことが各局で十分認識されているのか疑問に思います。
 財務局として、真意をどのように考え、また各局への周知をどのようにされているのか伺います。
 次に、公園でのドッグランについて伺います。
 公園については、ヒートアイランド現象の緩和、災害時の緩衝帯及び避難場所といった実用的性格のほか、安らぎ、レクリエーションという感性を満足させる場として、既に貴重な存在と認識されています。先般の思い出ベンチ公募では、一般市民の寄附が八八%とのことでした。公園が人々にとって一過性の都市空間としてではなく、生涯心にとめる舞台としての意義も見えました。
 昨今は、このほかにも能動的な活性化対策がとられるようになり、日常的な利用として、市民の要請が強かったドッグランが、試行を経て、昨年十一月以降、二園で本格実施となりました。
 ドッグランの設置は、ボランティア等の協力があることというのが条件であるため、本当の市民参画の形で進められ、行政と市民のコミュニケーションの場ともなっています。ぜひこの対話を大切にしていただきながら、条件整備を進めてほしいものです。
 特に、今回設置されたドッグランの一つ、神代植物公園の方は、未開園地を暫定使用しており、赤土のままフェンスがあるという状態です。私が伺った日はちょうど強風の日で、目をあけることもできないほどの砂ぼこりでした。本格実施とはいえ、整地や水飲み場、掲示板の設置など、まだまだ未整備な部分が多く、一日も早い整備が望まれます。未設の対象公園がまだ六カ所ありますが、今後の設置に向けての考え方を伺います。
 今、災害時の動物保護エリアについては、検討の対象にも上っていないようですが、今後の活用として、これら施設は災害時にも有効だと思われることをここで申し述べておきます。
 また、私が神代植物公園に行った日は、しつけ教室が行われておりました。昨年十月、試行の段階からボランティアが自主的に教室を始められたとのことですが、毎月ほぼ四十から五十頭の参加があるとのことで、こちらも要望の高いものと思われます。拝見していますと、犬のしつけと同時に、飼い主への教育も含まれているようです。ドッグランでの咬傷事故をなくすほか、日常での飼い主の無理解からくる一般市民とのトラブルを防ぐ意味でも、しつけ教室の重要性が認められます。
 現在行われているしつけ教室では、訓練士等の交通費もなく、ボランティアに頼っていますが、これでは継続性について心配な面があると思われます。ドッグランの円滑な運営には、しつけ教室の継続的な開催が必要だと思いますが、お考えを伺います。
 次に、公園を初めとした都立施設の福祉目的利用について伺います。
 公共施設利用の目的の中で、福祉の増進に寄与することがうたわれています。一方、各地方自治体では、高齢者のケア対策、機能低下を防ぐなどのために外出活動を組み立てるところがふえました。
 そのような中で、早くから活動してきた障害者に対しては、人権及び生活権に対する福祉的意義が認められ、公園利用も無料になっています。
 ところが、高齢社会の中で、この制度にひずみが出てきました。例えば、高齢者福祉施設等で有料公園を利用した野外活動をする場合、障害者は無料、痴呆の方は有料と、同じ団体でも個々の状況で差別されることになりました。のみならず、施設側にも非常に煩雑な事務手続が要求されます。団体名簿作成では、障害者でも、高齢になると痴呆の状態の方も多く、障害者手帳のコピー一つとるにも、健康保険証や老人医療証、介護保険証など、何度も間違えて持ってこられ、あげくの果てに、返した、返さないといったトラブルまで起きるようです。
 このように、せっかく野外活動で高齢者の健康の維持や向上を目指しても、当日の活動に至る前に担当者の負担を強いることになっています。
 また、痴呆の方は無料制度がないため、その方の介助者の入場料も減額されず、二倍の費用をどこで捻出するかの問題も出てきます。さまざまな福祉施設で潤沢な財源があるわけではなく、NPO法人などは、赤字の穴埋めに苦慮しているところがほとんどです。障害者は無料、痴呆の方は自己負担してくださいともいえません。
 昨今、痴呆に対する関心は高まりましたが、対策はまだまだ取り残されているように思われます。
 せめて、公認されたNPOその他福祉施設等に対して、年度初めに団体登録するなど統一的な仕組みをつくることで、施設利用の無料化とともに、煩雑な事務の軽減を図ることができるはずです。財政負担もほとんどなく、高齢者の重度化を防ぐことができ、公共施設管理者もまた煩雑な事務処理がなくなるであろうと思います。
 現在、要支援、要介護1の高齢者が介護保険全体の半数近くとなり、給付減が取りざたされていますが、本末転倒以外の何物でもありません。
 単なる補助制度だけではなく、公園等都立施設の福祉目的利用により、重度化に向かわせないための対策を、知恵を絞って検討していただくよう望むものです。ご見解を伺います。
 答弁によっては再質問をさせていただきます。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 福士敬子議員の一般質問にお答えいたします。
 性教育の考え方についてでありますが、性の問題を考える上では、我が国がこれまで培ってきた文化的風土や情緒、感性を大切にする必要があると思います。
 性教育にはさまざまな考え方がありますが、人間の生き方に深くかかわる問題でありまして、公教育において偏った考え方を押しつけることは許されないと思います。
 学校における性教育は、都教育委員会が指摘しているように、TPOを心得た、学習指導要領に沿った指導を行うことが大切でありまして、いたずらに行き過ぎた内容を取り扱うべきではないと思います。
 何か私の著書をだれがどのように引用したかは存じませんが、くれぐれも読み違いをしていただきたくないと思います。
 それから、七生養護学校における性教育の問題でありますけれども、先般も、それをかついでいるあるメディアの人から質問もありまして、答えるために、実際の教育に使われている人形なるものを取り寄せて、MXテレビも中継しておりましたが、ほかのテレビもたくさんありましたけれども、まことにグロテスクで醜い人形でありまして、ああいったものを、ハンディキャップを負う若い人たちに示して行う教育というものは、私は、非常に間違った恐ろしい結果を逆に到来させるんじゃないかと思います。ということで、私は決してあれを認めませんし、認めない教育委員会の姿勢が正しいと思います。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) ドッグランに関する二点の質問にお答えいたします。
 まず、公園におけるドッグランの設置についてでございますが、ドッグランは、囲まれたスペースの中で、飼い主がマナーを守り、犬を自由に遊ばせる場所であり、公園利用者と犬との共存及び分離策として有効でございます。
 昨年十一月から本格実施した駒沢オリンピック公園と神代植物公園に加え、当面、設置すべき公園として小金井公園など六公園を選定いたしました。
 今後、公園ごとに、ボランティアの募集を行い、ドッグランの運営にかかわる協議会を設置し、近隣住民との調整など条件が整った公園から順次設置していくことにしております。
 次に、ドッグランを円滑に運営するための、犬のしつけ教室についてでございますが、犬のしつけは、基本的には飼い主の責任において行うべきと考えていますが、ドッグランを円滑に運営するためには、飼い主が犬の習性や健康についての知識、犬の服従訓練方法などを習得することも必要であります。
 現在、神代植物公園では、ボランティアにより月一回程度のしつけ教室が行われております。今後、訓練士の確保や参加者の経費負担について協議会で調整し、しつけ教室が継続的に実施できるよう支援していくこととしております。
   〔大学管理本部長山口一久君登壇〕

○大学管理本部長(山口一久君) 首都大学東京開学に向けた関係者間の協議の必要性についてでございますが、首都大学東京の設立準備に当たりましては、教学部門に関して、学長予定者である西澤潤一先生を座長とした教学準備委員会のもとに、外部の専門家とあわせて、現在の都立の大学の教員も参加してございます。
 経営部門に関しましては、理事長予定者である高橋宏氏を室長とした経営準備室の運営会議に、都立大学の総長など四大学の学長も参加し、検討を進めております。
 西澤学長予定者と高橋理事長予定者と私は常時連絡をとって意思疎通を図っており、首都大学東京の設立に向けた三者の考えの間にそごはありません。
 意思確認書は、首都大学東京の設立準備に必要なものとして、設置者が各教員に提出を求めておりますが、三者連名でその提出を教員に呼びかけるなど、考え方は共通しております。
 首都大学東京は、西澤学長予定者、高橋理事長予定者を先頭に、意思確認書を提出して首都大学東京を一緒につくっていこうという教員をベースにしまして、平成十七年四月の開学に向けて着実に準備を進めてまいります。
   〔財務局長櫻井巖君登壇〕

○財務局長(櫻井巖君) 補助金を初めとした少額予算の見直しについてであります。
 施策の見直しに当たりましては、予算の多寡を問わず、都民ニーズの変化や、官民あるいは区市町村との役割分担等を踏まえまして、個々の事業ごとに必要性を精査しております。都として、事業を継続する場合も、執行体制を含め、そのやり方を工夫して、より費用対効果の高いものに改めていかなければならないと考えております。
 十六年度予算案でも、こうした考え方に基づきまして、各局が自主的に創意工夫に努め、施策の再構築を進めているものと理解しております。
 今後とも引き続き、各局と連携して、時代変化に即応した施策の見直しを進めてまいります。
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) 要介護高齢者の重度化防止についてのご質問にお答えいたします。
 要介護高齢者の心身の状況の維持改善を図る上では、外出の機会をできるだけ多く確保することは望ましいことであります。
 こうした観点から、既に多くの福祉施設などにおきましては、都立公園に限らず、身近な公園などを活用して、屋外活動を実施しております。
 都は、さまざまな機会を通じ、屋外活動も含めた介護予防などのための具体的な方法について、広く都民の皆様に周知に努めております。
   〔八番福士敬子君登壇〕

○八番(福士敬子君) 知事、障害者たちの性教育は、家庭だけでは困難です。実態に合わせての現在があるんだろうというふうに思いました。学習指導要領より子どもの人生の方が大切というふうには、お考えになりませんでしょうか。
 TPOの問題ですが、確かにいろいろ問題も出ているというふうに私も伺っております。しかし、小さい子どもたちは、普通どの家庭でも、障害児でなくても、やっぱりTPOを心得ないということはたくさんあります。そのたびに注意し、そして教育することも含めて教育だというふうに考えますが、再度お考えをお聞かせください。
 それから福祉局長のご答弁ですが、私の提案の趣旨は賛同されているというふうに受け取りましたが、周知されるのは結構ですけれども、ただ、現在、痴呆対策がおくれているため、理不尽なことが起きています。何か統一的な仕組みを考えていただけないかということですが、だめなのか、横断的に他局と協議していただけるのか、再度お答えをいただきたいというふうに思います。
 以上です。お願いします。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 質問者に逆にお聞きしますが、あなたは、あの教材の人形をごらんになったことがありますか。──あれが教材として適切だと思いますか。そうしたら、私、あなたの感覚を疑いますね。あんなにグロテスクで醜いもの、教材として不適切なものは、私はないと思います。
   〔発言する者あり〕
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) 再質問にお答えいたします。
 痴呆の予防のプログラムというのは幾つかございます。例えば、私どもの老人総合研究所で進めております介護予防対処プログラム、この中にも、例えば地域型痴呆予防プログラム、あるいはまた痴呆予防教室、こういうものがございます。
 内容につきましては省略いたしますが、もう一つの面でのご質問でございますけれども、都立公園などの施設利用料の無料化などについてということでございます。
 この無料化につきましては、基本的に施設管理者が判断すべき事柄だというふうに承知しております。

○議長(内田茂君) 以上をもって質問は終わりました。

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