平成十六年東京都議会会議録第四号

○議長(内田茂君) 二十四番串田克巳君。
   〔二十四番串田克巳君登壇〕

○二十四番(串田克巳君) まず、島しょの観光振興について伺います。
 島しょへの観光客は、三宅島の噴火災害以降、大幅に減少しており、島によっては大型ホテルが相次いで閉鎖されるなど、観光非常事態ともいうべき状況になっています。
 しかし、私も昨年、伊豆大島を訪れ実感いたしましたが、東京の島しょは、貴重な自然が残される等、魅力あふれる地域資源に恵まれています。最近では、島しょのエコツーリズムの展開や、小笠原の世界自然遺産登録に向けての動きなどもあり、多くの人が伊豆諸島や小笠原に注目していることと思います。島しょ地域の観光資源を十分に生かし、島の活力とにぎわいを取り戻すための取り組みが不可欠と考えます。
 そこで、まず、島しょ地域の観光振興について知事のご所見を伺います。
 ところで、東京都では、この豊かな自然をいやしの空間として活用し、観光立国で島の自立的発展を目指すとのことです。また、国においても、都の先駆的取り組みを受け、観光立国に向けた動きが活発になりつつあり、観光を核としたみなとまちづくり事業推進のため、北は稚内から南は石垣島まで、全国の自治体への働きかけを行っていると聞いています。
 昨年の第三回定例会における我が党の質問に対して、都では、島の玄関口である港湾や空港の施設や用地を多目的に活用し、さまざまな施策の展開を通して、港湾や空港のにぎわいを島全体の活性化につなげていくため、島のみなとまちづくり事業を立ち上げたと聞いています。さらに、この事業において、地元の発想を生かしつつ、早期にパイロット事業に着手していく予定との答弁をいただいています。
 そこで、まず、島しょのにぎわいと活力を取り戻すため、魅力ある島のみなとまちづくり事業を早期に推進していくことが必要と考えるが、その取り組み状況について伺います。
 また、豊かな自然を生かし、観光あるいは地場産業振興を支援するこの事業に対する地元の期待は大きいものと考えます。そこで、島のみなとまちづくり事業に今後どのように取り組んでいくのか、伺います。
 次に、多摩地域の交通安全対策について伺います。
 石原知事が会長を務めている東京都交通安全対策会議によると、昨年一年間の都内の交通事故死者数は三百二十人で、平成十四年の三百七十六人と比べ約一五%の大幅減少となりました。しかしながら、都内では一日平均約二百七十人が交通事故で負傷しており、いまだ厳しい状況が続いております。
 また、東京において昨年十二月に実施した道路に関する世論調査では、歩道を整備するに当たり最も優先すべきことの問いに対し、狭い歩道を広く拡幅する、あるいは歩道のない箇所に歩道を整備するといった回答が約七〇%を占めております。安全で安心して通行できる歩道の整備に対する都民の期待と要望は大変大きく、現在進めている歩道整備をさらに一層計画的、重点的に促進する必要があると考えます。
 そこで、現在の都道における歩道の整備状況及び区部と多摩地域の歩道の整備状況について伺います。
 次に、多摩地域における歩道の整備率は区部に比較しましてまだまだ低く、私の地元八王子市においても、歩道がない、もしくは狭い幅員の歩道が多く、歩道整備に対する要望が強く寄せられています。
 そこで、八王子市における歩道の整備状況と今後の取り組みについて伺います。
 次に、交差点すいすいプランについてお尋ねいたします。
 都内の慢性的な交通渋滞は、都民の生活や経済活動に大きな損失を与えており、早急な対策が求められております。都では、渋滞解消の効果を早期に発現できる事業として交差点すいすいプラン一〇〇を進めており、都民より高い評価を得ております。特に、片側一車線道路の多い多摩地域においては、より一層の整備促進が求められております。
 そこで伺いますが、交差点すいすいプランは平成十四年度末現在で六十一カ所が完成していると聞いているが、既に整備が完成した箇所において整備効果がどの程度発現しているのか、伺います。
 本事業は、平成六年度の事業開始から九カ年が経過し、そろそろ事業収束に向かう時期であるが、いまだ多摩地域には、渋滞を解消すべき交差点、あるいは既に事業が完了した交差点を補完することでさらに整備効果を発揮できる交差点が数多く残っております。現計画を着実に推進するとともに、早期に次期計画の策定を行うよう強く要望するが、所見を伺います。
 次に、今回、下水道局が公表した、流域下水道事業経営計画について伺います。
 多摩地域の下水道は、平成十四年度末において普及率九四%に達し、安全で快適な都民生活を支えるサービス水準をおおむね確保しています。その意味で、これまでの都及び関係市町村のご努力に改めて敬意を表します。
 しかしながら、なお残っている未普及地域の解消を初め、下水道法の放流水質基準の改正などに対応した処理水質のより一層の向上が求められております。また、昭和四十年代から整備した下水処理場の老朽化への対応といった課題もあります。
 これらの課題に対して、今後とも、計画的かつ継続的な取り組みが必要であると考えますが、下水道事業の経営基盤である都及び市町村の財政が極めて厳しい状況にある中で、経営計画ではこれらの流域下水道事業をどのように進めていこうとしているのか、伺います。
 また、多摩地域の下水道は、制度上、流域下水道と公共下水道で管理者が異なっておりますが、両者が一体的かつ効果的に機能していくことにより、下水道施設の維持管理コストなどを縮減しつつ、良好な水環境を形成していくことが可能になると考えます。
 そのため、市町村が管理する公共下水道も含め、多摩地域全体を視野に置いた下水道事業の効率化に向けた取り組みが求められております。今後、流域下水道事業と多摩地域全体の下水道事業の効率化にどのように取り組んでいくのか、伺います。
 次に、多摩地区水道事業経営改善について伺います。
 昨年六月に多摩地区水道経営改善基本計画が策定されるとともに、先月水道局が策定した東京水道中期事業指針においても、多摩地区水道の広域的経営を実現していく方向性が示されています。私も、水道という典型的な施設産業においては、広域的な経営を行い、規模のメリットを生かしながら、サービスや給水の安定性を総体的に向上させていくべきと考えております。
 この三月末には二市について事務委託が解消され、平成十六年度から両市の料金徴収業務が東京都に引き継がれることとなるなど、経営改善が進展しつつあります。この二市以外についても早期の実現を望むところであります。
 そこで伺いますが、事務委託解消の今後の見通しはどうなっているのでしょうか。
 基本計画では、事務委託の解消をした場合、お客様サービスや給水の安定性の向上が図られるとしており、私も期待しているところであります。しかし、今後の都のサービス拠点や体制の整備については不安要素もあります。今、水道事業を預かっている市町においても、こうした整備がなされないと、事務委託の解消をちゅうちょすることがあり得るのではないでしょうか。
 都が事務委託解消を図り、多摩地区の水道業務を円滑に行っていくためには、サービス拠点や体制の整備を着実に実施していく必要があると思います。また、そうした受け皿を早期に示していくことが重要と考えます。
 以上の点について見解を伺います。
 また、水道局では、事務委託の解消に当たって民間活力を積極的に活用していくとしています。これは事業運営の効率化を図る上で望ましいことと考えますが、一方では、地元中小業者は、これまでの事情に精通しているとともに、地域に近いという利点も多く、これまで多摩地区の水道事業を支えてきた地元中小業者について十分活用していただくよう要望をしておきます。
 最後に、多摩ニュータウンのまちづくりについて伺います。
 多摩ニュータウンのまちづくりは、今年度末における都が施行する新住事業の会計閉鎖と相原・小山土地区画整理事業の換地処分によって、約四十年に及ぶ大事業に一区切りつくこととなります。
 この事業の実施により、多摩ニュータウンは広い道路や緑豊かな公園が整備されました。さらに、住宅を初め多くの業務・商業施設や大学が建設され、人口二十万の大変ににぎわいのある便利な地域になって、隔世の感がします。
 しかし、一方では、諏訪、永山に代表される初期入居地区の建てかえの問題や、いまだに多くの未利用地が残されていることなど、多摩ニュータウンに関するまちづくりの課題はたくさん残されています。
 このような状況の中、都は来年度に組織を縮小することとしておりますが、このことについて地元は大変心配をしております。
 そこで伺います。新住事業は終了しますが、都はこれまでの事業をどう評価しているのか、また、今後のまちづくりをどのように進めていくのでしょうか。
 また、多摩ニュータウンには、今述べたようにさまざまな施設が多数立地しているが、まちの安全・安心という観点から見てみると、甚だ心細く感じます。とりわけ南大沢を中心とした八王子市域は、現在も新たな施設や住宅が増加しており、成長を続けている地域であるが、ここには警察署、消防署がないため、住民は日々不安な状態に置かれております。
 住民が安心して生活できるよう、一日も早くこの地域に設置が実現するよう、石原知事に強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 串田克巳議員の一般質問にお答えいたします。
 島しょ地域の観光振興についてでありますが、東京の島々は、手つかずの自然や独特の伝統、文化がまだ非常に色濃く残っておりまして、東京の観光振興を図る上でかけがえのない財産だと思っております。まさに大島から小笠原まで、それぞれ個性のある島がつながっておりまして、真珠の首飾りといいましたか、まさにストリング・オブ・パールズという存在でありました。
 去年、おととしと、二度にわたりまして、EU所属の大使たちとアメリカの大使をヘリコプターで招待して島に飛びましたが、東京の間近にこれだけのすばらしい自然があるということにみんな驚嘆しておりました。これは、ロサンゼルスのすぐ沖にありますカタリナ島などよりもはるかに変化に富む、すばらしい観光財産だと思っております。
 都は、東京の観光振興を図る上で、今までも、貴重な自然と調和した東京都版エコツーリズムや、島の魅力を高めるためのさまざまな観光振興策を展開してまいりました。
 また、一つのアイデアでありますけれども、大島のように、あの雄大な内輪山、外輪山が見えますあたりに、できればアメリカの大統領の迎賓用の別荘でもありますキャンプデービッドのような施設をつくれたらいいんじゃないかなと思ってもおります。
 それぞれの島々の多様な観光資源をうまく活用しますと、より多くの観光客を呼び込めまして、地域全体が一層発展するものと思います。激化する観光地間の競争を勝ち抜くためには、個性豊かな島々が知恵と力を出し合って、一体的に観光振興に取り組むことが必要だと思っております。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 多摩地域の交通安全対策、多摩ニュータウンのまちづくりに関する五点の質問にお答えいたします。
 都道における歩道の整備状況についてでございますが、歩道は、歩行者の安全を確保するとともに、植栽等による良好な都市環境の形成や、ガス、水道などのライフラインの収容空間の確保など多くの役割を果たしており、その整備をすることは大変重要でございます。
 多摩地域を中心に、歩道のない道路、歩道の狭い道路について、交通量や学校、病院等の配置状況を踏まえ、整備箇所を選定し、計画的に事業を実施しております。
 平成十五年三月末現在、都内では、整備対象道路延長千八百九十キロのうち七六%が整備済みで、このうち区部では、九百二十キロのうち八六%、多摩地域では九百七十キロのうち六六%が整備済みでございます。
 次に、八王子市内における歩道の整備状況と今後の取り組みについてでございますが、八王子市内では高尾街道など三路線で事業を進めており、十五年三月末現在、対象道路延長百二十九キロのうち八十三キロが整備済みで、整備率は六四%でございます。
 今後とも、財源の確保に努めるとともに、地元自治体や関係住民の理解と協力を得て、安全に安心して通行できる歩道の整備を着実に推進してまいります。
 次に、交差点すいすいプラン一〇〇の整備効果についてでございますが、すいすいプランは、交差点に右折車線の設置等を行うことにより、比較的短期間に少額の投資で交通渋滞の緩和、交通事故の防止、沿道環境の改善を図るものであり、十五年三月末現在、六十一カ所が完成しており、本年度末には七十七カ所となる見込みでございます。
 完成した交差点のうち、立川市役所前交差点では、交差点の最大通過時間が十二分から二分に短縮され、町田市の馬場交差点では渋滞による待ち時間が解消されるなど、大きな効果を上げております。
 次に、すいすいプランの次期計画についてでございますが、多摩地域ではいまだ渋滞解消を必要とする多くの交差点が残されており、本事業のさらなる拡大に対する都民からの期待と要望は大きいものがございます。
 そこで、現在事業中の交差点については、地元市や関係住民の理解と協力を得て早期完成を図り、計画の前倒しに努めてまいります。次期計画については、本年度の調査検討を踏まえ、現計画に継続して実施できるよう、早急に策定いたします。
 最後に、多摩ニュータウンのまちづくりについてでございますが、多摩ニュータウンは、高度成長期の住宅難の解消やスプロール化の防止に大きく貢献するとともに、社会情勢の変化に対応して業務機能や教育機能を導入し、すぐれた環境を生かした複合拠点を形成してまいりました。
 しかしながら、ご指摘のように、未利用地の活用や、初期に整備された地域の再生などの課題が残っております。
 都は、今後とも、地元市や民間事業者とも連携を図り、業務施設の誘致や質の高い住宅の供給など、職住近接のまちづくりを進め、多摩地域における重要拠点として一層発展するよう、事業の推進に努めてまいります。
   〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) 島のみなとまちづくりについての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、事業の取り組み状況でございますが、現在、島の町村長及び関係局から成る推進協議会を設置し、島のみなとまちづくりの基本方針や役割分担などについて検討を進めております。また、幾つかの島におきましては、地元の協議会が設置され、推進協議会との連携を図りながら、それぞれの島の個性を生かした事業について具体的な検討を行っているところでございます。
 さらに、パイロット事業といたしましては、大島元町港の船客待合所におきまして、現在開催中の椿まつりに合わせたイベントを実施するとか、あるいはテラスを活用した足湯を整備するなど、施設の多目的利用を図ることで多くの観光客に歓迎されているところでございます。
 続きまして、今後の取り組みについてでございますが、現在整備中であります神津島港の特産品の販売所では、観光客に水産品の加工を体験していただくとともに、大島岡田港では、日よけ通路を利用しての朝市開催を支援してまいります。
 また、新島のコーガ石など、島で産出する素材や工芸品、郷土芸能を広く観光客にPRするため、港湾や空港を島の歴史や文化の発信基地として有効に活用していく考えでございます。
 こうした、それぞれの島の個性を生かした島のみなとまちづくりを進めるため、各島の協議会の活動や事業の推進力となるNPOの設立などを支援してまいります。
   〔下水道局長二村保宏君登壇〕

○下水道局長(二村保宏君) 流域下水道事業に関する二点のご質問にお答えします。
 まず、これからの流域下水道事業を進めていく上での基本的な方向についてでございますが、現下の厳しい財政状況を踏まえ、このたび策定した経営計画では、新技術の導入などによる建設費の抑制や、水再生センターの管理委託方法の見直しによる維持管理費の縮減など、より一層の経営改善と事業の効率化に積極的に取り組んでまいります。
 また、多摩地域における都民生活と水環境を守るため、未普及地域の解消や合流式下水道の改善、高度処理などの重点事業を推進するとともに、都と市町村が、それぞれの役割を明確にした上で、今まで以上に力を合わせて下水道事業を着実に進めてまいります。
 次に、下水道事業の効率化に向けた取り組みについてでございますが、流域下水道事業については、水再生センター間の連絡管による相互融通機能の確保を図ることなどにより、既存の処理施設を最大限活用して、施設の更新コストや維持管理費の縮減を図ってまいります。
 また、多摩地域全体につきましては、水質検査の市町村との共同化をさらに拡大するとともに、下水道管渠の健全度の判断や悪質汚水の流入防止に効果を発揮する市町村の下水道台帳システムの整備を支援することによりまして、予防保全に重点を置いた広域的な管渠維持管理体制を構築し、効率化を図ってまいります。
   〔水道局長飯嶋宣雄君登壇〕

○水道局長(飯嶋宣雄君) 多摩地区水道事業経営改善についての二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、多摩地区水道における事務委託解消の見通しについてでございますが、平成十六年度から料金徴収業務を東京都に引き継ぐことになりました武蔵村山市、多摩市の二市のほか、現在、瑞穂町、東久留米市及び小平市の三市町との間で事務委託の解消に向けた協議が調い、業務の移行時期などを定めた水道業務移行計画を策定したところでございます。
 このほかの市町につきましても、現在、業務の移行時期などに関しての具体的な協議を進めておりまして、計画の最終年度である平成二十四年度までに着実に事務委託の解消を図ってまいります。
 次に、サービス拠点や体制の整備についてでございますが、現在、市町が行っている水道業務を東京都が引き継ぐに当たりましては、お客様サービスの向上を図りますとともに、広域的な施設管理を効率的に実施できる体制を整備する必要がございます。
 このため、多摩地区を四つの地域に区分し、それぞれの地域の水道業務を統括する給水管理事務所を、立川市、多摩市、八王子市及びあきる野市に設置し、そのもとに、お客様対応の窓口としてサービスステーションを順次十二カ所程度設置いたします。
 このうち、平成十六年度は、立川市及び多摩市において給水管理事務所の建設に着手いたしますとともに、武蔵村山市にサービスステーションを設置いたします。
 また、各種届け出や相談などに一元的に対応する多摩お客様センターを平成十八年度に開設いたします。
 今後とも、各市町の事務委託の解消時期に合わせまして、サービス拠点や執行体制を適切に整備してまいります。

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